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少女「海と、瓶に詰まった手紙」
- 1 名前:VIPがお送りします []
投稿日:2011/02/03(木) 22:59:03.97 ID:A/ecxZgpO
僕「はぁ……」
僕「予備校、行くのメンドクサイ」
僕「……」
僕「一日くらい」
僕「まあ、いいよね」
- 3 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/03(木) 23:02:54.69 ID:A/ecxZgpO
一日くらい別にいいだろう。
そう言って、僕はもう三日も予備校の授業をサボっている。
いつもの場所。
現実逃避のためのこの場所。
小さな浜辺の、隅っこに僕はいた。
- 4 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/03(木) 23:08:53.22 ID:A/ecxZgpO
僕「はぁ……」
僕「何やってるんだろうな、自分」
僕「こうやって一人で逃げて」
僕「ボーッと海を見て、日が暮れたらまた一人の家に帰って」
僕「……」
僕「でも、まだ外に出てるだけマシだよな」
- 5 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/03(木) 23:12:59.71 ID:A/ecxZgpO
僕「きっとそうだよ。これで引きこもりにでもなったら、ダメなのかもしれないけれど」
僕「……」
僕「あ、でも明日からそれもいいのかな」
僕「……いや、お金を払っている以上予備校には行かないと」
僕「生活費のためにバイトだって休めない」
僕「……」
僕「ああ、楽になりたいな」
ピリリリリ。
僕「ん、メール? 女から……」
- 6 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/03(木) 23:21:13.63 ID:A/ecxZgpO
女『今日も学校休み? ちゃんと授業出ないとダメだよっ』
僕「……」
彼女とは、今の予備校で知り合った仲で、何かと僕の事を気遣ってくれる面倒見のいい子だ。
最近は一人になりたい時間が多いので、それがちょっと億劫になっていたけど。
僕(このメールだって、それだ)
僕は彼女に返信もせずに、ただ海に目を向けていた。
僕(ああ、空が綺麗だ)
- 7 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/03(木) 23:25:33.41 ID:QEkrzJNCP
空が綺麗だ(笑)
- 8 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/03(木) 23:31:48.93 ID:A/ecxZgpO
僕(こんなんでいいのかな、自分)
僕(予備校も中途半端、仕事なんてただのアルバイト)
僕(もうすぐいい歳だしな……でも)
明日からすぐに生き方が変わるわけでもない。
昨日もそんな事を考えた気がしたけど、気にしない。
僕「……そろそろいい時間。帰ろうかな」
- 11 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/03(木) 23:41:24.92 ID:A/ecxZgpO
気分転換にはなっているが、明日からの事を考えると足取りは思い。
僕「明日からまたバイトか……ん?」
帰りの砂浜で、僕は足元に瓶を見つけた。
僕「?」
僕「何か入っている?」
少し大きなガラス瓶の中には、紫色の……紙のような物が入っていた。
僕「……」
僕はそのまま、瓶に構わず帰ろうとした。
- 12 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/03(木) 23:48:57.57 ID:A/ecxZgpO
僕「でも、ちょっと気になる……」
ただの瓶の中に、そんな小綺麗な物が入っているのが少しだけ。
僕の胸に引っ掛かった。
僕「ガラスの……今時こんなの、珍しいな」
ひょいと瓶を拾ってみると、コルクで栓がされた大きな瓶。
中には、よく見ると……封筒?
手紙の形をしたそれは、瓶の中にただあった。
- 15 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/03(木) 23:54:18.46 ID:a3rHB2rf0
猫の人?
- 16 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/03(木) 23:55:17.77 ID:A/ecxZgpO
僕「手紙……なのか?」
瓶をくるりと回して見てみるが、封筒の裏にも表にも何も書いていないのが見える。
僕「えい」
僕は興味に負けて、コルクの蓋を開けた。
コルクの匂いの後に、中から何か花のような甘い匂いがした気がした。
- 17 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 00:02:11.65 ID:3F9QxeRN0
つかまえて?
