■戻る■ 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その37
943 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 17:57:48.76 ID:qPeVpA/2o
北方司令「立て、東方司令。立たぬのならこれまでだな」

東方司令「……ふ、ふふっ」

 ヨロッ ポタタッ

東方司令「図に……乗るなよ、兄くん」

北方司令「……」

東方司令「いや、お前は兄くんではない。兄くんならばもっと……」

北方司令「戯言はここまでだ」

東方司令「こんな回りくどい真似はせず、一撃で仕留めにくる」

北方司令「……?」

東方司令「兄くんはボクの強さを分かっている。恐れている」

北方司令「何を……」

東方司令「所詮、お前は上辺だけの兄くんに過ぎないって事だ」

北方司令「何を……言っているッ!」

東方司令「ま、兄くんの深層を理解せず、上辺だけの知識を得たなら、そんなものだろうな」ペッ

北方司令「生意気なのだよッ、貴様はぁ!」


944 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 17:59:58.99 ID:qPeVpA/2o
 ビュオッ!! ガギギイイィィィィ!!

北方司令「……ッ」

東方司令「兄くんはどんなに自分が優位であろうと、決してボクには斬りかかったりはしない」

北方司令「……!?」

東方司令「何故か? いちいちそんな事h秋至りするなよ?」

 ゴゴゴゴゴゴゴ……

北方司令「……ッ」

東方司令「威圧が萎縮しているのが、手に取るように分かるよ……兄くん」

北方司令「何……故だッ、私は……兄だぞ!」

東方司令「その考えが既に兄くんのものではない」

北方司令「……ッ」

東方司令「いちいち話すのもバカらしいけど、まぁいっか」ググッ

北方司令「ッ!?」

東方司令「しっかり踏ん張らないと、このまま真っ二つだぞ?」グググッ

北方司令「グ……クゥ!!」


945 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:01:54.03 ID:qPeVpA/2o
 ビキキッ!! バキイイィィィィン!!

北方司令「!?」

東方司令「そんな剣でコレを防げるわけないだろ。バカか」ザシャッ

北方司令「――ッ!!」ドシャッ

東方司令「……兄くんは昔から、尊敬する人がいてね」

北方司令「……ああ」

東方司令「その人のように強くなりたいと、剣術を磨いていた」

北方司令「それが……何だ」

東方司令「剣の腕を磨き、軍略を学び、心身共に鍛えてきた」

北方司令「だからッ、何だと言うのだ!」

東方司令「しかし兄くんは悟った。凡夫であると。自分は弱者だと」

北方司令「ああそうさッ。だから――」

東方司令「どうして悟った?」

北方司令「……そ……れは」

東方司令「そうだ。ボクが居たからだ。自分よりも圧倒的な才能を持つ者に出会ってしまったからだ」


946 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:02:30.91 ID:qPeVpA/2o
北方司令「……ッ」

東方司令「しかもそれが実の妹。常に目の前に居る存在。兄くんは毎日感じただろうな」

北方司令「屈辱をか? ククッ、そうかもしれんな」

東方司令「違う」

北方司令「……?」

東方司令「そうか……。そこまでの深層心理は分からないのか」

北方司令「何を……言っている」

東方司令「兄くんは……そうか……」

北方司令「……ッ。もう良いッ! お喋りはここまでだァ!!」

東方司令「兄くんは……そこまで……想って……っ」ツツー

北方司令「何を涙しているッ! 実の兄に剣を向けてッ、懺悔したかァ!?」

 ドズッ!! ブシュウウゥゥゥゥ

北方司令「あ……グウゥ!?」

東方司令「……お前は兄くんなんかじゃない。本物の兄くんはどこだ?」ズグッ

北方司令「ッガアアァァ……ッ!」ビシャッ


947 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:02:59.04 ID:qPeVpA/2o
東方司令「言え。言わぬのならこのまま殺す」ズググッ

