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真剣士「英雄の…血…?」
97 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 20:52:20 ID:DVHFj7A6
 
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大魔道「…」

真剣士「英雄を…紡ぐ?血を伝える?」

大魔道「はい」


真剣士「何を言っているんだ?」

黒髪乙女「うん…、大魔道さん、私もちょっと意味が…」


大魔道「…」


98 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 20:52:57 ID:DVHFj7A6
 
真剣士「もっと、分かりやすいように教えてくれないか?」

大魔道「…この世界の歴史、というものは知っていますか?」

真剣士「歴史?」


大魔道「錬金術による世界の技術が発展する遥か昔のことです」

真剣士「…?」

大魔道「その時代、この世は魔法で支えられていました」

真剣士「魔法で…?」


大魔道「もちろん、人々は今のように笑顔で、魔法と錬金技術が交じり合う世界に住んでいたのです」

黒髪乙女「…」

真剣士「…」


99 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 20:53:44 ID:DVHFj7A6
 
大魔道「何度の戦争もありました。忘れられる事の出来ないことが…沢山と」

真剣士「…」

大魔道「…少し、昔話をしましょう」


100 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 20:54:28 ID:DVHFj7A6
 
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――遥か昔。

人間の世界に、魔族という方達が現れました。

そして、魔族は人間の世界を奪わんと…戦いを挑んできたのです。


当時、その企みを阻止するため…人間たちは立ち上がりました。

一丸となり、魔族の王である"魔王"は一人の人間によって倒されたのです。


それが"英雄"の始まりです。


101 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 20:55:33 ID:DVHFj7A6
 
魔王の討伐により、世界は平和になりました。


ですが、それはほんの僅かな時間でした。


残党である魔物や、その混乱に乗じた人間たちが世界を掌握せんと企みました。

そして…戦争は絶えず起きました。


しかし、その度に…その英雄の血を引くものが、幾度となくこの世界を守ったのです。

やがて長い時が流れ…魔界と人間界は繋がり、本当の平和が訪れました。


102 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 20:56:18 ID:DVHFj7A6
 
そののち…魔族は魔界へと戻りました。


人間たちの争いもやがて落ち着き、錬金術に頼るようになると、魔法は徐々に廃れていきました。

魔法というものは体力を使い、それに頼らない錬金技術はとても楽だったからです。


そこから何年たったでしょうか…。

魔法は姿を消し、戦いの歴史は闇の中へと消えていきました…。

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103 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 20:56:52 ID:DVHFj7A6
 
