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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その34
906 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 16:56:54.00 ID:TGCQmLnVo
〜西の寺〜

イヌ「おっ、建物が見えるね」

戦士「あれが寺か」

ザッザッザ

戦士「……どした?」

鬼丸「どうも寺社の類は苦手でな。ここで待ってるわ」

戦士「あん? そうなのか?」

鬼丸「気にすんな。行ってきな」

戦士「……お、おう」

ザッザッザ…ジャリッ

サル「おーい、誰かいるかー?」

キジ「勝手に入るさ」

戦士「おいおい、さすがにそれはまずいだろ」

ガラッ

坊主「……何を騒いでおる?」


907 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 16:57:47.61 ID:TGCQmLnVo


坊主「大した物もないが、まぁ食え」

キジ「これ何さー?」

坊主「大根と芋を煮たものに、ヒエを少々混ぜた物じゃ」

サル「……まっず」

イヌ「贅沢言わないね。食えるだけマシね」

サル「じゃあおめぇはマズくねーのかよ」

イヌ「クソマズイね」

坊主「それで、こんな夜中にどうなすったと言うんじゃ?」

戦士「ああ。西で魔物に遭遇してな。命からがら逃げてきたって事よ」

坊主「魔物?」

戦士「あ、えーと……妖。あやかしだ」

坊主「ま、それは災難じゃったな。よく無事でおったよ」

サル「まーな。俺達こう見えても、けっこー強いのよこれ。んーふふふふ!」

戦士「自分で言うなよ……」


908 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 16:59:14.23 ID:TGCQmLnVo


坊主「西の屋敷?」

サル「そうそうっ。そーこでこれまた、とんでもねぇバケモンに会っちまったってわけよ」

坊主「……妖は一匹じゃったのか?」

イヌ「そうね」

戦士「いや違う。仲間かどうかは知らんが、他にもいた」

サル「そうなのか?」

戦士「ああ。えっと、なんつったっけな。長とかぬかしてた奴……」

女侍「……」

戦士「あ、そうそう! ぬらりひょんとかいう奴が最初、現れて……」

坊主「ぬらりひょん?」

戦士ああ。んで、そいつが率いる妖がわんさか攻撃してきやがったんだ」

坊主「ほう。それはおそらく百鬼夜行やもしれんな」

戦士「そうそうっ。そんな事、言ってたわ。そんで……鬼丸と2人でぬらりひょんを追ったんだ」

サル「おいおい、自分から釣られて死地に突っ込んだのかよ」


909 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:00:04.48 ID:TGCQmLnVo
戦士「ぬらりひょんと倒せば収まるって、あいつが言ってたんだよ!」

イヌ「それであの屋敷に行ったね?」

戦士「ああ。でもそこには別の魔物がいて。魔王ベルゼブブの配下だって言ってたな」

坊主「魔王? 何じゃそいつは……っ」

戦士「ああ。東方じゃなくて本国の魔王さ。北にいて、大軍を率いてるらしい」

キジ「ああ。北でもよく耳にしたさー」

坊主「何故、異国の魔王がこの地に……?」

戦士「こっちが聞きてぇよ。そんで、ぬらりひょんとそいつが襲ってきた」

女侍「……倒したのか?」

戦士「……いや。途中であのバケモンが横槍入れてきたんだよ」

サル「それがあの追っかけてきた魔物ってぇ事かい」

戦士「そういう事」

坊主「先程から申しておる西の屋敷と言うのは、まさか……」

女侍「……剣聖家の屋敷さ」

坊主「……や、やはりそうか……っ」


910 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:01:54.33 ID:TGCQmLnVo
戦士「知ってんのか?」

