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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その29
933 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:41:21.81 ID:E3KXbq/ro
ドドドドドド…

男隊員「あー疲れた……。やっと終わったわ」

女隊員「もうボロボロッスよ……」

男隊員「……ったく、ほれ、掴まれ」

女隊員「助かるッス」

ギュッ…ザッザッザ

幼女「はぁ……はぁ……」

剣士「幼女、弓使い、大丈夫?」

弓使い「ええ……。でももう、戦えないわよぉ」

剣士「大丈夫、もう終わったんだ。さぁ戻ろう」

弓使い「ええ。あら、弓が……」

幼女「あそこに落ちてるよ」

剣士「本当だ。取ってくるから先に行っててくれ」

弓使い「ふふっ、ありがと。それじゃ幼女、行きましょうか」

幼女「うんっ!」


934 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:43:00.28 ID:E3KXbq/ro
ゴゴオオォォォォ

サモナー「……」

魔王を倒した歓喜の声、友を失った哀愁の声、戦いの終わりを表現する様々な声。

その中で、サモナーは1人、無言で立ち上る白い光を見つめていた。

サモナー(……おかしい)

最後まで魔王の防衛にあたっていたサモナーは、どこか腑に落ちず疑問を抱いていた。

しかしそれが自身にとっても久し振りの戦闘であったからなのか、確信はなかった。

サモナー「……」

マーメイド「サモナー?」

サモナー(気配は感じない。しかし、最後の最後で手ごたえが全くなかった)

マーメイド「……みんな、戻ったわよ?」

サモナー(何か、透かされたような……そんな感じが……)

マーメイド「サモナーってば……っ!」

サモナー「あぁ、ごめん。行こうか」

その場より引き揚げる召喚獣と主。しかしその目からjは警戒を怠る事はなかった。


935 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:43:57.47 ID:E3KXbq/ro
オオォォォォ…

天才「……」

皆が南西砦側へ歩く中、天才は1人、火口側へと足を進めていた。

騎兵「し、司令……?」

天才「ほれほれ、お前らも早く戻れ。みんな行っちまうぞ?」

魔道兵「は、はいっ!」

ザッザッザッザ

サモナー「……」

天才「……」

すれ違い様、サモナーは天才へ1つ頭を下げ、その場を通り過ぎようとする。

両者は面識もなく、特にどういう立場の人間かお互い把握はしていない。

サモナーも相手が国軍の総司令官だとは露知らず、軍人姿の青年に労うつもりで

会釈をしただけの事であった、だが、その軍人は唐突にサモナーを呼び止める。

天才「アンタさ、何か気付かなかったか?」

サモナー「!?」


936 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:45:21.55 ID:E3KXbq/ro
天才「多分だが、この中で俺様とお前しか気付いてないんじゃないかねぇ」

サモナー「……」

天才「確かに戦いは終わった。俺らの勝ちだ。だが、まだ倒してはいない」

サモナー「あの……」

天才「最後まで至近距離にいたのはお前とお前の召喚獣だ」

サモナー「……やはり、そうなのでしょうか」

天才「……」

サモナー「最後の瞬間、何か力を抜かれたような、そんな感じがありました」

天才「ほぉ」

サモナー「押していたものを急に、すっと引くような……肩透かしを食うような……」

天才「そんな感じだったんだな?」

サモナー「え、ええ……っ」

天才「お疲れさん。その辺に転がってる奴らまとめて、先に戻ってくれや」

サモナー「……?」

そのまま火口へと向かう天才の後姿を、サモナーは黙って見つめていた。


937 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:46:24.74 ID:E3KXbq/ro
ザッザッザッザ

隊長「司令?」

天才「おーう、全員撤収だ。退け退け」

隊長「司令はどちらへ?」

天才「最終確認だ」

隊長「ならば、動ける者らを……」

天才「そんな奴はほとんどおねーだろ。いいから無理すんじゃねぇって」

隊長「……っ」

天才「ちゃっちゃと宴の用意でもしておけや」

隊長「……帰還するぞ」

ザザッ

天才「朱雀」

召喚士「!?」

天才「お前、あと何回いける?」

召喚士「……えっと、召喚獣ですか? コカトリスだとして1回撃てるかどうか……」


938 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:47:22.71 ID:E3KXbq/ro
天才「……一応そこにいてくれ」

召喚士「……?」

ザザッ…ザッザッザ

天才「……」

天に昇る白い柱は今なお勢い弱まる事なく、輝きを見せている。

魔道士「天才さん、どうしたんでしょうか?」

召喚士「……まさか」

天才「あん?」

ゴッ…ドドドドドド

天才「何か……いるっ!!」

召喚士「コカトリス!!」

シュイイィィィィン…ゴゴウッ!!

まさに一瞬であった。天才はツヴァイハンダーを振り上げると、それを降ろす間もなく、

光柱の中より伸びた影に弾き飛ばされた。

バッキャアアァァァァ!!


