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囚姫「助けてっ!」詐欺師(ここはどこでしょう?) 落ちた・・・
- 41 名前: ◆wV/dOv7SG. []
投稿日:2010/11/25(木) 23:04:20.62 ID:XBs1J/qu0
─翌日 領主亭
執事「おはようございます」
領主「おはようございます、よく眠れましたか?」
執事「おはようございます、詐欺師様。朝食の準備が整っております、どうぞお席に」
詐欺師「ありがたく頂きます。私はよく眠れましたが、囚姫はまだ眠っておられるのですか?」
領主「ええ、娘は昔から朝が弱いものでして・・・太陽が嫌いと言いますか、この照りつける太陽の下では仕方が無いと思いますが、やはりもう少し早起きをしてもらいですね」
詐欺師「確かにここの気候は昼間に行動するのは少し辛いものがありますね。でも、私がいた国ではもっと湿気が強く、不快感は勝るとも劣らないかもしれませんよ?」モグモグ
領主「湿気ですか・・・ここは乾燥してますからね」
詐欺師「だからこそ暑くても過ごしやすい、一長一短といったところでしょうか」
領主「まさにその通り」はっはっ
詐欺師「さて、朝食もそこそこで申し訳ないのですが、そろそろ向かいましょう。時間が惜しいですから」
領主「わかりました、外の付き人を何人か待機させておりますので・・・」
詐欺師「は・・・?いえ、着いてきていただくのは領主様お一人で十分ですよ?」
領主「なんですって?相手は人でなしの人さらい、しかもその中核に今から向かおうというのですよ?護衛くらいは付けておかないと・・・」
詐欺師「こちらの顔をあまり知られたくないのです、それに相手は戦いに慣れている人間なのでしょう?戦い慣れていない人間を付けたところでいざという時に殺されるのは一緒ですよ」
領主「確かに・・・それもそうですね」
詐欺師「ですから付き人にはご遠慮願ってください、領主様も布か何かで顔を隠して、私の付き人という体で来ていただきます」
領主「わかりました、言う通りにしましょう」
詐欺師「ご協力感謝します」
領主「しかし、あのような紙に紙幣を貼り付けただけの代物で騙せるものでしょうか?」
詐欺師「そのために本物だけで100枚の束を作ったのですよ、まあご覧になっていればわかります。勝算の無い勝負はしない主義ですので、安心してください」
領主「・・・分かりました、最後までお供いたします」
詐欺師(領主様も怖いはず、それでもここまで顔色を変えずに振舞うとは・・・これが人の上に立つ器というものなのでしょうね・・・)
- 44 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:06:19.60 ID:XBs1J/qu0
─道中
詐欺師「1つ言い忘れていたことがありました」
領主「なんでしょう?」
詐欺師「無事に領民を取り戻せてからの話なのですが、領地・・・つまりハンバル領にたどり着くまでは我々の正体を隠しておきましょう」
領主「何故です?早く取り戻しに来たと伝えたほうが安心させられるでしょう」
詐欺師「今回の取引で特に重要なのが、『相手を油断させる』ということです。相手がこちらを信用しきって、偽の紙幣にも気づかずに保管してしまうくらいに信用を得ないとこれからの領地に害が及ぶ危険がある。
ですから、その信用をより強固なものにするためにも、我々は最後の最後までただの人買いを装います」
領主「心が痛みますが・・・お任せします」
詐欺師「恐れ入ります。それと、向こうに着いてからは私のことはご主人様とお呼びください。私は偽名を名乗ります。私は領主様のことを付き人と呼ばせていただきますので」
領主「必要なことなのでしょうね、全力で付き人をさせてもらいます」
詐欺師「これも今回の事をうまく運ぶために必要なこと、どうかよろしくお願いしますね」
─人さらいのキャンプ
人さらい兵隊「止まれ!何者だっ!」ジャキン
詐欺師「以前ここにいらっしゃる方から奴隷を買った者ですが、その奴隷があまりにも良かったもので・・・また買わせていただこうかと参上いたしました」
人さらい兵隊「ほお・・・ちょっとそこで待っていろ」
詐欺師「わかりました」
・・・・・・
人さらい「おお!あの時のアンタじゃねえか!何だよ、あの女がそんなに気に入ったのか?」ガッハッハ
詐欺師「はい、あの奴隷は良く稼いでくれます。それに夜の慰み物にもなりますしね」ニヤリ
人さらい「はははは!そうだろうそうだろう!そこまで使ってくれると安く売ったかいがあったってもんだぜ」
