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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その15
837 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 16:57:46.40 ID:T0duwVMo
〜本国〜

北の港からの船が入港する頃、すっかり日も昇り、時刻はまもなく10時を迎える。

船より降りる戦士は、強い日差しに目を細め大きく腕を伸ばした。

戦士「さぁて…着いた。お疲れ」

ウィッチ「はいでございます…」

戦士「んで、家は……?」

ウィッチ「ご案内致しますでございます」

戦士「よろしくー…と、その前に……」

〜ワークショップ〜

戦士「…海峡だぁ!?」

店員「はい、そのようにご伝言を……」

戦士「くっそぉ…入れ違いかよ…」

ウィッチ「……?」

戦士「仕方ねぇ…。中央のホテルに宿を取ると伝えておいてくれ」

店員「はい。ご伝言を承ります」


838 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 16:59:25.23 ID:T0duwVMo
テクテクテク…

戦士「こっちの用は終わっちまった。お前さんの家に行こうか」

ウィッチ「はいでございます」

ウィッチの案内に従い、戦士は王宮裏手に拓けた住宅街へと足を進める。

戦士「そういや前に来たなぁ……」

ウィッチ「…?」

戦士「あー、こっちの話だ。しっかし…デカイ家ばっかり……」

ウィッチ「…着きました…でございます」

戦士「………でかっ」

長く続く塀を見渡し、戦士はぽつりとつぶやく。

ウィッチ「そんな事ございません……」

戦士「いやいや……充分すぎる程でかいって…」

ウィッチ「…どうぞでございます」

戦士「ういーっす」

広い中庭を抜け、二人は玄関の扉をくぐった。


839 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:00:38.15 ID:T0duwVMo
カチャッ…テクテクテク…

執事「…おや?…ウィッチ様ではございませんか」

ウィッチ「執事さん…ただいまでございます…」

執事「生憎、旦那様は留守でございますが…」

ウィッチ「そうでございますか…。お母様は?」

執事「奥様でしたら居間に…。おや、そちらの方は?」

執事はウイィッチの背後に立つ戦士をちらりと覗き込む。

ウィッチ「……命の恩人でございますわ」

戦士「戦士と言います。命の恩人て……」

ウィッチ「本当の事でございます」

執事「命の…恩人でございますか。それはそれは…」

ウィッチ「戦士様、こちらでございますわ」

戦士「あ、ああ…。失礼しまっす」

慌てて一礼し、通路を進むウィッチの後を戦士が追う。

執事「……」


840 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:01:38.96 ID:T0duwVMo
〜居間〜

コンコン…カチャッ

ウィッチ「……失礼致しますでございます」

母「…ほほほっ!それで……あら?」

姉「ウィッチさん、どうなされたの?」

ウィッチ「あ、あの…ただいま戻りましてございます」

母「あら、そう」

姉「冒険とやらはどうしたのかしら?」

ウィッチは今までの出来事を簡略に二人へと話し聞かせる。

母「ふぅん。それで逃げ帰ってきたわけですわね」

姉「身の丈に会わない事をするからよ。大人しくしてなさいな」

ウィッチ「……」

母「食事になったら呼びますから、部屋にいなさいな」

ウィッチ「はい…でございます」

母「あ、それからそちらの殿方」


841 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:02:55.19 ID:T0duwVMo
戦士「…?」

母「ご苦労でした。帰りに執事から報酬を受け取ると良いわ」

戦士「……行こうぜ」

ウィッチ「…は、はいでございます」

テクテクテク…

姉「まぁ、ワーカーなる者は礼儀もなっていないのですわね…」

…ピタッ

戦士「……」

母「これ、偏見はいかませんわ。ほほほっ」

戦士「……」

ウィッチ「戦士様、行きましょうでございます!」

姉「戦士…様、ですって。まさかその殿方を好いてらっしゃるのかしら?」

母「まぁ…お似合いかもしれませんわねっ」

戦士「……」

……テクテクテク…パタンッ


842 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:03:38.57 ID:T0duwVMo
〜ウィッチの部屋〜

