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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その24
- 460 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2011/01/25(火) 18:14:30.28 ID:stc+OzV3o
ビュオオオオォォォォ
戦士「…くそっ、前が見えねぇ……!」
バサバサッ…ザッザッザ…
召喚士「魔道士さんっ!大丈夫ですかーっ!?」
魔道士「……はい!大丈夫ですーっ!」
盗賊「……」
この時期、北西から吹き荒れる寒風は海を渡り、この山脈へと
叩きつけられるようにぶつかる。それは北の高くそびえる山脈地帯にぶつかり、
鉱山北の低いこの山脈へ集約され、吹雪となって猛威を振るう。
折りしもこの日、その現象は厳しさを増し、四人の足取りを重いものとした。
戦士「……なるべく右のぉ!山伝いに進めぇ!!」
先頭の戦士が懸命に声を張り上げ、両足で雪をかき上げながら道を作り進む。
その後を魔道士、召喚士、盗賊の順に、吹雪の中無我夢中で前へ前へと続く。
魔道士「……っ」
山道の左側には何もなく、真下は崖。魔道士はちらりと覗き込み、息を飲んだ。
- 461 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:14:58.83 ID:stc+OzV3o
ザッザッザッザ…
戦士「……おっ!?」
召喚士「洞穴…っ!!」
魔道士「あそこで休めますかね!?」
盗賊「…待て。魔物や…凶暴な獣がいないとは限らぬ」
戦士「ああ。それに毒ガスとかも在り得るしな」
魔道士「な、なるほど…っ。そうですよね」
召喚士「…どうします?」
ザッザッザ
盗賊「…私が行くよ」
戦士「大丈夫か?」
盗賊「…ああ。その辺の心得は…ある」
魔道士「盗賊さんっ、無理しないで下さいね!」
召喚士「何かあったらすぐに知らせて下さい!」
盗賊「…ああ。行ってくる」
- 462 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:15:29.13 ID:stc+OzV3o
ザッザッザッザッザ
盗賊「……」
薄暗い洞穴の中を、盗賊は唯一人、灯りもなしに進んでいく。
盗賊(……臭いは正常。有害物質は出ておらぬようだな)
彼女の瞳孔は大きく散瞳し、大きくなった瞳孔径は獣のように暗所の奥を捉える。
通常では為し得ぬ行為ではあるが、彼女の素性を考えれば合点の事であった。
盗賊(魔物や人の気配もない……)
ピクッ!!
盗賊「!?」
バササササッ
盗賊「……蝙蝠か」
咄嗟に身構えたクナイをゆっくりと下ろし、盗賊は再び一本道をしばらく進む。
テクテクテク…ピタッ
盗賊「……行き止まり、か」
- 463 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:15:58.08 ID:stc+OzV3o
テクテクテクテク
魔道士「あっ!帰ってきました!!」
召喚士「どうでした!?」
盗賊「…問題なさそうだ。休めると思う」
戦士「よし、いばしここで休憩しよう」
テクテク…ザッザッザ…
戦士「うぅ〜寒…っびぃ!」
召喚士「外よりはマシだよ…。吹雪がない分ね……」
戦士「それもそうだわな……」
盗賊「…この辺りでいいだろう」
召喚士「戦士、木炭を」
戦士「濡れてない事を祈るばかりだぜ」
ゴソッ…コトコト
戦士「……よーしいいぜ。魔道士、頼む」
魔道士「はいっ。点火しまーす!」
- 464 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:16:28.74 ID:stc+OzV3o
ドドンッ!!…ゴオォッ
戦士「……大丈夫そうだな」
魔道士「はぁ〜っ、暖かい〜!!」
盗賊「…どの程度進んだ?」
召喚士「えぇと……」
ガサッ…パラパラッ
召喚士「……半分程度ですかね。もう少し上のようです」
戦士「しかしよ、本当にこんな所に人が住んでるのかねぇ…」
魔道士「確かにそうですよねぇ〜」
戦士「冬の間だけ移動してるなんて事もあるからなぁ」
召喚士「ただ、サモナーさんの資料だと、小さな村が存在するから…」
戦士「遊牧じゃないんだよな?」
召喚士「うん、昔からあるみたい。今もあるとは思うけど……」
戦士「……こんな所でも、人って住めるモンなんだな」
魔道士「凄いですよね……」
- 465 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:16:59.38 ID:stc+OzV3o
ザッ
盗賊「……行くか」
召喚士「はい。あと半分です。頑張りましょう」
ザッザッザッザ…
戦士「……うお…っ」
ビュオッ…ゴオオォォォォ
