■戻る■ 下へ
魔女「果ても無き世界の果てならば」
592 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:30:11 ID:V4JBu9gQ


 僧侶の出来事から数日がたったある日。


 それは、突然だった。


 頭上に広がる美しい青空が、塗りつぶされていくみたいに鈍色の雲に覆われていく。


少女「本気みたいだね。 兄さん……いや、魔王」


 あっという間に青空は消え失せた。

 鈍色の空を仰いで呟いた少女の顔は、その空を映したかのように暗く曇っている。


593 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:30:52 ID:V4JBu9gQ

戦士「これで、長かった俺達の終わるな」

 戦士は巨大な白金の戦斧を背負うと城を出ていく。

勇者「待てよ、独りで行くつもりか?」

 勇者の問いに、戦士は応えない。


少女「戦士、君なら気づいていると思うんだが?」

 少女は不満げに言った。


戦士「だからこそ、だ」

 外の気配に気づいた。 まだ遠い、街の外だけど。


594 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:31:32 ID:V4JBu9gQ

魔法使い「大体八百体くらい? 竜種も何体か居るみたいだね」


 魔王の配下の魔物だろう。

城を落とす為、勇者を殺す為、既存兵力の中でも強力な個体を引き連れて本気で僕たちを駆逐しに来たんだ。

魔法使い「上等だ。 城にたどり着く前に魔王ごと消し炭にしてやる」

少女「その中に魔王が居るならね」

 確かに、抜きん出た魔力の個体は感じられない。


595 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:32:30 ID:V4JBu9gQ

戦士「そー言う事だ。 アレは恐らく捨て駒、殺し切れれば良し、殺しきれずとも俺達が疲弊しきった所で楽々叩く算段だ」


勇者「あれくらいみんなで戦えばすぐに……ぐはっ」


 勇者の鳩尾に戦士の拳がめり込む。

戦士「勇者を、頼む」

 戦士はもう振り返らない。

魔法使い「死ぬ気なの?」


戦士「死ぬ気は無い、お前達がこの場から離れたら適当に合流させてもらうつもりだ。 だがもしも合流せずとも、気にせず魔王を討て」

 戦士が扉に手をかけた。


596 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:33:39 ID:V4JBu9gQ


僧侶「〜〜〜〜、〜〜〜〜、〜〜〜〜」

 僧侶が詠唱を始める。


 鮮やかな七色の光が戦士を包んだ。


僧侶「振り向かずとも、良いです。 言葉だけでも聞いていってください」


戦士「……」


597 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:34:12 ID:V4JBu9gQ

僧侶「今貴方にかけた呪文は、今私ができ得る全ての補助魔法です。 、大地を砕く魔獣の牙からも、鉄をも溶かす竜種の息吹からも貴方を護り、比類無き堅固なゴーレムの外皮さえも薄衣となす膂力を与える、戦女神の祝福です」


僧侶「ただ、どれだけの祝福であろうと神の与えた命を増やす理など存在しません、だから、どうか……」

 戦士の背にそっと僧侶が触れた。


僧侶「どうか死なないで戦士さん」

 戦士は何も答えず、扉から出て行った。


598 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/19(日) 13:35:08 ID:V4JBu9gQ
今回の更新は以上となります。
次回、おっぱい無双。


600 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/19(日) 13:55:04 ID:I.GhbsZE
乙π


601 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/19(日) 17:42:40 ID:Bf.0i5sY
π


602 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/20(月) 08:18:20 ID:im2SlCE.
ぱいおつ!
次回予告が素敵です


603 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:28:16 ID:C24lIu1M



―――――――――――――――――――


 扉を背にして改めて実感する。

 この背にあるのはいつの間にか大切な物になっていたのだと。



 意味の無くなってしまった人生にもう一度意味を持たせてくれたかけがえの無いものだと。


604 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:28:47 ID:C24lIu1M

 命を増やす理など無いと、僧侶は言っていたな。


 俺は……。

 この旅でもう一度、命を貰ったんだ。

 死人同然だった俺に。

 戦う意味をくれた。


戦士「貰った命だ、無駄にはせん、が。 使うに値する場面だ」


606 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:30:10 ID:C24lIu1M

 街の外に辿り着く。

 眼前にはオーガを主に、高位の悪魔、巨人、竜種まで居る。


 地響きを立て近づいて来る人外の群れ。

 背筋が灼け付く。 同時に冷や汗が頬を伝う。


 相手に不足は無い。

 余計な思考が薄れ、研ぎ澄まされていく。

戦士「オオォォォォァァッッ!!」


607 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:30:41 ID:C24lIu1M

 オーガの群れに飛び込む。

 それと同時に戦斧で薙払う。

 刃先に確かな手応えを感じ間合いの中にいる魔物を両断。

 その勢いを殺さぬようにもう一度。

 オーガの群れを引き裂きながら、目指すはこの群を指揮している高位の悪魔、竜種の居る最後尾を目指す。


戦士「どけぇっ!!」

 俺の最後の仕事には上等すぎるな。


608 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:31:13 ID:C24lIu1M

 何時間斬り続けた?

