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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その32
- 296 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2011/09/26(月) 17:58:42.28 ID:sIGqV5tso
〜東の町、南側〜
南方司令「うおおぉぉぉぉ!!」
西方司令「いい加減朽ち果ててくたばれやこのデカブツ!!」
アスラ「……」
西方参謀「とにかく火だ、火で攻めろ! 炎の付加だ!」
南方副司令「行くぞぉ!!」
グワッ!!
西方副司令「魔法付加っ、火行……苦手なのよね……っ」
西方参謀「だいぶ燃え広がったぞ、そろそろこっちもヤバイな……ヒック」
南方参謀「夕方になって急に風が出て来たわね……っ。いいんだか悪いんだか」
南方司令「スピニングジャスティスキック!!」
バゴォ!!…ゴゴオオォォォォ
アスラ(炎一辺倒で必死な事だ。その程度では効きもせんと言うのに……)
燃え広がる炎がアスラの周囲を取り囲むように包んでいくが、アスラ自身にダメージはない。
後手に回りすぎた事で炎の壁のその先の事を、アスラは一切気にも留めていなかった。
- 297 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:59:21.45 ID:sIGqV5tso
ズゴオオォォォォ!!
ラクシャーサ「グギャアアァァーッ!!」
騎士団長「近すぎては此方にも火の手が及ぶぞ。もっと遠方めがけて点火せよ!」
ラクシャーサ「どこもかしこも炎で逃げ場がねぇぞクッソォ!!」
広がる火の手の中、騎士団長率いる本国騎士団と騎兵らが火を掻い潜りながら馬を駆り、
慌てふためくラクシャーサを次々と打ち倒してゆく。
騎士団長「無理に頭部や胸部を狙う必要はない。足を止めるのだ」
騎兵「動けなくすりゃ炎で焼かれる。トドメ刺す必要ねーぞ!」
ラクシャーサ「馬かっ! よこせコラァ!!」
騎兵「なっ、何だコイ……うわああぁぁ!!」
ドシャアアァァ
騎士団長「馬鹿者が! 油断するな、敵も死に物狂いで来るぞ。油断するなよ!」
馬首を返し落馬した騎兵を救う騎士団長。そこへ炎を切り裂く音と風が響き渡る。
騎士団長「何だ……っ?」
騎兵「うわああぁぁぁぁ!!」
- 298 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:59:51.30 ID:sIGqV5tso
ゴオオォォォォ…
アジ・ダハーカ「グゴオオォォォォ!!」
騎士団長「くっ、早く行け!!」
騎兵「騎士団長様ぁ!!」
己の馬に騎兵を乗せると尻を蹴飛ばし、騎士団長は騎兵を馬ごとその場から離脱させた。
騎士団長「……さぁ、来るなら来い!」
アジ・ダハーカ「ゴアアァァァァーッ!!」
迫るアジ・ダハーカに単身、長槍1本で迎え撃つ騎士団長。
騎士団長「我が命尽きてもぉ、ここは通さぬ!!」
アジ・ダハーカ「アアアアァァァァ!!」
ゴッガアアァァァァン!!
青龍兵「突撃ぃーっ!!」
竜騎士兵「騎士団長っ、無茶ですよ!」
騎士団長「……おぉ……竜騎士隊か……っ」
右翼に突き刺さる長槍でアジ・ダハーカは横へ大きくバランスを崩し、その隙に、
竜騎士隊の青龍召喚獣が次々と襲い掛かった。
- 299 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 18:00:23.51 ID:sIGqV5tso
ワイバーン「ハアアァァァァ!!」
アジ・ダハーカ「ガオオォォォォン!!」
青龍兵「何だコイツ……っ、これだけやってもビクともしねぇぞ!」
アジ・ダハーカ「ガオオォォォォン!!」
ドッガアアァァァァ!!
