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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その29
- 701 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2011/06/09(木) 16:58:15.32 ID:s4TWhXpTo
……――
戦士「ほぎゃあ! ほぎゃあ!」
戦士母「よしよし。ほらっ、もう泣かないの」
戦士「びええぇぇ!!」
テクテクテク
左翼長「何だ、また泣いてるのか?」
戦士母「あら……兄さん、来てたの?」
左翼長「今来たところさ。ほーれ戦士、泣いてたら強い男にはなれんぞ?」
戦士母「伯父さんが来てくれたわよ〜。良かったわねぇ、戦士」
戦士「……ひぐっ」
戦士父「お前があやすと、すぐに泣き止むよな」
左翼長「よーし。そんじゃ将来は、俺が立派な弓兵に育て上げてやろう」
戦士父「それは駄目だ。国軍一の槍兵になって貰う予定だからな」
戦士母「もう……二人とも、気が早すぎるわよ〜。うふふっ」
戦士「きゃっきゃっ!」
- 702 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 16:58:47.05 ID:s4TWhXpTo
――……
盗賊「戦士!!」
戦士「……お、おぉ」
ガバッ
盗賊「あれを見ろ!」
戦士「あん? な、何だありゃあよ……っ!!」
盗賊「……分からない。突然、火山が噴火して……あのように」
戦士「噴火!? まさか魔王が……。つーかあれが火山のマグマだってのか!?」
盗賊「……うん」
戦士「動きは!? 発光弾は上がったのか!?」
盗賊「……いや、まだだ」
戦士「……どうするつもりだ。あのまま放っておいて大丈夫なのかよ……っ」
盗賊「……」
戦士「動けねぇのは不甲斐ないが、本来の目的を放り出すはけにはいかんからな……」
盗賊「……うん」
- 703 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 16:59:13.90 ID:s4TWhXpTo
〜火山〜
大軍師「魔王の姿は……ないようですね」
ジュニア「それよりも、どーすんだよ!?」
青年兵「確かに。この状態が長く続けば混乱を招きかねませんよ」
大軍師「確かに。各、魔道兵にも不安が広がってしまいますね」
名代「どうなさるので?」
大軍師「青年兵、どう思います?」
青年兵「……やるしかないと思います」
大軍師「でしょうね。私も同意見です」
ザッ
大軍師「直ちに、作戦開始の発光弾を打ち上げて下さい!」
伝令「ははっ!」
ジュニア「これで、リミットは1時間……」
大軍師「もう後には退けませんよ。やるしかありません」
青年兵「……はい!」
- 704 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 17:00:06.52 ID:s4TWhXpTo
まだ夜明けを迎える前の空。しかしマグマの巨大な球により、
辺りが赤く照らせている中、複数色の発光弾がその下で光る。
バシュウウゥゥゥゥ
召喚士「始まったか!」
コカトリス「あそこへ向かえば良いのか?」
召喚士「うんっ。みんながいるはずだ!」
コカトリス「よし」
〜火山、南西部〜
マーマン「あの光は何だ?」
タッタッタッタ
隊長「おっ」
ハヌマーン「お主は確か……」
隊長「アカ・マナフは?」
法師「既に場を移動致しました」
隊長「……そうか」
- 705 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 17:01:18.57 ID:s4TWhXpTo
マーマン「今の光は何なんだ?」
隊長「作戦開始の合図だ。火山へ向かう」
法師「そういう事なら、我らも共に参りましょう」
隊長「しかし……」
法師「大した力にはならぬやもしれません。しかし、塵も積もれば……です」
隊長「……助かります」
ハヌマーン「マーマン。我らは先に参るぞ」
マーマン「お、おう。オーク、法師様を頼んだぜ」
オーク「分かってるです!」
ザザッ…タタタッ
隊長「さて、我らも行きましょう」
法師「はい。宜しくお願い致します」
隊長「こちらこそ。塵の意地、見せてやりましょうや」
法師「……ええ」
