■戻る■ 下へ
少女「私が……魔王?」
99 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:09:42.39 ID:3VwabWPNo

― 魔王城 会議室 ―


吸血鬼「では、魔王様は勇者と共闘し、その組織を潰す、という事ですね」

少女「はい。彼らは長い年月の間、その時々の支配者の裏に隠れて私や勇者の力の根源を研究し続けてきました。事実として2代前の魔王と勇者は彼らの手によって殺され、その遺体は未だに研究素材にされ、蹂躙され続けています」

竜王「聴いた事があります。魔王と勇者が共に姿を消した代がある、と」

獣王「なんてやつらだ……」

少年「だから俺はこいつと一緒にその組織を潰したい」

海王「勇者よ、貴方のその気持ちは理解しました。それに、魂の鎖という呪縛から解放されているということも。だが、貴方はそれでも勇者だ。いつ魔王様のお命を狙いかねないという事実を危惧しているのです」

少女「少年君はそんな事しないよっ」

吸血鬼「ですが魔王様、我々からすれば勇者は倒さねばならぬ仇敵」

少年「証を立てろって事か」

海王「そうなるな」

メイド長「しかし、証といってもどうしましょうか」

少女「ぅー……」

少年「俺がこいつを殺さないって保証がありゃいいんだな?」

吸血鬼「そんな証が立てれるのでしたら、ね」

少年「簡単じゃねぇか」グィッ

少女「へ?」

少年「これが証だよ!」ブチュー

少女「!?」

吸血鬼「なんと」

獣王「ほほぉ」

海王「あー、そういう事か」

竜王「ふむ、確かに。殺したい程思っている相手に」

メイド長「接吻はできませんね。しかも情熱的」


100 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:10:08.45 ID:3VwabWPNo

少女「!? !?」マッカ

少年「ぷはっ、どうだ!?」

メイド長「いえ、それよりも……」

少年「?」

吸血鬼「お前が今から魔王様に殺されると思うぞ」

少女「しょーぉーねーんーくーんー!?」ゴゴゴゴ

少年「い、いや、すまない。でもこれが一番手っ取り早いってーか……」

少女「だからといってみんなの目の前でっ!!」ゴゴゴゴゴ

竜王「なんと強力な魔力波動」

海王「メイド長、止めてやれ」

メイド長「そうですわね。魔王様、どうぞ落ち着きになってください。我々は勇者を認めましたわよ」

少女「……本当?」

吸血鬼「あのようなモノを見せられてしまってはしょうがないですね」ヤレヤレ

獣王「そのまま押し倒すかと思ったぜ」

少女「おおおお押したおっ!?」

少年「そこまではしねぇよ」

竜王「ひとまずはお前を認めよう。だが、これがいつまでも続くとは思わぬ事だ」

少年「それは、わかってる」

少女「……」

メイド長「ともかく、後輩を解放しなければなりませんね」

少女「魂の鎖も解除してあげなきゃ」


101 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:10:34.63 ID:3VwabWPNo

― 魔王城 地下牢 ―


後輩「勇者様を助ける為とはいえ、このような……」ジャラリ

後輩「あれから丸一日。果たしてどうなったのでしょうか」

ガチャガチャン

メイド長「お元気ですか?」

後輩「元気なわけないです。こんなじめじめとした処」

メイド長「十分元気そうですわね。お食事もきちんと摂っておられるようですし」カラッポ

後輩「しょ、しょうがないでしょっ。お腹が空いては戦はできぬと!」

少年「うん、元気そうだな」

少女「そうだね」

後輩「勇者様! よくぞご無事で」

少年「心配かけたな。もう大丈夫だ」

後輩「魔王に手を借りたのは痛恨ですが、勇者様がお戻りになられたのでしたら」

少女「んっと……」フォンッ

