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侍「言葉が通じなくとも」
- 800 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]
投稿日:2012/01/10(火) 01:41:55.91 ID:MjvKEwMAO
商人頭「…………」
―ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ―
商人頭「!? なんだこの音は!?」
駱駝「グェー!! ングェー!!」ドタドタ
頑健な商人「静まれって!! クソ! なんなんだこの喧しい……」
バサ……ッ バサァッ
頑健な商人「音……」
奪冠鷲「ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!」バサァッ
夜の帳と共に、腐臭を漂わせながら、黒い翼が砂漠の空に現れた
小柄な商人「あ、あれが『夜の住人』……」ガタガタ
侍「怖ろしいか?」
商人頭「あ、あんなおぞましいの……初めてだ」
商人頭の額に汗が滲む
他の者達も、手綱を一際強く握り、気を保つので精一杯のように見えた
侍「では、逃げるか?」
商人頭「…………」
商人頭「……いや、進む。兄ちゃん、力を貸してくれ」
侍「御意」チャキッ
商人頭「やるぞみんな! 銃を構えろ! 奴らに鉛玉ぶち込んでやれッ!」チャキッ
- 804 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/01/22(日) 04:43:07.10 ID:e/0m3oqAO
ダーンッ ダーンッ ダーンッ
奪冠鷲「ガチャガチャガチャガチャ!」ビズッビズッ
色黒商人「き、効いてねえ!」
商人頭「効くまで撃ち込むんだよ! いいから弾詰めろ!」カチャッ
金属のぶつかり合うような、脳の芯に響く声を上げ、奪冠鷲が接近してくる
その身に弾丸を受け、身体が崩れ落ちようと、鷲が怯む事はない
若い商人「既に身体が死んでいるから、頭が吹き飛んでも死なないのか……?」
頑健な商人「知らねえよ! ただ、痛くも痒くもねぇって事は確かだぜッ」ダーンッ
- 805 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/01/22(日) 05:28:01.79 ID:e/0m3oqAO
ビュォウ……ビュォウ……
甲高い音に混じって、なんとも不気味な音が聞こえる
肉が脱落し、風を切れなくなった奪冠鷲の翼が奏でる、歪な羽音
その羽音は、けたたましい奪冠鷲の鳴き声にかき消される事無く、商人隊一行の耳に響く
ビュォウ……ビュォォウ……ッ
虚しくも物悲しい、嘆きの声に似た羽音
……ザッ
侍「未練、か」
商人隊の前方遠く、奪冠鷲の群の前に侍はいた
上空を取り巻く禍々しい鳥の群をして、侍はやはり眉一つ動かさない
侍「お前達は、未練を乗せて飛んでいるのか」
奪冠鷲「ガチャ……」
―ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャッッ―
- 807 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/01/24(火) 01:51:35.80 ID:ZrCI5H6AO
侍の言葉を受けてか……奪冠鷲が激しく鳴き立てる
侍「最早、己が何者なのか……何故現世を彷徨うているのかも判るまい」
―ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャッッ―
砂漠中が目を覚ますのではないかと思う程騒ぎ立てる
――スラッ
侍「来い。その救われぬ生涯に幕を下ろして進ぜよう」チャキッ
侍が刀を抜く
すると、それが合図だったかのように、奪冠鷲の群が侍に殺到した
- 808 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/01/24(火) 03:16:23.55 ID:ZrCI5H6AO
奪冠鷲「ギャギャギャーッッ!!」ギュオッ
奪冠鷲「ガチャガチャ!!ガチャガチャガチャガチャッッ!!」ビュオッ
ズバッ
宵闇をより深い黒に染める黒い翼
砂漠の骸鳥、後に「奪冠鷲」の名で記される怪物が、次々に侍を襲う
キィンッ
50、60……或いは100を超えていたかも知れない
最早、黒い竜巻にしか見えぬその猛攻を凌ぎ、
ザンッ
太刀を浴びせる
奪冠鷲「ギャッ!ギャッ!ギャーッ!!」ビュオッ
ギンッ
バシュッ
ズバッ
チャキン――ッ
- 809 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/01/24(火) 03:25:47.92 ID:ZrCI5H6AO
頑健な商人「お、お頭……!」
商人頭「信じろ。あの砂蚯蚓を倒した人間だ。鳥の化け物ぐれぇ、何てことねぇさ」
頑健な商人「でも、奴ら不死身なんですぜ? 剣で斬っても……」
奪冠鷲「ガチャガチャガチャガチャア!!!!」ギュオッ
頑健な商人「!?」
商人頭「ッてぇ!!」
ガウンッガウンッガウンッガウンッガウンッッ
奪冠鷲「ギェギャギャ!!」ビズッビズッ
ドシャァッ
