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冒剣士「…冒険酒場で働くことになった」
232 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:08:38 ID:QV/N3g.g
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…ヒュウウ……

冒剣士「…それで、だいぶ落ちましたねー…」

孤高騎士「登れない距離ではないが…しっかし広い場所だな。向こう側までドーム状になってるな」


女メイジ「ここは氷がちゃんと張ってるけど…風も吹いてる?」

孤高騎士「どこか出口があるのかもしれないな」

女メイジ「う〜ん…」


冒剣士「…ん?」

女メイジ「どうしたの?」


233 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:09:26 ID:QV/N3g.g
 
冒剣士「あのさ…僕らが落ちたところ…見て」

孤高騎士「?」チラッ

女メイジ「…」チラッ


…ボロッ……


孤高騎士「…っ!」

女メイジ「ちょ、これって原石!?ボロボロ…」

孤高騎士「…そんなバカな!」

…ガリガリ……


孤高騎士「…この辺の原石も全て魔力が失われてやがる!」


234 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:10:01 ID:QV/N3g.g
 
女メイジ「え、じゃあ…この寒さは…?氷は?」

孤高騎士「この辺一帯が氷に覆われてるのに、原石がない…?単純な山の温度の問題か…?」

女メイジ「それだったらさっきの原石がなかった場所も凍ってないと…」


孤高騎士「それより何より、ここでも"魔力がない原石"があることが問題だ」

冒剣士「じゃあ、この辺を凍らせている原因は一体…」



……ガアアアアアッ!!!!

孤高騎士「!」

冒剣士「!」

女メイジ「!」


235 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:10:33 ID:QV/N3g.g
 
孤高騎士「っち…今の叫び声は…」

冒剣士「な、なんですか!?」

女メイジ「…!?」

孤高騎士「……アイスタイガーの叫び声だ」


冒剣士「アイスタイガー…!」


アイスタイガー『ガアアアッ!!!』


女メイジ「こ、声が近い!」

冒剣士「ど、どこにいるんだ!」

孤高騎士「あわてるんじゃない!落ち着いて、まずは周囲の状況を把握するんだ!」


236 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:11:37 ID:QV/N3g.g
 
冒剣士「は、はい!」

 
女メイジ「…」ハァハァ

冒剣士「…」

孤高騎士「…」キョロキョロ


アイスタイガー『グウウ…』


冒剣士「…」

女メイジ「…アイスタイガーの息遣いが聞こえる…」


孤高騎士「…」ハッ


237 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:12:17 ID:QV/N3g.g
 
冒剣士「い、いた!正面…あそこです!」


孤高騎士「武器を用意しろ!」スチャッ

冒剣士「はい!」チャキッ

女メイジ「わかりました!」スッ

 
冒剣士「…」ゴクッ


アイスタイガー『…ガアアッ!!』ギロッ


孤高騎士「こっちに気づいた!くるぞ!」


アイスタイガー『グウウアアア!』

……ダダダダダッ!!!


238 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:13:18 ID:QV/N3g.g
 
…ミシッ


冒剣士「…ん?」


ミシミシッ…グラ…グラグラグラグラ!!!


孤高騎士「こ、ここで地震!?」

女メイジ「きゃああああっ!」

冒剣士「くっ!」



アイスタイガー『…グウアアアア!!』


孤高騎士「地震にアイスタイガー…!こりゃちょっとマズいんじゃないの…ん!?」


239 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:14:23 ID:QV/N3g.g
 
…ドゴォォン!!!

