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魔女「果ても無き世界の果てならば」
89 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/23(木) 14:15:17 ID:DLjS442E
お待たせいたしました。更新しようと思います。

現代編?続編?は最後の話になりますので、それまで気長に各キャラのSSにお付き合い下されば幸いです。


90 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/23(木) 14:17:04 ID:DLjS442E


―――――――

――――――――――――


 深い森を歩く。

 まるで深緑の海の底をさまよっているようだと思い、空を見上げた。


 木々の隙間からは微かに鈍色の空が見える。

魔法使い「はぁ、憂鬱だ」

 手頃な木の根に腰掛けるとため息が漏れた。


91 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/23(木) 14:17:37 ID:DLjS442E

 いっそこの胸に詰まっている正体不明の靄を一緒に吐き出せたらどれだけ良かった事か。

 勇者たちと離れれば治るかとも思ったのに、結局は変わらない。
 せっかく適当に理由を考えて別行動をとるようにしたというのにこれじゃあ意味がないよ。


魔女「そろそろ行かなくちゃな」

 待たせたところで変わらないし、仕方ない。

 深い森の中をまた歩き出す。


 あぁ、憂鬱だ……。


92 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/23(木) 14:18:18 ID:DLjS442E


 結局胸の靄をどうする事もできないまま妖精の村の入り口までたどり着く。


 薄暗い不気味な森の一角に四季の花が咲き乱れている不可思議な場所だ。 迷わないように地図まで書いて渡したというのに。


僧侶「お久しぶりです、ね?」

魔法使い「何で無駄乳以外居ないのさっ!?」

僧侶「無駄乳!?」

 あ、口が滑っちゃった。

 僕とした事が失敗失敗。

魔法使い「え? 君の胸部の脂肪には有意義な使い道があるのかい? 乳牛なのかい?」

 もうめんどくさいからいいや、素で接しちゃおう。

 どーせ僧侶だし。


93 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/23(木) 14:18:48 ID:DLjS442E

僧侶「グスン、酷いです」

魔法使い「あぁ〜……、なんていうかごめん?」

 またその大きな垂れ目を潤ませる僧侶。

 子供? ねぇ、子供なの? この人は子供なの?

 おっぱい大きいんだからもっとしっかりしてよ。


魔法使い「勇者と戦士はどこ?」

僧侶「いやぁ〜その……迷子?」
魔法使い「はぁ!?」


94 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/23(木) 14:19:08 ID:DLjS442E

 僧侶のわかりにくい説明によると、なかなか来ない僕を探しに勇者が、そんな勇者が戻って来ないのを心配して戦士が探しに行ったっきり戻ってこないらしい。

 いわゆるアレだ。 あれ、ど忘れしちゃった。

僧侶「ミイラ取りがミイラになるって奴ですねっていひゃい、いひゃい」

 自慢げな僧侶の顔が腹立たしいので頬をつねってみた。

 柔らかい感触は癖になる。

 今度からちょくちょく抓るようにしよう。


95 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/23(木) 14:22:50 ID:DLjS442E
今回の更新は以上になります。

魔女のキャラが少し違うのは、年相応だからです。


96 名前:深夜にお送りしますよ [] 投稿日:2012/08/23(木) 14:47:22 ID:sqkcfpdI
待ってた。更新乙
魔法使いのキャラも魔女の若かりし頃と考えると、笑えるなw


97 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/08/23(木) 15:58:20 ID:0Xjn0u46
魔女って何年たっても容姿が変わらないんでしょ?
これは何年前の話なんだろう


98 名前:深夜にお送りしますよ [sage] 投稿日:2012/08/23(木) 16:33:07 ID:sqkcfpdI
>>97
「あなたが塔の~」で魔女が、勇者・魔王が生存していた時代を、だいたい二百年前だと言っていたから、二世紀ほど前だと思われ


99 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/08/23(木) 18:32:28 ID:AFAhIW2A
この頃から二百年全く見た目が変わらないとすると、この魔法使いさんは12〜15歳の捻くれたお嬢さんか……
かわええ


101 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/23(木) 22:32:50 ID:DLjS442E

書き溜の際、タイトルが長いので、「はてはて」と略しています。

日付が変わる頃更新します


103 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/08/24(金) 02:59:03 ID:cxm0IEos
まとめから来るのは勝手だがコテハンつけんなよ


113 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/24(金) 23:09:17 ID:PC8NHMLA


 僧侶の頬に赤い痕ができた頃、戦士と勇者は帰ってきた。

勇者「なんだ、随分と仲良くなれたみたいだな」

戦士「あぁ、そうみたいだな」

 何を言ってるんだ?

