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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その26
- 171 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2011/03/01(火) 18:31:06.31 ID:+icQjqmlo
ビュオオォォォォ…
戦士「だああぁぁ!!昼なんだからちょっとは晴れろよぉ!!」
戦士父「怒鳴るな。雪崩でも起きたらどうする」
戦士「そんなんで起きるかっての」
戦士父「起きるから行っているのだ。山をなめるな」
戦士「……っ」
戦士父「登山より下山の方が困難なのだ。気を抜くな」
戦士「…へいへい」
召喚士「……そろそろ限界だな。行けっ!クジャタ!!」
シュイイィィン
戦士「もう使うのか?」
召喚士「いや、これでも遅いくらいだよ。俺にもっと魔力があれば……」
戦士父「十分さ。もう少し下れば斜面も緩やかになるだろう」
召喚士「……ありがとうございます」
クジャタが道を切り拓く中、一同はその傍を離れぬよう懸命に追随した。
- 172 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:31:50.72 ID:+icQjqmlo
ザッザッザッザ
魔道士「でも、本当に凄い召喚獣ですね」
盗賊「…ああ。助かるな」
召喚士「意外と役に立ちましたね」
魔道士「ほんとっ、ピクニックの時とか大助かりですね!」
戦士「何で?」
魔道士「だってぇ、雨降ったら嫌じゃないですかぁ」
戦士「……はぁ」
召喚士「ま、まぁ…そういう使い方もありますよね…」
戦士「怒られても知らんぞ?」
ザッ
クジャタ「……」
戦士「…ほれ、クジャタが怒ったぞ」
魔道士「ご、ごめんなさいっ」
召喚士「……いやっ、違う!……これはっ」
- 173 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:32:53.25 ID:+icQjqmlo
即座にクジャタは左方を見つめる。
雪に閉ざされた真っ白な視界。しかしその奥に、確かに気配を感じる。
盗賊と戦士父は気配でそれを感知し、召喚士と戦士は察知で気が付く。
魔道士は月読で、その僅かな風と雪の動きを察知する。
五人それぞれの手段ではあるが、心中考える事は同様であった。
召喚士「何か……いる…っ」
戦士「盗賊っ、親父!……前を張るぞ!」
盗賊「…ああ」
戦士父「……」
ザッ
魔道士「魔物…ですか…?」
召喚士「…分かりません。しかし、このような場に居る事は普通じゃありません」
魔道士「……ですよね…っ」
前衛、盗賊を中央へ据え、左右に槍を構えた親子二人が身構える。
クジャタの拓いた道の上、細く白い足が一歩、また一歩と近づいて来た。
- 174 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:33:36.38 ID:+icQjqmlo
ビュオオォォォォ…
戦士「!?」
――「おや、先程の人間か」
ザッザッザッザ…
魔道士「……女の…人…っ!?」
召喚士「この気候の中…防寒具も付けず素足でいられる人なんていませんよ」
戦士父「それに、先程の『人間』…と、言ったな」
――「うふふっ、頭の良い人間は嫌いではない」
ザッザッザ…
――「……おや?どこかで見た顔じゃの」
ザッ
――「……思い出したわぁ。わらわの邪魔をしてくれた人間じゃ」
戦士「――っ!!」
召喚士「…お前は……っ!!」
かつて華国で対峙した、九尾を持つ若い女の姿。名を夫人と言った。
- 175 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:34:16.70 ID:+icQjqmlo
魔道士「あ……あぁ…っ」
盗賊「…よりにもよって…こんな時にっ」
ザッザッザ
夫人「うふふっ。あの時は…世話になったのぅ」
召喚士「……」
夫人「うふっ、そう構えなさんな。わらわに戦う気はないからの」
戦士父「見逃してくれるのか?」
夫人「…ん、この渋い殿方は初めてお会いするのぅ」
戦士「んな事ぁどうでもいいっ!こんな所で何してやがるっ!」
夫人「それはこちらの台詞じゃ。お主らこそ何をしておるのじゃ?」
召喚士「……話す必要はありません」
夫人「うふふ…っ、怖い顔をする。まぁ良いかの」
ザッザッザッザ
夫人「このまま真っ直ぐ下山する事じゃ。そうすれば何ら、身の危険はないからの」
戦士「質問に答えやがれっ!こんな所で何をしている!?」
- 176 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:34:56.11 ID:+icQjqmlo
夫人「……何をと申しても、ここはわらわの棲み処じゃ」
魔道士「……!?」
夫人「ずーっと前からの。人間が後から勝手に来たのであろう?」
盗賊「……」
夫人「余計な道草をせず、そのまま帰る事じゃな」
召喚士「あなたは…一体何が目的で……」
夫人「目的…?わらわの目的はただ一つよ」
召喚士「……」
夫人「わらわは…一国の主となりて、いや…この世界を我が物として――」
戦士「今、改めて思うと…こいつって危なくない系の魔物じゃないか?」
召喚士「……そうかもしれない」
戦士「だったら、相手にせずさっさとおさらばすっかね」
召喚士「…うん」
夫人「……えぇいっ!自分から話を振っておいてえぇ〜っ」
召喚士「!?」
- 177 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:35:40.72 ID:+icQjqmlo
ズオッ…ゴウッ!!
