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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その33
888 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:09:04.68 ID:5YunFlEho
〜満月まであと0日。西の砦〜

この日は朝から晴天に恵まれ、気温は季節に似つかわしくない程に暖かく、

急な気象の変化は、これより起きる戦いのよちょうであるかのようである。

テクテクテク

召喚士「おはようございます」

マーマン「おはようさん。しっかし何だよこの暑さは……。戦う前に死んじまうぜ……っ」

召喚士「何か冷たい物、持ってきましょうか?」

マーマン「大丈夫。自給自足だよ。はははっ」

バシャッ…ザアアァァ

召喚士「便利ですねっ、あははは!」

マーマン「まーな。これが俺っちの、唯一の力だしなっ!」

召喚士「マーマンさんって、凄い魔力の持ち主ですよね」

マーマン「そうかい?」

召喚士「初めて共に戦った時から思ってました。凄い魔力だなって」

マーマン「初めて? あぁ、火山の時だっけか?」


889 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:09:33.75 ID:5YunFlEho
召喚士「そういえばあの時、タルウィが言ってましたね」

マーマン「……?」

召喚士「マーマンさんは姿がどうの、とか。上位の魔族が……って」

マーマン「……ったく、下らない事覚えてんなぁお前さんもよー」

召喚士「いえ、別に答えたくなければいいんです。でも、気になってしまって」

マーマン「……」

召喚士「……あ、えっと……それでは、また後で」

テクテクテクテク…

マーマン「ふーっ。おーい、召喚士ちゃん」

召喚士「……?」

マーマン「ちょっと場所変えようや」

召喚士「マーマン……さん?」

マーマン「この先、何があるか分からねぇし。いいよ、ちょっとした昔話だけどな」

召喚士「……っ!!」

マーマン「お前は大丈夫だろうけど、召喚士や召喚獣として間違った道は歩んで欲しくないしな」


890 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:10:15.76 ID:5YunFlEho
〜西国の城〜

王子「着いた〜っ。夜通し駆けた甲斐があったなぁ!」

西国兵「陛下と神官様、ご到着〜っ!」

女王「よくぞ無事、戻りました。さぁまずは入浴など済ませて、疲れを癒すと良いでしょう」

王子「そうさせて貰う!」

スタッ…テクテクテク…

神官「陛下、それでは後ほど……私の部屋へ」

王子「オッケー!」

タッタッタッタッタ…

女王「全く。落ち着きのない……」

神官「女王陛下。少し宜しいでしょうか?」

女王「私ですか?」

神官「姫様もご一緒に、来て頂けますか?」

王女「……?」

神官「大切なお話があります。では、参りましょう」


891 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:11:16.24 ID:5YunFlEho


王子「……んおっ!?」

踊り子「あっ、陛下! ご機嫌麗しく……っ!」

王子「おう、お前らも元気かぁ〜?」

踊り子「はいっ! どうです? 皆さん頑張ってますかっ!?」

王子「ああ。お前の友人である魔道士さんや盗賊さんも、頑張ってるよ!」

踊り子「本当〜っ!? あ……っ、本当ですか」

王子「あははっ、いいよ敬語じゃなくてもさ」

踊り子「……あ、あのっ陛下!」

王子「ん?」

踊り子「アタイ達もお役に立てる事……ありませんでしょうかっ!?」

王子「あるよ。戦いが終わったら、みんなで宴だ! そん時はもう……」

踊り子「それも頑張りますけど、戦いにお役立ち出来る事ってありませんか!?」

王子「戦いに? うぅん、それは無理だろ。剣とか魔法とか使えるの?」

踊り子「……いえ。踊りだけ……です」


892 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:11:53.06 ID:5YunFlEho
王子「それじゃ無理だよ。まぁ踊りで元気は貰えるけどさ〜」

踊り子「そう……ですかぁ」

王子「ま、大人しく待っててよ。ちゃちゃっと倒して、宴会するからさっ! ははははっ!」

テクテクテクテク

踊り子「……踊りかぁ」

ピコーン!!

