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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その15
453 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:04:21.88 ID:4dwkLOEo
〜北方司令部〜

ザッザッザッザッザ…

参謀「精鋭兵50ほどで宜しいですか?」

騎士長「充分だろう。調査のみだしな」

左翼長「北東に村まで通常行軍でも数時間程度」

戦士「……」

左翼長「魔王軍の動きはないとはいえ、各自気を抜くなよ?」

青衛兵「おぉーっ!」

参謀「では……進軍!」

ドドォッ…パッカパッカパッカ…

戦士「大丈夫か?」

戦士は必死に手綱を引く野宿者を気にかける。

野宿者「…おっ…おぉ、何とか……っ」

騎士長「記憶はなくとも、身体で覚えてるってか…」

戦士「……」


454 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:04:48.85 ID:4dwkLOEo
北方司令部より平地を東へ数キロ。戦士の故郷より更に東の先…。

北方に存在する、地図にすら載らない小さいな村の一つ、『北東の村』がある。

ドドッドドッドドッ…

参謀「…どうです?」

偵察兵「この先数キロ。魔物の気配ありません!」

参謀「そうですか…ご苦労様。引き続きお願いいします」

偵察兵「はっ!!」

左翼長「さぁて…ぼちぼち北東の村だ」

騎士長「その村に一体…何があるのかねぇ…」

戦士「……」

参謀「騎兵前進!バリスタ隊は後方より進軍っ!」

騎士長「北伐以来設立のバリスタ隊も初陣だな」

左翼長「タイミング的には丁度よかったかもしれんな」

参謀「ええ。内容も行軍距離も…不謹慎ですが練習にはうってつけです」

戦士「さっすが北方司令部の皆さん。抜かりないです事…」


455 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:05:16.68 ID:4dwkLOEo
騎士長「見えてきたぞ。あの山の中腹部が北東の村だ」

騎士長は前方に広がる山脈の一角を指差し、戦士に声をかける。

戦士「……」

野宿者「北東の村…。行かなきゃ…」

戦士「もうじき着くからな。…親父」

参謀「縦列でゆっくり進めっ。ゆっくりだぞ」

左翼長「今更こんな地に何があるんだかな…」

騎士長「こいつが嗅ぎまわっているとすると…まぁ魔王軍関連だろうな」

戦士「……?」

野宿者「おわっ…!おっとと…っ」

戦士「ゆるやかとはいえ足場が悪いから…気を付けろよ?」

野宿者「……お、おぉ」

戦士「なぁ、おじさん。今更ってどういう事だ?」

左翼長「ん…?あぁ、お前は知らんのか」

青衛兵「見えてきましたっ!北東の村です!」


456 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:05:46.17 ID:4dwkLOEo
〜北東の村〜

戦士「……」

左翼長「意味が分かったか…?」

パッカパッカパッカ…

戦士「これって……」

騎士長「そう。正確には…北東の村、だった所さ」

ゆっくりと馬を前に進める戦士の眼前に広がる景色。

木々は枯れ、建物は崩れ、そしてただ無人の村であった存在が広がる。

左翼長「この辺りの村はな、とうの昔に全滅だよ…」

騎士長「北に近ければ近いほど、被害も大きいって事さ」

戦士「……」

野宿者「北東の……村…」

パッカ…パッカパッカ…

戦士「親父…?」

無意識に馬を進める野宿者。その正面に浮かぶ小さな影に戦士は気づく。


457 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:06:14.64 ID:4dwkLOEo
戦士「な、何だ…あれ…?」

左翼長「…?」

戦士「ほら…あっちの空、何か来る…?」

騎士長「……!?」

参謀「…ド、ドラゴンです!ドラゴンが一匹っ!」

左翼長「くっそぉ…!迎撃準備ーっ!!」

突如上空より迫りくる一匹のドラゴン。一同は動揺しつつも迎撃態勢を取る。

戦士「親父っ!下がれーっ!」

野宿者「……!?」

戦士「上だ上!!魔物が近づいてるんだよぉ!!」

その瞬間、上空が一瞬光り輝き、赤く燃える光球が徐々に近づく。

騎士長「回避ーっ!!」

戦士「ちっくしょおおぉぉ!!」

……ゥゥウウウウ……ドゴオオォォンッ!!

