■戻る■ 戻る 携 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その15
541 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/07(月) 23:22:05.41 ID:X.2NxaAo
西端の村より南下する事およそ数里。

遥か西…古代遺跡へと続く秘境の道が山中に一本伸びる。

召喚士「では…行きましょうか」

盗賊「…前は…任せろ」

山道は険しい岩と木々に覆われ、月光が足元のみ照らし出す。

その他の明かりと言えば、背後にそびえる西国の簡易的な砦の光のみである。

召喚士「行けっ!サラマンダー!!」

シュイィン…

サラマンダー「おう…。次はどこに来とるっちゅーねん」

召喚士「今は西方です」

サラマンダー「ふぅん…西方ねぇ。奇特なやっちゃ…」

魔道士「宜しくお願いしますねっ!サラマンダーさん!」

サラマンダー「はいはい。ほな行こうかの…」

盗賊「…うむ」

召喚士「道は狭い…。気を付けて下さい…!」


542 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/07(月) 23:23:26.16 ID:X.2NxaAo
ザッザッザッザッザ…

召喚士「……視界が悪いな」

盗賊「…ああ」

召喚士(盗賊さんの集中力も…半端じゃない…)

盗賊「……」

召喚士(逆を言えば…それだけ精神的な消耗が大きい…)

サラマンダー「道はずーっと一本じゃのぉ…」

盗賊「…うむ。しかし…左右の森が厄介だ」

魔道士「真っ暗で…何も見えないですね」

盗賊「…これは昼間でも…相当の暗さだぞ…?」

召喚士「潜むには絶好の条件……」

魔道士「……っ」

サラマンダー「お〜こわこわ!さっさと抜けようかの…」

召喚士「ええ…」

盗賊「…賢明だな」


543 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/07(月) 23:24:36.09 ID:X.2NxaAo
一同は更に山中を登り続ける。道は別れる事もなく、ただただ続いている。

サラマンダー「だいぶ進んだのぉ…」

召喚士「……そうですね。魔物の気配はありますか?」

盗賊「…いや…特に。…しかし」

魔道士「……?」

盗賊「…ところどころ…何かに見られている感覚は…ある」

召喚士「ただの獣か…。はたまた…魔物か」

盗賊「…仕掛けてこないのは気になるな」

魔道士「詠唱しておきますね…っ」

サラマンダー「山も…もう半分ぐらい登ったのぉ」

召喚士「もう中腹部か…。景色が分からないから全然…」

カサカサッ

盗賊「!?」

召喚士「……ただ…木が揺れただけのようです」

魔道士「ビ、ビックリしたぁ…っ!」


544 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/07(月) 23:28:49.68 ID:X.2NxaAo
カサカサカサッ…

魔道士「風が出て来ましたねぇ…」

サラマンダー「そか?なーんも感じんけど…」

盗賊「っ!!」

召喚士「まさかっ……」

召喚士と盗賊は慌てて鞘より得物を抜く。…が、

その動きよりも素早く、盗賊の身体が宙へと浮く。

召喚士「盗賊さんっ!!」

盗賊「く…っ…!!」

魔道士「きゃああぁぁっ!!」

その背後では魔道士も同様に、その身体を宙へと舞いあげている。

召喚士「魔道士さんっ!?」

魔道士「…うく…っ…!!」

盗賊「…は…っ…あう…っ!!」

宙に浮く二人の身体には、何本もの枝が纏わり付き、その身を封じていた。


545 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/07(月) 23:39:48.16 ID:X.2NxaAo
〜北方司令部〜

戦士「……」

用意された個室の中央。明かりも付けず、戦士が一人椅子へ座る。

戦士「……」

外から差し込む月光が足元を照らし出す。

カチャッ…

戦士「!?……親父」

戦士父「…静かに」

パタン…テクテクテク

戦士「どうしたんだよ…!?こんな夜中に…」

戦士父「……行くぞ」

戦士「…!?行くって…どこに……」

戦士父「ココを出るんだよ。お前はこのまま軍属になりてぇのか?」

戦士「…いやっ…まさか」

戦士父「…だろ?んじゃ行くぞ」


546 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/07(月) 23:47:55.75 ID:X.2NxaAo
ザッ……タッタッタッタッタ…