僧侶「うふふん、魔法使いちゃんと仲良くですって」


 いつの間にかちゃん付けで呼んでるよこの乳袋。


 でもまぁ、こんなに他人と話したのは久々だし。

魔法使い「ん、まぁ、うん」

勇者「え!?」

戦士「お!?」

僧侶「へ!?」


 驚き過ぎじゃないか?

 まるで人がひねくれ者みたいじゃないか。 失礼だな。


114 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/24(金) 23:10:06 ID:PC8NHMLA

僧侶「魔法使いちゃん!」

魔法使い「うわ!?」

 隣にいた僧侶が抱きついてくる。

 顔面全体が埋もれる程豊かな胸部の感触。

 感触自体が心地よいのが非常に腹立たしい。

 だから。

魔法使い「ふん!!」

 その脂肪の塊を全力で横から叩く。

僧侶「きゃっ」

 何という手応え。 危うく手首を負傷するとこだった。

 前言撤回。

 やっぱり僕はコイツが嫌いだ。

 なのに、どうしてか頬が緩んでいくのを感じてしまう。

 よくわかんないや。


115 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/24(金) 23:10:55 ID:PC8NHMLA


―――――――――――――

―――――――――


魔女「とまぁ、僧侶とは少し打ち解けたんだろうな」

 遠くを見つめ、懐かしそうに目を細める魔女。

 寂しそうですが、幸せそうでもあります。

少年「僧侶さんは良い人なんだろうね」

 魔女の言葉から優しさが滲んでいますし、きっと良い人なんでしょう。

魔女「あれは、馬鹿っていうんだ」


 それより気になったことがあります。

 魔女って、胸の大きさを気にしているのかな?

 聞いたらひどい目に遭いそうですし、聞きませんけど。


116 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/24(金) 23:11:10 ID:PC8NHMLA


少年「でも勇者と戦士とはまだ打ち解けてないよね?」

 安楽椅子の揺れが止まりました。

魔女「勇者とはその後打ち解けたよ。 彼も言うなれば馬鹿、かな?」


 魔女の頬がゆるんでます。

 なんだか不愉快……。

 いや、嫉妬なんてしてません。

魔女「妖精の村で、勇者の能力を開花させる為の修行をしたんだ」

魔女「あの時は大変だったんだよ?」

 うん、嫉妬なんてしてないです。 ほんとです。

―――――――――――
――――――――――――――


118 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/08/24(金) 23:26:17 ID:HqINbPq2
更新乙!
魔法使いちゃん可愛いなあ


119 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/25(土) 02:20:37 ID:VjA/9hm6
更新乙!
少年よ、聞け聞くんだ!


120 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/08/25(土) 04:32:37 ID:Lxcr3Ypg
乳袋とか辛辣すぎるw


121 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:33:06 ID:NPckAhWs
更新します。 一つ一つのエピソードを詳しく描写した方がよいでしょうか?