ドラゴンの放った火球は、野宿者を助けに駆け出した戦士もろとも、その光に飲み込んだ。


458 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:06:41.84 ID:4dwkLOEo
ドドオオォォ……

騎士長「くっ…!!」

左翼長「…!?戦士っ!?……戦士父っ!!」

爆風により地面へ叩きつけられた左翼長が慌てて飛び起き、周囲を見渡す。

左翼長「……っ!!」

参謀「ドラゴンが来ますっ!」

騎士長「バリスタ隊っ!迎撃準備ーっ!!」

ドラゴン「ゴアオオオォォ!!」

騎士長「おいっ!動けるかっ!?」

左翼長「あ、ああ…っ!」

左翼長は正面にぽっかり空いた穴から目を上空へと移す。

騎士長「地面が脆くなってやがったんだ…!」

左翼長「山あいだ…。下に洞窟があってもおかしかねぇ…」

騎士長「とりあえず今はドラゴンが先だ!俺達までやられちゃ意味ねぇ!」

左翼長「……あ、ああ!青衛兵っ、左右に分かれドラゴンを牽制しろ!」


459 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:07:09.58 ID:4dwkLOEo


ゴトゴトッ…ドシャアァァッ…

戦士「……う…っ」

ググッ…ノソッ…

戦士「お…やじ…っ…!?」

ガバッ

戦士「…親父っ!どこだーっ!」

野宿者「……くぅ…っ」

戦士「そっちかっ!今行く!!」

ダダッ!!

戦士は瓦礫を押しのけ、下に倒れる野宿者の身体を起こす。

戦士「…くっ!」

野宿者の頭部から滴る血を布で拭い、戦士は安堵の表情を浮かべる。

戦士「良かった…。岩で切っただけか……」

野宿者「……っつ…うぅ!!」


460 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:07:38.31 ID:4dwkLOEo


戦士「…大丈夫か?」

野宿者「…い、痛いっ…!」

血の滲む頭部の布を押さえ、野宿者は苦悶の表情で唸る。

戦士「どうやら下に落ちちまったらしいな…」

ザッザッザ…

戦士「どこからか…上に登らないと…っ」

戦士は両手に抱えた荷物を見つめ、野宿者の顔を覗く。

戦士「…これ、持ってくれ」

野宿者「……?」

ヒョイッ…

戦士「元はアンタの武器だろ。魔物が出ないとは限らねぇ…」

野宿者「…や、槍…!?」

戦士「馬は潰れちまったし…両手塞がってちゃ俺も戦えねぇし…」

戦士は両腕で抱えた荷物をひょいと上げて見せ、おどけた表情を浮かべる。


461 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:08:10.24 ID:4dwkLOEo
野宿者「…は、はぁ」

戦士「とりあえず道なりに進むしかねぇか……」

野宿者「……あ、ああ」

ザッザッザッザッザ…

戦士「…なぁ親父」

野宿者「……?」

戦士「親父は村を飛び出してから…ずっと何してたんだろうなぁ…」

野宿者「……」

戦士「正義感の強いアンタの事だ。ずっと魔物でも退治してたのかもなぁ…」

野宿者「魔物退治……」

戦士「記憶戻ったらさ、色々と話してくれよなっ!」

野宿者「…はぁ」

戦士「俺も酒飲めるように…あぁ、親父は下戸だったっけ…」

野宿者「……はぁ」

戦士「何はともあれ、まずは……ん?何だ…あれ…」


462 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:08:57.38 ID:4dwkLOEo
テクテクテクテクテク…

道なりに真っ直ぐ進むと、そこは開けた洞窟の一角であった。

戦士「…なっ、なんだよ…!こ…これは…よ…!!」

その周囲を覆う壁、そして地面に所狭しと貼りつく奇妙な物体。

戦士「魔…物!?違う…これは卵だ!!」

赤黒く脈打つその丸い物体は、ぼんやりと半透明に内部を映し出す。

戦士「…魔物の…!?ドラ…ゴン…!?ドラゴンの卵!!」

数百はあると思われるそれらは、全てドラゴンを孵化させる存在。すなわち卵であった。

戦士「馬鹿なっ!?何だってんだこれはよぉ…!!」

野宿者「ひ……ひぃ…っ!!」

戦士「!?」

慌てふためき腰を落とす野宿者を振り返る戦士。

戦士「っ!?」

そこに転がるのは人間であったと思しき骨や腕…臓器の一部である。

戦士「……!!」


463 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:09:35.16 ID:4dwkLOEo
野宿者「うっ…うえ…っ!うえぇ!!」

戦士「……まずいな…!俺の直感がそう言ってやがるぜ…!へへ…っ」

戦士は苦笑を浮かべ、額の汗を一度、また一度と拭う。

その瞬間、後方の岩陰より物音が鳴り、空洞内に反響する。

戦士「っ!!」

ジャリッ!!

