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少女『言葉が通じなくても』
421 名前:GEPPERがお送りします [最近sage saga忘れすぎ…] 投稿日:2010/09/09(木) 00:23:17.05 ID:jOB5.oAO
街潰しの怪物が初めて歩みを止める

眼前には小さな人間が一人

異国の侍、手には枝きれ一つ

怪物「――――」

侍「いざ、尋常に…」スッ


グォォォオゥンンッ

ガゥンッッッ


少女『ッッ!?』ブァッ

突風が吹き、地響きが走った


422 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/09(木) 00:29:57.81 ID:jOB5.oAO
ヒラッ

スタッ

侍「流石にまともに食らうとかなり飛ばされるな」ビリビリッ

怪物に薙払われた侍は自ら飛び、衝撃を和らげだ

とはいえ、地面を簡単にえぐり取る程の力である

侍「まだ少し痺れが…」

怪物「――――」ゴオオッ


427 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 14:22:41.89 ID:lxevUAAO
怪物「――――」ブゥゥンッ

侍「そうがっつくな」カシィンッ


グラァッ


怪物「――」ズゥゥンッ


怪物は着地直後の侍に間髪入れず平手をかました

しかしその攻撃は侍により軌道を変えられ、逆に体勢を崩し倒れてしまう

侍「お主の攻撃は強力だ。それ故に外した時の弊害も大きい」


428 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 14:27:40.27 ID:lxevUAAO
ズズズッ

怪物「―――」ググッ

侍「今のは最終的な攻撃の到達点をずらし、敵の体勢を崩すという方法だが…」

怪物「―――――――――」グワンッッ

ズシイッッ

侍「相手の踏み込んだ足等、軸を崩してしまう方法もある」ガキィンッ

グラッ


ズズゥゥンッ

怪物「―――」


429 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 14:34:58.19 ID:lxevUAAO
怪物「――――」グググッ

侍「流石に生身と違って、転けたぐらいでは傷つかぬか」

怪物「――」グォォッ

ズンッ


トンッ

侍「―更に相手の重心移動に合わせて攻撃を撃つ事で、相手の攻撃力を上乗せする方法もある」ググッ

ベコォォッ


怪物「――…」ミシミシッ


430 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 14:43:21.95 ID:lxevUAAO
少女『すごい…怪物を圧してる…』

大きさも重さも、絶対的に大きな敵を相手にして尚、侍は圧倒的だった

特に今の3発目の攻撃で怪物の顔と思しき箇所は大きくひしゃげ、動く度にグラグラ揺れていた


怪物「―――――」プシューッ

怪物から煙が立ち上る

そして駆動音が速くなる

侍「むっ」


バキィィッ


431 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 14:48:05.74 ID:lxevUAAO
侍「速いッ」ビリビリッ

先程に比べると段違いに速くなった怪物の動き

侍を強者と認めたのか…

怪物「――――――」シューッ

…それとも、死を覚悟したのか

全身がら立ち上る白煙


怪物「――――」ブォンッッ

侍「はァッ!!」ガシィンッ


432 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 14:55:59.68 ID:lxevUAAO
ズシィィンッ

怪物が踏み込む度、大地が軋む

ブォォウンッ

怪物が腕を振るう度、風が吹き荒れる

侍「せぁッ!」キィンッ

侍が一打凌ぐ度、白煙が渦巻く


いつしか辺りは白煙で曇り、地は裂け、人ならざる者達の闘う音だけが聞こえる魔境と化した


433 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 15:03:06.56 ID:lxevUAAO
…直、日の入りという時間

半日以上打ち合った侍と怪物はここに来て数分後睨み合い、動かなかった

それは、次の一撃が正しくどちらか一方の死…決着をつけるものだという事を物語っていた


侍「……」

怪物「――――――」グォォッ

怪物は徐に片足を上げた

もちろん、その着地点は侍の頭上であろう

グァァァァッ


侍は逃げない

少女『お兄さん……!』


434 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 15:07:22.18 ID:lxevUAAO
ズシィィィィンッッ

ビキビキビキッッ


怪物の足が大地に着き、地割れが走る

少女『…え、あれ…?』

少女の思い描いていた決着はそこになかった

侍がいつものように敵を切り裂き、生還するイメージ

少女『お兄さ…ん……』


それは再現されなかった


435 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/09/11(土) 15:22:45.81 ID:lxevUAAO
少女は一瞬動揺した

