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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その31
- 860 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2011/09/08(木) 18:37:20.36 ID:/bKvzhT+o
〜スグリーヴァの城〜
白馬騎士「何故こんな所へ……魔王が……っ」
剣士「……くそぉ」
スグリーヴァ「驚いたぞラーヴァナ。まさか貴様が直々に訪れるとはな」
ラーヴァナ「戯れだよ。折角、戦が始まったと言うのに、俺も城に篭りっ放しでなぁ」
スグリーヴァ「わざわざご足労頂いて結構な事だ。何れ、こちらから訪ねると言うのに」
ラーヴァナ「フハハッ! そうかそうか、それは済まぬ事をした」
ハヌマーン「……ッ」
ラーヴァナ「なんせ皆が張り切るものでなぁ。皆殺しにしてしまうかと思ってな」
スグリーヴァ「笑わせるな」
ラーヴァナ「全く、そのようだ」
ヴァーリン「ウ……ゥ……」
ラーヴァナ「既に陥落させているかと思えば、何だこれは」
ヴァーリン「申し訳……ありません……」
ラーヴァナ「しかもだ、ラクシャーサすら統制出来ぬとは……情けないと思わぬのかぁ」
- 861 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:38:49.11 ID:/bKvzhT+o
スグリーヴァ「待て、もう良かろう」
ラーヴァナ「……何だ? 裏切り者だが実の兄はやはり見捨てて置けぬか?」
スグリーヴァ「そうではない」
ラーヴァナ「安心せよ、殺したりはせんよ」
オーク「……ッ」
ラーヴァナ「楽に殺して慈悲を与えるなど、サタンじゃあるまいしなぁ」
ヴァーリン「……ウ……アァ」
ラーヴァナ「最後のチャンスだ。せめて弟と群がる屑共を道連れにせい」
パアアァァァァ
マーマン「な、何をしてやがる……っ!?」
ハヌマーン「魔王の魔力を分け与えておるのだ……っ」
ラーヴァナ「最後の力だ。最早、止める事は出来ぬ。苦しみもがき死ねい」
ドンッ!!…ズッゴアアァァァァ!!
兄者「な――っ」
スグリーヴァ「ぬううぅぅん!!」
- 862 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:39:26.63 ID:/bKvzhT+o
ガガガガガガッ!!
ヴァーリンに送り込まれた魔王ラーヴァナの力。どす黒いオーラを放つそれは、
燃え尽きる蝋燭の最後の炎のように、ヴァーリンの全身をゆらゆらと漂い続ける。
その力に押し出されるように、ヴァーリンはまたしても隕石のような突撃を見せ、
咄嗟にそれを支えたスグリーヴァは勢いに押され、ずるずると引き摺られていく。
絶望的なこの状況下において、唯一の救いはヴァーリンの背後に居た凶悪な気配。
白馬騎士「魔王は!?」
錦将軍「いねぇ! どこ行きやがった!?」
ハヌマーン(気配を感じない……退いたか? いや、今はそれよりも……)
マーマン「ボサッとしてんな! スグリーヴァ様を助けるぞ!」
ズザザァ
剣士「ありったけの魔法をぶつけるんだぁ!!」
兄者「うおおぉぉ!!」
幼女「いっけぇーっ!!」
ドッドオオォォォォン!!
