■戻る■ 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その38
- 684 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2012/04/25(水) 18:13:17.00 ID:S3RqVECHo
弓使い「ど……どうして……っ」
ネクロマンサー「さっきは……よくもやってくれましたね」スッ
剣士「く……っ!」
ネクロマンサー「この礼は倍にして返して差し上げたい」
ヒト「ウウウウゥゥゥゥ」
ネクロマンサー「差し上げたいところなのですが……」
ガシッ!! ジュグジュグジュグ……
人「ウ……ッ、アウウゥゥゥゥ――」
ネクロマンサー「もう駄目ですねぇ。私の余力でこの人数相手に勝つ方法はありません」
北方司令「だったら、さっさと諦める事だな」
ネクロマンサー「おや、本体ですか。自我が戻るとはね」
北方司令「貴様にしては誤算続きだな」
ネクロマンサー「……まぁ仕方ありませんよ。これが私の実力なのでしょうね」
魔道士「……っ」
ネクロマンサー「しかしこのままでは、私に対して申し訳が立ちませんからね」
- 685 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/25(水) 18:20:31.91 ID:S3RqVECHo
盗賊「……!?」タッタッタッ
ネクロマンサー「貴方達に勝つ事は出来ずとも、葬る事は可能です」
剣士「何っ!?」
ネクロマンサー「この体を、姿を、不死を維持する為に、どのくらいの魔力が必要だと思います?」
東方司令「ど、どういう事だ……っ」
ネクロマンサー「それはもう、こんな人形、何体居たって足りないくらいですよ」
北方司令「貴様、何をするつもりだっ!」
ネクロマンサー「つまりそれだけ蓄積された魔力を、維持せず使用したら……?」
魔道士「まさか……っ!!」
ネクロマンサー「そう。貴様等はおろか、こんな場所はあっという間に……塵だッ!!」
剣士「自爆する気かっ!!」
盗賊「そうは……させるかっ!」
ネクロマンサー「させるさせない、そういう問題ではないのだよ」
盗賊「!?」
ネクロマンサー「もう遅い。既に始まっているのです」
- 686 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/25(水) 18:21:12.78 ID:S3RqVECHo
東方司令「何だとぉ!?」
魔道士「あれを見て下さいっ!!」
上空を差す魔道士の指の先に、巨大な球体が浮かんでいる。
弓使い「あ……れは……」
北方司令「魔力の塊か……っ」
ネクロマンサー「ご名答。言ったでしょう? 魔力は人形が作り上げているのです」
ヒト「ウアウウゥゥゥゥ……」ヨロッ
剣士「そうか……っ、最低限の魔力だけ自分へ取り込み、残りは……」
北方司令「爆発へのエネルギーとして、蓄積していいたのか……」
ネクロマンサー「クククッ! もう終わりですよッ、全員まとめて死になさいッ!」
魔道士「くぅ……っ」
東方司令「何かあるはずだ。何か手が……」
ネクロマンサー「諦めなさい。そして光栄に思うのです」
盗賊「何?」
ネクロマンサー「神にも等しいこの私をここまで追い詰め、そして共に死ねるのだからなッ!」
- 687 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/25(水) 18:22:09.81 ID:S3RqVECHo
剣士「ふざけるなっ!」
ネクロマンサー「吠えるがいいッ! その背負われている少女にも、もう五行は使えまい!」
魔道士「えっ!?」
剣士「……幼女の五行で確かに、奴は消滅したはずなんだ……っ」
弓使い「あれが失敗だったって言うの!?」
ネクロマンサー「どうでしょうねぇ。但し、1つだけ言える事は……この音楽」
魔道士「……?」
ネクロマンサー「詩人サンのものでしょうけれど、貴方達への効果だけではありませんからねぇ」
