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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その35
- 102 名前:SS速報でコミケ本が出るよ [sage]
投稿日:2011/12/25(日) 02:18:28.39 ID:DA/MZ6CAO
>>1おつ
更新は嬉しいがクリスマスくらい休めばいいのに
- 110 名前:SS速報でコミケ本が出るよ [sage] 投稿日:2011/12/25(日) 17:34:06.07 ID:UCbqcrobo
察せ、というやつでは
- 111 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:14:28.12 ID:6J84pd6zo
察せ。今日はクリスマスだから特別編ですよ!↓
- 112 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:15:01.83 ID:6J84pd6zo
しとしとしと
名無し「うーっ、こんな寒い中仕事なんぞ……したかねぇんだよなくそっ」
文句を言いながら一軒の屋敷へと入っていくのは、一人のワーカー。
名無し「ういーす。さっむ……とりあえず、何か暖かいモン飲ませてくれぇ」
雇い主「てめぇで勝手に飲みなっ。飲ませてやるだけ在り難く思うんだね」
ぶっきらぼうに答えた長い金髪の女は、彼の雇い主であった。
名無し「へいへい。んで、仕事だったらお断りだぜ」
雇い主「仕事以外に、あんたを招いたりすると思うかい?」
名無し「へっへ。もうじきクリスマスだからな。てっきりお誘いかと思ったよ」
眼鏡を外しながら本を閉じ、椅子から立ち上がった雇い主は、
暖炉で暖めていたポットに手を伸ばし、コーヒーを入れる名無しの元へ近づく。
雇い主「ほれ、依頼だよ。一仕事してきなっ」
名無し「はぁ〜あ。んで、いつだい?」
雇い主「クリスマスの晩だ。どうせ暇なんだ、スケジュールが埋まって良かったなぁ」
名無し「……けっ、余計なお世話だっつーの!」
- 113 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:15:48.20 ID:6J84pd6zo
こぽこぽこぽっ……ことっ
名無し「んで、依頼主は?」
雇い主「北のさ、川沿いの村……知ってるかい?」
名無し「あぁ。でもあそこは魔王軍に襲われて、壊滅したんじゃなかったっけか?」
雇い主「いんや。今でも数人が暮らしてるよ」
名無し「無事なのか?」
雇い主「みたいだね。ま、生き残りも数人だろうけど」
名無し「んで、魔物退治か? 村の再興か?」
雇い主「ん」
名無し「手紙? ワークショップ経由じゃねぇのか……」
かさっ
雇い主「依頼主は村の少女。両親は魔物に殺され、今は一人住まいみたいだね」
名無し「おいおい……っ、何だよこれっ!」
雇い主「ま、詳しい話は直に行って聞いてくれ」
名無し「……ったく、馬車代あとで請求すっからな!」
- 114 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:28:19.07 ID:6J84pd6zo
ぱっかぱっかぱっか……
御者「着きましたぜ旦那」
名無し「おう。ちょいとまけてくれ」
御者「そうはいきませんよ、こっちも商売ですから」
名無し「……高けぇなぁ。請求できっかなこれ」
すたっ
名無し「んで、少女ってのはどこに住んでんだ?」
てくてくてく
名無し「……つーかこれ、人……住んでんのか?」
馬車を降りると広がる川沿いの村。とても人が住んでいるような気配はない。
名無し「えーと、とにかく一軒一軒あたってくしかねぇか」
煙突の煙や明かりを目印に、訪ねること数軒目……。
がちゃっ
少女「……はい」
名無し「依頼主の少女ってのはあんたかい?」
- 115 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:28:44.20 ID:6J84pd6zo
