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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その14
- 602 : ◆1otsuV0WFc [sage saga]
:2010/05/19(水) 17:44:14.15 ID:vr5XKO.o
〜北関近くの街〜
副司令官「よし、ここらで良いだろう」
国軍兵「進軍停止ーっ!!」
ドドドッ…ザザッ…
青年兵「…?」
エリート「休憩のようだよ」
カツカツカツ
副司令官「殿下、どうぞこちらへ…」
皇太子「…別に休憩は要らぬよ。まだ大して進んでもおるまい」
副司令官「それはそうですが…今回は視察も兼ねておりますので…」
皇太子「戦だけというわけにはいかぬものよな…」
エリ−ト「まぁ…本来はこちらが殿下の業務なのですが…」
青年兵「……」
皇太子「それも…そうか。ははははっ」
エリートはがっくりと肩を落とし顔を右手で覆う。
- 603 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:44:41.40 ID:vr5XKO.o
テクテクテク…
旦那「これはこれは、副司令官様!この度もご贔屓にありがとうございます!」
副司令官「おぉ、大商人殿。世話になるぞ」
旦那「とんでも御座いません!こちらこそお陰様で…」
副司令官「うむ…。仕事の話はまた後日…」
旦那「お願いしますぞ。お陰様でこの繁盛ぶりですからな!がははは!」
副司令官「本日は皇太子殿下もお越しなのだ。話はこの辺で…」
副司令官は背後で市民に手を振る皇太子を申し訳なさそうに見る。
旦那「おぉ!そうでしたか!これはまた宣伝になりますなっ」
エリート「こちらの席で宜しいのかな?」
旦那「奥に専用の席をご用意しております!貸しきりですぞ!」
青年兵「い、いいのですか?我らだけそのような…」
旦那「良いのです!皆様あっての民ですからな!がははっ!」
皇太子「……」
大笑いする旦那の後に続き、一同が奥の部屋へと入っていく。
- 604 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:45:08.63 ID:vr5XKO.o
皇太子「こういう所は…初めてだな」
エリート「君は?」
青年兵「僕もです…。どんな所なのですか?」
エリート「歌や踊りを見ながら、食事を楽しむ…。そんな所かな」
青年兵「高級酒場のようなものですか?」
エリート「そうだね。元は東方から入ってきた文化みたいだけどね」
皇太子「……詳しいな」
エリート「あっ、いえ!よく父に連れられて…ですねっ…」
皇太子「あははっ、分かっているよ。接待も大変だね」
エリートは恥ずかしそうに顔を赤らめ、下を向く。
テクテク…
店員「大変お待たせ致しました。ご注文を伺わせて頂きます」
副司令官「コーヒー。ブラックで」
エリート「同じく」
青年兵「僕も…同じで」
- 605 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:45:40.42 ID:vr5XKO.o
副司令官「殿下もご一緒で宜しいですかな?」
皇太子「……これ」
皇太子はメニューを指差す。
皇太子「スーパー…デラックスチョコパフェ?これを一つ」
店員「畏まりました。早急にお持ちいたします」
テクテクテク…
副司令官「……」
エリート「………」
青年兵「……」
皇太子「…ん?何だ?」
青年兵「あっ、い…いえっ別に…!」
皇太子「あ、そうそう。実は一つ頼み事があるのだが…」
副司令官「何でしょうか?」
皇太子「彼、うちに貰えないだろうか?」
青年兵「えっ!?ぼ…僕ですか!?」
- 606 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:48:46.59 ID:vr5XKO.o
青年兵は目を見開き、驚きの表情で言葉を返す。
皇太子「うむ」
副司令官「しかしっ、青年兵は青龍召喚隊の中核を担う者ですし…」
エリート「何より青龍先生に伺わなければなりませんな」
皇太子「でも軍制のトップは君だろう?」
副司令官「それは…そうですが…」
皇太子「転属でなくて構わんよ。今のまま出向扱いで良い」
副司令官「は、はぁ…」
副司令官は困惑の表情でか細い声を発する。
皇太子「青年兵、階級は?」
青年兵「はっ。曹長ですが…」
皇太子「曹長…!?てっきり士官かと思っていたよ」
青年兵「も、申し訳ありません」
