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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その17
- 504 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2010/07/21(水) 17:59:17.91 ID:fK73t0Yo
〜次の日〜
盗賊「……ん」
モゾッ…
海女「おはよう!……どう?」
盗賊「…もう…大丈……」
ゴソゴソッ…ヨロヨロ…
海女「無理しなさんな。食べる物持ってくるから!」
テクテクテク…カチャカチャッ
盗賊「……」
海女「粥だけど…食えるかい?」
盗賊「……ありがとう」
茶碗を受け取り、盗賊は少しずつ粥を口へ運ぶ。
盗賊「……美味しい」
海女「…良かった」
盗賊「…ありがとう…ございます」
- 505 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 17:59:52.19 ID:fK73t0Yo
…
漁師「もういいのか?無理して起きなくとも…」
盗賊「…大丈夫」
老人「……」
盗賊「…それに…迷惑かけられない…から」
漁師と海女は顔を見合わせ、大声で笑う。
海女「あっははは!そんなの気にしなくていいのに!」
盗賊「……でも」
漁師「いくら貧しいとはいえ、怪我人の一人くらい面倒見れるって!」
盗賊「い、いやっ…そういう意味では……」
老人「そうじゃよ。まだ傷も癒えておらぬ…」
盗賊「……」
海女「あんまりいい物は食わせてやれないけど…前よりは幾分かマシだしね」
漁師「ああ、そうだ」
盗賊「……?」
- 506 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 18:00:52.69 ID:fK73t0Yo
漁師「少し前に北の大名家が滅んだろ?お陰で厳しい年貢が無くなってさ!」
海女「今は自給自足だけで済むからね。きついけどあの頃に比べりゃマシさ」
盗賊「……」
老人「昔は自分らの食事さえままならぬ日もあったからのぅ…」
漁師「……お陰で、倅も死んだ」
海女「……」
盗賊「……っ!!」
漁師「この村だけじゃない…。北の至る所で同じ惨状だったさ…」
老人「それでも貧しいに変わりないがの……」
盗賊「……」
海女「さ、暗い話はもう止そう!アンタも食事済ませちまいな!」
漁師「おう、そうだな…!」
老人「……何があったか、聞かせて貰えんかね?」
盗賊「……」
老人「勿論、無理にとは言わん…。じゃが自分らの土地の事…知っておきたいのじゃ」
- 507 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 18:01:50.62 ID:fK73t0Yo
…
漁師「……」
海女「……っ」
老人「なんと…っ、そのような事が……」
盗賊「……だから…もう近づかない方がいい」
漁師「それでお役人達は、道を封鎖してるってわけか…」
海女「そうならそうと言ってくれればいいのに…」
老人「そうもいかんじゃろ。妖怪がうろついているなど、公には出来まいて…」
漁師「逆に混乱を招いちまうもんなぁ…」
海女「アンタも…辛かったね……」
盗賊「……」
漁師「お嬢ちゃん、ほんとにアンタは何者なんだい…?」
盗賊「……それは…言えない」
老人「……」
海女「まぁまぁ、深い詮索は無しってもんだよ。ねぇ?」
- 508 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 18:02:47.38 ID:fK73t0Yo
盗賊「…ごめんなさい」
漁師「…ま、いいか。お嬢ちゃんが悪い奴じゃないってのは、よーく分かった」
海女「そうだよ。こんなボロボロになってまで妖怪と戦ってくれたんだから」
盗賊「……違う」
海女「…?」
盗賊「…私は…何も出来なかった!」
老人「……」
盗賊「…私は…無力だ…っ」
老人「そんな事はない…」
盗賊「……」
老人「妖怪相手に戦おうと、意思があるだけで…儂らなんかより充分強い」
漁師「そうそう。戦おうなんぞ思いもしねぇ…。俺なら逃げる!」
海女「なーにを偉そうにさ……」
老人「強い意思を持っておる。意思はいずれ力へと変わるじゃろうて…」
盗賊「……っ」
