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少女『あなたは明日、私に会うわ。必ず。』
53 名前: ◆iMC5nbsIdM [] 投稿日:2010/11/03(水) 23:26:33.95 ID:AEJ/aSFJO
いこっ……って、どこへ行くんだ?
って言うか…誰なんだ?
言い方は悪いが凄く馴れ馴れしいし、そりゃ声かけてくれて心配までしてくれて
その上とてもじゃないが自分には相応しくない程可愛いらしいのに…

あれか?新手の勧誘…

男は向かい合って優しい笑顔で手をさしのべているこの女性を見ながら
呆気にとられていた。
それ以上に見とれていた。
黒く細いストレートの髪が、駅構内に吹く独特の気流になびいていた。
ごわつかない程度、しかしはっきりとした睫。
軽く上がる口角と、愛らしく下がる目尻。
少しだけ盛り上がった頬に塗られた染まる程度のチーク。
見ればみる程可愛かった。

?2「…………あの…」

自分ははっと我に返った。

男「あっ…………」

上手く言葉を発せられなかったが、少し茶色の混じった彼女の目を見ていた。

チークで染まった頬は先程よりも火照っているようにも見える。

?2「そんな……じっとみないでよ…」

素の彼女から隠し切れない照れを少し感じ取った自分は、あまり何も考えなくなってしまっていた。


54 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/03(水) 23:36:45.99 ID:AEJ/aSFJO
男「いこって…どこいくの?」
自分は彼女の手にそっと触れながら言った。
ひやっとしていた。折れてしまうのではないかと思うほど細かった。

?2「えーっと…まぁ……カフェにでも…」

思い出してみれば最初からカフェに寄って飲み物を口にしたいと思っていたわけだし、
言い方は悪いが、約束の16時までの暇潰しに、こんなにも可愛いこといれるなど
勿体なすぎる程だ。と思った。

男「あの、16時から友達(かどうかはわからないわけだが…)と約束が会って……」

男「せっかく声かけて誘ってくれたのに…」

?2「?……え?なんで?」

男「ごめん……」

?2「謝らなくていいよ?予定があるからこんな所に来たんでしょ?16時までで全然構わないよ?あいにく私は暇なんで!どんどん使って!」

なぜだろう、今初めて会った彼女からも懐かしさが漂ってくる。
こんなにも初対面で気の抜ける人がいるのだろうか?

男「ありがとう……じゃああの…ちょっとだけ」

?2「うん!いこういこう!!」

そう言って彼女は、触れあっていた手をきゅっと握ると
自分を優しく、それでいて力強く引っ張っていった。


55 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/03(水) 23:48:41.91 ID:AEJ/aSFJO
彼女は自分をどんどん引っ張って言った。
例えではなく、本当に先を歩き、行き交う人を突っ切り、子供を連れて行くように自分を後ろに従えていたもんだから
とてもではないが周りの目が自分達をカップルだと思うことはなかった。
連行されているようにも見える。

?2「はい。着いたよー」

しばし歩くとチェーン店のカフェに着いた。
ガラス張りの店内にはポツポツと客がいたが、平日とはいえ繁華街。もうすぐおやつ時だと考えればこれから混むのであろうと言うことは予想できた。

?2「煙草、吸う?」

彼女はまだ自分の手を話してはいなかった。
二つ返事で了解してくれた彼女はさっそくカウンターで注文していた。
その後ろに並んでいた僕は時間が経つにつれ冷静に物事を考えるようになっていた。

誰なんだろう。
何で手を握ってるんだろう。
名前、なんだろう。
やっぱりミルクティーとか飲むんだろうか。

仕様もない考えを巡らせてはいたものの、さっさと自分も飲み物を頼み、
流石にトレーを持つ時は手を離したのだが、
喫煙ルームの一番奥に陣取った。

男「ごめん。ちょっとトイレ」

そう言って一旦席を外し、小綺麗な個室に入ると、便座の上蓋をも下ろしたままで腰かけた。
男「………………ふぅ…なんなんだろう……」


56 名前: ◆iMC5nbsIdM [] 投稿日:2010/11/04(木) 00:00:13.54 ID:3HBC2IzAO
座ったまま膝に肘を立て、手のひらで顔を覆う。
見えてないのに目を閉じてじっとしていた。

自分は夜中の少女を思いだした。
少女『あなたは明日、私に会うわ。必ず。』
今日、会うのか?あの子に。画面に写っていた背景の繁華街は間違いなくこね辺り一帯のどこかである。
建物のシンボルが特徴的で、間違えるはずもない。

