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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その23
671 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/06(木) 23:29:23.28 ID:9F49RW6o
戦士「……なーるほど。そういう事か」

剣士「これで、全て繋がった…かな?」

戦士「ああ。どーりで顔を見せねぇと思ったよ」

剣士「……今夜、全てが分かるよ」

戦士「…?」

剣士「歴史的な1ページが開かれる瞬間さ」

戦士「ま……さか!?」

剣士「こんな日に巡り合わせるなんて…これも何かの運命なのかもしれない」

戦士「……」

剣士「特に戦士くん。君にも馴染みあるだろうしね」

戦士「……」

剣士「是非、来てくれ。白馬騎士様もそれを望んでおられる」

戦士「俺……が?」

剣士「ああ」

戦士「……っ」


672 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/06(木) 23:29:57.22 ID:9F49RW6o
剣士「構わないよね…?」

戦士「……ああ」

剣士「良かった」

戦士「でも、一つ条件がある」

剣士「…条件?」

戦士「弓使いさんや幼女ちゃんにも、きちんと話すんだ」

剣士「……」

戦士「剣士さん、アンタは分かってるのか?」

剣士「……ああ」

戦士「今回だってヘタすりゃ魔物と結託してるって、処刑されてたかもしれねぇんだぞ!?」

剣士「……っ」

戦士「来たのが俺らだったから良かったものの……天才さんとかだったら……」



天才『罪人は魔物共々……死ねぇ!!はーっはっはっは!』

剣士『ぎゃああぁぁ!』


673 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/06(木) 23:30:26.68 ID:9F49RW6o


戦士「……こうなってたに違いない」

剣士「……」

戦士「それに、あの二人がどれ程心配しているか……」

剣士「…だから、言えないんだよ」

戦士「……」

剣士「これ以上、彼女達を戦いに巻き込みたくないんだ…」

戦士「剣士さん…」

剣士「だからと言って、俺も一緒に指を咥えて、傍観しているだけなんて出来ない…っ」

戦士「……」

剣士「幾ら味方とはいえ、魔族は魔族。この件についてはあまり関わって欲しく……」

戦士「……」

剣士「ど、どうした…?」

戦士「……手遅れ……かも」

剣士「……へっ?」


674 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/06(木) 23:30:54.03 ID:9F49RW6o
クルッ

剣士「――っ!!」

弓使い「……」

幼女「……っ」

魔道士「ご、ごめんなさい…っ!長いから…呼びに……」

弓使い「魔道士ちゃん、あなたの謝る事じゃないわ」

剣士「弓使い…っ。幼女…ちゃん」

ツカツカツカ

剣士「…あ、あの……っ」

弓使い「……」

パシイィン!!

魔道士「……っ!」

戦士「……き、強烈…っ」

弓使い「…人が……どれだけ心配していると思ってるのよっ!」

剣士「……す、すまん」


675 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/06(木) 23:31:24.27 ID:9F49RW6o
弓使い「……そうやって……一人で…っ」

テクテクテク…ギュッ

弓使い「……置いて……いかないでよぉ」

剣士「弓使い……」

幼女「剣士さんっ。弓使いさんを泣かしちゃダメッ!」

剣士「幼女ちゃん……っ」

弓使い「手助けは出来ないかもだけど…っ、だけど…心の支えくらい……」

剣士「……」

弓使い「そのくらい……私にも…させてよ…っ」

剣士「……っ」

ギュッ

剣士「…済まなかった。お前の言う通りだ」

弓使い「……バカッ」

戦士「……めでたしめでたし…ってか」

魔道士「はいっ」


676 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/06(木) 23:31:58.14 ID:9F49RW6o
テクテクテク

男の子「…お兄ちゃん達、朝から何やってんだぁ?」

女の子「あー知ってるぅ!好きな人とぎゅってするんだよねー?」

弓使い「ち、ちょっと…っ!違うのよっ、これは……」

男の子「へーっ!それじゃ俺もやろーっ」

女の子「し、しょうがないわねぇ…」

男の子「幼女ちゃーんっ!」

幼女「えぇ!?」

女の子「ちょっとーっ!!」

幼女「わ、私はいいからぁ〜!」

男の子「待ってよぉー」

女の子「こらぁーっ!」

魔道士「ふふっ……ふふふふっ!」

戦士「ははははっ!!」

弓使い「ふふふっ!」


677 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/06(木) 23:32:29.23 ID:9F49RW6o
〜剣士の家〜

