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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その15
353 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 18:45:58.19 ID:hObAsVIo
〜北の山中〜

戦士「……よし、手を…っ…おいっしょ!」

野宿者「…うぅー!」

戦士「ふーっ、あとは道なりに下るだけだ!頑張ろう!」

野宿者「……うぅ…」

戦士「足元気を付けろよ?」

テクテクテクテクテク…

戦士(不思議なもんだな…)

テクテクテク…

戦士(今まで手を引いてくれてた親父を…)

テクテク…

戦士(今度は俺が引っ張ってやるなんてさ……)

ジャリッ…

戦士「……見えたぞっ!ほら、親父!」

野宿者「……うぅ?」


354 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 18:49:44.46 ID:hObAsVIo
山から続く道をしばらく下ると、ふもとの滝へと出る。

その道を真っ直ぐ進むと、そこは戦士の故郷である村に辿り着く。

戦士「……ふぃー、着いたーっ!」

野宿者「……うっ…うぅ」

戦士「さて、まずは村長に……」

スタスタスタ…コンコン

戦士「こんばんはー」

村長「…!?……戦士か!!」

戦士「どうも。ご無沙汰です」

村長「こんな夜分にどうした…?」

戦士「実は……」

戦士は真横にいるお世辞にも綺麗とは言えない男を見つめる。

村長「……?」

野宿者「……うぅ…うー」

村長「ま、まさか……っ!?」


355 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 18:52:20.93 ID:hObAsVIo


村長「………」

戦士「……」

暖炉に灯る薪が、ぱちぱちと音を立てる。

村長「…そうであったか」

戦士「……」

野宿者「……うぅー」

村長「さぞ…大変だったのであろうなぁ」

戦士「村長、申し訳ない…。家を……」

村長「もちろんじゃ。好きに使いなさい」

戦士「…助かる…っ!」

野宿者「…?」

村長「明朝、村の者にも申し伝えよう。人手がいるじゃろ?」

戦士「ありがとうございます…!」

戦士は一礼し、村長より家の鍵を受け取った。


356 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 18:56:14.28 ID:hObAsVIo
カチャカチャッ…ギイィ…

戦士「しまったなぁ…。この前家具から何から全部カタしちまった…」

テクテクテク…

戦士「ま、寝るスペースがありゃいいだろ…」

野宿者「……」

戦士「親父、布団持ってくるからこっちに…」

野宿者「……うぅ」

戦士「…ん?どした?」

スタスタスタ…

野宿者は手に持つロケットをじっと見つめ立ち尽くしている。

戦士「……ほれ、夜も遅い。もう寝よう」

野宿者「……う…っ」

テクテクテク…

戦士「……」

古びた布団の上へ野宿者を寝かし、その脇で戦士も横になった。


364 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 23:24:03.48 ID:v6xkHw2o
〜次の日〜

戦士「……ん〜」

ゴソッ…

戦士「……もう…朝かぁ…」

朝日を避けるように寝がえりを打ちながら、戦士は無人の布団を見つめる。

戦士「何だ…。もう起きたのか……」

ポリポリ…

戦士「………」

ガバッ…ダンッ!!

戦士「…っじゃねーだろ!!どこ行った!?」

ガチャッ…タッタッタッタッタ…

青年「あっ、戦士さ……」

戦士「親父見なかったか!?」

青年「……さ、さぁ?」

戦士「見かけたら捕まえといてくれ!!」


365 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 23:24:48.77 ID:v6xkHw2o
タッタッタッタッタ…

青年「……?」

幼馴染父「やあ、おはよう」

青年「あっ、おはようございます」

幼馴染父「……戦士くんは?」

青年「さ、さぁ…。何だか慌てて出て行きましたけど…」

幼馴染父「……?」

タッタッタッタッタ…

戦士「くっそぉ…!あんな状態でうろついてちゃあ…」

タッタッタッタ…ガサガサッ…

戦士「はぁ…はぁはぁ…っ!…くそっ!!」

必死に汗を拭いながら、戦士は周囲をぐるりと眺める。

戦士「……っ!!」

ふと右上に目線を移した刹那…その瞳に、動く人影が飛び込んでくる。

戦士「あん…なっ所に…!!」


366 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 23:25:24.51 ID:v6xkHw2o
戦士は慌てて滝をよじ登る野宿者の真下へ駆け寄る。

タッタッタ…ザザッ

戦士「親父ーっ!何やってんだぁ!!」

野宿者「……え…っ?」

戦士「あぶねぇだろ!!降りろーっ!!」

野宿者「……うぅっ!」

ズルッ!!

