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少女「私が……魔王?」
- 90 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga]
投稿日:2011/04/02(土) 21:05:01.99 ID:3VwabWPNo
皆様こんばんは。>>1でございます。
本日の投下を開始させていただきます。途中で1〜2時間程離席するかもしれませんが、本日の投下量は20レス前後となっております。
お暇な時間に少しでも楽しんでいただければ、と思っております。(土下座)
- 91 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:05:30.01 ID:3VwabWPNo
― 『門』近くの最前線基地 捕虜収容所 ―
後輩「……来ましたね」ジャラリ
少女「少年君はどうしたのですか」
後輩「その件で話があります」
少女友「少女、気をつけて」
メイド長「封魔具で手足を拘束しております。さらにはすぐにでも首を刎ねる事ができるという事を忘れないようにしてお話くださいね」
後輩「……勇者様が米軍に捕らえられました」
少女「どういう事!?」
少女友「米軍にって、一緒に戦ってたんでしょ」
後輩「前回の打通作戦の失敗で、その責が勇者様一人に集中しました。それで勇者様は米軍の管理下に置かれる事に……」
少女「そんなっ。だ、だとしたらっ!」
少女友「どういうこと?」
少女「少年君の魂の鎖を解明しようとするつもりなのかもしれない。私の中にある魔王の記憶が気をつけろって言ってる」
メイド長「……」
後輩「その通りだと思います。米軍は勇者様の力の源を解明する為、勇者様をモルモットにする気です」ガシャッ
後輩「お願いします! 勇者様を助けて下さい! このままだと勇者様はっ!」
少女友「じ、自業自得でしょ! 自分勝手に少女の気持ちを踏みにじっておいて、今度は助けろなんて都合が良すぎるわよ」
後輩「それはわかってる! でも、他に頼れる人なんていないのです……みんな掌を返したように勇者様を叩いて、勇者様だけに責任をなすりつけてるの……私も捕縛されそうになったけど、勇者様が魔王を頼れって言って……」グスッ
メイド長「魔王様、これは明らかに罠としか」
少女「……少年君はどこに?」
少女友「少女っ、危ないよ!」
後輩「横須賀の米軍基地に……わ、私も連れて行って下さい!」
少女「無理です。貴女の全てを信用できません。理由は、おわかりですよね」
後輩「……」
少女「この者を魔王城地下に移送しておいてください。私は人間界に向かいます」
メイド長「お待ちください」
少女「……ごめんなさい。これだけはどうしても無理です」
少女友「私も行く!」
少女「少女友ちゃん……」
少女友「約束したはずよ。どこまでも一緒って」ジッ
少女「……うん、わかった。行こ」
メイド長「少女友様、これを」コソッ
少女友「?」ハ
メイド長「危険だと思ったら中央のスイッチを押して下さい」ヒソヒソ
少女友「わかりました」
少女「すぐに戻ります。人間界への侵攻は一時停止してください。これは魔王としての命令です」
メイド長「承知いたしました」
少女「ごめんなさい」シュッ
- 92 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:06:09.58 ID:3VwabWPNo
― 横須賀 米軍キャンプ ―
少年「ぐ……」ズルッ
少年「あいつら……好き勝手やり、やがっ、て」ドサッ
少年(無理だ。もー動けねぇ……畜生、これじゃ人間のほうがトンデモじゃねぇか。簡単な検査とか言いながらやってる事は人体実験ばっかかよ)
少年(魔力も吸いつくされちまって回復呪すら使えねぇ。このまま終わる、か?)
