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少女「治療完了、目を覚ますよ」 セカンド −オリジナル小説
203 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:21:09.59 ID:r7F99T890


まだ空が青く見えていた頃。

まだ、全てに色がついて見えていた頃。

俺はあの子の手を握り、
握り返された力に対してそっと微笑んだ。

時折このようなビジョンを見る。

時折。

このような、夢ではない記憶を見ることがある。

目の前の骸骨を見つめて、圭介は静かに言った。

「もう俺の前に現れるな。君は死んだんだ」


204 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:21:39.67 ID:r7F99T890
骸骨は笑った。

ケタケタと音を立てて。

そして崩れて落ちた。

圭介は立ち上がり、服の埃を払った。

白い病院服以外何も纏っていない。

夢の中か……そう思って息をつく。

何が起こったのか思い出そうとするが、
頭の中が何かに引っ掻き回されたようにぐちゃぐちゃで、
思い返すことが出来なかった。

これは、おそらく……。

誰かのスカイフィッシュと戦闘した後の様だ。

灰色に見える世界の中で、圭介は周りを見回した。


205 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:22:11.54 ID:r7F99T890
全てが色をなくしたかのように、灰色だ。

町並みだった。

圭介と汀が住んでいる東京都八王子の町並みだ。

人が行きかっているが、それらは圭介が、
まるでいないかのように横を通り過ぎていく。

(俺の夢世界の中で目を覚ましたのか……)

自分の夢の中で目を覚ますという矛盾。

誰しもが一度は体験したことがあるだろう。

半覚醒と自分たち医者は呼んでいるが、
そんな状態になった時、一番危険なのが、
スカイフィッシュ、つまり悪夢との遭遇。

対抗手段を持たない場合、致命的になり、
自分の夢に食い殺されてしまう危険性も高い。


206 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:23:02.54 ID:r7F99T890
しかし圭介は、気にしていないかのように首の骨を鳴らし、
小さくため息をついて歩き出した。

「榊(さかき)?」

後ろから声をかけられ、圭介は足を止めた。

そしてゆっくりと振り返った。

数十メートル離れた場所に、一人だけ色がついた女の子が立っていた。

圭介と同じような病院服。

長い赤茶けた髪の毛をくゆらせ、にこにこと微笑んでいる。

圭介は彼女に向き直ると、行きかう人々の中で口を開いた。

「……真矢(まや)、君は死んだんだ。
もう、俺の夢の中には出てこないって、約束したじゃないか」


207 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:23:43.99 ID:r7F99T890
「死ぬ? 死ぬってどういうこと?」

真矢と呼ばれた女の子は、ニコニコしながら足を踏み出した。

圭介がそれを見て、一歩後ずさる。

「私みたいになること? 記憶の断片になること?
それとも……忘れ去られてしまうこと?」

謎かけのように、ポツリポツリと問いかけ、少女は足を止めた。

そして息をついて圭介を見る。

「どうしていつも逃げるの?
榊、私のこと、嫌いになっちゃったの?」

「違う。君の事は絶対に助け出す。
だけど、それとこれとは話が別なんだ」

圭介はそう言って歯を噛んだ。


208 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:24:16.39 ID:r7F99T890
「……ここは、俺の夢の世界で、君がいていい場所じゃない。
分かってくれ、真矢。君の優しさは俺を殺す」

「あなたの言っていることは難しくて、私よく分からない……」

真矢は悲しそうな顔を伏せ、そして足元の小石をつま先で蹴った。

「折角榊が困ってるから、私の力を貸そうと思ったのに」

「やめろ。誰も、君に助けてほしいなんて言ってないぞ」

「榊はいつもそう。図星を突かれると慌てるんだ。
困ってるんでしょ、今? なら、私の力が必要じゃない?」

圭介は押し黙り、そしてまた一歩後ずさった。

「すまない。真矢。今は……君の相手をしてる場合じゃないんだ」

そのままきびすを返し、圭介は反対方向へ走り出した。


209 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:24:55.03 ID:r7F99T890
真矢は一瞬呆然としたが、
すぐに顔を歪めると右手を圭介の方に伸ばした。

