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召喚士「出でよ!!可愛い獣娘!!」
1 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/05/17(木) 21:17:38 ID:679Oh/b6
事の始まりは狭苦しい一室からだった。

窓は天井近くの壁に開けられた小さな四角い穴だけ。そこから見える空の色は黒く染まっている。

空気が淀んだ部屋。灯りは床に並べられた蝋燭の小さな炎だけ。

仄かな灯火の下には星が描かれている。

薄汚れた長いコートを着た男はその絵の外側に立ち、黙していた。

置物と見紛うほど男は身動ぎ一つしない。ただ時折、彼の双眸だけが暗闇の中で小さく動く。

そろそろ時間か、と呟く声が室内に響いた。

風が吹くことのない場所で、蝋燭の火が揺れる。

男はゆっくりとコートの中に隠れていた右腕を動かし、描かれた星へ手のひらを翳す。

数年の歳月をかけて練り上げた言の葉を告げる。

するとただの絵だったそれは常闇に輝く星のように光を帯びた。

淡い光は瞬く間に光度を増し、部屋を白色に染め上げる。

数刻の後、光明は霧散し、男は眩しさのあまり閉じていた瞼を持ち上げる。

「ここはどこ?」と獣が唸る。

光の中から現れたのは剛毅な四足を持ち、黄金の鬣を揺らす猛獣と呼ぶに相応しい者だった。


2 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/05/17(木) 21:40:09 ID:679Oh/b6
男は膝から崩れ落ちた。僅かに呻き声にも似た嘆きも漏れていた。

部屋の中央に毅然とした態度でいる獣は、不思議そうに薄暗闇になった自身の居場所を見渡した。

先ほどまでいた大平原とは違う。狭く、劣悪な臭いが染み付いた場所。獣にとってここは最も唾棄すべきところなのだと察した。

瞬時に変化した自身の環境。見えざる外敵に神経を研ぎ澄まさなければならない。

そうすること数秒、獣はふと肩の力を抜いた。こんな嫌悪しか抱くことのないところに来てしまったのは不幸でしかない。

とはいえ獣にとって一つだけ幸運なことがあった。ここには自分に害を為す者はいない。

異なる場所に来て敵がいないのは素直に喜ぶべきだろう。未知の相手に自身の牙がどれほど役に立つのか測ることはできないからだ。

獣はその場に腰を下ろした。視線を落とすと左前足の毛並みが気になったので、豪放なその舌で毛づくろいを始めた。

また、そうすることで獣は気分が落ち着いていくのを感じた。

すると、今まで気づかなかった存在が目に入った。その者は卑小で、眺めるにも値しないような者だった。

獣は卑下するような目を男に向ける。

「ここはどこですか?」

そう訊ねるも、男は蹲ったまま何も答えない。

獣は右前足を男の背中に乗せ、揺すってみた。それでも反応はなく、呻いているだけだった。

「なんて失礼なヤツだ」と獣は見限り、体を伏せた。


3 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/05/17(木) 22:04:33 ID:679Oh/b6
しばらくすると寝息が聞こえてきた。

男は顔を上げる。やはり部屋にいるのは獣。人型をした獣ではなく、歴とした野獣である。

豪腕の四足に黄金の毛並み、湿っているからなのか少し光沢がある鼻頭。

そしてなにより、猛獣特有の巨大な口。人の腕など簡単に食いちぎることができる牙がその中に納められているのだろう。

この狭小な部屋では到底飼育など望めるはずもない獣類がここにいる。

「こんなはずでなかった」

男は奥歯をかみ締め、表情を恨事によって歪ませる。

すぐに返還しようと決意し、男は立ち上がった。

召喚者にはその権限と責任がある。呼んだ以上はいつか返さなくてはならない。

それが召喚士の掟。

先ほどと同様に右手のひらを翳し、呪文を唱える。

何度も繰り返したこと。失敗することはまずない。呪文を間違えることなど考えられない。

なのに、眼前の獣は退屈だといわんばかりに大口を開けて、欠伸をした。思ったとおり、大木であろうと穿てるほどの刃が生えている。

男は狼狽する。何故、この獣を返すことができないのか。失敗なら失敗なりの手ごたえがあってもいいはず。

すべてが空を切った。何もないところを殴ったに等しいほど、彼の返還術は何の反応も示さなかった。


4 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 00:29:40 ID:eEQ8rGA2
召喚士「………」

