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囚姫「助けてっ!」詐欺師(ここはどこでしょう?) 落ちた・・・
- 19 名前: ◆wV/dOv7SG. []
投稿日:2010/11/25(木) 22:41:21.86 ID:XBs1J/qu0
─囚姫の町 ハンバル領
囚姫「着いたよっ」
詐欺師「結構長い距離を来ましたね、ずっとラクダに揺られていたせいでお尻と腰が痛いです」
囚姫「そうかなあ?普段ラクダに乗ってないとそうかもねっ」
詐欺師「さて、これからどうするのですか?」
囚姫「とりあえずラクダ屋に行ってラクダを返してから私の家に行こうっ」
詐欺師「了解しました」
─領主亭
囚姫「お父さんっ!」ダッ
領主「っ!?囚姫かっ!?どうやって戻ってきた!」がしっ
囚姫「詐欺師さんが助けてくれたのっ」
領主「詐欺師・・・?あなたですか?」
詐欺師「あ、ああ・・・お邪魔いたしております。お初お目にかかります詐欺師と申します」ペコリ
領主「よくぞ我が愛する娘を救ってくださいました!感謝の至りでございます」
詐欺師「いえ、わたしは金貨100枚と引き換えに助けたにすぎません。お気遣い無く」
領主「そ、そうでしたか・・・おい、誰か倉庫から金貨を100枚持ってこい!」
執事「はい」
- 20 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 22:42:47.58 ID:XBs1J/qu0
領主「ともあれ、娘を救ってくれたことには変わりない。報酬はもちろんお支払いするが、
歓迎の食事くらいは出してもいいだろうか?」
詐欺師「それは・・・ありがたくいただきます」
領主「そうかそうか!今日は宴にするぞ、料理長に気合を入れろと伝えろ!はっはっはっ」
詐欺師(ここでも色々と情報を集めましょう、そのためにも食事というのはありがたい機会だ)
囚姫「でもねお父さんっ、きっと詐欺師さんはお金なんてなくても助けてくれたんだよっ?」
詐欺師「・・・」
領主「そうだろうな、とても優しそうな方だ」
詐欺師(やっぱり少し居づらい気もしますけど、右も左もわからない場所で頼れる人を失うのは
得策ではありませんね・・・我慢しましょう)
領主「晩餐の時間まで適当にくつろいでいてください、何か御用があれば召使いに申し付けて
くれればいい」
詐欺師「ありがとうございます。長旅で疲れましたので少し眠らせていただきます」
囚姫「詐欺師さん寝るのー?」
領主「これ、疲れているのだから邪魔をしてはいけない。お前も疲れてるだろう、少し
寝ておきなさい」
囚姫「はーいっ、詐欺師さんまたねっ!」
カツカツカツ・・・
詐欺師(さて、少し眠りましょう。変なことになってきましたが、焦っても仕方ありませんからね)
すー・・・すー・・・・
- 22 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 22:44:28.62 ID:XBs1J/qu0
執事「詐欺師様、失礼いたします」ユサユサ
詐欺師「ん・・・?なんでしょうか」
執事「食事のご用意が整いました、主人がお呼びするようにと」
詐欺師「わかりました、すぐに行きます」
執事「かしこまりました」ペコリ
詐欺師(もう夜ですか・・・昼くらいに着いたはずなのに随分と寝てしまったものです。自覚は無いながら疲れていたのでしょうか)
─領主亭 1Fリビング
詐欺師「お待たせをして申し訳ありません、予想以上に深く眠っていたようで」
囚姫「待ってたよっ」
領主「いえいえ、お疲れになるのも当然。さあ、はやく座って下され。食事にしましょう」
詐欺師「失礼いたします」ガタッ
領主「運んでくれ」
執事「かしこまりました」
- 25 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 22:46:31.35 ID:XBs1J/qu0
・・・・・・
詐欺師「これは・・・すごいご馳走ですね」
領主「うちの料理人が腕によりをかけて作ったご馳走です、味は保障いたしますぞ」
囚姫「こんなご馳走私でもめったに食べられないんだよっ」
詐欺師「そう言われると恐縮してしまいますね」
囚姫「あははっ、遠慮しないで食べていーよ!」