大魔道「…これが、この世界の本当の歴史です」

黒髪乙女「…」

真剣士「…」


大魔道「そして、その英雄の血を引く者…それが…貴方です」

真剣士「お…俺…?」

大魔道「はい」


真剣士「魔族?英雄?…冗談きっついぜ」ハハハ

大魔道「…」

真剣士「…」

大魔道「冗談ではないですよ。その証拠、お見せいたします」


104 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 20:58:33 ID:DVHFj7A6
 
…ビキッ…ビキビキッ…


黒髪乙女「!」

真剣士「!」


大魔道「この腕を見てください。僕自身が、魔族の血を引く者…なのですよ」

真剣士「…っ」

黒髪乙女「漫画に出てくるのみたい…、本物なのこれ…」


大魔道「…おかしいとは思いませんか?」

黒髪乙女「え?」


105 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 20:59:17 ID:DVHFj7A6
 
大魔道「無から1を作り出すことは出来ません。それなのに、この世には"魔法"の言葉が溢れている」

真剣士「…」

大魔道「人々の想像から生まれる事は、少なからず"記憶"から生まれる事ですから」

真剣士「言われてみれば…そうか…」


黒髪乙女「じゃ、じゃあ…真剣士が英雄の血を引くものって本当なの…?」

大魔道「はい」


真剣士「それが本当だとして、一体何を言いたいんだ?そもそも俺は小さなアパート住みだぞ?」

大魔道「…」

真剣士「本当に英雄の血なら、今頃…大豪邸に住んでいてもいいんじゃないのか?」


106 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:01:32 ID:DVHFj7A6
 
大魔道「それはー…貴方が…」ハッ

真剣士「それは…?」


大魔道「い、いえ…。それは、必ずしも成功続きではないという事です」

真剣士「…?」

大魔道「お気になさらず…、それよりも、あなたにも1つの使命がある」

真剣士「…何だよ」


大魔道「この世界が壊れる前に、貴方に救ってもらわねばならない世界がある」

真剣士「はぁ?」

黒髪乙女「救うって?」


107 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:02:11 ID:DVHFj7A6
 
大魔道「もうじき、魔王の血を引く者がこの世界へ現れる事になります」

真剣士「…?」

大魔道「その前に、魔界へ乗り込み…その者を討ちます」


真剣士「…はぁ」

黒髪乙女「魔界に乗り込む?」

大魔道「…」


真剣士「…はっはっはっは!」

大魔道「?」

黒髪乙女「どうしたの?」


108 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:03:01 ID:DVHFj7A6
 
真剣士「割りと本気で聞いてたけど、魔界に乗り込むとか、魔法とか…やっぱ信じられないって」ククク

大魔道「…」

真剣士「大魔道もどこまで本気なんだか。魔王の血を引くものが現れるって…笑わせないでくれよ」

大魔道「本来なら、僕が討つべきです。ですが…これは貴方にしか出来ないことなんです」


真剣士「ひーっひーっ…お腹痛い。そんな本気で笑わせないでくれ!」

大魔道「…」


黒髪乙女「ちょっ、真剣士…笑いすぎだよ!」

真剣士「だってさぁ…」ハハハ…

大魔道「信じられないのも無理ないですけどね…」


109 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:03:47 ID:DVHFj7A6
 
黒髪乙女「わ、私は信じるよ!」

大魔道「…」

黒髪乙女「本当に目の前で見せられたのは、手品って言葉じゃ表せないし…」

大魔道「ありがとうございます」ニコッ


真剣士「くくく…で?いつその魔王とやらは現れるんだ?」

黒髪乙女「真剣士、そんなバカにしないでよ!」


大魔道「いいんですよ。名前は魔王とはいいません」

真剣士「じゃあ何ていうんだよ」

大魔道「"幻王"です」


110 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:04:48 ID:DVHFj7A6
 
黒髪乙女「げん…おう…?」
 
大魔道「もうじき、この世界に次元を破って、魔界から人間界へと侵攻をします」

真剣士「勝手なヤツだな」


大魔道「ですが、殺す事はないでしょうね。彼の得意な魔法は別にあるのですから」

真剣士「得意な魔法?」

大魔道「先ほど見せた、この廃墟を素晴らしい別荘と信じ込んでましたよね」

真剣士「あぁ…」


大魔道「それです。生かさず、殺さず。人間たちを奴隷にし、快楽と堕落を与えるのですよ」

真剣士「…」


111 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:05:39 ID:DVHFj7A6
 
大魔道「幻王の名前は伊達ではないです。今も、魔界ではその魔法で次々と落とされている」

真剣士「…」

大魔道「まさか、あの竜族をも飲み込むとは思いませんでしたけどね…」


真剣士「竜族?」

大魔道「それは、向こう側の世界にいって追々説明しますよ」

真剣士「…」

大魔道「お願いします。一緒に、幻王の討伐へと向ってください」


黒髪乙女「…」

真剣士「…ちょっと待ってくれ」


112 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:07:14 ID:DVHFj7A6
  
大魔道「…」

真剣士「お前の顔で、本気だなっていうのは少し理解した」

大魔道「はい」

真剣士「だから、万が一それが本当だとして…、普通の高校生の俺に何ができる?」

大魔道「…」


真剣士「今まで戦う事なんかしたことないし、黒髪乙女とずっと平和に過ごしてきた」

黒髪乙女「だね…」

真剣士「いきなり魔界だの、人間界だの言われても、無理にも程がある」

大魔道「確かに、そうですね」


113 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:08:27 ID:DVHFj7A6
 
真剣士「魔界に行ったとして、俺は命を自ら捨てる事などしたくない。分かるだろ?」


大魔道「…」

真剣士「どうなんだ?その辺は」


大魔道「その点は…問題ありません」

真剣士「…どうしてだ?」


大魔道「ちょっと失礼します」スッ

真剣士「なな、なんだよ!俺を燃やす気じゃないだろうー…」

大魔道「…」ピカッ…!!


