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少女「私が……魔王?」
61 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:35:07.52 ID:YZbjmkcXo

― 2ヶ月後 学校 ―


少女友「おはよー」

友女「うぃっす。今日も無事に学校来れたね」

少女友「うん」

友女「富士の洞穴から化け物が大挙して侵攻してきたって言われても、なーんか実感ないわよね」

少女友「……だね」

友女「今朝のニュース見た? 自衛隊だけじゃなくて米軍も化け物退治に参加するみたいよ」

少女友「そうなの? でも結局自衛隊の二の舞じゃない? 被害、すごいんでしょ?」

友女「お父さんが言うには火力が違うって話だけどね。被害、被害かぁ。富士山周辺の街とかは化け物だらけって話だよね。それ以外のトコでも怪物が出現したって話もたくさんあるし。でもさ、この街だけは富士山からそんなに離れてないのになんでか知らないけど安全なのよねぇ」

少女友「そう、だね」

少女友(少女は約束を守ってくれてるって事……?)

友女「あ、そうだ。これこれ」ガサゴソ

少女友「雑誌? って少年じゃない」

友女「うんうん。最前線で活躍する『人類の希望』に独占インタビュー! だってさ。しっかしすごいわよね。クラスメイトが『勇者』だなんてさ。びっくりしちゃう」

少女友「……」

友女「勇者に魔王、ね。最初聞いた時は何の冗談かと思ったけど、今や世界を救うヒーローなんだもんね。しかもパートナーの子もこの学校の生徒なんでしょ?」

少女友「後輩、だっけ?」

友女「そうそう。インタビューにもチラっと載ってるけど、勇者より早く『覚醒』して手助けをしてたらしいね」

少女友「ふ、ふーん……」

友女「それにしても『魔王』ってどんな奴なんだろ。きっとおどろおどろしい化け物なんだろうな」

少女友「そっ、そんな事っ!!」

友女「どしたの?」

少女友「なんでもない……」

友女「少年君といえば、少女、無事にやってるのかなぁ。急に海外にホームステイする事になったとかで挨拶もなかったもんね」

少女友「……うん」

友女「あんたは二人の幼馴染なんでしょ? 何か連絡とかないの?」

少女友「べ、別にないかな。少女の引越し先も知らない、し」

友女「少年君も?」

少女友「あいつは全然。っていうか喧嘩別れ?」

友女「あー、何か言ってたね。少女をこっぴどく振ったとか聞いたわよ。そのショックで少女はホームステイに行く事になったとか」

少女友「全部、昔の話だよ」

友女「……ごめん。ヤな話しちゃったね。あーあ、所詮私たち一般ぴーぽーは勇者様が平和を取り戻してくれるのを待つしかないんだろうねぇ」


62 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:37:17.55 ID:YZbjmkcXo

― 少女友自宅 ―


少女友「ただいまー」カチャ バタン

少女友(お母さんはパート、か。このご時勢だっていうのに暢気というか何というか……)

ピッ

テレビ『……日米安保条約に基づき、米軍が攻撃を開始する事となりました。作戦内容は秘密ですが、軍事ジャーナリストによると怪物が湧き出ているとされている富士山麓の洞穴に向けてミサイル攻撃を』プツッ

少女友「少女、あんた一体何してんのよ。なんであんたが魔王なのよ」

少女友(あの子はあの時この街は襲わないって言ってた。あたしとの約束や、あの子のご両親が住んでるからのはず)