939 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:48:13.71 ID:E3KXbq/ro
天才「――!?」

更に援護に入るコカトリスが嘴を大きく開けた瞬間、身体ごと地面へと叩きつけられる。

バッゴオオォォォォ!!…ゴシャアアァァァァ!!

召喚士「ぐっ!」

魔道士「召喚士さんっ!?」

召喚士「大丈夫……っ、消失はしていません!」

天才(明らかに1撃目と2撃目で攻撃が違う……っ)

ズザザザザッ…ドシャアァ

天才「……ってぇな畜生」

光の柱は徐々に細くなり、輝きは天へと昇っていった。

オオォォォォ…

魔道士「!?」

召喚士「……子……供!?」

天才「あれはドラゴンか……? くそっ、随分とまたバカでかいもんだ」

少年なのか少女なのか、中世的な子供が1人と翼竜が姿を現した。


940 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:48:45.87 ID:E3KXbq/ro
バシュウウゥゥゥゥ!!

――「ゴガアアァァァーッ!!」

大軍師「何事です!?」

皇太子「魔物……っ!? 何だあれは……っ」

マーマン「お、おい……あれ……っ」

ハヌマーン「……アジ・ダハーカ!!」

空を羽ばたく竜は大型のドラゴンよりも更に巨大な、そして獰猛な姿。

更に地上では小さな子供が不気味に微笑んでいる。

召喚士「……っ」

――「まさか、僕がここまで追い詰められる事になるとはね」

召喚士「……!?」

天才「離れろっ! そいつが魔王だ!」

召喚士「――っ!!」

アンラ・マンユ「僕がここまで……」

天才「ちっ!!」


941 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:49:56.04 ID:E3KXbq/ro
召喚士の前に立ちはだかる子供めがけ、天才は大剣を振り上げ飛び掛かる。

ガシィ!!

天才「――!?」

アンラ・マンユ「魔力は失った。だが、力が衰えたわけではない」

天才「な……にぃ……」

ググッ…

ただ無邪気な子供のような外見からは想像もつかぬような、

片手で天才の顔を掴み、持ち上げると、そのまま地面へと叩きつける。

ゴッシャアアァァァァ!!

アンラ・マンユ「……」

天才「……ぐっ」

更に無抵抗な天才をそのまま上空へと放り飛ばした。

ブンッ

魔道士「天才さんっ!」

天才「こっちに構わず魔王を討てぇ!!」


942 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:51:09.07 ID:E3KXbq/ro
バッギャアアァァ!!…ズドオオォォォォン

宙へと投げ出された天才は、そこで待ち構えるアジ・ダハーカの鋭い爪に弾かれ、

火口脇の岩壁へと打ち落とされた。

魔道士「あ……ぁ……」

アンラ・マンユ「分かるか?」

召喚士「……っ」

アンラ・マンユ「あのアジ・ダハーカは僕の全ての魔力」

アジ・ダハーカ「グウウゥゥゥゥ……ッ」

アンラ・マンユ「アジ・ダハーカが再び僕の元へと戻れば……」

ザッ

アンラ・マンユ「僕の魔力は元通りサ」

召喚士「――っ!!」

魔道士「な、何で……っ」

アンラ・マンユ「ハハッ、簡単な話だよ。五行が直撃する前に魔力を開放したのサ!」

召喚士「!?」


943 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:52:33.25 ID:E3KXbq/ro
アンラ・マンユ「全ての魔力を盾にあてたせいで、あれっぽっちしか残らなかったけどね」

召喚士「じゃあ……次に五行をあてれば……」

アンラ・マンユ「ハハハッ! あててみなよ! 無理だからサ! ほらっ!」

魔道士「……」

アンラ・マンユ「やってみなって! その前に殺すからサ!」

バッ!!

魔道士「あぁっ!!」

アジ・ダハーカは急降下を始め、一直線にアンラ・マンユの元へと向かう。

アンラ・マンユ「さぁーっ! これで僕の魔力は再び元通りサ! ハハハハハハッ!」

召喚士「……させないさ!!」

アンラ・マンユ「あ……?」

上空を見上げ両手を広げるアンラ・マンユは、瞳を大きく見開いた。

地中から現れた召喚獣がドス黒く染まった息を吐き出し、巨大な竜は

そのまま地面へ叩きつけられるように落下したのだ。

ヒュウウゥゥゥゥ…ズッガアアァァァァン


944 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:53:57.45 ID:E3KXbq/ro
アンラ・マンユ「……」

ゴトッ…パラパラパラッ

アンラ・マンユ「……貴様」

召喚士「はぁ……はぁ……はぁ……っ」

ザッザッザ

アンラ・マンユ「貴様を殺せば、石化は解ける」

召喚士「く……っ」

アンラ・マンユ「順序が変わっただけサ。ハハハッ!」

ブワッ!!

魔道士「召喚士さああぁぁん!!」

ジャラララッ…グルグルグルッ…ガシィ!!

アンラ・マンユ「……?」

召喚士を掴みあげようと伸ばした右腕に、鎖が絡まりつく。

アンラ・マンユ「……」

クルッ…ギロッ


945 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:55:02.26 ID:E3KXbq/ro
盗賊「……させないっ」

アンラ・マンユ「馬鹿が」

グイッ!!