ガチャッ
少年「だ……誰、だ」
兵士「次の実験だ」
少年「……好きに、しや、がれ」
兵士「さっさと来い」グイッ
少年「少女、すまねぇ。お前の顔、もう見れねぇや」
少女「そうでもないよ?」バシッ
兵士「!?」ズル ドサッ
少年「は、ははは……何だこりゃ、夢か? 走馬灯ってやつか?」
少女友「何言ってんのよこいつ。とうとう頭おかしくなった?」ニッ
少年「少女友までかよ。トンでもねぇ天使だな」
少女「夢でも走馬灯でもないよ。後輩ちゃんに教えてもらって助けに来たの」
少年「そう、か。あいつは無事に逃げたか」
少女「酷い傷……すぐに治すからっ」ソッ
少年「いい……だい、じょうぶだ」ギュッ
少女「少年君……」
少年「ごめん。勇者の力ってのに溺れてた。その結果がこのザマだよ」
少女「ううん……」
少年「すぐに他の奴らが来る。今の内に逃げろ。俺はここまでで、いい……」
少女「ダメだよっ。一緒に行こ! 後輩ちゃんも待ってるからっ」
少女友「そうよ。責任取りなさいよ。それとも勇者ってのは自分のしでかした事の責任は取らなくていいワケ?」
少年「……俺は、まだ、勇者なのか?」
少女「少年君は少年君だよ。勇者か、そうじゃないかなんてどうでもいい事だよ」フォンッ
少女【我が呼びかけに応えよ、慈悲深き愛の女神よ。私の大切な人を助けて……】ソッ チュ
少女友「って、おいおい……」アゼン
少年「……」ビックリ
少女「んっ、どう、かな?」
少年「結構なお手前で……って違う! おまおまおまお前っ、いきなり何を!?」
少女友「キスしたよね。キスだよね?」
少女「ぁぅ……恥ずかしいよぅ」マッカ
少女「大丈夫?」
少年「ん? おぉっ。何だこりゃ、傷も体力も魔力まで回復してやがる!」
少女「よかったぁ」ニコッ
- 93 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:06:42.73 ID:3VwabWPNo
少女友「少女っ、人がたくさん来る!」
ドタドタドタドタッ
少年「兵士の奴らだ。二人ともこっちに来い。転移呪で逃げるぞ!」
少女「うんっ」ギュッ
少女友「わかっ……」
ズキュゥゥゥゥゥン
ドサッ
少女「少女友ちゃんっ!!」
少年「やべぇ! 対魔結界が動き始めてやがる。飛ぶぞ!」
少女「ダメっ! 少女友ちゃんがっ!!」
少年「全員逃げれなくなっちまう!」
少女「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」
ブォンッ
少年「しまった!」
兵士「そこまでだ!」チャキッ
少年「ちっ」
少女「少女友ちゃんっ!」タッ
兵士「動くな!!」
少女「っ!」
少年「ガキ相手にフル装備かよ……大人げないとは思わねぇのか」
兵士「勇者と魔王が相手だ。これでも心配なくらいだよ。壁に手を付けろ」
少女友「しょう……じょ」ゴポッ ドサッ カチッ
少女「少女友ちゃんっ!」
兵士「動くなと言っている!」ズキュゥゥンッ
少女「きゃっ」ドサッ
少年「少女っ!!」
少女「だ、大丈夫。掠っただけだから」
兵士「動くな。次動けば蜂の巣にする」チャキッ
少年「くっ……」
?「予定通り魔王も手に入りましたね」ザッ
少年「てめぇ……」
少女「……」キッ
?「初めまして、幼い魔王殿。私は全人類統合連合の幹部と言います。お見知りおきを」
少年「お前が裏で全部の糸を引いてやがったのか」
幹部「そうですよ。我々は勇者と魔王の魂の鎖を解明し、その力の源を突き止める、量産する事で人間界と魔界を支配するのです」
少年「きったねぇ手を使いやがって!」
幹部「何をおっしゃるのです。魂の鎖に縛られてその力に振り回され、そして我々のサポートを得て有頂天になっていたのは君ではないですか」
少年「っ……」
少女「少年君を操って世論を操作し、私達を捕える為にわざと少年君に協力したのね」
- 94 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:07:09.34 ID:3VwabWPNo
幹部「その通り。これで二つの力が手に入りました。大成功です。前回の捕獲の時は無茶をしすぎてすぐに死んでしまったようですが、今回はじっくりと調べさせていただきますよ」ニッ
少女友「さ、サイテーね」ゴフッ
幹部「まだ息があったんですか。苦しいでしょう。今すぐ楽にしてさしあげますよ」チャキッ
少女「やめて!!」フォンッ シュンッ
少年「対魔結界さえどうにかなればっ」
少女友「やれるものならやりなさいよ。ただし、その後どうなるかの保証はしないわよ」キッ
幹部「戯言を。邪魔だ、死ね」ググッ
ドドォォォォンッ!