隊長と法師、そしてオークは、先行した2匹を追うように、火山へと真っ直ぐ進んだ。
- 706 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 17:02:16.42 ID:s4TWhXpTo
〜火山、南東部〜
おさげ「……何なのよぉ!」
アマゾネス「全員、支度は出来たか?」
女兵「長……っ、あれは何なのです!」
アマゾネス「さぁな。しかし、良い事態だとは思えんな」
おさげ「だ、大丈夫ですよねっ!? みんな……助かりますよね」
アマゾネス「助かる為に戦っているだろう。我らも信じて、力を貸すしかない」
おさげ「……っ」
〜火山、北部〜
男隊員「いたっ!」
魔道兵「!? ご、ご苦労様であります!!」
男隊員「大軍師達は!?」
魔道兵「さきほど、火山へと……っ」
女隊員「さっきの発光弾は……」
男隊員「状況は分からんが、作戦は決行って事だな」
- 707 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 17:03:37.95 ID:s4TWhXpTo
女隊員「どうするッスか?」
男隊員「俺らも火山へ向かうしかねーだろ」
女隊員「でも、隊長は……」
男隊員「そんなん指示を待ってる暇はねぇ!」
女隊員「……」
男隊員「それに、隊長だってきっと、向かってるはずだ」
女隊員「そう……ッスよね!」
男隊員「いいか? ここがゾディアックの起点にもなる場所だ」
魔道兵「はい!」
男隊員「自分達の力を信じて、一泡吹かせてやれ!」
魔道兵「了解でありますっ!!}
男隊員「……そんじゃ行くぞ」
タッタッタッタッタ
女隊員「なかなか、サマになってたッスよ」
男隊員「そんなつもりじゃねぇよ。バーカ」
- 708 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 17:04:44.39 ID:s4TWhXpTo
バシュウウゥゥゥゥ
召喚士「……ん!? あれは……っ!!」
上空から前に見えるは、2人の男女と1匹の眷属の姿。
召喚士「天才さん!」
コカトリス「その前に居るのは、アカ・マナフではないのか?」
召喚士「本当だ! よし、先回りして動きを封じよう」
コカトリス「うむ」
バシュウウゥゥ…バサァ
召喚士「よし、追いつける! だいぶ弱っているようにみえるな」
タタタッ…ザザッ
天才「コカトリス……?」
上空を通過し、天才の先を進むアカ・マナフの前で反転するコカトリス。
その姿を見て天才は、咄嗟に召喚士へ首を振るジェスチャーを見せた。
召喚士「!?」
天才(分かってんだろ、お前ならよ)
- 709 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 17:05:42.72 ID:s4TWhXpTo
コカトリス「どうする? 仕掛けるか?」
召喚士「……いやっ、再度上昇を!」
コカトリス「うむ」
バシュウウゥゥゥゥ
アカ・マナフ「しつこい奴等だ……っ」
コカトリス「このままではみすみす逃がす事になるぞ?」
召喚士「いや、これでいいんだ」
コカトリス「……?」
召喚士「天才さんはおそらく、アカ・マナフをこのまま泳がせるつもりだ」
コカトリス「そうか。魔王の元へ戻らせぬように……」
召喚士「いや、逆だよ」
コカトリス「逆?」
召喚士「アカ・マナフは今、魔王の元へ戻ろうとしている」
コカトリス「ああ、そのように思えるが」
召喚士「つまりは……そこに魔王がいる!」
- 710 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 17:06:22.46 ID:s4TWhXpTo
タッタッタッタッタ
天才(アイツが逃げる先は間違いなく、アンラ・マンユの所だ)
女賢者「ねぇ、逃げちゃうわよ……?」
天才「いーんだよ。逃げた先に、魔王がいる」
女賢者「えっ!?」
天才「手っ取り早く、魔王様の元へと案内して貰おうぜ」
女賢者「な〜るほどっ♪」
天才「出来れば、外に出てきて貰いてぇところなんだが……」
アカ・マナフ「……主よ」
天才の思惑通り、アカ・マナフは火山内部へ向かう事なく、上空を真っ直ぐ進む。
しかし、ここで天才は予期せぬ出来事に直面した。
天才「!?」
アカ・マナフ「……主の……邪魔はさせぬ」
天才「まさか……最悪だろ……っ」
アカ・マナフはマグマの球を守るように、上空で迎撃の態勢へと移った。
