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少女「貴方の今に閃きたい」
1 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/14(土) 23:38:49 ID:KftohT1A
コンコン

ガチャリ

男「やあ、おはよう」

少女「…」

男「気分はどうかな」

少女「…普通」

男「そうか、何よりだ」

少女「そう」

少女「あなた、誰??」

男「私は…」

少女「…先生、ね」

男「…」

少女「名札があるもの」

男「ははは、そうか」


2 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/14(土) 23:44:23 ID:KftohT1A
少女「ここはどこ??」

男「病院だよ」

少女「私はどうしてここにいるの??」

男「ん…」

少女「病気??」

男「うん、ある意味では、そうかな」

男「君は、昨日の記憶はあるかい??」

少女「…」

少女「わからないわ」

男「そう、昨日の記憶を取り戻すために、君はここにいるんだ」


3 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/14(土) 23:50:46 ID:KftohT1A
少女「治るの??」

男「治すさ」

少女「…そう」

男「少しずつでいい、ゆっくり治していこう」

少女「…」

少女「記憶喪失ということ??」

男「そうだね」

少女「でも私は、自分の名前はわかるわ」

男「うん」

男「ある時から、君の記憶は蓄積されなくなってしまっているんだよ」

少女「ちくせきって??」

男「つまり記憶が溜まらない、毎日忘れていく、ということさ」


4 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/14(土) 23:57:57 ID:KftohT1A
少女「毎日リセットされているということ??」

男「そのようだね」

少女「…」

少女「私がこの病院に入ってから、何日経っているの??」

男「3ヶ月ほどだ」

少女「3ヶ月…」

男「病院に入る前の記憶はあるかな」

少女「白い家に住んでいたわ」

男「うんうん」

少女「犬を飼っていたわ」

男「うんうん」


5 名前:以下、名無しが深夜にお送りします [] 投稿日:2012/01/15(日) 00:00:46 ID:52YrqNo2
そういう映画あったな


6 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 00:02:24 ID:/YgAECtM
男「他には??」

少女「近くに湖があって」

男「うん」

少女「よくボートに乗って遊んだわ」

男「うん」

少女「これ、毎日私は同じことを話しているの??」

男「ん、いや、少しずつ内容は変わってきているよ」

少女「でも、3ヶ月経っても先生の顔を覚えていないわ」

男「そうか」

少女「ごめんなさいね」


7 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 00:07:33 ID:/YgAECtM
男「気分はどう??」

少女「普通よ」

男「食事は摂れるかな」

少女「…ええ」

男「じゃあ、持ってこさせよう」

少女「…」

少女「3ヶ月経っても、昨日の記憶がない、かあ」

男「焦る必要はない」

少女「先生は毎日大変じゃないの」

少女「同じ事の繰り返しで」

男「同じじゃないさ」


9 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 00:11:10 ID:/YgAECtM
少女「日記でもつけた方がいいのかしら」

男「日記なら、そこにある」

男「読んでみるといい」

少女「…」

ガチャリ

男「食事を摂りながら、読んでみたらどうかな」

少女「ええ」

男「じゃあ、1時間したらまた来よう」

少女「…」コクン

バタン


10 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 00:16:14 ID:/YgAECtM
助手「どうですか、彼女は」

男「うん、昨日と変わらないようだ」

助手「そうですか…」

助手「食事を運んできますね」

男「ああ、頼む」



男「ふぅ」

助手「せ、先生…」

男「ん、どうした」

助手「彼女が、彼女が、私のことを、少し覚えているようです…」

男「なにっ!!」


11 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 00:22:38 ID:/YgAECtM
バタバタバタ

ガチャリ

少女「っ」

男「君、さっき来た人を」

少女「先生、ドアはもう少し静かに開けるものじゃないかしら」

男「あ、ああ、すまない」

少女「さっきの人??あの人がどうかしたの??」

男「あの人を覚えているかい」

少女「ええ、この病院の人でしょう」

男「そうか…そうか!!」

少女「??」


12 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 00:26:13 ID:/YgAECtM
男「彼女は私の助手なんだが、君が記憶を蓄積できなくなってから出会っているんだ」

少女「??」

男「つまり、わずかだが、記憶が蓄積されたらしい」

少女「それって、よいことなの??」

男「ああ、勿論だ」

少女「治る??」

男「治すさ」

少女「ふふふ」

少女「でも相変わらず、先生のことは思い出せないわ」

男「ううむ」


13 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 00:30:05 ID:/YgAECtM
男「まあ、焦らず行こう」

