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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その24
- 508 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2011/01/26(水) 18:47:27.38 ID:QcMRLlRAo
〜次の日〜
村長「おはよう、もっとゆっくりしておっても良いのだぞ?」
召喚士「おはようございます。何だか…早く目が覚めてしまって…」
盗賊「…しかし…吹雪は止まぬな」
村長「この時期はいつもこうじゃて。自然には逆らえぬ。仕方あるまい」
召喚士「そうですか…。大変ですね」
村長「確かに大変じゃ。しかしな、生まれた時からこの生活をしておる」
盗賊「……」
村長「それが大変などと思った事はないよ」
召喚士「……すみません」
村長「いや、経験のないものにとっては大変と思うておかしくはなかろう」
盗賊「…越したりしようと思わぬのか?」
村長「生まれ育った地を離れるなど、そう簡単には出来ぬわい…」
盗賊「……なるほどな」
村長「さて、食事にしよう。大した物はないが遠慮せず食して下され」
- 509 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:47:54.27 ID:QcMRLlRAo
…
魔道士「いただきますっ」
戦士「こりゃあ…何ですか?」
村長「魚卵の塩漬けじゃよ。食うてみぃ、美味いぞ」
戦士「……ほぉ、こいつはうめぇ!!」
魔道士「本当ですねっ!食感がたまりません〜」
村長「このような地では越冬の為の保存食が欠かせないからのう」
戦士「そうそう!北じゃあ当たり前の事だよなっ」
召喚士「なるほど。塩漬けにする事で、腐敗を防いでいるんですね…」
魔道士「これって…何の卵ですか?」
村長「カドじゃな」
盗賊「カド…あぁ、ニシンか」
村長「もちろんカドも干物にして保存しておる。今、持ってきてやろう」
召喚士「すみません…。なんだか色々と……」
戦士「これはなかなかの珍味だな!酒にも合いそうだ!」
- 510 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:48:26.96 ID:QcMRLlRAo
…
魔道士「ご馳走様でしたーっ」
村長「お粗末様じゃ」
戦士「さぁてと、早速山師さんの所へ行ってみるとするか」
召喚士「そうだね」
村長「気を付けなされよ。あの男、いまいち掴みどころがないからの」
盗賊「……」
村長「家は分かるかの?」
魔道士「はいっ。確か道なりにずっと奥…でしたよね?」
村長「うむ。……付き添うか?」
召喚士「いえ、俺らだけで大丈夫です。行ってきます」
戦士「荷物だけすんません、置かせて貰います」
魔道士「では、行ってきますー」
テクテクテク…ガチャッ…パタン
村長「……」
- 511 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:48:52.25 ID:QcMRLlRAo
ザッザッザ…
戦士「昨日よりは吹雪もマシみてぇだな」
盗賊「…ああ」
魔道士「でも、山師さんて…そんな悪い人には見えませんでしたけどね」
召喚士「ええ…」
戦士「村長が言うんだから、何かあるんじゃないのか?」
召喚士「うぅん……」
戦士「…まぁ、召喚士ってのは…変わり者が多いからな」
召喚士「え!?ちょっと待ってよ、それって俺も入ってるの!?」
戦士「……さぁ。どーだろうなぁ」
召喚士「も〜っ!」
戦士「悪かったな、冗談だよ!はははっ」
魔道士「召喚士さんはそんな事ありませんよっ、ふふっ」
盗賊「……あれじゃないのか?」
召喚士「本当ですね。道が終わって、家が一軒だけある…」
- 512 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:49:21.93 ID:QcMRLlRAo
ザッザッザッザ
戦士「いるかな?」
トントン
召喚士「……」
カチャッ
山師「……やぁ。入ってくれ」
召喚士「…失礼します」
魔道士「お邪魔しまーす」
盗賊「……」
山師「えぇと、それで――」
ブツンッ
召喚士(……あれ?何だ……!?)
