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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その40
- 874 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2012/08/09(木) 17:57:25.96 ID:wT9wdW+Wo
……――
召喚士「……?」 ムクッ
何もない空間。自分の肉体すらも感覚を感じない。
召喚士「こ……こは……」
――「ここは私だ。お前でもあるがね」
召喚士「――――!?」
目の前に現れた男は見覚えのある姿をしていた。いや、そんな言葉では片づけられない。
ほぼ毎日、朝も夜も、見たくない時であっても見かけるその顔。その姿。
召喚士「お……れ……?」
サタン「貴様を模したわけではないぞ。俺も驚いたさ」
召喚士「サ……サタン!!」
サタン「ふっふ。妙に貴様が気になると思えば……成程、そういう事であったのだな」
召喚士「何を言っているんだ……?」
サタン「気にする事はない。今の貴様には関係のない事だ」
召喚士「俺とお前に、何か関係があるとでも言うのか……!?」
- 875 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 17:58:43.17 ID:wT9wdW+Wo
サタン「申したであろう。今の貴様には無関係」
召喚士「だったら何故――」
サタン「きっと遠い昔の話なのだろう」
召喚士「遠い昔……」
サタン「余とて核であるこの姿は初見である。理由なぞ知らぬ」
召喚士「……っ」
サタン「知る由もあるが、それは僕の役目ではない」
召喚士「ちょっと待ってくれ。何が何だか……っ、何の話をしているんだ?」
サタン「このサタンはただ、導くべき存在に過ぎないのであろうな」
召喚士「だから……っ」
サタン「理解出来ぬのも無理はない。人智など所詮はその程度でしか過ぎぬのだ」
召喚士「……っ」
サタン「尤も、それだけのもので俺を倒した事は称賛に値するがな」
召喚士「俺だけの力じゃない。絆の力だ」
サタン「そうだろうな」
- 876 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 17:59:38.95 ID:wT9wdW+Wo
召喚士「そうさ。みんなの力でサタン、お前を倒した」
サタン「ああ、倒されたな」
召喚士「これで……世界は平和になるんだ」
サタン「ああ、そうだな」
召喚士「……」
サタン「だがな召喚士、お前は大いなる間違いを犯している」
召喚士「何……!?」
サタン「余を倒したからと言って、安寧が訪れるなどと言うものは一時的なものに過ぎぬ」
召喚士「……どういう意味だ」
サタン「人間は愚かだ。戦う事でしか己の価値を見い出せない」
召喚士「そんな事は……」
サタン「いや事実さ。剣を振るう事だけではない」
召喚士「……」
サタン「功を競う事。能力の優劣を決める事。人間の世は常に争いなのだよ」
召喚士「そうだとしても、命を奪い合う事はしない!」
- 877 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 18:01:08.55 ID:wT9wdW+Wo
サタン「本当にそう思うか?」
召喚士「……」
サタン「召喚士、お前も薄々は感じているのであろう?」
召喚士「……っ」
サタン「魔族なき世界、人々は攻撃対象を同族とするぞ?」
召喚士「そんな事は……させない」
サタン「小さな部族や村のいざこざから始まり、何れは国家、世界規模で争う」
召喚士「させないよっ、そんな事は!!」
サタン「いつの時代も人間はそうなのだ。これは宿命と言うもの」
召喚士「人は失敗して……その経験を積み重ねて生き続けているっ!」
サタン「……」
召喚士「仮に過ちを犯しても、それに気付き修正する力があるんだ!」
サタン「大した自信だな」
召喚士「俺が生きているうちは、いや……死んだってずっと伝えていくさ!」
サタン「お前は本当に面白い奴だな」
- 878 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 18:01:55.37 ID:wT9wdW+Wo
召喚士「悪かったね。でも大真面目さ」
サタン「いやいや、褒めておるのだよ」
召喚士「きっと守ってみせるさ。新しい世界を……新しい命を」
サタン「貴様が生きているうちは、確かに心配もなさそうだ」
召喚士「俺がいなくたって、きっと意思を継いでくれる者が現れるさ」
サタン「そうだな。何百年、何千年後になる事か分からぬがな」
召喚士「そんなに長くは生きられない。すぐに現れて貰わないと困るよ」
サタン「ふっ、それもそうだな。人間の一生など儚いからな」
召喚士「君にとってはそうだろけど、俺らはぞうやって生きているんだ」
サタン「小さな命を繋いで繋いで、後世を育てていくか?」
