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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その30
71 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 18:53:53.91 ID:zMK6t42Zo
〜会議室〜

カツカツカツ

皇太子「待たせた。して、何用かな?」

大軍師「南西砦まで電話が開通致しました」

皇太子「ほぉ」

大軍師「早速、本国へご連絡をされては?」

皇太子「……ああ、そうだな」

カチャッ……ジリリリリッ

エリート『こちら王宮。私は右大臣、エリートですが』

皇太子「エリートか、私だ」

エリート『陛下っ! ご無事なようで何よりです』

皇太子「うむ。南西砦まで電話が開通したのでな。報告をさせて頂こう」

エリート『はい』

皇太子「今回の魔王討伐戦……我らの勝利だ」

エリート『っ!!』


72 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 18:54:35.22 ID:zMK6t42Zo
皇太子「魔王アンラ・マンユは死んだ。間違いなくな」

エリート『そうですか……つ、ついに……』

皇太子「……だが」

エリート『……?』

皇太子「被害が尋常ではない。負傷者が大多数だ」

エリート『……っ』

皇太子「王宮としても、遺族への補償や弔問など、怠らぬように」

エリート『承知致しました』

皇太子「それと、凱旋パレード及び祝賀会は中止とする事」

エリート『……は?』

皇太子「パレードや祝賀会は中止、と言ったのだ」

エリート『それは同意致しかねます』

皇太子「エリート、言ったであろう。今回の戦いは被害が大きい」

エリート『だからこそではないですか』

皇太子「……?」


73 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 18:55:20.75 ID:zMK6t42Zo
エリート『多大な被害が出たからこそ盛大に執り行うべきかと思いますが』

皇太子「不謹慎だと言っているのだ」

エリート『不謹慎? それこそが不謹慎ではありませんか』

皇太子「あのなエリート、中には現地で家族を失ったものとておるのだぞ?」

エリート『陛下。本国では今なお、家族の無事を願うものらが多数いるのです』

皇太子「分かっている」

エリート『その者らに、暗い顔を見せて凱旋すると申すのですか?』

皇太子「そうではない」

エリート『命がけで得た勝利を証明するからこそ、待つ者も救われるのです』

皇太子「聞け、エリート。私はそんな気分になれぬと申しているのだ」

エリート『陛下、それはあまりにも偽善ですぞ』

皇太子「エリート!」

エリート『陛下!!』

皇太子「……っ」

エリート『いかに陛下の申し出と言えど、これには同意出来ませぬ』


74 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 18:55:58.01 ID:zMK6t42Zo
皇太子「……」

エリート『死にゆく男達は守るべき女達に、死にゆく女達は愛する男達に……』

皇太子「……」

エリート『己の生きた証と、生きる者達の未来と希望を残す為に戦ったのです!』

皇太子「……」

エリート『これを称えずは冒涜に値します。予定通り決行すべきです』

皇太子「……分かった。お前に任せる」

エリート『陛下、ご無礼をお詫び申し上げます』

皇太子「いや、お前が傍に居てくれて本当に助かる」

エリート『……勿体なきお言葉です』

皇太子「それでは、宜しく頼むぞ」

エリート「はっ。陛下には決してご迷惑の掛からぬよう取り計らいます」

カチャッ

エリート「……ふー」

大軍師「大丈夫ですか?」


75 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 18:56:55.99 ID:zMK6t42Zo
皇太子「何、いつもの事さ」

天才「ワガママ言うからだろ」

皇太子「我侭か。確かにそうだな」

天才「パレード廃止なんて十中八九反対されんだろ」

皇太子「出来れば、こういうものを政治的に利用したくはないのだ」

天才「ハッ! 政治的に利用しねーでどうすんだよ」

大軍師「国民の士気も大いに上がりますからね」

皇太子「それが政治的利用だと言うのだ」

天才「おいおい、どうしちまった小覇王サンよ?」

皇太子「……」

天才「戦場で現実見て、胸でも痛んじまったか?」

皇太子「小覇王は死んだよ」

大軍師「……」

皇太子「一国を背負って初めて気付いたさ。覇道ではなく王道というものにな」

カツカツカツカツ…


76 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 18:57:39.33 ID:zMK6t42Zo
大軍師「危ういかもしれませんね」

