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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その25
39 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:04:16.83 ID:4cqPbFj0o
〜最北の宿泊所〜

召喚士「…………」

テクテクテク

老人「……」

召喚士「…………」

老人(大した集中力じゃな……っ)

テクテク…ざっざっざ

老人「そろそろ、晩飯にするかの?」

召喚士「……お爺さん」

老人「すまんの。邪魔してしもうたか?」

召喚士「いえ、お構いなく……って、もうこんな時間かぁ……」

老人「ざっと9時間は経過しておるぞ」

召喚士「そんなに……」

老人「いやはや大した集中力じゃよ」

召喚士「すみません…長々と……」


40 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:04:45.16 ID:4cqPbFj0o
〜室内〜

グツグツグツ…

老人「こう言っては何だが、お主が来てくれたお陰で助かったわい」

召喚士「そうですか?」

老人「年十年振りじゃろうな、まともな食事と言える物を口にするのは…」

召喚士「……」

グツグツグツ…

召喚士「あり合わせですが、どうぞ」

老人「……うぅむ、良い香りじゃ」

召喚士「山菜と茸を煮詰めたものです。あと…これを」

老人「魚の干物か?」

召喚士「ええ。非常食として持参してましたから」

老人「それこそ魚なぞ、遠い昔に食したきり。味も忘れてしまったわい…」

召喚士「どうぞ、食べて下さい」

老人「ふむ。頂こうかの」


41 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:05:13.27 ID:4cqPbFj0o
ズズーッ…モグモグモグ

老人「……」

召喚士「どうですか?」

老人「…本来ならば、涙するのだろうが…涙も最早、枯れ果ててしもうた」

召喚士「そんな大げさな……」

老人「いやいや、それ程までに美味よ。ありがとう」

召喚士「……いえっ」

老人はしばし無言となり、夢中で召喚士の作った料理を貪るように食べる。

召喚士「お爺さん、お爺さんはずっと…ここにいらっしゃるんですよね?」

老人「……うむ。そうじゃが?」

召喚士「食事は今まで、どうされていたんですか?」

老人「外にある畑で作物を育て、雑草を食し水で飢えを凌ぎ……」

召喚士「……」

老人「あとはほれ、そこらにおるじゃろ」

召喚士「……っ」


42 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:05:40.02 ID:4cqPbFj0o
振り返る天井の柱に潜む鼠。匂いに釣られてか小さな眼でこちらを見ていた。

老人「人間、窮地に陥ると…遮二無二構ってられぬもの…」

召喚士「……」

老人「鼠だけでない、蜘蛛や昆虫まで、食えるものは何でも食したわい」

召喚士「……そうですか」

老人「お陰で虫なぞ居なくなってしもうたがの」

召喚士「大変…ですね……」

老人「鼠はつがいが居たお陰で、沢山増えてくれて助かっとるよ」

召喚士「…でも、流石に食べたいとは思いませんね……ははっ」

老人「まぁな。外界から見れば、それが普通の事よ」

召喚士「なんとしても脱出して、美味い物食べましょうよ!」

老人「そうじゃのう…。楽しみじゃわい」

召喚士「ええ…っ!」

老人「さて、ご馳走様じゃ。いや、実に美味かったぞ…!」

召喚士「お粗末様です」


43 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:06:15.59 ID:4cqPbFj0o


召喚士「あの、お爺さん」

老人「んー?」

召喚士「お爺さんも召喚士、だったんですよね…?」

老人「……まぁな」

召喚士「かなり、お強かったんですか?」

老人「…うーむ、難しい質問じゃの」

召喚士「……」

老人「強い、弱いというものは、本人には決められぬ事じゃ」

召喚士「……」

老人「ましてや他人が決める事でもない。人間に強弱などありゃあせんよ」

召喚士「……なるほど。仰る通りかもしれません」

老人「お主、強くなりたいのか?何か、焦りのようなものを感じるが……」

召喚士「……まぁ、そうかもしれません」

どこまで話せばいいか分からない。それでも召喚士は自分の思いを伝えた。


44 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:06:43.05 ID:4cqPbFj0o
老人「……成程のう。外界ではそのような事が……っ」

