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少女「あなた誰?」 宇宙人「えっ宇宙人ですけど」
- 216 名前:VIPがお送りします []
投稿日:2012/02/28(火) 02:20:32.12 ID:18/y+5IbP
──────…………
────…………
───………
──さい
少女「……」
──して下さい
少女「……ぅ……」
──目を覚まして下さい!
少女「…………ぇ?」
宇宙人「目を覚まして下さい! お願いしますから!」
少女「…………」
少女「…………どう、して?」
- 217 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 02:21:57.11 ID:c76TWD8TO
よし!いいぞ!
- 218 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 02:25:27.71 ID:18/y+5IbP
少女「……どうして、戻ってきたの?」
宇宙人「……ッ」
少女「わたし、……覚悟したつもり、だったのになぁ……まだ、妄想を見続けてるなんて……覚悟、足りなかったのかな……」
宇宙人「しゃべらないでください!」
宇宙人「腹部を刃物で刺したのですね……」
少女「……ぅ……ゴフッ…………」
宇宙人「わたしは……あなたに謝らねばならないことがあります」
宇宙人「自分の任務を優先しようとする余り、……あなたに嘘をついたんです」
少女「……」
- 222 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 02:31:31.80 ID:18/y+5IbP
宇宙人「……私は、あなたの妄想ではありません」
少女「……ぇ?」
宇宙人「偽りの家族も、偽りの級友も、確かにすべてあなたの妄想でした」
宇宙人「それは、……否定しようもない事実です」
宇宙人「しかし私は実在します」
少女「……」
宇宙人「あなたの世界はあべこべだったんです」
宇宙人「事実と思えることが実は妄想で、……逆に妄想としか考えられない私の存在は事実でした」
宇宙人「……そのことを伝えなかった私を、どうか許してください」
少女「……」
宇宙人「一見すると荒唐無稽に思える私の存在こそが、あなたにとっては────ただ一つの真実だったのです」
- 223 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 02:38:12.40 ID:18/y+5IbP
少女「……」
少女「……ほんと、に? ほんとにあなた、は……存在するの?」
宇宙人「はい」
少女「……妄想じゃ、なくて?」
宇宙人「妄想ではありません。ここに、きちんと実在しています」
少女「でも……コフッ……なん、で?」
少女「どうして……戻って、きたの?」
宇宙人「……」
宇宙人「私がここに来たのは、自分の『責任』を果たすためです」
少女「……せき、にん?」
- 224 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 02:44:44.42 ID:18/y+5IbP
宇宙人「責任というのは、自らの意志で引き受けようとする覚悟の形なんでしょう?」
宇宙人「私にはあなたの覚悟を否定することはできません」
少女「……」
宇宙人「あなたが見せた高潔なその意思を否定することなど、私にはできない」
宇宙人「……ですから」
宇宙人「ですから、私は私なりに、私の覚悟をあなたに示すことにしました」
少女「……」
宇宙人「私は、己の全身全霊をささげて……あなたを救ってみせる」
宇宙人「あなたを苦しめる全ての障害から、あなたを守ってみせます」
宇宙人「それが……私の『覚悟の形』です」
少女「……」
少女「…………わたし、を?」
- 225 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 02:45:59.72 ID:sTMa9kMi0
宇宙人すごいやばい
- 227 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 02:57:24.64 ID:18/y+5IbP
少女「……はぁ……はぁ……ぐッ!!」
宇宙人「ッ!? しっかりしてください!!」
少女「…………して」
宇宙人「え?」
少女「…………どう、して、……わたしなんか、を?」
宇宙人「……」
宇宙人「……そんな。いまさら何を言っているんです」
少女「ぇ?」
宇宙人「そんなの決まっているじゃないですか」
