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男「エルフの競売?」
1 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 00:53:36.69 ID:cjxPvOLm0
「そうそう、貴族街の西に新しい劇場ができただろ?あそこってさ、今週末の夕方に奴隷エルフの競売があるんだって」

「で、それが?」

「わかるだろ?お前の地位を利用してどうにか入れないかなあ、なんて」

友人はにやにやと嫌な笑みを浮かべている。

久しぶりに会ってみればこれだ。

昔からろくでもないやつだと思っていたが。



男「エルフを買った」に触発されて書きました
5分間隔で投下します。


2 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 00:54:20.33 ID:wuYvQa+WO
ああエヴァの組織の


3 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 00:54:54.50 ID:8cgyrrtE0
ドイツの高圧洗浄機のことだろ?


4 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 00:55:20.08 ID:UvFw1Mu50
オオカミの事?


5 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 00:57:42.88 ID:cjxPvOLm0
「入るのには金が必要だろ」

「そのへんは大丈夫。あそこのオーナーが、お前が良ければタダで入れてやるとさ」

男はため息をついた。
用意周到すぎて、頭にくる。

「オーナーの顔に泥を塗るなんて今のお前にはできないだろ?」

「週末か。わかったよ」

「いやー、話がわかるやつで本当に助かったよ」

友人は話が終わるとそそくさと出ていってしまった。やつが友人じゃなくなる日も近い。


6 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 00:59:44.25 ID:MxnzPEUr0
1ヶ月後くらいにたててくれよ
そうすりゃもっと楽しめたのに


7 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:02:49.86 ID:cjxPvOLm0
週末、貴族街は人であふれ、劇場の前は馬車や荷車でまともにたち行きのできない状態だった。

「さあて、行きますか」

友人は鼻歌を歌いながら入り口へと進む。

「こいつのツレです」

竹光を携える憲兵は、男の顔を一瞥するとすぐに手元の羊皮紙へ目を戻し、扉を開ける。

「お通りください」

男は何も言わず、友人は後をついていく。

「すげえな、顔見ただけで通されちゃったよ」

「あいつは知り合いだ」

へー、と友人。既に興味は男の地位の高さから、これから行われる下衆な催しに移っていた。
席は二階の左翼最前席。競売には参加できないが、見物をするにはもってこいの特等席である。


8 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 01:05:42.98 ID:2DnBmT3I0
ほう


9 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:06:49.63 ID:cjxPvOLm0
「すごいところきちゃったな」

友人の顔は緊張と興奮で赤みがかっている。

「お前のせいで借りができてしまった。いや、それが狙いか」

「なにぶつぶつ言ってんだ。おい始まるぞ」

壇上にはこの劇場のオーナー、それと進行役の男が声高らかに、開幕を宣言していた。
そして、

「おおっ」

歓声があがる。
欲望むき出しの貴族達は食い入るようにそれらを眺めた。
白い肌。薄い髪色。宝石のような瞳。人形よりも作り物に見えるその種族を、人々はエルフと呼んだ。


10 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 01:07:05.63 ID:U0X3iAOmP
箱庭世界のお約束的な物語だな
つまんね


11 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 01:07:49.95 ID:CVHSQf43O
ちょいちょい地の文の視点がかわるのはなんで


12 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:11:42.78 ID:MxnzPEUr0
というか友人の扱いが変だな
地位あるやつといっしょならお金なくても入れるとオーナーに言われたとか
ワケわからん、友人はどんな人間なんだよ


13 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:12:49.67 ID:cjxPvOLm0
「なぜ、みな裸なんだ」

男は異様な光景を前に自然と疑問が口から流れ出ていた。

「商人にはさ、刺青や焼きあとで自分の商品だって示すやつがいるんだよ。でもそれって価値が下がるだろ?愛玩用なんだし。だから品評のためにむいちゃってんの」

友人は「なんだ、知らないのか」といった表情で男に顔を向ける。
今日の商品は15人。そして大目玉もございます。
進行役の男は購買意欲を高めようと、透き通る声で謳った。続々と舞台裏から現れる純白の美少女たち。そして最後の15人目、会場にはどよめきが起きた。

