■戻る■ 下へ
少女「治療完了、目を覚ますよ」−オリジナル小説
- 453 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga]
投稿日:2012/10/19(金) 19:50:56.50 ID:v+tkSpTq0
★
緊張のあまり過呼吸のようになりながら歩く理緒の手を引いて、
汀は最前列に腰を下ろした。
周りには、手にフライドチキンのようなモノを持った、
顔にモザイクがかかった男達が、
ワーワーと意地汚い野次を飛ばしながら銀幕に向かって騒いでいる。
「やだ……怖い……怖い……」
震えている理緒の肩を叩き、汀は売り子の男が差し出してきた
フライドチキンのようなモノを二つとって、彼女に差し出した。
「うん、味は悪くないよ」
「何食べてるの!」
悲鳴を上げる理緒。
汀はフライドチキンを頬張りながら、銀幕に向かって声を上げた。
- 454 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:51:30.09 ID:v+tkSpTq0
「時間がないの! 早く始めてくれる?」
「汀ちゃん、こんなのおかしいよ。一度戻った方が……」
理緒の制止を無視して、
汀はもう一つのフライドチキンを、銀幕に投げつけた。
薄い膜がバリンと破れ、次いで、
陽気なオクラホマミキサーの曲とともに、
顔にモザイクがかかったピエロ達が出てきて、
全くテンポのずれた踊りを踊り始める。
「あはは! きゃははははは!」
面白くもなんともない光景。
全員が全員バラバラの、意味のない踊り。
しかし汀は心底楽しそうだった。
- 455 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:52:04.83 ID:v+tkSpTq0
呆然としている理緒の前で、ピエロたちが引っ込み、
ドラムの音と共に、銀幕が上がった。
周りの男達の歓声が大きくなる。
ドラムの音とともに引っ立てられて、鎖を引きずりながら、
次々と全裸の女性達が舞台上に現れる。
彼女達はオクラホマミキサーの陽気な曲と共に、
悲鳴や絶叫を上げながら、処刑人の服を着た男達に、
一列に並べられた。
タン、タン、タン、と曲が終わる。
次の瞬間、客席の男達が立ち上がって、
手に持った拳銃で、一斉に女性達を撃った。
理緒が絶叫して耳を押さえ、丸くなる。
汀は対照的に、目を輝かせて手を叩いて喜んでいた。
- 456 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:52:39.84 ID:v+tkSpTq0
恐る恐る目を開けた理緒の視界に飛び込んできたのは、
動かなくなった女性達だったモノと、
飛び散った血液、体液だったもの、内臓だったモノ、
良く分からない液体でべしょべしょになった、
ぐちょぐちょの舞台だった。
「いやぁあああああ!」
理緒が悲鳴を上げる。
それを皮切りにして、またオクラホマミキサーの曲が流れ、
ピエロたちが出てきてテンポ外れの踊りを踊り始めた。
彼らは、動かなくなった女性だったモノの一つを持ち上げた。
客席の男の一人が、声を上げる。
続けて沢山の男達が、値段を示す単語を口走る。
- 457 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:53:11.91 ID:v+tkSpTq0
最後に手を上げた男のところに、ピエロ達は死骸を放った。
まだ生暖かいそれが、理緒の目の前にびちゃりと着地する。
四肢が無残に嫌な方向に曲がった女性の死体。
苦悶の表様に、怒り、憎しみ、全ての負の感情を込めた、
醜悪な表情をしたそれの髪の毛を掴み、
落札した男が、ずるずると「ソレ」を引きずりながら外に歩いていく。
またオクラホマミキサーの曲が終わり、
女性達がぐちょぐちょの舞台の上に引きずり出される。
中には反抗する女性もいたが、
問答無用で処刑人の持つ斧に頭をカチ割られて、
動かぬ人形と成り果てていた。
「嫌、こんなの嫌……嫌だ……嫌……」
癲癇の発作のように震えながら呟く理緒の脇で、
ヒートアップした汀が騒いでいる。
- 458 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:53:44.65 ID:v+tkSpTq0
「私にも銃! 銃頂戴! 銃!」
売り子から拳銃をむしりとり、女性の一人に狙いをつける汀。
「何してるの!」
理緒が悲鳴を上げて彼女を客席から引き摺り下ろす。
熱で真っ赤な顔をしている汀が、怪訝そうに彼女に聞く。
「どうしたの? お腹痛いの?」
「私がどうしたのって聞きたいです! 汀ちゃん、おかしいよ!」
「何が?」
「だ、だって殺されてるよ! 女の人が、銃で……きゃあああ!」
また舞台の上が銃撃され、女性達が崩れ落ちる。
- 459 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:54:14.86 ID:v+tkSpTq0
ピエロ達が、今度はバラバラなコサックダンスをしながら、
死体を掴み上げる。
無残な落札が始まった。
「ちぇ、撃てなかった」
