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少年「……」 男「何だこいつ」
218 名前:>>217ずれた……orz [] 投稿日:2010/12/30(木) 21:41:45.32 ID:ndx68IWO0
男「へっくし」

少年「風邪?」

男「いんやー、多分昨日月見酒しすぎたせいかな」

少年「なにそれずるい」

男「お前寝てたからな……ぶぇっくし!」

少年「きったな……」

男「悪い、今夜は何か温かいモンが食いてぇな」

少年「うん」


219 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 21:43:25.04 ID:K11zzIFe0
なかなか面白い
支援


220 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 21:51:20.94 ID:ndx68IWO0
男「あー寒い寒い」

少年「そんな格好してるからだよ」

男「好きだから良いの!」

少年「変なの」

男「変で結構ー」

そう言いながらも、男は高い背を丸めて歩く。
寒いぜ、と時折口走る。着流しにちょっと羽織ったくらいじゃ当たり前だ、と少年は思う。

少年「……」

ちら、と道往く人々を観察してみる。以前よりも洋服が多くなった、気がする。
誰も彼もが少し歩き辛そうなくらいに着込んでいるのがよく解る。

少年「…………」

男「んー?」ズビッ

少年「……なんでもない。ハナ、垂れてる」

男「うへぇ」


帰路に着くと、鍋の支度をした。


221 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:00:46.78 ID:ndx68IWO0

少年「じゃ、行ってくる」

男「おお」

男「気を付けてなー、落とすんじゃないぞー」

少年「解ってるよ」

昨日渡された『お小遣い』を持ち、早速少年は店へ向かう。

男(……で、帰って来たら片手にはハーモニカ……っとね)

思惑通りだぜ、とにんまりと笑みを浮かべそうになる。
ハーモニカを持ってはにかむ少年の顔が思い浮かぶ。

男「いやはや……お子様なんてかわいいもんだね」

くく、と喉の奥から笑いを漏らす。
すると、ふいに良くもまぁこんなにも丸くなったものだとも思えた。

男「……くくっ」

今度は少し自嘲混じり。
それでは自分は酒の買い足しにでも行きますかね、と伸びをした。

外へ出ると冷たい風が全身を撫で、くしゃみが出た。


222 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:11:07.40 ID:ndx68IWO0
少年「ただいま」

男「お帰り」

少年「……瓶、増えてる?」

男「お前が行ってる間に買ってきたのさ」

少年「ふーん」

男「で、お前は何か買ってきたのか?」

少年「あ……うん」

男「ほほー……」ニヤ

男(何やら気まずそうだな……くく)

男(今更隠さずとも俺にはお見通し……貴様がハーモニカを買ってきたことはなッ!)

男(しかし……ハーモニカってあんなにデカイ袋に入れるもんか?)

少年「……」


223 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:14:46.78 ID:ndx68IWO0
男「どんなん買ったんだよー」

少年「……」プイッ

男「見せろよー」

少年「…………」

男「見せんと無理矢理見てまうぞー」

少年「………………」

男「よし、見せやがr」

少年「うっさいな! ほら!」ヒュッ

男「ぬわっ」ボスッ

男「てめこの楽器なんだからもっと大事にー……ってこれ?」

少年「……」プイッ


224 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:21:25.46 ID:ndx68IWO0
男「……これ」

少年「…………っ」

少年「お兄さんの背とか良く解んないからっ!」

少年「とりあえず、コート……? とか、手袋だったら大丈夫かなと思って!」

少年「別にお兄さんが寒がってたからじゃないよ、くしゃみとか鼻水とか汚くて嫌だし、風邪引かれてうつされたら嫌なだけ」

少年「……僕のためなんだからね」プイッ

男「おま……」

袋の中に入っていたのは男性用のコートに手袋、新しいマフラー。
どれもこれも、冬の寒さを凌ぐにはおあつらえだ。


225 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:27:57.63 ID:ndx68IWO0
少年「これを機に、洋服とか着てみたら? 和服には合わないだろうし」