- 863 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:40:53.50 ID:/bKvzhT+o
弓将軍「ぬおぉ……っ!」
弟者「コイツは……きっついぜ……っ」
ゴゴゴゴゴゴ
オーク「スグリーヴァ様……オラが今、助けるです!!」
マーマン「もう魔力なんざ空に近けぇんだ! 頼む、止まってくれえぇ!!」
ゴゴゴゴゴゴ
弓使い「う……ううぅぅ……っ」
白馬騎士「この力は尋常ではない……おそらくは……」
ハヌマーン「ヴァーリン様の命をそのまま力としたのであろう」
白馬騎士「やはり……っ」
錦将軍「どういう事だぁ!?」
兄者「花火のようなものだろう。燃え尽きるまで耐えるしかない……っ」
弟者「無茶な話だくっそおおぉぉ!!」
剣士「でもやらねば……みんな死ぬ!!」
スグリーヴァ「その通りだ。我等だけではない、城に居る者らも皆――」
- 864 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:41:48.15 ID:/bKvzhT+o
ザザッ
ゴブリン「おりゃーっ!!」
ガーゴイル「のんびり後ろで観戦してる場合じゃないっつーの!」
マーマン「お……お前ら……ッ!!」
オーガ「フンガアアァァ!!」
トロル「俺達だけじゃねーぜぇ? 見なよ、旦那達!」
スグリーヴァ「――ッ!!」
ザザザッ
法師「怪我した者らが再び、戦場へ向かうと言うのでね」
スグリーヴァ「法師殿……ッ!! そ、それに……」
法師「ええ。彼らも……力となってくれるそうです」
ラクシャーサ「……ッ」
錦将軍「コ……コイツら何で……」
ハヌマーン「法師殿が……っ?」
法師「別に私は何もしておりませんよ。皆、自分の意思で決めた事なのです」
- 865 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:42:30.62 ID:/bKvzhT+o
……――
ラクシャーサ「くそぉ! ここから出せぇ!」
ガシャガシャッ
法師「……構いませんよ」
ラクシャーサ「……!?」
法師「しかし、出たところで貴方達はどうするのです?」
ラクシャーサ「……ど、どういう意味だ!!」
法師「外を御覧なさい。邪悪な気配が渦巻いております」
ラクシャーサ「ヴァーリン……様が押し負けてる!?」
法師「それに感じますよ、貴方のお仲間達は早々に退いているではないですか」
ラクシャーサ「……ッ」
法師「ここに仲間が囚われているというのに、何と薄情な事か……」
ラクシャーサ「うるせぇ、俺達はなぁ……テメーらみたいに群れたりしねーんだよ!」
法師「ならば、どうして大群を?」
ラクシャーサ「……し、知るかよ! ラーヴァナ様のご命令だからだ!」
- 866 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:43:21.43 ID:/bKvzhT+o
法師「貴方達の意思ではない……と?」
ラクシャーサ「そうだ、ラーヴァナ様は絶対なのだ! 俺らがどうこう言う必要はない!」
法師「それは悲しい話ですね」
ラクシャーサ「悲しいだぁ!?」
法師「そうです。貴方達は自分の為、他人の為に生きた事はないのですか?」
ラクシャーサ「……意味分かんねぇよタコ!」
法師「言われるがままにそれだけを延々と繰り返す。そんな生き方が楽しいのですか?」
ラクシャーサ「楽しいとか……そんなん関係ねーだろ!!」
法師「……そうですか」
ラクシャーサ「俺達はラーヴァナ様の兵隊なんだ! それが誇りなんだよ!」
法師「……成程、自分の意思がないわけではないようですね」
ガチャッ
ラクシャーサ「――ッ!?」
法師「ならば行きなさい。自分の意思をもって、自分の行動を為すのです」
ラクシャーサ「バ……バカかお前!?」
- 867 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:44:15.53 ID:/bKvzhT+o
法師「心外ですね。行かないのですか?」
ラクシャーサ「何なんだよお前! お前と話してると調子狂うんだよ!」
法師「貴方達はしっかり自分の意思を持っている。ならばそれで良い」
ラクシャーサ「……ッ!」
法師「ですがこれだけは聞いて下さい。もう互いに、命を奪う事はやめましょう」
ラクシャーサ「どうしろっつーんだよ!!」
法師「私達は争いのない世を築きあげたいのです」
ラクシャーサ「アァ!?」
法師「その為にはその根源を無くす。それは命を奪う事ではない。改めて貰いたいのです」
ラクシャーサ「……」
法師「しかし魔王にはそんな事は通じません。ですから、最小限の被害で終わりにしたい」
ラクシャーサ「ク……ッ!」
法師「貴方達はどうなのです? 自らの意思で命を奪っているのですか? それとも……」
ラクシャーサ「ウゥ……ッ!」
法師「人間を、そしてかつての仲間達を……殺しているのですか? 違うでしょう!」
- 868 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:44:52.60 ID:/bKvzhT+o
ラクシャーサ「うるせええぇぇ!!」
ズッドオオォォォォン…
ラクシャーサ「……な、何の音だ……っ!?」
ババッ
法師「……っ!」
ラクシャーサ「な、何だよあの爆発は……っ」
法師「……私は目が見えません。しかし分かる。今、無数の命が散っていった……」
ラクシャーサ「!?」
法師「何か巨大な、邪悪なる力が現れ……貴方達の同胞が散った……っ」
ラクシャーサ「ま、まさか……そんなっ! ラーヴァナ様が来て下さったのか!?」
ザワザワッ
ラクシャーサ「そうだ! あんな力を出せるのはラーヴァナ様しかいない!」
法師「……何と悲しい事か」
ラクシャーサ「…………」
法師「己の部下を何の躊躇も無く、一瞬の内に……」
- 869 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:45:28.42 ID:/bKvzhT+o
ラクシャーサ「……逃亡は死に値する。そういう事さ」
法師「では、貴方達も死ぬわけですか……」
ラクシャーサ「……俺達は負けたんだ。仕方ねぇんだよ!」
法師「何の為に生まれ、何の為に死んでいくのか……哀れで悲しい話だ」
ラクシャーサ「
テメーに何が分かるってんだよぉ!!」
ガシィ!!