- 18 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 00:07:39.36 ID:gg+EtQm+O
僕「……本当に手紙だ」
紫色の封筒。
僕「ん、ちゃんとノリでとまって……」
それを開けてみようとしたが、きっちりと封がされている。
乱暴に破いて開けてしまおうかとも思ったけれど。
僕「……」
僕「いいや、持って帰ろう」
破いて中身を見てしまうのは、何だか……もったいない気がした。
その封筒が、僕の上着のポケットにスッポリと入ったのも、一つの理由だ。
僕は、夕焼けの海をあとにした。
- 19 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 00:08:28.63 ID:+8hu4gvx0
なんか綺麗だな
- 20 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 00:16:18.08 ID:gg+EtQm+O
僕「ただいま、っと」
誰も待っていない部屋に挨拶をして、僕はカバンと上着を投げ出してベッドに腰をおろした。
右手には、先ほど海で拾った手紙を持ちながら。
僕「ハサミ……と」
そのまま開けようとしたが、ノリでくっついた部分が取れなくいので。
僕は封筒の端をハサミで切って中身を確認する事にする。
端から端に切れ目が出来ると、そこから一枚の紙が顔を出す。
本当に、手紙みたいだ。
- 22 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 00:24:01.61 ID:gg+EtQm+O
僕は夢中でそれを取り出した。
僕「字が……書いてある」
少しだけ胸がドキドキしていたのを覚えている。
僕に宛てた手紙なんかでは無いのに。
いや、それを覗き見る緊張感から……なんだろうか。
甘い匂いがするその手紙を、僕は読み出した。
- 23 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 00:38:47.60 ID:gg+EtQm+O
こんにちは。
この手紙を拾ってくれた方、まずはありがとうございます。
良かったら、私と文通しませんか?
普段お話出来ないような事を、お互い言い合えたらいいなと思っています。
お返事を、海の向こうで待ってます。
僕「これ……?」
名前も宛先も書かれていないその手紙には、あまりに普通で不思議な事が書かれていた。
でも明らかに、特定の誰かに書かれたような内容ではない。
それでも僕は、まだドキドキしながらその手紙を見ていたんだ。
- 24 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 00:54:00.19 ID:gg+EtQm+O
僕(綺麗な字。私って書いてあるから女の子……なのかな)
僕(でもこの文って……)
僕(まあそもそも、こんな変な方法で手紙を送るなんて無いものな)
僕「にしても……一体何なんだろう」
浜辺に流れていた瓶、その中から取り出した手紙に、宛名の誰に向けられたのか、わからない文章。
僕「……」
ピリリリリ。
手紙に見とれていると、ズボンのポケットからメールの届いた音がした。
僕は条件反射でそれを開く。
- 25 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 01:04:02.61 ID:gg+EtQm+O
女『大丈夫、生きてる? 具合悪いならお見舞い行こうか?』
今日二回目のメールが届いていた。
さすがに、三日間も顔を出さないのは……同じクラスの人間として心配させてしまっただろうか。
僕「……返事だけでもしておこうかな」
僕『生きてるから大丈夫だよ』
必要最低限の文章を、彼女に送り返す。
ピリリリリ、とまた携帯が鳴る。
女『よかった! じゃあ明日はちゃんと学校来るんだよっ!』
文章からは、元気な彼女の様子が伝わってくる。
- 26 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 01:09:30.88 ID:gg+EtQm+O
僕は携帯をベッドに投げつけて、そのまま寝転がってしまう。
明日の事を考えたら、また頭がごちゃごちゃして来てしまった。
僕(いいや……おやすみなさい)
僕はそのまま何も考えずに、布団にくるまって眠る事にした。
目を閉じると、枕元に置いた手紙から……また甘い匂いがした。
その匂いに意識を奪われるように、僕は眠りについた。
- 27 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 01:22:22.13 ID:gg+EtQm+O
次の日、僕が目を覚ましたのはもうお昼を過ぎてからだった。
女からのメールが二通来ていたけれど、僕はそれを確認せずに支度をし予備校に向かった。
女「……あっ、来たっ!」
教室に入り僕を見つけるなり、彼女が一言。
女の周りにいた何人かが僕の方を向き、また元の位置に視線を戻していった。
女はそのまま、僕に歩み寄ってくる。
女「もう、心配したっ。授業サボってさ……何してたの?」
女「ノート大丈夫? あ、学校終わったら貸すからさ。いつもみたいにファミレスで……」
教室に入るなり、まくし立てるように話しかけてくる彼女。
- 29 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 01:31:19.13 ID:gg+EtQm+O
僕はまあ、いつもの事だと思いながら席に座った。
僕「今日はバイトだから、また今度でいいよ」
女「そんな事、一週間前も言ってたよね?」