後輩「魔王、何をする気です」キッ

少女「怖がらないで。貴女を魂の鎖から開放してあげる」

後輩「なっ!? ひ、必要ありません! 私は勇者様と共に歩くのです。女賢者の意思だけではなく、私自身の意思でもあるのです!」

少年「でもよ、その所為で今回の事態を招いたのも事実だ」

後輩「勇者様……もしかして」

少年「うん。少女友が命と引き換えに俺の鎖を外してくれた」

後輩「なんてことを! 魂の鎖がなければお力の半分が使えなくなってしまうのですよ!?」

少女「そうなの?」キョトン

少年「っぽいな。いくつかの魔法が使えなくなってるみたいだ。力も落ちてる」

少女「そういえばそんなリスクがあったね」

少年「お前も魂の鎖からは解放されてるみたいだけど、なんでそんなに魔力が残ってるんだ?」

後輩「魔王は邪悪だからです!」

少女「うわぁ、ひっどいなぁ、それ。あのね、魔族って言ってもみんな良い人ばかりなんだよっ!」プンスカ

後輩「そんなのは知りません。邪悪なのは邪悪なんです」

メイド長「やっぱり殺しましょうか?」

少女「ダメだよぅ。少年君と約束したんだから」

後輩「勇者様、もしかして魔王と何かの取引をなさったのですか!?」

少年「取引じゃない。俺はやっぱりこいつが好きなんだって話だよ」ポム

少女「……」

後輩「……っ!」ギリッ


102 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:11:00.66 ID:3VwabWPNo

メイド長「その想い、本当に貴女だけのものなのでしょうか?」

後輩「何を言うんです。当たり前じゃないですか!」

少年「後輩、お前の気持ちは嬉しいよ。でもよ、俺にとってお前は相棒ではあるけど、それ以上でもそれ以下でもないんだ。わかってくれ」

後輩「……ゆ、勇者様は騙されているのです! 魔王の甘言に耳を貸してはなりませんっ」

少年「後輩、それ以上言うな。俺は勇者として目覚める前からこいつの事が好きだったんだよ。それなのに、魂の鎖の所為で少女友を失っちまった。全部俺の責任だ」

後輩「魔王の手下が何人死のうがそんなものっ」

少女「っ!」フォンッ

後輩「!? い、息がっ」

少年「少女っ、やめろ!」ギュッ

少女「……ごめんなさい」シュゥゥ

後輩「はぁっはぁっ……ほら見なさい。こいつは隙あらば私や勇者様の命を狙っているのです!」

少年「後輩!!」ギロッ

後輩「……」

少年「それ以上は俺も許さない。少女友は、間違いなく俺の親友なんだ」

少女「少年君……」

少年「許してやってくれ。こいつだってこいつなりに必死なんだ」

少女【顕れよ、斧持つ戦乙女スケッギォルドよ】コォォォッ

後輩「……やだ。やめてっ」

少年「ちゃんと、自分自身でこいつらと向き合おう。俺とも」

後輩「ダメっ! 私は……私なのっ!」

少女【彼の者をしばりつける鎖の呪縛を切り離せ】

後輩「いやっ! 私のこの『想い』を切らないで!」ポロポロ

少女「……」チラッ

少年「……」コクリ

少女【鎖よ、御魂を解き放て!!】フォォォンッ

後輩「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」フラッ

少年「っと」ガシッ

少女「これで、よかったのかな……?」

少年「わからない。でも、魂の鎖に縛られたまま生きるよりこうしたほうが良いはずだ」

少女「……メイド長さん、後輩ちゃんを客室に」

メイド長「承知いたしました」

少女「少年君は後輩ちゃんと一緒に居てあげてね」

少年「わかった」

少女「私も少し休みます。しばらくお願いします」

メイド長「ごゆっくりお休みください」スッ


103 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:11:26.72 ID:3VwabWPNo

