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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その37
761 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:05:28.69 ID:XBviLHtdo
〜魔王城、六道門・人〜

 城内を走る一同の足音が、カンカンと城内に響き渡る。

 先頭を無言で駆ける天才と盗賊は周囲に警戒を払いながら、

 決して広いとは言えないその通路をひたすら前へ前へと進んだ。

 薄暗い城内は召喚士のサラマンダーが松明代わりを務め、

 ほのかな明かりとして皆の視界を若干ながら切り拓く。

 やがて通路は広い部屋へと代わり、そこには上下2つの階段があった。

 ズザァ

天才「さーてさて」

召喚士「……どっちですかね」

天才「まー当然、魔王様は上だろうな」

戦士「んじゃ、上に行くか」

天才「あーまぁ別にいいけど、お前らは下の方がいいんじゃねぇの?」

魔道士「……?」

天才「下は多分、根暗ヤローのラボだぜ」


762 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:06:11.00 ID:XBviLHtdo
召喚士「!?」

天才「ここでぶっ倒す必要もないっちゃないけど、ラボを野放しは厄介なんじゃねぇの?」

戦士「なんじゃねぇのって、他人事だなおい」

天才「他人事だよ。どうせ俺様、ここで死ぬ予定ですし。ハーッハッハ!」

召喚士「……っ」

剣士「でも確かに、ラボは潰しておく方が後々の面倒にならないんじゃないかな?」

戦士「ああ、そうだな。それに、精神的にもスッキリするしな」

盗賊「……」

天才「別にどっちでもいいぞ。魔王倒したらこの城が健在とも限らんし」

魔道士「どう……します……?」

召喚士「俺は……」

戦士「行くだろ? ラボによ」

盗賊「悩むまでもないな」

召喚士「……みんな」

魔道士「私……っ、ウィッチちゃんの為にも……絶対に倒したい」


763 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:06:43.44 ID:XBviLHtdo
天才「決まりだな。んじゃ頼んだぜ」

男隊員「俺らはあんたの援護に回る。いいよな?」

格闘家「もちろんです。師匠の役に立てるのならば」

ボス「俺は、従うだけです」

女隊員「今の隊長はあんたッスから。隊長に任せるッスよ」

男隊員「ヒャハハッ。んじゃ、そういう事で」

天才「足手纏いになんなよ?」

格闘家「頑張ります」

弓使い「私達は……どうする?」

剣士「召喚士くん達の援護に回ろうか」

幼女「うんっ、そうしよう!」

召喚士「ありがとう、剣士さん」

剣士「いやいや。ネクロマンサーには僕も、貸しがあるんでね」

盗賊「……っ」

剣士「みんなで、あの悪魔を倒そう!」


764 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:07:28.87 ID:XBviLHtdo


天才「いいか? 魔王城内への突入は人類史上初めての出来事だ」

召喚士「ええ」

天才「何があるか全く分からん。くれぐれも用心しろよ」

魔道士「……はいっ」

天才「危ういと思ったら躊躇わず退け。いいな?」

戦士「おう。あんたもな」

天才「ハーッハッハッハ! ……じゃあな」ザッ

魔道士「……あ、あのっ!」

天才「……」

魔道士「あの、天才さん……」

 ザッザッザッ……ザッ

天才「……いいか? お前の中には王家の血が流れてる」

魔道士「……っ」

天才「その力は必ず、役に立つ。今のお前は哀しみを乗り越えた強さがある。自信を持て」クシャッ


765 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:09:26.24 ID:XBviLHtdo
魔道士「あ……っ!」

天才「お前の手料理、美味かったぜ。んじゃな!」バッ

 タッタッタッタッタッ……

女隊員「それじゃっ、またあとで必ず合流するッスよ!」

戦士「おうっ!」

格闘家「ご武運を」

盗賊「……そっちもな」

ボス「失礼します」ザッ

召喚士「お互い、頑張りましょう!」

 タッタッタッ……

戦士「……さて、準備はいいか?」

弓使い「オッケーよ」

剣士「このメンバーだけっていうのもも久し振りだね。見せてやろうよ、僕らのチームワークを」

魔道士「はいっ!」

召喚士「さぁ、行きましょう!」ザッ


766 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:10:04.09 ID:XBviLHtdo
〜魔王城、正面〜

 ズッドオオオオォォォォン!!