- 711 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 17:56:36.52 ID:s4TWhXpTo
ズザザッ
天才「……っ」
女賢者「ど、どうするの?」
バサァッ…バサッバサッ
召喚士「天才さん!」
天才「気付いたか?」
召喚士「……?」
天才「アカ・マナフを泳がせて、魔王の所まで案内させるつもりだった……っ」
召喚士「え、ええ……」
天才「ところがだ、あのザマさ」
召喚士「どういう……事です?」
天才「魔王だよ」
召喚士「え……っ!?」
天才「魔王はあの球ん中、もしくはあれ自体が魔王って事だ」
召喚士「――っ!?」
- 712 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 17:57:39.25 ID:s4TWhXpTo
女賢者「あれが魔王……なの?」
天才「まぁ結論付けるには、裏付けが必要だがな」
ザッ
天才「お前ら付いて来い。ちょっくら火山内部に潜るぞ」
召喚士「えぇっ!?」
天才「居場所は分かってる。そこにアンラ・マンユが居れば万々歳」
女賢者「……居なければ?」
天才「あの球ん中で確定」
召喚士「……っ」
天才「後者なら……どうすっかねぇ」
女賢者「またまたぁ〜。そんな事言っておいて、ちゃーんと作戦考えてあるんでしょぉ?」
天才「ねぇよ」
女賢者「え……っ?」
天才「おら、さっさと行くぞ」
召喚士「は、はいっ!」
- 713 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 17:58:23.41 ID:s4TWhXpTo
丁度その頃、火山の反対側に位置する場所では、大軍師ら別働隊が、
火山内部への潜入を試み初めていたところであった。
ザザッ
青年兵「……かなりの熱量ですね」
色黒「上空も駄目っ、火口にはとてもじゃないけど近づけないわよ……」
ジュニア「こりゃあ、地道に魔法で防御しながら進むしかねぇかな?」
朱雀嬢「ほら、貴女の出番ですわよ」
玄武娘「よーし、やってやるですの!」
魔道士「もしかして……っ」
玄武娘「おいで、リヴァイアサン!」
シュイイィィィィン…ドドドドドドド
玄武娘「この穴の中へ、水を入れるですの!」
大軍師「えっ!?」
リヴァイアサン「コオオォォォォーッ!!」
青年兵「まずい! みんな離れて――」
- 714 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/09(木) 18:02:48.41 ID:s4TWhXpTo
ズシャアアァァァァ!!…ブッシュウウゥゥゥゥ!!
玄武娘「ひゃああぁぁーっ!!」
弓使い「何これ……っ、水蒸気!?」
青年兵「熱した部分へいきなり冷水を入れたから、沸騰して水蒸気が沸いたんですよ」
魔道士「ビ、ビックリしたぁ〜」
玄武娘「ごめんなさいですの……」
大軍師「い、いえ。ここは水行でも、氷を活用して進みましょう」
玄武娘「それじゃ、ヒュドラとスキュラを召喚するですのっ!」
朱雀嬢「リヴァイアサンを解除してからになさいな」
ポニテ「ほんと、底なしの魔力……っ」
ツインテ「本当……」
ジュニア「よし、まずは俺が道を切り拓く」
キュイイィィィィ…
ジュニアは両手を広げ、穴の壁部分へと氷を放ち、内部は見る見るうちに常温と化した。
大軍師「お見事です。それでは、参りましょう」
- 723 名前:NIPPERがお送りします(長屋) [sage] 投稿日:2011/06/09(木) 20:21:37.51 ID:oNMjkpJNo
>>721
1から読み返して見ると新たな発見もあって楽しめるぞ
- 727 名前:NIPPERがお送りします(長屋) [sage] 投稿日:2011/06/09(木) 21:01:05.90 ID:wYA3PCECo
>>1乙
しかし一時期はかませって言われてた天才は天才にふさわしいかつやくだなぁ
- 734 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 15:59:33.04 ID:cpXfGpT9o
〜火山内部〜
召喚士「うわ……っ」
ムワッ
天才「あっつー。おい、何とかしろ」
女賢者「もう、自分でしてよぉ〜」
天才「そう言いながらしてくれるお前が好き」
ゾクゾクッ…ブルッ
