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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その28
696 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 17:56:03.32 ID:BY/1uvEso
タッタッタッタッタ

男隊員「やっぱ、どこにも見当たらんぜ」

大軍師「……参りましたね」

隊長「何がどうなってやがんだ」

ジュニア「丁度、正面に居たから見えたが……何か影みたいなものに取り込まれた」

魔道士「ええ……」

隊長「ちょっと整理しよう。まず、眷属だが……」

大軍師「タルウィは葬ったのですね?」

青年兵「ええ。間違いありません」

神官「この目でしかと確認しました」

大軍師「……ふむ。そしてザリチュ」

ジュニア「俺等が五行で片付けた。これも間違いねぇ」

賢者「……そうだね……ふぅ」

大軍師「サルワはどうです?」

隊長「……正直、生死までは未確認だ」


697 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 17:56:41.08 ID:BY/1uvEso
女隊員「でもっ、この辺りには見当たらなかったッスよ」

戦士父「未完成とは言えソディアックの一撃だ。吹き飛んだらしい」

男隊員「ああ。西南西の方角に山が削れてた」

大軍師「そして今しがた、ドゥルジを倒しました」

名代「導かれる結論は……」

大軍師「残る眷族、タローマティの仕業と考えて良いでしょう」

青年兵「……」

隊長「んで、どうすんだ?」

大軍師「青年兵殿、貴方が総大将です。ご決断を」

青年兵「……」

バサッ…ドシュウウゥゥゥゥ

召喚士「やっぱり、周囲にも変化はありませんでした」

朱雀嬢「あの方も居ませんでしたわ」

大軍師「そうですか」

青年兵「……分かりました。一旦、南西砦まで後退致します」


698 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 17:57:25.37 ID:BY/1uvEso


ザッザッザ

隊長「……」

大軍師「ゆっくり、横へ寝かせて下さい」

歩兵「うっ、うぅ……っ」

弓兵「南西……砦長……っ」

戦士父「分かっていたのか?」

大軍師「ええ。本人にも通達済でした」

男隊員「……っ」

大軍師「あくまで決断は本人に任せております。彼は、英雄となる事を決断しました」

戦士父「死んだら英雄も何もない」

大軍師「……仰る通りかもしれません」

テクテクテク…グッ

大軍師「……どうぞ。彼が最後まで守り抜いたトライデントです」

戦士父「……ああ」


699 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 17:58:03.39 ID:BY/1uvEso
……――

ドゥルジ『うふふっ。ほらほらぁ、どうしたの?』

歩兵『戦えるわけないだろ……っ、あんな……あんなのって』

魔道兵『くっそぉ……!!』

ザッザッザ

南西砦長『第一波は後退しろっ! ここは俺が預かる!』

歩兵『し、しかし……っ』

南西砦長『無理に交戦する必要はない! 我らの役目は時間稼ぎなのだぞ』

ドゥルジ『あらぁ、言ってくれるじゃない』

南西砦長『第二波が来るまで持ち堪える! 諸君らは南西砦まで退けぃ!』

魔道兵『……っ』

南西砦長『早くしろぉ!!』

歩兵『……ご、ご武運をっ!!』

ザザッ…タッタッタッタ

ドゥルジ『うふっ、逃がさないわよぉ〜』


700 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 17:59:00.27 ID:BY/1uvEso
ザッ

南西砦長『ここから先は、1匹たりとも通さん』

ドゥルジ『へぇ、貴方1人で?』

南西砦長『……』

ブオッ…ドズンッ…バラバラバラッ

ドゥルジ『!?』

南西砦長『これ以外にも、後方では結界石を配置し始めている』

ドゥルジ『やってくれるじゃない……ッ!』

南西砦長『さぁ、かかってくるがいい!』

ドゥルジ『小生意気な人間ねぇ……っ』

南西砦長「例え力尽きようとも、決して私は倒れぬ!』

ドゥルジ『やっておしまいっ!』

南西砦長『命を弄ぶような輩は、決して許さん!!』

グワッ…ザシュッ…ドガァ!!…ドドオオォォォォンッ

――……


701 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:00:04.75 ID:BY/1uvEso
〜南西砦〜