少女「ワーカーの人?」
名無し「ああそうだ。ほれ、これ……あんたがよこした手紙だろ?」
少女「……入って」
名無し「おう」
すたすたすた
名無し「……これまた、立派なおうちだこと」
少女「魔物が来るまではちゃんとした家だったんだよ。これでもね」
名無し「気の毒なこったな。引っ越さねぇのか?」
少女「おんなお金ないし、頼る人もいない」
名無し「……そか」
少女「何か飲む?」
名無し「何かあんのか?」
少女「裏の草むらで取れた、ハーブを煮たやつなら」
名無し「ご馳走だな。そんじゃ遠慮なく貰おうか」
少女「そこ、座って待ってて」
- 116 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:29:39.33 ID:6J84pd6zo
こぽこぽこぽ……
名無し「んで、依頼ってのはなんだ?」
少女「お父さんとお母さん」
名無し「あん?」
少女「お父さんとお母さん……連れてきて」
名無し「死んだんじゃねーのか?」
少女「……うん」
名無し「じゃあ無理な相談だな。俺には不可能だ」
少女「いいよ、代わりでも」
名無し「あん?」
少女「もうすぐクリスマスでしょ? お父さんとお母さんと……家族で過ごしたいの」
名無し「死んだ人間は生き返ったりしねぇ。諦めな」
少女「だからっ、代わりでも……いいの」
名無し「あのなぁ、代わりったってそんなんどこにいるんだよ?」
少女「おじさんでもいいよ。お父さんになってよ」
- 117 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:30:26.09 ID:6J84pd6zo
名無し「ぶっ!」
少女「……汚いなぁ」
名無し「お前が変な事ぬかすからだろっ!」
少女「誰でもいいのっ! お父さんとお母さんと……過ごしたいのよ」
名無し「はぁ」
少女「無理?」
名無し「無理」
少女「ワーカーは、どんな仕事でもしてくれるんじゃなかったの?」
名無し「それとこれとは話が別。んじゃ、ハーブ湯うまかったぜ。じゃあな」
すくっ……すたすたすた
少女「……う……っ、うくっ」
名無し「……」
少女「……ふ……うぅっ」
名無し「だあぁっ、もう! 泣くなっつーの!」
少女「じゃあ連れてきてくれる!?」
- 118 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:31:55.23 ID:6J84pd6zo
てくてくてく
名無し「ったく、ガキのくせに嘘泣きとかマセた真似しやがってくそ」
てくてくてく
名無し「しかし、代理の両親なんぞどうすっかな……」
てくてくてく
名無し「適当にボランティア募って、数合わせすっか?」
てくてくてく
名無し「でもそれじゃアイツが納得しねーだろうし、何より人攫いなんかマズイしなぁ」
てくてくてく
名無し「……っておいおい」
ぴたっ
名無し「馬車帰らせちまって……歩いて帰れってのか!?」
がくっ
名無し「はぁ、こりゃ依頼でがっぽり貰わんと割りにあわんぜ……てかアイツ金ねぇとかぬかしてなかったか?」
- 119 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:32:43.41 ID:6J84pd6zo
〜雇い主の屋敷〜
がちゃっ
雇い主「おや、随分と遅かったね」
名無し「おい、服脱げ」
雇い主「……は?」
名無し「ベッドインだ。早くしろ」
ばきぃっ!
名無し「いってぇな!」
雇い主「気でも狂ったかおのれは」
名無し「仕方ねぇだろ。依頼主の為だ」
雇い主「意味が分からん。細部に渡り説明しろ」
名無し「だからあのな……」
……
雇い主「ふぅん。それじゃさっさと両親を探してくれば良かろうに」
名無し「簡単にいたら苦労しねーんだよ。だから俺とお前がベッドイ――」
- 120 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:33:14.78 ID:6J84pd6zo
ばきっ! どかっ!
