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少女『あなたは明日、私に会うわ。必ず。』
138 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 04:37:05.62 ID:fRNhFyKBO
プルルルルル…

プルルルルル…

男「(出ろ……出てくれ……)」

ガチャ

男「おい。昨日は何だかすまなかったな。お幸せに。そんな事より、聞きたいことがあるんだ。」

友人「………あ、ああ。…なんだ?」

男「夜中に電話なんてすまん。でも懐かしいだろ?昔はよくやってたじゃないか。あとそのぎこちなさ止めろ。うざったい。」

友人「うざったいって言うな。おまえ……俺がどれだけ……」

男「わかったよ。悪かった。」

友人「で、何?」

男「幼馴染の番号を教えてくれ」

友人「……は?昨日……かかってきてただろ?」

俺「そうじゃねぇよ。そっちじゃねぇよ。男の方だ。『もう一人の方の幼馴染』の方だよ!!」

自分は、友人と出来の悪い会話をしながら、一連の不可思議な出来事の細部が繋がる1つの答えを見いだしていた。


139 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 04:45:28.50 ID:fRNhFyKBO
友人「どうしたんだよ急に……まあいいか。したらメールで送るから。………あとそれと幼なじ」

プッ…ツーツー

自分は最後まで話を聞かずに電話を切った。
携帯をテーブルにほおりなげて、友人がメールを送ってくるのを待つ間に放置していたコーヒーをついだ。

プルルルルル

男「きたっ……………きた?」

あらぬことにこんな夜更けに自分の携帯に着信したのは、友人のメールではなく、またも知らない番号だった。
それでも自分には、もうこのタイミングでかけてくる電話の相手など一人しか該当しなかった。

男「…………………」

ガチャ

男「………………………」

男「久し振り。」

『そう?そうでもないよね?』
男「そうでもないかな。」

『…………ん?』

男「…………会いたいよ、今すぐ君に」

『知ってる。だから言ったじゃん。「また会うよ、絶対」って』


140 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 04:52:50.49 ID:Pj57YKup0
>>138がよく分からないんだが
俺って誰?


141 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 05:03:22.69 ID:fRNhFyKBO
それが、彼女が自発的に起こせる行動ではないとしたら、この不可思議な現象は
不可思議で不可解なままだけど、必然必要不可欠な事柄だった。
じゃなければ、自分はこの答えに絶対に気がつかなかっただろう。

記憶の紐をとく最初の鍵になったのは『声』だった。
誰もいない部屋に帰ってきた『ただいま』の声は紛れもない。
最後の少女がやっと話してくれた言葉もあどけなさがのこるものの、それに近い。

少女は全て同一人物で、
中学生、高校生、大学生あたりの年齢をさしている。

2回目に映った背景の渡り廊下は、男の幼なじみの家の中だ。
少女が、今電話の繋がっている彼女、自分の考えている人で間違いがなければ、
確かに自分は少女と1回目に写っていた背景の場所に行ったことがある。

写っていた部屋にあった時計と写真立てはその少女の部屋に確かに合ったものだ。

なにより、最後にみた少女の笑顔
優しく下がる目尻も、
緩やかに上がる降格も、
淡々と話すその口調も、
(昔はそんな感じでは無かったような気もするが)

今にして思えば、初対面だったと勝手に勘違いしていたのに懐かしい気がして当然だった。


142 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 05:05:17.97 ID:fRNhFyKBO
>>140
すみません。
俺ではなく男です。
出来るだけリアルに想像して書こうとしたら感情移入してました。
申し訳ない。


143 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 05:10:55.99 ID:vH7sg4wfO
ま、まさかの男の娘ルートなのか?



ハァハァ(*´д`*)


144 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 05:14:18.13 ID:fRNhFyKBO
男「話したい事、沢山あるよ。2回目になるかもしれないけど。」

『……ふふっ』

男「よくわからないけど、今会ったらまた心配されそう」

『そう?』

『………ほんとは全部知ってたんだ。男くんが今日あそこに行くことも。』

男「なんで?」

『今日、ちゃんと言うって言われてたし。わたしはちょくちょく連絡とりあってたから』

男「……そうか。で、見に来たんだ。自分が何も知らないで浮かれてどん底に落ちるのを」

『会いたかったんだよ。ずっと』

男「自分は誰かもわからなかったのに?」

『ちょっとショックだったけどね。あそこで見つけた時も、トイレから出てきたときも、手をつないだときも、話してるときもやっぱり何にも変わらないなぁって思ったよ。』

男「そっか。」

『うん。』

男「会いたい。今すぐ。ちゃんと伝えたいことが沢山ある」

『わたしも。遠慮して言えなかった気持ちがあるよ』


145 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 05:17:12.74 ID:fRNhFyKBO
>>143
期待に添えずすみません。
最初に書いたのですが、中途半端に書いて落ちた前のSSと世界が多少リンクしていますので、
そっちを読むとこっちのオチが若干読めてしまうのですが…