弓使い「…全く、あなたがそんな事してたなんて…ビックリよぉ」

剣士「ごめん……。なかなか言い出せなくて」

弓使い「道理で羽振りの良い仕事だと思ったわ」

戦士「…そんなにいいの?」

剣士「い、一応国家単位の依頼だし……」

戦士「……本国のヤツら…ケチだよなぁ」

魔道士「そんな事ないですよぉ」

弓使い「それで、今夜で終わるのね?」

剣士「一応はね。細々とした雑務はまだまだあるけど」

幼女「じゃあ…オークさんとかも?」

魔道士「そうだよ〜。ここからずーっと南に行くとね、魔物さん達が暮らす国があるの!」

幼女「へぇーっ!すっごぉい!!」

剣士「平和になったら……みんなで行こうな!」

幼女「うんっ!」


678 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/06(木) 23:35:30.17 ID:9F49RW6o
それからしばらく、彼らは互いの近況や雑談に華を咲かせ、

時刻はあっという間に夕暮れとなる。



剣士「じゃあ、行こうか」

戦士「うっす!」

弓使い「三人とも、気をつけてね……っ」

魔道士「はいっ!頑張ってきます!」

幼女「……っ」

ナデナデッ

魔道士「大丈夫だから…。心配しないで?ねっ?」

幼女「……うん」

剣士「朝には戻るから。それじゃy行ってくる」

弓使い「行ってらっしゃい!」

幼女「…剣士さん、頑張って!!」

剣士「…ああ!」


680 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/06(木) 23:45:52.45 ID:9F49RW6o
時を同じくして、東の城では慌しい事態を迎えていた。

兄者「……どういう事かな?」

白馬騎士「ですから、これより陛下と共に視察へ向かいます」

錦将軍「おいおい、幾ら大将軍だからって…好き勝手していいとは限らんぜぇ?」

老将軍「皆の申す通りじゃ。ただでさえ近頃、嫌な噂が耐えん」

弟者「魔物がどーたらってやつだろ?」

白馬騎士「……」

兄者「事情があるようだが……ではこうしよう」

白馬騎士「……?」

兄者「我らも共に行く。それなら良かろう」

弟者「おいおいっ、兄者!」

兄者「五虎将が揃っておれば、魔物の百や二百はさほどの問題でもあるまい」

錦将軍「そりゃあそうだがよぉ……」

兄者「それとも…貴公らは陛下をお守りする自信がないとでも?」

老将軍「…仕方がないのぉ。そう致すとしようか」


681 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/06(木) 23:49:58.99 ID:9F49RW6o


側近「陛下……ご進発!」

兄者「各々方は馬車を取り囲むように馬を並べい!」

弟者「あいよぉ!」

ガガッ…ドドォ…

老文官「…宜しいのか?」

側近「白馬騎士殿が頭を下げて頼み事をするなど、かつてあったでしょうか」

若文官「……それほど、大事なのであろう」

側近「ですから、私は彼を信じます」

老文官「…まぁな。一度枯れかけた華国を蘇らせたのは、あの者の功績が大きい事よ」

パッカパッカパッカ…

白馬騎士「……」

兄者「それで、何処へ向かうというのだ?」

白馬騎士「……目指すは、南です」

錦将軍「…南?」


682 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 00:00:05.29 ID:cH.5ZKQo
ただ小さな点でしか過ぎなかったものが、一つ一つ組み合わされ、線となる。

その線が一つ一つ繋ぎ合わされ、一つの大きな丸となる。

この夜、まさに大きな丸が描かれようとしていた。

剣士の言葉を借りるならば、歴史的な1ページ。

ドドッドドッドドッ…ドドォ

剣士「……」

華国、分かれ道を南に降る事しばらく。ここは本国との国境線。

白馬騎士「……陛下、しばしお待ちを」

三男「…うむ」

ひとたび国境線を踏み越えてしまえば、それは侵犯となり国家間の問題となるは必須。

戦士「……」

魔道士「……」

南方は比較的柔軟ゆえ、国境線の見張りなどは置かれてはいない。

しかし彼らはそれを越えようとはしない。それが互いに対する礼儀であるからだ。

華国の領内にて待機する彼らの元へ、ようやく一頭の馬に揺られて、当事者が姿を現した。


683 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 00:08:22.48 ID:cH.5ZKQo
残念なお知らせですが…寝ます
ご支援ありがとうございました!それでは、お休みなさい!ノシ