竜騎士兵「ぐわぁーっ!」
青龍兵「駄目だっ、回避! 召喚解除間に合うものは急げ!」
バシュッ…シュイイィィィィン
まとわりつく召喚獣を振り払うように縦横無尽に体を暴れさせるアジ・ダハーカ。
竜騎士隊の面々はたまらず召喚獣を潰され離脱し、またある者は召喚解除し、
宙に投げ出されたその身を地面に叩きつけられる様であった。
青龍兵「ぐ……うぅ……っ」
騎士団長「早く、逃げろ……っ!」
なおも迫るアジ・ダハーカは口を大きく開き、その牙の更に奥へ、力を溜める。
騎士団長「……っ」
- 300 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 18:00:57.47 ID:sIGqV5tso
キュイイイィィィィ…
アジ・ダハーカ「オアアアアァァァァ!!」
ズシャッ
ボス「させっかよぉ!!」
アジ・ダハーカ「――ッ!?」
ヨルムンガンド「オオォォォォーッ!!」
ギュルギュルギュルッ…ガシイイィィ!!
アジ・ダハーカ「グウウゥゥ……ッ!!」
ボス「今のうちに退がれぇ!!」
竜騎士兵「す、すまねぇ……っ」
青龍兵「騎士団長様っ、早く!」
騎士団長「……う、うむ。すまぬ!」
ボス「ヨルムンガンド……こんなモンじゃねぇよなぁ!!」
ヨルムンガンド「ハアアァァァァ!!」
アジ・ダハーカ「グブウウゥゥゥゥ……ッ!!」
- 301 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 18:01:51.81 ID:sIGqV5tso
低空であったが故にそれが裏目となった。アジ・ダハーカは地面より突如現れたヨルムンガンドに
その身を拘束され、更には力強く締め付けられていた。
口内に溜め込んだ閃光は放たれる事なく、その口を蛇のような胴体で閉ざされ、
両翼もまた同様に、羽ばたく事の出来ぬ程に、ヨルムンガンドの手によって閉じられていた。
ドドッドドッドドッ
エリート「あれは!!」
大軍師「おぉ、大したものですね。しかし優位というわけではなさそうです」
エリート「すぐに救援へ向かえ!」
赤壁兵「おおうっ!!」
青龍兵「大軍師様、申し訳ありません! 着火は失敗に終わり……隊もこのザマです」
大軍師「いえ、ご苦労様です。炎は司令らがうまくやってくれたようですから心配なく」
竜騎士兵「面目ありません……っ」
騎士団長「いや、この者らはよくやってくれた。我が命を……救ってくれたのだ」
大軍師「共に後退なさって下さい。ここは右大臣様と私で預かります」
騎士団長「……すまぬっ」
- 302 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 18:05:58.08 ID:sIGqV5tso
それではここまでにて!ご支援ありがとうございます!
それでは失礼致します!また!ノシ
- 317 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/27(火) 20:56:59.72 ID:Edu3DjlBo
エリート「退却を援護する。前で出るぞ」
ドドッドドッドドッ…
アジ・ダハーカ「グゴアアァァァァ!!」
ボス「ぐあ……っ!」
タッタッタッタ
ゴロツキ「ボス!!」
チンピラ「傷口開いてんじゃねぇか! 誰かいないかっ!?」
ボス「大した傷じゃねぇ……っ、それより他の連中を逃がせ!」
チンピラ「!?」
ボス「もう……召喚獣がもたねぇぞ!」
ヨルムンガンド「オオォォォォーッ!!」
アジ・ダハーカ「ガアアアアァァァァ!!」
バチイイィィィィン!!…ザシュウウゥゥゥゥ
ボス「がっは……ぁ!!」
ゴロツキ「ボスッ!? ヨルムンガンドが弾かれた!!」
- 318 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/27(火) 20:57:25.70 ID:Edu3DjlBo
大軍師「歩兵隊、前へ」
ザザザッ
大軍師の号令で歩兵隊が並ぶと、腰につけた布製の袋を各自手に取り、
それを頭上で振り回すと一斉にアジ・ダハーカめがけて放り投げた。
ブワッ…ジャララッ
エリート「あれは結界石かっ」
大軍師「加工時の端くれです。小さなものでもこういう使い方で……役立ちます!」
上空で布から飛び出した結界石のつぶてはアジ・ダハーカの前方にふらふらと舞う。
エリート「あの程度ではダメージを与えられるとは思えんが。目晦ましか?」
大軍師「ふふっ、お見せしましょう……真骨頂!」
笑いながら羽扇を前方へと突き出し、大軍師は瞬く間に風を巻き起こす。
その突風に煽られた結界石は風の威力に押され、矢のような勢いで次々と、
アジ・ダハーカの体へと突き刺さっていった。
ゴアッ!!…ドズズズズッ!!