少女友「少年のヤローはいち早く街を出て怪物退治しまくって、マスコミに取り上げられて今やヒーロー。パートナーの後輩と一緒に魔王討伐の旅、か」

少女友「あたしは……何やってんだろ」


メイド長『貴女に鍵を託しましょう。私が成し遂げる事の出来なかった、鍵を託します』


少女友「そんな事言われても、何すりゃ良いのかわかんないわよ……あたしは単なる一般人よ」

少女友母「あら、帰ってたの」ガチャ

少女友「あ、うん」

少女友母「ホントにもう、食料品の値段上がりすぎよね。ワケのわからない化け物とかのせいで」

少女友「そうなの?」

少女友母「なんかね、色々とトラブルが起こってるらしいわ。流通関係がパニックになってるみたいよ」ハァ

少女友「……」

少女友母「魔王だとか勇者だとか一体何がどうなってるのかしらね。みんなおかしくなっちゃったんじゃないかしら」

少女友「そう、だね」

少女友母「こんなご時勢だけど勉強はちゃんとしておきなさいよ。わかってる?」

少女友「わかってますー。自分の部屋行くね。宿題する」スクッ

少女友母「あとでおやつ持って行ってあげるわ」


63 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:38:57.92 ID:YZbjmkcXo

少女友「はぁっ」ボスン

少女友「勉強する気も起きないわ」

Prrrr Prrrr

少女友「携帯? って少年!?」ピッ

少女友「もしもし?」

少年『よぉ』

少女友「何の用?」

少年『なんだよ、まだ怒ってるのか』

少女友「当たり前じゃない! あたしはあんたが少女にした事、忘れないわよ」

少年『少女じゃねぇ。魔王だ』

少女友「何が魔王よ! あの子はあたしの幼馴染で親友の少女よ!! あんたの幼馴染でもあるでしょ!」

少年『んな事知らねぇよ。あいつは魔王だ。倒すべき敵だ』

少女友「……もういいわ。用がないなら切るわよ」

少年『待てよ。そんな事話す為に電話したんじゃねぇよ。こっちだって忙しいんだから』

少女友「マスコミにちやほやされてさぞ気分が良いでしょうね、ヒーローさん」

少年『しょうがないだろ。むこうが勝手に取材とか言ってくるんだから。俺は勇者としての使命を果たすだけだよ』

少女友「あーあーそうですか。それは良かったですね〜」

少年『……少女と最後に話したのはお前だよな』

少女友「そうだけど、何?」

少年『その街だけが魔族の襲撃に遭わないのはお前が居るからか?』

少女友「そ、そんな事知らないわよ! 何の話!?」

少年『反応だけでわかった。今からそっちに行く』

少女友「何の事よ!」

少年『会った時に話してやるよ。1時間後に行く』

少女友「は? どういう……切れちゃった」

少女友「一体何がどうなってんのよ……」


ピンポーン

少女友母「少女友、少年君が来たわよー!」

少女友「……入ってもらって」


64 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:40:19.51 ID:YZbjmkcXo

トントントン

少女友「足音が一人じゃない……?」

少年「邪魔するよ」ガチャ

後輩「お邪魔します」

少女友「あんたか」キッ

後輩「……」

少年「そんなに邪険にすんなよ。こいつは俺のパートナーなんだから」ポン

後輩「はい」ニコッ

少女友「世間はあんた達を勇者とその相棒兼恋人って言ってるみたいだけど、有名人になったお二人があたしみたいな一般ぴーぽーに何の御用でしょうか?」

少年「棘あんなぁ」

少女友「当たり前でしょ。みんなが何て言おうとあたしはあんたを許す気なんてさらさらないんだからね」

後輩「勇者様を魔王の毒牙からお守りするのは当然の事でしょう? 責められる謂れがありません」

少女友「あんたに聞いてない」

後輩「……」

少年「まぁいい。少女友、幼馴染として頼みがある」

少女友「お断りします。お帰り下さい」

少年「あのなぁ……」

少女友「あんたからの頼まれ事なんて誰が聞くもんですか」プイッ

少年「少女に会えるかもしれない、って言ってもか?」

少女友「!?」

後輩「喰いつきましたね」ニッ

少女友「少女に会えるってどういうこと!?」

少年「テレビ見たか? 近い内に米軍が参戦して例の洞穴に攻撃を仕掛ける」

少女友「さっき見たわよ」

少年「俺とこいつは米軍のミサイル攻撃と同時に米兵や自衛隊の特殊部隊を連れて魔界に行く」

少女友「……魔王城ってとこ?」

少年「最終目的地は、な。だが魔王城に辿り着くまでには四王を倒す必要がある」

少女友(四王って少女が呼んだ化け物達の事よね……)

