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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その33
- 770 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2011/11/16(水) 17:57:48.21 ID:LzFcgRPzo
――……
ゴアッ!!
山のような魔獣の更にその遥か上空からバハムートの背を離れた西方司令。
西より吹き付ける魔王の息吹きに流され、空中を泳ぐように態勢を立て直すも、
まず試みた超巨剣を盾に、風を防ぐ方法は、逆に抵抗を受け、おされてしまう。
西方司令「んだよこの風ぇ!! 聞いてねぇぞ!!」
ガチッ
西方司令「しゃーねぇ。とっておきだが……使わせて貰おうかねえぇ!!」
武器の根元をごそごそといじくる西方司令。まずは蓋を開け、何か紐のようなものを強く引いた。
ギュバッ!!…ヴヴヴヴヴヴ!!
長さ10メートル以上。幅とて2メートル以上はあろうかという超巨剣が震えだす。
刃は2枚構成となっており、それが前後、交互に振動しているのだ。
ヴヴヴヴヴヴヴヴ
西方司令「俺様のコイツはなぁ、天を突き抜ける最っ強の兵器なんだよおおぉぉ!!」
その超巨剣は、ドリルのように風を切り裂き、魔獣めがけて一気に降下を開始した。
- 771 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 17:58:20.65 ID:LzFcgRPzo
ズッゴオオオオォォォォ!!
天才「朱雀ぅ!!」
召喚士「はいっ!!」
天才の声に反応し、召喚士は回収した中からコカトリスだけを残し、召喚を解除。
更にコカトリスへ、あその全ての魔力を集中させ送り込んだ。
天才「やれるぞ。お前次第だ」
召喚士「……自信はあります」
天才「言うようになったじゃねぇか。テメーを信じる。行ってこい!」
召喚士「……はい!」
天才に背中を押され、召喚士はコカトリスへと飛び乗り、西の砦を後に、飛び立った。
信じる。それは天才が召喚士の力量を信じ、彼に全てを託した事。
そして召喚士は天才を信じ、彼1人を残してこの砦を去った事。
2人の会話は僅かであったものの、その想いは十分に伝わったのだ。
召喚士「コカトリス! 西方司令さんの攻撃に間に合わせるんだ」
コカトリス「承知した」
- 772 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 17:58:47.72 ID:LzFcgRPzo
バッシュウウゥゥゥゥ!!
戦士「な、んだよありゃあ……すげぇ……っ!」
西方副司令「西方司令……なのっ!?」
西方参謀「魔道隊っ!! 付加は全て西方司令に集中!!」
魔道兵「はいっ!!」
格闘家「こっちも、もう少し離れたほうがようさそうですね」
盗賊「そうだな。ぎりぎりの所で牽制に務めよう」
女隊員「朱雀先生も来たッス!」
バシュウウゥゥゥゥ
コカトリス「狙うは?」
召喚士「当然、石化だ!」
コカトリス「奴の口部を石化しつつ、あの一撃が直撃すれば……」
召喚士「発射口は潰せるっ!」
コカトリス「お前次第だぞ」
召喚士「分かってる。その為に、ここに来たんだからっ!」
- 773 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 17:59:15.57 ID:LzFcgRPzo
バシュウウゥゥゥゥ
コカトリスは魔獣の正面より真っ直ぐに突っ込んで行く。当然、背後からの突風避けの為である。
既に3度ほど攻撃を仕掛けた彼らにとっては、そこまではさほど難しい事ではない。
問題は石化。その3度とは違い、今度は口内めがけ息を吹き付けねばならない。
当然ながら間合いは足の比にもならぬ程近くなり、敵の正面という事も相まって危険度は増す。
慎重に慎重に、敵を動きを予測しながら、召喚士は巧みにコカトリスへ指示を与える。
召喚士(あまりモタモタはしていられない……っ)
ちらりと上空を見上げると、西方司令の加速はかなり早く、残り30秒もないと思われた。
コカトリス「どうする?」
召喚士「待って。もう少し…………今だぁ!」
コカトリスは魔獣の正面で静止し、嘴を大きく開くと、一気に息を吸い込み始めた。
だが、魔獣も再三の石化に嫌悪を抱いてか、嫌がるように首をあげた。
召喚士「ちぃ……っ!!」
コカトリス「どうする、このまま撃つのか?」
今撃てば、口内には直撃しない。しかし撃たねばならない。時間はもうほとんどなかった。
- 774 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 17:59:42.93 ID:LzFcgRPzo
召喚士「……!?」
その時、召喚士の目に上空から接近する召喚獣の影が飛び込んできた。
召喚士「コカトリスっ、撃てぇーっ!!」
コカトリス「いいのだな? はあぁーっ!!」
発射されたコカトリスの石化。魔獣の顎付近に狙いを定めたそれはヤケクソのようにも思えた。
しかし違った。召喚士の目に飛び込んで来た召喚獣は、いつもそうだった。
召喚士の前に現れた時、彼らは常にその窮地を救ってくれた。信頼した仲間であり親友であった。
青年兵「ワイバーン!!」
ワイバーン「首の向きを帰る程度の事ならば、私の力でも可能だっ!」
バハムートでは突風に対し抵抗がありすぎる。その為、青年兵は
いち早くワイバーンへ乗り換えていたのだった。
青年兵「いっけぇーっ!!」
ワイバーンの口より大量に放たれた熱風が、魔獣を襲う。
ゴッゴオオォォォォ!!