召喚士「そうさ。そうやって今があるんだから」
サタン「しかしそれはいつまで持つのか」
召喚士「言ったはずだ。俺が伝えていくって」
サタン「そうだな。だが貴様は根本的な事を勘違いしているのだ」
召喚士「……?」
- 879 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 18:03:20.91 ID:wT9wdW+Wo
サタン「確かに人間同士の争いは生じるであろうし、ある程度の抑制は出来よう」
召喚士「そうだっ!」
サタン「つまり、そういう事だ」
召喚士「……人間同士の争いは……っ」
サタン「……」
召喚士「サタン、お前の言いたい事とは……」
サタン「何時の日か人間同士は争いを止め、手を取り合うであろう」
召喚士「……っ」
サタン「今日のように、種族が一丸となり、1つとなる日が来るであろう」
召喚士「倒し……たんだぞ……っ」
サタン「一時的なものに過ぎぬ、という事なのだ……召喚士」
召喚士「嘘だ……っ、嘘だ!!」
サタン「召喚士、私な……いつの日かまた、蘇る」
召喚士「――――っ!!」
サタン「俺はいつの日かまた、蘇るのだ」
- 880 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 18:04:32.60 ID:wT9wdW+Wo
召喚士「そんな……じゃあ……俺はっ、俺達は……」
サタン「お前は魔王サタンというものの存在を理解しておらぬのだ」
召喚士「……理解……?」
サタン「余は魔族であり魔族ではない。人間が生み出し、育んだものだ」
召喚士「な……に……?」
――「それ以上はやめておけ。召喚士が壊れるぞ」 バシュウウゥゥ
サタン「黙っていて貰おうか召喚獣。これは俺と召喚士の話なのだ」
召喚士「コカ……トリス?」
コカトリス「……人の知るところではない。知らぬ方が良い事もある」
サタン「ふっ。人智を超える者が現れると言うのに、何を言っているのやら」
コカトリス「……」
召喚士「サタン、お前の言葉の意味……どういう事なんだ」
サタン「意味はそのままさ。私は人間が生み出した存在だと言う事だ」
召喚士「そんなの……っ、一体誰が……」
サタン「誰? 誰でもない。そしてお前自身でもある」
- 881 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 18:05:23.10 ID:wT9wdW+Wo
召喚士「……?」
サタン「仕方ない。人智でも理解出来得る話をしてやろうか」
召喚士「……ごめん」
サタン「五行の力」
召喚士「五行……?」
サタン「木、火、土、金、水。5つの力から成り立っているよな?」
召喚士「……ああ」
サタン「木行は喜び、火行は楽しみを糧とし、力が発揮される」
召喚士「そうだね」
サタン「火は燃え盛り立ち昇り、風は上空で舞い上がる」
召喚士「……?」
サタン「土は怨み、水は哀しみを糧とし、力が発揮される」
召喚士「……っ」
サタン「土は大地を固め根を生やし、水は滴り落ちてゆく」
召喚士「火と風、土と水……」
- 882 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 18:06:34.49 ID:wT9wdW+Wo
サタン「金行は怒り、雷は天より起こり地に落ちる」
召喚士「昇るものと……落ちるもの……」
サタン「そうだ。正の感情は空高くへと昇って行き、負の感情は地に落下する」
召喚士「ま……さか……」
サタン「人間の怨みや哀しみは大地へ落ち、更に深く深くへと蓄積し……」
召喚士「そ……んな――――」
サタン「負の感情はいつしか1つの力を生成する。それが……このサタンだ」
召喚士「負の力がサタンを……魔王を生み出していたという事なのか……っ」
サタン「厳密にはやや違えど、結論で言えばそういう事になろうな」
召喚士「俺達の負の力が……」
サタン「これで分かったであろう? このサタンが地獄において特質な存在である事」
召喚士「……」
サタン「地獄に留まらず、地上を目指す意味、分かったであろう?」
召喚士「……」
サタン「地上における全ての魔物が余から生まれる道理、分かったであろう?」
- 883 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 18:10:16.93 ID:wT9wdW+Wo
召喚士「……っ」
サタン「これが真実だ。この私の存在の真実」
召喚士「サタン……お前は……」
サタン「皮肉であろう? 魔族なくば人は争い、人が結束するには魔族という敵が要る」
召喚士「そうかもしれない。でもそれは違う」
サタン「分かり合えるとでも?」
召喚士「分かり合えるさ。もう怨みや哀しみの時代は終わったんだ」
サタン「どうであろうな。何れ人はまた罪を犯すぞ?」
召喚士「失敗したって、またやり直せばいい。間に合わないなんて事はないんだ」
サタン「……」
召喚士「さっきも言ったじゃないか。俺が伝えていくって」
サタン「……ほお」