戦士「止む気配もなし。……しゃーねぇ、頑張るぞ!」
魔道士「頑張りましょーっ!」
ザッザッザッザッザ
戦士「まさかこんな所に、魔物なんていねぇよな?」
召喚士「……分からない。雪原地帯に棲む魔物もいるみたいだしね」
盗賊「……ああ、しかも凶暴だったな」
戦士「今そんな奴に襲われたら、勝てるか怪しいぜ」
魔道士「で、出ない事を祈りましょう……」
苦笑すらする余裕もなく、四人は吹雪に耐え、山道を延々と進んだ。
- 466 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:17:29.18 ID:stc+OzV3o
…
盗賊「……」
召喚士「……」
戦士「おいおい……嘘だろ…っ」
魔道士「道が……ないですよっ!?」
戦士「どうなってんだ!」
召喚士「分からないよっ!地図にはそんなところまで明記してなかったし…」
魔道士「どこかで…道を間違えたんですかね……?」
戦士「いーや、そんなはずはねぇ。脇道なんてなかったはずだ!」
ザッザッザ
盗賊「……」
召喚士「盗賊さん…?」
盗賊「……上だな」
魔道士「う、上……って」
戦士「この絶壁を登るってのかよっ!?」
- 467 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:18:10.98 ID:stc+OzV3o
ビュオオオオォォォォ
戦士「……っぬ…りゃあぁ!」
ガキィッ!!…グッグッ
盗賊「…クナイ…要るか?」
戦士「おう、2本くれ」
グッ…グッ…グッ…
戦士「魔道士、大丈夫か!?」
魔道士「な、なんとか……登れますっ!」
盗賊「私が先に登って、鎖を垂らす」
戦士「すまん。俺は途中までクナイで道を作って登る」
召喚士「魔道士さんは戦士の後を付いて行って下さい!」
魔道士「はっ、はい!」
盗賊「……よし、行くぞ!」
戦士「召喚士ーっ!全員登ったら合図するーっ!」
召喚士「了解ーっ!下で待機してるよーっ!」
- 468 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:18:40.98 ID:stc+OzV3o
ビュオオォォォォ…ゴオオォォォォ
戦士「……ファイットオオォォ!」
召喚士「いっぱああぁぁつ!!」
グイッ……ガシィッ
召喚士「……はぁ、はぁ」
戦士「全員…無事だな」
魔道士「……は、はぁ…はぁ。何とか……っ」
ジャラジャラジャラッ…ストッ
盗賊「……高地か」
戦士「どうだ〜何かありそうか?」
盗賊「……いや、何も」
魔道士「はぁ〜。もう少し先ですかねぇ?」
召喚士「距離からすると、かなり進んだと思うんですが……」
ゴウッ!!…バタバタバタッ
魔道士「きゃ……っ!」
- 469 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:19:07.28 ID:stc+OzV3o
盗賊「……凄い…風だなっ」
召喚士「流石にこんな風が吹く中で、建物があるとは思えない…」
戦士「……つぅ事は…反対側か」
召喚士「…うん。とりあえずこのまま真っ直ぐ反対側を目指そう」
ピクッ
盗賊「……最悪だ」
魔道士「へ…?」
ザザッ…ザザッ…ザザザッ
イエティ「まさか、こんな所でニンゲンに会えるなんて…ね!」
戦士「ちぃっ!」
イエティ「美味しく、イタダク!」
召喚士「イエティ!…戦士、気を付けてくれ!強度が並じゃないぞっ!」
戦士「……了解っ!」
盗賊「……1、2……全部で6匹か。厄介だな」
召喚士「ええ…。でも今回は大丈夫!」
- 470 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:20:09.96 ID:stc+OzV3o
ザッ
召喚士「魔道士さんっ、火行をっ!」
魔道士「はい……っ!」
キュイイィィィィ…
盗賊「…動きは一度見ている。……次は…っ!」
ヒュバッ!!
盗賊「……ないっ!」
イエティ「早ッ!」
薄緑を左手に持ち替え、盗賊の右手は目まぐるしく印を結んでいく。
シュバババッ…ババッ!!
結び終えると同時に、クナイを握りしめ、大声で叫ぶ。
盗賊「火遁……っ、焔!!」
シュンッ!!……ザクッ…ゴオオォォ
イエティ「ウオォ!アツイー!!」
クナイの深々と突き刺さるイエティの右腕が、一挙に炎へ包まれた。
- 471 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:20:45.93 ID:stc+OzV3o
ゴオオォォ
戦士「今だっ!一気に叩くぞ!!」
魔道士「はいっ!」
ザザザザッ
戦士「ふん…りゃあぁ!!」
ブオッ!!…ガカアアァァ!!
イエティ「……ッ!!」
戦士「直撃したっつーのによぉ!!」
雷切の稲妻により、わずか刹那のみ硬直したイエティだが、
戦士が追撃をかけるより早く、その態勢を立て直しカウンターに入る。
イエティ「グフフッ!」
ゴウッ!!