「おい、なんだよありゃあ」

友人は息を飲んだ。
年は10ぐらい。肌は透き通るように白く、髪は上等なプラチナ。瞳はそれに呼応するように琥珀色を輝かしている。
まるで妖精だ。
会場にいる誰もがそう思い、神秘的な美しさに圧倒された。だがそれも一瞬で、貴族達は再び野獣のように目を輝かせる。


14 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:13:42.16 ID:yFExPopQ0
設定昇華しきれてねーんだろ
もともと自分の発想で書いてるんじゃないみたいだし


15 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:16:47.04 ID:KYLXx1UXP
名前無いと誰の発言か分かりにくい


16 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:17:50.13 ID:cjxPvOLm0
競売が始まった。
エルフの少女たちは、舞台に現れた順に競り落とされていく。
みなひどく美しいが、それでも琥珀色の目をした少女の前では見劣りしてしまう。
それのせいか、舞台端で競売を見守る商人たちは、普段よりも競り上がらない奴隷たちの値段にやきもきしていた。

「始まるぞ」

15人目、琥珀眼の少女が舞台の中央に立たされる。手錠を外された少女は必死に胸と恥部を隠そうとするが、隣に立つ商人に腕を絡めとられ、なすすべなく立ち尽くした。

「本日の大目玉!この一級品は未だ男を知りません!よい声を期待します」

またしても歓声。少女は赤面しながら怯えるように顔を傾ける。

「それでは始めます」

金がゴミのようだと男は思った。
それほど凄まじい勢いで競りあがっていく。最初に提示した額のゆうに20倍を超えた。しかし未だ勢いは衰えを知らず、欲望のままに金額ははね上がっていった。


17 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:22:50.70 ID:cjxPvOLm0
金額が豪邸一つ建つほど膨れたとき、声があがらなくなった。

「もう一声、ありませんか」

進行役はまだいけると判断したのか、なかなか終わらせようとしない。

「お前、結構溜め込んでだろ?参加したらどうだ?」

「この席は参加不可だ」

「それはただの暗黙の了解だろ」

「貴族どもに目をつけられたくない。あの中には客もいる」

「あの子、可哀想だとは思わねえか」

「たかが奴隷だろう」

刹那、男の視線が少女の絶望が映る瞳と交わった。
何かを訴える眼。
男は立ち上がると、出口へと向かう。

「おい、どこいくんだ」

「競売は終わりだ。これ以上は額は上がらない」

友人を置いて、男は逃げるように劇場の出口へ歩を進めた。


18 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 01:24:58.12 ID:Va35WH+fi
刹那の意味分かってない奴多いよね
日本語変だよ


19 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:26:22.96 ID:J13VczlX0
>>18
一瞬だけ交わったって意味だろ
全くおかしくない


20 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:26:50.85 ID:cjxPvOLm0
既に日は落ち、昼は人で溢れていたここも、痩せた犬が餌を求めさ迷えるぐらい、閑散としていた。
ふっと息を吐くと白い靄ができる。冬は近い。
劇場を見上げると、屋根の先が綺麗な満月を半分、隠していた。
家畜と一緒だ、と男は思う。
意思とは無関係に飼い慣らされ、飽きたら殺される。ただただ抵抗することもなく、その短い一生を性の捌け口として使われるのだ。
哀れみなんてなかった。ただ、最後の少女がこちらを見据えた瞬間、ひたすら嫌なものが込み上げて、その場にいられなくなってしまった。
なんでいまさらだと思う。
だからどうしたとも思う。
思考の泥沼から抜け出せず、ひたすら立ち尽くしていると、痩せた犬が擦りよってきた。
ここ最近は、野生の犬猫は病気持ちだと言われ、見つかり次第すぐに殺処分にされてしまう。
こいつも長生きはできない。毛並みは良いからどこかで飼われていたのだろう。だけれど主人が死んだか迷子になったかで、悲運な運命をたどらざるを得なくしてしまった。


