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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その37
969 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:11:17.95 ID:A6iT1g3co


 ズギャギャギャッ!!

盗賊(……身体が……軽い)

兄様「……」

盗賊(さっきまでの自分の動きとは……思えない程に違う)

 タンッ ザシュッ!! タタッ……ズギャッ!!

盗賊(兄様には到底、届かぬものかと思っていたけれど……)

影忍「そうだ盗賊、お前は十分に強い。強くなっているのだ」

盗賊「……っ」

影忍「要は気持ちの問題。精神的な問題だ」

盗賊「……はいっ」

影忍「お前は俺を越えられない。そういう鎖に縛られているだけだ」

盗賊「……私は」

影忍「解き放て! 俺を……その男を越えて見せよ、盗賊!」

盗賊「はいっ、兄様!」


970 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:11:42.90 ID:A6iT1g3co
 ジャララッ

盗賊「はぁっ!」ビュオッ!!

兄様「……ッ!」

 ギュルルッ!! ガッシイイィィィィ!!

盗賊「く……っ」グイッ

兄様「……」ギチッ

影忍「良しっ。そのまま捕らえておくのだ盗賊!」

盗賊「はいっ!」ガシィ

兄様「……」ニヤリ

盗賊「!?」

 シュルッ

盗賊「逃がしはしないっ!」

 ババババッ キュイイィィィィ……

盗賊「土遁っ、蟻地獄!」ドウンッ!!

兄様「――ッ」ズザァ!!


971 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:12:11.55 ID:A6iT1g3co
盗賊「水遁っ、水竜巻!」

 ドドオオォォォォン!! ズゴゴゴゴッ!!

影忍「砂で身動きを封じた上に、水を吸収させ凝固するとは……考えたな」

盗賊「今までの私とは違う……っ! みんなの……意思を継いだからっ!」

 その言葉通り、盗賊の忍術は以前のものと比べ、格段に上昇していた。

 盗賊による魔力の最大量が増加した事もあるが、全ては五輪の書の存在に所以する。

 藤蔵の五遁全てを扱う事の出来る盗賊は、今までの素早さによる回避能力に加え、

 後衛顔負けの火力を誇る魔法を得たと言っても過言ではない。

 言わば護衛の要らぬ動く魔法詠唱者。高速移動兵器とでも言うべきだろうか。

兄様「……ッ」ズズズッ

盗賊「鎖に加え、水で固めた砂。これでもう……動けまい!」

 しかし敵はアンデッド。如何に捕らえようともその命を奪うには至らない。

影忍「……」スッ

盗賊「……く……ぬっ」

影忍「やはり駄目か。これは恐らく、ネクロマンサーの特殊な結界のような何かであろう」


972 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:12:45.93 ID:A6iT1g3co
盗賊「兄様っ、どうします!?」

影忍「……」ザッザッザッ

兄様「……ッ」

影忍「……本体ではないな。つまり、本体はまだラボの中心部にあるわけか」スクッ

盗賊「兄様っ」

影忍「盗賊、この結界を突破するには、やはりそれを倒す以外にはなさそうだ」

盗賊「しかしどうやって……っ」

影忍「今のお前ならば出来るはずだ。……五行を」

盗賊「!?」

影忍「以前、お前に五行のクナイを渡した事、覚えているな?」

盗賊「……は、はい」

影忍「あれと同様に、お前がクナイへ五行を付加し、放つのだ」

盗賊「……私……っが」ギュッ

影忍「案ずるな。配分を違わねば自身に降りかかる事はない」

盗賊「私が……五行……」


973 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:13:15.51 ID:A6iT1g3co
 スタッ

影忍「鎖を」

盗賊「あ……っ」スッ

影忍「ここは俺が代わる。お前は専念してくれ」

盗賊「……はい」

影忍「良いか? お前は身近な環境で、何度も五行を見てきたはずだ」

盗賊「……」スッ

影忍「その力、動き、感覚、全てを思い出し会得しろ」

盗賊(……そうだ)

影忍「そしてその目に焼き付けた、命を賭した奴らの魂を思い出せっ!」

盗賊(私は散々、見てきたではないか……っ)

 キュイイィィィィ

盗賊(召喚士の五行、魔道士の魔法制御、そして……戦士のゾディアック)

 ゴゴゴゴゴゴ……

盗賊(その全てを併せれば、このクナイ五行も必ずや……出来るっ!)