少女「……」
宇宙人「あなたは……」
宇宙人「あなたは、この広い宇宙の中で、たった一人の────」
宇宙人「──────私の、お友達でしょう?」
- 233 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 03:04:40.48 ID:18/y+5IbP
少女「────…………ぁ」
宇宙人「友達のためなら、いくらでも『覚悟』をもつことができます」
宇宙人「私はあなたの全存在を……自らの果たすべき『責任』として、引き受けることを誓います」
少女「……あ、……あぁ────」ジワ
宇宙人「待って下さい、今処方をしますから!」
少女「……もう、────いいわ」ポロ……
少女「……死ぬ間際に、こんな……素敵な、友達が……できたんだもの」ポロポロ…
宇宙人「……あなたを死なせたりしません!」
少女「あなたが妄想でも、……ゴフッ……実在、していても、……もう、どちらでもいい」ポロポロポロ…
少女「ありがと、ね……」ポロ…
少女「私を、友達だと言ってくれ、て……ありが、とう……」
宇宙人「ちょっと! しっかり────」
────その瞬間、彼女は……事切れた
- 234 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 03:05:30.05 ID:ceo+7jGW0
おい・・・
- 235 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 03:06:02.00 ID:18/y+5IbP
エピローグがまだ残ってるが眠気が限界なので寝る
昼頃までスレが残っていたら最後まで書く
おやすみ
過去作:
http://blog.livedoor.jp/minnanohimatubushi/archives/1744502.html 男「パン……食べるか?」 少女「……」
http://blog.livedoor.jp/minnanohimatubushi/archives/1745056.html 夫「この先何があろうと、僕が守るから」 妻「………」
http://blog.livedoor.jp/minnanohimatubushi/archives/1752808.html 男「そして誰もいなくなった」
- 236 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2012/02/28(火) 03:07:07.53 ID:/CpYauEU0
夢オチでもいいよ
夢オチでいいから
- 239 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 03:12:31.59 ID:DCnqHp+w0
ご都合主義的ではあるが
死に拠って肉体と精神の剥離→情報体になった女の子は宇宙人と幸せに過ごしましたとさめでたし
みたいなエンディングに持っていく事も可能かもな、ちょっと安っぽいしかなり強引ではあるが
- 244 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2012/02/28(火) 03:42:53.12 ID:SLbgLMve0
>>108が気になる
エピローグで明らかになるんだろうか
- 265 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:01:33.14 ID:18/y+5IbP
おはよう
書く
- 266 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:05:06.87 ID:18/y+5IbP
──エピローグ
私は星を去った
しかし、調査任務を無事に遂行し終えたとは言い難い
母船に通信して向こうに引っ張ってもらってもらい、帰還して動力源を確保したのも束の間、先程発ったばかりの星へと無断で取って返したのだ
……しかし、彼女の死は避けようがなかった
私の躊躇いが、運命を分けたのだろうか
後悔が鈍い想念となってかけ巡る
確かに……母船に戻る前の段階で彼女を無理やり情報体化して連れだしたところで、
動力源を確保するために母船に帰還すれば即お縄だっただろう
結局は、こうするしかなかったのだと自分自身を無理やり納得させるしかない
過去へは……戻れないからだ
- 268 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2012/02/28(火) 10:07:14.18 ID:u90lpMxL0
終わりですか?