天才「そこまで弱い奴じゃねぇだろ」

大軍師「まぁ確かに、此度も前線まで来たわけですしね」

天才「さーて、ちょっくら一眠りしてくるか」

大軍師「こちらでの宴は如何致しますか?」

天才「決まってんだろ!」

大軍師「はっ。それでは最低限の飲食物に留めます」

天才「衛生兵と戦後処理担当は?」

大軍師「夜分までには皆、揃うと思われます」

天才「そんじゃ本国への帰還は明朝。それで手筈を進めてくれ」

大軍師「畏まりました」

天才「お前も少しは休めよ」

大軍師「司令に比べれば休んでおりますよ、ふっふ」

天才「そうかい。ハーッハッハ!」

カツカツカツカツ


77 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 18:58:19.24 ID:zMK6t42Zo
大軍師「……」

カツカツカツ

隊長「司令、大丈夫かね」

大軍師「今回の戦いではかなり消費されたようですね」

隊長「……」

大軍師「まぁ、今のところは大丈夫だと思いますよ」

隊長「そうか」

大軍師「それで、何かご用なのでは?」

隊長「ん、あぁ。工兵らが到着したんでな。行方不明者の捜索に行ってくる」

大軍師「そうでしたか、お気を付けて」

隊長「……念の為、すぐに救護出来る体制を整えておいてくれ」

大軍師「はい。信じておりますよ」

隊長「……10人でも1人でもいいさ、生きててくれりゃあな」

大軍師「はい……」

カツカツカツカツ…


78 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 18:58:51.62 ID:zMK6t42Zo
間もなく日は空高く昇り、昼を迎えた。

俺達は奇しくも集まった、多くの知人、友人と語り合った。

サモナー「へぇ、召喚獣をそんなに手に入れたのかぁ!」

召喚士「はいっ! 頑張りましたよ!」

これから起きる戦いで、また共に戦う事になるであろう者達。

オーク「幼女ちゃん!!」

幼女「オーク〜!」

戦士「ははははっ!」

今日を最後に、もう会えないかもしれない人だってきっといるだろう。

学園長「それでは、決して無理はしないようにね」

魔道士「もう帰っちゃうんですか?」

火の先生「生徒らをこれ以上、危険な場所へは置いておけぬからな」

魔道士「あっ、そうですよねぇ……」

賢者「さぁ行こうか……ふぅ」

水の先生「ちゃっかりお前も帰るのかよっ!?」


79 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 18:59:19.88 ID:zMK6t42Zo
カツカツカツ

皇太子「……」

タッタッタ

女学生「……あっ」

皇太子「君は……」

女学生「……先程は、失礼致しましたっ!」

皇太子「いや、私こそ君にはお詫びを――」

女学生「私……決めました」

皇太子「……?」

女学生「父は、誰かに言われて戦ったのではなく、自分の意思で戦ったのです」

皇太子「……」

女学生「作戦前に、逃亡や退却の自由が認められたと聞きました」

皇太子「そうか」

女学生「それでも父は逃げなかった……っ、最後まで戦った」

皇太子「その通りだ」


80 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:00:03.71 ID:zMK6t42Zo
女学生「誰の為でもなく、世界の為に……平和の為に……」

皇太子「……」

女学生「だから、決めたんです」

皇太子「……うむ」

女学生「私は今年で、魔道学校を卒業致します」

皇太子「そうだったか」

女学生「だから、卒業したら……したら……っ」

皇太子「……」

女学生「私はっ、国軍に入って……魔道兵になりますっ!!」

皇太子「……っ」

女学生「お……父さんがぁ、間違ってなかった……ってぇ……証明しますっ!!」

皇太子「……ああ」

女学生「ひっ、ひぐ……っ! ありがとうございました!! 失礼しますっ!! 」

タッタッタッタッタ

皇太子「……」


81 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:00:33.25 ID:zMK6t42Zo
テクテクテク