少女「ええ」

男「なんにせよ、いい兆候だ」

男「さて、食事の邪魔をしてしまったな。ゆっくり食べるといい」

少女「はあい」

男「ではまたあとで」

少女「…」

バタン

男「ふふふ…前進だ、これは大いなる前進だ」

男「…前進、なんだ…」


14 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 00:34:53 ID:/YgAECtM
少女「ふう」カチャリ

少女「ごちそうさま」

少女「…」

少女「あ、日記を見るのを忘れていたわ」

ゴソゴソ

少女「これかしらね」

少女「…」

少女「私の字…のようねえ」

少女「あまりうまくないわね」ペラペラ


16 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 14:31:10 ID:/YgAECtM
 6月16日
 明日の私へ
 日記をつけることにした。
 ここは病室みたい。私は記おくがちくせき(?)されないんだって。
 昨日のことが思い出せないみたい。
 先生は私に親切にしてくれるけれど、思い出せない。
 この部屋はヒマよ。でも、おねがいすると先生は色々と用意してくれるわ。

 6月17日
 明日の私へ
 食べたものをメモしておくことにしようかしら。
 今日の朝はクロワッサンとコーンスープと紅茶。
 お昼はカレーライスとミルク。
 夜はまだよ。
 運動しないと太っちゃう。
 ランニングしたいと言ったら、先生にダメって言われた。
 外に出たいのに。

 P.S. 夜はぶた肉のいためものとおみそしるだったわ。


17 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 14:44:11 ID:/YgAECtM
少女「これ、3ヶ月前からずっと書いているのかしら」

少女「全部読むのは時間がかかりそうね…」ペラペラ

 6月18日
 明日の私へ
 日記に食べたもののことが書いてあるわって言ったら、先生にやめてくれって言われた。
 毎日メニューを考えるのは大変みたい。
 今日のメニューは昨日とちがったけど、もう書かない方がいいみたいね。
 でも日記に書いたせいでもうカレーが食べられないのはいやだなあ。

 6月19日
 明日の私へ
 毎日この日記をちゃんと見るように、表紙にメモでもはろうかしら。
 「必ず見ること!!」とかどうかしら。
 「よう注意!!」の方がいいかしら??
 もちろん赤のマジックでね。
 明日は先生をこまらせないように、自主的(?)に日記を読むこと!!

 6月20日
 昨日の私へ
 「よう注意!!」は、しっぱいのようね。
 こわくて、先生に言われるまで手に取りたくなかったもの。

 明日の私へ
 日記は毎日まくら元においておくこと!!


18 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 14:48:28 ID:/YgAECtM
少女「楽しそうね、私」

ガチャリ

男「食事はすんだかい??」

少女「先生」

男「お、日記を読んでいるね」

少女「ええ」

男「君の字だ。覚えはあるかな」

少女「ええ、字はなんとなく」

少女「でも内容は、私には書いた覚えがないの」

男「そうか」

少女「いつか思い出せるかしら??」

男「きっと、ね」


20 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 14:51:27 ID:/YgAECtM
少女「私はいつも、どんな毎日を過ごしているの??」

男「ん…」

少女「壁にスケジュールでも貼っておくといいのに」

男「一度それをしたらね、次の日君が破いてしまったんだ」

少女「どうして??」

男「毎日同じことをしたくない!!って叫んでね」

少女「そう」

男「今日の私は今日だけのものなのよ!!って」

少女「へえ」


21 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 14:56:05 ID:/YgAECtM
男「さて、すまないが日記は少し中断して、検査しなければならないことがあるんだ」

少女「ええ」

男「今からする質問に答えてくれ」

男「わからないことに対してはわからないと言ってくれていいからね」

少女「はあい」

男「じゃあまず、君の最も古い記憶はなにかな」

少女「ええと…パパと公園で遊んでいるところよ」

男「何歳くらい??」

少女「3つか4つだったかしら」

男「ふむ」

男「じゃあ次に、君がパパに叱られた記憶について…」


22 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 14:59:55 ID:/YgAECtM


男「この絵は何に見える??」

少女「…牛さん」

男「じゃあ、これは??」

少女「アイスクリームかしら」

男「じゃあ、これ」

少女「??」

少女「さっきも似たような絵がなかったかしら」

男「どうかな」

少女「飛行機??」

男「ふうむ」


23 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 15:03:21 ID:/YgAECtM


男「白、空、丸い」

少女「…月」

男「赤、山脈、巨大」

少女「ううん…マグマ」

男「弱い、青、海」

少女「…クラゲかなあ」

男「灰色、ジャングル、夜」

少女「んーと、ハイエナ」

男「黒、庭、小さい」

少女「…蟻」

男「赤、家、暗い」

少女「…わからない」


24 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/01/15(日) 16:29:13 ID:grJcaK8A
支援
スレタイにいきつくだろうか