名無し「――――っ」
雇い主「発想が大胆すぎる。もう少し頭を回転させろ」
名無し「……ちっ、覚えてがれくそっ」
ばたんっ……てくてくてく
名無し「仕方ねぇ。ひとまず本国にでも行ってみっか」
がちゃっ
名無し「……何だよ」
雇い主「忘れもんだ」
ぽいっ……ばさっ
名無し「……!?」
雇い主「馬車代。請求すんだろ?」
名無し「へぇ〜っ。意外と優しいじゃねぇか」
雇い主「貴様とベッドインするくらいなら安いものだ」ばたんっ
名無し「……あっそ」
- 121 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:33:40.43 ID:6J84pd6zo
〜本国〜
名無し「来たはいいけど、別にツテがあるわけでもなし」
すたすたすた
名無し「ひとまずはここ、ワークショップにて情報を。これワーカーの基本っちゅー話」
がちゃっ
店員「いらっしゃいませ」
名無し「お、なかなかカワイ子ちゃんね。俺と子作りしない?」
店員「……ありがとうございましたー」
名無し「ジャスタモーメントオオォォ!!」
店員「冷やかしなら怖い人呼びますよ?」
名無し「あのさ、ちょっと厄介な依頼受けちまってよ、手助けが必要なんだ」
店員「依頼補助ですか? 場合によっては手数料が発生しますよ?」
名無し「嫌だねぇ。人助けだと思ってさ、なんとかタダで受けてくんねーか?」
店員「内容によります」
名無し「実はよ……」
- 122 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:34:41.29 ID:6J84pd6zo
……
店員「……うっ、うぅ〜。いいお話ですねぇ……っ!」
名無し「だろっ? なっ、ここは少女の夢を叶える為にもさ、なにとぞタダで――」
店員「手数料はEランクですね。お支払い願います」
名無し「……世知辛い世の中だねこれ」
店員「でも、そんな奇特な人……居ないと思いますよ?」
名無し「だろうねぇ。飛びついてくるのなんて、せいぜい人攫いくらいでしょーよ」
店員「そこはワークショップの名にかけて、身分の証明出来るちゃんと人を厳選します!」
名無し「来ればね」
店員「ていうかぁ、名無しさんが務めたらいいじゃないですか」
名無し「だからさー。俺がモテる風貌に見える?」
店員「見えません」
名無し「キッパリ言うなっつの。でも嫌いじゃないぜそういうの。だから俺と子作り――」
店員「ありがとうございましたー!」
名無し「……じゃ……頼んだよ……はぁ」
- 123 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:35:28.57 ID:6J84pd6zo
……
名無し「なぁ、養子の話があんだけどさ……」
男「うちは子供が28人もいるんだ。無理無理」
名無し「あ……そ」
……
名無し「ねぇ、俺と結婚しないっ!?」
女「鏡見てもの言えこのアホーッ!」どかっ
名無し「うひぃーっ!」
……
名無し「じつはさーこんな少女が居てねぇー」
おばさん「そんなん無理だよぉ。孤児院にでも行ったらどうだい?」
名無し「……はぁ、話聞いてくれてあんがとさん」
……
名無し「もうすっかり日も落ちちまった……。こりゃ今日は出直しだな」
――「ねぇねぇオジサンっ!」
- 124 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:36:11.29 ID:6J84pd6zo
名無し「あん?」
カワイコ「私、カワイコって言うんだけどさー」
名無し「金ならねーぜ、他あたりな。まっ、タダなら相手してやってもいいけどな!」
カワイコ「私がそんな女に見えるわけぇ〜? ひっどーい!」
名無し「じゃあ何だってんだよ」
カワイコ「オジサンさ、なんか養子を貰ってくれる人、探してるんだって?」
名無し「おぉっ!? そうなんだよ! 心当たりあるのか!?」
カワイコ「まぁね〜」
名無し「ぜひ紹介してくれっ!」ぎゅっ
カワイコ「手は握らなくていいから……っ。紹介してあげるよ」
名無し「助かるぜっ! あ……身分はちゃんとした奴だよな……?」
カワイコ「もっちろん! ちゃんとしてるっていうか〜」
名無し「あん?」
カワイコ「まぁいいからっ、とにかく付いてきてっ!」
名無し「おうよ!」
- 125 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:36:39.12 ID:6J84pd6zo
〜富豪の家〜
名無し「……」ぽかーん
カワイコ「何してるの〜? こっちよ、早くー」
名無し「お、おう。ってか……すっげぇ金持ちなんじゃないのこれ?」
カワイコ「そうだよ〜。すっごいお金持ちなんだよこの家」
名無し「お前んちじゃ……ないよな?」
カワイコ「残念だけどね〜」
名無し「……っ」
てくてくてく……こんこんっ
召使い「はい」かちゃっ
カワイコ「今晩はっ。富豪次男君、居ますか?」
召使い「……少々お待ちを」
名無し「なんか嫌そうな顔してたぞ今の奴」
カワイコ「大丈夫大丈夫っ。気にしないで〜」
名無し「……ふぅん」
- 126 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:37:08.75 ID:6J84pd6zo
……
富豪三男「やぁやぁ、待たせたね〜」
カワイコ「もう〜っ。おっそーい」
名無し「こいつが……?」
富豪三男「こいつとか、失礼なオッサンだなおい」
名無し「……」
富豪三男「オッサンさぁ、ガキを貰ってくれる奴、探してるんだって?」
名無し「ガキってお前な……」
がちゃんっ!