戦士「……人間…!?」

振り向きざまに戟を構える戦士は、目を細め人影らしき姿を見据える。

シュイィィン……ドウウゥゥンッ!!

戦士「――っ!?」

人影から突如輝く光が次第に大きさを増し、戦士の前に一体の巨大な姿と変わり果てる。

戦士「…し……召喚獣っ!!何なんっ……」

ベヒーモス「ゴオオアアァァッ!!」

戦士「何ぃーっ!?」

現れたベヒーモスの口内が輝きだし、戦士目がけ閃光がほとばしる。


464 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:10:04.37 ID:4dwkLOEo
キュイィィ……バシュウウゥゥッ!!

戦士「くっ!!」

ドドオオォォンッ!!

戦士「…ってぇ!……親父っ!?」

間一髪横へ交わし起き上がる戦士は、野宿者の姿を探す。

戦士「っ!?」

ベヒーモス「グルオオォォ!!」

ヒュオッ…バギャアアァァッ!!

ベヒーモスの追撃…右足から繰り出す鋭い爪の一撃が戦士を捉える。

しかし戦士は咄嗟に身を捻り、左腕の盾で直撃を避けた。

戦士「……ぐ…うぅ…っ!」

しかしその威力は凄まじく、戦士の身体は後方の岩へと叩きつけられる。

ドシャアァァッ…

戦士「…う…ぐは…ぁ…!!」

ベヒーモス「ガアアアアァァッ!!」


465 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:10:33.54 ID:4dwkLOEo
キュウイイィィッ……

戦士「……ち…く…しょ……」

ドドオオォォンッ!!

ベヒーモスの口からは再び閃光が撃ち放たれ、戦士の眼前は眩い光に包まれる。

戦士(景色が…スローになって見えるぜ……)

ヒュイイィィッ……

戦士(あれだあれ…。えぇと…そうそう、走馬灯ってヤツだな…)

イイィィ……

戦士(ここまで…かよ…くそぉ…)

ィィ……

戦士(召喚士、魔道士…盗賊。すまねぇ……)

……

戦士(親父は…無事か…?駄目だ、分かんねぇ……)



戦士(親父……)


466 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:11:12.22 ID:4dwkLOEo


戦士「……んん」

戦士父「おい、もう昼だぞ。いつまで寝てるんだお前は…」

戦士「あ…父さん」

戦士父「何を寝ぼけてる!さっさと港まで行ってこれを売って来い!」

戦士「……今日は勘弁してよぉ」

戦士父「ふざけるな!お前ももういい歳なんだ。働いて貰わんと困る」

戦士「そんなぁ……」

戦士父「お前には近いうち、狩りも教えるからな」

戦士「えぇー!?」

戦士父「いいから…さっさと起きろ!」

戦士「無理だよぉ…!何だか身体が痛くて…」

戦士父「そうやってすぐ仮病を…。情けない…!」

戦士「本当だって…!ベヒーモスの攻撃にやられて……」

戦士「いいから起きろ!立てっ!!」


467 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 21:12:29.57 ID:4dwkLOEo


戦士「……ん…っ!……ゆ…め…」

――「起きろ。立てっ!!」

戦士「あぁ…親父。……ごめん…」

ゆっくりと目を開ける戦士の目の前に、一人の男が立ちはだかる。

十字槍を構えたその背中はとても懐かしく、暖かく…そして大きかった。

戦士「……え……っ…?」

戦士父「…立てるか?」

戦士「お、おや…じ…?」

戦士父「……良い槍だ。お前が見つけて来たのか?」

戦士「親…父……っ!親父っ!!」

戦士を庇うように立ちはだかる戦士父は、背後を振り向き、微笑む。

戦士父「感動の対面は後だ!今は目の前の敵を倒すぞ!」

戦士「……お、おうっ!!」

戦士はゆっくりと起き上がり、その目を右手で何度も擦り、拭った。


468 :GEPPERがお送りします [sage] :2010/06/05(土) 21:27:03.87 ID:BksyELYo
これは・・・・好きすぎる展開でこっちも燃えてくるな・・・


469 :GEPPERがお送りします [sage] :2010/06/05(土) 21:34:49.15 ID:Z7W/zHo0
ありがちは置き換えたら王道だからな
かっこいい


472 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 22:51:57.90 ID:4dwkLOEo
〜北東の村〜

ドドオオォォンッ!!

