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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その25
- 1 名前:NIPPERがお送りします []
投稿日:2011/02/06(日) 23:23:08.11 ID:yjJxiF5bo
┏━ ノ ー‐ j ji |l| _,,,,,_ ji ji i i! ,_,,xz .|l| |l| ┃
┃ -イ.ー┬‐ | ーチ‐ || |! ーナ ̄| ト-、 | |! / || || ┃
┃. │ _| レ _ノ `"⌒) o ,__,,」 ノ´ 、ノ .| 丿 /^\ .o .o ━┛
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――かつて、人間と魔族が共存し、争いを繰り広げていた時代…
幻獣を召喚し魔物を倒す者がいた…。
名を「召喚士」…。後に「救世主」と呼ばれる者である…。
――かもしれない…。
〜前回までのあらすじ〜
朱雀先生の称号を受け継ぎ、魔王を倒す為、旅を続ける召喚士。、
パーティー仲間の強くて頼れる二枚目の戦士、いつも明るく笑顔が
可愛い魔道士。スタイル抜群ツンデレな盗賊との冒険はまだまだ続く。
ゲーデとの戦いにおいてバラバラとなった四人。その行くべき道とは……?
◆7xまとめ様(いつもありがとうございます)
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◆キャラクター人気投票所(ありがとうございます!)
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◆前スレ(その24)
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- 3 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:25:29.06 ID:yjJxiF5bo
〜北の森〜
盗賊「……っ!!」
ザッザッザ…
詩人「手を出せば……君は死ぬ」
盗賊「…!?」
バフォメット「……ファファファ」
盗賊「……どういう意味だ!?それにお前は……」
詩人「…ふっ。私は旅の詩人さ。それよりも君……」
盗賊「……?」
詩人「不思議だね。何故、攻撃されないんだ?」
盗賊「……」
詩人「そうか、君は魔力を持たないのか。珍しいね」
盗賊「…お前はどうなのだ?」
詩人「私か?ふふっ、よーく見てみるがいいさ」
盗賊「!?」
- 4 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:25:59.92 ID:yjJxiF5bo
改めて詩人の姿をじっくりと見つめる盗賊の顔が徐々に驚きへと変わる。
盗賊「…身体が……透けて…!?」
詩人「これは幻影。あくまで実体ではないのさ」
盗賊「……」
詩人「しかし魔力を持たぬとは、苦労するね」
盗賊「いや、これは一時的なものだ」
詩人「一時的?あぁ、魔力枯渇か。それならば危ういね」
盗賊「…危うい?」
詩人「とにかく、この森から早く出る事をお勧めするよ」
盗賊「……」
詩人「目的があるなら止めはしないが……死ぬよ?」
盗賊「……っ」
詩人「今のうちに森を立ち去るがいい」
盗賊「……」
詩人「……ふっ。忠告はしたよ」
- 5 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:26:29.31 ID:yjJxiF5bo
スゥッ…ザッザッザ…
盗賊「……」
姿を消す詩人からバフォメットへと目を移す盗賊。
バフォメット「……ファファファ」
盗賊「……っ」
クルッ…タッタッタッタッタ
〜海峡、橋〜
盗賊(結局……戻ってきてしまった……)
ザッザッザ
盗賊(私は……弱いな)
タッタッタッタッタ
盗賊「…ん?」
兵長「盗賊さんっ!どこにいかれておられたのです!?」
衛生兵「心配しましたわよ……っ」
海峡兵「森には近づかない方がいいっすよ。とんでもない魔物がいるって噂ですから」
- 6 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:27:04.32 ID:yjJxiF5bo
盗賊「……」
海峡兵「……ど、どうしました…?」
そっか……。
衛生兵「さぁ、とにかく海峡へ戻りましょう」
そうだよね……。
兵長「盗賊さんに何かあったら私は…いやっ、皆がし、心配しますよ!」
一人じゃないんだ。私が出来ない事だって沢山ある……。
盗賊「……うん。帰ろう」
自分が力量不足なら、誰かの手を借りてもいいんだ……。
ザッ
詩人「…ふっ」
〜♪
詩人「何か、吹っ切れたみたいだね。まぁそれも一つの形というものさ」
〜♪
詩人「素晴らしき音を奏でるには、一人では難しいという事だね……ふふっ」
- 7 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:27:30.93 ID:yjJxiF5bo
〜本国、病院〜
魔道士「…………んっ」
ドクター「!!」
