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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その40
159 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 17:41:44.12 ID:XcNR2WSXo
 世間的に知られた朱雀召喚獣の最高位に君臨するフェニックス。

 その圧倒的ともいえる炎の力は、攻防一体の文字通り、最強に相応しいものである。

 ひとたび敵対する者へ噴き付けば、その対象は瞬時に灰と化し、

 また、ひとたび救済する者へ噴き付けば、その対象は瞬時に傷を癒す。

 今は前者。敵対すべき相手、つまりはネクロマンサーへと炎は向けられる。

 ほんの僅かの間ではあったが、共に旅し、共に戦い、共に寝食した仲間の仇。

 同門自身に憎しみと哀しみを植え付けた張本人。それが今、眼前に居る。

 朱雀最高位に立つフェニックスは、そのあまりにも凄まじい力の為か、

 今では一子相伝の専属召喚獣として扱う事が通例となりつつある。いや、なっている。

 そんなフェニックスを同門は1度、手放そうとした。ネクロマンサーの敗北直後だ。

 戦いという途方もない道に終わりはない。終わるとすれば自分自身が足を止めた瞬間だ。

 同門は己の不甲斐無さを痛感し、その足を止めかけた。でも止めなかった。

 仇を取る為、ネクロマンサーを討つ為に足を止めなかった。

 そしてようやくその好機が巡ってきた。これを終えさえすれば足を止められる。そう信じて。

同門「……ここで、全てを終わらせてくれる!!」


160 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 17:43:08.63 ID:XcNR2WSXo
 思わぬ登場に戸惑いを見せたマジシャンであったが、既に心は平静を保っていた。

 最初に遭遇したのは何年前であっただろうか。今日まで数回、戦ってきた。

 かつての盟友、魔剣士との戦い。そしてそれは前回、終わりを告げたはずであった。

 だがマジシャンは一命を取り留めた。それも奇跡としか言い表せない手法で。

 自身が望んだ事ではないとしても、本来はないはずの今を生きている。

 それが運命ではなく宿命だとすれば、自分の為すべき事は言わずもがな1つ。

 目の前に立ちはだかる魔剣士を倒す……事ではない。魔王サタンを倒す事だ。

 そもそもサタンさえ倒してしまえば後の事はどうにでもなるのだ。倒せさえすれば。

 だが、マジシャンの思っている以上に物事は進まないものである。

 今ここで魔剣士を無視する事は出来ないし、魔力の一切を使わず倒そうなど言語道断。

 選択肢は4つ。ここで全力をもって魔剣士と戦う。今すぐ地獄へ向かいサタンと戦う。

 逃亡してどちらも相手にしない。魔剣士ごと地獄に引きずり込み両者を相手にする。

 選択の余地などない選択肢であった。マジシャンは左手に魔力を集中させる。

 例え相打とうが魔剣士をここで葬る。そういった覚悟を決めた瞬間であった。

マジシャン「今度の今度こそ終わりだ。いや、終わりにしようじゃねぇか……ハッハ!!」


161 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 17:44:31.82 ID:XcNR2WSXo
 横にはかつての戦友がいる。正面にもかつての戦友がいる。

 師匠は今、そんな状況下に置かれていた。そして受け入れるべく深呼吸をした。

 かつての戦友マジシャンが左手より魔法を連発し、かつての戦友である魔剣士が

 森の木々を盾に、それをうまくかわしていた。そんな光景ずっと続いている。

 師匠はマジシャンの意図を汲んでいた。おそらくここで、魔剣士を仕留めるつもりだろう。

 幸い、ネクロマンサーは同門が一手に引き受け、分断されている。

 マジシャンと2人がかりならば……そんな思いが師匠の胸中にはあった。

  しかし、マジシャンの魔法と違い、召喚術は連発出来ない厄介なものである。

 長年、第一線で召喚士として戦ってきた師匠と言えど、今なおまだ未熟。

 最初の召喚にどれだけの魔力を充当すれば良いのか、それをどう立ち回らせるか、

 もしやられたら? 2撃目は? 複数召喚すべきか否か……枚挙にいとまがない。

 だからこそ召喚攻撃は後手になる。相手の動向を最後まで見極める。

 師匠はじっと様子を窺っていた。相手の動向を引き出す為に。

 かつは先手を切って、敵へと仕掛けてくれていた男に対して。

師匠「……一撃だ。余計な小細工は使わねぇ」


162 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 17:45:02.60 ID:XcNR2WSXo
 男は何も語らない。ただ剣を手に、旧友の攻撃をかわしていた。

