■戻る■ 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その39
- 1 名前:NIPPERがお送りします []
投稿日:2012/05/14(月) 15:53:17.55 ID:WskUfeWXo
┏━ ノ ー‐ j ji |l| _,,,,,_ ji ji i i! ,_,,xz .|l| |l| ┃
┃ -イ.ー┬‐ | ーチ‐ || |! ーナ ̄| ト-、 | |! / || || ┃
┃. │ _| レ _ノ `"⌒) o ,__,,」 ノ´ 、ノ .| 丿 /^\ .o .o ━┛
. ̄
――かつて、人間と魔族が共存し、争いを繰り広げていた時代……
幻獣を召喚し魔物を倒す者がいた…。
名を「召喚士」…。後に「救世主」と呼ばれる者である……。
――かもしれない……。
〜前回までのあらすじ〜
召喚士、戦士、魔道士、盗賊からなる4人の冒険者達。
5年にも及ぶ人間対魔族の闘いはいよいよ佳境を迎えた。
魔王ベルゼブブまでの道は、多くの命の上に拓かれた。
そして、天才最後の宿命が今ここに……。
◆7xまとめ様(いつもありがとうございます!)
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/summoner_ike_Cockatrice.html
◆かぎまとめ様(日々のまとめありがとうございます!)
http://hookey.blog106.fc2.com/blog-entry-3022.html
◆キャラクター人気投票所(ありがとうございます!)
http://vote3.ziyu.net/html/cocka.html
◆絵とかのあぷろだ(支援ありがとうございます!)
http://ux.getuploader.com/cockatrice/
◆雑談スレ(オマケみたいなSSがあったりするとかしないとか)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1329994650/
◆前スレ(その38)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1332420059/
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1336978397(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
- 2 名前:NIPPERがお送りします [] 投稿日:2012/05/14(月) 15:54:19.88 ID:WskUfeWXo
◆過去ログ(その1〜37)
(ry
◆あっちのスレ?(その1〜その2)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1257262778/
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1301828985/
- 4 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/05/14(月) 18:24:34.52 ID:WskUfeWXo
…
大参謀「失礼致します」カチャッ
大元帥「……」
大参謀「式典の準備が整いました。間もなく閣下もご移動頂きたく」
大元帥「……うむ」」スクッ
大参謀「お顔が優れませんね」
大元帥「気が重いものよ」
大参謀「何を仰られますか。本日は英雄の日、50周年の式典で御座いますよ?」
大元帥「まぁ、な。だが……英雄と称えられる者の裏には、数多の命が散ったのも事実よ」
大参謀「……如何にも、ですね」
大元帥「この英雄とて、万民が作り上げた虚像に過ぎぬやもしれんぞ?」
大参謀「……天才、と申されましたでしょうか?」
大元帥「ああ。天才……全てにおいて優れ、紛れもない英雄ではあった」
大参謀「なれば……」
大元帥「英雄とは誰が決めるものなのだろうかな。本人か、後世か……はたまた」
- 5 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/14(月) 18:26:41.23 ID:WskUfeWXo
大参謀「おっと閣下、お時間に御座います」
大元帥「ところで、彼らは?」
大参謀「残念ですが」
大元帥「……そうか」ザッ
大参謀「閣下、1つ……宜しいでしょうか?」
大元帥「ん?」ザッザッ
大参謀「英雄、天才とは……どんな方であられたのでしょうか?」
大元帥「君の父上や叔父上に聞いておらぬのか?」
大参謀「多少の話や文献は。しかし細かな事は一切……」
大元帥「まぁ、本人の命でもあったからな」
大参謀「文献を残すな、と?」
大元帥「一言で申せば、そういう人であった」
大参謀「成程……」
大元帥「どうしても知りたくば、資料室のこの文献の1031ページ目を見ると良い」スッ
大参謀「有難う御座います」
- 6 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/14(月) 18:27:30.21 ID:WskUfeWXo
…
本国王「皆も知っての通り50年も前のこの日、大きな戦いがあった」
大元帥「……」
本国王「この戦いにおいて、魔王ベルゼブブを討ち、世界には平和が訪れたのだ!」
ワアアアアァァァァ!!