不満そうにそう言って、汀は頬を膨らませた。
「折角のDIDなのに、何が不満なの?」
「全部だよ! 汀ちゃん、早く中枢を探そ? 頭がおかしくなるよ!」
「おかしくなんてならないよ」
ニッコリと笑って、汀は言った。
「これ以上おかしくなったら、みんな困るもん」
絶句した理緒と、汀の耳に圭介の声が聞こえてきた。
- 460 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:54:41.98 ID:v+tkSpTq0
『時間が差し迫ってる。早めに手を打て』
「手を打てって言われてもなぁ……」
汀はそこで始めて、困ったように周りを見回した。
「この人、過去に女性に酷い目に遭ってるね。多分母親だ」
『患者の過去は検索しないのが礼儀だ』
「知ってるよ」
『理緒ちゃんがお前についていけないそうだ。早く中枢を探せ』
「ついてけないって……何で?」
『いいから探せ』
「命令されるのは好きじゃない」
- 461 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:55:14.35 ID:v+tkSpTq0
「汀ちゃん……お願い、本当に早く……」
動悸が治まらないらしく、理緒が胸を押さえながら言う。
その様子を呆れたように見て、汀は一言、呟くように言った。
「理緒ちゃん、マインドスイープするの何回目?」
「……私、今まで小さい子にしかマインドスープしたことなかったから……
それに、こんな、世界全体がトラウマなんて、見たことも聞いたことも……」
「世の中にはもっとドロドロでグチャグチャなところもあるんだよ?」
首をかしげて、汀は銃を舞台の上に向けた。
「それに比べれば、これくらい」
パンッ、と彼女は躊躇なく引き金を引いた。
壇上の女性の一人が頭を撃ち抜かれ、白目を剥いて倒れる。
「どうってことないじゃない」
- 462 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:55:45.27 ID:v+tkSpTq0
『汀、あと二分だ。カウントダウンを始めるぞ』
圭介の声を聞いて、汀はチッと舌打ちをした。
そこで売り子が近づいてきて、汀の前にしゃがむ。
小白の分までチケットを切って、売り子は理緒の前に屈んだ。
「理緒ちゃん、チケット」
そう言われ、理緒は悲鳴をあげた時に
どこかに落としてしまったことに気がつき、青くなった。
「え……わ、私……」
次の瞬間、理緒の首に巨大な鉄枷が嵌められた。
「理緒ちゃん!」
汀が慌てて近づこうとするが、よろけて倒れてしまう。
- 463 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:56:26.34 ID:v+tkSpTq0
舞台に引きずり上げられ、
理緒は泣き喚いて首枷を外そうと抵抗していた。
やがて、首枷から伸びている鎖が、
台に設置されて巻き上げられる。
それに、首吊り自殺のような形で吊り上げられ、
理緒はオクラホマミキサーの曲の中、必死に体をばたつかせていた。
『どうした!』
圭介の声に、汀が青くなって返す。
「理緒ちゃんがトラウマに捕まっちゃった!」
『いつまでも遊んでるからだ。
汀、時間がない。GDM―Tを注射するぞ。
理緒ちゃんは無傷で助けろ』
「分かった!」
- 464 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:57:06.99 ID:v+tkSpTq0
汀は緩慢とした動作で、舞台に向かって走り出した。
観客席の男達が、銃を構える。
オクラホマミキサーの曲が聞こえる。
ピエロ達が踊っている。
そこで、汀の体が消えた。
否。
地面を、床が砕けるほど強く蹴って、
まるで弾丸のように理緒に向けて飛び上がったのだった。
残像を残しながら、およそ人間とは思えないほど速く、
汀は理緒に到達すると、近くの処刑人を殴り飛ばし、
目にも留まらない勢いで斧を奪い、鎖を断ち切った。
- 465 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:58:03.41 ID:v+tkSpTq0
理緒が地面に崩れ落ち咳をする前に、
彼女はゆったりと動く周囲の中、
息を切らしながら彼女を抱き上げ、舞台裏に転がった。
銃撃が聞こえた。
「ゲホッ、ゲホ、ゲホッ!」
理緒が激しくえづく。
涙目で震えている彼女の脇で、汀は体を震わせると、
盛大にその場に吐血した。
「みぎわ……ちゃん……」
首の鉄枷を外し、汀に這って近づく理緒。
汀は、真っ赤に充血した目で、彼女を見て、その肩を掴んだ。
- 466 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:58:32.14 ID:v+tkSpTq0
『効果時間は十一秒か。良くやった』
圭介の声が聞こえる。
「そこ……」
汀が指をさす。
そこには、オクラホマミキサーを流していると思われる、
古びたレコード機があった。
「壊して……早く……!」
タン、タン、タン。
と音楽が終わった。
顔を上げた理緒の背筋が、ゾッと寒くなった。