……「……zzz」

召喚士「何故なんだ……」

召喚士「……間違える筈無いのに」

召喚士「………」

召喚士「もう一度だ……」

召喚士「幻想の彼方より来たりし者よ……うつし世から幻想の地へいざ送り出さん!」ババッ!

シーン……

召喚士「………」

召喚士「グゥ……いったい……」


5 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 00:52:27 ID:eEQ8rGA2
召喚士「………」

……「……グワゥ……zzz」

召喚士「駄目だ……返還術が発動しないなんて……」

召喚士「……こんな者……喚んだつもりは無かったのに」

召喚士「………」

召喚士「そうだ……こいつはほっおってもう一度喚ぶか……」

召喚士「………」

召喚士「常世の声を聞こえし幻想の者よ……その姿現さん!」ババッ!

シーン……

召喚士「……あれ?」

召喚士「召喚陣も反応しなくなってる……」

召喚士「何故……」

……「……zzz」

召喚士「………」


6 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 01:02:01 ID:eEQ8rGA2


召喚士「………」

……「悪足掻きは終ったか?」

召喚士「………」

……「ふん……」

召喚士「……喚んでない」

……「ああ?」

召喚士「お前なんか喚んでいないのに何故ここにいるんだッ!」

……「知るか」

召喚士「くっ……帰れよッ!」

……「……還せばいいだろ」

召喚士「還せないんだよ……何故なんだよ……クソッ!」

……「……ならば貴様は死ぬな」

召喚士「………」

……「聞こえなかったか?私を還せぬようなら死ぬぞ?」


7 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 01:14:30 ID:eEQ8rGA2
召喚士「………」

……「………」

召喚士「は?意味がわからない……」

……「……死ぬと言うのはこの世に魂を留めておけぬ事を言う」

召喚士「そこじゃ無いッ!何故俺が死ななければいけないんだッ!」

……「……お前は召喚者なのだろ?」

召喚士「そうだ……それが……」

……「……召喚した者を留めておくのに必用な物は?」

召喚士「魔力だろ……それぐらい知ってる!」

……「ならば……私を召喚し、還せぬならどうなる?」

召喚士「魔力が尽きる……だから?」

……「魔力尽きた後は?」

召喚士「……知らない」


8 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 02:25:26 ID:eEQ8rGA2
……「そんな事も知らずに召喚など……まぁいい……」

召喚士「………」

……「魔力が無いなら代わりの物を消費し続ける事になるな」

召喚士「……代わりの物?」

……「貴様の命……」

召喚士「………」

……「命と言うのは寿命など

召喚士「余計な説明はいい……」

……「そうか……」

召喚士「………」

……「………」

召喚士「……どうすれば……どうすればいいんだッ!」

……「知らぬ」

召喚士「………」


9 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 03:53:16 ID:eEQ8rGA2


召喚士「………」

……「人間というのは面白いものだな。足掻き諦めた時、そのような顔をする」

召喚士「……こんな筈じゃ……無かったのに」

……「………」

召喚士「お前なんか……喚んで無いのに……」

……「こうしている間にも無駄に魔力を消費しているな」

召喚士「………」

……「クククッ……」

召喚士「悪魔め……笑うな……」

……「悪魔か……そうかもしれぬな。天使を五匹程喰ろうてやったからな」

召喚士「………」


10 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 04:26:30 ID:eEQ8rGA2
……「グワッフゥ……今一度眠りに……」