少年「連戦になるのは目に見えてわかってる。俺もこいつも下手すりゃ途中で倒れちまうかもしれん」

少女友「勝手にどうぞ」

後輩「……」ギッ

少年「あのなぁ、俺もこいつも人類の為にやってんだぞ?」

少女友「そんなの知らないわよ。あんたが勇者とかあの子が魔王とか私には関係ないわ。あんたはあたしの親友に酷い仕打ちをした極悪人よ」

後輩「黙って聞いていれば勝手な事を」スッ

少女友「な、なによ」

後輩「勇者様の双肩には人類の未来がかかっているのですよ。貴女の命などその使命に比べれば塵芥も同然。こうして勇者様直々にお迎えにあがっているだけでも平伏して感謝しなければならないという事がまだわからないのですか?」

少女友「何言ってんのこの子。頭おかしいの?」イライラ

後輩「っ!」

少年「やめろ。少女友も言いすぎだ」


65 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:41:23.01 ID:YZbjmkcXo

少女友「ふんっ」プイ

少年「あーもう。頼みってのはさ、お前も一緒に来て欲しいんだよ」

少女友「なんであたしが」

少年「魔物や魔族はお前に手を出せない」

少女友「なんで?」

少年「魔王が、あいつが『そう』命令してるんだろ?」

少女友「っ、し、知らないわよそんな事!」

少年「あいつはきっとこう言ったんだろ。「少女友には手を出させない」って」

少女友「さぁね」

後輩「検知できました。魔王の魔力紋です」フォンッ

少女友「魔力紋?」

後輩「貴女が知るような事ではありません」

少女友「っ」

少年「やめろってば。少女友、頼むよ。お前が居てくれりゃ魔族の掃討もかなり楽になるんだ。何せ向こうはお前に手を出せないからさ」

少女友「あたしを盾に使おうってハラなのね」

後輩「勇者様のお役に立てるのですから喜ぶべき事ではないですか」

少女友「ぜんっりょくでお断りだわ! なんであんた達の手助けなんてしなきゃいけないのよ!」

少年「後輩、口が悪いぞ」

後輩「申し訳ございません。でも、勇者様の事を思うとこの者の口の利き方がなっていませんので」

少女友「イチャイチャしたいんだったらさっさと帰ってくれない? 虫唾が走るわ」

少年「俺とこいつはパートナーだけど『そういう』関係じゃねぇよっ」

少女友「あっそ。はいはい。お帰りはあちらですわよ、勇者様」

少年「……どうしても協力してくれないのか?」

少女友「どうしても協力したくないわね。あたしは何があっても少女の味方なの。あの子と約束したもの」

後輩「魔王との約束を守るとは愚かな。あっちはどうせそんな約束など最後にはあっさりと翻すに決まってるじゃないですか」

少女友「少女の事をロクに知らないあんたが語るな!」

後輩「……」

少年「この街以外の世界中では今この瞬間にも魔族や魔物の侵攻によってたくさんの犠牲者が出てるんだぞ。お前はみんなを助けたいと思わないのか?」

少女友「そ、それは……」

少年「俺と来い。少女を止めるんだ」

少女友「……」

少年「あいつを、少女を止めれるのは俺だけだ。頼む、お前の力が必要なんだ」

少女友「……ったわよ」

少年「?」

少女友「わかったわよ。一緒に行ってやればいいんでしょ。ただし、あたしはあくまで少女の為に行く。あんたの手助けなんて一切してやらない」

少年「それでも良い。一緒に、あいつを止めよう」スッ

少女友「握手? 悪いけどそれは遠慮しとくわ」

少年「……わかった」

後輩「お可愛そうな勇者様……」ソッ


66 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:42:35.79 ID:YZbjmkcXo