本国王「前王である我が父や、母もまたその戦いに大いに奮ったと言う」
大元帥(あれからもう……50年か)
本国王「中でも、魔王ベルゼブブを己の命と引き換えに討った英雄……」
大元帥(貴方の望む世界は、これで良かったのでしょうか……)
本国王「今なお語り継がれている英雄、天才は……諸君らを今も見守っているであろう!」
ワアアアアァァァァ!!
――『ハーッハッハッハ! 何が英雄だよなぁ? 俺様なんざむしろ、戦犯だってのによ』
大元帥「――!?」バッ!!
大参謀「……如何なされました? 間もなく、閣下の演説ですよ?」
大元帥「あ、あぁ。そう……じゃな」
- 7 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/14(月) 18:28:14.45 ID:WskUfeWXo
本国王「今日の式典を催すにあたり、まずは青年兵大元帥より言葉を頂戴する」
ワアアアアァァァァ!!
大元帥「……」ザッ
気が付けばもう50年も経っているのだな。あの時から……。
こうして今もなお、大元帥として我が身を委ねておるのは……如何なる縁であろうか。
50年と言う区切りの良いこの刻をもって、私も一線を退くとしようか……。
こと後任に関しては、若い連中が育っているからな。戦いを知らぬ事が心配ではあるが。
今となっては古臭いが、最後はこの言葉で締めくくるとするか……。
大元帥「勇敢と無謀を履き違えてはならない、慎重と臆病を履き違えてはならない、
自信と慢心を履き違えてはならない、勇者は一人であり、全員が勇者である」
…
大参謀「素晴らしき演説でした。最後、良い言葉でしたね」
大元帥「古い言葉だがな」
大参謀「英雄の言葉……ですか?」
大元帥「ああ。いや、英雄だけではない。勇者の言葉さ――」
今日も風は穏やかで、また新しい息吹をそっと運んでいた。
- 8 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/14(月) 18:30:17.49 ID:WskUfeWXo
召喚士「行けっ!コカトリス!!」
〜第六十一部〜
- 9 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/14(月) 18:31:38.98 ID:WskUfeWXo
〜魔王城〜
召喚士「いけええぇぇーっ!!」
シュイイィィィィン……バシュウウゥゥゥゥ!!
ベルゼブブ「コカトリスか」
コカトリス「はぁ!!」ドゴォ!!
ベルゼブブ「非力な。他愛ない」
コカトリス(召喚士め、もうまともに戦える魔力ではないぞ……っ)
事実、まともに戦える者などここには居なかった。連戦に次ぐ連戦、
余力などとうになく、詩人の演奏が止まった今、魔力すら湧き出てこない。
これは敵を倒す為の戦いではない。生きる為、生き抜く為の戦いなのだ。
しかしそれこそが至難の業。生き抜く溜めの余力は乏しく、しかも相手は魔王。
召喚士(……何としても……食い止めてみせるっ!!)
彼らが戦う理由はただ1つ。その男を待っているからである。
召喚士(天才さんが来るまで……絶対に!!)
魔王ベルゼブブとの戦いの火蓋が今、切って落とされた。
- 18 名前:NIPPERがお送りします(愛知県) [sage] 投稿日:2012/05/14(月) 20:29:06.45 ID:xyIsUhz3o
切なすぎるから
あれは天才の予言で、
それが外れるってオチを希望!!