- 269 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:12:41.70 ID:18/y+5IbP
これからどうすべきか
情報体同士の情報共有化はできない
そんなことをすれば、第三者に自分の位置をあからさまに教えるようなものだ
いずれ何らかの策を講じる必要があるが、当面はローカルな情報に頼らざるを得ない
──故郷にでも帰ろうか
そんなことを考えつつ舵を取る
……宇宙船の航行速度はとてつもなく速い
というか宇宙船と言っても、そもそも物理的形状をもった船に乗っているわけではないのだ
この宇宙船もまた一種の情報体に過ぎない
無形飛行の中で……私は今、前に進んでいるのだろうか、それとも逃げているのだろうか
「責任……か」
ぼんやりと意識を宙に浮かべて、独りごちる
今更になって何故か…………彼女との出会いが脳裏をめぐった
- 272 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:19:18.71 ID:18/y+5IbP
────……
──……
─…
──通信機のトラブルで母船に帰還することができなくなり、動力源も底をついてしまったものの、
とりあえず目的の星に辿りつくことができたため、私はその段階でも比較的状況を楽観視していた
あまり物事を深刻に考えすぎないのは、他の個体とは異なる、私という個体の特性だろうか
「とは言え、気軽に出歩くのはマズイですよね〜」
本来であれば、この星で接触をとる種族の姿に似せた肉人形を用意すべきところなのだが、その程度の動力源すら残っていなかったのだ
仕方なく私は現状ですぐに作ることのできる肉人形────我々の種族の祖先の姿形を模したものだ────を用意することにした
こうなると軽々には行動できない
こんな姿で街を悠々と闊歩しようものなら、たちまち衆目を集め、捉えられたり解剖されちゃったりするだろう
いや、この身体を解剖されたからといって死にはしないのだが
- 273 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:25:29.10 ID:18/y+5IbP
当面、感情採取に協力してくれる現地民を探す必要があった
「あなた誰?」
──探すまでもなく見つかってしまった
「えっ宇宙人ですけど」
つい本当のことを答えてしまう自分の馬鹿正直さが憎らしい
「へぇ〜」
なんだか目をキラキラさせていらっしゃる
「私ね、宇宙人とお友達になるのが夢だったの!」
──ほほぅ
「私も寄生さk……ゲフンゲフン……現地民のお友達ができるのは嬉しいです!」
そんな風に、無邪気な生き物ですよ〜という感じのアピールをして彼女に近づいた
- 274 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:30:02.57 ID:Bib/mpTV0
おいやめろ・・・
- 275 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:32:06.19 ID:18/y+5IbP
「ねえねえ……宇宙人ってどんな生活してるの?」
──異変は彼女の家に入った瞬間に気づいた
腐臭……いや、屍臭だこれは
「さあ、あなたが思っているものとは随分違うと思いますが……」
臭いの出所は……1階……バスルームだろうか
「それにしてもあなた……変な姿してるのね。宇宙人ってみんなこんななの?」
「いえ、そうとも限りません。そもそもこの形は借り物で、私にとっての定型ではないので」
「ん? どういうこと?」
──彼女はこの臭いに気づいていないのか?
…………いや、気付かないはずはない
気づいている上で、『気にしていない』のだ……
彼女と会話しつつも、私は臭いの元が気になって仕方なく、どこか上の空だった
- 276 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:37:40.92 ID:18/y+5IbP
「ちょっとトイレ借りてもいいですか?」
「えっ!? いいけど……宇宙人もトイレ行くの?」
「ええ……そんなもんです」
──もちろん嘘だ
1階に降りてバスルームを確認する
腐った死体を二体発見した
「──ふむ」
この種族には同族の死体をバスルームに放置する文化でもあっただろうか?
「いや、ないですないです」
自分のとぼけた発想に自分で突っ込むという何だかのんべりとした情報処理を行った後、2階の彼女の部屋に戻った
- 277 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:43:15.52 ID:18/y+5IbP
「おかえりなさい」
「あぁ、ただいまです」
少女は自室でくつろいでいた
「あの……一つ聞きたいことがあるのですが」
「なに?」
「バスルームの死体は何ですか?」
「……」
「?」
「……」
「あのぉ〜」
──き、気絶してる
なんだこの子……
- 278 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:47:32.39 ID:18/y+5IbP
「あなた誰?」
目を覚ました一言目がそれだった
「えっ宇宙人ですけど」
それに馬鹿正直に返す私も私だが……って、何だか既視感
「ウチュージン?」
「そうですよ」
──ああ、なるほど
この子、イカレてるんだな
そう判断した私は、同時に、『むしろこれは好都合なんじゃないか?』……そう考えた
