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少女「私が……魔王?」
- 71 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga]
投稿日:2011/04/01(金) 13:48:42.12 ID:YZbjmkcXo
― 魔王城 魔王の執務室 ―
少女「よっ、と」シュオンッ
少女友「うわわわ」
少女「はい、とうちゃーく♪」
少女友「ここが、魔王城?」
少女「うん。私の執務室だよ」
少女友「やっぱり、怪物とかばっかりなの?」
少女「見た目は少し怖いけど、みんな優しい良い人ばっかりだよ」
少女友「でも、人間を襲ったり殺したりしてるって」
少女「攻撃されれば、ね」
少女友「どういうこと?」
少女「専守防衛って知ってる?」
少女友「攻撃されない限りは、って事?」
少女「うん。本来の意味は自国内で、っていう言葉がつくけど、人間界に行ってる斥候達には自分が攻撃を受けない限りは人間に手をだしちゃダメっていいつけてあるの」
少女友「なんで?」
少女「なんでって……無差別に殺したいだなんて思ってないもん」
少女友「戦争、なんでしょ?」
少女「そうなる、かな」
少女友「あんたは……相変わらず優しすぎるくらいに優しいのね」ニコッ
少女「そんなこと、ないよ。斥候に出てるみんなの中には死んじゃった人もたくさんいるもん。私はみんなに死んで来てって言ってるようなものだよ……」シュン
少女友「少女……」
メイド長「ですが、皆その覚悟を以って魔王様にお仕えしているのです。魔王様の為に死ぬのならば本望でございます」
少女友「メイド長先生」
メイド長「もう先生ではないですよ。いらっしゃいませ、少女友様」
少女「あ、あのっ」
メイド長「わかっております。魔王様のご親友の少女友様はいわば我々にとってはお客様です。歓迎いたしますわ」ニコッ
少女「ありがとうございます」ペコリ
メイド長「ですから頭を下げないでください。魔王様なのですから」
少女友「あっ、あはははっ」
少女「ふぇ?」
メイド長「この調子ですからね」クスクス
少女「んぅ?」
- 72 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:49:41.69 ID:YZbjmkcXo
メイド長「それはそうと、軍議をすっぽかされたのは駄目ですよ」メッ
少女「ぁぅー、ごめんなさい……獣王さん、怒ってましたよね?」
メイド長「心配しすぎて心労で倒れそうになってます」
少女「うなー、すぐ行ってきますっ!」タタタタタ
メイド長「本当に……」ハァ
少女友「えっと、私はどうすれば……?」
タタタタタ
少女「忘れてたっ。メイド長さん、少女友ちゃんを庭園に案内してあげてください。私も軍議が終わったらすぐに行きますからっ」
メイド長「承知いたしました」
少女「あ、あと、お手洗いの場所もちゃんと教えてあげてくださいねっ」
少女友「あんた、迷った事あるのね」ピーン
少女「そそそそそそそそんなコトないよっ!?」アセアセ
少女友「方向音痴だもんねぇ、あんた」
少女「ちがうもん! それに、今はもう迷う事なんてないよぅ」プンスカ
少女友「『今は』なんでしょ?」
少女「うっ……い、いいのっ! じゃあまた後でね♪」タタタタタタ
少女友「変わらないなぁ」
メイド長「魔王様はお優しいですからね」
少女友「でも、今まで無理してたみたいですね」
メイド長「おわかりですか」
少女友「少し痩せましたよね、あの子。もともとちっちゃいのに」
メイド長「はい。こちらに戻って来てからはほとんどお休みにもならずに四王や副官だけではなく、一介の兵や一般の者とまでお話をされておられましたから」
少女友「忙しくする事で少年の事を忘れようとしてたんですね」
メイド長「そう、かもしれません。魔王様のお心の中にはまだ勇者に対する恋慕の残滓が残っておられると思います」
少女友「……かわいそうに」
メイド長「……」
少女友「それはそうと」
メイド長「なんでございましょう」