僕「じゃあ、また今度も一週間後になるかもね」
女「もうっ、そんなんじゃ勉強出来ないでしょ! 僕ちゃんは不真面目すぎるよ〜……」
- 30 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/04(金) 01:38:45.72 ID:dZgIKnUV0
どっかで見たことあるぞこいつしえn
- 31 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 01:39:39.54 ID:gg+EtQm+O
女「ここまで言われて、悔しくないの?」
悔しくはない。
けれど、こう言った話をすると女は退かない。
断れば余計に長くなる……。
僕「……はぁ、わかった。じゃあバイトが終わってからでもいい?」
結局、いつもこうやって負けるんだ。
僕(……これは、僕の方が折れてやってるんだからな)
- 32 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 01:47:16.19 ID:gg+EtQm+O
女「もちろんっ! 今日もいつもの時間?」
僕「うん。0時に終わりだよ」
女「じゃあいつもの感じでよろしくっ!」
僕(本当に元気だな、女は)
話が終わった辺りで、ちょうど講師が教室に入ってきた。
また後でね、と小さく僕に言うと、隣に座った彼女はそのまま教室の前の方を向いた。
これで、僕は考え事に集中する事が出来る。
- 33 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 02:01:03.36 ID:gg+EtQm+O
女「じゃあ、今夜楽しみにしてるよ〜」
授業が終わると、彼女はすぐに教室から出ていってしまった。
確か、実家の手伝いをしているんだったっけか……。
まあいい、僕も早くバイト先に向かわなければ。
何だかんだで、ノートをとる事に集中し、そのまますぐにバイトのお店へ。
手紙の事は頭の中にあったけど、僕はひとまず落ち着くまでそれを考えるのを止めていた。
途中からは考えても、どうしようもないと思ったからだ。
それを思い出したのは、女とファミレスに行ってノートをある程度写し終えた辺りだった。
- 34 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/04(金) 02:08:24.49 ID:zjux5V200
ビンの中に手紙がみっしりと隙間無く詰まってる映像が頭に浮かんだ
- 35 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 02:11:09.16 ID:gg+EtQm+O
僕「……そう言えばさ、昨日海で手紙を拾ったんだ」
女「え、海で?」
イチゴパフェを食べ終わった彼女が、口の周りを拭きながら僕に聞き返してくる。
女「手紙ってどういう事? 浜辺に落っこってたの?」
僕「いや、瓶に入っていただけ。宛名も無くて、誰に向けて書いたかもわからない手紙だよ」
女「へえ〜。内容は内容は?」
- 36 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 02:21:12.22 ID:gg+EtQm+O
彼女は目を輝かせながら、僕の話を聞いていた。
女「なんか不思議だね〜。海から流れ着いた手紙なんて……お返事は?」
僕「住所も連絡先も無いんだからさ。返事なんて出来ないよ」
女「あ、そっか。ん〜……もしかしてそれで終わり?」
僕「うん。手紙なんて書いた事も無いし、まあそれだけだよ」
女「つまんないな〜。久しぶりに会った話がそれ〜?」
文句を言う彼女にノートを返し、僕は伝票を取ってさっさとレジに向かった。
ノートを貸してくれたお礼、デザートだけは僕の奢りだ。
- 37 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 02:27:35.92 ID:gg+EtQm+O
女「ごちそうさまでしたっ」
僕は自転車を押しながら、彼女は歩きながら。
それぞれの家に向かって歩いている。
女「あ、ねえ。コンビニ寄ろうよコンビニ」
僕「んっ?」
女「明日の朝ごはん買っていくんだよ。今家に食べ物あまり無いからさ〜」
僕「実家なのに?」
女「実家でも一人暮らしでも、買い物しないと食べ物無いのは当たり前だよ?」
僕「そんなもんかな」
女「そんなもんだよ〜」
結局、いつものコンビニに寄って、そのまま僕たちは帰るんだ。
でも今日だけは少し違った。
- 38 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 02:37:56.19 ID:gg+EtQm+O
女「あ、はい。これ」
コンビニを出るなり、彼女は袋から僕に何かを手渡した。
僕「何これ?」
女「封筒……手紙セットだよっ。パフェのお礼」
パフェは元々僕の方のお礼だったのに……。
女「えへへっ、見かけちゃったから、つい」
はいっ、と僕に手渡された包みには、単色のシンプルな封筒が何枚か入っているのが見えた。
僕「……ありがとう」
女「いいんだよっ。何かお話あったら聞かせてね」
僕「うん。何もないと思うけどさ」
- 39 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 02:41:45.04 ID:gg+EtQm+O
女「あははっ、それでもいいよ。じゃあ……」
さよならを言って離れた後に、彼女は思い出したように僕の方を向き直って言った。
女「あ、明日もちゃんと学校来るんだよ〜!」
明日は休みだ。
それを思い出したのか、別れた後で女からメールが来た。
女『ごめん、明日は休みだったねっ! じゃあどっか出掛けよっか?』
