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少年「あなたが塔の魔女?」
196 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/06(金) 21:31:58 ID:P5vRVpb.
更新します。

魔女視点になります。


197 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/06(金) 21:38:43 ID:P5vRVpb.



 塔の外――。


魔女「やれやれ、本格的に復活するつもりなのかい? こんなに障気を振り撒くなんて」


 豊かな緑に包まれていた深い森は、見る影もなかった。

 草木は噴き出す障気に充てられて、枯れ果てている。

 運悪く障気に適合してしまった樹木は植物である事を辞めて、醜悪な巨躯を揺らしながら獲物を探して彷徨いていた。

 目の前の光景に落胆はしたが、予想通りでもありなんだか複雑な心境だ。

 局所的にではあるが、顕現されてしまったのであろう。

魔女「二百年ぶりだね、この光景は」


198 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/06(金) 21:39:33 ID:P5vRVpb.

 魔王と呼ばれ、世界を恐怖に陥れていた者が住まう魔の聖域。

魔女「魔界を一人で攻略なんてまったく無茶な話だよ」

 小さなポーチにありったけ詰めて来た魔術具の中から、毒々しい液体の詰まった小瓶を取り出す。


魔女「これを作った自分自身の美的センスを疑いたくなるね」

 この毒々しい液体の効果は、簡単に説明するならば魔力のドーピング。

 もちろん身体に良い訳ないけど気にする必要はない。

 むしろこの身体に何らかのダメージを残せるならば喜ばしいくらいだ。


199 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/06(金) 21:40:03 ID:P5vRVpb.

魔女「うぇ、やっぱり不味い。 戦士が作ったシチューの次に不味い」

 だが、魔力は満ちていく。

 全身を引き裂くような痛みは気にしない。

 どーせ死にはしないんだ。

魔女「景気付けに一発キツいのをお見舞いしちゃおうかな?」

 いつの間にか塔を取り囲んでいる多種の魔物の群れ。

 どいつもこいつも一度は見たことがある種族。

 奥に居るあの魔物なんて数体で小さな国は滅ぼすような凶悪な種の筈だ。

 空から僕を睨んでいるあの魔物は、龍の近種だった気がする。

 おとぎ話なら各山場に登場するような魔物ばかりだ。


 まったく……。


魔女「雑魚はお呼びじゃないんだ、退場願おうか」


200 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/06(金) 21:40:17 ID:P5vRVpb.

魔女「〜〜」

 使うのは、否応無しに対象を死の淵へと引きずり込む亡霊を使役する魔法。

 障気は亡者にとってはそれは心地いいのだろう。

 群れを一掃するには多すぎる程の亡者が呼び出しに応じ、魔物の魂を食い荒らしていく。


魔女「僧侶はこの魔法が嫌いだったんだよな」


 昔、肩を並べて闘った仲間の事を思い出して、苦笑いしてしまう。

魔女「僕が僧侶に怒られたら君たちの所為だからね?」

 なんとなく言い訳をすると、森だった場所の奥へと進む。

魔女「少年が起きる頃までにすべてを終わらせる事ができると良いんだけどな」


201 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/06(金) 21:41:34 ID:P5vRVpb.
更新は以上です。

魔女視点終了です。

次の更新からは少年視点になります。


205 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/09(月) 23:41:09 ID:PNGj/u3.



 夢を見ました。


 悲しい、悲しい夢でした。


 魔女は長い永い間、ひとりぼっちだったようです。

 彼女は――。
 魔王を倒した勇者の仲間でした。

 彼女は――。
 とても優しい‘人間’でした。
 彼女は――。
 ‘人間’である事を辞めてまで仲間の幸せを願いました。


 そうして、止まってしまった時の中で、魔王の墓標であるこの塔で独り墓守を続けてきたのです。


206 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/09(月) 23:41:24 ID:PNGj/u3.

少年「魔女……」

 外は完全な形の月が空に浮かんでいます。

 腐った血のように濁った赤です。

少年「痛っ」

 頭に鋭い痛みを感じて思わず目を瞑ります。

 瞼に浮かんだのは、魔女の姿でした。

 魔女は村に居て、村人たちが魔女に詰め寄っています。

 魔女は疲れきっていました。

少年「魔女を……助けなきゃ!」
 僕は塔を飛び出しました。


211 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/20(金) 21:46:20 ID:11VidndE
遅れてすいません。

更新します。

魔女視点となります。


212 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/20(金) 21:47:23 ID:11VidndE




 さて、どうしようか。

魔女「村も壊滅、か」

 村には人間はもう数えるほどしかいなかった。

村人「あぁああああっ」

魔女「〜〜」

 指先から爆発を起こす光球を飛ばす。

 村人の頭部が抉れて吹き飛ぶ。

魔女「まだうごくのか、面倒な魔物になったものだね」


213 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/20(金) 21:47:50 ID:11VidndE

 村の中に人間はもう数えるほどしか居ないだろう。


 その数人を犠牲にしてあたり一面を焦土に変えてしまえばどれ程楽だろうか?

