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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その35
- 548 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2012/01/09(月) 23:14:55.52 ID:DbpxrRZ7o
〜竜宮城。一階〜
夜行「しつこい野郎だねぇ」
隊長「いけええぇぇ!!」
槍侶「おおおおぉぉぉぉ……」
夜行「魔羅様っ、夜行がまずいでっせぇ」
マーラ「仕方ないねぇ」スゥッ
火忍「させっかぁ!」
マーラ「邪魔よぉ!!」
バチィ!!
火忍「ぐあ……っ!」
風忍「一人では無理だっ、全員であたれぇ!」
盗賊「はあぁっ!」
マーラ「ほっほっほ。アタシ相手に、ちょいと人数が少ないんじゃあないかい?」
グオッ!!
盗賊「――っ!?」
- 549 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/09(月) 23:15:58.26 ID:DbpxrRZ7o
マーラ「そのまま、吹き飛んじまいなっ!」
ゴゴオオォォォォ!! ドカアアァァァァ!!
マーラ「……何?」
――「疾風……怒涛っ!!」
ゴガアアァァァァ!!
マーラ「くっ」
盗賊「……!!」
ズザァ
影忍「立てるか」
盗賊「兄様っ!」
風忍「若……っ!」
影忍「すまん、遅くなった」
マーラ「……アタシの顔に……傷を……ッ」
ゴゴゴゴゴゴ……
マーラ「許さない、許さないよオオォォ!!」
- 551 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/09(月) 23:17:40.65 ID:DbpxrRZ7o
ゴアッ!! キュイイイイィィィィ……
ヤタガラス「ア、アカンッ! 堪忍――」
マーラ「消し飛びなァ!!」
カッ!! ズッドオオオオォォォォン!!
盗賊「くあぁーっ!!」
火忍「姫ぇ、ぐあ……っ!!」
西方参謀「しま――」
バゴオオォォォォン!! ドガガアアァァァァ!!
南方参謀「隊長っ! あぁ……っ!」
ゴシャア!! ドドドドオオォォォォ
ヤタガラス「……あーあ、城が崩れちまったぁ」
影忍「無事か!?」
土忍「こっちは……何とか」
南方参謀「隊長と槍侶クン、それに夜行ってのも一緒に、更に下に……」
東方参謀「まずいな。前門の虎、後門の狼……か」
マーラ「ほっほっほ。ちと、やりすぎたかしらねぇ」
- 552 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/09(月) 23:18:29.67 ID:DbpxrRZ7o
ドドドドドド……ズドオオォォォォン!!
戦士「な、何だぁ!?」
女隊員「天井がっ!」
ゴシャアアァァァァ!! ゴトゴトゴトッ!!
男隊員「お、おいっ! いま落ちてったのって……隊長じゃねぇか!?」
格闘家「天井……それに床にも穴が開いています!」
青年兵「まだ落ちてきますよ!」
ドザザァ!!
水忍「……ぐくっ」
鬼丸「水忍じゃねぇか!」
水忍「鬼丸……っ、それに……」
マーラ「ほーっほっほっほ!! そらそらそらぁ!!」
戦士「な、なん……」
ビュオッ!! ズザザァ
盗賊「……くっ」
- 553 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/09(月) 23:19:03.72 ID:DbpxrRZ7o
戦士「盗賊!!」
盗賊「……戦士……っ」
スタッ
影忍「魔王だ! くるぞっ!」
戦士「――!?」
マーラ「地下にも忍び込んでたのかいっ、鼠がっ!!」
女隊員「隊長はっ!? 隊長は……」
西方参謀「夜行に捕まってる! 助けに行ってくれ!」
男隊員「やっぱそうかよっ、くそ!」
格闘家「特遊は隊長の救援に向かわせて頂きます!」
青年兵「お願いします! 出でよ、ワイバーン!」
バシュウウゥゥゥゥ
戦士「鬼丸ぅ! 魔王退治だ、行くぞ!」
鬼丸「おうよっ!!」
マーラ「おやおや、妖までいるのかい……っ!」
- 554 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/09(月) 23:20:30.10 ID:DbpxrRZ7o
ガラガラガラッ ドシャァ
隊長「……が……ふっ」
槍侶「……く、くくっ」ヨロッ
夜行「しつこいねぇ、いい加減」
隊長「何があっても……離さねぇぞ」
夜行「たったの二人だ。この機を逃すと思うかい?」
グゴゴゴゴッ ズズウウゥゥゥゥ
隊長「何する気かしらねぇが……俺の土行から逃げられると思うなよおぉ!!」
ガシィッ!! ゴガガガガッ!!