- 509 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 18:03:27.04 ID:fK73t0Yo
…
海女「傷が癒えるまでここに居ておくれ」
盗賊「……」
海女「生傷のまま出て行かれて…何かあったら、夢見が悪いよっ」
漁師「そうそう。なーんにもないとこだけどな!」
老人「…良いな?」
盗賊「…………」
しばし考えた後、盗賊はこくりと黙って頷いた。
海女「それじゃ早速、あっちの部屋を片付けて…準備しようかね!」
漁師「あ、そうだ…」
盗賊「……?」
テクテクテク…ゴソゴソッ
漁師「これ…海中で拾ったんだが、大事な物なんじゃあないか?」
漁師は一本のクナイを手にし、盗賊へと渡す。
盗賊「!?」
- 510 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 18:04:16.76 ID:fK73t0Yo
漁師「落ちたのが浅い所だったから…なんとか拾ってこれたよ」
盗賊「……っ」
漁師「あとは……これぐらいしか拾えなかったけどな」
見覚えのある防水加工された布の袋。盗賊は両手でそれを受け取る。
海女「アンタの腰に巻きついてた鎖は、台所の脇に置いてあるからねぇ!」
奥の部屋から海女が顔を出し、声をかける。
盗賊「……蜘蛛切…っ!!」
老人「……?」
盗賊「…刀は…無かった…ですか!?」
漁師「刀…?うぅん、見てないなぁ…」
老人「もしかしたら、塔の瓦礫に埋まってしまっておるかもしれんな…」
海女「傷が治ったら行ってみたら?お役人もいるし見つかるかもよ?」
盗賊「……うん」
老人「まずはなんとか…一件落着かの…」
四人はそれぞれ目を合わせ、にっこりと微笑んだ。
- 511 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/21(水) 18:25:53.00 ID:t5hF9Y20
蜘蛛切無くしたのか…
- 516 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 23:20:33.73 ID:a/mgL/co
〜北方、泉〜
魔道士「…………」
チュンッ…チチュンッ!!
魔道士「……ふぅ…っ」
ザッザッザ
マジシャン「おっはよう!どうだい…?」
魔道士「おはようございますっ。……そうですねぇ」
マジシャン「……」
魔道士「段々…風の流れが分かってきました…!」
マジシャン「……そっか!そりゃお見事だ…!」
魔道士「空や雲や…空気の流れがどんな時に、風が吹くのか…」
マジシャン「……」
魔道士「」どこからどこへ…吹くのか。それがなんとなく、分かるようになりましたっ!」
マジシャン「……充分。上等だ!」
魔道士「えへへっ!!」
- 517 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 23:21:47.79 ID:a/mgL/co
…
マジシャン「そいつは予知でも魔法でも何でもねぇ」
魔道士「……?」
マジシャン「れっきとした万物の法則。いわば…予測可能な事象さ」
魔道士「…なるほど…っ」
マジシャン「普段は皆、分かっちゃいるが誰も気に留めてない。ただそれだけの事…」
魔道士「……」
マジシャン「ちょっとの努力とコツさえ掴めば、天気の予測だって可能になるさ」
魔道士「本当ですか…!?」
マジシャン「ああ。それをずーっと昔の人間は、予言だ魔法だと持て囃していたのさ…」
魔道士「……」
マジシャン「東方だか南東だかじゃあ『月読』…なんて、ご大層な名前も付いてたっけ…」
魔道士「つくよみ…ですか?」
マジシャン「でも重要なのは、これが魔法と関係してるって事!」
魔道士「……っ!?」
- 518 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 23:22:24.79 ID:a/mgL/co
マジシャン「んじゃ、分かりやすくいこうか…」
ザッザッザ
マジシャン「例えば…風が背中からの追い風だとしよう…」
魔道士「はいっ」
マジシャン「前方に敵がいて、魔道士ちゃんは炎の魔法を放つ」
魔道士「……はい」
マジシャン「魔物は弱いが、非常にすばしっこい。直撃は難しいかもしれない…」
魔道士「…はいっ」