クジャタ「――!?」
眉間に皺を寄せながら、夫人は力任せにクジャタを右手で押し潰す。
夫人「話は最後まで……聞かんかぁ!!」
ドズウウゥゥゥゥンッ!!
戦士「しまっ……」
召喚士「ぐふ…ぁ…っ!!」
ガクン
盗賊「…景色がっ」
戦士「クジャタがやられた!召喚士を頼むぞ!」
魔道士「は、はい…っ!」
ビュオオォォォォ
戦士「くぅ…っ!!視界が……」
魔道士「召喚士さん、召喚士さんっ!?」
召喚士「ぐく…っ!だ、大丈夫…です」
- 178 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:36:45.68 ID:+icQjqmlo
夫人「あーっはっはっは!いい気味よのっ」
戦士父「全員動くなよ!無事だな…?」
戦士「…ああ。しかし…こう四方の視界を遮られちゃあな」
盗賊「…ん?」
ボッ…ボッボッボッ
魔道士「照明!?」
盗賊「…そんなものはなかった!何か怪しい……」
夫人「狐火じゃ。聞いた事はあるかの?」
戦士「知るかっ」
夫人「ふんっ、まぁ良い。わらわは帰るとする」
ザッ
夫人「なんならお主らも来るかえ?うふふっ」
ザッザッザッザッザ
魔道士「……火が少しずつ消えて…っ」
戦士父「……」
- 179 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:37:29.93 ID:+icQjqmlo
戦士「おいっ、どーすんだよ!?」
召喚士「このまま……真っ直ぐ下山出来るとは…思えない」
盗賊「…大丈夫か?」
召喚士「ええ。しかし魔力回復まで少し時間が……」
戦士父「……あの魔物、信用出来るか?」
戦士「……分からん。南東国をメチャクチャにした張本人だからな」
戦士父「……」
召喚士「でも、話が出来る分…他の魔物よりは……」
魔道士「火がどんどん消えていきます…っ!」
戦士父「…仕方あるまい。全員離れるなよ、付いて来い!」
戦士「お…おいっ、まさか……行くのかよっ!?」
戦士父「止むを得んだろう。じっとしていても死ぬだけだ」
戦士「罠かもしれないんだぜ!?」
戦士父「そんな手間を掛けるくらいならとっくに殺されてるさ」
戦士「……っ」
- 180 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:38:29.01 ID:+icQjqmlo
…
召喚士「…はぁ……はぁ」
魔道士「召喚士さん、大丈夫ですか…?」
召喚士「……はい」
どれ程歩いたか。景色は相も変わらず変わらないが、
いつの間にか寒さはなくなっていた。
戦士父「……!?」
盗賊「……視界が…開ける」
大雪の影響で真っ白だった視界。それが突如真っ白な視界へと変わる。
同じ白い景色でもそれは全く別物であり、雪も他の景色もない完全なる白。
戦士「なんだ……ここは…っ!?」
魔道士「い、一体どういう事なんでしょうか…?」
パーティーの中で唯一人、かつて似たような景色を経験した覚えがあった。
召喚士「……召喚獣の世界みたいだな」
五人はその先へ吸い込まれるように、ゆっくりと前進した。
- 181 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:39:10.23 ID:+icQjqmlo
テクテクテク…テクテク…
ぼんやりとした視界の中、徐々に風景が作り上げられてゆく。
戦士父「……!?」
そこは先程の天候とは真逆の、穏やかな風が吹き、青空の下、
白い雲が流れ、小鳥が心地良さげに囀り飛び回っている。
戦士「夢の中にでも入り込んじまったのか…っ?」
戦士父「夢や幻術などではない。紛れもない本物だ」
盗賊「……!?」
ザザッ
夫人「……おや、本当に付いてくるなんてね」
召喚士「……っ」
夫人「ここがわらわの棲み処じゃ」
戦士「なかなかいい所じゃねーか」
夫人「……そうかの?わらわは嫌いじゃ」
盗賊「……」
- 182 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:40:02.33 ID:+icQjqmlo
夫人「このような……不自由で狭い、何の楽しみもない所……」
召喚士「…?」
夫人「…まぁ良い。ほれ、さっさと帰るがよい」
魔道士「あ、あのぉ……どうやって帰ったら……」
夫人「……そこを下れば樹海に行き着く。あとは自力で帰る事だの」
戦士父「地上に…出られるのだな?」
夫人「うふふっ。多分ね」
戦士父「……」
夫人「ほれ、早よう行かぬかっ」
召喚士「……行きましょう」
戦士「ああ。んじゃな、狐の化物」
夫人「わらわは夫人じゃ!化物などと呼ぶでないっ!」
戦士「へいへい」
夫人「全く……。まこと無礼な人間――」
呆れ口調で言葉を発する夫人の声が止まった。