坊主「東方に知らぬ者の方が少ないであろう。それ程の剛の者であったわ」

女侍「……」

坊主「儂も剣聖様が生前には、何度も世話になったわい」

戦士「そうだったのか……」

坊主「しかしもう10年近く前になるかのう。都で賊紛いの行為をし、処刑されたそうじゃ」

キジ「そんな強い人なのに、強盗したさー?」

イヌ「屋敷も金持ちっぽかったね。没落したね?」

坊主「理由は闇の中じゃよ。じゃが、忍び込んだ屋敷は庄屋と言う者の屋敷でなぁ」

女侍「……」

坊主「剣聖様と庄屋はかねてより懇意にしており、庄屋が顔を見たと言うのじゃ」

戦士「……なんかキナ臭せぇ話だな」

坊主「当然、助命や懇願の声も出たが、時の老中による一言で、切腹と相成った」

戦士「……老中? まさか……あいつか?」

女侍「知ってるのかい?」


911 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:02:52.02 ID:TGCQmLnVo
戦士「……ああ。前に東方で戦いがあった時に、魔物と結託してた悪党だよ」

女侍「何……?」

戦士「上様の傍にいながら、魔物と手を組んで……悪事を働いてたんだ」

女侍「……っ」

坊主「お主の話、真であらば……剣聖様は謀られたのやもしれんな」

戦士「なぁ、そういやあんた……顔見知りだったのか?」

女侍「……?」

戦士「いや、剣聖って人の事、詳しそうだったからよ」

女侍「……私……はっ、剣聖……の」

戦士「……」

女侍「……アタイは、剣聖の屋敷に忍び込んだって、さっきも言っただろ?」

戦士「……ああ、そう言ってたっけな」

女侍「そん時にたまたま、剣聖って奴の顔を見ただけさ」

キジ「お頭って意外と、若い頃から盗みやってたさー?」

女侍「まぁね。孤児だったからねぇ」


912 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:03:52.34 ID:TGCQmLnVo
坊主「誇示だから盗みを働いても良い、と言う道理はない。盗みはいかん」

女侍「五月蝿いねクソ坊主。アタイらはね、こうして生きてきたんだよ」

坊主「本当にそうか?」

女侍「……何が言いたいのさ」

坊主「お主の目、何か無理をしておるようにも見えるぞ?」

女侍「――っ」

坊主「もっと別の生きる道が、あったのではないか……?」

ドスッ

女侍「……偉そうに説法すんじゃないよっ! このハゲ!」

坊主「刀を仕舞え。此処は寺の本堂じゃぞ?」

女侍「……ちっ」グイッ

坊主「しかし、とうとう剣聖様の屋敷まで妖の巣と化してしもうたか」

戦士「前は違ったのか?」

坊主「うむ。ここ最近になって、妖が都へ都へと近づいておる」

戦士「都の東とは正反対だな」


913 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:04:46.37 ID:TGCQmLnVo
坊主「だからやもしれん。西の妖は首領を失ってから、追いやられてきたからのう」

戦士「首領?」

坊主「神野悪五郎という妖じゃ。実体はなく、死人の思念体を媒介にすると聞く」

サル「そいつを失ってから西の魔物どもは勢力を失ったって事みてぇだな」

戦士「シンノ……? 待てオッサン! 今……なんつった!?」

坊主「神野悪五郎」

戦士「……そ、そいつだ!」

イヌ「……?」

戦士「確かに名乗ってた……っ、シンノアクゴローって言ってた!」

サル「おいおいっ、んじゃ……あのバケモンが首領だってぇのかよ!?」

戦士「間違いねぇ。鬼丸にも聞けば分かるはずだっ」

キジ「でも、シンノアクゴローは死んだんじゃないのさ?」

坊主「いや、死んだわけではない。奴は不死身、倒す術がないのじゃ」

戦士「……っ」

坊主「しかし、もう数百年も前の話になるが、一人の陰陽師が結界を張ったんじゃ」


914 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:05:52.50 ID:TGCQmLnVo
戦士「結界……?」

