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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その39
94 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:09:56.13 ID:jgmQcEgyo
……――

詩人『さぁ、もう夜も遅い。そろそろ帰るよ』

女『そうね。ま、私は別にいいんだけど』

詩人『そうはいかないさ』ザッザッ

女『ほーんと、真面目なんだから』

詩人『ん?』

女『んーん、何でもなーい。ねぇ、次はいつ来てくれるの?』

詩人『近いうちにまた来るさ』

女『じゃあその時は、曲名教えてくれる……?』

詩人『どうかな』ザッザッ

女『もうっ!』

詩人『……ボソッ』

女『えっ? なになにっ!? ムジク?』

詩人『何でもないよ。それじゃあまたね……アイネ』

アイネ『ええ、またね……詩人』


95 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:10:32.33 ID:jgmQcEgyo
――……

ケツァルコアトル「んーいい曲じゃねぇの。なんだかこう、力が湧き上がるわな」

ベルゼブブ「……」

ケツァルコアトル「さーて、魔王ベルゼブブよ」

ベルゼブブ「余を存じているとは、なかなか優秀ではないか」

ケツァルコアトル「そりゃー嫌でも覚えてるっつー話だぜ」

ベルゼブブ「何?」

ケツァルコアトル「テメーにゃ借りがあるんでなぁ。ま、キッチリ清算させて貰うけどよ。うははっ」

召喚士「ケツァルコアトル……?」

ケツァルコアトル「この曲……せつねぇな」

ジュニア「……っ!!」

詩人「……セレ……ナーデ」

ケツァルコアトル「……」

詩人「アイネ……の……ための……」

賢者「……駄目だね。もう終わりだ……ふぅ」


96 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:11:02.14 ID:jgmQcEgyo
ジュニア「っ!!」

詩人「アイネ・クライネ・ナハトムジーク――――」

 サアアアアァァァァ

ジュニア「――っ!!」

 両腕で抱えた詩人の肉体は、砂のようになって消えていった。

 何百年も生き長らえたのはあくまでベルゼブブによる不死の施しによるもの。

 それが解かれた今、何百年の生涯が一瞬の内に詩人へと降りかかり、

 その肉体はあっけなく現在の時にまで時間を進める事を相なった。

召喚士「詩人……さん……っ」

大軍師「逝ってしまったようですね」

ケツァルコアトル「あいつ……そうか、そうかよ」

ベルゼブブ「もう良かろう、無駄な力を浪費させてくれるものだ」ビキッ

コカトリス「石化が解かれるぞっ!」

召喚士「くそっ!」

戦士「ちぃ……っ! 今度こそ……外さねぇぞ!」


97 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:11:28.87 ID:jgmQcEgyo
盗賊「戦士っ!?」

青年兵「まさか生身でゾディアックを!?」

召喚士「戦士っ!!」

戦士「うおおおおぉぉぉぉ――」

ケツァルコアトル「威勢いいじゃねぇか。うははっ」ブオンッ

戦士「――!?」

ケツァルコアトル「丁度いいや、ちぃと貸せや」

戦士「な――っ」

 ケツァルコアトルが戦士に近づき、そのままぶつかった。

召喚士「!?」

 ケツァルコアトルが消失した。戦士はうつむいたまま、その場に居た。

戦士「……」

ベルゼブブ「貴様、何をした? 器と中身が違うではないか」

ケツァルコアトル「俺は俺だ。今も昔もなんら変わりはねぇ」

戦士「俺は俺だ。今も昔もなんら変わりはねぇ」

召喚士「!?」


98 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:11:59.48 ID:jgmQcEgyo
ケツァルコアトル「召喚士、ちょいとお前の仲間を借りるぜ」

召喚士「戦士……じゃないのか……っ!?」

ケツァルコアトル「俺の力は、1人の人間に憑依する事」

東方司令「憑依? 何を言っているのだ……?」

ケツァルコアトル「そしてそいつの力を極限、最大限まで発揮する」

大軍師「人は生きるにあたり、全ての力を使っていないと聞いた事があります」

エリート「つまりそれらを全て引き出すという事なのか……っ」

ケツァルコアトル「それに加えて、この俺の力も加味する事が出来る」

盗賊「!?」

皇太子「それで、魔王に勝てるのか?」

ケツァルコアトル「!?」

皇太子「……?」

ケツァルコアトル「あんた……陛下みてぇだな」

エリート「失礼な奴だな。紛れもなく陛下だ」

ケツァルコアトル「おぉ、そうだったか。道理でよく似てらっしゃるはずだ。うははっ」


99 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:12:39.90 ID:jgmQcEgyo
皇太子「何の話だ?」