魔道士「ふぁ……っ!?」
戦士「――っ」
盗賊「……」
- 513 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:49:52.96 ID:QcMRLlRAo
ドササッ
山師「…………」
魔道士「すーっ……すーっ、すーっ」
戦士「……むにゃ」
盗賊「……」
召喚士「…くぅ……すーっ、すーっ」
山師「……」
フワッ…スタッ
山師の横に、大きな袋を背負った老人が降り立つ。
それは人のような外見をしているが人ではない。召喚獣である。
ザントマン「……やれやれ。こういう事は気が引けるわい」
山師「すまんな」
ザントマン「それで、どうするつもりなのじゃ?」
山師「ここからは俺の事だ。関わる必要はない」
吐き捨てるような台詞と同時に、山師はザントマンの召喚を解いた。
- 514 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:50:23.87 ID:QcMRLlRAo
…
山師「……」
テクテクテク
山師「恨みはないが……」
ガチャガチャッ…ゴトッ
山師「……」
ザントマンの能力により熟睡する四人に背を向け、引き出しを空ける山師。
心では『そんなはずはない』、と思いながらも、ゆっくりとその顔を振り返る。
スッ…テクテクテク
山師「……っ!!」
テクテクテクテク…チャキッ
山師「……バカなっ!?何故……っ!!」
盗賊「…私には利かない。いや、少しは利いたがな」
山師「ちぃ…っ!」
慌てて引き出しより取り出だしたナイフを体の正面へ身構える。
- 515 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:50:53.08 ID:QcMRLlRAo
山師「……っ」
盗賊「……」
ザントマンの力によって盗賊が眠りに落ちていた時間はわずか数十秒。
盗賊は気付いてすぐ、起き上がろうとはしなかった。
山師「……くっ!」
ヒュオッ…キィン!!
盗賊「……」
山師と盗賊。傍から見れば暴漢に襲われる女性の絵に見えるかもしれない。
しかし実際は全くの逆。場数を踏んだ前衛の女忍者と一ワーカーでは、
その力の差は歴然であり、山師のナイフは盗賊のクナイ一振りで床に落ちた。
山師「……っ」
盗賊「動くな!」
ピクッ
山師「……」
この形を作る為、盗賊は敢えてすぐ起き上がらなかったのである。
- 516 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:51:25.75 ID:QcMRLlRAo
盗賊「……何が狙いだ?」
山師「……」
盗賊「…まぁ良い。それよりもまずは……」
チャキッ
盗賊「三人を元に戻せ。出来るな…?」
山師「……戻るさ」
盗賊「…?」
山師「自然と目が覚める。時間はかかるけどな」
盗賊「…どの程度だ?」
山師「10分か30分か…。遅くとも半日以内には覚める」
盗賊「…まことであろうな?」
山師「ああ。だから、そのナイフを降ろしてくれ」
盗賊「…両手を頭の上に乗せ……離れろ」
山師「……」
盗賊の言葉に、山師は黙って従う。
- 517 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:51:52.27 ID:QcMRLlRAo
ススッ
盗賊「……」
少し距離の離れた所へ三人の身体を移す盗賊。
山師はその姿をただじっと黙って見守っている。
盗賊「……ふーっ」
山師「……」
沈黙の中、ただ時間だけが過ぎてゆく。
山師「…なぁ」
盗賊「……」
山師「まさか眠らないなんて、驚いたよ」
盗賊「…そうか」
山師「何か、耐性でもあるのか?」
盗賊「……まぁな」
山師「そうか……」
盗賊「……」
- 518 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:52:22.83 ID:QcMRLlRAo
…
山師「…あまり、警戒しないんだな」
盗賊「……」
山師「自信があるのか……」
盗賊「…お前より…私の方が上だ」
山師「まぁ、そうだろうね」
盗賊「…それに、致命傷を与える召喚獣もないのだろう?」
山師「何でそう思う?」
盗賊「…あれば、入ると同時にそれで攻撃をしているはずだ」
山師「鋭いね。咄嗟に判断したのか……」
盗賊「…殺意がないとみえる。何が目的だ」
山師「……」
盗賊「……」
モゾッ
召喚士「ん…っ……」
- 519 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:52:50.74 ID:QcMRLlRAo
…
戦士「……ふあぁ」
魔道士「……すっかり…油断しました」