幹部「何事だ!?」
兵士「ま、魔物の急襲です! 大型の飛行型魔物がっ!!」
兵士「そ、空がっ!」
少女「え?」
少年「何が起こった?」
兵士「ば、化け物だらけだ!!」
兵士「見ろ! 空一面に化け物がっ!!」
兵士「に、逃げろ!!」
幹部「逃げるな! この二人を捕えろ!」
兵士「こんな状況じゃ命が何個あっても足りねぇよ!」ドンッ ダダダダ
幹部「くっ、覚えていろ!」ダッ
少女友「間に合った……かな? 少女、無事?」カランッ ドサッ
少年「魔族を呼んだのか」
少女「少女友ちゃんっ」ギュッ
少女友「あはは……何か、目が見えないや……」
少年「おいっ、しっかりしろ!」
少女「少女友ちゃんっ! 治癒呪っ!」フォンッ シュンッ
少年「畜生っ、対魔結界がまだ働いてやがる!」ギリッ
少女友「もう、いいから……」キュッ
少女「よくないっ! 私には、私にはっ、もう少女友ちゃんしかっ」
少年「っ……」
少女友「そんな事、ないよ。ほら、あんたのすぐ隣に居るじゃない。あんたが好きな人がさ」
少女「少年君は……」
少年「……」
少女友「あんた達、本当にお互い嫌いになっちゃった? そんなこと、ないわよね」ケフッケフッ
少女「お願い、喋っちゃだめっ」
少女友「あたしはあんた達がどれだけお互い好き合ってるか、知ってるわ……魔王だとか勇者だとか、くっだらない……」ゴポッ
少年「くそっ、こいつ黙らねぇ!」
少女友「今、はっきりさせてよ。あたしの前、で……さ。でなきゃ心配すぎて寝れないよ」
少女「わ、私は……」
少年「俺は、勇者だ。魔王とは……」ギリッ
- 95 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:07:48.95 ID:3VwabWPNo
少女友「少年、あんたはそんな奴じゃないでしょ……あぁ、そっか。うん、わかるわ。『鍵』ってそういう事だったのね」ケフッケフッ
少女「少女友ちゃん?」
少年「意識が混濁してきてるのか?」
少女「そんなっ! お願いっ、少女友ちゃんしっかり!」
少女友「大丈夫よ。元気すぎるくらい元気。少年、あんたを『助けて』あげる。こっちおいで」ニコッ
少年「?」
少女友「あんたが縛られてるモノ、あたしが持ってたげるから、気持ちに素直になりなさい」スッ
フォンッ キラキラキラ
少年「お、お前っ!?」
少女「魂の鎖が……」
少女友「少女は、大丈夫だよね?」
少女「うん……でもなんで少女友ちゃんがその事を?」
少女友「メイド長さんから全部聞いてたから、ね……少女、少年と仲良く、するんだよ?」ニコッ
少女「でもっ、でもっ!」
少女友「お願い……あたしはもうあんたの側に居れないから……少年、少女の事、任せ……る、わ」パタン
少女「少女友ちゃんっ!?」
少年「おいっ、少女友っ!!」
少女「少女友ちゃんっ! いやぁぁぁぁぁぁっ!!」ゴォッ
パキィンッ
少年「なっ!? 対魔結界が壊れた!?」
ゴォォォォッ
少年「うぉっ!? なんだこの魔力!」
少女「う……うぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」ゴォゥッ
少年「魔力が強すぎて実体化してやがる!」
- 96 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:08:15.70 ID:3VwabWPNo
吸血鬼「ここですか!」ガタンッ
獣王「魔王様っ!」
海王「ご無事ですか!?」
竜王「引き続き人間共に攻撃を続けろ!」
メイド長「魔王様!」
少年「来るなっ!」
獣王「てめぇ、勇者!!」ザッ
少年「駄目だっ、入るな!」
獣王「ぐぉぉぉっ!?」バババババッ
吸血鬼「獣王!? 勇者、一体何を!」
少年「俺じゃねぇ! 少女が暴走してんだよ! この部屋ん中は魔力嵐が吹き荒れてるんだ!」
少女「……」ゴォォォッ
獣王「ぐはっ、ま、魔王様っ」
メイド長「少女友様……そういう事ですか」ポツリ
少年「俺がなんとかする。だからそっから入って来るな!」
海王「魔王様に手を掛けるつもりか!?」
少年「んなことしねぇ! 俺は、こいつの事がっ」
吸血鬼「そのような戯言、どうやって信じろというのです」
メイド長「……いえ、信じましょう」
海王「メイド長、何を」
メイド長「少女友様が魂の鎖を解かれたのですね」
