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少女『言葉が通じなくても』
1 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [] 投稿日:2010/06/15(火) 22:25:51.19 ID:bc4rtgAO
故郷破れて大海在り
島泡となり面影も無し―


ザザーン

ザザーン


少女「!」

少女「――!―!」

侍「…」ピクッ

少女「―!」

ズルッズルッ


2 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 22:30:52.03 ID:bc4rtgAO
……

侍「…ぅ」

少女「―!」

侍「ここは…いっ!?」

少女「―!?」

侍「だ、大丈夫だ」

侍(どうやら異国に流れ着いたらしいな…)


3 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 22:39:52.58 ID:bc4rtgAO
少女「―?」

侍(参ったな…言葉が通じぬと礼も言えぬ)

少女「――」スッ

侍「これは…」

侍(食い物か? 見たことのない物だが)
少女「―」ボロ

侍(こんなに貧しく痩せ細っているのに、私に施してくれるのか…)

侍「娘」スッ

少女「?」

侍「忝ない」土下座

少女「―!!」アタフタ


4 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 22:57:48.21 ID:bc4rtgAO
少女「―」パクパク ゴクン

侍「…ゲホッ ゲホッ」

少女「―!?」

侍「大丈夫、大丈夫だ」ゲホッ

侍(体が食事を受け入れられない…)

少女「…」シュン

侍「…」


侍「据え膳食わぬは男の恥!」バクッ

少女「―!?」

侍「心配無用!ゲホッ 今までで一番美味い飯だゲフッ」


5 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:12:38.41 ID:bc4rtgAO
ドサッ

侍「急に眠気が…」

少女「―」

侍「すまぬ、暫し眠らせてもらう…」

少女「―…」







家老「やりましたな、殿」

将軍「ああ、嵐世は終わった。皆のおかげだ」


6 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:19:09.08 ID:bc4rtgAO
家臣「皆とは、あの人斬りも含めてですかな?」

家老「…これ」

家臣「…失礼致しました」

将軍「…よい、儂もあやつには悪い事をしたと思っておる」

家老「殿の判断は的確でございました。奴はいずれ災いの元となりまする」

将軍「しかし、命懸けで戦ってくれた仲間を島流しにした事に変わりはない」

家臣「奴は戦の中でしか生きられないのです」


7 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:23:50.62 ID:bc4rtgAO
将軍「奴が…侍が船に乗る時なんと言ったか知っておるか?」

家臣「…いえ」

将軍「『この国を頼む』、と」

家老「!」

将軍「我々は、侍や嵐世に散った命の分も生きなければならない」






侍「船に乗って2日か…獄島は遠いな」


8 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:31:32.96 ID:bc4rtgAO
見張り「いいのかい? 侍さんは天下平定の功労者じゃないか」

侍「いいのだ、私は人を殺し過ぎた」

見張り「戦が終わっても人を食い物にしてる奴らは山程いるってのに」

侍「殿が上手く治めて下さる。戦屋の私は消えるべきなのだ」

見張り「…」

侍「…ありがとう」

見張り「このままおっ死んだら許さねえからな!」

侍「ああ、獄島を田畑だらけにしてやるさ」

見張り「そりゃ楽しみだ!」


9 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:36:08.61 ID:bc4rtgAO


侍「すー…すー…」

見張り「侍さん、起きてくれよ」

侍「ん…なんだ?」

見張り「妙な船がいるんだ」

侍「船?」



侍「お頭、どこだ?」

お頭「あそこだ。大筒みたいなのを乗っけてる」

見張り「むしろ船自体が大筒だ、ありゃ」

侍「…嫌な予感がする」


10 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:42:16.61 ID:bc4rtgAO
お頭「あの船、本島を狙ってんのか…?」

見張り「なっ あんなところから届く訳ありませんよ!」

侍「…お頭、小船を一隻下ろしてくれ」

見張り「侍さん!?」

お頭「間に合うかわからんぞ?」

侍「間に合うかもしれん」

お頭「…侍殿には辛い役目ばかり任せて申し訳ない」

侍「辛くなどない。皆を守れるのだ、これほど名誉な事はない」

見張り「侍さん…ッ!」


11 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:48:42.91 ID:bc4rtgAO
お頭「船を回せ! あの大筒船に仕掛けるぞッ!」

