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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その29
443 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:09:30.59 ID:33+2EfhZo
戦士「前にそんな話を聞いた事があるなぁ」

隊長「簡単に言えば、今が最も好機。これを逃せば魔族は力を盛り返す可能性がある」

天才「そーいう事。ここが正念場だ」

戦士父「……」

名代「私達にできる事は……?」

天才「……大軍師」

大軍師「それでは本作戦の概要を説明致します」

天才「開始時間は0時ジャスト。これに合わせ全軍、火山まで前進する」

大軍師「標的は言わずもがな、魔王アンラ・マンユです」

天才「まずは座する魔王様を立たせてやらにゃならん」

隊長「手段は?」

天才「刺激するしかないだろ」

ジュニア「刺激しすぎると、出ちゃうんじゃないの? ハッハ」

天才「おぉ、可能性はあるかもなぁ」

賢者「……ふぅ」


444 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:11:19.76 ID:33+2EfhZo
大軍師「あの、宜しいでしょうか?」

天才「あー悪りぃ」

大軍師「まず、召喚獣の攻撃で魔王を火山の外部へ誘き出します」

戦士「大丈夫なのか?」

戦士父「さっきも言ったように、魔王はその場から動けん」

天才「出られてもせいぜい火山上空。あとは動く事はねぇ」

名代「つまり、その周囲のみに気を付ければ良い……と?」

大軍師「そういう事です」

天才「但しだ、あまり時間を掛けると、火山自体がヤバイ」

女隊員「……?」

大軍師「魔王の力によって増幅した火山が噴火する恐れがあります」

男隊員「おいおい、マジかよ……っ」

大軍師「最悪の事態も想定はしておきますが、まずはそれを引き起こさない事が大切」

天才「そーいう事。要はちゃっちゃと殺ってちゃったと帰ろう作戦だ」

戦士「……はぁ」


445 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:13:17.72 ID:33+2EfhZo
大軍師「召喚獣の攻撃により姿を見せた魔王を、一点集中で狙います」

女隊員「どうするんスか……?」

隊長「……ゾディアックか……!!」

天才「ビンゴ!」

大軍師「媒介であるゾディアックの投擲により、アンラ・マンユを攻撃します」

ジュニア「そのゾディアックっての、そんなに強いのかい?」

戦士「幾らなんでも一撃で葬れるとは思えねぇけどなぁ」

天才「媒介って言ったろ」

戦士「……?」

大軍師「長距離からの投擲に合わせ、魔道兵が総員を以って五行を放ちます」

ジュニア「何ぃ!?」

天才「いいか? ゾディアックはおとぎ話でもあるように使えば死ぬ」

戦士父「……」

ジュニア「但しこれは媒介であるゾディアックに使用者が五行を込めて放つ事にある」

男隊員「つまり……」


446 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:14:14.68 ID:33+2EfhZo
天才「一度その手を離れたゾディアックは無人。そこへ五行をありったけぶつける」

大軍師「通常、対象者が直接関わる場合は魔力を均等にせねばなりません」

天才「何でか分かるか?」

賢者「失敗すれば……全て自分に跳ね返ってくるからねぇ……ふぅ」

大軍師「そういう事です。しかし、投擲中のゾディアックは無人」

天才「しかもだ、ゾディアック自体は媒介。要はさっき言った六行目を兼ねてる」

ジュニア「結界石みてぇなモンか?」

天才「おーっ、お前も見かけによらず切れ者じゃねーか」

ジュニア「……あのな」

大軍師「これを東西南北、更には北東北西、南東南西の8方向から一気に付加します」

隊長「一点が崩されぬよう、分散するわけだな」

天才「そっ。8つも島がありゃ魔王様も一気には殲滅出来ねぇって話」

大軍師「戦士父殿、宜しいですか?」

戦士父「ああ。だが、付加するにはかなりの距離が必要になる」

天才「……」


447 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:15:28.10 ID:33+2EfhZo
戦士父「ましてや放ったあとのゾディアックにも、懸念が……」

隊長「五行なしで西方まで飛んだわけですから。五行付加ともなると……」

天才「まぁそうだな。方角は最も被害が少ないと思われる北東から南西に抜けるコース」

大軍師「その角度しかありませんね」

天才「んで、地図を見るとだ……」

バサッ

天才「北東に山が2つある。この、手前の山から届くか?」

戦士父「……何とも言えんな。魔王の出現場所にもよる」

天才「おいおい……ここにきて勘弁してくれよ」

戦士父「そう言われても仕方ないでしょう。正直な意見だ」

天才「ち……っ」

大軍師「どう致しますか? かなり一か八かの賭けになってしまいますが……」

戦士父「加速力を付けるしかあるまい」

天才「あん?」

戦士父「射出を2回。それで加速力が付く」


448 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:16:49.54 ID:33+2EfhZo
男隊員「どういう事だ……?」