魔獣「――――ッ!!」
- 775 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:00:08.93 ID:LzFcgRPzo
虚を突かれた魔獣は、熱風をもろに受け、思わず首をすくめ、下げてしまった。
それを召喚士とコカトリスは見逃さない。吐き出された石化の息は、
魔獣の口内へとピンポイントにその軌道を修正し、最良の攻撃を与えるに至った。
ゴッゴオオォォォォ…ベキベキッ…ミシッ!!
魔獣の大きく開いた獰猛な口部の中へ、吐き出される灰色の冷たい風。
内部は一気に石と化し、それは徐々に徐々に外側へと広がりをみせていた。
召喚士「よしっ!」
そしていよいよ、最後の一撃とも言える上空からの使者が目標地点へと到達する。
西方司令「引き立てご苦労さんなこったなああぁぁ!!」
突き刺すように落下する人間兵器とその手に携えた、兵器とも呼べる超巨大な剣。
ドン、という音と共に、意思を削るドリルのように、それは魔獣の口を削り始めた。
ゴガガガガガガガッ!!
魔獣「――――ッ!!」
雄叫びをあげたくともあげる事の出来ない魔獣は、苦痛に巨体をゆさゆさと揺す振る。
そして数秒後、魔獣の口部は爆発したかのように粉砕され、一気に破裂した。
- 776 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:02:33.33 ID:LzFcgRPzo
ゴワッシャアアアアァァァァ!!
魔獣「ヴアアアアァァァァーッ!!」
戦士「いよっしゃああぁぁ!!」
女隊員「やったッス、やったッスよぉ!」
頭部を地面へ垂れ下げ、苦悶の唸りをあげる魔獣。攻撃は成功に見えた。
魔道士「やったぁーっ!!」
神官「……しかし、まだ動けるようですね」
ゴゴゴゴゴゴ…
西方司令「どーだぁ!! この俺様の凄まじく素晴らしい最高の一撃! 略してS! S! S!」
男隊員「待て待て待て、これで終わりってこたねーだろ」
ドッゴオオォォォォ!!
