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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その36
332 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:49:36.76 ID:yh/mrhzIo
〜南東砦〜

南東砦兵「こ、これはご苦労様です!」

青年兵「今日は軍務ではありませんので、お気にせず」

南東砦兵「ははっ! 何かございましたらお声がけ下さいませ!」

青年兵「アンラ・マンユ討伐後はどうですか?」

南東砦兵「はっ。あれからは魔王軍も一切現れず、万事、問題ありません!」

青年兵「それは何より。間もなく北にて大きな戦いが始まります」

南東砦兵「伺っております。我らも無論、馳せ参じるつもりであります!」

青年兵「嬉しい限りですが、大丈夫なのですか?」

南東砦兵「ここに魔王軍はもう居ません。ですが、我らの任務は人々の命を守る事です」

青年兵「……」

南東砦兵「それは南東砦長の教えであり、意志ですから」

青年兵「そう……ですか……」

南東砦兵「南東砦長はもう居ませんが、その意志はまだ……死んではおりません!」

青年兵「……ええ。そう強く感じました」


333 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:50:06.06 ID:yh/mrhzIo


南東砦兵「こちらです」

青年兵「ありがとうございます」

南東砦兵「墓と言っても、我ら有志で勝手に作らせて頂いたものですが……」

青年兵「亡骸は本国のご家族に引き渡しましたし、本物の墓はあちらにありますからね」

南東砦兵「はい。しかし魂はまだここに眠っていると思っております」

青年兵「……」ザッ

 パサッ

青年兵「……南東砦長殿もきっと、大いに喜んでおられますよ」

南東砦兵「……?」

青年兵「あなた達のような、南東砦長を慕い、意志を継ぐ者がこれだけいるのですから」

南東砦兵「青年兵様……っ」

青年兵「ありがとうございました。近日中に号令がかかると思います」

南東砦兵「はっ! いつでも馳せ参じる準備は出来ておりまする!」

青年兵「ありがとうございました。それでは」


334 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:50:38.65 ID:yh/mrhzIo
〜森〜

天才「さーて、いよいよ行くぞ」

召喚士「そういえばずっと気になっていたんですけど……」

天才「あん?」

召喚士「ここに、大きな結界石がありますよね? あれって……」

天才「ああ。ありゃ俺様も知らん」

召喚士「……はっ?」

天才「かなり古くからある。だが、いつからあるのかは分からん」

魔道士「それってどういう事ですか……?」

天才「文献によってもマチマチでな。明確な時代や誰が設置したのか分からん」

戦士「どういう事なんだ?」

天才「簡単にいや手柄さ。結界石を建てたっつー手柄をな」

召喚士「確かにこれだけの大きな結界石を設置したわけですからね」

天才「誰が建てたものか、どうやって建てたものかも分からんから自分の手柄にしてんのさ」

盗賊「なるほどな」


335 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:51:10.67 ID:yh/mrhzIo
天才「文献の年代も様々でな。新しいものじゃ闘王時代の書物にも記載がある」

魔道士「闘王……って、250年くらい前ですよね?」

天才「それだけ曖昧なんだよ。この結果石はな」

戦士「まぁ確かにこれだけのモンを建てたってのは功績になるもんなぁ」

天才「俺様はもっと古い……そうだな、何千年も前からじゃねぇかと思ってるけどな」

召喚士「確かに近くで見た時、凄く古い印象をもちましたね」

盗賊「だが、自然のものではなかったな」

天才「まぁお陰でサタンは地上に出る事は出来ないってわけだ」

戦士「サタンは地上に出られないってのか?」

天才「そういう事だ。つまりこの森は一切の魔物がいない。言ってみりゃ天国だわな」

召喚士「天国……」

天才「そして……さぁ着いたぜ。地獄への入り口だ」

魔道士「!?」

盗賊「ここは……あの時の……」

召喚士「見た目は…・・・ただの教会にしか見えないんですけどね」


336 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:51:51.89 ID:yh/mrhzIo
〜教会内〜

