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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その39
657 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 17:52:28.54 ID:TScfHZbbo
〜東方、藤蔵〜

 ドドッドドッドドッ……ザザァ

盗賊「着いた」

くの一「……」

盗賊さ、行こう」スタッ

くの一「はい」ザッ

盗賊「少し離れているといい」

くの一「……?」

盗賊「来たっ」

 シュバババッ!! ズザザァ!!

くの一「――!?」

盗賊「はあぁーっ!!」

 キィンキィンキィンッ!! バシュシュシュッ!!

盗賊「……ふーっ」

くの一「な、何事……?」


658 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 17:53:03.84 ID:TScfHZbbo
盗賊「なかなか腕を上げたな。しかし、いい加減に気付いて欲しいものだ」カシャン

下忍「……姫っ!?」

盗賊「ご苦労。道を開けてくれ」

下忍「こっ、これは失礼を……っ!」ズザザッ

盗賊「行こう」

くの一「……っ」

 ザッザッザッ

くの一「警備の者、ですか? 以前とは人が違ったような……」

盗賊「……ああ。警備などもはや無用であると言うのにな」

くの一「……」

盗賊「仕事柄、そういう性分なのであろう。藤蔵はな」

くの一「……なるほど」

 ザッザッザッ

くの一「藤蔵の中へ入るのは……あの時以来か」

盗賊「ちっ! 退がれっ!」


659 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 17:53:32.91 ID:TScfHZbbo
くの一「えっ!?」

盗賊「わああぁぁーっ!!」

 タタタタタタッ……ガバァ!!

侍女「ひーめーっ!!」ムギュー

盗賊「苦しいっ! はっ、離せぇ……っ!」

くの一「……あの」

侍女「あらっ? 今日は一人じゃないの?」

盗賊「けほけほ……っ、説明も何も、出来たものじゃないよ全く……けほっ」

侍女「しかも女の子? 東方の子よね? めっずらしーっ」

盗賊「別に珍しくないだろ」

侍女「姫が連れてくるのが珍しいって事よっ」

盗賊「…………」

侍女「とりあえず入りましょっ。さぁさぁ!」

盗賊「お、押すな……たわけっ!」

くの一「し、失礼します……っ」


660 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 17:54:02.58 ID:TScfHZbbo


侍女「……よっし! いいじゃなーい! 似合ってるわんっ♪」キュッ

くの一「ありがとう……ございます……」

侍女「ていうか、あの時のお嬢さんだったのねぇ。言ってくれればいいのに〜……」ジロジロ

くの一「……っ」

侍女「……結構可愛いじゃないの」

くの一「へぇっ!?」

盗賊「遊んでないで行くぞ。お館様は自室か?」スッ

侍女「あら、構って貰えなくて妬いてるみたい。うふふっ」

 ドゴッ!!

盗賊「早くしろ!」

侍女「冗談なのに……っ」サスサス

くの一「……ぷっ、くふっ!」

侍女「あっ! やっと笑ってくれた〜。うふふふっ!」

盗賊「……ふっ」ニコッ


661 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 17:55:35.71 ID:TScfHZbbo
〜御館様の部屋〜

侍女「失礼致します」スッ

御館様「……盗賊か」

侍女「如何にも。お通し致します」

 スススッ

盗賊「失礼致しまする」ススッ

御館様「もう一人、客人がおるようだな」

盗賊「……入れ」

くの一「はい」ススッ

御館様「此度は何用じゃ」

盗賊「……ご報告したき事が御座いまして」

御館様「申してみよ」

盗賊「はっ」

くの一「……」

盗賊「……兄様が……逝きました」


662 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 17:56:10.74 ID:TScfHZbbo
侍女「――!!」

御館様「……そうか」

盗賊「ようやく不死の身より解放され、人として……逝きました」

侍女「そ……んな……っ」

御館様「見届けたのか? 貴様はその目でしっかりと」

盗賊「はい。見届けました」

御館様「ならば良い。ご苦労であった」

盗賊「……はっ」スッ

御館様「それで、話はそれだけか?」

盗賊「……実は、このくの一を藤蔵に置いては頂けませぬか?」

御館様「……」

盗賊「くの一は影、唯一の生き残りです」

御館様「……」

盗賊「影は彼女を残し、滅びました。その償いは藤蔵にもあると思います。ですからっ――」

御館様「今現在、藤蔵には余裕がなくてな」


663 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 17:58:01.83 ID:TScfHZbbo
盗賊「――!?」

