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魔女「果ても無き世界の果てならば」
- 542 名前:深夜にお送りします []
投稿日:2013/05/13(月) 11:57:48 ID:tDlbi7FQ
魔法使い「で? さっき言ってた二通りの方法って?」
少女「君の意志を尊重するのであれば、方法は一つしかないよ?」
なる程、一つは現状を打開するにあたって最悪の方法な訳だ。
少女「じゃあまずは、そこに転がっている二人を回復してあげなきゃね」
戦士「すまん」
勇者「助かるよ」
僧侶に聞いていた回復魔法の原理を自分なりに解釈して発動を試みる。
魔法使い「〜〜」
あまり時間はない。
そこに立ち尽くしている僧侶がいつまた攻撃してくるかもわからない。 それに、早く僧侶を助けなくちゃ、戻ってこれなくなる。
- 543 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:58:25 ID:tDlbi7FQ
勇者「痛ぅッ!?」
戦士「ぬおっ!?」
ん? 何か失敗したかな?
二人が活きの良い魚みたいに跳ね回ってる。
少女「肉体再生には激痛が伴うからね、僧侶は痛みを和らげる魔法と回復魔法を同時にこなしていたから大丈夫だったんだろうけど」
僧侶って割と凄かったんだ。
- 544 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:59:51 ID:tDlbi7FQ
勇者と戦士の回復も済んだ。
さぁ助けようか。
勇者「いくぞぉっ!!」
戦士「むっ!!」
戦士と勇者が僧侶の元へ駆けていく。
少女「来る、勇者の方向に触手、足元から二本、正面から三本」
勇者「おう」
勇者は剣を下段に構え振り抜く。
僧侶「あぁあぁっっ!!」
勇者が不可視の触手を切り裂き、更に前進。
- 545 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 12:00:28 ID:tDlbi7FQ
接近された僧侶が二人を薙ぎ払うように右手を振るう。
戦士「重いな」
戦士がそれを受け止める。
一撃を受け止めた戦士の、踏みしめた大地が陥没する程の威力。
僧侶の動きが止まる。
次の瞬間、僧侶の身体が一瞬浮いたかと思うと、戦士によって組み伏せられていた。
少女「第一段階は成功だ、魔法使い、君の出番だよ」
さて、次は僕の役割を果たそうか。
- 546 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 12:01:23 ID:tDlbi7FQ
少女の練った策。
魔力に対して鋭敏な感覚を持つ少女が全体の指揮を執り、勇者が不可視の触手に対応。
触手を封じ距離を詰め、体術、身体能力に優れた戦士が、僧侶の直接攻撃に対応し、無力化する。
隙を作り出した所で、僕の出番。
魔法使い「僧侶に憑いた精霊と交渉、場合によっては隷属し、使役する術式を叩き込む、か。 無茶を言うよ、全く」
やるしか、無いけどね。
- 547 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 12:02:14 ID:tDlbi7FQ
腕を掴まれ、押さえ込まれた僧侶の前に立つ。
少女「勇者、気を抜かないでくれよ、僧侶の触手はまだ来るぞ」
勇者「任せろ、魔法使いにも、戦士にも、お前にも、勿論僧侶にも」
勇者の剣が、大型の猛禽類の滑空を思わせる風切り音を立て、翻る。
勇者「おぉぉッ!!」
疾風の如き剣技。
隼の名を冠する超高速の剣が迫る触手を次々と斬り伏せていく。
頼もしい。
きっと彼ならば、僕に触手を触れさせすらせず守り抜いてくれるであろう。
そんな、安心感さえ覚える。
- 548 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 12:04:05 ID:tDlbi7FQ
僧侶の額に指で触れる。
ふれた箇所が火傷したのかと錯覚する程、攻撃的な魔力に渦巻いている。
魔法使い「〜〜〜〜〜〜〜〜」
優しさの固まりみたいな僧侶の事だ。 きっと、苦しんでいる。
魔法使い「〜〜〜〜」
気を抜けば逆に引きずり込まれそうな程の魔力の奔流。
こちらの言葉に耳すら傾けない邪精。
さぞかし高位の力を持つ精霊なのであろう、それこそ、異教では神と崇められる程の。
魔法使い「〜〜〜〜」
でも、だからどうした?
