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女商人「あの時の冒険は忘れられないなぁ・・・」
- 1 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga]
投稿日:2013/02/12(火) 00:44:06.41 ID:1qHsCOQZ0
女武闘家「あの時の冒険…?」
商人「塞ぎこんでた私を連れ出してくれたのは武闘家だったよね」
武闘家「え?そーだったっけか…?」
商人「忘れたの?はぁ、人がせっかく思い出に浸ろうって時に」
武闘家「いつの頃のお話でしたっけねぇ……」ポケー
商人「ほら私達が10歳の時だよ〜。冒険したじゃない?アリアハン大陸をさ」
武闘家「…ああー!はいはい。思い出した!」
武闘家「ありゃあ過酷な冒険の旅でしたなぁ〜」
商人「(ホントに思い出したのやら……)」ジロ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1360597446
- 2 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 00:49:04.50 ID:1qHsCOQZ0
第1作
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1356/13561/1356136156.html
第2作
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1359340444/
の続きです。今回は過去のお話を書いてみようと思います。
- 3 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 00:49:58.57 ID:1qHsCOQZ0
日中にまた投下します。ひとまずおやすみなさい。
- 5 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 09:29:39.66 ID:Vpg3PGOAO
それは商人がまだ10歳だったある日の事だった。
【アリアハン 商人の店】
商人父「ありがとうございました〜!またどうぞ!」
商人「ありがとうございました。」ボソ
商人父「どうした〜?元気ねえな。お客さんには大きな声で、が基本だぞ。」
商人「う、うん。わかった。」
商人父「よし!いいぞ。じゃあ俺は少し出てくるから少しの間、ここは頼むな。」
商人「は〜い。いってらっしゃ〜い。」ブンブン
商人「(……はぁ)」
- 6 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 09:47:08.33 ID:Vpg3PGOAO
女「こんにちはー。あれ、商人ちゃんが今日はお店番なの?」
商人「いらっしゃいませー。少しの間だけだよ。えっと、何にしますか?」
女「薬草を3つと、カレーパン1つもらおうかな。」
商人「はい。少々お待ちくださいませ。」テキパキ
商人「お待たせしました。はいどうぞ。出来たてのラスクもおまけだよ。」ニコ
女「ありがとう〜!これ私大好きなの。子供のおやつにもいいわね。」
女「商人ちゃんもお母さんを亡くして2年か、大変だと思うけど頑張ってね。」
商人「あ……はい、ありがとう。」
商人「(あ、元気に言うの忘れちゃった。)」
- 7 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 09:59:20.99 ID:Vpg3PGOAO
【アリアハン 商店街】
商人父「よし、仕入れも終わったし帰るかな。」
女「あら、商人ちゃんのお父さん。」
商人父「ああ、これはいつもご贔屓に。」ペコ
女「ついさっきお店で買い物させてもらったのよ。娘さんもしっかりしてるわねぇ。」
商人父「お、そうでしたか。それはありがとうございます。」
女「旦那さんも奥さんを亡くしてから大変だけど、頑張ってね。」
商人父「お気づかい感謝します。またお願いしますねー!」
商人父「(ああ、そうか。もうそろそろ母さんが死んで2年か。)」
商人父「(あの子が元気がないのはそのせいか……)」
- 8 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 10:06:41.47 ID:Vpg3PGOAO
世の中は魔王バラモスの出現により、乱れはじめていた。
魔物も世界中で姿を見せはじめ、人々は少しずつ魔王の脅威を感じつつ生活していた。
アリアハンでも町の外では魔物の姿が確認され、
人々がなかなか外に出る事も叶わなくなってきた。
- 9 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 10:21:07.59 ID:Vpg3PGOAO
【アリアハン 商人の家】
商人「ごちそうさまでした。美味しかったよお父さん。」
商人父「おうよ。ありがとな。そういえば今日は店番よくできたみたいだな。」