 男は何も思わない。かつてこの地で自身が絶命した事についても。

 魔剣士は一切の感情を持っていなかった。魔族化した彼にとって、

 人間であった時の記憶はただの情報でしかない。感情が乗る事はない。

 マジシャンによる怒涛の攻撃を回避しつつも、師匠の動向を逐一、確認する。

 何かを狙っている。感情はなくとも刻まれた記憶と経験に体がそうさせる。

 魔剣士は両者に攻撃を仕掛けるタイミングを窺ってはいたが、

 まだそれを実行には移さなかった。答えは至極、簡単。ネクロマンサーである。

 魔剣士に課せられた役目はマジシャンと師匠を殺すというもの。

 しかし、その上にある最優先事項にネクロマンサーの護衛が存在する。

 同門と戦う主の姿。劣勢に陥る可能性は0に等しくとも、気は許さない。

 いつでも護衛に回れるような、そんな戦い方を常に行っている。

 実力者2人を相手にそれをいなし、更には護衛任務をもこなす。

 その腕を知る者ならば魔剣士にとってそれが苦にもならない事は一目であった。

魔剣士「…………」


163 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 17:45:44.66 ID:XcNR2WSXo
 思いもよらない展開にネクロマンサーは心躍っていた。

 サタンへの道、既に誰かがこの地を訪れるであろう推測はしていた。

 そしてそれが、かつてサタンと戦った者達、即ち、再来の連中である事も。

 それに加え同門の存在。そんな数奇な、因縁めいた戦いに心躍っていた。

 召喚獣フェニックスの攻撃。並大抵のものならば一瞬で灰と化すであろう炎。

 不死のネクロマンサーにはこれといった手ごたえはまだない。直撃もない。

 召喚獣による特殊な炎は対象者だけを焼き尽くす。故に、森は現存のままだ。

 同門が森の木々をも焼けと命じ、攻撃対象に転じれば、周囲は火の海であろう。

 しかしそれがない。そこにネクロマンサーは付け入る隙を見つけた。

 この朱雀召喚士は自分しか見ていないと。つまり自分以外を攻撃対象としていないと。

 サタンを前に無駄な魔力はこれ以上消費したくはない。ネクロマンサーは今の気持ちだ。

 不死と言えど回復には魔力を消費する。地獄へ行く前に枯渇しては話にならない。

 ネクロマンサーは一計を案じる事を企て、それを実行に移す事とした。

 己の人形に強く命じた。攻撃対象を変更しろ、と。

ネクロマンサー「ククッ、これ以上はもう良いでしょう。遊びは終わりです」


164 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 17:46:25.74 ID:XcNR2WSXo
 タァンッ!!

マジシャン「!?」

師匠「ちぃっ! 矛先を変えやがったかぁ!?」

マジシャン「逃がすかよ!!」

魔剣士「……」ヒュバッ!!

同門「――っ!!」

ネクロマンサー「ククッ、熱くなりすぎましたねぇ」

同門「こ……いつ……っ!」

ネクロマンサー「始末しなさい」

魔剣士「……」チャキッ

師匠「く……っそおおぉぉ!!」

 ボッ……ゴアァ……ゴゴオオォォォォ!!

魔剣士「……?」ズザッ

マジシャン「よしっ、フェニックスで押し返したか!」

師匠「違うっ、そんなハズがねぇ!」


165 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 17:47:00.72 ID:XcNR2WSXo
 ゴッゴオオオオォォォォ……

師匠「幾ら同門が使い手といえど、一瞬でここまで広範囲に炎を発するには無理だ!」

マジシャン「じゃあこの炎は何だってんだ!?」

 ザッザッザッ……

ネクロマンサー「……何?」

同門「お……前っ」

紅孩児「……」ザッ

師匠「魔物だとぉ!?」

マジシャン「バカな……入れるワケがねぇ……っ」

ネクロマンサー「見覚えがありますね。確か、牛魔王の……」

紅孩児「……オオォォ」

ネクロマンサー「……? ククッ、どうも様子がおかしいですねぇ」

紅孩児「オオオオォォォォーッ!!」ゴアッ!!

師匠「な、んだぁ!?」

マジシャン「サタンの瘴気にあてられてやがるんだ!」


166 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 17:47:40.57 ID:XcNR2WSXo
紅孩児「この紅孩児さまのオオォォ、前に立ちはだかる奴ァ! 敵だアアァァ!」

 ドッゴアアアアァァァァ!!