「おおおおおおおおッ!!」

侍「お頭!」

お頭「こっからじゃ遠くて仕方ねぇ、俺達が近くまで送ってあげまさぁ」

見張り「俺達が囮になってる間にこっそり乗り移ってくだせぇ」

侍「…すまないッ」

お頭「国を守れるんです、こんな名誉な事はねぇ」


12 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:51:31.41 ID:bc4rtgAO
ザザーン

見張り「お達者で」

侍「また会おう」


ザバンッ

ドンッ ドンドンッ


侍「始まったか…」

侍「皆、無理はするなよ」


13 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:55:31.18 ID:bc4rtgAO
ギコギコッ

侍「急がねば」

ドーンッ ザバーンッ

侍「妙だな…反撃してこない」


「――――――!」


ドォォォォォォオンッッ


侍「ッ!?」


14 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/15(火) 23:59:37.49 ID:bc4rtgAO
ザバッザバッ

侍「一体何が……え」

侍「船が…お頭達は……?」

侍「い、いかん、早く大筒船に乗り込まねば…」

ギギギギ

侍「…な」

ギギギギギッ ガゴッ

侍「大筒が…動いて」


カッ―――――――――――



ゴォォオオオオオオオオンッッ


15 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 00:04:21.81 ID:mSDe4wAO
侍「うあああッ!?」バッ



侍「夢…か」


侍「む、娘がおらぬ」

侍「探しに行くか、それとも…」





少女「…」

【靴磨きます】


16 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 03:22:38.62 ID:ZD9nL0.0
小ネタスレのときからwktkしてました


20 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 13:26:06.41 ID:mSDe4wAO
兵士『またお前か』

少女『…』

兵士『露天商の許可は取ったのか?』

少女『…いえ』

兵士『ふむ、では警告通り罰金を払ってもらおう』

少女『お金は…』

兵士『無いんだな、拘束させてもらうぞ』

少女『!』


21 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 13:37:50.00 ID:mSDe4wAO
兵士『こい!』グッ

少女『嫌!』

乞食男『兵士さん、ワシら許可を取る金もねぇんだ!勘弁してくれよ!』

兵士『うるさいぞ、貴様も逮捕されたいみたいだな』

乞食男『ひっ』

兵士見習い『お前はこの売上金で勘弁してやる』ヒョイッ

乞食男『ま、待ってくれ!』バッ

ヒュッ

乞食男『え』プシッ

少女『おじさん!?』

兵士『公務執行妨害だ、次は外さんぞ』

乞食男『ひぃ!?』ツー


22 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 13:41:49.84 ID:mSDe4wAO


侍「…」正座

侍(この界隈では靴を磨いて日銭を稼いでいる者が多いな)

侍(それぐらいなら言葉が通じずとも…)

ガタ

侍「む」

裕福そうな男「――――――」

侍「謹んでお請けしまする」キュッキュッ

裕福そうな男「――――」


23 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 13:46:25.73 ID:mSDe4wAO
侍「…」キュキュッ

裕福そうな男「―――」

侍「如何でございますか」

裕福そうな男「―!」

チャリッ

侍「! ありがとうございます」土下座


侍「良かった… なんとか報酬を貰えたな」

ガシッ

侍「ん?」

靴磨きの男「―――――」ググッ

侍「な、なんだ」


25 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 16:17:15.85 ID:mSDe4wAO
侍「これは私の銭だぞ」ググッ

靴磨きの男「―!」ググッ

侍(こやつ、私から奪い取るつもりか)

侍「止めぬか!」バッ

靴磨きの男「―!?」バタッ

侍「ふん」


兵士見習い「―!―――!」

靴磨きの男「―!」ダダッ

侍「…見回りの者か」

兵士見習い「―――」

侍「む? 私に用があるのか?」


26 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 20:50:58.11 ID:mSDe4wAO
兵士見習い「――?――――!」グイッ

