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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その39
- 65 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2012/05/17(木) 15:51:58.34 ID:lxDfhZsro
ヴヴヴヴヴヴヴヴ……
戦士「な……何の音だ……!?」
ベルゼブブ「どうした、その槍を投げぬのか?」
戦士「何をした……っ! どこへ行ったぁ!」
ベルゼブブ「勘違いするな。どこへも行ってはおらぬ。余は此処におる」
戦士「!?」
ベルゼブブ「まぁ、他の余は知らぬがな……フッ」
ヴヴヴヴヴヴヴヴ……
戦士「この……目障りな羽音は……」
ベルゼブブ「余の、もう1つの姿よ」
戦士「……蠅かっ!!」
ベルゼブブ「気づいたところで貴様にはもう何も出来ぬ」
戦士「何だとぉ!?」
ベルゼブブ「残された聴覚で断末魔の叫びを、じっくりと聞くが良いわッ!」
戦士「――!?」
- 66 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/17(木) 15:52:39.31 ID:lxDfhZsro
ヴヴヴヴヴヴヴヴ……
魔王ベルゼブブの肉体が一瞬の内に何千、何万匹という蠅へ姿を変えた。
蠅は闇夜へ広がってゆくと、魔王城の外へと流星群のように飛び交っていった。
戦士「てめぇ!! 何をしてやがる……っ!!」
ベルゼブブ「貴様にも味わわせてやろう」フォン!!
戦士「――!?」ズキィ!!
ベルゼブブ『……感じるか? 己の内部より迸る激痛を』
戦士「ぐあぁ……が……っ!」
ベルゼブブ『貴様の内部に侵入した余の一部が、心臓を貫き、脳を食らい尽くすのだ』
戦士「――っ!!」
激痛に身悶える戦士。触覚が残っていた事がこの時ばかりは悪条件であった。
そして戦士と同様の苦痛を味わう者らは、城外の平野へと大勢いた。
ヴヴヴヴヴヴヴヴ……
足軽「……蠅? しっしっ、亡骸を嗅ぎ付けてやってきた――」チクッ
華国兵「ん? どうした?」
- 67 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/17(木) 15:53:25.45 ID:lxDfhZsro
ズキィ!!
足軽「う……ごああぁぁ……っ」ザシャッ
華国兵「がっ、ああああぁぁぁぁ!!」ツツー
槍侶「そ、そなた達……如何したっ!?」
帝「何事じゃ!?」
王子「どうしたというのだ……っ、吐血しているではないか……っ!」
槍侶「分かりませぬ。私が見た時には既に苦しみ倒れて……」
王子「衛生兵と医者をっ!!」
竜騎士兵「ははっ!」ザッ
白虎兵「おいおい、何だってんだよ……くそ――」ズキィ!!
騎士団「な、何だ……? 急に胸が苦し――ぐがああああぁぁぁぁ!」ドシャッ
師匠「!?」
マジシャン「何がどうなってやがる……? 急に次々とぶっ倒れ始めたぞ……っ!?」
師匠「敵の気配はねぇ。てー事はだ……」
マジシャン「遅効性の攻撃か、もしくは……遠距離か」ザッ
- 68 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/17(木) 15:54:07.48 ID:lxDfhZsro
ヴヴヴヴヴヴヴヴ……
師匠「しっかし、さっきからハエがうぜぇなぁ……」
マジシャン「死体を嗅ぎ付けてきたんだろ。ったく、とんでもねぇ話だよ」
師匠「まるで地獄へ連れ去らっていくかのよう――」ズキッ
マジシャン「な……んだぁ……!?」
師匠「くぉ……っ、さっきから……これか……正体……っ!」
原因不明の痛みに一同はもがき苦しみ、そして叫びをあげる。
足軽「たっ、助け――あがああああぁぁぁぁ!!」
北方兵「ぐっるし……いぃ――」ドサッ
帝「何なのだこれは……っ、何かが……身体の中を這うような激痛が……っ」
名代「こっ、このままでは……まずい……っ」フラッ
この緊急事態にいち早く気が付いたのは師匠とマジシャンであった。
生存者を1人1人観察し、先程と周囲の相違を事細かに探っていたのだ。
師匠「マジシャン!」
マジシャン「分かって……る!」キュイイィィ……
- 69 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/17(木) 15:55:02.76 ID:lxDfhZsro
ピキイイイイィィィィン
マジシャン「がはっ、はぁ……はぁ……っ!」
師匠「思った通りだ……っ。結界張ったら楽になりやがった……っ」
マジシャン「これで確定だな。さっきの魔物の仕業じゃねぇ。リアルタイムのい攻撃だ!」
師匠「……どこだ……くそっ」
マジシャン「考えられる手段は何だ? 空気か? いや、もっと何か別の……」
ヴヴヴヴヴヴヴヴ……
マジシャン「!?」
師匠「ハエだっ!! ちくしょうがっ!!」ブンッ!!