21 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:32:51.31 ID:cjxPvOLm0
男はポケットから丁寧に紙で包まれたパンを取り出すと、こまかく砕いてやり手のひらに置いて差し出した。

「これ、昼で出店で買ったんだ。食い切れなかった分、捨てんの勿体なくてな」

犬は鼻先を押し付け、それから男の手に噛みつかないように、だけれど必死にパンを口に入れていった。
全て食べ終えると手のひらをべろべろとなめ回し、哀愁に満ちた瞳で男を見上げてきた。

「もうないんだ。うちくるか?」

犬はしっぽを振り満足そうな表情を浮かべると、そのままどこかへ行ってしまった。

「ふられたな」

振り向くと友人が月を背に、こちらを見下ろしていた。


22 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:37:51.24 ID:cjxPvOLm0
「終わったか」

「ああ、お前の言う通りあれ以上は上がらなかったよ」

「誰が落とした?」

「漁船製造の成金親父だよ。壇上で喜びすぎて死にかけてたぜ、あいつ」

「そうか」

立ち上がると、べちょべちょになった手のひらを紙で拭いて、

「帰るのか?」

既に友人はこちらに背を向け帰路へ足を向けていた。

「ああ。楽しかったぜ。それと」

顔はこちらに向けていた。

「あいつらには神様なんていねーんだな」

月の光は逆光となり、友人の表情は見えなかった。


23 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:42:50.73 ID:cjxPvOLm0
*****

ただの思いつきだった。チャンスぐらいあっても神様は文句を言わない。

「御主人」

男は劇場からでてきた貴族どもを縫うように交わし、目的の人物へ近づく。

「おや、先生。こんなところで、珍しい」

「私も上の階で見物を」

「では、私の駆け引き、御覧頂けましたか」

「はい。流石一代でこれほどの財を成す豪腕ぶり。よい勉強になります」

男の言葉は嘘ばっかり。駆け引きも糞もない。財力でものを言わすデキレースだった。

「いえいえ、それほどでも」

豚もおだてりゃなんとやらだ。やはり、機嫌はすこぶる良い。

「それでですね、少し気になることがありまして」

「あのエルフにですか?」

成金が指し示す先には、既に馬車へ乗せられ、鉄格子からこちらを覗く少女の姿があった。

「はい、壇上で掛けられている間、顔が赤かったでしょう。新種の流行病かと思いましてね」


24 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:47:51.55 ID:cjxPvOLm0
「なんだって」

成金は顔を青くする。
あれだけ大金をはたいたのだ。病気持ちであればまるで割に合わない。

「落ち着いてください。私の思い過ごしかもしれませんし」

「ど、どうすれば……」

「とりあえず、私に診せてください。お代はこれからも、うちをご贔屓に、ということで」

ずいぶん笑顔がうまくなった。世渡り上手は笑顔を作るのも上手なのである。
馬車へ近づくと、成金から借りた鍵で南京錠を外し、中へ入る。後ろでは成金が心配そうにこちらを見ている。
男は少女に近づくと、乳房に手をのせ心音を測るふりをした。

「さわら、ないで」

少女は弱々しく、言葉で抵抗をする。しかし、手を払われたり体をおしどかすようなことはしなかった。

「言葉はわかるな、よし」

後ろを振り返る。

「御主人!脈や心音が聴きたいので少しここから離れてくれませんか?できるだけ雑音を排除したい」

何を言ってるんだ自分は、そんなこと関係あるか。男は吹き出すのを我慢して続けた。

「終わり次第呼びます」


25 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:52:51.79 ID:cjxPvOLm0
成金はしぶしぶと馬車から離れていった。

「さて、じゃあ」

少女が息を飲む。

「神様を信じるか」

少女は質問の意味が理解できていないのか、呆気にとられて男を見返してきた。

「神様にいてほしいか」

首を縦に振った。
イエスの意思表示。

「そうか、じゃあこれを」

男は内ポケットから怪しく光るナイフを取り出した。
刃渡り少女の人差し指ほど。柄はそれよりも短い。
少女は怯えた表情を見せる。


26 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:55:42.31 ID:s/etx/xg0
あれって触発されるほど面白いものだったのか?


