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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その37
- 648 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2012/03/09(金) 18:33:03.03 ID:roqjBc9lo
〜六道門・畜生〜
オークキングは巨大な右拳を握り締め、その拳よりも小さな、
目の前のオークめがけて振り上げ、突き出す。
自分はオークの王である。その一族の最も下等たる者に鉄槌を。
そのはずだった。だが、何だろうかこの違和感、気配、感覚は。
やがてキングは恥じた。己がオルクスを名乗った事を。そして死んだ。
ゴッ……
キングの鉄球のような右拳がオルクスと名乗ったオーク触れた。全身ではない、
オークの突き出した左拳に触れた。つまり、互いの拳がぶつかりあったのだ。
キング「ヴァーッハッハッハッハアアァァァァ!!」
オルクス「ウオアアアアァァァァーッ!!」
メシャッ……
鈍い音がした。鉄球が水飛沫のように散乱する。オークの突きに押され、
キングの拳は捲りあがるかのように、瞬く間に砕けていったのだ。
ハヌマーン「オ……ク……ッ」
- 649 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/09(金) 18:35:31.64 ID:roqjBc9lo
ボゴォ……
オルクスに痛みが到達する前に、オークは拳を突ききった。
キングの巨体が宙に浮く。右拳は弾かれる事もなく、そのまま骨肉の全てを消失した。
キング「――――ッ!!」
オルクスはそのまま右拳を体の後ろへと引き、先程と同様、キングめがけ突き放つ。
腹部に接触すると、今度は自分ごとキングを後方へと大きく吹き飛ばした。
背後の障害物に到達するまでの間、キングの腹が徐々に空洞化する。
静かな水溜りに小石を落としたかのようにそれは外へ外へと描いてゆく。
やがてキングの背後に障害物が現れる。そしてぶつかる。激しい音が響き渡る。
ガッゴオオオオォォォォォォン!!
その瞬間、まるで隕石でも落ちたかのような、とてつもない衝撃が周囲を襲う。
オルクスの突きがようやく障害物、つまり六道門・畜生にぶつかる事で、
その力を放出先となったのであった。地面、城壁、そして門、全てがこの世から消えた。
そしてキングもまた、いつのまにかこの世から姿を消していた。
大衝撃音と土煙の中、いつもと少し表情の違うオークだけが歩いていた。
- 650 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/09(金) 18:36:11.89 ID:roqjBc9lo
ドドオオオオォォォォ……
同門「……」
紅孩児「……っ」
ハヌマーン「……オーク」
ザッザッザッ
オルクス「……」
粉塵を払う様子もなく、オルクスは左方をじっと見つめ、ポツリと呟く。
オルクス「自分が守ってきた門を、自分が開けるってのも皮肉なもんだよなぁ」
ザッ
オルクス「……なぁ、ケルベロスよ」
ドクンッ!! ギュオッ!!
オルクス「ウ……ッグ! ガハァ!」
胸を押さえながら突如苦しみだすオルクス。やがて全身より真っ黒な血を噴き出した。
ハヌマーン「オークッ!!」ヨロッ
オルクスは少しだけ微笑んだ後に意識を失い、その場に倒れた。
- 651 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/09(金) 18:36:38.15 ID:roqjBc9lo
〜六道門・地獄〜
魔獣「グルオアアァァッ!!」
ガブゥッ!! ゴガガガガガッ!!
