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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その39
152 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/23(水) 18:14:47.11 ID:gcDrZGGuo
 4度となる鱗粉の粒子は、白く輝いていた。

召喚士「…………っ」

ベルゼブブ『何故、視覚を残したか理解したか?』

大軍師「……」

ベルゼブブ『互いが苦しんで死にゆく様を、その目で見届けられるようにだ』

ケツァルコアトル「ゴチャゴチャうるせぇんだよテメーは!!」バッ!!

ベルゼブブ「!?」

ケツァルコアトル「っらああぁぁ!!」

 ズッガアアアアァァァァン!!

ベルゼブブ「……刀、そして槍の次は……斧か」

ケツァルコアトル「あるモンは使っていかねぇとな!」

ベルゼブブ「しかし残念だ。先程の槍に比べ、力を感じない」

ケツァルコアトル「んな事ぁ分かってんだよ」

ベルゼブブ「ならばどうする?」

ケツァルコアトル「身に着けているモンを、よーく見てみろや」


153 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/23(水) 18:15:40.10 ID:gcDrZGGuo
ベルゼブブ「……?」

ケツァルコアトル「斧に付加されてる炎だけじゃねぇ。防具の装飾品にも……」ジャラッ

ベルゼブブ「詰まらぬな」

ケツァルコアトル「何ぃ?」

ベルゼブブ「不可能だ。そんな事は」

ケツァルコアトル「なーんでテメーに分かんだよ」

ベルゼブブ「貴様程の使い手だ。分かっているのだろう?」

ケツァルコアトル「あ?」

ベルゼブブ「五行と五感は通ずるものがある。故に、貴様はそれを持って身を守っている」

ケツァルコアトル「ああ、そういう事」

ベルゼブブ「もし斧へ五行を特化すれば、貴様の身を守る術は何もなくなると言う事」

ケツァルコアトル「うははっ!!」

ベルゼブブ「……?」

ケツァルコアトル「だったらよぉ、試してみようじゃねーか」

ベルゼブブ「「……そういう事か。ようやく理解した」


154 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/23(水) 18:16:27.49 ID:gcDrZGGuo
ケツァルコアトル「……」

ベルゼブブ「身が削がれようとも、相打つつもりか」

ケツァルコアトル「……」

ベルゼブブ「フッ、浅はかなものだ。余と相打つなどと――」

ケツァルコアトル「うるせえ……って、言ってんだろうが!!」ギュバッ!!

ベルゼブブ「違う」

ケツァルコアトル「あぁ?」グアッ

ベルゼブブ「根底からして貴様は間違っている」

 ガッシュウウウウゥゥゥゥ!!

ベルゼブブ「余の身に対し、五行は効かぬのだ」

ケツァルコアトル「――ッ!?」

ベルゼブブ「もう1度申すか? 余に、五行は効かぬ」

 戦士の斧は確かにベルゼブブの頭部を切り落とした……はずであった。

 地上に落ちる巨大な蠅の頭は、地面へ打ち付けられる前に空中で何千という蠅に

 その姿を変え、再びベルゼブブの体内へと吸収されていったのだ。


155 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/23(水) 18:17:21.84 ID:gcDrZGGuo
ベルゼブブ「貴様が斧を特化しようが別段、どうという事もないのだ」フオンッ

ケツァルコアトル「んな……っ!!」

ベルゼブブ「そして、貴様は余に対する武器を全て失った事となる」ガシッ

ケツァルコアトル「――!?」

ベルゼブブ「……良い斧だな。とても人が作り出した代物とは思えぬ」

 バッギャアアアアァァァァ!!