双子姉「昼食の準備が」
双子妹「出来ましたよっ!」

皇太子「あ、あぁ。すぐに行く」

双子姉「陛下……?」
双子妹「どうかしましたか?」

皇太子「何でもない、先に行っててくれ」

双子姉妹「……はい」

テクテクテクテク

皇太子「……」

ゴシゴシ

皇太子「礼を言いたいのは……こちらさ」

幾ら拭っても拭いきれない。皇太子はしばしの間、晴れ空を見上げる。

皇太子「悩む事など何もない。王道や覇道などと……私は愚か者だ」

ザッ…カツカツカツ

前を向いて歩き出す皇太子の顔は、はいつも通りの整然とした表情に戻っていた。


82 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:01:00.00 ID:zMK6t42Zo
〜北方司令部〜

騎士長「きたぞおぉ!!」

左翼長「!?

騎士長「アンラ・マンユ、討伐成功との報!」

参謀「まことですかっ!?」

左翼長「やりやがったか……っ!」

北方司令部の中庭に、兵らと集まっていた北方軍の指揮官と幕僚達。

朗報を受けた一同が、一斉に歓喜の声をあげる。

ワアアァァァァ!!

北方兵「ついに……ついに魔王を!!」

青龍士官「しかし、まだ最初の1体に過ぎない」

騎士長「それでも倒したんだよ……っ! あの憎きアンラ・マンユをよぉ!」

左翼長「……」

騎士長「これで、浮かばれるな。戦士父も俺も、そしてお前も……妹も」

左翼長「ああ、そうだな」


83 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:01:46.73 ID:zMK6t42Zo
〜赤壁〜

ワアアァァァァッ!!

南方参謀「もう一度言うわよっ! 魔王アンラ・マンユを倒したわっ!!」

南方副司令「やったぞおい!!」

南方司令「ああ。正義は必ず勝つのだ」

南方弓長「次は、私達の番ですかね?」

南方副司令「どうだろうな。直に召集があるさ」

南方司令「そうだ。今は課せられた任務をこなす事こそ重要」

南方弓長「そうですね」

南方参謀「そーれ、エイエイオーッ!」

南方兵「エイエイオー!!」

昼過ぎまでには南北の各拠点を含めた本国全土に、朗報が行き渡った。

人々は魔王アンラ・マンユの討伐に歓声と驚嘆の声を上げ、賑わったと言う。

それは夜遅くまで続き、場所や人を問わず、初戦の勝利を称えあった。

しかし現地においては、その様相は全く真逆のものであった。


84 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:02:23.82 ID:zMK6t42Zo
〜南西砦、夜〜

男隊員「今日はもう暗くて捜せねぇ」

隊長「明朝からはまず、明かりの確保を進めよう」

工兵「はっ。各地に松明などのの設置を致します」

隊長「今日はここまで。明日は5時に正門前にて集合。解散!」

ザザッ…ザッザッザ

男隊員「疲れた……」

女隊員「でも、良かったじゃないッスか」

男隊員「あ?」

女隊員「生存者が何人か見つかって、良かったじゃないッスか」

男隊員「助かる見込みがありゃいいけどな……」

女隊員「……っ」

男隊員「ほれ、行くぞ」

女隊員「は、はい……ッス」

タッタッタッタッタ


85 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:03:22.67 ID:zMK6t42Zo
〜広場〜

パアアァァァァ

女賢者「はい、いいわよ。んふっ♪」

歩兵「あ、ありがとうございました……っ」

女賢者「あー。今日はもう魔力もたないわぁ」

カツカツカツ

白虎長「お疲れ様、今日はもう休んだら?」

女賢者「ありがと♪」

白虎長に手渡された酒を、女賢者は半分程を一気に喉へと流し込む。

女賢者「っはあぁ〜生き返る〜♪」

白虎長「あっちに軽食も用意してるから。行きましょ」

女賢者「んふっ♪」

白虎長「さーて私も……」

白虎嬢「従姉さんはダメ。コップ1杯だけです〜」

白虎長「えぇーっ!?」


86 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:03:59.42 ID:zMK6t42Zo
〜南西砦、外〜