974 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:13:54.60 ID:A6iT1g3co
 ゴウッ!! ズゴゴゴゴゴ……

影忍「いいぞ、その調子だ」

盗賊「……ふーっ」

影忍(しかしこれ程までとは……。嬉しい反面、悲しくもあるな)

盗賊「……良し。このまま……っ」

影忍「火がやや弱い。そんな事では火忍に泣きつかれてしまうぞ?」

盗賊「……っ」フオッ

影忍「そうだ。そのままゆっくり焦る必要はない」

盗賊「……多分、大丈夫」

影忍「見事也。良し、それでは仕上げると致そう。間合いを取れ、合図と同時に放つのだ」

盗賊「……はいっ」ザッ

影忍「行くぞっ、藤蔵最終究極奥義……」

盗賊「風林火――」

影忍「陰」

盗賊「山雷っ!!」


975 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:14:31.20 ID:A6iT1g3co
 バッシュウウウウゥゥゥゥ!!

 金色の尾を引きながら静寂に空を切り裂くクナイを見つめ、影忍は不思議と綺麗だと思った。

 その金色のクナイの真下、まるで陰のように同じ軌道で追尾する漆黒のクナイ。

 下半身を砂に取られ身動きの取れぬ兄様もどきのアンデッドは、

 光と影のクナイを受け、激しい閃光に見舞われ、飲み込まれていった。

 ガッカアアァァァァ――!!

盗賊「――っ!!」

影忍「大丈夫だっ! うまくいった!」

 ドッドオオオオォォォォ!! ゴゴゴゴゴゴ……

影忍「良くやった、見事だぞ盗賊」

盗賊「私のツイからじゃないよ。兄様や火忍達……それに、仲間のお陰」

影忍「だがその支えをもって為し得た事は、やはりお前の力だ」

盗賊「……」

影忍「強くなったな。兄として、誇らしく思うぞ」

盗賊「……兄様……っ」


976 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:15:20.02 ID:A6iT1g3co
 フッ……ピシピシッ……パキィン!!

盗賊「……!?」

影忍「空間に亀裂、やはり結界の類であったか」

盗賊「じゃあこれで……」

影忍「ああ。ようやく元の世界へ戻れるようだな」ザッ

盗賊「あの、兄様」

影忍「ん?」

盗賊「さっきの兄様は一体……」

影忍「お前も以前、東方で遭遇したよな」

盗賊「……ええ」

影忍「俺と同様のコピーさ。とは言っても、濃度はかなり低いものだろうが」

盗賊「……?」

影忍「付いて来い。進みながら話すぞ」ザッザッ

盗賊「あ、はいっ」

 タッタッタッタッタッ……


977 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:16:08.75 ID:A6iT1g3co


お父「早く撃てっ、幼女!」

女賢者「幼女……早くっ、撃ちなさい!」

幼女「……っ」

剣士「……幼女」ザッ

幼女「……う、うぐっ」

剣士「君はもしかしたら重い十字架を背負う事になるかもしれない」

幼女「うぐっ、う……っうぅ」

剣士「でも、僕がずっと傍にいる。僕と弓使いがずっと傍で支える」

弓使い「うん……うんっ」

剣士「だから、君の手でお父さんを……そして女賢者さんを解放してやってくれ」

幼女「うっ、ううぅぅ……うぐっ」ボロボロ

女賢者「あなたが私を殺すわけじゃないの。あなたの魔力を私が借りるんだから」

幼女「一緒だよそんなのぉ!!」

女賢者「お願いよ! あなたにしか出来ない事なのよっ、幼女!]


