■戻る■ 戻る 携 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その23
574 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:15:51.16 ID:oPA8Kgco
〜次の日〜

魔道士「……うぅ…ん」

モゾッ

魔道士「……っ」

ゴソゴソッ…ノソッ

魔道士「……あれ……戦士さぁん?」

〜華国、東の城の外れ〜

ザッザッザ

戦士「……」

これで何度目になろうか。戦士は華国での

師とも言うべき男の墓前に手を合わせる。

戦士「……」

ザッザッザ

白馬騎士「…戦士殿!?」

戦士「おはようございます」


575 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:16:40.41 ID:oPA8Kgco
白馬騎士「…戦士殿も墓参りか」

戦士「白馬騎士さんも?」

白馬騎士「東の城に居る時は毎朝の掃除が日課でね」

戦士「……そっか。どうりで綺麗だなって思いましたよ」

白馬騎士「…あれから随分経ったな」

戦士「ええ」

白馬騎士「それでも、この国の人々の心には、今尚この男の存在が居る」

戦士「……」

白馬騎士「それは民だけではない。私や…彼らにとってもだ」

戦士「…!?」

ザッザッザッザッザ

錦将軍「おや、戦士と言ったか。貴公も墓参りか?」

老将軍「お主が戟を継いだそうじゃな」

戦士「えぇ…まぁ」

ザッザッザ


576 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:17:36.84 ID:oPA8Kgco
弟者「おっはようさん!どいつもこいつも早えぇなぁおい!」

兄者「起きるのが遅いのだ!馬鹿者めが!」

戦士「……あんだけ飲んだ翌朝なのに…元気だな」

弟者「あんなん飲んだうちに入らんよ」

錦将軍「そうそう。それに3時間も寝りゃ全快だろ」

戦士「……」

兄者「どうした?呆けた顔をして……」

戦士「いや…別に……」

弟者「ほれ、さっさと供え物やらねーと」

老将軍「もう終えたわ、馬鹿者めっ」

弟者「馬鹿だと!?このジジイ…!」

老将軍「おっ?…やるかぁ?」

兄者「これこれ、やめぬか。墓前であるぞ?」

白馬騎士「……これだけ賑やかならきっと喜んでおりますよ。騎都尉殿も」

戦士「……そうだな」


577 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:18:35.72 ID:oPA8Kgco


テクテクテク…カラッ

魔道士「きゃっ!!」

戦士「!?」

パタン

戦士「わっ、わりぃ!!」

魔道士『い…いえっ!』

戦士「……」

魔道士『…んしょ。も、もういいですよ…っ』

カラッ

魔道士「おはようございます。どこ行ってたんですか?」

戦士「ん、あぁ…。騎都尉の墓参りにな」

魔道士「え〜っ!?声掛けて下さいよー!」

戦士「いやぁ…気持ち良さそうに寝てたから……」

魔道士「…もうっ」


578 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:19:39.83 ID:oPA8Kgco
戦士「悪い悪い。さて…と、朝飯でも食いに行くか」

魔道士「そうですねっ。お腹空きました!」

戦士「荷物は全部持ってくぞ」

魔道士「えっ?今日は泊まらないんですか?」

戦士「…今日は……もっといい宿探す」

魔道士「……はい」

戦士「ちなみに……すぐ閉めたから何も見てない」

魔道士「……っ」

戦士「……おっしゃ、行くぞ」

魔道士「は、はいっ!」

戦士「まずは朝食がてら聞き込み!」

魔道士「はいっ!」

戦士「その後は分かれ道を中心に下見だ」

魔道士「おーっ!」

戦士「よしっ、出発!!」


579 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:20:24.71 ID:oPA8Kgco
〜華国、大通り〜