盗賊「!?」

鎖を引っ張るアンラ・マンユはそのまま盗賊を引き寄せ、召喚士へと叩きつける。

アンラ・マンユ「仲良く死ね」

シュバッ

戦士「こっちだ……っ!!」

アンラ・マンユ「!?」

戦士の雷切がアンラ・マンユの背中を一閃の元に振り下ろされる。

ザシュウウゥゥゥゥ!!…スタッ

戦士「召喚士っ、立てるか!?」

召喚士「戦士、盗賊さん……っ」

盗賊「魔道士、手を貸せ!」

魔道士「は、はいっ!!」


946 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:56:22.65 ID:E3KXbq/ro
ザザッ…スタッ

アンラ・マンユ「……」

戦士「魔王さん、始めましてだな!」

アンラ・マンユ「……」

戦士「お前は俺達、召喚士パーティーがカタを付けるぜ」

盗賊「……覚悟」

魔道士「みんな揃った……っ!! これなら……っ」

召喚士「……っ」

アンラ・マンユ「たった4人で僕を……僕を倒すって?」

ヒュンッ!!

盗賊「!?」

アンラ・マンユ「甘いっ、甘いんだよ!」

戦士「ちぃっ!!」

ガキイイィィィィン!!…ググググッ

戦士(……くそっ、片腕じゃあやっぱり限界が……っ)


947 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:57:21.33 ID:E3KXbq/ro
アンラ・マンユ「雑魚だな」

バギャアアァァァァ!!

戦士「がはっ!」

魔道士「戦士さんっ!」

盗賊「……しっ!」

ヒュバッ…キィン…ガキイイィィン!!…チュインッ!!

アンラ・マンユ「弱い弱い弱い! 死ね死ね死ね死ね!」

盗賊「くぅ……っ!!」

アンラ・マンユ「そうらっ、まだ逃げるか? どうした? ん?」

盗賊「……っ」

アンラ・マンユ「なんてね」

ジャリッ

天才「魔道士ぃ!! 戦士だ!!」

魔道士「!? くぅーっ!!」

天才の呼びかけに反応した魔道士は、戦士の前に土の壁を生成する。


948 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 18:58:39.31 ID:E3KXbq/ro
アンラ・マンユ「……!?」

盗賊を執拗に狙うと見せかけ、アンラ・マンユは戦士へとどめの一撃を放っていた。

天才はそれを察知し、魔道士へ防御の指示を与えたのだった。

戦士「す、すまねぇ……っ」

盗賊「掴まれ!」

アンラ・マンユ「ハハハハハハッ!!」

召喚士「駄目だっ、追いつかれる!」

戦士「盗賊!!」

ドンッ

盗賊「!?」

バゴオオォォォォン!!

盗賊「戦士ーっ!!」

アンラ・マンユの攻撃から庇うように盗賊を突き飛ばし、戦士はそのまま、

後方へと大きくその身を殴り飛ばされた。

盗賊「……っ」


949 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 19:01:51.58 ID:E3KXbq/ro
ズシャアアァァァァ

魔道士「戦士さん……っ」

召喚士「……戦士っ」

アンラ・マンユ「まだ息があるのか。何とも情けないな、我ながら」

戦士「……うぐ……っ」

グッ

戦士(ちくしょぉ……情けねーのは……こっちだよ)

グググッ

戦士(みんなが頑張ったってのに……俺はよぉ……っ)

ヨロッ

戦士「自分の手が届く……人間も守れねぇってのかよ……」

――「守ったじゃねぇか。たった今よ」

戦士「……?」

バーテン「みんな生きてる。守ったじゃねぇか……なぁ?」

戦士「バーテンの……おっさん?」


950 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 19:04:39.15 ID:E3KXbq/ro
ザッ

戦士父「……ああ」

戦士「親父……」

バーテン「あーあ……全く。武器はねぇ、魔力はねぇ……」

戦士「……っ」

戦士父「どう打破するかな。この状況を」

戦士「……?」

ザッ

戦士「……弓と……矢?」

バーテン「あん?」

フラッ…テクテクテク…ガシッ

戦士「これ……弓使いさんにあげた……」

戦士父「!?」

バーテン「……その弓!? そうか、待っててくれたんだよ……お前ら2人をよ」

戦士父「……っ」


951 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2011/06/17(金) 19:22:14.13 ID:E3KXbq/ro
それではひとまずここまでにて!
本日も沢山のご支援ありがとうございました!

誤字は本当にもうすみませんとしか…申し訳ないです…

それでは失礼致します!では!ノシ


952 名前:NIPPERがお送りします [] 投稿日:2011/06/17(金) 19:23:26.84 ID:jGgdBoB80
1乙
今日も美味しいお話有難うございます
誤字も美味でしたww


960 名前:NIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage] 投稿日:2011/06/17(金) 23:27:52.66 ID:A4ZUoppAO
ヤバい、やな予感がする…
>>1乙!



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