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少女「貴方の今に閃きたい」
32 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 23:17:54 ID:/YgAECtM
 6月26日
 昨日の私へ
 先生は先生よ。間違いなさそうね。
 やっぱりそんな陰謀(?)はないみたいよ。

 明日の私へ
 今日は少しだけお庭に出たわ。ほんのちょっとの時間だったけれど…
 今までの私はお散歩はさせてもらったのかしら。
 もしそうじゃなかったら、私だけ、ごめんなさい。

 6月27日
 昨日の私へ
 ずるい!!私は先生に頼んでみたけれど、
 「昨日出たから、今日はダメ」って言われたわ。昨日の私と今日の私は違うのに!!
 ずるい!!もう!!

 明日の私へ
 あんまり腹が立ったから、今日はお薬を内緒で飲んだふりをしてみたわ。
 今のところ何にも変化はないけど。
 ああ、もう!!私も外に行きたい!!バカ!!

少女「あらあら、荒れてるわねえ」

少女「でも、いいなあ、外に出れるのかあ」

少女「お昼頃になったら、先生に頼んでみようかなあ」


33 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 23:24:06 ID:/YgAECtM
 6月28日
 昨日の私へ
 いやな気持ちになるのはわかるけど、薬はちゃんと飲まないとダメよ。
 今日の私はすごく気分が悪いの。
 やっぱりお薬は私に必要なものみたいね。

 明日の私へ
 今日はちゃんとお薬を飲んだけれど、明日の私もちゃんと飲んでね。
 じゃないと次の日、大変なことになるから。
 おどしじゃあないわよ。
 くらくらしてるの。じしょを引く元気もないもの。かんじもしんどいくらいよ。
 今日は早めにねることにするわ。

少女「あら、陰謀説は早くもなくなったみたいね」

少女「薬かあ…やだなあ」


34 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 23:29:48 ID:/YgAECtM
 6月29日
 昨日の私へ
 あなたがしっかりと薬を飲んでくれたおかげで気分が良いわ。
 もうこれからの私は、薬を飲まないでいる、なんて馬鹿なことはしないでね。
 あなただけ辛い思いをしていると思うと、私が今日を楽しむのは悪い気がしちゃうわ。

 明日の私へ
 私、思ったんだけど、ここにはほとんど娯楽(?)がないの。
 だから、食べたいものを先生にリクエストするべきね。
 だって私が食べられる食事は、3回しかないの。たった3回よ!?
 たとえ先生が「昨日も食べたじゃないか」なんて言っても、関係ない!!
 だから私は、今日はカレーライスをリクエストしたわ。とってもおいしかった!!

少女「カレーかあ」

少女「確かに私、カレー好きだものね」

少女「昨日食べたって記憶がなければ、毎日でも美味しいでしょうね」

少女「私のお昼は…なんだろう」

少女「リクエストしてみようかしら」


35 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/01/15(日) 23:31:27 ID:grJcaK8A
話進んでるような進んでないような…


36 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/01/15(日) 23:32:20 ID:CpliNRVU
まあのんびりでもスレ落ちないしじっくり行っても大丈夫


37 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 23:37:42 ID:/YgAECtM
 6月30日
 昨日の私へ
 あなたの言った通り、先生は「昨日も食べたじゃないか」って呆れていたわ。
 でも私が食べたいんだもの。いいわよね。
 カレーライスはおいしかった。すごくおいしかったわ。
 やっぱり食べたいものを食べるのが一番よね。

 明日の私へ
 新しい月ね。
 7月と言うともう暑いようだけど、ここはエアコンが効いているからわからないわ。
 夏らしいこととか、してみたらいいんじゃないかしら。
 ちなみに私は「6月らしいこと」をしたわ。
 なんだと思う??
 わからなかったら先生に聞いてみて。

少女「6月らしいこと、かあ」

少女「なんだろう」

少女「結婚式ごっことか??」


38 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 23:43:07 ID:/YgAECtM
 7月1日
 昨日の私へ
 ジューンブライドっていうから、結婚式の真似事でもしたのかしら。
 そう思って、先生に聞いてみたら、なんてことない。
 テルテル坊主を作ったのね。
 「もう梅雨は明けたよ」って先生がおっしゃったのに、意地になって作ったそうね。
 お馬鹿さん!!