皇太子「いやいや、それだけ将器があるといいう事であろう」
エリート「ええ。風格や実力は既に士官クラスですよ」
- 607 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:49:21.57 ID:vr5XKO.o
青年兵「そそ、そんな事…っ」
皇太子「二階級特進で少尉か…。うん、いいんじゃないかな?」
青年兵「へっ…!?」
エリート「戦功はどうします?」
皇太子「彼ぐらいなら…かき集めればなんとかなろうだろう。…ね?」
副司令官「そ、そうですね…。確認してなんとか致しましょう」
青年兵「と、特進…って……」
皇太子「おめでとう!青年兵少尉!」
エリート「今日から君も士官の仲間入りだ!」
青年兵「えぇっ!?そ、そんな簡単に…」
テクテク…
店員「お待たせいたしました。スーパーデラックスチョコパフェは…」
皇太子「ああ私だ。おお…これは美味そうだな!はははっ!」
エリート「で…でかっ…」
青年兵「すご…っ…」
皇太子は満面の笑みでスーパーデラックスチョコパフェを一口頬張った。
- 608 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:49:50.45 ID:vr5XKO.o
〜北関〜
戦士「もう正午かぁ…」
召喚士「うん…」
二人は自室で寝転び、ぼんやりと天井を眺める。
召喚士「魔道士さん…大丈夫かなぁ」
戦士「ちょっくら様子見てくっか」
召喚士「そうだね…」
コンコン
召喚士「あ、はいっ!」
召喚士がドアを開けると、そこには重そうな荷物を背負ったバーテンの姿がある。
バーテン「よう、先に戻るんで挨拶だけと思ってな」
召喚士「わざわざすみません…」
戦士「なんだ、もう行くのか?」
バーテン「お前らと違って、俺には店っつーもんがあるんでな」
戦士「そりゃそっか…。ご苦労さんな事です」
- 609 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:50:17.78 ID:vr5XKO.o
戦士はベッドに寝転びながら腕を上げ、振る。
戦士「てか…今回は何でまた来たんだい?」
バーテン「ほれ、これのついでだ」
バーテンは後ろを向き、背負ったリュックを見せ付ける。
バーテン「買出しだよ。買出し」
戦士「買出しで司令部まで来るかよ…」
バーテン「近くまで来たもんだから寄ったら…巻き込まれちまったよ」
召喚士「本当ですか…?」
バーテン「ああ。まぁ…後は…」
戦士「……」
バーテン「何だか久々に、戦友どもの顔を見たくなっちまってな…」
戦士「ふぅん」
バーテン「どっかの誰かさんが変な絵持ってくっからよ…」
召喚士「あ……っ…」
バーテン「なーんてな。はっははは」
- 610 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:50:44.00 ID:vr5XKO.o
バーテンはおどけてみせ、笑いながら手を振る。
召喚士「それじゃ…っ!」
バーテン「おう」
戦士「旨い酒を用意しといてくれぇ〜」
バーテン「あいよ。もうじき全員成人らしいしな。祝い酒といこうか!」
戦士「おっ、いいねぇ!楽しみにしてるっす!」
バーテン「あいよ」
召喚士「………あっ!!」
立ち去るバーテンに、召喚士は慌てて声をかける。
バーテン「……?」
召喚士「バーテンさん。お願いしても…宜しいですか?」
バーテン「…?俺に出来る事なら…」
召喚士「えっと……」
バーテン「…?」
召喚士は小声でバーテンへと言葉を続ける。
- 611 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:51:25.74 ID:vr5XKO.o
〜司令室〜
伝令「……以上でございます」
左翼長「……なんて事だっ」
騎士長「しかし…何が目的で…!?」
大軍師は伝令より書面を預かり、その中身を読み始める。
参謀「急ぎ司令部へ戻り、調査を致しましょう」
左翼長「……そうだな」
騎士長「一体何だというのだっ!」
大軍師「…成程。うっすらと見えてきましたね…」
将軍「…?」
大軍師「此度の戦い、まんまと関の結界を突破されました」
左翼長「ああ」
大軍師「これ…何故ですかね?」
将軍「け、結界に不備が…あったとか?」
参謀「………っ!!」
- 612 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:52:20.34 ID:vr5XKO.o
バンッ!!