商人「そうかなぁ、昔からお父さんのしてる事を真似してるだけだよ。」
商人父「はは、そうか。じゃあお前も俺みたいな立派な商売人になるさ。」
商人父「…お母さんいなくて寂しいか?」
商人「え?あ、うん。大丈夫だよ。寂しくない。」
商人父「もう2年だもんな。お前も10になったし、少しは強くなったか?」
商人「強く、なったよ。10歳だもん。お母さんいなくても...」
商人「じゃ、お父さん。私部屋に行ってるね。ごちそうさま!」ニコ
商人父「ああ、わかった。」
商人父「(ふぅ、無理してやがるな。ホントはかなり寂しいだろうに。)」
- 10 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 10:36:31.75 ID:Vpg3PGOAO
翌日
【アリアハン 商人の店】
武闘家「おじさん。こ〜んにちはっ!」バッ
商人父「お!久々に威勢のいいのが来たな!いらっしゃい武闘家ちゃん。」
武闘家「えっへへー。威勢がいいのが来ちゃったよ!おじさん元気?」
商人父「元気元気。まあ武闘家ちゃんの元気にゃ負けるがな。はっはっは!」
商人「あ、武闘家ちゃん。」スッ
武闘家「商人!おはよー!あれぇ?なんか元気ないねぇ、どしたの?」
商人父「ん〜。まあこの子の母親が死んじまって2年くらい経つからな。」
商人父「去年もだったけど、この時期は元気がないんだと。な?」
武闘家「あ、そうか……ごめんね商人。」ペコ
商人「ち、違うよ。そんなんじゃないよ。ただまだ起きたばかりでボーっとしただけ!」
商人「武闘家ちゃんが気にしなくていいもん。」ムス
- 11 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 10:50:33.07 ID:Vpg3PGOAO
武闘家「そっか、それなら良かった〜。」パァ
商人「…………」
武闘家「…良くないの?」
商人「ううん。」ブンブン
商人父「(どうしたもんかな。)」
武闘家「………あ!そうだ!」ポン
武闘家「ねえ!そんな顔してないでさ、思いっきり遊びに行こうよ!」
商人「え?遊びに?」
武闘家「そうそう!気分も晴れるよ、絶対!決まり〜!」
商人「だめだよ〜私はお店のお手伝いがあるんだから。」
商人父「あ?いいぞ。武闘家ちゃんと一緒に遊びに行ってこいよ。」
武闘家「おじさん!いいの?」
商人父「ああ。たまには外に出て気持ちよ〜く遊んできな。」
商人父「お前がいつまでもそんな寂しそうなツラしてちゃ、天国の母さんも心配だぜ。」
- 12 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 11:09:27.72 ID:Vpg3PGOAO
商人「いいの?お父さん?」
商人父「俺だってお前がそんなツラしてるのを見るのはつらいからなぁ。」
商人「……そっか。心配かけちゃってごめんなさい。」ペコ
商人父「ま、ま。気にせず行ってきな。武闘家ちゃんがいるから大丈夫だよな?」チラ
武闘家「やったね、任せてよ。日々の修行の成果を見せちゃうから!」ビシッ
商人「あ〜すごい。かっこいいね。キマってるよ!武闘家ちゃん。」
商人父「よし、そんならお前にもこれを持たせてやるよ、ほらよ。」ヒョイ
商人「わっ、と。これはナイフ?」ジッ
商人父「それは母さんが昔使っていた聖なるナイフってやつさ。」
商人父「いつも俺が手入れしてたんだ。そこそこ役に立つだろうさ。」
商人「お母さんの…ナイフかぁ。えへへ、やったね。」ニコ
武闘家「いいな〜かっこい〜。見せて見せて!」
商人「だ〜め。私のだもん。」
武闘家「いいじゃんか〜減るもんじゃないし。」
商人「だめー、武闘家ちゃんにはその爪があるでしょ?」
商人父「おいおい店先で喧嘩はやめてくれよ〜。」
- 13 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 11:27:37.04 ID:Vpg3PGOAO
商人父「あ、そういや。武闘家ちゃんはお母さんはいいのか?」
武闘家「だいじょーぶ。お母さんは今、勇者様達と旅に出てるから、自由だよ。」
商人父「そういやそうか。頑張ってんだな。さすがあの人の娘だな。武闘家ちゃんは。」
商人「おばちゃん、すんごく強いから、武闘家ちゃんはいつもしごかれてたもんね。」
武闘家「うるさいな〜。強くなるためだもん、辛くないよ。」
商人「あ……」
商人「(強く……なる、かぁ)」
商人父「よ〜し。ほら、駄賃だ。薬草5個持ってきな。」カサッ
商人「わぁ、お父さんありがとう〜。」
武闘家「じゃあさ、早速行こうよ。私ワクワクしちゃうな。」
商人「うん、行こう。よろしく武闘家ちゃん。」スタスタ
商人父「(ありがとな武闘家ちゃん。無事で行ってこいよ。)」
- 14 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 11:29:28.82 ID:Vpg3PGOAO
しばし中断します〜。こんな出だしからですが、お願いします。