同門「ぐ……っ、阿呆が! 正気に戻れ!」

ネクロマンサー「敵味方、関係なしですか。面倒になってきましたね」

紅孩児「ガアアアアァァァァッ!!」

魔剣士「ッ!?」

 ドゴッシャアアァァァァ!!

師匠「魔剣士を吹き飛ばしただとぉ!?」

ネクロマンサー「これが解放された魔族の力……ッ」

紅孩児「オオ……オオオオォォォォ!!」

 ズギャッ!! ドゴォ!! バゴォッ!!

魔剣士「……ッ」

マジシャン「一方的……何つう圧倒的な力だ……っ」

紅孩児「オオオオォォォォ!!」

同門「……っ」


167 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 17:48:22.14 ID:XcNR2WSXo
 ドシャアアァァ

魔剣士「……ッ」

紅孩児「フウウウウゥゥゥゥ……ッ」

 言うなれば暴走。目の色は変わり、狂気じみた咆哮と息遣い。

 紅孩児はかつての乱暴な口調ながら明るいその姿を失っていた。

 今はただ、完全なる悪。己の前に現れた者を敵とみなし排除する。それだけ。

紅孩児「……ウウゥゥ」

ネクロマンサー「我が人形が、本体がここまでやられるとは……」

魔剣士「……」スクッ

ネクロマンサー「今宵はここまでとしましょうか。まだその刻ではないですしね。クククッ」ヒュッ

同門「逃……がすかっ!!」

師匠「追うな! 今は放っておけ!」

同門「……っ」ザッ

マジシャン「……次だ。次こそ終わりにしてやる」

魔剣士「……」ヒュッ


168 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 18:07:20.30 ID:XcNR2WSXo
マジシャン「……ふーっ」

師匠「んで、どーするよ?」

紅孩児「ウウゥゥゥゥ……ッ!」

マジシャン「どうする……って、逃げるしかねぇだろ!!」

師匠「だよなぁ!!」ダダッ!!

紅孩児「オオオオォォォォ!!」

師匠「何してる!? 逃げんぞ!!」

同門「……」

紅孩児「オオオオォォォォ!!」

マジシャン「バカヤロウ!! 早く逃げろぉ!!」

紅孩児「ウオオオオォォォォ!!」グアァ!!

同門「お前は、それでいいのか?」

紅孩児「――――」ビタァッ!!

師匠「……!?」

マジシャン「止ま……った……?」


169 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/06(金) 18:11:28.88 ID:XcNR2WSXo
同門「それでいいのかと言っている」

紅孩児「ウ……ウウゥゥ……ッ」

同門「魔王を目指す者が、魔王の好きにされていいのか?」

紅孩児「黙れッ、それ以上口を開けば……殺す!!」

同門「やってみろ。所詮、お前はその程度だったって事だ」

紅孩児「ワケの……分からん事オオォォォ!!」

師匠「もう相手にするな! 仕切り直しだ!」

同門「コイツはそこまで愚かじゃない」

マジシャン「!?」

同門「紅孩児、その程度じゃないよな? そうだろう?」

紅孩児「黙れエエェェェェ!!」

 グッ……グググッ

紅孩児「どうしてだ……ッ、何で……拳が動かない……ッ!!」

師匠「……まさか、理性を取り戻そうとしているのか……っ」

マジシャン「ありえねぇ……そんな、そんな事はよぉ…!」


183 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:43:06.75 ID:IGsL+jqvo


マジシャン「簡易的だが教会に結界を張った。これで大丈夫だろ」

同門「……」

師匠「気にする事はない。お前のせいはねぇさ」

マジシャン「しかしあの紅孩児って魔物、何なんだ?」

師匠「目的はよく分からんが、目指す場所は同じみたいだな」

マジシャン「……そんで、アイツはどこに行ったんだ?」

師匠「離脱したんじゃねぇか? 森から簡単に抜けられるとは思わねぇが」

マジシャン「確かにな。一時的にお前の言葉で理性を取り戻したが……」

同門「だが、正気には戻らなかった」

マジシャン「あの瞬間、目を覚ませただけでも大手柄だよ。助かった」

同門「……自分やアンタらを助けるつもりでやったわけじゃない」

師匠「分かってるよ。紅孩児の事も救ってやろうじゃねぇか」

マジシャン「そうだな。まずは休んで備える。明日だ、明日」

同門「……」


184 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:43:41.00 ID:IGsL+jqvo
〜次の日、大陸港の町〜