戦士「お疲れ」

召喚士「お疲れ様」

チィン

戦士「しっかし、あれだなぁー」

召喚士「んー?」

戦士「なんかこう……素直に喜べないんだよなぁ」

召喚士「魔王を倒した事?」

戦士「ああ」

召喚士「……分かるよ」

戦士「勝った瞬間もそうだけど、実感がねぇっつーか……」

召喚士「そうなんだよね」

戦士「それによ……」

召喚士「……うん。被害の事を考えると、心から喜べないよ」

戦士「最前線の俺らが生き残って、後方の奴らがやられちまって……」


87 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:04:29.11 ID:zMK6t42Zo
召喚士「……不甲斐ない限りだよ」

戦士「これからも、ずっと続くんかなぁ」

召喚士「……分からない」

戦士「だよな」

召喚士「それに、次は俺らの番かもしれないし……」

戦士「……だよ……な」

召喚士「なんか、急に怖くなってきた……ははっ」

戦士「なぁ召喚士」

召喚士「ん?」

戦士「お前、思い残す事とか……ないか?」

召喚士「思い残す事? まぁ、そりゃあるけど……」

戦士「今のうちに済ませた方がいいんじゃないか?」

召喚士「え……っ?」

戦士「死んじまったら想いも何も伝えられないんだぞ?」

召喚士「えっ? 想いって……あの……」


88 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:05:04.17 ID:zMK6t42Zo
戦士「俺さ、盗賊に告白しちまった」

召喚士「へふぇ!?」

戦士「いや、まぁ……なんつーか……勢いっつか」

召喚士「こ、告白って……好き……って事……だよね?」

戦士「それ以外に何の告白をするんだよ」

召喚士「そ、そうだよね! は、ははは……っ」

戦士「そんでさ」

召喚士「う、うん」

戦士「盗賊も……返事……してくれたんだわ」

召喚士「!?」

戦士「受けてくれた。俺の告白」

召喚士「――っ!!」

戦士「いやっ、だからどうって事はないんだ! 別に何か変わるわけでもないし!」

召喚士「わ、分かってるようん! うんっ!」

戦士「あの時は妙に冷静でさ、今言っておかないと後悔する……って思ったんだ」


89 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:05:38.07 ID:zMK6t42Zo
召喚士「な、なるほど」

戦士「だからってワケじゃねーけど、お前も言っておいた方がいいんじゃねーかな……って」

召喚士「……」

戦士「別に召喚士が死ぬだなんて思っちゃいないけどさ、言える機会があるうちに……」

召喚士「ありがとう」

戦士「……」

召喚士「でも、大丈夫。俺の場合は」

戦士「召喚士?」

召喚士「多分、俺の場合は……抜けちゃうと思うんだ」

戦士「……」

召喚士「今はこの想いをぐっと溜めてるから、力になってるんだと思う」

戦士「なるほどな」

召喚士「だから、俺はまだ……大丈夫」

戦士「……はははっ!」

召喚士「……?」


90 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:06:16.95 ID:zMK6t42Zo
戦士「召喚士らしいわな!」