- 467 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:59:00.94 ID:v+tkSpTq0
舞台に、男達が全員上がり、銃をこちらに向けていたのだ。
小白がシャーッ! と鳴いて威嚇する。
理緒は無我夢中でレコード機に駆け寄ると、
それを引き倒し、レコードを床にたたきつけた。
そこで、彼女達の意識はホワイトアウトした。
- 468 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 19:59:43.35 ID:v+tkSpTq0
★
汀は、理緒に支えられ、真っ白な空間に立っていた。
そこには、砂画面が映っている、
小さなブラウン管型テレビが一台、置いてあるだけだった。
周りには何もない。
どこまでも、何もなかった。
「寂しかったんだって」
汀は、荒く息を吐きながら呟いた。
「寂しいってことは、一番残酷なことなんだよ……」
彼女はそう言って、血痰を吐いてから、その場に崩れ落ちた。
「汀ちゃん!」
- 469 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:00:27.45 ID:v+tkSpTq0
「早く……治療して……」
彼女に背中を押され、理緒はブラウン管型テレビの前に立った。
そして震えながら、そのダイヤルに手を伸ばし、回す。
慎重に回していくと、プツッ、という音がして青空が映し出された。
「怖くない……怖くないよ……」
自分に言い聞かせるようにそう言い、
理緒はテレビ画面の中に手を突っ込んだ。
画面が水面のように揺らめき、手を飲み込む。
- 470 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:00:57.26 ID:v+tkSpTq0
しばらくして、彼女は両手で持ちきれないほどの、
黒いミミズを抱えて、画面から引きずり出し、
嫌悪感で顔を真っ青にさせながら、それらを地面に叩き付けた。
プツッ、という音がして、テレビの砂画面が消え、真っ白になる。
汀はゴロリ、と地面に倒れると、ヘッドセットに手を伸ばし、言った。
「治療完了……二人とも、目を覚ますよ」
- 471 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:01:44.89 ID:v+tkSpTq0
★
圭介は、朝、誰もいない診察室の中で、硬い表情で資料を眺めていた。
そこには、以前汀がダイブ中、助けたことがある少女の顔写真があった。
灰色の髪の写真と、赤茶けた髪の写真。
そこには、「加原岬」と書かれている。
圭介は携帯電話を取り出すと、どこへかコールして、口を開いた。
「…………やられたな。
まさか、マインドスイーパーの意識を弄ってくるとは思わなかった」
『やっとそれに気づいたのかい。遅すぎるね。だから先手を取られるんだ』
電話の向こうの声は、明らかに面白がっているように、弾んだ声で続けた。
『加原岬、十五歳。以前、「そっち」のマインドスイーパーとは、
死刑囚の頭の中でご対面したことがあるんだっけか』
- 472 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:02:21.44 ID:v+tkSpTq0
「ああ」
『現在は関西総合病院にいるらしいけど、どうしてだか知ってるかい?』
問いかけられ、圭介は口元を醜悪に歪めて笑った。
しかし、抑揚なくそれに答える。
「知らんな」
『……そう。ならいいんだ』
- 473 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:02:54.96 ID:v+tkSpTq0
電話の向こうの声はそう言って、端的に付け加えた。
『それじゃ。これ以上話すと逆探知されるから、
次からは「鯨」の番号にテルしてね』
「分かった。それじゃ」
プツッ、と電話が切れる。
そこで圭介は、インターホンの呼び出し音が鳴ったのを聞いて、
壁のモニターに近づいた。
- 474 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:03:35.54 ID:v+tkSpTq0
★
「……汀ちゃんは、あれからずっと寝てるんですか?」
唖然として理緒が言う。
余所行きの、今時の女の子の服を着て、髪を綺麗に結っている。
「見ていくかい?」
そう言って圭介は汀の部屋のドアを開けた。
ベッドでは、やせ細ってやつれた女の子が、
すぅすぅと頼りない寝息を立てていた。
「汀ちゃん……私のせいで……」
「一時的に脳の働きを活性化させるクスリを投与したのは、
何も君のためだけじゃない。依頼を成功させるためだったんだ。
気に病むことはない」
- 475 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:04:03.82 ID:v+tkSpTq0
「高畑先生は……」
そこで、理緒は視線をそらしながら、小さな声で言った。
「高畑先生は、それでいいんですか……?」
問いかけられた圭介は、一瞬沈黙してから答えた。