ジュニア「今日もいい天気だ、ハッハ!」

朱雀嬢「いよいよ、ですわね」

召喚士「このまま森へ?」

青年兵「いえ。夜まで待機し、森へ向かいます」

戦士「んじゃ、バーテンさんとこにでも行ってるか」

大軍師「宿は一応、こちらで手配しておりますので」

魔道士「どこですか?」

大軍師「みなとからすぐの、大きなホテルです」

魔道士「あっ、じゃあバーテンさんのお店も一緒ですね!」

青年兵「夕食の時間だけは決まっておりますが、自由行動とさせて頂きます」

サモナー「僕は、宿で休ませて貰うよ」

朱雀嬢「私達はどうしましょうかしらね」

玄武娘「腹ごしらえですの! 戦いの前はお腹が減るですのー!」

朱雀嬢「……」


185 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:44:07.92 ID:IGsL+jqvo
〜バーテンの店〜

魔道士「こんにちはー」カランカラン

戦士「……親父!? やっぱここにいたのか」

バーテン「来ると思ってたよ。待ってたぜ」

召喚士「あの、マジシャンさんは来てないんですか?」

バーテン「……まぁ座りな。飲み物は?」

召喚士「あ、すみません」

バーテン「マジシャンなら昨晩まで居たんだけどな。ちょうど入れ違いで行ったよ」

召喚士「行った?」

戦士父「サタン封印の地へだ」

戦士「何っ!?」

バーテン「お前らが来る前に道を開いておくんだとさ」

盗賊「……」

バーテン「どうせ目的地は一緒なんだ、そのうち現れるさ」

召喚士「そう、ですね……」


186 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:44:47.08 ID:IGsL+jqvo
戦士父「召喚士」

召喚士「はい」

戦士父「お前は、会ったのか?」

召喚士「えっ?」

バーテン「やめとけ。野暮な話だ」

戦士父「……」

魔道士「あの、誰と……ですか?」

召喚士「いいんです。バーテンさんの言う通りですよ」

バーテン「……」

召喚士「もしそれが宿命なら、そのうち会う事になりますから」

バーテン「自分から会いに行く必要はないってか? ははははっ!」

召喚士「そんな笑わないで下さいよ……っ」

バーテン「違う違う。笑ったのはアイツらの事さ」

魔道士「……?」

バーテン「どっちがガキなんだか、全く……笑わせてくれるよほんと」


187 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:45:18.13 ID:IGsL+jqvo
 ガチャッ!!

青年「魔道士ちゃんっ!!」

魔道士「へぇっ!?」

老人「新聞で読んだわい。これからサタン討伐なんじゃってな」

魔道士「皆さん……」

母親「きっと無事に帰ってきてね。祈ってますから」

少女「お姉ちゃん、これ……」スッ

魔道士「……?」

少女「私の宝物。クマのぬいぐるみ」

魔道士「いい……の?」

少女「私、なにもできないから……かわりにつれてって!」

魔道士「ありがとう……ありがとうみんなっ!」

老人「待っておるからの。また美味しい料理を食べさせとくれ」

青年「ままま魔道士ちゃん! あのその……戻ってきたらあのその……」

魔道士「ありがとうございますっ! えへへ!」


188 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:45:47.74 ID:IGsL+jqvo
〜夜〜