夜行「ぬ……っ」
隊長「槍侶ぉ、動けるよなぁ! だったら……早く!」
槍侶「……御意」スクッ
夜行「ハアアァァァァ!!」
隊長「ぐおぉ……ああぁぁぁぁ!!」ガシィ!!
槍侶「いきますっ!」
夜行「蛇みたいに……しつこい野郎だねぇ!!」
- 555 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/09(月) 23:21:38.33 ID:DbpxrRZ7o
〜剣聖の屋敷〜
神野「……ヒャーッハッハッハッハ!!」
ゴゴゴゴゴゴ……
帝「次は……」
名代「蛇ですね」
神野「……ヒャーッハッハッハ!」ヌロォ
魔道士「――っ!!」
神野「この姿により、我が毒と骨ごとへし折る締め付けで――」
魔道士「きゃああぁぁ!!」
キュイイィィィィィ
神野「なっ!?」
魔道士「気持ち……悪いですっ!!」
ドッドオオオオォォォォン!! ゴアアアアァァァァ!!
神野「ぐああ……ぁ!!」
魔道士「あっちに……いけええぇぇーっ!!」
- 556 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/09(月) 23:22:58.94 ID:DbpxrRZ7o
ドッドオオオオォォォォン!! ガカアアアアァァァァ!!
サル「な、なんつぅ魔法の威力だよ……っ」
イヌ「とてつもないね……っ!」
女侍「こりゃ、そのまま終わりだねぇ。はははっ!」
神野「この私が……攻撃に転じる暇もないとは……っ!」
ドッグオオオオォォォォン!! ゴシャアアァァァ!!
魔道士「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
サル「嬢ちゃん、お見事だっ!!」ビシッ
魔道士「えっ? あ……っ」
帝「瞬殺であったな……」
名代「素晴らしい限りです」
神野「……まさか、我が力も此処まで及ばないとはねぇ。ククッ」
名代「次は……龍ですか」
帝「厄介そうだな」
神野「ご名答。さぁ、お見せ致そうかぁ!!」
- 557 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/01/09(月) 23:36:45.04 ID:DbpxrRZ7o
今度こそ今日はおしまいなのじゃ!
連休中もご支援ありがとうございました!それではまた明日!ノシ
〜オマケ〜
しばしの間、バーテンの店で世話になる事となった戦士父とマジシャン。
マジシャン「しっかしまぁ、オッサン3人で店を切り盛りなんて誰得な話だよ……」
戦士父「そうか? 俺はリハビリになって丁度いいぞ」ドサッ
マジシャン「お前は右手ほとんど使えないけどあるでしょ? 俺はないの」
戦士父「だから力仕事は俺がやっているだろう」
マジシャン「いーや、ここは売り上げを伸ばす為の抜本的改革が必要だ」
戦士父「……?」
〜後日〜
青龍士官「……親父……カフェ?」
ボス「なんスかここは?」
青龍士官「いや、確か初代特遊の隊長が居ると聞いたんだが……」ガチャッ
バーテン・マジシャン・戦士父「いらっしゃいませ〜」ムア〜
青龍士官「野太い……」
白虎長「……いや……アリね」
白虎嬢「!?」
- 558 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/01/09(月) 23:42:37.09 ID:LiJqqasco
これはファンにはたまらない組み合わせだろ
- 565 名前:NIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2012/01/10(火) 02:06:13.04 ID:Tb5DUeUAO
>>1おつ
ユニコーンは成長したし処女じゃなくても回復してくれるようになってくれるといいが
- 567 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/01/10(火) 06:52:25.74 ID:B7F/UbcDO
成長したつっても引っ込めたらリセットかかるんじゃね?
