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少女「私が……魔王?」
109 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:15:13.69 ID:3VwabWPNo

― 魔王城 魔王の寝室 ―


少女「ふぅ」ポスン

メイド長「お疲れですね」

少女「大丈夫です」ガッツ

メイド長「隠しても無駄です。私は魔王様のお傍付なのですよ」

少女「うー、ちょぴっとだけ」

メイド長「明日のご公務は全てキャンセルいたします」

少女「だ、ダメだよぅ。明日は病気の人のお見舞いがあるんだからっ」パタパタ

メイド長「ですが、魔王様が倒れてしまったら元も子もありませんわ」

少女「大丈夫ですっ!」フンス

コンコン

メイド長「こんな時間に誰でしょう?」

少年「遅くにすまない、俺だ」

少女「少年君? どうしたんだろ」

メイド長「夜這い……でしょうか」

少女「よよよよよ!?」マッカ

メイド長「あらあら。はい、どうぞ」ガチャ

少年「遅い時間にごめんな」

少女「どどどどどどうしたのかなっ?」オロオロ

少年「どうしたんだ? 熱でもあんのか?」

少女「なんでもないよ!?」アタフタ

メイド長「私は所用を片付けてまいりますのでどうぞごゆっくり」ニコリ

少女「め、メイド長さぁーん」

少年「何か重要な話の最中だったか?」

少女「う、ううん。寝る準備してただけだから大丈夫だよ」オロオロ

少年「なんでそんなに挙動不審なんだよ……」

少女「そ、そうかな? そういえば後輩ちゃんは?」

少年「あいつならもう寝ちまったよ。なんだかんだ言っても疲れてるんだろ」

少女「そ、そっか。それで、お話って?」ドギマギ

少年「あの、さ。明日から幻想空間に入るだろ?」

少女「うん。あ、そっか。幻想空間の中のお話?」

少年「違う違う。その話はあの後竜王に聞いたから大丈夫だ。それよりもさ」ズィッ

少女「ひゃ、ひゃぃっ!?」ドキッ

少年「改めて言っておこうと思ってさ」

少女「何を?」キョトン

少年「明日から俺と後輩は二人きりになっちまう」

少女「あ、そっか……そう、だよね」キュ


110 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:15:41.02 ID:3VwabWPNo

少年「正直に言うけどさ、俺だって男だ」

少女「……うん、言いたい事はわかってる」シュン

少年「いや、だからさ……」スッ

少女「んっ」ピクッ

少女(ほ、ほっぺた触られただけなのに身体に電気走ったみたいっ)ドキドキ

少年「目、閉じてくれるか?」

少女「う、うん」キュッ

少女(心臓爆発しそう……)

少年「少女」

少女「しょうねん、くん」

……ドーン

少年「っ、何の音だ!?」

少女「ほへ?」

メイド長「お楽しみのところ申し訳ございません。緊急事態です!」ガチャ

少女「おおおおおお楽しみなんてっ」アワワ

少年「何かあったのか?」

メイド長「正体不明の一群に『扉』を抜けられました」

少女「え?」

メイド長「人間のようですが、正体不明。魔法を使うとのことです」

少年「魔法を!?」

少女「最前線基地には誰が居ますか?」

メイド長「本日は獣王が当直です」

少女(獣王さん、聞こえますか?)

獣王『魔王様! 人間のやつらが侵入! こいつら、勇者の力をっ』

少女「勇者の力……?」

少年「もしかして」

メイド長「統合連合……」

少女「急いで向かいます。獣王さん以外の四王は?」

吸血鬼「こちらに」

海王「参っております」

竜王「もう少しでしたな」

少女「……覗いてたの!?」カァァッ

吸血鬼「なんの事でしょうか。それよりも」

少女「うー……あとでちゃんとお話伺いますからね! 四王はそれぞれの領地を守ってください。私と少年君、後輩ちゃん、メイド長さんは現地へ。各部隊のみなさんにも出動命令を」

四王「ははっ」


111 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/02(土) 21:17:07.90 ID:3VwabWPNo
予想外にあっさりと予定していた分の投下が終わってしまいました。事前に投下用テキストを作っていたのが幸いしたようです。
このまま続きを一気に、とも思いますが、とりあえずは晩御飯食べてきます。投下再開するとしたら0時を過ぎる可能性がございます。


