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少女「ねえ、またいつか」
- 75 名前:VIPがお送りします []
投稿日:2011/06/13(月) 13:52:03.33 ID:tSQVz1JC0
休みの日。
僕「ふぅ」
僕「僕の方が先かー。えへへ」
僕「ちょっと待とうかな」
僕「……」
僕(風が気持ちいいや、放課後に来るのとはやっぱり違うなぁ)
僕「……あと違う事と言ったら」
僕「今日がお休みだから、かな?」
女「お待たせー」
僕「おっ」
- 76 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 13:57:35.14 ID:tSQVz1JC0
女「なにか一人で喋ってた?」
僕「ん……まあ、独り言だよ」
女「そっかそっか。楽しそうで何よりだよ」
僕「? 楽しそうってどうしてわかるの?」
女「ん……」
女「背中」
僕「あぁね」
僕(なんだか妙に納得してしまった……)
女「ふふっ」
女「じゃあ、出掛けよっか。二人で……歩こうよ」
僕「……ん」
女「ふふっ、しゅっぱーつ」
- 78 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 14:02:22.11 ID:tSQVz1JC0
僕「……ねえねえ」
女「ん?」
僕「こうして歩いてるのはいいけどさ、どこへ向かってるの?」
女「んー……」
女「あはは、行き先は別に決めてないんだ。ただ二人で、一緒にお散歩出来たらなあって思って」
僕「ふーん……そっか、それならそれで言ってよね」
女「……」
女「あはは、歩くだけ、なんて言ったら。さもっとつまんなさそうにして落ち込まれるかと思ったよ」
- 80 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 14:08:03.71 ID:tSQVz1JC0
僕「……別に。歩くのは結構好きだから。それに」
僕「い、一緒に歩くのもなんか楽しいし……さ」
女「ふふっ、よかった。さすがに二人だけで鬼ごっこした仲だよねー」
僕「いつも君が負けるだけの鬼ごっこ、だけどね」
女「ふんだ。その分今日は負けないもんー」
僕「……え? 今日もどこかで鬼ごっこするの?」
女「今日は、しないかなぁ」
女「私が負けないのは、別の事」
- 81 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 14:14:40.26 ID:tSQVz1JC0
僕「別って?」
女「それは私が勝った時に教えてあげるー」
僕「……はいはい」
女「あはは、その言い方好きだよ」
僕(好き……!)
僕(一瞬だけ……ドキッとした)
女「えへへっ」
僕「ね、ねえ。と言うか本当に目的地無いままなの? ただこうやって歩くだけ?」
僕(……なんか喋ってないとドキドキする)
女「んー」
- 82 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 14:24:07.77 ID:tSQVz1JC0
女「実は、いくつか行きたい場所の候補はあるんだよね」
女「学校裏の高台にある公園とか……向こうに見えてる森とか」
女「あ、あと川とかにも行ってみたいなーって」
僕「なんだ、歩くだけってわけじゃないんだ。場所はバラバラだけど」
女「徒歩で行けるのはこの辺りが限界かなーって」
僕「ん、じゃあ他に行きたい場所とかもあるの?」
女「……」
女「……」
僕「ん?」
- 83 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 14:30:55.05 ID:tSQVz1JC0
女「他にあるって言うか……えっと、どう言えばいいのかな」
僕「?」
女「とりあえず、今日はね」
女「あのいつもの草原から飛び出してみたかったんだ」
女「馴染みの場所でまた遊ぶのもいいけど……なんだか、二人で」
女「二人で一緒にちがう場所に行きたいなって。そう思ったの」
僕「ふーん……」
- 84 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 14:36:28.62 ID:tSQVz1JC0
女「とにかく一緒に歩きたい。多分そんな感じだよ」
僕「……ずいぶん最後にはしょったね」
女「まとめたのっ! だってほら、もう公園着いちゃったもの」
僕「あ……本当だ」
僕(とりあえずお話はおしまい、かな。女ちゃんの考えに結構興味はあるけど……)
女「誰もいないみたいだねー」
僕(今は目先の会話をしないと、ね)
女「学校から遠くないのに……人がいないとずいぶん寂しい感じがするよね」
- 85 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 14:40:06.87 ID:tSQVz1JC0