マジシャン「おい……空を見てみろよ……っ」
師匠「――!? 何ぃ、なんつー数……」
マジシャン「追っ払える数じゃねぇ! 根本を断たねーと、どうしようもねぇぞ!」
師匠「……っ」
マジシャン「魔道兵ども掻き集めて結界作らせんぞ! 移動する!」
師匠「おう」ザザッ
- 70 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/17(木) 15:55:29.61 ID:lxDfhZsro
ヴヴヴヴヴヴヴヴ……
戦士「やめろ……やめろぉ!!」
ベルゼブブ「聞こえるだろう、断末魔の叫びが、阿鼻叫喚が」
戦士「く……そぉ!!」
現状を打破したい戦士ではあるが、視界が閉ざされ更には大量の蠅へと姿を変えた
ベルゼブブを捉える事は到底、不可能に近く、何も出来ずただもがくのみであった。
召喚士「…………」
五感を断たれた召喚士は、ただ脳裏に広がる暗闇の中を彷徨っていた。
召喚士(何も聞こえない……見る事も、感じる事もない……)
嗅覚が失われ呼吸もままならない。その為の息苦しさが召喚士を襲う。
召喚士(指先の感覚も……全身からも何も感じないや……)
自分が今、どんな状況なのか、何をしているのか、生きているのか。
それすらも分からない不可思議な状況で、ただ一筋の光を求めて彷徨う。
召喚士(……何だ……音……?)
幻聴か、はたまた自身が無音の中で作り上げたものなのか、
召喚士の脳に微かな音色が色付いていた。音は次第に、身体中へと染み渡る。
- 71 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/17(木) 15:56:13.82 ID:lxDfhZsro
召喚士(……暖かい……そして、優しい音色)
ピクッ
ベルゼブブ「……?」
召喚士「……っ」
魔道士「…………ぅ」
ベルゼブブ「可笑しな事が起きているな。絶対とは言わぬが、有り得ぬ事が起きている」
召喚士「……ぐ……っく」ノソッ
ベルゼブブ「五感を断ち、起き上がるなど……どういう事か」
戦士「召喚士……召喚士なのかっ!?」
召喚士「戦……士……っ」
ベルゼブブ「……ああ、そうか。そういう事であったか」
1匹の蠅がくるくるとその場を周回し、1人の男の下へと飛来した。
ベルゼブブ「貴様の仕業か。音で五感を取り戻させたな?」
詩人「…………」
男は無言のまま、音を奏でる事を続けていた。
- 72 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/17(木) 18:25:16.85 ID:lxDfhZsro
ヴ……ヴヴヴヴ……
白馬騎士「……っ?」
師匠「痛みが消えた……!? おいっ、これは……」
マジシャン「見ろっ! ハエが城へ向かってんぞ!」
帝「……っ。攻撃の原因はあれであったか」
名代「くっ、まさか魔王……
ヴ……ヴウ……゙ヴヴ……
東方司令「……っ?」ヨロッ
ジュニア「う……ぐぐ……っ」
大軍師(意識が……一体、何だったのです?)