エリート「成程、君らしい発想だ。環境が無ければ作り上げてしまうとはなっ」
- 319 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/27(火) 20:57:55.91 ID:Edu3DjlBo
大軍師「さぁ、総仕上げです。魔道兵、私に続きなさい」
魔道兵「ははっ!」
ザザッ
大軍師「火の手は十分上がりました。さぁ、押し返しますよ」
エリート「そういう事か。南からの炎を更に来たから押し戻そうというつもりか」
大軍師「吹かぬ風なら吹かせてみえるだけの事ですよ……ふふふっ」
魔道兵「全員、隊列を崩すなよっ! 攻撃準備ぃ!」
ザシャッ
騎士団「魔道兵には1匹たりとも、魔物を近づけるなよ!」
騎兵「おうっ! 騎士団長様や竜騎士隊の分もやってやるぜっ!」
ラクシャーサ「な、なんだぁ!? 突っ込んでくるぞ!!」
ザザッ
ラクシャーサ「後退しろぉ! 正面から突っ込んできやがるッ!」
騎兵「突撃ぃーっ! 魔物を押し込んで魔道兵を護衛しろぉ!」
ラクシャーサ「下がれったって……後ろは火なんだよぉ! 無茶言うな!」
- 320 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/27(火) 20:58:24.60 ID:Edu3DjlBo
エリート「敵は怯んでいるぞ、この隙に押し込めいっ!」
ラクシャーサ「アスラ様はどうなさったのだ……ぐわああぁぁっ!!」
ゴゴオオォォォォ…
アスラ「……」
西方司令「どうおりゃああぁぁぁぁ!!」
ジャキイイィィン!!…ブシュウウゥゥゥゥ
西方司令「がはぁ!!」
南方司令「退がれっ、私が行く」
西方司令「邪魔すんじゃねぇ!!」
南方司令「言っている場合かっ!」
ダンッ…ギュオオォォッ!!
アスラ「しつこい……」
南方副司令「もう限界だぞっ、そろそろ離脱しないとまずい!」
南方参謀「そうね……っ、司令達を何とかしないと……」
ズガアアァァァァ!!
- 321 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/27(火) 20:58:59.71 ID:Edu3DjlBo
アスラ「しつこいにも程がある。勝てる要因もない分際でいつまで……」
ピクッ
アスラ(……思えば何故だ? どうしてここまで固執する?)
西方参謀「……マズイな、ヤロー気付き始めてねぇか?」
アスラ「……まさか」
ガバッ!!
西方司令「!?」
南方司令「しまった……っ!!」
バシュウウゥゥゥゥ!!
南方司令「逃がすかぁ!!」
アスラ「どいていろ!!」
バキイイィィィィ!!…ズシャアアァァ
南方司令「ごほっ、げほ……っ!」
タッタッタ…ザザッ
南方司令「司令っ、タイムアップよ」
- 322 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/27(火) 20:59:48.43 ID:Edu3DjlBo
南方司令「何ぃ!? くそ、火の手がこんなにも……おのれ魔物共め!!」
南方副司令「違げぇってかもうそれでもいいから早く来い!」
ザザァ
西方司令「何してんだこのクソボケェ! さっさと追えや殺すぞ!」
副司令「時間切れよ、撤退しますよ!」
西方司令「あぁん!?」
西方参謀「ったく、しゃーねぇなぁ……」
テクテクテク
西方参謀「あっ!!」
西方司令「!?」
パシッ…カランカラン
西方司令「ひいいぃぃぃぃ!! ししっ、死ぬううぅぅ!!」
西方参謀「んじゃ行くぞーっ。ヒック」
南方副司令「アスラはどうする?」
南方参謀「追ったところでどうにもならないし……手は全て打ったわ。後は任せましょ」
- 323 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/09/27(火) 22:41:10.76 ID:f9hl+NrDO
>>1乙
司令とか上官クラスが束になっても軍団長クラス一匹をなかなか倒せないとなると天才が死んだあとがつらいな
- 324 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/27(火) 23:25:27.61 ID:Edu3DjlBo
ザッシャアアァァァァ
アスラ「……な……んだ……これはっ!!」
ゴゴゴゴゴゴ…
ラクシャーサ「ぐおあぁっ! こ、この炎を何とかしろぉ!」
メラメラメラッ…ゴウッ!!