 ガチャッ キイイイィィィィィ

魔道士「……っ」キュッ

召喚士「大丈夫。魔物はいませんから」

魔道士「ええ。でも何だろ……不気味な気配のようなものを感じます」

天才「感受性が強いと感じるかもな」

盗賊「……?」

天才「この奥だ」カツカツカツ

魔道士「礼拝堂ですか?」

盗賊「以前来た時は、何もなかったが……」

天才「……」

 カツカツカツ……コツ

天才「なんつーか、大昔からの決まり事ってのかねぇ」

 ゴトッ……ガゴンッ

天才「民家は暖炉の中。教会は祭壇の下ってのが定番でな。ハーッハッハッハ」


337 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:52:24.75 ID:yh/mrhzIo
戦士「こ、こんな所に……隠し階段が!!」

天才「こっからは先は地獄への階段だ。覚悟はいいな?」

召喚士「……もちろんです!」

天才「お前らにゃもう1回来て貰うからな。よーく覚えておけよ?」

魔道士「……はいっ」

戦士「でもよ、地獄ってのは地下にあるもんなのか?」

盗賊「どれほど長い階段なのか……」

天才「ああ、階段は途中までだ。あとは途中から深ーい闇に包まれる」

召喚士「闇……!?」

天才「んで気が付けば地獄。考えりゃ怖い話だよなぁ。ハーッハッハッハ!」

戦士「はーっはっはっはっておい!」

天才「さぁお祈りは済んだか? こっからは先は、祈りなんぞ通じねぇぜ?」

召喚士「祈りなんて要りません。やるべき事をやるだけですから」

魔道士「はいっ! それに天才さんを……信じていますから」

天才「ハーッハッハッハ! そいつは感心だな! んじゃ……行くぞ」


338 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:52:57.88 ID:yh/mrhzIo
〜最南端、ラーヴァナの城跡〜

青年兵「……」

 ヒュオオオオォォォォ

ワイバーン「南の地と言えど、風は冷たいな」

青年兵「かぜだけのせいじゃないかもしれないけどね」

ワイバーン「……?」

青年兵「いや、なんでもな――」

 ババッ!!

青年兵「……魔物の気配と思って、驚きましたよハヌマーンさん」

ハヌマーン「青年兵か。お主がこのような地に来るとは珍しいな」

青年兵「間もなく北で戦いが始まります。その前に暇を頂いたもので」

ハヌマーン「そうであったか。しかし暇に此処へ来るのも奇特だがな」

青年兵「ははっ。そうかもしれませんね」

ハヌマーン「……何か、悩みでもあるのではないか?」

青年兵「悩みなんて年中ですよ。でも、もう悩んでいる暇もありません」


339 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:53:39.18 ID:yh/mrhzIo
ハヌマーン「強い男だな、お主は」

青年兵「弱いですよ。弱いから、受け入れるしかないんです」

ハヌマーン「それも1つの強さの内よ」

青年兵「ありがとうございます。ところでハヌマーンさんは一体どうしたんです?」

ハヌマーン「我らもじきに、北方へと向かうのでな。最後の確認だ

青年兵「なるほど、それは助かります」

ハヌマーン「我等の中には魔王城を知る者も居る。多少の役には立てるはずだ」

青年兵「頼もしい限りです。お待ちしております」

ハヌマーン「ああ。それではまた……北でな」

青年兵「はい、それではまた」

 シュバッ!! ヒュウウゥゥゥゥ

青年兵「……」

ワイバーン「あの者も仲間を失い、悩んでおるのだろうな」

青年兵「人間だって魔物だって、同じだよ。さ、供養をして次の所へ行こう」

ワイバーン「そうだな」


340 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:54:07.18 ID:yh/mrhzIo
〜教会、地下階段〜

 カツカツカツカツ……

盗賊「……」

魔道士「……っ」

天才「辛気臭せぇなぁ。誰か盛り上げろよ」

戦士はぁ!?」

天才「なんかねーのか? そうだな……コイバナとか」

戦士「お前が話せ!」

召喚士「じ、じゃあ天才さん」

天才「おっ、朱雀先生の知られざる恋愛経験――」

召喚士「違いますっ! せっかくなんで聞きたい事が……」

天才「んだよー。まぁいいや、いいぜ……聞くがいい。プライベート以外でな」

戦士「自分の時だけふざけやがって……」

召喚士「ま、まぁまぁ……」

天才「んで、何だよ」


341 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:54:37.38 ID:yh/mrhzIo
召喚士「えっと、さっき言ってた闘王というのは、陛下の祖先にあたるんですよね?」