〜オマケ〜

幼女「……」

弓使い「幼女ちゃん、そろそろ寝なさいな」

幼女「うん……」

弓使い「剣士達が心配…?」

幼女「……うん」

弓使い「大丈夫!みーんな強いんだから」

幼女「…うん」

弓使い「それに、オーク達だっているのよ?」

幼女「うん…そうだよね」

弓使い「ねっ?だから寝ましょ?」

幼女「うんっ、おやすみなさい!……あっ」

弓使い「…なに?」

幼女「……早く結婚しちゃいなよ〜!」

弓使い「ちょっと!?何言ってるのよもうっ!」

幼女「ふふっ、それじゃおやすみなさ〜い!!」

弓使い「全くもう……っ!……ふふっ」


693 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:30:31.68 ID:WWDKUpMo
錦将軍「……んおっ?誰か来んぞ…!?」

オオォォ…

弟者「…待て、脇にいる連中、魔物じゃねぇのか!?」

老将軍「!?」

ザザッ!!…ジャキッ

兄者「白馬の、これはどういう事だ?」

白馬騎士「お待ち下さい!貴公らはそのまま待機を!」

弟者「待機だぁ!?貴っ様ぁ!陛下の御身に――」

三男「良い、白馬騎士に従うのだ」

兄者「……しかし」

三男「おそらく事情があるのだ……そうであろう?」

白馬騎士「……申し訳ありませぬ……っ」

錦将軍「…ちっ。もし何か起きたら…俺はこの場で貴様を斬る」

白馬騎士「……構わぬ」

錦将軍「……っ」


694 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:31:12.10 ID:WWDKUpMo
パッカパッカパッカ…

魔道士「あ、あの……人達って!」

戦士「……やっぱりそうか」

剣士「あの方が…今件の立案者さ」

パッカパッカパッカ…

戦士「……お久し振りです」

魔道士「お元気そうで何よりですっ、皆さん!」

ザッ

法師「……これはこれは、戦士殿に魔道士殿か」

ハヌマーン「お主らも絡んでおったのか…!?」

戦士「成り行きでな」

マーマン「お前らとも縁があるもんだよホント……」

オーク「オラ、嬉しいです!」

魔道士「ふふっ」

剣士「さぁ、白馬騎士様達がお待ちですよ」


695 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:31:41.64 ID:WWDKUpMo
ザワザワザワッ

兄者「……っ!!」

錦将軍「お、おい……あれ…って」

弟者「……次男…様ぁ!?」

老将軍「そろえに加えあの魔物共は一体……!?」

ザッザッザ…

法師「…おや、随分と大人数ですね」

白馬騎士「申し訳ありません。いずれは話さねばならぬ事ですし……」

法師「手間が省ける、というもの…か」

ゴソッ…テクテクテク…

三男「……あ、兄上…っ!!」

法師「…三男か。元気でやっているようだな」

三男「……っ」

タッタッタ…ガバッ

法師「…・・・おぉ、随分と背も伸びたようだなぁ」


696 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:32:13.26 ID:WWDKUpMo
三男「兄上っ、今まで何処におられたのですっ?八方手を尽くし探したのですぞ!」

法師「私は罪人だ。最早、華国に戻るつもりはないよ」

三男「以前とは違いますっ!今の華国は……」

法師「昔の花国しか知らぬ男が、今更何か出来るとは思えないさ」

三男「……っ」

法師「それに、皆が戻ってきてくれているではないか」

ザッ

兄者「次男様…。ご無沙汰致しております」

錦将軍「恥を承知で…華国へ戻って参りました」

老将軍「この命、残り少なかれど…華国に骨を埋める所存!」

弟者「どうか、次男様も……華国へっ!!」

ザザッ

法師「頭を上げて立って下さい。私はもう、次男ではないのだ」

兄者「……」

法師「ただ一介の旅の法師。それだけです」


697 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:32:55.76 ID:WWDKUpMo
テクテクテク

白馬騎士「法師様、剣士殿です」

剣士「ご無沙汰しております」

法師「華国の乱、以来ですね」

白馬騎士「華国領内における魔物の残党は、全て剣士殿が取り纏めて下さいました」

法師「そのようですね。感謝しております」

剣士「……いえっ」

法師「剣士殿は素晴らしい人物だ。人も魔族も魅せられるのでしょうね」

白馬騎士「ええ。某も以前より将器有り、と感じております」

剣士「そ、そんな事は……」

法師「私は心の眼で貴方を見ているのです。間違いはありませんよ」

剣士「……は、はぁ。ありがとうございます…っ」

法師「では、早速本題に入りましょうか」

白馬騎士「左様ですね。場を移します…こちらへどうぞ」

剣士「戦士くんと魔道士さんも一緒に来てくれ」


698 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:34:59.52 ID:WWDKUpMo
戦士「俺らもか!?」

