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少女「黒いギターと苺の園」
1 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:26:49.38 ID:w/ger7Mf0
男「こんなところに人がいるとは…」

少女「…」

男「こんなところでなにを??」

少女「私はここには、不似合いかしら??」

男「そりゃあ…ここは…」

少女「戦場ですものね」

少女「ふふふ」



2 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:28:08.26 ID:IgU/sWDWP
白い夏と緑の自転車 赤い髪と黒いギター


3 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:29:37.08 ID:w/ger7Mf0
男「危ないから、隠れていな」

少女「ずっとここで暮らしているけれど、危険な目にあったことはないわ」

男「そんな馬鹿な」

少女「…ちょっと嘘をついたわ」

少女「少ししか、危険な目にあったことはないわ」

男「どうしてこんな場所に住んでいるんだ」

少女「あら、それは心外ねえ」

少女「この戦争が始まるずっと前から、私はここで暮らしているのに」


4 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:33:49.61 ID:w/ger7Mf0
男「…きれいな家だな」

少女「休んでいく??兵士さん」

男「ああ…そうさせてもらおうか」

少女「こっちよ」

男「ああ」

少女「そこの花壇には近づかないでね」

男「ああ。なにを育てているんだ??」

少女「禁断の果実よ」

男「…」

男「禁断の果実ってリンゴじゃなかったか」



5 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:37:07.69 ID:w/ger7Mf0
少女「いいじゃない、細かいことは」

男「そうだな」

少女「さ、こっちよ」

ガチャ

男「すまないな」

少女「それから、その物騒なものをしまってくれる??」

男「あ、ああ、すまない」ガチャリ



6 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:43:08.39 ID:w/ger7Mf0
少女「ケガしてるわね」

男「こんなもの、大したことない」

少女「待って、包帯を持ってくるから」

男「あ、ああ」

パタパタ

男「…」

男「あの子、一人なのかな…」

パタパタ

少女「はい」

男「あ、ああ、すまない」



7 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:47:26.90 ID:BAN8nO/0O
景気づけに支援だ


8 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:47:30.74 ID:w/ger7Mf0
少女「包帯の巻き方って、よくわからないのだけれど」

男「ああ、いいよ。自分でできる」

少女「そう??」

男「んっ」

バサッ

少女「きゃあ!!」

男「ん??」

少女「血がいっぱい…」

男「ああ、すまん。あっち向いてな」



9 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:51:53.90 ID:w/ger7Mf0
ギュッ

男「ふう…これで何とか」

少女「…痛かった??」

男「いや、大したことない」

男「何日も前の傷だしな」

少女「そうなの??」

男「血、茶色くなってたろ」

少女「よく見てなかったから…」

男「そうか」

男「ま、包帯、ありがとうな」

少女「うん」



10 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:56:00.96 ID:w/ger7Mf0
少女「お水でいいかしら」

コト

男「ああ、ありがとう」

ゴクゴク

少女「うふふ」

男「??」

少女「毒を盛られるかも、なんて、思わないの??」

男「ここは戦場だ。死ぬこともあるさ、運命だ」

少女「ふうん」

男「なんだ」

少女「つまんない」

男「そりゃあ悪かったな、お嬢ちゃん」



11 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/10/30(土) 14:58:59.78 ID:f6GvIAjvO
厨二さん?


12 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:02:17.57 ID:w/ger7Mf0
少女「お嬢ちゃんなんて、久しぶりに言われたわ」

男「こんなところに人はめったに来ないだろう??」

少女「そうなのよ」

男「しかし周りは廃墟になってるのに、なぜこの家だけきれいに残っているんだ」

少女「私が住んでいるからよ」

男「うん??」

少女「私、死なないの」

男「へえ」



13 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:06:38.56 ID:w/ger7Mf0
少女「へえって…リアクションそれだけ??」

男「無敵の兵士なんてそこらじゅうにいるからな」

男「珍しくもない」

少女「そっか」

男「冗談は置いといて、あんた、本当にここを離れたほうがいいんじゃねえか」

少女「ご忠告ありがとう」

少女「でも私は、ここから離れられないのよ」

男「どうして」

少女「あの苺があるから」



14 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:11:33.95 ID:w/ger7Mf0
男「さっきの花壇の??」

