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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その19
- 239 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2010/08/29(日) 21:45:55.65 ID:gxNqrCso
〜辺境の村〜
魔法剣士「……」
眼鏡「…………」
カサッ…テクテクテク
村人「…まだ気付かんかえ?」
魔法剣士「……ああ」
村人「ここへ連れてきたワーカーも投薬しとったが…」
魔法剣士「先程与えた」
コトッ
村人「ほれ、水じゃ」
魔法剣士「……」
村人「…気にするな。これぐらいしか出来んでな」
魔法剣士「…いや、助かる」
村人「アンタも少し眠った方が良い。寝とらんのじゃろ?」
魔法剣士「……すまんな」
- 240 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/29(日) 21:46:35.10 ID:gxNqrCso
魔法剣士は村人の差し出す布を受け取り頭を下げる。
村人「…それじゃ、何かあったら遠慮せず言うとくれ」
魔法剣士「…ここに連れてきたワーカー」
村人「……?」
魔法剣士「その人は?」
村人「…さぁ。中年のガタイが良い男じゃったが、そのまま去って行ったぞい」
魔法剣士「……そうか」
村人「もうじき日も暮れる。晩は村の広場に来るといい。炊き出ししとるから」
村人は微笑み、その場を去って行った。
魔法剣士「……」
魔法剣士は壁に寄りかかり、座ったまま布を身体へ被せる。
ゴソゴソッ…バサッ
魔法剣士「……」
眼鏡「……」
眠る眼鏡を見つめ、魔法剣士もしばしの仮眠をとった。
- 241 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/29(日) 21:47:25.17 ID:gxNqrCso
〜北の港〜
戦士「……うーん」
召喚士「これなんかどう?」
戦士「おぉ……って、すげぇ高いじゃん!」
召喚士「え?あ…本当だ……」
戦士「無理無理、俺一人でこんなモン申し訳ねぇって」
召喚士「いや、でも…必要な物だし……」
戦士「確かに小手ってのは重要な装備だ。でもこれは幾らなんでも…」
召喚士「……そっかぁ」
戦士「理想は五行付加の付いたヤツなんだが…桁が違うな…」
召喚士「うん…」
戦士「今は手ごろなこの辺のでいっか…」
召喚士「…薄手だけどいいの?」
戦士「盾もあるし軽い方が武器振りまわすのに楽だからなぁ」
召喚士「…そっか。小手一つでも選ぶのは重要なんだね…!」
- 242 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/29(日) 21:51:49.11 ID:gxNqrCso
…
店員「ありがとうございましたー!」
戦士「お前はいいのか?」
召喚士「う〜ん…。特に買う物ないしなぁ…」
戦士「…そっか」
召喚士「マジシャンさんの情報も特にないね」
戦士「まぁな〜。ワーカーでも国軍付で情報も薄いしなぁ」
召喚士「うん。拠点があるってわけでもないもんね…」
戦士「ネクロマンサーの動きを追った方が賢明かもな」
召喚士「うん。魔王軍が動いているなら合流する可能性はあるしね」
戦士「やっぱり北方司令部に向かうのが確立高そうだわな」
召喚士「司令部にマジシャンさんがいるかもしれないしね…!」
戦士「そうだな。とにかくこの街にはもう用無しだな」
召喚士「うんっ。早いところ北方司令部へ向かおっか」
戦士「おう!」
- 243 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/29(日) 21:52:38.28 ID:gxNqrCso
テクテクテク
戦士「……ん?」
召喚士「…何だろ」
中央の広場よりハープの奏でる優しい音色が響き渡る。
〜♪
召喚士「……なんだか…心落ち着く良い音色だね」
戦士「ああ…。こういうのよく分からん俺でも…何か感じるものがあるよ」
音に聞き入る二人の背後に、男が立ち声をかける。
男「……ふぅ」
戦士「……?」
男「……素晴らしい音色だ」
召喚士「詳しいんですか…?」
男「ハープ…というには、やや小さいが……ふぅ」
戦士「へぇ。あれ…ハープなのかぁ」
男「人々の聞き入る安堵の顔…。まるで天国のようだな」
- 244 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/08/29(日) 21:53:12.16 ID:X3u8DtUo
更新来たー!
