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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その33
421 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:41:35.48 ID:IHIwTwCqo
俺は、この日の事を絶対に忘れない。忘れる事なんて出来ないだろう。

あの日の出会い、この日の別れ。そしてこの人との出会いがあって、

共に戦ったからこそ今の俺がある。多少なりとも、いっぱしの召喚士としての自信が持てたんだ。

召喚士「ありがとう神官さん。そして……さようなら」

また会う日まで――。

ゴオオォォォォ…

王子「……わ、私は泣かぬぞ」

召喚士「泣いても……いいんですよ」

王子「いや、泣かぬ。それが神官との約束だからな」

召喚士「……強いですね陛下は。俺は……涙がっ、止まりません……っ!」

王子「王は人前で涙を流さぬ! 神官はそう言った! だから、私の分も泣いてくれ!」

召喚士「……は……いっ」



召喚士「行けっ!コカトリス!!」

    〜第五十四部〜


422 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:42:24.67 ID:IHIwTwCqo
〜満月まであと13日。西の砦〜

西国兵「開門開門ーっ!」

青年兵「来ましたね!」

神官「すぐに大広間へお通しせよ。我々も急ぎ向かうとする」

ドドドドドド…ドドォ

西方参謀「到着したみてぇだな……ヒック」

西方副司令「西方司令部副司令を任されております、西方副司令と申します」

親衛隊「ご苦労様です。さぁ中へどうぞ。皆がお待ちです」

西方副司令「ありがとうございます」

スタッ…テクテクテク

戦士「ほぉ、ここが西の砦か。なかなか頑丈そうな砦じゃんか」

親衛隊「――っ!?」

タッタッタッタッタ

親衛隊「先生っ! 先生ではありませんかっ!」

戦士「……へっ?」


423 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:43:18.26 ID:IHIwTwCqo


戦士「あぁ! あん時の!」

親衛隊「覚えていて頂けましたかっ!?」

戦士「先生ったって、軽く稽古しただけであってだな……」

親衛隊「いやっ、あの稽古のお陰で剣術のコツが掴めました! 先生のお陰ですよ!」

戦士「はぁ、それはどうも。だがやっぱり先生はやめてくれ」

タッタッタッタ

召喚士「戦士ーっ!!」

戦士「おぉ、召喚士にお前らも。無事か?」

魔道士「はいっ! ちょっと毎日のお風呂が欠かせないくらいです!」

盗賊「雷切は……直ったのか?」

戦士「ああ、生まれ変わったぜ。完全にな!」

召喚士「それは良かった」

戦士「今度の雷切はかなりいいぜ。期待しててくれ」

召喚士「うん。楽しみにしてるよ!」


424 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:43:47.58 ID:LUjFxgU9o
〜大広間〜

テクテクテク…

天才「はいお疲れちゃん」

西方副司令「西方司令部、ただいま到着致しました」

天才「つっても、肝心のヤローはまだだろ?」

西方副司令「はい……」

天才「まぁいい。こいつらの言うデカブツぶっ叩くまでに間に合えば上等だ」

西方参謀「ま、それは大丈夫でしょうなぁ。1週間もかからんと思うぜ……ヒック」

青年兵「西方軍はすぐに動けますか?」

西方副司令「ええ。ラーヴァナ戦で温存していたメンバーだから疲労もないし、鍛錬も十分よ」

青年兵「どうします? 明日、動きますか?」

天才「……だな。早速そのデカブツのツラを拝んでみようじゃねぇか」

隊長「了解。それではただちに編制を組み、明日……進軍するぞ」

神官「こちらも手筈を整えるとしましょう」

召喚士「……」


425 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:44:14.45 ID:IHIwTwCqo
〜満月まであと12日。西の砦〜