- 810 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/01/24(火) 03:40:22.97 ID:ZrCI5H6AO
小柄な商人「やった! 墜ちたぞ!」
商人頭「こいつで終いだッ」ブンッ
奪冠鷲「ギャギャギャ―」
パリンッ
ボワァッッ
――メラメラメラメラメラメラ……
「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!」
火炎瓶を受けて、奪冠鷲の死肉が激しく燃え上がる
若い商人「これで死んでくれ……」
商人頭「銃を構えとけ。何があるかわからん」
「ギ……ギィ…………ィ」
炎に包まれ、黒い煙を上げながらも、奪冠鷲は商人隊へと向かってきた
が、途中で身体が焼け落ちると、とうとう動かなくなった……
色黒商人「倒したの……か」
年配の商人「こいつらを倒したのはわしらが最初だろうな」
商人頭「油断するなよ。次も同じようにいくとは限らん」
- 813 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/01/25(水) 20:57:11.51 ID:vGR7xgpAO
……
奪冠鷲の襲来から四半刻
ボウ――ッ
商人頭「! な、なんだ!?」
ボウッ
ボウボウッ
それは突然始まった
いや、来るべき時が、ようやく訪れたと言うべきか
ボウッ ボウッ
年配の商人「鳥共が……」
薄紫の光が、闇に咲く
燃え上がるように激しく
美しい過ぎる程、儚く、煌びやかに
ボッ ボウッボウッ
ボウボウッ ボッボッッ
――ボウッボウボウボウッボウッッ――
若い商人「弾けていく……! 魂が、命が散っているんだ!」
- 814 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/01/25(水) 21:08:05.67 ID:vGR7xgpAO
――――ビッ
「――――ギャ」
絶え際の、
ブシャッ――――――ボウッ
チャキ――ッ
「ギェーッ!!」 ――――ズバァッ
ボウッ――――
微かに薫る、故郷よ
ザッ――――バシュッ
奪冠鷲「ァ――――」ブシッ
侍「瞼閉づるば、泉津平阪」チャキンッ
――――ボウンッ――――
- 815 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/01/25(水) 21:22:01.22 ID:vGR7xgpAO
闇に咲いた薄紫の光は
風に散る夜桜の如く、また、闇に消えていった……
侍「南無……」
商人頭「兄ちゃん!」ドタドタ
頑健な商人「よく無事だったな!」ドタドタ
若い商人「……それは?」
膝をつき、両手を合わせる侍
その足元には、小さな花が一輪咲いていた
- 825 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/02/06(月) 23:03:49.42 ID:vV1CxalAO
…………
少女『ちょっとはマシになったかな』ペタ
少女の行く手を、横顔を、足元を、淡い光が照らす
地底湖がある地層には、熱に呼応して光を放つ鉱石が混じっているらしい
少女が壁面に触れれば、そこから微かな光が広がり、素足で歩けば光る足跡が残る
つるはしで掘り出した欠片をかざしながら、少女は壁面沿いを右回りに進む
少女『これだけ水があるのに、骸骨さん達はなんでつるはしを持って……』
- 826 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/02/06(月) 23:13:34.30 ID:vV1CxalAO
手で掬えずとも、ちゃんとした器なら或いは
そう思い、少女は空になった水筒で給水を試みた
が、やはり水は汲めなかった
水中で封をしても、栓を開けると中身が空になっている
汲めない水……
骸骨達も、地底湖の水が「汲み上げる事が出来ない」と知って、別な水源を探しているのか……
…カツーン
少女『……ん?』
カツーン カツーン
少女『つるはしの音? 骸骨さん達かな』
- 827 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/02/06(月) 23:32:30.42 ID:vV1CxalAO
カツーン
カツーン カツーンッ
大きくなる金属音が、対象への接近を知らせる
少女は、曲がり角の手前で一旦歩みを止めた
少女(もし、もしも骸骨さん達じゃなく……悪者だったら……)
何者かが、死者を操って労働力にしている、という可能性がない訳ではない
それに、骸骨達が襲って来ない保証もない
汲めない水が在るぐらいだ。何があってもおかしくない
少女は靴を履き直し、鉱石の欠片を鞄に仕舞うと、闇の中へと足を踏み出した
- 831 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/02/07(火) 23:38:15.28 ID:kYNi9G+AO
カツーン
カツーン
遙か彼方から音が湧いている
カツーン
カツーン
いや、音は目と鼻の先で生まれている
カツーン
反響
カツーン
反響
カツーン
反響
あれ、私はどこにいるんだろう?
