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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その36
965 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:15:19.56 ID:zYfY9ksBo
 ザアアアアァァァァ……

魔法剣士「……」

 うつろな目で空を眺めていると、降り注ぐ雨の滴がはっきりと分かった。

 泥に塗れ、激痛を伴い、意識も朦朧とする中、仰向けに地べたへ転がる。

 ……ああそうだった。魔物に攻撃を食らって、吹っ飛ばされたんだっけ。

 ちっ、またあの夢か。これでもう何度目になる事やら……。

 いつになったら見なくなるんだろうか。この悪夢は。早く、早く覚めてくれ。

……――

父『……逃……げ…ろ…』

母『……』

妹『ママーッ! 起きてーっ!! 足が痛いよぅ……!』

魔法剣士『父さん!! 母さんっ!! い、妹……っ!!』

オルトロス『グルオオオォォ!!』

魔法剣士『みっ、みんなぁ…!! やめて! もうやめてよぉー!!』

妹『ママーッ!! お兄ちゃ――』


966 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:16:29.18 ID:zYfY9ksBo
 グシャアァァッ!!

魔法剣士『――!!』

オルトロス『オオォォォォ!!』

 僕を納屋へ隠してくれた隣のお姉ちゃんが、化物に食べられる光景が見えた。

 狼のような複数の頭部と巨大な全身は真っ赤に染まり、大きな遠吠えを上げる。

 でも、もう1匹の魔物が、追い払ってくれたんだっけ……。

オルトロス『……邪魔をするな。ケルベロス』

――……

オルトロス「……邪魔をするな。ケルベロス」

眼鏡「……」

魔法剣士「……眼……鏡」





 ありがとう眼鏡。俺は君を……忘れない――――。



967 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:17:12.14 ID:zYfY9ksBo


 召喚士「行けっ!コカトリス!!」

    〜第五十九部〜


968 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:18:09.47 ID:zYfY9ksBo
〜川中島、本陣〜

三男「……っ」

青龍士官「三男陛下。小雨が降ってきました。屋根のあるこちらへ……」

三男「ここで構わぬ。皆が勇敢に戦っているというのに、私1人、雨宿りなど出来ません」

青龍士官「……分かりました。ではせめて傘を立たせましょう。おい」

 ザッザッ……バサッ

伝令「ご報告致します! 北関より研究機関、間もなくこちらへ到着の模様っ」

青龍士官「北方司令部からの資材は?」

伝令「白虎の別働隊とワーカーがあたっております。こちらももう間もなく到着かと」

青龍士官「分かった。竜騎士隊、動けるものは交代で空から周囲の警戒にあたれ」

 ザッザッザッ

騎士団長「う、動きはどうだ……?」

青龍士官「騎士団長っ!? 大丈夫なのですか?」

騎士団長「先程も申したであろう。寝ている場合などではない」

青龍士官「し、しかし……」


969 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:18:45.26 ID:zYfY9ksBo
三男「騎士団長殿、私からも頼む。傷を癒し、然るべき舞台において戦って頂きたい」

騎士団長「お言葉ではありますが、私にとって然るべき舞台などありませぬ」

三男「……」

騎士団長「私にとっては、大小関係なく、どんな戦場であっても然るべき舞台なのです」

三男「成程」

騎士団長「ですから、戦場に居る限りは、休む暇などないと言う事であります」

三男「承知致しました。ならば、私の傍を片時も離れぬように」

騎士団長「有り難きお言葉。では早速、準備をしてまいります」ザッザッザッ

青龍士官「宜しいのですか?」

三男「目の届かぬ所で無理をさせるくらいならば、傍に居てくれた方が良いでしょう」

青龍士官「確かに。それでは、お任せ致し――」

 ドオオオオォォォォン!!

青龍士官「な、何の音だ!?」

竜騎士兵「東側のようですっ!」

青龍士官「急ぎ、状況確認しろっ!」


970 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:20:40.30 ID:zYfY9ksBo
〜川中島、本隊〜

老将軍「何が起きているのじゃっ!」

青年兵「戦況報告っ!」

北方兵「魔王軍っ、東側より出現!!」

白馬騎士「何!? 東だけなのか!?」

大軍師「……おかしいですね」

青年兵「偵察に出ますっ! 出でよ、ワイバーン!」

 シュイイィィィィン……バシュウウゥゥゥゥ!!

青年兵「……っ!!」

 ドドオオオオォォォォ……

青年兵「な……んだっ、これは!!」

ワイバーン「大した数だな」

青年兵「急いで引き返すんだ!」

ワイバーン「忙しいな、全く」ゴウッ!!