オルトロス「ガハッ、ハァーッ……ハァーッ」
ケルベロス「……」
オルトロス「ハ、ハハッ。どうした? 下僕だからとて情けをかけているとそのまま死ぬぞ?」
ケルベロス「……」
オルトロス「大切な下僕を奪われて、戦意を失くしたかぁ!?」
ケルベロス「貴様を殺す事が目的だ。戦意? 馬鹿げているな」
オルトロス「殺す!? 馬鹿は貴様だッ! このままでは俺を殺しても貴様も――」
ケルベロス「ああ死ぬな。だがそれでいい。それが理想的だ」
オルトロス「!?」
ケルベロス「貴様と共に私も死ぬ。そしてこの理は揺るぐ事はない」
オルトロス「最初から……相討つつもりで……ッ」
ケルベロス「今更だな。もう手遅れだ、あとは静かに死を――」
- 652 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/09(金) 18:37:11.11 ID:roqjBc9lo
ザッザッザッ
ケルベロス「……?」
ザッザッザッ
ケルベロス「……お、お前……ッ」
魔法剣士「……」
オルトロス「……何だ人間ッ! 邪魔をするなアアァァ!」
魔法剣士「邪魔? 俺は最初から居た。お前を倒す為に戦っていたはずだ」
オルトロス「……何を」
魔法剣士「もし手を貸す事が卑怯だと思うならば、それは間違いだ」
オルトロス「何ィ……!?」
魔法剣士「今まで大勢の罪もない村を襲い、人々を殺してきた貴様に対する復讐だ」
オルトロス「……何だとぉ!!」
魔法剣士「因果応報。貴様が殺してきた人間の復讐を俺と……俺と――」
ケルベロス「……」
魔法剣士「俺と、眼鏡が貴様に代行しているものと思えっ!!」
- 653 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/09(金) 18:37:42.60 ID:roqjBc9lo
ケルベロス「……ッ!!」
魔法剣士「眼鏡、そういう事だ。お前1人で戦おうなどと思うな」
ケルベロス「何故……逃げなかった……ッ」
魔法剣士「……仲間だからだ」
ケルベロス「――ッ!!」
魔法剣士「お前は俺の、大切な仲間だからだっ!!」ジャキジャキッ
ケルベロス「魔法剣士……」
魔法剣士「お前が何者だろうと、魔物であろうとそんな事は関係ない!」
ケルベロス「……」
魔法剣士「お前は人間なんだ! お前のの心は、人間そのものなんだよ!」
ケルベロス「……ッ」
オルトロス「何が人間だッ! こいつはなァ……散々、人間をブッ殺し――」
魔法剣士「そうだとしてもっ、今は違う! 眼鏡は改めたんだ」
オルトロス「フザけるなッ」
魔法剣士「だからっ、人の姿をしているんだろうが!」
- 654 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/09(金) 18:38:09.32 ID:roqjBc9lo
オルトロス「そんなものはただの能力だッ。力でどうにでもなるわッ!!」
魔法剣士「では貴様は出来るのか?」
オルトロス「……何?」
魔法剣士「貴様も眼鏡と同等の力を自負しているのだろう?」
オルトロス「……ッ」
魔法剣士「その獣とて、同じ力だからこそ操れたのだろう?」
オルトロス「グ……ッ」
魔法剣士「だったら人間に化けてみろ!! どうだっ、出来るのか!!」
オルトロス「この……人間風情がアァ……ッ」
魔法剣士「出来るはずがない。何故なら、貴様は人間の心を知らないからな」
ケルベロス「……もう……良い」
魔法剣士「人間の心を、痛みを知らぬ貴様がっ、人間になど化けられるわけがない!!」
ケルベロス「もう良いのだ魔法剣士!」
魔法剣士「……?」
ケルベロス「もう……良いのだ……ッ」
- 655 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/09(金) 18:38:36.36 ID:roqjBc9lo
ドズンッ シュウウゥゥゥゥ……
魔法剣士「眼鏡……っ?」
ケルベロス「もう、終わりにしようではないか」
オルトロス「貴様ッ! 本当に相討つ気かァ!?」
ケルベロス「貴様も薄々気付いているのだろう? 既に逃げられぬ事をッ!」
オルトロス「ヌウウゥゥ……ッ」
ケルベロス「互いが互い喉下に食らいつき、決して逃げられぬ。攻めも守りも不可」
魔法剣士「……安心しろ眼鏡。俺が居る限りお前は――」
ケルベロス「そして、我が魔力は貴様の魔力と同調し、相殺し続けている」
オルトロス「続ければ、共に死は免れんぞ! その意味を貴様は分かっているのかッ!?」
ケルベロス「番犬の居ない地獄など、さぞ楽にゆけるであろうな」
魔法剣士「ど、どういう事だ……っ!?」
ケルベロス「魔力で生命を燃やしておるのさ。互いの生命をな」
魔法剣士「――っ!?」
ケルベロス「言ったであろう? もう良いのだ、とな」
- 656 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/09(金) 18:39:06.54 ID:roqjBc9lo
魔法剣士「まだだっ、まだ――」ザッ
ケルベロス「このまま共に、逝かせてくれ」
魔法剣士「駄目だっ!!」
ケルベロス「私はオルトロスの言う通り、人間を殺しすぎた。そして、魔族を殺しすぎた」
魔法剣士「……っ」
ケルベロス「その狭間で常に苛まれて、もがき苦しんだ」
魔法剣士「しかしっ」
ケルベロス「だからだろうな。人間にもなれず、魔族としても中途半端な存在だった」
オルトロス「な――ッ!?」
魔獣「……グ……ウウゥゥゥゥ」ドシャッ
ケルベロス「我らの魔力に飲み込まれ、息絶えておるのだ。先にな」
オルトロス「お……のれぇ……ッ!!」
ケルベロス「魔法剣士、退かぬと言うならば……お前が我らを討て!!」
魔法剣士「――――っ!!」
ケルベロス「私ともども、オルトロスを討ち、この門を開けるのだッ! 人々の為に!!」
- 657 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/03/09(金) 18:41:13.90 ID:roqjBc9lo
ひとまずここまで…またあとで来るつもりです!