僕「わざわざ坂を上るのが面倒なんじゃないかな?」
女「坂なんてお話しながらだとすぐ終わっちゃうよー」
僕「……大抵みんな自転車でしょ。それでお喋りしながらは大変だよ」
女「そんなもんかなー」
僕「そんなもんだよ。あ、それでさ……来たのはいいけど」
僕「一体何して遊ぶの?」
女「んーと」
- 86 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 14:46:24.57 ID:tSQVz1JC0
女「まずはご飯にしよっか?」
僕「……たしかにお昼前でお腹はすいてるけどさ。でもご飯なんて無いよ」
女「えへへっ、じゃーん。この荷物はなんでしょうかー」
僕「荷物? まさか……」
女「なんとお弁当持ってきちゃいましたー。しかも手作り」
僕「わ」
女「もちろんお母さんのだけどね!」
僕「で、でもお弁当なんだよね?」
女「うん! 私もちょっとは手伝ったんだよー?」
- 87 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 14:52:33.79 ID:tSQVz1JC0
僕「……いただきます」
女「めしあがれー」
僕「……卵焼き」
女「あ、甘いやつで大丈夫だった? 私好みの味つけにしちゃったたけど」
僕「んっ……」
女「どう?」
僕「……」
僕「あまっ! 何これ!」
女「だから私好みって言ったじゃんー」
女「……食べられない?」
僕「……甘さにちょっと驚いたけど。でも」
僕「ちゃんと味わってみると美味しい、よ」
女「本当! よかったぁ……!」
僕「う、うん」
- 88 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 14:58:21.05 ID:tSQVz1JC0
女「こっちのミートボールも食べてね! あ、あと、これは私のグラタンなんだけど君にも特別にあげるっ!」
僕(女ちゃん……嬉しそうだなぁ)
女「あはは、嬉しそうに食べてくれるから、いいね。作ってきたかいがあったよー」
僕(だってどれも本当に美味しいから……)
僕(と、ハッキリは言えないな)
女「まだあるからどんどん食べてねー!」
僕(隣で、そんないっぱい笑顔になられたら……)
- 89 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:00:44.16 ID:aWmelm+2O
いいね
- 90 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:02:29.49 ID:tSQVz1JC0
僕「……ごちそうさま」
僕(美味しかったけど、ドキドキして味がよくわからないや)
女「はーい。どう? 美味しかった?」
僕「ん……大満足」
女「えへへ、やったあ」
女「ご飯食べたらちょっと休憩だね。このまま座って、時間潰そうよ」
僕「そう……だね」
女「あ、それともここで鬼ごっこする? 今やったらきっと私が勝つよー?」
僕「……」
女「ふふっ、冗談だってば。そんな顔して見ないの」
僕「……まったく」
女「あははっ」
- 91 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:07:36.28 ID:tSQVz1JC0
僕「……」
女「……」
女「……あ、飛行機」
僕「えっ?」
女「空がごうごう鳴ってる、ね」
僕「それは聞こえるけど。飛行機、どこ?」
女「ふふっ、見つからない?」
僕「……見つからない」
女「じゃあ私の勝ちー」
僕「はいはい、負け負け」
女「ふふっ」
- 92 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:11:12.50 ID:tSQVz1JC0
僕「ねーじゃあ飛行機どこにいるか教えてよ? わかんないよ。降参」
女「……」
僕「?」
僕「ねえってば」
女「……ん」
女「そろそろ、行こっか」
僕「えっ」
女「あはは、ちょっとゆっくりしちゃったね。早く次の場所に行こうよ、ね」
僕「……でも、飛行機」
女「くすっ。きっと君には見つからないよ」
僕「どうして?」
女「だって……」
女「……ううん」
僕「?」
女「私、先に行くからね」
- 93 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:18:46.59 ID:tSQVz1JC0
僕「あ、ま、待ってよ」
女「あははっ、遅い遅いー」
僕「ね、ね。なんで僕には飛行機見つからないって言ったの?」
女「んー……君がちょっとだけ大人だから、かな」
僕「? なんだよ、それ。僕たち同じ子供じゃん」
女「あはは。たしかに歳は一緒だけどさ」
女「私に見えて、君には見つからない。同じ空見てるはずなのに、ね」