ベルゼブブ「ふむ。余の力を封じ込めたか」
詩人「……」
ベルゼブブ「余に対する反逆か? その結末がどういう事になろうか、理解しているのか?」
詩人「……」〜♪
ベルゼブブ「フッ。覚悟の上か、良かろう……ならばもう、何も言うまい」
- 73 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/17(木) 18:25:59.61 ID:lxDfhZsro
召喚士(詩人……さん?)
ベルゼブブ「貴様の所業が余に対する反逆であるとすれば……」
詩人「……」
ベルゼブブ「貴様の愛しき者は未来永劫、奈落の底へと消えようぞ」
詩人「……っ」
戦士「何を……ごちゃごちゃと……」
ベルゼブブ「仕方ない」
蠅の群れが一塊となり、詩人の前へと集い始めた。
ベルゼブブ「余は、貴様の音楽をこよなく愛していた。だから貴様が望むものを与えた」
詩人「……」
ベルゼブブ「それは服従であり、貴様の身を守る術」
召喚士「……行けっ、座敷……童……」シュイイィィ
ベルゼブブ「だが貴様が余の下を離れるというならば、貴様の望みもその一切を返して貰うぞ」
詩人「――っ!?」ドクンッ
ベルゼブブ「貴様と、愛しき者へ与えたその生命、返して貰う」
- 82 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 17:57:11.84 ID:jgmQcEgyo
……――
少年は吟遊詩人になった。愛する者へ音を奏でるために。
詩人『……』
女『素敵な曲ね。名前はあるの?』
詩人『いや、特に決めてないよ。名も無きセレナーデさ』
女『そっかぁ』
本当は曲名も決めていた。でも照れくさくて言えなかった。
女『ねぇ』
詩人『ん?』
女『……おじさんも、きっと喜んでくれてるよね』
詩人『……ああ』
2人にとって、あの日の事は忘れようにも忘れられない出来事。
女『ねぇ、もう1回聞かせてくれる?』
詩人『君が望む限り、何度でも……』
あの日と同じ音色が今ここに、変わる事なく奏でられている。
- 83 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 17:57:49.85 ID:jgmQcEgyo
――……
〜♪
ベルゼブブ「もう1度言う。余は貴様の音楽を愛していた」
詩人「……」
ベルゼブブ「だからこそ貴様を生かしたのだ。もし余の下を離れると言うならば……」
詩人「僕は、愚かだった」
ベルゼブブ「……」
詩人「彼女をどうしても、せめてもう1度だけでも会いたいという一心で……」
召喚士「……?」
詩人「悪魔に魂を売り渡してしまったんだ。本当に愚か者だった」
ベルゼブブ「愚か? 余に服従する事が愚かとでも申すか?」
詩人「愚かだったよ。それが例え、僕の音楽を愛してくれたとしても」
ベルゼブブ「ほぉ」
詩人「1度、失った命を再び手に入れようなんて、どんな理由であれ駄目なんだ」
召喚士「詩人さん……っ」
詩人「僕はそれに気づくまで、沢山の人達を傷つけてしまった」
- 84 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 17:58:23.51 ID:jgmQcEgyo
戦士(……視界が戻った。何だったんだ……くそっ)ボヤー
ジュニア「……あい……つ」
ベルゼブブ「それで貴様は改心し、余を裏切ろうと考えたわけか」
詩人「……」
ベルゼブブ「いや違うな。貴様は最初からそれを狙っていた」
詩人「ベルゼブブ。あなたが僕の音楽を評してくれた事には感謝するよ」
大軍師「……っ」ヨロッ
詩人「お陰で、常にあなたの傍に居る事を許されたからね」
ベルゼブブ「そして貴様は、今日のような日をただずっと、待っていた」
詩人「……」
ベルゼブブ「余の下まで到達出来る人間を、余を討てる人間が来る事を待っていた」
詩人「そうさっ。だからこそあなたから不死の力を得て、ただずっと……待っていたんだ」
召喚士「そうか……っ、詩人さんは人間を裏切ったわけじゃなくって……」