突如、机を叩く大きな音が鳴り、その音の主は愕然とした顔を見せている。
参謀「人間……人間か!!」
大軍師「ご名答。魔王軍…なかなかやってくれます」
左翼長「まさか、つまりそれは……」
大軍師「ええ。死体を魔族化せず人のまま傀儡化する…」
参謀「そ、それを利用して…結界を打ち破るのか…っ!」
騎士長「そ、そんな事が!?」
大軍師「しかし、それ以外には考えられませんね」
将軍「なんという……っ」
左翼長「…戻るぞ。今すぐにだ!」
騎士長「大軍師殿、本国にもこの事を…」
大軍師「承知しております」
左翼長を先頭に、北方の面々が一同に席を立ち、退出する。
大軍師「あ、将軍殿」
- 613 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:52:53.20 ID:vr5XKO.o
将軍「……?」
大軍師「間もなく任期満了ですが、本国に…」
将軍「……いえ、出来ればこのまま海峡にて継続願いませんか?」
大軍師「…宜しいのですか?」
将軍「ええ。色々と愛着もわいておりますし、それに…」
左翼長「……」
将軍「かの地に眠る勇敢な者達が、待っておりますので」
大軍師「そうですか。分かりました、ではそのように手配を進めます」
将軍はぺこりと会釈をし、笑みを浮かべる左翼長の後に続いた。
カツカツカツ…
参謀「…お気をつけて、兄上」
大軍師「ええ。貴方も」
カツカツカツ…
大軍師「さて…と、私もそろそろ行くとしますか」
大軍師は羽扇を仰ぎ、司令室の窓から青空を眺めた。
- 614 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:53:52.89 ID:vr5XKO.o
…
占い師「まったく…アンタは本当に…」
テクテクテク…
召喚士「あれ…?」
占い師「おはよう…ってもうそんな時間じゃないわね…」
戦士「だ、大丈夫か…?」
白虎長「うぅ〜……」
白虎長はうな垂れたまま頭を押さえ、呻き声をあげる。
占い師「ただの二日酔いよ」
戦士「そ、そうか……」
占い師「貴方達はもう行くの?」
召喚士「そうですね…。そろそろ……」
占い師「そう…。あっ、そうだ…!」
戦士「…?」
占い師「久々に占ってあげましょうか?」
- 615 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:54:37.32 ID:vr5XKO.o
召喚士「占い…ですか」
戦士「ロクな目に遭わねーからなぁ」
占い師「それは私のせいじゃないわよ!」
戦士「そらそうだわな…」
占い師「じゃあ…戦士くんから」
戦士「へぇい…」
占い師は戦士の目をじっと見つめ、そのまましばし時が流れる。
戦士「………」
占い師「再開と……別れ…」
戦士「!?」
占い師「あ…っ、ううん…ごめんなさい」
戦士「再開と別れ…?」
占い師「ええ。辛いけど…最後は笑顔でいられると思う…」
戦士「……そっか。それなら…いいさ」
占い師「あ、あと…」
- 616 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:55:54.67 ID:vr5XKO.o
戦士「…?」
占い師「行くなら西にしなさい」
召喚士「西…ですか」
占い師「ええ。それじゃ次は召喚士くん……」
召喚士「俺は、やっぱりいいです」
占い師「…そう?」
召喚士「ええ。あまり先の事は知りたくないし、それに……」
白虎長「……」
召喚士「運命は自分で…切り拓きたいですから…!」
占い師「うふふっ。素敵な考えね!」
召喚士「そうですか…?」
占い師「みんなが召喚士くんのような強さを持っていれば…」
戦士「……」
占い師「うふふっ、それじゃまた会いましょっ」
召喚士「あ、はい…!ありがとうございました!」
- 617 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:56:42.43 ID:vr5XKO.o