法師「構いませんよ、殺すなら殺しなさい。しかし、何の解決にもなりませんよ」
ラクシャーサ「……クゥ!」
法師「結局、何も残す事なく死んでいく。それだけです……」
ラクシャーサ「クソッ、クソッ、クソォーッ!!」
法師「手を……離して貰えませんか?」
ラクシャーサ「……逃げんのかよ」
法師「いいえ、まだ生きている者もいるはずです」
ラクシャーサ「だからどうした!!」
法師「だから、救いに行くのです。まだ間に合います。そうか離して貰えないでしょうか」
- 870 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:46:00.52 ID:/bKvzhT+o
ラクシャーサ「……す、救う……だとぉ!?」
法師「はい」
ラクシャーサ「俺らはテメーらの敵なんだぞ!? 何で助ける必要があるんだ!!」
法師「……生きているからです」
ラクシャーサ「――ッ!!」
法師「生きている者の命が失われようとしているのです。だから救う……それだけです」
ラクシャーサ「バ……バカなんじゃ――」
ズッドオオォォォォン!!
ラクシャーサ「ま、まただ……っ」
法師「時間がありません、私は行きます」
ラクシャーサ「俺にも今見えたぞ……ッ、仲間が……紙クズみてーに吹き飛んで……」
ザシャッ
ラクシャーサ「……お、俺は……行くぞ!」
法師「……」
ラクシャーサ「俺もだ! 俺もコイツと一緒に……行く!」
- 871 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:46:54.42 ID:/bKvzhT+o
ザワザワ…
ラクシャーサ「行くったってどうすんだよ……」
グググッ
ラクシャーサ「何だっていいさ、とにかく仲間を助ける、そんだけだろ!」
法師「皆さん……っ」
ラクシャーサ「どうせラーヴァナ様に殺されるんだ、助けられる奴だけでも助けようぜ」
タタッ
ラクシャーサ「おい待て! ちっくしょおぉ……行きゃいいんだろ、行きゃあよおぉ!!」
ダダッ…タッタッタッタッタ
ラクシャーサ「……なぁ」
法師「……はい」
ラクシャーサ「何でここには、こんなに多くの魔族が住んでるんだ?」
法師「皆、楽しく生きたいからですよ。皆で笑って、楽しく暮らしたいからですよ」
ラクシャーサ「……なるほどな、楽しく……か」
――……
- 872 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:47:47.94 ID:/bKvzhT+o
ゴゴゴゴゴゴ
ラクシャーサ「ぬ……りゃああぁぁぁぁ!!」
マーマン「お、お前ら……」
ラクシャーサ「勘違いすんな! 俺らは俺らの仲間を助けたい、そんだけだ!」
オーク「お、おぉ……ッ」
ラクシャーサ「ムカつくんだよテメーらは! 人間なんぞに加担しやがってぇ!」
ハヌマーン「良いものだぞ、そういう暮らしもな」
ゴブリン「そうそうっ!」
ラクシャーサ「うるせぇ!!」
スグリーヴァ「何と言う事か……」
ゴゴゴゴゴゴ
スグリーヴァ「これぞ、これぞ我が望みよ……ッ!」
ハヌマーン「ええ、スグリーヴァ様の望んだ世界が現実となったのです……!」
スグリーヴァ「見えるかヴァーリンよ、いや……もう意識はないだろう。だが感じるであろう?」
ハヌマーン「スグリーヴァ様……!?」
- 873 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:48:20.44 ID:/bKvzhT+o
パアアァァァァ…
マーマン「な、何だぁ!?」
剣士「スグリーヴァ様の体が……光って……」
スグリーヴァ「皆の者、よく聞くのだ。これより私が、ヴァーリンを食い止める」
白馬騎士「!?」
スグリーヴァ「皆は魔力を全て、我にぶつけよ!」
弓使い「何言ってるの!? そんな事したらスグリーヴァ様が……」
スグリーヴァ「それ以外に方法はない。それに、その程度で我が死ぬとでも?」
オーク「……ッ」
スグリーヴァ「時間がない、兄弟であるこの身ならば、ヴァーリンの力を吸収出来る!」
錦将軍「ど、どうすんだぁ!? 早く決めてくれぇ!!」
白馬騎士「ハヌマーン殿!」
ハヌマーン「……」
スグリーヴァ「ハヌマーン、お前も分かっておるだろう?」
ハヌマーン「……ッ!」
- 874 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:49:40.00 ID:/bKvzhT+o
ジャリッ
ハヌマーン「……全魔力を……スグリーヴァ様へ撃ち放つのだ!」
剣士「……っ!!」
スグリーヴァ「それで良い。それで良いのだ」
兄者「良いのだな? 撃つぞ……?」
幼女「……っ」
ハヌマーン「……撃てぇ!!」
そこにいる誰もが、結末は見えていた。
凄まじい力を防ぎながら、一身に魔力を背負い、力を放つ。
本人の口から大丈夫だと言ったそれが、嘘である事は明白であった。
だが、撃った。スグリーヴァの意思、そしてハヌマーンの意思を汲み取った。
僅かな時間ながらも別の策を模索したが、他に策などなかった。
スグリーヴァは既に覚悟を決めていた事は、誰もが知っていた。
別に望みを叶えるべく撃ち放ったわけではない。すがるように、スグリーヴァの言葉を信じた。
生きて欲しい。ただ、それだけを願って。
- 875 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2011/09/08(木) 18:52:02.10 ID:/bKvzhT+o
本日もご支援感謝です!パワー貰います!ありがとう!
