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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その25
856 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:26:55.33 ID:ye7R/o9xo
〜南東国、東の街〜

戦士父「……」

ザッザッザッザ

戦士父「待たせたな」

兄者「……いや。では、参ろうか」

正門前にて立つ長い髭の大男。右手にはこれまた巨大な大刀を携える。

戦士父「……」

両者は無言のまま、正門前を後にし、街の外れへと移動した。

ザッザッザッザッザ

戦士父(……墓?)

兄者「この辺りで良かろう」

戦士父「……ああ」

ザッ

戦士父と兄者。長得物を手にした二人の男が向かい合い、表情を変える。

その背後には質素な、しかしながら手入れの行き届いた墓が佇んでいた。


857 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:27:41.59 ID:ye7R/o9xo
〜南東国、宮殿〜

皇太子「……おはよう」

若文官「これはお早うございます。よく眠れましたかな?」

皇太子「ああ、お陰様でな」

若文官「それは何より、では朝食の支度など……」

皇太子「今朝は随分と人が少ないな」

老文官「皆、稽古や軍務で出ておりまする」

皇太子「熱心だな。良い事だ」

老文官「本国の方こそ、見かけませぬが……」

皇太子「言われてみればそうだな。……もしや」

老文官「……?」

皇太子「いやいや、何でもない。では朝食を頂くとしようか」

若文官「はっ。ご案内致します」

皇太子「……」

口惜しそうな表情を一瞬見せたが、皇太子は笑顔に戻り文官らの後に続いた。


858 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:29:40.70 ID:ye7R/o9xo
ザザッ…ジャリッ…

戦士父「……」

兄者「…………」

弧を描くように、両者はじりじりと間合いを取り合う。

剣士「……」

ヒュンッ…スタッ

剣士「……天才…さん!?」

天才「なかなかの特等席じゃねーか!」

城壁の上から下で展開されている勝負を眺める剣士と天才。

剣士「……どちらも仕掛けませんね」

天才「ヒゲの旦那は昨日の勝負を見てるからな」

剣士「ええ。戦士父さんの動きを見れば、迂闊に踏み込めませんね」

天才「……だろうな」

剣士「…しかし…似ている……っ」

天才「あん?」


859 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:33:10.27 ID:ye7R/o9xo
剣士「いえ…っ、動きが友人に似ていたので……」

天才「どっちだ?戦士父か?」

剣士「ええ。朱雀先生……ご存知ですか?」

天才「……ああ、そーいう事か。なるほどな」

剣士「……?」

天才「あれな、戦士の親父だぞ」

剣士「…………やはり」

天才「不思議なモンだなぁ。教わらずとも似るんだな!」

剣士「え…っ?」

天才「ほれ、余所見してんな!始まるぞ!」

剣士「……っ」

天才(……それにしても、コイツもコイツだ)

剣士「…………」

天才(……一見で早々、判別のつくようなモンじゃねぇぞ?)

二人の動向を見つめる剣士。その横顔を天才が見た瞬間、金属音が鳴り響く。


860 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:34:28.68 ID:ye7R/o9xo
キィンッ!!

戦士父「……っ!!」

兄者「……!!」

剣士「初手は同時っ!」

天才「しかも互角。とは言っても、互いに挨拶みてぇなモンか」

真っ向から武器を振るい、激しくぶつけ合う二人。

しばらくその態勢で睨みあった後、後方へと飛び、またもや間合いを探り合う。

兄者「……どうした!?最初から全力で来るがいい!!」

戦士父「……」

兄者の言葉に呼応し、戦士父は突き刺した戟を左手で拾い上げた。

剣士「二刀流!いや…っ、二槍流とでも言うべきか……っ」

戦士父「は……あぁ!!」

兄者「……ふんっ!!」

戦士父の右手より十字槍が振り上げられ、そこへ合わせるかのように、

兄者の青龍偃月刀が唸りを上げながら、振り下ろされる。


861 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:37:29.46 ID:ye7R/o9xo
ブオォッ!!……ガッギイイィィンッ!!