ケツァルコアトル「ごー―ふ……っ」ドシャッ

ベルゼブブ「余計な手間を掛けさせるな。時間の無駄だ」

 ヴヴヴヴヴヴヴヴ

ケツァルコアトル「く……そぉ……っ」ジャリッ

ベルゼブブ「……?」

ケツァルコアトル「何か……手は……」

ベルゼブブ(……どういう事だ。奴は何故、五感を保っていられるのだ……ッ)

ケツァルコアトル「何か……武器は……武器はねぇのかよ……っ」ザッ

ベルゼブブ「……そうか、そういう事か」


156 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/23(水) 18:18:00.35 ID:gcDrZGGuo
 ヴヴヴヴヴヴヴヴ

ベルゼブブ「器と中身が違う、だから貴様には五感への攻撃が効かぬと言うのか」

ケツァルコアトル「……ッ」

ベルゼブブ「憑依型の召喚獣とでも言うべきか。厄介なものよ」バサァ

ケツァルコアトル「借りモンの身体だ、ぶっ壊したくはないが……仕方ねぇ」

 魔王ベルゼブブはケツァルコアトルに対し、直接工攻撃を仕掛けるべく準備を始める。

 それは即ち、間接攻撃が無意味と理解した上で、確実にとどめを差しにきたのだ。

ベルゼブブ「消えよ。先に涅槃へ行き、同胞を待つが良い」

ケツァルコアトル「戦士とやら、悪く思うなよ! ベルゼブブを倒す為だ!」ザッ

戦士『待てっ!! あれは……何だ!?』

ケツァルコアトル「……!?」

 それは瓦礫の中にひっそりと眠っていた。そしてごんやりと黒い光を発していた。

ケツァルコアトル「あれは……っ!!」ダンッ!!

ベルゼブブ「……?」

 ケツァルコアトルは戦士の声に反応し、それを瞬時の内に取りに向かう。


157 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/23(水) 18:19:19.01 ID:gcDrZGGuo
ケツァルコアトル「間に……合ええぇぇ!!」

ベルゼブブ「……」

 ゾクゥ!!

ベルゼブブ「――ッ」

 油断したわけでも静観したわけでもない。それほどまでに早かった。

 まるでその黒い棒が自分の意思を持って、戦士の手中に収められたかのようであった。

ベルゼブブ(何だというのだ、この気配は。余が……攻撃を躊躇したと言うのかッ)

ケツァルコアトル「……ふーっ」ガシッ

ベルゼブブ「そんなものもあったな」

ケツァルコアトル「ただのステッキじゃーねえよなぁ」

ベルゼブブ「……」

ケツァルコアトル「ステッキ越しにビンビン、持ち主の意思が伝わってくるぜぇ! うははっ!」

ベルゼブブ「言っておくが、それは魔剣だ。人間の肉体には余――」

ケツァルコアトル「気づいたか? 五感と同じだ。精神は俺だからなぁ」

ベルゼブブ「……貴様」


158 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/23(水) 18:22:29.30 ID:gcDrZGGuo
 その黒いステッキの主はかつて、魔王ベルゼブブに反逆し、挑み、そして死んだ。

 戦士とは本音でぶつかり合い、戦った。だからこそ何かを感じたのかも

ケツァルコアトル「いいじゃねぇか、しっくりくるぜ」

 十字架のステッキが鞘となっており、中からは仕込み刀のように、

 細いながらも力強い刀身が姿を現した。

戦士『……ゲーデの……剣っ!!』

ケツァルコアトル「ベルゼブブ、てめぇは確か……五行は効かねぇとかぬかしてたよな」

ベルゼブブ「召喚獣、人間……そして魔族。まさか全てが繋がり合うとでも言うのか」

ケツァルコアトル「その通りさ。そしてそれらのパワーが集まればああぁぁーっ!」

ベルゼブブ「近接は危険か、止むを得ん」バッ

ケツァルコアトル「てめぇを葬るっ、五行以上のパワーになる!!」ゴアッ

ベルゼブブ「ならば、その前に貴様を潰すまでよ」

ケツァルコアトル「やれるもんなら――」
戦士『――やってみろや!!』

ベルゼブブ「!?」

 戦士は飛ぶ。ゲーデの剣を携えて、遥かなる高みへと。


159 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/23(水) 18:23:45.45 ID:gcDrZGGuo
 ゴアアアアァァァァ!!

ベルゼブブ「跳躍のレベルではないッ、飛んでいるだと……!?」

ケツァルコアトル「ありがとよぉ、召喚士!」

ベルゼブブ「あれは……召喚獣ッ!」

クジャタ「オオォォ……」ゴオオォォォォ!!