少女友「で、どこに行けばいいの? あんた達とは出来るだけ別行動したいわ」

少年「つったって、俺の転移呪で一気に洞穴まで飛ぶから一緒でなきゃ無理だぞ」

少女友「なにそれ」

少年「魔法だよ魔法。ゲームでもよくあっただろ。一瞬で別の街とかに行けるやつ」

少女友「そんなの使えるの? だったら魔王城まで一気に行けるんじゃないの?」

後輩「転移呪は対象座標がわからなければ使う事ができません。必然的に一度赴いた事のある場所にしか行けないということです」

少女友「あっそ」

少年「米軍の攻撃は三日後の朝8時だ。明後日の夕方には迎えに来る。それまでに用意をしておいてくれ」

少女友「はいはい」

少年「それと、後輩を置いていく。後輩、少女友の護衛ちゃんとしておけよ」

少女友「は?」

後輩「わかりましたです」

少女友「ちょっと、なんでこいつを置いて行くのよ!」

少年「俺とお前が接触したのはもう魔王に知られてるはずだ。そうなったらお前が魔王の手先に連れ去られる可能性がある」

後輩「私がその手先を排除する役になります」

少女友「あんたは?」

少年「俺はまだ何箇所か制圧しなきゃならないトコがあるんだよ」

後輩「私がご一緒しなくて本当に大丈夫ですか?」

少年「なに、魔物じゃなくて怪物だから俺一人でも十分だ。お前は少女友をしっかり護ってやってくれ」

後輩「承知いたしました」

少女友「いらないわよ」

少年「いや、要る要らないじゃない。俺達にはお前が必要なんだ。だからこれはその為の措置なんだよ」

少女友「なんでこの子と一緒に居なきゃいけないのよ。こいつの所為で少女は……」

少年「……後輩、頼んだぞ」

後輩「はい」

少女友「ちょっと待ちなさいよ!!」

少年「転移呪!」ヒュォッ

少女友「……」


67 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:43:36.43 ID:YZbjmkcXo

後輩「勇者様の転移確認」

少女友「あんたも行きなさいよ」

後輩「それは出来ません。転移呪は勇者様にしか使えない魔法です。それに、私には貴女を護るように勇者様から命を受けています」

少女友「いらないわよそんなの。あんたと一緒に居るなんて心底嫌だわ」

後輩「勇者様の崇高な理念を理解しない貴女と一緒に居るなんて私から願い下げですが、仕方ありません」

少女友「喧嘩売ってんのね。買わせてもらうわよ」

後輩「おやめになったほうが良いかと。貴女ごとき私の敵ではありません」

少女友「このっ!」ヒュッ

後輩「束縛呪」フォンッ

少女友「!?」

後輩「身体の動きを止める呪文です。私は勇者様のパートナー。あらゆる攻撃、補助、回復魔法を操る事ができます。貴女の命など一瞬で消し飛ばす事ができるですよ」

少女友「じゃあそうすれば?」

後輩「貴女は勇者様の行軍に必要な『盾』です。殺す気はありません」フォンッ

少女友「っと……」ウゴケル

後輩「魔王様に組しようとする貴女を護るなど、私だって虫唾が走ります」

少女友「だからこっちから願い下げって言ってるでしょ! さっさと出て行きなさいよ!」

後輩「それができればどれだけ良いか……」

?「じゃあ、そのお手伝いしてあげようか?」

後輩「!?」バッ

少女友「え?」

少女「こんにちは、後輩ちゃん」ニコッ

後輩「あ……あ……」

少女友「少女っ!!」ダッ ギュッ

少女「わぷっ、少女友ちゃん、久しぶり」

少女友「久しぶり、じゃないわよっ! 今まで一体何してたのよっ!!」クワッ

少女「あわわわ」アタフタ

後輩「火炎槍っ!!」ゴォッ

少女「屋内で火を扱うなんて危険だよ?」シュッ

後輩「そんなっ、無効化だなんて!」

少女「私は魔王だよ? 魔法の無効化なんて簡単なの」

後輩「っ」