戦士「っ!!」

………バシャアァァンッ!!

戦士「ちっくしょおぉ!!」

バッ…ドボォンッ!!

足を滑らせ滝壺に落ちた野宿者を救う為、戦士が大慌てで川へ飛び込む。

戦士(………いたっ!!)

ゴポッ……グイッ!!

野宿者「……っ!!」


367 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 23:28:52.76 ID:v6xkHw2o
ザバァッ!!

野宿者「…ごほぉっ!!げほっ!!」

戦士「馬鹿野郎っ!!死にてぇのか!!」

野宿者「……ごほっ…!す、まん……」

戦士「……ったく!!」

ポタポタポタッ…

戦士「………す…まん…?」

戦士は目を丸くし、ゆっくりと背後の野宿者へ振り返る。

野宿者「……た、助かり…ました…ごほごほっ!」

戦士「……喋った」

野宿者「……」

戦士「記憶が……戻ったのか…!?」

ガバッ!!

野宿者「……あ、あ…のっ…?」

戦士「親父…親父っ!!俺だ、戦士だ!!分かるか!?」


368 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 23:40:23.63 ID:v6xkHw2o
野宿者「………?」

戦士「……」

野宿者「あ、あの…ぉ…」

戦士「……駄目…か」

野宿者は怪訝な表情で、落胆した戦士の顔を覗き込む。

戦士「まぁ…とりあえず、話せるようになっただけ…マシ、か」

野宿者「……あ、あのぉ」

戦士「んー?」

野宿者「……えぇと」

戦士「なんだよ…」

野宿者「北東の…村って…分かりますか?」

戦士「北東の村…?ま、まぁ…多分…」

野宿者「そこへ…行きたいのですが…」

戦士「何で……?」

野宿者「……さ、さぁ」


369 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 23:50:13.86 ID:v6xkHw2o
スタスタスタ…

青年「あっ!戻ってきた!!」

戦士「おー、さっきは悪かったな!」

青年「もーっ、朝一で村長に聞いて…すっ飛んで来たんですよ?」

幼馴染父「戦士くん、元気そうで何より…」

戦士「親父さん…。ご無沙汰っす」

幼馴染「そちらの方が…戦士父さんかい?」

戦士「ええ。ほらっ…」

戦士は野宿者の髪をかき上げ、その顔を二人に見せる。

幼馴染「戦士父さん…!良かった…っ…無事だったんだね!」

青年「おやっさん!!」

野宿者「……?」

戦士「…ああ。ちょっと…ワケありでな…」

幼馴染父「……?」

戦士「詳しくは家の中で話します。…どうぞ」


370 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/03(木) 23:54:32.09 ID:v6xkHw2o
〜西国の城、城門前〜

神官「本当に…ここまでで宜しいのですか?」

召喚士「ええ…。ここからは西の山へ行くだけですから…」

魔道士「お世話になりました」

王女「お姉様…っ、また必ずいらして下さいませ…?」

魔道士「もちろんですっ!えへへ!!」

盗賊「…では」

女王「旅のご無事をお祈り致しておりますわ…」

召喚士「ありがとうございます。王子にも宜しくお伝え下さい」

神官「はい。必ずや……」

魔道士「さようならーっ!」

スタスタスタ…

王女「……行って…しまわれましたね」

女王「ええ…。楽しい時も…束の間ですわね」

神官「また会えますよ…。必ず……!」


371 :GEPPERがお送りします [sage saga] :2010/06/04(金) 00:38:03.52 ID:pCkOCQ2o
ではここらで失礼致します!ありがとうございました!ノシ

〜オマケ〜

戦士!戦士!戦士!戦士ぃぃうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!戦士戦士戦士ぃううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!戦士の逞しい筋肉の汗をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!二の腕モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
東方での浴衣姿の戦士かわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
新しい斧も完成して良かったね戦士!あぁあああああ!かっこいい!戦士!かっこいい!あっああぁああ!
お父さんも見つかって嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!戦士がいないなんて現実じゃない!!!!あ…じゃあ今もよく考えたら…
戦 士 は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!藤蔵ぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?夢の中の戦士が私を見てる?
夢の中の戦士が私を見てるぞ!戦士が私を見てるぞ!夢の中の戦士が私を見てるぞ!!
夢の中の戦士が私に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!私には戦士がいる!!やったよ兄様!!ひとりでできるもん!!!
あ、夢の中の戦士いいいいいいいいいいいいいいぃぃ!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあ父様ぁあ!!じ、侍女ー!!水忍んぁああああああ!!!風忍火忍土忍雷忍んぁあああ!!
ううっうぅうう!!私の想いよ戦士へ届け!!北方にいる(と、思われる)戦士へ届け!

