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少女「ねえ、またいつか」
- 26 名前:VIPがお送りします []
投稿日:2011/06/13(月) 04:39:21.35 ID:tSQVz1JC0
次の日
女「ねえ」
僕「んっ?」
女「どうして今日のお昼休みの時、サッカー誘われたのに断ってたの?」
僕「……見てたんだ
女「せっかく誘われたんだからみんなで一緒に遊べばいいのに」
僕「苦手なんだよ、サッカー」
女「運動嫌いだっけ?」
僕「体を動かすのは好きだよ。でも……」
僕「ボールを蹴るのってがすごい苦手なんだよ……」
- 27 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 04:48:28.92 ID:tSQVz1JC0
女「そうなの?」
僕「うん。ボールがあるだけで全然上手く走れなくなって……嫌になるんだよ」
僕「普段はそれなりに速く走れるから、余計にね」
女「ふーん……くすくす」
僕「?」
女「君の話を聞いてたらさ」
女「なんだか、ちょっと私も運動したくなっちゃったよ」
僕「マジ?」
女「走ろう。ね?」
- 28 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 04:56:50.49 ID:tSQVz1JC0
僕「は、走るってここで?」
女「そうだよ。草原だからおもいっきり走れるよ!」
僕「……ただ走るだけ?」
女「んー……じゃあつまらないか」
女「あ、だったら鬼ごっこにしよっか?」
僕「二人だけで鬼ごっこ?」
女「もうっ、さっきから文句が多いよ! まったく……」
僕「ご、ごめんごめん」
女「あはは、もしかして本当は走るの自信無いから文句ばっか言ってるー?」
僕「むっ……そんな事」
- 29 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:02:32.13 ID:tSQVz1JC0
女「あはは、だったら私を捕らえてみなさーい」
僕「あっ! ま、待っ……早いって。いきなり!?」
女「あはははー……」
僕「ぐっ、よしっ。待てって!」
女「おっ、速い速いー。さすがに言うだけの事はー……」
僕「……はい、タッチ」
女「っえ? もう!?」
僕「君、あんま速くないねぇ」
女「ええぇ……女子の中じゃあマラソンは得意なのにぃ……」
- 30 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:08:16.80 ID:tSQVz1JC0
僕「マラソンなら、最高速度がすごいってよりは長く走れるって感じでしょ」
ぽんぽん。
女「肩ぽんぽんしないでよっ! うぅ……悔しい」
僕「はは、もう一回走る?」
女「……ちょっとスピード落としてよ」
僕「それじゃあ鬼ごっこにならないよ」
女「ダメかな? 一緒に長く走れたらって……ちょっと思ったんだけどさ」
僕「ん、なに。マラソンしたいの?」
- 31 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:14:15.05 ID:tSQVz1JC0
女「ううん。違うの……なんて言えばいいのかな」
女「えっとね、速く走ると私はすぐつかまっちゃうでしょ? すぐに鬼ごっこが終わっちゃうの」
僕「僕より速く走ればいいんだよ」
女「もう、茶化さないでよ! 出来たらとっくにしてますよーだ!」
僕(からかうのも面白いな)
僕「……まあいいや、それで?」
- 32 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:16:03.96 ID:UWHvVhNn0
もしかして「つかまえて」の人?