戦士「なぁ親父。出るったって…こっからどうやって…」

タッタッタ…

戦士「城門や塔には見張りの兵が…」

戦士父「簡単な話だ。……飛び降りる」

戦士「はぁ!?」

戦士父「城壁を飛び降りる。以上」

戦士「そんな簡単に……っ」

戦士父「何だ?怖いのか?」

戦士「そうじゃねぇけど、真っ暗だし…ある程度の覚悟ってモンが…」

戦士父「よし…!飛び降りるぞっ!」

ザシッ……ババッ!!

戦士「マ…マジかよ!?……くっそぉ!!」

ババッ!!

二人の男は城壁より闇の中へ飛び降り、その姿を消した。


547 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/07(月) 23:50:40.38 ID:X.2NxaAo
バンッ!!

左翼長「何だとぉ…!?」

司令室へ戦士親子の失踪を伝えに来た兵へ、左翼長は怒号を発す。

騎士長「あんのヤロウ…ッ!」

左翼長「ちっ…。まぁいい…」

騎士長「追うか…?」

左翼長「行き先はおよそ絞れる。朝一で追跡する」

騎士長「了解…して、行き先は?」

左翼長「ドラゴンの巣はまだある。そう言っていた…」

騎士長「なーるほど…。北東にある他の村をあたるつもりだな?」

左翼長「おそらくそうだろう。向こうは徒歩だ。夜道じゃ大した距離は進めん」

騎士長「明朝でも充分に追いつく…。いや、それどころか先回りも出来るな」

左翼長「俺とお前で二手に分かれて追うぞ。挟んで逃げ場を封じる」

騎士長「全く…。とんだ鬼ごっこときたもんだ…」

左翼長「……ああ。手間掛けさせやがって」


548 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/07(月) 23:56:24.29 ID:X.2NxaAo
戦士父「……と、奴らは考えるハズだ」

戦士「なるほど…」

戦士父「そこで裏をかいて…北西へ向かう」

戦士「北西…?」

戦士父「司令部からだとほぼ北進って感じだがな」

戦士「そこにも…村が…?」

戦士父「ああ。…幾つかある」

戦士「……北っつーと…召喚士の故郷らへんか…」

戦士父「何か言ったか?」

戦士「いんや、何でもねぇ…」

戦士父「夜通し進むぞ。朝方には辿り着きたい」

戦士「お、おうっ」

戦士父「……何だ?急にニヤニヤして…」

戦士「い、いやっ…何でもない…っ!」

戦士父変な奴だな……」


549 :GEPPERがお送りします [] :2010/06/07(月) 23:59:07.88 ID:X.2NxaAo
こんばんはー。今日はすっごく眠いので早々に失礼しますです!
本日もご支援ありがとうございました〜おやすみなさいー!ノシ

>>538-540
あざっす!体調はもう完治寸前です!
父と息子は誰得…BL需要あるなら…まぁ…


554 :GEPPERがお送りします [sage] :2010/06/08(火) 15:26:49.23 ID:GRrb2pso
触…いや,樹モンスターよく出るなあ。
盗賊は遭遇二回目?


555 :GEPPERがお送りします [sage] :2010/06/08(火) 17:41:58.65 ID:HLyOQQAO
おっぱいに反応してんだな


556 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/08(火) 17:54:55.53 ID:FS08rEQo
〜西方、西の山〜

盗賊「…ふっ……ぐぅ…っ!!」

魔道士「…んう……ぅ…!!」

左右の闇より伸びる枝が、二人の四肢と胴体にきつく纏わりつく。

召喚士「盗賊さん!魔道士さんっ!!」

ギチギチッ……ズズッ…

サラマンダー「はよ何とかせんかいっ!」

左右の闇に、一つまた一つと赤い光が浮き上がり始める。

その光はそれぞれ二つずつ並び、木の幹から放たれ、まるで目のように見える。

召喚士「くそ…っ!」

サラマンダー「魔物の気配じゃ!気ぃつけぇ!!」

召喚士「分かってます…!」

木々は赤い瞳をぎょろぎょろと動かし、沈黙のまま枝を伸ばし続ける。

盗賊「くうぅ…っ!!……んっ!」

魔道士「うっ……んんっ…!!」


557 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/08(火) 17:55:36.53 ID:FS08rEQo
サラマンダー「はよせんかい!!」