122 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:34:34 ID:NPckAhWs

―――――――――――
――――――――――――――


 なんでこんな事になってしまったのだろうか……

勇者「浮かない顔すんなって! なんとかなるさ」

 現在、僕はこの脳天気な勇者と二人で妖精の祠にいる。

 妖精の王が、勇者の魂を呼び起こして真の力を目覚めさせるとかなんとか。


 その試練には魔に通ずる者が同伴しなければならないらしく、僕もついて行かなければならなくなった。

 それはまだいい。


 ただ、聞いてない。


ゴーレムの群れ「グゴゴゴ」


魔法使い「なる訳ないだろ!」


123 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:35:27 ID:NPckAhWs

 神代の時代の兵器の群に囲まれるなんて。

 あーもう! 馬鹿じゃないの?
勇者「任せろ、魔法使いに怪我なんかさせないからな」


 どこからこの自信が出てくるんだろう。

 とりあえず向こうから攻撃してくることはないみたいだし、ゆっくりと作戦を練る時間は……


勇者「うおおおりゃああ」


 駄目だ、この人は本気で馬鹿らしい。 僧侶並の馬鹿だ。


124 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:36:07 ID:NPckAhWs

勇者「〜〜」

 小さな閃光の呪文をゴーレムの顔面に向け放つ。

 それと同時に、低い姿勢から足を狙った一閃。

 自分より強大な物と戦う事に慣れているようだ。

 そう感じ取れる程、その動きは滑らかで自然だった。

ゴーレム「グゴー」

勇者「ふぎゃっ」

 あ、蹴られた。

 んー格好悪い。

ゴーレム「グゴー」

勇者「待って、いったんタイムで」

ゴーレム「グゴー?」


 ゴーレムは理解したようで、その場で停止。

 勇者が戻ってきた。


125 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:37:20 ID:NPckAhWs

勇者「アイツ堅すぎるんだけど!?」

魔法使い「君も馬鹿なの?」

勇者「え?」

魔法使い「あのゴーレムは神代の時代の遺物だ。 魔法に対する耐性と物理耐性はそこらの魔物なんかと比べものにならない」

勇者「うん、それから?」

魔法使い「魂のない自立駆動兵器だから、僕の魔法で即死させる事もできない」


勇者「ずいぶん詳しいんだな」

魔法使い「まぁね」

勇者「魔法使いと一緒でよかった」

 随分とまぁ、まっすぐ笑う人間だ。


126 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:38:07 ID:NPckAhWs

魔法使い「よしてよ、なんの役にも立ってないんだし」


勇者「アレの正体が分かっただけでも十分過ぎるさ、それに」


 今では見ることのできなくなった青空のような紺碧の髪をガシガシと掻きながら勇者は続ける。


勇者「誰かと一緒の方が頑張れるんだよな、きっと」


 うわー恥ずかしいことを言う人だな。


127 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:38:30 ID:NPckAhWs

魔法使い「せいぜい頑張りなよ。 僕は魔法が効かない相手にはなんの役にも立たないし」


 役に立てたとしても何かをする気にはならないけどね。

 それこそ、勇者なんだから一人で何とかするでしょ?


勇者「あぁ、任せとけって!」


 勇者は自信たっぷりな笑みを浮かべると親指を立てる。


 はてさて、どれくらいでどうにもならないって気づくやら。


128 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:39:05 ID:NPckAhWs

数時間後――――。

勇者「うおおおりゃああ」


魔法使い「まだやってるの?」


 勇者は先程から色々な事を試してはいるが、結局無駄に終わっている。

勇者「諦めてたら何もできないからな」

魔法使い「諦めが肝心とも言うよ?」


 諦めの悪い奴だな。

勇者「俺の敵は諦めと絶望だ! うおおお」

 懲りない奴……。


129 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:39:36 ID:NPckAhWs

 座り心地の悪い祠の湿っぽい地面に座り込み勇者を眺める。


ゴーレム「グゴー」

勇者「剣じゃ駄目だしなぁ」


 けして業物とは言えない大量生産の長剣でゴーレムに傷が付いたらそれこそ奇跡だ。

 達人が業物の得物を使っても傷がつくかも怪しいんだもの。

勇者「んじゃ次はこれだ」

 勇者が構えを変えた。


130 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:43:36 ID:NPckAhWs

 勇者は、最上段に剣を構えると精神を集中するように目を瞑る。

勇者「ふん!」

 地面を蹴り上げ、一気に距離を詰めると振りかぶった剣をゴーレムの頭上に振り下ろす。

 それは、金属を切り裂く為に編み出された剣技。


 普通なら刃が通らぬ堅牢な表皮を持つ魔物さえ切り裂く剛剣。


ゴーレム「グゴー」

 金属同士の衝突音が祠の中に響く。


131 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:44:11 ID:NPckAhWs

魔法使い「うわっ!?」

 勇者とゴーレムの間に火花が散り、金属の塊が僕のすぐ脇に突き刺さった。

 金属は、折れた長剣の切っ先だ。

 僕に何か恨みでもあるのだろうか?