― 魔王城 中庭に作られた少女友の墓 ―


少女「……」

少女「ごめんね、少女友ちゃん。私が巻き込んじゃったばっかりに」

少女「ごめんね……」ポロポロ

少女「少女友ちゃぁぁぁぁんっ!!」ウワァァァァンッ


獣王「おい、行かなくていいのか?」

吸血鬼「あのようなお姿の魔王様を慰める事は私達にはできませんよ」

獣王「まぁ、そりゃそうか。しっかし、今までに例がないくらい『普通』の魔王様だよなぁ」

吸血鬼「魂の鎖の中でも最も強力といわれている魔王の魂の鎖を自ら解き放ったくらいですからね。その潜在能力は歴代でも稀有ですよ」

獣王「見た目、中身共に弱々しいのに」

吸血鬼「その芯は非常に強いです。が、少女友さんを喪った痛手は計り知れないでしょうね」

獣王「勇者のヤローが支えてくれる、か?」

吸血鬼「わかりません。我々からすれば勇者は敵としか考えられませんが、もしかしたら新しい時代の幕開けなのかもしれませんね」

獣王「そう、なるかもな」

吸血鬼「果たしてどうなるんでしょうねぇ」


104 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:11:52.67 ID:3VwabWPNo

― 魔王城 魔王の寝室 ―


少女「ふぅ、すっごく泣いちゃったなぁ」シュッシュッ

メイド長「お髪(おぐし)が梳けましたよ」

少女「ありがとうございます」

メイド長「……魔王様」

少女「なんでしょう?」

メイド長「私の昔話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

少女「メイド長さんの、過去ですか?」

メイド長「はい。ご存知の通り、私は元々は人間でした」

少女「以前おっしゃってましたね」

メイド長「少女友様は、私だったのです」

少女「?」ホェ

メイド長「私の友だった女性は2代前の魔王です」

少女「そ、それって……」

メイド長「はい。勇者と共に捕らえられ生きたまま実験台にされ、嬲り殺しのような目に」ギリッ

少女「……」

メイド長「彼女達の敗因は最後までお互いに反目し続けた事です」

少女「魂の鎖に縛られたままだったんですね」

メイド長「はい。私は当時、あの二人の間に立ってなんとかして仲を取り持とうとしました。彼女達も魔王様と勇者のように幼馴染だったのです」

少女「魔王と勇者の魂は幼馴染に転生しやすいのかな?」

メイド長「それはわかりません……今まで調べた者がおりませんので」

少女「お話の腰を折っちゃってごめんなさい。続けてください」

メイド長「はい。私は魔界と人間界を往復しながら彼女達が反目する原因が魂の鎖だと突き止めました。ですが、解除方法を探している間に……」

少女「捕まってしまった」

メイド長「実験という名の拷問の果てに無残な殺され方をした二人の遺体は未だにあいつらの手に……」

少女「知って、います。どんな事をされたのか、どんな扱いをされたのか、そして、今でも」ギュッ

メイド長「申し訳ございません。魔王様には魂の鎖で受け継いだ記憶があったのですね」

少女「ううん、大丈夫です。話してくれてありがとう。続けてください」ニコッ


105 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:12:18.55 ID:3VwabWPNo

メイド長「……あの時、私は決めたのです。人間を捨て、長命の魔族となっていつか来る同じ境遇の魔王様と勇者を救おうと」

少女「……」

メイド長「少女友様には私が習得した呪法を与えました。あの呪法は魔王様程の魔力なら別として、普通の人間では相手を想う気持ちが強く、その命を捧げる覚悟がなければ使う事ができません。そして、少女友様はその想いを有しておられました。私は彼女に託したのです。鍵となってくれると信じて」