召喚士「五ヵ年計画も、残すところあと2年を切りました」

老人「ワシが若い頃なぞ、パズズ一匹で大騒ぎじゃったがの」

召喚士「……青龍先生……伝説、ですね」

老人「知っておるのか」

召喚士「ええ。稽古を付けて頂いた事もあります」

老人「そうかぁ…。外界も随分と変わったんじゃろうなぁ……」

召喚士「きっと、驚きますよ」

老人「……じゃろうなぁ」

召喚士「……お爺さんは、白虎なんですか?」

老人「ほぉ、分かるか?」

召喚士「クジャタの事とか詳しかったし…そうかなって……」

老人「ほっほっほ。それもそうか」

召喚士「白虎かぁ……」

老人「お主も少なからず、会得しておるんじゃないのか?」


45 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:07:14.24 ID:4cqPbFj0o
召喚士「えぇと……スフィンクスとユニコーン…ですね」

老人「……これまたレアな召喚獣じゃの」

召喚士「そうなんですか?」

老人「ユニコーンは回復召喚獣じゃろ?」

召喚士「え、えぇ……。女性限定ですけど……」

老人「回復召喚獣はどの属性においてもレアじゃからの」

召喚士「なるほど、確かにプリーストも不要になりますしね」

老人「そうじゃ。故に希少価値が高いのじゃよ」

召喚士「……」

老人「もっとも、今は違うのかもしれんがの」

召喚士「確かに……」

老人「それと、スフィンクス……とな」

召喚士「はい。これは西国の方より頂きました」

老人「じゃろうな。本国には存在せぬ召喚獣よ」

召喚士「…なかなか、お詳しそうですね」


46 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:07:52.73 ID:4cqPbFj0o
老人「西方にも何度か足を運んだからの」

召喚士「……」

老人「しかし、西方の召喚術は危険じゃよ」

召喚士「え……?」

老人「スフィンクスなぞはまだ良いが、高等召喚獣ともなるとなぁ」

召喚士「……何か、あるんですか?」

老人「ん、ああ。力が強すぎる…という事じゃ」

召喚士「……」

老人「かつて、こんな文言を聞いた事がある」

召喚士「…?」

老人「……『西より出でし者、主を食らいて主となる』……とな」

召喚士「どういう意味なのです…?」

老人「西、即ち白虎が主、即ち召喚士を食らう…と解釈しておる」

召喚士「……」

老人「まぁ、独自解釈なんでな。本当の意味が隠れておるかもしれんがの」


47 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:08:18.50 ID:4cqPbFj0o
召喚士「主を食らいて……」

老人「ワシは怖くてなぁ。結局、西方の召喚獣は会得せんかったわい」

召喚士「なるほど…。お爺さんのお勧めなんて、ありますか?」

老人「お勧め…?うぅむ、そうじゃのう……」

召喚士「……」

老人「白虎で言えば、フェンリルやスレイプニルあたりが、使い勝手良いかもな」

召喚士「フェンリルは知っていますね。もう一つは…スレイプニル?」

老人「うむ。まぁ割と使い手も少なかったし、珍しい部類かもしれんな」

召喚士「初めて聞きますね。どんな召喚獣なのです?」

老人「獣型の、スピードを生かした攻撃を主とする召喚獣じゃよ」

召喚士「…ユニコーンに近いんですかね」

老人「そうじゃな。それと……」

召喚士「…?」

老人「スレイプニルは昇華型の召喚獣じゃ」

召喚士「昇華型……?」


48 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:08:53.11 ID:4cqPbFj0o
老人「魔力やある一定の条件を達成すると、本当の力が引き出せるのじゃ」

召喚士「そんな事が……可能なんですか!?」

老人「うむ」

召喚士「その…条件とは!?」

老人「ワシは携わった事がないから知らぬよ」

召喚士「……そうですか」

老人「じゃがな、先の話ではないが…下手を打てば己の身とて危うい」

召喚士「……」

老人「白虎はそういう召喚術じゃて。使い手によって、神にも悪魔にもなる」

召喚士「……心得ておきます」

老人「…ま、お主ならば大丈夫じゃろ。強い心を持っておる」

召喚士「……っ」

老人「…ふあぁ、ちと長話すぎたかの…眠くなってしまったわい」

召喚士「あ…っ、すみません。長々と……」

老人「ほっほっほ、構わぬ構わぬ。それではおやすみ」


49 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:09:26.08 ID:4cqPbFj0o
パッカパッカパッカ