北方司令「な、何を……言って……ッ、本物はこのッ、私――」

 ザンッ!! ポタタッ……ドサッ

東方司令「……」カシャッ

北方司令「…………」

東方司令「どこかにあるはずだ。本物の兄くんが。本体が……」

 ザッザッザッ……

東方司令「こんなものは本物なんかじゃない……っ。本物の兄くんはもっと……」

 ザッザッ……ザッ……

東方司令「強くて……優しくて……っ」

 ザッ……ドサッ

東方司令「……兄……くん」

 アンデッドである北方司令を破った東方司令は出血により意識を失い、

 重い足取りの後、その場へと力なく倒れこんだ。

 朦朧とする意識の中、幼き日々の記憶がぼんやりと浮かび上がっていた。


948 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:03:31.70 ID:qPeVpA/2o
……――

東方司令『……なぁ、兄くん』

北方司令『ん?』

東方司令『兄くんはどうして、お師匠に弟子入りしたんだ?』

北方司令『私はあの方に憧れていたからだよ。あの方のように強くありたいと願ったからだ』

東方司令『そう、か』

北方司令『だが、私にそんな才能は微塵もなかった』

東方司令『……』

北方司令『そんな私がどうして、弟子入り出来たと思う?』

東方司令『……ボクが……いたから』

北方司令『そうだ。お前のお陰で私も弟子入りする事だ出来たんだ』

東方司令『でもっ、そんなの……』

北方司令『なぁ東方司令、お前の剣は超一流だ』

東方司令『……』

北方司令『私はおろか、兄弟子すらをも越えている。いずれはお師匠に匹敵するやもしれん』


949 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:04:00.69 ID:qPeVpA/2o
東方司令『兄くん……』

北方司令『そんなお前の傍に居て、私はとても悔しかった。羨ましかったさ』

東方司令『……っ』

北方司令『だが不思議なものだな。最も身近な存在であるお前が天賦の才を持っている』

東方司令『……みたいだね。ボクは何とも思わないけど』

北方司令『それで良いんだよ。それが1番なのさ』

東方司令『どういう事だよ? それに、兄くんは自分が強くなりたかったんだろ?』

北方司令『ああ、強くなりたかった。でもそれは自分の為じゃない』

東方司令『……?』

北方司令『たった1人の家族である東方司令、お前を守る為に強くなりたかった』

東方司令『――――っ!!』

北方司令『だからそんな東方司令が、自衛出来る強さを持つならば、それが1番理想的なのさ』

東方司令『兄……くん……っ!』

北方司令『私の夢は叶った。だから私は他人の夢を叶えるべく、国軍に入る事にしたんだよ』

――……


950 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:04:47.78 ID:qPeVpA/2o
 ピクッ

ネクロマンサー「……」

召喚士「どこを見ている!!」ゴガアアァァ!!

ネクロマンサー「クッ、ククッ!」

召喚士「何がおかしいっ!」

ネクロマンサー「いえいえ。ある程度の予想はしていましたが、まさかここまでとはねぇ」

魔道士「……っ」

ネクロマンサー「全てが思い通りになってしまえば面白いものも面白くはない」

召喚士「何を言う……」

ネクロマンサー「しかし、こうも思い通り事が進まないとなると……些か、頭に来ますね」

召喚士「来ないのなら、このままトドメをさしてやるっ!」ザッ

魔道士「召喚士さんっ!」

召喚士「大丈夫です。魔力はグッと抑えますから!」

 キュイイイイィィィィ ゴゴオオォォォォ!!

ネクロマンサー「!?」


951 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:05:28.14 ID:qPeVpA/2o
召喚士「行けっ! シルフ! サラマンダー! ノーム! ウンディーネ!」

 シュイイイイィィィィン

ネクロマンサー「こ、これは……ッ」ズザッ

召喚士「行くぞ……4属性合体……!!」

ネクロマンサー「……面倒ですね、仕方ない」フワッ

魔道士「逃がしませんっ!!」

 ドッドオオオオォォォォン!!

ネクロマンサー「……ククッ」バッ

 シャキイイィィィィン!! ズザザアァ

召喚士「!?」

魔道士「こ、この人は……っ」

ネクロマンサー「あとは頼みましたよ、ククッ」ブンッ

召喚士「待てっ、逃がすか――」

 ザッザッザッ……ジャキッ

魔剣士「……」


952 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:05:59.46 ID:qPeVpA/2o


 ガシィ!!