侍「な、何やら誤解されているようだが」グイグイッ

兵士見習い「―! ―!」

侍「私を引っ立てるつもりか!」バッ

兵士見習い「―! …――――!!」

侍「ほとぼりが冷めるまで隠れるしかないかっ」タタタッ

兵士見習い「―!!」


27 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 20:58:58.34 ID:mSDe4wAO
侍「はぁ…どうやら撒いたようだな」

侍「娘は…まだ帰っておらぬか」

侍「一体どこに行ったのだ…」





少女『…ん』

少女『ここは…? 檻!?』

少女『そうだ、私兵士に捕まって…』


ウォォォォォォン…

少女『な、何!?』


28 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 21:13:19.09 ID:mSDe4wAO
ズシッ ズシッ

少女(近づいてくる…)

ズシッ ズシッ

ブフーッ ブフーッ

少女(何か…生き物の荒い息遣いが近付いてくる!)

ズシンッ ズシンッ
ッゼーハーッ

少女(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!)



少女(…?)


豚顔の巨漢「ゲァァァァッ」

少女『きゃああああああああ!?』


29 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 21:24:34.98 ID:mSDe4wAO
少女『な、何!? 何なの!?』

豚顔の巨漢「ァァァァァアアア」ガシッ

少女『ひっ!!』ビクッ

豚顔の巨漢「ガァァァァァァアアッ」メキメキ…

少女『いやッ 誰か助け…』



パシンッ

豚顔の巨漢「ギャィッ」

市長『実験材料に手を出すなと言っているだろ豚、檻ごと潰す気か』

少女『市長…?』


30 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 21:28:00.85 ID:mSDe4wAO
市長『ほれ、向こうへ行けッ』ピシッ

豚顔の巨漢「ブギャッ」



少女(一体どういうこと…)

市長『怪我はないかね』

少女『!』ビクッ

市長『怖がらせてしまったかね、お嬢ちゃん』

少女『…』


31 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 21:34:01.22 ID:mSDe4wAO
市長『しかし安心したまえ、直に恐怖からも解放される』

少女『…どういうことですか』

市長『君はもうすぐ人間なんかより次元の高い生命体に変わるんだよ』

少女『…え』

市長『簡単に言えば、これから行う儀式により天使へと生まれ変わるのだ』

少女『天使…』ブルッ

市長『まぁ、失敗したらさっきの奴らの仲間入りなんだけれどもね』

少女『嫌…』ブルブル

市長『フフ…光栄に思いたまえ』

カツッ カツッ カツッ

少女『嫌ぁぁぁぁぁぁ!』


32 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 21:40:49.45 ID:mSDe4wAO


侍「こっちは柿か? 似てはいるが黄色が強い気が…」

商人「――!」

侍「握り飯はないのか? あの娘に食わせてやりたいのだが…」


兵士「―――!!」

侍「ん?」


ザワザワ

兵士「――!」ドンッ

貧しそうな少年「―…」

侍「何故童が縄にかかっている…」


33 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 21:44:25.74 ID:mSDe4wAO
ザッ

兵士「―?」

侍「待て、その童が何をした」

貧しそうな少年「――!! ―」

兵士「―!!」

バキッ

侍「!」

貧しそうな少年「―」ドサッ

兵士「――――!!」チャキッ



侍「成る程、問答無用か」ザッ


34 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 21:48:20.07 ID:mSDe4wAO
貧しそうな女性「―!!」タタッ

貧しそうな少年「―!」ダッ

兵士「―!」バッ

侍「行かせはせん」ザッ

兵士「!」


兵士「―… ―――――!!」シャキンッ

侍「…抜いたな? 真剣勝負、受けて立とう」


35 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 21:56:01.87 ID:mSDe4wAO
兵士「――――――!!!!!」ダダダッ

侍「捉え難き事―」

フォンッ


…ゥンゥンフュン

ドッ


兵士「―!?」

侍「雲の如し」



侍「その様な出鱈目な剣術では死を覚悟した相手は殺せぬ」ズボッ

兵士「―!」ダダッ

侍「逃がさぬ」ザザッ

兵士「―!?」


36 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 21:59:01.33 ID:mSDe4wAO


少女『…』


コツッ コツッ

少女『…!』

コツッ コツッ

ドスッ ドスッ

少女『ひっ!?』


市長『迎えに来たよ』


37 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:04:04.36 ID:mSDe4wAO
少女『嫌! もう帰して!!』