南西砦兵「くっ、うぅ……っ!」

歩兵「あの時……俺らが退いたばかりに……っ」

弓兵「南西砦長様ぁ……!!」

テクテクテク

召喚士「戦士っ!!」

戦士「おう、無事だったか!」

魔道士「だ、大丈夫ですか!?」

戦士「あぁ、大げさなんだよこんなの……」

グイグイッ

戦士「いてえぇ!! 何しやが――」

男隊員「無茶すんなっつーの」

女隊員「そうッスよぉ……。重傷じゃないッスか……」

召喚士「……っ」

戦士「……けっ、そんなんじゃねーって言ってんだろ」


702 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:01:50.86 ID:BY/1uvEso
召喚士「とにかく、元気そうでひとまず安心したよ」

戦士「あれ? そういや盗賊は……」

魔道士「盗賊さんならまだ戻ってないですよ」

戦士「そうなのか?」

召喚士「うん。実は……」

事情を把握していない戦士に、召喚士と魔道士が経緯を話す。

戦士「……マジかよ」

召喚士「うん。だから、天才さんが戻らなくて……」

魔道士「それで、盗賊さんと戦士父さんと隊長さんが残っているんです」

戦士「大丈夫なのか?」

召喚士「3人共かなりの使い手だし、俺等も交代で援護に入るから……」

戦士「なるほどな。そんじゃ俺も――」

グイッ

男隊員「お前はここにいろ」

戦士「いちいち腕をひっぱるな!! いってぇ……」


703 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:02:44.79 ID:BY/1uvEso


パアアァァァァ

賢者「……はいおしまい……ふぅ」

戦士「おぉ、痛みが和らいだ」

賢者「……神経を挫傷してるね……ふぅ」

召喚士「だ、大丈夫なんですか!?」

賢者「下手に動かすと……断裂するよ。安静にする事だね……ふぅ」

男隊員「分かったろ。とにかくお前はしばらく安静にしてろ」

戦士「……へいへい」

魔道士「そうですよっ、左腕が動かなくなったらどうするんですか……もうっ」

男隊員「あの女ネーチャンの事なら大丈夫だ。心配すんな」

戦士「はっ?」

男隊員「俺も援護に向かう。お前が心配してたぞーって伝えといてやるよ。ヒャハハ!」

戦士「てめぇ! 余計なお世話だっ!」

男隊員「そんじゃ、お大事に!」


704 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:03:53.92 ID:BY/1uvEso
タッタッタッタッタ

女隊員「私も行ってくるッス!」

魔道士「お気を付けて!」

タッタッタッタッタ…

戦士「しかし、眷属を一気に4匹倒したのかぁ」

召喚士「何だか信じられないよね」

魔道士「しかも、結構あっさりと……」

テクテクテク

大軍師「簡単に思えるのは、皆様のお陰ですよ」

魔道士「大軍師さん」

大軍師「少数精鋭で奇襲したからこその成果です」

戦士「……まぁな」

大軍師「無論、無傷というわけではありませんが……」

召喚士「あの、俺等も救援に……」

大軍師「いえ。皆様は待機していて下さい」


705 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:08:51.22 ID:BY/1uvEso
召喚士「……?」

大軍師「特に朱雀先生、最早……魔力も枯渇間近なのでは?」

召喚士「……」

大軍師「まだ先は長いのです。あまり無理をしても仕方ありませんよ?」

召喚士「……すみません」

大軍師「敵の気配はありません。タローマティと、それに……」

魔道士「……?」

大軍師「アンラ・マンユにだけ気を付けていれば、大丈夫でしょうから」

召喚士「はい」

大軍師「それでは、私はこれより援護に向かいますので」

召喚士「お、お気を付けて」

大軍師「ありがとうございます」

カツカツカツ…

戦士「……まぁ、仕方ないわな」

召喚士「……うん」


706 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:10:33.77 ID:BY/1uvEso


青年兵「北方軍と南方軍への伝令、それに三日月島へも」

南西砦兵「畏まりましたっ」

神官「頑張りますね」

青年兵「休んでなど、いられませんからね」

名代「……」

青年兵「南西砦長の遺体は本国へ。すぐに船を手配するように」

歩兵「各地からの伝令です」

青年兵「こっちへ回してくれ。一括で処理する」

神官「いやはや、大したものだ。まだ若いというのに」

名代「ええ。本国の皆が信頼するのも、十分に分かります」

神官「うちの大将も、もう少し落ち着いてくれれば良いのだが……」

名代「……?」

神官「あ、いえ……独り言です」

名代「……は、はぁ」


707 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:11:27.10 ID:BY/1uvEso
〜西方、南の砂漠〜