- 15 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 12:53:37.09 ID:Vpg3PGOAO
【アリアハン 教会】
武闘家「え〜と、なんで教会に来ちゃってるの?早く外に出ようよー。」
商人「だめだめ、外に出る前にここで自分達の無事を祈っていかなきゃね。」
武闘家「う〜めんどくさいなぁ。そんなのしなくても大丈夫だって。」
商人「武闘家ちゃんはめんどくさがりだからなぁ。ほら行くよ。」グイッ
武闘家「首は引っ張らないでー。」ジタバタ
バシッ
ドシン
女の子「きゃ。いててて。」
武闘家「あっ。ごめん。手が当たっちゃった。怪我はない?」
女の子「あ。はい。大丈夫です。なんともありません。」ポンポン
商人「(私達より少し下なのかな、かわいい子だな〜。)」
武闘家「よかった〜。あなたは教会の子?その格好は…」
女の子「そうです。ここでお世話になってる僧侶見習いです。教会に何かご用ですか?」ニコ
- 16 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 13:10:58.87 ID:Vpg3PGOAO
商人「あの、私達二人今から外に出るからその前に無事を祈ってからと思って。」
僧侶「へぇ。外に出られるんですかぁ?すごいです。
あ、お祈りは中で神父様が行ってくれるので私がご案内します。」ニコ
武闘家「あ、指から血が出てるよ。さっきのかな、ごめんね。ねぇ商人、薬草あるよね?」
商人「うん。僧侶さん、薬草どうぞ。傷が治るよ。」
僧侶「あ、すみません。気持ちだけいただきます。大丈夫ですから。」ブツブツ
商人「え、で、でも。そのままだと……」
僧侶「傷を癒せ『ホイミ』」パァー
小さな光が僧侶の指の傷を覆い、治して元通りになった。
商人「うわ!ホイミの魔法だ、すご〜い。僧侶さん。」
武闘家「どうなってんの〜?あなたすごいね。」
僧侶「えへ、まだ覚えたばかりなんですよ、魔法。上手くいってよかった〜。」ホッ
商人「(私よりも小さな子なのに、すごいなぁ〜)」
- 17 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 13:26:49.11 ID:Vpg3PGOAO
【教会内 祭壇の前】
神父「おやおや、かわいいお客様ですね。どうしましたか?」
僧侶「お二人は今から町の外に出るみたいで、無事を祈りたい、と来られたみたいです。」
神父「ほう、町の外へ?お二人だけで大丈夫なのかな?最近は魔物も出ると聞くし。」
武闘家「大丈夫だよー。魔物は私がぎったんばったん倒しちゃうから!エッヘン。」
商人「わ、わたしも、武闘家ちゃんに負けないように頑張り
ますから、大丈夫、です。たぶん。」
神父「なるほど。自信があるのなら止めません。ただ無理はなさらずに。」
武闘家「わかった〜!」
商人「はい。わかりました神父さま。」
神父「では、神に小さなお二人の小さな旅の無事を祈りましょう。アーメン。」ギュ
僧侶「アーメン。」ギュ
- 18 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 13:45:28.03 ID:Vpg3PGOAO
商人「お祈りしてくれてありがとう、神父さま。」
武闘家「僧侶ちゃんも祈ってくれたのか〜ありがとね。」
僧侶「いいえ。こうして会ったのも何かの縁だと思います。では無事を祈ってます。」ペコリ
神父「気を付けて行くんですよ〜?がんばって。」
商人「は〜い!行ってきます。僧侶さんもありがとう。」
武闘家「じゃあ、早く行くよ〜。ウズウズしちゃって。」
商人「武闘家ちゃん、ウズウズしすぎだってば〜。落ち着いて、ね。」
タッタッタ
僧侶「あのお二人、大丈夫でしょうか?神父さま。」
神父「まああの子達なら心配はないでしょうね。多少凸凹コンビみたいですが。」
僧侶「神父さまはご存知なのですか?お二人の事。」
神父「黒髪の子は今、勇者様と旅をしている武闘家の娘さん。あの年でもかなり強いはず。」
神父「赤髪の子はアリアハン一の道具屋の娘さん、あの年でとても賢い子だと聞きます。」
僧侶「す、すごいんですね。私なんてまだまだです。」
神父「あなたもその内、立派な僧侶になれます。私が保証しますよ!」ニコ
僧侶「え!そうですか!頑張ります、私も。」
- 19 名前:gaku ◆p5aHKPi6K9ce [saga] 投稿日:2013/02/12(火) 14:00:03.83 ID:Vpg3PGOAO
8つの時に母親を亡くし、去年今年とその時期になると寂しさ
からか気分が沈んでいまっていた商人。
しかし、幼なじみである武闘家のふとした思いつきで商人を元気付けようと
思いきって遊びに行く(武闘家的には「冒険に行く」と同義語)事になった。
教会で冒険の無事を祈ってもらい、10歳同士の商人と武闘家はそれぞれ
母の形見のナイフとお手製の鉄の爪を持ち、アリアハンを意気揚々と出て行った。
アリアハン大陸の中で繰り広げる小さな二人の小さな冒険の旅が始まる。
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