■戻る■ 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その34
256 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:19:54.87 ID:OaPKCoQmo


召喚士「……っつ!」

格闘家「傷口は広くありませんが、打撲箇所が多いです。しばらくは安静に」

召喚士「ありがとう」

男隊員「おーい、そっちに応急薬余ってねぇか?」

格闘家「こちらの分は、全て使い切ってしまいました」

男隊員「くそっ、全然足りねぇ……。救急隊はまだなのかよ……っ」

王子「先程、手配はかけた。直ぐにとは言わんが、駆けつけてくれるはずだ」

男隊員「そ、それはどうも……」

王子「……」

戦士「なぁ、少し……背伸びたか?」

王子「……いえ、背伸びしているだけですよ。今は」

戦士「そっか」

王子「西の砦へ戻れば、薬や応急処置も可能です。……戻りましょう」

戦士「ああ、そうだな」


257 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:20:26.76 ID:OaPKCoQmo
ザッ…ググッ

西国兵「せぇのっ!」

魔道兵「司令っ、痛みはどうです?」

天才「愚痴ったところでどうにもならねぇだろ。いいよ、運んでくれ」

魔道兵「もっと、担架の代わりになる物でもあれば良いのですが……」

天才「マントってのはな、タンカや包帯代わりに使うのも兼ねてんだよ。いいから運……っぐ!」

ザッザッザ

西方参謀「左手首骨折、右鎖骨骨折、左脇腹骨折、右大腿骨骨折、右足首骨折……」

西方副司令「それに加えて、打撲と挫傷が多数。流石に司令と言えど……」

西方参謀「ま、次の戦闘……つぅか、しばらくは戦闘不能だわな」

西方副司令「それで、西方軍は?」

西方参謀「西方司令、右腕複雑骨折。んで、西方魔道長とお前と俺が魔力枯渇」

西方副司令「……っ」

西方参謀「暗い顔すんなよ。魔道兵含めて、死者は0なんだからよ」

西方副司令「……そう……ね」


258 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:22:25.28 ID:OaPKCoQmo


女隊員「隊長っ、無理して起きない方がいいッスよ……っ」

隊長「……不思議なモンだ」

女隊員「……?」

隊長「あれだけの攻撃を食らって起きながら、生き長らえてんだからな」

青年兵「運が良かったんですかね……僕達は」

隊長「運も実力のうちってな。それに、助けられたんだよ俺達は」

青年兵「……ええ。犠牲はあまりにも大きいですがね」

隊長「……」

女隊員「隊長のせいじゃないッスよ……っ。隊長は、命がけで守ったッスよ!」

隊長「だったら尚更皮肉なもんだ。庇った俺が生き残って、庇ったはずの相手が……」

女隊員「……っ」

青年兵「……傷は、本当に大丈夫なのですか?」

隊長「ああ、大丈夫だ。俺の事はいい、他の連中の救護にあたってくれ」

青年兵「了解です」


259 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:24:28.39 ID:OaPKCoQmo


ザッ

魔道士「うっ、うっ、ひぐ……っ!!」

盗賊「……魔道士」

魔道士「言ったじゃん……っ! 世界一のダンサーになるって……」

踊り子「…………」

魔道士「なのに……ひぐっ、何で……何で……っ!」

西国兵「そろそろ、遺体を運ばせて頂きます。宜しいでしょうか?」

魔道士「何でよおおぉぉ!! 踊り子ちゃん!!」

踊り子「…………」

魔道士「ねぇっ! また笑って……笑顔で……踊ってよおおぉぉ!!」

盗賊「魔道士、もう……」

魔道士「踊り子ちゃああぁぁん!!」

西国兵「では、失礼致します」

魔道士「ううっ、ひっく……ひぐ……っ」


260 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:25:53.02 ID:OaPKCoQmo


サモナー「もうじき、馬車が来るみたいだよ」

召喚士「サモナーさん……」

サモナー「……すまない。僕がもっと早く動いていれば、彼女は助かったかもしれない」