- 33 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:17:30.00 ID:tSQVz1JC0
女「……おほん」
女「すぐに終わっちゃう鬼ごっこだけど、でもね。二人が終わらないように、ずっと走っていれば……」
女「いれば……」
女「……」
僕「……?」
僕「どうしたの。いきなり黙っちゃって」
女「……」
女「ううん、なんでも」
女「なんでもない、よ」
- 35 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:21:42.04 ID:tSQVz1JC0
僕「ええっ! 途中まで話してそれは無いよー!」
女「……だって」
僕「……だって、なに?」
女「こんな事言ったら、笑われるかもって思っちゃったから……つい」
僕「?」
僕「言おうとしたのは、そんなに変な事なの?」
女「……多分」
僕「なんだろう、そこまで言われると逆に聞きたくなってくるなー」
女「笑うから、やあよ」
僕「笑わないよ」
- 36 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:25:58.03 ID:tSQVz1JC0
女「……嘘」
僕「本当。笑いません」
女「……本当?」
僕「うん」
女「じゃあ、話す」
僕「聞く聞く」
女「んとね、とにかく私が言いたかった事は……」
女「一緒にずっと走り回っていたら、鬼ごっこは終わらないでいて……」
僕「うん」
女「……」
女「ずっと、この場所で」
女「子供のまま、遊んでいられるのかなあって思って」
女「……うん。そう思ったの」
- 37 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:30:11.71 ID:tSQVz1JC0
僕「……くす」
女「!!」
僕「ふ、ふふっ。あはは、なんだよそれー」
女「わ、笑ったな! ほら笑ったな!」
僕「だ、だってさ。いつまでも遊んでられるって……くくっ」
女「もうっ! だから絶対に言いたくなかったのに!」
女「君の事なんてもう知らないから……!」
僕「え、あっ、ちょっ。待ってよ」
女「ふーんだ」
……。
僕「……」
僕「行っちゃった」
- 39 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:33:13.42 ID:Jute2hcu0
泣きたくなってきた
- 40 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:36:00.71 ID:tSQVz1JC0
僕「……しっかし。あんな事を言われるなんて思わなかったなぁ」
子供のままで、ずっと。
僕「……」
僕「小学校を卒業したら、中学校に行ってさ」
僕「それから高校生になって、働くかまた学校に行って」
僕「……」
僕「ほら」
僕「ずっと子供でなんか、いられるわけないじゃんか……」
僕「それを笑って、何が悪いんだよ」
僕「そんな子供みたいな願い事言って、どうするんだよ君は」
僕「……どうしたいんだよ」
僕「……」
- 41 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:43:55.88 ID:tSQVz1JC0
僕「……あ」
僕「また夕焼けだ。綺麗だな」
僕「でも……やっぱりなんだか」
僕「なんだか」
僕「……」
女「寂しいなー、ってか?」
僕「!?」
女「あっはっは、そんなに驚いた顔でビクンとしなくても。もしかして図星だったからかな?」
僕「……また、帰ってなかったんだね」
女「いやあだってー。二日連続でまた、変な背中が見えたからさー」
僕「帰ってないんじゃんか」
- 42 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:52:25.52 ID:tSQVz1JC0
女「一人で帰るのはさ」
僕「?」
女「お互いに寂しいかなって思って、それで」
女「……それで、戻ってきちゃった」
僕「……」
女「あはは、せっかくお家近いんだからさ」
女「とりあえず、一緒に帰ろうよ?」
女「ねっ?」
僕「……」
僕「とりあえず、だからね」
女「うんっ!」
- 44 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 05:58:02.28 ID:tSQVz1JC0
僕(喜びながら返事をした彼女のその表情は、夕焼けの光と一緒に)
僕(帰りたい、ではなく……一緒に帰れる嬉しさに溢れた、そんな顔をしていた)
女「あれ、なんか君嬉しそうな顔してるねー」
女「そんなに一緒に帰れるのが嬉しかったのかなっ?」
僕「そう言う君の顔だって……なんだか笑ってるみたい」
女「私の顔はきっとね……」
僕「きっとなに?」
女「きっと」
女「えへへ、君と同じような表情をしながら多分……」
女「笑っているよっ!」
- 45 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 06:03:19.22 ID:tSQVz1JC0
夜
僕「……」
僕(眠れない)
僕(なんだかドキドキする……)
僕(女ちゃんの表情が、あれからずっと頭に浮かんでいて)
僕(……しかもあんな約束までしたからだ)
僕「……」
女『ねえ、今度のお休みにさ。一緒にお出かけしようよ?』
- 46 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 06:08:57.83 ID:tSQVz1JC0
僕「お、お出かけ!?」
女「そ。ちょっと一緒にぶらぶら歩けたらなーって思ったんだけど」
女「あ、もしかして休みの日は忙しい?」
僕「そ、そんな事はない……けど」
僕(もしかして、これはデートのお誘い……なのかな?)
女「あはは、よかったー。じゃあ細かい時間とかは週末が近くなったら決めよっか」
女「それまでは、ちゃんと学校裏の原っぱに集合だかんね?」
僕(……デート)
- 48 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 06:19:32.07 ID:tSQVz1JC0
……。
僕(デートかあ)
僕(でも一体、どこに行くんだろ……)
僕(一緒にぶらぶら歩けたらって言っていたけど)
僕(……)
僕(まあ、明日彼女に聞いてみればいいか)
僕(どっちにしろ週末にはわかるんだから、焦る必要もないし)
僕(ふふっ……)
僕(おやすみなさい、女)
僕(明日もまたあの場所で走り回って……)
僕「……」
僕「くぅぅ……すぅ……」
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