西方兵長「確認出来たのか!?」

西方兵「いえっ、煙が酷くて。しかし何かが降って来たようです」

西方兵長「降って来た? かなりの大きさだぞ?」

パッカパッカパッカ

王子「どーれ、もうちょい近くまで行ってみようか」

西方兵長「危険ですよ?」

王子「未確認なのに危険も何もないだろ」

グイッ…パッカパッカパッカ

西方兵長「ちょ!? 仕方ない、続けっ!」

王子「さーて、何が降って来たのかぁ?」

西方兵「あ、あれか……!?」

王子「何!?」

西方兵長「……あ、あれは……っ」

王子「……魔物?」


708 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:14:55.60 ID:BY/1uvEso
〜火山、中央〜

盗賊「……」

隊長「……」

戦士父「……」

盗賊「……」

ジーッ

戦士父「……どうした?」

盗賊「い、いや……っ」

隊長「しかし、何にも動きはないですね」

戦士父「だが、何か起きているのは事実だ」

盗賊「……うん」

隊長「敵の気配はおろか、司令の気配まで感じないとは……」

戦士父「別の地に飛ばされている可能性が高いな」

盗賊「……?」

スクッ


709 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:15:32.03 ID:BY/1uvEso
隊長「どうした?」

盗賊「……何か……来る」

戦士父「……確かに、何か複数の気配を感じる」

隊長「どこだ……っ。上? いや、左だ!!」

ババッ…チュインッ

盗賊「!?」

隊長「……な……っ」

戦士父「魔物? いや、これは……」

ザッザッザ

盗賊「ど、どうして……貴方達が!?」

ハヌマーン「……」

隊長「何をしている!? 俺達が分からんのかっ!」

紅孩児「……」

戦士父「……」

マーマン「……ケケッ!!」


710 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:17:16.19 ID:BY/1uvEso
ドンッ!!

紅孩児「でえぇりゃああぁぁ!!」

フオンッ…ゴガアアァァ!!

隊長「一体、何が……っ」

クルクルクルッ…バギャアアァァ!!

盗賊「……っ」

ハヌマーン「……ちっ」

戦士父「気が、荒れているな」

マーマン「ガアァ!!」

ブンッ…ガキイイィィンッ

戦士父「おそらく、洗脳と言うか……瘴気にあてられたようだな」

隊長「!?」

戦士父「魔物の攻撃的な心が前面で出ているようだ」

隊長「……バーサーカー」

戦士父「おそらく、魔王の瘴気を濃く吸ったのだろう」


711 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:17:58.82 ID:BY/1uvEso
ビュオッ…ガイイィィン

隊長「こいつらは、味方なんす!」

戦士父「分かっているさ。何とか……したいところだが」

マーマン「ガアアァァ!!」

戦士父「ぬっ」

ビュオォッ…キイイィィンッ

戦士父「!?」

マーマン「ガアアァァ……」

戦士父「この槍……っ。そうか、お前……っ!!」

マーマン「グウゥ……」

戦士父「覚えて……いないよな」

マーマン「……」

戦士父「あの時は、本当に助かったんだ。あんたのお陰でな」

マーマン「グ……ウゥ」

戦士父「その槍、まだ持っていてくれたんだな」


712 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:18:57.00 ID:BY/1uvEso
……――