男「(なんで思い出せないんだろう……もしかして夢か?)」
そうは思いつつも、今日の朝起きた段階での部屋の様子から、それが夢な訳ではないと言うのは明確だった。

そういえば、友人の電話は何だったのだろうか…未だ折り返してこないあたり、大したことではないのかもしれない。

電話先の女は一体誰なんだろうか…
明らかに知っている人間なのは間違いないが、あまりにも検討がつかない。

今、一緒にいる彼女。
彼女こそ一体誰なのだろうか…全くもってわからない。

少しの間、思いつく限り思い出してみたが、何一つ解決しなかった。
うだうだしても仕方がないと思い、顔を上げた時だった。



少女『わからないの?あたしが。気づかないの?』

男は鏡に映る光景に絶句した。


57 名前: ◆iMC5nbsIdM [] 投稿日:2010/11/04(木) 00:02:25.62 ID:3HBC2IzAO
僕のIDからいくと3Pの流れもほのかに感じられますが、3Pはありません。


58 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 00:05:58.62 ID:rcUJE33F0
>>57
何の注釈だよwww

1年前のSS 見つけたよ、保守りながらゆっくり読むねー


59 名前: ◆iMC5nbsIdM [] 投稿日:2010/11/04(木) 00:37:24.21 ID:3HBC2IzAO
鏡に映る少女は、少し悲しげな顔をしていた。
自分は、あまりにも不可解な光景に、恐怖しか感じなかった。
しかし、よくよく鏡を覗くと、夜中に映っていた少女とは明らかに違う点がいくつかあった。

まず1つ。これは微睡んでいた昨日の記憶が、確実であり鮮明であるとは言い難いのではっきりとはしないが、
昨日の少女より、今目の前に写る少女の方が明らかに幼かった。
初めに見たときは、女子高生ぐらいのような気もしたが、今は明らかに中学生か、そのくらいの年頃に見える。

次に、背景が違う。
どこかの家の中、渡り廊下が見え、左右にいくつかの扉がある。
自分はまたもこの景色が初めて見るものではないとわかった。
わかったのはそこまでで、後は全く思い出せない。

その他、髪型や服装など細かな違いはあったものの
最後に、明らかにどこかで見たことのあるものとして印象に残っていたものは
少女が首から下げる。ネックレスだった。
細かく、細いチェーンに、2つの指輪のついたネックレス。
全てがうやむやだが、確かにどこかで見た記憶のある鏡の中の世界。

自分は無意識に、小声で口ずさんでいた。

男「…………誰?」


60 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 00:48:45.97 ID:3HBC2IzAO
鏡の中の少女はぴくりとも反応しない。
自分はそっと立ち上がり、ゆっくり近づいた。

ふっ

とまばたきでもするかのように、
カメラのシャッターの様に、
一瞬ぱっと暗くなると
もう鏡に写っていたのは、焦点を合わせることができなくなっていた上に、さっきの嘔吐のせいか、
淡々と起こる非日常の疲れか、
顔色が悪く、頬のこけた自分が映っていた…………


男「………………くそっ……何なんだ…」

自分はもどかしさに耐えきれず、下唇をギュッと噛んだ。
痛みを感じる程度に。
跡が残らないように。
結局は自分が痛めつけられないぎりぎりのラインを守って。

その場で顔を洗い、トイレットペーパーを思い切り取り出して、
知らぬうちにかいていた脂汗と冷や汗が混じり、仮面のようにまとわりついていた顔のこびりをきれいに拭い、
軽く身だしなみを整えた。
長く居すぎてしまった。
人を待たせているのに。

そう思いつつ、袖をめくり時計をみる。
男「嘘だろ……………………」
驚くことに、時計の針はものの5分も進んではいなかった…


61 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 01:00:51.01 ID:3HBC2IzAO
彼女は席に座わって店内の片隅に立ててあったフリーペーパーを読んでいた。

男「ごめん。遅くなった。」

?2「?」

彼女はよくわからない。
と言った顔をした。
そんなにも時間は経っていなかったのだろうか…自分は確実に15分以上は篭もっていたはずだと思っていた。

自分はその後、彼女と他愛もない話を重ねた。

とにかくどうでもいい事の方が多かったが、自分は彼女と話しているときは
他の厄介事のほとんどを忘れることが出来た。
とにかく彼女は、話の中にある自分が抱えている些末な不安や疑問、共感して欲しい部分を上手く拾うのが上手だった。
あまり身の上話をしない方だった筈の自分が
どうにも彼女の前ではポロポロと口から漏らしてしまう。
彼女はそれは上手に噛み砕き、ひもほどいて、心地よくしてくれた。