女賢者「……仕方ないわねぇ、んふっ♪」
ドドオオォォォォン!!…ガガキイイィィィィン
召喚士「凄い……っ、一気に凍りついた! ありがとうございます」
天才「どーいたしまして。ほい、先に進むぞ」
召喚士「!?」
女賢者「うふふ〜♪」
天才「ボケっとしてんじゃねぇ! お前も召喚獣で何とかしろ!」
召喚士「えっ!? あ、はいっ!!」
- 735 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:00:19.94 ID:cpXfGpT9o
…
天才「いやぁ、快適快適!」
召喚士「……」
先頭を進むスキュラが吹雪で熱をガードし、後方の女賢者が上下左右の壁を凍らせる。
熱を帯びた火山内部の空洞な道は、まるで氷山のような有様である。
とは言え、それは彼らの周囲のみであり、前後の道は赤く色付き始める程、熱していた。
おそらく生物は存在しないであろう、中心地へと続く道。
緊迫した面持ちの召喚士は、その前を行く天才の姿が頼もしく映った。
へらへらと笑みを浮かべながら平静なその姿は、いつもと何ら変わる事はない。
天才「……ふふーん」
しかし、天才の心中はそれとは全く逆のものであった。
天才(……残り1時間しかないんだぞ。くそっ、冗談じゃねぇ)
焦りと魔王討伐と言う重責。己がその先陣を切らねばならぬ使命感に押し潰される。
完璧な人間などこの世に存在はしない。天才と呼ばれたこの男ですらそうなのだ。
作戦決行まで残り時間はわずか。人々の焦りは隙を生む。
- 736 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:01:04.74 ID:cpXfGpT9o
…
タッタッタッタッタ
女賢者「ねぇ、まだなの〜?」
天才「うるせぇな。もうじきだ」
召喚士「……」
タッタッタ…ズザッ
天才「……うーむ」
召喚士「どうしました?」
天才「確かこのあ辺りだと思ったんだけどな」
召喚士「行き止まりみたいですね」
天才「ちょっと離れてろ」
女賢者「……?」
ザッ…チャキッ
天才「っりゃあぁ!!」
ガゴオオォォッ!!…スドドドドッ
- 737 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:01:31.10 ID:cpXfGpT9o
天才「落盤で塞がれてたのか?」
召喚士「――っ!!」
ゴシャアアァァァァ!!…ジュウウゥゥゥゥ
天才「マグマかよっ!!」
女賢者「ちょっとおぉ! もうっ!」
ドドオオォォォォン…ガキイイィィィィン
天才「あっぶねー」
召喚士「マグマがこんな所まで……っ」
天才「思ったより、状況は厳しそうだわな」
女賢者「……」
天才「行くぞ。ここを抜けりゃ、魔王の鎮座する空洞に繋がってる」
召喚士「……はい」
女賢者「本当に、大丈夫なんでしょうねぇ……?」
天才「大丈夫大丈夫。多分だけどな! ハーッハッハ!」
召喚士「……っ」
- 738 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:02:00.27 ID:cpXfGpT9o
程なく進むと、天才は足を止めて無言で洞窟内の天井を見上げた。
召喚士「ここ……ですか?」
かつて見た時に広がっていた空洞は、既に存在しておらず、
少し先へ足を進めれば、そこはマグマの川が流れている状態であった。
女賢者「暑……っうい……」
召喚士「何ていうか、おぞましいですね……っ」
熱風と火の粉が飛び交う中で、滝のようなマグマが逆流し、空へと昇っている。
天才「これで決まったな。魔王はここには居ない」
召喚士「……」
天才「奴は上だ。すぐに脱出して……引き摺り出すぞ!」
女賢者「脱出ってどうやって!? 来た道はもう厳しいわよぉ」
天才「どこでもいい。山のドテッ腹に風穴開けてやれ」
召喚士「!?」
天才「そうすりゃ外へ出られる。経験者は語る、だ」
召喚士「は、はい……っ」
- 739 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:02:41.93 ID:cpXfGpT9o
ザザッ
召喚士「行けっ! スフィンクス!!」
シュイイィィィィン
召喚士「スフィンクス、あの辺に穴を……」
スフィンクス「うんっ! いっくよー!!」
女賢者「……っ」
スフィンクス「だぶーる……ぱーんちっ!!」
ズガアアァァ!!…バッゴオオォォォォン!!