- 549 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 12:05:28 ID:tDlbi7FQ
魔力の奔流を辿り、邪精の本体を探す。
身を灼き尽くす程の怨嗟の声が頭に響いてくる。
魔法使い「世界の何もかもが憎くて、恨めしくて、仕方がないみたいだね」
交渉には応じないか。
なら、実力行使だ。
僧侶「うぅぁあああぁぁぁっっ!!!!」
僧侶の顔で、僧侶の声でそんな声を出すな、そんな顔をするな!!
魔法使い「世界の何もかもを愛して、慈しんでいる、優しすぎる馬鹿な奴なんだ、僧侶は」
邪精を探していた僕の魔力が本体に触れる。
魔法使い「お前なんかには不釣り合いだ、今すぐ僧侶の身体から出ていけぇっ!!」
- 550 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 12:06:23 ID:tDlbi7FQ
強引に引きずり出そうと魔力を更に込める。
少女「まずいっ!?」
今までとは比べ物にならない程の魔力の激流が僧侶から迸る。
魔法使い「うわっ!?」
風の大槌で殴られたような衝撃。
踏ん張ってはみた物の、吹き飛ばされてしまう。
それをみた戦士が手を伸ばす。
勇者「危ねぇっ!!」
勇者が吹き飛ばされた僕と、地面との衝突の際に緩衝材の役割を果たそうとしてくれた戦士を受け止めてくれた。
- 551 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 12:08:01 ID:tDlbi7FQ
魔法使い「あ……あぁ」
僧侶が。
少女「魔力の触手が視認できる程の濃度に……完全に相手の力量を見誤ってしまったみたいだ、みんな、すまない」
戦士「厄介な事になってきやがったな」
僧侶がこちらを見た。
諦めと絶望に伏した表情で彼女は言った。
僧侶「お願い……みないで」
,
- 552 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 12:09:02 ID:tDlbi7FQ
触手が僧侶を包み込む。
絡み合い、混じり合い、粘性の水音を立てながら、別の形に成っていく。
勇者「お……おい、どーいう事なんだよこれ?」
戦士「なんと禍しき……」
形成されていく、肉色の大樹。
その頂には出来の良い胸像のように、僧侶の胸から上が露出している。
- 553 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 12:09:51 ID:tDlbi7FQ
そして、僧侶が笑った。
まるで天使のような笑み。
魔法使い「僧……侶?」
僧侶「……」
もう一度、僧侶が笑う。 いや、嗤う。
僧侶「〜〜、〜」
悪魔のような笑みを浮かべて彼女は言った。
呪文に使われている高位精霊言語で。
聞き取れた言葉は。
まるで何かお願いするみたいな軽い口調で。
――じゃあ、みんな死んでね?――
止めてよ、僧侶の顔と声で……。
- 554 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 12:11:49 ID:tDlbi7FQ
今回の更新は以上になります。
僕は、巨乳で、むっちりとしたお尻が好きです。
- 555 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/13(月) 12:33:58 ID:gdO8163E
>>554
そっちに魔法使いが助走をつけて走って行ったぞ
- 556 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/13(月) 13:28:46 ID:nvsej3Hw
>>554が少年のセリフの代弁だったなら、二人まとめて地獄を見るな・・・・
- 557 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 19:50:15 ID:tDlbi7FQ
また更新します。
今月中に終わらせる!
おっぱい!