女賢者「さぁ、逃がしはしないわよっ」

お父「……グウ……ウッ!!」

女賢者「力で振り解こうったってそうはいかないっ! 魔力で固定しているからね」

お父「貴……様ッ」

女賢者「あとは五行を放てば、貴方も消滅よ」

お父「やめ……っろ、やめろおおぉぉ!!」

女賢者「もうっ、遅いのよ! 何もかもぉ!」

お父「違うっ!! やめろと言っているのだっ!!」

女賢者「……?」

剣士「な、何か様子が……おかしい……」

弓使い「……っ」

幼女「お父……っ、お父……なのっ?」

お父「やめねばお前まで……っ、死ぬと言っているのだ……優女!」


953 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:06:47.98 ID:qPeVpA/2o
女賢者「――!?」

お父「そっ、れに……このままではお前は五行を撃てぬ……っ」ググッ

女賢者「お父っ、あなた……記憶がっ、意識が戻ったのね!?」

お父「優女、早く離れろっ。ケリは自分で……つける!」

女賢者「駄目よっ。離れたところであなたっ、暴走を防げるの!?」

お父「……やってみなくては分からん」

女賢者「それにケリをつけるって、五行もないのにどうやって……」

お父「お前が撃てばいい」

女賢者「……1分」

お父「……?」

女賢者「私が五行を放つまで最短でも1分。制御出来るの?」

お父「……やってみなくては分からん」

女賢者「それじゃ駄目なのよっ! 私達はともかく……他のみんなを……」

お父「……」

女賢者「幼女をっ、死なせるような真似は出来ないのっ!」


954 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:07:22.85 ID:qPeVpA/2o
幼女「……お父!!」

お父「……っ!」

幼女「やっぱりお父だ……お父なんだ……っ」ポロポロポロッ

お父「……幼女」

幼女「お父っ、私――」

女賢者「幼女!!」

幼女「!?」

女賢者「この人はもうお父じゃないの。お父は……死んだんでしょ?」

幼女「……っ」

女賢者「よく聞きなさい幼女。あなたなら出来る、あなたがやるの」

幼女「……?」

女賢者「五行を撃ちなさい。私とっ、お父めがけて!」

幼女「――っ!!」

剣士「ちょっと待ってくれ女賢者さん! それでは幼女の身に危険が……」

女賢者「大丈夫。幼女の手元を離れた五行は、1度……私が受け止めるから」


955 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:07:50.94 ID:qPeVpA/2o
弓使い「受け止め……っ、そんなの……」

女賢者「いいえ、出来るわ。限りなく同じに近い性質の魔力なら……出来るはずよ」

幼女「ど、どういう……事?」

女賢者「五行を撃ってもあなたは死なない! いやっ、死なせない……絶対に!」

幼女「……!?」

女賢者「だから撃ちなさい……五行を」

幼女「そんなの……っ、出来ないよっ!」

女賢者「幼女、あなたなら出来るわ。絶対に」

幼女「違うよぉ! お父や……女賢者さんに……五行なんて――」

お父「甘ったれるな!」

幼女「っ!?」

お父「こいつが今さっき言っただろう。俺はお前の知るお父じゃない。ただの記憶だ」

幼女「お……父?」

お父「肉体に宿る記憶があたかも人格を生み出しているように感じるだけの事だ」

幼女「でもっ、それでも! お父はお父なんだよっ!」


956 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:08:21.42 ID:qPeVpA/2o
お父「幼女!!」

幼女「……っ」ビクッ

お父「頼む。俺の意識がこうして芽生えているうちに、早く撃つんだ!」

剣士「女賢者さんっ! どうしてあなたまで……っ」

女賢者「こうする以外に方法がないのよ……。ごめんなさい」

弓使い「何もっ、そんな犠牲になるなんて……っ」

女賢者「違うの。これは犠牲なんかじゃない」

剣士「……」

女賢者「私に課せられた償いであり、宿命なのよ……っ」

剣士「……どういう事なんです!? そんな事っ、納得出来ませんよ!」

女賢者「お願い……。今はこの思いだけを……受け取って」

剣士「女賢者さ――」

 ガシッ

剣士「……?」

弓使い「……っ」ギュッ


957 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:08:52.04 ID:qPeVpA/2o
剣士「ゆ、弓使い……?」