自分もできるだけ彼女の話すことに同じように返そうとした。
難しいように思えたが、寸分狂いなく的を得る彼女の話を拾うのにはさほど苦労しなかった。
自分はほんとうに彼女と初対面ではないのではないか。
そう思い始めていた。


62 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 01:12:57.44 ID:3HBC2IzAO
あっと言う間に時間が過ぎていった。
自分は最後に、昨日と先程、
鏡に映る少女の話をしてみようと思い、切り出した。


思いだせはしないが、彼女は自分を知っているのであろうと言うこと。
自分はどうにも思い出せないが、明らかにどこかで見たりあったりしたことがあると思うと言うこと。
その他諸々を伝えてみた。

こんな奇っ怪な話、真面目に(夢かもしれない…と注訳はいれてみたものの)話してる自分をみて彼女は引かないだろうか
そうも考えたが、どこか親身になって受け答えてくれるという信頼が勝手に芽生えていた。

あらかた話終わると彼女は黙っていた。

男「………………」
?2「……………………」

男「……………あの……」
?2「ふふっ」
彼女はまた、あの時の笑顔を見せた。
笑われた。と言った感じでもない印象を受けた。

?2「もう一度、もしかしたら二度?鏡の中のその子に会えば、思い出すんじゃない?」

男「そうかな」

?2「思い出して欲しいから、出てくるんじゃない?あなたのもとに」

男「………そうかも…しれないね……」
そういった考えに至れば、先ほど感じた恐怖も、さほどになった。


63 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 01:38:44.33 ID:3HBC2IzAO
?2「そろそろ、時間じゃない?」
ひとしきり会話が済み、間が出来たところで彼女は言った。
時計の針は15時45分前だった。
男「ほんとだ…………あっ、あのさ」
?2「……いこっ。時間に遅れちゃ相手に悪いよ!」

彼女は自分の話すタイミングを切って立ち上がった。
相変わらずサクサクと動くので自分は後から席を立ち、後ろを着いて店を出た。

自分と彼女は、店の前で立ち止まっていた。

男「…………………」
?2「会えるよ。また。絶対。」

自分はじっと彼女を見ていた。

?2「それじゃあね。わたしも急用が出来ました。さようなら。頑張って。また会おうね。」
淡々と、彼女らしく言葉を発して、こちらが照れるほどの
いつもの愛らしい笑顔で握手を求めるので黙って従った。

ギュッと一度だけ強く握られた。
その時、愛らしい筈の下がる目尻が、何も変わらないはずなのに、
『愛らしい』から『寂しい』
に変わっているような気がした。

ぱっと手を離した時にはもういつもの笑顔で、少し会釈のように顔を傾けると彼女は振り返って人混みの中へ戻っていく。

自分はただそこに立ち尽くして、彼女が見えなくなるまで背中を目で追っていた。
彼女が肩からかけたバッグからストラップらしきものが出ていて、それが何なのかはっきりとは見えなかったが、それらが光に辺り、チカチカと動いていたのが印象に残った。


64 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 01:47:55.55 ID:3HBC2IzAO
男「ふぅ…………」
大きく息を吐き、見えなくなった彼女の去っていった道をぼーっと見ていた。

男「急用…なんか、嘘だろ。」
いつ急用ができたのか。
結局自分は、彼女の名前も誰なのかもわからないまま別れてしまった。
もう、会うことはないなと思い、もう一度息を大きく吸って、吐いた。

男「(そろそろほんとに行かなくちゃ…間に合わないな……)」
さほど待ち合わせ場所まで遠くなかったので、十分間に合う距離ではあった。
気持ちを切り替えて、今は一旦忘れよう。
そう思い、彼女が去った方向とはいえ逆に足を進めた。

その時だった。

『プルルルル…』

ポケットに入っていた携帯がなる。
男「(着いたら連絡するって言っていたし、着いたのだろうか。)」
携帯を開く。
画面に表示されていた着信の相手は、例の女番号ではなく、朝かけ直した友人のものだった…


65 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 01:57:49.79 ID:3HBC2IzAO
男「なんてタイミングでかけ直して来るんだコイツは…」
ボソボソと呟きながらも、目的地に向かう歩を進めつつ電話に出た。
男「もしもし?」