市長『帰る? おかしな事を言う』


市長『君には帰る場所なんて無いのに』


少女『!』


少女『う…ううううう』

市長『ああ、ごめんね、本当の事言っちゃって』

少女『あああああああああああ』

市長『ふふふ…あははははははは』



市長『連れてけ』

鷲頭の巨漢「ケーッ」


38 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:40:01.80 ID:mSDe4wAO


ジャラッ

少女『……嫌』グスッ

市長『さあ、儀式を始めよう』


魔術師『禊ぎは三度繰り返され、礼拝は四度繰り返される―』

市長『ふふ…』



ガダン ズンッ オオオオン…


市長『…騒がしいな』


39 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:46:41.42 ID:mSDe4wAO
ドガンッ ギャオオーッ ガシャンッ

市長『バケモノ共が暴れ出したか? クソ』






市長『…静かになったな』

魔術師『―空の器に天啓を収める…出よ、』


バンッ


侍「ここに居たか、探したぞ」

少女「―!!」


40 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:50:55.61 ID:mSDe4wAO
市長「―――!? ―!?」

侍「その様子だと…大方魔物でも招いてたか」

魔術師「―」


ヒュンッ


侍「人間の風上にも置けぬな」

魔術師「」ブシュッ


市長「―!?」


41 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:54:18.61 ID:mSDe4wAO
侍「娘、目を瞑っておれ」ソッ

少女「―!」

侍「覚悟はよいか外道」チャキッ

市長「――!? ――!!」



魔術師「…―」


カッ

侍「なっ!?」

ゴゴゴゴゴゴッ

市長「―――――――!!!!!!!!」ググッ グニャッ


シュバァァァァァァァッ


42 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:57:55.71 ID:mSDe4wAO
侍「…ッ 一体何が…」

ボゴッ

侍「がッ!?」


ブァッ



ベヂッッ


少女『お兄さん!?』

侍『』

かつて市長だった悪魔『ガアアアアアアアアアアア!!!!!!!』ゴオオオッ


43 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:07:03.68 ID:mSDe4wAO
少女『あ…、助けて』ガチャガチャ

悪魔『カネ…ワシノカネ……』

悪魔『チイ、ケンリョク、ソシテチカラ…』

悪魔『スベテワタサヌ…!』

少女『…腐ってる』

悪魔『コムスメ…! ワシヲブジョクスルカ!!』

少女『ええ、あなたは手に入れ過ぎた』

悪魔『モタザルモノノトオボエカ、コッケイナ』


44 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:15:58.91 ID:mSDe4wAO
少女『必要以上に手に入れようとして、あなたは心を失った』

悪魔『ココロナドイラヌ』

少女『…可哀相』

悪魔『ダマレコムスメ、コロスゾ』

少女『黙らない、私の心は恐怖に屈したりしない…!』キッ

悪魔『ガアッ!!』バシッ


ドカッ


少女『』ズッ


45 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:20:06.84 ID:mSDe4wAO
悪魔『オキロ』グイッ

少女『あ……がっ』

悪魔『ドウシタ、ナマイキナメデオレヲニランデミロ』グッ

少女『う…くッ』キッ

悪魔『ハハハッ イイゾ、ユカイダ! マズハソノメ―』


グサッ


少女『―ッ』グリッ

悪魔『グァァァアアアアアアアアア!!!!?メガアアアアアアアアアアア!!!!』


46 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:30:23.58 ID:mSDe4wAO
悪魔『グウウウウウウウウ…クソムシガァァァアッッッ』ギロッ

少女『…』

悪魔『コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス』

シュッ


悪魔『ガアッ』バシッ

ジャラジャラッ


悪魔『カネダッ カネッ!!』ガバッ


シュピッ



悪魔「―ァ」

侍「三途の川の渡し賃故、遠慮なく持って行くがいい」チャキンッ

ブシューッッ


47 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:33:02.57 ID:mSDe4wAO
侍「南無…」