召喚士「サモナーさんのせいじゃありませんよ。俺だって、力不足でした」

サモナー「……」

召喚士「誰が、とか……そんなんじゃないんです。ただただ強かった……」

サモナー「……うん。イブリースは本当に強かった」

召喚士「……っ」

サモナー「不安かい?」

召喚士「……不安はいつもですよ」

サモナー「でも、やってこれている」

召喚士「それは……そうかもしれませんけど……」

サモナー「僕は思うんだ。戦いっていうのは勝つか負けるか、生きるか死ぬかしかない」

召喚士「……」


261 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:34:25.96 ID:OaPKCoQmo
サモナー「自分が行き続けたければ、勝つしかない。もしくは……」

召喚士「戦いを……やめるしかない」

サモナー「そう。でもやめれば、誰かが代わりにやらなくちゃいけない」

召喚士「……っ」

サモナー「そして死んで、また誰かが代わり、また死んでゆく。戦いとはそういうものなんだ」

召喚士「……」

サモナー「召喚士くんは今、戦いという渦中の中心にいるんだ」

召喚士「中心……」

サモナー「もちろんやめる事は容易い。でも、君の代わりが務まる人間はそう居ないと思う」

召喚士「……」

サモナー「過酷かもしれないけれど、君は行き続けなくちゃいけないんだ」

召喚士「だからって、誰かが死ぬのは……犠牲になるとはもう……」

サモナー「君が居て、それでも救えなかった者達は、きっと宿命なんだよ」

召喚士「……?」

サモナー「召喚士くんは世界の救世主となる人間だ」


262 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:36:26.19 ID:OaPKCoQmo
召喚士「そんな事っ……」

サモナー「いや、僕はそう思う。だから救世主にすら救えなかった者は、死ぬ宿命なんだよ」

召喚士「……そんなの……詭弁ですよ」

サモナー「そうかもしれない。でも、君1人が背負うには重過ぎるだろう?」

召喚士「……っ」

サモナー「背負い過ぎては身動きも取れなくなってしまうよ?」

召喚士「……ありがとうございます」

ザッザッ…

サモナー「召喚士くん?」

召喚士「少し、歩いてきます。すぐ……戻りますから」

サモナー「……っ」

ザッザッザッ…

サモナー「……ごほっ! ごほごほっ!」

ツツーッ

サモナー「……ふふっ、僕も……宿命なんだろうね」


263 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:37:06.76 ID:OaPKCoQmo


西国兵「西の砦から馬車が来たぞっ! まずは怪我人から乗せるんだ!」

魔道兵「それでは、失礼します」

天才「……っ」

西方副司令「司令、先に乗って下さい」

西方司令「痛……たいぃ……っ」

女隊員「隊長も先に……」

隊長「戦後処理は特遊の仕事だ。そうはいかん」

男隊員「んな事言ったってだな……」

隊長「怪我をしているのは皆、同じだ。大小で区別するな」

格闘家「……」

隊長「いいぞ、先に馬車を出してくれ」

西国兵「り、了解であります!」

ガガッ…パッカパッカパッカ…

隊長「他の連中も順次、馬車で西の砦へ向かってくれ」


264 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:37:37.68 ID:OaPKCoQmo


ザッザッザッ…

戦士「ここにいたのか。探しちまったぜ」

召喚士「戦士……」

戦士「ん? 何だここ?」

召喚士「遺跡の西側で、街外れみたいになってるんだよね」

戦士「やっぱこれ、街の跡なのかねぇ」

召喚士「どうなんだろうね。でも、そう見えるよ」

戦士「この先は霧で何も見えねぇな。ちょっと行ってみるか」

召喚士「西の果てって……何があるんだろうね」

戦士「さぁな〜。まさか人が住んでるとも思えないしな」

テクテクテク…ピチャッ

戦士「おわぁっ!!」

召喚士「な、何!?」

戦士「す、すまん……っ。急に足元が水場に……」


265 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:38:12.53 ID:OaPKCoQmo
召喚士「ほんとだ……」