マジシャン「そんな時、魔物の前後、どちらに向けて炎を放つ?」
魔道士「うーんと……前方ですかね?」
マジシャン「……何で?」
魔道士「やっぱり前方に炎を張る事で、間合いを離せますからね」
マジシャン「うん。それも一つの手…いや、今まではそれでオッケー」
魔道士「……今まで…ですか?」
マジシャン「そ。自分の命を優先的に守る、今までは…ね」
- 519 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 23:23:16.95 ID:a/mgL/co
魔道士「……っ!!」
マジシャン「でもね、国軍付になった今は違う……」
魔道士「……」
マジシャン「今度からは、命を投げ出す覚悟で…人の為に戦わなきゃいけない」
魔道士「……はい!」
マジシャン「まぁ、あくまで覚悟…だからね?本当に投げだしちゃダメよ?」
魔道士「……は、はい」
マジシャン「…背からの追い風なら、魔物の背後に炎を放つ」
魔道士「……すると…?」
マジシャン「日は魔物の背後に燃え広がるよね?」
魔道士「追い風ですから…そうなりますね」
マジシャン「魔物は退く事が出来なくなり、行動範囲も狭まる…」
魔道士「…!?……な、なるほど…っ!」
マジシャン「魔物は弱いが…非常にすばしっこい、って言ったよね?」
魔道士「……っ」
- 520 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 23:25:17.67 ID:a/mgL/co
マジシャン「弱いならその足を止めちゃえば…倒せるって事」
魔道士「…その通りです…っ」
マジシャン「でも、その為には…風の動き、流れを計算して……」
魔道士「位置…魔法を放つ箇所を…っ…」
マジシャン「……ハッハ!そういう事!」
魔道士「……な、なるほど…ですね」
マジシャン「もちろん魔道士ちゃんの答えも間違いではないよ?」
魔道士「……」
マジシャン「でも、月読が出来れば…そこまで戦闘の幅が広がるってもんさ」
魔道士「……勉強になります!」
マジシャン「ハッハ!!……んじゃお次はこの水…」
チャポッ…ゴクゴクッ
マジシャン「かぁ〜!!うまいっ!」
魔道士「ほんと綺麗ですよねぇ…!」
湧き出る泉の水を両手で掬い上げ、魔道士はニッコリと微笑む。
- 521 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 23:32:27.08 ID:a/mgL/co
マジシャン「例えば波紋の広がりが、どういった形で衝突し…力を相殺しているのか…」
ポチャンッ……
マジシャン「そういう事を知れば、敵の水による攻撃を、わずかな水行で相殺出来る……」
魔道士「すごいっ!!」
マジシャン「……ように、なるかもしれない」
魔道士「……」
マジシャン「流石に同魔力以外の相殺は見た事ないからな!夢の話に近いけどな…ハッハ!」
魔道士「そうですかぁ……」
マジシャン「あとは川の流れとかな…」
魔道士「川…ですか…?」
マジシャン「例えば今の場所が上流なのか下流なのか。川の流れや動きで判別も出来る」
魔道士「!!」
マジシャン「そうすりゃ道に迷ったとしても、割と楽に地形の把握も出来るしな…!」
魔道士「す、凄い…!!」
マジシャン「それが自然の摂理…。万物の理…ってやつさ」
- 522 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/21(水) 23:39:07.65 ID:a/mgL/co
魔道士「勉強になります…っ」
マジシャン「なんとなく分かったかな?この修行の目的…」
魔道士「はいっ!もう…バッチリです!」
マジシャン「ハッハ!そりゃ良かった」
魔道士「ふふっ…エヘヘ!」
マジシャン「でも、ちょっとそろそろ退屈してきたんじゃない?」
魔道士「うーん…退屈ではないですけど……」
マジシャン「あまり面白くない?」
魔道士「なんだか…こんなに楽してしまって良いのかな…って」
マジシャン「……そうか。じゃあ、少し違う事をしようかね!」
魔道士「はいっ!!」
マジシャン「…と言っても、今更…魔道士ちゃんに教えるような事はないんだよね…」
魔道士「……そうなんですか…!?」
マジシャン「だって五行全て使えるようになったし…。付加も補助も出来るし〜」
魔道士「…・・い、一応ですよっ。一応…」