宇宙人の存在を何の躊躇もなく受け入れている時点でかなり頭がおかしいが、
感情採取を目的としている私にとっては、過剰に警戒されない分やりやすいと言える
そんなこんなで、私は彼女を寄生先に選ぶことにしたのだった
────……
──……
─…
- 279 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 10:55:53.29 ID:18/y+5IbP
最初は利用しようとしただけだった
彼女の不幸な境遇や、その不幸な妄想の内容を悟った後も、特別、同情心は生じなかった
『いじめっ子排除プラン』も、彼女の生命力を弱らせないようにする方便でしかなかったし、
実際にその排除プランが彼女の賛同を得たとしても、適当に振舞って妄想の方向性を変えてやればいい程度に考えていたのだ
とは言えその妄想の方向性を変えてやるには、何らかの方法で『両親や級友が死んだ』と彼女に誤認させねばならなかった
もし虐待が妄想ではなく、現実に起こっていることであれば彼女の意向を無視してさっさと殺害を遂行していただろうが……
妄想の中の相手となるとそうすることもできず、彼女の動向に多少ヤキモキしていたのも確かだ
……そう、彼女には本当にヤキモキさせられた
それはひとえに、彼女のその偏向した考え方によるも所が大きい
- 280 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 11:01:51.79 ID:18/y+5IbP
────責任は覚悟の形
小娘の戯れ言でしかなく、一笑に付してしかるべき妄言のはずだ
それなのに私の内なる変化をもたらしたのもまた……彼女のその言葉だった
妄想の友人に傷つけられた彼女が、友人の告発を自らの責任として受け止めようとする姿は滑稽でもあり、何故か美しくもあった
『生命の有り様』を美しいと感じる
これは我々の種族にとって退化した感情のはずだ
それなのに彼女の『覚悟』は……何故か私の琴線に触れ、私の魂を揺さぶった
そして、自身の両親を殺めた罪を引き受け、終には自らの命に幕を引こうと決意したその『覚悟』を見るに至って──
私は、彼女を、この美しいものを守らねばならないという強烈な衝動に襲われたのだ
- 281 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 11:02:04.67 ID:Df7QYOOgO
ごちゃごちゃうるせえ!
「ププピル?」でいいんだよ
- 282 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 11:07:21.43 ID:HemlAx/80
>>281お前はバーガーバーガーやってろ
- 283 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 11:07:51.54 ID:18/y+5IbP
我々は岐路に立たされたとき、『その先で何を得るか』という基準をもって選択肢を選ぶ傾向がある
その際、往々にして『選んだその先で何を失うか』という視点は忘れられがちだ
そして、一度選択して先に進んでしまえばもはや失われたものに気など払わず、やがて、『自分が失ったのだ』という事実すら忘却の彼方へ追いやってしまう
その無数の忘却の果てに今の我々の姿があるとすれば、果たして、これまでの選択が正しかったのだろうかと、自分たちの道程に対する懸念が生じるだろう
疑い始めては前に進めない
だから私の仲間たちは疑念を抱かず、立ち止まることなく、忘却を恐れず、勇敢に前を向いて進んでいくのだ
────そう
ただ私は、そんな彼らと道を違えたに過ぎない
根底的な断絶でもって、彼らと訣別したのだ
- 284 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 11:10:31.75 ID:2kIFcwJUi
何故だろう涙が
- 285 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 11:13:55.81 ID:18/y+5IbP
彼らがかつて有し、今や遠い過去に置き忘れた、あの神聖感
私が彼女に対して抱いた、心を震わせつつ胸の奥からこみ上げてくるあの内なる情動
私は自分の仲間たちがかつて忘却したものに固執し、取り残される側に自らも残留することを、あえて選んだのだ
────そこまでする価値があるというのか?
それこそ、聞くまでもないことだ
……暖かく
……穏やかで
……勇気を湧かせ
……胸を熱くする
……何よりも尊い──────
少女「────ねえ。むっつりと思索にふけってないで、私とおしゃべりしなさいよ」
宇宙人「えっ……あぁ、すみません。さて、どんなお話をしましょうか?」
────元気な笑顔を見せてくれる彼女を守ること以上に、大切なものなどないのだから
- 286 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2012/02/28(火) 11:16:16.48 ID:u90lpMxL0
うん。
- 287 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/28(火) 11:19:35.55 ID:Cqh36RVZ0
よし。
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