- 558 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 19:51:25 ID:tDlbi7FQ
肉色の大樹の枝が、螺旋状に絡まり、その先端に魔力の塊が形成されていく。
僧侶「〜〜〜〜〜〜〜〜ぎゃは、アハはハハハは」
僧侶の声で下品な笑い声をあげるなよ。
心はまだ折れていないんだ、まだやれるんだ。
なのに、立ち上がれない。
なぜか、視界が歪む。
もう戻せない。 そんな不安がよぎる。
僧侶「〜〜〜〜。 シネ」
枝先から絶望的な威力を持った魔力の塊が放たれた。
- 559 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 19:52:52 ID:tDlbi7FQ
ゆっくりと、しかし回避できないほどの大きさの閃光。
せめて、戻せないなら一緒に。
少女から聞いた三つの禁術の一つ。
魔法使い「〜〜〜〜〜〜っ」
魂に宿る魔力を一滴残さず使い切る事で全てを破壊する禁術。
魔法使い「せめて、一緒に逝ってあげ……きゃっ!?」
頭に鈍い衝撃。
勇者「そんな事しなくたって良い」
僕の魔法を妨害したのは勇者。
閃光を真っ直ぐ見据えて。
最上段に剣を構え、僕の前に立っている。
- 560 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 19:53:49 ID:tDlbi7FQ
勇者「誰一人だって救いもらさねぇぞ、俺は」
あぁ、この男はこんな時まで。
だからこそ、勇者なんだろうな。
幾千、幾万の諦観や絶望を斬り伏せ、その先を見据え続ける。
勇者「本当は、やりたかねぇけど。 僧侶、痛かったらごめんな」
勇者の剣が軋むような音をたてて淡い光を纏う。
少女「待て!! 今ソレを使っては魔王が――」
勇者「何とかするから心配すんな」
勇者はそう言って、剣を振るった。
- 561 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 19:54:19 ID:tDlbi7FQ
閃光を切り裂いて、肉色の大樹に真っ直ぐに飛ぶ一刃。
少女「馬鹿者が!!」
彼が使った剣技。
伝承にのみある記され、実在しないと言われた幻の剣技。
勇者のみが使えると言われ、悪しき物を切り裂く聖なる一刃。
その名を形容する物はなく、その剣技はただ――。
<強き一裂き>
そう呼ばれていた。
- 562 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 19:54:51 ID:tDlbi7FQ
それは、肉色の大樹に触れるやいなや、金属の共振音に似た、澄んだ音をたてて消えた。
呆気ない幕切れだった。
大樹は枝先から光の花びらとなって消えていく。
全て消えるとそこには意識を失った僧侶が倒れていた。
- 563 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 19:56:03 ID:tDlbi7FQ
今回の更新はおっぱいになります。
- 564 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/13(月) 20:15:57 ID:/85SKqZI
おつぱい
- 565 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/13(月) 20:48:18 ID:yo0nyEuc
おっぱい
- 569 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/14(火) 20:19:42 ID:7qgTY6e2
本編との温度差が酷いですね。
- 571 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:34:07 ID:kJFMtZTo
ちょっと更新します。
もうちょいで終わります。
おっぱい
- 572 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:35:40 ID:kJFMtZTo
今すぐ駆けつけたい。
地に伏した僧侶を抱きしめたい。
謝りたい、叱りたい。
でもそれは――。
魔法使い「君の役目だ、勇者」
勇者「あぁ、分かってる」
勇者が僧侶の下へ駆け寄っていく。
- 573 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:36:17 ID:kJFMtZTo
少女「まったく、彼は後先という物をもう少し考えるべきだ」
戦士「あの技にはそこまでの代償があるのか?」
少女「とびきり大きい代償だ、ほかに方法が無かったから仕方ないかもしれないが……」
こちらでは不満げな顔をした少女と、深刻な顔をした戦士が話し込んでいる。
僕は。
何だか居心地が悪いので、その辺をふらつく事にした。
- 574 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:37:03 ID:kJFMtZTo
魔法使い「結局僕はまた何にもできなかったな」
居心地の悪さの正体は自己嫌悪。
仲間を助ける為に張り切ったは良いけど、結局失敗したのと変わらない。
勇者の‘アレ’も、少女の反応からすると、大きな代償を必要としたのだろう。
僕に邪精をどうにかできる力があれば使わなくて良かった物なのに……。
- 575 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:37:42 ID:kJFMtZTo
ある程度歩くと、大きな樹木があった。
木の幹に寄りかかると、枝の合間から蒼い空が見える。
魔法使い「僧侶に謝らなきゃな」
そんな事を考えている内に、段々と微睡んでいく。
色々あったしな。 駄目だ、疲れてうまく考えられないや。
- 576 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:39:15 ID:kJFMtZTo
「起きて? 風邪引いちゃうよ?」
優しげな声が聞こえる。
どうやら結構寝ちゃったみたいだ。
この声は……。
魔法使い「僧侶?」
僧侶「えへへ、おはようございます」
なんか可愛い生き物がこっちを見て照れ笑いしてるや。
- 577 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:40:29 ID:kJFMtZTo
僧侶「みんななんか優しすぎて居づらくてね、逃げてきちゃった」
何だか落ち着きがないな。
いや、落ち着きがないのはいつも通りか?
