■戻る■ 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その39
- 402 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2012/06/04(月) 17:55:46.85 ID:H7Cy52Ruo
〜魔王城、正門前〜
男隊員「……」
ハヌマーン「そろそろ休んだらどうだ?」シュバッ
男隊員「ヒャハハ。お気遣いありがてぇが、俺らの腕の見せ所なんでね」
ハヌマーン「む、そうか」
男隊員「戦いも終わったんだ。アンタらこそもう帰っていいんだぜ?」
ハヌマーン「……そうだな。念のため動きを探ったが、何事もなさそうだ」
男隊員「ご苦労さん」
ハヌマーン「では、男場に甘えるとしよう」
男隊員「……なぁ」
ハヌマーン「何だ」
男隊員「アンタはどうして、人間に手を貸そうと思ったんだい?」
ハヌマーン「主であるスグリーヴァ様がそうなされたからだ」
男隊員「じゃあなんで、スグリーヴァさんは人間に手を貸したんだい?」
ハヌマーン「人間が好きだからさ」
- 403 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/04(月) 17:56:46.32 ID:H7Cy52Ruo
男隊員「……?」
ハヌマーン「あの方は、ここが我らの居るべき所ではないと分かっておった」
男隊員「……」
ハヌマーン「南方は平和であったであろう?」
男隊員「あ、ああ」
ハヌマーン「スグリーヴァ様はずっと、見守っておったのだ」
男隊員「……っ」
ハヌマーン「魔王に等しい力を持ちながら魔王に反逆し、ずっと牽制してきた」
男隊員「ラーヴァナを、か?」
ハヌマーン「だからこそ南方は、此処とは違い、平穏であった」
男隊員「……何でそこまでする必要があったんだ?」
ハヌマーン「……それが主と、彼の約束だからさ」
男隊員「彼? 誰かとの約束だったってのか?」
ハヌマーン「古い話だ。もう何百年と前の古い、な」
男隊員「……そうだったのかよ」
- 404 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/04(月) 18:00:41.13 ID:H7Cy52Ruo
ハヌマーン「……それじゃ、失礼致す。世話になった」
男隊員「あ、おう。こっちこそな……ヒャハハ」
ハヌマーン「……では」
男隊員「あのよっ、最後に1つ!」
ハヌマーン「……?」ザッ
男隊員「その、彼ってのは……どんな奴だったんだ?」
ハヌマーン「お主らのように熱き魂を持った男さ」
男隊員「……今も、その子孫とか……いんのか?」
ハヌマーン「さあ」
男隊員「……そっか」
ハヌマーン「……華を咲かせた」
男隊員「えっ?」
ハヌマーン「では、御免」ヒュバッ
ヒュウウウウゥゥゥゥ
男隊員「……さーて、もう一仕事頑張るかねぇ。ヒャハハ!」
- 405 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/04(月) 18:01:39.19 ID:H7Cy52Ruo
…
オーク「うぅー。痛いです」
ラクシャーサ「ガマンしろよ。痛いのはみんな一緒だっつーの」
ガーゴイル「でもこれでゆっくり休めるジャン」
ハヌマーン「待たせた」ヒュバッ
オーク「ハヌマーン! おかえりですー」
ハヌマーン「済まぬが、皆は先に戻っててくれないか?」
ラクシャーサ「へ?」
ハヌマーン「少し立ち寄る所があってな。オーク、お前も一緒に来るが良い」
オーク「えっ!? は、はいです」
ガーゴイル「んじゃー先に帰るよ」
ゴブリン「帰る帰る! 疲れた!」
ラクシャーサ「……何だか知らんけどちゃんと帰ってこいよな」
ハヌマーン「ああ。すぐに戻るさ」
オーク「それじゃ、また後でです!」
- 406 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/04(月) 18:02:22.01 ID:H7Cy52Ruo
〜北関〜
サモナー「はー飲んだ飲んだ。久々にこんな楽しんだよ」
召喚士「それは何よりです」
左翼長「おーい。そろそろ切り上げんぞー」
魔道士「えぇ〜? もうですかぁー?」
ジュニア「身体も癒えてないんだし、ゆっくり休む事だ」
魔道士「ちぇー」
ジュニア「なんなら魔道士ちゃん、一緒に寝る――」
大軍師「ジュニア殿、ちょっと宜しいですか?」
ジュニア「…………」スクッ
朱雀嬢「あなたはまた食べ過ぎてぇ〜!」