少女友「メイド長さんが言ってた『鍵』ってやつ。まだわかんないけど、私が今してる事って間違えてない、よね?」
メイド長「……きっと、貴女でしたら大丈夫ですよ」ニコッ
- 73 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:51:26.22 ID:YZbjmkcXo
― 魔王城 中庭 ―
少女友「うっわー、すっごい綺麗!」
メイド長「魔王様のお気に入りの場所なのですよ」
少女友「あの子、花好きだもんね。学校でも花壇に花の種植えたり水をあげたりしてたわ」
花守り「こちらでもいつも花の手入れをなさっておられますよ」
少女友「猫人間!?」ビックリ
メイド長「この庭園の責任者ですわ」
花守り「花守りと申します。以後お見知りおきを」
少女友「あ、よろしくお願いします。少女の友人の少女友っていいます」
花守り「魔王様からお話を伺っております」
少女友「どんなお話か気になるんですけど……」
花守り「そうですね、昨年のバレンタインデーとかいう日に想い人に告白したら盛大にフられてしまって魔王様を巻き込んでチョコのヤケ喰いをなさったとか」
少女友「あとでブン殴る」
メイド長「あらあら」ニコニコ
花守り「ここの庭園は魔王様の為だけに作られております。どうぞごゆっくりお過ごし下さい」
少女友「ありがとうございます」
少女「お待たせー」
メイド長「お疲れ様でございました。冷たい紅茶をお淹れしております」
少女「ありがとうございます。獣王さんに怒られちゃった」テヘ
少女「あれ、少女友ちゃんは?」
少女友「こーこーだーよー?」ギリギリ
少女「うわんっ、痛いよ!? こめかみがすっごく痛いよ!?」
少女友「花守りさんから聞いたわよー? あんた、私の失恋話を面白おかしく話したらしいじゃないの」
少女「え、えっと、ほらっ、少女友ちゃんのかわいいところとか、そういうのもちゃんとっ」イタイイタイ
少女友「内緒にしておいてーって頼んだよねー?」ギリギリ
少女「ごめんなさーい!」タスケテ
少女友「ま、いいわ」パッ
少女「ぁぅー」ヒリヒリ
少女友「次何か言いふらしたら頭から齧るからね」
少女「キヲツケマス」
吸血鬼「こちらにおいででしたか……おや、見知らぬお嬢様も」
少女「さっきお話した少女友ちゃんです」
少女友「よ、よろしくお願いします」
吸血鬼「そうでしたか。これはまた可愛らしい」ニコッ
- 74 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:53:14.89 ID:YZbjmkcXo
少女友「ちょっと少女っ!」ヒソヒソ
少女「ふぇ?」
少女友「こちらのイケメンは!?」ヒソヒソ
吸血鬼「私は魔王様にお仕えする四王が一人、吸血鬼と申します」ペコリ
少女友「しょ、少女友です」アセアセ
少女「見た目は格好良いけど、セクハラばっかりするから気をつけてね」
吸血鬼「酷い言われようですね……」
少女友「って言うと、発展途上とかつるぺたとか?」ニヤリ
吸血鬼「そうですね。魔王様はもう少し成長なさったほうが……」ニッコリ
メイド長「増えましたね」
少女「しまったー。少女友ちゃんもこういう人だった……」ガックリ
少女友「あはははは。冗談よ、冗談。さっきの仕返し」ニコッ
少女「うー……わかったよぅ」
吸血鬼「冗談はここまでにして。魔王様、人間共に動きがあります」
少女「動き、ですか?」
吸血鬼「米軍が動いているようです。近日中に『門』に対する攻撃があるかもしれません」
少女友「それ、少年が言ってたやつじゃないかな」
少女「教えてもらってもいい?」
少女友「もちろんよ。えっと、三日後の朝8時に米軍のミサイルで洞穴を攻撃して、そのドサクサに紛れて米軍や自衛隊の人達と一緒に魔界に侵入するって言ってたわ」
吸血鬼「ほぅ、それが事実だとしたらかなり有力な情報ですね」
少女友「私がこうなるのを予測して少年が偽情報を流した可能性があるって事? それとも私自信が信用ならないって事なの、かな?」
吸血鬼「前者ですよ。魔王様が信用できるとおっしゃった方なのですから、我々も貴女の事を疑う事はしません」
少女友「魔王って本当にすごいのね。絶大な権力って感じ?」