魔法使い「いつから目的がゴーレムじゃなくて僕を倒す事に変わったんだい?」


勇者「すまん!」



 これじゃいつまで経ってもゴーレムを倒すなんて無理だね。

 はぁ、お風呂にでも入ってゆっくりと眠りたいや。


132 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:45:00 ID:AzleCZew
>>121
ssの雰囲気が変わらない程度にお願いしたい


133 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/26(日) 21:45:33 ID:NPckAhWs
今回の更新は以上となります。
作品に出てくる魔法、技は全てドラ○エに出てくるものです。


135 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/27(月) 23:49:18 ID:j/y/1npE


勇者「剣も折れたし、よし! 殴るか」

 腕を振り回しながらゴーレムに向かっていく勇者。

 剣の次は骨でも折るつもりらしい。

魔法使い「それはやめといた方が良いと思うよ? 怪我するだけだし」


 ほんとに諦め悪い奴だ。


136 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/27(月) 23:49:58 ID:j/y/1npE

勇者「あ〜やっぱり?」

魔法使い「じゃあどうするの?」

勇者「〜〜。 食らえ」


 勇者が呪文を唱える。

 放たれたのは小さな雷の魔法。

魔法使い「聞く訳ないじゃな……い?」

ゴーレム「グゴゴゴ? グゴー?」

 ゴーレムが明らかに反応を示している。

 効いた?


勇者「どんなもんだ!」

ゴーレム「グ……グゴァアァァァ」

魔法使い「まずい!?」


137 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/27(月) 23:50:25 ID:j/y/1npE


 雷に当たったゴーレムが咆哮を上げた。

 どうやら敵と認識されたらしい。


 ゴーレムの単眼が眩い閃光を放った瞬間、その視線上に有った物が蒸発した。


魔法使い「勇者!?」


勇者「大丈夫だ!! そっちは!?」
 間一髪、閃光を避けた勇者。

 数秒前まで勇者が立っていた場所は溶けたバターのように滑らかに抉られていた。


ゴーレム「グゴァアァァァ」


 数秒に一発の間隔で閃光を撃つゴーレム。

 周りのゴーレムもそれに呼応するように単眼を紅く光らせて勇者に敵意を向け始める。


138 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/27(月) 23:50:54 ID:j/y/1npE

勇者「〜〜」

 勇者は閃光を器用に避け続けながら雷の呪文を放つが、如何せん火力不足。 ゴーレムには微々たる損傷しか与えられない。


魔法使い「雷は効くのか……」

 勇者にしか力を貸すことがないと言われている雷の精霊はゴーレムも想定外らしい。

 嫉妬が胸の中で首を擡げる。

 僕なら、もっと上手くできるのに……


139 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/27(月) 23:51:08 ID:j/y/1npE

勇者「あぶねー!!」

 勇者に突き飛ばされる。

 危なかった。 僕の居た場所に閃光が走る。

魔法使い「助かったよ」

勇者「任せろって言ったろ? まぁちょっと待ってろよ。 片付けてくるから」

 虚勢? いや、この目は本気だ。

 ひたすら真っ直ぐな輝きを湛えたその瞳の前では、諦めや絶望さえ逃げ出してしまいそうだとさえ思ってしまう。

魔法使い「仕方ない、手を貸してあげよう」


 少しだけ、彼に興味がでた。


141 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/28(火) 00:22:42 ID:QbuKFfBc
ゴーレムが本気だしたか...
魔女の策に期待を寄せよう
C


143 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/28(火) 02:12:14 ID:5.BQABQ6


魔法使い「さて、堅牢な表面に加えて高い魔法耐性、正攻法じゃまず無理だよ。 だから君の魔法を使う」

勇者「火力が足りないぞ?」

魔法使い「僕が魔力と術式を担当するよ、君はただ雷の精霊を使役してくれればそれでいい」


 ゴーレムの閃光を避けながら説明する。

勇者「やっぱり魔法使いは頼りになるな〜」

 感心したように僕を見つめる勇者。

 あんまりみないで欲しい。


144 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/28(火) 02:12:40 ID:5.BQABQ6

