■戻る■ 戻る 携 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その31
- 388 名前: ◆1otsuV0WFc [sage]
投稿日:2011/08/17(水) 20:01:10.04 ID:PmQwxf4vo
〜バーテンの店〜
魔道士「……そんな」
戦士「何とか……ならねーのかよ」
天才「さっきも言ったろうが。展開によってのケースバイケースだ」
盗賊「……つまり、趨勢次第では……助かる道も」
天才「まぁ、そうかもな」
召喚士「……?」
天才「さぁ、本国で右大臣様が準備してくれてる。そろそろ行くぞ」
戦士「おっしゃ!」
魔道士「あの……マジシャンさんは……?」
マジシャン「……」
天才「もちろん……行くよな?」
マジシャン「……役には立たねーぞ?」
天才「戦力だなんぞ思ってねぇよ。リハビリ代わりだ」
マジシャン「言ってくれるねぇ……ハッハ!」
- 389 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:01:40.04 ID:PmQwxf4vo
…
大軍師「それでは、このまま本国へと向かいます」
大軍師「マジシャン殿、占い師殿はこちらの馬車へ」
マジシャン「おう」
テクテクテク
占い師「……ねぇ」
天才「あん?」
占い師「……いいの?」
天才「ん、ああ。……お前に頼みがあるんだが」
バーテン「……俺、か?」
天才「ああ。今回の戦いでお前の力を借りたい」
バーテン「……あ? 俺の?」
天才「いくら、とうの昔に退役したっつっても、テメーの腕前……ありゃ才能だ」
バーテン「買いかぶりすぎだっつーの」
天才「左翼長のタコが射れない今、オメーしかいねーんだよ」
- 390 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:02:12.09 ID:PmQwxf4vo
バーテン「……あ? 優秀な射手ならそこらじゅうに……」
天才「数の問題だよ。でなきゃ頭下げてねぇ」
バーテン「……」
天才「とにかくだ、3日以内に南へ来い。徴兵かけてでも来て貰うからな」
バーテン「……何が見えたんだよ」
天才「来れば分かる。来なけりゃ世界は滅亡して終わりだ」
ザッザッザ
バーテン「頭下げてねーじゃねぇか……」
去りゆく天才を見つめ、バーテンはポケットからタバコを取り出し、煙をくゆらせた。
占い師「ちゃんと言わなくて良かったの?」
天才「アイツだって元は軍人だ、そんぐらい分かってんだろ」
占い師「……」
天才「それに、時として全て語る必要がない場合だってある」
占い師「そうね……」
天才「ほれ行くぞ、戦いはもう始まってるんだ」
- 391 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:02:52.94 ID:PmQwxf4vo
〜赤壁〜
南方副司令「敵の動きは!? 数もだ!!」
南方兵「南東国からの増援はどうだぁ!?」
西方兵「まだだ! 伝令、三日月島への救援要請を頼む!」
南方魔道長「……慌しくなってきたな」
南方参謀「情報が乏しいからねぇ……。ま、仕方ないわよ」
南方魔道長「前回の魔王討伐で、かなりの魔道兵を失った……」
南方参謀「……」
南方魔道長「今回はどうするつもりだ?」
南方参謀「さぁね。それを決めるのは司令や大軍師の仕事でしょ」
南方魔道長「……」
南方参謀「私達は私達のやり方で、南方を守ればいいのよ」
南方魔道長「……ま、そうだな」
南方兵「何ぃーっ!? ま、魔物なのか!?」
南方参謀「どうしたのっ!?」
- 392 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:03:34.43 ID:PmQwxf4vo
…
タッタッタッタッタ…バッ!!