青年兵「くそ……っ、魔王軍め……!!」


971 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:21:22.73 ID:zYfY9ksBo
 バシュウウゥゥゥゥ……ザザッ

大軍師「如何でした?」

青年兵「やられましたっ!」

大軍師「やはり……っ」

剣士「どういう事ですか!?」

大軍師「魔王軍はここ、中央と西側を無視し、全軍を以って東側に侵攻したのです」

弓使い「――っ!?」

青年兵「その通りです。上空から見る限り、その数はラーヴァナ軍にほぼ匹敵します」

大軍師「ざっと20万といったところでしょうかね」

老将軍「どうするのじゃ!?」

青年兵「本隊を動かすにしても時間が掛かりすぎる……」

大軍師「それに、敵の姿がないとはいえ、中央を空けるのはやはり難しいですね」

青年兵「機動力のある精鋭……」チラッ

剣士「……?」

青年兵「剣士さん、南東国の皆様……っ、お願い出来ますか?」


972 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:21:59.98 ID:zYfY9ksBo
白馬騎士「東側への救援ですな。お任せ下さいませ」ジャキッ

老将軍「ようやく働き甲斐のある仕事が回ってきたわい!」

白馬騎士「華国の諸君、いざ参るぞ!!」

華国兵「おおぉぉぉぉーっ!!」

 ズゴゴゴゴゴゴゴ……

青年兵「物凄い威圧だ……っ」

剣士「南東国の特色はこの威圧と南方馬に勝るとも劣らない騎馬ですからね」

青年兵「剣士さんもどうか、お気を付けて。頼みます!」

剣士「ええ、ありがとうございます。それじゃ行くよ、弓使い、幼女!」

弓使い「ええっ、行きましょ!」

幼女「援護なら……私に任せてっ」ドドッドドッ……

大軍師「志願とは言え、心が痛みますか?」

青年兵「……っ。まさか、一時の感情に流されては、大戦には勝てませんよ」

大軍師「おや、無用な心配でしたか」

青年兵「sてと、お次は……」


973 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:22:40.85 ID:zYfY9ksBo
 ドドッドドッドドッ

伝令「陛下よりお伝えいたします! 遊軍、東側へ出るかどうかご指示をとの事!」

青年兵「難しいな……。大軍師殿、ご助言を頂けますか?」

大軍師「恐らくですが、動かす必要はないかと」

青年兵「根拠は?」

大軍師「……」スッ

青年兵「西……ですか?」

大軍師「西に布陣する西国。無視されてこのまま黙っているとは思えませぬ」

青年兵「……確かに」

大軍師「恐らく、真っ直ぐ東へ進むでしょう」

青年兵「なるほど。そこに西方司令部と白虎先生率いる白虎隊が加われば……」

大軍師「遊軍は動かさずとも、背後から魔王軍を捉える事が出来ます」ヒラヒラ

青年兵「もし空いた西側に魔王軍が迫るようであれば、遊軍を回せば良い……」

大軍師「そういう事になりますね。ふっふっふ」

青年兵「あなたが居てくれて、本当に頼もしい限りですよ……っ」


974 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:23:17.72 ID:zYfY9ksBo
〜川中島、西側〜

王子「…………」

西国兵「陛下……東側で戦闘が始まった模様です……」

王子「いちいち言わずとも、このような高地に居れば目視出来る」

西国兵「は、はい……っ」

王子「つまり、こちらからもあちらからも丸見えと言う事だ」

西国兵「は、はい」

王子「敵の目にも目立つように、わざわざこのような布陣を敷いたのだ」

 ワナワナワナ……バキィ!!

王子「……分かっていながら無視するとは、ナメた真似をしてくれる!!」

西国兵「陛下っ、気をお静め下さいませ!」

王子「この状況でぇ、冷静になどなっていられるものかぁ……!!」

 ゴゴゴゴゴゴ……

王子「全軍……我に続けええぇぇ!!」ドウッ!!

西国兵「し、出陣ーっ!!」ドドォ……


975 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:23:48.01 ID:zYfY9ksBo
〜川中島、本隊後衛〜

エリート「西側の西国が動きましたね」

皇太子「ああ。我らも勢いに乗じて、続くとしようか」

エリート「いえ、それはなりません。西側が動いたからこそ、我らはここに留まる必要があります」

皇太子「魔王軍が伏兵を仕掛けてくると?」

エリート「可能性が0ではありませんので」

皇太子「……」

 ドドッドドッドドッ……

伝令「前衛より伝令ですっ。遊軍はこのまま待機との事っ!」

エリート「青年兵や大軍師の意見も同じようですね」

皇太子「歯痒いが止む無し。我らはこのまま戦況を見極める」

 ポツポツポツ サアアァァァァ

皇太子「……本格的に降ってきたな」

エリート「長雨が続いて足場が悪くなれば、こちらが不利になりますな」

皇太子「兵力、戦場において不利なのに天候にも恵まれずか。天地人とはよく言ったものだ」


976 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:24:21.07 ID:zYfY9ksBo
〜川中島、東側〜

 ワアアァァァァ……

南方司令「何が起きた……?」

南方副司令「ええいっ、浮き足立つな!」

スケルトン「死ね死ね死ね死ね――」

 ザシュウウゥゥゥゥ!! ガシャッ

東方司令「これはどういう事だ」

女剣士「なんて数だっ、くそ……っ!」

 タタタッ……スタン

くの一「戻りましたっ」

女剣士「どうだった?」

くの一「とてつもない数です……っ。この先、ずっと敵の姿が続いております!」

東方参謀「とは言っても、最前線のここが崩れれば後方に敵が雪崩れ込む」

東方司令「そんな事は分かっている。四の五の言っていないでさっさと魔物を倒せ!」バシュッ

東方参謀「やっておるわ!」ドゴオオォォォォン!!