僕「じゃあ、ってなんだよ。じゃあって……」
- 40 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 02:47:09.81 ID:gg+EtQm+O
僕『明日は一日中バイトがあるから、厳しいよ』
女『そっか。私も夜は無理だから、また今度だね〜』
僕は断りのメールを入れてから、自転車を漕いだ。
住宅街を抜けて、海に面した道路に出た瞬間、冷たい風がビュンと顔に当たった。
真っ暗になった海を横目に、僕は家に帰って行った。
僕(手紙……何書こうかな)
- 41 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 02:54:31.45 ID:gg+EtQm+O
僕「ただいま」
僕「……」
シャワーを浴びて、寝巻きに着替えて。
僕はすぐベッドに横になった。
僕(早く眠ってしまおう、明日もバイトだ)
僕(……)
しかし何故だろう、頭が冴えてしまいなかなか眠気が襲ってこない。
まだレストランで食べた物を体が消化しきってないのか……お腹に違和感もある。
そうなると、僕は頭の中で色々な事を考え出してしまう。
頭に浮かぶのは、不安な事ばかりだ。
- 42 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 03:02:51.00 ID:gg+EtQm+O
僕(明日バイトか。どうしよう、休みたい)
僕(風邪でもひかないかな……)
僕(またすぐに学校もあるし、本当に億劫だ)
僕(ああ、このまま……)
僕(目を閉じたらずっと目覚めなければいいのに)
僕(ずっと暗いまま、もう朝が来なければいいのに)
僕(ああ……なんで僕はここにいるんだろう)
眠れない。
- 44 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 03:12:33.40 ID:gg+EtQm+O
僕(あ……甘い)
暗闇の中で、また僕の鼻に。
あの手紙の匂いが香ってきた。
その甘い香りは、なぜか僕の頭に優しく入り込んで来た気がして……。
僕(……)
そのせいだろうか。
僕は手紙を書いたその人と、無性に話をしたくなってしまった。
それは多分、夜の雰囲気とかセンチメンタルさが混じっていたせいもあったんだと思う。
僕は一人、やるせない気持ちで机に向かった。
- 45 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 03:21:14.21 ID:gg+EtQm+O
僕「うう〜ん……」
と言っても、先ほど言った通り。
書いた事のない手紙を考えるのは容易ではなかった。
僕「こういうのって、書き方とかもあったよな……最初の挨拶とか……」
僕「小学校で習ったような気もするけど、ん〜」
僕「……」
僕「まあ、いいか」
数分考えた挙げ句、僕はなるべく丁寧な言葉で文章を仕上げるようにした。
それくらいしか、僕には出来ないんだ。
僕「ええっと……」
- 46 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 03:34:09.85 ID:gg+EtQm+O
こんばんは。
海で手紙を拾って、この返事を書いています。
正直、まだ誰にこの手紙を書いているのかわかりません。
眠る前なので、夢を見ているだけなのかも。
でも、普段お話出来ないような事を、お互い話し合えたら……という文章の通り。
何かそういった話が出来たらいいなと思っています。
お返事お待ちしています。
僕「こんな……もんかな」
僕「手紙を……二つ折りでいいのかな。あ、入らない……」
僕「じゃあこう追って、封をして。よしっ」
手紙が書けた満足感を胸に、僕はそのまま眠りについた。
相変わらず、枕元からは甘い匂いがする。
今度はそれを感じてから間もなく、意識を落とす事が出来た。
- 47 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 03:42:14.44 ID:gg+EtQm+O
次の日、夕方の海を僕は歩いていた。
右手にはコンビニ袋をぶら下げながら、いつもの場所に向かう。
僕「今日もバイト辛かったな〜……」
僕「あんなに怒らなくてもいいじゃいか。ミスしたのはアンタの方だろ……はぁ」
誰にも言えない愚痴を吐きながら、いつもの浜辺を歩く。
僕「……あれ、これ」
ふと目に入ったのが、見覚えのあったガラス瓶だった。
僕「ああ、確かここでこれを拾って……瓶は置きっぱなしだったっけ」
僕「……そうだ」
それを見つけて、僕は思い出したようにカバンの中から昨日書き上げた手紙を取り出した。
- 48 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/02/04(金) 03:56:02.38 ID:gg+EtQm+O
コルクを外して、手紙を入れる。
中からは残っていた甘い匂いした……僕の手紙もその中へ。
ギュッと栓をして、それを……僕は海に向かって軽く投げつけた。
僕(あの手紙は、どこに行くんだろうな)
僕(この海を流れて、またどこか知らない場所へ)
他愛ない事を書いたあの手紙が、僕に拾われたみたいに……。
あの手紙も、誰かが拾って読んでくれるのだろうか。
僕(ああ、よく考えたら、あの手紙は彼女に届くわけじゃなかったのに)
投げた瓶はもう、海のどこに落ちたかわからなくなっていた。
それでも、まあいいやと思いながら。
夕焼けが見えなくなる頃には、僕はいつもの場所で夕御飯を食べていたんだ。
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