メイド長「ですから、少女友様が亡くなった最大の要因は私なのかもしれません」

少女「……そっか」

メイド長「お叱りは如何様にも受ける覚悟はできております。私の命でよければそれでも構いません」ペコリ

少女「じゃあ、メイド長さんに命じます」

メイド長「なんなりとお申し付けください」スッ

少女「これからもずっと私と一緒に居てください」

メイド長「……魔王様?」

少女「私がここに連れて来られた時、メイド長さんはいつも私の側に居てくれて、いつも私の事を見ていてくれて、色々と教えてくれたり、身の回りの事もしてくれました」

メイド長「それは職務ですから」

少女「ううん、それでも良いんです。私にとって、すごく心強かったから」ニコッ

メイド長「……」

少女「人間界に戻った時もメイド長さんが一緒で、何だかお姉ちゃんができたみたいだった。私、一人っ子だったから嬉しかった」

メイド長「私も、妹ができたようでした」

少女「だから、これからも私の側に居てください。お願いします。少女友ちゃんの代わりとかそんなのじゃなくて、私のお傍付のメイド長さんとして、お願いします」ペコリ

メイド長「そんな、お顔を上げてください!」

少女「命令、聴いてもらえますか?」

メイド長「当然です。魔王様のご命とあれば……いえ、私自身の気持ちとして、魔王様が許可して下さる限りは誠心誠意お仕えいたします。ですからっ」

少女「えへへ。メイド長さんを困らせちゃった」ニコッ

メイド長「……本当に変わった魔王様ですこと」クスッ


106 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:12:44.41 ID:3VwabWPNo

― 魔王城 中庭 ―


少女「花守りさん、おはようございます」

花守り「おはようございます、魔王様。花束のご用意しておきましたよ」

少女「ありがとうございます。お手数お掛けしちゃってごめんなさい」

花守り「いえいえ。少女友様も魔王様と同じように私が手塩にかけたこの庭園を気に入ってくださっていました。この花束は私からの気持ちでもありますから」

少女「本当に、ありがとうございます」

花守り「ありがたきお言葉でございます」ニコッ


少女「おはよう、少女友ちゃん。ほら、花守りさんが少女友ちゃんの為に花束作ってくれたんだよ。すっごく綺麗だね」

少女「私、もう泣かない。少女友ちゃんが救ってくれた私の想い、私の命。大切にするって約束する」

少年「俺も約束するよ」スッ

少女「少年君!」

少年「少女友、俺と少女はもう大丈夫だ。心配すんな」

少女「……後輩ちゃんは大丈夫?」

少年「ずっと寝てるけど、多分大丈夫だよ。朝方に一度目を覚まして謝ってた」

少女「よかった」

少年「あいつが目を覚ましたらもう一回話し合ってみる」

少女「うん……」

少年「心配すんな。俺はお前が大好きだよ」ギュッ

少女「私も、少年君が大好き」キュッ

後輩「こうまで見せつけられてしまってはお話もなにもないです」ムゥ

少年「後輩!?」

少女「あわわわわわわ」アタフタ

後輩「先輩の気配を探って来てみたらこれですもんね……」ハァ

少女「後輩ちゃん、雰囲気が柔らかくなったね」

後輩「……色々とすみませんでした。私も魂の鎖に振り回されていたみたいです」

少女「ううん。気にしてないよ」

後輩「ですが」

少女「ほぇ?」

後輩「先輩は渡さないです!」ズバーン


107 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:14:10.28 ID:3VwabWPNo


少女「わ、私だって渡さないもんっ!」ギュッ

少年「お、おいおい……」

後輩「勇者だとか魔王だとかそういうのはとりあえず置いておきます。それを踏まえた上で、私は先輩が好きなんですっ」

少女「私だってずーっとずーっと昔から少年君の事が好きだったもんっ!」

メイド長「朝から何をなさっているのですか……」アキレタ