ベルゼブブ「風で押し上げたのか……ッ、しかも――」

ケツァルコアトル「うっらああああぁぁぁぁ!!」

ベルゼブブ「余の動きまで……制御するとはァ!!」

召喚士(最後の魔力だ……。これ以上はもう……何も出来ない……)

ケツァルコアトル「いっけええぇぇぇぇ!!」
戦士『――いっけええぇぇぇぇ!!』

ベルゼブブ「クッ」

――『道は今、拓けた。運命を越えた……その先の、宿命へと』

ベルゼブブ「――――ッ!!」

 三位一体。召喚獣と人間と魔族の力。3つの道が1つに交わり、

 蠅の王、魔王ベルゼブブをついに地へと落とす事と相成った。


163 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/05/23(水) 19:00:33.59 ID:zpG1jcNxo
さすが名脇役の召喚士さんナイスアシスト


166 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/05/23(水) 21:58:36.40 ID:m9VhH5+fo
>>1乙!

真の主人公、天才さんが出るまでもなくベルゼブブ倒せそうだなwwwwww


167 名前:NIPPERがお送りします(愛媛県) [sage] 投稿日:2012/05/23(水) 22:05:37.67 ID:64S1vAYoo
あン時からずっとそこに転がってたんかい、ゲーデの剣wwwwww


172 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:00:38.09 ID:vEn6TSx2o
 ザッシュウウウウゥゥゥゥ!!

ベルゼブブ「――――ッ」

 ドッグシャアアアアァァァァ!!

召喚士「がはっ!! はぁっ!! はぁっ!!」

ジュニア「呼吸が出来……動ける……ぞ……っ」

戦士『おっしゃあ!! やったぜ!!』
ケツァルコアトル「いや、まだだ」

 ザザアアアアァァァァ!!

魔道士「――!?」

 床に叩き付けられたベルゼブブは、1つの巨大な蠅から無数の小さな蠅へ

 その姿を変えて、粉が散るように実体を消失させる。

ケツァルコアトル「五感への精神攻撃はこれで解いた。だが……」
戦士『魔王へダメージは与えてねぇって事か?』

ベルゼブブ『やってくれる。正直、ここまでやれるとは思わなんだ』

ケツァルコアトル「魔剣と五行、これでベルゼブブとやりあうにはやりあえる」
戦士『だがそれじゃあ、トドメはさせねぇって事か……』

ベルゼブブ『……ふーむ』


173 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:01:18.41 ID:vEn6TSx2o
戦士『何が足りねぇんだ? 俺の力で何とかならんか?』

ケツァルコアトル「ならねーな。必要なのは聖行」
戦士『!?』

ケツァルコアトル「さっきの槍みてーな媒介となるモンが欲しいんだがな」
戦士『だったらゾディアックを回収して、もう1回ぶっ放すしかねぇ』

ケツァルコアトル「駄目だ。ぶっこ抜いたらベルゼブブの肉体が戻っちまう」
戦士『じゃあどうすりゃいいんだよ!』

ケツァルコアトル「……斧も未完な挙句、奴の手中。困ったなぁ……うはは」
戦士『笑ってる場合かよ……っ』

ケツァルコアトル「とにかくだ、あと少しだけお前の身体借りるぞ」
戦士『幾らでも貸してやる! だからその代わりに、仲間を救ってくれ!』

ケツァルコアトル「りょ〜かい。うはは!」
戦士『おらっ、いけええぇぇ!』

 ザンッ!! バシュウウゥゥゥゥ

ベルゼブブ「何度でも努力する事と何度やっても無駄な事」

ケツァルコアトル「うりゃああああぁぁぁぁ!!」

ベルゼブブ「それを履き違えては、何の意味も持たぬ」

 ガッキイイイイィィィィン!!