坊主「ここより西に森の出口があり、そこに川がなかったか?」

戦士「……あった。確かあった!」

坊主「かつて都で名を馳せた陰陽師がおってな、その者が結界を張ったのじゃ」

女侍「……」

坊主「それは全ての妖を封じるものではなく、神野悪五郎のみを封じる為のものじゃ」

戦士「なんでそんな回りくどい事をしたんだ?」

坊主「さぁな。事情でもあったんじゃないか? だが、神野さえ封じる事が出来れば……」

イヌ「他の魔物も大人しくなるね」

坊主「そういう事じゃ。それで息を吹き返した人間は、更に西へ西へと妖を追いやったわけじゃ」

女侍「それで、剣聖みたいな強い連中が領土を与えられる代わりに、西への盾をされたのさ」

坊主「……詳しいのう」

女侍「東方の出さ。その程度は知ってて当然だろ」

坊主「……とにかく、その妖が神野悪五郎であれば、此処までは追ってこれぬよ」

サル「そうか。ここは結界より内側なわけだもんな。あーんしんしたぜぇ、んふふふふっ」


915 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:06:21.23 ID:TGCQmLnVo
戦士「それで途中から追ってこなくなったってわけか」

坊主「西にさえ行かねば、神野悪五郎を相手にする事もないわい」

戦士「それを聞いて安心した。だが、西に人は住んでるのか?」

坊主「小さな村が幾つかあるのと、あとは罪人や落ち武者が逃げ延び、定住しておると聞く」

イヌ「どういう事ね?」

キジ「無法地帯って事さ」

坊主「正直な。上様もどうにかしたいようではあるが、手の付けようがない」

戦士「……神野か」

坊主「神野もそうじゃが、妖の類に罪人、賊徒、外道の集まりじゃ」

戦士「大丈夫だよ」

坊主「……?」

戦士「今は都も変わった。東も変わった。そして、北も変わる」

坊主「……」

戦士「西が変わるのはもう、時間の問題だ。安心してくれ」

坊主「ふっ。それならば良いがな」


916 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:07:17.93 ID:TGCQmLnVo


坊主「さて、本堂は自由に使うが良い。布団も何もないがな」

サル「マジかよ!? うひぃ〜こーりゃ寒いなんてモンじゃねぇぞ」

坊主「ところで神野悪五郎、人の姿をしておったか?」

戦士「あ、ああ。なんつーか刀持ったジーサンみてぇな……」

女侍「剣聖」

戦士「……?」

女侍「剣聖の姿さ。あれは、な」

戦士「!?」

坊主「何と……っ、よりにもよって剣聖様の姿とは」

戦士「姿形で何かあんのか?」

坊主「思念体を媒介とする為にな、その思念を有りのまま具現化出来るようじゃ」

戦士「つまり……」

坊主「剣聖様の思念なれば、剣の腕は桁違いじゃろうな。得物も含めて」

戦士「……っ」


917 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:08:09.34 ID:TGCQmLnVo
坊主「ぞれじゃ儂はあちらの離れにおる。何かあれば言うが良い」

スッ…テクテクテク

キジ「厄介な話、聞いちまったさー」

イヌ「気にする事ないね。西に行かなければいいだけね」

サル「だな。こりゃーとっとと東方もオサラバして……南東国にでも逃げるかぁ〜」

イヌ「それいいね。華国なら案内するねっ!」

戦士「薄情な奴らだなおい」

サル「別に俺らがどうこうする話でもねーだろ。なぁ、お頭?」

女侍「……まぁな」スクッ

キジ「どこか行くさ?」

女侍「野暮な事聞くんじゃないよ。小便さ」

戦士「俺も鬼丸んとこ行ってくるわ」

イヌ「それじゃ俺は先に寝るね」

サル「気ぃ〜付けろよ。魔物が居ないとも限らねぇかんな」

戦士「分かってるよ」スタスタスタ


918 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:09:50.53 ID:TGCQmLnVo
〜不死の山、ふもと〜

召喚士「わああああぁぁぁぁーっ!!」

ガサガサガサッ…ドシャア

召喚士「……っつー!!」

コカトリス「生きているな」バサッ

召喚士「……急に風向きが変わるんだもん。参っちゃうよね」

コカトリス「だから申したはずだ。どうなっても知らんと」

召喚士「……とりあえず……引っ張ってもらえる?」

コカトリス「下が森で命拾いしたな」

グイッ…ザスッ

召喚士「ふーっ。ありがと、でも何とか……下山できたね」

コカトリス「下山と言うならば、まぁそれで文句はないがな」

召喚士「と、とにかく戻ろう。うん、戻りましょう」

コカトリス「それで、ここは一体どこなのだ?」

召喚士「……えぇと、不死の山の……樹海?」


919 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:10:44.20 ID:TGCQmLnVo
〜西の寺〜

