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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その23
331 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:05:05.93 ID:2UAFZNgo
パチパチパチ…バチッ

召喚士「……ん」

目を開けると、そこは室内であった。

召喚士「……っ!!」

ガバッ

大軍師「…おや、お目覚めですか」

召喚士「こ、ここは……っ!?」

大軍師「北の村ですよ。災難でしたね…お疲れ様です」

召喚士「……あ、あの…っ」

大軍師「帰路の途中で魔物に襲われたようですね」

召喚士「…そ、そうだ!白い毛むくじゃらの…猿人のような化物に」

大軍師「おそらくそれは『イエティ』ですね」

召喚士「イエティ…?」

大軍師「雪原地帯に生息する乱暴な魔物ですよ」

召喚士「…そうでしたか……あっ!!盗賊さんはっ!?」


332 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:05:32.06 ID:2UAFZNgo
大軍師「ご安心下さい。隣の部屋で眠っておられます」

召喚士「……」

ヨロッ…テク…テクテク…

大軍師「…大丈夫ですか?」

召喚士「俺よりも…盗賊さんは……」

大軍師「目立った傷はありませんでした。外から見た限りですが…」

テクテクテク…カチャッ…

天才「!?」

召喚士「……天才…さん!?」

天才「…違うぞ。俺は濡れた服だと風邪引くだろうから脱がせようと……」

召喚士「盗賊さんは…無事ですか!?」

天才「回復魔法はかけておいた。おそらく疲労と凍傷だろう」

召喚士「……そうですか」

天才「もう一度言うが、俺は濡れた服をだな……」

召喚士「天才さんは…どうしてここに…?」


333 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:06:02.28 ID:2UAFZNgo
天才「……ソイツに呼ばれた」

召喚士「大軍師さんに…?」

大軍師「伝令は出しましたが、呼んだ覚えはないんですがねぇ」

天才「うっせーな!北の港にいたから様子見に来てやったんだろうが!」

大軍師「…ふっふ」

天才「…お前は殺そう」

召喚士「と、とにかく…っ、ありがとうございました!」

大軍師「…しかし朱雀先生ともあろうお方が、意外ですねぇ」

天才「四人いねーと本領発揮しねぇってか?」

召喚士「いや…。それもあるかもしれませんが…吹雪がひどくて……」

大軍師「あぁ、あれは幻術ですよ」

召喚士「幻術!?」

天才「脳裏直接催眠みてーのをかけて、相手の五感をいじくるんだよ」

召喚士「……っ!」

大軍師「幻術を扱う、怪しい修道士の格好をした魔物に会いました」


334 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:06:34.63 ID:2UAFZNgo
召喚士「修道士…!?やっぱり…そうだったのか…っ」

大軍師「お会いしたのですか?」

召喚士「……廃墟の村で…っ」

天才「お人好しだねー。怪しいとか思わねぇのか普通?」

召喚士「いや…思いましたけど、世間話して去って行ったし……」

天才「…貴公、早死にの相が出ておりますぞ!なんつってな。はーっはっは!」

大軍師「とにかく、大事に至らず幸いでしたよ」

召喚士「……すみませんでした」

モゾッ

盗賊「……んっ」

召喚士「盗賊さん…!?」

盗賊「……召…喚士」

召喚士「あっ!無理に起きない方が……」

盗賊「……大丈夫っ」

召喚士「……盗賊さん…っ」


335 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:07:00.85 ID:2UAFZNgo


盗賊「…なるほど。そうだったのか」

天才「そこで颯爽と俺様が助けてやったというわけよ!」

大軍師「…やれやれ」

召喚士「……?」

大軍師「軽食と飲み物を取って参ります」

召喚士「…あっ、俺も行きますよ!」

大軍師「そんなご無理なさらずとも……」

召喚士「いえいえ、タダで貰うわけにはいきませんからね」

大軍師「…ふっふっふ。そういう事ならお願いしましょうか」

召喚士「はいっ!」

テクテクテク…パタン

盗賊「……あの」

天才「あん?」

盗賊「……ありがとう」


336 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:07:27.23 ID:2UAFZNgo
天才「何だ今更……」

盗賊「……いや…その」

天才「感謝と反省は大切な事だ。精進しな」

テクテクテク

天才「そんだけ喋れりゃ大丈夫そうだわな」

盗賊「……あの」

天才「……あ?」

盗賊「…前にも聞こうと思ったんだ」

天才「……?」

盗賊「…貴方は……ムグッ」

天才「…お嬢ちゃん、世の中には知り過ぎない方がいい事もあるんだぜ?」

盗賊「……」

天才「…ま、今日の一件で反省したろ。明日からはもっと慎重にな!」

盗賊「……はい」

天才「はーっはっはっは!反省は大切!」


337 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:07:54.23 ID:2UAFZNgo
カチャッ