友人「……悪い……寝てた…」
男「そう。急ぎの用事か?これから人に会うから後からもう一回かけ直してもいいか?」

友人「…………………」
男「?」

友人「………あぁ。」
男「(なんだ?今の間…)そっか。じゃあまた」
こちらも人混みやアナウンスがうるさかったが、電話先の友人の方も大概だった。

友人「あの…………」

切ろうとした時だった。

男「なんだよ。」
屋内にアナウンスが流れる。
『本日は〇〇におこしいただきまし〜…』
その時、友人は何かを話したのかも知れない。自分にはきこえなかった。

アナウンスがうるさかったのだ。自分が今ここにいるアナウンスも。
友人の携帯から聞こえてくる、『全く同じアナウンス』も。


立ち止まざるを得なかった。


66 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 01:59:53.24 ID:3HBC2IzAO
見ていただいてる方、ありがとう御座います。
すみません。更新遅い癖にこんなこといえる義理じゃないんですがちょっと休憩します。

もしもし打ちっぱなしで指がかなり痛いです


68 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 02:21:54.83 ID:XJUrStX/O
良かった落ちてなくて
充分寝たから朝まで保守る


69 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 02:23:12.20 ID:hAKTbeuZ0
良スレはけーん

ミステリー好きです
支援ヌ


71 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 02:27:43.59 ID:rcUJE33F0
>>1、お疲れ様です
前のSSも読んだぜー、体調には気をつけてなー

>>68
じゃあ今度は任せて俺は寝るとするかw


73 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 02:58:11.50 ID:3HBC2IzAO
男「………お前…今……どこだ?」

友人「………………」
男「おい!おーい!」

友人「すまん。本当は俺が言わなきゃならなかったのに……」

男「?…一体何の話だよ?」

自分はキョロキョロとその場を見渡した。必ず近くにいるはずの友人を何とか探そうと必死だった。
見つかるわけがない。
この大多数の人が右往左往してる中で。

待ち合わせ場所はもう肉眼でも確認できる、目と鼻の先だったが自分はそれどころではなかった。
プッ……ツーツー…

結局友人は何も話さなかった。
自分は携帯を耳から話、腕を下げた。色々とよぎったが、自分が今何をするべきなのか、それすらも見失っていた。

プルルルル。

手の中で、また携帯が鳴る。
男「…………はい。」


?「着いたよ。」

振り返ると、少し先の大きな柱には沢山の人が集まっている。
何故かわからないが、自分には最初に目線に止まった片手を耳に当てている女性。
それが電話の先の相手なんだと確信していた。


74 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 03:12:52.81 ID:3HBC2IzAO
自分はすぐに通話を切った。
早足、走っているとも言えるほどの速さで『それ』に向かって行った。

どんどん近くなる。
はっきりと肉眼でわかるほどにまで近づくと、確信に変わった。
向こうもそうだった。
ゆっくりとこちらに向かってくる。


はっきりとした結論から言うと、電話先の相手は『例の少女』ではなかった。
むしろよく見知った人物だ。
声で判断できなかったのは、会わない日々が長かった為だった。

男「久し振りだね……」

?「うん、元気だった?」

男「おう…」

彼女とは、友人よりもかなり古い付き合いだった。
小さい頃から同じ学校に通い、共に進学し、友人とその他の仲間達と一緒に遊んでいた。

所謂、幼馴染である。

しかし彼女は、中学を卒業する前に親の都合上転校したままそれっきりだった。
自分は、恋心など全く、と言えば嘘になる。特別な感情はたしかに持っていた。

しかし、連絡先を聞くことはできなかったが故に、今となってはもう殆ど過去の人、思い出とかしていた。


75 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 03:20:19.94 ID:3HBC2IzAO
やはり今でも可愛かった。すこしでも何かを期待してしまう。
男「…ほんとに……久し振りだね……」

幼馴染「うん……あの…………」
男「こっちに帰ってきてたの?」

幼馴染「あの………」
男「……?………どうしたの?どっか店入る?」

自分は少し、浮き足立っていた。浮かれていたのだ。久しぶりの再開。向こうから連絡をくれたわけだし、2人だし……………………



連絡を………くれた?


どうやって?


どうやって、知ったんだ?