「逃さないよ、榊」

彼女の右腕がボコボコと泡立ち、次いで、
肘の部分から先が溶けて飛び散った。

そこから凄まじい勢いで渦を巻いた黒い水が噴出する。

水は辺りの人を巻き込んでゴウッ、と回転すると、
周囲の建物や車を飲み込んで、それでも尚増え続け、
圭介に向かって巨大な津波となって襲いかかった。

「真矢……」

圭介は立ち止まると振り返り、自分に向かって
覆いかぶさってくる津波を見上げ、そして絞りだすように言った。


210 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:25:23.93 ID:r7F99T890
「……また来る」

彼は右手を広げて意識を集中させると、パンッ、と地面を叩いた。

地面に光が走り、真っ黒い鉄の扉がアスファルトの上に
横たわるように出現する。

圭介はその扉を無理矢理引き開けると、
その中の漆黒の空間に体を踊らせた。


211 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:25:53.28 ID:r7F99T890


★Karte.16 無理だな★




「ドクター高畑、聞こえますか?
聞こえたら視線を横に動かしてください。
私の声が、聞こえますか?」

機械の音。

点滴台。

薄暗い天井の照明。

白い壁、白い天井。

そして、静かだが耳に障る女性の声。


212 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:26:34.16 ID:r7F99T890
「ドクター高畑?」

「……うるさいな……」

苛立ったように呟き、かすれた声で圭介は続けた。

「聞こえてる」

「良かった……体に異常を感じませんか?」

「…………」

それには答えずに、圭介は少し離れたところに停まっている
車椅子の上で眠っている汀と小白、
そしてぼんやりとした表情でソファーに腰掛けながら、
頭にヘッドフォンをつけて3DSのゲームをやっている理緒を見た。

理緒の顔には、ゾッとする程表情がなかった。

それを感情の読めない瞳で一瞥してから、
圭介はベッドの上に体を起こそうとして、右足の痛みに思わず呻いた。


213 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:27:08.58 ID:r7F99T890
彼をベッドに押し戻しながら、ジュリアが慌てて言った。

「あなたの右半身にはまだ麻痺が残っています。
精神がスカイフィッシュに斬られています。
いくら回復速度が異常とはいえ、まだ動かない方が懸命です」

「……戻ってくるんじゃなかったよ」

そう呟いて圭介はベッドに体を預け、クックと笑った。

「また戻ってきた。俺の意思には関係なく」

「…………」

ジュリアが少し沈黙してから立ち上がり、
圭介にシーツをかけてから問いかけた。

「何か飲みますか?」

「今何時だ?」


214 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:27:46.52 ID:r7F99T890
「先ほど夜の八時半を回りました」

「汀をベッドで寝かせろ。その子はデリケートなんだ」

「汀ちゃんの心配ですか?
いえ、『道具』のお手入れというわけですか?」

ジュリアに冷淡な目で見られ、圭介はそれを鼻で笑った。

「それがどうした?
何だ、汀を壊したら、お前が責任をとってくれるとでも言うのか?」

「この子はそう簡単には壊れませんよ。もう大人ですから」

「違うな。まだ子供だ。これまでも、これからもな」

含みを込めてそう吐き捨てると、
圭介はジュリアを瞳孔が開いたような目で見た。

「理緒ちゃんはどうした?」


215 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:28:22.87 ID:r7F99T890
「予定通り、重度の心神喪失状態ですが、生命活動に異常はないわ。
マインドスイーパーの能力も良好。
あなたが目覚める一週間前に、特A級スイーパーに昇格してる」

「そうか」

どうでもよさそうにそう返し、圭介はこちらを一瞥もせずに
ゲーム画面を見つめて指を動かし続ける理緒を見た。

そしてまたジュリアを見て繰り返す。

「汀をベッドで寝かせろ」

「……分かったわ。そうせっつかないで」

頷いてジュリアは汀を抱き上げると、
少し離れた場所に設置されていた簡易ベッドにそっと寝かせた。

点滴台を移動させ、彼女の身体に毛布をかけるところまでを確認し、
圭介はそこでやっと息をついた。


216 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:28:54.45 ID:r7F99T890
「状況は?」

「……テロ活動は停止しているわ。
でも、日本中のマインドスイーパーが治療を自粛している流れが広がってる。
自殺病患者の死亡数が、ここ3日で過去二年の死亡記録を上回ったわ。
赤十字病院に対するデモも起きてる」