でなけりゃ今後、力が売りのスフィンクスはヨボヨボでどうやって活躍するんだ……
- 568 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage] 投稿日:2012/01/10(火) 07:00:08.45 ID:sK1pUhk8o
はふる〜ぱぁーんひ(入れ歯が取れた)
- 572 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:23:29.27 ID:De8Td8COo
〜竜宮城、地下〜
隊長「……ぐ……っぬ!!」
夜行「ぬうぅ……ッ」
槍侶「……ふーっ」
チャキッ
隊長「そうだ、行け! そのまま……突き放てぇ!」
槍侶は大きく吸った息をぴたりと止め、草履を脱ぎ捨てて両膝を軽く曲げると、
重心を置いた右足のつま先部分をとんと、軽く前へ蹴りだした。
一歩、二歩、隊長に拘束されている夜行の身へと近づく。
止めた息をふっと、一度吐き出すと、右手を大きく身体の背面へと回した。
声は発さない。ただ残る息を全て吐き出すと同時に、右手を前へ。
その手に握られたゾディアックが、螺旋状を描き、空を切り裂いた。音は何も無かった。
ただ真っ直ぐに、ゾディアックは夜行の頭部へと導かれる。まるで磁石に引かれるかの如く。
槍侶は全ての息を吐ききった。隊長は笑っていた。ゾディアックは、夜行の頭部を貫いた。
音が再び始まった。妖を貫いた鈍い音が響いた。槍侶は笑う事は出来なかった。
- 573 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:24:27.31 ID:De8Td8COo
ザシュウウウウゥゥゥゥ!!
夜行「ゴ……ウオオォォ……ッ!!」
槍侶「……っ」ザザッ
隊長「見事……っ!」
夜行「オ……オオ……オオォォォォ!!」
ブチブチブチィ!! ドッヴォオオォォォォ!!
隊長「――!?」
タッタッタッ ズザァ
男隊員「な……んだこりゃあ!?」
格闘家「泥? いや、少し違う……っ」
女隊員「あれを見るッスよ!」
男隊員「!?」
夜行「アオオオオォォォォ!!」ググググッ
格闘家「変化しているのかっ、泥が……形を造り出しているっ」
女隊員「隊長ーっ!?」
- 574 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:26:48.69 ID:De8Td8COo
隊長「こ……の野郎っ!!」
ゴガガガガアアァァ!!
夜行「オオオオォォォォン!!」
隊長「コイ……ツ! ナメんなぁ!」
ガヴォンッ!!
槍侶「隊長殿っ!!」
男隊員「取り込まれた! くそっ、。救助――」
隊長『構うな。このまま……討て』
男隊員「……!?」
隊長『奴の核が……見えてるはずだ』
格闘家「核……? あ、あれか……っ!?」
黒い泥のような影の中に取り込まれた隊長は、必死で土行を続け、夜行を拘束する。
その隊長が囚われた前面に、馬の顔がぼんやりと浮かび上がっていた。
隊長『これこそ夜行の核だ……っ。俺が動きを封じているうちに……討てぇ』
女隊員「でもそれじゃあ……隊長がっ!!」
- 575 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:27:49.43 ID:De8Td8COo
隊長『……いいんだ』
格闘家「……?」
隊長『分かったんだ。俺はもう……死んでいる』
男隊員「何……言って……」
隊長『いや、分かっていて……認めなかっただけなのかもな』
女隊員「隊……長……?」
隊長『そうだ……俺は西方での戦いで……既に……』
男隊員「何を言ってるんだアンタは!! 実際っ、今だってっ、生きているだろうにっ!!」
夜行「オオオオォォォォォォ!!」グゴゴッ!!
隊長『く……っ、まだ動けるのかよ……!』
ゴガガガガガガッ!!
槍侶「土が……妖を覆って……」
女隊員「隊長ぉ! やめるッスよぉ! そんな事したら隊長まで……」
隊長『槍侶っ、討て! 今度こそ……トドメを刺してくれ!』
女隊員「隊長おおぉぉーっ!!」
- 576 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:28:40.00 ID:De8Td8COo
そういやネクロマンサーの奴……あんな事をヌカしてやがったなぁ……。
ネクロマンサー『大人しくラボで施されれば、苦しまずに済んだものを……』
あの時、俺の命はきっと、終わったんだろうなぁ……。
――こんなところで果てたら、末代までの恥さね。
そうそう。そしたら、変な女の声が耳元で囁いたっけか……。
西方参謀『あれだけの攻撃を食らいながら出血もねぇとは……奇跡だな』
そりゃそうだよなぁ……。魔王イブリースの攻撃食らって……出血もねぇなんてある訳ねぇよ。
イブリース『腹を貫かれて、血も出さぬとは』
魔王様ですら驚いてたくらいだ。結局は、信じたくなかっただけなのかもな……俺自身がよ。
隊長『あれだけの攻撃を食らって起きながら、生き長らえてんだからな』
あー。思い出した、あのクソ司令……さては気付いてやがったな……くそっ。
隊長『今にも死にそうじゃねぇか……。どれ、肩につかまって下さい』
天才『ハーッハッハ、てめぇこそ死にかけたくせに言いやがるぜ』
ガシッ…ピキイイィィン!!