- 832 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/02/08(水) 00:26:02.47 ID:gNVjCyZAO
少女(……ッ、駄目! しっかりするのよ、私!)バッ
耳を塞ぎしゃがみこんだ
木霊に聴覚をやられないよう、本能的に身体が取った行動だった
少女(自分の事は、自分で守るのよ。誰でもない、私が守るの)
強く自分自身に言い聞かせる
少女(私は強くなる。胸を張って、お兄さんの隣に居る為に)
――もっと、もっと強くなる!――
耳を塞いでいた手を離すと、少女は再び立ち上がり、歩き出した
もう、木霊は聞こえない
熱い鼓動が、雑音を全部かき消してくれるから
- 833 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage] 投稿日:2012/02/08(水) 00:30:39.02 ID:gNVjCyZAO
2レス書くのに2時間かかる超遅筆ですが、どうか多目に見てやって下さい
ラストは出来上がってるので、そこまで行けばスラスラ進む……筈です
では、おやすみなさい
>>830
ありがとうございます///
- 836 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/02/15(水) 21:29:30.17 ID:lQQn8wwAO
カツーン
左足を差し出す
カツーン
右足と身体を送る
カツーン
また、左足を差し出す
少女(……)
闇に自身を見失わなぬよう
音の中に迷わぬよう
鼓動を頼りに、進んでいく
少女(……)
こめかみが甘く疼く
少女(……何か、忘れているような…………)
- 837 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/02/15(水) 21:34:38.43 ID:lQQn8wwAO
左足を出したところで、暗闇しか映らない目を瞑った
少女(何だろう……何か…………)
何か、忘れているような感覚
記憶が、既視感が疼く感覚
何だろう……
何か、大切な何かが芽生えそうな感覚
- 838 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/02/15(水) 22:12:35.47 ID:lQQn8wwAO
―森羅万象
汝、全知を望むのならば
耳、余りに不確
目、うつるは全て朧なり
耳ではなく肌
鼻ではなく舌
舌を肌とせよ
耳を目とせよ
己を空に、空は己に
汝はこの世と共に在り
この世は汝の目に映るがままに―
- 839 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/02/15(水) 22:28:04.47 ID:lQQn8wwAO
少女の中に、いつかの記憶が蘇る
それは、ある太陽が失われた日の記憶
世界は闇に包まれ、天も地も見失い、音すらも失われた日
人々は自身をも見失い、縋るように大地に這いつくばった
少女(私は知っている。真の闇とは何なのかを)
闇の輪郭に目を見開き、自身を見失わず駆け抜けた
そう、私は知っている
「人が道を見失う時は、心を閉ざした時である」
- 840 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/02/15(水) 22:56:30.70 ID:lQQn8wwAO
少女『……』
静かに瞼を開くと、暗闇に地底湖の景色が浮かんだ
少女(わぁ……!)
岩肌が、地面が、路傍の石ひとつひとつが、その存在を主張しているように見える
少女(すごいすごい! 私、夜目が利くように)
『嬢ちゃん、手伝ってくれるのかい』
少女『!?』ビクッ
背後からかけられたら声に振り返り、
提灯を持つ骸骨『やあ』
少女『――――っ!?』ビクーンッ
また、視界が真っ暗になった
- 843 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/02/16(木) 00:31:55.50 ID:bi0WjrrAO
…………
駱駝「ングー!」ドタタッ
侍「……」グィ
ドタドタドタドタッ
商人頭「へぇ……へぇ……と、飛ばしすぎだぜ兄ちゃん!」
駱駝を止めた侍の横に、商人頭の駱駝が駆け寄る
二人の遥か後方では、荷を積んだ駱駝を引き連れた商人隊が後を追っていた
侍「……すまぬ。気が急っていた」
商人頭「……まぁ、わからないでもねぇけどよ。走りっぱなしじゃあウマが潰れちまう。今日はもうここいらで休むぞ」
昨夜から昼夜を問わぬ進行に、駱駝の動きは鈍り、手綱を握る商人達の顔にも、疲労が色濃く浮かんでいた
- 844 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/02/16(木) 00:51:28.96 ID:bi0WjrrAO
西の空が赤く染まり始めた頃、大分遅れて後続が追いついた
小柄な商人「へ……へぇぇ……」ドタドタ
年配の商人「……年寄りに無茶させよって」ドタドタ
商人頭「みんな、よっく頑張った。今日はここで夜営だ」
小柄な商人「や、やったぁ…………ッぶ!」ドサッ
頑健な商人「お頭、駱駝の消耗がひでぇ。多めに水をやっとかねぇと、明日まともに走れっか……」
商人頭「ぬう……」
若い商人「……あれ?」
夜営の準備がちらほら始まる頃になっても、侍は駱駝の上から遠見していた
若い商人「剣士さーん! 火ぃ起こすの手伝って下さいよ!」
侍「……」
若い商人「剣士さんってば!」
侍「……! 見えた!」バッ
若い商人「っい!?」
侍「集落だ! この先に集落があるぞ!」
- 845 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga] 投稿日:2012/02/16(木) 01:11:59.34 ID:bi0WjrrAO
…
地平線に太陽が沈む頃、一行はある集落に到着した
色黒商人「集落……というか」
小柄な商人「廃村…………」