詐欺師「そこで、今日はこの国に来た記念にもっと奴隷を買っていこうかと思いまして、できれば売っていただいた奴隷と同じ出身の奴隷を売っていただきたいのですが・・・
あんな美人がいれば毎日取り替えられますからね」ニヤニヤ
人さらい「そうかいそうかい!確かあいつはハンバル領出身だったはずだぜ?まだ全員売れ残ってるよ!というか最近売りに出てないんだがな!」ガハハ
領主(これがあの温和な詐欺師殿ですか?まるで別人だ・・・本当に『詐欺師』なんですね)
- 45 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:07:17.14 ID:XBs1J/qu0
人さらい「ちょっと待ってな、今頭に話つけてきてやるからよ!」
詐欺師「ありがとうございます」
・・・・・・
人さらい「こっちに来な!頭が直接取引きしてくれるってよ」クイッ
詐欺師「はい」
人さらい頭「お前が奴隷を買いたいっていう奴か?」
詐欺師「お初にお目にかかります。私は遠い東の国からやって参りました男と申します」
人さらい頭「男か、いい名前だ。まあ座れ」
詐欺師「失礼いたします」
人さらい頭「この前はウチのが世話になったみたいだな、随分と珍しいブツと奴隷を交換してくれたそうじゃないか」
詐欺師「良い品物にはそれなりの対価を支払うのが相応というものではないですか?」
人さらい頭「そうか、お前は取引の基本ってのを分かってるみてえだな」
詐欺師「いえ、あれほどの上質な品物、むしろもう少し出しても良かったと思うくらいです」
人さらい頭「がははは!気に入ったぜ!で、ハンバル領出身の奴隷だったな?何人欲しいんだ?」
詐欺師「何人ほどいるのでしょう?」
人さらい頭「まだ売りに出してねえからな、ちょうど50人だ」
詐欺師「50人ですか、ちょうどいいくらいですね。全員いただけますか?」
人さらい頭「全員か!こりゃあ豪気なもんだぜ」
詐欺師「この前売っていただいた奴隷が350でしたので、全員350で買い取るということでいかがでしょう?」
人さらい頭「中にはすげえ美人もいるんだがな・・・まあいいだろう。50人も一気に買ってくれるってんだ、少しはまけてやるよ!」
詐欺師「感謝が絶えませんね、では支払いは国王承認紙幣1750枚でよろしいでしょうか?どうしても金貨だとかさばるもので・・・」
人さらい頭「現物交換だぜ?」
詐欺師「心得ております、おい付き人!」
領主「はいご主人様」
- 46 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:08:33.04 ID:XBs1J/qu0
詐欺師「こちらになります。100の束で金貨175万枚分、1750枚入っています」
人さらい頭「よくもまあこれだけかき集めたもんだ、金貨より信用できないからあまり出回ってないって話だぜ?」
詐欺師「ここまで思い金貨を運ぶ手間に比べたら大したことはありませんよ、それに同じお金です、信用もなにもありませんよ」
人さらい頭「それはそうだ!だが念のため一束確認させてもらうぜ」
詐欺師「わかりました」ガチャ スッ
人さらい頭「・・・」ぺらっ ぺらっ
領主(ここで他の束を確認されたら終わりだ・・・)
人さらい頭「ふん、確かに本物だ」
詐欺師「これがここに木の箱でふたつ分、いかがでしょうか?」ガチャ、ガチャ
人さらい頭「文句はねえぜ!売った!」バンッ
詐欺師「ありがとうございます」ペコリ
人さらい頭「おいてめえら、こいつを倉庫まで運びな!中に手ぇ付けやがったらぶち殺すからな」
三下「へえっ!」
詐欺師「スムーズな取引ができて感謝します。一応この国の国王様のお触れで奴隷の売買には契約書を付けるようにとのことですのでこちらでご用意いたしましたが、読み上げてよろしいですか?」
人さらい頭「ああ、こりゃ面倒が省けていいや。やってくれ」
詐欺師「1つ、この売買は奴隷と金品の物々交換とする」
人さらい頭「ああ」
詐欺師「2つ、この取引の成立時には双方がサインし印を押した時点で成立とする」
人さらい頭「問題ないぜ」
- 47 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:09:45.58 ID:XBs1J/qu0
詐欺師「3つ、人さらい側は奴隷50人、買い手側は金品を交換対象として交換する。なお、金品の内容については別紙参照のこと・・・この別紙は見られますか?」
人さらい頭「どうせ目録:紙幣1750枚とか書いてあるんだろ?いらねえよそんなモン」