978 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:17:02.49 ID:A6iT1g3co
幼女「意味が分からないよっ! 何で私が……私にしか出来ないって……」

女賢者「それはあなたが――」

幼女「……っ」

女賢者「あなたが……あなたがっ、私の……」

幼女「……」

女賢者「私のっ! 私達の希望だからよ!」

幼女「……ひっぐ」

女賢者「さぁ撃ちなさい幼女。それでもまだ迷いがあるのなら、後ろを振り返りなさい」

幼女「……っ」

女賢者「あなたには支えてくれる素敵な家族がいる。父と母がいる……っ」

幼女「……ひっく、ひっく……ひぐぅ……っ」

女賢者「あなたの五行、私に見せて頂戴っ」

幼女「……」

 何故ここまで女賢者が必死であろうのか、幼女はあえて理解しようとはしなかった。

 限りなく可能性の低い答えに結び付けたくなかったからだ。


979 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:17:33.22 ID:A6iT1g3co
幼女「……っ」

 そして幼い少女は覚悟を決めた。その線新緑たるや尋常のものではないだろう。

 死地において人間は成長する。哀しみの局面を迎えて、人間は成長する。

 その最もたるや環境がここにある。幼女はある種、その全てを乗り越えたと言えよう。

 キュイイイイィィィィ……

弓使い「!?」

幼女「うっぐ、うぐ……ひっぐ……!!」

 その表情は涙や鼻水でお世辞にも普段の愛くるしい可愛さはない。

女賢者「まだ乱れているわよっ。もっと集中して!」

お父「……剣士」

剣士「!?」

お父「安心してくれ。俺は……オリジナルだ」

剣士「……?」

お父「ネクロマンサーの人形には幾つかの種類がある。だが、俺はオリジナルの本体だ」

剣士「――っ!!」


980 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:18:14.25 ID:A6iT1g3co
お父「しかし他の者らには、本体を囚われたままの者もいる」

弓使い「……っ」ポロポロポロ

お父「彼らもまた苦しんでいるのだ。どうか、君達の力で救ってやってくれ」

剣士「……約束しますっ、必ず……!!」

 キュイイイイィィィィ……

女賢者「綺麗な魔法。透き通っていて淀みないわ」

幼女「……っく」

女賢者「でもそれは逆に、この年齢で様々な喜怒哀楽を経験した事の証……」

幼女「……ぐっ、くうぅ」バチチッ

女賢者「喜びや楽しみだけでなく、哀しみや怨みまで……」

幼女「うぐううぅぅぅぅーっ!!」

女賢者「辛い思いををさせてしまったわね。その思い、全てを私に……」

幼女「うああああぁぁぁぁーっ!!」

女賢者「あなたをそんな目に遭わせてしまったこの私へっ! 撃ちなさい!」

 金色に輝くその光は、ゆっくりと幼女の手を離れ、女賢者を飲み込んでいった。


981 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:18:44.77 ID:A6iT1g3co
弓使い「ひっぐぅ……ぐすっ」

剣士「……っ」

お父「幼女、それでいい……それでいいんだ」

幼女「……お父ーっ!!」

女賢者「ありがとう幼女……あなたの五行、とても暖かいわ」

幼女「女賢者さああぁぁぁぁん!!」

女賢者「ありがとう幼女……そして……」

 ガシィッ!! キュイイイイィィィィ

女賢者「覚悟はいいわね、お父」

お父「何度も言わせるな。俺は既にお父ではない存在だ」

女賢者「幼女から受けたこの五行。これにほんの少し、私の魔法を加えれば……」

お父「五行の均等されたバランスは崩れ、暴発する」

女賢者「そう。そして暴発した魔力は……全て私に跳ね返る」

お父「魔法付加の弱点を逆手にとったという事だな」

女賢者「これで幼女は無傷。そして私の魔力で拘束しているあなたは……」


982 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:21:44.35 ID:A6iT1g3co
お父「暴発した魔力によって、優女……お前と共に散る」