 P.S. 別に馬鹿にしてるんじゃないのよ。面白かっただけ。

 明日の私へ
 ねえ、私ふと思ったのだけど、私の「最後の記憶」って、なんなのかしら。
 記憶が蓄積されなくなった直前には、一体なにがあったのかしら。
 先生は教えてくれないの。
 「君が思い出すことが重要なんだ」なんて言われたけれど。
 少し怖い。

少女「最後の記憶…」

少女「パパやママは…どうしているのかしら」


39 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/01/15(日) 23:48:47 ID:1fyMSzLk
>>5
メメント
主人公が男、体にタトゥーとして出来事を掘り込む
まぁ、どっちかっつーとBADエンドだったけどおもしろかったよ


40 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 23:49:44 ID:/YgAECtM
ガチャリ

男「また、コールボタンを押したね」

少女「…」

男「どうしたの??」

少女「私のパパとママは、どうしているの??」

男「…」

男「パパとママがどういう人たちだったかは、覚えている??」

少女「…ええ」

男「どんな人たちだった??」

少女「ママは…とても優しい人」


41 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 23:53:55 ID:/YgAECtM
少女「料理が上手で、美人で、だけど少し太ってきたことを気にしていて…」

男「うん」

少女「そう、お花を飾るのがとても好きだったわ」

男「うん」

少女「パパは…」

少女「パパは少し、厳しい人だった」

男「…」

少女「だけど私が学校で頑張ったら、いつもいっぱいほめてくれた」

男「…」

少女「厳しいけど、優しい人だった」



メメント面白かったなあ
ああいう仕掛けのある話とか好き


42 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 00:10:24 ID:uiULMk7A
少女「珍しい外国のコインを集めるのが好きで、よく見せてもらったわ」

男「そうか」

少女「でも…ぼんやりとしか、思い出せないの」

男「いや、それだけ思い出せたら、十分さ」

少女「いやよ」

男「どうして」

少女「大事なのに、好きなのに、どうしてはっきり思い出せないの??」

男「それは…」

少女「どうして会いに来てくれないの??」

男「…それは…」


43 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/01/16(月) 09:09:00 ID:cgBjwAt6
ハムじゃねーかこっちにも来るのか乙


44 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/01/16(月) 10:28:26 ID:rOZC/iXY
誰かは知らないが読んでる


45 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/01/16(月) 12:51:39 ID:lwk5CEKI
ハム来てたのか
支援


46 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 19:52:04 ID:uiULMk7A
正直VIPだとすぐ落ちるんです
知ってくれてる人がいると嬉しいけど、調子乗らんよう気をつけますww


47 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 19:55:49 ID:uiULMk7A
少女「この日記に、パパの話もママの話も全然出てこないの」

男「…」

少女「それは、どうして??」

少女「昨日までの私は、思い出すことさえできなかったの??」

少女「もう…いないの??」

男「今の君に、会うことがとても難しいからだよ」

少女「??」

男「正直に話そう」

男「今の君の症状は、とても珍しいんだ」

少女「…ええ」


48 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 20:00:54 ID:uiULMk7A
男「この施設には、部外者が入れない」

男「それほど重要な研究施設なんだ」

少女「研究…」

男「君は患者であると同時に、大事な研究対象なんだ」

少女「…そんな…」

男「いや、すまない、言い方がうまく選べない」

男「少し、落ち着いて話そう」

ピピッ

男「すまないが、コーヒーを持ってきてくれ」

ピピッ


49 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 20:07:23 ID:uiULMk7A
少女「…」ズズ

男「これまでの君には、色々な考え方を聞かされた」

少女「…」ズズ

男「私は悪の組織のトップで、君が『私にとって不都合な記憶』を取り戻すことを心配している」

少女「…」

男「君はクローンであり、私が作り出したものだ」

少女「…」

男「私は少女趣味があり、君を閉じ込めて、夜な夜な好き勝手に君を弄んでいる」

少女「…っ!!」

男「全部、嘘さ」

男「そんなことはあり得ない」


50 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 20:12:33 ID:uiULMk7A
少女「でも研究対象って」

男「ああ、そうだ、言い方が悪かった」

少女「…」

男「君を救いたい」

男「それは医者としての私の本心だ」

少女「そう」

男「だが、君を研究することで、君の症状を研究することで、救われる人たちがいるんだ」

少女「他にも、同じ症状の人がいるの??」

男「そうじゃない、必ずしもそうじゃないんだが…」


51 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 20:19:21 ID:uiULMk7A
男「君の脳に、『一日分だけ記憶を消去するプログラム』があるとしよう」