トントン

戦士父「山が2つ、連なっているだろう?」

大軍師「……ま、まさか……っ」

戦士父「……戦士」

戦士「あん?」

戦士父「お前がこの、奥の山からゾディアックを投げろ」

戦士「はぁ!?」

戦士父「それを俺が受け取り、加速させながら投擲する」

ジュニア「んな事出来んのかよっ!?」

戦士父「一発で届くかの賭けよりは十分見込みがある」

大軍師「何という……っ」

戦士父「戦士」

戦士「……っ」

戦士父「お前次第だ。自分の腕を信じられるか?」


449 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:18:27.89 ID:33+2EfhZo
戦士「……」

目線を下に移す戦士。左腕を覆う包帯が松明にあてられ、少し橙に色付いていた。

戦士「……右腕一本ありゃ武器は握れるって、何度も言ってんだろ」

それは戦士父に語りかけた言葉か、それとも自身への鼓舞なのか。戦士は言った。

戦士「……俺は……やる!」

戦士父「……だ、そうだ」

大軍師「司令、如何なさいますか?」

天才「構わねぇ。それでいく」

戦士「……」

天才「気負うなよ、だがな……失敗は許されねーぞ?」

戦士「……」

天才「全人類の未来が、お前の右手にかかってんだからよ。ハーッハッハ!」

戦士「……プレッシャーかけやがって……っ」

天才「その方が燃えんだろうよ?」

戦士「……まぁな!」


450 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:19:42.55 ID:33+2EfhZo
大軍師「では、方向性はこれで全て決まりましたね」

天才「最後に、一つ気に掛けて貰いたい事がある」

隊長「何でしょう?」

天才「眷属を葬った、と言ってもまだ残ってる奴がいる」

男隊員「サルワっすか? それならおそらく……」

天才「もう一匹いんだろ。完全に仕留めてねぇのがよ」

戦士「――っ!?」

天才「以前、西方司令部を眷属に強襲された事がある」

隊長「……っ」

天才「そん時ぁ、召喚獣の四行で消し去ったが、四行だ。この意味は分かるよな?」

男隊員「……ちっ、イヤな事思い出しちまったぜ」

女隊員「ま……さか……っ」

天才「アカ・マナフ。二択だが、護衛のない今、アンラちゃんが使う可能性はあるぞ」

戦士「でもよっ、アイツは……」

天才「何度も言わすな。四行だ、完全消滅したわけじゃない」


451 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:20:57.96 ID:33+2EfhZo
ジュニア「つまり、力は魔王に戻ったが、死んではいないって事か?」

大軍師「先日倒したタルウィを始めとする眷属、奴らは完全に消滅しました」

天才「よって、名士の話じゃその力は魔王に戻る。もちろん残り分だけだけどな」

大軍師「しかしアカ・マナフはその存在ごと消滅したわけではありません」

戦士「えぇっと……」

天才「タルウィらは蘇らす事は出来ねーが、アカ・マナフは出来るって事だ」

大軍師「ですが、その力を魔王自身がキープする可能性もあります」

戦士父「フルパワーの単独でくるか、魔力を削いでも護衛を作るかって事か」

隊長「奴の能力はまずいぞ。人間を操る事が出来るからな」

天才「そうだ。だからこそ気を付けろと事前に言っておく」

ジュニア「気を付けろって……対処法はあんのかよ……」

天才「……ねぇな」

戦士「操られたら……どうすんだよ?」

天才「……斬るしかねーだろうなぁ」

戦士「……っ」


452 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:22:03.82 ID:33+2EfhZo
天才「さーて、ボチボチ準備に取り掛かるとすんぞ」

大軍師「以上で宜しいですね?」

天才「南方魔道長は8方向の部隊長を選出して、均等に戦力を振り分けろ」

南方魔道長「了解」

天才「名代っちはバカどもが戻り次第合流して、火山へ向かってくれ」

名代「……承知仕った」

天才「お前ら親子はギリギリまでここで待機。戦況が動いたら準備に入れ」

戦士父「分かった」

戦士「……おう」

天才「お前ら二人は正面から魔道兵200名を率いて待機。万が一に備えろ」

ジュニア「万が一?」

天才「火山の噴火やら眷属の復活だ」

賢者「……分かったよ、ふぅ」

天才「おっしゃあ!! そんじゃ行くぞ!!」

一同「おぉ!!」


453 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:23:15.31 ID:33+2EfhZo
〜21時02分、北方司令部〜

