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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その17
548 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:57:21.43 ID:JbsLYTIo
〜最北の塔〜

シュタッ

盗賊「……」

キョロキョロッ…テクテクテク

盗賊(あとは……蜘蛛切を…)

盗賊が口元に布を上げると同時に、後方で何かが光る。

盗賊「!?」

タンッ!!……ヒュバッ

盗賊(クナイ…!?)

盗賊「…何者だ」

ザッザッザッザッザ

火忍「そりゃあこっちの台詞だぜ!」

盗賊「……火!?」

火忍「どこの手の者だぁ…?」

盗賊「い、いや…私は…っ」


549 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:58:08.02 ID:JbsLYTIo
火忍「女…か?はんっ!……良い乳してるじゃねぇか!」

盗賊「はぁ!?」

火忍「サラシの上からでも分かる…。お前、好みだぜぇ」

盗賊「……」

火忍「どーれ、ちょっくら痛めつけて…オシオキしちゃうかねぇ!」

火忍は再びクナイを手に取り、盗賊めがけ二本投げ飛ばす。

盗賊「……っ」

ヒュンッ!!

火忍「ただのクナイじゃあねーぞぉ?」

盗賊「分かっておるわ!火薬付きだろうっ!」

火忍「何っ!?」

二本のクナイを潜り抜けた盗賊は、一気に火忍の前へと間合いを詰める。

爆発したクナイの黒煙が、盗賊の身体を飲み込む。

キラッ

火忍「煙に身を隠し背後にってか!?浅すぎんぜ!」


550 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:59:32.10 ID:JbsLYTIo
背後に光るクナイを、火忍は小太刀で叩き落とす。

盗賊「……違うな」

火忍「……え…!?」

ジャラッ

背後を向いた火忍の前に、煙の中から盗賊が姿を現す。

火忍「……っ!!」

盗賊「……捕捉」

ジャララッ…ガシィ!!

火忍「…く…さりっ…!?」

盗賊「……」

火忍(煙幕に隠して…鎖だけを背後から…っ!?…コ、コイツ…!)

ギュウゥゥッ

火忍(コイツ…やっぱり!……やわらけぇ〜)

盗賊「……?」

火忍「さ、最高……だ…っ……」


551 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 18:01:25.60 ID:JbsLYTIo
盗賊「はぁ…!?」

背後から鎖で羽交い絞める盗賊が、きょとんとした表情で火忍を見る。

ガサッ

盗賊「……!?」

風忍「火!何をしている!?」

盗賊「……風…?」

背後より飛び出してきた風忍を見て、盗賊は声を上げる。

風忍「お前か…怪しげなおん…おん……おん…な…っ」

盗賊「……」

パッ…ジャラジャラッ…ドサッ

火忍「ゲホッ…!ごほ…ごほっ!!」

風忍「……ひ、姫…!?」

盗賊「……」

盗賊は口元の布を下ろし、照れたように俯き気味で微笑む。

火忍「あ…あのさぁ…。姫って、ねぇ……風さん…?」

風忍「……姫っ!?何故…このような所へ…!!」


552 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 18:02:14.38 ID:JbsLYTIo


盗賊「あ、あの……」

火忍「……」

盗賊「もう…いいから…」

火忍「そうはいきません」

盗賊「そんな土下座されても…えぇと…」

チラッ

風忍「自業自得です。放っておきましょう」

盗賊「……」

風忍「それで、お間違いないのですね?」

盗賊「……」

スッ

風忍「これ…は…?」

盗賊「兄様がくれた…特別なクナイだと…」

差し出されたクナイを、風忍は一礼し拝借する。


553 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 18:03:00.99 ID:JbsLYTIo
風忍「…確かに藤蔵の物ですね。五行を付加した…特殊なクナイです」

盗賊「…そっか」

ドカッ!!

盗賊「……?」

火忍「…ちく…しょぉ……」

地面を拳で叩きつけ、火忍は下唇を噛む。

火忍「若…っ、……俺は…俺は…っ!」

風忍「……っ」

盗賊「兄様は……もう…居ない」

火忍「ちくしょう…っ」

風忍「……姫。一度、藤蔵へ戻りましょう」

盗賊「!?」

風忍「私達だけの問題ではありません…。御館様にも…」

盗賊「……」

――「それは良い考えだと思います…」


554 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 18:04:00.75 ID:JbsLYTIo
ザッザッザ

盗賊「っ!?」

名代「ご無沙汰しております…。このような所で会うとは…因果なものですね…」

盗賊「名代…さん…っ」

名代「私にも詳細を聞かせては頂けませんか?」

盗賊「……はい」

盗賊は改めて、塔での出来事を一同へ申し伝える。

名代「……そう…でしたか」

火忍「ネクロマンサーって化物は何を考えてんだぁ!?」

名代「ヤマタノオロチと龍脈ですよ…」

風忍「……!?」

名代「以前、私も御館様から助言頂いて…分かったのですが…」

盗賊「父様が…?」

名代「充分に警戒はしていたつもりですが…甘かったようです」

名代は右手にした扇子を強く握り締め、大きく息を吐いた。


555 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/07/22(木) 18:41:04.31 ID:JbsLYTIo
プリーストの魔法形態は…そのうち出てくるかもしれませんね!
回復魔法はセブンセンシズです!!