戦士父「!?」

兄者「分からぬかぁ!」

バランスを崩しよろける戦士父へ、大刀を振り上げながら兄者が叫ぶ。

兄者「初撃で互角だった貴公が、片手で某と打ち合えるはずもなかろう!」

天才「ま、正論だな」

剣士「でも、おかしくないですか?」

天才「アイツがそんな事も分からず仕掛けるかって話だわな」

剣士「……ええ…っ」

――「そりゃ、兄者だって分かってるさ」

剣士「……弟者さん」

ザッザッザ…ドスッ

弟者「誘ってんだよ。隙を作らせようってな」

天才「はーっはっはっは!」

剣士「……」


862 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:39:02.09 ID:ye7R/o9xo
天才「そりゃ、アイツも同じ考えみてぇだな」

少し間を空け、兄者が青龍偃月刀を勢いよく振り下ろす。

グオッ!!

戦士父「……」

ドズウウゥゥンッ!!

剣士「地面が…っ!凄い一撃だな……っ」

舞い上がる土と岩。その影に両者はすかさず間合いを詰める。

ザザザザッ…ブオンッ!!

兄者「来たっ!!」

岩と岩の間から槍が兄者めがけ一直線に轟音を鳴らし、空を切る。

兄者(この投擲をかわせば…っ、その先に――」

クンッ

兄者「!?」

十字槍は突如軌道を変え、地面へとそのまま突き刺さる。

弟者「しくじったか!?」


863 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:39:53.80 ID:ye7R/o9xo
天才「いんや、狙い通りだな!」

ビイイィィンッ

兄者(何が狙い――)

間髪入れず、躊躇する兄者の元へと、次なる投擲が放たれた。

兄者「――!?」

剣士「二発っ!?」

兄者「かわせ……ないか……っ」

止む無く飛び迫る劇を青龍偃月刀で受け止める兄者。

ザザッ…ザザザッ

兄者「……っ!?」

舞い散る地面すれすれの隙間、無表情の人影が走り寄る。

戦士父「……」

ザザザッ…パシッ

一投目に放った十字槍を地面から引き抜き、そのまま前進を続ける人影。

兄者「ちぃ……っ!!」


864 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:41:37.88 ID:ye7R/o9xo
避けようにも間に合わない。そう判断した兄者は、

たまらず手にした得物を投げ捨て、宙に浮く戟を手に振り下ろした。

ブオンッ!!

戦士父「……勝手が違う得物では、どうしても鈍くなる」

兄者「……っ」

振り下ろした戟は十字槍の先端に絡め取られ、再び宙へと舞う。

ビタァ!!

戦士父「……」

兄者「……お……見事…っ」

首筋で寸止めされた十字槍をちらりと見つめ、兄者は声を振り絞った。

天才「終わったな」

剣士「……な、何が…何だか」

弟者「まさか……あの、兄者が……っ」

兄者「……完敗だ」

戦士父「いい勝負だった。感謝する」


865 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:42:32.70 ID:ye7R/o9xo
スッ…ザッ

兄者「まさか、これ程の使い手が世に居ようとはな……」

戦士父「……まだまだ上へいる」

兄者「……」

戦士父「例えば、あの男とか…な」

兄者「……」

天才「……あん?」

ザッザッザ…スッ

戦士父「……では確かに、頂くぞ」

兄者「…約束は約束だ。仕方あるまい、好きにするがいい」

戦士父「……すまんな」

ザッザッザッザ

戦士父「さて、南東国最後の一本、貴方はどうする?」

兄者「……白馬、いたのか」

白馬騎士「……」


866 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:43:11.36 ID:ye7R/o9xo
ザッザッザ