114 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:09:11 ID:DVHFj7A6
 
真剣士「…っ!」パァァッ

大魔道「…」

真剣士「…」


大魔道「どう、ですか?」

真剣士「…」

大魔道「…」

真剣士「今の、何だ?温かい…」ボォッ

大魔道「それが、英雄を紡ぐ光。彼らの魔力です」

真剣士「…魔力?」


115 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:10:12 ID:DVHFj7A6
 
大魔道「僕は、今まで出会った全ての英雄の魔力を知っています。そして、それを伝えてきた」

真剣士「…」

大魔道「その魔力は、貴方自身を守ってくれる。そして、貴方を守るのは僕の役目でもある」

真剣士「…」

大魔道「まだ…信じてもらえませんか?」


真剣士「…」

黒髪乙女「真剣士…」

真剣士「正直、まだ信じる事はできねえ。だけど、あの温かさは…どこか信頼できる気がする…」

大魔道「貴方に流れる魔法、魔力を引き出すきっかけを与えました。あとは貴方自身です」


116 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:11:18 ID:DVHFj7A6
 
真剣士「なぁ、もし俺がここで断ったら…どうなるんだ?」

大魔道「人間は支配されるでしょう。気づかぬうちに、魔物たちの支配下に置かれることになります」

真剣士「どう…なるんだ?」
 
 
大魔道「…戦争の敗北者と一緒です。男は知らぬうちに労働させられ、女はー…」

真剣士「もういい…」

大魔道「…」

真剣士「…わかった。仮に信じる。じゃあ、俺が魔界にいったら俺の存在はどうなる?」

大魔道「魔界の時間の進み方が違うのです。あちら側で過ごした1日は、こちら側で1時間にも満たないんです」

真剣士「へぇ…」

大魔道「…」


黒髪乙女「魔界は、危なくないの?」

大魔道「少なからず、まだ魔界には幻王から逃げている隠れ里があります」


117 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:12:11 ID:DVHFj7A6
 
真剣士「…お前はどうやってココへ来たんだ?」

大魔道「?」

真剣士「こちら側にくる時、繋ぐ穴が開いてたってことだろ?それで他の魔物が攻め入るという事はー…」


大魔道「言ったでしょう。僕は"魔の血"を引く者。次元を開けるのは…幻王だけではありません」

…バキャァンッ!!!…ゴォォォォォ…


真剣士「!」

黒髪乙女「!」


大魔道「これが、魔界と繋がるゲートです。逃れている味方の魔物へと通じています」

ゴォォォォ…バチバチッ…

大魔道「…いかがですか」


118 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:12:54 ID:DVHFj7A6
 
真剣士「…」ゴクッ

黒髪乙女「CGとかじゃないよね…、本物だよこれ…」

真剣士「俺じゃないとダメなのか…?」


大魔道「あなたが、英雄の血を引く人だから。…です」


真剣士「…死ぬかもしれないんだろ?」

大魔道「先ほども言いましたが、その為に僕がいるのです。自分で言うのもなんですが、やりますよ僕は」ニコッ

真剣士「そうか…」

ゴォォォ…


119 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:13:40 ID:DVHFj7A6
 
大魔道「急ぎすぎたのもあり、信じる事は難しいと思います。ですが…全て本当のことなのです」

真剣士「…」

黒髪乙女「…」


大魔道「どう、しますか?」

真剣士「わかったよ…、妹が魔物に襲われるのは…想像したくねえ」

大魔道「では…」


真剣士「待ってくれ、黒髪乙女は?」

黒髪乙女「あ…うん、私は?」

大魔道「…一緒に来て貰います」


120 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:14:16 ID:DVHFj7A6
 
真剣士「待てよ!こいつを危険な目に合わせる訳にはいかない!」

大魔道「それは…聞けません。それも運命だからですよ…」


真剣士(な…なんて哀しい目をするんだよ…)

黒髪乙女(大魔道さんの…凄い寂しそう…)


大魔道「お願いします。僕が全力で守りきる…約束いたします」

真剣士「…大丈夫なんだな?」

黒髪乙女「…うん。大魔道さんを、信じる。それに、真剣士を一人で行かせるわけないじゃん!」

真剣士「無理にでも着いて来そうだよなお前…」

黒髪乙女「あったりまえ♪」


大魔道「…では、参りましょう。魔界へ」スッ


121 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:14:58 ID:DVHFj7A6
 
ゴォォォォ…バチバチッ…オォォォ…


大魔道「手をしっかり握ってください。絶対に離さないように」

真剣士「お、おう…本当に大丈夫なんだな?」

黒髪乙女「信じてるよ…」ブルッ


大魔道「では…行きます」スタッ

ゴォォォォォッ…!!!!


122 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:15:32 ID:DVHFj7A6
 
ギュウゥゥゥゥ…ッ!!

大魔道「くっ…」


黒髪乙女「か、体がねじれる…!!」

真剣士「ぬあああ!」

大魔道「絶対に離さないで下さい!」


真剣士「あああああっ…!!」

黒髪乙女「きゃあああっ…!!」


バチバチ…!!!

ゴォォォ…

ォォ…



123 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:16:04 ID:DVHFj7A6
 
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124 名前: ◆qqtckwRIh. [] 投稿日:2013/11/11(月) 21:16:34 ID:DVHFj7A6
 
…ガチャンッ!!!

母親「何の音?」

妹「お兄ちゃんのコップが落ちて割れちゃった」

母親「えー?それお気に入りだったやつよねえ…」


妹「どうして…勝手に落ちたんだろ…?」


126 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/11(月) 22:09:10 ID:1yURNDjc
支援

乙女ちゃんも必要なのかな?


127 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/12(火) 00:13:14 ID:Cr5uiYEg
乙です!

黒髪乙女ちゃんも誰かの血を紡いでいたりするのでしょうか
これからの展開に期待です


128 名前: ◆qqtckwRIh. [sage] 投稿日:2013/11/12(火) 20:58:28 ID:OYXWU4Xw
>>126 >>127 展開をお楽しみ頂ければ幸いです。

ありがとうございます、投下致します。



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