戦士「えぇと……」

魔道士「食事処はあっちに沢山ありましたよ?」

戦士「いいのいいの。情報を得るには……あった。ここよ!」

魔道士「酒場…ですか?」

テクテクテク…ギィ

主人「…いらっしゃい」

戦士「なんか軽く食える物を頼む」

主人「……」

魔道士「朝からやってるものなんですねぇ」

戦士「客はともかく開いてはいるさ。バーテンさんとこだって一応そうだろ」

魔道士「寝てますけどね……」

戦士「…まぁな」

テクテクテク…コトッ

主人「お待たせ」


580 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:21:39.07 ID:oPA8Kgco
戦士「おぉ、美味そう!」

魔道士「本当っ。意外と穴場なんですねっ」

戦士「時にオッサンよ、ちょいと聞きてぇんだが」

主人「?」

戦士「最近この辺りじゃあ魔物が活発らしいじゃんか」

主人「そうかぁ?聞いた事ねーけどな」

戦士「そうなのか?」

主人「随分前に南のほら、火焔山が消し飛んだの知ってるか?」

戦士「…ああ。風の噂で聞いた事あるわ」

主人「あれ以来、ここらの魔物も大人しいもんさ」

戦士「ふぅん……」

魔道士「華国では、魔物はいない…と?」

主人「少なくとも城下の近辺じゃ見ねぇわな」

戦士「そうか…」

主人「何か探ってるのか?」


581 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:22:52.71 ID:oPA8Kgco
戦士「いんや、そーいうワケじゃないんだけどな…」

主人「金か…?」

戦士「ああ。急ぎでまとまった金が必要でな」

主人「ワークショップには行ったのか?」

戦士「時間が掛かるし、大した仕事はなかったな」

主人「……それなら、街外れの賭場に行ってみたらどうだ?」

魔道士「賭場…ですか?」

主人「ああ。あそこならワークショップを介せずに依頼も手に入る」

戦士「…サンキュ。ちょっくら行ってみるわ」

主人「……」

戦士「…な、何だ?」

主人「お代」

戦士「あ、あぁ。すまんすまん…はははっ」

チャリッ

主人「毎度」


582 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:24:05.22 ID:oPA8Kgco
スタスタスタ…

魔道士「賭場……ギャンブルですか」

戦士「食ったら行ってみよう。何か分かるかもしれん」

魔道士「…はいっ」

二人はそそくさと朝食を済ませ、酒場を後にする。

戦士「ごっそさん」

魔道士「ご馳走様でした〜」

テクテクテク…パタン

主人「……駆け落ち……か」

テクテクテク…

戦士「街外れ……って、こっちでいいのか?」

魔道士「ど、どうなんでしょう…。何もなさそうですけど…」

戦士「おっかしいなぁ。聞いた通りに歩いてきたんだけどな…」

テクテクテク

魔道士「あっ!あれじゃないですか!?」


583 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:24:58.89 ID:oPA8Kgco
正面の建物を指差し、魔道士は嬉々として声をあげる。

戦士「……っぽいな」

テクテクテク

戦士「上はただの雑貨屋。て事は……地下、か」

目先の階段見つめ呟く戦士は、そのまま階段を降り始める。

コツコツコツ…コツコツ…

魔道士「…こ、ここですか?」

戦士「……」

ギイィ…

ギャンブラー「ぐああぁぁーっ!!」

魔道士「!?」

賭博人「半だっての!!半っ!!半んんーっ!!」

胴元「……丁。はい残念」

賭博人「ぐああぁぁ!!」

戦士「……大丈夫だな」


584 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:26:17.35 ID:oPA8Kgco
魔道士「へっ?」

戦士「ちょいと邪魔するぜ」

胴元「…?」

戦士「実は、魔物に関する依――」

ギャンブラー「キター!!ローンッ!!」

胴元「静かにしなっ!聞こえないよ!!……それで、何だって?」

戦士「魔物に関する依頼が欲しい」

胴元「……依頼?あたしは仕事の話なんか知らないよ」

魔道士「残念……」

胴元「あの奥にいる親分。あの人に聞いてご覧よ」

戦士「…あれか、邪魔するぜ」

胴元「・・・おいおい。賭場へ入るのに手ぶらかい?」

戦士「……しゃーねぇなぁ」

ジャラッ

胴元「はいっ、両替ありがとさん!」


585 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:27:16.01 ID:oPA8Kgco
テクテクテク

