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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その39
199 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:13:18.62 ID:chZD5UReo
エリート「……おい、奴は今……何と言った……?」

召喚士「スーパームーンが……つ、次の満月……!?」

ベルゼブブ「理解したか? 余が無駄だと申した事を」

魔道士「そんな……そんな……っ」

青年兵「もしそれが本当ならば、世界はあと数週間で……」

ベルゼブブ「運が悪かった。いや、宿命であったのだろうな」

召喚士「……っ」

ベルゼブブ「魔王の討伐なぞに乗り出し、事実上、魔族の支配を阻止した」

盗賊「……」

ベルゼブブ「結果としてサタンは地上の支配に興味を失い、破壊へと移る」

東方司令「……くっ」

ベルゼブブ「サタンが復活し、スーパームーンが訪れる……それは即ち、世界の終焉」

ジュニア「じゃあ、俺達のやってきた事は何だったってんだよ……」

ベルゼブブ「だから申したであろう? 無駄な事をしなくば、多少なりとも長生き出来たものを」

大軍師「はたしてそうでしょうか」


200 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:15:13.01 ID:chZD5UReo
ベルゼブブ「……?」

大軍師「確かに貴方の仰る事、正論ですね」

ベルゼブブ「余は嘘はつかぬ。これは虚言でもなければ冗談でもない」

大軍師「ええ、そうでしょうね。だからこそ貴方は手を抜いて戦ってらっしゃる」

ベルゼブブ「……」

大軍師「その気になれば、城ごと吹き飛ばすなど造作もないというのに」

ベルゼブブ「申したであろう、余は無駄な争いは好かぬ。手間であるからな」

大軍師「そのようで」

ベルゼブブ「理解したのならばもう終いにしておけ。余が見逃してやると申しているのだ」

大軍師「勘違いなされておられませんか?」

ベルゼブブ「何?」

大軍師「私達は戦いを止めませんよ」

ベルゼブブ「愚かしい事だ」

大軍師「愚かではありませんよ。まだ敗北したわけではありませんから」

ベルゼブブ「それは認めよう。しかし残りはたったの数週間だ」


201 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:17:07.09 ID:chZD5UReo
大軍師「その限られた時間で、サタンを倒せば宜しいでのしょう?」

ベルゼブブ「ハッハッハッハ。余にすら敵わぬ貴様らが、サタンを倒すと?」

大軍師「はい」

ベルゼブブ「残り僅かの日数で?」

大軍師「はい」

ベルゼブブ「ハッハッハッハッハ……笑わせるのも大概にせよ」ゴウッ

大軍師「本気ですよ。少なくともあの方は」

ベルゼブブ「……」

大軍師「私もスーパームーンやスーパーノヴァの存在は今、初めて存じ上げました」

ベルゼブブ「……」

大軍師「しかしあの方にはもしかしたら、見えていたのかもしれませんね」

ベルゼブブ「何を申しておる」

大軍師「だからこそ、五か年計画という特別な、限られた日数を打ち出したのでしょう」

 ザッザッザッ……

大軍師「……ですよね?」


202 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:18:12.49 ID:chZD5UReo
 ザッザッザッ……ザッ

天才「……ハーッハッハッハッハ!!」

召喚士「天才さんっ!!」

天才「テメーがベルちゃんかい。いやー残念だわ」

ベルゼブブ「……」

天才「まさか俺様、最後の相手が蠅とはなぁ。ハーッハッハッハ!」

ベルゼブブ「まさかこれが、貴様等の待った最後の希望とでも言うのか?」

召喚士「ああ、そうだ!」

ベルゼブブ「取るに足らぬ。まるで魔力を感じぬではないか」

天才「あ?」

ベルゼブブ「この程度の人間に何が出来ると言うのだ。失望したぞ」

天才「何だとこらぁ」ザッ

女隊員「傷に障るッスよ……!」

天才「うるせぇ」

召喚士(天才さんっ、怪我してるのか……!?)