ここまでにて失礼致します!それではまた!ノシ
- 886 名前:NIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2011/09/08(木) 23:40:28.53 ID:z76RfNrAO
検索したらラーヴァナがめっちゃキモくてびっくりした。せめて顔は3個くらいにコンパクトにおさめておけよ。顔が10個とかいい的じゃねーか
- 887 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/09(金) 18:09:00.40 ID:5ZvAiEOFo
……――
スグリーヴァ「ヴァーリンよ、我が声が聞こえるか?」
ヴァーリン「…………」
スグリーヴァ「いや、聞こえておろう。今は最早、精神でつながっておるのだからな」
ヴァーリン「……」
スグリーヴァ「貴様にも見えたであろう? あれが私の望んだ世界の形だ」
ヴァーリン「……馬鹿だな。所詮それは魔族と一部の人間同士の繋がりでしかない」
スグリーヴァ「……」
ヴァーリン「所属問わず、差別無く、分け隔て無く、世界が成立するとでも思っているのか」
スグリーヴァ「それは時が解決してくれるさ」
ヴァーリン「何?」
スグリーヴァ「今すぐにどうこうする必要はない。時間を掛けてゆっくりと互いが理解しあえば良いのだ」
ヴァーリン「行く末も見ずに死んでいくとは……哀れな奴だ」
スグリーヴァ「哀れ? 哀れな事などあるものか。貴様の弁は的外れも甚だしいぞ」
ヴァーリン「何だとぉ……!?」
- 888 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/09(金) 18:09:41.65 ID:5ZvAiEOFo
スグリーヴァ「我の役目は行く末を見定める事ではない。切欠を与える事に過ぎぬ」
ヴァーリン「……」
スグリ−ヴァ「幾星霜を経て、ようやく時代が動き出したのだ」
ヴァーリン「うまくいく保証はないぞ」
スグリーヴァ「無論だ。さすればそこまでの事。それもまた宿命よ」
ヴァーリン「諸行無常か。本当に馬鹿らしい」
スグリーヴァ「だが、少なくとも今の時代では、為し得ると思っておるぞ」
ヴァーリン「何を根拠に……」
スグリーヴァ「根拠はある。それ程の人間が今生には揃っておる」
ヴァーリン「たったそれだけで……。人間の愚かさは貴様もとくと見てきたはずだ」
スグリーヴァ「ああ、見てきた。しかし人間は成長している。進化し続けている」
ヴァーリン「……」
スグリーヴァ「人間同士で領土を巡り、殺しあっていた時代は終わり……」
ヴァーリン「……」
スグリーヴァ「魔族と人間が争う長き時代も今、終わりを告げようとしているのだ」
- 889 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/09(金) 18:10:09.37 ID:5ZvAiEOFo
ヴァーリン「今度は魔族と人が共存するとでも言うのか? 笑わせる……」
スグリーヴァ「ヴァーリンよ、貴様は何も感じなかったのか?」
ヴァーリン「あ?」
スグリーヴァ「我が城へ踏み込んだ際、違和感を感じなかったかと聞いているのだ」
ヴァーリン「……」
スグリーヴァ「まぁ、周りを見渡せぬ貴様には、到底気にも留めぬ事か」
ヴァーリン「何が言いたい」
スグリーヴァ「此度の戦において、私の最大の敵は貴様。そう、貴様さえ葬ればそれで良いのだ」
ヴァーリン「……」
スグリーヴァ「被害は最小限に。つまりは貴様を道連れに死すればそれで良かったのだ」
ヴァーリン「良かったな。念願、叶ったではないか」
スグリーヴァ「思わぬ援軍が多数現れたが、毛頭、兵など置くつもりはなかった」
ヴァーリン「……待て、貴様まさか……ッ」
スグリーヴァ「気付いたかヴァーリンよ。そうだ、猿兵共の姿が見えぬであろう?」
ヴァーリン「――ッ!!」