西方魔道長「どうせこれで最後なんだっ。枯渇するまで撃ち続けなぁ!」

精鋭魔道兵「イエッサー!!」

博士「北関からの補給は完了したのら。さぁ、次の補給が来るまで撃ち続けるのらっ!」

助手「はいはーい♪」ガシャコン

左翼長「……マズイな」

騎士長「ああ。魔王軍が開門以降、中央を捨てて外に流れてやがる」

左翼長「陣形を変えて遮断したいところだが、戦力差がありすぎるからな……」

バーテン「今の状態のまんま逆になるわけだ」

戦士父「……中央の12万が2手に別れ、6万ずつで20万以上を包囲か? 無謀すぎるな」

騎士長「出来る事といえば?」

左翼長「……どちらかを捨てて片方に全力であたる」

バーテン「ま、それしかないだろうな」

戦士父「どちらが優先だ?」


767 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:10:51.13 ID:XBviLHtdo
左翼長「決まってんだろ、南側の北関だよ」

騎士長「北側は一夜城からも近いし、対応はしやすい。だが北方司令部は……」

バーテン「放棄するしかないな。北方司令部だけならマシだけどな」

左翼長「……北の港まで進軍するとは思えないが、どんな事態も想定しておく必要がある」

戦士父「ましてや民間人が大勢いるのだ。危険には晒せん」

騎士長「かと言って、北関が陥落すれば、それは事実上の敗戦に繋がる」

バーテン「一気に本国や大陸へ、魔物が流れ込むからな」

戦士父「さぁ、決断の刻だ」ザッ

左翼長「……俺らは南側に、全軍を率いて魔王軍とあたるぞ」

騎士長「了解」

左翼長「伝令っ! 北方司令部へ全軍出撃命令を出せっ!」

伝令「ははっ!」

左翼長「最北の村や近辺の村にも同様だ。拠点は放棄し、必要物資を持って出撃!」

伝令「了解致しました!」ザザッ

左翼長「さて……次が過酷な問題だな。英雄となるか、愚者となるか……」


768 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:13:12.38 ID:XBviLHtdo


 ザッ

王子「火急と聞いたが、どうした?」

左翼長「お集まり頂き、感謝します」

帝「良い。それよりも何事なのだ?」

左翼長「魔王城が開門した事により、魔物の動きに変化が生じております」

名代「それは私も薄々、感じておりました」

左翼長「魔王軍は白の防衛、及び我ら中央にいる本隊を排除する動きから、
      徐々に退路を確保しながらの戦闘に変化しております」

王子「それで、どうすると?」

騎士長「このまま挟撃に移行しても、倍の数を挟み込むのは困難極まりない」

王子「……どちらか一方を集中攻撃という事か?」

左翼長「察しが宜しくて助かりますわ」

名代「しかしそれならば、我らを呼ぶ必要はありませんよね?」

左翼長「……これまた察しが宜しいようで」


769 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:14:04.78 ID:XBviLHtdo
 ザッ!!

騎士長「我ら国軍が命に代えて、南側を死守致します」

左翼長「皆々様には……北の魔物にあたって頂きたいっ!」

帝「北……」

王子「……頭を上げられよ左翼長殿」

左翼長「……」

王子「そういう事ならば、喜んで引き受けるぞ」

左翼長「申し訳ありませぬ……っ」

名代「良いですから、どうか頭を上げて下さいませ」

帝「そうじゃ。ここまで来れば何をしようとも生か死か、二つに一つじゃ」

バーテン「……」

帝「寧ろ寡兵で我らに戦わせるなど、信頼して頂き、感謝するぞ」ニコッ

騎士長「……は、ははぁ」

王子「それで、北側にあたるのは私らのみか?」

戦士父「……丁度、来たようだ」


770 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:15:31.14 ID:XBviLHtdo
 ザッザッザッ