召喚士「…それで、何が目的なのです?」
山師「……」
戦士「返答次第じゃ……」
召喚士「待ってくれ。山師さんは戦うつもりはないわけだし……」
戦士「でもよぉ…」
召喚士「山師さん、俺らはあなたの敵ではないんです」
山師「それは分かってるよ」
召喚士「だったら……」
戦士「なぁ、アンタがあの…山師姉を眠らせたのか?」
山師「……」
戦士「もしそうなら、何が狙いだ?」
山師「…違う!それは違うのだ。……信じてくれ」
- 520 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:53:26.30 ID:QcMRLlRAo
召喚士「……」
戦士「信じてくれったって、こんな事されちゃあ……」
盗賊「…多分…違うと思う」
魔道士「え…?」
盗賊「…この者は先程…目覚めるまで最長でも半日と言った」
山師「……」
戦士「じゃあ、何なんだよ!?」
召喚士「正直な話、関連性がないとは思えません」
山師「……」
召喚士「山師さん、あなたでないと言うのなら何が原因で……」
山師「帰ってくれ」
召喚士「……」
山師「帰ってくれないか?君達には関係のない事だろう」
魔道士「で、でも……っ」
山師「頼むから帰ってくれ。そして、もう放っておいてくれ」
- 521 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:53:54.17 ID:QcMRLlRAo
盗賊「……」
召喚士「山師さん。あなたが口を開いてくれねば、村長や皆も不信を募らせています」
山師「構わんさ。村長達にも関係のない事だ」
戦士「召喚士、もういい。お望み通り帰るとしよう」
魔道士「……っ」
戦士「こいつの言う通り、所詮俺らは部外者だ。構う必要ねぇ」
召喚士「……山師さん」
山師「彼の言う通りだ。ザントマン会得の件は済まなかったな」
召喚士「……」
戦士「ほれ、行くぞ」
魔道士「ちょっと…っ、戦士さん……っ」
盗賊「……魔道士、行こう」
魔道士「……っ」
テクテクテクテク…パタン
山師「…………っ」
- 522 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:54:20.98 ID:QcMRLlRAo
ザッザッザッザ
戦士「…ったく、何なんだよ畜生…っ」
魔道士「でもやっぱり、何かあるんですよっ」
召喚士「ええ……」
魔道士「このまま…放っておくなんて……」
戦士「でもよ、本人が何も教えてくれないんじゃ……」
召喚士「…仕方ない。山師妹さんの所へ行ってみましょうか」
戦士「そこまでお節介する必要もねぇと思うぞ?」
召喚士「でも、気になるじゃん」
魔道士「そうですよっ。山師姉さんが目覚める解決になるなら…」
戦士「…はいはい。ほんと物好きだよなお前らもよ」
魔道士「乗りかかった船ですよっ。それに会得だって諦めたくないじゃないですか」
召喚士「まぁ、確かに……」
盗賊「…とりあえず…行ってみようか」
戦士「行くだけだぞ?余計な事に首突っ込む事ぁねぇからな」
- 523 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:55:05.66 ID:QcMRLlRAo
〜山師姉妹の家〜
トントン
召喚士「……」
魔道士「ごめんくださーい」
カチャッ
山師妹「……っ」
召喚士「こんにちは」
山師妹「……」
魔道士「あのぉ、宜しければ…お話させて貰えませんか…?」
山師妹「……」
召喚士「……お姉さんの事聞きました。何か助けになればと思って…」
山師妹「……っ!」
グッ…パタ…ガシィ
戦士「……なぁアンタ、何か…隠してないか?」
山師妹「……っ」
- 524 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:55:35.28 ID:QcMRLlRAo
召喚士「戦士っ!」
戦士「ドア押さえただけだろ。それに……」
盗賊「…何か…知っているのか?」
山師「…わ、私は……っ」
ザッザッザッザ…
山師「何をしているっ!?」
魔道士「山師さん…っ」
山師「帰れと言っただろう!その子は関係ない!」
召喚士「山師さん、一体何を隠しているというんですか!?」
山師「何も隠してなどいないっ!いいから離れろ!」
魔道士「……っ」
山師「もし出来ぬというのなら……」
ザッ
戦士「……やる気か?……四人を相手に」
山師「……やむを得んだろう」
- 525 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:56:28.29 ID:QcMRLlRAo
魔道士「ちょっと……っ!」
ザザッ!!