- 890 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/09(金) 18:11:12.23 ID:5ZvAiEOFo
〜分かれ道〜
パッカパッカパッカ
華国兵「へ……陛下!?」
ザザッ
三男「ご苦労。お力添え感謝するぞ」
居並ぶ華国兵はほぼ全員が妙な面を身に付けており、その素顔は隠されている。
三男「すまないな。我が国も小国ゆえ、このような事態にも微弱な兵しか出せなくてな」
兵らは三男の手にに促され直立すると、ゆっくりと面を外し始めた。
猿兵「何を申されますか。それが我が主と貴方様の兄君とのお約束ですから」
三男「感謝するぞ」
猿兵「これは人間や魔族、そして我が主が長年見続けた夢」
三男「……はい」
猿兵「我が主はおそらく、この戦いで地上より姿を消すでしょう」
三男「!?」
猿兵「良いのです。あの方はその為に今日まで生き長らえていらっしゃったのですから」
- 891 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/09(金) 18:13:24.38 ID:5ZvAiEOFo
三男「……」
猿兵「今後は法師様、ハヌマーン様、そして貴方様がその意思を継いでくれまする」
三男「私と兄はすぐに死んでしまいますけれどね」
猿兵「人間の寿命は短いですからね。いや、我ら魔族が極端に長いだけか」
三男「人間や動物の一生など儚いものです。魔族こそ選ばれた種族なのかもしれませんね」
猿兵「どうでしょうね。我々や召喚獣こそが特殊なのかもしれませんよ」
三男「魔族にみお寿命はあるのですよね?」
猿兵「あると言えばありますし、ないと言えばないです。だからこそ殺される方が早いのです」
三男「……」
猿兵「ふふっ、まぁこんな事を言っても、真実が分かるわけではありませんね」
三男「ええ。ですが言える事は1つ。命は平等だと言う事です」
猿兵「仰る通りだ。それが一番、大切な事」
三男「もうすぐですよ兄上、スグリーヴァ様」
猿兵「では、警備を続けます。陛下はこちらを動かれぬよう」
三男「分かっております。動いても足手纏いですからね」
- 892 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/09(金) 18:14:18.55 ID:5ZvAiEOFo
……――
スグリーヴァ「理解出来たかヴァーリンよ。既に、動き出しているのだ」
ヴァーリン「……ッ」
スグリーヴァ「今は小さな波紋に過ぎぬが、それはやがて大きなものとなる」
ヴァーリン「ふざけた幻想を思い浮かべて、夢を語る愚か者が……」
スグリーヴァ「届いたぞ。ギリギリではあったがな」
ヴァーリン「ククッ、馬鹿な奴だ」
スグリーヴァ「貴様ももっと他人を信じるべきだったな」
ヴァーリン「俺は俺だ、お前とは違うのだよ」
スグリーヴァ「共に歩む道もあったであろうな」
ヴァーリン「何れまた繰り返されるぞ」
スグリーヴァ「その時はまた現れるさ、救世主がな」
ヴァーリン「……とんだ罪人だよ、貴様はな」
スグリーヴァ「分かっている。だから消えるのだ。そして全てが終わった時、同様の事を思うであろうな」
――……
- 893 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/09(金) 18:14:59.23 ID:5ZvAiEOFo
゙カアアァァァァ!!…シュウウゥゥゥゥ
マーマン「……ッ」
オーク「あ……あぁ……」
ハヌマーン「スグリーヴァ様……ッ」
兄者「終わった……か」
剣士「……っ」
弟者「待てっ! 待て待て待て!」
シュウウゥゥゥゥ
弓将軍「光の奥から……何かが……」
弓使い「あれって……っ!!」
ズズッ…シュウウゥゥゥゥ…
白馬騎士「スグリーヴァ様!!」
マーマン「生きて……生きてやがったぁ!!」
スグリーヴァ「……ハヌ……マーン」
ハヌマーン「……ッ」
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