南方兵「あそこです!! 北の空……っ!!」
南方魔道長「何だぁ!? いや待てよ……あれは……」
南方参謀「召喚獣!? 青龍召喚隊じゃない……?」
ガチャッ…ザッ
南方司令「何事か?」
南方参謀「北からの竜騎士隊が到着したみたいよ」
南方副司令「何!? もう着いたのか! 早い!」
南方魔道長「これで……勝てりゃいいけどな」
バシュウウゥゥゥゥ…スタッ
南方参謀「ご苦労様。早かったわね」
青龍士官「大事ですからね。それに、我ら竜騎士隊にとっては造作もない事です」
南方副司令「頼もしい限りだ。それじゃ早速、司令室へ行こうか」
青龍士官「はい」
- 393 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:04:05.42 ID:PmQwxf4vo
〜司令室〜
コンコン…カチャッ
南方参謀「司令、竜騎士隊が到着したわよ」
南方司令「おぉ、早かったな!」
西方参謀「連絡受けてから半日も経ってねぇぞ? ヒック」
青龍士官「それで、戦況は?」
南方弓長「動きはないわ。相手はゆっくりと進軍しているみたい」
西方参謀「丁度いい。作戦の大まかな流れを決めたかったとこだ……ヒック」
南方参謀「どうするの?」
南方弓長「私達の結論としては、赤壁で迎え撃つには危険じゃないかって……」
南方司令「篭城するには数が多すぎる挙句、ここからの退路がない」
南方副司令「同感だな。だがしかし、どうするというのだ?」
西方参謀「前線を押し上げるっきゃねぇわな」
南方魔道長「……つまり?」
南方司令「……南の町を使う」
- 394 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:05:46.58 ID:PmQwxf4vo
〜南の町〜
ヒュウウゥゥゥゥ…
ボス「……」
ザッザッザッザ
チンピラ「な、なぁ……そろそろ赤壁に戻らないか?」
ゴロツキ「あぁ。町人はもう全員避難しただろうし……」
チンピラ「なぁボス、このままじゃ俺達……魔物と遭遇しちまう……」
ボス「俺らはよぉ、物心ついた頃から親の顔も知らねぇ悪ガキでよ……」
ゴロツキ「!?」
ボス「戦災孤児だか捨てられたか……んな事ぁどうでもいい。だけどよ……」
チンピラ「……ボ、ボス」
ボス「そんな拠り所を持たねぇ俺達を育ててくれたのが……この町じゃねぇのか?」
ザッ
ボス「そんなこの町を俺はよぉ、見捨てるなんて事ぁ……出来ねぇんだよ!」
- 395 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:06:38.42 ID:PmQwxf4vo
〜赤壁〜
南方魔道長「つまり、南の町で迎撃し、魔王軍の戦力を削ぐって事か?」
西方参謀「ちょいと地図を見てくれ。奴らは遥か南からこっちへ向かってる」
南方弓長「そこで最初にぶつかるのはここ、南の町」
トントン
南方司令「ここで敵を迎え撃てば、奴らの進軍を東西に分断出来る」
西方参謀「そうすりゃ、東側は南東国の援軍、西側は南方司令部の増援」
南方参謀「その2つで当たる事が出来る……か」
南方副司令「だけどな、そんなもの……死にに行くも同然だぞ?」
西方参謀「だろうなぁ。分断ならいざ知らず、包囲されたら打つ手なしだ」
南方魔道長「自ずから死地に足を運ぶなんざ、誰も行かんだろ」
南方司令「居るではないか、ここに」
南方魔道長「……あ?」
南方司令「これは無謀ではない、勇敢なる戦いだ。我ら正義の南方戦隊のな!」
南方副司令「戦隊かどうかは置いといて、やっぱ俺らが行くしかないか」
- 396 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:07:32.20 ID:PmQwxf4vo
…
南方参謀「さーて、それじゃまずは敵戦力の把握ね」
南方弓長「どうやって?」
西方参謀「その為のコイツら何じゃないのかい? うぃ……ヒック」
南方司令「頼まれてくれるか?」
青龍士官「無論です。竜騎士隊、早速出るぞ!」
青龍兵「各員っ! 出撃翌用意!!」
南方参謀「いい? 交戦は絶対に控えてよ……?」
青龍士官「分かっております。そんな度胸はもうありませんよ」
南方副司令「それじゃ任せたぞ。同時に俺らも南の町で待つとしようか」
南方魔道長「出撃するぞ。偵察隊と先に出しておけ」