白馬騎士「とても、勝てそうにはありません」

戦士父「……」

白馬騎士「私のこの、白銀の槍。渡すのは結構ですが……」

戦士父「…何だろうか」

白馬騎士「せめて理由をお聞かせ頂けないでしょうか?」

戦士父「……」

白馬騎士「私利私欲…とは思えませんが、流石に納得出来ませんからね」

戦士父「仰る事、ごもっとも」

ザッザッザ

戦士父「魔王を倒す為、という理由では駄目かな?」

白馬騎士「魔王を……?」

バッ…スタッ…ザッザッザ

天才「ゾディアック…って知ってっか?」

白馬騎士「……いえ、存じませぬ」


867 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:44:56.59 ID:ye7R/o9xo
天才「むかーし昔の大昔、一本の槍がありました」

戦士父「……」

天才「その槍はどこから来たとも知れず、天から降ってきたそうです」

白馬騎士「……」

天才「かつて、この世界を我が物としていた魔王……サタン」

剣士「……サタン」

天才「魔王サタンの元へ、一直線に天から突き刺さりました」

白馬騎士「……っ」

天才「サタンは魔力を半分以上失い、地上を離れました」

弟者「おとぎ話…か?」

天才「しかしその時の威力で、地上の大陸はブチ割れてしまいましたとさ」

兄者「それが……」

天才「あまりの威力に、目を付けた人間達が、こぞって自分の物にしようとした」

剣士「……」

天才「しかし使いこなす事は出来ず、永らくの間、行方不明となった」


868 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:45:51.61 ID:ye7R/o9xo
白馬騎士「……」

天才「ところがだ。ちょいと前に、一人の人間が古代の文献に目を付けた」

戦士父「……」

天才「そいつは、その槍を手に入れて魔物を殲滅しようと考えた」

弟者「……ほぅ」

天才「だが、そいつはとんだ悪党でな。魔物どころか人間も殺し始めた」

兄者「ど、どういう事だ…!?」

天才「自分が地上の王になろうと目論んだんだよ」

剣士「……っ!!」

天才「まぁ、それも未遂で終わったけどな」

白馬騎士「どうなったのです……?」

天才「人間として生きられなくなったそいつは、魔物の所へ去って行った」

剣士「……なんて事を……っ」

天才「元々、魔物を使って色々してたみたいでな」

弟者「そ、それで…?」


869 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:46:35.08 ID:ye7R/o9xo
天才「結局、そんなあぶねぇモンは封印しようって事になってな」

白馬騎士「……まさか」

天才「一人の鍛冶職人が1本の槍を解体し、12本の槍へと分裂させたのさ」

剣士「――っ!!」

兄者「な、なんと……っ!!」

白馬騎士「それが……この……」

天才「そういう事。お前らの持っていた3本の槍、それはゾディアックだ」

戦士父「…まぁ、そういう経緯だ」

白馬騎士「……っ」

天才「柄の部分に紋章が入ってんだろ。あれば本物だ」

スッ

白馬騎士「……紋章……確かに」

弟者「で…でもよっ、あんたらはそんな危ないモンをまた……」

天才「よーやく使い手が現れたのさ。……ここにな!」

戦士父「……」


870 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:47:16.06 ID:ye7R/o9xo
剣士「戦士父…さんが……」

天才「それでも賭けだけどな」

戦士父「ああ。それにそれ以前の問題かもしれんしな」

弟者「それ以前?」

白馬騎士「…再構築の為の、鍛冶職人ですか」

天才「ビンゴ!やるね、アンタ」

兄者「確かにな。元ある1本の姿hwと戻せぬ限り……」

剣士「利用出来ない…ですね」

天才「……ま、なるようになるんじゃねーの?」

戦士父「…気楽に言わんで下さい」

天才「……はーっはっは!さーて、勝負も終わったし戻るかねぇ」

テクテクテク…

戦士父「では、失礼する」

ザッザッザ

剣士「……」


871 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:48:57.54 ID:ye7R/o9xo
白馬騎士「……お待ち下さい」