天才「ああ。今の種無し王から7代前だったっけかなぁ」

魔道士「確か、そのくらいだったと思います」

天才「闘王は何と言っても異色の王だったからな。今なお人気も高い」

盗賊「そうなのか」

天才「齢16で初陣を飾ってからというものの55年間で88回の戦闘をこなした」

戦士「すげえな……っ」

天才「しかも88回の闘いにおいても無敗。常に戦場で過ごしたらしい」

召喚士「!?」

天才「噂じゃ玉座にも座った事がねぇって話だ。ハーッハッハッハ」

戦士「訂正。バケモンだな」

天才「聖王をえらく崇拝してたらしくてな。ま、仕方ないっちゃ仕方ない」

魔道士「聖王も戦場では不敗を誇ってたんですよね?」

天才「そうそう。しかも種無し。そっちの方がバケモンだよ」

召喚士「……えっ? 聖王も魔法を使えなかったんですか?」


342 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 02:55:15.18 ID:yh/mrhzIo
天才「らしいな。あくまで文献での話だが」

盗賊「陛下と……一緒だな」

天才「先代や前右大臣は聖王の再来みてーなカンジで験を担いでやがってけどな」

戦士「へぇ」

天才「本人は比較されるのが嫌だったみてーで、今はタブーみてぇになってっけど」

召喚士「……知らなかった」

天才「ご本人様は覇王を崇拝してるみてーで、小覇王とか気取ってっけどな。ハーッハッハ」

盗賊「……覇王?」

天才「本国の始祖だよ。中央から魔物を追い払い、本国を建国した最初の王だ」

召喚士「おぉ!!」

天才「まーあまりに古すぎて文献も皆無。嘘かホントかも分からんリアルおとぎ話だけどな」

魔道士「でも、魔道学園なんかでもそう習いましたよ〜?」

天才「今の王家があるのはそこからだからな。どんな内容であれ神格化してーんだろうよ」

魔道士「ちょっと、言い方酷くないですかぁ?」

天才「おっと、王女様がいたんだっけか。ハーッハッハ……てかこんな話面白いか?」


343 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 03:04:31.52 ID:yh/mrhzIo
〜オマケ〜

召喚士「ど、どうなんでしょう?」

天才「需要がなかったらさっさと飛ばすってか別にストーリーと関係ねーし」

戦士「おい」
盗賊「おい」

天才「つーかそもそも話すのメンドクセーんだよな」

魔道士ちょっと!」
召喚士「ちょっと!」

天才「なんかこうさ、テロップみてーのでパパっ終わりでいいんじゃねーの?」

召喚士「!?」

天才「つーわけではい、ドン!」

聖王:魔力の一切を持ち合わせていなかったが、武力と知力、そして統率力と人望で、
魔王軍を多いに退かせ、ベルゼブブをも慄かせた。
豪胆な性格ではあるが戦においては非常に冷静であり、その生涯を戦場に捧げ、
不敗とも言える記録を残している。晩年、年齢には勝てず、床上にて病死。

天才「ほら簡単。んじゃ次は息子の武王――」

召喚士「だああぁぁ! ちゃんとやりましょうよちゃんと!」

天才「はい、ド――
召喚士「だああぁぁぁぁ!!」


352 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 23:57:07.11 ID:yh/mrhzIo
召喚士「面白いというより興味ありますよ」

天才「そうか?」

召喚士「今この世界があるのは、そういった方々のお陰なわけですから」

戦士「確かに、知っておくのも大事な事なのかもな」

召喚士「うん。むしろ知っておかなくちゃいけない事なんだと思う」

魔道士「それが、先人達への感謝にもなりますよねっ」

盗賊「彼らが居たからこそ今、私達がこうして居る」

天才「最初から後世の為に何かをやってるなんて奴はいねぇ」

召喚士「……」

天才「自分達が生きる為、誰かを守るために必死にもがいて、
    それが結果として後世の為になってるだけだ」

戦士「そうかもな」

天才「お前らのそういう思い、きっと喜んでるぜ」

魔道士「だと、嬉しいですねっ」

天才「……っと。お喋りはどうやらここまでみてーだ。いよいよだぞ」


353 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 23:57:51.01 ID:yh/mrhzIo
 コオオオオォォォォ