弓使い「この音楽のお蔭で、助かったっていうわけ……?」
ネクロマンサー「まぁ、そんな事はこの際どうでもいいですか」
ヒト「アウウゥゥゥゥ……ウゥ」ブシュッ
ネクロマンサー「さぁ、最後の刻です。楽しく踊りなさいッ!!」
盗賊「くそ……っ!」
魔道士「何かあるはずですっ! あるはずなんですっ!」
ネクロマンサー「これで私は……私に恥をかかす事なく消えるのだ――」
- 688 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/25(水) 18:23:25.98 ID:S3RqVECHo
ガシッ
ネクロマンサー「……?」
北方司令「ならば共に死のうじゃないか」
ネクロマンサー「……ククッ、離しなさい」
北方司令「離す? 何故だ、踊ると言ったのはお前だぞ?」
ネクロマンサー「……男と踊る趣味はありません」
北方司令「貴様は確かに先程、『自爆』と述べた」
ネクロマンサー「……」
北方司令「もしあの球体が爆発するならば、貴様はいち早くここから逃げれば済む事」
ネクロマンサー「……ッ」
北方司令「あの塊を爆発させる起爆剤は……お前自身という事だな」
ネクロマンサー「……離しなさい」
東方司令「兄くん……どういう事だ?」
剣士「そ、そうか。風船と一緒だ」
魔道士「風船?」
- 689 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/25(水) 18:24:25.20 ID:S3RqVECHo
剣士「あの球体が膨らんだ風船だとしたら、言わばネクロマンサーは針の役目」
弓使い「そっか! 要はネクロマンサーをあの球体に近づけさせなければ……」
魔道士「ば、爆発は……しない……っ」
北方司令「間一髪だった。だが、最後の最後で詰めを誤ったな!」
ネクロマンサー「離せと言っている!!」グイッ
北方司令「絶対に離さぬ。この身体、この命に代えてもなっ!」
東方司令「兄くんっ!!」
北方司令「どうかこのまま、ネクロマンサーにトドメを!!」
ネクロマンサー「離せええぇぇ!!」バギャッ!!
北方司令「絶対に……絶対に離さぬ……っ!!」
ネクロマンサー「クソックソックソッ! 何故だッ!」
ドガッ!! ドゴォ!!
北方司令「ぐく……っ」ズザッ
ネクロマンサー「さっさと離せッ!! この人形風情がァ!!」
魔道士「血が……っ、これ以上はもう……」
- 690 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/25(水) 18:27:58.14 ID:S3RqVECHo
スッ
魔道士「!?」
東方司令「兄くんが絶対と言った! だから……」
ネクロマンサー「クソッ、何をしているッ! 早くこれを引き離せッ!」
ヒト「ウアウウゥゥゥゥ」ズリッ
北方司令「ぐ……っく!!」
東方司令「だから、兄くんに任せておけばぁっ、絶対なんだ!」
ネクロマンサー「何が絶対だッ! ふざけるのも大概にしろッ」
北方司令「例えこの身が朽ち果てようともっ、貴様だけは……っ!!」
ネクロマンサーにしがみつく北方司令めがけて、
魔力を作り出していた人のようなものが、周囲を取り囲み暴行を加える。
腹部からは先程からずっと、血が流れ続けていた。
痛みは全くと言って良いほどない。無痛ではないが苦痛を伴うものではない。
それでも流血が続けば肉体の挙動は低下し、北方司令の四肢はやがて、
その意思とは無関係に力を失い始めていた。
- 694 名前:NIPPERがお送りします(長屋) [sage] 投稿日:2012/04/25(水) 19:09:37.33 ID:rmcuA4vjo
>>1乙
踊る踊らないとか奏でるとか言う台詞を根暗から久し振りに聞いた気がする。
- 699 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/26(木) 17:26:19.26 ID:o36iVg51o
北方司令「……ぬ……っぐ」ガクン
ネクロマンサー「しつこいですね」
バシュッ!! ドスドスドスッ!!
