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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その30
528 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:37:02.65 ID:KCaamGp6o
……――

青龍先生「どういう事じゃ?」

大元帥「だから、魔王を全て討伐するのさ」

青龍先生「そのような事、出来ると思うてか?」

大元帥「あなた方が封印したパズズを移動させた事で魔王軍の力は衰えた」

青龍先生「数が減ったわけではないいわい」

大元帥「しかし個々の力は間違いなく弱まった」

青龍先生「……確かに。それも何れは回復するじゃろうしな」

大元帥「そう。奴らの力が戻る前にこれを叩く」

青龍先生「……」

大元帥「その為に軍を、国を変えてきたのだ」

青龍先生「どの程度の見込みだ?」

大元帥「そうだな……およそ、30……いや、40年かな?」

青龍先生「気の長い話じゃ。儂は死んどるよ。ひょっひょ」

大元帥「俺も死んでるかもしれないな。ハーッハッハ!」


529 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:37:31.98 ID:KCaamGp6o
――……

青龍先生「そうして、魔王討伐の計画は極秘裏に進められた」

盗賊「……なるほど」

青龍先生「北と南の司令部を起点に、拠点や防衛線を整備し……」

戦士「北関やら地獄の壁やらか」

青龍先生「うむ。古の遺物も流用し、軍備を整えたのじゃ」

召喚士「結界石や道の整備もそうですよね」

魔道士「でも、よくそんな莫大な事業が出来ましたね……」

青龍先生「陛下が同調してくれてのぅ。本国の資金も基に金を集めた」

マジシャン「そこで増徴し出したのが左翼だな」

青龍先生「そうじゃ。奴らは経済発展の功を傘に着て、派閥を興し始めての」

朱雀嬢「酷い話ですわね」

青龍先生「それでもあの頃は功績もあったし、国や人を思うての事だったんじゃがの」

召喚士「左翼……」

青龍先生「まぁ裏を返せば、魔王軍に変化があったともとれたがの……」


530 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:39:02.58 ID:KCaamGp6o
……――

大元帥「内通者ねぇ」

司令官「……」

青龍先生「放っておいて良いものかのぉ」

白虎先生「このリストは……確かなのですか!?」

大元帥「残念だけど、あなたの弟子が暗躍しているのは事実だ」

司令官「なんだかあれだね。他国でも魔物と結託している連中がいるみたいだよ」

青龍先生「それで、どうするのじゃ?」

大元帥「決定的な証拠が挙がるまでは処罰は出来ない。それに……」

司令官「泳がせて、情報を得るのもいいんじゃない?」

大元帥「まぁな。そういう事だ」

青龍先生「じゃが何れは、人が人を斬る事になるのじゃろう。悲しい事じゃ」

司令官「そういう時の為のワーカーでしょ。汚名は全て被るよ」

大元帥「天才、お前……」

青龍先生「……」


531 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:40:22.75 ID:KCaamGp6o
――……

魔道士「……っ」

青龍先生「そうして少しずつ、魔王討伐の準備は進められた」

マジシャン「その頃だよな、俺らも参加するようになったのは」

青龍先生「そうじゃな。再来に、新設された特遊もか」

戦士「……特遊」

青龍先生「あれは30年前じゃったか」

マジシャン「……アンラ・マンユか」

玄武娘「アンラ・マンユって……こないだの魔王ですの?」

青龍先生「知っての通り、奴らも5年を周期に動きよる」

召喚士「……っ」

青龍先生「あの戦いも防衛だけで精一杯な、無残なもんじゃったわい」

マジシャン「ああ。ワーカーも軍人も……白虎先生も死んだ」

朱雀嬢「!?」

青龍先生「そうじゃったなぁ」


532 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:41:44.37 ID:KCaamGp6o
……――