毎度のご支援、本当にありがとうございます!
しかしこのスレのAA職人はお見事としか言い様がないな…
それでは残業に戻ります!ノシ
- 661 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/03/09(金) 19:51:43.08 ID:9n4btbWwo
>>1乙!
オーク、オルクス、キング
ごっちゃになって、今日は三回読み直したぜ…
- 679 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 20:46:59.46 ID:uBMkOTpKo
魔法剣士「……で、出来ないっ! 俺には出来ない!」
ケルベロス「お前なら出来る。出来るはずだッ」
魔法剣士「俺には……眼鏡っ、アンタを殺す事など出来ないっ!」
オルトロス「そうだッ! 人間にそのような真似が出来るはずがないッ!」
ケルベロス「いや、やるのだ。お前だからこそ出来るはずだ」
魔法剣士「あんたは俺の恩人なんだっ! それなのに……」
ケルベロス「お前は言った。これは人々の復讐なのだと」
魔法剣士「でもあんたは――」
ケルベロス「私はな、地獄の番犬と呼ばれている」
魔法剣士「……っ」
ケルベロス「地獄へ通じる門の番犬なのだ。それがこのケルベロスの役目」
オルトロス「そうだッ!! なのに貴様は、魔王を裏切って――」
ケルベロス「だからこそ分かる。お前の背後に、お前の背負った者らの魂が見える」
魔法剣士「っ!!」
ケルベロス「そして叫んでいるのだ。憎き魔物を倒せ、とな」
- 680 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 20:48:01.58 ID:uBMkOTpKo
オルトロス「出来ないッ! 出来るはずがないッ!!」
ケルベロス「オルトロス、貴様は人を知らぬ」
オルトロス「……何?」
ケルベロス「人は情に厚い。だからこそ出来るのだ」
魔法剣士「……」
ケルベロス「お前は強い。だからこそ分かっているはずだ、魔法剣士よ」
オルトロス「出来るものかァ!!」
ケルベロス「黙っていろ!!」ドガァッ!!
魔法剣士「……っ」
ケルベロス「私もオルトロスも、このままではどのみち助からぬ」
オルトロス「一緒にするなよッ、生きる術はある! 俺様はこんな所で死んでたまるかァ!」
グアッ!!
魔法剣士「――っ!?」
ライダー「……」ムクリ
ケルベロス「何ッ!?」
- 681 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 20:48:50.87 ID:uBMkOTpKo
オルトロス「さぁ撃て! 背後からケルベロスにトドメを――」
ケルベロス「させるものかアアァァ!!」
ゴウアッ!! ゴゴゴゴゴゴ……
オルトロス「き、貴様ッ! まだ魔力を……ッ」
ケルベロス「この命、尽きる前に……貴様も道連れだッ!!」
オルトロス「こ、このままでは……ッ」
ライダー「……」ザッ
カチャッ……ギリギリッ
ケルベロス「魔法剣士ッ、早くしろ! この私もろとも……オルトロスを討てぇ!!」
オルトロス「させぬさせぬさせぬッ!! 先に貴様を――」
ケルベロス「さぁッ、早くしろぉ!!」
魔法剣士「…………っ」グッ
ザッザッザッ……ジャキッ
魔法剣士「……分かった。俺は……討つ!!」
ケルベロス「そうだ、それで良いのだ。魔法剣士」
- 682 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 20:49:21.61 ID:uBMkOTpKo
ドドドドドド……
――どう足掻いても魔法剣五行に到達する事は出来なかった。
オルトロス「や、やめろ……ッ! 出来るわけがないのだ!」
――怒り、哀しみ、楽しみ、恨み。どうしても届かなかった。
ケルベロス「オルトロス、貴様だけは絶対に……離さぬぞッ」
――会得出来なかった木行。その感情は……喜び。
ライダー「……」カチャッ
――今なら、出来そうな気がする。眼鏡、お前が教えてくれたから。
魔法剣士「……魔法剣」
――お前と出会えた喜びを、俺は決して……。
魔法剣士「……五行」ズアッ!!