少女「そう」

少女「あれは私がママから受け継いだ、とても大切なものなの」

男「お母さんはどうしてる」

少女「亡くなったわ、この戦争で」

男「…」

男「そうか…すまない」

少女「あなたが殺したわけじゃないもの、謝らないで」

男「…」



15 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:18:38.85 ID:w/ger7Mf0
少女「ほら、そこの写真立て」

男「うん??」

少女「私とママよ」

男「…」

男「…きれいな人だな」

少女「二人とも、ね」

男「ああ、本当に」

少女「あら、冗談のつもりだったのに」

男「あんただってきれいなもんだ」

少女「それはありがとう」



16 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:26:45.01 ID:w/ger7Mf0
男「お父さんは」

少女「いないの」

男「へえ」

少女「私が物心つく前に、家から出て行ったの」

少女「ママが言ってたわ」

男「そうかい。甲斐性のない父親だな」

少女「別に恨んではいないわ」

男「どうして」

少女「男には男の『為すべきこと』があるのよ」

少女「ってママが言ってたの」



17 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:30:26.98 ID:w/ger7Mf0
男「兵士になったのか??」

少女「そうかもしれない」

男「あんたは知らないのか??」

少女「ママは教えてくれなかったわ」

男「じゃあ生きているかもわからないのか」

少女「そうね」

少女「それに…」

男「それに??」

少女「パパは私のことも、ほとんど知らないんじゃないかしら」

男「悲しいか??」



18 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:35:08.87 ID:w/ger7Mf0
少女「別に」

少女「私はこの暮らしに不満はないし、特になんとも思ってないの」

男「強いんだな」

少女「兵士さんは、家族は??」

男「死んだよ」

少女「…やっぱり戦争で??」

男「ああ、守れなかったんだ」

少女「ごめんなさい」

男「なにを謝ることがあるんだ、気にするな」



19 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:39:47.30 ID:w/ger7Mf0
少女「ねえ、思ったんだけど」

男「うん??」

少女「その銃、変わった形をしているのね」

男「ああ、見るか??」

少女「うん」

男「ほらよ」

ガチャリ

少女「わ、重…」

男「人を殺す道具だ」



20 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:44:28.46 ID:w/ger7Mf0
少女「この横についてる鉄線はなあに??」

男「ああ、ギターって知ってるか」

少女「ええ」

男「それと同じだ」

男「音を鳴らすんだよ」

少女「武器なのに??」

男「武器なのに」

少女「おかしいわ」

男「大真面目だぜ??」



21 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:54:44.25 ID:w/ger7Mf0
少女「ギターを弾きながら人を殺すの??」

男「違う、殺した相手に鎮魂歌を捧げるんだ」

少女「それで殺された相手は救われるの??」

男「さあな、魂だとか神様なんてもんはあんまり信じちゃいないから」

少女「だったら…」

男「そういう隊風なんだよ」

少女「よくわからないわ」

男「そう隊長さんにも言ってくれよ」



22 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 15:59:18.38 ID:w/ger7Mf0
男「なにか弾いてやろうか」

少女「いらない」

少女「私が死んだみたいじゃない」

男「鎮魂歌だけを弾くもんでもないんだが…」

少女「変なの、変なの」

男「ま、じゃあしまっておくよ」

少女「弾は出ないようにしておいてよ」

男「そういうわけにはいかない」

男「家の中とはいえここは戦場なんだ」

少女「…怖いわ」

男「大丈夫、扱いには慣れてるよ」



23 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 16:04:29.81 ID:w/ger7Mf0
少女「何人殺したの??」

男「さあ…数えてないな」

少女「数えきれないくらい??」

男「とりあえず両の手では足りないな」

少女「足も足したら??」

男「それでも足りないな」

少女「私の指も足したら…」

男「それでも足りないな」



24 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 16:10:58.32 ID:w/ger7Mf0
少女「戦争って嫌ね」

男「おれもそう思ってるよ」

少女「じゃあ、なんで」

男「国が、『そう』なっちまったからだ」

少女「『そう』って??」

男「イカレちまったんだ、追い詰められちまったんだ」

男「戦争をしなきゃいけないって」

少女「それは誰が決めるの??」

男「偉い人たちだ」

少女「偉いのに、そんな選択をしてしまうの??」

男「ああ、偉いのも考えもんだ」

男「一歩間違えるとイカレちまうからな」



26 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 16:16:14.54 ID:w/ger7Mf0
男「その点、おれみたいに頭が空っぽの方が気楽なもんだ」