男「王手ぇ!!」

戦士「……」

魔道士「戦士さん…」

廃人「こいっ!こい……っ!!ぎゃああぁぁーっ、ヒフミー!!」

魔道士「戦士さんっ!」

戦士「あ、ああ?」

魔道士「さっき何が大丈夫だったんですか?」

戦士「ん、あぁ。丁半賭博ん時は丁の目で賭場へ入るのがマナー何だよ」

魔道士「えっ、何でですか!?」

戦士「いや…そこまでは知らんけどそういうルール何だよ」

魔道士「へーっ」

戦士「そんな事はどうでもいい。ほれ、あそこにいるのが親分さんだ」

魔道士「……あの人ですね」

戦士と魔道士は賑わい乱れる賭場の、一番奥で酒を交わす男に近づく。


586 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:28:27.90 ID:oPA8Kgco
テクテクテク

戦士「アンタが親分さんかい?」

親分「…あぁ?見ねぇ顔だなぁ」

戦士「初めてお目にかかります。戦士と申しやす!」

魔道士(……な、何故か口調が…っ)

親分「戦士さんかい。俺に何か用かな?」

戦士「実は、ちょいとまとまった金が要り様でしてね」

親分「仕事が。……ここいらじゃあめっきり減ったモンよ」

戦士「そうなのかい?」

親分「治安が良くなっちまってなぁ。こちとら商売上がったりだよ」

魔道士「い、いい事じゃないんですか…?」

親分「……これまた似つかわしくねぇお嬢さんを連れてるねぇ」

ニヤニヤと笑みを浮かべながら取り巻きと共に声をあげる親分。

戦士「まぁね。このお嬢さんを護衛するのがあっしの仕事でしてね」

親分「…ほぉ。まぁ与太話は聞かねぇ事にしとくか。それで…仕事だったな?」


587 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:29:19.84 ID:oPA8Kgco
戦士「あぁ。何かあるかい?」

親分「……おい」

子分「へい」

脇に控える一人の取り巻きが、何枚かの紙束を親分へと手渡す。

親分「……ふーむ。戦士さんよぉ、腕に覚えはあるかい?」

戦士「自分で自信ねぇなんてヤツはこんな所まで来やしませんよ」

親分「がっはっは!!それもそうだわな!!」

ピラッ

親分「……これなんてどうだい?」

戦士「…なになに?調査依頼か」

親分「大きな声じゃ言えねぇが、なんと本国の偉いサン絡みだ」

戦士「……ほぉ」

親分「見たところ本国人っぽいし、丁度良いんじゃあないかい?」

魔道士「これって……」

戦士「……魔物と人間が通じてる可能性がある……か」


588 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:30:11.94 ID:oPA8Kgco
親分「内容が内容だけに、手に負える奴が居なくてねぇ」

戦士「……なるほど」

親分「成功失敗の有無は問わねぇ。失敗すりゃあ金を逃すだけだ」

戦士「分かった。ありがたく引き受けようじゃねぇか」

親分「手付金も無しだぜぇ?」

戦士「構わねぇよ。成功したらまた訪ねるわ」

親分「楽しみにしてるよ。俺の取り分もあるからねぇ」

戦士「へいへい、あんがとさん。行くぞ」

スタスタスタ

魔道士「は、はいっ!あ…ありがとうございましたっ!」

タッタッタッタ…

親分「……変な連中だな」

子分「……つけますか?」

親分「いんや、必要ねぇ。ああいう腐った目をしてねぇ奴は大抵、裏がある」

子分「関わらない方が身の為ですね」


589 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:31:24.94 ID:oPA8Kgco
テクテクテク