僕「……?」
僕「それがどうして、僕が大人って事になるの?」
女「あはは、大人はね。無邪気に空の飛行機なんか探さないんだよ」
女「だから、そういうのが見えなくなっちゃうんだよ。いくら探しても」
- 94 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:22:38.02 ID:tSQVz1JC0
僕「見え……なく?」
女「うん」
女「大人になったら飛行機雲を追いかける必要も無くなるでしょ? その前触れみたいなものだよ」
僕「……必要無くなる」
女「……」
女「くすっ」
僕「!」
女「くすくすっ。君って面白いよねー。ちょっと真剣な顔して話すと、すぐ信じ込んじゃう」
女「私のでたらめなお話なのにさー」
僕「な……!」
- 95 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:33:09.51 ID:tSQVz1JC0
僕「だ、騙したの?」
女「騙すもなにも……適当に話しただけだから、最初から何もないただの雑談だよー?」
僕「……バカにして!」
女「あはは、ごめんごめん。まさかあんな真剣に聞いてもらえるとは思ってなかったからさ」
僕「……だって」
僕「あんな風に真面目に話されたら、さ」
女「……」
女「君は優しいね」
女「あんな話を真面目に聞いて、受け止めてくれる。一生懸命に怒って反応してくれる」
僕「……」
- 96 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:40:52.71 ID:tSQVz1JC0
女「意外とさ、そういう気持ちって……」
僕「……なに?」
女「ううん、やっぱり止め。こういう話ってしんみりしちゃうね」
僕「言いかけはもっとよくないよ?」
女「あはは、言いかけでもいいんだよ。だって時間が流れて大人になったら……多分わかる事だもん」
僕「……僕にはよくわからないよ」
女「くすっ。じゃあまだ君は子供なんだ」
女「もう一回、飛行機探してみなよ。もしかしたら、見つかるかもよー」
僕「……」
- 97 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:49:12.72 ID:tSQVz1JC0
僕(彼女にそういわれ立ち止まって、少しだけ飛行機を探しながら)
僕(僕は視線を落としてチラッと彼女の方を見つめてみた)
女「……」
僕(僕と一緒に空を見ていた彼女は頻りに右を探し、左を探し……まるで最初から飛行機なんて見つかってなかったみたいな目をしていて)
僕(必死に何かを探していた)
僕(僕たちは二人で迷いながら、ただごうごうとだけ鳴る夕焼けがかった空を……)
僕(見えない飛行機の下で、ただ見ているだけだった)
僕(いつの間にか……)
女「……ぎゅっ」
僕(彼女の左手に僕の右手を奪われながら)
……。
- 98 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:53:55.10 ID:tSQVz1JC0
女「わ、川だよ川ー」
僕「は、はしゃぐと危ないよ。砂利道なんだからさ」
女「走ったりしなければ大丈夫だよ! しかもほら、これ見て」
僕「ん?」
女「えへへ。足に負担がかからないタイプのスニーカーだよ。おニュー!」
僕「……あ、こんなの履いてたんだ。確かにいい靴みたいだけどさー」
女「うん!」
女「だから砂利でも平気ー」
- 99 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 15:58:25.47 ID:tSQVz1JC0
僕「だ、だから走ったら危ないってば! もうあまり明るくないんだから、転んだら大変だよ」
女「むー……」
僕「ほら、ちょっと遊んだら。今日はとりあえず帰ろうよ、怪我する前にさ」
女「……」
女「やだ」
僕「やだって……帰らないつもり?」
女「帰るよ、帰るけど」
女「まだ森に行ってないもん」
僕「向こうに着く頃には真っ暗だよ。危ないよ」
- 100 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:02:05.42 ID:tSQVz1JC0
女「蛍だって見るつもりで来たのに……」
僕「夜にならないとね。それまではいられないでしょ? だから早いうちに帰っ……」
女「……」
女「行きたい場所、いっぱいあったのに」
女「まだたくさん遊びたいのに」
僕「……それは僕だって」
女「じゃあまだまだ遊んでようよ。暗くなるまで蛍待とうよ……!」
僕「でもそれは……ダメ」
女「どうしてっ!」
- 101 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:06:56.32 ID:tSQVz1JC0