詐欺師「そうですか、ではこれで一応契約書の内容は全てとなります。こんな物をわざわざ用意するのも馬鹿らしいとは思ったのですが、この国の法律ということですので」
人さらい頭「全くだ、国王も面倒なことをしてくれるぜ」
詐欺師「では、こちらのサインと印は済ませてありますので、そちらのサインと印をお願いできますか?」
人さらい頭「おうよっ!こっちもいい売り手が見つかったし嬉しいぜ」カリカリ・・・キュッ
詐欺師「確かに確認いたしました。これは写しですが、保管用にどうぞ」
人さらい頭「おう、しかしお前はしっかりしてんな」
詐欺師「一応国では商売をやっているものでして・・・こういう事にはどうしても細かくなってしまうのですよ。ご面倒でしたら申し訳ありません」
人さらい頭「いいってことよ、外に50人詰めた檻乗せた馬車を用意させるからよ、ちょっと待ってろや」
詐欺師「わざわざありがとうございます」
・・・・・・
人さらい頭「また来ることがあったら寄っていけよ!今度は酒でも飲もうぜ、がははは!」
人さらい「またあのお金持ってきてくれよー」
詐欺師「ありがとうございました、お陰さまで有意義な買い物ができました。それでは、失礼いたします」
領主「失礼いたします」
がらがらがらがら・・・
- 49 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:10:52.51 ID:XBs1J/qu0
─ハンバル領付近
領民「あれ?ここって・・・」
領民「まさか・・・いや、でも・・・」
領民「あそこはハンバル領?」
詐欺師(大分後ろが騒がしくなってきましたけど、ここまで来ればもう問題ないでしょう)
詐欺師「領主殿、お疲れ様でした。開門をお願いできますか?」
領主「わかりました、おい!門番、開門しろ!」
門番「領主様のお帰りだ、開門っ!」
領民「まさか・・・本当に・・・」
詐欺師「皆様大変な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。もう大丈夫です、ここはハンバル領、あなた方は自由ですよ」ガチャリ
領主「皆、苦労をかけた。助けるのが遅くなって申し訳ない・・・」
領民「領主様・・・もしかして・・・」
領主「ああ、皆を人さらいから買い戻した。もう売られる心配も鞭に怯えることもひもじい思いもしなくていいぞ!」
領民「やったああああ!」
領民「自由だ!自由だっ!!」
領民「助かったのね・・・ううっ・・・」
領民「泣くなよ・・・ぐすっ・・・」
- 50 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:11:49.88 ID:XBs1J/qu0
詐欺師(これで仕事は完了・・・ですね。案外簡単にいったものです、人さらいのボスがあんな人間で助かりましたね)
領主「ところで詐欺師殿」
詐欺師「なんでしょう?」
領主「大丈夫なのですか?あのような契約書で・・・金品との交換と明記されていたではないですか」
詐欺師「その種明かしはこれです」ペラッ
領主「それは・・・別紙の金品の内容ですか」
詐欺師「そうです、確かに紙幣とかいてありますが、よく読んでください」
領主「金品内容、紙幣200枚、紙幣状紙1550枚・・・金貨1枚相当っ!?」
詐欺師「ふふふ、これが別紙の正体ですよ」
領主「で、でも!さっきは確かに金貨175万枚分って・・・」
詐欺師「おや?誰がそんなことを言いましたか?覚えていませんね、契約書には確かに紙幣200枚と紙1550枚金貨1枚相当と書いてありますよ?」
領主「ああ・・・そういうことですか」
詐欺師「おわかりいただけたでしょうか?詐欺師の心得その3、契約書は隅から隅までチェックを・・・ですよ」ニヤリ
領主(これだけのことをやってのけるとは・・・やはりすごい人だ、詐欺師殿は)
─その夜 領主亭中庭
領民「はははっ!飲め飲めっ」
領民「はあー・・・たらふく飯が食えるっていうのは幸せだなあ」
がやがや
領主「皆、良く食べて良く飲んでいるだろうか?」
領民「はい領主様!すごく気分がいいですよ」
領主「そうかそうか、皆が健やかなら何も言うことはない」
領民「これからも頑張ってハンバルを開拓しますよ!」
領主「頼もしいな!」
領民「はははははは」
- 51 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:13:02.56 ID:XBs1J/qu0
詐欺師(こういう雰囲気は少し苦手ですね・・・囚姫はどこにいるのでしょうか?)