戦士「…あ、そうだ」

魔道士「はい?」

戦士「さっき両替しちまったこれ……」

魔道士「賭場の…チップですか?」

戦士「もったいねーし何か遊んでいくか?」

魔道士「でもぉ……ルールとか分からないですよ?」

戦士「簡単なのでいいよ。ちゃっちゃと突っ込んでなくしちまおう」

魔道士「そ、そうですね…。せっかくですし……」

戦士「えぇと、簡単なのは……あれかこれ」

魔道士「サイコロ…?」

戦士「こりゃチンチロリンて遊びだ」

魔道士「変な名前ですね〜」

戦士「サイコロを陶器の中に振ると『チンチロリン』て音がするだろ?」

魔道士「おぉ〜!なるほどですねーっ!」


590 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:32:27.68 ID:oPA8Kgco
戦士「そんじゃチンチロにすっか」

魔道士「戦士さん、やたら詳しいですね?」

戦士「北の港にもこのテのは腐る程あったからなぁ…」

魔道士「ギャンブラーだったんですか!?」

戦士「違う違う。あくまで情報収集の一環だよ」

魔道士「なるほど」

戦士「今日ので分かったろ?裏の情報は裏でしか取れん」

魔道士「ほほーっ。勉強になりますっ」

戦士「…いや、いいけどさ」

親「さぁ、張った張った!」

戦士「…ふぅん。親は固定かい」

親「不満があるなら変わるぜ?」

戦士「別にねーさ。魔道士、適当にコマを張ってくれ」

魔道士「は、はる…?」

戦士「掛け金を出してくれって事」


591 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:33:23.99 ID:oPA8Kgco
魔道士「は、はいっ!それじゃあ……」

スッ

戦士「……二割か。さすが商人の娘。粋な判断だわな!」

魔道士「は、はぁ…」

親「それじゃあ始めるぞ!」

廃人「さぁさぁ!!早く早く!!」

戦士「……イッちまってるな」

親「それっ!」

チリン…チリチリチリッ

親「……ちっ、3かよ」

戦士「ああやって3つ振ってな、二つペアになるだろ?」

魔道士「あっ、残った3が出目って事ですね!」

戦士「やるじゃんか。その通り!」

廃人「次は俺っ!俺ええぇぇ!!」

チリン…チリチリチリッ


592 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:34:20.02 ID:oPA8Kgco
廃人「ぎゃああぁぁ!!またヒフミーッ!!」

魔道士「ヒフミって何です?」

戦士「サイコロが1、2、3の出目になると2倍払わないといけないんだよ」

魔道士「う、うわぁ……っ」

廃人「だ、誰か俺のパンツを買ってくれええぇぇ!!」

合力「はいはい。無一文は出てった出てった」

廃人「いやだああぁぁ!!」

ガシッ…テクテクテク

魔道士「つ、次は私ですね…っ」

戦士「いいか、力いっぱい振るなよ?サイコロを器から落とすな」

魔道士「落ちると…?」

戦士「ションベンっつって問答無用で負け」

魔道士「……気を付けます。えいっ!」

チリンッ…チリチリチリッ…クルッ

魔道士「――っ!!」


593 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:35:44.02 ID:oPA8Kgco
戦士「あっぶね…っ!」

チリチリッ

魔道士「え、えっとぉ……6が……3つ?」

戦士「アラシだっ!!やったぜ!!」

親「にゃにぃ〜!?ちっきしょーっ!」

魔道士「あ、あの…っ」

戦士「3つ同じ出目だとな、アラシって言って掛けの3倍貰えるんだよ」

魔道士「お、大当たりじゃないですかっ!やったぁ!!」

親「ちっ、嬢ちゃんよ…初っ端からツイてんじゃねーか……っ」

魔道士「はいっ!ありがとうございます!えへへ!」

親(……カワイイ)