戦士「この先は……オアシスか何かなのか?」

召喚士「……いやっ、ちょっと待って!!」

戦士「……?」

召喚士「ねぇ戦士! この場所……おかしくない!?」

戦士「おかしいって……何がだ?」

召喚士「さっきまでの建物と明らかに形が違うんだ! これって……」

戦士「……た、確かに! もしかしてこれ……」

召喚士「……うんっ。間違いない、これは……港だよ!」

戦士「つー事は……この先は海!?」

召喚士「水があるって事は、その可能性は高いよっ」

戦士「……ちょっと行ってみないか?」

召喚士「えぇっ!?」

戦士「いや、無理はしねぇよ。それにもう魔王は倒したんだ」

召喚士「……う、うん」


266 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:39:07.57 ID:OaPKCoQmo
戦士「何か……浮くものはと……」

バシャッ…ズズズズッ

戦士「!?」

召喚士「ど、どうしたの!?」

戦士「な、何だこりゃあ……!!」

召喚士「!?」

タッタッタッ…ザバッ

戦士「見ろっ! この先……真っ暗で何もねぇ!!」

召喚士「……ほ、本当だ……っ」

戦士「ど、どうなってやがんだ……!?」

召喚士「ここが、世界の果てって事か……」

戦士「なるほどな……っ」

召喚士(でも妙だぞ、だったら何故……)

ザッザッザ

隊長「おい、何をしてるんだ。西の砦へ帰るぞ」


267 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:40:00.71 ID:OaPKCoQmo
召喚士「あっ、隊長……っ」

戦士「すまねぇ。ちょっと……な」

隊長「……?」

ザッザッザ

隊長「こんな所で何してんだよ」

戦士「見てくれよほらっ、世界の果てだぜ!?」

隊長「……!?」

戦士「この闇の向こうって、何があるんだろうな」

召喚士「ちょっと、戦士!」

戦士「行こうだなんて思わねぇって。流石に今は、な」

隊長「この向こうは、地獄かもしれないな」

戦士「えっ!?」

隊長「魔王がずっと君臨していたんだ。その先は人間に立ち入られたくないのかもしれん」

戦士「地獄か……。もうあんなとこは勘弁だよ」

隊長「地獄へ行ったのか!?」


268 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:40:40.78 ID:OaPKCoQmo
戦士「ん、あぁ……。こないだちょっとな」

召喚士「地獄……。サタンが封印されているんだっけ?」

戦士「天才の話じゃ、そう言ってたぞ?」

召喚士「そっか」

戦士「でも、あん時は物凄い威圧っつーか、胸が押し潰されるような感じがあったなぁ」

隊長「……」

戦士「でもこの闇からは何も感じない。場所によって、何かあるのかねぇ」

召喚士「どうなんだろうね」

隊長「まぁ、魔王を全て倒した時に分かるかもしれんな」

戦士「そうだなぁ」

召喚士「うん」

隊長「さて、話はこれぐらいにして戻るぞ。皆が待っている」

戦士「へいへい、すんません」

スタスタスタ…

召喚士「……地獄か」


269 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:41:31.42 ID:OaPKCoQmo


スタスタスタスタ

隊長「そんじゃ、また後でな」

戦士「特遊は行かねーのか?」

隊長「戦後処理だ。ああ、ついでにそこの2本も持って行ってくれ」

戦士「!?」

隊長「お前の槍と総司令の剣だ。頼むぜ」

スタスタスタ…

戦士「自分のモンだしな。しゃーねぇか。……ふんっ!」

召喚士「あとは天才さんのツヴァイハンダー」

戦士「よっと」

ズボッ…ズシイィン

戦士「ぐ、ぐおっ! こんな……重てぇのかよ……っ」

召喚士「だ、大丈夫!?」

戦士「あ、ああ。アイツら……っ、こんな剣をずっと振り回してたのかよ……っ」


270 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/01(木) 18:45:37.15 ID:OaPKCoQmo