魔女「〜〜」

 指先に魔力を込める。

 結局、僕の指から放たれるのは、先程と同じ小さな爆発を起こす簡素な魔法。

魔女「なんだかんだ甘いね僕も」

 脳裏に過ぎるのは遠い昔に交わした約束。

 力の使い道が分からなかった僕に、この力は護る為の力だと言ってくれた仲間。

魔女「さて、各個撃破といこうか」


214 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/20(金) 21:52:11 ID:11VidndE

 村を歩き回り、遭遇する魔物を一体ずつ倒す。

 魔力は無駄になるが、他にやりようがないので仕方ない。


魔女「やっとこれで十か……正直疲れたな」


 魔力にはまだ余力はある。

 問題なのは体力だ。

魔女「鍛錬しなきゃ駄目だ。 今度から階段でもはしろうかな」


215 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/20(金) 21:52:42 ID:11VidndE

 暗く迷路のような家々の間を歩きながらぼやく。


村人「うあぁああああ」

魔女「〜〜」

 向かってきた村人だった存在に爆発する光球を飛ばす。

 肉がはぜ、崩れ落ちる。

魔女「何体いるやら」

村人「いぃいぃああ」

魔女「ッッ!?」

 油断した。 

 目の前に気を取られすぎて、後ろの奴に気がつかなかった。


魔女「〜んぅっ!?」

 村人の手が伸び、口を押さえつけられた。


216 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/20(金) 21:55:18 ID:11VidndE

 途方もなく不快なその感触。

 まずい。 呪文が使えなければなにもできない。

村人「あぁうっうっうぅえかかかかか」


 耳慣れない奇声。

 仲間を呼んでいる?

村人「えぅえぅぇ」

 長く延びた舌が頬をなぞる。

 空いているもう片方の手が無遠慮に僕の体を弄る。

 嫌だ。 気持ち悪い。 

 外套の中に手が入ってくる。

 直に脇腹、大腿部などを粘着質な粘液まみれの指が這う。


217 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/20(金) 21:55:42 ID:11VidndE

 嫌だ、嫌だ、気色悪い。

魔女「やめ…んぐぅ」

 口を塞がれて呪文も使えない。

村人「えぅえぅぇ」

村人「うっうぅえかかかかか」

村人「おぉあぁあぁあああ」

 絶望が歩いてきた。

 なんとなく、この後自分がどうなるかわかる。

 諦める訳にはいかないが、チャンスが来るまで僕は正気を保つ事はできるだろうか?

 他人ごとのように自分の置かれた状況を考えたところで僕は、心のスイッチを切ることにした。


220 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/26(木) 23:13:53 ID:i/XEOTkw
更新再開します。引き続き魔女視点となりますが、性的な描写がありますので苦手な方はご注意下さい。


221 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/26(木) 23:15:35 ID:i/XEOTkw


魔女「……」

 ざっと10人は居る、か。

 どいつもこいつも醜悪な顔をしてる。

 拘束はゆるむ気配もない。

村人「ぐけけけ」

魔女「んうっ!」

 外套が引き裂かれて、肌が露わにされた。

 衆目に晒せるほど、自信のある肉体はしていないというのに。

 無遠慮に、肌に触れられているのが不快だ。

 済ますのならば早くしてくれ。


222 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/26(木) 23:16:20 ID:i/XEOTkw

村人「うぅううぅぅ」

 男性器を露出させ、雄叫びをあげている。

 意志があるようにグネグネと蠢くそれは、僕の大腿部に近い太さだ。

魔女「ッ」


 これから行われるであろう行為に怖気がする。

 初めての男女の営みには痛みが付き物というのは通説だが、これはその範疇では済まない痛みだろう。

 いっそ殺害衝動だけある方がまだましだったろうに……

 そうではないのが人間だった名残だというのは、なんとも悲しい話だ。


223 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/26(木) 23:16:59 ID:i/XEOTkw

村人「えぃうぅああああ」

村人「おぉうぃあ」

 脚に巻きついた触手が無理矢理に広げさせらる。

 ドロワーズ越しに、陰部をさすられる。

 愛撫のつもりだろうか?

 反吐が出る。

 手持ち無沙汰な他の村人がその凶悪な男性器を身体の至る所に押しつけてくる。

 熱く脈打つソレを、グリグリと直に押し付けられる。

 生臭い。 気持ち悪い。


224 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/26(木) 23:18:25 ID:i/XEOTkw

村人「えぁああいぃうう」

 ドロワーズが破かれる。

 とうとう、その瞬間か。


 別に純潔を守りたかったわけではないが、なんだかんだで二百余年も守り続けた物がこうもあっさりと奪われるのは悔しい。

 勇者にでもくれてやれば良かったか。


 不意に、級友の顔を思い出してしまったせいか、涙が頬を伝った。


225 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/26(木) 23:18:47 ID:i/XEOTkw

 あぁ、やっぱり嫌だ。

 誰か……助けてよ。












少年「魔女ぉぉ!!」


 あぁ、夢かな?