召喚士「そ、そうかな?」

戦士「まーあとはあれだな」

召喚士「え?」

戦士「誰かに先を越されないように気を付けねーとな! はっはっは!」

召喚士「!?」

戦士「さーて、酒取りに行ってくるわ」

テクテクテク

召喚士「戦士ってば! ……もうっ」

戦士が去った外壁の一画。召喚士は夜空の朧月をぼんやりと眺める。

召喚士「……告白、か」

壁に背を預け、地面へと座る召喚士。月は相変わらずぼんやりと浮かんでいる。

召喚士「死ぬわけには……いかないよね」

手にした酒を一気に飲み干し、立ち上がるや否や人だかりの方へと足を進める。

月は少し輪郭を形取り、柔らかな光を降り注いでいた。


91 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:06:51.64 ID:zMK6t42Zo


天才「……」

グビッ

天才は1人、岩場の上へと座り、酒を飲んでいた。

月は雲に隠れ、南西砦からの小さな松明の光が、グラスを光らせていた。

天才「……」

ピクッ

戦士父「……珍しいな」

天才「……あぁ?」

戦士父「あんたが気配に気付かないとはな」

天才「うるせーな、疲れてんだよ。あっち行け」

戦士父「ああ、そのつもりだ」

天才「……?」

戦士父「その前に1つ聞かせてくれ」

天才「何だよ」


92 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:07:26.66 ID:zMK6t42Zo
戦士父「ゾディアックは……まだ必要になるのか?」

天才「……使い手はてめぇだろ。自分で考えろ」

戦士父「……」

天才「お前、まさか回収に行くのか?」

戦士父「見つかるかは分かりませんけどね」

天才「馬鹿じゃねーの」

戦士父「……」

天才「その腕で、どうやって使いこなすんだっつーの」

戦士父「あんたはそこまで考えていたのか?」

天才「あぁ?」

戦士父「ゾディアック。あれには1本レプリカが含まれている」

天才「あぁー。ドッペルゲンガーのなんちゃらってヤツか」

戦士父「あれのお陰で魔力抜きの投擲では肉体、精神に影響はないようだ」

天才「……」

戦士父「あんたはそこまで狙って……」

天才「質問は1つなんだろ!? さっさと失せろ」


93 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:08:09.92 ID:zMK6t42Zo
戦士父「……」

クルッ…ザッ

天才「……あーおい」

戦士父「……?」

天才「片手だろうが投擲は出来んだろーなぁ?」

戦士父「無論」

天才「んじゃ、戦力としてカウントしておくぞ」

戦士父「……頼みます」

天才「必ず見つけ出せよ、ゾディアック」

戦士父「了解」

天才「レプリカじゃねぇ本物が合わされば、おそらく五行も要らねぇ」

戦士父「……?」

天才「何も急ぐ必要はねーぞ。最後の最後に間に合わせてくれ」

戦士父「……何を言っている?」

天才「お前には言っておく。俺はおそらく……サタンまでは持たねぇ」


94 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:08:52.31 ID:zMK6t42Zo
戦士父「……!?」

天才「何千とプランニングしてきたが、どうあってもサタンはラストになる」

戦士父「……」

天才「んで、俺様がサタンまで生き残る可能性は……0だ」

戦士父「……っ」

天才「だから、頼んだぜ」

戦士父「……断る」

天才「何?」

戦士父「今は可能性が0でも、運命ならば変わるはずだ」

天才「運命ねぇ……」

戦士父「それに、俺ももう60に近い。託すなら適任がいるでしょう?」

天才「誰だよ?」

戦士父「それはあんたが一番よく分かってるはずだ」

天才「……」

戦士父「あんたが育ててきた奴らだ。そうでしょう?」


95 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/21(火) 19:10:52.48 ID:zMK6t42Zo
天才「……ハーッハッハ!」

スクッ…スタッ

天才「テメーと顔を合わせるのもこれが最後かもな!」

戦士父「……」

天才「そうならない事を祈って、乾杯といくか」

戦士父「……遠慮しますよ、下戸なんで」

天才「ちっ、相変わらずかよ。まぁいい、早く行きな!」

戦士父「では、お元気で」

ザザッ…ビシッ

天才「敬礼もサマになってるじゃねーか。老いてなお盛んってか? ハーッハッハ!」

戦士父「また、会いましょう」

天才「おーう。またな」

ザザッ…ザッザッザ

天才(……これでいいんだよな、お師匠)

雲に隠れていた月は、少しだけその顔を覗かせていた。



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