召喚士「……待てッ!」

……「……なんだ?」

召喚士「………」

……「………」

召喚士「俺は……どうすれば助かる……?」

……「私を還せばいい」

召喚士「それは聞いたッ!……もっと別の方法は無いかと聞いているんだッ!」

……「………」

召喚士「………」

……「……私と契約し使役するか?」

召喚士「……嫌だ」

……「ならば死ね」


11 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 16:20:59 ID:eEQ8rGA2
召喚士「………」

……「私は貴様がこのまま死のうが契約しようが……どちらでも構わぬが」

召喚士 (こんな奴と契約なんて……)

……「………」

召喚士「契約するのなら……何か対価が必用なんだろ……」

……「そうだな」

召喚士 (こいつ……人間と喋れるし上級の化物に違いない……)

……「………」

召喚士 (きっと……とんでもない物を選んでくるぞ……)

……「対価か……」

召喚士「………」

……「………」


12 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 16:36:49 ID:eEQ8rGA2


……「どうする?」

召喚士「せめて対価が何なのか教えてくれ……」

……「……貴様の左腕ではどうだ?」

召喚士「………」

……「良い条件だと思うが」

召喚士 (左腕……だけ?確かに死ぬよりかはましだけど……)

……「さぁ……死か左腕か選べ」

召喚士「………」

……「……早くしろ」

召喚士「……?」

……「………」

召喚士 (早くしろって何だ?……何かおかしい)

……「………」

召喚士「………」


13 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 20:32:21 ID:eEQ8rGA2


召喚士 (こいつ……何か隠してるな……)

……「どうした?」

召喚士「………」

……「………」

召喚士「……決めた」

……「そうか。ならぱ私の名を……」

召喚士「このままでいい」

……「……あ?」

召喚士「このまま……俺の魔力も命も尽きるまで付き合ってくれ」

……「……ふざけているのか?」

召喚士「別に……お前とは契約したくないと思っただけ」

……「………」

召喚士「………」


14 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 21:54:19 ID:eEQ8rGA2
…… (この破格の条件で何が不満なのだッ!死と左腕……比べるまでも無いだろうが人間ッ!)

召喚士「……お腹空いたなぁ」

……「くっ……おい、真面目考えたのか?」

召喚士「………」

……「何か答えろ……」

召喚士「んー?いいだろどっちだっていいだろ?お前に損は無いんだから」

……「そ、そうだが……」

召喚士「………」

……「グルルゥ……」

召喚士「脅しか?……死ぬ人間にそれは無駄だろ」

……「……ガァッ!」

召喚士 (やっぱり……何か隠してる……)


15 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 22:35:47 ID:eEQ8rGA2
……「………」

召喚士「……そんなに契約して欲しいのか?」

……「………」

召喚士「お前……上級の魔物だよな?それが俺ごときに使役されてかまわないと……」

……「話してやる……その代わり契約しろ」

召喚士「………」

……「……なんだ?」

召喚士「それが物を頼む態度かよ……なぁ?」

……「ググッ……人間……」

召喚士「ふふふ……どうせ俺が死ぬって言うのも嘘なんだろ?」

……「それは本当だ」

召喚士「………」


16 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/17(日) 23:57:35 ID:eEQ8rGA2


召喚士「……で、天使を喰って追われていると」

……「そうだ。元々あちらが悪いのだが……」

召喚士「へぇ……」

……「天使め……私を使い勇者候補を抹殺しようなどと……」

召喚士「……勇者候補?」

……「ああ……女神が選定した勇者候補だな。訳あってその事は流れてしまったけどな」

召喚士「……それは天使を喰ったのと関係ある?」

……「まぁな。天界を

召喚士「それ以上はいいや……聞きたく無い」

……「そうか?私の武勇伝に加わりそうなエピソードだぞ?」

召喚士「………」

……「だから、私を匿うのに契約しろ」


17 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/18(月) 00:56:40 ID:3rURYDTI
数レスしか読んでないけど面白そうな予感
エタられたらガッカリするのでレス数が100超えたら一気に読む
乙乙