 彼なら塔でお留守番を頼んでいたはずだもの。

少年「助けにきたよ、魔女!」
 夢でも良い。

 こんなにうれしいのは随分と久々なんだから。


227 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/27(金) 05:57:24 ID:6ScXaz76
よかった 少年が助けに来てくれた


228 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/27(金) 15:02:19 ID:iHVCIpes
来たのはいいが少年で大丈夫なのか…?

とにかく頑張れ少年

( ・ω・)っC"


232 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:08:55 ID:3NThupvc
支援感謝です。再開します。
少年視点になります


233 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:10:02 ID:3NThupvc



 村につきます。

 走り続けたせいで心臓や肺が抗議の痛みを発しています。

 ちょっと黙っていて欲しいです。

 身体の痛みなんかより、ずっと心が痛いんです。


 心も身体もう少し持ち主の意志を尊重して欲しいですよね。


少年「魔女! どこにいるの!」

 魔女に何かあったら。


 考えるだけでも嫌です。

 だから、今は村をひたすら走ります。


234 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:11:05 ID:3NThupvc

少年「魔女!」

 村のはずれに魔女は居ました。

 なにやら魔物に襲われています。

村人「うぃあああああ」

 怖くはないです。


 魔女に何かあったりした方がよっぽと怖いです。


235 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:13:53 ID:3NThupvc


少年「うおぉぉ!!」

 魔女に酷いことをする奴なんて許せません。

 だから。


村人「うげぇえお」


 思い切り体当たり。

 魔女に嫌なことをしようとしていた奴を押し倒します。

 いきなりの出来事で魔物も驚いています。

 知ったこっちゃないです。

少年「うあああああ!」

 地面の石を掴むとそのまま魔物の頭に振り下ろしました。


236 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:14:50 ID:3NThupvc

村人「うあああああ」

村人「うぃあああああ」

少年「ごぇっ」

 お腹で何か爆発したみたいな衝撃でした。

 何メートルも吹き飛ばされて、自分が触手に殴られたということに気がつきます。


魔女「んー!んー!」


 魔女が何か叫んでます。

少年「待っててね、い……ま、たすけるから」

 なにやら、お腹の辺りの感覚がありません。

 触ってみるとどうやら折れたりなんだりと大変みたいです。


 でも、まだ身体は動きます。


237 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:15:39 ID:3NThupvc


 痛みなんて痛いだけです。


少年「魔女を……離せ!」



 次は腕に激痛。

 触手に横薙ぎにされて、吹き飛ばされました。

 左腕がおかしな方向にひしゃげてます。

 でも身体はまだ動きます。

魔女「んんー!」

 魔女の瞳と頬が濡れています。

 魔女を泣かせてしまいました。
 『女は、泣かせるもんじゃなくて笑わせるもんだ』というお兄ちゃんの言葉を守れませんでした。


238 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:16:29 ID:3NThupvc

 でも――。

 『本当に大切な物は何があっても守りなさい。 貴方の大切な物を守ることができるのは貴方だけよ?』

 母さんの言葉、これだけは破る訳にはいきません。


 家族を守れなかった僕だから。

村人「うぇあぅあぁあああ」


少年「うぁっ」


 また触手に吹き飛ばされました。

 もう、全身痛いです。 痛くないところがわからない程です。

 でも、身体はまだ進めます。


 身体を動かしているのは僕の意志です。 全身の抗議の痛みは今回も無視です。


239 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:20:10 ID:3NThupvc

村人「うぇあぅあぁあああ」

魔女「んんー!んんー!」


 早く魔女の涙を止めなくちゃ。

 魔女は泣いているべきじゃないです。

 辛い過去の分笑っていなくちゃ駄目なんです。


 だから。

少年「魔……女ぉ」


村人「ぅあぇえ」

 吹き飛ばされないように、精一杯地面を踏みしめて。


村人「あぁうあああ」

少年「んぅっ」

 心配かけないように歯を食いしばって声を我慢します。


240 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:20:58 ID:3NThupvc

 一歩、一歩と歩みを進めます。

 視界がぼんやりとしてきます。
 意識が今にも飛んでしまいそうです。


 だけど、魔女の顔だけははっきり見えます。 見えているから進めます。


少年「……けるから」

魔女「んぅう!んー!」


 だからそんな顔しないでよ。

少年「絶対…助けるから」


241 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:24:50 ID:3NThupvc


村人「ぅあぇえ」

 魔女の口を塞いでいる魔物が触手で僕を叩きます。

 口の中が鉄の味です。

 でも、あと五歩。


少年「魔女……助けに、来たよ!」


 あれ?

 おかしいな。 なんで僕は魔女を見上げているんでしょう?

 進みたいのに身体の感覚が無いです。


242 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/07/31(火) 21:25:10 ID:3NThupvc

少年「うぁ」

 魔女の拘束をしていた触手が僕の身体に力いっぱい叩きつけられました。


 魔女……ごめんね


魔女「少年っ!」


 あぁ、でも魔女の口の拘束が外れたみたいだしいいか。


魔女「〜〜〜〜〜〜」


 魔女が歌を口ずさむような、それでいて、凄く力強いような、そんな口調で呪文を唱えました。

 心臓の辺りがポカポカしてきたのを感じました。



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