南方弓長「衛生兵と伝令も準備して。それから輸送隊もね」
西方参謀「兵はどの程度連れてくんだ?」
南方参謀「有志……かしらね」
西方参謀「がはははっ! 有志かよ、そりゃあいい!」
- 397 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:08:04.70 ID:PmQwxf4vo
…
西方参謀「……」
偵察隊「それでは先行して出発致します」
南方弓長「くれぐれも気を付けてね。私達も続きましょ」
南方司令「それでは、赤壁の指揮は任せたぞ」
西方参謀「い、いや……任せたって言われてもだな」
南方魔道長「西方司令もいるし大丈夫だろ。役立つか知らねーが」
南方副司令「そうそう。それに司令らも向かっているだろうしな」
西方参謀「俺が言いたいのはそっちの話だよ!」
南方司令「ん?」
西方参謀「有志って……50人もいねーじゃんかよ!」
南方司令「あぁ、それなら安心しろ。本当の力が出せる」
西方参謀「……は?」
南方司令「大きな悪へ立ち向かう時こそ、正義の南方戦隊は本領発揮を――」
西方参謀「……アホだ」
- 398 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:08:45.29 ID:PmQwxf4vo
南の町を更に南下した先、人間が立ち入る事など皆無であるこの地。
その上空を、真一文字で青龍召喚獣が隊列を連ねている。
バシュウウゥゥゥゥ
青龍士官(……もう間もなく、魔王軍の領土に差し掛かるか)
まず最初に気が付いたのは、先頭を疾走している1人の青龍兵であった。
青龍兵「……っ!?」
青龍士官「なんだこの音は? 地響き……?」
薄暗くなる夜の闇の奥。遠めには地面が波打つように蠢いている。
青龍士官「な……なんだ!?」
ゴゴゴゴゴゴ
青龍兵「――っ!!」
竜騎士兵「ま……まさかっ! まさかこんな……っ!!」
耳では伝わっていても、その光景を目の当たりにした彼らは驚愕と共に、
改めて魔王軍、さおして魔王の恐ろしさを痛感し、絶望を覚えた。
闇夜に光る数十万の瞳が光る大群は、整然と、そして悠々と北上を続ける。
- 403 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:43:36.86 ID:PmQwxf4vo
…
ザッザッザッザッザ
アスラ「……ん、あれは召喚獣か?」
ラクシャーサ「すっ、すぐに始末致します!」
ラーヴァナ「構わんよ」
ラクシャーサ「は……っ?」
ラーヴァナ「どうせ偵察だろう。放っておいて構わん、と申したのだ」
ラクシャーサ「し……しかし……っ」
アスラ「死にたいか?」
ラクシャーサ「……ッ!?」
アスラ「ラーヴァナ様が良い、と申しているのだ。貴様は逆らうのかな?」
ラクシャーサ「しっ、失礼致しましたぁ!!」
ラーヴァナ「まぁそうカリカリするな。折角の行軍が台無しになるではないか」
アスラ「各自、隊列は崩すなよ。小物など相手にする必要はない」
ラーヴァナ「そうだ。あくまで優雅に堂々と、だ」
- 404 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:44:06.36 ID:PmQwxf4vo
…
バシュウウゥゥゥゥ
青龍士官「……っ」
青龍兵「ひ、ひとまず南の町へ向かいましょう。先陣もいずれ到着するでしょうし」
青龍士官「だな。無人のうちに地形の把握と使えそうな物を選定しておこう」
ゴウッ…ドシュウウゥゥゥゥ
青龍兵「間もなく南の町……んっ!?」
竜騎士兵「今……何かいなかったか?」
青龍士官「降りるぞ。召喚は解除するなよ。敵に備えておけ」
オオォォォォ…スタッ
青龍兵「……人間?」
ボス「……?」
青龍士官「貴様等、ここで何をしている」
チンピラ「な、何って……魔王軍を待ち受けて……」
青龍士官「今すぐ退避しろ。邪魔だ」
- 405 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:45:09.32 ID:PmQwxf4vo
ボス「……あ?」
青龍士官「これから南の町は戦場と化す。ここに居ては危険だと言ったのだ」
ボス「じゃあ丁度いい。そのつもりでここにいるんだからな」
青龍士官「お前ら、国軍の者か?」
ボス「……だったら何だよ」
ザッザッザ…ガシィ!!