ドラゴン「ゴアオオオォォ!!」

騎士長「何だか知らんがえらくお怒りだっ!」

参謀「右翼っ!回避ーっ!!」

ズドオオォォンッ!!

左翼長「バリスタの準備はっ!?」

参謀「三大ほどは既に使えます!」

左翼長「よーし…ぶっ放してやれ!」

騎士長「持ってきて正解だな…」

左翼長「建物の残骸を壁に使えっ!的が小さい分、こちらは有利だ!」

精鋭兵「了解です!!」

左翼長「さぁて…。弓をよこせっ」

精鋭兵「弓…っ!?は、はいっ!!」

左翼長「たかがドラゴン一匹…!なめんなよ!」


473 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 22:53:39.56 ID:4dwkLOEo
騎士長「たかが…って。相手はドラゴンだぞ!?」

左翼長「そういう心構えで戦えって……事だよっ!」

バシュッ!!

左翼長の放つ矢はドラゴンの頭上を大きく越え、はるか彼方へ消える。

騎士長「ほれ見ろ!」

左翼長「これでいいんだよ!さて……逃げるぞっ!」

騎士長「はぁ!?」

ドラゴン「グルルッ…グオオオォォ!!」

一矢によりドラゴンは方向を変え、逃げる左翼長の姿を追う。

左翼長「おらっ!馬飛ばさねぇと、とっ捕まんぞ!?」

騎士長「牽制かよ!くっそ……!」

猛スピードで逃げ回る二頭の馬を上空からドラゴンが追う。

左翼長「さぁ頼むぞ…!いけぇ!!」

参謀「……ってぇ!!」

参謀の号令と同時に、ドラゴンの右方からバリスタが発射される。


474 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 22:54:07.71 ID:4dwkLOEo
バシュウゥゥッ!!…ゴウッ!!

ドラゴン「……!?」

バサッ!!……シュウゥゥンッ!!

騎士長「は、外したっ!?」

参謀「いえっ!あれでいいのです!!」

上空へと放たれたバリスタは、山なりに村の奥へと落下する。

その先端は平坦であり、鏃の類は一切ない。

左翼長「あれも……囮よ!」

参謀「ってぇ!!」

北方兵「うおぉーっ!!」

バシュウウゥゥッ!!

一撃目のバリスタを回避し、態勢を整え直しきれていないドラゴンを、

背後から二撃目のバリスタが見事に捉える。

ヒュオオォォッ……ドズウゥゥッ!!

ドラゴン「グギャアアァァッ!!」


475 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 22:54:43.99 ID:4dwkLOEo
左翼長「まだ仕留めてねぇぞ!連撃だっ!」

参謀「次ぃーっ!!」

バシュゥゥッ!!

北方兵「バリスタ組み立て完了っ!!」

参謀「よし!どんどん撃ちなさい!!」

北方兵「いけぇ!!撃て撃てぇ!!」

組み上げられたバリスタから、次々に巨大な矢が撃ち放たれる。

ドスドスドスッ!!

複数の巨大な矢は、ドラゴンの体を前後左右から捉え、そして貫き、

ドラゴンの瞳は徐々に光を失いながら地上へとその身を落下させた…。

ドズウゥゥンッ!!…ドシャアアァァ…

騎士長「い…よっしゃあ!!」

左翼長「まだ来るかもしれん!準備を怠るな!」

北方兵「了解です!」

表情を緩めない左翼長の顔を伺い、他の兵達も再び配置へと戻った。


476 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 22:55:30.80 ID:4dwkLOEo
〜北東の村、地下〜

戦士「……」

戦士父「…」

ベヒーモス「グガアアァァ!!」

戦士父「散れっ!!」

戦士「おうっ!」

ベヒーモスが大きく口を開いた瞬間、二人は左右へと別れる。

気を取られベヒーモスの動きが一瞬止まる。その刹那…

戦士父「……しっ!!」

ザシュッ!!

