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少年「悪魔の娘?」 少女「人殺しの化物?」
- 1 名前:深夜にお送りします [sage]
投稿日:2013/12/22(日) 18:09:09 ID:5K6cN7w.
昔々、人殺しの化物がありました。
気の狂った魔術師に創られたそれは、人ではありません。
その手は、剣を砕き、鎧を千切り、肉を握り潰します。
その脚は弓撃つよりも疾く、一度出逢えば、背を向け逃げ出すことすら許しはしないのです。
軍国主義からも淘汰された、余りに倫理から掛け離れた存在。
人々は恐れ、何度も破壊を試みました。
しかし、その全ては徒労に過ぎませんでした。
人々が立ち上がった分だけ、戦った数だけ、屍が積み重なるだけだったのです。
屍の数だけ、魔術師のおぞましい笑い声が世界に響きました。
しかし、絶望に塗れたある日、魔術師と化物ははたとその姿を消してしまうのです。
その行方を知る者は、誰一人居ませんでした。
そして、世界に平和が訪れたのでした。
(本作品は、おまけ程度ではありますがアダルトシーンを含みます。フェチの要素も含みますので、閲覧の際はご注意ください)
- 2 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:10:15 ID:5K6cN7w.
<とある町の外れ、そよ風吹く丘の上の教会>
司祭「皆様、本日はようこそお出でくださいました。皆様の温かなご協力、主もお喜びのことでしょう」
傭兵A「ぁー、どうも。御託は良いからさ、司祭さん。仕事の内容、早いとこ詳しく教えてくれないかな」
傭兵B「そうだぜぇ、ジジイ。少ねぇ報酬でわざわざ来てやってんだ」ケケッ
傭兵C「……お前、失礼だぞ」
傭兵B「そらすーませんねぇ」ヘッ
司祭「えぇ、えぇ。何分急なもので、資金が立ち回らなく、本当に申し訳ない限り……」ペコペコ
傭兵A「司祭さん。そうゆうのは良いから、早く仕事の内容を」
司祭「いやはや、本当に申し訳ございません。それでは、早速」ペコペコ
傭兵A(ったく、調子狂うぜ……)ハァ
- 3 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:10:55 ID:5K6cN7w.
司祭「……この教会には、『悪魔の娘』とされる少女がいます」
傭兵B「悪魔の娘ぇ? んだそりゃ、角がにょっきり飛び出た女でも居るのかよ」
司祭「こちらへ来なさい」
「……はい」
静かな声が響く。
傭兵たちが声の方を振り返ると、そこには、粗末な麻の服に身を包んだ少女が立っていた。
柔らかそうな肌は、まるで丘に降り積もる新雪のように白く、触れば溶けてしまうような儚さを感じさせた。絹糸を梳いたような白銀の髪は、彼女の腰元までまっすぐに伸び煌めいている。
少し釣りがちの双眼に包まれたルビー色の瞳と相まって、その姿は、一流の職人が手がけた人形かと錯覚してしまう程。
それが故に、まだ成熟しきってはいない身体に包まれているぼろぼろの麻の服が、傭兵たちには不釣り合いに感じてならなかった。
しかし、それにも関わらず、誰もが思うのだった。
彼女は美しい、と。
- 4 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:11:39 ID:5K6cN7w.
コツ コツ コツ...
少女「…………」ペコリ
司祭「この娘です。名は、少女と申します」
傭兵A「この、嬢ちゃんが……?」
傭兵C「どう見ても、いや確かに美しいが、それ以外はただの年頃の町娘にしか見えないが」
司祭「詳しいことは申し上げられません。ただ確かなことは、彼女が確かに『悪魔の娘』だということ、それだけです」
傭兵C「あ、いや、済まない。疑うつもりはないんだ」
司祭「えぇ、えぇ。こちらこそ、詳しいことを申し上げられなくて誠に……」ペコペコ
傭兵A(まーた始まったよ……)
- 5 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:12:16 ID:5K6cN7w.
傭兵B「へへっ、どっちでも良いじゃねぇか! 見ろよぉ、こんな可愛い子ちゃん、町中探してもそうそう居ないぜぇ?」ズイッ
少女「っ」ビクッ
傭兵A「おい、止せ。怯えてるぞ」ハァ
少女「……っ」プルプル
傭兵C「あぁもう! お前はさっきから何なんだ!? やる気がないならここから出て行け!!」
傭兵B「ぁ? んだ、テメェ? やる気か……ッ?」ヘッ
傭兵C「それでお前が出て行ってくれるなら、いくらでもな……ッ!」キッ
司祭「おぉ、おぉ! お二方、争いはお止めを……」オロオロ
- 6 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:12:50 ID:5K6cN7w.