御館様「経済的な話ではない。人員の話だ」

盗賊「え……っ?」

御館様「先の戦にて五忍が逝き、見たであろうが下忍が警備をする有様だ」

くの一「……っ」

御館様「もし忍の心得がある者が居るのならば、藤蔵としても助かるというもの」

盗賊「そ……それじゃあ……」

御館様「それに、奴とも約束した事だしな」スクッ

盗賊「!?」

御館様「侍女、後は貴様に任せるぞ」

 スタスタスタ……

盗賊「……父様……っ」

侍女「良かったわねぇ、くの一ちゃん!」

くの一「……私……私……っ」

盗賊「気にしなくていい。君は今日から藤蔵のくの一だ、宜しくな」


664 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 17:59:02.56 ID:TScfHZbbo


 ザッザッザッ……

御館様「……逝ったそうだ」

 線香が立ち上るその部屋は、寺の本堂のような光景であった。

御館様「……」

 正面に座する仏像の前に対面して座する御館様。

 その間には、法名の書かれた幾つかの位牌が並んでいた。

 その中央にある古びた位牌に、御館様は続けて話しかける。

御館様「そっちで面倒を見てやってくれ。久々に、親子水入らずで過ごすと良い」

 言い終えると、中央の古びた位牌から今度は周囲を守るように取り囲む、

 五つの綺麗で新しい位牌へと目線を移す。

御館様「そっちは賑やかになるな。その代わり此方は、寂しいものだ」

 彼の心にはある一つの思いがあったが、それは全てを見届けてからと決めていた。

 御館様の清々しくもどこか寂しげな表情は、それを現すものなのか。

 立ち上る線香がゆらゆらと、慰めるように漂った。


665 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:00:25.20 ID:TScfHZbbo


侍女「えっ!? もう行くの……?」

盗賊「まだ全てが、終わったわけじゃないから」

侍女「そう……」

盗賊「それじゃ、行ってくる」ザッ

侍女「……姫っ!!」

盗賊「ん?」

侍女「頑張ってっ! 必ず、帰ってくるのよ!」

盗賊「うん。分かってる……ありがとう」

くの一「祈ってます。皆の無事を」

盗賊「藤蔵を、宜しくな」ザッ

 パッカパッカ……ドドッドドッドドッ……

侍女「……っ」

くの一「代わりなんて出来ない。けれど、出来る事は何でもします……っ!」

侍女「……ありがと。今はあなたという存在だけで、藤蔵にとっては十分よ」


666 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:01:48.79 ID:TScfHZbbo
〜次の日、北関〜

 ザバアアァァァァ!!