- 526 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 00:23:32.20 ID:k22R96k0
パーティーに居ないから物語にはあんま関係無いかもしれないけどプリーストの魔法形態も掘り下げてほしいな
回復魔法は五行には属してなさそうだし
- 531 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 01:27:43.85 ID:hjdJEoAO
全然関係ないけど、師匠シリーズというのがある事を最近知った
- 532 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 02:07:55.02 ID:3tBhiao0
さすがにプリーストの治療は即効性のあるものだろ
でないとミノタウロス戦で闘いながらプリースト守ろうとした意味が無い
- 538 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:49:03.48 ID:JbsLYTIo
マジシャン「…まぁ、実際やる事は難しくもないよ。簡単な事」
魔道士「……?」
マジシャン「魔力を溜めて、魔法を放つ!……そんだけ」
魔道士「…そう…なんですか?」
マジシャン「但し、溜める魔力は微弱でいいから、魔法を早く放つ事」
魔道士「…早く」
マジシャン「目的は、制度を落とさず…詠唱時間を早める事」
魔道士「なるほど…っ」
マジシャン「詠唱が早ければ、利点はいーっぱいあるからね!」
魔道士「…お、教えて頂けませんかっ!?」
マジシャン「例えば…敵の魔法を相殺する時なんかにだな…」
魔道士「はいっ」
マジシャン「相殺するにもギリギリじゃなく、余裕も持って相殺出来るでしょ?」
魔道士「な、なるほど…!」
マジシャンの言葉を噛み締めるように、魔道士はこくこくと頷く。
- 539 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:49:30.23 ID:JbsLYTIo
マジシャン「逆に魔法を放つのが早ければ、相手の相殺時間を潰せるしな」
魔道士「おぉ…っ、やっぱり早いと有利なんですねぇ…!」
マジシャン「そゆ事。そこに更に月読の効果を掛け合わせれば…」
魔道士「……」
マジシャン「魔法の力は、何倍にも跳ね上がるって事!」
魔道士「……凄い」
マジシャン「…ただ魔力を溜めて放つだけじゃない…。魔法も置くが深いのさ」
魔道士「マジシャンさんは…いつも…そこまで考えて…?」
マジシャン「必ずってワケでもねーけど…魔力の節約にもなるしな。ハッハ!」
魔道士「……よぉし!頑張りますっ!」
マジシャン「おうっ。そんじゃ五行の火から順番に行こうか!」
魔道士「はいっ!!」
マジシャン「火の次は水!ローテーションで順番だぞっ!」
魔道士「……はぁっ!!」
マジシャン「よしっ!もっとだ、もっと早く!!」
- 540 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:50:05.31 ID:JbsLYTIo
〜南東国、南の山〜
バシャバシャッ!!
戦士「……っ!!」
テクテクテク
隊長「ほれっ」
戦士「あ…どうも…」
差し出されたタオルを受け取り、戦士は顔を拭く。
隊長「なかなか男前になってきたじゃねーか」
戦士「……顔洗うだけで沁みるっすよ」
隊長「だっはっは!頑張ってる証拠だ。勲章だよ勲章!」
戦士「…はぁ」
隊長「まだ一週間経ってないぜ?もう止めるか…?」
戦士「……まさか」
隊長「…だよな!」
戦士「もっとだ…。もっと強くなってやるさ…!」
- 541 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:50:34.57 ID:JbsLYTIo
〜東方、北の村〜
老人「ほんに…大丈夫か?」
盗賊「…うん…ありがとう」
海女「目が覚めてから三日しか経ってないのに……」
盗賊「…本当に…大丈夫だから」
漁師「……」
盗賊「…ありがとう…ございました」
海女「こっちこそすまないね…。怪我人なのに働いて貰っちゃって…」
盗賊「…ううん。あのぐらいは…別に」
老人「最北の塔へ行くのかね…?」
盗賊「……うん」
漁師「よーし…そんなら、途中まで船で送って行ってやらぁ!」