ケツァルコアトル「さぁ行くぜ。あん時は一撃だったが……今度はそうはいかねぇぞ」

ベルゼブブ「何を申しているのか理解出来ぬが、余に恨みがあるようだな」

ケツァルコアトル「ああ、あるね」

ベルゼブブ「すまんな」

ケツァルコアトル「あ?」

ベルゼブブ「身に覚えが有り過ぎて、把握しておらぬ」

ケツァルコアトル「結構だ!」

 ドウッ!! ザッシュウウウウゥゥゥゥ!!

東方司令「は、早すぎて……見えなかったぞ……っ」

ベルゼブブ「……」ツツー

ケツァルコアトル「いっちょまえに出血はするんだな」

ベルゼブブ「余に……傷を付けるか……っ」スッ

ケツァルコアトル「こんなモンじゃねーぞ。こっからだ!!」

 ヒュッ ドッゴオオオオォォォォ!!


100 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:13:16.48 ID:jgmQcEgyo
盗賊「こ、今度は背後……!!」

大軍師「これは……人間の動きを越えている……」

ベルゼブブ「……グヌ……ッ」

ジュニア「ベルゼブブを吹き飛ばしやがった……っ」

ケツァルコアトル「うおらああぁぁーっ!!」

 ドッゴオオオオォォォォ!! ズシャッ

ベルゼブブ「……く、口だけでは……ないようだな」ジャリッ

ケツァルコアトル「テメーを殺す事を、どれほど夢見た事か」

ベルゼブブ「……」

ケツァルコアトル「見えるか? 城外に広がる無数の小屋が!」

ベルゼブブ「……」

ケツァルコアトル「まるで墓標だ。空しいモンだぜ」

ベルゼブブ「……」

ケツァルコアトル「感じるか? 北の大地に消えて行った村々の断末魔が!」

ベルゼブブ「……」


101 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:13:58.89 ID:jgmQcEgyo
ケツァルコアトル「慈悲も理由もなく、暇潰しのために消されちまってよぉ……」

ベルゼブブ「……」

ケツァルコアトル「覚えているか? てめぇに挑んで散っていった勇者の顔を!」

ベルゼブブ「……」

ケツァルコアトル「俺は忘れねぇ。アイツらや仲間の顔を!」

ベルゼブブ「興味がないな。それに知る理由も慈悲を与える理由もない」

ケツァルコアトル……」

ベルゼブブ「貴様は何なのだ? 召喚獣なのか? それとも人間なのか?」

ケツァルコアトル「それこそてめぇが知る理由ってモンはねぇ。うははっ」

ベルゼブブ「大層な口を叩くではないか」

ケツァルコアトル「いちいちかまってる暇はねーんでなっ!!」

ベルゼブブ「……ッ」ガギイイィィィィ!!

ケツァルコアトル「……ぬ……おおぉぉ」

ベルゼブブ「速さにはだいぶ慣れてきた。それに貴様の力、限定的なものと見える」

ケツァルコアトル「……ッ」


105 名前:NIPPERがお送りします(石川県) [sage] 投稿日:2012/05/18(金) 18:25:42.08 ID:mBjF42I2o
ケツアナルがんば!


106 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/05/18(金) 18:36:06.66 ID:zgazYjqDO
いちょつ
ケツアナさんがんば!


109 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/05/18(金) 20:18:51.47 ID:kC5DnyqDO
ケツアナがどこから入ったのかが重要だ


119 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/05/19(土) 20:45:38.06 ID:3sGTgo0IO
おい尻は入り口じゃない!出口だぞ!


121 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/05/20(日) 23:22:30.36 ID:HfmtojGBo
 ズギャギャッ!! ガッギイイィィィィ!!

ベルゼブブ「問題ないな。貴様の速さ、やはり把握した」

ケツァルコアトル「だったら……」

 ジャキッ キュイイィィィィ

ケツァルコアトル「こいつで、どうだぁ!!」

 ゴアッ!! ドドオオオオォォォォン!!

召喚士「ま、魔法剣……っ!?」

魔道士「戦士さんが……どうしてっ!?」

ケツァルコアトル「言ったろうがっ! 俺の力も加味するってよおぉ!!」

ベルゼブブ「……ッ!」

 戦士、いや……ケツァルコアトルの右腕はゾディアックをぐるぐると回転させ、

 そこから迸る炎と雷がベルゼブブの周囲をぐるりと取り囲んだ。

ケツァルコアトル「食らええぇぇーっ!!」ズギャッ!!