左翼長「……」

カツカツカツ

騎士長「良かったのか?」

左翼長「……」

騎士長「別に、北へは何も出てなかったんだぞ?」

左翼長「……どんな事だろうが、絶対なんて事はねぇ」

騎士長「……」

左翼長「それが予言であれ、運命であれだ」

騎士長「まぁな」

左翼長「こっちは召喚隊が頑張ってる。多少の魔道兵抜いても踏ん張れんだろ」

騎士長「しかし、こうもすんなり兵を動かせるってのは気持ちいいもんだな」

左翼長「まぁな。今まではどこぞのバカが魔道機関を握ってやがったからなぁ……」

騎士長「左翼を解散させた真の狙いってのは……まさかこれか……?」

左翼長「俺に聞くな。連中の考えてる事は分からん。俺らは信じて従うだけだよ」


454 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:23:54.04 ID:33+2EfhZo
〜21時04分、南西砦〜

天才「……んーっ」

大軍師「眠そうですね」

天才「あーそういやぁ何ヶ月寝てねーんだっけか……」

大軍師「仮眠、取られたほうが良いのでは?」

天才「ハーッハッハ!」

大軍師「……」

天才「どうせあと数ヶ月内に死ぬ奴が、そんな無駄な時間使ってられるかっての」

大軍師「司令……」

天才「ゾディアックが間に合ったのはかなり大きい。これで一番厄介な奴が殺れるからな」

大軍師「ええ。前代未聞の作戦ですけれどね」

天才「……ハーッハッハ! それでこそ歴史に名を残せるってモンよ」

大軍師「……」

天才「安心しろ。汚名も全部、俺様が被ってやっからよ。ハーッハッハ」

大軍師「……あの、司令……っ」


455 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:24:44.32 ID:33+2EfhZo
天才「あーん?」

大軍師「やはり、死なずに勝てる策は……ないのですか?」

天才「……ないな」

大軍師「……っ」

天才「おそらく今回の戦いでゾディアックは失う。この意味は分かるよな?」

大軍師「残るは……自己犠牲の五行のみ……」

天才「……じゃあ答えは出てんだろ」

ザッザッザ

大軍師「……」

天才「いいんだよ。死ぬ奴が死ぬ。それは運命じゃねぇ……宿命だ」

大軍師「……っ」

天才「その死は必ず次の糧となる。無駄死にじゃねーんだ」

ザッザッザッザ

天才「死が終わりじゃねぇ。その先を見てこその軍師様だぞ? ハーッハッハッハ」

大軍師「……はい」


456 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:26:03.38 ID:33+2EfhZo
〜21時20分、南西砦北岸〜

博士「ここまでやって、何で止まってるのら!!」

工兵「し、しかし……っ、南西砦は交戦中でして……」

博士「アホー! 戦いが怖くて発明が出来るかなのら!」

グイッ…テクテクテク

工兵「あっ!」

博士「この配線を南西砦まで引けば、西方司令部……いや、本国とも繋がるのら!」

工兵「博士様……っ」

博士「……はぁー情けないのら」

工兵「……っ」

博士「もういいのら。怖いと思う奴は今すぐ司令部へ帰るのら!」

工兵「――っ!!」

博士「このくらい……一人でっ、出来るのら――!!」

グイィッ…ドテッ

博士「……い、痛い……くないのら……っ!」


457 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:27:36.21 ID:33+2EfhZo
工兵「……っ」

博士「戦って斬られる方が……よっぽど痛いのらぁ……っ」

グイッ…ズズズッ

博士「くぅ……っ」

工兵「…………っ!!」

博士「重いいぃぃ……っ!」

ガシッ

博士「!?」

工兵「……全員、残ります!」

博士「お前ら……」

工兵「そうですよ、何をこんな所で……ビビってんだよ俺は……っ!」

博士「いいのか?」

工兵「前線で戦ってる奴らの方が、よっぽど辛いんすよね! 馬鹿でしたよ……っ」

博士「……よし、それじゃあ一気に――」

ジリリッジリリッジリリッ


458 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:28:33.80 ID:33+2EfhZo
博士「!?」

ガチャッ

博士「こちら南西――」

助手『もっしもーし♪』

博士「……」

助手『ちょっとぉ!? 今切ろうとしてるでしょ!』

博士「……何なのら」

助手『工事は順調ですかぁ?』

博士「お前のせいで滞ったのら」

助手『まぁひどい』

博士「事実なのら。それで、何の用ら?」

助手『えっと、本国からの交換でーすっ♪』

博士「それならばさっさとそのように――」

プツッ…ジジーッ

博士「……こいつ」


459 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:29:13.99 ID:33+2EfhZo
ガチャッ