少年「……いや、別に着て欲しいとかそういう訳でもないんだけどさ」

少年「…………まぁ、年寄りで時代遅れなお兄さんには洋服なんか似合わないと思うけどねっ!」

男「…………」

少年「……何、何か文句あるの?」

少年「文句どころか、むしろ感謝して欲しいくらい……わ!?」

男「……お前って奴はぁぁぁ!」ガバッ

少年「ちょ、やめtむぎゅ」

男「俺はお前を甘く見ていたよ許せ……っくしょい!!」

少年「ぎゃ! やめてよ汚い!」ブスッ

男「針は痛い!」



226 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:30:32.72 ID:ndx68IWO0
――――――――――――――――

――――――――――――――

――――――――――――

後日、洋服に身を包み鼻を啜る男が、ハーモニカを片手に楽器店から出てくる姿が見られたそうな。


227 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:31:19.23 ID:ndx68IWO0
……ひとまずです


228 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/12/30(木) 22:36:26.39 ID:gDIMOcj/P
ウヒー!面白かった!!


229 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:36:43.11 ID:fke++eVd0
おつかれさま


230 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:38:57.49 ID:ndx68IWO0
>>228>>229
どうもです
本当は昨日の夜中〜朝方に書くつもりが……へへ
貴重な時間を申し訳ない


231 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:39:12.61 ID:bEgXEslK0
乙乙
終わり?


232 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:40:22.20 ID:ndx68IWO0
>>231
このまま終わった方が収まりが良い気が。一応蛇足はありますが


233 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:41:18.57 ID:wRf+OHRT0

蟲師みたいな雰囲気が好き


234 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 22:43:34.77 ID:ndx68IWO0
>>233
蟲師好きです
紙魚の話と杯の話とか造酒の話とか


235 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 23:01:12.65 ID:ndx68IWO0
それではこんなん見てくださってありがとうございました
時間が許せば蛇足りたいです
読んでくれた方も乙


237 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 23:10:49.07 ID:ax18JSPh0
むむむ、悪くない
美少年のツンデレは許されるな


238 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/30(木) 23:10:55.72 ID:ndx68IWO0
書くなら夜中か明日かも少し先に……面目無いです


241 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 00:22:22.62 ID:nAkwrFZmO
乙!保守した甲斐があったぜ
少年可愛いなぁ
どっかまとめに載らんかね


243 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/12/31(金) 01:20:03.60 ID:Ipw6Wfrl0
乙です
こういう世界観好きだな


252 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 09:12:33.84 ID:U9VDMe9+O
保守
個人的に男は黒髪短髪顎髭って感じ。


254 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 11:23:30.26 ID:iD6h6f7KP
http://up3.viploader.net/ippan/src/vlippan176912.jpg
個人的イメージ
ガンガン途中だけど年内に終わらせられる気がしないので保守がてら貼り


258 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 15:11:13.03 ID:my7BdkvD0
男の子も着物イメージしてた


266 名前: ◆B/w5IU75jTqz [] 投稿日:2010/12/31(金) 22:47:36.27 ID:lk1a/rJ+0
おふぅ……まさかの残ってる
そしてイメージ画のちょっと早めのお年玉ktkr!
おいしいおいしい


267 名前: ◆B/w5IU75jTqz [] 投稿日:2010/12/31(金) 22:49:26.82 ID:lk1a/rJ+0
保守も絵もありがとうございます……蛇足よろしいですかね


268 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 23:00:26.53 ID:lk1a/rJ+0
少年「…………」プフー

男「…………」ニヤニヤ

少年「…………」ピスー

男「…………」ニヤニヤニヤ

少年「…………」スポー

男「…………」ニヤニヤニヤニヤ

少年「…………」ポヒー

男「…………へったくそ」

少年「……黙って」


269 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 23:05:02.83 ID:lk1a/rJ+0
男「えっと、なんだったかハンムラビ……?」