 そして左手で放たれた突風と土の壁が自身を護衛するように暴れる。

 ベルゼブブはそれらを対処しながらケツァルコアトルを目で追うが、その姿は既になかった。


122 名前:酉なんだっけ… [sage saga] 投稿日:2012/05/20(日) 23:23:34.90 ID:HfmtojGBo
ベルゼブブ「何ッ!?」

ケツァルコアトル「アンタさぁ、すんげー強いよなぁ」

ベルゼブブ「……」

ケツァルコアトル「でもよぉ、闘いなれてねぇんだよ」

 木行と土行の猛攻に気をかけながら、ベルゼブブはゾディアックを慎重にかわす。

ジュニア「何を言ってやがんだアイツは……っ」

青年兵「そうか……っ」

盗賊「……?」

大軍師「魔王ベルゼブブは今まで、攻撃を受ける機会が皆無でした」

青年兵「だからこそこういった攻撃に慣れていない……」

大軍師「おそらく今までは、一瞬で相手の命を奪う事がほとんどだったのでしょうからね」

ジュニア「……そういう事かい」

賢者「だったらここが……チャンスだね……ふぅ」

ジュニア「おーし、魔法援護……ありったけブチかましてやんぜぇ! ハッハ!」


123 名前:あったあった ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/20(日) 23:25:25.73 ID:HfmtojGBo
 ドッゴアアアアァァァァ!!

ベルゼブブ「……?」

ジュニア「撃て撃て撃て撃てええぇぇ!」

魔道士「やああぁぁーっ!!」

大軍師「これでっ、どうです!」ゴアッ!!

ベルゼブブ「忌々しい……」

ケツァルコアトル「はんっ! 初めて味わう狩られる気分ってのはどうだよ!!」

 ドッゴオオオオォォォォ!!

ベルゼブブ「グ……ヴ……ッ」

 突き刺さる巨大な氷柱。ベルゼブブは一瞬の内に凍りつく。

召喚士「何者なんだ……っ、あれほどの魔力を……戦士が」

ベルゼブブ『……この程度のもので、余が凍らせられるとでも思うてか」ビシッ

ケツァルコアトル「思ってねぇよ」ズザッ

ベルゼブブ「――ッ」

ケツァルコアトル「てめぇをとるには近距離しかねぇみたいだからなぁ!」


124 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/20(日) 23:28:10.80 ID:HfmtojGBo
 存分に振り回したゾディアックはピタリと水平に止まり、一気に引く。

 そしてケツァルコアトルの意志により凄まじい早さで突きを繰り出した。

ケツァルコアトル「っらああああぁぁぁぁーっ!!」

 突きは無音でベルゼブブの腹部へと突き刺さった。

ベルゼブブ「――――ッ」

 突き刺さった刹那、魔王の肉体は激しく後方へと吹き飛んでゆく。

 そして同時に、大きな衝撃音が当たりに響き渡った。

 ズッガオオオオォォォォン!!

ベルゼブブ「ゴフ……ッ」ズシィ

 壁にめり込んだベルゼブブ。腹部に突き刺さったゾディアックを静かに見つめる。

エリート「音が……後から聞こえた……?」

大軍師「まさか音速を凌駕したと言うのですか……っ」

 呆気にとられる一同を余所目に、ケツァルコアトルは両手に魔法を集中させる。

 キュイイイイィィィィ ズゴゴゴゴゴゴ……

ケツァルコアトル「……足りねぇ。雷か? いや、風か……?」


125 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/20(日) 23:29:19.59 ID:HfmtojGBo
ベルゼブブ「これほどの力があるとは。やはり人間のものではない」

ケツァルコアトル「くそがっ、完全じゃねぇのかよ」

召喚士「……?」

ケツァルコアトル「仕方ねぇ。とにかくやるだけだ!!」

ベルゼブブ「完全ではない? ああ、そうか。これの事か」グッ

 ケツァルコアトルが言う完全ではないもの。それはゾディアックの事である。

 12本の槍が1つとなって存在するゾディアック。しかし現在その存在は、

 騎都尉の戟がフェイクであり、真のゾディアックとはいえないのである。

ベルゼブブ「詰めが甘かったな。余に対する詰めが」

 詰めが甘かったわけではない。しかし偶然が悪い方向じぇとやや傾いてしまった。

ケツァルコアトル「何っ!?」

ベルゼブブ「この肉体はくれてやろうぞ。余は、次なる姿として脱する」

 ゾディアックにより壁へと突き刺さったベルゼブブの肉体が脱力する。

 そしてすぐさま、人型の器から黒い粒子が溢れ出し、ケツァルコアトルの前に集う。

 黒い物体は蝿の姿を模し、次第にそれは1つの巨大な蝿へと姿を変えていった。


131 名前:NIPPERがお送りします(長屋) [sage saga] 投稿日:2012/05/21(月) 12:42:40.12 ID:8DXYfJJio
>>1乙