神官「出撃」

ガゴンッ

王子「西国は南側から攻めるぞ! しっかり付いて来い!」

傭兵「おっしゃあ!」

親衛隊「陛下を退がらせろ! 前哨戦で怪我などされてはたまらんぞ」

神官「相変わらず、困ったものです」

天才「ハーッハッハ。元気でいいじゃねぇか。朱雀、念の為だ。お前らあっちに付いてやれ」

召喚士「了解です」

青年兵「西方軍は北側、国軍は正面から出るぞ!」

男隊員「おう!」

西方副司令「出陣っ!」

ドドオオォォ

天才「サンドワーム程度にてこずんなよ?」

青年兵「無論です。……恐れる必要はない、怯む事なく正攻法であたれっ!」


426 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:44:43.78 ID:IHIwTwCqo


ドドドドドド…

西国兵「左っ、砂塵を複数確認!」

傭兵「来たなぁ……!」

王子「皆は馬、ラクダを反転っ! 八方へ散れ!」

親衛隊「密集するなよ、狙われるぞ!」

ズザザザザ……ドドオオォォォォン

サンドワーム「グヴォオオォォォォ!!」

傭兵「出やがった!」

王子「砂に潜るタイミングに合わせて斬るのだ!」

西国兵「分かってますって! 何百回戦ってきたと思ってるんです!」

ザッシュウウゥゥ

王子「潜ったぞ! すぐに次が来る。一点だけでなく周囲をくまなく見渡せよ!」

砂の中をうねり、顔を出しては再び潜っていくサンドワーム。傍から見れば壮観に見えぬ事もないが、

目の前でそれを体験すると、とてもそうは思えないものである。


427 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:45:43.06 ID:IHIwTwCqo
魔道士「私、苦手なんですよああいうのって……」

召喚士「分かります。目の前で見ると流石に気持ち悪いですよね……」

ザザザザアァ

戦士「さーて、新生雷切……お披露目といこうかっ!」

ジャキッ

盗賊「……おぉ!」

戦士「いっくぜぇーっ!」

足を止め、腰を低く構え、戦士は雷切の柄を右手で握ると、左手で鞘をくいとやや上へ向けた。

戦士「……」

ドッバアアァァン

サンドワーム「ゴハアアアアァァァァ」

戦士が大きく息を吐き、目線を正面へと向けると、雷切が鞘ごとぼんやりと光り始める。

ゴゴゴゴゴゴ…

傭兵「な……んだありゃあ!?」

王子「すっげぇ……っ!」


428 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:46:26.63 ID:IHIwTwCqo
それは本当に一瞬の出来事であった。抜刀した剣先に触れず、サンドワームは真っ二つに果てた。

盗賊「……何だ、今のは……っ」

魔道士「一瞬光が見えたと思ったら、魔物が勝手に……」

召喚士「こ、これが……新しい雷切……っ」

3人は我に返り、居合いを終えた戦士の元へと駆け寄って行った。

魔道士「戦士さーん! 凄いじゃないですかっ!」

召喚士「い、一体……どんな技を使ったの?」

戦士「……いや、それが俺にもよく分からん」

召喚士「へっ?」

戦士「いつもの感じで普通に居合いをしただけなんだが……」

魔道士「そ、そうなんですか?」

戦士「初めてだし、どうせ初撃は外れると思って、居合いは牽制のつもりだったんだがな」

盗賊「見えた限りでは、雷切の剣先から光が伸びたぞ」

戦士「光が伸びた……?」

召喚士「それって、付加した雷が伸びたというか、放出されたって事だよね」


429 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:47:02.24 ID:IHIwTwCqo
戦士「そうだとしても、あんなのを真っ二つにするほどの威力があるとは思えねぇけどな……」