盗賊「!?」
青年兵「まだ動くかっ!」
西方副司令「発射口は潰したのよっ、今はこれで十分――」
西方参謀「……待てよぉ、様子がどうもおかしいぜ?」
- 777 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:03:06.10 ID:LzFcgRPzo
頭部を持ち上げた魔獣は、ボロボロの口部から大量の血を流し、悶える。
しかしその目は赤く輝き、いかにも怒りに満ちているといった様子であった。
魔獣「……ヴウウウウゥゥゥゥ」
コカトリス「まずいな」
召喚士「……?」
コカトリス「見よ。潰したのはあくまで外殻のみだ。中にまでは到達しておらん」
召喚士「――っ!!」
石化した皮膚がポロポロと剥がれ落ち、その奥からは赤い輝きが燃え滾っていた。
召喚士「しまったぁ!!」
魔獣「ヴオオオオォォォォ!!」
西方参謀「マズった! 閃光が来るぞぉ!」
それは紛れもなく、一同を恐怖へと陥れた絶望の光そのものであった。
格闘家「何故……っ、直撃のはずだ……」
男隊員「攻撃はな。石化が弱かったんだ。だから核なる部分までは攻撃が及ばなかった」
西方副司令「そ、そんな……っ」
- 778 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:03:34.81 ID:LzFcgRPzo
ゴゴゴゴゴゴ…
魔獣「ヴオオォォォォーッ!!」
キュイイィィィィ…
盗賊「まずいぞっ!!」
戦士「くっそ……ぉ!」
傭兵「どっ、どうすんだよぉ!!」
王子「……っ」
バシュウウゥゥゥゥ
コカトリス「召喚士」
召喚士「俺の力不足が招いた結果だ。何とかする」
コカトリス「これはもう、やるしかあるまい」
召喚士「……」
コカトリス「幸い、お前の魔力もまだ余力はある。最悪でも3日寝込む程度で済むさ」
召喚士「気軽に……っ。でも仕方ないね。師匠、使わせて頂きます!」
コカトリスによる3つ目の能力が今、発動した。
- 779 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:04:03.06 ID:LzFcgRPzo
バシュウウゥゥゥゥ
コカトリス「時間がない。飛び降りろ」
召喚士「……この高さで……っ」
コカトリス「早くしろ。お前も石像と化すぞ」
召喚士「……っ」
バッ!!…バシュウウゥゥゥゥ
盗賊「!?」
戦士「おいおいっ! 何やってんだよぉ!」
ザザザザッ…ガシィ!!
召喚士「……あ、ありがと……っ」
戦士「間に合ったからいいものの、何してんだよっ!」
召喚士「ごめん。時間なくて……」
盗賊「どういう事だ?」
召喚士「今から見せるコカトリスの技は、触れるものを石と化します」
戦士「!?」
- 780 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:04:32.26 ID:LzFcgRPzo
バシュウウゥゥゥゥ
コカトリス「さぁ、我が力の真髄……とくと味わうが良い!」
速度を緩める事なく魔獣へと真っ直ぐ突っ込んで行くコカトリス。
西方司令「んだぁー!? 特攻かぁ?」
召喚士「西方司令さん、攻撃の準備を! 次で決めましょう!」
西方司令「てめぇ、今度は絶対なんだろーなぁ?」
召喚士「……絶対です」
西方司令「良かろう。俺様がもう1度だけ、力を見せてやろうじゃねえかああぁぁ!!」
ジャキッ…ズンッ!!
魔獣「ヴオオオオォォォォ!!」
コカトリス「はああぁぁーっ!!」
いつもと変わらず冷たい石化の吐息を放つコカトリス。しかしその息はいつもとは打って変わり、
コカトリスを包み込むように、その周囲へと漂い、更にはその身へ吸収されてゆく。
吐いた息を再び吸い込むように大きく呼吸をすると、コカトリスの嘴は閉ざされる。
そしてそのまま、魔獣の口部へと突撃を敢行、文字通りの特攻であった。
- 781 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:05:48.43 ID:LzFcgRPzo
サモナー「特攻!?」
神官「召喚獣のみか!? 召喚士殿は一体何を……っ」
ゴッシュウウゥゥゥゥ!!
戦士「バカっ、避けねーとヤバイぞ!!」
召喚士「……いや、これでいいんだ」
コカトリスが魔獣の口内に突き刺さるように衝突する。通常はこれで消滅しそうなものだが、
魔獣の口内は何と、コカトリスを起点に石化を始めたのだ。
魔獣「――――ッ!?」
コカトリス「まだまだっ、このまま突き破ってくれるわ」
外側からの石化ではなく、完全に内部からの石化。到底、防げるものではない。
体内を寝食する病原体のように、石化は網羅し、魔獣の口内を完全に塞ぎ始める。
魔獣「ヴ……フウウゥゥゥ……ッ」
石の隙間から炎と煙、そして光が若干漏れていた。その刹那、魔獣がビクリと衝撃を受ける。
コカトリスは口内を石化した後、魔獣の喉元を貫通すながら外部へと脱出した。
召喚士「西方司令さんっ、今です!!」
- 782 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:06:16.51 ID:LzFcgRPzo
西方司令「待ちくたびれたぜコルアアァァーっ!!」
包含投げのように超巨剣を両手で構えながら振り回す西方司令。
今度は上空ではなく地上。力も十分、武器自体へと行き渡る。
遠心力を利用したスイングは巨大な剣から轟音を発生させ、竜巻のように足元の砂を巻き上げる。
西方司令「くううぅぅぅぅらああぁぁええええぇぇぇーっ!!」
先だっての打ち降ろしと正反対の打ち上げ。遠心力と西方司令の力が全て凝縮され、
石化に苦しむ魔獣の顎部から口部にかけてを凄まじい威力で打ち抜いた。
如何とも表現し難い衝撃音。強いて言うなれば地割れに近い轟音であった。
その一撃を浴びた魔獣は、完全に顔を上へ仰け反らせ、粉々に砕け散った岩石の奥から、
空を打ち抜くようなとてつもない閃光を暴発させた。
ズッガオオオオォォォォ!!