ザッ…ザッザッ…

戦士父『……っ』

ザッ…ヨロッ

戦士父『……く……そっ』

ドサッ

戦士父『すまん……戦士……戦士母』

ヒョコッ

マーマン『……あん? 人間……か?』

ツンツンツン

マーマン『……しゃーねぇ。放っておくわけにゃいかんわな』

グイッ…ザスッ

マーマン『もうちょいの辛抱だぞぉ、頑張れよぉ!』

戦士父『…………』

マーマン『しっかり……掴まってろよぉ!』


713 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:20:15.48 ID:BY/1uvEso


戦士父『…………ぅ』

パチッ

マーマン『よぉ!! 目が覚めたか!?』

戦士父『!?』

ガバッ

戦士父『……ふーっ、ふーっ』

マーマン『待て待て待てっ! 俺っちは魔物だが敵じゃあない!』

戦士父『……っ』

マーマン『アンタが砂漠でぶっ倒れてたから、ひとまずここまで連れてきた。そんだけだ』

戦士父『……?』

マーマン『いやいや、都合良く泉があって良かったよ!』

戦士父『どこなのだ……?』

マーマン『さぁ。南ってのは分かるがねぇ』

戦士父『……』


714 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:21:09.03 ID:BY/1uvEso
マーマン『アンタ、誰かと戦ってたのかい? 随分ボロボロのナリしてるが……』

戦士父『……』

マーマン『……ま、言いたくないならいいさ。』

スクッ

マーマン『ほれ、水だ』

戦士父『……あ、あぁ』

グイッ…ゴクッゴクッゴクッ

マーマン『……とりあえず横になってな。何か持ってきてやるよ!』

戦士父『……何故、そこまで』

マーマン『別に理由はねぇさ。困ってる奴が居るから助けた。そんだけ』

戦士父『俺は……人間なんだぞっ!?

マーマン『人間とか魔族とか、そんなんどうでもいいじゃんか』

戦士父『……っ』

マーマン『いい奴はいい奴。人間だって悪い奴もいるだろう?』

戦士父『……』


715 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:21:47.43 ID:BY/1uvEso
マーマン『アンタはいい奴。だから助ける。それで理由になんねーか?』

戦士父『悪い奴かもしれんぞ?』

マーマン『いーや、いい奴だね』

戦士父『どうして分かる』

マーマン『俺の差し出した水を疑いもなく飲んでくれた』

戦士父『……たった、それだけで』

マーマン『俺にとっちゃあ、それだけでも充分立派な理由なのさ!』

ザッザッザ

マーマン『とにかく、大人しく待ってろ! なっ?』

戦士父『……』

ザッザッザ…

戦士父『……っ』

グググッ…ヨロッ

戦士父『……』

ザッザッザ…


716 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:22:19.01 ID:BY/1uvEso


マーマン『おーい、調子はどう――』

バッ…キョロキョロキョロッ

マーマン『……ったく! 無茶すんなって言っただろうがよぉ!!』

タッタッタッタッタ

戦士父『はぁ……はぁ……はぁっ』

フラァ…ドサッ

戦士父『……ぐ……くっ』

タッタッタッタッタ

マーマン『いやがった!』

タタッ…ガシッ

マーマン『動ける体じゃねーだろっ! 何してんだよ!!』

戦士父『放っておいてくれ』

マーマン『放っておけるかよっ! 馬鹿言ってんじゃねぇ!』

戦士父『何故……ここまでする』


717 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:23:14.18 ID:BY/1uvEso
マーマン『あぁ?』

戦士父『人間である俺に……何故……』

マーマン『さっきも言っただろっ! 人間とかそんなん関係ねーんだよ!』

グイッ

マーマン『それに、俺は人間が好きなんだ』

戦士父『……』

マーマン『だから、お前みたいな奴は……放っておけねぇんだ』

戦士父『だったら尚更、放っておいてくれ』

マーマン『あぁん?』

戦士父『俺は……お前の同胞を数多く手にかけてきた』

マーマン『……』

戦士父『そして、魔王を倒す為に……戦った』

マーマン『そいつは奇遇だね』

戦士父『……?』

マーマン『俺も、魔王様ってのは大っ嫌いでね! クハハハッ!!』


718 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:23:47.39 ID:BY/1uvEso


マーマン『ほれ、食いな』

戦士父『……すまん』

マーマン『いいって事よ。まぁ、美味いかどうかは知らんが……』

戦士父『……』

マーマン『んで、何があったんだ?』

戦士父『……こっぴどくやられたさ』

マーマン『魔王か?』

戦士父『魔王……アンラ・マンユだ』

マーマン『あぁ』

戦士父『知っているか?』

マーマン『直に会った事はねーけどよ、名前くらいはモチロン知ってる』

戦士父『みんなやられた。仲間も……そして……』

ギリッ

戦士父『……妻も』


719 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:24:23.43 ID:BY/1uvEso
マーマン『そいつは……気の毒だったな』