傭兵A「止せよ、お前ら」スッ
傭兵B「んだよ、オラ。横からしゃしゃり出てくんじゃ……」
傭兵C「しかし……ッ!」
傭兵A「そんなに喧嘩がしたいなら、俺が相手してやる……ッ」ギロッ
傭兵B・C「ッ!?」ビクッ
傭兵A「どっちからだ? それとも、まとめて相手してやろうか……ッ!?」
傭兵B「じょ、冗談に決まってるだろぉ? 本気にすんじゃねーよっ、旦那ぁ」ハハハ...
傭兵C「っ……。済まない、熱くなり過ぎた」
傭兵A「二度とすんな。くだらねぇ」ハァ
傭兵B・C「…………」
傭兵A「俺たちはここにかき集められたメンバー、全員が初対面だ。反りが合わないってのも無理はねぇ。それでも、仕事が始まれば一つのチームとして動く。相応の付き合い方ってモンがあるだろうよ」
傭兵A「傭兵"4"人、仲良くしなくちゃなぁ?」
- 7 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:13:26 ID:5K6cN7w.
傭兵A「なぁ、ボウズ。お前もそう思うよな?」ニッ
少年「……うん」コクッ
傭兵A「おぉ、分かるか! 偉いぞ」ワシワシ
少年「っんぅ、……止めて」グワングワン
傭兵B(こんな餓鬼がねぇ……傭兵ギルド、気でも狂ったか?)
傭兵C(この娘とほとんど変わらない年じゃないか……)
二人の傭兵は、頭を乱暴に撫でられ目を回している少年を、訝しげな表情で見つめていた。
彼らの眼差しに疑問の念が混じるのも無理はない。少年は、傭兵などとはおよそ思えない程、小さく可愛らしい容姿をしていたのだから。
くりくりとした丸い眼、その中で静かに光る空色の瞳。肩の少し上まで伸びた亜麻色の髪は、散々撫でくり回されてぐしゃぐしゃに乱れてしまっていた。
彼らがどう観察しても、少年が帯剣している様子はない。彼が身に纏う、厚手のもこもことしたハンターローブですら、戦闘用の物とは思えなくなってしまう。
身体も細く、背丈も少女と同じ程。柔らかな雰囲気を纏っている分、少年の方が年下に見えてしまってならないのだった。
- 8 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:14:00 ID:5K6cN7w.
傭兵A「さぁ、司祭さん。話をぶった切って済まなかった。早いとこ、仕事の内容を教えてくれ」
司祭「えぇ、えぇ。それでは、皆様には」
司祭「彼女の、護衛をお願いしたいのでございます」
傭兵A「ほう?」
傭兵C「……護衛ってことは、誰かに狙われている、と言うことか?」
司祭「おっしゃる通りでございます。はっきり誰とまでは分かりませんが……。私共教会は、それ自体が巨大な組織。中には、良からぬことを考えている輩も……」
- 9 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:14:43 ID:5K6cN7w.
傭兵A「あぁ、良い良い。どこも事情はあるだろうさ。とにかく、何者かがこの嬢ちゃんを狙っている。俺たちはそれを護る。そうゆうことだろ?」
司祭「おぉ、おぉ! お引き受けくださいますか!」
傭兵A「その為に来てるんだしよ。で、お前らは?」
傭兵C「こんな若い娘が狙われているとあれば、引き受けない道理はない」
傭兵B「けっ、フェミニストが。……安かろう、楽かろうってか。まぁ、良いぜ」
傭兵A「ボウズ、お前は?」
少年「……僕も、受けるよ」
傭兵A「おぉ、そうか! 偉いぞ」ワシワシ
少年「っんぅ、……止めて」グワングワン
司祭「おぉ、おぉ! 皆様、誠に、誠にありがとうございます!」ペコペコ
少女「…………」
- 10 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:15:20 ID:5K6cN7w.