ガバッ!!

盗賊「……ゆ、夢…か…っ」


373 :GEPPERがお送りします [] :2010/06/04(金) 00:45:46.02 ID:YsxhIsDO
誰か早く>>1の元へ黄色い救急車を。


381 :GEPPERがお送りします [sage] :2010/06/04(金) 09:25:29.83 ID:cF6gGsAO
>神官「最後に戦ったのは21年前だそうです」
召喚士「魔王……っ!!」
神官「その名を…魔王『ファブリーズ』……」
召喚士「消臭っ!!」

だめだオレも黄色い救急車ああああ


384 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 16:58:22.27 ID:MauQaI6o
〜戦士の故郷〜

幼馴染父「…記憶…喪失っ」

青年「おやっさんが…!?」

戦士「ああ…」

沈痛な面持ちの三人をよそに、野宿者は一人、怪訝な表情を浮かべる。

幼馴染父「それで…この村へ戻って来たんだね」

戦士「ええ。何かきっかけになれば、と思って…」

幼馴染父「いいと思う。しばらくはゆっくりするといいよ」

青年「俺らも手伝いますから!」

戦士「ありがとよ。でも…」

幼馴染父「……?」

戦士「なぁ…?なんで北東の村へ行きたいのか…覚えてないのか?」

野宿者「……えぇ…と?」

青年「北東の村…ですか?」

戦士「ああ。何やら理由は分からんが、行かなきゃならんらしい」


385 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 16:59:02.25 ID:MauQaI6o
幼馴染父「幾ら君らとて…この状態では危険だと思うが…」

戦士「ああ。それは否めない」

青年「助っ人出来ればいいんですけど…」

幼馴染父「私らのような一般人ではないぁ…」

青年「役に立つどころか、足手まとい…」

青年は後頭部をかきながら苦笑する。

戦士「助っ人…」

青年「あっ!それならいっそワーカーに依頼するとか…!」

戦士「……それも手だな」

幼馴染父「国軍の討伐が落ち着いたとはいえ…北は油断出来ないからね…」

戦士「…そ、そうだよ…!」

幼馴染父「…?」

戦士「いるじゃねぇか…!強力な助っ人達がよ…っ!!」

青年「強力な助っ人…ですか?」

戦士「……おうっ!」


386 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 16:59:42.03 ID:MauQaI6o


.幼馴染父「本当に気を付けてな…!」

戦士「なぁに、こっからなら一日もかかりゃしませんから」

青年「ワークショップ経由の手紙は手配しておきます!」

戦士「おうっ、頼む!!では…行ってきます!!」

幼馴染父「うむ…。戦士父さんも気を付けてな?」

野宿者「……え、ええ」

ザッ…テクテクテク…

戦士「親父、覚えてっか?」

野宿者「……?」

戦士「親父がさ、国軍だったなんて知らなかったよ…ビックリしたぜ」

野宿者「国軍…?」

戦士「そう。しかも…あんなに強くていい人達が…仲間だったなんてよ!」

野宿者「は、はぁ…っ…?」

戦士「さぁ行くぜ!いざ…北方司令部へ!!」


387 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:00:15.42 ID:MauQaI6o
〜西方、街道〜

召喚士「凄いな…」

盗賊「…?」

召喚士「あ、いえっ…街道が西にもずっと延びていて…」

魔道士「そういえば…。以前は砂漠を整備した程度だったのに…」

召喚士「昨日言っていた、交易ルートという事ですね…」

盗賊「…成程」

魔道士「露店なんかも出てて…賑やかですねぇ」

召喚士「街道が港まで直に続いていて…本国との貿易にも繋がる…」

盗賊「…活気があって…良い兆候だ」

召喚士「ええ」

魔道士「あっ、あれなんでしょうね?」

召喚士「あれは…キャラバンサライですね」

魔道士「キャラバンサライ…あっ、隊商宿ですねっ!」

召喚士「行ってみましょうか!」


388 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:00:50.87 ID:MauQaI6o
テクテクテク…

男「いらっしゃい。キャラバン護衛のワーカーかね?」

隊商宿の入り口に設けてある、簡易的なカウンター。

その中にいる髭の男が召喚士達へ問いかける。

召喚士「いえっ…。俺らはただのワーカーです」

男「旅人か。宿泊かね…?」

召喚士「食事を……」

男「なら正面の食堂だ。武器はここで預からせて貰うよ」

男の合図で二人の傭兵が奥より姿を表す。

傭兵「武器はこれで全てか?」

召喚士「はい…」

コトッ…ゴトッ…

男「よし…いいぞ。余計な部屋に入らず、真っ直ぐ進め」

魔道士「は、はいっ」

召喚士を先頭に、三人は通路を奥へと真っ直ぐ進んだ。


389 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:01:50.70 ID:MauQaI6o
スタスタスタスタ…