18 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/18(月) 01:18:18 ID:Oqxd0A8o
召喚士「そんな話聞いて契約なんて出来るか……」

……「何故だッ!」

召喚士「俺まで追われる事になるんじゃないのか……?」

……「……そのような事は無い」

召喚士「ちゃんとこっち見て言えよ……」

……「………」

召喚士「………」

……「大丈夫だ。その為にお前の左腕を代償とするのだからな」

召喚士「意味がわからない……」

……「……お前本当に召喚者か?魔力の事といい……物を知らな過ぎでは無いのか」

召喚士「それは……うん……あれだよ」

……「……?」


19 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/18(月) 14:00:46 ID:Oqxd0A8o
召喚士「いいだろ別に……それよりもだ!……お前と契約した場合俺の左腕はどうなるんだ?」

……「……特に変わった事はしない。私が匿える……もとい、宿る召喚器を装着してもらうだけだ」

召喚士「………」

……「はぁ……召喚器と言うのはだな、悠久の源を再現し幻想世界の一部を武具に昇華させたクドクドクド……」

召喚士「ま、まて!」

……「……なんだ?」

召喚士「もっと簡単に……お願いします……」

……「………」

召喚士「ごめんな……」

……「いい……その程度知識で召喚しようなど……」

召喚士「………」


20 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/18(月) 16:24:29 ID:Oqxd0A8o
……「ようは私の住みかをお前の左腕に作るだけだ」

召喚士「……それで俺にどんな影響が出る?」

……「安心していい。他の召喚をい出来なくなるだけだ」

召喚士「………」

……「私を還せる程の魔力を有しているのならば話は別だが」

召喚士「あああぁぁ……俺の長年の努力が……」

……「………」

召喚士「こんな事で無駄になるなんて……」

……「無駄とは失礼だろ……」

召喚士「………」

……「まぁいい……召喚器とはこんな物だ。お前の左腕には然程干渉しなから心配無用だ」

召喚士「………」


21 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/18(月) 17:49:37 ID:Oqxd0A8o


……「さぁ私と契約を!グズグズしていると追っ手に気付かれてしまう……?」

召喚士「………」ズーン……

……「……時が立ち魔力も蓄積すればまた召喚も出来るようになる。元気を出せ」

召喚士「本当か?」

……「………」

召喚士「……黙るなよ」

……「安心しろ……大丈夫?だ……きっと多分……」

召喚士「確証なんて無いんじゃないか……」

……「こればっかりはお前次第だからな」

召喚士「最初っからそう言え……」

……「………」

召喚士「ほら……契約してやるから名前」

……「あ……ああ、そうだな」


22 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/18(月) 18:14:17 ID:Oqxd0A8o
召喚士「………」

……「私と契約しせし者よ……幻想の名をうつし世で語れ……」

召喚士「幻想の地に根を張る者よ!我にその名を教えよ!」

……「我が名は……ネメア!」

召喚士「……幻想と常世!今、ネメアと契約したり!」

ネメア、召喚士「………」

召喚士「……これでいいんだよな?」

ネメア「完了だ」

召喚士「そっか……意外と呆気ないんだな……」

ネメア「そうだな……」

召喚士「それにしても……ネメアって可愛らしい名前だな」

ネメア「………」


23 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/18(月) 18:42:44 ID:Oqxd0A8o


ネメア (こいつ……私の名前も知らんのか……)

召喚士「で?召喚器ってのはどうなるんだ?」

ネメア「説明するより見せた方が早いだろ」

召喚士「………」

ネメア「行くぞ?」

バシュンッ!……カキンッ!