戦士父「…?」

白馬騎士「…貴方達の意思は分かりました」

ザッザッザ

戦士父「……」

白馬騎士「……」

ズイッ

白馬騎士「……託します。お持ち下さい」

戦士父「……いいのか?」

白馬騎士「半ばおとぎ話で、そのような力があるとは信じられません」

天才「…はーっはっは!そりゃそうだわなっ!」

白馬騎士「しかし、嘘をついているとも思えません」

戦士父「……」

白馬騎士「この槍がお役に立つのでしたら、喜んでお渡し致します」

戦士父「……有難い」


872 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:50:02.05 ID:ye7R/o9xo
パシッ

天才「……これで何本だっけか?」

戦士父「手持ちは5本だ」

天才「かぁ〜。先の長い話だこと……」

ザッザッザ

剣士「あ、あの……っ」

兄者「先に戻っていてくれ。すぐに行く」

剣士「……失礼します!」

タッタッタッタッタ

弟者「…まさか、そんな物だったとはなぁ」

兄者「言い伝え通りの威力とは思えぬが、きっと素晴らしい得物なのだろう」

白馬騎士「ええ。そうでしょうね」

弟者「それが俺らじゃなくて、あの男を選んだわけか……」

兄者「使い手としては悔しい限りだが、実力を見る限り……仕方ない、か」

白馬騎士「ええ。きっと……騎都尉も納得してくれるでしょうね」


873 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/22(火) 18:52:29.61 ID:ye7R/o9xo
ザッザッザッザ

戦士父「そっちはどうなのだ?」

天才「あん?」

戦士父「集まっているのか?」

天才「ああ、もう余裕余裕」

剣士「…?」

天才「つーかよ、こっちは所在が明確なんだから難しくはねーよ」

戦士父「…確かにそうか」

天才「それに、まだ早い。きっかり五年目に仕上げるさ!」

戦士父「……」

天才「んな事より、これから悲願の同盟だろうが!見物に行くぞ!」

剣士「あ、ち…ちょっと…っ!?」

タッタッタッタッタ

南東国にて3本のゾディアックを手に入れた戦士父。

そしていよいよ、本国と南東国間における同盟が結ばれようとしていた。



〜第三十八部、完〜


874 名前:NIPPERがお送りします [] 投稿日:2011/02/22(火) 18:55:51.36 ID:ye7R/o9xo
なんだか長くなりそうなので一度切っておきますー
そして王子の人気は未だに安定……

>>818
こ、これは……

>>823
ありがとうございます!リクさえあればやるですよー!

それでは失礼をば!多数のご支援ありがとうございました!ノシ


879 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/22(火) 20:34:03.38 ID:zh7e4lkjo
十文字槍〜第十二部〜 北方…国軍⇒戦士⇒戦士父
多股の槍〜第十二部〜 北方…国軍⇒戦士⇒オーク
槍〜第十三部〜 華国…白馬騎士⇒戦士父
戟〜第十三部〜 華国…騎都尉⇒戦士(〜第二十三部〜 偽(前)にて偽戦士⇒戦士父)
三叉の鉾〜第十四部〜 火山…マーマン
形状不明〜第二十二部〜 北戦役…騎士団長
青龍偃月刀〜第三十部〜 南方華…兄者⇒戦士父
蛇矛〜第三十部〜 南方華…弟者⇒戦士父
国軍1本(戦士父談)、西方1本(天才談)、東方1本(天才談)

騎都尉はそういや五虎将じゃなかった、錦将軍の槍はゾディアックじゃないのか。
結局1本は行方不明か。


881 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/22(火) 21:18:18.11 ID:BU/rGmQXo
騎士団長の槍と国軍の槍は同一じゃなくて?


882 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/22(火) 21:51:31.32 ID:38CICdkSO
議会編の時に タルウィの洞窟の近くにある 南西の砦 だかの 砦長が持ってたよな


884 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/22(火) 22:17:05.83 ID:t72WqAsFo
>>882
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1290677469/855-857
これか


886 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/22(火) 23:47:48.33 ID:zh7e4lkjo
>>881
戦士父が国軍に2本と言ってる。
1本が騎士団長でもう1本が>>884の南西砦長のトライデントか。



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