少年「ハーモニカ」ベスー

男「おう、それ。そんな難しいのかよ?」

少年「知らない、音でない」プスー

男「あのじいさんは音出てたのになぁ」

少年「…………」ポミャー

男「割りに不器用だなィ」

少年「うるさい、集中できない」

男「……どれ、貸してみんしゃい。俺が吹いちゃる」

少年「……大雑把なお兄さんに出来るわけないじゃん」

男「まぁまぁ」


270 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 23:05:43.51 ID:lCsSMThe0
間接キス!


271 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 23:08:11.08 ID:lk1a/rJ+0
少年「壊さないでよね」

男「まーかして!」

男「では、いきますよー」

少年「……」

男「……〜♪」ファー♪

少年「!」

男「〜♪〜♪」ファー♪

少年「…………」ムスッ

男「……上手いもんだろ?」

少年「……ふん」プイッ」



272 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 23:11:24.41 ID:lk1a/rJ+0
男「いや〜思ったより簡単じゃん?」

男「もしかして俺才能あったりして?」

男「これはもしかしてこのハーメルンで天下取れってことかしら?」

少年「ハーモニカ」

男「まぁ気にするな。いや〜我ながら惚れ惚れするわ〜」

男「自分の才能が恐ろしいわ〜」

少年「…………」


273 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 23:15:30.12 ID:lk1a/rJ+0
男「まぁお前がどうしてもって言うなら?」

男「吹き方教えてあげちゃっても良いかなとか思ったりしちゃうけど?」

少年「…………」

男「さぁさぁどうする〜?」

少年「…………けど」

男「え〜? 何聞こえなーい……ってあれ」

少年「……ほんと、すっごく、うざったいんだけど」

男「…………」

少年「…………」ウルッ


274 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 23:17:48.77 ID:lk1a/rJ+0
男「えっと、その、なんだ……」

少年「…………」ウルウル

男「ほら、俺もまさか吹けるとは思って無くてよー……嬉しくてつい調子に乗ったというか」

少年「…………」ウルウル

男「…………」

少年「…………ぐすっ」

男「……悪い」



275 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/12/31(金) 23:20:01.82 ID:MKnHDIhX0
つ愛


276 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 23:21:26.98 ID:lk1a/rJ+0
少年「……ばーか」

男「……はい」

少年「大人気ない」

男「全くその通りだと思います」

少年「もじゃ毛、年寄り、蛆虫」

男「はぐっ……! ……すみませんでした」

少年「…………」プイッ


277 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 23:25:52.06 ID:lk1a/rJ+0
少年「…………」

男「俺が悪かった、ひとまずソレは練習すりゃ上手くなるさ」

男「それにホラ、まだ始めたばかりだろ? 時間はたっぷりある……」

男「それにお前はやれば出来る奴だって俺よく知ってr」

少年「お兄さん」

男「ひゃいぃ!?」

少年「吹いてよ」

男「へ?」

少年「ハーモニカ、吹いてって言ってるの」

男「お、おお」

男「…………」スゥ

男「……〜〜♪」


278 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/12/31(金) 23:38:13.14 ID:lk1a/rJ+0
男がハーモニカを吹く。
その音は、初めてにしてはよく澄んでいて、聴く者の耳に柔らかに馴染む。
ふたりの根城から夜空に響く音色。近所迷惑とも言えるかもしれないが、やけに、月に似合う。

少年「……〜♪」

そこに、新たな旋律が重なる。
まだ声変わりをしていない、不安定な儚さを感じる、さりとて芯のある声。
歌詞など無い、出来合いでない曲。

ふたりの目配せが指揮棒、星の瞬きがリズム。その場で紡ぎだされる音楽。
その日の月はこぼしたミルクのように柔らかに光り、なんだかひどく優しくゆったりとした夜に思えた。



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