僧侶「魔法使いちゃんなら、叱ってくれるよね。 馬鹿だって、考えなしの性悪女だって」
成る程、罪悪感でみんなと居れない訳ね。
魔法使い「やれやれ、仕方ないな」
右手に力を込めて振りかぶる。
僧侶「っ」
身をすくめる僧侶。 その頭上に手刀を打ち下ろす。
僧侶「……痛いです」
魔法使い「割と本気でチョップしたからね」
こっちの手も痛い。 石頭め。
- 578 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:41:22 ID:kJFMtZTo
魔法使い「次は僕にビンタなりなんなりしてくれ、僕の所為で……」
僧侶「なんのことか分かりませんが……」
両手を広げて僧侶が近づいてくる。
魔法使い「きゃっ!?」
僧侶に抱きしめられた。
- 579 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:42:14 ID:kJFMtZTo
魔法使い「何?」
僧侶「失恋……しちゃってるんですよ? 私」
だからって僕の胸に顔を押しつけなくたって……。
小さいから抱き心地も、なんて頭に過ぎったので腹が立ったからもう一発チョップをお見舞いする。
僧侶「ふぎゅ!?」
魔法使い「まぁ、勇者はきっと今回の事を理解はしてないから」
たちの悪い魔物に襲われた程度の認識だろう。
僧侶「違うんです」
吐く息は震えていた。
- 580 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:42:59 ID:kJFMtZTo
僧侶「先日、少女さんは勇者様は世界と同義だと仰っていました。 邪精に飲み込まれた意識の中、私にとって勇者様とは何なのか、考えました」
僧侶立ち上がりあたりを見渡しながら言葉を続ける。
僧侶「勇者様は世界と同義です」
僧侶は穏やかな笑みで言った。
- 581 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:43:56 ID:kJFMtZTo
僧侶「私は、この世界が堪らなく愛おしいです。 魔法使いちゃんや、戦士さん、少女さんが居て、様々な命芽吹くこの世界が。 そして、勇者様が命を懸けて護ろうとしているこの世界が、大好きです」
夕陽の中、慈しむような微笑み。
僧侶の宗教の、運命を司る天使を思わせる。
運命を受け入れた者を祝福し、運命に抗う者を守護する慈愛の天使。
僧侶「私は、この世界を愛し続けます。 それが、私の勇者様へ対する気持ちの結論です」
魔法使い「強いね」
優しさはこうも人を強くするんだね。
――――――――――――――――――――――――――
- 582 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 00:45:33 ID:kJFMtZTo
今回の更新は以上になります。
次回は本編と塔の魔女と少年の日常、どちらにしようか悩みます。
おっぱい。
- 583 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/17(金) 01:15:01 ID:CK.iZf96
おつ!日常に1票。
- 584 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/17(金) 02:14:47 ID:iXtjgYaI
たまには日常がみたいかな
- 585 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/17(金) 02:21:20 ID:ZAaEuWes
日常に一票!
少年と魔女のいちゃラブが見たい
- 586 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/17(金) 06:29:39 ID:mICVTfv6
ん〜、本編、というより回想がもう少しで終わるというなら先に終わらせてその後少年とのイチャラブでもいいと思うよ
- 587 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 10:19:04 ID:56HW9Vw.
次の話よりも今の話をさっさと書け
- 588 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:27:06 ID:V4JBu9gQ
少し更新します。おっぱい。
- 589 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:27:39 ID:V4JBu9gQ
―――――――――――――――――――――――――
少年「…………」
魔女「ん……? どうしたんだい」
気付いていないのなら、言う必要は無いですよね。
安楽椅子に身体を預けた魔女が、今にも泣き出しそうだなんて。
- 590 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:28:25 ID:V4JBu9gQ
少年「いや、なんでもないよ」
魔女「自分でも、よくここまで覚えて居るもんだと感心するよ」
塔の窓から射す夕陽が魔女を柔らかく包んでいます。
僧侶が照らされていた、ていう夕陽もこんな夕陽だったのでしょうか。
魔女「さて、僕の思い出話もそろそろ終わりだね」
少年「魔女、ごめん」
きっと、この思い出は魔女の一番奥に、大切に、傷つかないように、風化しないようにしまっていたんでしょうから。
- 591 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:29:19 ID:V4JBu9gQ
魔女「少年、君が何を謝っているかはだいたい分かる、でも良いんだ」
魔女は立ち上がり僕を見ます。
魔女の、夜空みたいに深い紫色の瞳には僕が写っています。
魔女「ほら、君の瞳に僕が写っている」
魔女「僕は君の一部だ、君が僕の一部であるように」
魔女「すべてを分かち合う事に謝罪も謝礼も存在しなくて良いだろう?」
魔女の声は、優しくて。
魔女「さぁ、長い長い思い出話もそろそろ終わりだ」
少年「うん」
――――――――――――――――――――
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