青龍士官「今がどんな時だか分かっているのか!」
ボス「……離せ」
青龍士官「何?」
ボス「俺はこの町で生まれ育った。そして国軍に入って南方を守り続けてきた」
グイッ
ボス「だからここにいんだろうが! 俺がこの町守らねぇで誰がやるんだよ! あぁ!?」
竜騎士隊「おい、この方が青龍先生だと知っての事か? 今すぐその手を……」
青龍士官「……構わん。分かった、ならば付いて来い。手を貸して貰おうか」
ボス「……」
- 406 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:45:43.36 ID:PmQwxf4vo
…
青龍士官「俺達はたった今、魔王軍の様子を見てきたところだ」
ボス「……」
ゴロツキ「やっぱり……大軍なのか?」
青龍兵「ハッキリ言う。敵の数は数十万は間違いない」
チンピラ「――っ!!」
青龍士官「正直言うが、綿密な作戦なくして勝利はまず不可能に近い」
ボス「……」
青龍士官「間もなく南方軍が合流する。地の利はアンタらが分かってるはずだ」
ボス「当たり前だ」
青龍士官「俺達、竜騎士隊は上空より出来る限りの援護をする」
ボス「んで、俺らが地上で敵を分断すりゃあいいんだろ?」
青龍士官「……そういう事だ」
ボス「……見せてやろうじゃねぇか。チンケな人間の意地ってモンをよぉ」
青龍士官「ああ。見せてやろう、召喚士の……国軍の、そして人間の力を」
- 407 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:46:22.99 ID:PmQwxf4vo
〜本国〜
召喚士「それでは、お気を付けて」
魔道士「私達も明日にはすぐに行きますから!」
大軍師「ええ、お待ちしていますよ」
天才「……お、来やがったな」
パッカパッカパッカパッカ
エリート「……ご苦労。いつでも出陣可能だぞ」
天才「おーう。今すぐ行くぞー」
エリート「もう……か?」
天才「いつでも行けるっつったろーがよ」
エリート「んむ、まぁ……な。おい、全軍出陣準備だ」
本国兵「ははっ! 各員、出陣するぞ! 目標は南方……赤壁!」
テクテクテクテク
占い師「お待たせ〜。さぁ、行きましょうか」
マジシャン「それじゃあ死地へ向かうとしようかねぇ……ハッハ!」
- 408 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:47:33.91 ID:PmQwxf4vo
戦士「アンタらも先に行くのか?」
マジシャン「残ってても特にやる事ねーしな。お前らはゆっくりしとけよ」
盗賊「……」
大軍師「本部と本国の兵でどの程度です?」
青年兵「先発隊がおよそ1万。総動員でも2万といったところです」
天才「分かっちゃいるが……明らかに劣勢だわな」
戦士「それを覆すのがアンタらの仕事じゃねーのかよ」
天才「ハーッハッハッハ! そりゃそうだわな!」
大軍師「本国での情報はどうなっていますか?」
エリート「余計な混乱を招かぬよう、報道規制は敷いていないが露出は控えている」
大軍師「成程、それが宜しいでしょうね」
天才「おっしゃ、それじゃあ出発すんぞ!」
エリート「全軍、出陣!」
マジシャン「そんじゃ、先に行って待ってるぜ」
召喚士「はい。また……明日!」
- 409 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:49:49.48 ID:PmQwxf4vo
お盆期間中は随分とさぼってしまいました…ごめんなさい!
明日からまた頑張りますので、ご支援宜しくお願い致します!
暑い日々が続きますが御身体など壊さぬようお気を付けて!