174 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:01:54.34 ID:vEn6TSx2o
ケツァルコアトル「な――っ!?」

ベルゼブブ「分からぬか? この姿は実体であり、実体ではない」

 多くの蠅が人間の右手を模し、ゲーデの剣を握るような形で受け止める。

ベルゼブブ「1匹であろうが何万匹であろうが、余であり、余ではない」

ケツァルコアトル「く……っそ――」

 ドッゴオオオオォォォォ!! ズシャアアァァァァ

ケツァルコアトル「ごほごほ……っ。ぺっ!」ビチャッ

ベルゼブブ「そして貴様等は何も出来ぬうちに、ひっそりとその命を終わらせるのだ」

 ヴヴヴヴヴヴヴヴ

ケツァルコアトル「結界だぁ!! 急げっ!!」

エリート「!?」

大軍師「いけますかっ?」

ジュニア「ちぃーっ! 魔道士ちゃんも手伝え!」

魔道士「えっ!? や、やってみます……っ」

 パアアアアァァァァァ……


175 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:02:45.36 ID:vEn6TSx2o
ジュニア「全員固まれぇ! こん中なら奴の特殊攻撃も防げるかもしれん」

ベルゼブブ「考えたな。そういう事も出来るのか」

ケツァルコアトル「ざまぁみろ。これでてめぇの間接攻撃は封じた」

召喚士「戦士っ、じゃなくってケツァルコアトル! あなたも……」

ケツァルコアトル「俺まで退いたら誰が相手すんだっつーの」ザッ

ベルゼブブ「それは勇敢とは言わぬ。無謀だな」

青年兵「――――っ」ドクンッ

ベルゼブブ「決定打が無き以上、貴様に余を討つ事など不可能。いや、元より……」

 ズゴゴゴゴゴゴゴ……

ベルゼブブ「不可能なのだよ」

ケツァルコアトル「やってみなきゃあ……分からんだろうがっ!!」ダンッ!!

ベルゼブブ「申したはずだがな」

ケツァルコアトル「っらああああぁぁぁぁーっ!!」

ベルゼブブ「貴様の動き、もう慣れた……と」

ケツァルコアトル「!?」


176 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:03:56.88 ID:vEn6TSx2o
 蠅は人型となり、ケツァルコアトルの突進を真似るように前進する。

ケツァルコアトル「くっ!!」ババッ

 回避する方向と全く同様、鏡のようにベルゼブブの動きは対象をぴったりと捉える。

ベルゼブブ「知っているか?」フッ

ケツァルコアトル「……!?」

ベルゼブブ「複眼と言ってな。蠅の個眼は2000以上にも上るそうだ」

 ヴヴヴヴヴヴヴヴ

ケツァルコアトル(早いなんてモンじゃねぇ! 既に動きの先にいやがる――)

ベルゼブブ「行動パターンを把握してさえしまえば、その動きを捉える事など容易いものだ」

 ズギャアアァァァァ!! ドッゴオオオオォォォォン!!

ケツァルコアトル「――――っ!!」ドシャアアァァァァ

 複数の蠅は1つの巨大な塊となり、大槌のように戦士の身体を地面へと打ち付けた。

ベルゼブブ「先の礼を返させて貰ったぞ」

ケツァルコアトル「ナメ……やがってぇ」

ベルゼブブ「何をそこまでして戦うのだ?」


177 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:04:32.40 ID:vEn6TSx2o
召喚士「……青年兵くん、魔力は?」

青年兵「すみません……。もう召喚は無理ですね」

召喚士「……」

大軍師「私もあと1発、と言ったところでしょうか」

召喚士「万事休すか……」ヨロッ

ベルゼブブ「勝てぬと分かっていて、どうして戦う?」

ケツァルコアトル「説明する必要もねーな。うははっ」

ベルゼブブ「……」

 バギャッ!! ドシャアアァァ

ケツァルコアトル「ぐ……っ」

ベルゼブブ「余が問うのはこの戦闘に於いてのものではない」

ケツァルコアトル「……何だよ」

ベルゼブブ「どうせ終わりを迎える命なのだ。何故、そのように死に急ぐ」

ケツァルコアトル「終わるねー為に戦ってんだろうがよ!」

魔道士「そっ、そうですよ!」


178 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:05:24.37 ID:vEn6TSx2o
ベルゼブブ「……人は寿命というものがある。長くても100年も経てば死ぬ」

