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少女『言葉が通じなくても』
367 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 23:16:34.52 ID:jl72xYAO
『また会う時が来たならば、空に雲無く風も無く』

声が聞こえる

『陰る事無く輝いて、この子を照らし導いて』

優しくて安心する…大好きな声

『巡り巡れ星達よ、この子を祝福しておくれ』

柔らかな声で紡ぐ子守歌…

『蒼く輝け星達よ、この子が迷わないように』



私の…お母さん……


368 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 23:21:34.40 ID:jl72xYAO


少女『ん…』モゾ

柔らかい布団にくるまっている時間は最高に贅沢だと思う

あったかくて…

ふわふわで…

また…眠



母『ほーら、そろそろ朝ご飯よ』ユサッ

少女『んっ』


369 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 23:30:32.47 ID:jl72xYAO
少女『もう少し寝たいよ…』モゾ

殻に籠もるみたいにお母さんから逃げる

私は朝が強い方じゃなく、スパッと起きれた試しがない

母『うーん、せっかく昨日食べたいって言ってた夏野菜のスープを朝食にしたのになー』

少女『…』ピクッ

でもいつもお母さんの思惑通り起きちゃう

お母さんと食べる朝食も、最高の贅沢の一つだから


370 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 23:36:59.08 ID:jl72xYAO


少女『ねー、お母さん』

母『なーに?』

少女『今日って何の日か知ってる?』

母『ええ、もちろん』

お母さんは「誕生日でしょ」と笑いながら言う

そう、今日は私の誕生日

私の星がぐるっと回って山の天辺に帰ってきた日だ


372 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 01:54:06.83 ID:nZRYecAO
母『毎晩、お父さんと星を見てたものね』

最近は、晩御飯を食べ終えるとお父さんと一緒に星の位置を見に出るのが日課になっていた

お父さんは仕事で疲れているのに、むしろ自分の誕生日みたいに嬉しそうにしながら付き合ってくれた

母『お父さん、はしゃいでなかった?』

少女『はしゃいでた!』

母『フフ…お父さんたら昔からなのよ』

私が赤ちゃんの時から、お父さんは私の誕生日が近付くと毎晩星を見ていたらしい

思い出話をするお母さんは、お父さんみたいにちょっとはしゃいでるみたいだった


373 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 02:02:06.74 ID:nZRYecAO


友達『ごきげんよう!』

少女『ごきげんよう!』

友達『今日、誕生日だよね?』

少女『わあ! 覚えていてくれたの?』

友達『もちろん!』

級友『私も覚えてたよ!』

少女『ありがとう!』

いたずらっ子『何々? 誰かが誕生日なのか?』

少女『実は、私今日誕生日なんだ』

いたずらっ子『おお! じゃあ学校終わったらお祝いしようぜ!』

先生『とてもいい提案ですが、相談は休憩中にしましょうね』

いたずらっ子『あ、先生…すいませーん』

少女『あはは…』


374 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 02:11:29.81 ID:nZRYecAO


級友『誕生日、おめでとー!』


『おめでとう!』パチパチパチ


少女『ありがとう!』

友達『これ、私達から誕生日祝い』

少女『お菓子だ! これ、もしかして手作り?』

級友『うん!』

男の子『僕らもあらかじめ知ってたらなぁ』

いたずらっ子『こんなのしか用意できなかったけど、誕生日祝い』スッ

少女『寄せ書きだ! …でも何だか見覚えが』


『誰だ! 校旗を盗んだのは!』


いたずらっ子『マズい! 逃げるぞ!』

少女『ちょっ!? しょうがないなぁー!』


375 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 02:15:42.82 ID:nZRYecAO
……

少女『ただいまー』バタン

母『おかえり』

父『おかえり』

少女『あ! お父さん、今日は早いね』

父『ああ。愛娘の誕生日だ、早く帰るのは当然さ』

母『お父さんたら、張り切るのはいいけど食器出すの早すぎですよ』

父『いや、居ても立ってもいられなくてな』

少女『フフ』

父『いや、アハハ』


376 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 02:19:41.01 ID:nZRYecAO
………

母『ちょっと作りすぎちゃったかしら』

父『張り切ってたのは、俺だけじゃなかったみたいだな』

母『…お父さんの分、たぁーっぷりありますからねー』

父『おお…、ささ、早速食べよう』

少女『ご馳走だ!』

母『フフ、じゃーん』パカ

少女『あ!』

父『もちろん、ケーキもあるぞ』


377 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 02:23:58.06 ID:nZRYecAO
父『ロウソクは…いち、に…』プス

母『願い事をしながら火を消すのよ』

少女『うんっ』

父『準備万端だ、さぁ食べよう』

少女『いただきまーす』パン





少女『あれ…?』

これ…何だっけ


378 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 02:29:02.66 ID:nZRYecAO
お母さんの料理はとっても美味しかった

お父さんのお話は面白いし、お母さんのニコニコ笑顔は見てるだけで楽しくなってくる


お友達が作ってくれたお菓子

公園に集合してみんなで食べた

寄せ書きの入った旗は…お母さん達に見つかったら大変だから、私の宝箱に大事にしまっておこう


本当に最高の誕生日

だから、お終いにしよう


379 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 02:33:03.01 ID:nZRYecAO
お父さんがいて、お母さんがいて、お友達がいて…

みんながいる私の幸せだった時間

だから


幸せだったから、終わりにしよう


少女『誕生日おめでとう、私』

ふーっ


蝋燭の火を一息で消す

灯りが落ちると共に、私の夢もふっと消えた


380 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 02:36:10.47 ID:nZRYecAO


少女『…!』

私は佇んでいた

少しモヤのかかった森に棒立ちしていた


侍『―』

目の前には「いつも通り」お兄さんが立っている

どれくらいこうして待っていてくれたのだろう


少女『ただいま、お兄さん』


381 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 02:47:40.20 ID:nZRYecAO
=記憶の森=

―この世界には、入ると二度と戻れない場所が幾つかある

いずれも、噂は聞けども地図に載っていない不思議な土地だ

出口の無い迷宮、或いは魔物の巣窟

そして、旅人達がその地と一つになってしまうという3種類に分けられる

記憶の森で夢を見続ける旅人達は、美しい思い出の花を咲かせ、遠い日々の葉を茂らせる木々になるという―



少女『…』

侍『―』ポン

少女『うん、大丈夫。 行こう!』ザッ


みんな、ありがとう

みんなのお陰で、私幸せでした

だから

みんなの分まで、幸せになります

お兄さんとなら、きっと幸せになれるから…


382 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/08/19(木) 13:42:26.24 ID:aE9q1lco
なんというプロポーズ


383 名前:GEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/08/19(木) 14:44:13.68 ID:CojB6iwo
なんという告白



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