魔道士「居合い、だからじゃないですか?」

召喚士「そうかっ。今度の雷切って、刀身部分は雷の鉱石で出来てるんだよね?」

戦士「ああ。ってそういう事か!」

チャキッ

戦士「この装飾部分にある核の鉱石を媒介に、俺の魔力が刀身に行き渡る仕組みになってる」

盗賊「……ふむ」

戦士「んでだ。通常の振りとは違い、居合いになる事で魔力が鞘ん中で蓄積されて……」

召喚士「居抜きと同時に、それが剣先より前方に放たれるんだよっ」

魔道士「す、凄いじゃないですかっ! 必殺技みたいでカッコイイ〜!」

戦士「そ、そうか? はは……っ!」

盗賊「むっ、まだ来るぞ」

召喚士「よし、この勢いで王子達を援護しましょう!」

魔道士「はいっ! こっちも準備オッケーですよっ!」

戦士「おっしゃ、悪いがここで……慣らしさせてもらうぜぇ!」


430 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:47:53.39 ID:IHIwTwCqo


隊長「来るぞっ、飛べ!」

バシュッ!!…ドッガアアァァァァ

サンドワーム「ブゴオオォォォォーッ!」

四方へ飛んだその中心部よりサンドワームが顔を出す。

女隊員「おい……っしょおおぉぉ!!」

格闘家「はあぁ!」

バギャッ!!…ドッズウウゥゥゥゥン!!

男隊員「誘導して出てくるタイミング合わせりゃ、楽なモグラ叩きだわな」

隊長「どっちかっつーと、ネズミ取りに近いけどな」

男隊員「ヒャハハ! 言えてる」

天才「おらおら遊んでねーでとっとと突破しろや」

格闘家「……了解」

隊長「西方司令部の連中はもう抜けたか。流石に早いな」

女隊員「見事ッスね!」


431 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:48:56.29 ID:IHIwTwCqo
ザザザザ…ズザァ

西方副司令「全員無事っ?」

西方兵「モチロンです。かすり傷1つありませんよ!」

西方参謀「逃げ足だけは天下一品だからな、俺達はよぉ……ヒック」

西方副司令「もう少し言葉を選んでくれる?」

西方参謀「事実は事実だろいっ。ヒ〜ック」

ズザザァ

隊長「おう、待たせたな」

青年兵「南側も抜けたようですね」

ドドッドドッドドッ…ズザァ

王子「すまん。遅れをしまったか?」

青年兵「いえいえ。こちらも今、抜けたところですよ」

天才「さーて、山の入り口だ。お前らがデカブツ見たってのは、ここで間違いねーよな?」

召喚士「ここです。間違いありません」

天才「当時と変わってる事は?」


432 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:49:54.21 ID:IHIwTwCqo
盗賊「……この風だな」

魔道士「ええ。あの時は何ともありませんでした」

王子「どうする? 砦で待機してる神官やサモナー達に連絡するか?」

天才「いんや、今日はお顔あわせだけだ。このまま行く」

青年兵「召喚士さん、飛べますか?」

召喚士「あ、うん。でもこの強風で大丈夫かな……?」

青年兵「実はそれを事前に試しておこうかと思いまして」

召喚士「なるほど。そういう事か」

青年兵「ですので無理な飛行はしません。難しいと判断した場合は、速やかに中止します」

召喚士「うん。分かった」

青年兵「司令、僕らは上空より突入してみます」

天才「おう、頼むわ。こっちは前衛に俺様と特遊と朱雀チームの奴ら」

王子「おいおい、西国は?」

天才「お前らはあくまでメインディッシュが仕事だ。前菜如きで地カワ使う必要もねぇ」

王子「……ほっほーう。なるほど、確かに言えてる!」


433 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:51:31.21 ID:IHIwTwCqo
ザッ

天才「そんじゃ行くぞー」

青年兵「召喚士さん、僕らも」

召喚士「ああ。行けっ、コカトリス!」

青年兵「出でよ、ワイバーン!」

シュイイィィィィン…バシュウウゥゥゥゥ

隊長「道は分かるか?」

盗賊「……ああ。割と平坦な1本道さ」

戦士「こんな所があったんだなぁ」

魔道士「あ、そっか。戦士さんは初めてですもんね」

戦士「そうなんだよ。俺が別行動してた時だもんなぁ」

女隊員「まだ日中なのに、森が覆い被さってて不気味ッスねぇ……」

盗賊「……前も言ったが、気が襲ってくるから気をつけろ」

天才「後ろも気をつけとけよー。そっち狙ってくっかもしれんぜ」

王子「りょーかい!」


434 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:52:25.95 ID:IHIwTwCqo
バシュウウゥゥゥゥ