- 183 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:40:58.14 ID:+icQjqmlo
ゴゴゴゴゴゴ
夫人「――っ!!」
――「なーにを騒いでおるか、夫人」
夫人「な、何でもないわっ」
――「……んん?そこにおるのは……人間かえ?」
召喚士「な、何だ…っ!?」
夫人「よいから早よぅ行けっ!!」
戦士父「何か嫌な予感がするな。行こう」
盗賊「…ああ」
ザザッ
召喚士「……っ」
タッタッタッタッタ
――「…ほぉ、戯れで人間を助けるとは。お前らしくもないのぉ」
夫人「別に、そんなつもりではないわ。さーて、寝るとするかの」
――「……ふっふ、お前もひねた性格をしとるのぉ」
- 184 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:41:45.39 ID:+icQjqmlo
タッタッタッタッタ
魔道士「な、何だったんでしょう!?」
召喚士「分かりませんっ。しかし……」
戦士父「先程の声の主。あれは……」
戦士「夫人より格段に高い威圧だった…っ」
盗賊「……ああ。一瞬ではあったが…確かに感じた」
その場に留まり迎え撃つ事も可能ではあった。
しかし、魔力を失った召喚士を戦力と換算する事は出来ず、
残った四人で夫人と更なる化物を相手には出来ない。
結論は逃走。そう判断した故の、戦士父の一言であった。
戦士父(逃がしてくれたと言ったところだが、素性も分からんしな……)
いつもの四人であれば逃走という手段は最優先に出てこなかったかもしれない。
長年の経験と軍人、しかも特殊遊撃に所属していたからこその、咄嗟の判断。
結果として不必要な交戦はなく、その場を難なく凌ぎきれた。
その結果が幸か不幸かは、まだ先の話である……。
- 185 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:42:18.81 ID:+icQjqmlo
タッタッタッタ…ザザァ
戦士「はっ…はっ……はっ」
盗賊「…なんとか…戻ってきたようだな」
戦士父「ああ。しかし、悪天候は変わらずか」
召喚士「森林…というより、ここが夫人の言っていた樹海…?」
盗賊「…そのようだな」
戦士「んお…っ?」
魔道士「ど、どうしました…!?」
戦士「何だか……左手が重…っ」
グググッ
召喚士「まさか、どこか怪我を…!?」
戦士「いんや、そうじゃねぇ…っ。この感じは……」
ググッ…グイッ
戦士「これだ…っ」
盗賊「……斧?」
- 186 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:43:02.97 ID:+icQjqmlo
戦士「こいつの磁石がどうも、反応しているらしい」
戦士父「磁場が強いのかもしれんな」
戦士「仕方ねぇ。ひとまず担いで運ぶとすっか…」
戦士父「急いだ方がよさそうだな」
戦士「あん?」
戦士父「磁場が強いとあまり良い事はない」
魔道士「そ、そうなんですか…?」
戦士父「魔力は弱まり、しかも金行……」
ガサガサッ
盗賊「!?」
法衣を纏った複数の男がゆっくりと近づいてくる。
戦士「…何だ?総本山の坊主か?」
魔道士「ちち、違いますよっ!顔を見て下さい…っ!」
盗賊「…囲まれた!?」
傘の先を上げ顔を向けると、そこには真っ青な肌をした男が牙を剥いて笑った。
- 187 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:43:49.63 ID:+icQjqmlo
盗賊「ちぃっ!…魔物の気配は感じ取れなかったぞっ」
戦士父「磁場の影響だ、焦らず各個撃破で突破するぞ」
戦士「おうっ!」
五人を取り囲む法衣の男らは妖怪、青坊主。
青坊主「…けけけっ、この樹海からは…出さぬぞぉ」
戦士「召喚士、いけるかっ?」
召喚士「召喚術は無理だけど……」
チャキッ
召喚士「こっちなら、なんとか」
腰のレイピアを鞘から抜き、召喚士は戦士の横に居並ぶ。
戦士「何だ?武闘派召喚士でも目指すのか?」
召喚士「……足手纏いには…なりたくないからねっ」
戦士「…よっしゃ、そんじゃあ行くか――」
戦士父「待て!!」
戦士「!?」
- 188 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:44:47.53 ID:+icQjqmlo
腰の雷切を抜刀しかけた瞬間、背後より戦士父の怒号が響いた。
戦士父「雷切は使えぬ!磁場なんだぞっ!」
戦士「!?」
戦士父「磁場で雷を放てば暴走する。どうなるか分からんぞ」
戦士「……ちぃ、そういう事か」
戦士父「君もだ。いいね?」
魔道士「は、はいっ!雷は……なしですねっ!」
盗賊(雷遁は使えない…。ならばっ!)