盗賊「…厳重だな」

召喚士「ええ。まぁ…仕方のない事ですが…」

魔道士「隊商宿は主に取引などに使われる場所ですからね…」

盗賊「…取引」

召喚士「各キャラバンの持つ宝物が山のようにありますから…」

盗賊「…そ、それは凄いなっ」

召喚士「以前、本国での依頼を受けたの…覚えてますか?」

盗賊「…ああ」

魔道士「あれもキャラバンですよね」

盗賊「…そっか。成程な」

魔道士「キャラバンの数が多ければ交易が盛り上がり…国も繁栄します!」

召喚士「…だからこそ西国は、この交易路を最優先で発展させたんですよ」

盗賊「……」

魔道士「流石神官さんですねっ!えへへ!」


390 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:02:17.75 ID:MauQaI6o
〜食堂〜

ガヤガヤガヤ…

魔道士「おぉ…賑わってますねぇ!」

召喚士「ええ。まだ昼前だというのに…」

盗賊「……」

召喚士「席は…あそこ空いてますね。いいですか?」

魔道士「私はどこでも大丈夫ですよーっ」

盗賊「…うん」

テクテクテク…スタッ

三人が空きテーブルへ着席うると、周囲からひそひそと小声が聞こえる。

チャラ男「…おいおい、随分若けぇ女だぞ?」

チンピラ「優男一人が…女二人連れで冒険ゴッコかよ…けっ!」

召喚士「……」

ドスドスドス…

大男「よぉ…。ここは初めてかい?」


391 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:02:56.15 ID:MauQaI6o
魔道士「えっ、あ…はい…」

テーブルの横へ突如現れた大男に戸惑いながらも、魔道士が答える。

大男「よお兄ちゃん、女でも売りに来たのかい?なんなら俺が…」

召喚士「…違います。失礼ですよ」

大男「……へっ。よぉ姉ちゃん達、こんな男よりあっちで一杯どうだい?」

魔道士「…結構ですっ!」

盗賊「…同意」

チンピラ「どうせ入り口で傭兵にボディチェックされて来たんだろぉ?」

チャラ男「俺達にもボディチェックさせてよぉ〜ギャハハハッ!」

盗賊「……」

スッ

召喚士「と、盗賊さんっ!?」

盗賊「……私一人でいい」

魔道士「ちょ、ちょっと…っ…」

大男「…あぁん?」


392 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:03:40.17 ID:MauQaI6o
スタスタスタ…

盗賊「…」

大男「何だぁ?お相手してくれるってか?」

盗賊「…食事の邪魔だ。消えろ」

大男「……あ?」

チンピラ「おいおい姉ちゃん!威勢がいいのは構わんけどよぉ…」

チャラ男「相手みてから啖呵切れよっ!ギャハハッ!!」

大男「おい、部屋の鍵よこせ」

チャラ男「へいへい」

チャリッ…ポイッ……パシィッ!!

大男「二階の部屋で相手してやる…。タップリとな!」

盗賊「……」

召喚士「盗賊さん…」

盗賊「…大丈夫。それとも…心配か?」

大男の前に立つ盗賊は、背後の召喚士に振り向き、笑顔で問いかける。


393 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:04:50.48 ID:MauQaI6o


魔道士「行っちゃいましたね…」

チンピラ「あーあ…今頃ダンナのブツで壊されちまってるなぁ…」

チャラ男「もうあの女も使い物にならねぇ…」

チンピラ「いい身体してたんだけどなぁ」

召喚士「……」

魔道士「召喚士さん…っ!」

召喚士「…分かってます。騒ぎを大きくしたくありませんから…」

召喚士は卓上で握った拳を、静かに膝の上へ置く。

魔道士「と、とりあえず…食べて待ってましょうっ!」

召喚士「そうですね……」

テクテクテク…

盗賊「……ただいまー」

魔道士「あっ!?盗賊さん!!」

盗賊「…あ、あぁっ!?……先に…食べてるし」


394 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:05:54.40 ID:MauQaI6o


召喚士「あ、あのぉ…盗賊さん…?」

盗賊「…んー?……モグモグ」

召喚士「さ、先程の…男はどちらに…?」

盗賊「…ああ。部屋で寝とるぞ?」

召喚士「そう…ですか…」

魔道士「て、手加減…しましたよね?」

盗賊「…うーん。肋骨ぐらいは折れてるかもしれん」

召喚士「!!」

魔道士「盗賊さんっ!?」

盗賊「…だって…仕方ないであろう?」

ダダダダッ!!