吸血鬼「魔族を統べる王ですからね。それに、魔王様のお人柄も加味した上での判断です」
少女友「なるほど」
少女「少年君が、魔界に?」
少女友「後輩と入るから私も一緒に来いって」
少女「……そっか。思ったより早いね」
吸血鬼「いかがいたしましょう?」
少女「当然迎え撃ちます。『門』には私が直接防護魔法を施し、ミサイル攻撃による損傷を防ぎます。四王はそれぞれの領地を確実に護ってください。常駐している防衛隊に攻撃隊を追加編成して勇者達の魔界侵入を防ぐように」キッ
吸血鬼「承知いたしました」
少女友「……悲しそうな顔」ポツリ
メイド長「魔王軍を動かす時はいつもです。誰かが死ぬかもしれない、傷つくかもしれない、と心を痛めておられるのですわ」
少女友「……少女っ」ギュッ
少女「ふぇっ!?」
吸血鬼「おやおや」ニコリ
メイド長「あらあら」ニコニコ
少女友「あたしが来たんだからもう大丈夫よ! あんたの傍に居たげるね」ギュー
少女「う、うんっ!」ニコッ
- 75 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:54:58.57 ID:YZbjmkcXo
― 魔界 人間界との『門』 ―
少女友「でかっ!!」ビックリ
少女「あはは。おっきいよね〜」
メイド長「全高20メートルですからね」
少女友「んで、ここをどうするの?」
少女「ミサイルとかなら十分耐えるとは思うんだけど、一応壊れちゃわないように強化魔法を掛けるんだ」
少女友「このでかいのに?」
少女「うん」
少女友「よくわかんないけど、魔力っていうの? そういうのが尽きちゃわない?」
メイド長「魔王様の魔力はこの程度では尽きませんよ。魔族の中でも飛びぬけた魔力の持ち主ですから」
少女友「このちっちゃい身体のどこに魔力が入ってるんだろ?」ペタペタ モニュモニュ
少女「ひゃぅっ! もー、少女友ちゃん、セクハラだってばー!」アワアワ
魔族軍参謀「正直たまりません」ボタボタ
メイド長「自重なさい」
少女「と、とにかくっ! みなさん聴いてくださーい」
魔族軍「ははっ!!」ザッ
少女友「すごい量ですね」
メイド長「精鋭部隊ですから魔族軍全体からすればほんの少しです」
少女友「へぇー、もう想像つかないわ」
少女「間もなく人間からの攻撃が始まります。それと同時に勇者と賢者の魂に縛られた者が人間の軍と共に魔界に侵入してくるそうです。皆さんにはその阻止をお願いします」
魔族軍「魔王様の仰せの通りに!」
少女「ごめんなさい……みなさんの中には怪我をしちゃう人や、もしかしたら死んじゃう人もたくさん出るかもしれません。もっと平和的に物事が進める事ができればよかったんですけど……」
少女友「いつもあんななの?」
メイド長「そう、ですね。毎回こうやって血が流れそうな時は謝っておられますね」
魔族軍参謀「魔王様の、いえ、我々魔族の為でございます。どうぞ謝らないでください。我々はその為ならば命など惜しくもございません!」
魔族軍「魔王様の御為に!」
魔族軍「魔王様に栄光あれ!」
魔族軍「魔王様万歳!!」
少女友「あの演説で士気が上がっちゃうんだ……」
メイド長「魔王様は皆から慕われておられますからね」ニコッ
少女友「わからなくはないかなぁ。あの子見てるとほら、守りたくなっちゃうから」
メイド長「よくわかりますわ」
- 76 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:56:41.32 ID:YZbjmkcXo
少女「皆さん、絶対に生きて戻って来てください! 門は私の守護魔法で絶対に破壊させません!」
魔族軍「おぉーっ!!」
魔族軍「魔王様−っ!!」
魔族軍参謀「魔王様、勇者は我々が必ず人間界に追い返します。どうぞご安心なさって下さい」ニコッ
少女「……はい。皆さんの事、信じてます」ニコッ
メイド長「間もなく攻撃予定時刻です」
少女「では、いきますっ」スゥッ
少女【世界にたゆたう数多の力よ、我に力を貸し給え……】
少女友「唄……?」
メイド長「呪文の詠唱です。魔王様が詠唱なさると唄のように聴こえるのです」