領主「我が娘を救ってくださったお礼には遠く及ばないとは思いますが、こんなものでよければ存分に振舞わせていただきたい。どうか遠慮せずに食べてください」
詐欺師「では、いただきます」
囚姫「いただきまーすっ」
領主「では私も頂こうか」
パクパク、モグモグ
詐欺師「おいしいですね、特にこの鳥肉のソテーがたまらない」
領主「ここら辺は見ての通り砂漠気候だから魚などの海鮮は手に入りにくいが、鳥などの獣肉なら取れる。オアシスの近くでは野菜や麦も育てられているから食べ物はそれなりに手に入るんです」
囚姫「鳥の肉はパサパサしがちだけど、それをバターで包むことによって柔らかくしっとりと仕上げてるんだよっ、これはうちの料理長の得意料理なんだっ」
詐欺師「ふむ・・・得意料理と言うだけありますね、素材の味を殺さず、かといって粗野な味でもない。素晴らしい一品だと思います」
- 27 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 22:48:56.12 ID:XBs1J/qu0
領主「はっはっはっ!その言葉料理長が聞いたら喜びます!」
囚姫「ところで詐欺師さんはお酒は飲むの?」
詐欺師「ええ、さほど強くはありませんが嗜む程度に」
領主「では酒も出すとしよう、執事・・・リュウゼツラン酒の10年ものを出してくれ」
執事「かしこまりました」
詐欺師「リュウゼツランからお酒を作るのですか?」
領主「メスカルとも言いますな、この地方ではサソリを入れたり花を漬け込んだりして楽しみますぞ」
詐欺師「メスカル・・・ああ、私の世k・・・いえ、国にもありますね。ですがサボテンが原料だと思っていましたが」
領主「サボテンですか、どこかで間違って伝わったのでしょう。サボテンは酒にされることはありませんね。幻覚剤として用いられることはあるようですが」
詐欺師(ふむ、メスカル・・・元いた世界ではメキシコが原産のお酒だったでしょうか?こちらにもその文化はあるようですね)
執事「お待たせを致しました。リュウゼツラン酒の10年ものでございます。割り方はいかが致しますか?」
詐欺師「ありがとうございます。何かお勧めはありますか?」
領主「これはなかなかにきつい酒で、ソーダか果汁で割るのが一般的ですな」
詐欺師「ではソーダでお願いします。1:1くらいで」
執事「かしこまりました、今しばらくお待ちを」
- 28 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 22:50:47.47 ID:XBs1J/qu0
執事「お待たせいたしました、リュウゼツラン酒のソーダ割りでございます。勝手ながら肴になりそうなものを2,3品見繕わせました、よろしければどうぞお召し上がりください」
詐欺師「お気遣いありがとうございます、喜んで頂きます」
領主「さあ、乾杯といきましょうか」スッ
囚姫「乾杯だよっ!」スッ
詐欺師「ええ」スッ
領主「我が愛娘の無事の帰還と、詐欺師殿との出会いに、乾杯」
囚姫「カンパーイッ!」
詐欺師「乾杯」
ゴクゴクゴク
詐欺師「これは・・・なかなか喉に来る味ですね」
領主「お気に召しませんでしたか?」
詐欺師「いえ、味は好みです・・・ですがさっきも言ったようにあまりお酒には強くないもので、こういう類の強いお酒は初めてなものですから」
領主「はっはっ!慣れれば大したことはありませんよ。ほれ、娘も今では普通に飲んでいますから」
囚姫「おいしいよっ」
詐欺師(なるほど、この世界ではアルコールに年齢の規制はないのですね)
領主「最初は娘も飲むたびにふらふらとそこらを彷徨っていましたけどね」
囚姫「今は大丈夫だもーんっ」
詐欺師「私の国ではお酒は20歳にならないと口にしないのです。やはり遠く離れた国だと文化も違うのですね」
領主「ほう・・・そのような違いがあるとは驚きですな。この国は周りの国との交流が少ないですから
- 30 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 22:52:10.78 ID:XBs1J/qu0
詐欺師「そうなのですか?」
領主「ええ、国王様の決定で周りの国との貿易も行っておりません。ですから一つ隣の国を超えれば海があるのに魚などは手に入りにくいんですよ。なにせこの国の商人がわざわざ取りに行かなければなりませんから」
詐欺師(周りの国との交易が無い、鎖国時の日本のような状態と見ていいでしょうか?)