「いいことだ。供給過多な人口が減る。
赤十字も、この機会に馬鹿な一般大衆への対応を考えればいい」

「それが医者の言葉ですか」

呆れ返ったように言い、ジュリアは小さく呟いた。

「変わりましたね……私の好きだったあなたはもう……榊君……」

「俺をその名前で呼ぶな、アンリエッタ」

「……お互い様ではないですか?」

「…………」


217 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:29:39.54 ID:r7F99T890
どこか淡々とした、冷たい調子で返した
ジュリアを無視し、圭介は続けた。

「変異亜種は?」

「まだ現れていないわ。
機関は、この隙に多数の自殺病患者を治療するために、
ナンバーI(ワン)システムを起動することを決めたわ」

「何?」

大声を上げた圭介に驚いたのか、緩慢な動きで理緒が顔を上げる。

それを横目で見ながら、圭介はジュリアに詰め寄った。

「機関は何を考えてるんだ! 元老院は何を言ってる!」

「使えるものは使うというのが、今回の元老院と機関の決定よ。
あなたがどうこうできる問題じゃないわ」

「お前……!」


218 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:30:21.02 ID:r7F99T890
ジュリアの服を掴み上げようとして、
圭介が体の痛みに顔をしかめ硬直する。

「それでよくのうのうと機関に尻尾を振っていられるな……!」

「…………」

叱られた子供のように、ジュリアが圭介から視線を離して下を向く。

圭介は歯を噛んで畳み掛けるように言った。

「自分に都合が悪い話になると聞かなかったフリをするのは
昔から治ってないな。腐った癖だ」

「……あの事件は……悪かったと思ってる。
あなたと……真矢ちゃんと、健吾君。私が全部悪かった。
悪かったと思ってる……」

「…………」

かすれた声で絞りだすように呟いたジュリアに、圭介が押し黙る。


219 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:31:03.97 ID:r7F99T890
「だから、だから機関の派遣要請を受けたの。
あなたにもう一度会うために。
榊君、私を許せない気持ち……
私と、健吾君に対する憎しみはよく分かるわ。
でも、健吾君はもう……それに、真矢ちゃんも……」

「アンリエッタ!」

圭介が大声を上げる。

理緒が顔をしかめて3DSから視線を離し、
ヘッドフォンを頭から降ろして首にかけた。

そして圭介に抑揚が感じられない声をかける。

「あぁ、高畑先生、生きてたんですか……」

「……理緒ちゃん……?」

彼女の異様な雰囲気に、
原因は分かっているものの、圭介は戸惑った声を発した。


220 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:31:52.52 ID:r7F99T890
「動かないから死んだと思ってました。
良かったです。私、あんまりお金持ってないので」

「……心神喪失にしては感情の起伏がなさすぎるな。
ちゃんと薬は与えてるのか?」

押し殺した声で囁いた圭介に、ジュリアは小さな声で返した。

「ええ。治療段階で精神の汚染が進みすぎていたと考える他ないわ」

「高畑先生、それよりこれ見てください。
汀ちゃんに言われてポケモンやってたんですけど、
この先に進む方法が分からないんです」

そう言って立ち上がり、3DSを差し出した理緒と
圭介との間に割って入り、ジュリアは彼女を押しとどめた。

「片平さん、高畑先生は今起きたばかりで、
ゲームが出来る状態じゃないの。
自分の部屋に戻ってもらえるかな?」


221 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:32:29.98 ID:r7F99T890
「嫌です。私は汀ちゃんと一緒に遊ぶんです」

はっきりと拒否の声を発し、理緒は歪んだ、
良く分からない表情で微笑んでみせた。

「……私まだ眠くないので」

「汀さんにはさっき薬を投与したの。
落ち着いて聞いて。あなたにもお薬をあげる。
よく眠れるお薬よ。だから、今日はもう寝ましょう?」

「……嫌です。私は汀ちゃんと一緒に遊ぶんです」

さっきと同じセリフを繰り返し、
理緒は面倒くさそうにジュリアを睨んだ。

「邪魔をするんですか?」

「邪魔をしているわけじゃないの。片平さん、落ち着こう?」

「私は落ち着いてます」


222 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:33:08.49 ID:r7F99T890
そこで圭介は、長袖から除くジュリアの細腕が
痣と引っかき傷だらけなことに気がついた。