富豪三男「ゴチャゴチャうっせぇなー。どうせテメーがどっかで作ってきたガキかなんかだろ?」
名無し「……あ?」
富豪三男「テメーの面倒引き受けてやるって言ってんだからよ、大人しくご好意に甘えろっての」
カワイコ「ぎゃはははっ」
名無し「あのさ、聞きてーんだけどよ。何で養子探してんだ?」
富豪三男「もうすぐよ〜クリスマスじゃん?」
- 127 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:37:44.72 ID:6J84pd6zo
名無し「……?」
富豪三男「俺のダチにさぁ、モテない男がいるんだよね〜」
カワイコ「そうそうっ。あいつマジでウケるよねぇ〜♪」
富豪三男「しかもだぜ? モテねーくせにロリコンなの。ぎゃっはははは!」
カワイコ「超ありえないよね〜! まじ変態すぎるんだけど〜!」
名無し「…………」
富豪三男「だからさー、サンタさんになってやろうかと思って」
名無し「……話が……読めねぇ」
富豪三男「オッサンさー、アホ? その辺から攫ってきたら犯罪になっちまうだろーがよ!」
名無し「……」
富豪三男「だからよー。そいつと養子縁組させりゃあ家族。何ヤッてもオッケー!」
カワイコ「あんたってさぁ、超頭イイよねぇ〜♪」
富豪三男「いくら欲しい? 俺もソイツも金ならあるからよ」
名無し「……はぁ、俺もとことんツイてねーよなぁ」
富豪三男「あん?」
- 128 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:38:30.43 ID:6J84pd6zo
名無し「邪魔したな」
すたすたすた
富豪三男「おいおい。養子の話は――」
名無し「俺が探してんのはなぁ、奴隷売買の相手じゃないんでな」
富豪三男「はぁ!? おいテメー! ちょっと待てよ」
名無し「無駄足だった……。この時間返してくれっつーのもう……」
富豪三男「待てっつってんんだろーが!」
カワイコ「ちょっと……っ!?」
ばたんっ! すたすたすた……
名無し「ま、やっぱこうなるわな。本国も腐ったモンだよ全く」
かちっかちっ しゅぼっ!
名無し「……ぷあぁ〜。先代の時は、もう幾分かマシだったんだがねぇ」
口元に咥えた煙草の煙を、空から降って来た白い粉がふわりと掻き消した。
名無し「……あーあ、雪かよ。どこまでもツイてねーったらありゃしないわ」
寒さに肩をすくめ、名無しは街角の古びた素泊まりの宿へと消えて行った。
- 130 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:39:45.33 ID:6J84pd6zo
〜北方、川沿いの村〜
がちゃっ
名無し「ういーす」
少女「見つかった!?」
名無し「そーカンタンに見つかってたまるかって〜の」どかっ
少女「じゃあ頑張ってね」つんっ
名無し「あのなぁ〜。これでも結構、頑張ってんだよ俺?」
少女「飲み物ならもうないわよ」
名無し「はぁ!?」
少女「昨日で全部飲み終えちゃったもの」
名無し「マジかよ……」
少女「また春に会いましょう」
名無し「ノー! 俺は今すぐに会いたい!」
少女「じゃあ買ってきて。勿論、おじさんのお金で」
名無し「あのなー、俺だって貧乏なんですよ?」
- 131 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:40:33.23 ID:6J84pd6zo
少女「だってうち、お金ないもん」
名無し「……へいへい、行ってきますよ。んで、何が飲みてぇんだ?」
少女「本当っ!? えっとねぇ……じゃあ紅茶っ♪」
名無し「はーいはい。んじゃ大人しく待ってろよ」
少女「おじさん大好きっ! ありがとーっ!」
名無し「ったく、調子のいい奴だなおい」
ばたんっ てくてくてく
名無し「んで、どこに行くか。本国はヤダし……北の港言ってみっか」
〜北の港〜
男「よってらっしゃい見てらっしゃい! クリスマス特価の大バーゲンセールだよ!」
名無し「どこもかしこもクリスマス……。ま、賑やかでいいけどねぇ」
すたすたすた
名無し「お、ここだな」
がちゃっ
店員「いらっしゃいませ」