朱雀先生「ふぅん、アンラ・マンユねぇ」

青龍先生「お主も力を貸してくれんかの?」

朱雀先生「やなこった。何のための国軍だよ」

青龍先生「返す言葉もないわい。しかしな、今回はちと苦しいかもしれん」

朱雀先生「あ?」

青龍先生「防衛線を張ったのが裏目に出てな」

朱雀先生「一点集中ってわけか。完璧にはいかねぇもんだよ。何事も」

青龍先生「儂は南の防衛にあたる。どうか白虎を助けてやってくれんか?」

朱雀先生「……場所は火山だったか?」

青龍先生「そうじゃ」

朱雀先生「なら更駄目だ。俺にはやる事がある」

青龍先生「そうか……」

朱雀先生「まぁ仕方ないわな。使えるか分からんが弟子を派遣してやるわ」

青龍先生「……すまんな」


533 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:42:19.05 ID:KCaamGp6o
――……

マジシャン「んで、俺らは討伐戦に参加した。特遊と合流してな」

戦士「特遊っつーと、もちろん親父達だよな?」

マジシャン「ああ。だが、魔王は強大すぎた。姿すら見せる前に戦は終わったよ」

盗賊「……」

青龍先生「眷属の力はとてもじゃないが、当時の戦力では抑えきれんかった」

召喚士「……なるほど」

青龍先生「かろうじて戦いは収束した。じゃが……白虎は死んだ」

マジシャン「仲間を失った特遊も失意のうちに解散。完全な敗北だよ」

召喚士「でも、よく魔王を退けましたね」

青龍先生「直接ではないが、封印を施したからの」

魔道士「封印……?」

青龍先生「うむ。火山から眷属が動けぬようにな」

戦士「ほぉ。青龍先生達が封印したのか?」

青龍先生「それはな……」


534 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:45:00.05 ID:KCaamGp6o
……――

青龍先生「これは……っ」

天才「6000人が死んで、何十万の人々の命が救われた」

青龍先生「命は天秤で量れるものではないじゃろ」

天才「だが数字は事実だ。奴らを本国にすら上陸させなかったんだからな」

青龍先生「それでこのちっぽけな領地を掠め取ったわけじゃろ」」

天才「ここに砦を作りニラミを利かせりゃ、奴らは動けねぇよ」

青龍先生「……?」

天才「ナイトさんが封印してくれた。手法も軍が伝授して引き継ぐ」

青龍先生「……それで、その本人は?」

天才「もうどっか行っちまった。相変わらず掴みどころのない人だ。ハーッハッハ!」

青龍先生「白虎……」

天才「白虎先生は最後まで眷属相手に奮戦したよ。心から敬意を表するよ」

青龍先生「……っ」

天才「視察はもうこれでいいだろ? まだ……戦後処理も終わってねぇんだ」


535 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:45:57.94 ID:KCaamGp6o
――……

召喚士「もしかして……南西砦……って」

青龍先生「そうじゃ。それを境に南西砦は対アンラ・マンユの拠点となった」

盗賊「……そうだったのか」

青龍先生「それ以降、魔王軍も大きな侵攻はなくなったかのぉ」

マジシャン「ああ。慎重になったよな。お互いにだが」

青龍先生「そうじゃな。こちらが国力を高めていれば、当然あちらも同じ事」

朱雀嬢「……」

青龍先生「それでも時間を費やせば、数では魔王軍が優位」

戦士「確かにな。繁殖力や即戦力として考えるとな……」

青龍先生「人間側は決して焦ってはいけない、しかし急がねばいかん事態じゃった」

召喚士「そういえば、白虎先生が亡くなってもパズズの封印は……」

青龍先生「ああ、それは明日分かると思うが、既に置いてきたものじゃからの」

召喚士「……?」

青龍先生「玄武にも聞いたが、そういう封印だという事じゃったわ」


536 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:46:56.27 ID:KCaamGp6o
……――

玄武先生「……そう、玄武が……亡くなったのか」

青龍先生「……うむ」

玄武先生「惜しい人材を失ったね」

青龍先生「パズズの変化はなかった。影響はないんじゃよな?」

玄武先生「それは問題ない。半永久的とはいかんだろうけど」

青龍先生「早めに葬るか?」

玄武先生「葬れば新たな柱が生まれるだけの事よ」

青龍先生「先に他の魔王を討つべし……か」

玄武先生「儂らの誰かが存命のうちにな。それと……」

青龍先生「……?」

玄武先生「うちの弟子が面白い事に気が付いてね。完全消滅も可能やもしれん」

青龍先生「何じゃとぉ……!?」

玄武先生「5つ目の召喚術、この秘密を解き明かす事が出来れば……」

青龍先生「……5つ目の……召喚術……!?」


537 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:48:19.92 ID:KCaamGp6o
――……