怪物の足の下に消えていく侍を見てしまったからだ

普通なら、あんな巨大な怪物に踏まれたら無事な訳がない

侍とて人間、潰れたら死ぬ


少女『でも…私は信じる』


ピシッ


少女『お兄さんが、あの怪物を倒す事を!』


ビキッ

「おおおおおおおおおおおッ!!」

怪物「―――!?」ピシピシッ


436 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/09/11(土) 15:37:52.54 ID:lxevUAAO
―天貫く事

少女『お兄さん!!』

バリィィイインッッ


侍「―龍の如し」シューッ


ズウウウゥゥンッ


怪物「――…」ギギッ

侍「…お主は強かった。だがやはりカラクリ故に心の差で私に負けた」

侍「お主に心があれば…一撃一撃は更に響いたろう」


437 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/09/11(土) 15:42:45.31 ID:lxevUAAO
怪物「――…」ギギッ

ズズズッ

侍「ん? 何だ?」

怪物「―――…」スッ

侍「これを私に?」


怪物から差し出された物

それは魚のミイラのような物体

侍「そういえばお主、一度も右手で攻撃してこなかったな…」

怪物「…」ギッ

侍「そうか、これがお主の心…か」


438 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/09/11(土) 17:50:25.30 ID:lxevUAAO
―この世には、不治の病をも治すという霊薬の噂が幾つもある

ある話では妖精の零す涙と言われ、ある話では魔女が作る魔法の薬と言われている


昔、はるか昔。西の大陸で疫病が蔓延した際、感染していない者達は家族や仲間の為、霊薬を求めた

「遥か沖の海の底、深海に潜むミツボシアンコウの体液は、如何なる病もたちまち治す」

言い伝えなど眉唾だが、医者も匙を投げた疫病に対し、人々はその御伽噺にかけるしかなかった



『頼むぞ、必ずやミツボシアンコウを捕まえてきてくれ』

それが皆との約束。今、果たす時が来た

再び陸に上がるまでには大変な年月が経っていた

皆が疫病だけでなく寿命でも死んでいる程に―


439 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/09/11(土) 17:54:05.06 ID:lxevUAAO
少女『お兄さんー!!』タタタッ

侍『―』ボロ

少女『大丈夫?』サワッ

侍『――!?』ズキーンッ

少女『ああっ!? ごめんね!』


怪物『――』


少女『…倒したんだよね』

侍『…―』ズシッ

少女『…何それ、干物?』


440 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/09/11(土) 18:03:41.33 ID:lxevUAAO
少女『それ…食べるの?』

侍『…』

怪物『…―』プシュー

少女『怪獣じゃなく機械だったんだね、一体誰が作ったんだろう』

怪物『エイ…ラ……』ギギッ

少女『ん?』

怪物『………』

少女『えいら…って言ったのかな?』

侍『…』

少女『よく分かんないけど、お兄さんは怪物と何か約束しちゃったんだよね』

少女『じゃあ、その干物届けに行きますか!』


441 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 18:13:08.02 ID:lxevUAAO
―地震が止まった

朔風半島を震え上がらせた怪物は、突如進行を停止

王都の目の前で倒れ込み、そのまま眠りに就いた


後に行われた軍の調査によると、怪物は機械巨人で、素材は失われた古代技術の金属が殆ど

何を燃料にしていたかも不明、魔術による遠隔操作との推測もある

足の破損による自力歩行不能が停止原因と思われる


442 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 18:20:56.43 ID:lxevUAAO
現在の技術では分解もできない為、これ以上の調査、及び機械巨人の回収は不可能

怪物は王都の前に放置される事となった


しかし、怪物の破壊された右足には謎がある

股関節部に開いた、まるで鋭利な刃物で貫いたかのような小さな穴

それに、燃やした竹が弾けたみたいに吹き飛んだ腿までの脚部


本当に脅威がいるなら…それは機械巨人ではなく、足を破壊した張本人かも知れない―


443 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 18:28:03.40 ID:lxevUAAO


店長『まさか、本当に店を続けられるなんてね』

奥さん『一時はどうなることかと思いましたけど』

店長『…もしかして、本当にお嬢ちゃん達が…?』

奥さん『…どうでしょうね』

店長『何にせよ、早く帰ってきて欲しいね』

奥さん『ええ、無事に帰ってきてくれたら…』

カランカラーン

店長『!』

町人『店長、ちわー』

奥さん『あ、いらっしゃいませー』


444 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/09/11(土) 18:33:40.21 ID:lxevUAAO
=永螺の街=

侍『…』スッ

少女『…』スッ

【疫病に倒れし人々の霊魂、此処に慰むる】


少女『行こうか』

侍『…』コク





子供『わっ 何だこれ!?』

母『お供えかしら…』

おっちゃん『…あれ、これって昔話で聞いた―』



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