戦士父『……』

マーマン『許してくれ。魔族だって生きるのに必死なんだ』

戦士父『……あぁ。やるかやられるかさ』

マーマン『しかし、お互い戦わなきゃならんモンなのかね』

戦士父『魔物は人間の平和を脅かす。だから倒さねばならん』

マーマン『そうなんだよなぁ』

戦士父『あんたみたいなのも……いるみたいだけどな』

マーマン『皆無だけどな』

戦士父『俺はもう、戦う事はやめる』

マーマン『いいのか?』

戦士父『戦いは戦いを生み、結局悲しみが増えるだけだ』

マーマン『それもまぁ、賢明な判断かねぇ』

戦士父『あんたは何故、魔物なのに……』

マーマン『俺も昔、人間に助けられたクチでね』


720 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:25:28.24 ID:BY/1uvEso
戦士父『……そうだったのか』

マーマン『ちょいとヘマ打っちまってな、結構ヤバかったんだわ』

戦士父『……それで、助けられたと?』

マーマン『ああ。幼い少女だった。怖がる事もなく、俺に近づいて……』

戦士父『……』

マーマン『優しい目した子だった。初めてだったよ、あんな笑顔を見せられたのは』

戦士父『……』

マーマン『へへっ、まぁ俺の話なんぞどうでもいいさ。ほれ、今日は寝ときなよ』

戦士父『……すまん』

マーマン『いいっていいって。そんじゃおやすみさん!』

モゾッ…ノソッ

戦士父『……ありがとう』

マーマン『やめてくれ。むずがゆいっての』

戦士父『……おやすみ』

マーマン『おう、ゆっくり休みな!』


721 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:26:14.63 ID:BY/1uvEso


マーマン『……もう、行くのか?』

戦士父『ああ、十分傷も癒えた。長い事世話になったな、ありがとう』

マーマン『そうかぁ。寂しくなるなぁ』

戦士父『ははっ、思ってもないくせに』

マーマン『おいおい、俺は嘘をつかないんだぜ?』

戦士父『そうかい。そう思ってくれてありがたいよ』

マーマン『そんじゃ、気を付けてな』

戦士父『あんたもな』

マーマン『俺はしばらく、ここで暮らすとするよ』

戦士父『気に入ったか?』

マーマン『あぁ、綺麗な水質だ。ちょいと辺鄙だけどなぁ……クハハッ!』

戦士父『もう、会う事はないかもしれんが、もし南方へ来る事があれば立ち寄るよ』

マーマン『おうっ! いつでも待ってるぜ!』

戦士父『……そうだ』


722 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:26:46.66 ID:BY/1uvEso
ガシッ…スッ

マーマン『……あん?』

戦士父『もう使わぬ代物だ。持っててくれ』

マーマン『槍か…? でもよぉ……』

戦士父『防衛に武器の一つくらいあった方がいいだろう?』

マーマン『……いいのか?』

戦士父『言っただろう? 俺はもう戦わぬ。無用だ』

マーマン『……そんじゃ、餞別に貰っとくよ!』

戦士父『ああ、それじゃ……達者でな』

マーマン『アンタもな! また会える事を願ってるよ!』

ニコッ…ザッザッザ…

マーマン『……いやはや、なーんか……こういうのも悪くないよなぁ』

テクテクテク

マーマン『きょうから一人か。まぁ……のーんびり、暮らすとするかぁ』

――……


723 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/10(火) 18:27:40.53 ID:BY/1uvEso
戦士父「……マーマン!! 俺が……分からぬか!?」

マーマン「……ウゥ」

戦士父「あんたとは戦いたくない。目を覚ましてくれ!」

マーマン「グ……ウゥ……」

戦士父「マーマン! 聞こえているのだろう!?」

マーマン「ガアアァァァァ!!」

ザシュッ

戦士父「……ぐぅ……っ」

マーマン「……はっ!!」

戦士父「……気付いて……くれたか……っ」

マーマン「……俺は……何を? あぁ!?」

グラァ

マーマン「お、おいっ!!」

戦士父「……元気そうで……何よりだ」

マーマン「……ア、アンタは……っ!!」



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