〜♪〜♪
詐欺師(音楽?何だか和やかな気分になる曲ですね・・・)
領民「やっぱり囚姫様のダンスはうまいなー」
領民「ああ、見てるだけで心が躍り立つよ。才能とかそういうんじゃない、ただ人を惹きつけるんだよな」
詐欺師「・・・」
詐欺師(確かに、あのダンスには人を惹きつける不思議な魅力があるように感じます。何故でしょうね、ちょっと懐かしい感じがするのは)
領民「いいぞー!囚姫様ー!」
詐欺師(お、終わりましたね)
囚姫「・・・」キョロキョロ
詐欺師(どうしたんでしょう?きょろきょろして・・・何故こっちに向かってくるのですか?)
囚姫「詐欺師さんっ!」
詐欺師「はい?なんでしょうか?」
囚姫「私のダンスどうだった?」
詐欺師「はい、とても美しかったですよ。月夜に照らされてまるで精霊のようでした」
囚姫「詐欺師さん・・・もうっ!うまいんだからっ」///
詐欺師「本当ですよ?思わず我を忘れて見入ってしまいました」
囚姫「詐欺師さんはダンスは踊れる?」
詐欺師「いえ、そういうものには触れ合う機会が無かったもので・・・ワルツなら少々踊れますが」
囚姫「ワルツ・・・?ねえっ!私と踊ってくれない?ワルツ教えてよっ」グイグイ
詐欺師「いえ、私はそういうのは・・・って、ちょっと!」
囚姫「はやくはやくっ!」
詐欺師(仕方ありませんね・・・)
詐欺師「楽師さん、少しスローテンポな曲でお願いします」
楽師「ああ・・・」
- 52 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:14:42.28 ID:XBs1J/qu0
〜〜♪ 〜♪〜〜♪
詐欺師「では、お手を拝借」
囚姫「えっ・・・」///
詐欺師「1,2で左右に、3で左足を出して・・・そうそう、上手ですよ」
詐欺師「ワンツースリー・・・そこでターン」
領民「なんてえ綺麗な踊りだ」
領民「二人で手を取り合って回って・・・美しい動きだわ」
領民「なんかロマンチックね・・・月の夜に焚き火を囲んでダンスを踊るなんて」
囚姫「なんか、恥ずかしいよっ」
詐欺師「そちらから誘ってきたのでしょう?私も注目されるのは得意ではないのですから我慢してください」
囚姫「むうっ・・・」
領民「囚姫様綺麗でしたよ!」
領民「詐欺師さんも格好よかったです」
囚姫「ありがとー!」
詐欺師「はは、痛み入ります」
領主「さて、食べも食べたり飲みも飲んだり、そろそろ夜も更けてきた。名残惜しいがお開きにしようではないか」
領民「楽しい夜だったなあ」
領民「詐欺師さん、改めてありがとうございました」
領民一同「ありがとうございました」「本当にありがとう」「この恩は一生忘れないぞ!」
詐欺師「いえ、私は領主様から依頼されて助けただけですから・・・」
領民「それでも俺たちを助けてくれたことには変わりない、感謝するぜ詐欺師さん」
囚姫「詐欺師さん大人気だねっ」
詐欺師(こんなに暖かい世界があるのですね、日本で人を騙して生きていた生活が嘘のようだ・・・)
- 53 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:16:11.58 ID:XBs1J/qu0
─領主亭 リビング
領主「お楽しみいただけましたか?」
詐欺師「それはもう、満足しました」
領主「それは良かった・・・それで、報酬のお話なのですが」
詐欺師「・・・」
領主「成功報酬ということでしたので、言い値でお支払いいたします。足りない分は今後何年かけてでも」
詐欺師(ここで私が金貨200万枚分と言ったらどうするのでしょう?成功報酬なんてロクな契約ではないのに・・・それだけ信用されているということですか)
詐欺師(ここは居心地が良い・・・全く自分でも驚きですが私はそう思っているらしいですね)
詐欺師「では・・・」
詐欺師(ここにいつでも来れるなら、私の日本での生活も少しは変わるかもしれませんね)
詐欺師「ここに・・・」
詐欺師(そんな新しい日常を手に入れるためなら、今回の仕事は軽いものだったかもしれません)
詐欺師「いつでも来ていいという権利をいただきたい」
領主「え・・・?」
詐欺師「ですから、この家に、この領地にいつでもお邪魔していいという権利をいただきたい」
領主「そんなもので・・・よろしいのですか?」
詐欺師「かまいません、報酬とは当人が価値を見出せばなんでもいいのですよ」