僕「……」
僕「僕は大人だから、ね」
女「大人……?」
僕「うん。だからワガママ言わないで帰るだけなんだよ」
僕「また今度、大丈夫な時に遊びに来ようよ、ね?」
女「……蛍は?」
僕「また来週にでも」
女「森は?」
僕「そのうち行けるよ」
女「……」
女「ふーん」
僕「?」
女「うん、そうだね。その対応」
女「まさしく大人の返事……だね」
僕「えっ」
- 103 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:12:35.13 ID:tSQVz1JC0
女「そういうのって結局先伸ばしになるよねー?」
僕「……ならないよ。絶対の約束」
女「……本当? 嘘つかない?」
僕「うん、つかないよ。そんなに心配だったら毎日言ってくれればいい」
僕「次の休みは川に出かける、森に出かけるんだって……伝えてくれれば」
女「……」
僕「それじゃあダメかな?」
- 104 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:16:03.62 ID:8HWGO3Xx0
これは男が事故で死ぬフラグだろ
- 105 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:16:46.03 ID:tSQVz1JC0
女「伝えるって、いつもの場所で?」
僕「うん、朝に学校で言うよりは放課後の方が覚えてるもの。余計な授業の時間とか挟まないし……」
女「ふふっ」
女「じゃあ二人だけの場所で、秘密の約束だ」
僕「うん」
女「蛍見に行くのも、森に出かけるのも」
女「あの草原から飛び出して、どこか違う場所へ歩いて行くのも……全部」
女「二人だけの秘密」
僕「……うん」
- 106 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:21:40.03 ID:tSQVz1JC0
女「えへへ、じゃあ寂しくない。今日はおとなしく帰る」
僕「……ほっ、よかった」
女「ほら。早く帰らないとお母さんに叱られちゃうよー」
僕「あ……ま、また早いってば!」
女「えへへー、あんまり遅いと置いて……きゃっ!」
僕「!」
女「い、いたた……転んじゃったよ。うぅ」
僕「まったく。ほら、立てる? 平気?」
女「う、うんありがと……あいたっ!」
僕「!?」
女「いたた……足の裏がなんか痛い」
- 107 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:22:51.14 ID:YMtTUHga0
やめてくれ
- 108 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:25:33.70 ID:tSQVz1JC0
僕「裏?」
女「うぅ……もしかしたら靴擦れしてるかも。皮むけてる感じがする」
僕「……新しいスニーカーならそうかもね。転んで一気に痛めたのかな」
女「い、痛いよー」
僕「歩けそう?」
女「ち、ちょっと無理かも……どうしよう帰れないよ……」
僕「バンソウコウとかある?」
女「……持ってない」
僕「そっ、か」
- 109 名前: 忍法帖【Lv=4,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:27:17.90 ID:YMtTUHga0
フラグか?
- 110 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:30:01.75 ID:tSQVz1JC0
僕「ねえ女ちゃん」
僕「ほら、背中乗って」
女「えっ……」
僕「おんぶだよ。お家帰るんでしょ」
女「え、ええぇっ」
女「で、でも私きっと重いよ! そ、それにお家まではちょっと遠いから大変だよー……」
僕「大変でも、そうしないと帰れないよ。誰か呼びに行くにしても、こんな場所に一人は怖いでしょ?」
女「……まあそれは確かに」
僕「だから、ね?」
女「……」
女「……ん。わかった」
- 111 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/13(月) 16:36:03.23 ID:tSQVz1JC0
女「お、重くなーい?」
僕「あはは全然。結構軽いから楽勝だよ」
女「そ、そう……よかった」
僕「……」
女「……」
女(背中の上から見る景色なんて、いつ振りだろう)
女(……えへへっ)
僕「あ、ねえ」
女「んっ、なーに?」
僕「このままお家まで運んで大丈夫?」
女「お家……ううん、そうだなー」
女「少しだけ。ほんの少しだけ寄り道してこうよ」
僕「ん。どこに?」
女「決まってるじゃん、いつものあの……」
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