召喚士「おお……いや、手甲になるのか……」

ネメア「そうだ。この状態ならば追っ手に悟られる事も無い」

召喚士「………」

ネメア「……不満か?」

召喚士「いや……そうじゃ無い」

ネメア「……?」

召喚士 (超格好いい……なんてこいつに言ったら調子に乗りそうだからな……)


24 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/18(月) 22:42:55 ID:Oqxd0A8o


召喚士「……なぁちょっといいか?」

ネメア「なんだ?」

召喚士「この召喚陣でお前みたいに偉そうな魔物を喚び出す事なんて出来るのか?」

ネメア「……はぁ……本当にお前は無知なのだな」

召喚士「無知で悪かったな……」

ネメア「何の為に召喚などしておるのかわからんが、お前は召喚について知識を身に付けた方がいい」

召喚士「………」

ネメア「そんなんでは早死にするぞ?」

召喚士「………」

ネメア「召喚獣や私みたいに契約して使役する時はどうするのだ?」

召喚士「それは……一匹の召喚獣を召喚するだけだったから覚えなかったんだ」


25 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/18(月) 22:56:07 ID:Oqxd0A8o
ネメア「ふむ……」

召喚士「……その召喚獣を喚んだらそれ以降は召喚もしないつもりだった」

ネメア「なるほど……」

召喚士「………」

ネメア「ならば私を使役するのだから色々と覚えなければな!」

召喚士「……ぇぇぇ……ぃぃょ」

ネメア「そんな小声で拒否しても駄目だ!お前と私の為だ!しっかり覚えろよ!」

召喚士「………」

ネメア「返事ッ!」

召喚士「あい……」

ネメア「……ったく。このような人間に使役される事になろうとはな!」

召喚士「………」


26 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/19(火) 00:58:58 ID:nEMIm5Ig


ネメア「まずは……あの召喚陣だったな」

召喚士「そうだね……」

ネメア「結論から言うと無理だ」

召喚士「ならなんでお前いるんだよ……」

ネメア「それは割り込んだからだな」

召喚士「……は?」

ネメア「いやぁ追っ手に追われている所に偶然召喚陣が現れて!」

召喚士「………」

ネメア「獣の小娘には悪いと思ったが私も危なかったし割り込まらせて貰った」

召喚士「………」

ネメア「本当、危ないところであった。うん」

召喚士「………」


27 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/19(火) 01:43:58 ID:nEMIm5Ig
ネメア「どうした?」

召喚士「お前……」

ネメア「……?」

召喚士「ふざけんなよッ!」

ネメア「ふざけてなどいない」

召喚士「俺の召喚成功していたんじゃないかッ!……ぐぁぁぁ」

ネメア「誰も失敗したなど言っていないだろ。それに……」

召喚士「うわぁぁぁ!こんな……こんな事ってえぇぇぇ!」

ネメア「……おい?」

召喚士「この召喚の為に何年費やしたと思ってるんだぁぁッ!」

ネメア「………」

召喚士「あの娘に会う為だけに頑張ってきたのに……こんな事って……」


28 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/19(火) 01:53:11 ID:nEMIm5Ig
ネメア「……は?」

召喚士「うぐぅ……うぅ……」

ネメア「……おい、まさかあの獣の小娘を喚び寄せるだけの為に召喚などしたのか?」

召喚士「そうだよッ!……おぉぅ」

ネメア「………」

召喚士「……うぅ」

ネメア「く、くだらぬ……」

召喚士「下らないとはなんだこの野郎ッ!」

ネメア「ただ会うだけの召喚など愚の骨頂ではないか……」

召喚士「逢うだけじゃないッ!ずっと側に……だな……」

ネメア「………」

召喚士「……その……何て言うか」

ネメア「………」


29 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/06/19(火) 02:05:03 ID:nEMIm5Ig
召喚士「一目惚れだったんだよ……」

ネメア「………」

召喚士「数年前に一度見た姿でもうな……絶対召喚してやろうって……」

ネメア「人間と言うのは下らぬ事に心血を注ぐというが……誠だったのだな……」

召喚士「下らなく無いッ!俺は……大真面目だったんだよッ!」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「……わからぬ。あの獣の小娘を召喚するより私を召喚した事の方が価値があるのではないのか?」

召喚士「……価値なんて無い」

ネメア「グガッ……」

召喚士「………」

ネメア「………」



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