少年「……あいつが、持って行きやがった。お陰で目ぇ覚めたぜ」
メイド長「四王、ここは勇者に任せましょう。魔王様は彼に任せても大丈夫です」
吸血鬼「しかし」
メイド長「私が保証します」
獣王「……わかった。おい勇者、魔王様に何かあったらただじゃおかねぇからな。つってもどっちにしてもお前は敵なんだけどな」
少年「心配すんな」ニッ
- 97 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:08:49.58 ID:3VwabWPNo
少年「おい、少女っ。しっかりしろ!」ユサユサ
少女「……」ゴォォォォ
少年「力に飲み込まれてやがる。このままだと……」
ピシッ ガラガラガラ
少年「やっぱり建物が保たねぇな。少女っ! 早く目ぇ覚ませ!!」ペシペシ
少女「……」
少年「一体どうすりゃいいんだ……」
少女友『少年、少女の事、任せ……る、わ』
少年「くそっ! おい、少女。俺はお前の事がっ!」ギュッ
少年「ーっ、こうだっ」チュー
少女「……!?」ビクッ
シュゥゥゥゥ
少年「やっと、落ち着いたか」
少女「な、な、何っ!? なんで少年君と私がっ!?」アワワワワ
少年「落ち着け!」ガシッ
少女「ひゃぅっ」
少年「いいか? 大きく深呼吸だ」
少女「う、うん」スーッハーッ
少年「今の状況、わかるか?」
少女「もう、大丈夫。少女友ちゃん……」キュッ
少女友「」
少女「ごめんね、私の所為だよね。私が少女友ちゃんを巻き込まなかったらこんな事には……」ポロポロ
少年「俺の責任だ。俺が有頂天になって、魂の鎖に縛られてなければっ」ギリッ
少女「少年君……」
少年「すまない。どれだけ謝っても許される事じゃないのはわかってる」
少女「……ううん、少年君だけが悪いんじゃない。私にも責任があるもん」
少年「……」
少女「ね、少年君。ひとつ教えて?」
少年「なんだ?」
- 98 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:09:16.19 ID:3VwabWPNo
少女「さっきの人、全人類統合連合って言ってたよね」
少年「ああ。俺が勇者の力に目覚めた後、後輩と魔物や怪物討伐をしてる時に向こうからアプローチしてきたんだ。当時の俺は完全に魂の鎖と力に呑まれて有頂天になってたからあいつらの言葉にまんまと騙された」
少女「勇者の記憶に引っかからない?」
少年「何……? まてよ、言われてみれば」
少女「うん。私の魔王の記憶にはっきりと残ってる。あの人たちは……」
少年「思い出した。あいつら、大昔から俺達の力を求めてるやつらだ」
少女「2代前の魔王と勇者はその罠にかかって……」ギリッ
少年「そこまで鮮明に引き継いでるのかよ」
少女「半年間色々がんばったから」ニコッ
少年「……少女」ギュッ
少女「ふぇっ!?」
少年「本当に、ごめんな。少女友が言った通りで、俺が馬鹿だった。大馬鹿だった」
少女「ううん」キュッ
少年「俺は、あいつらを許せない。歴代の勇者や魔王の裏で糸を引き、その力を得ようだなんて」
少女「私も。少女友ちゃんをこんな目に遭わせた人達は許せない」
少年「俺と、来てくれるか?」スッ
少女「でも、少年君には後輩ちゃんが……」
少年「少女友にも言ったけどさ、俺は後輩とはなんでもないんだよ。相棒ってのは事実だけど、それ以上でもそれ以下でもないんだ」
少女「……」
少年「信じてもらえないのはわかってる。でも、俺はお前の事がやっぱり」
少女「うん、わかった。信じる」
少年「ごめん」
少女「ふふっ、謝ってばっかりだね」ニコッ
少年「そう、か?」
少女「少年君と一緒に行く。でも、一度魔王城には戻らなきゃ。後輩ちゃんも解放してあげたいし」
少年「あいつの魂の鎖も断ち切らなきゃな」
少女「うん。方法は少女友ちゃんが見せてくれたから大丈夫」
少年「そうなのか?」
少女「最後に教えてくれたの。少女友ちゃんから貰ったものは全部覚えてるもん」
少年「俺もだ。あいつに殴られた事とか蹴られた事とか、な」ニッ
少女「あはは。少年君、いつも少女友ちゃんにたたかれてたもんね」ニコッ
少年「あいつが男勝りなんだよ」
少女「少女友ちゃん……」キュッ
少年「弔ってやろうぜ。俺とお前で、さ」
少女「うん」
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