風化の進んだ瓦礫が点在するだけの、滅びた集落
夜が訪れようと、その集落に灯りが点る事はない
若い商人「……!」
商人頭「ッ! あ、あれは!」
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」テク…テク…
商人頭「化け物か!?」
年配の商人「待つんだ……!」バッ
商人頭「……じいさん?」
- 846 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage] 投稿日:2012/02/16(木) 01:18:51.12 ID:bi0WjrrAO
……と、ここまでで今日は終わります
あと二回の投下、今週中にはこの話終わりたいと思ってます
前回、ラスト考えてるって言いましたが、それはこの話のラストで、全シナリオのラストの話ではありません
まだまだ書きたい話があるので、チマチマ続きます
余談ですが、余裕ができれば仕官時代の侍の話をどこかで書きたいと思っています
書きためてバッと投下する感じで
ご愛読ありがとうございました
おやすみなさい
- 847 名前:NIPPERがお送りします [sagesaga] 投稿日:2012/02/16(木) 01:35:15.83 ID:0hOzNy0So
おつおつ
そーいや最初島流しにされてたんだったな既に一年半以上前とは
- 848 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/02/16(木) 07:05:37.15 ID:J+qsKsdIO
書きたいうちはマイペースでいいからどんどん続けてたぼれ
>>1のものならなんでも読みたいからのう
士官時代も非常に期待でござる
- 851 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/02/18(土) 22:59:57.39 ID:KKTUWZaAO
頭蓋骨の欠けた骸骨「……」テク…テク…
年配の商人「もし! そこの御仁!」
商人頭「お、おい!」
年配の商人が道行く骸骨に語りかける
年配の商人「この紋章に見覚えはないか? 儂の父の故郷の物なんだが」
頭蓋骨の欠けた骸骨「……」テク…テク…
年配の商人「……ならばこれはどうだ? 駱駝小屋の利用手形は砂漠の村では共通の……」
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」テク…テク…
年配の商人が、次々に鞄から古ぼけた品々を取り出して、骸骨に差し出す
が、骸骨は見向きどころか立ち止まりすらしない
―見る目がない、聞く耳持たない
年配の商人「わ、忘れてしまったのか……? 我ら砂漠の民の約束を……」
年配の商人「待っていてくれたのでは、ないのか…………」ヘタ…
- 852 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/02/18(土) 23:12:09.75 ID:KKTUWZaAO
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」
絶え際の
頭蓋骨の欠けた骸骨「……!」
微かに薫る故郷よ
若い商人「あ、あの! これ……じいちゃんが届けろって」
骸骨の「節穴」が若い商人の手の中を覗く
そこには、溢れんばかりの花の種があった
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」
脳が忘れても
五感を失っても
記憶が磨耗しても
この、存在のどこかに残っている
懐かしい……あの、匂い。故郷の匂い
見る目はない。聞く耳持たない。
されど鼻は利くようだ―
- 853 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/02/18(土) 23:19:54.18 ID:KKTUWZaAO
ちょっと予定が狂ってしまったので、もしかしたら終わりは月曜あたりになりそうです
感想、応援レスありがとうございます
明日の活力になります。本当にありがとうございます
寝落ちしなければ休憩挟んで続き投下します
- 859 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/02/21(火) 20:32:26.72 ID:G78nXzDAO
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」ヨタ…
よろよろと、骸骨が若い商人に歩み寄る
さっきまでの疲れきった足取りではない
一歩一歩、力強く
されど、どこかたどたどしくもあり
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」ヨタ…
まるで、歩みを始めた赤子のように
- 860 名前:NIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage] 投稿日:2012/02/21(火) 20:56:08.05 ID:G78nXzDAO
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」ヨタ…
若い商人「……」
骸骨が若い商人の眼前で佇む
視線は若い商人の手中、溢れんばかりの種に落とされていた
若い商人「ど、どうぞ」
頭蓋骨の欠けた骸骨「……………………」
思案顔
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」スッ
骸骨が種を一粒摘み上げ、顔の高さへ持っていく
頭蓋骨の欠けた骸骨「……」アングリ
若い商人「喜んでる……の……かな?」
年配の商人「勿論。あんなに喜んでいるのがお前にはわからんのか?」
若い商人「…………そっか」
頭蓋骨の欠けた骸骨「……」アングリ
下顎を開いて御満悦
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