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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その25
145 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:48:00.98 ID:iO1tzJWRo
〜白虎界〜

クジャタ「…………」

召喚士「事情は…分かって頂けましたか?」

クジャタ「そうか。我を召喚せしめた者は…死んだのか」

召喚士「…ええ」

クジャタ「道理でこれ程までに力が溢れると思ったわ」

召喚士「……」

クジャタ「して、我にどうしろと?」

召喚士「もし解除出来るのならば……」

クジャタ「それは無理だな」

召喚士「……やはり…そうですか」

クジャタ「こちらと人間界では勝手が違う」

召喚士「……」

クジャタ「あくまで母体は我。人間界に於いてはその力の一部を貸すに過ぎん」

召喚士「……そうなれば、手段は……」


146 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:48:33.33 ID:iO1tzJWRo
クジャタ「…貴様に力を貸せ、と?」

召喚士「……解除するには、方法は一つです」

クジャタ「……」

召喚士「あなたを……専属させて頂きたい!」

クジャタ「……」

召喚士「お願いします。あなたの助けが必要なのです!」

クジャタ「我に、貴様の専属となれと申すのか?」

召喚士「それ以外に…あなたを解除する方法はないのです……!」

クジャタ「…ふむ」

召喚士「一時的でも構いません。どうか……」

クジャタ「そこまでしても、必要なのか?」

召喚士「……待っている者がいるんですっ!」

クジャタ「……」

召喚士「俺を待っている者…っ、そして……自由を待っている者が!」

クジャタ「……」


147 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:49:06.93 ID:iO1tzJWRo
召喚士「どうか……っ」

クジャタ「切るぞ」

召喚士「……!?」

クジャタ「貴様がどれ程のものかは知らぬ。知らぬが故に…」

召喚士「……」

クジャタ「我が不要と感じれば、即座に貴様との契約を切る」

召喚士「…構いません」

クジャタ「……ふむ」

召喚士「――っ!?」

ヒュイイィィィィ

召喚士「う…わっ!!」

突如足場が消失し、召喚士の身体は宙へと投げ出された。

召喚士「……っ!!」

クジャタ「案ずるな、死にはせん」

召喚士「で、でもおおぉぉ……っ!!」


148 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:49:45.60 ID:iO1tzJWRo
ドサッ

召喚士「……!?」

かつて見覚えがある。何もない真っ白な部屋。

召喚士「……」

神官の手によりスフィンクスへ会いに行った時と全く同じ。

召喚士「……ここは」

クジャタ「我の家、と言ったところか」

ザッ

召喚士「……クジャタ?」

目の前に佇む牡牛のような、神秘的な召喚獣。

茶色く長い体毛からは、煌びやかな青い燐光を放っている。

クジャタ「時間が限られておるのだろう。さっさと行くが良い」

召喚士「じ、じゃあ……」

クジャタ「我の力、それは気候を自在に操るもの」

召喚士「……っ」


149 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:50:14.71 ID:iO1tzJWRo
クジャタ「専属は一時的なものだと思え。良いな?」

召喚士「……ありがとう、クジャタ!」

クジャタ「礼は無用。代わりにたらふく……食ろうてやるわ」

召喚士「……お手柔らかに」

クジャタ「……待て」

召喚士「…?」

クジャタ「まだ、名を聞いていなかったな」

召喚士「……召喚士」

クジャタ「召喚士か。ふむ、覚えておこう」

召喚士「…じゃあ……また!」

クジャタ「……」

タッタッタッタッタ

クジャタ「……我も焼きが回ったか」

スゥッ

クジャタ「それとも……。召喚士か、不思議な人間よ」


150 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:50:40.88 ID:iO1tzJWRo
タッタッタッタッタ

召喚士「…くそっ、どこなんだここは?」

タッタッタッタッタ

召喚士「それに、どれだけ走ったのか……」

タッタッタ…

召喚士「……時間は…間に合うのか!?」

ドゥッ…ザッ

ユニコーン「乗れっ!」

召喚士「ユニコーン!!ありがとうっ!!」

ググッ…ドシュウウゥゥ

ユニコーン「それで、クジャタの手は借りられたのか?」

召喚士「うんっ。お陰様で!」

ユニコーン「一気にゲートまで飛ばすぞ。余所見するなよっ」

召喚士「う、うんっ!」

ドウンッ!!