それでは失礼致します!おやすみなさい!ノシ
- 415 名前:NIPPERがお送りします(東海) [sage] 投稿日:2011/08/18(木) 08:20:42.03 ID:PAJP/XGAO
>>1乙
最近の主人公は天才だな
カマセ臭を醸してた頃が懐かしい
- 420 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 17:54:42.30 ID:oWvJAaLEo
ドドドドオオォォォォ…
戦士「よし、俺らも明日に備えてホテルに戻るか」
召喚士「そうだね」
盗賊「……ん? あれは……っ」
テクテクテク
サモナー「やぁ、やっぱり召喚士君達だったか」
魔道士「サモナーさん!」
召喚士「西に戻ったんじゃなかったんですね」
サモナー「大きな戦いが始まってる。やると決めた以上、もう戻るつもりはないよ」
召喚士「……なるほど」
サモナー「それより召喚士君、何か……あったかい?」
召喚士「えっ!?」
サモナー「いや、以前より少し……晴れた顔をしているから」
召喚士「……ええ、まぁ」
サモナー「もしかして召喚術の事かな?」
- 421 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 17:55:31.24 ID:oWvJAaLEo
…
サモナー「済まないね。立ち話のような形になってしまって」
召喚士「いえいえ。流石に街中へマーメイドさんは連れて行けませんよ」
マーメイド「私の事なら気にしなくていいのに……」
召喚士「……いや、流石にその……何でもないです」
サモナー「それで、詳しく聞いてしまっても大丈夫かな?」
召喚士「あ、ええ……」
街外れにある池のほとりに腰掛け、召喚士は話を始める。
内容は勿論の事、先日起きた出来事の一部始終である。
召喚士「……と、言うわけなんです」
サモナー「…………」
魔道士「私も……ビックリしました」
サモナー「だろうね。にわかにはとても信じ難い話だね」
召喚士「ええ……」
サモナー「でもまぁ、今なら信じるしかないよね」
- 422 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 17:56:17.11 ID:oWvJAaLEo
…
サモナー「つまり召喚士君には、予め複数の属性による血を持っていたわけだ」
召喚士「ええ、そういう事のようです」
サモナー「おそらくその発想は古よりあったはずだよね」
召喚士「ですね。でなくば父達も研究にはこぎ付かなかったはずです」
サモナー「うん、そうだね。しかし先人らは到達出来なかった」
召喚士「はい。やはり普通は有り得ない事なんです」
サモナー「それを召喚士君は、奇跡的に為し得たわけだ」
召喚士「ええ。予め白虎召喚獣を所有しながら、別の精霊召喚獣を得たんです」
サモナー「そこで不自然が生じたわけだ。結果、それによって道は拓けた」
召喚士「はい。1つの属性のみではなく、全ての道が拓けたんです」
サモナー「そしてそれは君の父である白虎次男さんが成し遂げた……」
召喚士「人間が召喚獣になる……という事です」
サモナー「やはり間違っていなかった。人も召喚獣も……命は繋がっているんだ」
召喚士「……はい。サモナーさんの言う通りでした」
- 423 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 17:57:14.09 ID:oWvJAaLEo
テクテクテクテク
戦士「飲み物持って来たぞー」
盗賊「……ついでに夜食も。もぐもぐ」
魔道士「ありがとうございますっ、えへへ!」
召喚士「サモナーさんもどうぞ」
サモナー「あ、うん。ありがとう」
戦士「そんで、話はまとまったのか?」
サモナー「うん。やっぱり研究は間違いではなかったんだ」
召喚士「ただ、それはあくまでも禁呪です」
サモナー「……確かに、そうだね」
召喚士「父は死の寸前、止む無く召喚獣となりました」
盗賊「……」
召喚士「それも良いとは思いませんが……」
サモナー「普通の人間が召喚獣になるなんて、それは人の業……かな?」
召喚士「だから俺は、止めなくちゃいけないんです」
- 424 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 18:00:17.73 ID:oWvJAaLEo
サモナー「止める?」
召喚士「父の残した資料を、手にした人間がいます」