召喚士「繋いでいくよ、絆を」
サタン「俺は再び蘇る。何時になるか分からぬ年月だが、必ずな」
召喚士「……」
- 884 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 18:11:39.21 ID:wT9wdW+Wo
サタン「だがその時に召喚士よ、お前はもう居ない」
召喚士「俺がいなくたって、きっと大丈夫さ」
サタン「大した自信だ」
召喚士「一度繋いだ絆は、そう簡単に壊れやしない」
サタン「……」
召喚士「そしてこれからは人間だけじゃない。魔族だって一緒なんだ」
サタン「魔族……か」
召喚士「そうだよサタン。お前が生み出した魔族だって、同じ志を持てるんだ」
サタン「……」
召喚士「同じ絆を持って、同じ道を歩んで行けるんだ!」
サタン「…………」
召喚士「そして……その輪はどんどん大きくなって、広がっていくんだ!!」
サタン「それをお前が作るのか?」
召喚士「きっかけであればそれでいいんだ。作るものじゃないよ、自然と出来るものだから」
サタン「自然と、か」
- 885 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 18:12:29.71 ID:wT9wdW+Wo
召喚士「今ここで共に戦ったみんなだってそうさ。自然とこうなって、絆が出来たんだ」
サタン「……」
召喚士「運命とか宿命とか、そんな事じゃなくって、もっと大事な何かで繋がっているんだ」
サタン「面白い発想だな」
召喚士「怨みや哀しみが無くなるとは言わない。でも……」
サタン「でも?」
召喚士「でもっ、それすらも力に変えて……乗り越えていける日が来るはずだよ」
サタン「ふっふ。その時に召喚士、お前はもう既に居ないだろうがな」
召喚士「何年かかったっていいさ。ずっとそうだったんだから」
サタン「……」
召喚士「俺らだってずーっと昔から繋いできた絆の輪を、広げただけに過ぎないんだから」
サタン「見事だよ」
召喚士「……サタン?」
サタン「お前のその信念、意思、強さ……。抗うだけではなく受け入れる事の出来る強さ」
召喚士「……」
- 886 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 18:14:56.08 ID:wT9wdW+Wo
サタン「まぁ、この俺を倒したのだから、その程度は持ち合わせて居なくば困るがな」
召喚士「だから、俺の力じゃないってば」
サタン「いや、力は皆のものかもしれぬが、その中心は紛れもなく召喚士、お前だ。なぁ?」
コカトリス「……」
召喚士「もう……いいだろ……っ」
サタン「1つに限らず全ての属性を召喚し、魔王を討つべき力の鍵を持っている」
召喚士「偶然だよ、そんなものは」
サタン「偶然でそのような事が起こり得るか? 唯一無二の力であると言うのに?」
召喚士「……っ」
サタン「そうだ。召喚士よ、お前は選ばれし人間なのだ。こうして僕と対話する事もまた然り」
召喚士「そうは思わない。俺は小さな1つにしか過ぎない」
サタン「お前には権利がある。私を越え、ここまで到達した権利があるのだ」
召喚士「権利?」
サタン「そうだ。お前には進む権利がある。心理の扉……即ちアカシックレコードを」
召喚士「アカシック……レコード……?」
- 891 名前:NIPPERがお送りします(千葉県) [sage] 投稿日:2012/08/09(木) 18:45:14.12 ID:UPk5Miaio
>>1乙
召喚士とサタンが河原で殴りあった後の高校生みたいな空気出しててワロタ
- 899 名前:NIPPERがお送りします(福岡県) [sage] 投稿日:2012/08/09(木) 20:57:48.10 ID:eiayEEieo
サタンの一人称が変わってくのに凄い拘りを感じる
- 901 名前:NIPPERがお送りします [] 投稿日:2012/08/09(木) 22:08:25.79 ID:HCvu70TIO
>>1おふ
成る程、陰がサタンで、陽は召喚士。
因みに、陰が司る性は女性、陽が司る性は男性。
…つまり、今のサタンの外見は…召喚子ッ!?
これでサタンの一人称が「私」なのも、頷けるな。
- 902 名前:NIPPERがお送りします(長崎県) [sage] 投稿日:2012/08/09(木) 22:24:29.22 ID:yoelWF0po
チラ裏もたいがいに
- 904 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/08/09(木) 23:06:36.88 ID:w8oNsxyyo
なんかこういう勇者x魔王系のssはいつも考えさせられるな
魔族がいるから人が争わずに生きていけるってのは、人間の根本的なものなんだろうな
共通の敵がいなくなったら今度は、また新しい敵を作らないと団結できないってのが・・・
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