■戻る■ 下へ
剣「お前は勇者か」 少女「違うよ」
- 117 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga]
投稿日:2013/12/03(火) 21:08:46.86 ID:2qpQJqGa0
城塞都市行きの馬車
騎士「申し訳ない、休む間もなく移動させてしまって……」
少女「いえいえ」
騎士「是非とも勇者殿には、最接近領の砦におられる王に謁見していただきたいのです」
剣「……(結局、まともに勇者探しなどできなかったな……)」
- 118 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:09:46.93 ID:2qpQJqGa0
王「お主が勇者か!
私が留守の城を守ってくれたこと、いたく感謝するぞ!」
バッシバッシ! (肩を叩かれている
少女「(痛い!)」
将軍「ドラゴンゾンビ……そんなものまで使えるとは、魔族の戦力は底なしなのか……」
王「将軍よ、それは逆だ
たやすく扱えるのなら、前回のこの砦の侵攻の時に使ったはず」
将軍「では……」
王「そう、魔族の戦力は、奥の手を使わねばならぬほど疲弊している!
これは機だ!
勇者が現れ魔族が疲弊した今! 今こそ魔王城へと攻めこむ時!」
- 119 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:11:12.90 ID:2qpQJqGa0
幹部「……処分はなんなりと受けよう」
側近「殊勝だな」
幹部「虎の子のドラゴンゾンビを持ちだして失敗した……覚悟はできている」
側近「……今や、そんなことを言っている場合ではなくなった」
幹部「何?」
側近「人間の軍勢がこちらへ向かっている……
「あの勇者」も共にな」
幹部「! あの女!」
側近「奴は自分は勇者などではないと言っていたが……とんだ寝言だな」
幹部「私を行かせろ!
必ず首を討ち取ってみせる!」
側近「その怪我でか
隠せているつもりなのかもしれんが、血臭はごまかせんぞ」
幹部「……ちぃ!」
- 120 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:11:49.69 ID:2qpQJqGa0
側近「今すぐ命令を伝達、この城は捨てる
魔人領の奥深くの樹海であれば、人間たちは踏み込めまい」
幹部「逃げるというのか!」
側近「たとえ魔王様が蘇ったとしても、軍が無くては意味が無い……
城を失った責は私が受けよう」
幹部「そういう問題ではない!
あんな小娘に好き勝手やられて、黙っていられるか!」
側近「時勢が見えんか愚か者が!」
- 121 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:12:53.98 ID:2qpQJqGa0
???「騒がしいな」
側近「!」
幹部「!」
- 122 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:13:40.09 ID:2qpQJqGa0
魔王「数百年ぶりの目覚めだというのに、頭に響くわ」
側近「魔王様!」
幹部「つ、ついにご復活を!」
- 123 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:14:06.25 ID:2qpQJqGa0
魔王「側近、幹部、ずいぶんと短気を起こしたようだな
私が復活するまで待てなかったか?」
側近「も、申し訳ございません! この手落ち、命を持ってしてでも償います!」
魔王「命などいらん、手柄によってのみ泥は拭えると思え」
側近「は、ははぁ!」
- 124 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:15:04.66 ID:2qpQJqGa0
魔王「近くに寄れ」
側近「?」
部下「?」
ポウ!
側近「回復魔法……」
幹部「ここまでの怪我を、一瞬で……!」
魔王「兵達の元に案内せよ、もうじき人間の軍が近づく
私も打って出よう」
側近「お待ちください! あちらには「勇者」が!」
魔王「勇者、あの小娘か」
幹部「(復活したばかりでありながら、この方はすべてをご存知なのか……?)」
魔王「私は運がいい、アレが相手なら負けることはない」
幹部「し、しかし……ドラゴンゾンビさえ奴には……」
魔王「ふふ、若いお前は知らんのだろうが……あのドラゴンを葬ったのは私だ」
- 125 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:15:47.56 ID:2qpQJqGa0
魔王城制圧軍・行軍中
少女「なんかノンストップで大変な事に……」
剣「いや、王が言ったとおり、魔王軍はかなり疲弊しているはず
私達の出る幕など無いかもしれんぞ
魔王が復活していないのが幸いだな」
- 126 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:16:23.04 ID:2qpQJqGa0
魔人領平原
兵「! 見えました、魔王軍です!」
王「……想定よりはるかに多いな」
将軍「怪我の深い負傷兵も駆り出したのでは?
であれば恐るに足りませぬ」
王「……」
- 127 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:16:54.16 ID:2qpQJqGa0
剣「……ハッ!」
少女「!?」
ガキィン!
魔王「ふふふ、よくぞ対応できたな
側近や幹部と戦った時は半分ボケていたようだが、カンを取り戻したらしい」
剣「ま、魔王!?」
少女「え、この人が?」
- 128 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:17:24.74 ID:2qpQJqGa0
将軍「魔王本人が陣内に現れただと!?」
兵「は、はい! 勇者様が相手をしておられます!」
王「ち、瞬間移動魔法か……お前たちは手を出すな!