囚姫「私もこの国以外の国があるのは知ってるけど詳しくは知らないなー」
領主「私でも本当に近くの国しか知りませんね、生まれてこの方バルバットから出たことがありませんから」
詐欺師「私の国にもそんな時代がありました。国を閉じることによって自国の文化を守る目的だったようですね」
領主「でもやはり緊急の事態に陥ったときに他国の助けを得られないのは不安を覚えます。私も何度か国王様に他国と交流を深めるように申し上げましたが、どうやら国王様はそれを快く思わないようです」
囚姫「私今の国王様きらいー」ヒック
領主「めったなことを言うんじゃないよ、誰かに聞かれたらただじゃ済まないからね」
囚姫「はーいっ・・・」
領主「ところで詐欺師殿」
詐欺師「なんでしょうか?」
領主「私の娘を助けて頂いたとき、他に誰かいませんでしたか?そう・・・奴隷として売られようとしている人間が」
詐欺師「いえ・・・私が囚姫と会ったときは囚姫が逃げてきたときでしたから、遠くにキャラバンが見えましたがそれ以外はわかりません」
- 31 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 22:54:10.00 ID:XBs1J/qu0
領主「そうですか・・・」
詐欺師「それが何か?」
領主「本来なら客人にお話するようなことでもないのですが、酒の席です、お話しましょう」
詐欺師「はい、お願いします」
領主「事が起こったのは今から5日前でした・・・私の領地には兵隊というものを置いていません。
兵隊を育てるくらいなら農地や牧場を増やして穀物や野菜・果物、家畜を増やしたほうが建設的だと私は考えているからです」
詐欺師「それはそうですね」
領主「はい、ですがその考えは甘かった。私の領地はそこそこの大きさがあり、バルバット王国からも開拓の許可を得ているので油断をしていました。人さらいの一団が襲ってきたのです・・・
奴等は王国の許可など気にするような連中ではありませんから、散々に悪事の限りを尽くし、
若い男や美しい娘を根こそぎさらっていきました」
囚姫「・・・」
領主「人さらいがやって来た時間に、運悪く娘も外に出ていたのです。自慢ではありませんが、娘は器量が良いと思います・・・娘が外で遊んでいるのを見た人さらいは娘も連れて行ってしまったのです」
詐欺師「そういう事情だったのですか」
領主「はい、全ては私が注意を怠ったせいです・・・どれだけ自分を責めても足りません」
詐欺師「取り返しに行くことはできないのですか?」
領主「先ほども申し上げましたように、私の領地には兵がいません。対して相手は人さらい・・・人を人とも思わぬ鬼畜共です。若い男がさらわれた今、この地に残るのは年老いた者や女子供のみ・・・私たちの手ではどうしようも・・・」
囚姫「ぐすっ・・・」
領主「詐欺師殿・・・」
詐欺師「・・・なんでしょう?」
詐欺師(嫌な予感がしますね)
- 33 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 22:56:06.33 ID:XBs1J/qu0
領主「娘を救っていただいてろくなお礼も差し上げられず、加えてこのようなことを言うのはおこがましいことと理解しています」
詐欺師「はい」
領主「ですが、さらわれた人間は皆我が家族・・・今でも檻の中で助けを待っていることでしょう。どうか・・・どうかっ、ご助力願えませんでしょうか?」
詐欺師「勘違いなさっているようですが、私はただの人間です。神でも強い軍人でもない。そんな私になにをしろと言うのですか」
詐欺師「娘から聞きました、詐欺師殿は聡明であられる。端的に言えば・・・その・・・詐欺の才能があると聞きました。図々しいとは分かっております、ですが・・・どうかそこを曲げて我らを助けては頂けませんかっ!?」ぺこりっ
詐欺師「お金で取り戻すことはできないのですか?」
領主「お恥ずかしながらさほど裕福な家庭ではなく・・・今日お出しした料理は特別ですが、この家と私の財産を全て売り払ってもとても全員を取り戻せる額には達しません。領民も食べる分は苦労しないようですが、人を買い戻すとなると・・・」
詐欺師(面倒なことになりました・・・やはり他所の世界であまり余計なことはするべきではありませんでしたね。かと言って乗りかかった船、このまま見捨てるのもどうなのでしょう)
詐欺師「・・・」
領主「やはり駄目でしょうか・・・」
詐欺師「ふたつ・・・条件があります」
領主「お伺いいたします」
詐欺師「ひとつ、成功報酬でかまいません。仕事として承りますので、報酬を」
領主「それはもちろんっ!」