28 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 01:57:51.98 ID:cjxPvOLm0
「好きなように使え」
男はそう言うと、少女の長く美しい髪にナイフを器用に結んでいった。

「これで見えなくなった」

ナイフは姿を隠した。

「死にたくなったら首の脈を切れ。素人にはそれが一番楽だ。もし逃げれたなら」

保証はどこにもない。

「こいつの屋敷から南の森へ目指せ。そこにエルフの里があったはずだ」

それだけ言って馬車から降りた。

「あのエルフ、なんともありませんでした。お騒がせしてすいません」

神にでもなったつもりか。
男は、自分で言った言葉に吐き気を覚えた。


30 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:02:52.09 ID:cjxPvOLm0
少女は馬車に揺られ、短い人生の記憶を振り返っていた。
年の離れた姉がいたが、彼女はいつの間にかいなくなってしまっていた。
両親が姉はもう帰ってこないのだと教えられた時、飯も食わず、三日三晩ひたすら泣き叫んでいた。声も出なくなった四日目の朝、姉を探しに里から出ようとしたら里の連中はひどく狼狽し、行ってはいけない行ったらお前はここにはもどってこれない、と何度も言われた。
理由は教えてくれなかった。父も母も自分をとどめることに必死だった。

――お姉ちゃんのことなんてどうでもいいの!?

決定的だった。母は泣き崩れ、父には一発強烈なビンタをもらった。
ますます理解できなくなり、その日の夜、ついに里を飛び出した。
そして二日後、家族、友達、同郷の皆が恋しくなった少女は里へ戻ってきた。
子供の家出だから。
甘い期待だった。
里は灰になり誰もかもがいなくなってしまっていた。


32 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:07:52.33 ID:cjxPvOLm0
水も食料もなく、ひたすら森をさまよい、もうだめだ自分は死ぬんだ、と生きることを諦めようとしたとき、丁度通りがかりの奴隷商人に連れていかれ、なんとか生きながらえることができた。
あの時は、かみさまがいるんだと本気で信じた。
でもそれは仮初の偶像で、本当の地獄はここからなのだとすぐに知ることになった。


33 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:12:52.38 ID:cjxPvOLm0
今日は満月だ。
エルフにとって神聖な日で、夜、ミミズクの宴が始まるころに月を見ると、生涯健康で幸せでいられるという伝承がある。
少女は別段信じてはいなかった。そもそもエルフの子供はみな健康で病気とは無縁の存在であった。
だけれど、今日だけは信じてみたくなる。
これからの人生いいことなんてないだろう。
目の前でひたすらゴミのように扱われてきた同種たちを自分に重ねていた。
馬車の壁に体を預けると、背に鋭い痛みが走った。
ナイフ。
髪の中から刃の切っ先に触れ、存在を確かめた。

死にたくなったら脈を切れ

最後のチャンスかもしれない。屋敷につけば体を検められ、とりあげられてしまうかも。
だったら、だったら今。
ナイフは髪に結ったまま、刃を首筋にあててみる。
冷たい。
これが死なのだ。
たいしたことではない。
自分に言い聞かせたつもりだったが、刃は微塵も動かせない。
そのときだった。馬車は大きく揺れ、そして動かなくなった。

「ついたぞ」

自分を競り落とした男の声。
肥大した腹を揺らし、下品な笑みを浮かべて格子の奥から眼を光らせていた。

「降りろ」
裸同然、ぼろきれで身を隠し、馬車を降りる。
見上げた先は極上の屋敷。
ところどころ黄金色がちりばめられ、月光がそれを、不気味に光らせていた。


34 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 02:16:52.14 ID:JmzPuarvi
―SSスレにありがちなこと―
・書き手の体調が良くなる、急に用事ができてもSSは続行
・SS終了とともに姿を消す
・誰も見てなくても書き続ける
・なぜかかなり上から目線の書き手だが他のスレじゃ親切なツンデレ
・エロは臨機応変に
・オリジナリティのあるキャラなので各々の頭の中にキャラが創造される
・批判されてもそれを糧にし、次に生かそうとする向上心がある
・例え初めてのSSだとしても「初めてだからうまくいかないかも」などと言い訳や保険を掛けることは無い
・量産される良SS
・立て逃げなどせず、一度始めたSSは最後まで書き抜く
・安価などは始めず、自分の書きたいことを書く
・書き手は最後までスレに居続ける