ラクシャーサ「もうダメだ……退くしかねぇ!!」
アスラ「どういう事だ……これはどういう事だ……ッ」
灼熱の炎燃ゆる平野に横たわる無数のラクシャーサ。
その光景を目の当たりにしたアスラはようやくそこで理解した。
アスラ「そういう事か……ッ」
ラクシャーサ「逃げるって後ろからは炎が……ア、アスラ様!?」
ダダッ
ラクシャーサ「アスラ様、ここはもう無理です! お退きを……ッ」
アスラ「貴様等は退け。時間は稼いでやる」
ラクシャーサ「アスラ様……ッ!?」
- 325 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/27(火) 23:25:59.43 ID:Edu3DjlBo
ズドオオォォォォ
アジ・ダハーカ「グゴオオォォォォ!!」
タッタッタッタッタ…
南方副司令「うおっ、こ……こいつ!」
エリート「おぉ、連中戻って来たぞ!」
大軍師「間に合いましたね。それでは行きますよっ!」
魔道兵「大軍師様っ! 後方より軍団長らしき魔物が……っ!」
大軍師「構いません、そのままいきますよ!」
魔道兵「詠唱開始っ! 方向は北西を起点に放つ事!」
騎兵「兵器は最後の牽制を頼む! こっちは兵を割いて守りきれんのだ!」
弓兵「我らも30秒後に援護射撃っ! その後は速やかに後退する!」
アジ・ダハーカ「ガゴアアァァァァーッ!!」
騎士団「魔物が逃げるぞぉ!!」
エリート「捨て置け、巻き添えを食うぞっ!」
キュイイイイィィィィ…
- 326 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/27(火) 23:26:27.20 ID:Edu3DjlBo
大軍師「……発射ぁ!!」
何百から連なる魔道兵が一斉に風の魔法を撃ち放つ。
凄まじい音と共に地面を走る北西の風は、差し迫る炎を一気に押し返した。
ゴッゴオオオオォォォォ!!
西方参謀「くあぁ……っ!!」
南方司令「捕まれ! 身を伏せて射程外に逃れるぞ!」
巨大な壁のような風圧は、炎だけではなく、魔物の群れ、
そしてアスラやアジ・ダハーカまでもを東の町から遠ざけるように吹き飛ばした。
ズゴゴゴゴゴッ…
アスラ「……グ……ヌウウゥゥ!!」
アジ・ダハーカ「グガアアァァァァ!!」
大軍師「魔力の続く限り……放ち続けますよ!」
魔道士「まだまだあぁ!!」
エリート「よし、歩兵もうまく進めたようだな。大軍師、君の策は見事成功したぞ」
大軍師「まだこれからが大切ですよ。魔王を討つ為には、ね」
- 327 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/27(火) 23:27:01.45 ID:Edu3DjlBo
ドドオオォォォォ
ボス「……ぐっ」
パアアァァァァ
女賢者「んふっ♪ これで傷口は塞がったと思うけど……無理は出来ないわよ?」
ボス「……」
ゴロツキ「ボス……っ」
ボス「分かった。退かせて貰おう」
チンピラ「そ、そうしてくれ!」
ボス「すまんが馬を一頭頼む」
ゴロツキ「お、おうっ!」
ボス「お前ら2人は本国のお偉いさん達を守ってやれ」
ゴロツキ「わ……分かったっ!」
ダダッ…ザッ
チンピラ「馬、連れてきたぜ!」
ボス「悪りぃな。先、戻らせて貰うぜ」
- 334 名前:NIPPERがお送りします [] 投稿日:2011/09/28(水) 15:07:17.16 ID:0Llq2noDO
魔導士って魔王討伐にいってるんちゃうの?