アイスタイガー『ガアアッ…!!』

…ズザザザッ……



冒剣士「あ…アイスタイガーが吹き飛んだ!?」

孤高騎士「一体何が起きた!?」

女メイジ「ゆ、揺れがひどくて…」グラグラ


アイスタイガー『ガッ…』ギロッ


孤高騎士「あいつ、どこを見てる!?」

冒剣士「僕たちじゃないです!右側を見てま…す…」


240 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:15:06 ID:QV/N3g.g
 
ドォン…グラグラ…ドォン……グラグラ…ピタッ…

???『…』

アイスタイガー『グルル…』ギロッ



冒剣士「な…んだあれ…」

孤高騎士「笑うしかねーな…、そうか…全部わかったよ…」

女メイジ「揺れが…収まった…?」


孤高騎士「あれ、見てみな…」

女メイジ「…?」チラッ



???『…』


241 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:15:41 ID:QV/N3g.g
 
女メイジ「ひっ…!」
 
冒剣士「あれ…なんですか…?」


孤高騎士「"巨人族"…、氷の巨人のフィルボルグだ…。俺も初めて見る…」


フィルボルグ『…』


女メイジ「…っ」

孤高騎士「地震の原因はあいつが暴れてる影響だ。暴れる度に魔力が暴走してたんだ…」

冒剣士「…」


孤高騎士「それと…あいつは氷の魔力を吸収し、自らの体内から放出する。原石が砕け、融解したのはその影響だろう…」

女メイジ「この辺の原石が全滅してたのに、氷が張付いてるのは放出の影響ってことか…」


242 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:16:13 ID:QV/N3g.g
 
冒剣士「それで…どうすればいいんですか僕らは…」ガクガク

孤高騎士「とりあえずあの2匹の様子を見よう…」

女メイジ「…」ゴクッ


フィルボルグ『…アァァァッ!!!』ビリビリ

アイスタイガー『グウオオオオオッ!!!』ビリビリ



女メイジ「み、耳があああ!」

孤高騎士「くっ…」

冒剣士「…っっ!」


243 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:16:44 ID:QV/N3g.g
 
フィルボルグ『…』ビュッ

…ドゴォォ!!!


アイスタイガー『グアアッ!!』

フィルボルグ『…アアアアッ!!!』ブゥン!!

…ドシュッ…

アイスタイガー『ガッ…』


孤高騎士「手刀でアイスタイガーの体突き刺しやがった…」

冒剣士「魔物同士の打ち合いってことですよね…一体これは…」

孤高騎士「さあな…」


244 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:17:26 ID:QV/N3g.g
 
フィルボルグ『…アアッ!!』

…ズブッ……ジュプッ…ドロッ…


アイスタイガー『…』


孤高騎士「な、何やってやがる…」

冒剣士「アイスタイガーの体から何かを探してる…?」

女メイジ「気持ち悪い…」


フィルボルグ『……』ジュポッ…


…ドクン……ドクン…


245 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:17:57 ID:QV/N3g.g
  
冒剣士「し…心臓を取り出し…」オエッ

女メイジ「一体何を…」ブルブル

孤高騎士「アイスタイガーの心臓…氷のようだな…」



フィルボルグ『…』バクッ…


孤高騎士「く、食いやがった…」

冒剣士「うぇ…おええぇっ…」

女メイジ「もうだめ…」オエッ…



フィルボルグ『…』ジュルッ…


孤高騎士「…」


246 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:18:27 ID:QV/N3g.g
 
フィルボルグ『…』ギロッ


孤高騎士「俺らも…殺されるのか…」

冒剣士「はっ…はっ……」

女メイジ「…」


フィルボルグ『…』

ドォン…ドォン…グラグラ……ドォン…



孤高騎士「こっちに来る!…お前ら、早く立て!逃げるぞ!」

冒剣士「足が…動きません…」

女メイジ「…」


247 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:18:59 ID:QV/N3g.g
 
孤高騎士「ちっ…何してる!死ぬぞ!!」


冒剣士「…」ブルブル

女メイジ「…」グスッ…ヒクッ…


…ドォン…グラグラ…


フィルボルグ『……』


孤高騎士「もう…ダメか…」


…スチャッ

孤高騎士「だがな…、俺だって冒険者の端くれ…抵抗くらい…してやるぜ!」


248 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:19:33 ID:QV/N3g.g
 
冒剣士「…」ガクガク

女メイジ「もう…だ…め…」ドサッ



フィルボルグ『…』


冒剣士(僕…初冒険で…終わりか…)

フィルボルグ『…』


女メイジ「…」

孤高騎士「…」


冒剣士(…もっと、冒険したかったなぁ………)