ウィッチ「……はい、どうぞでございます」

カップに紅茶を注ぎ、ウィッチはそれを戦士へと差し出す。

戦士「……何なんだありゃ」

ウィッチ「…いつもの事でございますわ」

戦士「あれが親か!?血の繋がった姉なのか!?」

ウィッチ「…酔いのでございます。期待に応える事が出来ない自分が…」

戦士「そうじゃねぇだろ!期待とかそんなん関係あんのか!?」

ウィッチ「……」

戦士「なんなんだよ…っ!自分の娘や妹に…!!」

ウィッチ「……そういう家なのでございます」

戦士「…お前はいいのか?」

ウィッチ「自分の…せいでございますから……」

戦士「……くそっ!」

ウィッチ「……」


843 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:04:41.02 ID:T0duwVMo
コンコン…カチャッ

執事「旦那様が戻られました。お部屋にと…」

ウィッチ「はい…でございます」

執事「あとこちら……」

執事は大きな荷袋を差し出し、戦士へ手渡す。

戦士「いらねぇよ…こんなもの…」

執事「いえいえ、そう仰られましても…」

戦士「いらねぇっつってんだよ!」

執事「……これは、失礼を」

ウィッチ「…戦士様も一緒に」

戦士「おう」

スタスタスタ…

ウィッチ「ありがとうございます」

戦士「……けっ!」

執事「……」


844 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:06:04.96 ID:T0duwVMo
〜ウィッチ父の部屋〜

コンコンッ…カチャッ

ウィッチ「失礼致しますでございます」

父「……」

戦士「……」

父「全く。本当に情けない奴だ」

ウィッチ「……ごめんなさいでございます」

父「謝れば済むとでも思っているのか?」

ウィッチ「……」

父「我が家名にどれだけ泥を塗れば気が済むのだ」

ウィッチ「ごめんなさい…でございます」

父「貴様のせいで本国内での評価も下がる一方だ…」

戦士「……」

父「もういい。二度とこの家から出るな。いいな?」

ウィッチ「……っ」


845 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:06:42.13 ID:T0duwVMo
父「もしくは…そんなに旅をしたいのなら絶縁しろ」

戦士「ちょっといいかい…?」

父「何だ貴様は?余計な口出しするな。親子の問題だ」

戦士「それがホントに親子かよっ!」

父「は?」

戦士「実の娘なんだろ!?何なんだよその態度は!」

父「娘だろうが、我が一族の名を汚す者は許されん」

ウィッチ「もう…いいんでございます」

戦士「よくねぇよ!!何が一族の名だ!」

父「だいたいこっちは好きなだけ金も使わせてやっているんだ」

ウィッチ「……」

父「小切手で何を無駄遣いしとるのかは知らんがな…」

戦士「だから…そういう問題じゃねぇだろうがっ!」

父「じゃあどういう問題だというのだ?」

戦士「て…んめぇ…っ!!」


846 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:07:33.99 ID:T0duwVMo
ガッ……バキィッ!!…ドサッ

父「ぐくっ…!!」

戦士「……はっ…はっ…」

ウィッチ「――っ!!」

父「貴っ様ぁ…高官を殴り飛ばして…タダで済むと思うなよ?」

床へ倒れこんだウィッチの父は、唇から垂れる地を拭い、ゆっくりと起き上がる。

父「誰かっ!おらぬか!!」

ウィッチ「は…っ!!」

戦士「…ちっ!好きにしろ…!」

ウィッチ「………」

父「そうだな…。死刑、貴様は死刑にしてやる!わはははっ!」

ウィッチ「……っ」

ドンッ…

父「…!?」

高らかに笑う父を突き飛ばし、ウィッチは戦士の手を引く。


847 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:08:36.67 ID:T0duwVMo
ウィッチ「…行きましょうでございます!」