盗賊「……冷たいな」

魔道士「真っ暗で……何も見えないですね……っ」

戦士「このまとわりつくような嫌なカンジ……」

召喚士「ここから先が……地獄」

天才「景色はおろか道も分からん。だがそのまま進め」

魔道士「えっ!?」

天才「闇の中は勝手に繋がってる。気にせずそのまま進めばいい」

盗賊「……分かった」

 凍りつくような冷たい風が吹き付ける闇。何もない、本当の闇。

 前後左右から聞こえる仲間の足音と静かな息遣い。それだけが頼りである。

魔道士「……っ」

 押し潰されそうになる恐怖と不安。魔道士は思わず横の手を握る。

召喚士「!?」ギュッ

 何分か何時間か、時間も分からぬまま、一同は別世界へと旅立った。


354 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 23:58:30.93 ID:yh/mrhzIo
〜南東国、東の城〜

白馬騎士「わざわざお越し頂くとは、お忙しい中、申し訳ありません」

青年兵「いえいえ。こちらこそ勝手にすみません」

白馬騎士「南方司令部からの伝令で伺いましたよ」

青年兵「……?」

白馬騎士「大元帥となられたそうで。おめでとうございます」

青年兵「ありがとうございます。めでたいかどうかは……分かりませんが」

白馬騎士「いよいよ……ですね」

青年兵「ええ。いよいよです」

白馬騎士「微力ながら、華国も既に準備は出来ております」

青年兵「お気持ちだけでもありがたい事です」

白馬騎士「あれから我らも、ハヌマーン殿らと練兵を繰り返して参りました」

青年兵「おぉ」

白馬騎士「寡兵ながら、多少はお役に立てると自負しております」

青年兵「分かりました。そのお言葉に甘えたいと思います」


355 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/29(日) 23:59:28.57 ID:yh/mrhzIo


 ザッザッザッ

白馬騎士「……さぁ、こちらです」

青年兵「ここは……っ」

白馬騎士「やはり、騎都尉と一緒に居る方が、皆も良いかと思いましてね」

青年兵「……そうですね、しかし、凄い花の数ですね」

白馬騎士「ええ。今でも民の献花や墓参りは止みませぬ」

青年兵「それほど、彼らは慕われていたのでしょうね」

白馬騎士「一時は彼らも、華国を捨てた事を悔やんでおりました」

青年兵「……」

白馬騎士「しかし今ではこのような扱いを受け、安堵しておる事でしょう」

青年兵「ええ……」

 パサッ

白馬騎士「いつでもお声がけ下さいませ。弓将軍殿と共に、直にでも馳せ参じまする」

青年兵「ありがとうございます。近日中にご連絡致します」


356 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/30(月) 00:00:40.70 ID:XSVJbO5Mo
〜地獄〜

戦士「ここだ……っ。この、殺風景で冷たい空気……」

魔道士「……あっ、手……ごめんなさいっ」

盗賊「いや、いいよ」

魔道士「……っていうか、召喚士さん……?」

召喚士「え……っ? あ、あれ!?」

天才「……いつまで俺様の手ぇ握ってるつもりだコラ」

召喚士「!?」

魔道士「……っ」ドキドキ

召喚士「す、すみませんっ!!」

戦士「ここ、前来た場所とはちょっと違うよな……?」

魔道士「あの大きな丘は……何ですか?」

天才「黄泉比良坂。あの坂の向こうにある底へ落ちれば、そこは死の世界だ」

盗賊「何っ!?」

天才「さぁ行くぜ。サタンはその穴の下に眠ってる」


357 名前:NIPPERがお送りします(東京都) [sage] 投稿日:2012/01/30(月) 00:56:57.33 ID:+P6UtkDSo
これ以上腐らせないで!!