踊り子「そうだっ、そうだよ!!」

タッタッタッタッタ

踊り子「踊るだけだって、元気貰えるって……それだけでもいいじゃんっ!」

タッタッタッタ…バンッ

踊り子「みんなっ、行くよ!」

ダンサー「へっ? 行くって……どこに?」

踊り子「戦場にだよっ!」

ダンサー「何を言ってるのよ……そんなの危ないじゃん。大体、何しに行くのよ?」

踊り子「アタイ達は戦えない。でも、踊りでみんなを元気に出来るじゃん! ねっ、そうしよ!」


893 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:13:09.92 ID:5YunFlEho
〜大広間〜

カサカサカサッ…ポトッ

女王「こ……れはっ、どういう事なのです……っ」

神官「文章の通りでございます」

王女「こんなもの、冗談に決まってますわよね? 大体、予言だなんて……」

神官「残念ですが、真実とみて宜しいでしょう」

女王「もしそうだとすれば神官、貴方は……っ」

神官「はい。本日を以ってこの神官、命を落とします」

王女「――――っ!!」

女王「王子……には?」

神官「これからお話致します。お2方には予め、お伝えしようと思いまして」

王女「そんな……そんな……っ」

女王「貴方抜きで、西国はこれからどうすれば……っ」

神官「西国は既に、大国と為し得ました。それにこれからは陛下がおります。心配は無用です」

女王「……うっ、うぅっ!!」


894 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:14:06.20 ID:5YunFlEho
〜西の砦、北側〜

ザッザッザッザ

マーマン「ふぃ〜っ。暑っちいなぁくそー!」

召喚士「……」

マーマン「つい1週間くらい前は、ここで魔物倒したんだよなぁ」

召喚士「ええ。魔方陣五行、凄かったですよ」

マーマン「なー。あんなんもう、2度とゴメンだよ……ハハハッ!」

召喚士「あははっ」

マーマン「なぁ、召喚士ちゃん」

召喚士「はい」

マーマン「俺っちな……召喚獣だったんだ」

召喚士「へぇ…………えっ!? えぇーっ!?」

バッ!!

召喚士「い、今……何て言いました!?」

マーマン「だから、俺っちは昔な、召喚獣だったんだよ」


895 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:15:35.72 ID:5YunFlEho
召喚士「――――っ!!」

マーマン「本当にむかーしむかしの話だよ。もう何百年とかそんな昔の話さ」

召喚士「召喚獣……って。で、でも……っ」

マーマン「ま、サラっと聞き流してくれ。他愛無い昔話だ」

召喚士「……っ」

マーマン「俺っちはかつて、玄武召喚獣だった。記憶は曖昧だが、それはハッキリ覚えてる」

召喚士「玄武……召喚獣……っ」

マーマン「召喚主は玄武使いの、まぁ一言でいや薄汚ねぇ悪人だった」

召喚士「……」

マーマン「大昔はさ、今みてーにきちんとした世界でもなくってさ、なんかこう……混沌としてた」

無言のまま食い入るように耳を傾ける召喚士。それを見てマーマンは言葉を続けた。

マーマン「その頃の召喚士ってのはさ、召喚出来るってだけでやたら偉くてさ」

召喚士「……」

マーマン「なんかもう、自分が王様だ! ってな振る舞いだったのよ。どいつもこいつもさ」

召喚士「なるほど……」


896 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:16:58.94 ID:5YunFlEho
マーマン「俺っちの主人だった奴もそうでさ、まぁヒデー男だったよ」

召喚士「……っ」

マーマン「口にもしたくねぇような、悪行三昧だった。とても人間とは思えねぇ仕打ちの数々さ」

召喚士「そうだったんですか……っ」

マーマン「ある時、俺っちは人間の少女を殺せと命じられた」

召喚士「――っ!!」

マーマン「確かあれは、どこかの領主が城を作るってんで、村を滅ぼせって依頼だったなぁ」

召喚士「そ、そんな事……」

マーマン「そうなんだよ。今じゃ考えられないだろ? ひどい話さ」

召喚士「あ、あの……それでマーマンさんは?」

マーマン「当然断ったさ。断った。だが、主は他の召喚獣や自らの手で人々を殺し始めた」

召喚士「……っ」

マーマン「耐えかねた俺っちは……殺しちまった。主をな」

召喚士「!?」

マーマン「その時……俺っちは召喚獣でなくなった。堕ちたのさ、魔族によ」


897 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:17:33.73 ID:5YunFlEho
召喚士「殺……した……っ」