召喚士「しかし下手に手を出せば二人の身体も…!」

絡みつく枝は四肢以外にも、首や胸部、腰に巻きつき、その動きを封じる。

召喚士(枝のみを攻撃しないと…二人の身体を傷つけてしまう…!)

ズルルッ…ギチィ…

盗賊「はう…っ…!!」

魔道士「……うぅーっ!」

執拗な攻めを堪え、魔道士の右手に持つ杖が輝き出す。

キュイィィ…

魔道士「…こ…っの…ぉ!!」

杖の先端…ハートを模したその部分から炎が発せられ、その場で炎上する。

ドドオォンッ!!…ゴオオォォ!!

召喚士「!?」

サラマンダー「嬢ちゃん!?」

炎に包まれた枝の一部は焼け落ち、黒煙の中より魔道士が地面へと落ちる。


558 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/08(火) 17:56:04.21 ID:FS08rEQo
パチパチッ……ドサァ

魔道士「……けほ…っ!…けほっ!」

召喚士「魔道士さんっ!大丈夫ですか!?」

魔道士「ローブの…お陰で、なんとか…っ!けほっ!」

サラマンダー「耐炎のローブか…。なんちゅうか…」

召喚士「こんな使い方も…っ」

魔道士「無我夢中で、咄嗟の事でしたから…」

ギチギチッ…

盗賊(ま、魔道士…無事か…っ)

盗賊は目線を下げ、解放された魔道士を確認する。

盗賊(私はどうする…かな…)

ギチッ…ミチッ…

盗賊(…私も魔法が使えたら…!?そうか…っ!)

ズズッ……ズリュッ…

盗賊(一か八か…やってみるか…!)


559 :GEPPERがお送りします [sage] :2010/06/08(火) 17:56:18.87 ID:5DJEsvco
ジブリール的か何か


560 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/08(火) 17:56:37.88 ID:FS08rEQo
盗賊は脱力し、ゆっくりと目を閉じる。

魔道士「と、盗賊さん…っ!?」

サラマンダー「諦めんな!」

盗賊「……ふーっ」

キイイィィンッ

魔道士「え…っ!?」

召喚士「!!」

光り輝く盗賊の腹部に、召喚士と魔道士は驚きの表情を見せる。

サラマンダー「なんじゃ…あ!?」

バシュウウゥゥッ!!

盗賊の腹部へと巻きついた枝が一斉に弾かれ、闇の中へと戻っていく。

盗賊(緩んだ…!!これならば…っ)

シュルッ…

直前の衝撃により緩んだ枝の隙間から、盗賊は右腕を抜き、

素早く蜘蛛切の柄へとその指を伸ばす。


561 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/08(火) 17:57:49.16 ID:FS08rEQo
チャキッ……シュバッ!!

蜘蛛切を逆手に持ち一度腕を回す。姿勢と正すとその身は既に自由となり、

二度目は身体ごと一回転し、盗賊の着地と同時に枝は粉々に舞い散った。

ザシュッ……スタッ

盗賊「……はぁっ…ごほ…っ」

魔道士「盗賊さん!大丈夫ですか!?」

召喚士「今ユニコーンを…っ!」

盗賊は二人を見つめながら左手で制し、小さく笑みを浮かべる。

盗賊「…大丈夫」

魔道士「……良かった…っ」

召喚士「……流石です!」

サラマンダー「お前…全然役に立たんのう…」

召喚士「……すいません」

盗賊「…とにかく…一度後退しよう!」

魔道士「はいっ!!」


562 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/08(火) 17:59:13.74 ID:FS08rEQo
〜サモナーの家〜