少女友「あの子、歌うまいもんね」
メイド長「魔族軍はこの唄で最後の英気を蓄え、戦いに打って出るようになりました」
少女友「わからなくはないわ」
少女【我が力、我が魔力もて。大いなる守護の光よ、護りの盾をっ!!】コォォォォォッ
フォンッ
少女友「『門』が光に包まれて……って兵士にも?」
メイド長「あらあら、思いが強すぎて兵達にも守護の光をお掛けになったのですね」
魔族軍「魔王様の光の守護だ!」
魔族軍「これで怖いモンなんかねえぞ!!」
少女「皆さんの吉報を魔王城で待ってます!」
少女友「お疲れ様」
少女「あはは」グスッ
少女友「まったくもう、あんたは。メソメソしないのっ」ギュッ
少女「ごめんね、少女友ちゃんまで巻き込んじゃって……」キュッ
少女友「あたしはあんたの傍に居るって決めたの。約束だってしたでしょ。さ、魔王城に戻ろ」
少女「うん。メイド長さんも」
メイド長「はい」
魔族軍参謀「ここはお任せください。必ずや護り通して御覧にいれます」
少女「お願いします。転移っ」ヒュンッ
- 77 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:57:21.38 ID:YZbjmkcXo
― 富士山麓 洞穴近く ―
後輩「あと2分でミサイルが到着します」
少年「予定通りにミサイルで空けた大穴を通って魔界に行く。準備はいいな」
後輩「はいっ」
通信兵「精鋭部隊の準備完了」
少年「よっしゃ。いっちょ暴れるか!」
後輩「ミサイル来ます!」
少年「光の帯っ!」フォンッ
少年「ミサイル着弾時の衝撃は全部これで吸収できる。着弾後、すぐに飛び込むぞ!」
兵士「おう!!」
フォンッ
後輩「防護呪!?」
勇者「何!?」
ドガガガガガガァァァァァァッ
勇者「魔王が『門』を護ったのか!?」
後輩「その可能性が高いです。計画が漏れていたとしかっ」
通信兵「ミサイル着弾による電波障害発生中。通信不可」
勇者「ってことは……やべぇ、一旦退却だ!!」
後輩「勇者様!?」
勇者「少女友が喋ったんだ! 中は魔王軍の精鋭が待ち構えてるぞ!」
通信兵「通信回復まで10分はかかる!」
勇者「くそっ、みすみすと!!」ダンッ
- 78 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:57:59.01 ID:YZbjmkcXo
― 魔王城 ―
メイド長「『門』からの報告です。人間共の撃退に成功いたしました」
少女友「やったじゃない」
少女「被害は……どれくらい出たんですか?」
メイド長「魔族軍の死者は17名、負傷者は50名で納まりました。魔王様の光の加護のお陰です。人間側の死者は100名以上。10名を捕縛いたしました」
少女「少年君……じゃなくて勇者は?」
メイド長「それが、姿を見せなかったとの事です」
少女友「あいつ、来なかったの?」
メイド長「人間の死体や負傷者を全て確認いたしましたが勇者と賢者の姿は確認されませんでした。門周辺は蟻の子一人として通さないようにしておりましたので、隠密裏に進入したとは考えられません」
少女「何か、あったのかな?」
少女友「あ、そっか」ポン
少女「ふぇ?」
少女友「ほら、私がこうやって喋っちゃったから」
メイド長「逃げた、のですか」
少女「……逃げたっていうのは言い方が違うと思うけど、退却指示が間に合わなかったって考えたほうが良いかな」
少女友「『門』は大丈夫だったんですか?」
メイド長「被害は全くありませんでした。さすがは魔王様です」
少女「大穴空けられちゃったら大変だもんね」
少女友「ミサイルが直接飛び込んでくるとか勘弁だわ」
少女「引き続き勇者の捜索を続行させてください。死者と負傷者には手厚い看護と補償を」
メイド長「承知いたしております」
少女「後ほどお見舞いに出向きます」
少女友「無理しちゃ駄目よ?」
少女「うん……でも、私の責任だから」
- 79 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:59:12.34 ID:YZbjmkcXo
― 魔王城 救護棟 ―