少女「あっ、メイド長さん。おはようございます」

少年「おはようございます」

後輩「おはようございますです。色々とご迷惑をお掛けしました」ペコリ

メイド長「いえいえ。お身体の調子はいかがですか?」

後輩「お陰様で大丈夫です。でも、予想通りに魔力とかはかなり削られちゃいました」

メイド長「お仕着せの魔力や力は必要なのでしょうか?」

後輩「いえ。自分の力で掴まないとその力に振り回されるだけだって良くわかりました」

少年「それは俺も同じだよ。それに、力や魔力は経験を積めばそれなりには取り戻せるからな」ポン

後輩「はい」ニコッ

メイド長「それはそうと、これからどうなさるおつもりなのですか?」

少女「私は例の組織について調べます。少年君達は失った力を取り戻すつもりなんでしょ?」

少年「それが最優先課題だな。とはいえ、どうやって修業すっかなぁ」

後輩「一時的とはいえ、魔族と手を組んだ今、魔族や怪物を無暗に倒すわけにはいきませんからね」

少女「実際に倒すんじゃなくて、仮想世界で戦うのはどうかな?」

少年「そんな事できんのか?」

少女「竜王さん、来れますか?」

竜王「こちらに」バサッ

少年「早っ」

竜王「当然だ。魔王様のお言葉であれば何を置いても最優先されるのだからな」フン

少女「お手数お掛けしちゃってごめんなさい」

竜王「何をおっしゃるのです。我ら魔族は魔王様の下僕。いかようにもお使いください」

後輩「こうして見ると、魔王のとてつもなさがよくわかりますね。竜族すらかしずかせるなんて……」

少年「そういや、少女の魂の鎖はどうやって解除したんだ?」

後輩「いわれてみると……それだけの強大な魔力を考えると魂の鎖を解いたとは思えないです」


108 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:14:47.43 ID:3VwabWPNo

少女「ほぇ? 解いてないよ」

少年「まじで!?」

後輩「では、貴女は……」

メイド長「私から説明いたしましょう。魔王様は貴方達が魂の鎖に縛られ、暴れまわった半年間に魂の鎖を歴代魔王達の執念ごと取り込み、我が物となさったのですよ」

少女「あ、あはは」ポリポリ

少年「そんな無茶苦茶な」

竜王「魔王様は休む間も取らずに魂の鎖と向き合われ、克服なさったのだ。お主達のように力に振り回されたりなどしなかったぞ」

後輩「……ごめんなさい」

少女「あ、謝らないで。ね?」ニコッ

竜王「そのお優しさこそが魔王様の強さの素。全てを寛大なお心で包み込み、浄化してしまわれたのだ。我々とて信じられなかったが、目の前にその生き証人が居るからな」

少女「優しいだなんて……そんな事ないですよ。私は自分の思った事してるだけです」

メイド長「歴代魔王の中でも最強と言われる所以ですわね」ニコニコ

少女「あーうー」テレテレ

竜王「魔王様、私めに御用とは?」

少女「あ、そうだ。えっと、私が利用させてもらった事を少年君達にお願いしたいんですけど」

竜王「幻想空間ですね」

少年「幻想空間?」

後輩「聞いた事があります。というより、私に残ってる女賢者の記憶ですが……確か、仮想空間を構成して、その中であらゆる戦いの経験を積む事ができるのではなかったでしょうか」

少年「精神と時の部屋みたいなモンか」

少女「あはは、似た感じだねぇ」

後輩「となると、少女先輩も仮想空間で戦いを?」

竜王「いや、魔王様はあの空間で魂の鎖と向き合われたのだ。外から邪魔が入らぬからな」

少年「そこで俺達は戦闘経験を積んで、って事だな」

少女「そうなんだけど、もちろん仮想空間内で怪我をすると実体も怪我をしちゃうし、万が一死んじゃったら……」

後輩「実際に死んでしまう、と?」

竜王「当然だ。精神の死は肉体の死と同意義だからな。怖気づいたのならやめるか?」

少年「いや、むしろどんとこいだ」

少女「では、明日から二人には幻想空間に入っていただきますね。竜王さん、準備をお願いします」

竜王「魔王様の御心のままに」



次へ 戻る 上へ