召喚士「玄武先生は気付いていたのか……っ!」

青龍先生「東方の式神には行き着いておらんかったがの」

盗賊「……」

青龍先生「ここまで辿り着いたのはお主らのお陰じゃよ」

召喚士「いえ、俺らは……」

青龍先生「玄武は志半ばに、病にて倒れた」

玄武娘「……っ」

青龍先生「それを最後の弟子であるサモナーやお主らが引き継いだのじゃ」

魔道士「そうだったんですね……」

青龍先生「奴が死んで10年。儂も待った甲斐があったもんじゃ」

マジシャン「ほんと、かろうじてだよな」

青龍先生「ひょっひょ、全くじゃよ。魔力で延命して、本当にかろうじてじゃ」

朱雀嬢「……っ」

青龍先生「その布石となったのは、玄武の死より遡る事10年前かのぉ」


538 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:49:34.04 ID:KCaamGp6o
……――

大元帥「先生方のご意見としては、パズズを封印しているうちに他の魔王をと?」

玄武先生「そういう事だ。その方が敵の力が制限出来るというもの」

大元帥「討つに有効的な魔王は……」

朱雀先生「サタン、であろうなぁ」

司令官「……」

大元帥「難敵だねぇ。これは船が折れるよ」

青龍先生「儂らとて先は長くない。何れはパズズの封印も解けるぞ」

大元帥「……いいよ、俺が出よう」

司令官「……ん、それなら共に」

大元帥「駄目だ。お前は出せない。共倒れしては国軍が潰れる」

司令官「……じゃあせめて、弟子を付けます」

朱雀先生「おぉ、うちのバカ弟子と共にパーティーを組んでる奴か」

大元帥「加えてナイトにも協力を仰ごうとしようか」

青龍先生「……」


539 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:51:16.52 ID:KCaamGp6o
――……

青龍先生「そしてサタン討伐作戦が始まった」

戦士「……」

青龍先生「大元帥にナイト、そしてお主の師匠らも交えてな」

召喚士「……っ」

青龍先生「その件については儂よりこやつの方が詳しいじゃろうがな」

マジシャン「……」

青龍先生「まずは中心であるサタンの封印が有効と決断した軍は……」

召喚士「サタン討伐に……動いた」

青龍先生「うむ。しかしあまりにも危険すぎる作戦じゃ。儂らは万全を期した」

戦士「万全?」

青龍先生「確実に討てるかどうか、時期を見極めるという事じゃ」

召喚士「それって……もしかして……」

占い師「……」

青龍先生「お主と会ったのも、あの時が最初じゃったか……」


540 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:52:23.19 ID:KCaamGp6o
……――

大元帥「しかし、先生方の施した封印術ってのは凄いもんだな」

青龍先生「全ては玄武の研究による賜物じゃ」

大元帥「流石だね。ちなみにもう1回やれって言ったら出来るかい?」

青龍先生「出来るわけなかろう」

大元帥「だよねー。これ以上置いてくるわけにもいかないしね」

青龍先生「……いよいよやるのか?」

大元帥「ああ、あいつも丁度、帰ってきたようだし……」

天才「……あん? ジジイとお師匠じゃねーか」

大元帥「連れて来たのか?」

天才「おう。まだ15のガキだけどな」

青龍先生「予言の民か。あまり頼りすぎるのもどうかと思うがの」

大元帥「早期決着にはそれしかないよ。それにババ様のお墨付きだ。優秀だよ」

天才「……おーい、入っていいぞー」

占い師「……失礼します」


541 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:53:31.16 ID:KCaamGp6o
――……