キュイイイイィィィィ……
ケルベロス「……ありがとう、魔法剣士」
ありがとう眼鏡。俺は君を……忘れない――――。
- 683 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 20:49:52.21 ID:uBMkOTpKo
魔法剣士の両手に握る剣が、金色に輝く。 それは即ち五行の光。
魔法剣士は今まで為し得なかった魔法剣五行をこの時まさに会得した。
涙はなかった。何よりも喜びが勝っていた。眼鏡と呼ばれた男との出会い。
ケルベロスと呼ばれた魔物に助けられたこの命。
それは運命か宿命か、魔法剣士にとて、そんなもんはどうでも良かった。
自分の人生のほとんどに影響したと言っても良い存在。それを今、失う。
しかしそれは哀しい事ではなかった。感謝で胸が一杯であった。
2匹の獣めがけ疾走する魔法剣士の前に、ライダーが姿を見せる。
部外者は黙っていろと言わんばかりに、魔法剣士は気迫を見せる。
その気迫の反動か、ドラゴンライダーは首のない体を後方へと飛ばされる。
その先にはオルトロスの背とその動きを封じるべく食らいつき、全身でしがみつく
ケルベロスの姿。2つの首はオルトロスの喉元に牙を突き刺している。
もう1つの首は既に目の色を失い、首を垂れていた。
それでもケルベロスは笑っていた。魔物とは思えぬ優しさで笑っていた。
それを見て魔法剣士も笑った。涙はない。涙の代わりに雨が降り注いでくれているから。
- 684 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 20:50:39.01 ID:uBMkOTpKo
ドッドオオオオォォォォ……
ケルベロス「討てええぇぇ!! 今こそ我が苦しみを……ッ」
魔法剣士「……っ」
ケルベロス「そしてッ、お前の仇を……ッ! 人々の無念を――」
金色に輝く五行の光は、いつもよりも優しく、暖かくみえた。
魔法剣士は両手を大きく広げ、2本の剣を高々と振り上げた。
相討ちになどさせない。自分とケルベロスの勝利を。その思いを一身に秘め、
魔法剣五行は鮮やかに振り下ろされた。光が広がった。
ガッカアアアアァァァァ――
オルトロス「――――ッ」
ケルベロス「そうだ、それで良いのだ……魔法剣士……」
魔法剣士「眼鏡……ッ、眼鏡ーっ!!」
五行の光が柱となって天へ上る。ケルベロスとオルトロスを連れて。
魔法剣士「…………っ」
自分の前に広がる光柱を見て、魔法剣士はようやく涙した。
- 688 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/03/10(土) 23:05:15.05 ID:M6Vy2SwYo
>>1乙
魔法剣士さんは流石主人公の一人だな…脇役は見習えよ
- 692 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/11(日) 00:10:36.68 ID:yYJt92M1o
ドッドオオオオォォォォ……
魔法剣士「……眼……鏡っ」ザッ
地面に膝をついた魔法剣士の体内に、徐々に激痛が広がる。
魔法剣士「……っ!!」ズキイイィィ!!
今までの戦闘で受けた傷に加え、単身、五行を放った反動である。
魔法剣士は肉体も精神も、既に限界に近い状態を迎えていた。
雨が急に冷たく感じた。今までは何ら気にもならなかったのに。
魔法剣士「…………」
足取り重くその場を後にしようとする魔法剣士だったが、
背後の物音に気付き、その足を止めた。そして振り返った。
魔法剣士「……?」
ザッ……ザッ……ザッ
魔法剣士「――っ!!」
そこに伏せていたのは紛れもなく人間の姿をした男の姿。
魔法剣士「……眼鏡っ!!」
- 693 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/11(日) 00:11:37.68 ID:yYJt92M1o
ダダッ!! ザッ
魔法剣士「眼鏡っ!!」
眼鏡「…………」
魔法剣士「しっかりしろっ!! 今……」
眼鏡「……魔法……剣士か」
魔法剣士「ああ、そうだ! 今、助け――」
眼鏡「オル……トロスは……」
魔法剣士「倒したさ! 俺と……お前の力でっ!」
眼鏡「……そうか。良かった」
魔法剣士「もう喋るなっ、すぐに誰か回復出来る奴を――」
ボロッ……
魔法剣士「……?」
眼鏡「もう……いいんだ」ボロボロッ
魔法剣士「!?」
眼鏡「肉体はもう持たない。だから、いいんだ……」
- 694 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/11(日) 00:12:23.50 ID:yYJt92M1o
魔法剣士「眼鏡!!」
眼鏡「僕は君に……礼を……」