114 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/03(日) 01:08:42.37 ID:OYwpXbmSo
改めましてこんばんは。>>1でございます。
姉と劇場版うる星やつら2について語り合ってたらこんな時間に……
時間が時間ですので次回更新は明日以降とさせていただきます。申し訳ございません。(土下座)


121 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/04(月) 00:04:18.00 ID:eyKUOczDo
皆様こんばんは。
縦読みが久しぶりすぎですね。ご支援のお言葉の数々、本当にありがとうございます。最近全く罵倒されていないので少しさみしかったりしますがたぶん気のせいです。

こちらのスレですが、今回の投下(約20レス程度)で終了いたします。最後の一晩、お付き合いいただければ、と思っております。


122 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/04(月) 00:04:59.11 ID:eyKUOczDo

― 『門』周辺 激戦区域 ―


魔族兵「なんだこいつら!?」

魔族兵「気をつけろ! 魔法を使ってくるぞ!」

ドーン ズガガガッ

獣王「勇者の大群……だと?」

副官「力や魔力はさほどではないようですが、数が多い為に苦戦しています!」

獣王「魔王様がおっしゃってた統合なんちゃらって奴らか?」

フォンッ

少女「状況を教えてくださいっ」スタッ

獣王「魔王様!」ヒザマヅキ

少女「そんなのはいいですからっ」

獣王「敵の総数は不明ですが100以上かと。全員似たような容姿で勇者の魔法を使います」

副官「それと、魔力波動が……」

少女【精霊達よ、私の敵を教えてっ】フォォンッ

少年「範囲型の探知魔法か」

後輩「ですけど、見てください。範囲が……」

メイド長「魔界のほぼ全てを掌握出来るまで広げる事ができるそうですわよ」

少年「す、すげぇ……」

少女「勇者の波動ですね。数は103人。先々代勇者から摘出した因子を片っ端から移植したみたいです。因子の暴走で自我が崩壊、暴走状態になってるみたい」

少年「なっ!?」

後輩「そこまで……」

メイド長「っ」ギリッ

少女「メイド長さん、お気持ちはわかりますけど、今は落ち着いてください」キュッ

メイド長「申し訳ございません」

少女「獣王さん、動かせる兵は全部出ているんですか?」

獣王「はい。ここの防壁直衛以外は全て」

少年「少女、俺は先に行かせてもらうぜ」

後輩「私もご一緒します」

少女「二人は力が半減してるから危険だよ」

少年「でもこれは、俺の責任なんだ……俺が有頂天にならなきゃ……」ギリッ

少女「……わかった。じゃあ、私も行く」

獣王「魔王様!?」

メイド長「危険です。魔王様の身に何かあったら!」

少女「どちらにしてもこの数だったら防壁に辿り着かれるのも時間の問題です。だったら出向きます」キッ


123 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/04(月) 00:05:27.59 ID:eyKUOczDo