戦士「よーし、ノッてきたところでもう一丁!」

魔道士「え?まだやるんですか…?」

戦士「なくすのが目的だろうが」

魔道士「あ、そ…そうでしたっ!」


594 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:37:08.69 ID:oPA8Kgco


親「……」

チリッ…チリチリチリ

親「……ちぇっ、ヨツヤかよ」

戦士「おーしおし、相手は4だ。勝てるぞ」

魔道士「あのぉ…負けるのが目的では……」

チリンチリン…チリチリ

魔道士「…あっ!やったぁ!またアラシですよ!!」

戦士「……1が……3つ…っ」

親「にゃ、にゃにいいぃぃ〜!?ピンゾロだとぉ!?」

戦士「1の場合はな、5倍になるんだよっ!」

魔道士「えぇ!?そうなんですか!?」

戦士「おおっしゃあ!さーて、幾ら賭け……」

魔道士「…あ、えっとぉ……なくすつもりで……全部」

戦士「ぜっ、全部だとっ!?」


595 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:38:06.47 ID:oPA8Kgco


親「…素寒貧だ。降りるわ」

魔道士「あ、あのぉ……」

戦士「…うーん。減らすどころか……数十倍になっちまった」

魔道士「こ、こんな沢山どうしましょう?」

戦士「仕方ねぇ。最後はパーっといくか」

魔道士「パーっとですか?」

スタスタスタ

胴元「…おや?さっきのお兄さんじゃあないかい?」

戦士「お陰で助かったよ。ありがとな」

胴元「親分からいいシゴト、貰えたみたいだねぇ?」

戦士「まーな。お礼がてら遊ばせて貰うわ」

魔道士「し、失礼しますっ」

胴元「おや?カワイイお嬢さんが相手かい?」

魔道士「宜しくお願いしますっ!」


596 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:38:57.13 ID:oPA8Kgco
胴元「悪いけど…手は抜かないよぉ?」

魔道士「戦士さん、この『丁半』って、偶数か奇数を当てればいいんですよね?」

戦士「そ。簡単だろ」

合力「さぁさぁ、張った張った!半か…それとも丁かあぁ?」

賭博人「……丁だ!!4連続半だろ?もう続かん!!」

戦士「ほーっ、四連続か。確かにこりゃあ……」

魔道士「半に…全部ですっ!」

ズイッ

合力「ぜぜっ、全部ぅ!?」

戦士「お、おいおい……」

胴元「ず、随分増やしたんだねぇ…。しかしこりゃあちょっと……」

魔道士「だ、駄目ですか…っ?」

戦士「幾らなんでも暗黙のルールってのがなぁ」

テクテクテク

親分「面白い、受けてやりなさいな」


597 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:39:25.82 ID:oPA8Kgco
胴元「親分…っ」

戦士「いいのかい?」

親分「最悪、俺がケツ持ってやるさ」

胴元「よ、よーし!こちとら賭場勤めで15年さね!素人の小娘に負けてられるかいっ!」

魔道士「う、受けて立ちますっ!」

戦士「面白くなってきやがった!」

胴元「……開けるよ」

魔道士「……っ」

戦士「……」

親分「……」

カポッ

胴元「――っ!!」

魔道士「――!!」

合力「…………半!!サブロクの半だぁ!!」

戦士「い…よっしゃああぁぁ!!」


598 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:40:01.73 ID:oPA8Kgco


賭博人「うおおぉぉーっ!!俺の全財産がああぁぁ!!」

親分「アンタら強いねぇ」

戦士「俺じゃねぇって。全てこいつだ」

魔道士「そ、そんな事ないですよっ、ビギナーズラックってやつです!」

親分「仕方ないねぇ。おい、すぐに金を……」

戦士「あーいいよ、金は」

親分「金を捨てる奴は金に泣くぜ?」

戦士「最初のは情報量。あとはあぶく銭だ」

魔道士「こ、これ…どうします?」

戦士「どうしたい?」

魔道士「……そう…ですね」

テクテクテク

廃人「鬱だ……死のう……」

賭博人「俺の全財産……俺の全財産がああぁぁ!!」


599 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:40:49.52 ID:oPA8Kgco
テクテクテク…

