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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その30
213 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/26(日) 23:54:19.74 ID:rgtuBnMpo
チュンツンチュンチュンチュン

盗賊「……」

まだ日の出間もなくの頃、盗賊は1人、宿を抜けて郊外を訪れる。

ザッザッザ

盗賊「……?」

ジュニア「おっ、盗賊ちゃんじゃないか、おはよう!」

盗賊「……おはよう……ございます」

ジュニア「どうしたんだ? こんな朝早く……」

盗賊「……日課の朝稽古だ」

ジュニア「ハッハ、そいつは偉い!」

盗賊「……どうも」

ジュニア「せっかくなら一緒にどうだい?」

盗賊「……?」

ジュニア「朝稽古。いい場所があるんだよ」

盗賊「……は、はぁ」


215 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/26(日) 23:58:59.19 ID:rgtuBnMpo
ザッザッザ

盗賊「……おぉ」

ドドオオォォォォ

郊外を東側へと進むと、丘を降った先から水の落ちる音が聞こえる。

ジュニア「そんなに大きな滝じゃないけど、なかなかいいとこだろ?」

盗賊「……うん」

ザッザッザ

盗賊「……よく……来るのか?」

ジュニア「たまーに。本国に長期滞在した時とか、考え事がある時とか」

盗賊「……考え事?」

ジュニア「滝行さ。滝に打たれてるとね、なーんも考えなくていい。ハッハ!」

盗賊「……ああ」

ジュニア「おっ、盗賊ちゃんも滝行経験者か!」

盗賊「……まぁ、一応」

ジュニア「おしおし、それじゃ話は早い」


216 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 00:01:47.66 ID:u2yoEshio
テクテクテク…ッ

ジュニア「どうだい? 間近で見るとそれなりの……んっ?」

盗賊「……先客か」

ジュニア「ちっ、せっかく2人きりかとおもったのによ」

盗賊「……?」

ドドオオォォォォ

ジュニア「……ジーサン、精が出るね」

ザアアァァァァ

青龍先生「……ひょっひょ」

ジュニア「よく来るのかい?」

青龍先生「まぁの」

盗賊「……!?」

青龍先生「おや? 確かお主は……」

盗賊「……どうも」

ジュニア「盗賊ちゃん、知り合いかい?」


217 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 00:07:07.24 ID:u2yoEshio
盗賊「……うん。青龍先生だ」

ジュニア「何ぃ!?」

青龍先生「ひょっひょ、もはや名ばかりの耄碌ジジイじゃがのぅ」

ジュニア「アンタが青龍先生……っ」

青龍先生「滝行かの?」

ジュニア「あ、あぁ。ご一緒させて頂くとすっかね」

盗賊「……」

テクテクテク…ザッ

ジュニア「よーし……」

バサッ

青龍先生「ほぉ、褌とはなかなか粋よの」

ジュニア「ハッハ! まずは身だしなみからよ」

ノソッ…テクテクテク

ジュニア「よっと!」

ドザアアァァァァ


218 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 00:08:46.51 ID:u2yoEshio
ジュニア「……く……むむぅ!」

盗賊「……」

ジュニア「盗賊ちゃんもどうだい?」

盗賊「い、いや……っ、私は……」

ジュニア「せっかくだから一緒にやろうじゃないの!」

盗賊「……うーん」

スクッ…ザッザッザ

盗賊「……」

パサッ…シュルシュルシュル

ジュニア「おぉ……っ!」

盗賊「……お邪魔……します」

ジュニア「あの……何それ?」

盗賊「……水着」

ジュニア「……あ、そう」

青龍先生「煩悩も打ち消した方がいいようじゃのう……ひょっひょ」


219 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 00:09:26.56 ID:u2yoEshio
ドザアアァァァァ

盗賊「……」

ジュニア「……」

青龍先生「お主らも、アンラ・マンユへ行ってきたのか?」

盗賊「……うん」

青龍先生「そうか。それはご苦労様じゃの」

ジュニア「青龍先生は、もう戦わないのかい?」

青龍先生「儂なんぞ第一線じゃもうや役立たずじゃわい」

盗賊「……そんな事は」

青龍先生「いやいや、己の事は己がよーく分かっておる」

ジュニア「伝説も年には勝てねぇか……」

青龍先生「じゃが、まだやる事はある」

盗賊「……?」

青龍先生「……さて、と」

ジュニア「……」


220 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 00:10:21.75 ID:u2yoEshio
ザバッ

青龍先生「昼の本会議、お主らも出るんじゃろ?」

ジュニア「え、あ……あぁ」

青龍先生「それじゃ、また後での」

ザッ…テクテクテク

盗賊「……」

ジュニア「あれが青龍先生か」

盗賊「……うん」

ジュニア「伝説と呼ばれ、魔王パズズを封印したっていう……」

盗賊「……共に戦った事もあるが……凄い人だ」

ジュニア「まだやる事……何の事だ?」

盗賊「……さぁ」

ジュニア「……おっと、いかんいかん。滝行に専念だ」

盗賊「……うん」

2人はしばしの間、流れ落ちる滝に身を預け、精神を集中させた。


221 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 00:22:51.07 ID:u2yoEshio


