■戻る■ 下へ
女「わたしを助けてくれ……」
1 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 18:48:27.74 ID:egiNR6t40
かつて小さな村に一人の異形の子が生まれた。

ちょうど左目に位置する部分が、彼の場合は肉塊に覆われ、
眼球が体内に閉じ込められてしまっていた。
それでも、母親は子を産めた喜びに歓喜の涙を流した。

他の者とは異なる身体ではあるが、
自らの愛すべき子に変わりはないと。
人一倍の愛情を持って、この子を育てていこうと。

母の子に対する深い愛がそこにはあった。

けれど。

『……捨ててこい』

子の父親は違った。

醜い顔の我が子を視界に入れた時、
憐れみよりも先に嫌悪を感じた。

この子を、この醜悪な生き物を、
私は一生愛することは出来ない。
それすら出来ない自分は、父親として欠陥がある。


2 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 18:50:24.29 ID:egiNR6t40
異形なのは我が子であるのに。
それなのに、非難されるべき人間が自らとなってしまう。
彼はそんな未来が恐ろしかったのかもしれない。

我が子を必死に抱きとめようと、
離さまいとする母の両腕から無理矢理赤子を引きはがし、
彼は一人、山へと向かった。

外は、強く激しい雨が地面に降り続いていた。

どこで彼が子を捨てたのかは、
最早本人ですら覚えていないだろう……。

山の中では、降り続ける豪雨が木の葉に叩き付けられる。

そんな騒々しい中、小さく誰かの泣き喚く声だけが、
雨が止んだ後も、止むことはなかった。


3 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 18:59:05.49 ID:9rwqaYX80
鬼太郎+どろろみたいだ


4 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 19:16:02.28 ID:prst9T6ZO
egiNR6t40先生の作品が読めるのはVipだけ!!


5 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 19:17:48.40 ID:egiNR6t40
あれから何年もの月日が経った。

日が暮れ、活気づいていた街中も今では静まり返り、
夜の者たちがひっそりと蠢き始める。

そんな中、暗闇の狭い路地裏に一人の女性がいた。
片足をひきずりながら、胸には何かを抱きながら。

荒い息遣いで、必死に前へと進む様は、
どこかしら狂気に囚われているようにも感じられる。

女「……あ、と少し……」

女「あと少しだから……」

誰に対する励ましか。

自らを叱咤しているのか、それとも……。

女性が錆び付いた階段を目の前にした時、
目的地へやっと辿り着いたことに安堵の息を漏らした。


6 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 19:21:41.61 ID:27zaQRnCO
ふむ


7 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 19:29:03.50 ID:egiNR6t40
殺風景な部屋の中。
埃を被った家具の上で、黒い電話が音を立てた。

男「…………」

眉根をよせながらも、しぶしぶ受話器を取る。

男「こんな夜遅くに何だ」

『……やあ、お久しぶりです』

妙に耳にまとわりつくような声だった。
男性のものとしては幾らか高い、そんな声質。

その後、相手は名も述べたが、
自分の記憶のものとはどれも一致しなかった。

しかし、こちらの電話番号を知っているということは、
同じ業界で生きている何処かしらの誰かなのだろう。

男「……それで用件は?」

『こんなことを貴方に話すのは気が引けるのですが』

『実はお願いがあるのです』

男「…………」


8 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 19:42:37.40 ID:2HqDOr/H0
男「…………」

『もしかしたら、今日』

『貴方の元へ一人の女が現れるかもしれません』

男「……ん?」

『それで……その者のことなんですが』

言い難そうにする相手側の反応を考えて、
この話の意味を理解する。

男「生きていられると困ると?」

『……話が早くて助かります。流石ですね』

どこの世界にもいる。

運悪く犯罪に巻き込まれる者。
無関係であるはずが、当事者になってしまう者。

可哀想だと嘆くことは出来る。
しかし、それを助けようなどと何処の誰が思うか。


9 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 19:44:46.77 ID:2HqDOr/H0
男「見返りは?」

『ご希望の額をおっしゃって頂ければ』

男「…………」

何かきな臭いな。
そこまで、その女に価値があると?

しかし。

男「……分かった」

男「相手を確保したら、こちらからまた連絡しよう」

もう引く訳にいかなかった。


10 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 19:46:17.99 ID:62IYiHL9O
<◎>視援<◎>


11 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 20:13:02.30 ID:2HqDOr/H0
それから一時間後。

女「わたしを助けてくれ……」

男「…………」

男「とりあえず、中に入れ」

女「……恩に切る」

男「…………」

漠然と胸の中に違和感が生じ始める。

何かがおかしい。

女は椅子に腰掛けながら、痛みに堪えているせいか、
脂汗を滲ませ、表情を歪めていた。

男「まず、手当をしないとな」

女「私はいい……だから、妹を」

男「…………」


12 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 20:15:05.84 ID:2HqDOr/H0
彼女が胸に抱えている小包のことだろうか。
ところどころが赤で滲み、人の身体にしては小さ過ぎた。