メイド長「承知いたしました。私の身を挺しても魔王様をお守りいたします」

獣王「我が身を魔王様の盾に」

少女「ありがとうございます」ニコッ

獣王「お前ら! 魔王様自らがご出陣だ!! 気合入れろぉぉぉっ!」ビリビリビリ

魔族兵「うぉぉぉぉぉ!!!!」

少女【速さよ、鉄壁よ、貫く槍よ、我等にその力をっ】コォォォォッ

後輩「補助魔法をまとめて、しかも全体になんて……」

少女【戦いの装束よ、我が身に!】フォンッ

少年「暗黒のローブか。魔王らしい装備だよな」

少女「あんまりかわいくないのがちょっと、ね」ニコッ

少年「んじゃ俺も。できるかどうかはわかんねぇけど」

少年【勇者の御魂よ、我が身に!!】フォンッ

後輩【智慧持つ者よ、私に力をっ】フォンッ

メイド「それくらいはできないと失格ですわよね」

少女「行きます。防壁まで近づいている敵を駆逐の後、苦戦している部隊を援護しつつ敵を撃破」タッ

獣王「お言葉のままに!」ダッ

メイド長「魔王様の御心のままに」シュンッ

少年「いっくぞぉぉぉぉ!!」ダッ

後輩「はいっ!」タッ


量産勇者「……迅雷」ピシャァッ

量産勇者「……連斬撃」ドガガガガッ

魔族兵「こいつら、感情ってモンがねぇのか!?」

魔族兵「目に光がねぇ。アンデットを相手にしてるみたいたぜ」

量産勇者「……轟雷」ドシャァァンッ

魔族兵「ぎゃぁぁぁぁ!」

魔族兵「ぐぉぉぉぉっ!」

量産勇者「……轟雷」ドシャァァァンッ

少女【我らを守り賜えっ!】ガガガァンッ

魔族兵「ま、魔王様!」

少年「こンの偽者がぁぁぁっ!!」ザザンッ

後輩【炎の槍よ、敵を貫けっ!】

魔族兵「ゆ、勇者に女賢者!?」

少女「一旦退いて体勢を立て直してきてください!」

魔族兵「で、ですが!」

獣王「邪魔だからひっこめってこった!!」ドガァァンッ

メイド長「魔王様の命令は絶対ですわよ」ギギギギギィンッ

魔族兵「りょ、了解しました! 一旦退くぞ! ここは魔王様達にお任せする!」


124 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/04(月) 00:05:59.08 ID:eyKUOczDo

少女【貫け!】ドゥンッ ザザザザザザッ

少年「黒い錐……か? なんだありゃ」

後輩「異空間から物質を呼び出して錐状に具現化させているのです。魔王特有の攻撃方法です」

少年「あいつ、そんな事まで……」

後輩「悔しいですが、魂の鎖に縛られていた私たちでも太刀打ちできなかったかも……」

少年「今は今だ。やるぞ!」

後輩「はいっ!」

少女【我が呼びかけに応えよ! 槍持つ戦乙女ゲイルスケグルよ。我が眼前に立ちふさがる敵共を――薙ぎ倒せっ!!】ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン

獣王「すげぇ。なんて威力と数だ」

少女【開け、煉獄地獄の蓋よ! 全てを焼き尽くせ!】ゴォォォォォウッ!!

後輩「高々位火炎呪まで使うなんて……」

少女【風よ、刃となりて敵を切り裂けっ!】ザザザザッ

メイド長「魔王様、オーバーペースです。このままではお身体が!」

少女「許さない……勇者を、魔王を……少女友ちゃんの命を、みんなの命を軽く扱った貴方達を、許さない!!」キッ

メイド長「っ!? 獣王、大至急四王を呼び寄せる手筈を!」

獣王「わ、わかった!」ダッ

少年「おい、少女っ!?」

後輩「少女先輩!?」

少女【魔石よ、私に力をっ】パァァァッ

メイド長「魔王様っ!」

少女「大丈夫ですっ。一気に片付けます!!」

少年「少女、落ち着けっ!」

少女「絶対に、許さないっ!!」ギリッ

少年「キレてやがる。おいっ、落ち着けってば!!」

少女【深淵なる大地よ 怒りもて!】ゴゴゴゴゴ

メイド長「ぜ、全員退避っ! 防壁の向こう側に逃げて!!」

少年「なんだ!?」

後輩「こ、これは……」

量産勇者「……魔王ダ」

量産勇者「……魔王ヲ殺セ」ダッ

少年「やべぇ、あいつら一気にこっちに向かって来てるぞ!」

後輩「光の盾っ」キンッ

少女【我が力となりて、全てを呑み込め!!】

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ゴガァッ

少年「地割れ!? 偽勇者達がどんどん呑まれていってやがる」

後輩「アースクェイクです!」

メイド長「魔王様っ、これ以上はっ!!」

少女【世にたゆたう全ての光の力よ、我が下に集まれ!】フォンッ フォンフォンフォンッ


125 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/04(月) 00:06:30.34 ID:eyKUOczDo