- 26 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/15(火) 18:46:07.31 ID:4RT8Gx1yo
戦士「だっりゃああぁぁぁぁ!」
盗賊「……」ススッ
いつもと変わる事なく、戦士盗賊が全面に出て敵を引き付ける。
東方司令(まともにやりあっても通じるとは思えない。だったら……)
そこへ治癒を終えた東方司令が合流し、背後をかき回す。
皇太子「エリート、私達は奴の左側からあたるぞ」
エリート(陛下の持つ剣は聖剣だ。あれならば或いは……)
皇太子とエリートは前列と後列の中間あたりより飛び出し、
前衛が反撃を受けぬよう、間髪入れず側面より強襲する。
青年兵「召喚士さん、こちらはもう一撃で大ダメージを与えるような魔力はありません」
召喚士「俺もだよ。ここは仕掛けつつ、みんなのバックアップをメインに立ち回ろう」
青年兵「ですね。バハムートは温存し、ワイバーンを基軸に攻撃します!」
召喚士「了解っ、こっちも動きを合わせるよ!」
前列の後を追うように、2人の召喚士が召喚獣を操りながら疾走する。
残されたわずかな魔力を効率良く使い、援護と攻撃をバランスよく展開していく。
- 27 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/15(火) 18:47:30.96 ID:4RT8Gx1yo
魔道士「私達も行きましょうっ!」
ジュニア「おうよっ! おめぇさんは退がってろい。大切な回復薬だ」
賢者「そうするよ……ふぅ」
ジュニア「ヒゲのオッサンは?」
大軍師「戦えますが、支援程度でしょうか。元来、武力を持ち合わせてはいないもので」
ジュニア「とにかく、やるっきゃねぇよな! くそっ!」ダッ
後方、魔道士とジュニアが魔法援護を開始する。それに伴い大軍師は、
賢者の護衛を務めながら、風の魔法で前衛と召喚獣の援護へと移った。
ベルゼブブ「……」
この時点で五行もなければ4属性召喚もない。つまり、
今までのように魔王を倒す手段は、一切残されてはいなかった。
もっとも、最初からそんな画策はしておらず魔王との交戦も最悪止む無し、
と言った程度のもので把握をしていた。少なくとも国軍の者らは。
そう。全てはあの男の予言に基づく作戦であり、宿命なのだから。
大軍師(司令……っ、一体どうなさったというのです……)
- 41 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:04:15.81 ID:YM2d0y+Qo
ゴウッ!!
ベルゼブブ「……」
コカトリス「はぁーっ!!」
戦士「んの……やろおおぉぉ!!」ガシュッ!!
他愛ない。ただそれだけに尽きる。ベルゼブブは思っていた。
ベルゼブブ(何故こんな連中が此処まで来れたのやら)
ジュニア「いけいけいけぇ! 魔法援護なら任せとけ、ハッハ!」
東方司令「っりゃあぁ!」バシュッ!!
ベルゼブブ「……フッ。これでは余の下僕がわざと道を譲ったとしか思えぬな」
戦士「んだとぉ!!」
ベルゼブブ「事実であろう? この程度の技量でよくも此処まで辿り着けたものだ」
ガシィ!!
戦士「!?」
ベルゼブブ「人間にしては大層な武器を手にしているな」
戦士「は……なせ……っ!」
- 42 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:04:45.72 ID:YM2d0y+Qo
バキイイィィィィン!! パラパラパラッ
戦士「――っ!!」
ベルゼブブ「まぁ、何ら問題もないがな。得物も使い手も」
ドゴォ!!
戦士「――っ」ミシィ
召喚士「戦士!」
戦士「が……は……っ」ドシャッ
粉々に砕けた雷切。更にはベルゼブブの拳が戦士の腹部を直撃する。
ベルゼブブ「ふむ。防具もそれなりに質は高いか」
地に膝を付く戦士めがけ、ベルゼブブの腕組みしながら魔法を詠唱する。
ゴアッ!! ズッドオオオオォォォォン!!
青年兵「くっ!」ババッ
吹き飛ばされる戦士を青年兵が支えるが、ベルゼブブは再び、魔法の詠唱を始めた。
キュイイィィィィ……ドッドオオオオォォォォン!!