時は間もなく正午。ジュニアと盗賊はホテルのロビーへと顔を出す。

テクテクテク

魔道士「あっ、盗賊さん!」

盗賊「ごめん、遅くなった」

魔道士「いえいえ。お風呂行ってたんですか?」

盗賊「……うん。滝にあたってたから」

朱雀嬢「!?」

テクテクテク

戦士「全員揃ってっかぁ?」

魔道士「こちらは揃ってますよ〜」

召喚士「ジュニアさんは?」

盗賊「……直接行くってさ」

戦士「そっか。そんじゃこのまま行くとすっか」

召喚士「うん」


222 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 00:23:26.84 ID:u2yoEshio
〜国軍本部〜

ザワザワザワ

天才「どうだ?」

大軍師「北が遅れているようですが、比較的順調です」

天才「そうかい」

カツカツカツ

南方司令「南方幕僚、全員……招集致しました」

天才「おーう。ご苦労ご苦労」

大軍師「あおれでは先にご着席下さいませ」

南方副司令「ほれ、行くぞ」

西方参謀「へいへい。すぐに行きますよ〜っと……ヒック」

カツカツカツ

南方弓長「……青龍先生?」

青龍先生「ひょっひょ、南方と西方の連中か。元気そうじゃの」

南方参謀「そういうジーサンもまだまだ健在ねぇ」


223 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 00:24:29.96 ID:u2yoEshio
カツカツカツ…コツ

東方司令「……」

天才「おう、早かったじゃねぇか」

東方司令「ご命令でしたので」

東方副司令「ご無沙汰しております」

大軍師「先日、賊が入ったという話でしたが、その後は大丈夫ですか?」

東方副司令「ええ、ご迷惑をお掛け致しました」

大軍師「東方先生は?」

東方副司令「王宮へ立ち寄ってから参られるそうです」

天才「んじゃ、お前らは席に座っててくれ」

テクテクテク

召喚士「おぉ」

戦士「すっげー人数」

青年兵「ご苦労様です」

魔道士「こんにちは」


224 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 00:25:31.96 ID:u2yoEshio
天才「来たか。んじゃ、お前らはあっち」

盗賊「……お」

ジュニア「さっきはどーも。ハッハ!」

玄武娘「何かあったんですの?」

盗賊「……いや、滝にあたった仲……かな」

朱雀嬢「……?」

召喚士「他のワーカーはいらっしゃってないんですね」

天才「約1名が迷子で来れそうもない。あとは戦場だ」

召喚士「戦場……」

魔道士「魔法剣士さんや眼鏡さん、頑張ってるんですね」

戦士「みてーだな」

カツカツカツ

皇太子「遅くなった」

エリート「私達で最後ですか?」

大軍師「いえ、まだ北方軍が来ておりません。どうぞご着席を」


227 名前:NIPPERがお送りします(東海) [sage] 投稿日:2011/06/27(月) 08:19:35.94 ID:8i95MuJAO
>>1乙

ジュニアの目的は何だったんだ?
結局単純に裸体が見たいから誘ったのか
ガチ修行だったのか


228 名前:NIPPERがお送りします(大阪府) [] 投稿日:2011/06/27(月) 08:24:25.15 ID:4UXuwI2X0
女子との交際のきっかけにするために声をかけた女の子が、両思いに気付いたばかりの女の子だとは


つくづく女運がないな


229 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/27(月) 08:26:40.63 ID:QnG2XinDO
>>1乙
ペニスも一皮剥けて大きく成長したよな。
初めの頃なんて召喚獣2体での同時攻撃なんてしようものなら
すぐに全魔翌力を放出してしまって、ぐったりしてたもんなww


233 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 18:05:26.92 ID:k2rwaawxo
テクテクテク

召喚士「あっ、青龍先生」

青龍先生「おぉ、朱雀の。元気そうで何よりじゃわい」

玄武娘「おぉーっ、青龍先生ですの!」

朱雀嬢「……」

青龍先生「こりゃあ何とまぁ……」

召喚士「え……っ?」

青龍先生「これ、白虎先生」

白虎長「……?」

カツカツカツ

青龍先生「まさか、今再び先生が揃うとはのぅ……」

召喚士「!?」

白虎長「本当だっ、言われてみれば……」

玄武娘「おぉーっ!」

青龍先生「とは言っても、他は次世代の先生方じゃがのぅ……ひょっひょ!」


234 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 18:05:55.85 ID:k2rwaawxo
ザワザワザワ