魔道士「お邪魔じゃないでしょうか…?」

剣士「いや、互いの状況を把握している第三者として、都合がいい」

白馬騎士「確かにそうかもしれないな。是非お願いしたい」

戦士「……はぁ、そういう事なら」

白馬騎士「陛下、宜しいですね?」

三男「うむ、任せるよ」

白馬騎士「会談場所はこの先の寺院です」

老将軍「国境の寺か?あれは半壊しておったはずじゃが……」

白馬騎士「ご心配なく。前もって復旧作業を進めておりました」

錦将軍「準備いいなぁ。全て調ってたって話かい」

白馬騎士「貴公らを騙すつもりはなかったのだ。許して頂きたい」

弟者「そりゃあこれからの話を聞いてからだな」

兄者「その通りだ。華国の益とならぬような事であれば……」

白馬騎士「……分かり申した」


699 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:35:47.80 ID:WWDKUpMo
合流した一同は、国境からやや北東にあたる寺院へと場を移す。

魔物の来襲と共に半壊した寺院は、復旧作業が進められ、

以前の輝きを取り戻しつつあった。

パッカパッカパッカ…

弟者「…おわっ!?」

先頭を任された五虎将軍の馬が足を止める。

理由は明白。寺院の周囲を忙しなく動き回る者らの姿をみたからである。

錦将軍「魔物の群れが…っ!」

白馬騎士「ご安心をっ!あの者らは味方です!」

兄者「何…っ!?」

バサッバサッ…

ガーゴイル「待ってましたぜ!どうです?だいぶ綺麗になったでしょ」

剣士「やるじゃないか!」

ゴブリン「へへーっ!こういうのは得意!」

白馬騎士「……お分かり頂けたかな?」


700 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:36:40.66 ID:WWDKUpMo
兄者「…不思議な……光景よ」

老将軍「にわかには信じ難いな…っ」

戦士「…たく、頑固だなぁ」

剣士「仕方ないよ。華国はついこの前まで魔物に牛耳られていたんだ」

魔道士「……」

剣士「また騙されているのではないかと思っても、おかしくはないよ」

戦士「…まぁな」

剣士「その誤解を解く為にも、慎重に行動せざるを得なかった」

魔道士「……ですよね…っ」

剣士「僕はともかく、板挟みの立場であった白馬騎士様は辛かっただろうね」

戦士「そうだよな…。下手に国内にゃ持ち込めないし…」

魔道士「一人で…頑張ってらしたんですね……」

剣士「でもようやく、今日で全てが終わるんだ」

戦士「…だな」

剣士「…さぁ、寺院の中へ入ろうか」


701 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:37:19.03 ID:WWDKUpMo
〜国境の寺院〜

弟者「…ほんとに魔物共が寺を直してんぜ…っ」

錦将軍「信じらんね……」

ガーゴイル「屋根はこっちに任せろって」

スケルトン「骨組みは完成したぞー。肉付けを頼むー」

トロル「おーう」

スタスタスタ

白馬騎士「……本堂へ」

法師「うむ」

三男「兄上、私の肩にお捉まりを」

法師「…助かる」

スタスタスタ

白馬騎士「剣士殿、君も」

剣士「……はい」

スタスタスタ


702 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:39:08.71 ID:WWDKUpMo
寺院の階段を登りきった先に、そびえる広々とした建造物。

かつてはここに僧侶が寝泊りしていたと思われる本堂がある。

テクテクテク…

白馬騎士「……」

僧侶「……」

三男「……」

騎士「……」

本堂の中心部に四人の男。その部屋の外に戦士と魔道士。

更には白馬騎士を除く五虎将軍と、ハヌマーンら魔物三匹。

弟者「……」

ハヌマーン「…何か?」

弟者「…いや、魔物と並び立つってのもおかしな感覚だと思ってよ」

マーマン「こっちに言わせりゃ人間と並び立つのも最近まで不可思議だったさ」

兄者「……」

この異様な光景の中、階段はひっそりと幕をあけた。


703 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:39:48.63 ID:WWDKUpMo


白馬騎士「まず、陛下には深くお詫び申し上げたい」

三男「気にするな。華国を思っての事であろう」

法師「詫びるのは白馬ではない。私だ」

剣士「……」

法師「私が提案した話だ。全ての責は私にある」

三男「責などという言い方をなさいまするな。兄上」

法師「三男、分かっていると思うが…彼らの集めた魔物は敵ではない」

三男「そのようですね」

剣士「ここにいる魔物も含め、僕が集めた魔族は、言うなれば投降兵です」

三男「……」

剣士「華国の乱や火焔山の崩壊によって、行く場を失った魔物達なのです」

白馬騎士「中には人間に対して敵意を示す輩もいましたが……」

剣士「そういった者らは華国より去って行きました」

三男「追い払ったと?」


704 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:40:36.90 ID:WWDKUpMo
剣士「いえ、こちらに付いた魔物の数がかなり多く、自然と……」