ザッ

西国兵「それでは、出発致します」

戦士「ん? 盗賊と魔道士は?」

青年兵「先の馬車で、既に西の砦へ向かわれましたよ」

戦士そっか」

青年兵「最後まで、踊り子さんと共に居たい……と」

召喚士「……っ」

戦士「あいつらにとっちゃ、出会って親しくなって……すぐの別れだもんな」

青年兵「つらいと思いますよ」

召喚士「うん……」

戦士「俺もしんどいけどさ、慣れってのは怖いよな……」

召喚士「うん……そうだね」

青年兵「段々と冷静でいられる自分に、恐怖を感じますよ」

思い足取りの中、召喚士らを乗せた馬車は、西の砦へと戻っていった。


279 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:36:16.78 ID:kU5YH41Mo
〜西の砦〜

ガラガラガラッ…タッタッタ

西国兵「急げっ! 衛生兵は準備出来ているかっ!?」

衛生兵「出来てますっ! 早く!」

天才「……っ」

衛生兵「う……っ、これはひどい……」

西国兵「とにかく急いでくれっ! これから怪我人が続々と来るんだっ!」

衛生兵「わ、分かった……っ!」

ガチャガチャガチャッ…タッタッタ

傭兵「魔王を倒したってのに、てんやわんやだな……」

親衛隊「まぁ、被害は最小限と言えるかもしれないが……これだけの被害だしな」

傭兵「西国軍も重軽傷者が10数名。そう簡単にはいかないもんだな」

親衛隊「この結果の善し悪しは、後世が評価してくれるさ」

傭兵「……まぁな。ところで王子……もとい、陛下は?」

親衛隊「先程までいたが、既に部屋へ戻ったのかもな」


280 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:37:22.79 ID:kU5YH41Mo


召喚士「……」

テクテクテク…

召喚士「魔道士さん……」

魔道士「……」

召喚士「隣……いいですか?」

魔道士「……」

召喚士「……あ、そうだ。何か食べます? キャンディーとか……」

魔道士「大丈夫です」

召喚士「……そうですか」

魔道士「……」

召喚士「踊り子さん、凄いですよね」

魔道士「…………」

召喚士「世界一どころか、あの魔王をも恐れさせ、称えさせたんですから……」

魔道士「――っ」


281 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:38:23.92 ID:kU5YH41Mo
ガバッ!!…ギュウウゥゥ

魔道士「うっ……あぁっ、ああぁぁぁぁ!!」

召喚士「……」

魔道士「私っ、もうどうしたらいいか分からないっ!」

召喚士「魔道士さん……っ」

魔道士「みんな一生懸命でっ、頑張ってて……なのに……っ!」

召喚士「でも、魔道士さんが頑張ったお陰で、生きる事が出来た人も大勢いると思いますよ」

魔道士「……っ」

召喚士「俺だって、何度も魔道士さんに命を助けて貰いました」

魔道士「うっ、うぅ……うぐ……っ」

召喚士「サモナーさんが言ってました。どんなに頑張ったって、救えない人もいるって」

魔道士「……っ」

召喚士「それは宿命だって、そう言ってました」

魔道士「そんなのって――」

召喚士「ええ、言い訳とか慰めにしか聞こえません。俺もそう感じました」


282 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:39:17.12 ID:kU5YH41Mo
魔道士「……」