魔王と勇者の戦い、ヘタな者が加勢すれば逆に足を引っ張りかねん!
勇者の援護には俺と将軍がつく!」
側近「そうは行かんぞ」
王「! 貴様は砦の時の!」
幹部「できれば、勇者を殺し汚名を濯ぎたかったがな」
側近「言うな、勇者とは魔王様が数千年前から先約だ」
将軍「ええい邪魔だ!」
側近「魔王様の戦いの邪魔はさせん!」
- 129 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:18:03.07 ID:2qpQJqGa0
戦いが始まりわずか数十分で、人間の軍は敗色が見え始めた
魔王の魔法によりすでに魔王軍に負傷兵はおらず、逆に人間の軍には砦の防衛戦で傷が癒えていないものが未だ多かった
もともと、弱体化した魔王軍を素早く制圧するために編成された軍勢ということも大きく
何より……
- 130 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:18:49.87 ID:2qpQJqGa0
ガキン!……ギャリィィ!
少女「(は、速い!
剣を持ったら、雨の一滴が流れ落ちる形だって見切れるのに!)」
剣「(……恐らく復活したばかりだろうに、なんという力だ!
いや、わかりきっていた……魔王には、私と少女ではまず勝てん!)」
魔王「勇者の剣よ、お前は確かに一級の腕を持ち手に与える……
だが、たかが一級のウデごときで私は倒せん!」
バキ!
少女「っ……!」
剣「少女!」
- 131 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:19:19.19 ID:2qpQJqGa0
剣「(く、この戦いについてくるには、少女の体は脆すぎる!)」
魔王「さあどうした!
他の人間の体を奪え、幾人でも屍を築いてみせろ!
勇者とは勇者の剣を持ちながらその力を使わぬ者、
勇者の剣を勇者の剣として使うしかない者に私が負けることはない!」
- 132 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:19:48.87 ID:2qpQJqGa0
側近「(さすが魔王様、あの勇者を完全に圧倒している!)」
ガキン!
王「(兵たちに動揺が広がっている……
当然か、この俺とて魔王があそこまでの力を持つとは思ってもいなかった!)」
- 133 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:20:27.45 ID:2qpQJqGa0
魔王「来ないか、ならばこちらから行くぞ!」
剣「!」
ガッ!
魔王「」ニィッ
剣「」ピシ!
少女「」ゾォッ
魔王「」グッ!
バキン!
少女「!!!」
- 134 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:20:53.18 ID:2qpQJqGa0
将軍「勇者の剣が!」
幹部「(終わったな)」
- 135 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:21:22.31 ID:2qpQJqGa0
少女「……え?」
剣「」
- 136 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:23:06.70 ID:2qpQJqGa0
少女「剣……?」
剣「」
少女「剣!!」
剣「」
魔王「終わってみれば、アッサリとしたものだな
お前には、勇者以上に……数千年の間、幾度と無く邪魔されたものだが」ポイ!
破片「」カラン……
- 137 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:23:41.78 ID:2qpQJqGa0
少女「」ガク……
魔王「どうした、折れたとはいえ勇者の剣、私を倒せる唯一の武器を持っているのはお前なのだぞ」
少女「……」
魔王「……当然か、ただの小娘に過ぎないお前では、どうやっても私を倒すことなどできん」
- 138 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:24:29.08 ID:2qpQJqGa0
少女「(……なんで、私が剣を見つけちゃったんだろう?
もっと強い人が見つけてたら……ううん、私がもっと強い人に渡していたら……)」
少女「(でも、他の人に渡したくなかった……剣と一緒に、いろんなものを見たかった……)」
魔王「最後の勇者よ、せめて苦しまぬよう終わらせてやる」ジャリッ!
- 139 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:24:55.53 ID:2qpQJqGa0
少女「(ごめん、剣……)」
魔王「これで、我ら魔族と人間の戦いは終わる!」
ビュン!
少女「」
- 140 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:25:21.16 ID:2qpQJqGa0
剣「」カッ!
少女「え!?」グイ!
魔王「何!?」
ザン!
魔王「グゥ!」
- 141 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:26:00.53 ID:2qpQJqGa0
魔王「ば、バカな、貴様、生きて……!」
剣「油断したな、魔王!」
ドス!
魔王「グブ!」ゲホ!
少女「剣!」
剣「……刀身が砕けたくらいでは、私は死なん」
少女「バカ! 心臓止まるかと思ったよ!」
剣「すまん、不安にさせたな……」
- 142 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:27:06.34 ID:2qpQJqGa0
魔王「」ガシ!