カチャッ…

マーメイド「あら、おかえりなさい」

サモナー「あ、ああ…。ただいま」

マーメイド「……どうか…した?」

サモナー「……いや」

マーメイド「そう…」

サモナー「さぁて…お茶にでもしようかな」

サモナーは笑顔を見せ、屋内へと振り向き、足を進める。

マーメイド「……いいの?」

…ピタッ

サモナー「……」

マーメイド「あっ…詳しくは聞かないけれど…」

サモナー「…魔物がさ、南から近づいてるんだって」

マーメイド「…そう」


563 :GEPPERがお送りします [sage] :2010/06/08(火) 17:59:55.80 ID:Kie7e2DO
ズリュッてナニをした効果音なんだろうか


564 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/08(火) 17:59:56.72 ID:FS08rEQo
サモナー「召喚士くん達が討伐に向かってくれたよ」

マーメイド「うん…」

サモナー「凄いよね。躊躇も何もなく…すぐ飛んで行った…」

マーメイド「うん。凄いわね…」

サモナー「若いのに大したものだよ。ははっ…」

マーメイド「いいの?そんなに無理して…」

サモナー「無理…って、何で僕が…」

マーメイド「じゃあ…こっち向いて、顔を見せてよ…」

サモナー「……」

マーメイド「召喚士くん達と出会って…貴方は充分変わったわ」

サモナー「……」

マーメイド「行きたければ行けば良い。嫌なら行かなければ良い…」

サモナー「……」

マーメイド「頑なに自分を貫かなくとも…正直に生きれば良いじゃない」

サモナー「…うん」


565 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/08(火) 18:00:34.67 ID:FS08rEQo
マーメイド「人の為であっても、自分の為であっても…正直生きている貴方が好きよ」

サモナー「マーメイド…」

マーメイド「…私の事は気にしなくていいから。ねっ?」

サモナー「……ごめ…ん」

マーメイド「ほんのちょっぴり合う時間が減るだけ。後は何も変わらないわ」

サモナー「ごめん…ごめ…っん…」

マーメイド「さぁ、涙を拭いて…。行きましょっ」

サモナー「……」

マーメイド「みんなが…待ってるわ」

サモナー「……ああ…っ。行こう…!」

マーメイド「それでこそよ。サモナーさん」

シュイィィン…

サモナー「……よし」

サモナーは右腕で顔を擦り、そのまま屋内へと入っていく。

その背後には水面に映る月と、波紋だけが広がる泉が広がっていた。


566 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/08(火) 18:01:06.56 ID:FS08rEQo


タッタッタッタッタ…

召喚士「ここなら問題なさそうですね」

盗賊「…ああ」

三人と一匹の召喚獣は、周囲が開けた道まで後退し、息を整える。

魔道士「どうしましょう…っ!」

召喚士「……」

盗賊「…燃やすしか…ないか」

魔道士「でもこれだけの規模だと…」

召喚士「山を焼く事になってしまいます…。それは避けたい…」

サラマンダー「そうじゃのぉ…」

盗賊「……」

魔道士「じゃあどうすれば…」

召喚士「…思い切って、逃げちゃいましょうか」

盗賊「…!?」


567 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/06/08(火) 18:01:40.44 ID:FS08rEQo
魔道士「に…逃げるって……」

召喚士「山の入り口まで戻っちゃいましょう」

サラマンダー「…そんで、どーすんの?」

召喚士「西国の軍隊が戻るまで、そこで食い止めます」

盗賊「……」

召喚士「山中は地の利がない…。魔物の思う壺です」

魔道士「な、なるほど…」

召喚士「日が昇れば魔物の侵攻も遅くなるでしょう…」

盗賊「…それで軍隊が…戻ってくれば」

召喚士「後は彼らに強力して貰い迎撃も良し、結界を張るも良し…です」

サラマンダー「ほーそらええなぁ!そうしよ!」

召喚士「では一旦後退し、態勢を……」

ズズウウゥゥンッ…

盗賊「っ!!」

召喚士「な、何だ…っ!?この揺れ……」



次へ 戻る 戻る 携 上へ