詐欺師「ふたつ、私がそのさらわれた人たちを助けるために使う物資は出来る限り用意すること。私は身一つでこの国に来ました、やはり何をするにしても必要な物は出てきますから」
領主「お約束しましょう」
詐欺師「ではこの`仕事´、承ります」
- 34 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 22:57:47.77 ID:XBs1J/qu0
領主「ありがとうございます!本当にありがとうございますっ!!」
囚姫「詐欺師さんありがとうっ!」
詐欺師(はあ・・・面倒事はなるべく避けたいのですが、まあ仕方ありませんね)
領主「では、その件について考えるのは明日ということで・・・」
詐欺師「いえ、今から始めます。色々と用意もあるので」
領主「でも、お酒も召し上がっていることですしそれほど急がなくても・・・」
詐欺師「さらわれた人々は『奴隷』として連れて行かれたんですよね?それなら早急に取り戻さないと売られてしまうリスクがあります。私の仕事はさらわれた人を取り戻す事ですから、損害はなるべく小さくしておきませんと」
領主「そうですね・・・わかりました」
詐欺師「それでは今から用意するものを準備して頂きたい。まずはお金です、囚姫を助けたときに人さらいから聞いたのですが、人間一人につけられる値段が平均して金貨350といったところでしょうか?紙幣換算で約3万5千ですね。さらわれたのは何人ですか?」
領主「大体50人くらいです」
詐欺師「でしたら紙幣が金貨175万分・・・紙幣一枚の額は?」
領主「千です」
詐欺師「1750枚・・・ちょうどいいですね」ニヤリ
領主「何をお考えですか?」
詐欺師「まずその千の紙幣を200用意してください」
領主「それならお安い御用です」
詐欺師「それと、紙幣が千枚入る木箱を二つ、紙幣サイズに切った紙を1550枚、あと正式な契約書に使える紙を2枚と筆記用具と印鑑を」
領主「それだけでいいのですか!?」
詐欺師「問題ありません、私を誰だとお思いですか?取引のプロ、『詐欺師』ですよ」ニヤリ
- 35 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 22:59:10.24 ID:XBs1J/qu0
領主「言われたものの準備がすべて整いました」
詐欺師「では少し作業を手伝っていただきます、まず紙幣サイズの紙を100枚重ねてその裏表に紙幣を貼り付けてください。これをできるだけ作ります」
領主「それは・・・どういうことですか?」
詐欺師「見ていればおのずと分かるでしょう・・・あ、あと紙幣100枚はひとつの束にしておいてください」
領主「わかりました・・・」
囚姫「私もお手伝いするよっ」
せっせっ・・・せっせっ・・・
─3時間後
詐欺師「できましたね」
領主「これは・・・なかなか疲れる作業ですな」
囚姫「すー・・・すー・・・」
詐欺師「囚姫は寝てしまいましたね・・・仕方ありません、散々怖い思いをした後でしょうから」
領主「執事、娘を寝室に。起こさないでやってくれ。それが終わったらもう休んでいいぞ」
執事「かしこまりました。お先に失礼致します」
詐欺師「さて、あとは手伝ってもらうようなことはありませんね。私が契約書を書いて、最後にこちらの印を押せば全ての用意は整いますから」
領主「しかし・・・こんな紙に紙幣を貼っただけのもので何ができるのですか?中を見てしまえば偽物だとすぐにわかってしまう」
詐欺師「ではやってみましょうか」トントン
領主「これは・・・」
詐欺師「木箱に並べればそれらしく見えるでしょう?あたかも札束が並んでいるように」
領主「だから金貨ではなく紙幣で取引をしようとしているのですね」
詐欺師「その通り、金貨では偽物を作れたとしても時間がかかりすぎますからね」
領主(驚いたな・・・このような知識を持っているとは、やはり只者ではないようだ)
- 36 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:00:21.06 ID:XBs1J/qu0
詐欺師「さて、これで明日の朝には出発できるでしょう。明日は領主殿にも来てただきますから、今日のところはお休みになってください」
領主「わかりました、明日に備えることにします。詐欺師殿はさきほど休んでいただいた部屋でお休みください」
詐欺師「わかりました、おやすみなさい」
領主「おやすみなさい」
詐欺師(さて、ここからが本番ですね・・・詐欺師の心得その7、準備は最後の段階まで油断することなかれ)
カリカリ・・・カリカリ・・・
詐欺師「あ・・・」ハッ!