少女「頭空っぽなの??」

男「ああ」

男「難しいことを考えずに引き金を引ける」

少女「あなたは戦場に来て何年??」

男「6年、かな」

少女「…長いわね」

男「よく生きてるもんだと思うよ」



27 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 16:20:49.34 ID:w/ger7Mf0
少女「お水、もっといる??」

男「ああ、もらいたいな」

少女「はい」

チャポチャポ

男「この家、水道はまだ生きてるのか」

少女「奇跡的にね」

男「電気も」

少女「そうよ」

男「死にかけの兵士が来たこともあるだろう」

少女「何度かね」

男「どっちの軍だ??」

少女「どっちも来たことがあるわ」



28 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 16:30:46.82 ID:w/ger7Mf0
男「そいつらは??」

少女「元気になって出て行った人もいれば、死んだ人もいるわ」

男「そうか…」

少女「裏にお墓があるのよ」

男「…」

男「あとで手を合わせておくよ」

少女「私と同じくらいの年の子もいたわ」

男「お嬢ちゃん、歳は」

少女「14歳よ」



29 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 16:36:19.90 ID:w/ger7Mf0
男「14歳か」

男「それにしちゃあ大人びてるな」

少女「…」

男「ん??」

少女「兵士に襲われたこともあるわ」

男「あ、ああ」

男「そうか、すまない」

少女「どうして謝るの」

男「兵士は、基本的に極限の禁欲生活だからな」

少女「返り討ちにしてやったけどね」

男「うお、そうか」



30 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 16:42:41.28 ID:w/ger7Mf0
少女「その人も裏に埋まってるの」

男「…」

少女「瓶で殴ったら死んじゃったのよ」

少女「殺すつもりはなかったの」

男「いや、責めるつもりはないさ、当然の報いだ」

少女「あなたはどうかしら」

男「その話を聞いて襲おうと思うほど元気じゃないさ」

少女「この話をしなかったら襲ってた??」

男「おいおい、勘弁してくれ」

男「死んだ娘と年齢が近いんだ、そんな気になるもんか」



31 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 16:48:23.40 ID:w/ger7Mf0
少女「娘さんがいたの…」

男「ああ、妻に似て美人だった」

男「あんたほどじゃないがな」

少女「よして」

男「この戦争は、おれにとって弔い合戦なんだ」

男「死ぬまで、生き延びてやるつもりだ」

少女「…」

少女「私はどちらの軍も応援しないけれど、あなたの応援ならするわ」

男「そうかい、ありがとう」



32 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 16:52:39.58 ID:w/ger7Mf0
少女「あなた、一人??」

男「ああ」

少女「軍隊とはぐれたの??」

男「まあ、そういう感じだ」

少女「隊と連絡は取れないの??」

男「無線機はずっと前から故障しっぱなしだからな」

少女「悪いけど、ここには電話はないの」

男「いいさ、一人には慣れてる」



33 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 16:59:52.47 ID:w/ger7Mf0
男「お嬢ちゃん、昼間は何をしているんだ??」

少女「ね、そのお嬢ちゃんっての、やめてくれない??」

男「どうして」

少女「なんだか馬鹿にされてるみたいだもの」

少女「私もう子どもじゃないわ」

男「…じゃあ名前はなんていうんだ」

少女「忘れた」

男「あん??」

少女「名前なんて、ここじゃあ意味がないもの」

男「それもそうか」



34 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 17:05:43.70 ID:w/ger7Mf0
少女「あなたこそ、名前は??」

男「特にない」

少女「そう」

男「誰にも呼ばれやしないからな、おれだって名前は必要ないのさ」

少女「じゃあ兵士さん、でいいかしら」

男「構わないよ」

少女「黒いギターの兵士さんね」

男「そりゃあちょっと長いだろ」

少女「黒兵さんね」

男「ギターはどこに行ったんだ」



35 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/10/30(土) 17:06:42.82 ID:RZpuBW+W0
くろべえ


36 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 17:09:18.81 ID:w/ger7Mf0
男「君は…」

少女「それも変」

少女「あんた、でいいわ」

男「そうかい、変わった子だな」

少女「そうかしら」

男「女の子は普通名前を呼ばれたがる」

少女「へえ…」

少女「いったい何人の女の子を泣かしてきたの??」

男「おいおい、娘の話だよ」

少女「うふふ」



37 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/10/30(土) 17:11:36.48 ID:JucbZgq3O
天野月子?


