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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その17
- 267 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2010/07/15(木) 18:26:25.40 ID:nS.1fnco
〜北方、山脈〜
ジャリッ
影忍「…準備は終えたか?」
盗賊「…うん」
影忍「では行くぞ。今日のうちに北の城へと向かう」
盗賊「…北の城?」
影忍「ああ。お前も覚えにあるだろう?」
盗賊「……」
影忍「安心しろ。今や魔物はおらぬ」
盗賊「…そう」
影忍「では……」
盗賊「…あの」
影忍「……?」
盗賊「…北の城に…何が?」
影忍「…北の城自体に意味は無い」
- 268 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:26:52.77 ID:nS.1fnco
盗賊「…?」
影忍「……龍脈」
盗賊「…へ…っ?」
影忍「龍脈。知っておるか?」
盗賊「い、いや…っ」
影忍「なんだ、知らんのか」
盗賊「…ご、ごめんなさい」
影忍「龍脈とは接点と接点を繋ぐ線…」
盗賊「……」
影忍「接点…。それ即ち……魔王也」
盗賊「――っ!!」
影忍「接点が結ばれれば、魔王の力は強大なものとなる…」
盗賊「……っ」
影忍「しかしだ、龍脈を断ち切る事が出来れば…」
盗賊「魔王の力は……弱くなる…!?」
- 269 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:27:18.59 ID:nS.1fnco
影忍「……そういう事だ」
盗賊「……そんな…事が…」
影忍「中でも、この東方は少々厄介でな…」
盗賊「……?」
影忍「国土がそのまま龍脈となっておる」
盗賊「!?」
影忍「北から南へ…竜脈が走っているのだ」
盗賊「つ…つまり…?」
影忍「分からんか?東方はな、南北を魔王に挟まれ、常に危険にさらされていたのだ」
盗賊「な…なるほど…っ」
ピタッ
盗賊「さらされて…いた…?」
影忍「かつてはな…。今は違う」
盗賊「…どういう…事?」
影忍「……」
- 270 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:27:56.52 ID:nS.1fnco
影忍は立ち止まり、懐より地図を広げる。
影忍「いいか?当方の国土を走る龍脈は…そのまま南へ抜け…」
トントンッ
影忍「どこだ?」
盗賊「…な、南東国…っ!!」
影忍「左様。更に龍脈は南東国を抜け……」
ススーッ
影忍「南の果て…。ここに魔王がいた」
盗賊「…今は…いないの?」
影忍「魔王の名はパズズ。最南の果てにて50年程前に打ち倒された」
盗賊「っ!!」
影忍「彼らは魔王をとてつもなく大きな結界石に封じ込めた」
盗賊「……」
影忍「倒した、と言っても…消滅したわけではない」
盗賊「…うん」
- 271 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:28:26.99 ID:nS.1fnco
影忍「魔王のコア…魂のようなものを封じたのだ」
盗賊「…なる…ほど」
影忍「更にそれを…数年かけて、あの地へと移動させた」
盗賊「……ま…さか」
影忍「お前が遺跡と呼んでいた所。あれがパズズの封印場所だ」
盗賊「…そんな…経緯が…!」
影忍「勿論、国民に知られれば大問題となる。表向きは築城として処理された」
盗賊「……!?」
影忍「お前も見たであろう?…城の残骸を」
盗賊「あれはっ…つまり……」
影忍「結界石を地中に埋めた後、その上に城を築いた」
盗賊「……」
影忍「そこまでは良かったが、当然魔物とて奪還を試みる」
盗賊「…うん」
影忍「城はあっと言う間に陥落し、人間も魔物も多大な被害であったそうだ」
- 272 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:29:01.20 ID:nS.1fnco
盗賊「……」
影忍「やむなく本国の連中は、城ごと覆い隠し、今の状態というわけだ」
盗賊「…そうだったんだ」
影忍「まぁ真実は迷信へと摩り替えられ、今や夢中なのは邪教の連中くらいだがな」
盗賊「……邪教って…まさか…っ」
影忍「城の上にあったであろう?あれは邪教徒が作り上げた祠や祭壇だ」
盗賊「……」
影忍「城が陥落し、今のような山の状態となった後に作り上げられたのだろう」
盗賊「…だから…城の上に」
影忍「そういう事だ」
盗賊「邪教徒は…魔王を崇拝しているの…?」
影忍「そこまでは知らぬ。だが、魔王よりなのは間違いない」
盗賊「そう…か……」
影忍「魔王こそが神だと考えるもの…。魔王こそが破壊と想像の主だと信ずる者…」
盗賊「……」
- 273 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:29:35.83 ID:nS.1fnco
影忍「そして、魔王に取り入り永遠の命を願うもの…」
盗賊「……」
影忍「そういう輩が魔物と通じ、こちらの手の内を明かしているのさ」
盗賊「…内通者」
影忍「…多少は分かってであろう?龍脈の事」
盗賊「う、うん…っ」
影忍「パズズは依然、動きはない。問題は……」
盗賊「…北?」
影忍「……その通りだ」
盗賊「兄さ…あ、貴方は龍脈を断ち切る為に…?」
影忍「俺一人の力ではどうしようもないさ。だが、出来るだけの事はする」
盗賊「……」