「……患者を治すことは、汀が一番望んでいることだ。
俺は、その助けをしているに過ぎない」
「でも……このままじゃ、汀ちゃん……」
「大丈夫だ。汀は絶対に死なせない」
圭介は目を細めて、汀を見た。
「絶対にだ」
その視線をちらりと見た理緒は硬直した。
- 476 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:04:41.69 ID:v+tkSpTq0
どこか、言い知れぬ冷たさ……
いつもの彼とは違う、異質の何かを感じ取ったからだった。
「あの……私、失礼します。
これ……汀ちゃんが起きたら、渡してください」
そう言って、お土産のお菓子が入った包みを圭介に渡し、
背中を向ける理緒。
そこで圭介は、しゃがんで汀の脇に置いてあった箱を取ると、
理緒の肩を叩いて振り向かせ、それを渡した。
「持っていくといい。中に、ソフトも何本か入ってる」
それは、3DSの箱だった。
まだ新品と見れるものだ。
「そ、そんな……こんな高額なもの、いただけません……」
- 477 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:05:15.92 ID:v+tkSpTq0
「そうでもないさ。別に気に病むことはない。
汀が、君とやりたいゲームがあるって言ってたから、
買ってきただけなんだ。
あいつからのプレゼントだと思って、受け取ってやってくれ」
「…………あ、ありがとうございます……」
肩をすぼめて、小さな声でお礼を言う。
そこで彼女は、思い出したように圭介に聞いた。
「あの……」
「ん?」
柔和な表情をしている彼に少し安心したのか、理緒が続ける。
「私達が治療したあの患者さん……DIDは、治ったんですか?」
「……」
- 478 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:05:42.27 ID:v+tkSpTq0
圭介は一拍置いてから、何でもないことのように言った。
「治ってるわけないだろう? その治療までは頼まれてない」
「え……」
絶句して、理緒は言葉を失った。
固まっている彼女に、圭介はにこやかに笑いながら言った。
「DIDをマインドスイープで治療するのは無理だよ。
君達は、頼まれていた通りに、自殺病を完治させた。
何か、問題があるかい?」
「で、でも……それじゃ、患者さんは……」
「理緒ちゃん」
理緒の言葉を遮り、圭介は言った。
- 479 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:06:11.94 ID:v+tkSpTq0
「自殺病にかかった者は、決して幸せにはなれない。
そういう病気なんだよ?」
言葉を返せないでいる理緒の前で、ドアを空け、彼は続けた。
「暑いだろうから、タクシーを呼ぼう」
「え……大丈夫です。それにお金が……」
「いいんだ。請求書は大河内にツケといてくれ」
圭介はそう言って、ニコリと笑った。
「それくらい別に、保護者ならしてくれてもいいだろ」
笑顔の奥に、どこか暗い場所がある表情だった。
理緒は何か言葉を発しかけたが、やがてそれを飲み込んで、
小さく微笑んでコクリと頷いた。
汀のベッド脇で丸くなっていた小白が、
大きくあくびをして、また目を閉じた。
- 480 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/19(金) 20:07:06.17 ID:v+tkSpTq0
☆
お疲れ様でした。
次回の更新に続かせていただきます。
ご意見やご感想などがございましたら、
お気軽に書き込みをいただけますと嬉しいです。
それでは、今回は失礼させていただきます。
- 482 名前:NIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2012/10/19(金) 20:43:58.97 ID:wjgwWbPAO
乙乙乙〜!
理緒は本人無自覚の大河内のスパイで、高畑はこのダイブで彼女を潰す気なんじゃ…と、ドキドキしてしまった。
そんな事なくて良かったよ〜。
- 483 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/10/19(金) 22:28:13.94 ID:L4WeVdsIO
誰が何かんがえてるのかわかんないな…
だがそこがミステリアスで面白い!乙!
- 484 名前:NIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2012/10/20(土) 15:28:19.06 ID:+oxYRNTAO
自殺病は精神病ではなく心身症と判明。
おっそろしい病気だぞこれ。独身者が罹患したら死亡確定か。架空の病気で良かったわ…
- 485 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/10/20(土) 19:33:25.19 ID:SHWbPXzDO
乙
なんかこう
汀って他のマインドスイーパーと比べても異質なんだな
マインドスイーパーの学校があんのか…
次へ 戻る 上へ