少女「プログラム??」

男「ああ、例えだけどね、実際になにかが入っているわけではないんだが」

少女「??」

男「まあいい」

男「そのプログラムを解析できたとしたら、世界中の様々な病気の治療に生かすことができる、ということさ」

少女「たとえば??」

男「たとえば…そうだな」

男「脳の一部に、ある負荷がかかっている人がいるとしよう」

男「ずっと、一日中、頭痛に悩まされている人だ」

少女「ええ、実際にいるわね」


52 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 20:24:14 ID:uiULMk7A
男「その脳に同じプログラムを書くことができれば、『痛み』を忘れることができるかもしれない」

少女「…ふうん」

男「その負荷を忘れることができるかもしれない」

少女「…ふうん??」

男「研究とは、そういうことさ」

男「病気の解析は、他の病気の治療にもつながるのさ」

少女「…あんまりわからないわ」

男「はは、少し難しかったかな」


53 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/01/16(月) 20:28:58 ID:s.PeKT1E
難しい話になってきたな


54 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 20:29:07 ID:uiULMk7A
男「たとえばこういう話は知っているかい??」

男「蚊に刺されたとき、君は痛みを感じる??」

少女「…」

少女「いいえ、かゆいけど、痛くはないわ」

男「じゃあ注射を刺されたら??」

少女「痛い」

男「だろうね」

男「私も注射は嫌いだ」

少女「あはは、変なの、先生が注射嫌いだなんて」

男「でも、蚊の針を応用して、痛みのほとんどない注射を作った人もいるんだ」

少女「本当!?」


55 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 20:36:04 ID:uiULMk7A
男「まあ病気とは言えないが、蚊に刺されるということを解析、応用すれば医療に役立つんだ」

少女「すごいのね」

男「それに近いことを、私はしようとしている…のかな」

少女「そう」

男「そして、どのようなアプローチで君の症状が和らぐか、それがとても大事なんだ」

男「そしてこの研究に、部外者のアプローチは極力ほしくない」

少女「…」

男「わかってもらえたかな」

少女「でも、やっぱり、会いたい」

男「…そうだね、そうだろうね」


56 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 20:41:57 ID:uiULMk7A
男「君の病気を治すことができれば…」

少女「できれば??」

男「つまり、君が昨日の記憶を取り戻すことができれば、それは叶うかもしれない」

少女「本当!?」

男「今の君はまだ興奮状態なんだ」

少女「落ち着いてるわ」

男「そうじゃない、君の病気が、だ」

少女「…」

男「それを、その日を楽しみに待っていてほしい」

少女「…」

男「なんて、残酷な言葉かもしれないがね」

少女「…」


57 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 20:57:20 ID:uiULMk7A
少女「…待つ」

男「うん??」

少女「いつかの『私』は、きっと、パパとママに会えるのね」

男「…ああ、約束する」

少女「なら、私は待つわ」

男「…強いな」

少女「パパもママも、すぐに忘れる私よりも、病気が治った私の方がいいわよね」

男「…うん」

少女「私、頑張れって、日記に書く」

男「…そうかい」

少女「先生も、頑張ってね」

男「ああ、もちろんだ」


58 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 21:08:28 ID:uiULMk7A
男「すまない、少し長く話しすぎたかな」

男「疲れはない??」

少女「大丈夫よ。それより…」

男「??」

少女「お腹がすいたわ」

男「ああ、そうか」

男「何が食べたい??」

少女「カレーライス!!」


60 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 21:14:45 ID:uiULMk7A
男「またか」

少女「えへへ、もしかして私、毎日カレーを食べてる??」

男「それは、言えない約束なんだ」

少女「??」

男「楽しみがなくなるからって、日記に書いていないメニューについては君に教えられないんだ」

少女「私が約束したの??」

男「そう」

少女「なら、聞かない」

男「はは、わかった」


61 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 21:24:23 ID:uiULMk7A
少女「ねえ、この日記には、今日までのことが毎日書かれているのよね」

男「ああ」

少女「いつも、何時間くらいで読み終わるかしら??」

男「そうだね…いつも読み終わるのは14時くらいかな」

少女「じゃあ、そのあとは私の自由時間ね??」

男「別に無理せず、全部読まなくたって…」

少女「そうはいかないの」

少女「7月の私も、8月の私も、全部私なの」

少女「私が読まなきゃ、ダメじゃない??」

男「…そうかい」


62 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/16(月) 21:32:13 ID:uiULMk7A
男「まあ、無理しないように」

男「昼食を持ってこよう、少し待っていてくれるかな」

少女「はあい」

ガチャリ

男「…」

助手「どうでしたか」

男「やはり…真実を言えない、というのは辛いものだな」

助手「ここのところ毎日ですからね」

男「快方に向かっているのか、そうではないのか…」

助手「辛い役回りですね」

男「仕方がない、私が選んだことだ」



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