<町を見下ろす窓付きの部屋>
傭兵A「と言うわけで、おさらいだ」
傭兵B「……ったりぃ」
傭兵C「またお前は、そうやって……」
少年「…………」
傭兵A「任務は、娘の護衛。期限は未定、報酬は日毎に入る。飽きたからって、途中で抜け出すんじゃねーぞ、B」
傭兵B「な、何で俺に言うんだよ、旦那ぁ!」アセアセ
傭兵C「それで、具体的にどうするんだ?」
傭兵A「司祭さんから教会の見取り図を貰ってきた」バサッ
傭兵B(畜生、無視かよ……)
- 11 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:15:58 ID:5K6cN7w.
傭兵A「嬢ちゃんの部屋は、ここだ。この一件が落ち着くまで、部屋に篭もらせておくらしい」スッ
傭兵B「自由に出歩きも出来ないたぁ、難儀なこった」ヘッ
傭兵A「仕方ねぇさ。んで、この教会には二箇所出入り口がある。正門と、裏口だ」
傭兵C「まずは、そこを見張るということか」
傭兵A「そうゆうこと。後一人が嬢ちゃんの部屋、残り一人が休憩。たった四人だ、これぐらいしか出来ねぇ」
傭兵B「おう、分かったぜ! 俺が休憩役ってことだな!」
傭兵A「交代に決まってるだろうが、ダァホ!」
少年「…………」
- 12 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:16:34 ID:5K6cN7w.
<一本の蝋燭が仄かに照らす部屋>
司祭「それでは、何かあったら傭兵の皆様に」
少女「……はい」
司祭「皆様に失礼のないように」
少女「……はい」
ギッ...バタン...
少女「……はぁ」ギシッ
- 13 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:17:09 ID:5K6cN7w.
少女「護衛、か……」
少女(そんなの、要らない……)
少女(私は、これからどうなるの?)
少女(誰かにさらわれる。誰かに殺される。このまま、教会でいつもの日々)
少女(なんだ。どれも変わらないじゃない……)
少女(結局、死んでも、生きても、変わらない)
少女(……どれも、最悪の日々)
- 14 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:17:45 ID:5K6cN7w.
コン コン
少女「……はい」
ガチャッ...ギィッ...
少年「こんにちは」
少女「……こんにちは」
少年「…………」
少女「…………」
少年「…………」
少女「……何か、ご用ですか」
少年「ぇ? あっ、えぇと」
少女「えぇ」
少年「今日から君を護衛する、傭兵の一人だよ。よろしく」
少女「知ってます。私、あの場に居たでしょう」
少年「ぇ、あっ。そうか」
少女(何だって言うの)ハァ
- 15 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:18:22 ID:5K6cN7w.
少年「君は、僕たちが護るから。だから、安心して」ニコッ
少女「……それは、どうも」
少女「部屋の中じゃなくちゃ、いけないんですか」
少年「ぇ?」
少女「この部屋、見ての通り窓がありません。別に、部屋の中に居て貰わなくても」
少年「そうだね」
少女「そうだね、って……」
少年「外に居たら、退屈でしょ?」
少女「そうですね」
少年「中に居たら、君が居るでしょ?」
少女「そうですね。で?」
少年「話し相手が居る」ニコッ
少女「……はぁ」
少女(この人、変……)
- 16 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:19:04 ID:5K6cN7w.
少年「…………」
少女「…………」
少年「…………」
少女「…………」
少年「…………」
少女(……話したいんじゃなかったっけ)イライラ
少年「……君は」
少女「何です」
少年「どうして、外に出ないの?」
少女「……は?」ピクッ
- 17 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:19:36 ID:5K6cN7w.
少年「君は、本当に悪魔の娘? 僕には、ただの人間にしか見えない」
少女「…………」
少年「君への扱いは、絶対におかしいよ」
少女「…………」
少年「ここに居るから、おかしくなっちゃったんじゃないかな」
少女「……で……」
少年「君は、外に出れば良い。好きに歩いて、好きに生きてゆけば良い。そうすれば、今のように不自由はしないはずだよ」
少女「……け……いで……ッ」
少年「だって、君は人間なんだか――」
少女「――ふざけないでッッ!!!」
少年「っ!?」
- 18 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:20:32 ID:5K6cN7w.