35 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:17:33.78 ID:J13VczlX0
5分って意外と長いな……


36 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:17:52.23 ID:cjxPvOLm0
屋敷の中はきらびやかな近代装飾で埋め尽くされていた。
右も左も芸術品。
里育ちのエルフっ子の少女でもわかる。
これは、趣味が悪い。
だって、そうなのだ。バランスなんて考えずひたすら隅々へゲイジュツを埋めていくこのセンス。本人は良いと思っているのだろう。よけいたちが悪い。

「一生、お前をここで可愛がってやるからな」

尻を撫でられた。
これからされることを考えたら大したことではない。そう自分に言い聞かせ、落ち着かせる。

「今夜から相手をしてもらうぞ、風呂へいってこい」

言われるがまま、使用人と思われる人間へついていく。


37 名前: 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:18:10.06 ID:Yq1VkjL30
>>34
このver.は初めて


38 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 02:18:51.43 ID:2DnBmT3I0
>>34
良スレすぎワロタwwwwww


39 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:22:52.07 ID:cjxPvOLm0
ついた先はこれまた黄金。金、金、金。
里にあった大浴場に匹敵する広さ。
これが財の力。
ひたすら圧倒されていると後ろから声がかかる。

「脱衣所のお召し物を用意しておきます。お着替えが終わりましたら、そのまま廊下のわたくしめをおよびつけください」

丁寧な物言い。彼女は自分をなんと思っているのだろう。主人の玩具、ペット、家畜……。

「わたしはちがう」

何者にも聞かれぬよう、自分自身に言い聞かせるようにそっとつぶやいた。


40 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:27:52.29 ID:cjxPvOLm0
体を洗い、浴槽へつかる。
この一年、自分だけが特別で、何もされてこなかった。
でも、そんな幻想も今日で終わりだ。純潔を奪われ、それで、
よじれた声がもれた。
よじれた声はより苦しげな泣き声と変わり、涙があふれて止まらなかった。
死にたいなんて嘘だ。
簡単に死ねるわけがない。
後ろ髪に隠したナイフの柄を握ると、結ってある髪のことなどおかまいなしに一気に引き抜いた。
毛が、数十本抜けた。
白金色の毛が絡みついたまま、窓から差す月光にかざす。ナイフは鋭利に研ぎ澄まされ、妖しく光を返す。
美しい一品である。柄には装飾が彫りこまれており、刃はゆるく波を描く。あの男は医者だと思って、もっと無機質な医療用のナイフだと思っていたが、こんなものだったとは。
息を飲んで観察していると、あることに気付いた。
装飾は文字を崩してあるのだと。
月の光を背に、視覚に全神経を集中させ解読する。
エルフの言葉。古き良き、愛の言葉。そして、

「――お姉ちゃん」

生きなければならない。また、あの男に会うために。


41 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:32:53.18 ID:cjxPvOLm0
慣れない洋服を身につけ、さきほどのいいつけどおり使用人を呼ぶ。
部屋へ連れていかれてる間、一切自分には触れてこなかった。ただついてこいと言われ、それに従った。
少女に希望が芽生える。こいつらは、自分が無抵抗な子犬であるとたかをくくって、何もしてこない。いや、子犬だって牙はあるのだ。なめてかかれば指を失う。
指なんかじゃすまさない。生きるためだ。容赦するつもりはない。