魔族兵「魔王様だ!」
魔族兵「魔王様がわざわざいらして下さったぞ!!」
魔族兵「ぐっ、傷が痛んで身体が……」
メイド長「魔王様からのお許しが出ています。負傷者はそのままで」
少女「みなさん、お疲れ様でした。皆さんのお陰で人間の魔界侵入を防ぐ事ができました。ありがとうございます」ペコリ
少女【慈悲深き癒しの女神よ、傷つきし者にその寵愛を】フォンッ
魔族兵「傷が……」
魔族兵「治癒魔法では回復できない程の深い傷だったのに」
少女「っと、これで大丈夫……ですか?」
魔族兵「我々のような下兵にまでっ」グスッ
魔族兵「魔王様に改めて忠誠を!」
少女「ううん、みんながんばったんだから、ね? 生きて戻って来て下さっただけで嬉しいです。死んでしまっみなさんに、どうか弔いの祈りを捧げてあげてください」
魔族兵「なんと慈悲深い……」
少女友「時間と労力がすっごいかかるけどみんな少女にベタ惚れになっちゃうのは事実だよね」
メイド長「しかも天然でそれをなさってるあたりが魔王様の素晴らしいところですわ」
少女友「次は戦死した人のご家族のところ、だっけ?」
メイド長「はい。ご公務の合間にどうしても、とおっしゃいますので」
少女友「……どうにかして休ませないと、だね」
メイド長「えぇ」
少女「はふー。ちょっとだけ疲れちゃった」ヘタリ
少女友「ちょっとどころじゃないでしょ。結局戦死した人の家全部回っちゃって。ほら、寝室に行くわよ」グイ
少女「まだこの後もお仕事あるよぅ」
少女友「メイド長さんが全部キャンセルしてくれたの。あんたはちょっと休まなきゃ駄目よ」
少女「でもっ」
少女友「あんたね、こっち来てからロクすっぽ休んでないんでしょ?」
少女「そ、そんな事ないよ?」オロオロ
少女友「見りゃわかるわよ。痩せちゃってるじゃないの。ただでさえちっちゃいんだからこれ以上ちっちゃくなったらどうするの」
少女「は、発育段階だもんっ!」
少女友「そんな状態じゃ育つモンも育たないわよ! いいから休む!」グィグィ
少女「あぅー」ズルズル
- 80 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:59:48.27 ID:YZbjmkcXo
― 魔王城 魔王の寝室 ―
少女友「ほら、寝る!」ビシッ
少女「むー、眠くないよー」
少女友「横になってりゃすぐに眠くなるわよ。ったくもう、吸血鬼さん達も少しは少女の身体を考えて欲しいわ」プンスカ
少女「みんなは休んでって言ってくれるよ」
少女友「じゃあ休め!」ガーッ
少女「だ、だって……」
少女友「わかってるわよ。独りだと眠れないんでしょ?」ナデ
少女「……」
少女友「心配しなくてもいいわよ。あたしがこうやって一緒に居てあげるから」
少女「ごめんね?」
少女友「謝る事ないわよ。あんたはがんばってる。がんばりすぎなくらいね」
少女「独りになっちゃうと少年君の事が……」
少女友「ぜーんぶわかってるってば。だからあたしがここに居るんじゃないの。全部吐き出しちゃえ。聴いてあげるから」
少女「……」グスッ
少女「ふ、ふぇぇぇ。少女友ちゃぁぁぁん」ギューッ
少女友「はいはい」ナデナデ
少女「っぐ、ひっく……私、私、少年君とっ、少年君と……」メソメソ
少女友「うん。わかってる。あいつだってきっと心の底ではあんたと同じ気持ちのはずよ。今は周りに振り回されてるだけなのよ。いつかきっと仲直りできるわ」
少女「うぇぇぇぇぇぇんっ!!」ギューッ
- 81 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 14:00:28.15 ID:YZbjmkcXo
― 魔王城 庭園 ―
メイド長「こちらにおいででしたか。魔王様はお休みになられましたか?」
少女友「さんっざん泣いてからね。お陰でブラウスびしゃびしゃになっちゃったわ」
メイド長「後ほどお洗濯いたしますね」
少女友「やっぱり、かなり溜め込んでたみたい」
メイド長「そうでしたか……少女友様に来ていただけて魔王様のご心労もいくばくかは救われたと思われます。ありがとうございます」