男「あ、あ…………」
ポンっ
と自分の肩を後ろから軽く叩く。
この手にはまださびない程度の新しい記憶が残っていた。

男「友人……………」


76 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 03:27:07.66 ID:3HBC2IzAO
男「……やっぱいたのかよ」

男「あ、そうだ!覚えてるか?幼馴染だよ!!」

友人「…………」
幼馴染「………」

男「…………?」

男「ど、どうしたんだよ………な、なんなら今から3人でご飯でも……」

友人「…………………よ。」


男「な、いいじゃん!!またみんな仲良くさっ!!あれだな、昔の仲間も呼んで!!ほら自分のもう一人の男の幼なじみ覚えてるか?アイツも連絡先知らないけどなんとかしてさ!!またみんなで…………」

友人「…………俺が…教えたんだよ。幼馴染に。」

男「何を?」

友人「おまえの番号だよ。」

男「あ、そうなん…………だ……?」

幼馴染の目は、あふれそうなほど涙が溜まっていた。


80 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 03:40:37.43 ID:3HBC2IzAO
よくわからない。
いや、ほんとはわかってる。
こいつらも、よくわかってる。
なんだかんだ言ったって長い付き合いなんだ。
特に自分と友人は、現在進行なんだ。
大体、自分が考えてることや気持ちだってわかってくれてるんだ。

男「……………いつからだよ…」

友人「………………」
男「…………なんで…黙ってたんだよ………」

幼馴染「何度も……言おうとしたんだよ………グスッ……」
友人「すまん。おまえの気持ちは知ってたんだけど……ずっと……」

友人「今からうちに挨拶なんだ……だから…ちょうど良い機会だと…………」
男「……………」
簡単な事だ。
自分は幼馴染が好きだった。
多分、心の奥底でも、ずっと。
ただ、友人も好きだった。
友人は連絡先を聞いていた。
自分は聞けなかった。
友人はすぐに就職した。幼馴染の街で。
自分は、意味もなく金を溝に捨てて進学した。
友人は普通のサラリーマンになった。普通の定期収入で腰を落ち着かせた。
自分はただのクズになった。収入がなく、ベッドの縁に腰を落とした。
友人は幼馴染を射止めた。今日は挨拶の為に地元に来ている。
自分は何も知らず非日常とか言っちゃって構内のトイレでゲロを吐いた。


81 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 03:45:50.47 ID:hAKTbeuZ0
うわああああああああああああああああああ


82 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 03:51:41.56 ID:3HBC2IzAO
友人は最後の最後まで自分に気を使って言えなかった。
今日の朝まで。
自分は何もしていないのでただ寝れなかった。
今日の朝方まで。

男「……………そっかぁ……」

友人「…………」
幼馴染「…………」

男「おめでとう。また連絡くれ。なんか…気を使わせてしまった……申し訳ない。また……落ち着いたら……みんなで飲みにでも行こう………」

友人「………………男……」

男「じゃ。帰るわ。また絶対連絡くれよ」


二十歳過ぎれば皆大人。
自分は、笑顔で2人に挨拶をした。本当のところを言うと、
嫌みの様に聞こえただろう、多少ひねた気持ちがないわけでもなかった。
それでも、2人が一緒になることはいいことなんだ。
心からそう思えていたのも嘘ではなかった。

自分は何も言わない2人と交互に握手を交わした。
2人は泣いていた。

よくわからなかった。

身を翻し、来た道をゆっくり歩いて駅に向かった。


84 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 04:04:40.71 ID:3HBC2IzAO
もう、何も見えてなかった。
周りを行き交う人々も、音も。
いつの間にか、自分の周りで自分と同じ位置にいるのは自分だけだった。

幼馴染に連絡先が聞けなかった。じゃない。
自分がクズだったのだ。
友人が大学進学を選ばなかったのに対し「大変だな」なんてよくそんな皮肉が言えたもんだ。
自分はクズだったのだ。
大学に行く理由が無かったんじゃない。
ただやる気のなさをあわないという言葉で覆っただけだ。
信頼できる人がいない。
作る努力を他人に押し付けただけだ。
自分はクズだったのだ。
仕事をクビになったのは周りのやる気にあわせる気がなかったからじゃない。
意味のない、通用しないプライドをただぶら下げていただけだ。
自分はクズだったのだ。

自分はクズだったのだ。
と言うことも、
本当は薄々前から気がついていたはずなのに、今更これを気にどっと波が来たかのように被害者ぶって涙なんか流したりして
心を入れ替えた振りして
3日後にはまた忘れたようにベッドの縁で座ってる。
そこまで自分で自分を甘やかして、
よくわかってるくせに、何をしようって具体的な案もない。
自分はクズだったのだ。


86 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 04:14:25.30 ID:XJUrStX/O
全ニートが泣いた


87 名前:VIPがお送りします [Sage] 投稿日:2010/11/04(木) 04:20:19.65 ID:yp20TDTlI
今の俺には凄く心に刺さる
そして名作の予感。期待



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