玄武娘「う、動けないですの……」
サモナー「あははっ。それじゃ僕も休ませて貰おうかな」
召喚士「お疲れ様でした」
サモナー「うん。召喚士くんも本当にお疲れ様。それじゃ」ザッ
- 407 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/04(月) 18:03:20.29 ID:H7Cy52Ruo
召喚士「……」
戦士「……サモナーさん」
召喚士「うん……っ。もう、自分が長くない事……分かってるんだろうね」
戦士「最後の晩餐ってやつか」グビ
召喚士「やめてくれよ……そんな言い方」
戦士「……悪い」
朱雀嬢「あ、ところで朱雀先生」
召喚士「はい?」
朱雀嬢「戦場に居た謎の朱雀召喚士、ご存じでして?」
召喚士「へ……っ?」
朱雀嬢「やはり存じあげませんかしら」
召喚士「朱雀……召喚士……?」
玄武娘「あれはきっと朱雀先生ですのー」
朱雀嬢「朱雀先生ならここに居るわよ」
玄武娘「違うですのー。前の朱雀先生ですのーうっぷ……」
- 408 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/04(月) 18:04:24.03 ID:H7Cy52Ruo
召喚士「!?」
朱雀嬢「こらっ!! 吐くんじゃありませんわ!!」
玄武娘「うぅ……出てきそう……ですの……」
朱雀嬢「きゃーっ! ほらっ、こっちこっち!」
タッタッタッ……
召喚士「前の朱雀……っ」
戦士「何言ってんだアイツら……」
白馬騎士「私も見ました。朱雀を使う召喚士を」
召喚士「白馬騎士さんもですか!?」
戦士「どっ、どんな奴だったんだ?」
白馬騎士「そうですね、中年の男で……かなりの使い手でした」
戦士「中年……同門じゃねぇな」
召喚士「ま……さか……っ」
白馬騎士「気になるようでしたら、他にも目撃者は居ると思いますよ」
召喚士「……っ」
- 409 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/04(月) 18:32:46.23 ID:H7Cy52Ruo
こうして先の大戦における祝賀会はひっそりと幕を閉じた。
戦士「んじゃ、俺も戻るわ」
召喚士「うん。ていうか、足引き摺ってるけど、どうかしたの?」
戦士「筋肉痛っぽい。今までなった事ねーのに……年かなぁ」
召喚士「戦士ももう30過ぎたもんね」
戦士「うるせー! お前だってアラサーだろ!」
召喚士「あははっ。それもそうだ」
戦士「んじゃお休みー。また明日なー」
召喚士「うん、おやすみ」
スタスタスタ……
召喚士「もうそんなになるんだよなぁ……」
闇夜の中、1人佇む召喚士。
召喚士「初めて北関で……こうやって飲み明かして……っ、天才さ……ん……」
思いを馳せる程、涙はとめどなく溢れ出してくる。
召喚士「天才さんが死んだ……っ。眼鏡さんも……ウィッチちゃんも……っ」
- 410 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/04(月) 18:33:17.73 ID:H7Cy52Ruo
思えば、行く先々で出会い、そして別れがあった。
召喚士「うぅ……っぐ」
海峡で短髪らと出会い、分かれた。遺跡で剣士らの仲間と出会い、分かれた。
北方でお父や司令と出会い、分かれた。南方でスグリーヴァや南西砦長と出会い、分かれた。
東方で武士や五忍と出会い、分かれた。西方で神官や踊り子と出会い、分かれた。
南西国で騎都尉や兄者らと出会い、分かれた。本国で隊長らと出あい、分かれた。
鉱山で眼鏡らと出会い、分かれた。師匠と出会い、分かれた。父と出会い、分かれた。
召喚士「……う……ぅ」
数多くの大切な人達を失った。それでも召喚士には、数多くの大切な人達がいた。
召喚士は決めた。もう泣かない、いや泣けない。泣いている暇はない。
最後の戦いを控え、召喚士は真なる覚悟を決めた。今までにない覚悟。
それは死んでも仲間を守るなどという生半可なものではない。
自分も生きて、誰も死なせない。全てを守り勝ち抜くという意思。
容易ではない。皆無に等しい。それは百も承知。それでも秘めたる覚悟。
奇跡への序曲はゆっくりと今、始まりつつあった。
- 411 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/06/04(月) 18:33:49.80 ID:H7Cy52Ruo
きょうはひとまずここまでです。お疲れ様でした!