マーマン「ああ。召喚主である人間を殺した。絶対にあっちゃならねぇし、ありえない行為さ」

召喚士「そ、んな事が……っ」

マーマン「んな事をしちまった俺っちは、召喚界にも帰る事は出来ねぇし、しかも専属」

召喚士「……」

マーマン「他の召喚士だって召喚出来ねぇ。どうする事も出来なくなった」

召喚士「マーマンさんが……召喚獣で……っ」

マーマン「そうなれば存在は魔族と一緒さ。あとは何百年と流浪の日々さ」

召喚士「でも、マーマンさんは魔物なんかじゃないですよ!」

マーマン「魔族だよ。どんな理由があれ、正しい道を踏み外したんだ」

召喚士「正しい事をしたじゃないですか! なのにどうして……」

マーマン「法師様にさ、教えて貰った事がある」

召喚士「……?」

マーマン「六道っつってさ、この世には6つの世界があるんだってよ」

召喚士「六道……」


898 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:25:59.58 ID:5YunFlEho
マーマン「その中でさ、1番てっぺんにあるのが天道って言うんだって」

召喚士「……」

マーマン「そこはもう、極楽な世界らしくてさ、誰もが羨むような、そんな場所らしいぜ」

召喚士「天道……ですか」

マーマン「んでな、とんでもなくいい所なんだけど、ちょっとでも悪い事すると地獄に落ちるんだってさ」

召喚士「……っ」

マーマン「天道ってのは召喚界なのかもしれないな。だから俺っちは地獄に落ちたのさ」

召喚士「そんな事は……」

マーマン「考えてみ。人間だって魔族化するし、召喚獣にもなる」

召喚士「……」

マーマン「魔族だって、人間みてーな存在になれる。そうだろ?」

召喚士「……確かに……そうです」

マーマン「だから召喚獣だって、魔族になってもおかしくねぇんだ。きっとそういう事なんだよ」

召喚士「皆、同じ生き物って事……ですか」

マーマン「そういうの、輪廻っていうらしいぜ。生物は六道を輪廻するんだってさ」


899 名前:NIPPERがお送りします(新鯖です) [sage saga] 投稿日:2011/11/21(月) 18:31:12.67 ID:5YunFlEho
中途半端ですがちょっと仕事がまずいので…
今日もご支援ありがとうでした!それでは!ノシ

>>867
ドイツ!?ダンケシェーン!!
日本の皆様も、いつもいつもありがとう!!

西方司令はオマケで使えそうなので採用させて頂きまっす!


906 名前:NIPPERがお送りします(新鯖です) [sage] 投稿日:2011/11/21(月) 21:11:56.18 ID:9MTRL8gmo
マーマンの存在するための魔翌力はどうなってるんだろう?
自分の魔翌力を少しずつすり減らしてるのか、龍脈うまーしてるのか・・・


908 名前:NIPPERがお送りします(新鯖です) [sage] 投稿日:2011/11/22(火) 00:32:24.35 ID:7i3/k7WHo
いちおつ
マーマンさん、眷属とタメ張れるくらいの召喚獣って実はバハムートクラス?
カッパは仮の姿なの?変身するの?


909 名前:NIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2011/11/22(火) 02:30:16.60 ID:rFtU8pBAO
マーマンってカッパより魚に近い風貌だな


913 名前:NIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋) [sage] 投稿日:2011/11/22(火) 10:14:39.21 ID:/Pyh7JuO0
androidで読んでるんだけどどうも読みづらい。なんかいいアプリないかな。


914 名前:NIPPERがお送りします(新鯖です)(長崎県) [sage] 投稿日:2011/11/22(火) 10:16:22.93 ID:iMZCyboNo
2chMateじゃダメなの?


918 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:13:46.30 ID:Hp4LxFrKo
〜西国の城、神官の部屋〜

王子「お待たせー。神官も先に風呂入ってくればいいのに?」

神官「最後の入浴ですから、後でゆっくりと入らせて下さい」

王子「最後?」

神官「では陛下、お座り下さいませ」

王子「な、何だよ急に改まってさ……」

ガタッ…スッ

王子「それで、教育って何をするんだ?」

神官「その前にまず、お話せねばならぬ事がございます」

王子「話……?」

神官「陛下……いえ、王子と呼ばせて下さい。これを読んで頂けますか?」

王子「……何これ? ずいぶんと汚らしい紙だなぁ」

神官「2ヶ月ほど前、本国の総司令殿より頂いた手紙です」

王子「2ヶ月前? 何で今更……ってか、これが何?」

神官「……私は今日、死にます」


919 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:14:13.15 ID:Hp4LxFrKo
王子「……」

神官「その手紙を読めば、どういう意味かは分かるはずです」

王子「……ぶっ、あーっはっはっはっは!!」

神官「……」

王子「今日死ぬって、あと何時間の話だよ! からかうのはよせっ」

神官「本国の予言については、ご存知ですよね?」

王子「ああ。それに基づいて作戦やら立ててるって話だろ?」

神官「中には、個人の生死まで判明する場合があるそうです」

王子「…………」

ガバッ!!…ガサガサッ

王子「お……前っ、まさか……」

神官「予言にて出たそうです。私の死が」

王子「――――っ!!」

神官「此度の戦いで、私の命が終わる、という事です」

王子「嘘だっ!!」


920 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:14:49.49 ID:Hp4LxFrKo
神官「王子……」

ワナワナワナッ

王子「神官が死ぬだと!? ふざけるなっ! 冗談でも言ってはならぬ事だぞっ!!」

神官「冗談でそんな予言が言えると思いますか?」

王子「じゃあ何なんだよこれはっ!! そんなわけあってたまるかっ!!」

グシャッ!!…バンッ!!