少女「さて、と。少女友ちゃん」

少女友「?」

少女「私と、一緒に来てくれる?」

少女友「……それは、勇者に私を利用させない為、よね」

少女「利用? どういうこと?」キョトン

後輩「貴女が少女友さんに魔力紋を仕掛け、魔族や魔物、化け物からの攻撃対象から外しているのはもうわかってるんです!」

少女「あ、そゆこと? 少年君、すごい誤解してるね」

後輩「どいうことです!?」


68 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:45:51.15 ID:YZbjmkcXo

少女「私が少女友ちゃんに魔力紋を残したのは少女友ちゃんだけを護る為。仮に貴女達が少女友ちゃんを盾にしたとしても、私たち魔族は少女友ちゃんに傷一つ負わせずに貴女達を攻撃する手段なんていくらでもあるよ?」

後輩「……」

少女「そして、私がここに来たのは少女友ちゃんを貴女達から護る為。貴女達に私の親友を利用させない為」キッ

後輩「勇者様は人類を救うお方です。その為に犠牲になるのなら喜んで身を差し出すべきです!」

少女「ほら、ね。少女友ちゃん、聞こえた?」

後輩「っ」ギリッ

少女「この人達は『人類を助ける』っていう大義名分の為なら仲間を、ううん、人間をいくら殺しても何とも思ってないの」

少女友「……」

少女「私は貴女達の戦いを見てきたわ」

後輩「なっ!? 気配はなかったわ!」

少女「『千里眼球』」ポゥッ

少女友「なにこれ」

少女「離れた場所が見れる宝珠なんだ♪」

後輩「そんな物までっ」

少女「ほら、見える?」ポワンッ


少年『だりゃぁぁぁぁぁっ!』ザッ

怪物『ギォォォォォ!!』

人間『た、助けてくれ!!』

少年『迅雷っ!!』ピシャァァァッ

怪物『ギャォォォォォォ!!』プスプス

人間『うぎゃぁぁぁぁぁっ』ジュォッ


少女友「なっ!?」

少女「ね? 少年君、今何の躊躇もなく怪物と一緒に人間も殺したでしょ?」

後輩「そ、それは止むを得なかったのです! 100人の人間を助ける為なら1人の人間の犠牲はっ」

少女「黙りなさい」

後輩「……っ」


69 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:46:22.34 ID:YZbjmkcXo

少女「じゃあ訊きますけど、たった今犠牲になった人間はその事を知っていましたか? 勇者の使命の為に我が身を投げ出すと誓った?」

後輩「……」

少女「魔王軍のみんなは自らの犠牲を厭わずに私の、ううん、魔族の目的を果たすって誓ってるの。当然私もその中に居るわ。貴女や勇者みたいに何も知らない、何の罪もない同胞を無造作に殺す事なんてしない」

少女友「少女……」

少女「ごめんね、少女友ちゃん。私はやっぱり人間の敵なの。だから無理強いはしない。少女友ちゃんが思ったようにしてくれれば良いよ」

少女友「……」

少女「でも、これだけは約束する。私は無益な殺生はする気はないの。人間界を制圧するって言っても皆殺しにしようだなんて思ってない」

少女友「どういう、事?」

少女「人間は魔族に管理されるべきなの。でないと人間は増長して、互いに憎しみ合い、結局殺しあう運命にある」

後輩「詭弁です! 魔族こそ汚らわしい象徴ではないですか!」

少女「貴女は魔族の何を知っているの? 魂の鎖に縛られ、そこに刻まれた事しかなぞっていないのに」

後輩「そっ、そんな事ないっ!!」

少女「私は魂の鎖に頼ったりなんてしてないわ。この半年間、魔族だけじゃなくて魔物、怪物に至るまで全部の事を勉強して、できるだけみんなと話し合って、その結果として人間界への侵攻を自分で決断したわ。魂の鎖に引っ張られたんじゃないってちゃんと言える」