白馬騎士「留まれば討たれると判断し、他の残党の元へ走ったのであろう」

三男「…成程」

白馬騎士「今なお、華国領内における協力的な魔物らは増え続けております」

剣士「魔族同士で近隣の者らに声をかけ、投降を促しているのです」

白馬騎士「お陰で現在、華国内には敵対する魔物をほとんどみかけなくなりました」

三男「その上で、兄上の動きか」

法師「存じているかは分からんが、私は今、魔族の世話になっている」

三男「……」

法師「ここより南の地に、スグリーヴァなる魔物がいる」

三男「スグリーヴァ……」

法師「彼の者はハヌマーンを始めとする魔族の長。通称、猿王」

白馬騎士「スグリーヴァ様は元来、人間に協力的であったと伺います」

法師「左様。これまでも南方における戦いでは手を貸しておられる」

スッ


705 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:41:11.62 ID:WWDKUpMo
法師「ハヌマーン」

ハヌマーン「……はっ」

法師「中へ」

ハヌマーン「……失礼」

スッ…ササッ…スタッ

三男「……っ」

法師「彼は参謀役とも言うべき男、ハヌマーンだ」

ハヌマーン「お見知りおきを」

法師「スグリーヴァ様は魔王ラーヴァナと古くから敵対しておるのだ」

ハヌマーン「左様。我が主はかつてより人間との共存を望んでおられる」

剣士「……」

ハヌマーン「しかしながらラーヴァナは貴方達を餌としかみておられぬ」

三男「……」

ハヌマーン「そこで対立している、という次第だ」

白馬騎士「スグリーヴァ様が睨みを利かせてくれているお陰でラーヴァナも動けぬ」


706 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:41:54.07 ID:WWDKUpMo
法師「せいぜい小者の群れか腹心単体……」

剣士「しかしスグリーヴァ様も同様…」

法師「鋭いですね、その通り。両者は互いに動けぬのです」

ハヌマーン「どちらかが兵を動かせば、もう一方が間隙を突く」

法師「かと言って、両者が正面から当たれば……双方共倒れ」

ハヌマーン「いや、正直言えばこちらが競り負けるであろうな」

三男「……」

ハヌマーン「だからこそ、人に活路を見出しているという点もある」

白馬騎士「……」

ハヌマーン「かような睨み合いが数百年…いや、それ以上か」

三男「……そ、そんなにもか…っ」

法師「そこで、間接的に外部より動ける兵が欲しいのです」

三男「成程…。それがつまり……」

白馬騎士「剣士殿が集めてくれた彼らです」

剣士「……」


707 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:42:47.88 ID:WWDKUpMo
法師「更には、私やハヌマーンが各地を行脚して集まった者らもいる」

ハヌマーン「これにより、仕掛ける事は出来ぬとも守り切る事は可能…」

白馬騎士「陛下、その上で某の提案をお聞き頂けますでしょうか」

三男「……申せ」

白馬騎士「華国を、人と魔族の共存出来る国家へと形成したく」

三男「っ!!」

白馬騎士「今すぐとは言いませぬ。いや、今すぐなどという事は到底不可能」

三男「……」

白馬騎士「しかし、先の乱で痛感致しました」

三男「……」

白馬騎士「魔族とは、敵にすれば恐ろしいが、味方に付ければさぞ頼もしいと」

ハヌマーン「……」

法師「毒を以って、毒を制す……という事だ」

三男「……っ」

剣士「僕からも……お願い出来ますでしょうか?」


708 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/01/07(金) 18:43:46.75 ID:WWDKUpMo
三男「…?」

剣士「この先、全ての魔王を倒した後…魔族は辛き目に合うのは明白です」

法師「……」

剣士「魔族を統制する王が消えた後、残された魔物はきっと……」

ハヌマーン「そうだな。下等な連中は人間の手によって皆殺しとなろうであろうな」

剣士「だからこそ、救うべきものがなくてはならないと考えます…っ!」

三男「……」

剣士「それも……国単位での話です」

白馬騎士「確かに…。受け入れるべき器を成さなければならぬのかもな」

三男「……皆の申すこと、尤もだな」

剣士「……」

白馬騎士「さすれば……」

三男「今すぐにとはいかぬだろうが、華国を挙げて取り組むとしよう」

白馬騎士「有難き…!!」

ハヌマーン「我が主に代わり、感謝致しますぞ」



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