盗賊「来る!魔道士、退がれっ!」
山師「共に立てっ、ザントマン!!」
シュイイィィン
召喚士「あれが……ザントマン……!」
ザントマン「やれやれ……」
再召喚された老人は、背負った袋の口を大きく開く。
山師「山師妹っ!家の中へ入っていろ!!」
山師妹「う、うん…っ」
ゴアッ!!
盗賊「目を瞑れ!!」
戦士「!?」
魔道士「えっ!?目……っ!?」
山師「まさか……そこまで気付いたというのか!?」
- 526 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:57:15.84 ID:QcMRLlRAo
ザントマンの開いた袋の中より、肉眼では決して見えぬ粉が放出される。
それは追い風に乗り、四人の元へと吹雪に混じり到達する。
ズオオォォッ
目を瞑る瞬間、山師の位置を確認し、走り出したのは戦士と盗賊の二人。
しかしながら戦士はその足を途中で止める。
戦士(……ちぃっ、昨日の凍傷で刀が…っ!)
立ち止まる戦士は、途中で攻撃ではなく構えだけを模し、
山師とザントマンに対して、威圧を放ちかける。
ゴゴゴゴゴッ
山師「……っ!?」
戦士(今の俺に出来る精一杯だ。盗賊、頼んだぜ…!)
ザッザッザ…ザザザッ
山師「何っ!?」
戦士の威圧に気を取られた隙に、盗賊は山師の背後へと回り込む。
右手で抜いた薄緑が振り下ろされ、山師の後頭部を捉えた。
- 527 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:57:41.70 ID:QcMRLlRAo
ブオンッ!!…ガゴッ……ドサッ
盗賊「……ふーっ」
ザントマン「……く、お――」
シュイイィィン
召喚士「召喚獣の気配が消えた!?盗賊さんっ!?」
盗賊「……待て、一斉に目を開けてはならぬっ」
召喚士「ええ…。戦士、魔道士さん…ちょっと待ってて下さい」
戦士「おう。…頼む」
スウッ
召喚士「……うん、大丈夫」
戦士「よし、俺らも開けるぞ」
魔道士「はい…っ」
スウッ
戦士「……問題なさそうだな」
魔道士「…ですね」
- 528 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/26(水) 18:58:09.47 ID:QcMRLlRAo
ザッザッザ
盗賊「……」
戦士「殺してないだろうな?」
盗賊「…馬鹿を言え」
戦士そんで、どーするよ?」
召喚士「ひとまず山師さんを、家の中へ入れないと……」
ザッザッザ…トントン
戦士「しっかし、目を瞑れって…よく気付いたなぁ」
盗賊「…先程…食らったからな。そこで気付いた」
カチャッ
山師妹「……っ!!」
召喚士「大丈夫。気を失っているだけです」
山師妹「……山師…さんっ」
召喚士「家の中へ入れてあげて下さい。ここでは身体も冷えてしまいますから」
山師妹「……」
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