優女「そういう事」ファサッ

お父「……いいのか? 幼女に本当の事を伝えなくて」

優女「……私はあなたと同じよ。もう既に死んだ身なの」

お父「……」

優女「幼女の両親はほら、いつも幼女の傍にいてくれてるの」ニコッ

お父「ああ、そうだな。俺も父代わりは終えたんだ」

優女「ありがとう……お父。ずっと幼女を見守ってくれて」

お父「俺は、お前ら2人がいたから救われたのだ。生きていたのだ」

優女「お父……」

お父「ふっ。お前と共に逝ったら、優男に叱られてしまうかもしれんな」

優女「……んふっ、そうね。あの人ああ見えて意外とやきもち焼きさんだし」

お父「さて、弁明の内容でも考えておくか」

優女「大丈夫、きっと1人で寂しい思いしてただろうし、喜んでくれるよ――」

お父「ああ、そうだな。きっと……そうだよな――」


983 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 18:24:18.91 ID:A6iT1g3co
今日は花粉が酷い…これまでにて失礼致します…
本日もご支援毎度ありがとうございます!
しかし皆さん、細部まで色々と覚えてて凄いですね…

それではまた…ってか残りレス少な!
あとでたぶん次スレ立てに来ます!ノシ


985 名前:NIPPERがお送りします(石川県) [sage] 投稿日:2012/03/22(木) 19:00:31.79 ID:cGZOQZ+Eo
>>1おつ
花粉がホントひどいな
涙まで出てきやがるぜ・・・


987 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/03/22(木) 20:01:10.76 ID:5iMadyWd0
>>1おっつっつ


伏線とか設定がどんどん回収されていく


988 名前:NIPPERがお送りします(東京都) [sage] 投稿日:2012/03/22(木) 20:25:45.93 ID:/CSqfG6o0
いちおつ
幼女試練多すぎ…幼女こそ勇者だな


989 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/03/22(木) 21:57:02.64 ID:wdhTVgwfo
次スレです!!その…38…
この次もヨロシクね!☆ミ はぁ…
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1332420059/

〜オマケ〜

 諸兄が今か今かと心待ちにしているあの男が……ついに北へ!

 ドッゴオオォォォォン!!

西国兵「駄目だぁ! 何だコイツはぁ!?」

オーガ「ガオオォォォォ!!」

北方兵「電撃をまとったオーガの亜種だ! 俺達じゃあ勝ち目はない……」

オーガ「アオッ! アオッ!」ギュルルルッ!!

足軽「回転して突っ込んできたぁ!」

本国兵「あっ! そのこワーカー! んなとこでしゃがんでると危な――」

 ザザッ!!

??「サマソオオオオォォォォ!!」ドッギャアアァァァァ!!

オーガ「アオウッ……アオウッ……アオウッ……」ドシャッ

 YOU WIN!!

??「くにへかえるんだな。おまえにも かぞくが いるだろう……」

 チャラッチャー チャラララッ


991 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/03/22(木) 22:14:33.82 ID:eLT7xkJIO
ウーワァ、ウーワァ、ウーワァ…


992 名前:NIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage] 投稿日:2012/03/22(木) 22:16:44.08 ID:mkwTzYwWo
        _____
.       __`ヽ   ,トr,' ´ ,.へ   ,≡三< ̄ ̄ ̄>
.      ,イ,ィ'⌒"゙f''ト、!ヽ, ィ゙ ./       .≡ ̄>/
       バ, k,ゝ└ト、└ ''゙ ,ス     ≡三/ /
      j、 ` ーク'ー-‐ぅ7',´ ,ノ      ≡/  <___/|
     .f`'`ー-R,,__   `'<,グ.     ≡三|______/
      |    、  `' .、  
        ',  .  ',__    ゙Y
       ',    | ',   .|   こ、これは>>1乙じゃなくてソニックブームなんだから
    ,r''゙~    〉 . い  |   変な勘違いしないでよね!
  ,rァ弋   _,ァ-‐'゙  `'i"~i!
  ぃ_f_⌒"´.        ,ト、入_
  `'.ー┘.        └┴‐‐`'


1000 名前:NIPPERがお送りします(大阪府) [] 投稿日:2012/03/23(金) 10:15:25.01 ID:UgCroPzn0
おまえかーーーー



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