青年兵「く……っ」

召喚士「凄い風だな……っ。青年兵くーん!」

青年兵「召喚士さん? いや、気のせいか」

召喚士「駄目だ……聞こえてないみたい。仕方ない」

シュイイィィィィン

シルフ「あのさ、いちいち伝令代わりに……」

召喚士「ごめんごめん、でもシルフしか頼れないんだ」

シルフ「……そ、それなら別に伝令してあげてもいいけどっ!」

召喚士「ありがとう。この先に青年兵くんがいるはずだから」

シルフ「うんっ、行ってくるよ!」

フワッ

コカトリス「この砂嵐、自然のものではないな」

召喚士「うん。魔王が起こしているみたい」

コカトリス「この高度ですらまだ上まで伸びている。果たしてどこまで伸びているのやら」


435 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:52:57.96 ID:IHIwTwCqo
召喚士「……行けるとこまで行ってみる?」

コカトリス「やめておけ。魔力の無駄だ」

召喚士「だよね。あとは迂回する……とか?」

コカトリス「迂回と言っても、どこまで迂回すれば良いのだ?」

召喚士「魔王の背後からなら仕掛けられるんじゃない?」

コカトリス「背後……更に西か?」

召喚士「……最西端の更に西って、何があるんだろう」

コカトリス「さぁ、私は存じぬ。それはお主が己の目で見てみたら良い」

召喚士「……そうだね」

ゴオオォォォォ…

青年兵「やはり無理があるな……っ。出来るとすれば……」

ワイバーン「おい、側面から何か来るぞ!」

青年兵「敵っ!? まさか――」

フワッ

シルフ「いよーっす!」


436 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:53:39.22 ID:IHIwTwCqo
ワイバーン「何だこの小者は。確か、朱雀のシルフだったか?」

シルフ「ちょっと失礼ねアンタっ!」

青年兵「召喚士さんから伝言ですか?」

シルフ「そうなのよ、参っちゃうわよね。ぷんっ!」

青年兵「は、はぁ。えっと……それで?」

シルフ「ああ、そうそう。アイツのとこまで案内するから付いてきて!」

青年兵「助かります。行こう、ワイバーン」

ワイバーン「やれやれ」

バシュウウゥゥゥゥ

シルフ「おーい! 連れてきたぞー」

召喚士「シルフ! ありがとう!」

シルフ「ぬふふんっ」

青年兵「すみません、視界が悪くはぐれてしまいました」

召喚士「こっちこそごめん。それで……どう?」

青年兵「どこも一緒ですね。易々とは突破出来ない、風の壁ですよ」


437 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/02(水) 17:55:24.96 ID:IHIwTwCqo
召喚士「……」

青年兵「ひとまず調査はこれで終えましょう」

召喚士「そうだね。このまま突き進んでも魔力の消費が激しいし……」

青年兵「何より魔王が襲ってくるとも限りませんからね」

召喚士「うん。魔王に至っては上空ですら安全ではないって実証済だからね」

青年兵「そうなんですよね。では引き返しましょう」

召喚士「うん」

コカトリス「では行くぞ」

バシュウウゥゥゥゥ…

ワイバーン「山の付近は風が弱いな」

召喚士「なるほど、山にぶつかって余計に上空の風が強まってるんだ」

青年兵「そうか……っ」

召喚士「でも大丈夫。地上なら地上でのやり方がある」

青年兵「……先日、司令とテストしていたという作戦ですか?」

召喚士「うん。まぁ楽しみにしててよ。きっとうまくいくよ!」



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