タタッ
青坊主「!?」
先手必勝と言わんばかりに、盗賊は一匹の青坊主めがけクナイを放つ。
更にそのクナイは、印を結んだ盗賊より発せられた炎に包まれた。
青坊主「ぐぎゃああぁぁ!!」
盗賊「…まず一匹……とはいかぬか」
青坊主「……やぁってくれるぜぇ」
- 189 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:45:44.55 ID:+icQjqmlo
ザザッ
戦士「召喚士、左は任せて…いいんだな?」
召喚士「うんっ!」
戦士「……おっし、行くぞ!」
タンッ!!
戦士と召喚士。二人は迫る青坊主を迎え撃つ為、左右に分かれ走り出す。
召喚士(俺の腕力でいけるかどうか…っ)
様子見を兼ねて、召喚士はフェイントを織り交ぜながらレイピアを放つ。
ヒュオッ…サクッ
青坊主「……いでぇ!このやろぉ!!」
召喚士「無傷…ではないな。よし…っ、お次は……」
青坊主「一斉にかぶりついてやれぇーっ!」
召喚士「はぁっ!!」
ザザッ…ゴオオォォォッ!!
召喚士の振り上げたレイピアより突風が巻き起こり、青坊主の群れを吹き飛ばした。
- 190 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:46:35.61 ID:+icQjqmlo
戦士「派手にやってるじゃんかよ」
青坊主「余所見してんなってのぉ――」
ドズン
青坊主「……へっ?」
戦士「悪い悪い。この斧、磁石が仕込まれててさー」
青坊主「……あが、あががが」
戦士「磁場に引っ張られて落としちまったわ。ははっ」
青坊主「あ、足がああぁぁ!?」
戦士「ふんっ!」
ザシュッ!!…ビュオッ
戦士「……さぁどうする?降参するなら…命は助けてやるぜっ!」
妖怪を一振りで真っ二つした戟を再び身構え、戦士が威勢良く啖呵を切る。
青坊主「な、なめるなよぉ!この人数相手にいいぃぃ!!」
戦士「でっりゃああぁぁ!!」
戦士の振り上げた戟の一撃により、青坊主の群れがあえなく吹き飛ばされた。
- 191 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:47:48.43 ID:+icQjqmlo
青坊主「んやろう!!」
キィンキィンキィンッ
戦士父「……ふんっ」
ブオォッ!!…ザシュッ!!……ドサァ
戦士父「退くがいい。勝ち目はあるまい」
青坊主「人間のくせに生意気なぁ…っ!」
ジリジリジリッ…
青坊主「奥の手を見せてやるっ。いくぞお前らっ!」
ジャラララッ
盗賊「まずいっ!鎖鎌だ!」
青坊主「ふんぬりゃああぁぁ!!」
複数の青坊主が一斉に放つ鎖鎌。それは直線的な動きではなく、
まるで生き物のように地を這い、木々をすり抜けながら迫り来る。
戦士「なにぃ!?」
召喚士「……くっ」
- 192 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:48:29.06 ID:+icQjqmlo
フォンフォン…ヒュオッ
召喚士「かわすのが…精一杯…っ」
戦士「なんつう数だよ…っ」
盗賊「……はぁっ!」
タンッ!!……ガシィ
盗賊「……!?」
青坊主「なーにも目に見える所だけってわけじゃあないんだよねぇ」
木の葉の隙間から針に糸を通すように、盗賊の左足に鎌の分銅が絡みつく。
盗賊「くぅっ!」
青坊主「立て続けに仕掛けろぉ!」
ジャラララッ
盗賊「あぐ…ぅ!!」
更なる追撃の鎖。それは左足だけではなく、盗賊の右足、両手をも捉えた。
青坊主「吊るし上げろぉ!!」
盗賊「くあぁ……っ!!」
- 193 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:49:20.06 ID:+icQjqmlo
ギチギチギチッ
まるで蜘蛛の巣に囚われた蝶のように、盗賊の身動きが封じられる。
盗賊「あ……うぅ…っ」
青坊主「このまま喰ろうてやるわぁ!!」
ババッ!!