青年兵「うあぁーっ!!」
- 43 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:05:39.03 ID:YM2d0y+Qo
戦士「っ!!」ゴシャアアァァ!!
エリート「……化け物め……っ」
その言葉が全てを言い現していた。ベルゼブブは戦士らと交戦しながら、
エリートや後方支援の面々を牽制し、有効打を一切、出させなかった。
いや、出していたのかもしれないが、ベルゼブブにとってそれは、何という事も無かった。
召喚士(戦ってみて改めて分かる。やはりベルゼブブは今までの魔王とは全く違う……っ)
ベルゼブブに対する畏怖はいつの間にか薄れていた。しかし勝てるとは到底、思えなかった。
薄れた理由は1つ。生物にとっての本能、簡単に言えば諦めたからだ。
人間は命の危機に対し、自分よりも強い者に対し恐怖、畏怖を感じる。
それは命を奪われる、死ぬという現象が脳裏に働くことで、そう感じるのである。
だが、それを越えてしまえば恐怖など薄れてしまう。つまりそれが諦めなのだ。
この者には何をどう足掻いても、到底勝ち目はない。時が経てば殺されるだけ。
召喚士(傲慢や自惚れ、過信なんてものは一切ない……、この魔王は……絶対的なんだ)
演奏会で自分の出番を緊張して順番を待っていると、直前の奏者が自分をはるかに越える、
金賞確実の演奏を奏でている。それを聞いて演奏を諦めた。召喚士はそんな心境であった。
- 44 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:10:47.60 ID:YM2d0y+Qo
ズゴゴゴゴ……
ベルゼブブ「……遥か昔の話だったか」
召喚士「……?」
ベルゼブブ「ある人間が箱を開けると、無数の災厄が地上に降り注がれた」
ジュニア「何を言ってやがんだ……っ?」
ベルゼブブ「慌てて閉じようとするも最後の1つの除き、全て箱より出てしまった」
皇太子「……」ススッ
大軍師「無駄ですよ。会話しながら全方位に神経を集中させています」
エリート「……っ」
大軍師「間合いに飛び込めば……一撃で重傷です」
ベルゼブブ「最後に箱の底へ残っていたものが、希望だと言う」
魔道士「希望……っ」
ベルゼブブ「余は思う。万物の摂理において、絶対などと言うものはない」
召喚士「……何?」
ベルゼブブ「他の連中は良く、力こそが絶対やら魔族こそが絶対などとのたまう」
- 45 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:12:22.58 ID:YM2d0y+Qo
召喚士「……っ」
ベルゼブブ「だが、絶対などと言うものは絶対なのであり、存在し得ぬものなのだ」
召喚士「だから……どうだというんだ……っ!」
ベルゼブブ「余は絶対に負けぬ、と言う事はないし、そのような事を言うつもりもない」
戦士「だったらぁ……勝ってやるよ!」
ベルゼブブ「しかしだ、貴様等も阿呆ではない。分かるであろう? 余と貴様等の……」
盗賊「くっ」
ベルゼブブ「先程も述べたが、決して超える事の出来ぬ壁の存在と言うものを!」
この辺りが魔王ベルゼブブの強さである。イブリースのように、己を力を絶対的に
過信するわけでもなければ、マーラやアンラ・マンユのように人間を蔑んでいるわけでもない。
ただ現在起きている事象、そしてそれに基づく最も確率の高い結末を述べているだけである。
敵を知り己を知り、そして他者など決して信じない。信じるものは自身の力のみ。
魔族元来の本能と、人間の、いや人間が理想とする精神、思考を持ち合わせた者、
それがベルゼブブ。100ではない。99を確信とし、1を疑い徹底的に対処する。
残る力を振り絞った一同必死の攻撃も、魔王にとっては微風の如く、いなすのみであった。
- 46 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:13:22.43 ID:YM2d0y+Qo
召喚士「……はぁ……はぁ……はぁ」
コカトリス「強いなどという言葉では表せぬ、この魔族は……」
大軍師「別次元ですね。よもやここまでとは……」
何分、何十分攻撃し続けたであろうか。この空間に大きな変化はない。
ただ違う事は、魔王ベルゼブブが玉座より立ち上がり、それに挑む者らが、
初対面の時と比べて疲弊しきって息が上がっている事であろう。
戦士(き、傷は思ったほどねぇ……だが……っ)
盗賊(全力ではない。それは手に取るように分かる)
青年兵(本気を出すまでもない、適当にあしらっていればいずれ終わる……そんなレベルなんだ)
東方司令「ナメ……やがってぇ!!」ジャキッ
ジュニア「魔道士ちゃん、援護だ!」
魔道士「えっ!? は、はいぃ!!」ダッ
東方司令「貴様のような奴がいるからっ、人が死んでいくんだろ!」ババッ
ベルゼブブ「……」
東方司令「貴様のような奴がいるからぁ! 兄くんのような者が生まれるんだろうが!」ブアァッ!!