「お連れいたしました」

屋敷2階の一番奥、南に面したその部屋はこの屋敷の中で最もひろい空間だった。
窓の外には白い丸。そして巨大な杉の木。

「お前を買ったことに後悔はない。いや、むしろ今が人生の絶頂だ」

成金男は上半身裸でツインベッドであぐらをかいている。

「近くに寄れ、お前の真珠より美しい顔を見せてくれ」

少女は音もたてず、ベッドへ歩を進める。

「それでは私はこれで」

「ああいいぞ。休みをとれ。それと、」

成金男が笑った。

「音をたてても部屋には入ってくるなよ。護衛にもそう伝えておけ」

神はいるのだと少女は思った。


42 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:38:02.98 ID:cjxPvOLm0
使用人が部屋からでていくと成金男の顔はおぞましいものへと変貌した。
「寄れといっておるだろう」
腕を掴まれ、ベッドへ引き倒される。腰巻にくくりつけた得物が腰骨に当たった。

「わしの顔を見ろ」

少女が顔を見上げる。
唇を奪われた。
必死に涙をこらえ、這ってくる舌を拒めずに受け入れる。

「お前、初めてか」

辱めるつもりで言ったのであろう。下品な笑みを浮かべて股をまさぐってくる。
指がふとももを撫でつけ、腰にまで伸ばそうとしたとき、

「ご、御主人さま、」

恐怖から口が開いた。悲鳴にもならない小さな抵抗。

「エルフには古い言い伝えがあります」

「ほう、なんだ、言ってみろ」

成金男は余興のように少女に耳を傾ける。


43 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:43:08.93 ID:cjxPvOLm0
「男女のまぐわいは月の下で行います」

息を吸う。

「そして今日は満月。満月は神聖な日で、その、目をとじて祈りを捧げるんです」

嘘っぱちだった。それでも続ける。

「だから私と一緒に目をつむり、心の中で『神様、今日の日をありがとう』と唱えてください」

「それがエルフの習わしか」

少女は躊躇なく深く首を振る。

「わかった。今日はお前の記念すべき日になるだろう」

下賤な笑みを浮かべ、成金男は眠るように、静かに目とじた。


「ごめんなさい」


必殺の一撃。
成金男は首筋に手を当てると目を見開いて驚嘆した。
そして力なく倒れこみ、動かなくなった。


44 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:48:44.05 ID:cjxPvOLm0
少女は返り血をシーツでぬぐい、窓の外へ意識を移す。
脱出路はここ。大きな一本杉、地面は豊かに生えそろった芝、そして屋敷を囲む子供が抜けられそうな間の空いた柵。
条件はそろった。やるしかない。
音もたてず窓を開けると、窓際へ両足を乗せ、下までの距離を見つめる。足がすくむ、が今しかない。覚悟した瞬間が勝負なのだ。怖気づいていたら朝になってしまう。
飛ぼう。行け、自分は自由だ。飛べ――
飛んだ。
目の前の一本杉の枝へ指を伸ばす。
あと少し。
掴んだ。その瞬間自由落下が始まる。
だけれど枝は、耐えてはくれなかった。
失敗だ。一瞬で内臓が冷え切り。改めて自分がやっていることが無謀なのだとわかった。
落ちていく。
下に控える枝にもみくちゃにされながら少女は転がり落ちていく。指を切り、腕を切り、脚を切りつけてくる。必死になってそこら中に腕を伸ばすが、返ってくるのは非情な仕打ちばかり。
そして、たいしてスピードを殺すことなく地面に叩きつけられた。
息ができない。
すさまじい傷みが左腕を襲う。
少女が芝に顔を半分うずめ、片目で空を仰ぐ。

月が、笑っていた。


45 名前: 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:53:15.41 ID:Yq1VkjL30
支援


46 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:53:18.35 ID:cjxPvOLm0
目が覚めた。
未だ朝は来ず、遠くでミミズクが鳴いている。
体を起こすと体中が枝に切りつけられ、血を流しているのがわかった。
そして、左腕の我慢ならない鈍痛。手首の辺りは二倍に膨れ上がり、小指があらぬ方向を向いていた。