本日もご支援ありがとうでした!それではまた!ノシ
- 415 名前:NIPPERがお送りします(長屋) [sage] 投稿日:2012/06/04(月) 19:12:41.13 ID:prChHfKFo
すごく面白いよ
召喚士から人がどんどん離れていく描写もなかなか
- 416 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/06/04(月) 20:48:52.36 ID:XUOjHHXDO
いちょつ
最後主人公でもないやつが締めるなんて…
- 417 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/06/04(月) 22:08:07.00 ID:pAHAKVw0o
素質があるんじゃないかって話してたけど
とうとう召喚士も魔法使いになったか
- 423 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/05(火) 17:59:54.64 ID:KzV+fqvvo
〜北の港、高台〜
オーク「ここは?」
ハヌマーン「もうじき着く。それよりも……」
オーク「……?」
老人「……」ジロジロ
女「ねぇ、あれって魔物……」
男「行くぞ」
ハヌマーン「しっかりと顔を隠さぬか。馬鹿者」
オーク「えぇ〜っ、ハヌマーンだって……」
ハヌマーン「私はほら、この通り――」
従者「どうなさいました?」
オーク「ひえっ!!」
ハヌマーン「おぉ、これは。オーク味方だ、安心せい」
オーク「あ……っ、ここっ、こんばんはです!」ペコリ
従者「どうぞ、こちらへ」
- 424 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/05(火) 18:00:40.91 ID:KzV+fqvvo
〜名士の家〜
従者「どうぞ、お入り下さいませ」
ハヌマーン「失礼」スッ
オーク「へぇ、ここが名士さんの家かぁ」
ハヌマーン「名士殿はどちらに?」
従者「庭におられます」
テクテクテク……カラッ
従者「お客様です」
名士「ん? おお、ハヌマーンか」
ハヌマーン「突然のご訪問、誠に失礼を致しまする」
名士「構わぬ。楽にしてくれ」
ハヌマーン「しかし……」
名士「私はもう眷属でも何でもない。ただの隠居だ」
ハヌマーン「……」
名士「さあこちらへ。茶でも振る舞おう」
- 425 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/05(火) 18:01:23.20 ID:KzV+fqvvo
…
オーク「わぁ、いい匂いです」
名士「そうであろう? まぁ人間にはちと、きつい匂いかもしれぬが」
オーク「いただきますです!」ズズー
ハヌマーン「此度の事、ノーンハスヤ様のご助力、大変感謝致しまするぞ」
名士「名士で良い。その名はもう捨てたのだ」カチャッ
ハヌマーン「しかし何故、貴方様程の方があのような……」
名士「あのままでは、ベルゼブブの奴は何をするか分からなかったからな」
ハヌマーン「……」
名士「最悪、北の大地を丸ごと吹き飛ばしかねん」
ハヌマーン「そこまでですか?」
名士「グリモワールにおける奴の大罪はグラトニー(暴食)。奴は全てを食らうよ」
ハヌマーン「……成程」
名士「出来れば蠅の姿を成す前に始末出来ればと思ったのだが……」
ハヌマーン「成し得なかったと?」
- 426 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/05(火) 18:02:06.79 ID:KzV+fqvvo
名士「流石に魔王城と六道門は、そう易々とは突破出来ないものだね」ズズッ