召喚士「――っ!!」
戦士「……くっ!」
大地を揺るがし耳から頭の奥にまで響くような衝撃と音。そして閃光の眩い光ががしばし続いた。
その全てが終わった刻、魔獣はぐったりと地面へ倒れこみ、一先ずの危機は取り除かれた。
- 783 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:06:46.54 ID:LzFcgRPzo
ズッズウウウウゥゥゥゥン
魔道士「こ、今度こそ……やった……っ!?」
神官「死んではいないようですが、閃光は何とか免れましたね……」
サモナー「……雲が消し飛んで、穴が空いている。凄い威力だな……っ」
ズザァ
西方司令「……どうだ見たかコラァ!! これが俺様の力だぁ!!」
タッタッタ…
西方副司令「さっすが司令っ。信じてましたよ!」
西方参謀「喜ぶのはいいが、まだ完全に倒したわけじゃねぇんだ。退こうぜ……ヒック」
男隊員「西方参謀の言う通りだ。危機は回避したが、終わったわけじゃねぇんだ」
格闘家「メインはあくまで、明日、結構される魔方陣五行での討伐ですからね」
戦士「立てっか?」
召喚士「あ、うん。ありがとう」
盗賊「……本陣へ引き換えすとしようか」
召喚士「そうですね」
- 784 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:07:18.00 ID:LzFcgRPzo
バシュウウゥゥゥゥ
召喚士「コカトリス、うまくいったね」
コカトリス「だから申したであろう? 今のお前なら大丈夫だと」
召喚士「ははっ、ありがとう」
ザッザッザ
青年兵「召喚士さん、あれは新技ですか?」
召喚士「うーん、新技というかまぁ……そうだね」
青年兵「お見事でした。流石です」
召喚士「青年兵くんのお陰さ。こっちこそありがとう」
青年兵「何となく狙いは予想出来ましたから」
召喚士「いつぞやの特訓が活きたかもねっ。あははっ」
西方副司令「それでは全軍、一旦後退します!」
西方司令「おらおら、俺様の凱旋だぞ!! どけ!! 祝え!! そして死ね!!」
西方参謀「流石にこれクラスの得物だと、強気超えてぶっ壊れてやがんな……ヒック」
魔獣の閃光、及び足止めに成功した一同は安堵を見せ、本陣へと帰還した。
- 785 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:07:50.53 ID:LzFcgRPzo
…
王子「お疲れ様! しっかし、さっきは凄かったね!」
西方司令「だろぉ!? ぬはははっ!! さすが俺様!!」
王子「あんたじゃねーよ。まぁ、凄かったけどさ」
神官「コカトリス、更に強くなりましたね」
召喚士「ありがとうございます。もういっぱいいっぱいですけどね」
サモナー「名実共に朱雀先生だよ。見事としか言いようがない」
召喚士「これで終わったわけじゃありませんから。それに、魔王だってまだいるわけですし」
西方参謀「そうそう。朱雀先生の言う通りだぜぇ〜? ヒック」
西方副司令「……総司令は?」
神官「まだ砦から戻られてないようですが……」
西方魔道長「もうじき夕食だってのに、何をやってんだろうねぇ」
西方副司令「どうでもいいけど司令、そのでっかいのどこかに置いといて下さいよ。邪魔です」
西方司令「あぁ? これはな、俺様の相棒とも言うべき……いやっ、命そのもの――」
西方副司令「えいっ」
- 786 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:08:37.97 ID:LzFcgRPzo
バシッ…ドズンッ!!