戦士「お、おい…っ!?」

父「待てっ!逃げる気か!?…貴様も同罪だぞ!?」

戦士「おいっ、待て!お前まで……っ」

ウィッチ「…絶縁してやるでございます!」

父「何だとぉ!?」

戦士「お、おいっ!待てって!!」

強引に腕を引き、部屋を出るウィッチに戸惑う戦士。

タッタッタッタッタ…

執事「旦那様っ!?」

父「そやつらを捕らえろ!暴漢だ!!」

執事「……」

ウィッチ「早くっ!行きますでございます!!」

戦士「……くっそぉ!!」

戦士はウィッチを抱き上げ、反転して通路を走り去る。


848 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:09:10.00 ID:T0duwVMo
ウィッチ「きゃっ!!」

タッタッタッタッタ…

執事「逃がすなっ!追えーっ!!」

戦士「…くっそー、暴漢に挙句…人攫いかよぉ!」

タッタッタッタッタ…ガチャッ

戦士「……」

ウィッチ「……」

戦士「このバルコニーを飛び降りたら…二度とは戻れないぞ?」

ウィッチ「……構いませんでございます!」

戦士「…いい覚悟だ!」

タンッ!!

執事「くそぉ!飛び降りたぞ!外へ回り込めっ!!」

衛兵「ははっ!!」

父「馬鹿者めがっ!!」

ウィッチを抱きかかえ、バルコニーより飛び降りる戦士を、一同が追う。


849 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:09:43.71 ID:T0duwVMo
〜玄関前〜

タッタッタ…

戦士「はぁ…はぁっ……」

衛兵「いたぞーっ!挟めっ!!」

戦士「しつけぇ…!!」

戦士は身体の向きを変え、背後の細い路地へと走る。

タッタッタッタッタ…

戦士「どいてくれーっ!」

――「……!?」

タッタッタッタッタ…

戦士「悪いなっ!」

――「追われているのですか!?」

戦士「……!?そ、その声…!!」

――「……こっちへ」

戦士「……すまんっ!」


850 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:10:32.48 ID:T0duwVMo
日陰の路地に立つ男の誘導に従い、戦士は身を隠す。

タッタッタッタッタ…

衛兵「……」

――「…何…か?」

衛兵「……違うな。こんなに若くなかった」

タッタッタッタッタ…

――「……もう、大丈夫みたいですよ。戦士さん」

戦士とウィッチは物影より起き上がり、男の前に立つ。

男が日陰から少し前へ足を進めると、若干の日光が顔に当たり、

見覚えのある笑顔がゆっくりと浮かび上がる。

戦士「……助かったぜ!青年兵っ!!」

青年兵「こんな所で…一体どうしたんです…!?」

戦士「あー…まぁ、ちょっとな……」

青年兵「ここでは何ですし、こちらより郊外へ抜けられます」

戦士「すまんっ!助かる!!」


851 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 17:15:45.49 ID:5HnfrU60
ときどきある誤字でついクスッと笑ってしまう
酔いのですとか


852 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 17:58:43.02 ID:X0EJvk.o
戦士の無意識のフラグ強化っぷりは異常


856 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:36:22.04 ID:T0duwVMo
〜海峡〜