- 335 名前:NIPPERがお送りします(富山県) [sage] 投稿日:2011/09/28(水) 16:57:48.78 ID:ybULQJsx0
>>334そこはおまえ脳内で魔道兵ぐらいにしろよ・・・
- 337 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2011/09/28(水) 18:01:23.17 ID:IPq+hLPko
昨日は具合悪くて寝てました。すみません…
>>334-335
これに及ばぬ程重大なミスがありました…
>>270以降の女賢者は衛生兵あたりに脳内変換でお願いします!><
ああぁぁ…久々に盛大にやっちまったぁ…申し訳ないはあぁ…
↓続き
- 338 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/28(水) 18:03:06.34 ID:IPq+hLPko
グイッ…パッカパッカパッカ…
ボス「……」
ススッ…ドドッドドッドドッ
ゴロツキ「そんじゃボス、俺達は先に……あれっ!?」
チンピラ「もう戻ったみたいだな。そんじゃこっちも行くとしようぜ」
ゴロツキ「あ、あぁ」
タッタッタッタッタ…
ボス「……」
ドドッドドッドドッ
ボス「悪いな。ノンビリおねんねしてる場合じゃねぇんだ」
ドドッドドッドドッ
ボス「……待ってろよ」
グイッ…ドドッドドッドドッ…
馬を全速力で駆るボス。しかしその方角は東の町ではなく、南方向であった。
炎と風の入り乱れる戦場をただ一騎、静かに森の中へと駆け抜けて行った。
- 339 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/28(水) 18:05:51.29 ID:IPq+hLPko
ゴッゴオオォォォォ…
ラクシャーサ「退却退却ーッ!!」
アスラ「……チッ」
ゴウッ…メラメラメラッ!!
絶対、というわけではないが、その気候もあってか南はとりわけ炎の使い手が多い。
それは魔物も然り。牛魔王の火焔山やアンラ・マンユの火山にタルウィなどもそうであったように、
アスラも炎による攻撃を得意としていた。故に南方軍の火計はさほど通用しない。
だが逆に、鎮火する手段も持ち合わせていないという事にもなる。事実アスラは、
この大火を防ぐ術なく、広がる様をただ放置しておくしかなかった。
アスラ「ラーヴァナ様より預かりしラクシャーサの精鋭が……これ程のものかああぁぁ!!」
ズズッ…ジュウウゥゥゥゥ
魔道兵「軍団長らしき魔物っ、進軍を止めません!」
エリート「耐性付きか。まさか自身で殿を務めるつもりか? 魔物らしからぬ奴だ……っ」
大軍師「これ以上進まれる事は厄介ですね」
エリート「どうする? 歩兵はほとんどが東より前進している。残りは僅かな騎兵と支援隊のみ」
- 340 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/28(水) 18:07:53.56 ID:IPq+hLPko
先程からエリートの言う歩兵とは、赤壁からの援軍を中心に編制された主力部隊である。
この時既に歩兵隊は、先の火計による混乱に乗じ、燃えさかる戦場を離れ、南下していた。
それ故に魔道兵への護衛も騎兵、騎士団、そして弓兵と兵器の支援隊が担っていたのだ。
魔王軍にとってそんな事は到底気付く由もなく、エリートの言う大軍師の策は成功したかに見えた。
……が、異常なまでに冷静さを備えていたアスラは、この僅かな異変に気付いた。
アスラ「……?」
ズドドオオォォォォ
アスラ(何だこの違和感は……ッ?」
騎兵「ラクシャーサはほぼ追い払った! 騎兵も後退せよっ!」
魔道兵「少し風向きが変わった! 若干、東へ修正しろぉ!」
アスラ(昨日、一昨日の前線構成と違う。何故だ? 作戦の為か……?)
西方司令「ぎゃああぁぁ!! 死ぬううぅぅ!! 熱いっ、もう焼け死ぬ! 遺書も焼け死ぬぅ!」
南方副司令「さっさと東の町へ退かせろ!」
アスラ(何だ、人間共は何を狙っている……?)
大軍師「……?」
- 341 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/28(水) 18:08:50.54 ID:IPq+hLPko
ピクッ
アスラ(あの大剣の人間……何故、単身ラーヴァナ様の元へ向かったのだ?)
大軍師「あのアスラと言う魔物……信じられませんね」
エリート「どうした?」
大軍師「手の空いている兵はアスラを追います。竜騎士隊はもう1匹の魔物を!」
アスラ(前線の兵の少なさ、単独で動く人間の強者……そういう事か)
一旦足を止め、目を瞑ると深く息を吸い込み、目を開けると同時にアスラは咆哮した。
アスラ「謀ったなあぁ……人間共がああぁぁ!!」
ビリビリビリッ…バシュッ!!