サモナー「それってまさか……」
魔道士「……神官さんっ!?」
召喚士「ええ。神官さんはそれを元に何かしようとしています」
盗賊「……確か彼は……召喚獣の研究を」
召喚士「……はい。古の召喚獣……アヌビスの研究です」
戦士「おいおい……っ、まさかアヌビスの研究にそれが……」
サモナー「そうか……っ! そういう事だったのか……!」
魔道士「……?」
サモナー「アヌビス。それは、己の命を犠牲にして召喚獣となる事……だね?」
召喚士「俺も全く同じ予想です。神官さんは研究の末、それを突き止めた」
戦士「それで女侍達に依頼をして、その資料を探させたのか!」
魔道士「それってまずいじゃないですか!」
召喚士「……神官さんは自分の命を犠牲にするつもりです。絶対に止めなくては」
- 425 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 18:01:21.59 ID:oWvJAaLEo
盗賊「……何て事を……っ」
サモナー「……分かった。その役目、僕が引き受けよう」
召喚士「……」
サモナー「彼は今、何処に? 西国かな?」
召喚士「神官さんは三日月島にいます」
サモナー「三日月島……か。よし、明日にでも訪ねてみよう」
召喚士「いいんですか?」
サモナー「うん。こういった事でした力になれないからね」
召喚士「……じゃあ、お願いしてもいいですか?」
サモナー「任せてくれ。何かあったらワークショップ経由で連絡するよ」
召喚士「ありがとうございます。それじゃ、お願いしますね」
サモナー「ああ。おっと、時間を取らせてしまったね。そろそろ……」
魔道士「あっ、そうですね。私達も戻りましょうか」
召喚士「……ええ」
サモナー「それじゃ、みんなも頑張って……いや、生きてまた会おう」
- 426 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 18:02:18.52 ID:oWvJAaLEo
…
サモナー「……」
マーメイド「次は、三日月島って所へ行くの?」
サモナー「あ、うん。本国からはそう遠くないはずだよ」
マーメイド「……」
サモナー「な、何?」
マーメイド「サモナー。貴方……何か考え事してない?」
サモナー「うーん。まぁ何ていうか……召喚術の研究も色々と――」
マーメイド「嘘」
サモナー「……」
マーメイド「……絶対に、勝手な真似はしないでね」
サモナー「マーメイド……」
マーメイド「貴方には貴方の、ちゃんとして人生があるんだから」
サモナー「……ああ、分かっているよ。マーメイド」
マーメイド「……」
- 427 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 18:03:21.34 ID:oWvJAaLEo
…
ザッザッザ
戦士「大丈夫かね、サモナーさん」
魔道士「何がですか?」
戦士「いや……なんか企んでるんじゃねーかと思ってよ」
召喚士「……」
盗賊「……あ奴には生き甲斐がある。下手な真似はせんだろうさ」
召喚士「……」
戦士「余計な心配だわな。それよりも俺らは俺らの心配をせんとな」
魔道士「召喚士さん、魔力はどうですか?」
召喚士「えっ、ああ……微々たるものですけど、少しずつ戻ってますよ」
魔道士「良かったぁ……っ!」
戦士「そんじゃ今日はゆっくり寝て、朝一で南方へ向かうぞー!」
魔道士「おーっ!」
盗賊「おー」
- 428 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 18:05:03.27 ID:oWvJAaLEo
〜ホテルの部屋〜
召喚士「……ふーっ。サッパリした。戦士〜」
戦士「ぐごーっ」
召喚士「もう寝てる……。珍しいなぁ」
テクテクテク
召喚士「ふー」
召喚士はベッドへ腰を落とし、窓から夜空を眺め、物思いに耽る。
本当に三日月島へ、サモナーを行かせて良かったのかどうか。
おそらくサモナーは白虎次男の残した研究資料を欲している。
確信はないが、召喚士はそう思えて仕方がなかった。
それは何故か。答えは至極簡単。召喚獣になる事が出来るからだ。
サモナーが召喚獣になる事を望んでいるか否か。明白であった。
全てはマーメイドの為。人間として残り僅かとなった命を天秤にかければ、
その選択肢は選択するにも及ばないのかもしれない。しかし止める権利はない。
召喚士はサモナー自身の意思にそれを委ねた。彼が自身で答えを出す為に。
次へ 戻る 戻る 携 上へ