「っひうぅ、」

うめいた。親指を噛んで必死で声を押し殺す。
近くに警備をしている人間がいるかもしれない。気を抜いたら死ぬ。今この瞬間も死に囲まれている。
傷みに慣れ始め、周りの目を配ると、菜園の向こうに鉄製の格子柵が目に入った。
少女はよろよろと立ちあがり一歩ずつ進んでいく。今、誰かに会ったら……。そんな不安は痛みで頭の隅から消え去っていた。
菜園の花々を踏みつけ柵に手を掛け、上半身を押し入れる。
スカートの端が引っ掛かったが、ナイフを取り出し乱暴に切りつけた。
留め金を失った体は、力のままに柵の外へ這い出された。
痛み、恐怖、不安。気を失いそうになる。
だけどまだ、終わってない。やることがあった。


47 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 02:59:47.18 ID:cjxPvOLm0
隣接する広大な森へと一歩足を踏み入れると、足元の木の枝を拾い、そして、近くの木へ身を預ける。
右手に持つナイフを見つめる。
エルフと人間の外見上の決定的な違い、それは耳である。
人間とは違い、耳たぶが短く耳の頭がながい。たとえ少女の長い髪であっても、それを隠すことはできない。
町へ行けばすぐさま捕まり、また他の貴族へ売られるのはわかっていた。

だから、切り落とす。耳の頭が隠れるぐらいに。
刃は光を介し、自分の顔が映っていた。ひたすらこれから行う自傷行為に恐怖でわなないている。
拾った木の枝を咥える。ほとんど力が入らない左手で耳を掴む。刃の切っ先を耳の頭へ押し付ける。
少し刺さった。悲鳴が漏れる。体中から汗が吹き出し、頬に何かが伝う。だめだだめだ、集中しろ。少しだけ、ほんの少しだけ今よりも力を加えた。
またもや悲鳴。歯が木の枝へ食い込んでいく。耳が焼けるに痛い。恐怖で刃を引き抜いてしまった。耳から温かいものが流れる。右手を押しあてて確認する。
血。当たり前だ。もう一度最初から、
今度は一気に切り落とす。刺して落とすのは頭を傷つけかねない。耳の頭を掴み、指に沿うようにナイフの刃を押しあてる。そして、

「ぅあっ」

口から木の枝をこぼし、小水を漏らした。
左手にナイフを持ち変えると、すぐさま逆の耳にも同じことを繰り返した。


48 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 03:04:37.18 ID:xcvgRYj10
期待してる


49 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 03:04:57.53 ID:cjxPvOLm0
朝を迎え、そのうち太陽は頂点に達し昼になった。
ボロボロの服、傷だらけの体。少女は乞食にしか見えなかった。
一点、琥珀色の眼だけが光輝いている。
男の住所を道行く人々に訪ね続けた。気味悪がれたが、髪をどかすとその人とは思えない人形のような顔に、人々は警戒を解き、簡単に口を滑らせる。
男は、町はずれの海に面した入江のすぐ近くに住んでいた。
金持ち相手の開業医らしいが、あの成金のように金をかけず、ひたすら地味に生活しているように見えた。
家の前にたちドアを叩いてみる返事はない。どこかへでかけているのだろうか。

少しだけ休もう。少しぐらい、いいだろう。

少女は男の家に身を任せると、ゆっくりと瞼を閉じた。




おわりです。
複線なげっぱになっちゃったけどごめんなさい。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。


50 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 03:06:25.03 ID:tcOeWc+e0
まて、意味が分からん


51 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 03:08:45.85 ID:dgU+9Hx7P
ざけんな


52 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 03:10:55.13 ID:a6arzsGNO
ツンデレか


53 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 03:11:27.19 ID:GleSCQqZ0
ぐぬぬ


54 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 03:12:16.74 ID:wODGLUI8O
結局エルフは死んで神はいねーってこと?
まあ乙


55 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 03:13:52.00 ID:ukc0rn2r0
半端すぎ


56 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 03:14:26.95 ID:7+mZ8rr+0
あれ
終わってた

あれ


59 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 03:20:49.25 ID:ak6du98N0
追いついたと思ったらこの仕打ち
せっかく盛り上がってきてたのに…


60 名前: 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 03:34:07.57 ID:Yq1VkjL30
続きを………


61 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 03:51:31.03 ID:GleSCQqZ0
続けええ


62 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 04:03:54.61 ID:LK7aUzoO0
や、やめちゃうの?