騎兵「跳ん……逃げたぞっ!」
アスラ「アジ・ダハーカ!! 貴様も退がれぇ!!」
アジ・ダハーカ「グガオオォォォォ!!」
バシュウウゥゥゥゥ
エリート「成程、追撃命令の理由はこれか!」
大軍師「ラーヴァナの下へ帰還するつもりでしょう。食い止めねば作戦に支障をきたします」
- 342 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/28(水) 18:10:24.73 ID:IPq+hLPko
青龍兵「出でよっ、ワイバーン! 出るぞ!」
竜騎士兵「動ける奴はざっと20程度。やるしか……ねぇか」
大軍師「無理に戦う必要はありません。帰還の足止めを!」
青龍兵「了解です!」
ザザッ…バシュウウゥゥゥゥ
エリート「よし、こうなったらこちらもアスラの追撃を」
魔道兵「ぐわあぁ!! まだ魔物が……っ!!」
アスラ「どけどけどけえぇ、この虫ケラ共がああぁぁ!!」
バギャッ!!…ズッドオオォォォォン!!
弓兵「弓の射程圏外へ移動しました」
西方参謀「兵器は!!」
助手「炎が激しくて的が見えないわよ〜」
南方副司令「支援はここまでか……」
エリート「あとは直にあたるしかないな」
大軍師「……いや、待って下さい! あれは……っ!」
- 343 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/28(水) 18:11:39.13 ID:IPq+hLPko
バッゴオオォォォォン!!
アスラ「ラーヴァナ様の下へなど近づけさせるものかぁ!!」
騎兵「駄目だっ、物理攻撃で何とかなる相手ではないぞ!」
魔道兵「ひ、ひあぁーっ!!」
ガシュウウゥゥ!!
魔道兵「……あ……あぁ……!?」
アスラ「……?」
フェンリル「グウウゥゥ……ッ」
アスラ「……召喚獣……だとぉ!?」
ガルム「グガアアァァ!!」
アスラの体へと獰猛な牙で喰らい付き離さぬ召喚獣達。予期せぬ奇襲にアスラの足が止まる。
南方司令「あれは、召喚隊だとっ!?」
エリート「陛下からの、最後の援軍だな」
白虎兵「敵は怯んでいるぞっ、総攻撃ぃ!!」
フェンリル「ガウウゥゥッ!!」
- 344 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/28(水) 18:12:28.75 ID:IPq+hLPko
ドガガガガッ…ズシャアアァァァァ
白虎兵「お待たせ致しました!」
大軍師「指揮官は?」
白虎兵「白虎長様ですが、既に先へ進まれました!」
エリート「早いな、素晴らしい動きだ」
白虎兵「青龍の連中だけにいい格好させておけませんからっ!」
アスラ「……小賢しい真似を!!」
ドッドオオォォォォン!!…バゴオォ!!
白虎兵「がはっ!」
ガルム「グウゥ……ッ」
白虎兵「危ないと思ったら咄嗟に召喚解除しろバカッ!」
アスラ「貴様等雑魚に構っている暇はない!」
体を丸め、一気に手足を広げると、アスラを起点に周囲へ爆発が巻き起こった。
グググッ…ズッガアアァァァァン!!
白虎兵「うぐああぁぁーっ!」
- 345 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/28(水) 18:13:01.84 ID:IPq+hLPko
ズシャッ…ズザザザザアァ
アスラ「フンッ、ゴミめが。そこで朽ち果てるが良いわ」
スッ…バシュウウゥゥ
白虎兵「……くそぉ、足止めにもならねーのかよ……っ」
エリート「いや、十分だ。もう1匹との分断は出来たからな」
白虎兵「右大臣……様ぁ」
エリート「負傷者は町へ戻れ。動ける者は……私に続け!」
騎兵「西側は炎で立ち入り困難だ。正面の森を抜けて東に回るぞ!」
白虎兵「おう! 白虎隊はフェンリルとガルムに跨れっ、右大臣様の隊に合流する!」
南方副司令「俺らも動くか……?」
大軍師「いえ、消化活動と町の防衛が我らには残っています」
南方司令「……結局、取り逃がしたか。くそっ」
南方参謀「いいじゃない、何も倒す事が全てではないわ」
南方司令「軍団長1匹に手こずるとは、私の正義も先が思いやられるよ」
大軍師「目の前の正義より大局を見据えた正義も必要ですよ。さぁ、鎮火を始めましょう」
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