スカトロ魔王強いな…


132 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/05/21(月) 21:55:16.24 ID:S/O8XD3IO
天才さんの出番が…


135 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/22(火) 18:13:09.90 ID:khGiBrFwo
召喚士「……っ」

皇太子「何だ……あれは!?」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 蠅は小さな1匹1匹を吸収するように肥大化し、最終的には一同よりも大きく、

 しかしながらそのフォルムは紛れもない蠅そのものへとなり、飛び立った。

 ヴヴヴヴヴヴヴヴ

ベルゼブブ「……先の手はもう使えぬな。次は何をしてくれるのやら」

魔道士「う……っ、大きな……蠅!?」ゾワワッ

東方司令「気持ち悪い。見るに堪えんな」

ベルゼブブ「己の価値観を押し付けるなどと、愚の骨頂だな」

東方司令「ウルサイ。生理的に受け付けないんだから仕方ないだろ」

ベルゼブブ「人間というものはそうやって、自身で進化を止める傾向にある」

盗賊「……」

ベルゼブブ「そして足りぬ部分を補うなどとのたまう。全くもって理解しがたい」

青年兵「人を信じて、助け合う事が人間の強さなのだ!」


136 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/22(火) 18:13:46.94 ID:khGiBrFwo
ケツァルコアトル「いいこと言うじゃねぇの、兄ちゃんよ。うはは」

ベルゼブブ「だからこそ狩られる。弱肉強食とはよく言ったものだ」

ケツァルコアトル「蠅の分際でよく言うぜ。蠅こそ人間に狩られる存在だろうが」

ベルゼブブ「フッ。だったら試してみるが良い」

 ズゴゴゴゴゴゴ……

ベルゼブブ「余が貴様の言う、蠅なのかどうかをな」


 1つ羽ばたくだけで地面へは強い風圧が加えられる。

青年兵「くっ」

大軍師「なんという風圧……っ、跳ね返せるであろうか」

ベルゼブブ「さぁ、次なる一手を見せてみよ」

ケツァルコアトル「望むところだ!」

 ベルゼブブは2度、3度と羽ばたく。すると羽より何か粉のようなものが散り始めた。

 細かく黄色い粒子はまるで鱗粉のように、周囲へと降り注ぐ。

盗賊「……何だ?」

エリート「嫌な予感がする。あの粉は浴びぬ方が賢明だな」


137 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/22(火) 18:16:03.15 ID:khGiBrFwo
東方司令「じゃあどうやって攻撃するんだよ」

大軍師「風で押し返しましょう」

皇太子「出来るか?」

大軍師「やるしかありません。そうですよね?」

ジュニア「ったく、もうあんまり魔力は残ってねーぞ?」

魔道士「お、同じく……っ」

大軍師「もうじきです。もうじききっと……到着なさるはずですから」

エリート「本当に来るのだろうな、あの男は。よもや途中で死――」

皇太子「不吉な事を申すな」

エリート「……魔法は頼んだぞ。陛下、少し距離を取りましょう」

皇太子「止むを得んな」ザッ

青年兵「召喚士さんっ、召喚獣で援護出来ますか?」

召喚士「ごめんっ、ケツァルコアトルで精一杯なんだ……」

青年兵「了解です。僕は召喚士さんの身を援護しますから」

召喚士「ごめんっ、ありがとう!」ザッ


138 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/22(火) 18:16:54.73 ID:khGiBrFwo
東方司令「残りはボクに続け! まずは奴を地上に打ち落とすぞ」

盗賊「……了解」チャキッ

ベルゼブブ「……」

 鱗粉は四散し、月明かりに照らされてきらきらと輝いていた。

大軍師「いきますよっ!」ザッ

 ドドオオオオォォォォン!! ゴアアアアァァァァ!!