西方司令「うひゃああぁぁ!! こんな無防備な本陣ではいつ襲われるか分からないいぃぃ!!」
隊長「持っていても持っていなくても騒がしいな全く……」
西方参謀「仕方ねぇ。誰か、包丁持ってるか?」
西国兵「あ、はいっ!」
スッ…パシッ
西方参謀「ほれ、これでも持ってろい……ヒック」
西方司令「……」
女隊員「ど、どうなるんスか?」
西方司令「ふぅむ、もうじき夕食か。どれ、西方の厳選された材料で皆の舌を楽しませてみせよう」
魔道士「お料理ですかっ!? 私もお手伝いします! えへへっ」
西方司令「ほぅ、今回の助手は君か。成程……素質はありそうだな。では参ろうかフフン」
スタスタスタ
戦士「……便利な奴」
盗賊「あ、あぁ……っ」
- 787 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:09:17.46 ID:LzFcgRPzo
〜西の砦〜
天才「…………」
城壁の上で緊急事態に備え、魔獣を待ち構えていた天才は、数時間前と変わらず、
腕を組んだまま、静かに魔獣の動向を見つめていた。
魔獣は口部を破壊され静止していたが、一同の離脱から30分程度の後、
ゆっくりと起き上がり、また変わらず前進を進めていた。
それは、本陣の皆も当然ながら把握しており、逐一、偵察の為の部隊を交代で派遣していた。
それでも天才がここにいる理由はただ1つ。本当に閃光は防いだのかどうかだ。
魔王討伐にも関わらず、余りにも被害の少ない予言に、天才はひたすら危惧していた。
今までの戦いと大きく違うところ。それは敵の少なさである。
敵が少なければ少ない程、それは当然、こちらにとって有利には違いない。
しかし魔物にとって守るべきは自分達だけで良いのだ。他は一切、関係ない。
特にこの魔王イブリースにおいては、それが顕著な程である。故に、他所への被害など無関係。
イブリースが守るべきものは、自分のみ。だからこそ天才は気に掛かっていた。
そして魔王の戦いよりも前に現れたこの未知なる敵。彼にとって過剰になり過ぎる程警戒していた。
- 788 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:09:47.13 ID:LzFcgRPzo
魔獣「ヴオオオオォォォォ!!」
天才「……」
魔獣の咆哮が響き渡る中、天才は魔獣の動きにふと、違和感を覚えた。
天才「……?」
ヒュッ…スタッ
天才「おいおい……嘘だろ!?」
タッタッタ…ザッ
天才(若干だが間違いねぇ! 方角をかえてやがる!)
魔獣は真っ直ぐ砦ではなく、その歩みをやや北側へと変えていた。
天才「俺様とした事が……畜生がっ!」
巨体のあまり、ほんの些細な変化であった進行方向の修正に、気付かなかった。
誰のせいでもないしにろ、気付けなかった自身への怒りを噛み締めながら、天才は砂を蹴った。
ザザザザッ…ズザッ
天才「こっち来いやおらぁ!!」
キュイイィィィィ…ドッドオオォォォォン!!