量産勇者「コロセ!!」

量産勇者「コロセ!!」

量産勇者「コロセ!!!」

少年「くっ」ギィンッ ザンッ

後輩「光よっ、護り賜え!」キィンッ

メイド長「魔王様、お気を確かに!!」ギンッ ザザザンッ

量産勇者「タオセ!」

量産勇者「コロセ!」

少女「こんなの、許せない!!」

少女【その光、その力、我が敵を打ち破る力となれ!!】

少年「少女っ!!」

少女「光よ、お願いっ!! 【聖光撃】!!」フォォォォォォォッ ドドドドドドドドド

少年「光弾が無数に!?」

後輩「何、この量!?」

メイド長「魔王様っ!」

少女「ほ、炎の矢っ!」ボボボボボボボボボボボボボッ

後輩「まだそんな魔力が!? ありえないです!」

少年「少女っ、やめろ! 敵はもう全部倒した!!」

少女「はぁっ、はぁっ……」

メイド長「上空からの偵察から連絡が入りました。侵入者は全て駆逐されたそうです」

少女「ほん、とう?」

吸血鬼「魔王様っ!」

竜王「なんと……」

海王「たったお一人でここまでなさったのか……」

少女「【扉】の警護を厳重にしてください。また来るかも……」フラッ

少年「少女っ」ガシッ

吸血鬼「魔力を使い果たされたようですね。それにしても……」

獣王「おう。今までにないキレっぷりだった」

少年「こいつ、ずっと溜め込んでやがったんだ。少女友の事も、先々代の魔王や勇者の事も」

メイド長「……」

後輩「魂の鎖を取り込んだということは、人体実験の果てに絶命してしまった魔王の記憶も鮮明に持っていた、ということですよね」

メイド長「そう、なりますね。私が余計な事を言ったばかりにその記憶が増幅して魔王様の脳裏に蘇っていたのでしょう。私があのような話さえしなければ……」

少年「とりあえずこいつを休ませよう」

竜王「空から運んだほうが早かろう。メイド長と勇者、女賢者も一緒に運ぼう」

吸血鬼「では、我々はここの後始末をしましょうか。我が軍の損害状況も確認しなければいけませんね」


126 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/04(月) 00:06:52.27 ID:eyKUOczDo

― 魔王城 中庭 ―


後輩「先輩、少女先輩の様子は?」

少年「落ち着いてるよ。寝てるだけみたいだ。あれだけの大魔法を連続で使ったんだ、しょうがないよ」

後輩「先輩は、どう思われましたか?」

少年「……お前が言ったように、魂の鎖に縛られたままの俺達でも到底勝ち目はなかっただろうな」

後輩「今でも、身体が震えます。歴代最強どころではない強さです……」

少年「あいつと、いつかは戦わなきゃいけないのかと思うと恐ろしくなるな」

後輩「戦え、ますか?」ポツリ

後輩「大好きなあの人と、戦えるんですか?」

少年「それでも、俺は勇者だからな」

後輩「……私では、やっぱり駄目ですか? 少女先輩の代わりでもいいですから」キュッ

少年「お前はお前だよ」ポン

少年「かわいい後輩ってのは変わらないよ」

後輩「……」シュン

少年「降りるなら今だぞ。魂の鎖から解放されて、俺と一緒に行動する理由もないだろ?」

後輩「……いいえ。私はずっと先輩の背中を守ります! それは私だけができる仕事ですから」

少年「わかった。俺の背中はお前に任せるよ」ニコッ

後輩「はいっ!」

少女「覚悟は決まったみたいだね」

少年「もう起きて大丈夫なのか?」

少女「うん、元気元気だよ」ニコッ

少年「ほれ」トンッ

少女「わきゃっ」フラフラ

後輩「全然ダメじゃないですか」

少女「うー、だって……」

後輩「心配しなくて良いと思います。先輩はぜんっぜん私の事なんて見てくれません」

少年「おいおい……」

後輩「しょうがないから先輩の事は諦めてあげます」

後輩「でも、勇者様の背中を守るのは私だけの仕事です。これだけは絶対に譲りません」

少女「うん。私は少年君を守る事はできないから、後輩ちゃんにお願いするね」

後輩「あわよくば先輩を奪って差し上げますからね」ニコッ

少女「そっ、そんな事させないもんっ!」ギュッ

少年「ちょっ、お前っ」

後輩「じゃあ私はこっち側でいいです」ギュッ

少年「どっかで見た事あるパターンだ……」


127 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/04(月) 00:07:24.16 ID:eyKUOczDo

少女「冗談はさておき、二人とも準備はできた?」

少年「ばっちりだよ」

後輩「これといって準備する物もありませんでしたからね」

少女「じゃあ竜王さん、お願いします」

竜王「承知いたしました。勇者と女賢者を我が領域に入れるのは複雑な気持ちではありますが、致し方ございません」

少女「我儘言っちゃってごめんなさい」

竜王「これも魔王様の御為。では二人とも、我が幻想空間に招待しよう。説明した通り、今より7日間、お主達は我が空間内において戦い続ける事となる。時と場合によっては死ぬ事も有り得るが、良いな?」