151 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:51:06.32 ID:iO1tzJWRo
召喚士「……」

ユニコーン「気になるのか?」

召喚士「……なんだか、やたらこちらを見てるから」

ユニコーン「皆、珍しがっているのさ」

召喚士「…そっか」

ユニコーン「それに使える主は大いに越した事はない」

召喚士「みんな、契約を結ぼうと…?」

ユニコーン「ああ。だが今は気にするな。時間がない」

召喚士「…うん」

ユニコーン「それにクジャタなどという大物を捕まえたのだ」

召喚士「……」

ユニコーン「心移りすれば、クジャタに見放されかねんぞ?」

召喚士「…ははっ、そうだね」

バシュッ

ケツァルコアトル「……ようっ」


152 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:53:04.96 ID:iO1tzJWRo
召喚士「あ、えっと……ケツァルコアトル?」

ケツァルコアトル「クジャタと契約結んだのかぁ?」

ユニコーン「お前と話している暇はないのだ。立ち去れ」

ケツァルコアトル「テメェには話してないだろうが。なぁ、えぇっと…」

召喚士「……召喚士…です」

ケツァルコアトル「召喚士クン。俺と契約結ばないか?」

召喚士「そ…そうですね。また今度……」

ケツァルコアトル「おやおや、冷たいねぇ」

召喚士「ごめんなさい。今はその、急いでいるもので……」

ケツァルコアトル「しゃあねぇ。いいか?忘れるなよ?」

召喚士「……」

ケツァルコアトル「俺の名はケツァルコアトル様だ!待ってるぜ!」

バシュッ

召喚士「……召喚獣も…色々いるんだね」

ユニコーン「ああ、そうだな」


153 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:53:39.40 ID:iO1tzJWRo


ザザァ…ドッ

ユニコーン「……間に合ったな」

召喚士「うん…。はぁ……はぁ…」

ユニコーン「ゲートが半分以上閉じている。人間界は夕方か……」

召喚士「そんなに経って…!?」

ユニコーン「こちらとあちらでは時間の概念が違うからな」

召喚士「そっか……」

ユニコーン「さぁ、早く行くのだ」

召喚士「……ユニコーン」

ユニコーン「…?」

召喚士「その、ありがとう!色々と助けて貰って……」

ユニコーン「……気にするな」

召喚士「それじゃ……また」

ユニコーン「そうだな……会えるといいな」


154 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:54:06.98 ID:iO1tzJWRo
召喚士「え……っ?」

シュイイィィ

召喚士「――っ!?」

シュウウゥゥゥゥ

召喚士「ゲートに…吸い込まれて……っ」

ウウゥゥゥゥ

召喚士「ユニ――」

ガバッ!!

老人「!?」

召喚士「……あっ」

老人「無事じゃったか!?」

召喚士「……お爺さん」

老人「半日以上も寝ておったからの。ちと、心配したわい」

召喚士「…すみません。この通り、大丈夫ですよ」

老人「……それで、どうじゃった?」


155 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:55:13.77 ID:iO1tzJWRo
召喚士「……バッチリです!」

老人「お……おぉ……っ」

召喚士「多分…ですけど……」

老人「よくぞ……よくぞやり遂げた…っ!」

召喚士「色々と手助けあってですけどね…」

老人「では、早速やるか?」

召喚士「はいっ!」

ザッ…テクテクテクテク

老人「とは言え、魔力を消耗しておる。無茶はするでないぞ?」

召喚士「はい。承知してます」

老人「まずは召喚解除じゃな」

召喚士「どうすればいいんでしょう?」

老人「クジャタとは専属契約を結べたのか?」

召喚士「はい。そういう話でしたが…」

老人「ならば今のクジャタは既にお主のものじゃ」


156 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:55:47.61 ID:iO1tzJWRo
召喚士「……つまり?」

老人「召喚を上書きすれば、必然的に今のクジャタは消失する」

召喚士「……なるほど…っ」

ザッザッザ…ザッ

召喚士「早速、やってみます!」

老人「…うむ」

召喚士「……ふーっ」

老人「……」

召喚士「行けっ!クジャタ!!」

シュイイィィン

老人「……おぉ…っ!!」

召喚士「……っ!!」

老人「風の壁が……消え……」

長きに渡り周囲を覆っていた竜巻は、呆気ない程簡単に形を消した。

その下で、一匹の牡牛が佇み、こちらを見つめている。


157 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:56:20.04 ID:iO1tzJWRo
ザッザッザッザ…

召喚士「クジャタ……?」

クジャタ「……」

ゴウッ!!