977 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:24:59.50 ID:zYfY9ksBo
 ドドッドドッドドッドドッ

帝「前方の東方司令部が魔王軍と衝突しただと?」

名代「かなりの数が居るようです。急行致しましょう」

帝「南方司令部の動きは?」

名代「更に東側より回り込んでおります。なにせ、敵の数が多く戦線が長いようで」

帝「一ヶ所を突破しても混乱は与えられぬ……か」

旗本「如何なさりますか?」

帝「こちらも寡兵だ、大軍にあたったところで泡のように消えるは必死」

旗本「固まって……突撃ですか?」

帝「総本山の連中が居れば、一枚岩として奮闘出来るであろう?」

名代「それでもかなり、危険は伴いますぞ」

帝「その為の式神であろう。しっかり頼むぞ名代殿っ」ガカッ……ドドッドドッ

名代「上様っ!」

旗本「う、上様に続けぇっ! 遅れを取るなぁ!」ガカッ

帝「楽に行かぬのは百も承知の上。皆を信じてぶつかるのみじゃ……っ!」


978 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:25:35.25 ID:zYfY9ksBo


ジュニア「んっ?」

 ドドオオォォォォン!! ザンッ!!

魔法剣士「あれは、西国の召喚獣か」

眼鏡「このまま魔王軍に突撃するつもりらしいね」

ジュニア「どうする? 俺らは西国に続くかそれとも……本陣に戻るか」

魔法剣士「本陣は狙われていないようだし、問題はないだろう」

賢者「そうだね……ふぅ」

ジュニア「んじゃ、このまま突っ込むとすっかね」

眼鏡「あれだけ魔族が出たんだ。逆に考えれば、魔王城は今や手薄という事になるね」

ジュニア「ピンチは最大のチャンスってか? ハッハ――」

 ガカアアァァァァッ!!

ジュニア「何だぁ!?」

魔法剣士「落雷……いやっ、違う!」

眼鏡「この威圧……っ、ま……まさか……っ!!」バッ!!


979 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:26:35.08 ID:zYfY9ksBo
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

青龍士官「何事だ!!」

国軍兵「あ……あぁ……っ」

 突如、川中島の本陣頭上に発生した落雷のような光。

 雨の降りしきる上空を見上げる兵らは、そこに腕を組んで佇む魔物の姿を目にする。

 魔物の凶悪で、残虐で、慈悲のかけらも無い威圧は、彼らに震えと嘔吐を誘う。

国軍兵「ぐ……おえぇ……っ!」ビチャッ

工兵「あ……か……はっ」ガクガク

三男「な、何が起きているのだ……っ」

 周囲の雨が黒く染まる。待機が震え、雨粒は落下の速度を弱め、

 次第に空中で静止し、重力の法則を無視し、再び上空へと舞い上がってゆく。

 空高く、黒い雲は渦を巻き、魔物の頭上で巨大なエネルギーを生み出す。

青龍士官「退避ーっ!! 築城作業をやめて逃げろおおぉぉ!!」

 響き渡る怒号と叫び。悪魔の雷が雨雲を切り裂き、地面へと落ちた。

ベルゼブブ「無力なる人間共よ。余の力、その身で味わうが良い」


980 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 18:27:17.95 ID:zYfY9ksBo
本日もご支援ありがとうございます!当方、大変感謝致します
それではひとまずここまでにて失礼致します!ノシ


984 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/02/17(金) 19:56:10.13 ID:qkEAP7GSO
>>1乙!

ここまで精鋭がそろってんのに久々の絶望具合だな


985 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/02/17(金) 20:03:39.90 ID:eg5ac/zJo
いつも絶望さ


990 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/02/17(金) 20:39:26.99 ID:fg0xTyxjo
これがテヘペロジェノサイドの序章だというのか・・・


991 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 21:36:31.52 ID:JXSpWCZKo
あぶないあぶない。すっかり忘れてました!

37スレ目とか頭がおかしくなって死ぬ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1329482009/

では次スレでもよろしくジェノサイド☆テヘペロ!ノシ


992 名前:NIPPERがお送りします [sagesaga] 投稿日:2012/02/17(金) 21:40:57.67 ID:KhPURCRTo
>>1乙!
yes!!ジェノサイド☆テヘペロ


993 名前:NIPPERがお送りします(長屋) [sage saga] 投稿日:2012/02/17(金) 22:24:32.92 ID:0CH2rxgfo
>>1乙

ジェノサイド!ジェノサイド!

さあ、血祭りだぜ~殺るぜ~超殺るぜ~


994 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/02/18(土) 00:17:54.31 ID:sKoEAZG80
>>1テヘペロ☆ジェノサイド


1000 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/02/18(土) 00:45:35.74 ID:m0NNPZaSO
1000



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