召喚士「……」

ベルゼブブ「なれば何故、寿命に抗う? 大人しくして居れば、長く生きられるではないか」

召喚士「貴様らが、その命を摘み取るからだろ!」

ベルゼブブ「……」

召喚士「小さな子供から赤子まで……長く生きようとする者の命を摘み取るからだ!」

ベルゼブブ「否定は出来ぬな。しかしそれこそが宿命ではないのか?」

召喚士「命に宿命なんてあるものかっ!」

皇太子「己の意思で死にゆくものは宿命であろうな。しかし……」

ベルゼブブ「……」

皇太子「罪もない、自分の意思とは無関係に奪われる命に宿命は感じないな」

ベルゼブブ「そうか、解釈の違いはやはり種族の価値観によるものか」

ジュニア「ワケのわかんねー事をゴチャゴチャと……」

ベルゼブブ「貴様等は知らぬ事が多すぎる。故に死に、学ぼうともせぬ」

召喚士「罪もない命を奪っておいて何を――」


179 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:06:23.28 ID:vEn6TSx2o
ベルゼブブ「スーパーノヴァ」

召喚士「…………?」

ベルゼブブ「初めて聞く言葉であろう?」

戦士『何の事を言ってんだ?』
ケツァルコアトル「知らん。俺も初めて聞く……」

ベルゼブブ「先日、サタンの力を開放したであろう」

召喚士「……っ」

大軍師「そうだとしたら?」

ベルゼブブ「下らぬ探りを入れる必要はない。余とて当然、理解しておるのだからな」

賢者「……」

ベルゼブブ「サタンはもうじき蘇る。さすれば人間など、最早どう足掻こうと終わりなのだ」

東方司令「何……?」

ベルゼブブ「この地上は、全てのものが粛清され、無と化し、闇に閉ざされるであろう」

エリート「出来るものかっ、此方とてただ傍観しているわけではないのだっ!」

大軍師「その通りです。それに貴方も理解してらっしゃるのでは?」

ベルゼブブ「……」


180 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:07:20.18 ID:vEn6TSx2o
大軍師「サタンは地上に降り立つ事は不可能です」

サタン「……フッ、クッククク」

大軍師「……」

サタン「この世界の周囲にはな、数々の星が点在している」

召喚士「……?」

盗賊「何の話だ?」

魔道士「さ、さぁ……っ」

ベルゼブブ「太陽や月とてそのうちの1つだ」

大軍師「……」

ベルゼブブ「その月だが、満月の際に魔力が増幅する。魔族も人間もそうであろう?」

召喚士「……それがどうした」

ベルゼブブ「満月というものも、常に同じ1つではない」

ジュニア「複数あるとでもいうのか? ヘッ、笑わせるぜ」

ベルゼブブ「物体は1つだが、その距離の問題だ」

召喚士「距離?」


181 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:09:07.24 ID:vEn6TSx2o
ケツァルコアトル「戯言に付き合う必要はねぇぞ!」バッ

ベルゼブブ「戯言? 不快な事を申すな」

 バッギャアアァァァ!! ドドオオォォォォ

ケツァルコアトル「……っ」ポタタッ

ベルゼブブ「余は講釈してやっているのだ。寧ろ、感謝して欲しいものだな」

皇太子「しっかりしろ」

ケツァルコアトル「来るなっ、結界から出るんじゃねぇ」

皇太子「しかしだな……」

ケツァルコアトル「人の事より自分の事を心配しやがれってんだ……っ」

皇太子「……っ」

大軍師「では、講釈の続きをお聞かせ願いたいものですな」

ベルゼブブ「貴様は頭が冴えている。さしずめ狙いは、時間稼ぎか何かであろう?」

大軍師(……読まれておりましたか。まぁ、流石ですね)

ベルゼブブ「まあ良い。満月は不定期ながらこの世界との距離が伸縮する」

賢者「……ふぅ」


182 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:10:38.81 ID:vEn6TSx2o
ベルゼブブ「そして満月が最も接近した時、その大きさは通常の何倍にも膨れ上がる」