 分厚い雲の所為で正確な時間は分からないが、それでもそれなりの時間はたっているはずだ。

 さすがに一筋縄では行かない。

 だが、身体が軽い、力が漲ってくる。

 僧侶の呪文がここまでとは予想外だ。

戦士「これならば、殺しきれるぞ」

 群れがバラけて来た。

 オーガは粗方片づいたか。

悪魔「ギャハハハハ〜〜〜〜」


 まずい――。


609 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:32:37 ID:C24lIu1M

戦士「ぬぐぅぅっ」

 悪魔の放ったの漆黒の稲妻。

 後頭部を鈍器で殴られた時に似た衝撃。

 全身を駆け巡る激痛。

巨人群「グギャギャ」

 膝をついた所で止めを刺しに巨人の群れが殺到する。

 なめるな、デカ物どもが。

 戦斧を持つ手に力を込める。

戦士「オオォッッ!!」

 片手で戦斧を振り上げ、飛びかかってきた巨人を両断。

 更に開いた手で左方向から迫るオーガを殴りつける。

 右方向から迫る巨人には、蹴りをお見舞いしてやる。

 体勢を立て直し、悪魔を見据えて戦斧を構え直す。

戦士「楽しいなぁ、おい」


610 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:33:41 ID:C24lIu1M


 群も残りは三分の一程度だ。


悪魔「アハ、ギャヒヒ〜〜〜〜」


戦士「二度も喰らうかよ」

 地を灼く稲妻を走り抜け回避。 地面に戦斧を擦らせながら魔力を込める。

 戦斧の刃が蒼く揺らめく。

 髑髏が、天魔が、嘲笑う。 

悪魔「〜〜〜!?」

戦士「遅ぇ、どうした? 笑えよ」

 天高く戦斧を振り上げる。


戦士「ふんッッ」

悪魔「ギャヒャ」


 刃と共に振り下ろされた蒼焔の髑髏が悪魔を喰い千切る。


611 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:34:15 ID:C24lIu1M

オーガ群「ガガギャギャ」


戦士「次に死にたい奴は何奴だ、殺してやるから、かかってこい」

 統率していた悪魔を殺した事によりそれより下位の、群の主軸が蜘蛛の子を散らしたように逃げ出していく。



戦士「口程にも無いぞ化け者共が……そう簡単に人間は負けん」


612 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:35:22 ID:C24lIu1M
 木々を根こそぎへし折る程の豪風。


 深紅の巨影。

 真打ちが来た。

竜種「強き者だな、人間」


 鼓膜がビリビリと震える。


 本能が告げる。

絶対的な上位種。 捕食者と、被捕食者。

 魂が震える。

 眼前に居るこの紅蓮の鱗を持つ竜種は、それこそ神代から生きる最高位の竜種だ。

 神に喧嘩を売る種族のてっぺんだ。


戦士「滾るな、竜殺しは戦士職の最高の名誉だ」


613 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:35:56 ID:C24lIu1M


竜種「ほう、強き者よ。 我と相対してなおその心を滾らせるか」

 天地を呑むその巨大な口から煉獄の炎が漏れ出している。


竜種「ならば、他の者は無粋だな」

 竜種はその巨大を翻し上昇。

 太陽が降ってきたかと錯覚する程の熱量。


竜種「これで、この場に主と我の二体のみだ。 神すら討ち漏らした我が首標」

 辺りは焼け野原。 魔物の残党は骨すら残っていない。



竜種「見事討ち取って末代までの誉としてみせよッッ」


戦士「されば、いざ参るッッ」


614 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 17:37:21 ID:C24lIu1M

今回の更新は以上になります。

次回、真・おっぱい無双 猛将伝


615 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/20(月) 19:14:46 ID:QcFC9tlg
乙ぱい!
まさかの戦士視点。これは後々の勇者パーティー視点の戦士の話とはまた違う予定なんだよね?


616 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/20(月) 20:55:29 ID:6F3DYxBI
おつ!おっぱい!
がんがれ!戦士!死んだらアカンよ?