王族女性そういえば居ませんね…

>>531
こっちの師匠シリーズは怖い話というよりエロイ話に…

ご支援ありがとうございました!それでは!ノシ


561 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 20:17:27.41 ID:bYs/IUDO
王女、女王「……」


562 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 21:06:37.43 ID:c/NjDJk0
>>561
パーティで組んだことがないタイプってことでは?


563 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 22:53:45.83 ID:5GKAXYAO
盗賊は月読を普通に使えてそうだな


564 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 23:17:54.03 ID:pQlr7D60
師匠シリーズってなにかと思ったら怖い話だったのか
これにちなんでというか、おまけのお題は怖い話関係でお願い死体です
毎日本当にお憑かれさまです


565 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 23:42:32.33 ID:k22R96k0
ふと思ったがクナイに五行が付加出来たなら、他の五行使って命落とすより安全かつ効率いいな
やり方わかったらノーベル賞的なもの授与されそうだけど


566 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 00:00:54.99 ID:1UdSASYo


風忍「えぇ…っ!?」

火忍「蜘蛛切を……ですか…!?」

盗賊「……うん」

風忍「参りましたね……」

盗賊「……」

名代「とりあえず塔内を開放しますので、探すだけ探しましょう」

火忍「探索こそ忍の仕事だっ!ぜってぇ見つけ出す…!」

盗賊「…ありがとう」

火忍「い、いやっ…そんな…っ!」

風忍「……」

火忍「姫の為っすから…!こんなモン全然楽勝っつーかその…」

風忍「ほら、行くぞ……」

火忍「お、おうっ!」

盗賊「……?」


567 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 00:01:33.24 ID:1UdSASYo
テクテクテク

火忍「酷い損壊だな…」

名代「これでも、だいぶ整理した方なんですよ」

風忍「若の術は……ここまでの威力であったとは…っ」

盗賊「……」

風忍「それだけに…惜しい……」

盗賊「…うん」

火忍「俺は上を見てくる。こっちは頼むぞ」

風忍「ああ。任されよ」

シュバッ…タタタッ…

風忍「姫はそちらを…。私は南側を探します」

盗賊「うん。すまんな…本当に……」

風忍「気になさいまするな。我ら、姫様の手足でございまするぞ?」

盗賊「私はもう藤蔵の人間ではない…」

風忍「そんな事はありません。誰もそのような事…思ってはおりませぬ」


569 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 00:05:17.21 ID:1UdSASYo
盗賊「風……」

名代「……」

風忍「さて…と……」

テクテクテク

名代「撤去作業を再開して下さい。但し、瓦礫以外はすぐに報告を…」

足軽「ははぁ!」

名代「では、また後ほど……」

名代は頭を下げ、塔のそばを離れる。

盗賊「……」

テクテクテク

盗賊(兄様……私は…信じてる)

ザッザッ…ゴソゴソッ

盗賊(兄様は決して…あれしきの事で……)

ゴソゴソゴソッ…ガサガサッ

盗賊(だから…私は悲しまない…。また…必ず…!)


570 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 00:10:46.31 ID:1UdSASYo
ゴトンッ

盗賊「……?」

テクテクテク

盗賊「……っ!!」

瓦礫から落ち、盗賊の足元に佇む、影忍の手荷物。

防水加工の施された頑丈な布は、多少の解れや穴があるものの、ほぼ無傷である。

盗賊「……」

盗賊はそれを、ゆっくりと拾い上げる。

盗賊「……兄様」

ゴソ…

中に詰められたクナイや手裏剣、着替えの中から、盗賊は一本の筒を手に取る。

盗賊「……?」

ゴソゴソッ…キュポッ

盗賊「――っ!!」

筒の中に広がるは桜の木。大きな紙に描かれた…盗賊の描いた桜の木の絵であった。


571 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 00:15:29.96 ID:1UdSASYo
ギュッ

盗賊「……ふう…ぅ…っ!!」

ドサッ

盗賊「……兄……さま…ぁ…!!」

テクテクテク

火忍「おーい!あった……あん?」

風忍「……しっ」

火忍「……?」

風忍「……」

火忍「あ…っ」

風忍「行こう…。今は…一人に……」

火忍「……だな」

二人の忍は、荷袋を抱きかかえながら涙する盗賊を横目に、その場を去った。

しばしその場には静寂な刻が流れる。ほんのわずかの音…。

風に揺れる葉の音。海をうねんる波の音。盗賊のすすり泣く声を残して…。


572 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 00:23:52.38 ID:1UdSASYo
>>561
ごめんなさい…。本国の王族っていう>>534さんの意見でした…

>>564
うへぇ…怖い話ですか!チャレンジしてみます!