203 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:18:55.88 ID:chZD5UReo
 ザッザッザッ

天才「テメーこそ、ガッカリだぜ」

ベルゼブブ「……」

天才「北の恐るべき魔王、ベルゼブブ。どんなモンかと思ったら……」

ジュニア「あ……いつっ、余計な挑発を……」

天才「期待外れにも程がある。ったく、急いで損したぜ」

ベルゼブブ「ならば本当に期待外れか、試してみるか?」

天才「上等っ!!」

 ザッ

天才「と、言いてぇところだが」

ベルゼブブ「何ッ!?」

ケツァルコアトル「っりゃああああぁぁぁぁー!!」

ベルゼブブ「――ッ!!」

エリート「あれは……っ、陛下の聖剣!?」

ケツァルコアトル「ようやく得た。ベルゼブブ、てめぇを倒す手段をなぁ!」


204 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:19:35.71 ID:chZD5UReo
ベルゼブブ「……ッ」バッ

天才「逃がさねぇよ」

 ドドオオオオォォォォン!! ビキキッ……ピシイイイイィィィィ

ベルゼブブ『氷――』

召喚士「駄目だっ!!」

魔道士「!?」

召喚士「肉体は戦士なんだっ! そんな力を使っては――」

盗賊「戦士!!」

ケツァルコアトル「安心しなよ」

 フワァ

召喚士「!?」

ケツァルコアトル「肉体は借り物でも、精神は俺なんだ」
戦士『な、何だってんだ……っ?』

ケツァルコアトル「長々と借りて悪かったな、返すぜ」
戦士『――っ!?』

召喚士「え……っ?」


205 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:20:09.29 ID:chZD5UReo
 一同には、はっきりと見えた。戦士から飛び出す男の姿を。

 右手に皇太子、いや……かつて聖王が握りしめていた聖剣を、

 左手には運命の分岐に翻弄され、魔族と化したゲーデの魔剣。

 男は金色に輝きながら、ケツァルコアトルの姿を失っていた。

名無し「おおおおぉぉぉぉ!!」

ベルゼブブ「――――」

 キイイイイィィィィン

  両者の脳裏にあの日の出来事が蘇る。雨の降るクリスマスだった。

 名無し(……な、何だ……この気配……っ)

  ズゴゴゴゴゴゴゴ……

 名無し(振り向けねぇ……っ! 声も……出せないだとぉ!?)

 ベルゼブブ『我が部下を悉く一撃か。大したものだな』

 名無し『――――!?』

 ベルゼブブ『そうだな、褒美をくれてやるとしようか』

名無し「振り向く事すら許されぬ程の圧倒的な力の差だったよなぁ」


206 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:20:59.97 ID:chZD5UReo
  キュイイイイィィィィ……

 ベルゼブブ『この村に、大切な人間が居るのだろう?』

 名無し『……め……ろっ』

 ベルゼブブ『安心せよ。余は慈悲深いのだ』

  イイイイィィィィ……

 ベルゼブブ『村の人間は生かしてやる。代わりに、貴様の命を頂こう』

 名無し『……んだよ』

  グググッ

 ベルゼブブ『ん?』

 名無し『な、んだよ……っ。そんな……安いモンで……いいんかよ』

 ベルゼブブ『余と目を合わせて正常で居られるとは、大した精神力だな』

 名無し『俺の命と引き換えに……アイツら助けて……くれるんだな……っ』

 ベルゼブブ『二度も言わせるな。余は慈悲深いと申したであろう』

 名無し『……そうか……良か――』

ベルゼブブ「何だ……ッ? 腹の奥底が熱い……」


207 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:21:48.31 ID:chZD5UReo
  ブツッ

 ベルゼブブ『……見えるか? これが貴様の心臓だ』

 名無し『…………』

 ベルゼブブ『美味とは思えぬが、確かに頂いたぞ』ゴクン

 名無し『…………』

 ベルゼブブ『では、メリークリスマス』フッ

 名無し『……――』ザシャッ

  しとっ しとしとしとっ

 名無し『――――』

  しとしとしとしと……

名無し「あの日、てめぇに食われた心臓が暴れてやがるのさ」

ベルゼブブ「戯言をッ」ブワッ

名無し「!?」

天才「逃がさねぇって言ってんだろうが!!」ダンッ!!