皇太子「おぉ」

エリート「先生方が……揃った」

大軍師「これは素晴らしい」

天才「いい宣伝材料になんじゃねぇか。ハーッハッハ!」

カツカツカツ…ザッザ

騎士団長「おっ、来たようだぞ」

左翼長「遅くなった」

天才「構わん。座ってくれ」

青年兵「青龍士官、君はこちらに」

青龍士官「はっ」

騎士団長「北はどうです?」

騎士長「特に大きな戦闘もなく、順調っちゃ順調かな」

天才「そんじゃあ始めっぞ」

大軍師「全員、ご着席下さい」


235 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 18:07:02.37 ID:k2rwaawxo


大軍師「資料の行き渡ってない方はいらっしゃいますか?」

戦士「五ヵ年計画、最終本会議……か」

召喚士「……」

大軍師「大丈夫のようですね。それでは始めます」

天才「知っての通り、魔王アンラ・マンユを倒した」

ザワザワザワ…

天才「現地で戦った奴ら」

召喚士「……」

天才「援軍に駆けつけてくれた奴ら」

皇太子「……」

天才「遠方で牽制し続けてくれた奴ら」

左翼長「……」

天才「今回の勝利は、誰が勇者でもない。全員の功績だ」

ザワザワザワザワザワ


236 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 18:08:01.62 ID:k2rwaawxo
天才「お陰で、ある種もっとも厄介な魔王を早々に始末できたわけだ」

魔道士「厄介……ですか?」

大軍師「非常に好戦的ですからね」

魔道士「あ、すみません……っ」

大軍師「いえいえ。他の方も逐一、ご質問など発言して下さい」

天才「アンラ・マンユは他の魔王を疎んじていた感がある」

西方参謀「それは間違いないと思うぞ、ヒック」

大軍師「サタンとパズズが動けない今、アンラ・マンユは油断していたでしょうね」

天才「おそらく、俺らがその2体のどちらかを狙うと踏んでいたはずだ」

左翼長「だろうな。北もそう思ってた節が若干ある」

盗賊「……」

天才「そして奴は、目の上のタンコブであるサタンを消させようとしていた」

ジュニア「していた?」

大軍師「我ら人間に、サタンを倒させる」

将軍「そして、自らが成り代わろうと?」


237 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 18:08:33.34 ID:k2rwaawxo
天才「ここでおさらいだ」

戦士「……?」

天才「魔王は7人。サタンを中央に据えた六芒星を模ってる」

青龍士官「……」

天才「サタンを中心に、6人の魔王が周囲に配置されてるって事だな」

大軍師「この六芒星こそが魔族の力そのもの。根源なのです」

天才「つまり、1人でもそのばから欠けるような事があれば……」

東方司令「六芒星は意味がない」

天才「そうだ。必ずそこに配置しなきゃあならん」

戦士「待てよ、そんじゃあアンラ・マンユだって……」

大軍師「そこで、魔王の代わりを務める者が必要なのです」

朱雀嬢「代わり……」

召喚士「!? ま、まさか……っ」

天才「それが眷属だ。数えてみ、ピッタリ当てはまんだろ」

名代「そういう事であったのか……っ」


239 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 18:09:14.72 ID:k2rwaawxo
天才「アンラ・マンユはサタンを討たせたあと、自らの場に眷属を置き……」

大軍師「自らはサタンの代わりとなり、世界の中心に統べるつもりだったのです」

騎士長「なんて事だよ……っ」

天才「そっからは人間を蹂躙するも良し、他の魔王を倒させるも良し」

南方弓長「ひどい話ね」

天才「しかもだ、これは俺様も予想外だったが……」

召喚士「……?」

大軍師「どうも、龍脈対策も考えていたようですね」

南方副司令「何ぃ!?」

青年兵「っ!! まさかあの……ドラゴンのような……」

天才「魔王の魔力そのもの。あれがヤマタノオロチの代わりだろうよ」

東方副司令「な、何という……っ」

西方副司令「間一髪なんてものじゃないわね」

天才「とにかく、奴はそこまで考えていた。だから最初に葬る必要があった」

大軍師「お分かり、頂けましたか?」


240 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/27(月) 18:09:55.35 ID:k2rwaawxo
召喚士「……」

魔道士「……っ」

天才「悲観すんなよ。倒したじゃねぇか」

大軍師「そうです。大切な事は、この未曾有の危機を防いだという事です」

左翼長「まぁな。アンラ・マンユはそこに隙があったってワケだ」

青龍先生「慢心じゃの……ひょっひょ」

天才「まーついでに言うと、魔王ん中でも割かし強い部類だろうしな」

玄武娘「そうなんですの?」

天才「おうよ。間違いねぇ」

白虎長「それなら、この次もうまくいくわよねっ」

南方魔道長「ああ。被害は防げるんじゃないか?」

天才「ハーッハッハ」

笑い声の裏に、乾いた眼差しが隠れていた。

何人かそれが天才による確証のない鼓舞だと気付きはしたが、

特に彼を咎めたり、訂正する事はなかった。



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