北方司令「ぐ……うぅ」
東方司令「兄くん……っ」
魔道士「……やっぱり、見ていられませんっ。私、行きます!」タッ
東方司令「おいっ!」
それ以上、止める事は出来なかった。止められなかった。
魔道士へは強がってあのような発言をした東方司令であったが、
実の兄が血にまみれ、必死で戦っている様を放ってなどおけるはずもなかった。
先程までの偽物とは違う。気配も声も瞳の輝きも、本物の兄そのものである。
駆け出す力もなくなった自分の身体を恨みながら、その思いを魔道士へと託した。
その結果が無理矢理にでも引き止める事が出来なかったのである。
東方司令「……っ」
走り去る魔道士の後ろ姿を見つめ、東方司令は悔しさと懇願の思いから涙した。
- 700 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/26(木) 17:26:57.14 ID:o36iVg51o
タッタッタッ……ズザァ
魔道士「北方司令さんっ!!」
北方司令「く、来るな……っ!」
魔道士「ここままでは……北方司令さんが……っ」
北方司令「私は良いっ! どうせここで役目を終えるつもりなのだからなっ!」
ネクロマンサー「だったら大人しくしていなさいッ! まとめて消してあげると言っているのですッ!」
北方司令「私は良いと言っただろう! だが、他の者は殺させはしないっ!」
ネクロマンサー「ええいッ、離せぇ!」バギャアァ!!
北方司令「ぐ……っぶ!」ビチャッ
魔道士「……っ!」
殴られても蹴られても、触手に貫かれようとも、北方司令はその手を離さない。
立つのもままならない状態であっても、ネクロマンサーの足へとしがみつく。
ネクロマンサー「離れなさいッ、亡者の如くみすぼらしい!」
北方司令「ああそうさ! 貴様が生み出した亡者に過ぎん!」
ネクロマンサー「ク……ッ!」
- 701 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/26(木) 17:27:27.63 ID:o36iVg51o
魔道士「やああぁぁーっ!!」
ドッドオオオオォォォォン!! ゴゴオオオオォォォォ!!
ネクロマンサー「――ッ!!」
魔道士「ここから先へはっ、進ませないっ!!」
ネクロマンサー「生意気な……ッ」
北方司令「か、囲まれるぞ……っ! 早く離れるのだ!」
ヒト「ウアウウウゥゥゥゥ」
魔道士「離れませんっ!!」
ヒト「アウウウウゥゥゥゥ」ズリッ
魔道士「私には兄はいません。でも……目の前で大切な人が血を流して戦っている……」
東方司令「……っ」
魔道士「そんな姿を見てっ、平気なわけ……ないっ!!」
北方司令「……馬鹿者……っ」
魔道士「だからぁっ! 東方司令さんの代わりに戦う!」
ネクロマンサーだったらアアァァ!!」
- 702 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/26(木) 17:30:24.74 ID:o36iVg51o
バキィ!!
ネクロマンサー「この……亡者を……ッ!」
ゴシャッ!!
ネクロマンサー「先に始末してくれるわッ!!」
ドゴォッ!!
北方司令 「ごほ……っ、ぐがああぁぁ!!」
魔道士「やめてぇ!!」
ネクロマンサー「どうだッ、魔法は撃てまいッ! 撃てばこやつも犠牲になるからなァ!」
戦士「人質かよ……っ。この期に及んで下衆なヤローだ……っ」
ネクロマンサー「私が作り出した人形だッ! どうしようと私の勝手!」
盗賊「ふざけるなよ……っ」ググッ
魔道士「……っ」
ネクロマンサー「ククッ、クククッ!! 手も足も出せぬ分際で口だけは達者ですねぇッ!」
北方司令「躊躇する事はないっ! 私ごと撃てぇ!」
ネクロマンサー「何を言うかッ、こやつらに出来るはずもなかろう」
- 704 名前:NIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2012/04/26(木) 18:18:18.44 ID:nqRc4lhAO
>私には兄はいません。
皇太子ェ……
- 707 名前:NIPPERがお送りします(石川県) [sage] 投稿日:2012/04/26(木) 19:27:29.72 ID:rRlrnGfYo
>>1の生活があってこそ楽しく読めるんだ