364 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/01/30(月) 12:31:29.92 ID:dyNXmyXoo
コレは男性版謎のランキング表がくるな・・・胸熱・・・


367 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/30(月) 17:53:04.27 ID:UOW7Y4xQo


魔道士「ここを……飛び降りるんですか……?」

天才「死にゃしねぇ。いや、死ぬのか? ハーッハッハ! ま、とにかく痛みなんかは一切ない」

戦士「2回目とはいえ、流石にすんなりとは飛び降りられねぇよなぁ」

盗賊「前回も行ったのか?」

戦士「ああ。吐き気がする程の威圧に押し潰されそうだったけどな」

天才「2回目ともなれば余裕か?」

戦士「余裕はねーけど、たぶん……こいつらと一緒だからな」

盗賊「……」

天才「ハーッハッハ。前回は青年兵だったもんなぁ。そりゃ頼りねーか」

戦士「そういう事じゃねぇっつーの!」

天才「ハーッハッハ……さて、冗談はこれくらいにして、そろそろ飛び降りるぞ」

召喚士「……はいっ」

天才「身体の力は抜け。意識を保つ事だけに集中しろよ!」

 戦士にとっては2度目となる天才の言葉。飛び降りる天才に続き、4人は覚悟を決め、続いた。


368 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/30(月) 17:53:51.82 ID:UOW7Y4xQo
〜ターミナル付近、上空〜

 バシュウウゥゥゥゥ

ワイバーン「……大丈夫か?」

青年兵「うん。まだまだいける」

ワイバーン「あまり無理はするなよ? 大戦が控えているのだろう?」

青年兵「どうせ大元帥となった今は、しばらく前線で戦ったり出来ないよ」

ワイバーン「そんなものか」

青年兵「天才さんは何ヶ月も睡眠を取らないで頑張ってたわけだし、負けてられないよ」

ワイバーン「断罪の旅ももう少しか?」

青年兵「このまま東方司令部へ。そしたら本国へ戻って……いよいよさ」

ワイバーン「間もなく夜も明けるな。少しは心も晴れたか?」

青年兵「……晴れるなんて事は生涯ないさ。きっと」

ワイバーン「誰かの為に生きる事は素晴らしいが、己の人生を潰すでないぞ?」

青年兵「分かってるさ。ありがとう……こう見えても人生、結構満喫してるよ」

ワイバーン「ならば良い。人間の一生など、あっと言う間であるからな」


369 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/30(月) 17:54:21.63 ID:UOW7Y4xQo
〜地獄〜

 ピチョン……ピチョン……

召喚士「……ぅ」モゾッ

盗賊「……くっ」

 コォーン コォーン コォーン

天才「起きろー」ペチペチ

魔道士「ん……っ、んぅ……」

天才「さぁ着いたぜ。サタン様の寝床だ。何があるか分からねぇ。不用意に触ったりすんなよ」

戦士「……この奥だったよな?」ザッ

天才「今回はちゃーんと、意識あるじゃねぇか」

戦士「当たり前だ。ここで慣れなきゃ本番まであと1回しかねぇんだろ?」

天才「頼もしい前衛だな。しっかり守ってやれよ。ハーッハッハ!」

戦士「盗賊、立てるか? お前も前衛だ、俺と一緒に行くぞ」

盗賊「……うん。すまない」

戦士「召喚士と魔道士は後ろから付いてきてくれ」


370 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/30(月) 17:54:54.88 ID:UOW7Y4xQo
召喚士「了解っ」

魔道士「はいっ!」

 ザッザッザッザッ

召喚士「まるで……宮殿のような作りですね?」

天才「宮殿なんじゃねーの? サタン様の」

 コォーン コォーン

魔道士「あれ……何ですか?」

天才「よく分からん。浮遊石っつーの? 石が浮いてるんだよ」

魔道士「……どういう原理なんでしょうね……っ」

召喚士「分かりません……っ。地上には存在しない物だという事は分かりますが……」

天才「調査したくても触りたかねーし。もし良かったら調査していいぞ?」

召喚士「嫌ですよ……っ。天才さんですら触らないのに……」

天才「ハーッハッハッハ。ま、そういう事だ。さっきも言ったが下手に触るなよ」

盗賊「……ん?」

 ザッザッザッ ピタッ


371 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/30(月) 17:55:39.97 ID:UOW7Y4xQo
戦士「……あれだ……よな?」