天才『……っ』
- 577 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:29:16.23 ID:De8Td8COo
隊長『どうしました?』
天才『……いや、何でもねぇ。いいぞ』
隊長『……?』
ほんと正確悪いぜ。言ってくれりゃあ……いいものをよ……。
バチィッ!!
男隊員『何の音だ?』
格闘家『……隊長、どうしました?』
隊長『ん、ああ……。何でもない』
塔に張られた結界に入れなかった。本当はあの時、分かっちゃあいたんだ……。
だからこそ隊長は、特遊には断じて許されない、自己犠牲に基づいた行動を執っていた。
己の身を犠牲にしてでも夜行を拘束する。そして1番の不可思議な点は、編制。
特遊のメンバーと離れ単身を選んだ。青年兵の立案した編制ではない。
隊長は悟っていた。そして心に決めていた。この戦いで終わりを迎えようと。
ネクロマンサーの操り人形と化すくらいならば、消滅して、死を受け入れようと……。
- 578 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:30:06.83 ID:De8Td8COo
……――
〜竜宮城入り口、少し前の事〜
隊長「なぁ」キョロキョロ
青年兵「……?」
隊長「編制の件だけどよ、どう考えてる?」
青年兵「……戦士さんと盗賊さんを離したくはないのですが」
隊長「組ませられねぇのか?」
青年兵「……事情が……ありまして」
隊長「藤蔵か。さてはお前、司令から……」
ザッザッザッ
男隊員「隊長、ちょっと来てくれ。この城壁なんだけどよ」
隊長「すぐ行く」
青年兵「特遊は戦士さん、鬼丸さんと地下へ」
隊長「お前は?」
青年兵「槍侶さん、各参謀さんらと正面を行きます」
- 579 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:30:38.72 ID:De8Td8COo
隊長「悪いがその役目、代わってくんねーか?」
青年兵「え……っ?」
隊長「今回は特遊の連中と組みたくねぇんだ」
青年兵「……どういう事ですか?」
隊長「ん、ああ。術士が少ない編制だからよ、連中を助けてやって欲しいんだ」
青年兵「まぁ確かに、その方がバランスは取れますが……いいんですか?」
隊長「連携も重要だが、今はどの連中と組んでも遜色ないだろ。勝てる編制が理想だ」
青年兵「……分かりました。それではお言葉に甘えさせて頂きますよ」
隊長「おう。絶対勝って、本国に戻ろうぜ」
青年兵「ええ。女将さんも待ってますよ」
隊長「……そうか、そうだよなぁ」
男隊員「おら、クソ隊長! 早く来いってんだよ!」
隊長「あの野郎……。ま、そういうわけで頼んだぜ」
青年兵「はい」
――……
- 580 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:31:59.97 ID:De8Td8COo
ゴガガガガガガッ
格闘家「隊長……っ」
女隊員「隊長おおぉぉ!!」
隊長「……隊……長っ」
隊長『なのにあのバカ共と来たら……これだよ』
夜行「ゴ……ガカ……ッ!!」
槍侶「岩で……閉ざされた……っ」
隊長『槍侶ぉー!!』
槍侶「!?」
隊長『場所は見えたはずだぁ!! このまま……貫けええぇぇ!!』
男隊員「待て! 他に……他に手があるはずなんだよっ!!」ダッ!!
格闘家「……っ」
男隊員「てめえらっ、何をボサっとしてやがんだ! 早く岩をブチ抜けぇ!」
女隊員「隊……長ぉ……」
男隊員「泣いてる場合じゃねぇだろうがぁ!! 早くしろって……言ってんだよおぉ!!」ドガァ!!