天才「ハーッハッハ! すっげぇ威力っ。崩れたりしねーよな……?」
スフィンクス「むーっ、もういっちょー!!」
バッゴオオォォォォン!!…ガラガラッ…ドドオオォォ…
天才「あとは……」
チャキッ…キュイイィィィィン
天才「五行……木!!」
風魔法を放ちながら、天才はツヴァイハンダーを螺旋状に突き出す。
- 740 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:03:15.14 ID:cpXfGpT9o
風が付加したその魔法剣は、スィンクスの開けた穴を抉るように突き進む。
ゴゴオオォォォォ!!
天才「ほーれみろ、貫通――」
その瞬間、気圧の変化により大量に入り込んできた酸素が3人を突きぬけ、
空洞内の熱により発火、更には再び外へ逃げようと穴の外へと吹き付ける。
女賢者「きゃああぁぁーっ!!」
召喚士「ぐ……あっ!!」
そして召喚士らを排除しようとするかの如く、マグマが上昇をやめ、
滝のように一気に空洞内へと流れ落ちてきたのであった。
天才「あっちぃ!! 何とかしろぉ!!」
女賢者「出来る量じゃないわよおおぉぉ!」
天才「走れっ! 穴から外に出るぞおぉ!」
召喚士「……っ!!」
タッタッタッタッタ
天才「跳べぇーっ!!」
そう天才が叫んだ瞬間、凄まじい爆発と共に熱風が彼らの背中を押した。
- 741 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:04:38.98 ID:cpXfGpT9o
ドッゴオオォォォォン!!
召喚士「…………」
女賢者「……死ぬかと思った……っ」
召喚士と女賢者は、コカトリスの背中から地上を見下ろす。
赤黒く熱している溶岩が溢れ、大量の噴煙が脇に開いた穴から噴出していた。
天才「……おい」
コカトリスの嘴で襟足を挟まれた天才が、ぼやきながら呟く。
天才「助けるにしても、方法ってモンがあんだろ……」
召喚士「急だったもので……」
天才「早く降ろせ!」
バシュウウゥゥゥゥ
コカトリス「む……っ?」
天才「おいこら喋るな! 落ちるだろうがっ!」
召喚士「あれは……グリフォン!?」
朱雀嬢「やっぱり朱雀先生!!」
- 742 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:05:34.56 ID:cpXfGpT9o
召喚士「朱雀嬢さん!」
朱雀嬢「ご無事で何よりですわっ」
召喚士「そちらはどうです!?」
朱雀嬢「先程、火山内へ進んだのですが……」
召喚士「!?」
朱雀嬢「あ、いえ……っ。結局、奥へは進めず引き返しましたわ」
天才「あのさ……」
召喚士「……?」
天才「とりあえず、降ろしてくんない? それからでいーだろ」
召喚士「あっ、す……すみません!」
バシュウウゥゥゥゥ…バサァ
天才「あー。死ぬかと思った」
女賢者「誰のせいですか」
朱雀嬢「あちらにおりますわ。案内致しますわ!」
召喚士「はいっ」
- 743 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:06:13.97 ID:cpXfGpT9o
タッタッタッタ
魔道士「召喚士さんっ!!」
召喚士「魔道士さんっ! 無事ですか!?」
魔道士「はいっ。こちらは大丈夫ですよ」
大軍師「司令っ!」
天才「おーおー。ご苦労さん」
青年兵「駄目です。火山内はもはや立ち入る事が出来ませんでした」
天才「だろうな。こっちも南側から潜ったが、魔王は既にいなかった」
ジュニア「何ぃ!? どういう事だ……?」
天才「あの巨大な火の玉……っつーか、マグマの塊」」
青年兵「ま……さか……っ」
