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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その32
- 282 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2011/09/26(月) 17:46:54.37 ID:sIGqV5tso
シヴァ「何をベラベラとホザいているかぁ!!」
天才「俺様が引きつける。準備しとけ! しくじるなよ!」
西方司令「さっきかましたんだ。しくじるかっての!」
南方司令「距離が取りにくい。少し下がってくれ」
ズザッ
シヴァ「ヌオオォォォ!!」
天才「でっりゃああぁぁぁぁ!!」
ガッキイイィィン!!…ズガガガガッ…ガガキイイィィン!!
アスラ「隙ありぃ!!」
天才「隙なんざねーんだよバカヤロウ!!」
バッゴオオォォォォン!!
アスラ「……ッ!!」
ドズウウゥゥゥン…シュタッ
アスラ「……馬鹿なッ、完全に死角であったはずだ……ッ」
天才「見えるんだよ、テメーの動きなんざなぁ!」
- 283 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:47:27.78 ID:sIGqV5tso
グアッ…ザッシュウウゥゥゥゥ!!
天才「おらおらおらぁ!!」
シヴァ「コ……コイツやはり……ッ」
アスラ「未来の動きが見えているだとぉ……ッ!!」
天才「右っ、左……もいっちょ左で下段がガラ空き!!」
バギャアアァァ!!…ズザザザザアァ
シヴァ「……ゴハ……ッ!」
アスラ「やはりこの人間、ここで潰さねば……ラーヴァナ様にも届き得る」
ザシャッ!!…ダンッ!!
天才「来たっ、縦一列! いくぞおらぁ!」
シヴァとアスラが線上に並ぶ予見を得た天才は、後方へ勢い良く跳躍した。
天才が高速で回転しながら両足を伸ばすその先には、巨大な武器を構えた西方司令。
西方司令「あーんと、名前何だっけか? 超級覇……」
天才「違げぇ! ハイパーウルトラジーニアスライトニング……何だっけ?」
西方司令「メンドクセー! とにかく行っくぞおぉ!! 吹っ飛べやゴルアアァァァァ!!」
- 284 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:47:59.11 ID:sIGqV5tso
天才を叩きのめすかの如く、回転を加えながら武器を振り回す西方司令は、
真芯で捉えたフルスイングで天才を圧倒的な力で跳ね返す。
ガキイィ…バッゴオオォォォォン!!
西方司令の武器に両足を乗せた天才は、その衝撃を利用し、大きく前方へと飛んで行った。
それはあたかもバリスタの射出にも似た、凄まじい威力と速さである。
シュゴオオォォォォ…
南方司令「……」
天才「頼んだぜぇ!」
南方司令「ぬおりゃああぁぁぁぁ!!」
高速で前方へと飛び出す天才の両足を、南方司令の両手が空中で掴み捉える。
ガッシイイィィィィ!!
南方司令「ジャスティス……ジャイアントスイングフルパワー!!」
ブンブンブンブンッ…バッシュウウゥゥゥゥン!!
天才「方向ピッタリ!! グッジョブ!!」
南方司令「当たり前の事! これぞ愛と正義の力!」
- 285 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:48:27.23 ID:sIGqV5tso
2人の手が加わった天才の突撃は超高速で空中を疾走し、次第に天才の魔力が、
オーラのように周囲を取り囲み、巨大な球のような存在となった。
天才「喰らええぇぇぇぇーっ!!」
更にきりもみを加える事で先端はドリルのように回転し、周囲の地面を根こそぎ削り取りながら、
一直線にアスラとシヴァの両者を標的に捕らえた。
シヴァ「――ッ!?」
アスラ「ちいぃ――ッ!!」
前方のアスラが天才の突撃を既のことで直撃するのを回避し、伏せるように地面へと倒れこんだ。
後方のシヴァはアスラの動きによって刹那の時間を奪い取られ、回避するには至らなかった。
シヴァ「ウオアアアアァァァ!!」
故に、シヴァは天才による超高速の突撃を、正面より直撃する事を相成った。
ゴッガアアアアァァァァン!!
シヴァ「ウオオオオォォォォーッ!!」
巨大な球を両手で必死に受け止めるシヴァだが、その凄まじい威力に後方へ押し込まれていく。
腰を落とし地面を引き摺られながら踏ん張るシヴァの両手は、灼熱により崩れ落ち始めていた。
- 286 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:48:59.86 ID:sIGqV5tso
ドジュウウゥゥゥゥ!!