249 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:20:17 ID:QV/N3g.g
 
フィルボルグ『……怯えるな、人間よ』

冒剣士「…っ!?」

フィルボルグ『私はフィルボルグ。巨人族の1人である』

冒剣士「しゃべっ…た…?」


フィルボルグ『…』

冒剣士「…」


フィルボルグ『…こちらでは60年前か。私は、魔術師らに封印され、この山で長い眠りについていた』

冒剣士「60年前…って、魔王が攻めてきたっていう…」


フィルボルグ『結界の力が弱まり、やがて解ける時間が訪れた。だが、力を失いつつあった私は、ここで雪の魔物達を食したのだ』


250 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:21:03 ID:QV/N3g.g
 
冒剣士「…」

フィルボルグ『今、世界はどうなっている?』

冒剣士「…」

フィルボルグ『あれから数十年、私が山から降りることは問題ないのか。共存はされているのか…、魔界はどうなっているのか』


冒剣士「え…えと…」


フィルボルグ『まぁ…お前たちが私に刃を向けた。それだけでどういう事かは察しがつくがな…』

冒剣士「…」

フィルボルグ『…』


冒剣士「あの…僕たちは殺される…んですか…?」

フィルボルグ『…殺してほしいのか?』


251 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:21:52 ID:QV/N3g.g
 
冒剣士「そ、そんなわけ…!」


フィルボルグ『…』チラッ

孤高騎士「…」



フィルボルグ『……殺しはせぬ…』

冒剣士「!」

フィルボルグ『…信じられぬかもしれぬが、無闇な殺戮は好まぬ』

冒剣士「…」

フィルボルグ『…』


冒剣士「ううん…信じます」


252 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:22:41 ID:QV/N3g.g
 
フィルボルグ『ほう…』

冒剣士「アイスタイガーを吹き飛ばす威力で孤高さんを叩いたら、きっともう…だめだったと思う。けど、加減してくれたんですよね…信じる理由は充分です」

フィルボルグ『…なるほどな』


冒剣士「はいっ。それと…フィルボルグさん…ですよね」

フィルボルグ『…なんだ?』


冒剣士「この場所のことは誰にも言いません。ですが、地震を起こしたり、できるだけ原石を壊すのはやめてくれません…か?」

フィルボルグ『…それを守れば、私の存在を言わないと?』

冒剣士「はい。あなたは僕たちに危害を加えようとはしなかった。ただ暮らしているだけ…、それを侵害する理由がないです」


フィルボルグ『ふふ…はははは!』ビリビリ


253 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:23:22 ID:QV/N3g.g
 
冒剣士「…!」キーン


フィルボルグ『今度は私がそれを、信じろと?』

冒剣士「…」

フィルボルグ『…』


冒剣士「僕は殺戮を好まないと言ったあなたを心から信じました。いえ、信じています」

フィルボルグ『…』

冒剣士「話してみて、あなたがきっと良い方なんだろうなって…思いました」

フィルボルグ『…」

冒剣士「上手く言えないですけど…だから、僕があなたを信じるように、あなたも僕を信じてください」


フィルボルグ『ふむ…』


254 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:23:52 ID:QV/N3g.g
 
冒剣士「ただ、地震や融解を起こすと、やがて他の冒険者や調査隊が入ることになります。だから、それは出来るだけ抑えてください…」

フィルボルグ『…』

冒剣士「だめ…ですか…?」


フィルボルグ『…』

冒剣士「…」

フィルボルグ『…』

冒剣士「…」


フィルボルグ『…面白い子供だ。私も信じてやろう」


255 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:24:36 ID:QV/N3g.g
 
 
冒剣士「ありがとうございます!」

フィルボルグ『しかしなぜ、お前は私の居場所を知らせないようにしようと思ったのだ?』

冒剣士「僕たちを逃がす事もですが、あなたはアイスタイガーを倒し、結果的に助けてくれました」


フィルボルグ『…まあ、そうなるな』

冒剣士「それに応えるのは当然だと思います」ニコッ


フィルボルグ『はは、そうか』

冒剣士「さてと…そろそろ戻らないと、夜道になったら危ないですし…」


256 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:25:11 ID:QV/N3g.g
 
フィルボルグ『…そういえば、お前たちはどこから来たのだ?』

冒剣士「ここから南側のふもとの雪降町です」


フィルボルグ『そこの2人を担ぎ、出口まで案内をしよう。私の魔力で出入り口は吹雪で見えないようになっている』

冒剣士「…そうなんですか」

フィルボルグ『そこからは面倒は見れぬ。その2人は自分で何とかすることだ」

冒剣士「大丈夫です、ありがとうございます」


フィルボルグ『あぁ…、では、着いて来い」

冒剣士「…はい!」


257 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:25:48 ID:QV/N3g.g
 
…トコトコ……

冒剣士(そういえば、猛雪山側の入り口は…吹雪が少なくなったのは何でなんだろう…な)

フィルボルグ『…』

冒剣士(まさかフィルボルグさんが入り口側をわかるように…?いや、そんな危険なマネはするわけがない…ん?)


…コソッ


冒剣士(誰かいる…?)

フィルボルグ『どうした?』

冒剣士「…」キョロキョロ


…シーン


258 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:26:35 ID:QV/N3g.g
 
冒剣士「これは…?」

フィルボルグ『ここで見つけた。何に使えるかはわからぬ。だが、私が持っているよりはマシだろう』

冒剣士「…はい」


…キラッ

冒剣士「綺麗な玉だな…、ピカピカに光ってるや…」

フィルボルグ『…それではな。機会があれば、また会おう』

冒剣士「…はいっ!」ペコッ


…ズシン……ズシン……ズシン………


259 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/08/14(水) 10:27:25 ID:QV/N3g.g
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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