召喚士「――!?」

老人「ぐ……くぅ…っ!!」

破られた壁に代わるように、二人を猛吹雪が襲いかかる。

召喚士「お爺さんっ!!」

老人「大丈夫じゃ……っ!」

ザザッ

召喚士「外はこれ程までに……っ」

ゴアオオォォォォ

けたたましい音と共に、宿泊所は粉々に吹き飛ばされ、

もはや長年、人が住んだ形跡もなくなった。

召喚士「お爺さん!ひとまず移動しましょう!」


158 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:56:49.32 ID:iO1tzJWRo
老人「う…む……っ」

召喚士「クジャタ!!」

クジャタ「……」

無言のままクジャタは召喚士の意思を汲み取り、身体を発行させる。

キュイイィィ…パアアァァ

召喚士「気候を自在に操るならば……この程度おぉっ!」

ゴオオォォ…オオォォ…ォォ

召喚士「今だ!……行けっ!コカトリス!!」

シュイイィィン

召喚士「コカトリス!」

コカトリス「ここを離れるぞ!急げ!」

老人を肩に担ぎ、コカトリスの背中へ飛び乗る召喚士。

召喚士「持ってくれよ……俺の魔力!」

ゴウッ!!

最北の宿泊所であった場所から、二人は迅速に立ち去った。


159 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:57:21.61 ID:iO1tzJWRo
ドシュウウゥゥ…バタバタッ…バサァ

コカトリス「ひどい吹雪だな…っ、どこなのだここは…!?」

召喚士「北だっていうのは分かるけど……」

コカトリス「……むっ!?」

召喚士「ど、どうしたの!?」

コカトリス「あれは……っ」

上空から背後にうっすらと浮かび上がる、塔か城のようなもの。

召喚士「あれは……っ!?」

コカトリス「……魔王城」

召喚士「――っ!!」

コカトリス「危険すぎる!ただでさえ危うい場所だ!」

召喚士「……!?」

コカトリス「魔力の消費を感じぬか?」

召喚士「確かに…言われてみればいつもより……」

コカトリス「瘴気で魔力を吸われているのだ……魔王にな」


160 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:57:57.33 ID:iO1tzJWRo
召喚士「っ!!」

コカトリス「どこまで行けば良いのだっ!?」

召喚士「とにかく……南へ!!」

コカトリス「かなわんな。低空に入るぞ!」

バシュッ…ドウンッ!!

老人「……っ」

召喚士「お爺さん、大丈夫ですか!?」

老人「勿論じゃ…。ここまで来たら…こんなところでは死ねんわい」

召喚士「……そうですよ…っ!」

ギュオオォォ

コカトリス「なんとか……振り切ったか」

召喚士「……」

コカトリス「魔物に気付かれずに幸運だったな」

召喚士「……うん」

コカトリス「いや、獲物とすら思っていなかったのかもしれんな」


161 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 18:58:23.53 ID:iO1tzJWRo


召喚士「はぁ……はぁっ、はぁっ」

老人「……大丈夫…か?」

召喚士「え、えぇ…っ、。はぁ…はぁ…っ」

コカトリス「限界だな。この辺りで着地するしかあるまい」

シュバアアァァ…バサァ

コカトリス「……ここまでだ」

シュイイィィン

召喚士「……は、ははっ。もう…魔力切れです……」

老人「……」

召喚士「お爺さん…?」

老人「…………」

召喚士「お爺さんっ!?」

老人「……大丈夫。生きておるよ」

召喚士「……良かったぁ…っ」


171 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 23:48:20.81 ID:RR8ODukZo
ザッ

召喚士「……しかし…ここはどこなんだろ」

老人「……」

召喚士「お爺さん…?」

老人「……」

召喚士「お爺さんっ!?」

老人「……ん、んん」

本当は……途中から分かってたんだ。

召喚士「もうじき…もうじき司令部に着きますからね!」

お爺さんは明らかに元気がなくて……。

老人「……う…む」

でも、絶対に諦めたくなくて……。信じたくなくて……。

召喚士「立てますかっ!?さぁ、頑張りましょう!!」

だから……だから俺……。

召喚士「お爺さんっ!!」


172 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 23:48:55.73 ID:RR8ODukZo
老人「……む……ぅ」

召喚士「――っ」

老人「大丈夫……大丈夫じゃ」

召喚士「……行けっ!シービショップ!!」

シュイィン

召喚士「魔力…少ないですけど。この程度……」

シービショップ「……分かっておるのじゃろ」

召喚士「…そうだよねっ、元気なんだから……治るわけ……っ」

グッ

召喚士「どこも病んでないんだから……治癒出来るわけないもんね…ははっ!」

老人「……」

召喚士「は……はは……っ」

ガンッ!!…ドスッ!!