少女「貴方、何様のつもり……ッ!!?」ガタッ
少年「そんな、僕は、別に……」
少女「人の気も知らないで、突然都合の良いことをべらべらと……ッ!!」
少女「私だって、私だって……ッ!! そんなこと、そんな、こ……と……?」
少年「……?」
少女「……私は。私、は…………?」
少年「……大丈夫? 気分でも」
少女「っ! 触らないで」
少年「っ……!」ピクッ
少女「……お願い。出て行って」
少年「っ……ぁ……」
少女「見張りなら、部屋の外でして」
少年「…………」
少年「……うん」
- 19 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:21:07 ID:5K6cN7w.
ギィッ...バタン...
『だって、君は人間なんだか――』
少女「ッ……!」ギリッ
少女「出来る訳、ないじゃない……ッ」
少女「私は、『人間』じゃないんだから……ッ!」
少女「…………」ドサッ
『君は、外に出れば良い。好きに歩いて、好きに生きてゆけば良い』
少女「……私」
『……どれも、最悪の日々』
少女「そんなこと、考えたこともなかった」
少女「外、か……」ギシッ
少女「ぁ……。窓、ないんだった……」
- 20 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:21:42 ID:5K6cN7w.
<燭台が整列する石造りの廊下>
少年「……はぁ」
『触らないで』
少年「っ……」ギュッ...
少年「……違う」フルフル
少年「そう言う意味で言われたんじゃない……」
少年「大丈夫」
少年「……大丈夫…………」
少年「……ふぅ」
『人の気も知らないで、都合の良いことをべらべらと……ッ!!』
少年「本当、だよね」
少年「『人間』の気持ちなんて、僕には分からないよ……」
- 21 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:22:19 ID:5K6cN7w.
<町を見下ろす窓付きの部屋>
ガチャッ バタンッ
傭兵A「くぁ゛ーっ! ったくよぉ……」ガシガシ
少年「あれ? えぇと……A? もう交代の時間だっけ?」
傭兵A「いや、違ぇ。ちょいと計画の変更だ」
少年「ふぅん……?」
傭兵A「ぁ゛ー。ボウズにゃ、どう説明したもんか」
少年「……?」キョトン
- 22 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:22:51 ID:5K6cN7w.
傭兵A「とにかく、だ。夜は、娘の部屋を見張らなくて良い」
少年「えっ? そんな、危ないんじゃ……。どうして?」
傭兵A「……夜は、儀式をするんだとよ」
少年「儀式……?」
傭兵A「あぁ。司祭曰く、悪魔の娘が教会に居られる為の、儀式だとさ」
少年「ふぅん……?」
傭兵A「見取り図の、……この部屋だ。地下の一番奥の部屋。ここで、司祭立ち会いの元、毎晩夜明けまで行うって話だ」
少年「ふんふん」
傭兵A「だから、夜は見張りの位置が変わる。一人が、地下への入り口。もう一人が、裏口から続く道と入り口から続く道の交差点、ここだ」スッ
少年「ふーん……?」
- 23 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:23:21 ID:5K6cN7w.
少年「ねぇ、A」
傭兵A「ん、どうした」
少年「どうして、儀式の部屋の前で見張りをしないの?」
傭兵A「ぁ゛ー……」ガシガシ
少年「……?」キョトン
傭兵A「司祭が言ったんだよ。儀式の時は、部屋に近付かないでくれって」
少年「……ふぅん?」
傭兵A「悪いな、ボウズ。これ以上の質問はなしだ。余計な詮索をするのは、傭兵としてタブーだ。それに、今回の一件については、俺もお前も困る」
少年「……? 分かった……」
- 24 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:23:56 ID:5K6cN7w.
傭兵A「胸糞悪ぃ話だが、そう言う訳だ」ハァ
少年「Aは、どうしてか知ってるの?」
傭兵A「知らない。が、分かる。今まで、そう言う場で何度も仕事してきた。あのジジイもご多分に漏れずって訳だ」
少年「……教えてくれないんだね」シュン
傭兵A「ボウズが知る必要はない。済まないが、分かってくれ」ワシワシ
少年「っんぅ、分かったから……止めて」グワングワン
- 25 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:24:30 ID:5K6cN7w.
傭兵A「そう言う訳だ。ボウズはそろそろ寝ろ」
少年「えっ?」
傭兵A「えっ? じゃねぇ。子供は寝なきゃ育たねーぞ? 見ろ、そんなひょろくて小っちぇ身体じゃあ、女一人護れねぇ」クカカッ
少年「んぅ」ムッ
傭兵A「おまけに自分が女みてーな顔してるしよぉ?」
少年「それ、関係ないでしょっ」ムッスー
少年「もしかして、見張りが二人しか居ないのって、そう言う理由?」ムスッ
傭兵A「あっははっ! そんな気ぃ悪くすんなよっ!」
傭兵A(武器もねぇ、鎧もねぇ。こんな子供に見張りを任せられっか……)ハァ
- 26 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:25:08 ID:5K6cN7w.