仕事がんばってねん
- 713 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/27(金) 17:58:24.80 ID:YlpwbFR/o
影忍「いや、出来るさ」
ネクロマンサー「何ィ!?」
影忍「貴様はこやつ等を侮り過ぎている」
ネクロマンサー「信頼だ友情だの仲良しごっこをしている連中に……」
北方司令「……っ」
ネクロマンサー「本気で命のやりとりをするなど、出来るはずもなかろうッ!!」
盗賊「……魔道士はしたんだ」
魔道士「……」
盗賊「私や兄様のように、生まれながらにして命のやり取りを課せらてたわけでもなく……」
影忍「……」
盗賊「心優しい魔道士がっ、どんな思いでしたと思っている!!」
ネクロマンサー「わけの分からぬ事オオォォ!!」
北方司令「は……やくっ、撃てぇ!!」
魔道士「……っ」
ネクロマンサー「ッ!?」
- 714 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/27(金) 17:59:25.19 ID:YlpwbFR/o
魔道士の目は本気であった。ネクロマンサーにとって今まででは決して考えられぬ目。
それはつい先程の出来事である。ネクロマンサーの知らぬつい先程の出来事。
魔道士「……撃ちます」
既に命を失いアンデッドと化していたとはいえ、ウィッチを自らの手で葬った魔道士。
天才が言っていた哀しみを乗り越えた力がそこにはあった。
命を奪う事に躊躇や慈悲がないわけではない。
その者の命の役目や意図を、己に課せられた宿命を踏まえた上での結末。
繰り返すがアンデッドと言えど、創られた命あろうとそれを奪い、摘み取るのだ。
生き続ける者にとって、それは生涯付きまとう、背負い続ける宿命なのである。
その覚悟を以ってして初めて、哀しみを乗り越えた力を得られるのである。
単純に欲や利のみで奪い取る命ではない。生きる者もそして死すべき者も、
互いがその宿命を交差させる、言わば真理とも言うべきものだ。
ネクロマンサー「……ッ」
魔道士「撃ちます……っ」
ネクロマンサーはその覚悟に、己の消滅を確信した。
- 715 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/27(金) 18:00:10.52 ID:YlpwbFR/o
ズゴゴゴゴゴ……
ネクロマンサー「ほ、本気で撃つと言うのか……ッ」
影忍「だから言ったはずだ。貴様は侮っているとな」
ネクロマンサー「確かにそうかもしれませんね。あの少女といい……」
剣士「……」
ネクロマンサー「ですがァ!! ここまで来てッ、この私とて退くわけにはいかないのですよォ!!」
北方司令「!?」
ネクロマンサーの絶叫する。そして思いもよらぬ行動へと移った。
盗賊「な……っ!!」
影忍「しまった! 同化する気か……!!」
ネクロマンサー「ク……クク……ククククッ!!」
北方司令「ご……っおう……っ!!」ギュバッ
魔道士「ど、同化って……っ」
影忍「あの人形にネクロマンサー自身が入り込む、寄生するつもりのようだ」
弓使い「寄生!? どういう事なのよ!?」
- 716 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/04/27(金) 18:02:09.27 ID:YlpwbFR/o
影忍「だが、そんな事をすれば貴様は存在しなくなるぞ!」
ネクロマンサー「ククッ、どうせ消えるのだ。だったら結果は同じ事よ……ッ!!」
北方司令「おっ、おうぐううぅぅ!!」
盗賊「兄様っ、どうすれば……っ」
影忍「1つの人形に2つの精神。それも1つはネクロマンサーという別のもの……」
魔道士「っ!!」
影忍「そんな事をすれば最早それは、人格すら持たぬ人間ではない……っ」
北方司令「おぅ、おごおおぉぉぉぉ!!」
ネクロマンサー「グク……ッ、グッハアアァァァァ!!」
戦士「ち……くしょぉ……っ」ググッ
影忍「もう時間はないぞっ!!」
東方司令「兄くん……っ」
魔道士「う、撃ちます……!!」
ネクロマンサー「もう遅いッ! 私はアアァァ……貴様等と共に消えるのだッ!!」
北方司令と同化したネクロマンサーは、頭上の球体へと高く跳躍した。
次へ 戻る 戻る 携 上へ