25 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 22:35:32 ID:/YgAECtM


男「よし、今日の分はこれで終了だ。お疲れ様」

少女「これで何がわかるの??」

男「君の症状についてのデータになる」

少女「昨日も同じことをしたのかしら」

男「ああ、そうだね」

少女「まったく同じデータ??」

男「すまないが、それは言えないんだ」

少女「ふうん」

男「じゃあ、日記の続きでも読んだらどうかな」

男「君の日々の記録が記されているから」

少女「ええ、面白いわ」


26 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 22:39:22 ID:/YgAECtM
男「まあ、ゆっくり読むといい」

少女「ええ」

男「なにかあれば、そこの壁にコールボタンがあるからね」

少女「はあい」

バタン

少女「さ、続き続き」ペラペラ

 6月21日
 明日の私へ
この日記は漢字が少ないわ。
もう少し漢字を書けるようになったほうがいいわね。
漢字じてんを用意してもらおうかしら。
それにしても、この日記を先生は読みたがっているみたいね。
でもはずかしいから、ダメって言ってるけど。
ねてる間に読んだりしてないかしら。だいじょうぶかしら。


27 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 22:43:58 ID:/YgAECtM
 6月22日
 昨日の私へ
 漢字辞典、ありがとう。
 先生にいらない紙をいっぱいもらって、漢字の練習をしてみたわ。
 でも、辞典で覚えた漢字を明日の私は覚えているのかな??

 明日の私へ
 今日覚えた漢字を使ってみたんだけど、読める??
 読めたら少し、記憶が蓄積されたってことにならないかしら。わくわく。
 胡椒 胡桃 胡瓜 (←全部違うものよ!!)

少女「…読めない」

少女「き、き、お、くが…イチゴ??せき??」

少女「全部…全部…あう??」

少女「…もう」

ピンポーン


28 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 23:02:02 ID:/YgAECtM
男「早速どうしたんだい??」

少女「読めない」

男「じゃあ辞典を使ったらいい」

少女「どうやって使うの??」

男「ここに画数索引があるから…」

少女「ふむふむ」

男「振り仮名を振っておいたら??」

少女「いいの、明日の私も困ったらいいんだわ」

男「はは、そうか」


30 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 23:07:02 ID:/YgAECtM
6月23日
 昨日の私へ
 全然読めなかったわ。おかげで私はきっと毎日漢字辞典と格闘することになりそうね。
 ここから先はフリガナを振ることにしない??じゃないと読めないもんね。

少女「あら、この日の私は優しいのねえ」

 明日の私へ
 お昼に飲んだ薬が苦くってテンションが低いわ。
 こんなの、毎日飲んでるのかしら。すごいのね、私って。
 気持ち悪い…
 でも先生は、よくなるためだから我慢しなさいって…

少女「げ、薬飲むの」

少女「やだなあ、やだなあ」

 6月24日
 昨日の私へ
 そのお薬、本当によくなるためのものなのかしら。
 私ここまで読んで考えたんだけれど、本当に私は記憶喪失なのかしら。
 この病院、少しアヤシイ気がするんだけど…気のせいかしら。
 もしかしたらそのお薬が、記憶喪失の原因で、私は拉致されてるんじゃないかしら。
 どう、いい推理じゃない??

 明日の私へ
 今日のお薬は、内緒で飲んだふりをしてみようかな。
 なーんて思ったけど、ちょっと怖いわ。やめとく。
 明日の私は、この続きを考えてみて、お願い。


31 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2012/01/15(日) 23:13:13 ID:/YgAECtM
 6月25日
 昨日の私へ
 あの眼鏡の先生は、じゃあ、悪者なの??
 優しそうな人だったけれど…
 もしかしたら、毎日違う人がやってきていて、私を混乱させようとしていたりして。

 明日の私へ
 一応先生の特徴を書いておくわね。
 眼鏡をかけていて、少しひげがあるわ。髪は黒くて、少し長い方ね、多分。
 年は30才くらいかしら。大人の人の年ってわかりにくいわねえ。
 
 P.S. 今日もお薬はちゃんと飲んだわ。飲まないっていうのも、少し怖いの。

少女「先生の特徴かあ」

少女「…合ってるから、ちゃんと同じ人みたいねえ」

少女「…なんだか推理小説を読んでいるみたい」



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