大軍師「束の間の休息でしたが、楽しめましたか?」

戦士「んーまぁな」

玄武娘「楽しんだですのー!」

朱雀嬢「あなたのせいで魔力じゃなくお金が枯渇しましたわよ……」

ジュニア「いいじゃねぇか。サタン倒したら億万長者だぜ、ハッハ」

魔王剣士「興味ないな」

ジュニア「何ぃ!? んじゃテメーの分も貰ってやる! よこせ!」

白虎長「食事の用意が出来たみたいよー。集まってー」

玄武娘「やったー! ご飯ですの〜!」

白虎嬢「相変わらず、よく食べますわねぇ〜うふふ」

火の先生「いいじゃろ。最後の晩餐になるやもしれんのだしな」

水の先生「不謹慎な事を言うもんじゃないですよ、全くもう」

魔道士「行きましょっか、召喚士さん!」

召喚士「はい!」


189 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:46:27.58 ID:IGsL+jqvo


白虎長「戦士くん、お客さんよ」

戦士「えっ? 客……?」

鍛冶娘「いたいたっ、間に合って良かったわよ!」

戦士「鍛冶娘っ!? それに……おやっさんにおかみさん!」

鍛冶屋「約束通り、出来たよ」

おかみ「はいこれ」

魔道士「これって……鬼丸さんの籠手?」

戦士「ああ。雷切の破片を付加してもらったんだ」

召喚士「じゃあ……雷切はもう……」

戦士「時間もねーしな。効率よく利用する方を選んだのさ」

鍛冶屋「そして……」

 ズイッ

盗賊「……ゾディアック」

召喚士「まさかっ、騎都尉さんの戟を……ゾディアック完成版を……!?」


190 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:47:03.14 ID:IGsL+jqvo
戦士「安心しろって。今の俺なら、使いこなす自信はある」

召喚士「……っ」

鍛冶娘「それとこっちもね。水行を付加した鎧に、土行を付加した兜!」

戦士「完璧だ……っ。本当にありがとよ!! 感謝するぜ!!」

鍛冶娘「へっへー。ちょっとは見直した?」

戦士「ああ。さっすがおやっさんとおかみさんの娘だぜ! いい仕事しやがる!」

鍛冶娘「でしょー!」

鍛冶屋「これで五行全ての防具と、ゾディアックが揃ったね」

おかみ「いいかい? 絶対に無茶だけはするんじゃないよ?」

戦士「ああ。本当にありがとうございました! 俺、絶対に……」

おかみ「言わなくても大丈夫っ! 祈ってるから」

鍛冶娘「絶対に負けないでよね! 私達の魂だってこもってるんだからっ」

鍛冶屋「どんなにいい武器だろうと、使い手次第だからね」

戦士「……ああ。肝に銘じておくよ!」

 今ここに、五行全ての武具と真なるゾディアックが戦士の元へと集った。


191 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:47:39.18 ID:IGsL+jqvo


ジュニア「んだぁ? 飲まねーのか?」

戦士「今回はやめとくよ。大事な戦いの前だし」

ジュニア「んだよ、真面目な奴だな」

戦士「そうじゃねぇ。楽しみは取っておくもんだろ?」

帝「成程。見事な覚悟だな」

王子「よし。では全員で禁酒とし、勝利までお預けといきますか」

ジュニア「ぐあっ!? おいおい、お前からも一言」

魔法剣士「知らん。興味ない」

ジュニア「……」

 サタン討伐前の、最後の晩餐は、笑顔や笑い声が絶えないものとなった。

 だがそこに酒の類などは一切なく、酔いなどに任せたものではない。

 ここに居る全員が、サタン討伐へと向かう全員が、心の底から笑った。

 そして心の底から見せる本当の笑顔はこのときを最後に消えた。

 サタンを討伐する、世界を平和に導くその時まで。


192 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:48:30.26 ID:IGsL+jqvo
〜数時間後〜

大軍師「時間です」

青年兵「魔力は全回復していないと思います。しかし、これ以上の時間は費やせません」

召喚士「ええ。分かってます」

青年兵「では、参りましょうか」スクッ

美女「どのくらいかかるわけぇ?」

大軍師「すぐですよ。2時間もかからない程度かと」

格闘家「特遊が先行して森に突入します」

男隊員「んじゃ行くぞ! また後でな!」ザッ

女隊員「ういッス!!」

 タッタッタッタッタッ……

玄武娘「うぅ〜。なんだか緊張してきたですの……」

朱雀嬢「やめてですわ、そんな事言うのは……」ブルッ

戦士「おっし、気合い入れていくぞ!!」

召喚士「うんっ!!」


193 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/08(日) 23:49:17.71 ID:IGsL+jqvo


 タッタッタッ……ザザッ

格闘家「!?」

男隊員「……アンタは!!」

戦士父「行くのか?」

女隊員「確か、戦士くんのお父さん。ていうか、初代特遊……ッスよね……?」

戦士父「俺も同行させてもらう」

男隊員「そいつは頼もしい。助かります」

戦士父「……では行こう」ザッ

格闘家「はい」

男隊員「道は?」

戦士父「把握している。任せておけ」

女隊員「発光弾は使うッスか?」

男隊員「要らん。代わりに道しるべのランタンを木に吊るしとけ」

格闘家「了解!」タタッ



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