ベルゼブブ「興味ないな」
- 47 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:14:05.02 ID:YM2d0y+Qo
ゴアッ!! ザクウウゥゥゥゥ!!
東方司令「――っ!!」
ベルゼブブ「この剣は結界石か。これでは破壊出来ぬな」ポイッ
東方司令「あぐぅ……っ」ドシャアアァァ
ベルゼブブ「不思議なものだ」
召喚士「……っ?」
ベルゼブブ「このような脆弱な力で、どうやって六道門を突破してきたとい言うのだ?」
ジュニア「ハッハ、てめぇさんみてーなのには、一生かかっても分からねーさ」
ベルゼブブ「興味深いな」
青年兵「僕達だけの力じゃないっ。皆がいたから、ここまで来れた。それだけだっ!」
ベルゼブブ「それが実に興味深い。不足するものを互いに補いあっている」
エリート「それが当然の事であろうっ!」
ベルゼブブ「そうか? 足りぬならば何故、己で求めようとしないのか」
皇太子「人間には限りがある。求めても手に入らぬものが沢山あるのだ」
ベルゼブブ「であれば、それが個々の限界なのであろう?」
- 48 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:15:14.46 ID:YM2d0y+Qo
召喚士「そうであっても、必要な時だってあるんだ!」
ベルゼブブ「余には得られぬ感覚だ。今だかつて足りぬと感じたものは一切ないのだからな」
戦士「そいつは……ご大層なこった!」
盗賊「はぁーっ!」
ズガガガガガッ!! ガキイイィィィィ!!
ベルゼブブ「そうか。アスタロスやアスモデウスがやられた理由は、そういう事か」
戦士「ぐ……っく」
ベルゼブブ「不足するものを互いが補いながら、何らかの手段で突破した」
ググググッ
ベルゼブブ「そして余に対しても同じ手法を施すか? 何を狙っている? どんな手段か?」
ズッギャアアアアァァァッァ!! ドドオオォォォォ
戦士「ごふ……っ」ガクッ
盗賊「うっ、ぐぐ……っ」ヨロッ
ベルゼブブ「見せてみよ、余を脅かすものかどうか推し測ってやろうぞ」
召喚士「……っ」
- 49 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:16:12.31 ID:YM2d0y+Qo
大軍師残念ですが、まだ不足しておりますので」
ベルゼブブ「ほぉ」
大軍師「到着まで、お待ち頂けると有り難いのですが」
ベルゼブブ「……」チラリ
詩人「……」
ベルゼブブ「良かろう。待ってやる」
召喚士「!?」
ベルゼブブ「だが、ただ待つなどと馬鹿げた事はない。まずは……」
ススッ
大軍師「……?」
ベルゼブブ「その手段とやらが整うまで、掃除にかかろうか」
召喚士「――!?」
薄れていた恐怖が再び、心の奥底から込み上げてきた。
吐き気を催すような、心と脳裏に突き刺さるベルゼブブの威圧。
明らかにそれは、これから先に起こる出来事が如何なるものなのかを、
単純に、簡単に表現していた。そしてそれを感じ取ったからこそ、恐怖が蘇った。
- 50 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:16:45.46 ID:YM2d0y+Qo
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
魔道士「……う……うぅ……っ」
エリート「なんという……魔力……かっ」