盗賊「…到着」

サモナー「ここが…海峡…」

召喚士「サモナーさん、こちらです」

海峡の脇に架かる大きな橋、その手前にひっそり佇む墓石。

召喚士「……ここです」

サモナー「…………」

墓石の前に四人は並び立ち、静かに目を閉じる。

魔道士「……」

サモナー「……」

盗賊「………」

召喚士「……」

スッ…

サモナー「……待たせちゃったね。ごめん」

呼びかけるように、サモナーがぽつりと呟いた。


857 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:36:59.86 ID:T0duwVMo


召喚士「…失礼します」

門兵「!?……朱雀先生だ!」

海峡兵「伝令より伺っております!さぁさぁこちらへ!」

召喚士「は、はい…っ」

テクテクテク…

〜会議室〜

海峡兵「朱雀先生ご一行、ご到着です!!」

将軍「…おぉ、待っておったぞ!此度も頼む!」

召喚士「先日はどうも…」

挨拶をする将軍の奥より、四人の男女が姿を見せる。

――「若いな。コイツが朱雀先生?」

召喚士「始めまして。召喚士と申します」

隊長「特殊遊撃強襲隊、隊長だ」

魔道士「特殊遊撃…っ!?」


858 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:37:39.87 ID:T0duwVMo
副隊長「私…副隊長です。宜しくお願いします…ははっ」

男隊員「男隊員だ!よろしく!ギャハハ!!」

女隊員「女隊員ス。よろしくッス」

将軍「此度は彼ら特殊遊撃がメインを務める…」

召喚士「俺らは同行し、フォローをすればいいんですね?」

隊長「おうっ、頼むぞ!」

魔道士「はいっ!頑張ります!」

盗賊「……」

将軍「予定では…この後12時よりここを出発するが…」

召喚士「問題ありません」

サモナー「具体的な任務名内容は?」

副隊長「ワーカーの死因から、敵に一刀の下に斬り伏せられていました…」

盗賊「…!?」

将軍「成果3位である黒の三騎士…その者らを一撃で葬る程の魔物だ…」

サモナー「かなり強いと思われますね」


859 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:38:09.87 ID:T0duwVMo
隊長「まぁ、出現した場合は俺らが片付ける。援護しろ」

召喚士「…分かりました」

女隊員「頼もしいッス!頼むッス!!」

将軍「本部からの調査内容は、その魔物が未だ海峡周辺にいるのかどうかだ」

隊長「わーってるよ。もし出たら殺す。そんだけの話だ」

副隊長「むやみな戦闘は…避けたいものです…」

将軍「あわよくば結界の強化を…との事だ」

男隊員「アッチもコッチも結界やら封印やら…大変ね。ギャハハ!」

女隊員「笑い事じゃねーッス」

召喚士「それでは、宜しくお願い致します」

隊長「あいよ。そっちもな」

将軍「まだ時間はある。準備し…しばしくつろいでくれ」

盗賊「…ああ」

サモナー「……じゃあ、準備しましょうか」

召喚士「…ええ」


860 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:39:17.98 ID:T0duwVMo
〜本国〜

青年兵「……この辺りまで来れば大丈夫でしょう」

戦士「ふー…。助かったぜ!ほんとに…」

青年兵「一体何があったのです?」

ウィッチ「……」

戦士「実はな……」

戦士は重い口調で、今までの経緯を青年兵へ話す。

青年兵「……っ!」

戦士「…つーわけだ」

青年兵「…それは…困りましたね」

戦士「……反省してるよ…ほんと」

ウィッチ「戦士様は悪くありませんでございます!」

青年兵「しかし…相手は本国務めの高官……」

ウィッチ「私から…なんとか……」

青年兵「……難しいかもしれませんね」


861 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:42:10.19 ID:T0duwVMo
戦士「俺の事はまぁいいさ。それより…」

青年兵「…ウィッチさん…でしたか?」

ウィッチ「はいでございます…」

青年兵「家柄が家柄だけに…放っておくわけにはいきませんね…」

戦士「ああ…」

ウィッチ「私の事は…気にせず……」

戦士「ところで、青年兵は何をしてたんだ?」

青年兵「あ、ええ…。実は電化より休息を頂きまして…」

戦士「休息?」

青年兵「はい。北伐も終わり落ち着いたので、たまには故郷にでもと…」

戦士「そうだったのか…。すまんな、何だか巻き込んじまって…」

青年兵「いえ、気にしないで下さい」

ウィッチ「ごめんなさいでございます…」

青年兵「あ、それならば…良かったらご一緒にいかがですか?」

戦士「……へっ!?」



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