イエティ「――ッ!」
真横から吹き付ける突風に煽られ、イエティがよろけた。
召喚士「戦士っ、距離を!」
- 472 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:21:11.71 ID:stc+OzV3o
突風を起こした主であるレイピアを手に、召喚士が加勢に入る。
戦士「おうっ、サンキュ!」
召喚士「雷行は一瞬動きを封じるのがやっとだ」
戦士「…て事は」
召喚士「おそらく火行以外は……」
戦士「……そうか」
召喚士「前回はスフィンクスで一匹葬ったけど……今回は……」
戦士「……足場か」
召喚士「…うん。山の上だし、不安がある…」
戦士「…だな。召喚士は奴らを引き離してくれ。個別に叩く」
召喚士「任せてっ!牽制するよ!」
戦士「いくぞ!」
召喚士「うんっ!」
ババッ
召喚士「行けっ!ユニコーン!!」
- 473 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:22:32.98 ID:stc+OzV3o
シュイイィィン
戦士「魔道士!!」
魔道士「はいっ!撃ちます!」
ドドオオォォンッ!!…ゴオオォォ!!
魔道士の放つ炎は四人と魔物の群れへ境界線を敷くように地を駆ける。
イエティ「熱…っつ!なんだぁ!?」
魔道士「次っ…」
ボンッ!!
ユニコーン「目晦ましだよぉ!」
イエティ「!?」
炎の中から突如飛び出したユニコーンが、その角でイエティの腹部を捉え、
刺さらないものの、その一体を一気に後方へと吹き飛ばす。
ガスッ…ズザザアァ
戦士「今だぁ!」
魔道士「はいっ!!」
- 474 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:24:08.55 ID:stc+OzV3o
ドドオオォォンッ!!…ゴアオオォォ!!
先程より巨大な炎の魔法が、雷切の刀身へと纏い付き、
戦士はそれを地べたに転ぶイエティめがけ宙より振り下ろした。
ザシュッ……ゴオオォォッ!!
イエティ「――!!」
戦士「次ぃ!!」
魔道士「はい!」
着地と同時に戦士は右方を指差す。その先、魔道士の目に飛び込むのは、
右腕を負傷したイエティを鎖で拘束し、力比べの状態で対峙する盗賊の姿。
ザッザッザッザ…ザザッ
同時に戦士と魔道士が走り出す。
盗賊「……っ!!」
ググッ……グイィ!!
イエティ「ウ…オォ!?」
魔道士「撃ちますよっ!!」
- 475 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:25:14.58 ID:stc+OzV3o
ドドオオォォンッ!!…ゴアオオォォ!!
戦士「おっしゃあぁ!!」
力任せに鎖を曳き、耐え切れずにバランスを崩したイエティ。
その態勢を整える間もなく、頭上より戦士の一刀が振り下ろされる。
ザシュウゥ!!……ゴオオォォ
イエティ「ギ…イアアァァ!!」
ドシャアァ
召喚士「残り四体……!」
イエティ「何なんだコイツらぁ!!」
戦士「退がれっ!!」
盗賊「……っ!」
その言葉に素早く反応し、盗賊は魔道士を抱き抱え後方で伏せる。
ババッ!!
イエティ「ガアアァァァァ!!」
キュイイィィ…ドドオオォォンッ!!
- 476 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:26:22.79 ID:stc+OzV3o
一匹のイエティが口から放つ猛吹雪。いや、吹雪というよりそれはもはや、
氷のつぶてが針のように飛び交う、致死性を持った技である。
盗賊「戦士っ!!」
戦士「……っ!!」
ズガガガガガッ!!…ギキイイィィンッ
氷霧舞う中、左腕の盾を身体の前に突き出した戦士の姿が浮かび上がる。
戦士「……へっ、へへ…。流石は…炎の盾……っ」
イエティ「……っ!?」
盗賊「ちっ!」
ザザッ
イエティ「く、くそ…っ!」
ザザッ…ザザッ…
魔道士「!?」
召喚士「逃げて…いく…っ!?」
戦士「……っ」
- 477 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/25(火) 18:27:42.91 ID:stc+OzV3o
ザシャッ
召喚士「戦士っ!」
ザッザッザッザ…
戦士「っくぅ!冷てぇ……っ」
盗賊「大丈夫か!?」
戦士「……ああ。だがこの盾じゃ全て防ぐには小さかったな…っ」
召喚士「立てる…?」
戦士「…ああ、わりぃ。だが……」
フルフルフルッ
戦士「ちょいと剣は…握れそうもねぇな」
魔道士「……っ」
戦士「…さぁ、先を進むぜ……っ」
召喚士「……うん」
盗賊「魔道士、行くぞ」
魔道士「…は、はい……っ」
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