この世界にはエンチャンターもいるのかな?
- 245 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/29(日) 21:53:21.74 ID:gxNqrCso
召喚士「……ええ」
男「…故に危うい。神か…はたまた悪魔か…ふぅ」
召喚士「え…?」
男「……ふぅ」
テクテクテク
戦士「……何だ…アイツ?」
召喚士「さ、さぁ…?」
詩人「……」
おじさん「…ん?もう終わりか。もっと聞いていたかったよ」
詩人「…すみません」
おばさん「本当だねぇ。ずっと聞いていても飽きないくらいだ」
詩人「ありがとうございます」
戦士「終わったみたいだな」
召喚士「そうだね」
召喚士は詩人の目の前へ向かい、足元の箱へ小銭を入れる。
- 246 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/29(日) 21:54:36.76 ID:gxNqrCso
チャリッチャリンッ
召喚士「素晴らしい演奏でした」
詩人「…ありがとう」
戦士「んじゃ」
テクテクテク
詩人「……君達だったか」
テクテク…ピタッ
召喚士「……え?」
詩人「…ここ最近、殺生を行ったね?」
戦士「!?」
詩人「幾ら洗い流そうと拭おうと、決して消えはしない血の臭い…」
戦士は慌てて己右腕を鼻に近づけ、くんくんと嗅ぎ始める。
詩人「それは自らの魂にこびり付き、一生消える事はないものさ…」
召喚士「……」
詩人「…余計なお世話だったかな。失礼…」
- 247 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/29(日) 21:55:39.92 ID:gxNqrCso
ザッ
召喚士「あ、あの…っ」
詩人「……?」
召喚士「あなたは…一体……?」
詩人「…ただの吟遊詩人さ。縁があればまた…会う事もあるだろう」
テクテクテクテクテク
召喚士「…………」
戦士「……行く…か」
召喚士「……うん」
テクテクテク
召喚士「ここで待っていれば分かるかな…」
戦士「…だな。もうちょいしたら来るだろ」
召喚士(……一生消えはしない、か)
戦士「…何だったんだろうな…アイツ」
召喚士「え?あ、うん……」
- 248 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/08/29(日) 21:56:13.87 ID:FfkptWso
男はもしかして賢者…ってわけじゃないか…
- 249 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/29(日) 21:56:34.95 ID:gxNqrCso
タッタッタッタ
魔道士「あっ、いたいた!」
盗賊「…ただいま」
召喚士「おかえりなさい。買えましたか?」
盗賊「…あ、うん」
魔道士「マジシャンさんの手掛かりは何かありましたか?」
召喚士「いや、特にありませんでした」
戦士「ワークショップでも特にないんじゃお手上げだよ」
魔道士「そうですかぁ…」
盗賊「…あとは?」
召喚士「いえ、もう買う物は大丈夫です」
戦士「そんじゃあ行くとすっかね!」
魔道士「はいっ!行きましょう〜!!」
盗賊「…行こうか」
身支度を整えた四人は、北方司令部を目指し北の港を旅立った。
- 250 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/29(日) 21:59:22.76 ID:gxNqrCso
>>244
専門のエンチャンターはいないかもしれませんね…
いや、いるかもしれませんが…ど、どうなんだろう…
魔道士のような魔法付加や、鍛冶屋の結界石合成、
あとは博士などの研究機関あたりがそう言えるかもしれませんね〜
>>248
……ふぅ
- 251 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/08/29(日) 22:08:15.89 ID:vDx/3SAo
>>1乙
いきなり新キャラが二人も…
男の方は分からんが…何かありそうだしなー
- 253 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/08/29(日) 23:05:02.56 ID:SwfZkhw0
北の森でめがねを助けた詩人でしょ
オルペウス!!