男隊員「っ!!」


208 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:22:25.97 ID:chZD5UReo
 凍りついたベルゼブブは無理矢理、その包囲を打ち破ろうと内部から発火する。

 そして細かい粒子のような鱗粉へと再び姿を変え、その隙間からの逃亡を図った。

 しかし、それを察知した天才がいち早く、魔王の下へと跳躍していた。

 ズバッシュウウウウゥゥゥゥ!!

ベルゼブブ「――ッ」

 天才の放つツヴァイハンダーの強烈な一撃がベルゼブブの逃亡を阻止する。

天才「……っ」ズザザアアァァ

ベルゼブブ「こ……の――」

天才「譲ってやるよ……ここは、な」

名無し「おおおおぉぉぉぉ!!」

 〜♪

名無し「――!?」

 聖剣と魔剣。光と影、その2つが交差する時、全ての力が解放される。

 その男だけではない。彼を支えた数々の仲間、友人、そして主。

 彼らに背中を押されながら、男の幻影は光の中へ融け込んでいった。


209 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/05/25(金) 18:31:17.75 ID:chZD5UReo
なぜサタンが出たのでしょう…何だか笑えなくなってきました
ここ最近疲れが取れなくて……などと言い訳はしない!!
今日もご支援サンクスでした!それではまた!!ノシ


217 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/27(日) 23:30:13.94 ID:CzJadUCao
 キイイイイィィィィン……

ベルゼブブ「な……んだとぉッ!?」

名無し「てめぇにも見えてんだろ?」

ベルゼブブ「あ、有り得ぬ……ッ。こんな、こんな事は……」

 蝿の姿と粒子は半透明に輝き、徐々に人型へと変化する。

 いや、自分の意志とは別に人型へと強制的に姿を変えさせられたのだ。

名無し「なぁ、見えてんだろ? 俺の周りによぉ」

 戦士の肉体が剥がれ落ちるように、地上へと落下する。

召喚士「戦士っ!!」

 ガシィ!! ズダッ

召喚士「大丈夫!?」

戦士「……っぐぅ。あ……いつは……っ?」バッ

召喚士「あそこだよ。でももう……」

戦士「……っ」

 金色に光る男とその周囲に現れた人影は、魔王を捕らえた。


218 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/27(日) 23:30:48.43 ID:CzJadUCao
 キイイイイィィィィン……

名無し「俺の周りに、仲間達の姿が見えんだろ!! あぁ!?」

ベルゼブブ「何だというのだ……この力は……ッ」

名無し「執念だよ」

ベルゼブブ「執念?」

名無し「死してなお、てめぇを倒す為にずっと待ってたんだよ」

ベルゼブブ「そんな事は有り得ぬッ。決してな」

――『とうとうこの日が来たんですね、隊長』

名無し「ああ。長らく待たせちまったな」

――『お主の働き、誠に天晴れかな。勇者かな』

名無し「――っ!!」

――『さぁ、最後かな。共に行こうかな』

名無し「……最後まで、お供致しまする…………陛下」

ベルゼブブ「離せッ、離さぬか」

――「陛下と隊長の為に、露払いじゃ!」


219 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/27(日) 23:31:23.18 ID:CzJadUCao
 キイイイイィィィィン……

名無し「さぁ、行こうぜ」

ベルゼブブ「!?」

 ガシガシッ グイッ

ベルゼブブ「無礼者めがッ、離さぬか」

――「言ったろうがっ。陛下と隊長に道を作るのが、俺らの役目」

名無し「ありがとよ。でも、ここまででいいぜ」

ベルゼブブ「こ、んな……下等な連中に……」

名無し「これで……終いだぁ!!」

召喚士「!?」

名無し「……ありがとな、召喚士……うははっ――」

召喚士「ケツァルコカトル!!」

 ガッカアアアアァァァァ!!