影忍「目指すは北の地だ。その為にまず…北の城を目指す」
盗賊「…うん」
盗賊は力強く頷き、走り出す影忍の後を懸命に追った。
- 274 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:30:27.09 ID:nS.1fnco
〜国軍本部〜
コンコン
司令官「…んー」
秘書官「大軍師様がお見えです」
司令官「どうぞ」
カチャッ
大軍師「失礼致します」
司令官「…ん」
大軍師「此度はどちらへ…?」
司令官「別にいいじゃないの。それで…?」
大軍師「三日月島の件……」
司令官「書類には全てサインしたよ。持って行って」
大軍師「はっ」
司令官「特殊遊撃が一人やられたんだって?」
大軍師「…実際は内通者のようで、隊長が始末致しました」
- 275 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:30:53.99 ID:nS.1fnco
司令官「…ふぅん。聞き出せなかったの?」
大軍師「みたいですね…。もしくは口封じかも…ふふっ」
司令官「物騒な事言うと、君も危ないよ?」
大軍師「これは失言でした…。ふふふっ」
司令官「補充要員…用意してあるから」
大軍師「ほう?」
司令官「まぁ…なかなか使えるみたいだよ。隊長は?」
大軍師「しばらく休暇を取っておられます」
司令官「……そう。それは残念」
大軍師「それと、もう一つ…」
司令官「んー?」
大軍師「本国にて、左大臣がお戻りとか…」
司令官「……」
大軍師「各地の視察を終え、昨晩戻られたそうです」
司令官「…このタイミングで…どうなのかねぇ」
- 276 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:31:38.02 ID:nS.1fnco
大軍師「左の連中は共和制思想ですからね。一悶着ありそうですよ」
司令官「国王が病に伏せ、右大臣も保守派だしねぇ」
大軍師「それぞれの二世が、いかに頑張れるか…ですかね」
司令官「手伝ってあげれば?」
大軍師「私が…ですか?」
司令官「左の連中に好き勝手やられると、国軍も無くなっちゃうよ?」
大軍師「予算案も迫ってますしね…」
司令官「これ以上軍事予算を削られたら…国軍もいよいよ終わりかな」
大軍師「…司令もお人が悪い」
司令官「…そうかな?」
大軍師「畏まりました。この大軍師…殿下のお力になって参ります」
司令官「君の口に、この世界の命運が掛かっているよ」
大軍師「命運は掛けて頂いて結構ですが、プレッシャーは掛けないで下さいませ」
司令官「…それもそうだね。はーっはっは」
大軍師「早速、手筈を整えて参ります」
- 277 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:32:17.23 ID:nS.1fnco
〜本国、宮殿〜
エリート「……」
皇太子「……」
エリート「…どう…なさるのですか?」
皇太子「…どう…しようかね」
エリート「そんな悠長な…っ」
皇太子「そうカリカリしても仕方あるまい…」
エリート「それはそうですが…」
皇太子「左の連中とやりあうのは今に始まった事ではないだろう?」
エリート「……」
皇太子「今までは国王や君のお父上が行ってきた事だ」
エリート「あの…殿下……」
皇太子「……?」
エリート「その…左大臣一派が…魔物と通じているなどという事は…」
皇太子「…滅多な事を口にするものではない」
- 278 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:33:15.69 ID:nS.1fnco
エリート「しかし…っ、あの連中は特権を持ち…各地を視察など…」
皇太子「実態は疑わしいと言いたいのかな?」
エリート「……」
皇太子「確かに彼らは廃位と国軍の解体を理想に掲げている…」
エリート「なれば…っ」
皇太子「しかしだ、それはこの国を思っての事…」
エリート「……っ」
皇太子「力に力で対抗しても何も生まれない…という彼らの思想の上で、だ」
エリート「そんなものは戦場に出た事のない者が述べる机上の空論ですよ!」
皇太子「そうだ。その通りだが…そういう切り口もある、という事だ」
エリート「……っ!」
皇太子「とにかくだ。左大臣の帰還は来年度の予算案だろう」
エリート「…当然です」
皇太子「彼らの思想は二の次。抑えるべきは軍事予算、そして研究予算だ」
エリート「……どうします?」
- 279 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:33:49.97 ID:nS.1fnco
皇太子「君のお父上に仕えている、右の連中をありったけ招集してくれ」
エリート「…畏まりました」
皇太子「まずは数だ。人数で押されては元も子もない…」
エリート「早速…手配致します」
皇太子「……」
エリート「…殿下?」
皇太子「…この国の行く末が…見えてきたかな」
エリート「……?」
皇太子「その為には…魔王討伐を成し遂げねばならない…か」
エリート「…魔王を倒すには、力が必要です」
皇太子「君の言う通りだ。来年度からは国軍にも今以上に力を入れて貰う」
エリート「目標は…?」
皇太子「予算倍増…。難しいかな…はっはっは!」
エリート「……」
大声で笑い飛ばす皇太子を、エリートは呆れ顔で見つめた。
- 280 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:34:18.02 ID:nS.1fnco
〜南東国、南の山〜
バキィンッ!!