後輩「だっ、黙れっ!!」ボボボボボボボボッ

少女友「火の玉!?」

少女「だから無駄だってば」シュォンッ

後輩「氷の礫っ!!」バババババッ

少女「私を攻撃するっていう事は私の傍に居る少女友ちゃんも攻撃する意思があるっていう事?」

後輩「魔族に切り札を取られるくらいなら、私が殺します!」

少女「だってさ、少女友ちゃん」

後輩「っ」

少女友「さっきから犠牲がどうこう言ってるから十分わかってるわよ。少年のヤローがどう考えてるのかはまだわかんないけど、この子は人の命なんて大して重要に思ってないんだろうなってね」

後輩「そんなことないです! 私も勇者様も人類を救うという使命を!」

少女「使命や運命っていう言葉に踊らされて有頂天になってるだけっていうのがわからない?」

後輩「私は、私の使命は貴女を倒して人類を守る事です!」

少女「自分の判断じゃないでしょ? その想いは前の勇者と一緒に旅をして前魔王を倒した女賢者の執念。ううん、歴代賢者達の思念が刻み込まれた魂の鎖がそうさせているのよ」

後輩「そんな事はない! 私のこの気持ちは私の物なの! 勇者様を想う気持ちも全部!」

少女「……そう。わかったわ」

少女友「少女、あんたまだ……」

少女「えへへ。ちょっとだけ、ね」ニコッ


70 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [saga] 投稿日:2011/04/01(金) 13:47:01.02 ID:YZbjmkcXo


少女友「……わかったわ」

後輩「少女友さんっ、魔王の口車に乗せられてはいけませんっ!」

少女友「少なくともあんたや少年がやってる事より少女の言い分のほうが正しいわよ。残念ながら、ね」

少女「じゃあっ」パァツ

少女友「でも、あたしは何もできないわよ? あんた達みたいに魔法が使えるワケじゃないし、力だって普通だし」

少女「少女友ちゃんは私の親友だもん。戦えなんて絶対言わないよぅ」

少女友「マスコット代わりか何かにするつもり?」

少女「ま、まだ考えてないけど……」ウーン

少女友「ほーほー。あんたはとりあえずあたしを掻っ攫っていくことだけを考えた、っと」

少女「あうあうあうあう」オロオロ

少女友「……変わってないわねぇ」ギュッ

少女「ふぇっ?」

少女友「何でもいいわ。言ったでしょ。あたしは何があってもあんたの味方よ。勇者がどうこうとか人類がどうこうなんて関係ないわ。あんたはあたしの親友なの」

後輩「ま、待ちなさい!」

少女「ダーメ。そろそろ帰らなきゃいけないもん。ここに来るのだってすっごく大変だったんだよ。軍議すっぽかしちゃったから帰ったらメイド長さんから怒られちゃう。じゃあ、生きてたら魔王城で会いましょう。少年君にもよろしく伝えておいてね」ニコッ シュッ

後輩「ま、待って!!」

後輩「……」

少年「片付いたぞー」シュッ

少年「どうした? って少女友は!?」

後輩「申し訳ございません。魔王が直々に……」

少年「あいつが……怪我はないか?」

後輩「はい。ですが、少女友さんは自らの意思で魔王と共に」

少年「気づかれた、のか?」

後輩「千里眼球を持っていました」

少年「っちゃぁ、やられた。そんなモンまで持ってんのかよ」

後輩「急がなくてはいけません。人類を救わなくては」

少年「おう。わかってる」



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