天才「アンラ・マンユはあそこにいる」
名代「……っ!!」
ジュニア「あの中にいるってのかよ!? どうやって戦えってんだ!」
青年兵「……手立ては?」
- 744 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:06:52.96 ID:cpXfGpT9o
天才「為す術なし! とにかくあれを攻撃する以外に方法はねぇだろうな」
大軍師「……あれを……直にですか」
召喚士「……あれ?」
魔道士「どうしました?」
召喚士「天才さん、確かさっきまで……」
天才「あん?」
クルッ
天才「……んの野郎っ!!」
召喚士「アカ・マナフがいない!?」
天才「クソがっ、どこに行きやがった!」
伝令「あ、あのー」
大軍師「……?」
伝令「もしかして、上空の黒い雲みたいなやつの事……ですか?」
天才「見たのかっ!?」
伝令「え、えぇ。それなら……」
- 745 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/10(金) 16:07:22.10 ID:cpXfGpT9o
〜火山、南部〜
アカ・マナフ「……」
フォン
男隊員「ちっきしょーっ、しつっけーなぁ!」
女隊員「でもっ、前に戦った時よりは弱くなってないッスか?」
男隊員「まーな。そうは言っても、アイツにとっ捕まったら終わりだ」
女隊員「変なもやもやに触れなきゃいいんスよね!」
男隊員「結果どうなるかは、見にしみてっからな……」
2人の脳裏に、嫌でも西方司令部での悪夢が蘇る。
男隊員「同じ過ちは繰り返さねぇ……っ!」
女隊員「もちろんッス!」
タタッ
アカ・マナフ「主の元へは近づけさせん……」
男隊員と女隊員を追跡するアカ・マナフの目に、多数の人影が飛び込んだ。
アカ・マナフ「……あれは」
- 751 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/11(土) 23:19:18.15 ID:X6fG3Mpco
ザザッ…ガチャガチャガチャッ
魔道兵「休憩はローテーションで、5分おきだぞ!」
アカ・マナフ「こんな所にも人間が……」
火山南部に配置された魔道兵600名程が、
その刻を今かと、意気揚々に、そして恐怖を押し込め布陣していた。
アカ・マナフ「……成程。そういう事か」
フワッ…クルッ
アカ・マナフ「火山を包囲して……主を」
ズザッ
女隊員「動きが……止まったッスね……」
男隊員「……」
アカ・マナフ「何を……狙っている」
ボフウウゥゥゥゥ
男隊員「しまった!!」
女隊員「!?」
- 753 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/06/11(土) 23:22:53.05 ID:X6fG3Mpco
男隊員「アイツ……魔道兵に気付きやがった!」
女隊員「え……っ!?」
男隊員「このままじゃまずい! 魔道兵と合流すんぞ!」
女隊員「まさか……狙いって……」
男隊員「あのモヤ浴びたら全滅だ。何としても食い止めるぞ」
ザザッ…タッタッタッタ
しかし、2人がアカ・マナフに遭遇する事はなかった。
魔道兵と合流した彼らは、拍子抜けしながらも、眷属の動きに恐怖を感じる。
男隊員「現れてない……だとぉ!?」
魔道兵「え、ええ……っ。魔物の気配は一切……」
女隊員「それじゃ、魔物はどこに?」
男隊員「警戒を怠るな。奇襲も考えられるぞ」
魔道兵「はっ」
男隊員「お前はそっち側を見張れ。不審な動きがあったらすぐに知らせろ」
女隊員「了解ッス!」
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