- 254 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/08/29(日) 23:25:41.40 ID:c1IWqQAO
眼鏡の正体見抜いてたやつだっけか
- 255 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 00:00:00.25 ID:s2sBkVEo
〜辺境の村〜
魔法剣士「…………」
……――
?『……あ…あ……ぁ…っ』
父『……逃……げ…ろ…』
キョロキョロッ
少年『……っ!!』
母『……』
妹『ママーッ!起きてーっ!!足が痛いよぅ…!』
?『…う……うぅ…っ…!!』
父『早……く…逃げ……』
男『親父さんの言う通りだ!早く逃げろーっ!!』
女『足がすくんでるみたい…!私が連れて行くわっ!』
男『頼むぞ!!この化物…並大抵じゃない!!』
女『ごめんね!……先に逝ってて!すぐに逝くからっ!!』
- 256 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/08/30(月) 00:01:28.05 ID:GF2ErMgo
なんか魔法剣士って主人公っぽいキャラしてるよな…
- 257 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 00:04:38.93 ID:s2sBkVEo
タッタッタッタッタ
?『父さん!!母さんっ!!……い、妹…っ!!』
?『グルオオオォォ!!』
?『みっ、みんなぁ…!!やめて!もうやめてよぉー!!』
女『ゴメンね…!ゴメンね!!』
タッタッタッタッタ
妹『ママーッ!!お兄ちゃ……』
グシャアァァッ!!
?『――!!』
ガシッ
女『見ちゃ…駄目よ…!!』
女は抱きかかえる少年の目を塞ぐと、止まらぬ涙を気にも留めずひたすら走る。
?『…う……うっ…う…っ!!』
タッタッタッタッタ…グイッ
女『…いい?決してここから出ちゃ…駄目よ?』
- 258 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 00:06:06.25 ID:s2sBkVEo
女は涙ながらで笑顔を見せ、その場を立ち去る。
?『……ふ……うぅ…う…っ』
ドドオオォォンッ!!…ズガァッ…ドゴォッ!!…ドズウウゥゥンッ!!
?『……ひぐ…っ……ひっ…』
暫くの後、静寂となった辺りに、少年のすすり声だけが響く。
?『……ひ…っく……ひぐぅ…』
……ン…ゥン…ズゥンッ…ズゥン…ズンッ…ズンッズンッ
?『――っ!!』
結界石の針詰められた納屋の隙間から見える、おぞましい怪物の姿。
狼のような複数の頭部と巨大な全身は真っ赤に染まり、大きな遠吠えを上げる。
?『オオォォォォ!!』
カッ!!……ドッズオオォォォォンッ!!
?『ぐ……っ…あぁーっ!!』
ガラガラガラッ…ドシャアァッ…ドドォ
?『ォォォォ…ッ!!』
- 259 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 00:07:50.36 ID:s2sBkVEo
…
兵士『……こっちだ!子供が埋まっているぞ!!』
衛生兵『まだ息はあるのか!?』
兵士『おそらく!微かに呻き声が聞こえるっ!!』
ガラガラッ…ゴトッ
衛生兵『…おいっ!しっかりしろ!!』
?『………ぅ……う』
兵士『よーし!まだ生きてるぞ!!』
衛生兵『生存者は……この子だけ…か』
兵士『……無残なもんさ。老若男女お構いなしだ』
衛生兵『さっき見たよ。年端もいかぬ少女まで無残に斬り刻まれていたよ』
?『……うぅ…う…っ』
兵士『お…!!坊主!聞こえるか!?』
衛生兵『……自分の名前、分かるか!?』
?『……魔…法……剣士』
- 260 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 00:22:32.24 ID:s2sBkVEo
――……
ガバッ!!