東方司令「下らぬ。だからどうした!」

ベルゼブブ「それを余はスーパームーンと呼んでおる」

青年兵「スーパームーン……?」

ベルゼブブ「スーパームーンは月の大きさだけではなく、それに比例して魔力も大きくなる」

大軍師「つまり……通常の満月の何十倍にもなると?」

ベルゼブブ「察しが良いな。そういう事だ」

召喚士「だったらこっちとってもメリットはあるはずだ」

ベルゼブブ「……そうだな」

召喚士「……?」

ベルゼブブ「余も魔王ではあるが、サタンとは違う」

召喚士「は……?」

ベルゼブブ「サタンは絶対的な存在だ。余や他の魔王とは違ってな」

盗賊「……」

ベルゼブブ「その力は世界はおろか、地獄や他の星々にまで影響を及ぼす」


183 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:11:16.90 ID:vEn6TSx2o
ケツァルコアトル「いつまで……くっ喋ってやがる……!!」ジャリッ

皇太子「傷が開くぞっ」

ケツァルコアトル「……っ」

ベルゼブブ「スーパームーンの膨大な力を得る事で……」

ケツァルコアトル「ん……?」

ベルゼブブ「銀河の星々を吸い寄せるように並列させ、太陽を隠しその光をも奪う……」

ケツァルコアトル「アンタ……それ……っ」

皇太子「……?」

ベルゼブブ「そして、全ての世界にも及ぶ程の爆発を起こす」

大軍師「……ま、まさか……っ」

ベルゼブブ「それが……スーパーノヴァだ」

召喚士「――!?」

ベルゼブブ「貴様等はサタンを眠りより起こしてしまった。逆に禍であったな」

青年兵「だが、サタンはこの地上には居ないっ! そんな力を得る事は不可能だ!」

ベルゼブブ「そうだな。あれはもう何時になるであろうか」


184 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:12:42.00 ID:vEn6TSx2o
ケツァルコアトル「アンタ……それを、貸してくれっ!!」ガシッ

皇太子「!?」

ケツァルコアトル「……こんな所で出会えるなんてな」

皇太子「な、何だというのだ?」

ケツァルコアトル「アンタやっぱり、ただ似てるだけじゃねぇよ」

皇太子「……?」

ケツァルコアトル「きっと聖王の生まれ変わりなんだろうな。うははっ!」バッ

皇太子「おいっ!」

ベルゼブブ「サタンが地獄よりこの地上を目指した時、思わぬ阻止にあった」

盗賊「……」

ベルゼブブ「グングニルの槍。あの忌々しい一撃により、魔族の地上侵略は後退したのだ」

青年兵「……」

ベルゼブブ「しかもだ、聖柱などでサタンの身動きを封じたせいで、サタンは拘束された」

大軍師「……」

ベルゼブブ「しかしだ。そんなサタンでも不定期ながら魔力を得る好機がある」


185 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:14:45.65 ID:vEn6TSx2o
ジュニア「おいおい、まさか……」

ベルゼブブ「何十倍にも膨れ上がった満月による光は、深い地獄の闇をも照らす」

召喚士「っ!!」

ベルゼブブ「六芒星も破られ、地上の支配は事実上困難となった」

魔道士「……っ」

ベルゼブブ「サタンはおそらく、もう地上を捨てるであろうな」

大軍師「スーパーノヴァを引き起こすと……?」

召喚士「そうはさせない」

ベルゼブブ「……」

召喚士「スーパームーンが起こる前に、サタンを倒してみせる!」

ベルゼブブ「……次だ」

召喚士「……何?」

ベルゼブブ「スーパームーンはな、次の満月だ」

召喚士「―――−っ!?」

 サタンの静かで絶望的な発言に、一同は一切の声を上げる事など出来なかった。


186 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/05/24(木) 18:17:24.02 ID:vEn6TSx2o
終盤になると大味になっちゃうのはRPGぽい王道って事でアレですが、
主人公だと思ってた奴が実はサブキャラという斬新な(ry

今日もご支援ありがとうございました!それではまた!ノシ


188 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/05/24(木) 19:00:27.58 ID:pzAlRkGDO
いちょつ

サタンさん降臨しているじゃないですかあ…


194 名前:NIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2012/05/25(金) 01:06:51.57 ID:d+9LwB1AO
>>1おつ

5月5日がたしかスーパームーンだったんだよな。さすがうまいこと合わせてきよるな>>1は



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