魔道士「……ここ……は?」
ドクター「病院です。大丈夫ですか!?」
魔道士「……あ、ドクターさん…っ」
ザッザッザ
天才「おー、気付いたみてぇだな」
魔道士「天才さん…格闘家さん……」
格闘家「無事のようだな」
魔道士「……そうだ…私…っ!」
ガタッ
魔道士「っ!!」
天才「無理すんな。多からずとも魔力は吸われてんだ」
魔道士「ま、魔物は…っ!?」
- 8 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:27:58.81 ID:yjJxiF5bo
格闘家「大丈夫。始末した」
魔道士「……っ」
ドクター「とにかく、今日1日は安静にしていて下さい」
天才「んじゃ、あとは任せるわ」
格闘家「……では」
スタスタスタ
魔道士「あ、あの……っ!」
天才「あ?」
魔道士「……ありがとう…ございました」
天才「…はーっはっは!」
バタン
ドクター「それでは私も。何かあればすぐに声をかけて下さい」
魔道士「あ…ありがとうございました!」
ドクター「……では」
魔道士「……っ」
- 9 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:28:27.49 ID:yjJxiF5bo
テクテクテク…
格闘家「…大丈夫ですかね?」
天才「あん?あぁ、問題ねーだろ。夢魔は倒した」
格闘家「…でも、師匠がいて助かりましたね」
天才「……」
格闘家「そうでなくば今頃は……」
天才「…どうだかな」
格闘家「…?」
天才「強い精神力の持ち主だ。自力でも何とかなったかもしれねぇな」
格闘家「……」
天才「それに……」
格闘家「……?」
天才「…まぁいい。今回はご苦労だったな……じゃな」
格闘家「師匠……」
大剣を抱えた男は声を上げて笑いながら、その場を立ち去っていった。
- 10 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:28:58.68 ID:yjJxiF5bo
〜病室〜
魔道士「……はぁ」
夢の中での出来事が、ふとぼんやり思い浮かぶ。
魔道士(あんまり覚えてないけれど……私、また助けられたんだ……)
モゾッ
魔道士(それよりっ、何で私……病院へ!?)
ガバッ
魔道士「召喚士さん…?戦士さん、盗賊さん……っ」
我に返った矢先、一人でいる現状に困惑する魔道士。
魔道士「そうよ…っ、確か…北で……」
少しずつ当時の記憶が蘇る魔道士。それでも何故、
己がここにいるのか、その解答となるべき記憶は見出せない。
魔道士「明日……すぐに行かなきゃ!」
彼女の目的地は無論、他の者と同様であると思われる、ワークショップである。
バラバラとなった四人の初日が今、終わった。
- 11 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:29:28.32 ID:yjJxiF5bo
〜次の日〜
コンコン
魔道士「はい、どうぞ」
ドクター「…具合はいかがですか?」
魔道士「はいっ、お陰様で…もう大丈夫ですっ!」
ドクター「それは良かった」
魔道士「あの、本当に色々とありがとうございました」
ドクター「いえ、僕は何もしてません。全てはあの二人のお陰ですよ」
魔道士「天才さんと…格闘家さん」
ドクター「ええ。しかし…夢の中にまで侵食する魔物がいるとは…っ」
魔道士「私も始めてです。天才さん達がいてくれなくてはどうなっていたか……」
ドクター「怖いものですね」
魔道士「ええ……っ」
ドクター「とりあえずもう問題ないとは思いますが、もう1日様子をみますか…?」
魔道士「……えっと」
- 12 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:30:04.43 ID:yjJxiF5bo
…
看護士「それでは、お大事に」
魔道士「ありがとうございましたっ」
テクテクテクテク…
魔道士「よーし…まずは、ワークショップに行ってみよっ!」
〜ワークショップ〜
店員「……ふあぁ〜」
ガチャッ!!
店員「……っ!!」
魔道士「はぁはぁ……はぁ……」
店員「……い、いらっしゃいませ…っ」
魔道士「手紙…っ、手紙来てますか!?」
店員「手紙…ですか?」
魔道士「朱雀の…コカトリスの…っ、召喚士さんのパーティーです!」
店員「朱雀…?は、はぁ…少々お待ちを…っ」
- 13 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:30:30.34 ID:yjJxiF5bo
…
テクテクテク…
店員「お待たせ致しました。魔道士様宛ての……」
魔道士「来てるっ!!」
一通の伝言を差し出す店員の手から、半ばもぎ取るように魔道士はそれを受け取る。
魔道士「……えへへっ」
カサッ
魔道士「……あ、戦士さんから…っ」
店員(テンション下がった…!?)
魔道士「えっと……」
----
魔道士へ
バーテンの店へ来い!
以上
----
- 14 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:30:59.08 ID:yjJxiF5bo
魔道士「…………」
店員(すっごい顔してる…!?)