よく見ると、化粧に隠されているが顔にも傷がついている。

「説得しても無駄だ。GMDの三十五番を投与しろ。早く」

右手で3DSを持ちながら、左手でジュリアの腕を
掴もうとした理緒を見て、圭介は声を上げた。

そこでジュリアがハッとして、逆に理緒の腕を捻り上げる。

小さく悲鳴を上げた理緒の首に、ジュリアはポケットから出した
小さな注射器の、一ミリにも満たない針を突き刺して、
中身を流し込んだ。

問答無用の行動だった。

「……私に何をしたんですか!」

理緒が首を抑えながら後ずさる。


223 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:33:46.87 ID:r7F99T890
彼女は忌々しそうにジュリアを見て、繰り返した。

「そこをどいてください。私は汀ちゃんと一緒に遊ぶんです!」

「聞く耳を持つな。精神崩壊した人間を説得しても無駄だ」

圭介が上半身を無理矢理に起こしながら口を開く。

「精神崩壊?」

理緒が怪訝そうに繰り返して圭介を見た。

「私がですか?」

「他に誰がいる?」

「私は正常ですよ。異常なのは高畑先生の方じゃないですか?」

あっけらかんとそう言われ、圭介は一瞬言葉に詰まって理緒を見た。

「……何?」


224 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:34:16.34 ID:r7F99T890
「ですから、異常なのは私ではなく、あなただと言っただけです」

理緒はニィ、と笑って続けた。

「異常者に異常者扱いされたくありませんね。心外です」

「片平さん……! 高畑先生はあなたの命を救った恩人ですよ!」

咎めるようにジュリアが声を荒げる。

理緒はそれを聞いてケタケタと笑うと、
小馬鹿にするように彼女に言った。

「何ですか? あなたとは話していません。
それとも昔の男の前で格好つけたくなりました?」

ジュリアの顔から血の気が引いた。

「……何ですって?」

「あら? 図星でした?」


225 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:34:50.08 ID:r7F99T890
「聞いてたのね……この子!」

思わず手を振り上げたジュリアの目に、
理緒が不気味な無表情でクローゼットを開け、
自分のバッグを開いたのが映った。

「ちょうどいいや。これ買ってきたんです」

ずる、と理緒が嬉しそうに中から肉切り包丁を取り出したのが見えた。

「エドシニア先生、生きてる人間ブッ叩いたらどんな感触なのかな?
教えて下さいます?」

挑発するように包丁をゆらゆらさせた理緒を見て、圭介が歯噛みする。

「……お前はどんな管理をしてるんだ」

呆れたようにジュリアに向けて呟き、
圭介はため息をついてから理緒に言った。


226 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:35:24.10 ID:r7F99T890
「医者に刃物を向けるとは何事だ。
少なからずとも、君も医者の端くれだろう。
それとも、単なる快楽殺人者に堕落したいのか?」

「でも先生、人を殺すってすごく楽しいんですよ?
知らないんですか?」

「知らんな」

冷たくそう返し、圭介は左手を伸ばしてベッド脇の
緊急ナースコールのボタンを押した。

数秒も経たずに、バタバタと足音が聞こえて黒服の
SPと白衣の看護師達が病室に駆け込んでくる。

彼らは理緒を見て一瞬ギョッとしたが、さすがに対応が早かった。

すぐに理緒はSP達に取り押さえられ、壁に押し付けられた。

「離してください……! 離して……」


227 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:35:50.32 ID:r7F99T890
そこで、声を上げた理緒の体から、
いきなり力が抜けて、彼女はグッタリとその場に崩れた落ちた。

「……効果が確認できるまで二分三十秒か。
かかりすぎだ。もっと強い三十六番を投与しろ」

「で、でも……この子の脳細胞が……」

「それで殺されたら元も子もないだろう!」

圭介に怒鳴られ、ジュリアが小さくなる。

圭介は小さく咳をすると、近くの看護師に言った。


228 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/11/05(月) 19:36:29.63 ID:r7F99T890
「その子は私がいいと言うまで部屋から出さないでください。
心配ない、出れないと分かれば静かにしてる。
拘束することはできないから、私の名前を使って至急元老院から
マインドスイーパー管理用のSPを四人雇ってください。
その子の身の回りの世話をさせます」

頭を下げて下がった看護師を見送り、
圭介は連れ出される理緒からジュリアに視線を戻した。

「……呆れてものも言えないな」

「…………」

唇を噛んだジュリアに、彼はかすれた声で続けた。

「大河内を呼んでくれ。話がある」



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