チンピラ「だっ誰か!!医者をっ!医者を呼んでくれえぇ!」

チャラ男「お、おいっ!部屋で何があった!?」

盗賊「……さぁ」


395 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:06:41.62 ID:MauQaI6o
チャラ男「ダンナをあそこまでズタボロに出来るなんて…上位ランカーに違いねぇ」

チンピラ「まさかとは思うが…ま、魔物かもしれんぞ…!?」

食堂内が一気にざわめき、一人…また一人とその場を後にする。

チンピラ「くそぉ…!おい、医者を探しに行くぞ!」

チャラ男「お、おうっ!」

タッタッタッタッタ…

召喚士「………はぁ」

盗賊「…ごめん…なさい」

召喚士「いえ…。シービショップしてきます…」

魔道士「行ってらっしゃい…」

テクテクテク…

魔道士「盗賊さん…。めっ、ですよっ!」

盗賊「……はい。…ごめん」

騒々しい隊商宿とは正反対に、その食卓には静寂が訪れる。

それとはまるで正反対の如く、隊商宿の喧騒は、徐々に大きさを増す。


396 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:07:35.10 ID:MauQaI6o
〜隊商宿、入り口〜

チンピラ「はぁはぁ…っ!はぁ…!」

男「何だ、さっきから騒がしい…」

チャラ男「ここいらに医者は……」

男「おい!街道に出るんじゃねぇ!!」

チャラ男「!?」

傭兵「これから軍隊が通過する。その後だ」

チンピラ「そ、そんな事言ったって…今は医者がっ…」

男「あのなぁ…。軍隊って西国の…」

チャラ男「えぇい!知るかよ!!」

タッタッタ…

傭兵「あっ…!馬鹿者!!」

街道へ飛び出す二人の目の前に、数頭の騎馬が姿を現す。

チャラ男「ひ…っ…ひぃ!」

衛兵「…行軍の邪魔だ。西国本体と知っての狼藉か?」


397 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:08:40.77 ID:MauQaI6o
チンピラ「すすっ、すんません!すぐに…すぐにぃ!」

――「どうした?何を慌てている?」

騎馬の中心に位置する男が二人へ声をかける。

男…というには若々しく、その姿は明らかに少年に近しいものであった。

衛兵「…陛下っ!このような者…我らが…」

王子「慌てるには、何か理由があるんだろ?」

チンピラ「へへっ、陛下あぁ!?」

チャラ男「じっ実は…医者っ!医者を探しておりましてぇ!」

王子「病人か?」

チンピラ「病人…あ、いやっ…怪我!怪我人です!」

王子「…おい。衛生兵を一人付けてやれ」

衛兵「……はっ」

王子「衛生兵を一人付ける。すぐに手当てしてやれ」

チャラ男「あっ、ありがとうございますうぅ!!」

平伏し涙を浮かべる二人に、王子は手で制し、にんまりと笑顔を見せた。


398 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:09:28.49 ID:MauQaI6o
〜食堂〜

スタスタスタ…

魔道士「おかえりなさい!大丈夫そうでした…?」

召喚士「え、ええ…まぁ…」

盗賊「…本当に…すまぬ」

召喚士「まぁ…盗賊さん一人が悪いわけではありませんから…」

盗賊「……うぅ」

召喚士(肋骨に尾てい骨に鼻骨骨折。そして脱臼に…打撲多数…か)

魔道士「何だか外が騒がしいですね…?」

召喚士「…そういえばそうですね。何でしょうか?」

盗賊「…?」

魔道士「行って…みます?」

召喚士「そうですね。もう食事も平らげましたし…」

盗賊「…うん」

魔道士「それでは行きましょうかっ!」


400 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/04(金) 17:22:44.94 ID:MauQaI6o
テクテクテク…

召喚士「何かあったんですか?」

男「ああ…軍隊が通ったんだよ。西国の…」

魔道士「西国の?へぇ〜!」

男「それより食堂こそ何かあったのか?慌てて大勢出てきたが…」

盗賊「……」

召喚士「さ、さぁ……?」

傭兵「…?」

魔道士「軍隊さんは…もう行ってしまったのですか?」

男「ん、ああ。つい今しがた通過して行ったよ」

召喚士「俺らも行きましょうかね」

魔道士「そうですね!」

男「毎度ー」

盗賊「…こ、こちらこそ」

男「……?」



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