王子「神官が……しっ、死ぬ……だなんて!!」

神官「王子、しかし私とて、ただ犬死するつもりは毛頭ありません」

王子「……助かる方法があるのかっ!?」

神官「あります」

王子「な、何だよ……心配させるな――」

神官「人間を捨てる事です」

王子「……!?」

神官「人でなくなれば、死は免れると言う事です」

ガシッ!!…グググッ


921 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:15:26.06 ID:Hp4LxFrKo
王子「……魔物にでも……なるつもりかぁ!?」

神官「……」

王子「お前っ、自分で何言ってるか分かってんのかよ!!」

神官「無論、分かっております」

王子「だったら――」

神官「しかし勘違いはなさらないで下さい」

王子「どういう意味だよ」

神官「私がなるのは、召喚獣です」

王子「何……?」

神官「ついに完成したのです。伝説の召喚獣、アヌビスが」

王子「……なっ!?」

神官「私は命を賭して、召喚獣アヌビスとして、西国筆頭召喚士の役を終えます」

王子「……誰がアヌビスをっ、遣うっていうんだよ!? お前がこの国の――」

神官「それは王子、貴方です。貴方がアヌビスと契約するのです」

王子「――っ!!」


922 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:15:54.04 ID:Hp4LxFrKo
神官「貴方が、召喚獣アヌビスとなったこの私と契約し、召喚するのです」

王子「出来るかよそんな事!!」

神官「出来ます」

王子「出来ないっ! 召喚術なんて使った事もない! 魔法だって得意じゃない!」

神官「それでも王子、貴方なら出来ます」

王子「何でだよ!! 僕が出来るわけなんてないっ!!」

神官「王子が、西国王家の人間だからです」

王子「……何?」

神官「召喚獣アヌビスの話は、私が散々申したと思います。覚えておいでですか?」

王子「……お前の……夢だろ」

神官「そうです。私の夢、私の人生そのもの。何年も何年も研究し続けて参りました」

王子「……知ってる」

神官「アヌビスは元来、かつての西国王が用いた召喚獣ですよね?」

王子「だからって、僕が出来るとは限らない」

神官「そうかもしれません。ですが、私はきっと出来ると信じています」


923 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:16:34.57 ID:Hp4LxFrKo
王子「神官が1番よく分かってるだろ! 僕の才能をさ!」

神官「ええ、よーく存じ上げていますよ。だからこそ言えるのです。王子、貴方なら出来ます」

王子「……っ」

神官「アヌビスは古より王の為の召喚獣でした。何故だと思いますか?」

王子「……」

神官「それは、アヌビスの召喚には生贄が必要だからです」

王子「……!!」

神官「アヌビスをこの世界に呼び出す為には、人間の命が代償となるのです」

王子「そんなの……っ」

神官「代償となる者の魔力が高ければ高い程、アヌビスもまた強くなる」

王子「お前……ま、まさか……っ!!」

神官「そして私は既に1ヶ月前、アヌビスへ代償を捧げました」

王子「――――っ!!」

神官「私はこうして存在しておりますが、既に人間として、器のみの存在なのです」

王子「そ、そんな……」


924 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:17:16.07 ID:Hp4LxFrKo
神官「私1人の魔力など、たかがしれているかもしれませんが……」

王子「どうしてっ!!」

神官「……」

王子「どうして……言ってくれなかったんだよぉ!!」

ググググッ

王子「どう……して……っ」

神官「……言えませんでした」

王子「……っ」

神官「どうしても王子には、言えませんでした。申し訳ありません」

王子「バカヤロウ……」

ポタッ…ポタポタポタッ

神官「王は決して泣いてはなりません。人前では決して」

王子「お前はもう、人じゃないんだろ……。じゃあいいじゃんかよ……」

神官「……ご尤もですね」

王子「……バカ……ヤロウ」


925 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:17:59.71 ID:Hp4LxFrKo
〜西の砦、北側〜