魔法剣士「……それは、俺の方さ」
眼鏡「……」
魔法剣士「あんたのお陰で俺は何度も救われた! 俺の命は眼鏡っ、あんたのお陰であるんだ!」
眼鏡「魔法剣士……」ボロッ
魔法剣士「あんたがいてくれたから俺はっ、今もこうして生きてる!」
眼鏡「……」
魔法剣士「あんたが教えてくれたからっ、俺は生きる喜びをこうして……」ポロポロ
眼鏡「俺の為に……泣いてくれるのか」
魔法剣士「だからっ、俺はあんたを救う!」
眼鏡「……なぁ、魔法剣士」
魔法剣士「……っ」ゴシゴシ
眼鏡「最後に伝えたい事が……ある」
魔法剣士「最後だなんて……言うなよ……っ」
- 695 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/11(日) 00:13:00.62 ID:yYJt92M1o
眼鏡「詩人、彼を信じてやってくれ」
魔法剣士「……」
眼鏡「彼もまた……僕と同じだ」
魔法剣士「詩人……っ」
眼鏡「人の心と魔王との狭間で……生きている哀しい男なんだ」
魔法剣士「……ど、どういう」
眼鏡「彼は決して、敵ではない」
魔法剣士「……奴は、ジュニアと賢者を」
眼鏡「きっと無事だ。だから、信じてくれ」ボロボロッ
魔法剣士「……っ」
眼鏡「いよいよ……これまでのようだ」
魔法剣士「眼鏡っ!?」
眼鏡「君と居た……この数年間、楽しかったよ」
魔法剣士「眼鏡……っ! 眼鏡ぇ!」
眼鏡「本当にありがとう。心から……感謝する」
- 696 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/11(日) 00:13:39.51 ID:yYJt92M1o
グイッ!!
魔法剣士「まだだっ! あんたは俺が……全体に連れて帰るんだ!!」
眼鏡「……僕を……1人の人間として接してくれて……ありがとう」
魔法剣士「眼鏡ぇ!!」
眼鏡「ああそうだ、最後に1つ……頼みを聞いてくれないかな?」
魔法剣士「……!!」
眼鏡「あの子だけは……拾ったんだ。魔族じゃないんだ……」
魔法剣士「……っ」
眼鏡「甘えん坊でね、君が面倒を見てくれると……嬉しいな……」
魔法剣士「……名……は?」
眼鏡「……そういえば……付けてないなぁ。君の好きに……付けてやってくれ」
ボロボロッ ボロッ……
魔法剣士「――!?」
眼鏡「次に生まれてくる時は……人間であります……ように――」
魔法剣士「眼鏡ええぇぇぇぇーっ!!」
- 697 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/11(日) 00:14:07.89 ID:yYJt92M1o
ザアアアアァァァァ……
魔法剣士「…………」ザシャッ
肉体は土のように崩れ、地に消えていった。
魔法剣士「……ぐ……っ」
同時に、六道門・地獄は、静かにその扉を開いた。
魔法剣士「……ああああぁぁぁぁ!!」
タッタッタッタッタッ……バシャッ
犬「ハッハッハッ」
魔法剣士「……お前の主人は……逝った」
犬「クゥーン」ペロペロ
魔法剣士「慰めて……くれているのか……」
犬「……ワンッ」フリフリ
魔法剣士「……帰ろう……ケルベロス」
犬「ワンワンッ!」
ケルベロスと名付けた犬と共に、魔法剣士は六道門・地獄を後にし、本陣へと戻って行った。
〜第五十九部、完〜
- 698 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/03/11(日) 00:21:39.69 ID:yYJt92M1o
ひとまずここまでにて。投下少なくてすみません…
あと本日は追悼の意も含め、投下は休載とさせて頂きたいと思います
暗い展開ばっかなので、あってもギャグのオマケになるかなと
それではおやすみなさい!ご支援ありがとうでした!ノシ
〜超久々の次回予告〜
皆さんお待ちかね!
アンデッドと化したネクロマンサーの人形に立ち向かう召喚士達!
その中で、兄様の悲しい宿命を目の当たりにする盗賊!
そして彼女は、愛する兄達を呪いから解き放つため、五行を放つのです!
召喚士「行けっ!コカトリス!!」、「影忍散る! 盗賊、涙の必殺拳」に、レディ・ゴー!
- 700 名前:NIPPERがお送りします(長屋) [sage] 投稿日:2012/03/11(日) 00:57:13.57 ID:DplToIgCo
残念だけどしょうがないね
黙祷!
- 706 名前:NIPPERがお送りします(埼玉県) [sage] 投稿日:2012/03/11(日) 02:43:37.32 ID:90vs4K4j0
五行でケルベロスは消滅したけど眼鏡は残っていた。 とかいうオチかと思ったけどそんなことはなかった
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