〜オマケ〜

漁師「ほらっ」

盗賊「……ありが…っ!!」

バッ!!……ゴソゴソゴソッ!!

盗賊「……良かったぁ!!」

老人「どうした?そんな慌てて……」

盗賊「……」

モゾッ

海女「何代そりゃ?誰かの手形かい…?」

盗賊「……マスク・ド・ジーニアスのだ!」

漁師「なんじゃそりゃ…」

盗賊(兄様!防水加工の袋…ありがとう!死なずに済んだよ!!)

キラキラキラ

老人「なんだか…至福の笑みを浮かべとるのぅ……」


577 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:02:20.65 ID:E5gLkEwo


盗賊「……」

テクテクテク

火忍「あぁ!姫っ!!どこにいったかと思いましたよ!ハハハ」

風忍(白々しい……)

盗賊「……ごめん」

火忍「それよりほらっ!ありましたよ!!」

ズイッ

盗賊「!?」

風忍「蜘蛛切も無事で、良かったですね」

盗賊「……うんっ。ありがとう」

火忍「いえいえ…ひっ、姫の…為ですから…」

風忍(……相変わらず…分かりやすい奴)

盗賊「…火は頼りになるな。ふふっ」

火忍「…あ、その…ハ、ハハハ…ッ!!」


578 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:02:46.25 ID:E5gLkEwo


風忍「では、参られますか」

盗賊「うん……」

風忍「大丈夫ですよ。そんなご心配なされまするな」

盗賊「……?」

火忍「みんな待ってます!…もちろん、御館様も…っ」

盗賊「……」

テクテクテク

風忍「名代様、これより藤蔵へ向かいまするが…?」

名代「そうですね…。同行したいところですが…流石に…」

瓦礫の撤去作業を進める足軽達を、振り向き見ながら名代は呟く。

風忍「左様でござすまするか…。それは……」

火忍「……俺、残るよ」

盗賊「…火?」

名代「いえっ、そのようなわけには……」


579 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:03:51.07 ID:E5gLkEwo
火忍「名代様の口から説明して頂いた方が、分かりやすいでしょう」

名代「火忍殿……」

火忍「それに……」

チラリ

盗賊「……?」

テクテクテク…ガシッ

風忍「おい…本当に良いのか?……ボソボソ」

火忍「そりゃ俺だって行きたいさ…!姫様とだって久し振りだし…ボソボソ」

風忍「前回会えなかったんだから…なんなら俺が残……」

火忍「……姫にご無礼を働いた罰だ。俺はここに残る」

風忍「…無礼?」

火忍「……姫の…あのっ。えぇと…何と言うかその…胸を…ボソボソ」

風忍「……はっ?」

火忍「姫とは知らなかったとは言え…顔を押し付け……」

ガシィッ!!


580 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:04:31.37 ID:E5gLkEwo
風忍「…貴様っ!なんという…っ!」

火忍「だ、だから…罰として……」

風忍「……」

火忍「それに…そんな事が御館様に知れてみろ!俺はコレ…だ」

右手で己の首を水平になぞり、打ち首の仕草を真似る火忍。

風忍「……尤も」

火忍「…という事で、ほとぼり冷めるまで留まる」

風忍「……分かった」

盗賊「…あのー」

風忍「火がここに残ります。名代様はぜひご一緒に…」

名代「よ、宜しいので…?」

火忍「もう喜んで!はははっ!」

風忍「では頼んだぞ。……参りましょうか」

名代「…それでは、お言葉に甘えて」

名代は照れる火忍に、深々と頭を下げた。


581 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:05:12.68 ID:E5gLkEwo


火忍「それでは姫、ご武運を!」

盗賊「火…。お前もな…っ!」

火忍「有難き御言葉っ!!」

風忍「戻りましたら宴を催しましょう」

火忍「!?」

風忍「姫様の舞踊など、久し振りにご披露頂けませぬか?」

盗賊「ば、馬鹿者っ!あんなもの幼少の頃の戯れ…」

風忍「いやいや…お上手でしたぞぉ?今はこのようにお美しく…」

盗賊「たわけっ!!」

風忍「はははっ、これは失礼…!では行きましょう!」

チラッ

火忍「――っ!!」

テクテクテクテクテク

火忍「あんのヤロウ…ッ!!次会ったら覚えとけよぉ!!」



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