アマゾネス「あの、何か……」

左翼長「あんたらの召喚獣は大いに助けになる。どうか合流して欲しい」

おさげ「へっ?」

バーテン「これからもう一仕事してもらうって事よ」

色黒「ちゃーんと報酬はくれるんでしょうねぇ〜?」

ポニテ「タダ働きはイヤよっ」

左翼長「あー分かってるって。俺が約束する。報酬は倍以上を保証するよ」

ツインテ「ふにゃああぁぁ! やったーっ!」

左翼長「んで、アンタらもオーケーか?」

玄武娘「……朱雀嬢ちゃん」

朱雀嬢「もちろんですわ。断る理由がりませんもの」

玄武娘「だそうですの!」

騎士長「これで相当、質の良い面々が整ったな。あとは……」

左翼長「……アイツら、どこで油を売ってやがる……っ」


771 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/13(火) 18:16:16.94 ID:XBviLHtdo
〜魔王城、北側〜

 ズッガオオオオォォォォン!!

マジシャン「ふーっ。もういいだろ」ザッ

師匠「魔物の侵攻方向が変わってんな」

マジシャン「門を突破されて諦めたんだろ」

師匠「どうせ退路なんざねーってのによ」

マジシャン「退路がねーってのはマズイな。近辺の村を襲われたら面倒だぞ?」

師匠「ちっ、しゃーねぇな。もっと頑張れや国軍よぉ……ガハハッ」

マジシャン「ハッハ! 仕方ねぇ。もうちょいとばかし手伝ってやっか?」

師匠「あんまり魔力は使いたくねーけどな」

マジシャン「死ぬよりマシだ。俺らも、仲間も、他の連中もなぁ」

師匠「だわな。まずは北に向かってる連中を食い止めんぞ!」

マジシャン「おうよっ!」

師匠「さっさと終わらせて、ゆっくりしようや! ガハハッ!」

マジシャン「同感だっ! ハッハ!」


778 名前:NIPPERがお送りします(東京都) [] 投稿日:2012/03/13(火) 20:14:12.68 ID:XVQDMOAW0
>>1 おつ
夜になってアンデッドが出てきたらやっかいだな…
リッチもまだいるみたいだし


780 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/14(水) 18:20:10.81 ID:ISasBzC0o


 既に正午を回り、日没を迎えようかという北の戦場。

 連合軍は全軍を右翼、つまり南側へと陣形を大きく移し、

 およそ10万程度の将兵は横1列の布陣を何十にも重ね、それはまるで壁のようであった。

 その前方、無数の魔物が居並ぶ中を、その布陣へ近づけまいと、

 騎士団と一夜城から出陣した華国の精鋭が孤軍奮闘している。

騎士団「陣形が完成するまでっ、決して魔物を近づけるでないぞ!!」

老将軍「老骨に鞭打つのは……今日で最後とするかのぅ」

白馬騎士「先程までの威勢はどうしたのですっ、老将軍殿」

老将軍「気は盛んであろうと、身体は老いるものよ。痛感したわい」

騎士長「壁が出来たぞ! 兵器と精鋭魔道兵はその背後に回りこめ!」

博士「ほらっ、早くするのら!」

助手「はーいっ。それじゃあ出発〜♪」

左翼長「急げよぉ、敵は待っちゃくんねぇぞ!」

西方魔道長「こっちも早くしなっ。魔王軍が迫っているよっ!」


781 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/14(水) 18:20:59.66 ID:ISasBzC0o