東方兵「……到着致しました!」

女剣士「…思ったより、時間を食ったな」

青年兵「ええ。しかし今日中に着いて一安心ですよ」

〜北方司令部〜

ザッザッザッザ…

門兵「……っ」

青年兵「ご苦労様です」

ザッザッザ

門兵「……あ、あれって」

北方兵「あ、あぁ……っ」

〜司令室〜

コンコン…カチャッ

青年兵「失礼致します」

騎士長「おぉ、来たな!」


50 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:09:53.53 ID:4cqPbFj0o
青年兵「遅くなり、申し訳ありません」

左翼長「降雪で足止め食ったか」

青年兵「ご名答です。……左翼は?」

騎士長「明朝、到着予定だ」

青年兵「成程、報告通りで安心しました」

左翼長「……ん?そちらは?」

青年兵「今回、護衛を務めてくれる女剣士殿です」

女剣士「……どうも」

左翼長「…どっかで見た事あるな」

騎士長「あれ?前に一度、北の戦いに参加した事ないか…?」

女剣士「…ああ、そんな事もあったな」

騎士長「やっぱりか!道理で……」

左翼長「部屋は参謀にでも聞いて、適当に使ってくれ」

青年兵「お世話になります」

女剣士「……」


51 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:10:21.38 ID:4cqPbFj0o
クルッ…カツカツカツ

左翼長「おぉっとそうだ、青年兵」

青年兵「…はい」

左翼長「ちょいと残ってくれ」

青年兵「…女剣士さん、下に参謀さんがいると思いますので……」

女剣士「あぁ、勝手にさせて貰うよ」

スタスタスタ

青年兵「それで、何でしょうか?」

左翼長「お前、東方司令部へ立候補したそうじゃねぇか」

青年兵「…ええ」

騎士長「何でまた…。責任でも感じてんのか?」

青年兵「それもないと言えば嘘になりますが……」

左翼長「……まだ、何か狙ってるのか?」

青年兵「私は今、翼をもがれ、檻に入っているも同然の身…」

騎士長「……」


52 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:10:50.63 ID:4cqPbFj0o
青年兵「そのような者が、何か出来るとお思いですか?」

左翼長「…なるほどな。あの野郎、大人しく畑仕事に興じているかと思えば…」

騎士長「しっかしよりにもよって……東でなくとも良かったろうに」

左翼長「全くだ。ウチに来てくれりゃあ頼もしい限りだったのによ」

青年兵「私が東へ行く事でが、今は最も効果的なんです」

騎士長「じゃあ、終えたら次は北に……」

左翼長「それはねぇ」

騎士長「…そうなのか?」

左翼長「次は本国。そん次は……なぁ?」

青年兵「……ご期待に添えるよう、頑張ります」

左翼長「期待してんぜ」

騎士長「さーて。世間話はここらで切り上げて、明日の打ち合わせだ」

左翼長「だな。明日の動向は俺とお前で行く。いいな?」

青年兵「はい。宜しくお願い致します…っ!」

それから数時間。三人は左大臣視察に際する対策に追われた。


53 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:11:28.38 ID:4cqPbFj0o
〜大陸港の町〜