女隊員「……参ったッス…!」
戦士「…勝ったぁ!!」
女隊員「ついに負けてしまったッスね」
戦士「そうは言っても、1勝26敗ですけどね…」
男隊員「…むにゃむにゃ……」
女隊員「よーし、もう一丁いくッスよぉ?」
戦士「うっす!!」
〜南東国、東の街〜
隊長「……」
テクテクテク
町人「昨晩も出たらしいぜ?」
店員「本当かよ!?」
町人「分かれ道付近で見たって奴が多数いるんだよっ」
- 281 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:36:17.72 ID:nS.1fnco
店員「ふぅん…。夜は出歩かない方がいいかもなぁ…」
隊長「……?」
テクテクテク
隊長「おい、これくれ」
店員「あい、らっしゃい!毎度ーっ!!」
ゴソゴソッ
店員「はいお待たせっ。……はい、丁度だね!ありがとよっ!」
隊長「……さて、と」
食料を大袋へと詰め込み、隊長は再び南の山へと戻る。
テクテクテク
隊長「よいっしょ」
ググッ…タンッ…タンッ…タタンッ
隊長「…ちゃんとやってんだろうな、アイツら」
隊長は物凄い勢いで、崖をするするとよじ登っていく。
その姿は猿か獣のように、岩や崖を飛び交い、あっと言う間に頂上付近へ迫る。
- 282 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:37:03.60 ID:nS.1fnco
…
男隊員「……!?」
ガバッ
女隊員「どうしたッスか?急に座禅なんか組んで…」
男隊員「話しかけるな」
戦士「…?」
グイッ……スタッ
隊長「いよぉ、ちゃんとやってっかぁ?」
女隊員「隊長!おかえりなさいッス!」
戦士「え…?も、もう行ってきたんですかい?」
隊長「ああ。ほらよっ」
ドサッ
戦士「早すぎんだろ……マジかよ…っ」
隊長「あん…?何だ?座禅なんか組んじまって……」
男隊員「…雑念を取り払い…何事にも…集中力が肝心」
- 283 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:38:55.89 ID:nS.1fnco
隊長「…ふぅん。ま、そりゃそうだが。……変な奴」
戦士(……恐るべし)
隊長「今日の修行も昨日と一緒。前半は居合いをひたすら続ける」
女隊員「さっき、ついに負けちゃったッスよ」
隊長「ほぉ…!」
戦士「いや・・・30回程度のうちの…1回きりですけど…」
隊長「上等じゃねぇの?国軍の特殊遊撃が相手だぞ?」
戦士「…まぁ…そうですけど」
隊長「これでこいつら二人のしちまったわけだ…!大したもんだわ」
ピクッ
男隊員「…あのなぁ、操られてなきゃお前なんかに…」
隊長「おいおい、雑念だらけだぞ?」
男隊員「!?…ぐっ……むぅ…っ」
隊長「さぁて、腹ごしらえして…さっさと修行始めるぞ!」
戦士「おっす!!」
- 284 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/07/15(木) 18:43:22.41 ID:nS.1fnco
広げた風呂敷に綻びが出ないよう頑張ります…
それでは失礼致します!ありがとうございました!ノシ
- 285 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/15(木) 19:27:44.30 ID:8w9HScDO
乙乙!