- 789 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:10:15.49 ID:LzFcgRPzo
天才の放つ炎の魔法が遠方の魔獣へと着弾するも、その動きに変化はない。
魔獣「ヴオオオオォォォォ」
天才「ちぃっ、残り半日もねぇんだぞ!」
大慌てでツヴァイハンダーを肩に担ぎ、天才は本陣めがけて砂漠を疾走した。
ほぼ同時刻、本陣内でもその報告が行き渡り、事態は急変していた。
隊長「何ぃ!? 魔物が進路を変えたぁ!?」
格闘家「間違いありません。こちらに向かってくるように思えます」
戦士「ど、どうすんだよ……っ」
盗賊「しかしまた……何故……っ」
神官「魔物の怒りをかってしまったのですかね」
男隊員「どうすんだよ。魔方陣は砦の前なんだぞ?」
テクテクテク…ザッ
召喚士「あ……っ」
西方司令「……? どうかしたかな? ほら、夕食が出来上がったぞ。まずは西方の――」
バキィッ!!…ドサッ…カラカラン
- 790 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:10:45.57 ID:LzFcgRPzo
西方司令「痛いいぃぃ!! し、死ぬううぅぅぅぅ!!」
天才「はぁ、はぁ……どけっこのアホ」
魔道士「て、天才さん!?」
天才「デカブツが進路を変えた。全員、出撃だ」
隊長「たった今、こちらも偵察隊から情報が入ったところさ」
神官「それで、如何なさるのです?」
天才「第1優先にデカブツの進路を戻す。第2優先は2時間の足止め」
青年兵「2時間ですか?」
天才「こっちに魔方陣敷くには、最低でもあとすんくらいは必要だ」
男隊員「了解。んじゃ早速、出撃すっかね……ヒャハハ!」
女隊員「でもぉ、どうすればいいんスかぁ?」
天才「何でもいい。とにかく何とかしろ。あと死ぬな。以上!」
ザッ
天才「ババア! テメーは俺様とデートだ。冥土の土産が出来て良かったな!」
西方魔道長「全く、こっちにだって相手を選ぶ権利ってもんがあるよ」
- 791 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:11:24.29 ID:LzFcgRPzo
スタスタスタ
戦士「2時間……もしくは、進路を変えろ、か」
盗賊「……出来そうか?」
召喚士「足止めなら何とかなるかもしれませんね」
青年兵「では、行きましょうか。まずは全軍、南へ向かいます」
傭兵「南?」
西方参謀「砦側だろ。俺達を追い掛け回してんなら、奴は進路をかえるはずだ」
女隊員「そうッスよ! 万事解決じゃないッスか!」
西方参謀「そう言ってて、うまくいかねぇのが人生ってもんなんだよ……ヒック」
女隊員「縁起でもない事、言うもんじゃないッスよ……」
西方副司令「そうよ……もうっ」
召喚士「ここからの指揮権は青年兵くん、君に任せるよ」
青年兵「ええ、召喚士さんも独自に動いて貰って構いませんからね」
召喚士「ありがとう。何としてもあの魔物を……倒そう!」
青年兵「ええ。魔王戦以前にこれ以上、無駄な力を浪費していられませんからね!」
- 792 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:11:57.20 ID:LzFcgRPzo
…
ザザザッ…ドドッドドッドドッ…
西国兵「全体ーっ、止まれぇ!!」
親衛隊「王子、我ら西国軍は砦にて魔物を待ち構えます」
王子「前線へ参加出来ないのは不満だが、ここは我らが家も同じ」
傭兵「そうそう。ここを失うのは悲しいモンがあんぜ」
ザッ
魔道兵「魔道隊、砦前にて配置完了です」
西方副司令「ご苦労様。これで後方支援は整ったわね」
西方参謀「こっち向いてくれるとは限らねぇって言ってるだろ……ヒック」
タッタッタッタッタ…ザザァ
戦士「閃光はなくなったっつっても、流石にこのデカさは慣れねーよな」
盗賊「……うん」
女隊員「でも今回は、頼もしい主軸がいるじゃないッスかぁ!」
男隊員「頼もしい……ねぇ」
- 793 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/16(水) 18:12:30.53 ID:LzFcgRPzo
ドズン…ドズン…ドズンッ
西方司令「さっさときやがれ! こちとら不機嫌なんだ! 八つ当たりさせろやコルァ!!」
格闘家「何故、不機嫌なのですか?」
西方司令「あぁ!? くそまじい夕飯食わされたからだろうがこのカスがぁ!!」
召喚士「……自分で作ったのに」
戦士「しかも美味かった。めっちゃ」
盗賊「……うん」
西方司令「ああぁぁウッゼぇ!! テメーの尻尾食ってやっからなぁ!!」
ザッザッザ
青年兵「召喚士さん、余力はまだありますか?」
召喚士「うん。と言いたいところだけど、正直そんなでもないかな……」
青年兵「そうですよね。実は僕もです……」
召喚士「今回は攻撃はみんなに任せて、進路を変える事に集中してみるよ」
青年兵「お願いします。僕も指揮と援護に重点をおきますので」
魔獣との戦いもいよいよ最終決戦となる。彼らに出来る残された方法は総力戦のみである。
- 809 名前:NIPPERがお送りします(新鯖です) [sage] 投稿日:2011/11/17(木) 15:40:44.41 ID:sx0CVv1no
石化くちばしは邪神ですら一撃で葬り去る恐ろしい技
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