少女友「ううん。あたしは自分がしたい事をしただけだから。少女と約束もしたからね」
メイド長「お友達想いなのですね」ニコッ
少女友「そっ、そんなんじゃない……わよ」ポリポリ
メイド長「あらあら」クスクス
少女友「そ、それはそうと、これからどうなるの?」
メイド長「魔王様のお考え次第ですが、人間界への攻勢を強めていく事になるでしょうね」
少女友「少女は人間を全滅させる気はないって言ってたけど」
メイド長「えぇ。それは既に軍議でもおっしゃっておられます。歴史を紐解けば魔族は太古の昔から人間を管理、育成していたという記述も見つかりました」
少女友「あの子が見つけたの?」
メイド長「はい。魔王城地下の書物庫に残っている文献をあらいざらい調べ上げてしまわれました」
少女友「あの子らしいわ」
メイド長「ですが、勇者との衝突だけはいつか必ず……」
少女友「だよね。あの子、大丈夫なのかな」
メイド長「……」
少女友「でもさ、四王さんとかメイド長さんが付いてるんでしょ?」
メイド長「それは当然です」
少女友「私だって居るんだから、きっとなんとかなるわよ」
メイド長「そう、ですわね」
少女友「理想は勇者と理解し合える事なんだろうけど、ね。そこはあたしがなんとかあの馬鹿の目ぇ覚ましてやるわ」
メイド長「期待しておりますよ」ニコッ
- 82 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 14:01:21.89 ID:YZbjmkcXo
― 魔王城 ―
竜王「『門』での戦闘から一ヶ月が経過いたしました。そろそろ人間界への攻勢に出られる時期かと」
少女「兵達の訓練は?」
獣王「問題ありやせん。士気も上がっております」
海王「人間共に目立った動きはありません。力を蓄えているか、諦めはじめているか」
少女「楽観はよしましょう。勇者を中心に何か画策をしているはずです」
吸血鬼「手始めに日本列島を掌握し、そこを足がかりとなさるべきかと」
少女「それが良いでしょうね。列島の掌握にかかる予想時間はどれくらいになりそうですか?」
獣王「おおよそ1ヶ月もあれば」
少女「魔族軍の損耗予想は?」
吸血鬼「10%程度といったところでしょうか。米軍や隣国の動き次第では30%を超える可能性はありますが」
少女「そんなに……」
竜王「魔王様、我々は魔王様の御為に生き、そして死ぬ事こそが喜びでございます。どうぞお気に病みませぬよう」
少女「はい……」シュン
獣族副官「緊急伝達です!」バァンッ
獣王「何事だ」
獣族副官「『門』を通過した者を捕らえたとの事です。それがどうやら賢者の魂を持つ者と……」
少女「すぐに行きます。四王は各領地で待機。罠の可能性もありますから十分気をつけて」
吸血鬼「なにも魔王様が直接出向かわれなくても」
海王「そうです。賢者の魂を継ぐ者だとすれば危険です」
少女「大丈夫です。お願いします」ジッ
獣王「魔王様がそうおっしゃるんでしたらしょうがないですな」
吸血鬼「獣王、何を」
竜王「魔王様は以外と頑固ですからねぇ。一度おっしゃったら曲げる事など私たちにはできませんよ」
少女「頑固……ですか?」
吸血鬼「はぁ、しょうがないですね。メイド長を護衛に付けてください。それと、少女友様にもご一緒に行っていただきますよ」
少女「はいっ。ありがとうございます」ニコッ
- 83 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 14:03:11.16 ID:YZbjmkcXo
挨拶もせずに投下を始めてしまいました……不調法をお許しください。(土下座)
体調も戻りつつありますが、念のため有給を取りましたのでこの時間帯に投下させていただきました。どうぞお納めください。
- 84 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/04/01(金) 14:05:44.26 ID:vg24JhrDO
うむ、苦しゅう無い。褒美に乙を贈ろうぞ。
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