青年兵「ベルゼブブの思惑を逆手に取り、それを利用する事で倒す機会を待っていたんだ」
詩人「……」〜♪
- 85 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 17:58:50.67 ID:jgmQcEgyo
ベルゼブブ「……余の力を封じるとは。初めて聞く曲だな」
詩人「ああ、あなたの前で奏でるのは初めてだ」
ベルゼブブ「何と申す?」
詩人「曲名は『魔王』。あなたの傍に居た事で作り上げた曲さ」
ベルゼブブ「だからか。余の力のみを封じ込める効果を感じられるのは」
詩人「ずっと見てきた。だからこそあなたの動き、全てを封じられる」
〜♪
青年兵「これが……たったの1人の奏でる音楽なのか……っ」
皇太子「どういう事だ。まるで幾つもの楽器や……歌までが聞こえてくるではないか」
詩人「あなたには感謝しているよ。音楽を評してくれた事は真意だけじゃない」
ベルゼブブ「……:」
詩人「いち吟遊詩人としても、評価してくれた事には感謝しているっ!」〜♪
ベルゼブブ「ハッハッハッハッハッハッ」
詩人「……?」
ベルゼブブ「詩人よ、貴様は何か勘違いしておらぬか?」
- 86 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 17:59:29.34 ID:jgmQcEgyo
詩人「……どういう事だ」
ベルゼブブ「貴様は余を知ったと申していたな」
詩人「……」
ベルゼブブ「余を知る? 人間が? ましてやたかが数百年でか?」
詩人「っ!?」
ベルゼブブ「笑わせるな。余を推し測る事などまかりならぬ。何千年かかろうとな」
召喚士「まずいっ!」
ベルゼブブ「余の力を抑えられるなどと、甚だしいにも程があるぞ」ゴアッ!!
詩人「――っ!!」
大量の蠅の中から左手がすっと伸びた。その左手は詩人の前へ
突き出すように伸びると、詩人の音色が一瞬、ぎこちなく揺らいだ。
詩人「……っ」
蠅は次第に左手だけでなく、人間のような形を模してゆく。
先程まで対峙していたした魔王ベルゼブブの姿である。
ベルゼブブ「さあ、命を返して貰おうか」
- 87 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 17:59:57.82 ID:jgmQcEgyo
詩人は苦しむように顔を歪める。そしてその顔は次第に青年のものから老人へと移り変わる。
魔道士「っ!?」
ジュニア「ど、どうなんてんだぁ!?」
大軍師「不死を取り上げられているのでは……」
戦士「何!?」
大軍師「命が急速し、終わりへと進んでいるのです……っ」
盗賊「!?」
召喚士「詩人さん!」
詩人「来るな」
召喚士「!?」
詩人「演奏の最中だ……邪魔を、しないで貰いたいな……っ」
ベルゼブブ「どんな事があろうとも演奏を止めない。一流の証だな」
東方司令「何が……一流だっ!!」
詩人「いいんだ。ベルゼブブに通じないと分かった今、僕の役目は……終わったんだ」
召喚士「……っ」
- 88 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:00:29.16 ID:jgmQcEgyo
ベルゼブブ「貴様の申す通りだ。もう生きる価値はない」
召喚士「ふざ……けるなっ!!」ザッ
ベルゼブブ「何が出来る?」
召喚士「何……っ?」
ベルゼブブ「貴様の残された余力で、何が出来ると言うのだ」
召喚士「やってみなくちゃ分からないさ!!」
ベルゼブブ「……愚かな」
テッテッテッテッ
座敷童子「ぬふふっ」テッテッ
ベルゼブブ「……?」
盗賊(座敷童子? このタイミングで何故……)
召喚士は五感が回復したと同時に座敷童子を召喚していた。
ベルゼブブ「召喚獣か? なんだこの脆弱なものは」
座敷童子「脆弱とは失礼なっ! ぷん!」
ベルゼブブ「……消え失せろ」フッ!!
- 89 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:00:59.21 ID:jgmQcEgyo
座敷童子「――――っ」
ボウウゥゥゥゥン!!