占い師「……そんな事もありましたね」

青龍先生「懐かしいもんじゃのぅ」

占い師「先生、そのお話は……」

青龍先生「ああ、そうじゃった。すまぬすまぬ」

マジシャン「……」

青龍先生「結果は皆も知っておろう。サタンは封印された」

玄武娘「凄いですの……」

青龍先生「人々は歓喜に湧いた。伝説の再来じゃとな」

マジシャン「情けねぇ話だよ。再来なんて通り名はよ」

占い師「あれは……私が……」

マジシャン「いんや、予言は間違っちゃいねぇ。落ち度は俺らにあった」

占い師「……」

青龍先生「今更悔やんでもしかたあるまい。兎に角、作戦は成功したのじゃ」

マジシャン「失ったものも……大きかったけどな」


542 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 17:54:39.29 ID:KCaamGp6o
……――

青龍先生「大元帥が……逝ったか……っ」

天才「ああ。お師匠は覚悟してたんだろうな」

青龍先生「……見えなかったのか?」

天才「見えてたよ。封印は成功するって事までは」

青龍先生「誰が死ぬかは分からんかったか」

天才「あの若い占い師も、立ち直ってくれりゃいいがな」

青龍先生「……お主や朱雀の弟子どもは無事なのか?」

天才「……死んだ。2人ほどな」

青龍先生「……っ」

天才「朱雀の弟子は臓器の悉く、魔道士のガキは魔力の半分を持っていかれた」

青龍先生「お主の弟子は……駄目じゃったか」

天才「仕方ねぇさ。婚約者と逝けた事が唯一の救いだろ」

青龍先生「死して救いなぞあるものかね……」

天才「人はいつか死ぬ。俺らはそれを糧に、決心して生きていかにゃなんねぇんだ」


546 名前:NIPPERがお送りします [] 投稿日:2011/07/07(木) 20:28:47.38 ID:hHhAfHdIO
何かいろんな因縁がいろいろ見えてきたなぁ


548 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2011/07/07(木) 21:17:08.76 ID:bumW20tOo
一乙!

マジシャンあれで魔力半分かよ・・・全盛期どんだけだったんだ


554 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/07/07(木) 23:44:08.37 ID:49uxDqBDO
>>1おつ!
昨日今日とめちゃくちゃ面白いぞ!

再来のもう一人はプリーストだったっけか?
魔剣士と婚約してたんだな。


557 名前:NIPPERがお送りします(東京都) [] 投稿日:2011/07/08(金) 13:49:24.04 ID:HmAyDRfU0
いちおつ
魔剣士も天才の弟子か…


558 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/08(金) 17:25:40.39 ID:ZAd/d18jo
――……

マジシャン「ジーサンよ、もういいだろ」

青龍先生「ん、あぁ。そうじゃな」

盗賊「……」

青龍先生「儂も元来、昔の事を語ったりするのは好きではないでのぉ」

朱雀嬢「……」

青龍先生「人間の記憶など、良い事より悪い事の方が覚えているもんじゃ」

玄武娘「……っ」

青龍先生「過去には何も残らぬ。出来事の事象だけが事実として残るだけじゃ」

戦士「……」

青龍先生「生きるという事は空白の未来に事実を描くという事じゃ」

魔道士「……」

青龍先生「それは決して、過去を振り返る事ではない」

召喚士「……」

青龍先生「儂は明日、最後の事実を描き、過去となるのじゃよ……」


559 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/07/08(金) 17:27:41.48 ID:ZAd/d18jo


召喚士「色々と、貴重なお話をありがとうございました」

青龍先生「ひょっひょ、構わぬよ」

戦士「すっかり……暗くなっちまったな」

盗賊「……うん」

青龍先生「この後は食事後、最後の打ち合わせじゃな」

召喚士「はい……」

青龍先生「青年兵らが待っておる。行くとするかの」

占い師「マジシャン、私達は……」

マジシャン「これ以上、長居するわけにはいかねぇわな」

青龍先生「わざわざ済まんかったな。ありがとうよ」

マジシャン「……こっちこそ」

ザッ

マジシャン「お世話になりました……青龍先生」

ニッコリと笑う老人の前に立ち、マジシャンは深々と頭を下げた。



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