ハヌマーン「……その後、ノーン――名士殿は更なるご助力を……」
名士「……何故だろうね」
オーク「……?」
名士「正直、あの状態になったベルゼブブはもうどうする事も出来なかったはずだ」
ハヌマーン「でしょうな。地上での肉体を失った核は……」
名士「地獄へ舞い戻る以外に手はなかったはずだ」
ハヌマーン「では何故、分かっていながら力を……」
名士「私も先程から自分に問いかけているのだよ。何故だろうね、と」
ハヌマーン「……」
名士「ふふっ、どうやら人間に感化されてしまったようだね」
ハヌマーン「名士殿……ッ」
名士「でも、悪くはない気分だ。今ならケルベロスや君の気持が良く分かる」
ハヌマーン「ですが、それと引き換えに貴方は……ッ」
名士「……」
- 427 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/05(火) 18:02:39.35 ID:KzV+fqvvo
ハヌマーン「貴方は大量の魔力を失った。それも、命を脅かす程の」
名士「それでも人間よりは長く生きられる。おそらくね」
オーク「えっ? ど、どういう事……です?」
名士「オーク、君は何が好きかな?」
オーク「オラですか? えぇと……お肉とお酒と、仲間達です!」
名士「そういう事さ。好きなものがあるから生きている。守るべきものがあるから生きるのだ」
ハヌマーン「……ッ」
名士「気に病む事はないよ。見たまえ、この庭から眺める夜空は絶景であろう?」
ハヌマーン「はい」
名士「日は暮れ、夜は明け、木々はやがて枯れる。我らとて何れは死ぬのだ」
ハヌマーン「はい」
名士「それが何時か。ただそれだけの事。そこにまもるべきものがあれば、それで良いのだ」
ハヌマーン「……はい」
名士「今日は訪ねてくれてありがとう。嬉しかったよ、礼を言う」
オーク「こちらこそです! お茶、美味しかったです!」
- 428 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/05(火) 18:03:32.29 ID:KzV+fqvvo
名士「またいつでも来るが良い。茶を淹れて待っているよ」
ハヌマーン「……失礼致します」
従者「門までお送り致します」
ハヌマーン「いえ結構、お構いなく」
オーク「それじゃ失礼するですっ!」
テクテクテク……
従者「……」
名士「どう思う?」
従者「彼ら、ですか? なかなか愛嬌のある者達ですね」
名士「頼もしいと思わんか?」
従者「どうでしょう。私には計りかねます」
名士「彼らのような者らが居るからこそ、私やインドラは決めたのかもしれない」
従者「……ッ」
名士「我らだけではない。スグリーヴァもきっと、そうなのであろう」
従者「しかしっ、名士様はまだ地上にご必要な方です……ッ」
- 429 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/05(火) 18:04:31.76 ID:KzV+fqvvo
名士「魔王はもうじき滅ぶ。さすれば私も不要の存在さ」
従者「そんな……」
名士「忘れたか? アンラ・マンユは消滅したのだ。この地上からな」
従者「……ッ」
名士「根源を失った私の魔力、肉体は何れ滅する。それが早いか遅いかだけの話よ」
従者「そう、でした……」
名士「何だろう、ここ数年間は今までの何百年間よりもずっと、密であるな」
従者「はい」
名士「私は光栄に思うよ。この刻に居合わせた事を」
従者「はい。私もです」
名士「そして……。おっと、茶が冷めてしまった。淹れなおしてくれないか?」
従者「畏まりました。直ぐに」ススッ
テクテクテクテク……
名士「本当に、素晴らしい景色だ」
次へ 戻る 戻る 携 上へ