戦士「くぅ〜っ!」バシャバシャッ

ドクター「痛みなどは、どこにもありませんか?」

戦士「ああ。少し筋肉痛が残ってるくらいのもんだ」

ドクター「良かった。それならばもう大丈夫でしょう」

戦士「まさか完治に丸3日も費やすとは思わなかったぜ……」

ドクター「全くですね。私も初めての症状でしたよ」

戦士「今後の医療にお役立ちするかい?」

ドクター「ははっ。そうかもしれませんね」

戦士「……ぷはぁ。やっと身体も洗えたし、あとはたらふく食って飲んでやる!」

ドクター「召喚士さん達はまだ戻ってこないのですか?」

戦士「ああ。各自、色々とあるしな」

ドクター「そうですか」

戦士「さ、メシメシ! 腹減ったぁ〜」


667 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:02:47.72 ID:TScfHZbbo


戦士「いただっきまーす!!」カチャッ

ドクター「なるほど。ご家族に会いにですか」

戦士「そういう事っ。うんめぇ〜!」モグモグ

ドクター「確かに医者の立場からしても、それは推奨したいところですね」

戦士「うん?」モグモグ

ドクター「臨終の際、1番に後悔する事と言えば、家族や親しい人との事ですから」

戦士「……」モグモグ

ドクター「死ぬ前に会いたかった、和解したかった……そう言った事が多々あります」

戦士「なるほどな」

ドクター「戦士さんはいいんですか?」

戦士「あー。うちはおふくろは死んだし、親父はどうせまた会うだろうし」

ドクター「……?」

戦士「このままのうのうと過ごすタマじゃねぇしな。サタン戦にも出張るに決まってる」モグモグ

ドクター「……は、はぁ」


668 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:03:23.05 ID:TScfHZbbo
戦士「……でも、そうだな。確かに最後にきちんとケジメはつけるべきか」

ドクター「えっ?」

戦士「いや、何でもない。ごちそーさんでした!」カチャッ

ドクター「戦士さん」

戦士「んー?」

ドクター「異変を感じたらすぐに知らせて下さいね。本国の病院に戻ってますので」

戦士「おう、サンキュー!」

 ザッザッザッ

戦士「さーてと、俺も行くか」

将軍「そこでいいぞ、よし……そのまま降ろせ」

戦士「おっ、ご苦労様です」

将軍「戦士か、もう具合は良いのか?」

戦士「おかげさんで。これ何すか?」

将軍「北からの輸送物資だ」

工兵「あっ! 戦士さん、ちょうど良かった!」ザッ


669 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:03:57.42 ID:TScfHZbbo
戦士「あん?」

工兵「鉱石、見つかりましたよ!」

戦士「本当かっ!?」

工兵「ええ。鍛冶娘から伝言で防具はここに置いていけって」

戦士「分かった! 頼むぜ!」

工兵「ういっす」

戦士「よーし……っ、これで五行全てが揃った……っ!!」

将軍「しかしあれじゃないのか? その五行全てを使う事になれば……」

戦士「……もちろん俺自身もタダじゃあいかんだろうな。でも、いいんだ」

将軍「……?」

戦士「死ぬつもりなんて毛頭ないけど、そんぐらいの覚悟はしないと倒せねぇ」

将軍「サタン……そうやもしれぬな」

戦士「んじゃ、俺行くわ。お世話になりました」ペコッ

将軍「行く? 皆を待たなくて良いのか? そもそもどこへ……」

戦士「へへっ。まぁ色々とね!」


670 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:06:41.37 ID:TScfHZbbo
〜大商家の家〜

魔道士「それじゃ、行ってくるね」

母「魔道士、これ持っていきなさい」スッ

魔道士「お守り?」

母「そうよ。これで何かあるわけじゃないけど、私の願いを込めて作ったの」

魔道士「お母さん……! ありがとう……っ」ウルッ

大商家「朱雀先生、魔道士を頼みます」

使い「お嬢さんを頼みます!」

召喚士「わ、分かりました……っ」

魔道士「召喚士さん、行きましょう」

召喚士「お世話になりました。それでは、失礼致します」

大商家「全てが終わったらまた、その時に」

召喚士「……はい」

魔道士「へっ?」

召喚士「さぁ、行きましょう! ははは……っ!」


671 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:08:25.55 ID:TScfHZbbo
 満月の夜まで残り13日。各地では束の間の時間を各々が過ごしていた。

マジシャン「……」

 手にした小さな肖像画。そこには仲睦まじい男女と、その手に抱えられた赤子が描かれている。

……――

師匠『あと2週間足らずだ。悪いが俺は瞑想に入る』

バーテン『2週間も瞑想すんのか?』

師匠『そこの仙人だよ。生活の中に取り込むって話だ』

戦士父『どうするつもりだ?』

師匠『自分ちに帰る。邪魔すんなよ』

マジシャン『……』

師匠『安心しろい。期日までにはちゃーんと戻るって』

マジシャン『んじゃ、俺はどうしようかねぇ』

師匠『分かれた女房のツラでも拝んで来たらどうだ?』

マジシャン『今更んな真似、出来るかっつーの……ハッハ』

――……


672 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:09:04.74 ID:TScfHZbbo
 ガチャッ