少年「当然だ」

後輩「もちろんです」

竜王「では、我が空間へ誘おう!!」バサッ ゴォォォッ

少年「いってくる。戻ってきたら一緒にあいつらを片付けちまおうぜ」

後輩「いってくるです」

少女「行ってらっしゃい」ニコッ

少女「……戻って来る頃には統合連合を全部片付けておくから、ね」

少年「なっ!? お、おいっ!!」シュゥゥゥン

後輩「っ!?」シュゥゥゥン

竜王「本当によろしかったのですか?」

少女「これで良いんですよ。少年君と後輩ちゃんに危ない橋を渡らせるつもりなんて最初からありませんでした」

竜王「無礼を承知でお伺いしますが、将来、勇者と戦うとなった場合、魔王様は……」

少女「私は魔王です。そうなった場合は魔族の代表として勇者を倒します。でも」

竜王「でも?」

少女「そうならない未来っていうのがあっても良いんじゃないかな?」

竜王「……勇者と女賢者は我が命に代えてでもお守りいたします。魔王様は後顧の憂いなく存分にそのお力を発揮ください」

少女「ありがとうございます。もし、私に何かあった場合は再び雌伏の時代が訪れてしまいますけど……」

竜王「魔王様のご帰還を心よりお待ちしておりますよ」ニッ

少女「はい」ニコッ


128 名前:NIPPERがお送りします(兵庫県) [saga] 投稿日:2011/04/04(月) 00:08:28.83 ID:eyKUOczDo

― 全人類統合連合本部 ―


幹部「あれだけの勇者が全滅だと!?」

士官「はい……魔王たった一人の所為で」

幹部「なんということだ。魔王の力量を見誤っていたというのですか」

研究者「勇者の『標本』は残り僅かになっている。これ以上の消費は今後の事を考えると……」

幹部「魔王の『標本』はどうなのだ」

研究者「あれは人間に移植する事が不可能だ。今まで何度も実験を行ったが拒絶反応が大きすぎて被検体が死んでしまう」

幹部「くそっ。だからこの前の時に捕えておけばよかったのだ。軍の弱腰めが!」

研究者「魔王の魔力を考えると、魂の鎖を裡に取り込んだと考えるのが妥当だな」

士官「今までの記録にあった魔王のどれよりも強力な魔力を放っておりましたのでそれは間違いないかと」

研究者「良い『標本』が手に入るチャンスと考えるのではないか?」

幹部「……なるほど。そういう考え方もありますね」ニヤリ

研究者「奴らはきっとここを狙って来ます。何せ魂の鎖を裡に取り込んでいるのですからこの研究所で何が行われたのか、そしてここの場所も記憶を読めばわかるんですからね」

幹部「対魔結界の威力を上げれば無力化できる、と?」

研究者「材質が耐えれる限界値まで強化し、配置数を増やせばどうとでもなるだろう」

士官「で、ですが、危険ではないでしょうか? 我々が持っている『標本』を奪取された場合、議会やスポンサーが黙っていないかと」

幹部「なに、奪わせなければ良いのです。『標本』を研究棟の最深部、地下5階のシェルター室に運び込み、封じてしまえばいくら魔王や勇者とはいえ手出しはできないでしょう。そこに対魔結界を幾重にも施せば無傷で手に入れる事も可能」

研究者「聞けば現在の魔王は年端もいかない少女と聞く……『実験』のし甲斐もあるというものだ」ニチャリ

士官「……っ」ゾワッ

幹部「急いで迎撃態勢を整えましょう。奴らがここに来る可能性はかなり高いと思われますからね」

研究者「我々も対魔結界の準備などをしておくとしようか。あと、『実験道具』の準備も、な」

士官「で、では私もこれにて……」

幹部「あぁ、そうだ」クルッ

士官「なんでしょう」

幹部「いえ、貴方はもういいですよ。兵達に指示を出してください」

士官「了解しました……?」タッ

幹部「……『例のアレ』はどうなっていますか?」

研究者「まだ培養段階だが、2,3日中には」

幹部「急いでください。中身がなくても構いません。魔王に対する切り札になりますからね」

士官(何の話だ?)

研究者「了解した」

士官(気にはなるが、聞いたところで返答があるわけはないか)



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