ベルゼブブ「業火とは地獄の炎。そして地獄の雷を招雷し、地獄の毒水をもわき起こす」
ズズッ……グゴゴゴゴゴゴゴ
ベルゼブブ「突き刺さる地獄の風に、冷たく暗い地獄の大地……」
青年兵「ま、さか……っ」
大軍師「五行っ!!」
ベルゼブブ「これらが合わさりあった時、貴様等はその生を失う事となる」
召喚士「させるかああぁぁ――」
ベルゼブブ「とくと味わうが良い。余の力、本当の力というものを」
部屋の床が一瞬にして消失した。四方の壁も消し飛んだ。
階下に積もった瓦礫の中から、微かな物音と呻き声のようなものが聞こえる。
広がった夜空の闇からベルゼブブがゆっくりと瓦礫の中心へと着地する。
ベルゼブブ「ふむ。命を失ったものは居らぬようだな」スッ
- 51 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:17:15.42 ID:YM2d0y+Qo
その言葉通り、ベルゼブブの一撃で死んだ者は居なかった。全員、生きていた。かろうじて。
召喚士「……」
青年兵「…………」
だが誰1人、声を発するものはなく、ましてや起き上がる者も居ない。
ベルゼブブ「生を奪った。最早、貴様等は唯、心臓を鼓動させているに過ぎぬ」
戦士「……っ」
ベルゼブブ「余の魔法で五感は失われた。ゆっくりと死に向かうが良い」
戦士「……っ」ピクッ
ベルゼブブ「そして、そこで希望が摘み取られてゆく様を感じておるが良い」
戦士「……ぇ」ゴトッ
ベルゼブブ「……?」
戦士「……ふざ……けんじゃ……ねぇっ」
ベルゼブブ「ほぉ、余の一撃を受けて、立ち上がるか」
戦士「ふざけんじゃねぇ……っ!」ザッ
ベルゼブブ「……」
- 52 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/16(水) 18:19:48.39 ID:YM2d0y+Qo
ただ1人、戦士だけがその場で立ち上がり、声を発した。
ベルゼブブ「……そうか、その盾の力で、直撃は防いだのだな」
戦士「……」
ベルゼブブ「だが、視力は失われ、匂いをかぎ取る事も出来ぬようだ」
戦士「テメーの下らねぇ話を聞くぐらいなら、聴覚の方が良かったぜ」
ベルゼブブ「フッ。なかなか面白い人間だな」
戦士「目が見えなかろうが臭いが分からなかろうが、テメーのドス黒い気配なんざ1発で分かんだよ!」
ベルゼブブ「……」
戦士「みんなを助けるためにはこの命、惜しjかねええぇぇ!!」
ベルゼブブ「その槍、何かただならぬ気配を感じるな」
戦士「おああああぁぁぁぁーっ!!」ザッ!!
ベルゼブブ「ふむ。なればちと、様子を見てやるか」
戦士「――――っ!?」
ゾディアックの投擲に入った戦士は、確かにそこに居たベルゼブブの気配が、
無数に小さく細かく、四散してゆく気配を感じ取っていた。
- 63 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/05/16(水) 23:27:37.27 ID:8i+VruMyo
さすが主人公
- 64 名前:NIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2012/05/17(木) 01:17:18.34 ID:3CtgIgPAO
>>1おつ
ベルゼブブって神様なのに蝿はキモいってんでキリスト教から悪魔認定されちゃったんだよな。このベルゼブブは蝿らしからぬ強さだな
次へ 戻る 戻る 携 上へ