38 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 17:15:54.11 ID:w/ger7Mf0
男「で、昼間は何をしてるんだ??」

少女「花壇のお世話と、畑仕事かしら」

男「畑もあるのか」

少女「小さいけれどね」

男「それで食べていけるのか??」

少女「一人分なら楽に暮らしていけるの」

男「あ、ああ、そうか…」

少女「食べ物がほしければ、少しならあげるわよ」

男「あ、いや」

少女「遠慮しないで」



39 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [>>37yesyesyes!!] 投稿日:2010/10/30(土) 17:21:29.97 ID:w/ger7Mf0
男「すまない、恩に着る」

少女「そのかわり」

男「うん」

少女「禁断の果実だけは、食べちゃあダメよ」

男「ああ、大切なものなんだろ」

男「食べやしないさ」

少女「それだけじゃないの」

男「??」

少女「あれは禁断の果実」

少女「食べたら苦しんで死んじゃうの」



40 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 17:27:50.99 ID:w/ger7Mf0
男「冗談だろ??」

少女「うふふ」

男「そんな脅しをかけなくたって食べないさ」

少女「はいはい」

男「ふう…」

少女「…」

男「…」

男「なあ」

少女「うん??」

男「地図ないか??」



41 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 17:35:59.46 ID:w/ger7Mf0
少女「チーズ??悪いけれどここらに牛はいないから…」

男「いや、地図」

少女「マップのこと??」

男「そうそう」

少女「私はどこにも出かけないから、地図なんてないわ」

男「そうか…いや、期待はしていなかったが」

少女「ここがどこかもわからないの??」

男「ああ、この国は広すぎるからな」

少女「ヘリとかで飛んだら、狭く感じるんじゃないの」

男「そんな御大層なものに乗ったことはないのでね」

少女「そう」



42 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 17:43:31.89 ID:w/ger7Mf0
男「これからどうしようかな」

少女「あなたの目的は??」

男「特にない」

男「敵兵と出会えば殺す、それだけさ」

少女「ふうん」

男「最後に、おれ以外の兵士が来たのはいつだ??」

少女「ひと月ほど前かしらね」

男「その前は??」

少女「半年ほど前かしらね」

男「そうか…」



43 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 17:49:11.26 ID:w/ger7Mf0
少女「もう日が暮れるわね」

男「ああ」

少女「夜は怖い??」

男「どうして??」

少女「闇夜に紛れて奇襲、とか」

男「今どき、そんな元気なやつはいないよ」

男「兵士だって夜は普通に寝るんだ」

少女「あら、そうなの」

男「兵士らしくないか??」

少女「イメージが壊れたわ」



44 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 18:03:15.46 ID:w/ger7Mf0
男「真面目に戦争をしているやつは少ない」

男「ほとんど義務感だけさ」

男「誰もが、『早く終わってほしい』と願ってる」

少女「そう…」

男「こんな茶番を何年も続けて、救われた人間は一人もいないんだ」

男「敵兵に恨みも持っていないしな」

少女「でも殺すんでしょう??」



45 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 18:13:46.83 ID:w/ger7Mf0
男「死にたくないからさ、だから殺すんだ」

少女「死ぬこともあるって、運命だって、言ったじゃない」

男「おれはそう思ってるよ」

少女「じゃあ他の人は違うの??」

男「ああ…」

男「いや、おれ自身も心のどこかで『死にたくない』と思っている」

男「その一方で、『早く楽になりたい』と思っている部分もあるんだ」

少女「ふうん…」

少女「難しくて、よくわからないわ」

男「大人の話だ」

少女「私、子どもじゃないわ」



46 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 18:17:38.75 ID:w/ger7Mf0
男「そうだったな、訂正しよう」

男「兵士の話、だ」

少女「そう」

少女「…それならわからなくても無理はないわね」

男「そういうことだ」

少女「死んだら何も残らないわ」

男「そうだな」

少女「あなたが死んだら、その銃はどうなるの??」

男「え…」

少女「ん??」



47 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/10/30(土) 18:27:26.47 ID:w/ger7Mf0
男「あ、ああ、この銃か…」

少女「??」

男「おれを殺したやつが持っていくんじゃないかな」

少女「…」

男「この銃、ほしいのか??」

少女「いいえ」

少女「ただなんとなく、そう思っただけよ」




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