一瞬のうちにベヒーモスの背後へと回った戦士父は、

十字槍で召喚獣を斬りつけ、再び右方へと間合いを取る。

戦士(は…早い…っ!)

戦士父「ボーっとするな!隙あらば躊躇せず仕掛けろ!」

戦士「お、おうっ!」


477 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 22:56:12.25 ID:4dwkLOEo
ベヒーモス「グガオオオォォ!!」

戦士父「閃光が来るぞ!そっちだ!」

戦士「……見てろよ…っ!」

戦士は逃げる素振りも見せず、どっしりと下半身に力を入れる。

戦士父「馬鹿野郎っ!かわせっ!!」

ベヒーモス「カアアァァッ!!」

キュイイィィ…バシュウゥゥ!!

戦士「……くぅ!!」

ボッ!!………ギギギギイイィィッ!!

戦士父「何っ!?」

戦士「…ぐく…っ…!どう…だっ!!」

撃ち出された閃光は、戦士の左腕へと命中する。

しかしその光は直撃せず、四方へと拡散している。

戦士父「ふ…防いでいるのか!?」

戦士「お…らああぁぁーっ!!」


478 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 22:56:39.71 ID:4dwkLOEo
戦士父「……!!」

戦士父は慌てた素振りでベヒーモスの懐へと走り出す。

戦士父「炎の熱で…閃光を拡散してやがんのか…!」

ダダッ……ザクゥッ!!

戦士父「俺とした事が…見とれちまってたぜ」

ベヒーモスの顎を手にする十字槍で貫きながら、戦士父が苦笑する。

ベヒーモス「グルオオオォォ!!」

戦士「よ…っし!…うまくいった!」

ベヒーモス「フウウゥゥ…!!グウウゥゥ…ッ!!」

戦士は戟を地面へ突き刺し、鞘に手をかけながら前方へ走り出す。

戦士「トドメ……いくぜっ!!」

戦士父「……おう!」

頭部を貫かれたベヒーモスは、苦痛によりその身を大きく仰け反らせる。

戦士「……はあぁっ!!」

戦士父「……ふんっ!」


479 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 22:57:11.16 ID:4dwkLOEo
ベヒーモスの顎より十字槍を引き抜いた戦士父は、即座にその場を飛ぶ。

戦士父「美味しいところは…くれてやるっ!」

ヒュオッ……バキイィィッ!!

大きく振りかぶり叩きつけた槍はベヒーモスの頭部へ直撃し、

その反動で巨体が大きく下方へと倒れ出す。

チャキッ……

戦士「………」

ゆっくりと倒れ込むベヒーモスの前で戦士は立ち止まり、

雷切の柄を右手でしっかりと握りしめる。

スゥッ…

戦士父「…いい…落ち着き具合だ」

戦士「………っ!!」

チャキッ………ザシュウウゥゥ!!…ガカアァァッ!!

ベヒーモス「グギイイアアァァッ!!」

稲光とともに放たれた一閃が、ベヒーモスの巨体を真っ二つに斬り裂いた。


480 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 22:58:06.47 ID:4dwkLOEo
クルクルッ……カシャッ

戦士「ふーっ…」

雷切を鞘へと収めると同時に、ベヒーモスがその姿を消した。

スタッ

戦士父「……見事!」

戦士「……へへっ」

戦士は口を尖らせ、恥ずかしそうに笑う。

戦士父「……いるんだろ?出て来い!」

戦士「!?」

戦士父は後方の岩陰へ向けて大声で叫ぶ。

そこにはコートを纏った男が呼吸を乱し、蹲っている。

戦士「…な、何モンだ…!?」

戦士父「……」

コート男「……はぁ……はぁ」

戦士父「あれだけの召喚獣だ。もはや魔力はあるまい…」


481 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/05(土) 22:59:10.17 ID:4dwkLOEo
コート男「……ふ…っ…ふふっ」

戦士「…!?」

戦士父「……屍人か」

戦士「アンデッドか!?」

コート男「………」

スゥッ…

戦士父「!?」

タタッ!!