召喚士「でも、そう思わないと前に進めませんから」

魔道士「もう……嫌だよぉっ、誰も……失いたくない……っ」

召喚士「もちろんです。俺だって、誰1人失いたくない」

魔道士「じゃあ……っ!!」

カツカツカツ

王子「召喚士さんの言う通りですよ、魔道士さん」

魔道士「王子……っ」

王子「各人の死に、無駄など決してないのです」

召喚士「……」

王子「此度の戦い、踊り子とそして、マーマンの死があったからこそ、勝利を得た」

召喚士ええ」

王子「だからそれは、召喚士さんの言う通り……宿命であると私も思います」

魔道士「……うっ、うぐ……うああぁぁ!!」

召喚士「……っ」


283 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:40:29.02 ID:kU5YH41Mo


戦士「戻ってきたぜ」

テクテクテク

召喚士「……な、何?」

戦士「ん、ああ」

西方参謀「これから遺体の火葬に入ろうと思ってな」

王子「西国までそのまま帰してやる事はならぬのか?」

西方副司令「結論としては、魔族化を防ぐ為に、早急に火葬すべしと」

王子「成程」

召喚士「確かにネクロマンサーが再び現れる可能性もありますしね」

盗賊「魔道士、良い……な?」

魔道士「……っ」

召喚士「魔道士さん……」

戦士「いいか? 死んだ人間は……」

魔道士「私が、やります……っ」


284 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:41:15.11 ID:kU5YH41Mo


ダンサー「うえぇっ、ひぐっ! ひっぐ!」

魔道士「……」

西方参謀「最後の別れだ。遺品や入れたい物を棺桶に……」

盗賊「……花、詰んできたから」

青年兵「西方の砂漠にも、花は咲くんですね」

王子「ああ。どのような地でも花は咲くものさ。彼女もまたそうであったようにな」

ガバッ!!

魔道士「うあああぁぁっ!! ごめんねっ、ごめんね……踊り子ちゃん!!」

盗賊「……っ」

魔道士「私……ごめ……んねぇ……っ!!」

ダンサー「ふえぇ!! ひっぐひぐ……っ!!」

西方副司令「それじゃ、お願い」

西方参謀「んじゃ離れよう。頼んだぞ?」

魔道士「ひっぐ……んく……っ」


285 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:41:44.42 ID:kU5YH41Mo


魔道士「撃ち……ます」

召喚士「……」

ドォン!!…ゴオオォォォォ…

魔道士「……う……うあぁ……っ」

サモナー「これで彼女も、解放されたね」

王子「うむ。今度は今まで以上に舞う事だろう。星となってな」

魔道士「う……っぐ! ううぅぅぅぅ!」

ダンサー「踊り子ちゃああぁぁん! うわああぁぁん!」

召喚士「魔道士さん、踊り子さんもきっと喜んでいますよ」

魔道士「…………っ」

戦士「最後の最後まで、お前が付いていてやったんだからな」

盗賊「……ああ」

炎はゆらゆらと煙を吐き出しながら、青空の中へと吸い込まれてゆく。

それは踊り子が舞うかののように、絶えず左右へと踊っていた。


286 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:42:42.92 ID:kU5YH41Mo
〜夜〜

ドドッドドッドドッ…

西国兵「ご苦労様ですっ!」

隊長「こちらは異常ないか?」

西国兵「ありません! イブリースが倒された為か、魔物も姿を見せないようです」

男隊員「引き続き、監視ヨロシクな。ヒャハハ」

ドドッドドッドドッ…ザザァ

青年兵「ご苦労様です」

隊長「怪我人の容態は?」

青年兵「治療を施し、今は安静にしております。皆様は大丈夫ですか?」

女隊員「私は軽傷だから問題ないッス。でも、格闘家くんは……」

格闘家「脇腹ですから。少し痛むだけです。問題ありません」

男隊員「問題ありませんってお前、骨折か最低でもヒビいってんだろ」

格闘家「問題ありません」

隊長「いいからこいつも診てやってくれ」


287 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:43:33.58 ID:kU5YH41Mo
青年兵「はい。格闘家さん、こちらへ」

格闘家「……はい」

ザッザッザ

隊長「……んで、司令は?」

青年兵「医務室で西国陛下と話しておりますよ」

隊長「ったく、大人しく寝ていればいいものを」

青年兵「休んでいる暇なんかねぇんだよバカ!」

隊長「……?」

青年兵「……そう言って、一蹴されました」

隊長「だろうな。それで、帰国の手筈は?」

青年兵「明朝、西方軍が出発。続いて負傷者より順次、帰国致します」

隊長「お前らはどうするんだ?」

青年兵「司令と召喚士さん達が残るとの事なので。私もここで待機致します」

男隊員「残る? 何かまだ任務があるのか?」

青年兵「……みたいですね」


288 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:44:23.68 ID:kU5YH41Mo
〜西の砦、北側〜