少女「!」
剣「よせ、今の一撃で心臓を潰した
今のお前には、もう力など残ってはいまい」
魔王「……ククク、まさか、こんな小娘が勇者になるとは、な……」
剣「小娘、か
だからこそ、お前も油断したのだろう」
魔王「……ふふ、その通りだ……仮にもいっぱしの剣士が相手であれば、
お前が本当に死んだとて、私が油断することなど無かっただろう……」ボロ……
少女「! 体が……」
魔王「私は、再び闇に沈むとしよう……
だが、私が蘇る数百年後……再び勇者は現れるかな?」ボロボロ……
剣「……」
魔王「さらばだ、勇者の剣 ……また数百年か後、に……」ボロ……
- 143 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:27:34.44 ID:2qpQJqGa0
側近「! 魔王様!?」
王「おお、やったのか!」
- 144 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:28:14.42 ID:2qpQJqGa0
幹部「そ、そんな!」
将軍「よし、魔王を失い魔族は浮足立った! 残る敵は我々が殲滅するのだ!」
幹部「……勝手なことをぬかすな!」
ガッ!
側近「……退くぞ」
幹部「な、何をバカな!」
側近「奴らの言った通りだ、魔王様を失い我が軍は大きく動揺している!
これ以上、軍に被害が出ることは許されん!」
幹部「だが!」
側近「幸いにして、現状兵の被害は人間のほうがはるかに深い!
逃れるなら今しかないのだ!」
幹部「……ちぃ!」
側近「我らが全軍に告ぐ!
今すぐ砦まで後退せよ! しんがりには我々が付く!」
- 145 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:28:43.69 ID:2qpQJqGa0
将軍「逃すか!」
王「待て!」
将軍「王!?」
王「我々とて、もはや追討や持久戦ができる状況ではない
残念だが、ここは退くしかあるまい」
将軍「く、あと一歩というところで……」
- 146 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:29:12.66 ID:2qpQJqGa0
数百年ぶりの魔族と人間の戦いは、またもや痛み分けで終わった
数百年後の子供たちに、この戦いを、魔王の復活を伝えるための物語が、またひとつこの世界に作られた
- 147 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:29:52.18 ID:2qpQJqGa0
〜〜〜〜〜〜〜
商人「ふむふむ、次は靴のサイズを測りますので……」
少女「……」
将軍「しっかりと拵えてくれい、なにせ魔王を倒した勇者殿が祝賀に着るドレスなのだからな!」
商人「お任せください!」
少女「……」
- 148 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:30:19.96 ID:2qpQJqGa0
王城・客室
少女「なんかすごいことになっちゃったなぁ」
剣「誇ってもいいと思うぞ」
少女「勇者だってさ」
剣「なにもおかしくないだろう、あの魔王と対峙し、倒したのだからな
お前が勇者だ」
少女「違うよ」
剣「……?」
- 149 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:30:50.03 ID:2qpQJqGa0
破片「」カチャン
少女「ねえ、剣って元に戻るの?」
剣「人間では無理だろうが……ドワーフの名工なら、治せるかもしれないな
しかし私が知るのは数百年前のこと、ドワーフ族が同じ所に住んでいるかどうか……」
- 150 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:31:17.94 ID:2qpQJqGa0
少女「……よし、じゃあ次は剣を治す旅だね! 出発!」
剣「い、今からか!?」
少女「うん! 剣だって早く治りたいでしょ!」
剣「まあそうだが……祝賀パーティーは?」
少女「すっぽかす」
剣「……」
- 151 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:31:43.43 ID:2qpQJqGa0
窓「」カチャ
少女「よっと」
剣「」
ストン!(3階の高さ)
- 152 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:32:38.89 ID:2qpQJqGa0
剣「やれやれ、城は居心地が悪かったのか?」
少女「だって、みんな私の事勇者様勇者様って言うんだよ?」
剣「何もおかしくないだろう?」
少女「違うよ
私、本当の勇者を知ってるもん」
剣「?」
少女「わからないの? 「勇者様」!」
剣「!」
- 153 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:33:07.40 ID:2qpQJqGa0
剣「……」
少女「あ、照れてる?」
剣「ち、違う! 表情もないのに何故わかる!」
少女「わかるよぉ、えっへっへ」
- 154 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:33:33.78 ID:2qpQJqGa0
少女「じゃあ行こう、勇者サマ!」
剣「違う!」
おしまい
- 155 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2013/12/03(火) 21:36:02.74 ID:DqACpQ8DO
おつ!
面白かった!
- 156 名前:NIPPERがお送りします(SSL) [saga] 投稿日:2013/12/03(火) 21:36:05.03 ID:2qpQJqGa0
最後まで見ていただき、ありがとうございました
>>37でFINにしたのは、お昼で一旦切ろうと思ったのもあるのですが、
掲示板型投稿でああいうあからさまなニセエンド要素を入れて時間を空けると面白いかなぁ、
なんてふと思いついて、何も言わず一日放っておいてしまいました
不快に感じた方は申し訳ありません
そしてそんな目にあってもなお最後まで読んでくれた方、ありがとうございました
では
- 158 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2013/12/04(水) 00:54:30.53 ID:fPXryemIo
明日また剣復活編が投下されるんですね全裸で待ってます
戻る 上へ