戦士「う……お……っ!!」

召喚士「……っ!!」


220 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/27(日) 23:32:07.53 ID:CzJadUCao
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

エリート「……や……った」

大軍師「素晴らしい……戦いぶりでしたね」

青年兵「ええ……っ」

 紛れもない五行の光。轟音はやがて静寂へと変わる」

魔道士「ついに……倒したんですね」

召喚士「……」

盗賊「本当に、倒したのだろうか」

魔道士「えっ?」

召喚士「天才さん」

天才「俺様の予言が外れたってか?」

皇太子「しかし、魔王は現にこうして消滅を……」

天才「見ろよ」

召喚士「!?」

天才「鱗粉が城の下層部へ流れてやがる」


221 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/27(日) 23:32:43.84 ID:CzJadUCao
東方司令「どういう……事だ?」

天才「終わりじゃねぇって事だろ?」

女隊員「でもっ、魔王の肉体は消滅したッスよ!?」

格闘家「……まさか」

天才「ああ。あくまで消滅したのは肉体だ」

ボス「!?」

召喚士「本当のベルゼブブはまだ……存在する!?」

天才「そういう事」

戦士「じゃあ、アイツは無駄死にだったってのかよ!? えぇ!!」

天才「無駄じゃねぇよ。今の一撃があったから、ようやく辿り着けたんだ」

大軍師「……では」

天才「行くぜ。ベルゼブブの本当に本当の最後を決めにな」

魔道士「……っ」

天才「念の為に言っとく。手を出すのは俺様1人。お前らは……いいな?」

召喚士「……」


222 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/27(日) 23:33:30.47 ID:CzJadUCao
ドドオオォォォォ……

名代「あの光は……!?」

帝「終わったのか?」

王子「かもしれない。だが、皆が戻ってくるまでは決して終わりではありませんよ」

帝「そうであったな」

師匠「五行の光……っ。アイツら、大丈夫なんだろうな」

マジシャン「天下無敵の天才様が付いてんだろ? 心配はねぇさ」

師匠「……だといいがな」

 ドドッドドッドドッ

左翼長「……?」

北関兵「こちらは輸送隊だ! 指揮官はおられるかぁ!?」

騎士長「こっちだこっち!」

局長「武具は……もう要らんみたいだな」

左翼長「せっかくのところ悪いが、そのようだ」

鍛冶娘「あの、大軍師様は?」


223 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/27(日) 23:40:29.76 ID:CzJadUCao
騎士長「あの中さ。もうじき戻ってくるんじゃないか?」

左翼長「ヤローに何か用か?」

鍛冶娘「あ、いえ。荷物を預かっていたもので」

騎士長「荷物?」

博士「医療物資もきたのら! 急いで一夜城へ運ぶのら」

助手「りょ〜かいっ♪」

青龍士官「これで何とかなったな」

白虎長「だといいけどね。さ、私達の帰還しましょ」

白馬騎士「……どうなされた? 行きましょう」

魔法剣士「先に行け。俺はまだ、ここにいる」

三男「……?」

魔法剣士「まだいなきゃいけないような気がするんだ」

白馬騎士「しかし、貴殿も怪我が……」

魔法剣士「いいから行け。俺の事は構うな」

白馬騎士「……ご無理なさらぬよう。皆の者、一夜城へ帰還するぞ!」ザッ


228 名前:NIPPERがお送りします(埼玉県) [sage] 投稿日:2012/05/28(月) 02:15:06.71 ID:VixOg7Ok0
最後の最後で名前間違えられるとかケツァルさん可哀そす


230 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/05/28(月) 04:53:02.39 ID:Wf9wJgcDO
肝心なとこで間違えるとはこれだから脇役はダメだな



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