魔道士「ありがとうございました」
店員「あ、はい……」
テクテクテク…パ゚タン
魔道士「とにかく、戦士さんは無事!」
スタスタスタ
魔道士「召喚士さんと…盗賊さんは一緒じゃないのかな…?」
スタスタスタ
魔道士「とにかく……バーテンさんのお店へ行こう、うんっ!」
戦士からの手紙を握り締め、魔道士は一路、バーテンの店へと旅立った。
〜北方司令部〜
騎士長「魔王軍の動きは依然なし」
左翼長「あのゲーデとか言う大将を失ったせいか…?いや、ハナっから……」
テクテクテクテク
- 15 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:31:28.52 ID:yjJxiF5bo
戦士「…おはよう」
左翼長「おう」
騎士長「しっかり休めたか?」
戦士「んーまぁ」
騎士長「そうか。それならばよし」
左翼長「三人の行方は依然分からん」
戦士「……」
左翼長「夜通し捜索したが、北には居ないかもしれんな」
戦士「……すまねぇ」
左翼長「いや、構わん。魔王軍への警戒も兼ねてだからな」
戦士「大丈夫なのか?」
騎士長「ああ、敵に動きはない」
左翼長「このままだと何事もなく、視察も終わりそうだな」
戦士「……残念そうな物言いだな」
左翼長「…まさか。そこまで不謹慎じゃねぇよ」
- 17 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:32:40.10 ID:yjJxiF5bo
…
戦士「さーて、そろそろ行くわ」
騎士長「もう行くのか?」
戦士「ああ。ジッとしていても見つかるモンじゃねぇし」
左翼長「こっちは任せておけ。動きがあればすぐに連絡する」
戦士「助かる。バーテンさんの店にいるからよ」
左翼長「…おう」
騎士長「そういや親父はどうした?」
戦士「……さぁ、しばらく会ってねぇ。また放浪してんじゃない?」
左翼長「…ったく」
騎士長「アイツの手も借りられりゃ…楽なんだがなぁ」
戦士「もし会ったら伝えておくよ」
騎士長「おう。そうしてくれや」
戦士「そんじゃ、また」
左翼長「ああ、またな」
- 18 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:33:29.34 ID:yjJxiF5bo
…
テクテクテク
戦士「……親父…か」
ゴソッ
戦士「…そういや、渡しそびれちまったな」
荷物から取り出した一冊の手帳を、戦士はジッと見つめる。
戦士「帰る家…残しとくべきだったかな…ははっ」
ズシッ
戦士「……しっかし全員分の荷物はしんどいわ…」
テクテクテク
戦士「馬…借りりゃ良かったか……」
肩からぶら下げた盗賊の鞄がふと、目に入る。
戦士「……あいつも…大丈夫かな?」
そしてやたら盗賊を気にする自分自身におかしくなり、戦士は一人で笑った。
戦士「……さーて、泣き言はなしだ!いざ進むのみ!」
- 19 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:34:05.61 ID:yjJxiF5bo
〜海峡〜
盗賊「……いただきます」
兵長「どうぞどうぞ!」
将軍「……しかし、魔王軍の動きも分からなくなってきたな」
盗賊「…動き?」
兵長「確かに以前と比べると、戦い方が変わっている印象がありますね」
将軍「かつては大挙で押してきたものだが、近頃は……」
兵長「軍団長クラスを筆頭に、少数精鋭ですね」
海峡兵「あちらも手数が少ないのやもしれませんね」
将軍「…そうだな。それに加え、こちらが遅れを取る事が減ったのも要因だな」
盗賊「……」
兵長「確かにそうですね。今まではかなり押されておりましたが…」
海峡兵「技術も進化しておりますし、軍の纏まりも……」
将軍「皆、戦い方がうまくなってきておるのだよ。来るべき時に備えて……な」
盗賊「……」
- 20 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:34:37.57 ID:yjJxiF5bo
…
兵長「ワークショップ…ですか?」
盗賊「……ああ」
兵長「この辺りには聞いた事ありませんね。海峡途中の町まで行くしか」
盗賊「……そうか、ありがと」
スタスタスタ
兵長「あ、あの…っ!」
盗賊「……ん?」
兵長「もう…行かれるので?」
盗賊「…ああ。将軍にも世話になったと…伝えてくれ」
兵長「……っ」
盗賊「…互いに…頑張ろう」
ニコッ…スタスタスタ
兵長「……はい」
一宿一飯の礼を述べつつ、盗賊は海峡途中の町へと向かった。
- 21 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/06(日) 23:37:05.07 ID:yjJxiF5bo
〜最北の宿泊所〜
老人「……すまんのう」
召喚士「いえいえ、このくらいどうって事…ないですよ……っと」
煤を被りながら暖炉の掃除をする召喚士。申し訳なさそうに老人が声を掛ける。
召喚士「…よしっ、終わりました」
老人「ご苦労さん。あとは適当に暇を潰してくれ」
召喚士「…はい」
老人「何か食すか?」
召喚士「いえ、ちょっと外へ」
老人「突風には近づくでないぞ?下手をすれば命を…落としかねん」
召喚士「はい。承知しております」
ザッザッザ
召喚士「…さーて、今日からしっかり魔力を蓄積しておかないとな!」
気合を入れその場へ座り込む召喚士。座禅を組み、ゆっくりと目を閉じる。
召喚士「…………」
- 25 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/07(月) 02:27:39.85 ID:y1tHQFHAO
>>1乙!