シヴァ「ガアアァァァァーッ!!」
天才「しぶてぇじゃねーか! ハーッハッハッハッハ!」
シヴァ「こ……んなものでええぇぇぇぇ……ッ!!」
天才「爆発っ!!」
ぽつりと呟いた一言と同時に、眩い輝きと耳をつんざく轟音が辺り一面へと広がった。
熱風が四散するとその直後に、天高く黒みを帯びた煙が勢いよく上がった。
カッ!!…ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
南方司令「くっ、物凄い熱風だな……っ」
西方司令「うっほぉ、煙がキノコみてーになってんぞ!」
後方に押し込まれたお陰か、シヴァ以外の者らにその被害はなかった。
それでも物凄い勢いで押し寄せる熱風と石つぶてに、一同は唖然とするばかりであった。
南方参謀「な……何が起きたわけ……?」
南方副司令「よく分からんが、総司令が突っ込んだようにも見えたが……」
西方副司令「……っ」
- 287 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:53:47.02 ID:sIGqV5tso
ゴゴゴゴゴゴ…
アスラ「…………」
地べたに伏せる魔物は、ただその変わり果てた景色を呆然と眺めていた。
アスラ(これ程……これ程なのか……ッ)
ズザッ
アスラ「ラーヴァナ様が危ない。奴の命と引き換えならラーヴァナ様とて防ぎきれるとは……」
天才と2人の司令が放ったとんでもない攻撃。その威力に魔王軍の軍団長であるアスラが凌駕した。
その威力はアスラの中で、魔王にも十二分に匹敵し、それがどういったものなのか、
命がけの一撃なのか、或いは何発でも放てるような代物なのか、
魔物の中でも最上級に近しい彼が似つかわしくない程に、地面へとうつ伏せに寝転び、
そんなプライドも恥もすてた状態で浮かんだ結論は1つであった。
天才がラーヴァナの城へと到達する前にとどめを刺す。その1つのみである。
- 288 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:54:17.58 ID:sIGqV5tso
ジャリッ…ザッ…ザッザッザ
西方司令「どこ見てんだアスラちゃん。てめーの相手はこっちだぜぃ!!」
南方司令「……」
アスラ「貴様等如きに構っている暇はない」
西方司令「あぁ!?」
タッタッタ…ジャリッ
南方参謀「司令っ! 大丈夫!?」
西方副司令「これが……アスラっ!」
西方参謀「そろそろ退くぞ。炎で退路が絶たれちまうわ……ヒック」
南方司令「そうはいかん。こやつをここで倒さねばならぬ。それこそ正義!」
西方司令「正義かどーかは置いといて、コイツを逃がすと厄介だって話だよこのクソボケ!」
南方参謀「なら急いで頂戴っ。悪いけど傍観なんてしてられないわよ」
西方参謀「ああ。怠慢だとかそんな事はどうでもいい。全力で叩くぞ! ノルマは30分!」
南方副司令「行くぞ! 司令を援護してやれっ!」
西方副司令「り、了解っ!」
- 289 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:54:44.23 ID:sIGqV5tso
ズザザッ…ダダダダッ
アスラ「1匹だろうと……何匹だろうとおぉ! 人間如きが群れたところで何の意味もおおぉぉぉぉ」
ピクッ
アスラ「……ッ」
西方司令「隙ありさようならご臨終ううぅぅぅぅ!!」
グワッ…バッゴオオォォォォン!!
南方参謀「もはや剣じゃないわね……」
西方副司令「直すにあたって刃こぼれ酷すぎるから金棒みたいな打撃武器にするって言ってた」
西方参謀「まぁちょうどいいんじゃねぇの……わはは!」
南方副司令「くっ喋ってる場合じゃねぇぞ! 追撃だ追撃!」
アスラ「……」
いつものアスラであれば、躊躇する事なくたった6人の人間へ攻撃を仕掛けていたであろう。
しかし彼は踏みとどまった。理由ははっきりしていた。恐怖である。
天才の己をも凌駕し、魔王にすら届きつつある力を体感し、今まで決して味わう事のなかった、
人間への恐怖を抱き始めていた。それが戦闘開始の第一歩を遅れさせたのだ。
- 290 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:55:10.14 ID:sIGqV5tso
アスラ「……」
だがそれは、決して悪い事ばかりではなかった。アスラにとって恐怖という感情を得た事は、
物事を冷静に見つめる彼の注意深さを更に高めるものと相成った。
アスラ(各々の強さをまずは見極めねばならぬ。全員をまとめて相手するのも容易ではあるが……)
ダンッ!!…ザスッ
アスラ(万が一の事もある。闇雲に攻めるは愚策、ここは時間をかけて各個撃破に務めるのみ)
西方参謀「何だぁ? 間合いを取りやがった……!?」
南方副司令「面倒だな。こちらは時間をかけたくないというのに」
南方司令「行くぞ、援護しろ!」
西方司令「知るかボケ! テメェが援護しろタコ!」
ヒュバッ…ザザザザッ
南方司令「ジャスティスバーニングパーンチイィ!!」
西方司令「燃え尽きて灰になって死ねおらああぁぁ!!」
アスラ(……この2匹は組まれると手間だな。分断して戦うが得策か)
両司令の炎を付加した攻撃がアスラの反撃を許さず繰り出された。
- 291 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:55:37.07 ID:sIGqV5tso
ゴゴオオォォォォ…
天才「……やるじゃねぇか」
シヴァ「……」
天才「まさかアレを食らって立ってるたぁ、流石は眷属ってとこか」
シヴァ「……」
天才「まぁもっとも、両腕吹っ飛ばされたそのすがたじゃ勝ち目はねーだろうけどなぁ」
シヴァ「……グ……オオォォォォ」
天才「まだやるか? それとも潔く尻尾を巻いて逃げるかい? ハーッハッハッハ!」
いつにも増して饒舌な天才。その理由は天才自身にしか分からない。
両手両足の震えを押さえる事が精一杯な彼の肉体は、回復が間に合っていなかった。
それを悟られぬよう、時間を稼ぐよう、天才はシヴァへと語り続けていた。
天才(早くしろ俺の身体……っ! この程度でなにガタきてやがんだよ……!)