魔法剣士「……はっ…はっ…は…っ」
飛び起きた魔法剣士は額の汗を拭い、目を丸くする。
魔法剣士「……眼…鏡…?」
バッ…タッタッタッタッタ
魔法剣士「……おい!」
村人「……?おぉ、どうなすった?」
魔法剣士「眼鏡…っ、あの病人を知らんか!?」
村人「目覚めたのか…!?見とらんが……」
魔法剣士「……っ!!」
バッ…タッタッタッタッタ
魔法剣士「はぁ…はぁ……はぁ」
タッタッタッタッタ…ザザッ
魔法剣士「……っ」
- 261 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 00:28:01.42 ID:s2sBkVEo
犬「……ワンワンッ」
魔法剣士「…ご主人はどこだ?」
犬「ワンッ!」
タッタッタッタッタ
魔法剣士「おいっ、待て…っ!」
タッタッタッタ…
魔法剣士「ど…っこに……」
犬「ワンワンッ!!」
タタタッ…ザザッ
魔法剣士「はぁ…はぁはぁ……」
息を切らしながら顔を上げる魔法剣士の目の前に座る背中。
魔法剣士「……眼…鏡」
眼鏡「……やぁ。ありがとう…君が助けてくれたのかい?」
魔法剣士「い…いや……」
眼鏡「…そうか。何だか……久々だね」
- 262 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 00:35:51.90 ID:s2sBkVEo
それでは失礼致します!ご支援ありがとうございました!ノシ
- 264 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/08/30(月) 00:38:56.78 ID:GF2ErMgo
>>1乙!
ていうか今回も続き気になるぞ…
回想シーンから考えると…
- 266 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/08/30(月) 00:45:31.13 ID:7FSA4IAO
>>1乙
夢の内容が、読解力の皆無プラス頭の中の消しゴムが仕事頑張りすぎてる俺にはよくわからんかった
つまりどういう事なのか、誰か3行で教えて
- 269 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/08/30(月) 00:51:23.31 ID:S48Jmp2o
>>266
魔法剣士の出生。
魔物の攻撃により家族含め村全滅。
結界石を敷き詰めた納屋(おそらく子供一人入るのが限界)のおかげで魔法剣士だけ生き延びる。
- 270 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/08/30(月) 00:53:53.46 ID:GF2ErMgo
>>266
魔法剣士は見た!
犬の顔が複数あるデカイ魔物を!
それってもしかして…
- 272 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/08/30(月) 07:59:31.98 ID:7FSA4IAO
>>269-270
なるほど、ありがとう
つまり天才=マスクドジーニアス疑惑浮上って事かな
- 274 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/08/30(月) 10:29:42.61 ID:hkQtkMDO
>>1が描く人物はどうしてこうも魅力的なんだろう
眼鏡とか魔法剣士とか脇役のはずなのに感情移入しちゃうよね
- 282 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 17:13:47.38 ID:fU0OXlQo
魔法剣士「いや…久々ってまだ一ヶ月程度しか…」
眼鏡「…そうだっけ?あはは…っ」
眼鏡は横で尾を振り座る子犬の頭を撫で、ゆっくりと起き上がる。
魔法剣士「大丈夫…なのか?」
眼鏡「お陰様で」
魔法剣士「持病か?」
眼鏡「…いや、そんな事はないよ」
魔法剣士「……」
魔法剣士「傷はあるが命に別状はない」
眼鏡「ありがとう。もう大丈夫だ」
ザッ
魔法剣士「あ……」
眼鏡「……?」
魔法剣士「…腹…減ってないか?村で炊き出ししているそうだ」
眼鏡「……食事、食事かぁ」
- 283 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 17:14:15.71 ID:fU0OXlQo
ザッザッザッザ
村人「…おぉ、いたかえ?」
魔法剣士「ああ。…こちらが面倒を見てくれた村の人だ」
眼鏡「そうでしたか。ありがとう」