大軍師「……」

天才「…何だよ、なんもしてねぇぞ?」

大軍師「…盗賊殿、何か食されますかな?」

盗賊「…いえ」

大軍師「では、せめて温かい物を飲んで下さい」

テクテクテク…コトッ

盗賊「…ありがとうございます」

大軍師「身体が冷え切ってしまってますからね。とにかく暖めないと」

テクテクテク

召喚士「毛布、借りてきました!」

大軍師「召喚士さんもですよ?しっかり暖を取って下さい」

召喚士「はいっ。でももう大丈夫ですから」

天才「まぁまぁ。今日は二人で暖まって寝なさいな」

召喚士「何で二人で寝るんですかっ!」


338 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:08:25.83 ID:2UAFZNgo


召喚士「……」

盗賊「……」

召喚士「…………」

盗賊「…………」

ひらひと舞い散る粉雪の降るの中、部屋には召喚士と盗賊が横たわる。

二人は目を開き、ただ狭い天井の景色を見るのみ。

パチパチパチッ…

召喚士「あの…っ、やっぱり俺…殺気の家で寝……」

盗賊「だ、だったらその…私が」

召喚士「い、いいですよっ。俺が行きますから…」

盗賊「…じ、じゃあ大丈夫」

召喚士「大丈夫?」

盗賊「…ここで…いい」

召喚士「俺も…ですか?」


339 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:08:59.46 ID:2UAFZNgo
盗賊「……うん」

召喚士「……そ、それじゃ盗賊さん寝てて下さい!俺、見張ってますから」

盗賊「…いいよ」

召喚士「……」

盗賊「…寝よう」

召喚士「……それじゃ、なるべく端にいますから」

ゴロン

召喚士(……寝られるワケがない…っ)

盗賊「……」

召喚士「……」

盗賊「…あのさ」

召喚士「は、はいっ!?」

盗賊「…その…ありがとう」

召喚士「いえ…っ。こちらこそ」

盗賊「……ごめん」


341 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:09:48.83 ID:2UAFZNgo
召喚士「…盗賊さん?」

盗賊「…私は…弱いな」

召喚士「そんな事ないですよ。俺だって…弱いです…」

盗賊「……」

召喚士「今は弱くていいじゃないですか」

盗賊「……」

召喚士「それに、以前と比べたら…強くなってますよ。ゆっくりと…」

盗賊「……うん」

召喚士「あと2年ですけど…焦らず行きましょう」

盗賊「……うん」

召喚士「俺も頑張ります!はは…っ」

盗賊「…いつも…ありがとう」

召喚士「……いえ…こちらこそ」

盗賊「……すーっ…すーっ」

召喚士「……」


342 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:10:34.76 ID:2UAFZNgo
〜次の日〜

召喚士「……さて」

盗賊「…行くか」

天才「今日は気合入ってんなぁ」

召喚士「昨日たっぷり反省しましたからね」

盗賊「…ああ。反省した」

天才「なんなら付いてってやろうか?」

召喚士「いえ、大丈夫です。やらせて下さい」

天才「…はーっはっは!なんかしらんが吹っ切れたみてーだな」

大軍師「くれぐれもお気を付けて」

召喚士「はいっ。あ……」

大軍師「何か…?」

召喚士「ちなみに…今日の天候は……」

召喚士「…予測では、雪は降りませんよ」

召喚士「…よしっ!」


343 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:11:12.50 ID:2UAFZNgo
ザッ

大軍師「歩きで宜しいのですか?」

召喚士「二頭も潰してしまいましたから……」

盗賊「…気軽だしな」

大軍師「分かりました。それでは頑張って」

召喚士「ありがとうございます。行ってきます!」

盗賊「……」

ペコリ…テクテクテク…

天才「一晩でわりかし成長したな」

大軍師「貴方のお陰かもしれませんね」

天才「流石、俺!」

大軍師「仕事は宜しいのですか?」

天才「…へいへい。そんじゃ俺も帰るとすっか」

大軍師「ありがとうございました」

天才「そう思ってんなら、しっかり返せよ!はーっはっはっは!!」


344 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 17:12:55.95 ID:2UAFZNgo
ザッザッザ

召喚士「……!?」

盗賊「どうした?」

召喚士「…あれって…昨日のイエティ?」

目の前に転がる残骸を、召喚士は指差し問う。

盗賊「…のようだな」

召喚士「……意外と村の近くだったんですね」

盗賊「…幻術か」

召喚士「…何か?」

盗賊「…かつて火焔山でも一度、幻術にかかった事があった」

召喚士「……」

盗賊「…私は馬鹿だっ、何故…気付かなかったのだ」

召喚士「あの状況では気付けませんよ…」

盗賊「……」

召喚士「さぁ、行きましょう。廃墟の村へ……」


347 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 18:19:19.26 ID:2UAFZNgo
〜廃墟の村〜

召喚士「…徒歩でも途中走れば、そんなに距離を感じませんね」

盗賊「…だな」

召喚士「…さて、今日こそはいるかな?」

盗賊「……」

テクテクテクテク…

召喚士「……魔物はいないですよね…?」

盗賊「…うん。気配はない」

召喚士「…慎重に行きましょう。慎重に…っ」

盗賊「…うん」

コソーッ

召喚士「まずは、昨日の教会まで行きましょう」

盗賊「…ああ」

召喚士と盗賊は周囲を警戒しながら、村の奥にある教会へと向かう。

時間も相まってからか、昨日よりは視界も晴れ、不気味な様子はなくなっていた。


348 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 18:24:51.55 ID:2UAFZNgo
〜廃墟の村、教会〜