囚姫「つまり・・・どういうこと?」
領主「詐欺師殿は、いつでもここに来れるということだ。この先、自分の国に帰られるだろうが、それでもいつでもここに来ていいということだ」
囚姫「ホントにっ!?詐欺師さんホントっ?」
詐欺師「ええ、ここが好きになりました。いつでもお邪魔させていただきますよ」
囚姫「やったあっ」ダキッ
詐欺師「えっ・・・」///
領主「はっはっは、これはこれは・・・詐欺師殿は娘に気に入られているようですな」
囚姫「うんっ、詐欺師さん大好きっ!」
詐欺師「・・・」///
詐欺師(私としたことが・・・こんなことで先手を取られるとは不覚です)
- 54 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:16:59.50 ID:XBs1J/qu0
─数時間後
囚姫「すー・・・すー・・・」
詐欺師「寝てしまいましたね」
領主「はしゃぎ過ぎて疲れたのでしょう。執事、娘を寝かしてやってくれ。終わったら休んでいい」
執事「かしこまりました。お先に失礼いたします」ペコリ
詐欺師「・・・」
領主「さて、我々も休みましょう。詐欺師殿もお疲れでしょうし」
詐欺師「その前に、1つ話しておかないといけないことがあるのですが・・・」
領主「なんでしょう?」
詐欺師「信じてもらえるかわかりません、今から言うことは突拍子もないことですから・・・それでもこれは私の中の事実であり、おそらく現実です。それを踏まえて聞いていただけますか?」
領主「ははは、私は詐欺師殿を信用しておりますぞ。お聞きしましょう、話してください」
詐欺師「私は・・・おそらくこことは違う世界から来ました。この、『砂の書』を使って」
領主「それは・・・誰も読むことができなかった異国の書、それが読めるのですか?」
詐欺師「はい、これは私の世界、古代エジプトという国で使われていた言語です」
領主「そうですか・・・ふむふむ・・・」
詐欺師「やはり信じてはいただけませんよね、こんな話」
領主「いえ、むしろこれで辻褄が合ったと言いますか、納得しましたよ」
詐欺師「・・・?」
領主「詐欺師殿は浮世離れしすぎている。詐欺師としての知識はもちろんですが、全く知らない国の知識、遠く離れた国から来たと言いながらも何も持っていなかったという不思議・・・他にも挙げればキリがありませんが、それらが異世界から来たというのなら合点がいきます」
詐欺師「そう思われていたのですね」
領主「もちろんそれだけではありませんが、やはり今の時代に似つかわしくない知識や行動力をお持ちだとは思っていましたよ」
詐欺師「やはり生まれは隠せないのですね、それが遠く離れた地でも世界でも」
領主「そうみたいですな、して・・・その世界には帰られるのか?」
詐欺師「恐らく、この本は数回使えるようなのです。私が手にする前にも何人かの手に渡っているようですから、あと2往復くらいでしょう」
領主「やはり・・・最後は元いた世界に戻られてしまうのでしょうか?」
詐欺師「そうなるでしょう・・・でも、その前にこの世界を存分に楽しんでいこうと思います」
領主「そうでしたか!それはこちらとしてもありがたい話、特に娘はあなたを大分気に入っているようですからな」
- 56 名前: ◆wV/dOv7SG. [] 投稿日:2010/11/25(木) 23:18:36.39 ID:XBs1J/qu0
詐欺師「それなのですが・・・最終的に私が向こうの世界に行くことになっても、私が異世界の人間だということは囚姫には伏せておいてもらえませんか?」
領主「悲しませることになりますからな・・・了解しました」
詐欺師「ありがとうございます」
領主「では、そろそろ休むことにしましょうか」
詐欺師「私はこれから一度元の世界に戻って身の回りの物を揃えて戻ってきます。いい加減シャツも着替えたいですから」
領主「それはいいのですが、いつお戻りですか?」
詐欺師「恐らく2〜3日中には」
領主「わかりました。お気をつけて・・・娘はなんとか誤魔化しておきますね」
詐欺師「ご迷惑をおかけします、行ってまいります」
詐欺師(ここの世界では私はイレギュラーな存在だというのに行ってきますとは・・・おかしな話です)
詐欺師「では・・・『我が天幕へ!』」
ヒュンッ!!──
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