男「貸してくれ」

女「……あっ」

鼻の奥をつくような、むっとする鉄の臭い。
嗅ぎ慣れたものだったが、これは。

女「……頼む、治してくれ」

男「…………」

包みを剥がすとそこにあったのは、目を大きく見開いた、
少女の頭部だった。

首根がばっくりと割れ、肉片を覗かせていた。

女「どうだろうか? 治せるか?」

男「……そう思うか?」

女「何を言っている? まだ生きているだろう、頼む」

男「…………」



13 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 20:17:47.80 ID:QeYjOGw30
しえん


14 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/13(土) 20:35:43.39 ID:Tx/1iH8S0
なんという遅筆っぷり


18 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 23:28:30.75 ID:Hztuogqg0 BE:918801427-2BP(0)
sssp://img.2ch.net/ico/syobo1.gif


19 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 23:28:44.39 ID:bZ0No5zG0
開けた包みを閉じ直し、
ゆっくりとした動作でベットの隅へ置く。

怪訝そうな様子でこちらを伺っている女を尻目に、
年代物の机に置かれた、大壜を掴んだ。

男「まずは君の治療が先だ」

女「私は後でいい、妹を頼む」

男「……ここの医療では無理だ」

男「彼女のことは、あとで病院に連れて行こう」

女「し、しかし……」

言い終える前に彼女の左脚を上げた。
堪え難い苦痛に女の顔が歪み、吐く息に疲労が滲む。

出血は止まっているようだが、この傷から見るに銃痕か。
幸いなことに、弾は貫通しているようだ。

男「少し痛むぞ……」

有無を言わせず、壜に入ったアルコールを傷口へ注ぐ。
その激痛に、女は小さく叫び声を上げた。


20 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 23:31:45.46 ID:bZ0No5zG0
男「よし、これでいい」

軽い処置をして、包帯を巻いた後、
気休めに、痛み止めの注射を一本、打っておく。

乱れた息を吐きながら、ベットに腰掛けた女は、
未だ大事そうに妹の頭部を胸に抱え込んでいる。

男「さて、話をしようか」

女「…………」

男「どうして、俺に助けを求めた?」

女「……父から言われていたから」

男「父?」

女「以前、住所が書かれた紙を手渡された」

女「『何かあったら、ここの人を頼れ』と」

男「…………」

どうやら、偶然という訳ではなさそうだ。


21 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 23:47:03.77 ID:bZ0No5zG0
そこで父親の名前を聞いてみるが、これも聞き覚えのないものだった。
けれど、彼女から手渡された萎れた紙には、
しっかりとここの住所が記されている。

しかし、接点のない人物が、
自らの窮地に、あえて見ず知らずの他人を選ぶのだろうか。

男「で……その父親は?」

女「……死んだ」

男「…………」

我ながら愚かな質問だった。
だからこそ、彼女はこの家の門を叩いたのだろう。

女「買い物を終え、自宅に帰ってみるとそこは血の海だった」

女「何とか、生きていた妹だけは連れてきたが」

女「逃げる最中に、私も足を撃たれたんだ」

男「……それで、ここにきたわけか」

女「……迷惑をかけてすまない」

男「いや」

幾つか疑問点がある。


22 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 23:57:33.23 ID:xR3ffFyj0
おいはやくしろ


23 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/13(土) 23:57:50.17 ID:bZ0No5zG0
まずは、この女が来る前にかかってきた一本の電話。

電話の主は、彼女がここへ来ることに気付いていた。
あえて先に情報を漏らし、取引の条件を持ち出してまでも。

今の話から考えるのに、
彼女の一家を惨殺したのは紛れもなく奴だろう。

だからこそ分からない。

何故、そこまで気付いているのなら、
自らの手で彼女を始末する手段に出なかったのか。

他人に獲物の命を委ねるような、愚かな策を選んだ?

男「…………」

おもむろに立ち上がり、机の前へと歩いた。

男「車の運転は出来るか?」

女「……え? いや……まあ、多少は大丈夫だが」

男「よし、足の痛みはどうだ?」

女「ああ、さきほどの注射で何とか和らいだよ」

男「それは良かった……だが」

女「え?」


24 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 00:08:38.87 ID:ZBmBaOb10
男「この家を出た五十メートルほど先にガレージがある」

男「そこに俺の車が一台止めてあるんだが」

男「……そこまで全力疾走出来るか?」

女「…………」

返答を聞く前に、車の鍵を空へと投げる。
銀色の軌跡を描きながら、
吸い込まれるように、彼女の座るベットに落ちた。

男「死にたくなければ、走れ」

女「……っ」

男「合図は俺が出す。その瞬間に飛び出すんだ」

男「ガレージの正確な位置は後で教える」

男「車に乗り込んだら、すぐさまこの家の前へと付けろ」

勢いよく、机の引き出しを放つ。


25 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 00:19:17.56 ID:ZBmBaOb10
男「十秒でいい」