マーメイド「…………」

サアアァァァァ

マーメイド「……?」

マーマン『俺っちはさ、自分の生き方に後悔はしてねぇぜ?』

マーメイド「……ええ」

マーマン『召喚主を殺し、召喚界を追放されて、地上に堕とされた』

マーメイド「……ええ」

マーマン『そっから色んな人間を見てきた。もちろn悪い奴もいた』

マーメイド「……ええ」

マーマン『でも、人間は優しかった。こんな俺っちでも慕ってくれた』

マーメイド「……ええ」

マーマン『もっと早く自分にケリを付けるべきだった。でも、地べた這いながら生き続けて良かったよ』

マーメイド「…………ええ」

マーマン『お陰で人の役に立って死ねた。これ以上の喜びはねぇよ。恩返し出来たんだ』


289 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:44:56.93 ID:kU5YH41Mo
マーメイド「ええ……っ」

マーマン『でもなぁ、やっぱりもっと早く死ぬべきだったのかもな』

マーメイド「…………」

マーマン『まさか、別れがこれ程つらいとは思わなかった』

マーメイド「マーマン……っ」

マーマン『もし再び召喚獣として生まれる事があるならば……』

サアアァァァァ…

マーマン『俺っちも……お前の主や、あいつみたいな主が……いいな』

マーメイド「マーマン!!」

ザッ

召喚士「……マ、マーメイドさん」

マーメイド「召喚士くん……あ、ごめんなさい」

召喚士「……いえ」

マーメイド「どうしたの? こんな所に……」

召喚士「いえ、何だか……マーマンさんがいるような、そんな気がしてつい……」


290 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:45:45.01 ID:kU5YH41Mo
マーメイド「……」

召喚士「はは……っ、馬鹿ですよね……そんなのって」

マーメイド「ううん、きっと居たのよ……彼が」

召喚士「マーメイドさん……」

マーメイド「貴方にお礼が言いたくて……感謝をつたえたくて……っ!」

召喚士「……っ」

マーメイド「ごめんなさい、召喚獣が泣くなんて……それこそ馬鹿みたいよね……」

召喚士「……う……くっ」

マーメイド「ごめんね……ごめんなさい……っ」

召喚士「ついこの間、ここで話をしたばかりだったのに……」

ボロボロボロッ…

召喚士「マーマンさんが……自分の事話してっ、それで……っ」

マーメイド「……っ」

召喚士「これから……っ、沢山の仲間を救うって……!!」

マーメイド「召喚士くんに重い口を開いたのは、きっと彼自身が気付いていたのかもね」


291 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 16:47:02.27 ID:kU5YH41Mo
召喚士「……ぐっ」

マーメイド「自分が近い将来、死ぬって事……」

召喚士「……いつの日か、絶対にやってみせます」

マーメイド「召喚士くん?」

召喚士「俺、マーマンさんを絶対に召喚してみせますから……っ!!」

マーメイド「……うんっ、貴方ならきっと……きっと出来るわ……っ」

召喚士「マーマンさんっ、ありがとうございました!!」

マーメイド「……」

召喚士「……それじゃ、失礼しま……っす!」

ザッ…タッタッタッタッタ…

マーメイド「マーマン、聞こえた……?」

サアアァァァァ

マーメイド「貴方は間違ってなかったわ。間違いなんて全然、なかったわよ」

アアァァァァ…

マーメイド「……また、ね」


294 名前:NIPPERがお送りします(新鯖です) [sage] 投稿日:2011/12/02(金) 18:15:49.93 ID:FrjddV8SO
>>1おつ!

サモナーはあとどれぐらい生きていけるんだろう



次へ 戻る 戻る 携 上へ