修行パートはいいなあ
wwktkが止まらないww
- 300 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/16(金) 17:00:46.25 ID:Da0ld8Eo
数刻の後、紅くそまった夕焼けの光が、盗賊の身体を照らし包む。
鴉の鳴き声の中、盗賊と影忍の二人は、北の城へと辿り着いた。
〜東方、北の城〜
ザッザッザ
影忍「かつては難攻不落と謳われた堅城も、無残なものだ」
盗賊「……」
影忍「お前も知っているように、先の戦いにてこの城は機能を失った…」
盗賊「…うん」
影忍「それと同時に、付近の魔物の気配も消え、一見平和に見える」
盗賊「…違うの?」
影忍「実際は更に北の地へ落ち延び、再起を図っているのであろう」
盗賊「そういえば…老中が…っ」
影忍「老中、北の大名…そして影。彼奴らが魔物と結託しておった張本人だ」
盗賊「……」
影忍「この地だけではなく、パズズの復活にも心血注いでおったようだしな」
- 301 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/16(金) 17:01:20.85 ID:Da0ld8Eo
盗賊「……そうか!」
影忍「……」
盗賊「…あの地の調査を依頼した…東方の奴らって」
影忍「…おそらくそうであろう」
盗賊「……っ」
影忍「別に利用されたわけではない。気に病む事もあるまい」
盗賊「……」
影忍「ん…?そうか。それでお前らはあの城に潜っていたわけか…」
盗賊「…うん」
影忍「……あの地にいた…ネクロマンサーなる者」
盗賊「…!?」
影忍「奴には気を付けろ」
盗賊「…え…っ?」
影忍「他の魔物と違い、何か企んでおる…。魔王復活だけではない何かを…」
盗賊「……」
- 302 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/16(金) 17:02:15.20 ID:Da0ld8Eo
影忍「それに……いや、上へ上がるぞ」
盗賊「…?……うん」
〜北の城、本丸〜
ザッザッザ…ザッ
影忍「……」
盗賊「……」
二人の前には、半壊した本丸の景色が広がる。
その中央部、句の刻まれた岩と、黄色く染まった菊の花が添えられている。
盗賊「――っ!!」
影忍「拝んだらどうだ?かつての同胞であろう?」
盗賊は頷き、岩の前にしゃがみこみ、両手を合わせ黙祷する。
盗賊「…………」
スッ
影忍「……良いか?」
盗賊「…うん」
- 303 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/16(金) 17:03:14.55 ID:Da0ld8Eo
影忍「菊もまだ新しい。何者かが手入れを施しているようだな」
盗賊「……うん」
…
影忍「今宵はここで寝泊りし、日の出とともに最北へ向かう」
盗賊「…うん」
影忍「これより北は、更に寒さも厳しくなる。身支度を整えておけ」
盗賊「…分かった」
影忍「…万が一に備え、お前は上の天守で寝ろ」
盗賊「…?」
影忍「俺はここで休む。良いな?」
盗賊「う、うん……」
影忍「……食事は…他に何かないのか?」
盗賊「…え、えっと…っ」
ゴソゴソッ
盗賊「…こ、これっ」
影忍「何だ。米があるではないか」
盗賊「…あ、あのぉ」
- 304 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/16(金) 17:04:08.27 ID:Da0ld8Eo
…
影忍「まさか自炊も出来ぬとは……」
影忍は米を研ぎながら、盗賊にぼやく。
盗賊「…ごめんなさい」
影忍「…さて」
器を薪木の上へ吊るし、影忍は印を結び始める。
盗賊「……!?」
影忍「言ったであろう?お前の兄の思念体だ。この程度は出来る」
シュイィンッ…ボウッ!!…メラメラッ
影忍「あとは…」
影忍は岩の前に立つと、両手を合わせ、菊を一本拝借する。
盗賊「…食べれるの?」
影忍「食べられる、だ。正しい言葉を使え」
盗賊「……ごめんなさい」
菊を千切り、器の中へ放る影忍へ、申し訳無さそうに盗賊が謝罪する。
- 305 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/16(金) 17:04:35.84 ID:Da0ld8Eo
グツグツグツ…
影忍「…ふむ。もういいだろう」
ゴソゴソッ…パッパッ
盗賊「…それは?」
影忍「…塩だ。ほれ、食べよ」
盗賊「…ありがとう。いただきます」
パクッ…モグモグ
盗賊「……」
影忍「…どうだ?」
盗賊「…味が…しない」
影忍「仕方あるまい。暖かい物を食えるだけマシと思え」
盗賊「…うん…ありがとう」
影忍「……」
盗賊「ふーっ、ふーっ……モグモグ」
粥を食す盗賊を、影忍はただじっと見つめた。
- 306 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/16(金) 17:05:06.33 ID:Da0ld8Eo
…
影忍「…どうした?」
盗賊「…何だか…眠く……っ」
影忍「疲れておるのだ。上で休め」
盗賊「…う、うん……ごめんなさい」
テクテクテク…
影忍「…ほれ、しっかりせぬか」
盗賊「…う……ん…」
影忍は肩を貸し、盗賊を天守へ誘導し、横にする。
盗賊「…すーっ…すー…っ……」
影忍「……」
ザッ
影忍「すまんな。盗賊…」
盗賊「…すーっ…すーっ…すーっ……」
盗賊の寝顔を見つめ、影忍はそのまま天守を後にした。
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