勇者「時間もないし、サクッとやっちまおう」


 ゴーレムの閃光の間隔の間を縫って魔力を練る。

勇者「〜〜」

 勇者の手を握る。

 パパ以外の男性の手を握るのは初めてだと気付き、一瞬戸惑う。

勇者「〜〜」

 まぁいいか。

 誰か手を握ったのは久しぶりだ。

 思ったよりも大きくて、ゴツゴツと逞しい手だった。


145 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/28(火) 02:13:17 ID:5.BQABQ6

魔法使い「〜〜〜〜」

 勇者の魔力の流れを調整しつつ、僕の魔力を上乗せして火力を底上げする。

 更に上位の精霊を使役する為の呪文を駆使、魔法自体を高位の物に書き換える。

勇者「おぉ?」

魔法使い「集中して! 格上の精霊、しかも雷の精霊相手にしてるんだ、油断すると精神ごと灼かれるよ」


ゴーレム「グゴァアァァァ」


 感づいたゴーレム達が一斉に僕たちに紅い単眼を向ける。

勇者・魔法使い「「〜〜〜〜!!」」

 空気中の至る所で放電が起こる。

 雷雲がゴーレム達の頭上に出現。

 数瞬の後、それは空気を震わせる轟音を響かせてゴーレムを呑み込んだ。


146 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/28(火) 02:13:45 ID:5.BQABQ6

 見る者の魂を灼き尽くす気高き雷。

 勇者のみに与する自然界で最も鋭き刃を持つ精霊の一撃。


 それがゴーレムの堅牢な外皮を貫き内部を焼き尽くす。


勇者「すげぇ……」


魔法使い「これが本来の威力なんだ。 それより」


 ゴーレムの残骸が転がる祠の奥、台座の向こうの扉がひとりでに開いた。

勇者「ん?」

魔法使い「いつまで手を握っているのかな?」

勇者「お、悪い悪い」


 離された手を見つめる。

 悪い気は、しなかった。


147 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/28(火) 02:14:59 ID:5.BQABQ6


 祠の奥にあったのは妖精の村に伝わる宝剣だった。

 淡い光を放つ神秘的な剣を自慢げに背に負って歩く勇者をぼんやりと眺めながら歩く。

勇者「あぁ、そういやごめんな」

魔法使い「?」


勇者「任せろって大口叩いた割に俺一人じゃ何も出来なかった」


魔法使い「あぁ、別に気にしなくて良いよ。 だって」


勇者「?」

魔法使い「仲間なんでしょ?」

 うん。 まぁ。


148 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/28(火) 02:15:22 ID:5.BQABQ6



勇者「魔法使い!」


魔法使い「!!」

 え、あ、ちょ?

 勇者に抱きしめられた?

魔法使い「〜!!」

勇者「熱っ!?」

 やっぱり嫌いだ!!

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―――――――――


149 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/28(火) 02:17:02 ID:5.BQABQ6
―――――――――――
――――――――


魔女「とまぁこんな感じかな。 少年?」


 断言します。

 僕は勇者って人が嫌いです。

少年「へぇ〜」

 はい。 嫉妬です。 それがなにか?

 魔女が嬉しそうな顔で勇者の話をするのはどうにも胸が疼きます。

少年「魔女は勇者って人の事好きだったの?」


魔女「ん〜どうだろうね?」

 魔女が唇を少しだけ歪める笑い方をして言いました。


 多分僕の感情を理解した上で、意地悪をしているんでしょうね。


150 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/28(火) 02:17:14 ID:5.BQABQ6


魔女「僕より僧侶が勇者に対してはご執心だったみたいだよ? 二人の出会いは聞いてないからわからないけど、それなりに特別な物だったらしい」


少年「勇者は僧侶と結ばれたの? あ、でも建国話では異国の姫と国を作ったって」


魔女「うん、残念ながら実らなかったんだ。 色々あったのさ」


 余計に勇者が憎らしくなりました。

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――――――――――――――


152 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/08/28(火) 03:54:29 ID:QbuKFfBc
魔法使いの、パパ発言にちょっと笑ったw


154 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/08/28(火) 06:04:19 ID:1pEwaEBg
少年の反応がいちいち可愛いな
つC



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