弓使い「……私、分か……ったかも」

剣士「……?」

弓使い「女賢者さん……っ、もしそうなら……うん」ギュッ

剣士「弓使い?」

弓使い「……幼女。あなたが五行を撃てないのなら、私達に勝ち目はないわ」

幼女「……でもぉ」

弓使い「女賢者さんの魔力だってそんなに長くは続かない」

剣士「もし……それでお父さんが制御出来なくなったら……」

弓使い「暴走したお父さんを止める術は皆無に等しいのよ……っ」

幼女「でもっ、五行を撃ったら……女賢者さんは……」

女賢者「死ぬわ。でもそれでいいの! いいのよっ!」

幼女「良くないよっ!」

女賢者「私もお父と同じ、既に死んだ身なの。だから……いいの」

幼女「そんなのおかしいよっ! だって、女賢者さんは生きててっ、それで……」


958 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:09:54.76 ID:qPeVpA/2o
女賢者「お父と対峙した瞬間、失われていた記憶が全て蘇ったわ」

剣士「やはり記憶が……」

女賢者「私はもう戻れない。かと言って、未来もない」

幼女「そんな事ないもんっ!!」

女賢者「ううん、いいのよもう」

幼女「良くないもんっ!!」ボロボロ

女賢者「剣士くん、弓使いちゃん。あなた達には分かるでしょう?」

弓使い「私……はっ、あなたを救いたい……っ!」ポロポロ

剣士「……っ」

弓使い「でもぉっ、どの答えが本当の幸せなのか……分からないのよっ!」ガクンッ

剣士「弓使いっ」

 その場に座り込み号泣する弓使い。剣士はそっと肩にてをやり、自身の涙を拭った。

女賢者「ありがとう、その気持ちだけで十分よ」

お父「ああそうだ。これは宿命。自分の事は……自分で決める。それが本当の幸せだ」

幼女「……っ!!」


959 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:10:41.33 ID:qPeVpA/2o
 弓使いの尋常ではない落胆ぶりと、女賢者の命を賭けた思いを受けて、

 この時、剣士は始めて全ての真相を理解するに至った。

剣士「……そうかっ、そういう事なのか……っ」ギリッ

幼女「私は……撃てないっ! 撃てないよぉ!」

お父「撃つんだ! こうなってはもはや、それ以外に道はない!」

女賢者「お願い幼女、理解してっ!」

幼女「そんなのっ」

女賢者「あなたは……あなた達はこんな所で立ち止まっている暇はないはずよっ!」

幼女「だからって、だって……女賢者さんは人間で……生きてて……っ!」

剣士「……幼女」スクッ

幼女「お父さんも止めてよっ! このままじゃ女賢者さんも……お父も――」

剣士「撃つんだ、幼女」

幼女「――っ!?」

剣士「確かに女賢者さんの言う通りだ。僕達はここが終点じゃない。まだ、先があるんだ」

幼女「お父……さ……」


960 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/03/21(水) 18:11:40.80 ID:qPeVpA/2o
剣士「女賢者さんの思いを、幼女が受け止めるんだ。理解するんだっ!」

幼女「……嫌だよぉ!! そんなの……そんなのぉ!!」ブワッ

剣士「……幼女、お前の気持ちもよーく分かる。僕だってかつて……似たような思いをした」

幼女「……」

剣士「自らの手で親友を……何度もあれは違うものだと言い聞かせた」

幼女「……ひっぐ……ひっく」

剣士「ましてや女賢者さんは……生身の……でもな幼女、君にしか出来ないんだ」

幼女「……うあ……ひっぐ」ボロボロボロ

剣士「こんな小さな少女にこんな事をさせるのは酷だと思ってる。だけど、だけど……」

弓使い「……う、うぐ……っ」

剣士「幼女、君じゃないと駄目なんだ。女賢者さんだからこそ、君じゃないと……っ!」ギュッ

幼女「うぅーっ!!」

女賢者「幼女、あなたの魔法……ちゃーんと私が受け止めるから。だから……」

お父「……」

女賢者「心配しないで撃って! 見せてみてっ、あなたの立派に成長した姿を!」


968 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/03/22(木) 17:24:11.80 ID:6f/NPL2uP
人間には五行通じないんじゃなかったか?



次へ 戻る 戻る 携 上へ