マーマン「とりあえず分かってくれたか? 俺っちのちっぽけな存在ってやつ」

召喚士「……」

マーマン「ま、別に面白いオチもない、そんな昔話さ」

召喚士「俺は、マーマンさんのやった事……間違ってなかったと思います」

マーマン「……ハハッ、ありがとよ。そう言って貰えると救われるよ」

召喚士「本当に心から……」

マーマン「分かってるって。でもな、それは召喚士ちゃんの観点から見たアンサーなのさ」

召喚士「……」

マーマン「召喚獣の連中からすれば、俺っちは間違いを犯した召喚獣の恥さらし」

召喚士「……」

マーマン「何が正義で何が悪なのかなんて、簡単にひっくり返っちまうモンなのさ」

召喚士「でも、そんな事を言ってしまったら……」

マーマン「そう。今やってる事すら、何が正しくて何が間違ってるのかなんて分からなくなっちまう」

召喚士「……っ」


926 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:18:31.79 ID:Hp4LxFrKo
マーマン「だからな、自分の信じた道を、ただ真っ直ぐ進んでくれ」

召喚士「自分の信じた……道……」

マーマン「誰かを救う為に、誰かを傷つける事だってある。人間を救う為に、魔物を傷つけてる」

召喚士「……」

マーマン「でもな、それで大勢の人間が、大勢の魔物が救われる。そう信じてるんだろ?」

召喚士「もちろんです」

マーマン「だったら自分を信じてやんな。仲間をしんじてやんな……ってな」

召喚士「……マーマンさん」

マーマン「ガラにもなく、説教臭くなっちまったなぁ。すまんすまん」

召喚士「……い、いえっ」

マーマン「召喚士ちゃんは大丈夫だよ。お前さんは誰に対しても優しすぎる程だ」

召喚士「……」

マーマン「召喚士ちゃんみたいなのが主人だったら、俺っちも幸せだったんだろうなぁ。ハハハッ!」

召喚士「マーマンさん……っ」

マーマン「んじゃ戻ろうぜ、砦にさ。最後の準備ってやつだろ?」


927 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:19:08.28 ID:Hp4LxFrKo


ザッザッザッザ

召喚士「あ……っ」

マーマン「……わりっ、先に行っててくんねーか?」

召喚士「……はい」

ザッザッザッザ

召喚士「失礼……します」

マーメイド「ごめんね」

ザッザッザ…

マーマン「まだ何か用かい?」

マーメイド「話したのね、召喚士くんに全てを」

マーマン「全てったって、そんなに大した話じゃねぇって」

マーメイド「大した話じゃないのに、ずっと抱え込んでさ……」

マーマン「……うっせぇ」

マーメイド「でも、これですっきりしたんじゃない?」


928 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:19:46.23 ID:Hp4LxFrKo
マーマン「ああ、そうかもしんねーなぁ」

マーメイド「貴方はこれからもずっと、生き続けなくてはいけないの」

マーマン「……」

マーメイド「召喚獣、人間、魔物。生き物全ての善悪を見てきた貴方はこれからもずっと……」

マーマン「指標や講釈垂れるつもりはないさ。ただ、流れに身を任せて生きてくだけだよ」

マーメイド「それでもいいと思うの。貴方の想いはきっと、自然と伝わっていくから」

マーマン「……そう願いたいもんだね。ハハッ」

ザッザッザ

マーマン「お前もいい主人に出会えたみたいだな」

マーメイド「……うん。とても素敵な人。貴方に負けない位にね」

マーマン「彼の選択は間違ってなかったと思うよ。俺っちはな」

マーメイド「ええ、私もそう思うわ」

マーマン「私利私欲の為に、輪廻の歯車を狂わしちゃいけねぇんだ」

マーメイド「……」

マーマン「そんじゃ、またな」


929 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/22(火) 15:21:04.13 ID:Hp4LxFrKo
〜西国の城、神官の部屋〜

ゴシゴシ

王子「……落ち着いた」

神官「それではまた夜、満月がこの天窓に輝く時になったら……」

王子「……嫌だと言ったら?」

神官「先程も申しましたが、私は既にアヌビスに命を委ねました。後戻りは出来ません」

王子「……」

神官「もし王子が拒否するならば、召喚士殿にお願いするしかありません」

王子「……やるよ」

神官「ありがとうございます」

王子「夜になったらまた……来るから」

神官「お待ち致しております」

王子「ああ」

クルッ…スタスタスタスタ…

王子「…………っ」



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