戦士「盗賊っ!!」
ヒュイイィィ…ドドオオォォォォンッ!!
青坊主「あ……がぁ……っ」
ドシャッ…ブスブスブスッ
空中で黒焦げに燃えた青坊主が、無残にも地面へ叩きつけられ、
焚き火のように燻り、そのまま動きを止めた。
魔道士「私だっている事っ、忘れないで下さい!」
青坊主「あいつ、術を使うぞ!あいつから殺れぇ!」
魔道士「え…っ、きゃあぁーっ!!」
召喚士「魔道士さん!!」
- 194 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:50:18.82 ID:+icQjqmlo
ギュルルルッ…ガシィ
首筋に絡まる鎖。それは頭上の枝を介して、まるで絞首台であるかのように、
魔道士の身体を持ち上げ、呼吸を奪う。
魔道士「か…は……っ」
戦士「くっそぉ……っ!!」
ヒュンッ
戦士「…?」
青坊主「後ろだぁ!一人接近――」
ブンッ!!…ヒュンヒュンヒュン…ドサッ…コロコロコロ
青坊主「あ…え?」
戦士父「……」
瞬時に迫った戦士父の十字槍が、魔道士を痛めつけていた青坊主の首を、
一瞬の内に斬り落とし、それが地面をころころと転がった。
戦士父「……大丈夫か?」
魔道士「げほげほ…っ。は、はい……ぃ」
- 195 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:50:51.76 ID:+icQjqmlo
青坊主「なんだこいつら…っ!?強いなんてもんじゃあねぇぞ」
召喚士「てりゃあぁ!」
青坊主「く、くそぉ!鎖の数が……っ」
戦士「だっりゃああぁぁ!!」
青坊主「鎌も分銅も…何も……」
盗賊「…はぁ!」
青坊主「わわっ!こっちに来るううぅぅ――」
魔道士「やあぁっ!!」
青坊主「あんだけ居たのに……何でぇ……」
戦士父「…ふんっ」
ドササッ
戦士「…片付いたみてーだな」
召喚士「魔道士さん、盗賊さん……大丈夫ですか!?」
盗賊「…ああ、大丈夫だ」
魔道士「ご、ご心配かけました……」
- 196 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:51:29.14 ID:+icQjqmlo
チャキッ
戦士父「他に魔物は居ないようだな。早くここを抜けた方が良さそうだ」
召喚士「ええ、そうしましょう」
戦士「よっと」
ガシャッ…スタスタスタ…
戦士父「……ここからでは見えんな」
タタッ…スタッ…トッ
戦士父「……」
戦士「急に木登りなんかして、どうしたんだ?」
召喚士「多分、星を見ているんだ」
戦士「星…?」
魔道士「あっ、星の位置で方角を……」
スタッ
戦士父「まだ夕暮れだが、多少は把握出来た。こっちだ」
盗賊「……うん」
- 197 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/03/01(火) 18:52:23.43 ID:+icQjqmlo
…
ザッザッザッザ…
戦士「おっ!?」
戦士父「どうやら抜けたようだな」
魔道士「はぁ〜っ。これで一安心ですねぇ」
召喚士「ところで、ここはどの辺なんだろう…?」
盗賊「…おそらく南だな。海がかすかに見える」
戦士「海?暗くて分からん」
戦士父「……凄い視力だな」
盗賊「…まぁ…慣れてるから」
戦士「そんで、どうやったら帰れんだ?」
盗賊「……ここより西へ進んでいけば、都に着くはず」
召喚士「それでは一旦、都へ戻るとしましょうか」
戦士父「ああ、それが良かろう」
不死の山を辛うじて下山した五人は、一路都へと戻る事に相なった。
- 203 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/03/01(火) 22:47:02.45 ID:UVfn+pOko
ピンチのはずなのに縛り上げられるとニヤニヤしてしまうのはなぜだ
- 204 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/03/01(火) 22:51:52.41 ID:SgovKcoDO
>>1先生乙です(。・x・)ゞ
巨乳の盗賊は縛られ要員だからな、仕方のないことだ
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