- 132 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:41:38.33 ID:6J84pd6zo
名無し「紅茶をくれ。えーっと……ウマいけど安いやつ」
店員「これなんてどうです?」
名無し「高いな。もっと安いやつ」
店員「じゃあこれは?」
名無し「高い高い。もっと安くてウマいのあんだろ」
店員「……じゃあ……これ」
名無し「ああ、それでいいや。100gぶんくれ」
店員「100g……ですか?」
名無し「文句あるの? あ、あと領収書ね」
店員「こ、これで領収書ぉ〜?」
名無し「んだよ、文句あんのかよ。こっちだってなぁ、生活がかかってんだよ」
店員「……はいどうぞ」
どんっ
名無し「ま、おりるか分かんねー領収書だけどな。あんがとさんっ!」
店員「はいどうも」
- 133 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:42:25.25 ID:6J84pd6zo
がちゃっ てくてくてく
名無し「はぁ、とりあえずこれで帰るか」
〜♪
名無し「吟遊詩人か。いいね、クリスマスソングってのもさ」
〜♪
名無し「おっ、姉ちゃん! 俺と結婚しない!?」
女「はぁ!? ワーカー呼びますよ!」
名無し「ひゃあっ、怖い怖い……うははは!」
女「何なのよもうっ!」
〜北方、川沿いの村〜
名無し「ふふんふ〜ん。ふふ〜」
ざざっ
名無し「――――!?」
タッタッタッタッタッ バンッ!
名無し「チクショウ!! おぉーい!!」
- 134 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:43:49.81 ID:6J84pd6zo
バタンッ! タッタッタッタッタッ……
名無し「魔王軍の連中か……っ。無事でいてくれ!」
タッタッタッ ズザァ
名無し「……はぁ……はぁ……はぁっ」
オーガ「……あ? 何だぁテメェ――」
ザシュウウゥゥゥゥ!!
オーガ「オ……オ……オガガ」
ドサッ
名無し「人が居ただろ。そいつら……どうした」
ワーウルフ「オーガ……一撃で……っ」
名無しどうしたかって聞いてんだよぉ!!」
ズバシュウウゥゥ!! ドシャッ
ゴブリン「ななっ、何人かは食ったけど……あとは知ら――」
ザシュッ!!
名無し「…………っ」
- 135 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:44:52.90 ID:6J84pd6zo
カランッ
名無し「冗談……だよな……」
ふらっ よろよろよろ……
名無し「……紅茶、買って来たんだぜ」
かちゃっ そ〜っ
名無し「……?」
少女「……おじさんっ!?」
名無し「お……おぉ……っ!!」
少女「おじさーん!!」
たったったっ だきっ!
名無し「無事だったかぁ!! ったく、心配したぜおい……!!」
少女「少年くんがこの家に隠れてろって。助けてくれたのっ」
名無し「……?」
少女「このおうちの人っ! いっつも助けてくれるんだよ!」
そろーっ てくてくてく
- 136 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/25(日) 20:45:26.98 ID:6J84pd6zo
名無し「……おう。もう出てきていいぜ」
少年「ひっ!」
名無し「お前さんが助けてくれたんだってな。この子」
少年「……っ」
少女「少年くんも一人ぼっちでね、それで……」
少年「いきなりっ、魔物が来て……っ! 僕、慌てて少女ちゃんと隠れてえぇ!」
名無し「おーおー。怖かったな、もう安心していいぞ。魔物はみ〜んな逃げてったぜ」
少女「良かったぁ〜。おじさんも無事?」
名無し「おう。剣の腕前を披露するまでもなかったわ。うはははっ!」
少年「おじさんの剣……なんか、かっこいいね!」
名無し「そうか?」
少年「十字架みたい。おじさん……強いの?」
名無し「いんや。おじさんは貧乏ワーカー。ビックリするくらい弱い」
少女「そうなの? なんだ、てっきり強いのかと思った」
名無し「弱い弱い。だから少年っつたか? お前がこの子を守ってやってくれよ!」
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