戦士「おう。酒でも飲むか?」

鬼丸「グハハッ。いいねぇ。おっ、アンタも来たのかい」

女侍「アタイはすぐ戻るよ。便所さ便所」

スタスタスタ

鬼丸「気ぃ遣わなくてもいいぜ? 中でゆっくり寝とけ」

戦士「別にそんなんじゃねぇって。なぁ鬼丸、お前……あのシンノって奴、知ってんのか?」

鬼丸「まぁな。妖の中じゃあ上位、力は魔王にも匹敵するかもしれんぜ」

戦士「何!?」

鬼丸「まぁ随分と前から姿を見た奴がいなくてな。てっきり死んだのかと思ってたぜ」

戦士「ああ、何だか結界が張られて、それで東にゃ来れないらしいぜ」

鬼丸「グハハッ! そいつはいい気味だ!」

戦士「でもよ、ほんとにあいつを放っておいていいのかねぇ」グビッ

鬼丸「結界があんだろ? じゃあいいじゃねぇか」

戦士「でもよ、西にも人は住んでるわけだし……どんな奴だろうと、命は命だ」


920 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:17:28.95 ID:TGCQmLnVo
鬼丸「まぁな。魔羅とも仲悪そうだし、手ぇ貸すとは思えねぇが、万が一もあるしな」

戦士「とは言っても、優先度はマーラが先だ。まずはマーラを討つ」

鬼丸「それがいい。魔羅が死ねば神野の周りは雑魚ばっかだ」

戦士「要はシンノを倒せば、西の連中は大人しくなるって事だよな?」

鬼丸「ま、そうだな」

戦士「マーラを倒して、シンノも倒せば、東方は平和になるってわけだ」

鬼丸「……うーん」

戦士「どうした?」

鬼丸「魔羅と神野悪五郎と、もう一匹居たんだよな確か……」

戦士「何ぃ!?」

鬼丸「なーんつったっけなぁ……思い出せねぇ」

戦士「ま、マジかよ……っ」

鬼丸「でもそいつ、魔羅と神野が争ってた時に、神野を半殺しにしてたから悪い奴じゃねぇかもな」

戦士「――っ!?」

鬼丸「なんだっけかなぁ。山田一郎とかそんなんだった気がすんなぁ……」


921 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:18:01.71 ID:TGCQmLnVo
〜樹海〜

召喚士「……」

コカトリス「おい、先程と同じ道ではないか」

召喚士「……おかしいな」

コカトリス「貴様、さては道に迷ったのでは……」

召喚士「違うんだって。この樹海、磁場が強くてどうもおかしいんだ」

コカトリス「確かにそれはあるな。先程より飛ぼうと思っても、うまく飛べぬ」

召喚士「でしょ!」

コカトリス「何を嬉々としている。お前のせいではないか」

召喚士「……仕方ない」

ザッ

召喚士「行けっ、ノーム!」

シュイイィィィィン

ノーム「おやおや、こいつは久し振りじゃのぉ」

召喚士「ノーム。この磁場を軽減してくれないか?」


922 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/12/19(月) 17:21:25.70 ID:TGCQmLnVo
ノーム「どれ、やるだけやってみよう」

シュウウゥゥゥゥ

コカトリス「そんなものがあるならば、どうしてさっさとやらぬか」

召喚士「いや、自力で脱出出来るかなーって」

コカトリス「嘘だな。今きっと思い出したのであろう?」

召喚士「違います」

コカトリス「図星のようだな。全く、頭が良いんだか悪いんだか」

召喚士「…………」

ノーム「ほれ、磁場を軽減したぞ。早く行かぬと効果が薄れる」

召喚士「よし、行こう」

コカトリス「これで抜けられるのか?」

召喚士「抜けられますっ!」

コカトリス「……」

召喚士「……な、何? その石化してしまいそうな冷たい目線……っ」

コカトリス「ふん」



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