- 581 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:32:55.71 ID:De8Td8COo
格闘家「……くっ」
バゴォ!! パラパラッ
女隊員「破れるわけ……ないじゃあないッスかぁ……っ」
格闘家「……隊長の土行は……中途半端な攻撃では無理です」
男隊員「諦めんなよぉ! 隊長が……終わっちまうんだぞ!」
ドロォ……ズググッ
槍侶「くっ! 妖の本体が漏れ出している……っ」
隊長『もう時間がない、決めてくれ』
槍侶「……皆様方っ、誠に申し訳御座りませぬ!!」スッ
男隊員「待て待て待て……おい、待てよ……何やってんだよ……なぁ」
槍侶「……ふーっ」チャキッ
男隊員「んな事したらよぉ……隊長がっ、隊長まで……」
槍侶「……滅!!」ヒュバッ!!
男隊員「隊長まで死んじまうだろうがよおおぉぉーっ!!」
カッ!!
- 582 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:33:31.33 ID:De8Td8COo
……――
隊長『……』
思えば、副隊長の内通を見抜けず、ましてや死に追いやったあの日から、俺は死んでいたんだ。
隊長職を辞任し、軍をぬけるつもりでいたのに……何でだろうなぁ。
そうそう、戦士の奴が稽古付けてくれとかヌカして、一番槍の息子だって分かって引き受けて。
気が付いたらすぐ傍の火焔山で牛魔王が暴れて、いつの間にか元の鞘ってやつだよ。
多分、そこから今までがずーっと……オマケの命だったのさ……。
だから泣くなよお前ら……。俺は感謝してるんだぜ?
ゆっくりと死んで行くだけだった俺の心は、生き返ったんだ……お前らのお陰でな。
――『そうさ。あんたには仲間が居た。だからここまでこれたんだ』
隊長『……ああ、あんたか』
――『あたしにはなーんにも残らなかった。だからずーっと一人だってさね』
隊長『悲しいねぇ。そいつは……悲しいよ』
――『でも、あんたみたいな子孫が居てくれた。感謝するよ』
隊長『こっちこそ感謝するよ。お陰でちょっとだけ生き長らえた。ありがとよ……砂漠の魔女――』
- 583 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:34:27.91 ID:De8Td8COo
――……
ゾディアックの軌道は、少しのブレもなく、ただ真っ直ぐに螺旋を描いて投擲された。
音はやはりない。響き渡るのは男隊員の叫び声と、夜行の咆哮のみであった。
槍が土の壁に突き刺さる瞬間だけ、全てを拒む岩が道を譲るかのように軟らかくなった。
男隊員「隊長おおおおぉぉぉぉ!!」
バスッ!! ズズズズッ
女隊員「…………」
格闘家「…………」
槍侶「…………」
ボロッ ゴトゴトゴトッ……ドドオオォォォォ
槍侶「……御免あれ……っ」
全身全霊の一撃を放った槍侶は、その場に力なく膝を付いた。
格闘家「……」スッ
ゾディアックを拾い上げて渡す格闘家。その時、岩壁より突如、轟音が響き渡った。
男隊員「……あ……っ」
- 584 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/10(火) 17:38:13.80 ID:De8Td8COo
ゴガアアアアァァァァ!! ドッヴォオオォォォォ!!
槍侶「な――っ!?」
格闘家「……逃げ」
あふれ出す黒い泥のような夜行の本体とも言うべきもの。
槍侶と格闘家は崩れ落ちる岩場を縫うように脱出を図る。
男隊員は、ほぼ放心状態のまま、岩壁のすぐ傍に座り込んでいた。
女隊員は男隊員の右腕を、引き摺るかの様に抱えて叫んでいた。
その時、突如として冷たい土の壁より黒い影のような、夜行の本体とも言うべきものが溢れた。
二人を襲う瓦礫と崩れ落ちる地面。あっと言う間に両者は姿を消した。
脱出口を目指す格闘家と槍侶もまた僅かのうちに、為す術なく、暗い闇へと姿を消した。
ズガガアアアアァァァァ!! ゴトゴトゴトッ……ドドオオォォォォ
槍侶「……ぐ……くっ」
格闘家「が……ぁ……」
女隊員「……っ」
男隊員「た……い……ちょ……」
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