マジシャン「――っ!?」

――「やっぱりここに居ると思ったぜ。ハッハ」

マジシャン「……ジュニア」

ジュニア「にしても……その様子から見ると、居合わせたのはたまたまだったかな」

マジシャン「何か用か?」

ジュニア「……」

 ザッザッザッ……ピタッ

ジュニア「次のサタン戦、生き抜く保証はねぇ。その前にどうしても聞きてぇ事がある」

マジシャン「……」

ジュニア「……おふくろに会う気は……ねぇのか?」

マジシャン「……」

ジュニア「おふくろはなぁ、今でもあんたの事を――」

マジシャン「悪いが、俺はお前らを捨てた。それだけだ」

ジュニア「――っ」


673 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:09:57.18 ID:TScfHZbbo
マジシャン「今更あいつに会おうなんて気は、さらさらないね。ハッハ」ザッ

ジュニア「……っ」

マジシャン「分かったら出ていけ。行かんなら俺が出てくぞ」

ジュニア「何なんだよっ!!」

マジシャン「……」

ジュニア「おふくろはなぁ……っ、今でもあんたの帰りを待ってんだぞっ!!」

マジシャン「……」

ジュニア「あんただって、おふくろの事……気にかけてるからこそ、仕送り続けてたんだろ!?」

マジシャン「……」

ジュニア「理由があったんだろ!? だったら何でなんだよっ!!」

マジシャン「理由はどうあれ、俺はお前らを捨てたんだ。それに変わりはねぇのさ」

ジュニア「それでいいのかよっ!! 何とも思わねぇのかよ!!」

マジシャン「――っ」

 ダァン!!

マジシャン「思うさっ! 思うからこそ……会えないんだろうがっ」


674 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:11:56.53 ID:TScfHZbbo
ジュニア「っ!!」

マジシャン「いいかジュニア、俺は決してお前らを見捨てたわけじゃない」

ジュニア「だったら――」

マジシャン「だからこそ会えない時だってある」

ジュニア「!?」

マジシャン「知っての通り、ワーカーは常に死と隣り合わせだ」

ジュニア「……」

マジシャン「もし迷いが生じ、自分の命を優先すれば、多くのものを失う可能性だってある」

ジュニア「そりゃ……でもっ」

マジシャン「場合によっちゃ、世界を滅ぼす羽目にあうかもしれん」

ジュニア「じゃあ、あんたは覚悟を……だから家族を……」

マジシャン「本来、あっちゃならねぇんだろうけどな。でも、それだけ愛していたんだ」

ジュニア「……っ」

マジシャン「だからこそあいつの希望を叶えてやりたかった」

ジュニア「希望……?」


675 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/15(金) 18:17:06.89 ID:TScfHZbbo
マジシャン「子供だよ。つまりは、お前さ」

ジュニア「――っ!!」

マジシャン「だがな、妻と息子という宝を得ちまった俺は……覚悟が薄れちまったのさ」

ジュニア「……っ」

マジシャン「情けねぇ話だよ全くもってなぁ……ハッハ」

ジュニア「……いいのかよ」

マジシャン「あん?」

ジュニア「会わなくて、いいのかよ……っ」

マジシャン「……悪いがよ、俺はお前と違う」

ジュニア「!?」

マジシャン「サタンだろうが何だろうが、死ぬつもりはねぇ」

ジュニア「――っ!!」

マジシャン「生きて帰ればいい。それだけの話だろ……ハッハ」

ジュニア「じゃあ、生きて帰って……」

マジシャン「そん時は親子3人、再会といこうじゃないか。ハッハ!」


678 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/06/15(金) 18:55:20.65 ID:9utGATbXo
>>1乙!マジシャン絶対生きて帰れ!!


679 名前:NIPPERがお送りします(大阪府) [sage] 投稿日:2012/06/15(金) 19:03:15.35 ID:TgLkxOUbo
死亡フラグビンビンじゃないですかぁ・・・


684 名前:NIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2012/06/16(土) 01:18:33.12 ID:8EAXZlJAO
>>1おつ

マジシャン隻腕でボロボロのくせに無茶しやがって


686 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/06/16(土) 13:54:09.34 ID:ibtsMiCIO
マジシャン死亡フラグ立て過ぎて[ピーーー]ないだろwwww



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