617 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 21:56:42 ID:C24lIu1M
更新しますおっぱい

戦士視点の物語はまた別なのでお待ち下さい。


618 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 22:01:24 ID:C24lIu1M

――――――――――――――――――――――――


 遠くの方で地響きが聞こえる。

 凄い勢いで敵の数が減っていくのが感じ取れる。


魔法使い「本当に、強いね」

 魔法も使えない筈の彼が。

 地を埋め尽くす大群を戦斧一本で駆逐していく。


619 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 22:01:53 ID:C24lIu1M

勇者「納得いかない」

 勇者は浮かない顔をしていた。

 誰よりも仲間想いの勇者だ。

 気持ちは分かる。


少女「そうする他、どんな方法をとったとしても、魔王に対して不利になるんだ。 仕方のない事だ……」

勇者「んなもん知るかっ!! 戦士一人の犠牲を良しにして、それで……それで!!」


 ………。

 勇者と戦士はどんな出会いで、どんな絆があったかは分からないけど、それでも、勇者にとって掛け替えのない支えであったように思う。

 それこそ、年の離れた兄や、父のように。


620 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 22:02:30 ID:C24lIu1M


 そんな勇者に、なんて言ってあげれる?

 僕だって、できるのであれば今すぐ戦士の下に駆けつけたい。

僧侶「つまり――。 勇者様は戦士さんを信用できないのですね? 約束を果たすこともできない弱き人だと。 そうおっしゃるのですね?」


 今まで押し黙っていた僧侶が言った。


621 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 22:04:34 ID:C24lIu1M

勇者「違……」

僧侶「違いません。 私は戦士さんを信じています。 どんな強大な敵であろうと、その戦斧で切り裂く強き人だと」

 今まで聞いたことの無い凛とした僧侶の声。


勇者「俺だって……信じてるさ」

僧侶「ならば、やる事は戦士を心配して幼子のように喚く事ですか?」

勇者「……違う」

僧侶「では、今すぐに戦士の元へ駆けつけて、加勢することですか?」

勇者「違うっ」

僧侶「では勇者様、貴方が為すべき事は、何ですか?」

 俯いたまま、勇者は小さく答えた。


勇者「……魔王を……倒す事だ」


622 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 22:05:27 ID:C24lIu1M

僧侶「正解です。 付け足すのであれば、全員無事で、です」

 勇者が顔を上げる。


勇者「ありがとう、僧侶」


 僧侶はにっこりと笑う。


僧侶「その言葉が聞けて嬉しいです。 では、私はここで」


勇者「なんだって?」


  僧侶が目線を廃屋の一つを見据えた。


623 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 22:06:19 ID:C24lIu1M


僧侶「居るんでしょう? 不浄の王」


 廃屋の陰が濃くなっていく。
 そして、その闇の中からそれは現れた。

 死霊を統べる不浄の王。

 漆黒の外套に呪われた宝具を身に纏った骸骨。

少女「リッチ……実在してたんだ」


624 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 22:07:09 ID:C24lIu1M

 この世の理を外れ、夜を従える亡霊達の王。


 攻撃を受け付ける事はなく、その身じろぎ一つで町一つを呪殺しうる化け物。



勇者「おっるぁああっ!!」

 勇者が放たれた矢のように疾駆し、リッチに斬撃を加える。


リッチ「〜〜」

 リッチが聞き取れない程の言語を圧縮した高速詠唱を行う。


 影にリッチが沈む。

僧侶「神聖魔法でなければリッチには通じません」


625 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 22:08:50 ID:C24lIu1M

 辺りの影から次々にリッチが出てくる。

僧侶「貴方達を護りながら戦う余裕などありません。 足手まといです」


 僧侶が大杖を構えて言った。

僧侶「どうか先に行って下さい」

 僧侶の目には決意の炎が灯っている。

勇者「必ず、また合うからな」

魔法使い「……約束だ」


 見直したよ。


僧侶「魔法使いちゃん、終わったらちゅーして下さいね」


 いくらでもしてあげる。 なんなら舌を入れてやる。

魔法使い「無事に帰ってきたらね」

――――――――――――――――――――――


626 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/20(月) 22:10:31 ID:C24lIu1M
今回の更新はいじょうなおっぱい

次回。 真・おっぱい無双 エンパイヤーズ


627 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/20(月) 22:38:06 ID:wABM3lcQ
ぷるんぷるん


628 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/20(月) 23:31:41 ID:6F3DYxBI
おつ!
がんばれ!おっぱい娘!


629 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/05/20(月) 23:45:37 ID:QcFC9tlg
ちゅーとか舌入れるとかなんて百合百合しいんだ・・・・いいぞもっとやれください

乙ぱい!



次へ 戻る 上へ