召喚士「どうして……どうしてなんだよぉ!!」

岩に打ち付けた拳から、赤く染まった血が流れ出す。


173 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 23:49:49.36 ID:RR8ODukZo
老人「…良いのじゃ」

召喚士「いいわけないですよっ!!こんなのって……っ」

老人「……良いのじゃよ」

召喚士「……何でっ、だって…昨日まで一緒に……っ」

老人「……」

召喚士「一緒に笑って……食事して……っ」

老人「……ワシはな、きっと君のような者が来るのを……」

召喚士「……っ」

老人「……ずぅっと……待っておったのじゃよ」

召喚士「……くっ!!」

ガサッ…グイッ

老人「……?」

召喚士「まだだっ、まだ終わりじゃない…っ!!」

グッ…ググッ…ザッザッザ…

召喚士「しっかり……捕まっていて下さい…っ!!」


174 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 23:50:28.22 ID:RR8ODukZo
ガサッ…ザッザッザッザ…

召喚士「…はぁ……はぁはぁ……はぁっ」

老人「……もう良い」

召喚士「くっ!……はぁ……はぁ……」

老人「……置いてゆけ」

召喚士「そんな事っ、出来るわけないでしょ……っ!」

老人「……このままでは……お主も」

召喚士「この程度……っ」

ザザッ…ガサガサッ

召喚士「!?」

老人「……」

召喚士(魔物!?……無理だっ、魔力も無い今……勝てるわけ――)

ガササッ…ドドォ

召喚士「……!?」

斥候長「……ワーカーか…?」


175 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 23:51:06.63 ID:RR8ODukZo


斥候長「事情は分かりました!司令部へ急ぎましょう!」

斥候兵「私の馬を使って下さい!」

召喚士「すみません、助かります!」

斥候長「爺さん、乗れるか?ほらっ」

ググッ

斥候兵「……いいですよっ、飛ばして下さい!」

斥候長「では朱雀先生、私の後を。飛ばしますよ」

召喚士「……はいっ!」

斥候長「お前はすまないが、徒歩で帰還してくれ。任務は中断だ」

選考兵「ははっ!」

召喚士「お爺さん、もうすぐ……助かりますからね!」

老人「……う…む」

召喚士「では、行きましょう!」

斥候長「よしっ!」


176 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 23:51:36.16 ID:RR8ODukZo
ドドッドドッドドッドドッドドッ

斥候長「思いきり飛ばせば、30分弱で着くはずですっ!」

召喚士「……良かった、聞きましたかお爺さん?」

老人「……夕日が……綺麗じゃのう」

召喚士「……え、ええ…っ」

老人「もう二度と……この目で拝める事はないと…思うておったわ……っ」

召喚士「……これから毎日だって…見る事、出来ますからね」

老人「……そうじゃな」

召喚士「……っ」

ドドッドドッドドッドドッ

斥候長「……具合はどうですか!?」

召喚士「お爺さん!?」

老人「……どうなんじゃろうな……痛みもない」

召喚士「……」

老人「……魔力で延命した……からのう」


177 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 23:52:03.33 ID:RR8ODukZo
ドドッドドッドドッ

老人「……あれは……月…か?」

召喚士「…ええ、月です」

老人「……美しい。こんなにも……美しいものじゃったか」

召喚士「美しいですよ。自然は…世界はこんなにも……っ」

老人「……良かった」

召喚士「……っ」

老人「再びこの目で……見る事が出来て……」

召喚士「お爺さん……?」

老人「良かった……」

ドドッドドッ

召喚士「お爺さん!?」

ドドッ

召喚士「お爺さんっ!!」

老人「…………」


178 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 23:52:53.82 ID:RR8ODukZo
パッカッカパッカ…ドドォ

召喚士「……言ったじゃないですか……っ」

老人「…………」

召喚士「美味い物……食べるって……」

斥候長「……っ」

召喚士「綺麗になった街並み……見るって……」

老人「…………」

召喚士「みんなに……会ってくれるって、言ったじゃないですかぁ!!」

老人「…………」

召喚士「何で…何でなんだよおおぉぉ!!」

ググッ…ドサッ

召喚士「どうして……っ。どうしてなんだよおぉ!!」

斥候長「……朱雀先生っ」

よろけるように地面へと落ち、うずくまる召喚士の横顔を月明かりが照らす。

馬上では、月光を浴びて老人が安らかに永遠の眠りを迎えた……。


179 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/08(火) 23:58:23.42 ID:RR8ODukZo
……――