詐欺師(今気づきましたが・・・日本語で契約書を書いてこの土地の方は読めるのでしょうか?言葉が通じていたのを不思議に思わなかった私も私ですけど)
詐欺師(本でもあればどのような言語が使われているかわかるのですけど・・・)ゴソゴソ
詐欺師(あったあった・・・これは、日本語ですね。日本から明らかに中東に飛ばされたというのになんという都合のいいことでしょう)クスクス
詐欺師(この国の歴史ですか、興味は尽きませんが今は確認だけにとどめておきましょうか)スッ
詐欺師(・・・ん?)カタッ
詐欺師(これは・・・見たことのない文字ですね)
─砂の書─
詐欺師(でも意味はわかる・・・一体どういった仕組みなのでしょう?)ペラッ
- 37 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:01:29.63 ID:XBs1J/qu0
─私はある研究を続けていた。
森羅万象を支配し、あらゆる力を我が物にすることができるというオーブについて長年思考と考察を繰り返し、新たな実験を行っては失敗を繰り返すという日々を何年も送ってきたのだ。
だが、結局その力は手に入らず、幾年も続けた研究は無駄になったかと落胆していた。しかし、その研究は思わぬ副産物を生み出した。それは世界を手にするにはほど遠いものだったが、私の研究意欲をさらに掻き立てるのに十分な魅力を秘めている。
月のオーブ、砂の地の夜を明るく照らす月の光が込められた手に乗る大きさの球に、時間を飛び越し時空を歪め、発動した者の体ごと別の世界へと送ってしまえると思われる力が秘められているのだ。
私はもう40歳にもなり、先の命もそうは長くないだろう。今こそこの砂の書を使い新しい世界へと旅立つ時が来たのではないだろうか・・・私はこのオーブの力を発動するにあたって一度月の光を封印し、
その力を言霊という発動キーによって爆発的に弾けさせることによって世界の跳躍を行おうと考えている。
私はこの力を封印した書を2冊作った。1つは私のために、1つは後の世に残そうと思う。願わくば、研究意欲豊富な人間がこれを有効に活用し、新たな世界を見てくれることを願う。
追記、月のオーブの力は世界の移動を6回ほど行えると思われるが、保障はできない。これを心に留め置いていて欲しい。
アルテ・ヴァファロス・ファラオ──
- 39 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:02:48.15 ID:XBs1J/qu0
詐欺師(ファラオ・・・古代エジプト語で王、神の子の意・・・これはっ!)ガタッ
詐欺師(もしかしてこの本に書いてある月のオーブの力は正当に発揮されたというのですかっ!?だとしたらこの違う世界にこの本があることも納得できる・・・)
詐欺師(古のエジプト王はこの砂の書を使ってこの世界にやってきた・・・失敗の場合を考えて残したもう1冊は私が元いた世界にある)
詐欺師(そうだ、思い出しました・・・わたしはここに来る前の夜、布団の中で辞書を片手に図書館の倉庫の奥の奥で見つけた本を読んでいました。題名は・・・砂の書)
詐欺師(そして、ある程度解読したところで、始動キーとなる言葉を見つけたんです)
詐欺師(それを呟いた瞬間、私はここに来ていた)
詐欺師「戻れるんですね」ボソッ
詐欺師(いつでも戻れるとなれば焦る必要もありません。今回の仕事を終えれば報酬ももらえることですし、それをもらってからでも帰るのは遅くないでしょう)
詐欺師(そういえば・・・これはファラオが使ってから誰も使っていないのでしょうか?)クルッ
─Last Four Times─
詐欺師(あと4回・・・最後に使った人間の書き残しでしょうか?随分と味なマネをしてくれますね。しかし、これだけあれば十分ですね。元いた世界の同じ場所に戻れるとすればあちらにも同じものがあるはずですから、あるとすればまた戻ってくることも可能でしょう)
詐欺師(これは大切に持っておくことにして、契約書の続きを書いて明日に備え休みましょうか)ゴソゴソ
カリカリ・・・カリカリ・・・カリカリ・・・
- 40 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:02:53.22 ID:14qi8gdX0
こら支援しないとさるくらうな
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