侍「娘、大丈夫か」

少女「―…」グッ

侍「…ほれ、負ぶされ」

少女「…」




少女「…―」ヒシ

侍「帰ろう」


49 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 00:58:49.21 ID:IF6/TsAO
侍「怖い思いをさせてしまったな」

少女「ヒクッ…グスッ」ギュッ

侍「…」

侍(無理もない…このような悪鬼羅刹の類に捕らわれていたのだ。正気でいた事が奇跡に近しい)

侍(しかし…この娘、あの状況で物の怪の目を刺した。信じられん胆力の持ち主だ)


少女「…」スースー

侍(まぁ、年端もいかぬ娘に変わりはないが)

侍「二度も助けられたな、…ありがとう」


50 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:26:26.43 ID:IF6/TsAO


少女「…―」

侍「気が付いたか」

少女「……―、―!?」ガバッ

侍「安心しろ、物の怪はもうおらん」ナデ

少女「…―」


グー


少女「…」ポッ

侍「安心したら腹が減ったか」


51 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:43:43.24 ID:IF6/TsAO
侍「ほれ、これで良ければ食え」

少女「―?」

侍「情けない事に、こんな木の実しか買えなんだ」

少女「…―」パク


少女「―…!」ポロ

少女「―――…」ボロボロ

侍「お、おい泣くな!? 不味かったのか?」


53 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 23:28:50.68 ID:IF6/TsAO
侍『―!? ―――』


兵隊さんに捕まった時は怒られると思った

怪物に襲われた時は食べられると思った

市長に酷い事言われた時は…消えてしまいたくなった


でも


お兄さんが助けに来てくれて、私の為に戦ってくれた時…『生きたい』って思った

こんな私に、優しくしてくれる人がいた―


少女『ありがとう…お兄さん…っ』ボロボロ

侍『…―』ナデナデ


54 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 23:43:28.68 ID:IF6/TsAO
君に感じては粗飯も馳走となり
死別を拒めば死をも賭そう



少女『何を見てるの?』

侍「――」

少女『んー、よくわかんないけど』


少女『この海の先にあなたの故郷があるのね』

侍「…」

少女『…帰りたい?』


55 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 23:45:45.89 ID:IF6/TsAO
侍「…」

少女『そうだよね…、お兄さんにも家族が居るんだし…』

侍「―」

少女『…え』

侍「――」スッ

少女『…』


ギュッ


少女『えへへ』

侍「―」ニコ


56 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 23:56:40.30 ID:IF6/TsAO
鉤括弧間違えた


57 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/18(金) 00:04:55.57 ID:iNHEe.AO
少女『ねえ、お兄さん』

侍『―』

少女『私、家族いないから……私の家族になってくれないかな』


少女『な、なんてね!』

少女(言葉が通じないのに、私…何言ってるんだろ)


ポン

少女『んっ』


58 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/18(金) 00:09:30.65 ID:iNHEe.AO
侍「お主が何を言ってるかわわからぬ」

侍「だが、悲しみや寂しさを押し込めるのはよせ」

侍「お主が天涯孤独の身ならば……拙者がここに辿り着いたのは、それを救う為かもしれん」ナデナデ

少女「―」ヒシッ

侍「よしよし…」ナデナデ




侍「或いは、私が救われたのかも知れぬ」


59 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/18(金) 02:04:10.02 ID:iNHEe.AO
世界を巻き込んだ大戦が終わって一年…

戦争で利を得た者達が傷を負った者達を支配する西の国から物語は始まる


祖国を、全て失い、言葉も文化も違う異国の地に流れ着いた『最後の侍』

戦火に焼かれ、家族を、今までの生活を失った力なき『持たざる少女』

二人の孤独な人間が数奇な出会いを果たした


二人は様々な出会い、そして別れを繰り返して行く


「縁は見えざれど延々と連なり
 言の不自由なれど些末に抵る」


強い心と、強い人々に引き寄せられながら



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