東方司令「今だっ!!」

ケツァルコアトル「……」

皇太子「こちらも行くぞ」バッ

エリート「……っ」

ケツァルコアトル「……」

戦士『おい!』

ケツァルコアトル「……?」

戦士『何してんだ! 早く援護しろよ!』

ケツァルコアトル「……おかしい」


139 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/22(火) 18:17:35.53 ID:khGiBrFwo
戦士『あぁ?』

ケツァルコアトル「こんな単純な攻撃を仕掛けるものか?」

戦士『何が言いてぇんだよ!』

ケツァルコアトル「どのみち、放ってはおけねぇか……」ザッ

ベルゼブブ「……やはりな」

大軍師「……?」

ベルゼブブ「どうせそんな手であろうと思っていた」

ジュニア「何をほざいてやがるっ!」

ベルゼブブ「だから申しているのだ。もっと見識を広げ進化せよ、とな」

朗報司令「――っ!!」

ベルゼブブ「いつ、誰が、どこで、粉などと申したか?」

青年兵「こっ、これは!!」

召喚士「粉なんかじゃない……っ、れっきとした……生き物だ!!」

 ヴヴヴヴヴヴヴヴ

ベルゼブブ「風など意思を持つ者にとっては、ただよければ済む事だ」


140 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/22(火) 18:20:18.67 ID:khGiBrFwo
エリート「陛下ぁ!! 退きます――」

大軍師「……っ」

 二段構えの策は勿論、大軍師は練っていた。

 鱗粉を風で押し返し、最悪駄目であったとしても、賢者による回復を行う。

 これで対処に問題はない。通常は。当たり前の話である。

 ただし、これが人間の知識による範疇の限界であった。その先は人知を超えるもの。

大軍師(認識が甘かった。まさか……生物であったとは!)

 失態と言うには余りにも忍びない。流石の大軍師もここまでは読み切れなかった、

 いや、知識になかったのだ。他の者ならば二段構えすらしていたかどうか。

ベルゼブブ「良かったではないか。余のお蔭で1つ、賢くなったな」

 飛び回る鱗粉は風をよけ、徐々に一同の身体へと付着し、鼻や耳から体内へと入り込む。

皇太子「――――っ」ガクンッ

盗賊「力が……入らな――」

ケツァルコアトル「違うっ、コイツは……」

召喚士「さっきと同じだ……。全身の感覚が抜けてゆく……っ」ガクン


141 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/22(火) 18:22:08.22 ID:khGiBrFwo
ベルゼブブ「五感の1つ、触覚を断った」

青年兵「……た、立つ事も出来ず……一切の感覚が…・…っ」ドシャッ

ジュニア「くっそ……手足がどこにどうなってるのかさえも分からねぇ!」

ベルゼブブ「少々騒がしいな。ならば次は……」

 ボアッ!! ヴヴヴヴヴヴヴヴ

魔道士「こ、今度は赤い粉!?」

大軍師「くっ」

ベルゼブブ「無駄だ、やめておけ。理解はしても対処はしようがないのだ」

召喚士「どう……する……」

盗賊「!?」

 赤い粉は先程の黄色い粉と同様、身体へと付着し、徐々に皮膚へと入り込んでゆく。

東方司令「が……っ、あああぁぁぁぁ!!」

皇太子(口内……いやっ、内臓が焼けるように熱く……痛い!!)

ベルゼブブ「これで味覚は断った。喋る事はおろか、口から呼吸する事も出来まい」

召喚士「……っ」


150 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/23(水) 18:12:12.74 ID:gcDrZGGuo
魔道士「か……かは……っ」

青年兵(何とか呼吸を整えないと……くそ……っ)

ベルゼブブ「苦しいか? まあ苦しいだろうな」

盗賊「……っ」

ベルゼブブ「動けず会話も出来ず、さて……次はどうするか」

 フワァ……ヴヴヴヴヴヴヴヴ

ベルゼブブ「他者を信じるという貴様等だ。慈悲として視覚は最後まで残してやろう」

 魔王の羽より、今度は青い鱗粉の生物が生まれ、空中へと飛び散っていく。

ベルゼブブ「次は聴覚だ。話も出来ぬのだから特に必要もあるまい」

魔道士「――っ!!」

 耳の奥に激痛が走る。そして途端に、周囲の音が一切なくなった。

ベルゼブブ『さて次は嗅覚』

 何も聞こえないはずなのに、ベルゼブブの声だけが頭の中へ響き渡る。

 一方的な対話。とは言っても、元よりベルゼブブの問いに拒否権などない。

ベルゼブブ『さあ、呼吸の一切を止めるが良い』



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