男「その間に俺が来なかったら……先に行け」

女「ど、どこへ行けば……」

男「ここじゃない何処かだ。後は自分で考えろ」

女「…………」

机の裏に備え付けられていたのは、一丁の自動式拳銃。
無理矢理テープを剥がし、右手で銃把を握りしめる。

男「この際だ。後一つ言っておこう」

女「……な、何だ」

男「その包みはここに置いて行け」

女「い、嫌だっ」

男「……本来なら時間をかけて、優しく諭すんだが」

男「今回はそう言ってられる状況でないんでな」

慣れた動作でスライドを引くと、音を立てて、
一つの銃弾が薬室へと送り込まれた。

準備は完了した。
後は引き金を引くだけ。


26 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 00:22:08.92 ID:PyepBRyuO
<◎>視援<◎>


27 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 00:28:54.34 ID:ZBmBaOb10
男「お前は、いつまで幻想に囚われてる?」

男「いいか、愛する妹はもう死んだ」

女「……ち、違う……」

女「まだ……死んでいない……」

狼狽した女を見て、溜め息が漏れる。

こんな余興に付き合っていられるほど、時間はない。

事実を認めたくない心中は察するが、
そんなことではこの先、生き残るのは困難だろう。

普段なら、かかわりを持たないのが主義だが。

逃走するためには、彼女の手助けが必要だった。
一人ではこの窮地を脱することは難しい。


28 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 00:34:12.44 ID:ZBmBaOb10
男「手元の、彼女をよく見ろ」

男「開かれ続けた瞼、生気を失った瞳」

男「胴体が既にないから、心臓の鼓動すら聞く事が出来ないはずだ」

男「冷たくなったその頭部が、どうして生きていると言える?」

女「…………」

男「現実から逃げ、沸き起こる感情に目を背けるな」

男「それを敵に向けろ」

男「復讐の炎を燃やし続けろ」

女「……わ、わたしにアイツらが殺せるのか……?」

男「……生き延びれば、そうすることも可能だ」

男「生き延びる術は俺が教えてやる」

男「人を殺す技術も俺が磨いてやる」

女「…………」

静まり返った闇の中、汚れない無垢な一人の女がいた。
そんな彼女が、目の前で黒ずんでゆく。

その様を眺め……“一つ目の男”は汚く笑った。


29 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 01:05:24.53 ID:B5tKQRzuO
-=◎=-

支援


30 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 01:12:51.70 ID:KXyaCSzN0
良いな


31 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/14(日) 01:21:29.53 ID:juuAC+1l0
もし落ちても完結させてくれると信じて寝るす


32 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/14(日) 02:03:29.74 ID:RK9ny2jt0
そのために、私は保守しよう・・・


33 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 02:12:04.01 ID:m3z2WMaw0
なんで書き溜めてからスレ立てないの?
書き溜めてから改めてスレ立て直せよ、保守ばっかの駄スレになるじゃねーかカス


34 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 03:15:01.12 ID:gyVPO6o60
だが保守


44 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/14(日) 07:29:35.41 ID:juuAC+1l0
>>33こういう思い上がった読者様増えたよね
VIPは思いつきで気軽にスレ立てて遊べる場所で
面白そうだから食いついて、もっと見せてと頼んでる側なのにね


48 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/14(日) 12:25:13.96 ID:tvHaQ9xh0
続きはまだかな?


51 名前:1 [] 投稿日:2010/11/14(日) 14:16:03.80 ID:FSQEn6vc0
もう完結したよっ
スレ落としていいです


52 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 14:22:07.96 ID:4g5VObFi0
両手が右手の男「支援しよう」


53 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/14(日) 15:08:03.15 ID:tvHaQ9xh0
>>51
え?










え?


54 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 16:37:01.67 ID:2u/uCUar0
ちょwwwwwww
完結してるんなら投下してくれよwwwwwww


55 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/14(日) 16:38:06.46 ID:PyepBRyuO
>>51
え?


56 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/14(日) 17:00:38.77 ID:EbLbshUhO
>>51が本当ならこれいかに・・・・・・

だれか続き書けるヤツいる?


57 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 17:21:34.82 ID:RLVFEUgv0
とりあえず24時まで保守するか
>>51はIDが>>1のIDと違うのがネックなんだよな…


58 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 18:37:26.00 ID:RLVFEUgv0
保守


59 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 19:16:02.07 ID:cE5/Ecz60
おいおいおいおいお木山先生スレが落ちちゃったじゃねえかよお


60 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 20:15:55.86 ID:cE5/Ecz60


61 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 20:47:34.30 ID:B5tKQRzuO
今日の日付がかわったら保守はしない


66 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/14(日) 23:49:02.22 ID:EbLbshUhO
これはもうダメかもわからんね


67 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/14(日) 23:50:57.84 ID:RLVFEUgv0
楽しみにしていたんだが残念だ…



戻る 上へ