少年「僕だって、チームの一人なんだからっ。ちゃんと仕事するっ」
傭兵A「ほぉ? 夜は眠ぃぞぉ? ちゃーんと起きてられっかぁ?」
少年「子供扱いしないでよっ」ムッスー
傭兵A「よーし分かった! 見張りは俺と一緒にしようじゃねーか!」
少年「良いのっ?」
傭兵A「おう! 一緒に頑張ろうぜ?」
少年「うんっ!」パァッ
傭兵A(俺、案外子育ての才能ある?)
- 27 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:25:39 ID:5K6cN7w.
<闇が纏わり付く地下の一本道>
少年「ねぇ、A」
傭兵A「何だ?」
少年「少女って、本当に悪魔の娘?」
傭兵A「……ボウズ。余計な詮索はタブーだと言ったはずだ」
少年「でも……」
傭兵A「傭兵は、ただ言われたことをやりゃ良いんだ」
少年「……うん」
少年「…………」
傭兵A「…………」
- 28 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:26:13 ID:5K6cN7w.
傭兵A「ボウズ」
少年「何?」
傭兵A「お前は、字ぃ書けるか?」
少年「うん。……それが?」
ゴソゴソ...
傭兵A「こいつは、何だ?」スッ
少年「……ペン?」
傭兵A「俺が、違うと言ったら?」
少年「えっ?」
傭兵A「俺が、『これは剣です』って言ったら?」
少年「そんなの、おかしい」キョトン
- 29 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:26:46 ID:5K6cN7w.
傭兵A「だが、俺は『これは剣です』と言う。俺だけじゃねぇ、BもCも、司祭も、あの嬢ちゃんも、皆皆、俺が手に持っているこれを見れば、『これは剣です』と言うんだ」
少年「……ぇ? え……?」
傭兵A「それだけじゃねぇ。皆、俺を指差して言うんだ。『この人は剣を持っている。あぁ、この人は凶暴な人だ。今すぐにでもこの剣を振りかぶって、私たちに斬り掛かろうとしている。危険だ。この人は危険な人だ』ってな」
少年「あれ……? そんな、え……?」
傭兵A「結局、そんな話だ」
少年「……?」
傭兵A「ボウズには難しい話だったな」ワシワシ
少年「っんぅ、難しいけど……止めて」グワングワン
- 30 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:27:17 ID:5K6cN7w.
傭兵A「まぁ、嬢ちゃんとは仲良くやるこった。話し相手が居るってのは良いこったろうさ」
少年「……もしかして」ジッ
傭兵A「ん? ど、どうした?」
少年「僕を少女の部屋に行かせたのって、そう言う理由?」ムッ
傭兵A「あっははっ! 気ぃ悪くすんなよっ! 年頃の娘と二人っきりなんて、羨ましくって仕方ねぇ!」
傭兵A(だーかーらー! こんな子供にまともな見張りさせられっか!?)
- 31 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:27:53 ID:5K6cN7w.
少年「……でも」
傭兵A「ん?」
少年「今日、喧嘩した」
傭兵A「ぅーえ、早っ」
少年「部屋から出てけって言われた。どうしよう……」シュン
傭兵A「そりゃまた……」
傭兵A「どうして嬢ちゃんが怒ったか、ボウズは分かるか?」
少年「うん。何となく、だけど……」
- 32 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/12/22(日) 18:28:25 ID:5K6cN7w.
傭兵A「なら、ちゃんと謝るこったな」
少年「謝る……」
傭兵A「そうだ。ちゃんと相手の目ぇ見て、自分の『申し訳ない』って気持ちを相手に伝えるんだ」
少年「気持ち……」
傭兵A「おぉ、そうだ。ボウズは、嬢ちゃんと仲直りしたいと思ってるんだろ?」
少年「うん……、そうだね」
少年「明日、ちゃんと謝ってみる」
傭兵A「おう、頑張れよ!」ワシワシ
少年「っんぅ、分かったから……止めて」グワングワン
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