ベルゼブブ「!?」
座敷童子の能力、それは自分が消滅すると、己を使役した者をその場に呼び寄せる。
ベルゼブブ「何……ッ」
つまり、不意を衝いて敵の懐に飛び込む事が可能となるのであった。
召喚士「行けぇーっ! コカトリスー!!」
シュイイィィィィン
ベルゼブブ「――ッ!」
コカトリス「この距離だ。かわせるはずもない」
青年兵「ゼロ距離コカトリス改……っ!!」
突如目の前に現れた召喚士。そしてその直後に召喚されたコカトリス。
ベルゼブブはそれらを対処する間もなく、突撃してきたコカトリスに成す術なく貫かれた。
ドッゴアアアアァァァァ!!
ベルゼブブ「――ッ」ミシミシッ……ピキッ
- 90 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:01:43.54 ID:jgmQcEgyo
戦士「おっしゃあ! 魔王を石化させたぞ!」
魔道士「す、凄い……っ」
ピキキッ……ミシミシミシミシッ
召喚士「はぁ、はぁ……ど、どうだ……っ」
ベルゼブブ「やるではないか。余を戸惑わせるとは大したものだぞ」
戦士「石化してる分際で何を強がってやがる!」
召喚士「いや、この程度じゃ致命傷にもならない……」
ベルゼブブ「よく分かっているではないか。己を理解する事は進化に必須であるぞ」
盗賊「いちいち癇に障る奴だな」
召喚士「あと少し……魔力があれば……」
コカトリス「無駄だろうな」
召喚士「……っ」
コカトリス「奴を見てみろ。胸部から上は一向に石化する気配がない」
魔道士「ほ、本当だ……」
コカトリス「奴の言う通り、ここまで石化出来た事が既に、大健闘という事だ」
- 91 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:02:55.25 ID:jgmQcEgyo
召喚士「……くそ……っ」
ベルゼブブ「まだ何かあえるのか? なければ時間の問題ぞ」
召喚士「……せめて……詩人さんを」
ジュニア「分かってる!」ダッ
詩人「……」
ジュニア「もういいっ! しっかりしろ!」
詩人「無念だよ……」
賢者「……」ザッ
詩人「指に力が入らない……完奏出来ないなんて……ね」
ジュニア「回復は!?」
賢者「……無理だね、これは傷によるものじゃないよ……ふぅ」
ジュニア「……っ」
賢者「寿命によるもの……それは抗う事なんて出来ない……ふぅ」
詩人「この日を……どれだ……け、待ったか……」
ジュニア「おいっ!!」
- 92 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:03:25.28 ID:jgmQcEgyo
詩人「……いや、もっと早く……すべきだった……っ」
ジュニアの腕に抱えられた男は、もうかつての面影など全くなく、
急速に痩せこけ、皮が弛み、頭髪が抜け落ちていった。
ジュニア「馬鹿野郎っ! アイツは……メガネはなぁ! お前を信じて……お前の為にっ!」
詩人「眼……鏡……」
ジュニア「死んだんだぞぉ!!」
召喚士「え……っ?」
魔道士「眼鏡さんが……死ん……だ……?」
ジュニア「ああ、死んだ! ここまでの道を作るために、身を犠牲にして……」
戦士「嘘だろ……」
ジュニア「門をこじ開ける為に!! 魔王を倒す為にっ!!」
盗賊「……くっ」
召喚士「死んだ……眼鏡さんが……? だって……ついこの前だって……」
詩人「……」
召喚士「そんな……そんなのって……」
- 93 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/18(金) 18:03:52.50 ID:jgmQcEgyo
ゴゴゴゴゴゴ……
ベルゼブブ「……?」
詩人「眼鏡……そうか……ならば、願わくばせめて……」
ジュニア「!?」
詩人「僕は……彼の……下……へ……」
ジュニア「くそっ、しっかりしろよおいっ!!」
詩人「命……尽きようと……も……」
召喚士「っ!?」
詩人「届け……最後の……歌……」
召喚士(な、何だこの感じ……っ、勝手に魔力が……吸われて……)
シュイイィィィィン
召喚士「――!?」
ベルゼブブ「それが奥の手か?」
戦士「……召喚士っ、何だ……それは……っ」
召喚士「俺じゃないっ!! 勝手に召喚――」
ケツァルコアトル「……よぉー元気そうじゃねぇの。うははっ!」
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