>>18の手帳と家って何だっけ?
- 26 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/07(月) 02:51:45.84 ID:Y7U6S+cSO
戦士の故郷で見つけた、親父さんの日記
確か加治屋や鉱山のある町で記憶喪失の親父さんと再開する時に出てきた
- 34 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 17:59:23.03 ID:4cqPbFj0o
〜海峡途中の町〜
盗賊「……」
テクテクテク
盗賊「…ワークショップ…どこだっけ?」
町人「来たぞっ!」
おじさん「あれが噂の……」
盗賊「…?」
パッカパッカパッカ
盗賊「…国軍の馬車か」
通り過ぎる国軍の馬車。民衆はその馬車に対し冷やかしや罵声を浴びせている。
町人「いよっ、仲間を売って出世した気分はどうよっ!」
おじさん「期待してたんだがなぁ…。所詮アンタも私欲に走ったか」
盗賊「……あれは!?」
パッカパッカパッカ
青年兵「……」
- 35 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:00:26.78 ID:4cqPbFj0o
パッカパッカパッカ
女剣士「反論すれば良かろう」
青年兵「…したところで火に油を注ぐだけですよ」
女剣士「……」
青年兵「今はこれでいいんです。今は……」
女剣士「…一人で背負うつもりか?」
青年兵「そうではありません。しかし、殿下らに火の粉を飛ばすわけには……」
女剣士「全ては王の為か…。分からんでもない」
青年兵「……僕は決して、一人ではないですから」
女剣士「……」
青年兵「僕が動かずとも、僕より優れた皆が動いてくれております」
女剣士「…大した信頼感だ。それに、大局を見据えておるのか……」
青年兵「偉ぶるつもりはありませんが、己の立場を再認識しましたから」
女剣士「君は強いな」
青年兵「……町を抜けたら北方司令部まで、一気に飛ばして下さい」
- 36 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:01:04.96 ID:4cqPbFj0o
パッカパッカパッカ
盗賊「……」
町人「全く、殿下まで利用して…不逞な野郎だっ!」
おじさん「新聞じゃ、あんなに強気だったくせになぁ……」
盗賊「……っ」
青年兵の在らぬ噂を繰り返す町の人々。その一声一声を耳にする度、
盗賊は声をあげそうになるが、拳を握り締め、下唇を噛んだ。
盗賊(これは……彼自身と戦いだ。余計な手出しは無用)
クルッ…テクテクテク…
〜ワークショップ〜
盗賊「……やっと見つけた」
カチャッ
店員「いらっしゃい」
盗賊「……手紙を」
店員「この書類、書いて」
盗賊「…はい」
カキカキッ
店員「…それじゃあ、ちょっと待ってて」
- 37 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:02:58.39 ID:4cqPbFj0o
盗賊「……」
壁に貼られた無数の依頼やパーティー募集の張り紙。
こうした規模の小さな町では、今や盗賊など受け入れてくれようもない、
小さな採取や調査の依頼が多数掲示されている。
盗賊「……」
それを眺めると、ついこの間まで自分達がそれをこなしていた事。
世界の事や他人の事など考える暇もなく、自分達が生きる為に、
旅をしていた事。それが遠い昔のように蘇ってくる。
盗賊「……」
彼女にとってそれは、悪い気はしなかった。むしろ幸せな思い出。
テクテクテクテク
店員「お待たせ。手紙はないけど、伝言なら一件預かってる」
盗賊「!?」
店員「はい、どうぞ」
盗賊「……戦士っ!」
- 38 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/07(月) 18:03:46.41 ID:4cqPbFj0o
----
盗賊へ
バーテンの店へ来い!
以上
----
盗賊「……他は?」
店員「…ない」
盗賊「……そうか」
スクッ…スタスタスタ
盗賊「…どうも」
カチャッ…パタン
盗賊「バーテンの店か。とりあえず、戦士は無事のようだな」
青年兵の件も相俟って曇り顔であった盗賊の表情に、やや笑みがこぼれる。
盗賊「……よしっ!」
再び口を真一文字に結び、盗賊は一人、港町を目指し出発した。
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