63 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 04:18:51.76 ID:ak6du98N0
起きたら続けるんだ


64 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 04:19:43.29 ID:7YYwPfB50
やっとおいついたのにこんな仕打ちとは

絶対続きあるだろ


65 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 04:21:45.43 ID:tcOeWc+e0
保守は任せた


66 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 04:25:28.89 ID:7YYwPfB50
保守したら続き見れるならがんばるよ


72 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 06:19:40.09 ID:zBuYYjWyO
女「アトラスにしておきなさいって言ったよね? わたし言ったよね!?」


73 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 06:45:11.90 ID:A6BPoYgyi
おほほ


74 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 06:53:19.10 ID:GencEKBc0
なんだってー


77 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 07:59:00.83 ID:ODelSvO80
これで終わりかよ…

大層乙であった


79 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 08:39:44.59 ID:6ZmEsxm40
>>2
それネルフ


80 名前: 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 08:41:57.54 ID:QHpRe1Yu0
>>79
8時間越しのツッコミ………


81 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 08:47:34.40 ID:DQjn85i70
>>79
ついでに>>3 >>4にもつっこんであげて


84 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 09:39:56.94 ID:O8Vo4qoX0
前のエルフスルどうなったの?完結した?


85 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 10:10:42.10 ID:YpGYOGMK0
いやいやいやいや





いやいやいやいや


86 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 10:19:36.79 ID:8u1qh9+h0
おい結構好きだぞ


89 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 11:56:46.55 ID:CXTpxG0z0
朝は海鳥の声で目を覚ます。
唇がかさつく。空気が乾いているようだった。窓を開けると波の音が飛び込んでくる。男は今日も暑くなりそうだと顔をしかめた。

キッチンに置いてあるコップに水を注ぎ、一息に飲み干すと男は昨日やり残してしまった仕事の後片付けを始めた。
友人やあのエルフとのいざこざのせいでまだ半分以上も残っている。
アルコールにつけてあったメスを乾いた布で拭きながら、男は幸いにも今日が休日であることに安堵の息を漏らした。
とは言ってもいつもと対して変わらないのだが。

そういえばあの少女はどうなったのだろう。捨てられた仔犬のようなあの顔を思い出す。

「ん?」

不意に風が入りこんできた。自分が開けた窓とは明らかに違う方向だ。
風の出所を探してみると、玄関の扉が僅かにひしゃげて隙間を作り出している。
男は不審に思いながら扉の鍵を開けた。

「な!?」

保守


90 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 12:01:40.10 ID:jCK3Ejbb0
キタ━━゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚━━ ッ !!


93 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 12:43:59.01 ID:GQc4cVU10
間に合わなくなっても知らんぞー!


94 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 12:46:30.89 ID:69PfKwN7i
友人は空気なの?
革命家だったりしないの?


95 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 12:50:53.20 ID:PusVnZjq0
深夜にやってた安価スレといい
奴隷SSが流行ってるのか?


100 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 14:29:13.71 ID:5hNEszj20
保守だけでもうじき12時間
すげえなw


101 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 14:30:31.43 ID:yZCyALHJP
続きはいらないと思うが
短編であれば終わるのにちょうどいいタイミングだと思うし
最後の最後まできっちり書くハリウッド映画みたいな終わり方じゃなくて
何故ここで終わりなのかっていうフランス映画みたいな終わり方もたまにはいいだろ


102 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 14:57:54.90 ID:PiY5Q9/DO
でも信じたい
男とエルフの交流を


103 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/29(水) 15:01:28.51 ID:cLJj/SsK0
下手に続けてしまって薄いカルピスになることだってあるんだぞ

続くなら読みたいけども


104 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/29(水) 15:16:17.28 ID:YKt1tkNx0



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