魔道士「寄り道してたらすっかり遅くなっちゃった……」

カチャッ…チリチリン

魔道士「こんばんは〜」

青年「きたああぁぁっ!!」

老人「おぉ…っ、まごうことなき魔道士ちゃんじゃ!」

魔道士「えぇっ!?」

バーテン「おー、やっと来たか」

魔道士「バーテンさん…これは一体……」

バーテン「戦士から連絡貰ってな、今日来るっつーからよ」

そう言いつつバーテンは見せの掲示板を指差す。

魔道士「……『あの魔道士が本日来店!!』…って、ちょっと!!」

バーテン「つー事で早速、厨房お願いします」

魔道士「……も〜っ、仕方ないですねぇ」

バーテン「何だかんだ言いながらやってくれる。そういう所がいい女だよ」


54 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:11:59.32 ID:4cqPbFj0o


魔道士「お待たせしました〜っ。サーモンのムニエルにオムライスですっ!」

幼女「やったーっ!オムライスー!!」

母親「この人、魔道士ちゃんの料理を楽しみにしてたのよ〜」

父親「二人が話すものだから、次回こそはって思ってね」

魔道士「光栄です〜っ。お口に合うかどうか……」

父親「どれ……。んっ、これは美味い!!」

魔道士「ありがとうございます〜っ。えへへっ!」

青年兵「魔道士さん、こちらもいいかな?」

魔道士「はーい!今、伺います〜」

青年兵「実は君に、そ、その……詩を作ってきっ、きました!」

カチャッ…チリンチリン

戦士「おーっす。って、これまたすげぇ繁盛してんなぁ……」

魔道士「戦士さんっ!!」

青年「貴女はそう、まるで女神――」


62 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/07(月) 18:15:37.35 ID:d0h2Ycalo
青年兵、詩なんて作ってる場合かww


66 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:17:54.33 ID:4cqPbFj0o
>>54
本当だ!!「兵」要りません!青年!!青年です!!
ごめんなさい……


55 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:12:27.64 ID:4cqPbFj0o
戦士「何が起きてんだ?」

バーテン「見ての通りだよ。お前も手伝え」

戦士「うえっ、勘弁してくれよ。この荷物…一人で担いで来たんだぜ?」

魔道士「あ、そっか。北方司令部へ預けっぱなしでしたもんね……」

戦士「俺以外、いきなり居なくなっちまうもんだから焦ったよ」

魔道士「私も何が何だか……」

カチャッ

盗賊「……!?」

魔道士「盗賊さーんっ!!」

戦士「無事だったか!」

盗賊「……これは…?」

タッタッタ…ギュッ

魔道士「盗賊さんっ、寂しかったですよぉ〜!」

盗賊「……ど、どうも。それより苦しいんですが」

戦士「あとは……召喚士か」


56 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:13:00.13 ID:4cqPbFj0o


青年兵「ご馳走様でした……」

幼女「お姉ちゃん、まったねーっ!」

父親「また是非、食べに来るよ!」

魔道士「お待ちしてまーすっ!ありがとうございまいしたー!」

テクテクテク…パタン

戦士「そんで、何がどうなったんだ?」

盗賊「……よく…分からん」

魔道士「そうなんですよ〜。急に本国へ……」

戦士「本国?」

盗賊「…私は…海峡だった」

戦士「海峡!?」

バーテン「何かしらの作用で、みんなバラバラに飛ばされたって事か…」

魔道士「戦士さんは大丈夫だったんですか…?」

戦士「ん、あぁ。穴に落ちそうになった時、ゲーデにしがみ付いてやった」


57 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:13:27.41 ID:4cqPbFj0o
魔道士「……っ。無茶…しますねぇ」

バーテン「そんでお前だけ、無事だったってわけか」

戦士「無事…だったのかなぁ」

盗賊「…?」

戦士「そんでゲーデと対峙して……」

魔道士「一人でですかっ!?」

戦士「仕方ねーだろ。成り行きでそうなっちまったんだからよ……」

盗賊「…大丈夫だったのか?」

戦士「……まぁな。生かされたっつーか…見逃してくれたっつーか」

盗賊「…そうか」

戦士「お前はどうなんだ?」

盗賊「…海峡で助けられて……あとは特に」

バーテン「身体に異変とか、そういうのはないのか?」

盗賊「…うん。あ、1つ…あるかも」

魔道士「…?」


58 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:13:57.33 ID:4cqPbFj0o
盗賊「…魔力を失った。一時的なものだと…思うけど」

戦士「ゲーデに奪われたから、それかもな」

盗賊「……そうだ、そういえば……」

戦士「…?」

盗賊「…海峡北の森で…人と……」

夢とも現とも未だ分からぬ出来事。盗賊は精一杯の言葉でそれを伝える。

魔道士「……っ」

戦士「本当なのかよ…っ、それ……」

盗賊「……ああ。間違いない…はず」

戦士「その詩人って奴……多分アイツだ」

盗賊「…知っているのか?」

戦士「ほら、前に召喚士の魔力を暴走させたっていう…」

魔道士「伯爵を倒した……」

戦士「そうそう。間違いないと思う。特徴もソックリだ」

盗賊「……」


59 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:14:28.10 ID:4cqPbFj0o
バーテン「それに、確かに見たんだな?」