戦士「い…いねぇ!?」

戦士父「退いたみたいだな…」

戦士「……」

戦士父「……戦士」

戦士「あ、ああ……っ」

戦士父「……ただいま」

戦士「…ああ。お、おかえり…!」


493 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/06(日) 01:04:04.11 ID:lcfMYdQo


戦士父「見ての通り、ここはドラゴンの巣…だ」

戦士「……」

二人は一度周囲を見渡し、その光景に改めて戦士は息を飲む。

戦士「ドラゴンの…巣…!」

戦士父「…と言っても、ドラゴンが自然に作りだした物ではない」

戦士「…つ、つまり…?」

戦士父「作為的に作り上げられたモンだって事さ」

戦士「一体誰が!?」

戦士父「そりゃ魔王軍だろ。誰かは知らんがな…」

戦士「……魔物が…そんな事を…?」

戦士父「らしいな…」

戦士「……」

戦士父「…村を襲って、手っ取り早く餌と巣を確保してんのさ」

戦士「…え、餌…!?」


494 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/06(日) 01:04:41.62 ID:lcfMYdQo
戦士父「お前も見たろ?無数に転がる人骨や…人間だった一部を…」

戦士「――っ!!」

戦士父「つまりそういう事だ」

戦士「む…村の人々を…っ!」

戦士父「……」

戦士「ゆ…許せねぇ…!!」

戦士父「……さぁ、地上へ戻るぞ」

戦士「……なぁ親父」

戦士父「…?」

戦士「魔物って…一体何なんだよ…!」

戦士父「…どういう意味だ?」

戦士「だってよ、基本は悪いい奴らだけどよ…中には良い奴もいる」

戦士父「…それで?」

戦士「俺…何がなんだか分かんねぇんだよ…っ!」

戦士父「……」


495 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/06(日) 01:05:07.54 ID:lcfMYdQo
戦士「なぁ親父!魔王を倒せば全て終わるのか!?なぁっ!」

戦士父「……知るか」

戦士「は…っ!?」

戦士父「俺は全知全能の神でも何でもねぇ。唯の人間だ」

戦士「……」

戦士父「そんな事、分かるわけないだろう」

戦士「……っ」

戦士父「それはお前が自分で示せよ」

戦士「…示す…?」

戦士父「人間にだって良い奴もいれば悪党もいる」

戦士「……」

戦士父「ただ種族が違う…。そんだけの話だ」

戦士「……親父」

戦士父「俺が分かるのはそこまでさ。後は自分の目で確かめろ」

戦士「魔王を倒せば…平和になるんだよな…?」


496 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/06(日) 01:05:53.02 ID:lcfMYdQo
戦士父「平和になるかは知らん」

戦士「そ…っか…」

戦士父「でもな、魔王の代わりは存在しない」

戦士「代わり…」

戦士父「魔王の存在は絶対だ。意思を継ぐ奴はいても、代わりは務まらん」

戦士「……」

戦士父「魔王の事、どこまで知っている?」

戦士「えっと、確か…七人いて…五年に一度その力がどうとか…」

戦士父「その中の一人、魔王パズズ…」

戦士「あぁ。青龍先生達の伝説が倒したとかいう…」

戦士父「正しくは倒したのではなく、封印な」

戦士「…あ、ああ」

戦士父「魔物の奴ら、なぜか必死でパズズの復活に尽力注いでやがる」

戦士「…!?」

戦士父「裏を返せば、パズズの代わりは務まらない。復活させる以外の道はないのさ」


497 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/06(日) 01:06:19.19 ID:lcfMYdQo
テクテクテク…

戦士「なるほど…」

戦士父「まぁ、魔王全てを封印するなんてのはいつの話か…」

戦士「いや…そうでもない」

戦士父「…?」

戦士「今…国軍が躍起になって、それを画策してるよ」

戦士父「本当か…!?」

戦士「ああ。まぁ…詳細は国軍の奴らに聞いてくれ」

戦士父「あ、ああ…。そうだな」

戦士父は足を止め、岩陰の間をよじ登り、隙間を覗き込む。

戦士父「ビンゴ…。ここから地上に出られそうだな」

戦士「!?」

戦士父「話の続きはとりあえず生還してからだな」

戦士「お、おうっ!」

岩場の隙間に潜り込む戦士父に続き、戦士も後を追う。



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