 対して左翼、北側には打って変わり、大軍とは言えない数の将兵が集う。

 西国、東方、そしてワーカーを合わせても3万に満たないその軍勢。

 しかしそこには名うてのワーカーなども多く存在し、質では負けてはいない。

玄武娘「うぅー。緊張してきたですの……っ」

朱雀嬢「普段通りやれば大丈夫ですわよ。リラックスですわ」

玄武娘「リラックス……リラックスリラックス……ふあぁ〜」

 チョロロ

玄武娘「ひゃああぁぁ!! リラックスしすぎてっ、緩んだから少し出ちゃったですのー!!」

朱雀嬢「!?」

王子「……動いたな」

玄武娘「ごめんなさいですの……」

帝「うむ。ちと早い気もするが、後手に回ってしまっては不利だ」

玄武娘「ほえ?」

王子「皆の者、よく聞いてくれ。これより我らは魔王軍に対し、総攻撃をかける」


782 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/14(水) 18:21:32.29 ID:ISasBzC0o
色黒「!?」

アマゾネス「……やるのか」

王子「こちらは数が少ないのだ。ここに留まって陣を組んでいては逆に不利」

名代「確かに。狙い打ちされる危険性が御座いますな」

王子「よってここは最初から攻撃に特化し、魔王軍を撹乱する」

朱雀嬢「……宜しくってよ」ザッ

王子「この先の魔王城側には、国軍の召喚隊もいる。まずは一気に抜けるぞ」

帝「その後、全軍で反転しこの地点まで引き返す。それを繰り返すのだ」

僧兵長「おぉーっ!!」

槍侶「一番槍はお任せを」チャキッ

王子「頼りにしている。先方は西国召喚隊と東方軍! 他の者は後から続けい!」

朱雀嬢「ほらっ、行きますわよ!」

玄武娘「は、はいですの……っ!」

アマゾネス「さぁ、こちらも行くぞ。行けっ! ワルキューレ!」シュイイィィィィン

おさげ「やってやるわよぉ〜!!」


783 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/14(水) 18:22:29.20 ID:ISasBzC0o
 戦場が一気に慌しくなる。北側の王子率いる西国召喚隊と、

 帝率いる東方軍が魔王軍めがけ突撃し、交戦は激しさを増す一方であった。

 それとほぼ同時刻、南側においても小競り合いが勃発し、北側に押されるような形で、

 国軍が誇る壁と、倍以上の魔王軍が激突する事となった。

 この時点で魔王軍の戦力はおよそ25万程度と推測されるが、

 現場で戦う彼らがそんな事は知る由もなく、とにかく南下を防ぐべく戦っていた。

 南北では大きく戦力差が変わるが、数の少ない北側が不利かと言うとそうでもない。

 少ない数だからこそ、その場に布陣し留まらず、戦場を縦横無尽に動き回り

 移動する事で、魔王軍の攻撃を一手に受けず、かわす役目も兼ねている。

 それに対し南側の国軍兵らは、横1列の壁となり、その場に留まり、攻撃を食い止めている。

 交戦は1ヶ所のみにならず、被害は明らかにこちらの方が多かった。

 そして、何重にも及ぶ壁ではあるが、1点を突破されると、

 他の場所からその防衛に回るのは事実上、不可能に近いものである。

 魔王軍が城を捨て決死の突破を試みる背景には、諸々の事情があるが、

 最も大きいものとしては、魔王城開門がその理由である事は容易に想像が出来た。


784 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/14(水) 18:23:00.07 ID:ISasBzC0o
〜魔王城、玉座〜

ベルゼブブ「……所詮、寄せ集めの雑魚でしかないか」

アスタロス「制裁を」

ベルゼブブ「良い良い、放っておけ。それに無駄な行動ではなさそうだ」

アスタロス「……」

ベルゼブブ「突破を図り人間共の背後を強襲出来れば、それは脅威となる」

アスタロス「……我が主の意のままに」

ベルゼブブ「それよりも問題は六道門だ。よもや、突破されるとはなぁ」

アスタロス「……」

ベルゼブブ「貴様もそろそろ、迎え撃ってはどうだ?」

アスタロス「……御意に」フッ

ベルゼブブ「……」

 魔王ベルゼブブは何ら焦りや不安など覚えていなかった。しかし、多少の苛立ちを覚えた。

 それは自身の求心力と人間に対して抱いていたものが過小評価であった事。

ベルゼブブ「余に自身を苛立たせるとは、楽には死なせぬぞ……人間共」



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