村人「うんにゃ、大した事はしとらんよ」
老人は二人の促し、広場の中央に座らせる。
コトッ
村人「ほれ、食いなされ。皆もう済ませてしもうた」
魔法剣士「……すまん」
眼鏡「……」
村人「どうした?遠慮する事ないぞ?」
眼鏡「ありがとう」
チョンチョンチョン…ペロッ
村人「ただの豚汁じゃよ。そんなに珍しいかえ?」
眼鏡「…いや、そうだよね」
- 284 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 17:14:46.58 ID:fU0OXlQo
ズズッ
眼鏡「……うん。美味しい」
村人「それは良かった」
眼鏡が口にするのを見た後、魔法剣士も手元の炊き出しを口へ運ぶ。
…
魔法剣士「それで、何があったのだ?」
眼鏡「ああ、恥ずかしながら魔物にやられてしまってね。ははっ」
魔法剣士「……」
村人「しかし有難い事だわ…」
眼鏡「……?」
村人「国軍もとうに諦めたこの地を、あんたらのようなワーカーが守うてくれとる」
魔法剣士「……」
村人「ここより北の村は、ほとんどがやられてしもうたわい…」
魔法剣士「……そうか」
村人「この村も…じきに見つかるじゃろて…」
- 285 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 17:15:46.98 ID:fU0OXlQo
眼鏡「……」
村人「ワシが幼い頃は、この村の者も北に住んでおった」
魔法剣士「やられたのか?」
村人「…ああ、やられた。子供ながら必死に逃げたわい」
眼鏡「……」
村人「今でも夢に出てくるわい。巨大な犬の様な…真っ白な化物じゃった」
魔法剣士「……」
眼鏡「……」
村人「あらゆる物を破壊し尽くし、あらゆる者が食われた…」
魔法剣士「…犬のような…化物…?」
村人「だが、不思議な事もあるんもんだで。助けて貰ろうた」
魔法剣士「……?」
村人「もう一匹、真っ黒な三つ首の化物が助けてくれたのじゃ」
魔法剣士「…三つ首の…化物?」
村人「そうじゃそうじゃ。知っておるのか…?」
- 286 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 17:16:14.84 ID:fU0OXlQo
魔法剣士(あの森で…助けてくれた奴…か?)
眼鏡「…ケルベロスと…オルトロス」
魔法剣士「……?」
眼鏡「北の魔王城を守る番犬さ」
村人「ほぉ…。そうじゃったか」
眼鏡「どちらも人間を貪る畜生だよ」
魔法剣士「……ケルベロス」
ユラッ
魔法剣士(…何…だ?何か脳裏に残るこの……っ)
村人「何かあったのかえ?」
眼鏡「……え?」
村人「…悲しい瞳をしとるでな」
眼鏡「……いや、本当に…悲しい事だよ」
魔法剣士「……」
眼鏡「…………」
- 287 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 17:16:45.21 ID:fU0OXlQo
村人「また…北へ行くのけ?」
眼鏡「…そのつもりだ」
魔法剣士「俺も…連れて行ってくれ」
眼鏡「……」
魔法剣士「あんたの助けになるとは思わん。しかし…足手纏いにもなるつもりはない」
眼鏡「……」
魔法剣士「邪魔だと思ったら…捨ててくれて構わない」
眼鏡「…分かった。頼もしい限りだよ」
魔法剣士「……すまん」
眼鏡「でも、これで最後にした方がいいよ」
魔法剣士「…?」
眼鏡「僕なんかといるとロクな事がないからね」
魔法剣士「学びたいんだ。あんたの…強さ」
眼鏡「……」
魔法剣士「それに…何故かは分からん。…共に居たいのだ」
- 288 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/08/30(月) 17:17:24.27 ID:fU0OXlQo
…
眼鏡「ここから山中を東に進み、川沿いへ出る」
魔法剣士「…分かった」
眼鏡「情報ではそこに魔族が集結しているらしい」
魔法剣士「……一体…どこからそんな情報を…っ」
眼鏡は微笑み、足元の犬達を指差す。
魔法剣士「……なるほど」
村人「ほんじゃあ…くれぐれも気を付けなされよ?」
眼鏡「ご老人も。すぐに避難出来るよう……」
村人「ワシらは気にするな。若い連中はとうの昔に本国へ避難しとる」
魔法剣士「……」
村人「残っておるんは、いつ死んでもいい連中ばかりじゃて」
眼鏡「…そんな事はないよ。生きてくれ」
村人「……心優しき事よ。無事を祈っておるよ」
眼鏡と魔法剣士は会釈し、辺境の村をゆっくりと後にした。
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