天才「そうだ。あれが魔王サタン……いや、サタンのコアとでも言うべきか」

盗賊「う、うぅ……っ」ズザッ

魔道士「盗賊さん?」

盗賊「……気味が悪いっ。よく分からないけど……不快な気分だ」

天才「お前らはそこで待ってろ。……戦士」

戦士「ん?」

天才「俺が合図したらすぐにブン投げろ」

戦士「了解。上空だよな?」

天才「ああ。前と同じだ。頼むぜ」

召喚士「ぶん投げる……?」

戦士「脱出方法だよ。まぁあとで分かる」

召喚士「……?」

天才「ちょいと退がってろ。何があるか分からんからな」

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴ……


372 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/30(月) 17:56:07.89 ID:UOW7Y4xQo
召喚士「物凄い威圧……っ」

魔道士「威圧だけじゃありませんね……っ。五行も……」

 キイイイイィィィィ

天才「……ふーっ」

戦士「ああでもしねーと守りきれねぇんだろうな」

盗賊「……っ」

天才「……さてサタンちゃん。貸してたモン……全部返して貰うぜ」ザッ

 固唾を飲む4人。その前方で1人、天才は魔剣に手を伸ばす。

 バチイイイイィィィィ!! ジジッ!!

天才「――っ!!」ジュウウゥゥゥッ!!

 引き抜こうとする天才に抗うかの如く、魔剣からは電撃のようなものが発せられ、

 柄を握る両手を介し、必死に抵抗するその力が天才の全身へと浴びせられる。

天才「大人しくしやがれ……っ、こ……の!!」バチバチバチッ

盗賊「だ、大丈夫なのか!?」

召喚士「五行で全身をガードしてますから、直撃はないと思います!」


373 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/30(月) 17:56:36.89 ID:UOW7Y4xQo
 ズグググググッ

天才「こんの……クソヤロオオォォォォ!!」

 ズルゥ……ズッシャアアアアァァァァ!!

天才「戦士!!」

戦士「おうっ!!」チャキッ

天才「いけええぇぇ!!」

戦士「うおおおぉぉりゃああぁぁぁぁ!!」

 ズザッ バッシュウウウウゥゥゥゥ!!

天才「全員、目を瞑って地上を思い浮かべろぉ!!」

魔道士「っ!!」

召喚士「……っ」

天才「はああぁぁぁぁ……」ゴゴゴゴゴゴ

戦士「召喚士、脱出後は上空に出る! 召喚獣の用意を頭に入れといてくれっ!」

召喚士「了解っ!」

天才「いくぜぇ……っ。五行……聖!!」


374 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/30(月) 17:57:02.43 ID:UOW7Y4xQo
 キュイイイイィィィィ ザシャッ

 戦士の放った戟が垂直に空を切り裂くと、そこへ天才のツヴァイハンダーが

 水平にその戟へと交差し、十字架を作り出す。

 そして十字架には天才の五行が放たれ、共鳴音と日光のような輝きを生み出した。

召喚士「――っ!!」

天才「目を開けっ、そして……飛べぇ!!」

魔道士「っ!!」ババッ

 天才の声に従うままに、4人は地面を大きく蹴り、跳躍する。

 広がる光の中を泳ぐように、身体が上空へと誘われてゆくのが分かる。

 声をあげる事はおろか、自分が呼吸をしているのかも分からない。感覚がない。

 聞こえるのは自身の鼓動のみ。まるで母の胎内かのような、そんな不思議な感覚。

 やがて目の前にうっすらと細く現れた金色の糸を、一同は必死で手繰り寄せた。

天才「振り返れば地獄へ引きずり戻されるぞ! ただがむしゃらに進めぇ!」

 天才の声が耳ではなく脳裏に響き渡る。そして4人はただそれに従う。

 やがて光の海は曙の空へと変わり、5人は程なくして地上へと生還した。



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