老人『……』

――『……やぁ』

老人『兄さん……っ』

兄『やっと、解放されたな』

老人『…ははっ、誰のせいだい?』

兄『…ふっ、そうだな。すまんすまん』

老人『長かったよ。とうに死んでいた命だ』

兄『俺のクジャタは…新たな主を見つけたようだな』

老人「ああ、彼は大したものだ。きっと役に立つさ』

兄『これで胸を張っていけるな』

老人『ああ、行こう』

兄『我らが師、白虎先生も喜ぶさ』

老人『そうだね――』

――……


181 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/09(水) 00:02:46.23 ID:CpVAS0o9o
〜北方司令部〜

騎士長「……っ」

斥候長「……以上であります」

騎士長「ご苦労。下がれ」

斥候長「はっ」

ザッザッザ…

召喚士「…………」

騎士長「召喚士…」

召喚士「……いいんです」

騎士長「何かあったら、司令室にいる」

カツカツカツ…パタン

召喚士「……」

病室のベッドに横たわる老人は、ただ眠っているだけのように見えた。

それが余計に、目の前で呆然と立ち尽くす召喚士の胸を締め付ける。

溢れる涙は留まることを知らず、召喚士は肩を震わせて泣いた……。


182 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/09(水) 00:07:10.52 ID:CpVAS0o9o
〜最北の村〜

左秘書官「…成程。ここが採掘中の現場ですか」

大軍師「川の水を引き込み、農耕へと活用します」

左秘書官「川沿いの屯田に於いては有用ですね」

大軍師「ええ、しかし土砂災害は酷く、順調とは言えませんね……」

ザッザッザ

青年兵「飽きちゃいましたか?」

左翼長「俺はこういうの、向いてねぇや」

青年兵「先に来たの村へ戻っていてはいかがです?」

左翼長「あっちだって今頃は、左翼官がゴチャゴチャやってんだろ?」

青年兵「…みたいですね」

左翼長「もう夜も深まるし、ぼちぼち終わる頃合いだろ」

青年兵「ですね」

左秘書官「ありがとうございました。こちらは問題ありません」

大軍師「では、いきましょうか」


183 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/09(水) 00:09:44.63 ID:CpVAS0o9o
ザッザッザ

ヒゲの男「うおぉ…っ!!」

左翼長「どうした!?」

ヒゲの男「いやぁすんません…。土砂が急に崩れてきて……」

青年兵「手伝いましょうか?」

ヒゲの男「ははっ、お構いなく」

ザッザッザ

大軍師「お二人は左秘書官殿と先に戻っていて下さい」

左翼長「大丈夫か?」

大軍師「ええ、けが人などもいないようですし。すぐに行きます」

青年兵「……では」

ザッザッザ

大軍師「大丈夫ですか?」

ヒゲの男「いやぁ先生も手伝う必要ないっすよ」

大軍師「そうはいきませんよ。現場監督ですからね」


184 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/09(水) 00:12:01.25 ID:CpVAS0o9o
ザザッ…ズザザァ

大軍師「…思ったより、土砂が柔らかいですね」

ヒゲの男「そうなんすよ。こりゃあ春を待った方が……」

ゴトゴトッ…ドシャアアァァ!!

ヒゲの男「あっぶ……!!」

大軍師「落盤か……。岩まであるとは……」

ヒゲの男「……せ、先生っ!!」

大軍師「……?」

ヒゲの男「これ…っ、これ……!!」

大軍師「何です!?」

タッタッタ…ザッ

大軍師「――っ!!」

ヒゲの男「……こ、これって……っ」

大軍師「…すぐに回収して……隠しておきなさいっ!」

ヒゲの男「……っ」


185 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/09(水) 00:17:05.85 ID:CpVAS0o9o
大軍師「上の連中にも悟られてはいけません。いいですね?」

ヒゲの男「……っ」

大軍師「いいですね!?絶対に洩らしてはなりません!」

ヒゲの男「…は、はい…っ!」

大軍師「これは…まだ知られてはいけない」

ヒゲの男「……」

大軍師「まだ……誰にも……っ」

ヒゲの男「…この布で…いいですかいっ!?」

大軍師「…ええ。北の村の…私の屋敷まで運んで下さい」

ヒゲの男「……はい」

大軍師「やってくれますね……彼……っ」

各地で様々な思惑が動く中、点は徐々にではあるが、線を結び始める。

それは幸か不幸か、運命か宿命か……。



〜第三十五部、完〜


191 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/09(水) 07:44:01.48 ID:j6ciMCRSO
エロ本発見したのかな



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