盗賊「…うん」

バーテン「光ったのは武器か、アクセサリーの類だろう」

盗賊「…だと思う」

バーテン「それに軍服……。内通者に間違いなさそうだな」

魔道士「……」

盗賊「…途中で魔物に遭遇して…追えなかったが」

バーテン「海峡の連中には伝えたのか?」

盗賊「…いや、海峡の者だったらと思い…伝えてない」

バーテン「…いい判断だ。しばらくは軍の奴に話すな」

盗賊「…そのつもりだ」

バーテン「全幅の信頼がおける奴がいれば……」

戦士「…全幅となると一人だな」

盗賊「……ああ」

魔道士「青年兵さんですね…っ!」


61 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:14:57.48 ID:4cqPbFj0o
バーテン「それなら、青年兵にだけは伝えておけ」

魔道士「青龍先生や大軍師さんはどうでしょう?」

戦士「信頼は出来るが、絶対とは言えねぇ」

魔道士「隊長さんや総司令は…?」

バーテン「階級の高すぎる奴は怖いところだな」

魔道士「そっかぁ……」

戦士「隊長か…隊長はアリかもしれねぇな」

バーテン「私情は挟むなよ?」

戦士「抜きにしてもだ。本人は語ったりしねぇけどよ……」

三日月島での出来事を戦士は当然、知っていた。

同じ特殊遊撃の仲間でありながら内通した副隊長。

彼はその裏切り者を非情の決断として、斬り伏せた事を。

戦士「…まぁ、話して動けそうなのは青年兵だろうけどな」

魔道士「それじゃ、今度あった時にお伝えしましょう!」

盗賊「…ああ。文にすると危ういかもしれんからな」


63 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:15:41.33 ID:4cqPbFj0o


戦士「……ふわ〜ぁ。ねっみぃ」

バーテン「少し横になったらどうだ?」

戦士「んー」

盗賊「…召喚士……来ないな」

魔道士「どうしたんでしょう…っ」

盗賊「…魔道士は大丈夫だったのか?」

魔道士「あっ、あの後ですか?」

盗賊「…うん」

魔道士「色々あったみたいですけど…あまり覚えてなくて……」

戦士「何じゃそりゃ」

魔道士「えっと……夢魔、という魔物に襲われて……」

戦士「夢魔?何だそれ?」

バーテン「夢の中に入り込んで生気を吸い取る魔物だよ」

戦士「なにぃ!?」


65 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:16:45.92 ID:4cqPbFj0o
盗賊「…大丈夫…なのか!?」

魔道士「ええ。もう大丈夫です」

戦士「しっかし、そんな厄介な奴…よく倒せたな」

魔道士「実は……天才さんと格闘家さんに助けて貰いました」

盗賊「……」

魔道士「私は……ずっと意識を失ったままだったんですけれど……」

戦士「……へぇ。どうやって倒すんだ?」

魔道士「さぁ。でも…私の夢の中に入り込んでくれたみたいで…」

戦士「人の夢の中に!?どんな技だよそりゃ……」

バーテン「不可能じゃねぇが……まさか出来るとは驚きだな」

魔道士「天才さんだからでしょうねぇ…」

バーテン「だな。相当の力量を有してない限り、無理だろう」

盗賊「……」

バーテン「普通は肉親者が入り込むか、逆に引っ張り出すんだがな」

魔道士「引っ張り出す?」


67 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:18:34.25 ID:4cqPbFj0o
バーテン「肉体から精神だけを引っ張り出してどうこうってやつだよ」

魔道士「色々と方法があるんですねぇ……」

バーテン「…ま、無事で何よりだ。夢魔は一晩で食らい尽くすからな」

盗賊「……恐ろしいな」

戦士「一晩ありゃあ、始末できる」

バーテン「どうだかなぁ」

戦士「…?」

バーテン「夢魔は色々と化けて出やがる。例えば……思いを寄せてる相手とか」

戦士「…そうなのか?」

魔道士「し、知りません…っ!!」

盗賊「……」

バーテン「…さーてと、俺もちょっくら仮眠取らせて貰うわ」

戦士「あの野郎、どこで何してやがんだか……」

盗賊「……」

魔道士「召喚士さん……っ」



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