エリート『聞こえますか?』

博士「こちら南西砦中継所。僕は開発機関所属、博士なのら」

エリート『博士殿か。こちらは国軍本部より、右大臣エリートです』

博士「おぉ、エリート殿。どうかしたのら?」

エリート『魔王討伐の伝令があったので。大軍師殿は?』

博士「今はいないのら。随分前に戻ったようで、今は南西砦にいるのら」

エリート『そうでしたか。ならば伝言をお願い出来ますでしょうか?』

博士「伝言? うむ、構わないのら」

エリート『本国より王宮魔道兵を派遣致しました』

博士「王宮の?」

エリート『数は少ないですがお力添えになれば……と』

博士「了解したのら」

エリート『それとですね――』

博士「……!?」


460 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:30:03.82 ID:33+2EfhZo


エリート『それでは、宜しくお願い致します』

博士「了解したのら。では――」

エリート『あ、そうそう。総司令にもご伝言を』

博士「……?」

エリート『些細な事ではありますが、この機に乗じて東方司令部へ賊が侵入しました』

博士「何? 盗賊団なのら?」

エリート『こちらも現地調査に立ち会っていないので詳細までは……』

博士「了解したのら。伝えておくのら」

エリート『お願い致します。それでは』

プツッ…ツーッ…ガチャッ

助手『もっしもーし!』

博士「終わったから切るのら」

助手「ちょっと待ってぇ!!」

博士「何なのら……」


461 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:31:09.44 ID:33+2EfhZo
助手『西方司令部から、そちらに船が出航しましたー!』

博士「船……?」

助手『はいなっ♪ あ、そうそう! あと北方からも船が出たって電話がありました!』

博士「各地から船が……まぁ伝えれば分かるか」

助手『博士はいつお戻りになるの?』

博士「知らんのら。工事の進み次第なのら」

助手「はぁ……寂しい。早くこの手で抱き締め――」

ガチャン!!

博士「……ふーっ」

工兵「い、今……お話の途中だったのでは……?」

博士「伝令は何時間おきに来るのら?」

工兵「え、えぇと……偶数の2時間おきですかね……っ」

博士「次は22時か……。ちょうどいいのら」

工兵「……?」

博士「さて、一気に工事を進めるのら!」

工兵「は、はいっ!!」


462 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:32:02.39 ID:33+2EfhZo
〜21時11分、南西砦〜

戦士「……」

ザッザッザ

戦士父「飲むか?」

戦士「……酒か?」

戦士父「茶だ」

戦士「じゃあ貰うわ」

スッ

戦士父「……緊張してるか?」

戦士「そりゃ……すんだろ」

戦士父「そうか」

戦士「親父はしてねぇみたいだな。流石――」

スッ

戦士父「見てみろ」

戦士「……っ」


463 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:32:34.58 ID:33+2EfhZo
戦士父が戦士の前に開いて出した右手は、小刻みに震えていた。

戦士「……親父でも……緊張すんのか」

戦士父「……なぁ戦士」

戦士「ん?」

戦士父「お前、母さんの事……聞きたいか?」

戦士「!?」

戦士父「この先、俺もお前もいつ死んでもおかしくない」

戦士「……」

戦士父「死ぬ前に、知りたいか? もし知りたいなら――」

戦士「やめようや」

戦士父「……」

戦士「死ぬとか死なないとか、そんなん考えてもしょうがない」

戦士父「……」

戦士「生きるんだよ。死んじまったら終わりだ。生きなきゃ駄目なんだよ」

戦士父「お前……っ」


464 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/05/31(火) 18:34:05.11 ID:33+2EfhZo
戦士「そしたらよ、ゆっくり聞かせてくれよ」

戦士父「……ああ」

戦士「二人でよ、母さんの墓参りに行ってよ……報告しようぜ」

戦士父「二人でいいのか?」

戦士「……?」

スクッ

戦士父「俺は、母さんの分まで孫の顔を見なきゃならん」

戦士「――!!」

戦士父「みんなで行こう。それでいい」

ザッザッザ

戦士「……っ」

ゆらゆら揺れる茶の入ったグラス。その中にぼんやりと浮かぶ月の氷。

戦士「なーんか……こういう時って素直になれるよな」

顔を上げると戦士は茶を一気に飲み干し、左腕をゆっくりと上げて、そして回す。

昼よりも痛みの引いてきた身体を労うように頷き、戦士は南西砦内へと戻って行った。



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