男の娘ルートではないです…


156 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 17:11:37.22 ID:fRNhFyKBO
電話の向こうから聞こえる優しい声。
事実に気がついてからと言うもの、彼女の声はやはり少女のもので、自分の部屋に帰ってきていた女性のものでもあったと確信した。

時計の針は、朝方4時を回っていた。

男「今も実家?」

『そうだよ。昔お兄ちゃんの部屋に男くんがよく遊びに来てたあの家にまだ住んでる』

男「あいつは元気にしてる?」

『してるよー。昔から働いてた居酒屋さんのオーナーがもう歳だからって言ってお兄ちゃんに継がせようと毎日料理勉強させられてる』

男「そっか。」

『お兄ちゃんも、結婚するんだよ!!』

男「まじかよ。誰?自分の知ってる人?」

『ううん。全く知らない人。男くんや友人くん、幼馴染さんがみんなバラバラに住んだり働いたりするようになってから出会った人なんだ』

男「そっか……みんなちゃんっ進んでるんだな……」


157 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 17:18:39.04 ID:fRNhFyKBO
『男くんだって…』

男「いや、自分なんか全然駄目だ。つい昨日気づかされたとこだよ」
『そんなことないよ。』

男「………………」
『わたしはちゃんと知ってるよ。男くんの良いところ。たくさん知ってる。わたしがずっとちゃんと見てるよ』

男「そっか……ありがとう。」

自分はもういても経ってもいられなかった。

男「ごめん。また後でかけ直すよ。」

『寝ないの?』

男「うん。もっと大事な事があるんだ」

『…………ふふっ』
男「なんだよ」

『待ってるよ』

自分はおもむろに電話を切った。
格好とか髪型とか、そんなものもうどうでもよかった。
今はただ伝えたい。
今はただ会いたい。
少女に。彼女に。

男はさっと着替え、ポケットに必要なものを詰め込んで家を駆けだしていた。


158 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 17:29:42.46 ID:fRNhFyKBO
電車なんか動いてるわけなかった。
少し冷たい風が緩やかに吹く。
まだ空も白くならないうちから、カラスがカァと一鳴きして、
また新しい朝来るよと告げていた。

もうあまり変わらないと思ってた毎日。ただ無気力に、心のどこかで他人をバカにしてた。
他人も自分をバカにしていた。
淡々と今、今日、数時間後だけを考えて、その場限りの大したことない思考を頼りに難を逃れていた。
いつも。いつも。

今だってあまり変わらない。
それほど大したことじゃないのかもしれない。
それでも、それでもただ彼女に合いたくて、少女に会いたくて、がむしゃらに自転車で夜の帳を駆け抜けていく
何も考えていない自分は
ほんのすこしだけ新しい自分だった。

段々と雲に白い色がつき始める。
少しずつ燃えるような暖かい赤に染まる。

どれほどの時間が経ったのかもわからないけど、自分はただひたすらにそこに向かっていた。

どれだけ格好つけても、周りはみんな自分を蔑んだのに、
どれだけ格好を気にしてない今の自分を蔑んでいるものは、そこには何一つ無かったのだ。


159 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 17:42:48.37 ID:fRNhFyKBO
空がもう明るかった。
まばらではあるが早くに出社する会社員達が歩道をちらほらと歩いていた。

息の上がった自分は、懐かしくて随分と訪れていなかった男の幼馴染の家にまでたどり着いた。
道はうる覚えだったのによく着いたものだった。そもそも、今自分がここまでどういう道を辿って来たのかも無我夢中で覚えてなかった。

彼女は腕を組みながら、ラフな格好に上から防寒具を羽織って玄関先で自分を待っていた。

?2「ほら、ね?また会った。絶対会うって言ったじゃん」

男「………そのネックレス…」

少女が付けていた、見覚えのない二つのリングがついたネックレスを彼女は首から下げていた。

?2「あ、これ?大事なものなんだ。外行くときとかは外すときもあるけど、基本つけてるんだ。」

?2「お兄ちゃんの奥さんになる人から、17歳の誕生日にもらった所謂『いわくつき』ってやつかな?今となっては大事なお守りみたいなもんなんだ」

男「そうなんだ」

もう揺るぎなかった。
少女の正体は、男の幼馴染の妹だ。
確かに、自分はこの子の事を、ずっと前から知っている。


160 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 17:45:31.10 ID:fRNhFyKBO
すみません。
仕事の休憩が終わりそうです。
保守していただいてるみなさん本当に感謝しています。
もうすぐクライマックスです。
更新遅くてほんとに申し訳ない。
あとミステリーでも男の娘展開でもなく申し訳ない。

最後まで楽しんでいただけたらと思います。
それでは。


161 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/05(金) 17:58:59.11 ID:ETvLtbVj0
仕事がんばってー


164 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 19:44:40.23 ID:EROX5fWhO



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