戦士「そんじゃ!」
テクテク…
占い師「あっ!!」
召喚士「!?」
占い師「最後に一つ!」
戦士「あんだよ…?」
占い師「女難の相が出てるわよっ!」
戦士「げっ!またかよ…!!」
占い師「二人ともねっ!うふふふっ!」
召喚士「!?」
占い師「頑張って〜」
戦士「はぁ…行こうか…」
召喚士「う、うん…。それじゃ…失礼します」
占い師「はいは〜い。またねぇ」
去りゆく召喚士と戦士の背中を二人は見送る。
- 618 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:57:14.94 ID:vr5XKO.o
占い師「…うーん」
白虎長「うぅ……」
占い師「若すぎるかしらね…?」
白虎長「9歳と12歳下よ?やめときなさい…」
占い師「てか、そういえばアンタが二日酔いなんて珍しいわね…?」
白虎長「怪我してるのもあったし……それに……」
占い師「それに…?」
白虎長「いつもより……飲み過ぎちゃった…」
占い師「そ、そう…っ」
白虎長「自分が許せなくてね…」
占い師「…!?」
白虎長「悔しかったの…。己の未熟さが…」
占い師「………」
白虎長「仮にも一隊を率いておいて…あのザマよ…」
占い師「でも……それは…」
- 619 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:57:43.99 ID:vr5XKO.o
白虎長「そりゃ敵の奇襲もあったけれど…」
占い師「うん…」
白虎長「あの子達の強さ、とてつもないわ…。正直嫉妬しちゃうくらいに…」
占い師「確かにあの若さで大したものよね」
白虎長「個々の強さもだけど…心もチームワークも抜群よ」
占い師「そうみたいね」
白虎長「やっぱり…覚悟の違いかなぁ」
占い師「貴方も自ら名乗る決心出来た?」
白虎長「そうね…。考えておくわ」
占い師「しっかりね…。白虎先生!」
白虎長「……うん……うっ…うぅっ!」
占い師「ちょ、ちょっと…!トイレ!早くっ!」
白虎長「も、も一回寝る〜…。気持ち悪い〜」
占い師「分かったから!先にトイレ!ねっ!」
力無く歩き出す白虎長を占い師は抱え、二人はその場を後にした。
- 620 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:58:12.22 ID:vr5XKO.o
〜北門〜
海峡兵「進発ーっ!!」
パッカパッカパッカ…
左翼長「じゃあ、頼んだぞ」
将軍は馬上で敬礼し、隊の最後尾より北門を後にする。
騎士長「よし、こちらも発つぞ!」
北方兵「進めぇ!!」
左翼長「!?」
左翼長と騎士長は、門壁に寄りかかる人影に気付く。
騎士長「なんだぁ?見送りかぁ〜!」
バーテン「アホか。たまたま俺も出るとこだったんだよ」
左翼長「全く…。コーヒーの一杯も奢らずに…」
バーテン「こっちはビジネスなんだ。金さえ払えば幾らでも飲ませてやる!」
騎士長「来いっつー事か…。本国行く時にでも寄るさ!」
バーテンは右手を顔の横へ付け、小さく敬礼の素振りを見せ、北関を後にした。
- 621 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/05/19(水) 17:58:41.25 ID:vr5XKO.o
〜現在〜
魔道士「……」
召喚士「……」
戦士「あのさ…」
盗賊「…戦士」
戦士「あん…?」
盗賊は自身の唇の前に人差し指を立てる。
戦士「……へいへい」
召喚士「あ…。大軍師さん」
大軍師「おや…。先生もこれからご出立ですか?」
召喚士「ええ…まぁ。大軍師さんもですか?」
大軍師「はい。私は所用がありまして単身戻る予定です」
召喚士「そうでしたか。ご苦労様です」
大軍師「いえいえ、先生方こそ…今回もありがとうございました」
大軍師はすれ違いざまに会釈し、四人の脇を過ぎ去っていった。
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