ミシッ…ギシッ…

召喚士「……」

盗賊「……」

召喚士「…中も、人気はなし」

盗賊「…ああ、だが」

召喚士「…?」

テクテクテク…

盗賊「…何者かが訪れた形跡があるな」

召喚士「……っ」

盗賊「…ここ、昨日より埃が少ない」

召喚士「言われてみれば…そんな気もしますね」

盗賊「…行くか?」

召喚士「ええ、行きましょう。地下へ」

盗賊「…ああ」


349 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/29(水) 18:29:09.12 ID:2UAFZNgo
召喚士「……灯り、要りますか?」

盗賊「……いや、いい」

召喚士「見えます?」

盗賊「…見えないけど…五月蝿いからいい」

召喚士「…なるほど」

テクテクテク…

盗賊「……いないな」

召喚士「気配なし、ですか?」

盗賊「…うん」

テクテクテク…

召喚士「……いないですね」

盗賊「……」

昨日と変わらぬ空洞内の一室。

召喚士「…今日も待ち伏せますか?」

盗賊「…昨日の事もある。遅くならない程度にしておこう」


358 名前:三日目東R59Aがお送りします [sage] 投稿日:2010/12/30(木) 03:16:52.89 ID:zx4OcIoo
一人で天気予報して一人で意気込む召喚士かわいい
ちなみに盗賊おぶって帰るよりはスフィンクスやユニコーンに乗っけてもらったほうが生還しやすかったのではなかろうか


359 名前:三日目東R59Aがお送りします [sage] 投稿日:2010/12/30(木) 03:24:03.84 ID:c5jpDcQo
積雪状況次第では雪洞を設営して様子を見る
が、幻術の吹雪にハマってるんじゃ役に立たないだろな。


365 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/30(木) 23:23:08.02 ID:QUNhdoAo


召喚士「……」

盗賊「……」

召喚士「……誰も…来ませんね」

盗賊「……うん」

召喚士「仕方ない。帰りましょうか」

盗賊「…そうだな」

テクテクテク…

召喚士「今日も駄目でしたね…」

盗賊「…ああ。あまり時間はかけたくないところだが」

召喚士「明日は夜明けに合わせて来てみましょうか」

盗賊「…そうだな。時間をずらすのも手だろう」

ザッザッザ…」

盗賊「……!?」

召喚士「…どうしました!?」


366 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/30(木) 23:24:16.84 ID:QUNhdoAo
盗賊「……いや、何でもない」

召喚士「では、戻りましょうか」

テクテクテク…

二人が立ち去った廃墟の村の入り口。盗賊が微かに気配を感じたその主。

男は完全に姿が消えた事を確認すると、ようやくその顔を見せた。

サル「……確かアイツら」

ザッザッザ

サル「まーったく、嫌んなっちまぜぇ〜。こんな所まで嗅ぎ付けうとはなぁ〜」

テクテクテク…

サル「それにしてもアイツら…何が目的だぁ?」

テクテク…ピタッ

サル「まーさか、俺らを捕らえに…?いや、それとも……」

クルッ

サル「んーふふふふっ、面白くなってきやがった。とにかく報告だ!」

ザッザッザ…タタタタタッ


367 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/30(木) 23:24:56.92 ID:QUNhdoAo
〜北の村〜

大軍師「……成程。今日もお会いする事は出来ませんでしたか」

召喚士「すみません…」

大軍師「いえ、お気にせず。お二人こそお時間は大丈夫ですか?」

召喚士「そうですね。正直言うと…あまり長い事、費やしたくはないところです」

盗賊「……」

大軍師「仕方ありません。此度はひとまず……」

召喚士「いえっ、もう一日だけやらせて下さい」

大軍師「此方は構いませんが……」

召喚士「それに、やっぱり中途半端には終わりたくありませんから」

大軍師「……」

盗賊「…頼む」

大軍師「……分かりました。それでは、お願い致します」

召喚士「ありがとうございます」

盗賊「…明日こそ、必ず」


368 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/12/30(木) 23:25:27.62 ID:QUNhdoAo


召喚士「天才さんも結局、もう帰ってしまったみたいですね」

盗賊「…うん」

一つの小部屋に男女一組。しかし離れて就寝する二人は言葉のみをかわす。

召喚士「何か…方法があればいいんですけどね」

盗賊「…奴らも熟練者だ」

召喚士「ええ」

盗賊「…それに稼業が稼業。そう簡単には捕まえられないさ」

召喚士「…ですよね」

盗賊「…根気よく待つしかあるまい」

召喚士「それが唯一の方法ですね」

盗賊「…今のところはな」

召喚士「…それでは、寝ましょうか」

盗賊「…ああ、おやすみ」

召喚士「おやすみなさい、盗賊さん」



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