魔道士「あ、あのぉ……」

廃人「……」

魔道士「よ、良かったらこれ…二人で……」

賭博人「全財産ん――えっ?」

魔道士「あげますから、お洋服買って今日は帰りましょ?」

廃人「こ…ここっ、これを……俺達…に?」

賭博人「くれる…ってのか…よっ」

魔道士「私達、もう行かなくてはいけないので……」

戦士「だってよ、大事に使えよ。んじゃな」

ゴソッ

親分「本当にいいのかい?」

戦士「あぁ、それが任侠ってモンよ……。行くぜ、魔道士」

魔道士「はいっ!それでは……!」

ザッザッザッザッザ…


600 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:41:18.34 ID:oPA8Kgco
合力「……」

胴元「……」

親分「がははは!どうしたい?惚れたか?」

胴元「……ふん、まっさか」

親分「おいおい、ぽかんとした顔してねぇで、場を盛り上げねぇか」

親「…へ、へいっ!」

合力「さぁさぁ!張った張ったぁ!!」

廃人「……こ、これ」

賭博人「こんだけありゃあ……今までの負け分取り返せるぞぉ!」

廃人「は、半分ずつだかんな!」

賭博人「分かってらい!ほ、ほれっ」

子分「…今時、珍しい漢ですな」

親分「全くだ。それに比べ…・・・こりゃあどうしようもないねぇ。がっはっは!」

廃人「……チンチロ…チンチロ…ひひっ」

賭博人「次こそは丁っ!ぜーってえぇ丁だぁ!!」


601 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:42:01.80 ID:oPA8Kgco


魔道士「……はぁ」

戦士「どした?」

魔道士「何だか疲れちゃいました」

戦士「パワーっつーか熱気っつーか」

魔道士「凄い所ですね…」

戦士「地下格闘だって似たようなモンだろ」

魔道士「違います!あれは健全な…れっきとしたスポーツです!!」

戦士「……そ、そう」

魔道士「賭博なんかと一緒にしないで下さいっ!ふんっ!」

戦士「は、はぁ……すみません」

魔道士「…それで、依頼はどうなんです?」

戦士「…ああ。こりゃ南方司令部が張った策だな」

魔道士「そうなんですか!?」

戦士「本国から直に華国領内の調査依頼なんて公には出せねーだろ」


602 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:42:49.62 ID:oPA8Kgco
魔道士「そっか…」

戦士「だから、裏社会を通じて依頼を飛ばしてるんだよ」

魔道士「なるほど」

戦士「結局食いつくワーカーは居なかったってわけだがな」

魔道士「……」

戦士「……地図だな。今までの目撃ポイントが記されてる」

魔道士「…うわぁ。随分広範囲ですねぇ」

戦士「……不思議だな」

魔道士「えっ?」

戦士「華国っつっても…国境ギリギリしか出没してねぇ」

魔道士「…あ、言われてみれば」

戦士(何だ?何か理由があるのか…?)

魔道士「南だけではなく、北にも出没してますね」

戦士「北…。剣士さんの村とかある方だよな」

魔道士「ええ。そうなりますね」


603 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/04(火) 18:43:25.61 ID:oPA8Kgco
戦士「この範囲から察するに、奴らは常に移動してるって事か」

魔道士「…っぽいですね」

戦士「時間かかりそうだなぁ」

魔道士「どうします?」

戦士「今夜は野宿になるかもな」

魔道士「え〜っ?」

戦士「しゃーねぇだろ。張り込みだ」

魔道士「張り込みって…どこでですか?」

戦士「当初の予定通りだよ。一番遭遇率の高そうな所」

魔道士「…分かれ道…ですか」

戦士「どうせ夜にならんと顔出さんだろ。今のうちに身支度整えておけ」

魔道士「はぁい」

戦士「仮眠も取っておけよー?」

魔道士「はぁーい」

戦士と魔道士はひとまず、繁華街へと戻って行った。



次へ 戻る 戻る 携 上へ