海女「そうだね…そうしておやりよっ!」
盗賊「…で、でも」
漁師「いいからいいから!」
- 542 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:51:26.06 ID:JbsLYTIo
…
盗賊「……では」
盗賊はぺこりとお辞儀をし、家の外へ出る。
老人「またの…」
海女「気をつけるんだよー!!」
漁師「おし、行くぞ!」
盗賊「…うん」
テクテクテク
盗賊「……あ…っ」
子供「お姉ちゃーん!」
トットット…
盗賊「……」
子供「この前は、お菓子ありがとぉ〜」
盗賊「…べ、別に…っ」
子供「また遊びにきてねぇ〜!ばいばーい!」
- 543 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:51:58.95 ID:JbsLYTIo
ザッザッザ
漁師「いい村だろう?なーんもないがな…がっははは!」
盗賊「…うん。…良い村だ」
漁師「俺はこんな村でも、故郷だし…やっぱり好きなんだよなぁ」
盗賊「……」
漁師「…だから、頼む!」
盗賊「……?」
漁師「頼む相手がお門違いかもしれねぇが…妖怪を倒してさ…」
盗賊「……」
漁師「平和な世を…。皆が笑って暮らせる国を作ってくれ…!」
盗賊「……ああ。そのつもりだ」
漁師「……すまん」
盗賊「……いや」
漁師「…着いた。さぁ、船に乗ってくれ」
盗賊「…うん」
- 544 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:52:37.04 ID:JbsLYTIo
ギコッ…ギコッ…
漁師「北は波が高いっ!しっかり掴まっててなぁ!」
盗賊「…分かった!」
大きく揺れる船を、漁師は器用に楫を取る。
漁師「おそらくはお役人が通行止めしてっから、途中から歩いてもらう事になる」
盗賊「…うん。問題ない」
漁師「それでも歩いて2時間程度のとこまでは行けるだろうから…」
盗賊「…充分」
漁師「デカイぞ!?頭引っ込めろぉー!!」
盗賊「……っ」
ザッパーン!!
盗賊「…ぷあ…っ!」
漁師「大丈夫かぁ!?
盗賊「…うん。……ふふっ」
漁師「さぁ、もう少しの辛抱だぁ!」
- 545 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:54:20.73 ID:JbsLYTIo
…
漁師「よい……っしょお」
ギギッ…ゴトンッ
漁師「到着っ!気ぃつけて降りろ。足場悪いから」
盗賊「…うん」
トスッ
盗賊「…本当に…ありがとうございました」
漁師「なぁに、また…来てくれな!」
盗賊「…うん!必ず!」
漁師「ほんじゃ気を付けてなぁ!」
盗賊「皆にも…よろしく」
漁師「おうっ!!」
ゴトンッ……ギコッ…ギコッ…
盗賊「……」
船が小さくなるまで見送ると、盗賊は最北の塔を目指す。
- 546 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:55:23.90 ID:JbsLYTIo
…
盗賊(歩いて2時間なら…急げば…)
タタタッ…ザザッ…タッタッタ…
盗賊「……そろそろ」
タタタタタッ……ザザッ
盗賊「…見えた」
山道を下るとその先に、最北の塔が姿を見せる。
テクテクテク
盗賊「……」
足軽「……女?」
テクテクテク
足軽「ここから先は立ち入り禁止だ。引き返……」
ヒュンッ!!
足軽「え…っ!?」
突如、高く飛び上がる盗賊を、仰天顔で足軽が見つめる。
- 547 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/22(木) 17:56:22.33 ID:JbsLYTIo
足軽「あ、あれ…っ!?」
キョロキョロッ
足軽「いない…!?どこにっ……」
ザッザッザ
風忍「…どうした?」
足軽「あ…風忍様!いま怪しげな女が…っ」
風忍「女…?」
足軽「とんだと思ったら…消えてしまい……」
風忍「……忍か?妖怪ではないのだな…?」
足軽「黒装束の女…人間でした!」
風忍「……ここは任せたぞっ!」
足軽「は、はいっ!!」
シュバッ!!…タタタッ
風忍(何者だ…。まさか……影、か?)
風忍は急ぎ、塔へと駆け抜ける。
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