仮にもしこの瞬間、天才が攻撃を受けていれば、確実に傷を負っていたであろう。
しかしそれを負わせられる者は周囲には存在しなかった。
居るのは天才以上に手傷を負ったシヴァのみであった。
- 292 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:56:06.55 ID:sIGqV5tso
シヴァ「……こ……んな事が……ァ」
天才「3分待ってやる。逃げるか死ぬか、好きな方を選びな」
時間を与える必要など一切なかった。無論これは天才自身の回復を待つ為の時間である。
しかし、シヴァがそれを知る由は当然なかった。そしてシヴァには退く理由もなかった。
シヴァ「何故だ……何故、アンラ・マンユ様の力を頂いたこの俺が……ッ」
ズザッ…ズズッ
シヴァ「何故……アンラ・マンユ様が負けたのだああぁぁ!!」
天才「時間切れだ」
シヴァ「ガアアアアァァァァーッ!!」
崩れ落ちてゆく体を引き摺りながら咆哮にも似た叫びをあげて、シヴァは天才めがけ突進した。
短い時間ではあったが、3分という時間は、天才が両手に握るツヴァイハンダーを
目前に迫る敵の腹部へ突き刺すには、十分な回復をもたらす時間であった。
ズグウウゥゥゥゥ…キュイイィィィィン
天才「さっきの問いだけどな。答えは簡単だ……弱ぇからだよ」
刀身から五行の光が広がり、シヴァの肉体は静かにこの世界から姿を消した。
- 293 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:57:07.82 ID:sIGqV5tso
ドドオオォォォォ…
天才「……ふーっ」
カランッ…ドシャアァ
天才「……あーしんど……っ」
シヴァの消滅を確認すると天才はそのまま地面へうつ伏せに倒れこんだ。
天才(アスラ置いてきちまったが……戻ってる暇も労力もねぇ……)
ググッ
天才(奴らに任せて、ラーヴァナの城を一足先に目指す。それしかねぇ)
力の入らぬ身体を懸命に起こし、拾い上げたツヴァイハンダーを杖代わりに立ち上がる。
天才「ラーヴァナさえ討てば……あとは……」
ズルッ…ドシャアァ
天才「……ハッ、ハハハッ! ハーッハッハ!」
誰も居なくて良かった。天才はまず最初にそう思い浮かべながら足を前に前にと進めて行った。
こんな惨めな姿を誰にも見られずに済んだ事が、彼にとって何よりの幸いであったからだ。
倒れては起き上がり、目を閉じる事はなかった。そして彼はこの先、死ぬまで眠る事はなかった。
- 294 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:57:33.30 ID:sIGqV5tso
〜最南、山脈〜
戦士「もうじき夕方だな」
南方魔道長「そろそろ月が出始める。さぇて、ラーヴァナの奴どう動くか……」
青年兵「伝令は大丈夫ですか?」
ハヌマーン「うむ。先程、連中に依頼しておいてのでな」
マーマン「連中?」
ハヌマーン「今に分かる。それよりも、何か違和感がある」
魔道士「違和感……ですか?」
ハヌマーン「ああ。どうにもあの城、ラーヴァナ以外の何かを感じるのだ」
白馬騎士「!?」
弓使い「まさか、他に魔物が……っ!?」
剣士「スグリーヴァ様を吸収したヴァーリンじゃないかな……っ」
召喚士「もしくは、サルワとアンラ・マンユの魔力で出来たドラゴンか……」
白馬騎士「はたまたそれ以外の何者か」
錦将軍「とにかく魔王以外は俺らがぶっ潰す。それでいいんだろ?」
- 295 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/26(月) 17:58:00.15 ID:sIGqV5tso
兄者「それはそうだが、容易くいくものではないぞ」
弟者「承知の上さ! やれるかどうのよりも、やらなくちゃならねぇ!」
盗賊「……だな」
白馬騎士「まずは魔王ラーヴァナをここで討つ事が最優先」
青年兵「それが出来ない場合は最悪、ここから動かさぬよう足止めする事です」
青龍士官「魔王が動けば南方軍は壊滅する。ここで食い止める事こそ最も重要な事だ」
剣士「ですね。その為には現戦力を考えると……」
召喚士「軍団長1匹が限界かな……」
戦士「上等だ。やってやろうじゃねぇかよ」
魔道士「……アマゾネスさん、どうしました?」
アマゾネス「何やら森がざわついているな……」
魔道士「えっ?」
アマゾネス「向こうで何かあったのかもしれない。木々が怯えているようだ」
南方弓長「……」
召喚士「みんな、無事だといいですけど……っ」
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