■戻る■ 戻る 携 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その28
359 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:04:11.16 ID:7C7d4xWpo
……――

父『……逃……げ…ろ…』

母『……』

妹『ママーッ! 起きてーっ!! 足が痛いよぅ……!』

魔法剣士『父さん!! 母さんっ!! い、妹……っ!!』

?『グルオオオォォ!!』

魔法剣士『みっ、みんなぁ…!! やめて! もうやめてよぉー!!』

妹『ママーッ!! お兄ちゃ――』

グシャアァァッ!!

魔法剣士『――!!』

?『オオォォォォ!!』

僕を納屋へ隠してくれた隣のお姉ちゃんが、化物に食べられる光景が見えた。

狼のような複数の頭部と巨大な全身は真っ赤に染まり、大きな遠吠えを上げる。

でも、もう1匹の魔物が、追い払ってくれたんだっけ……。

?『……邪魔をするな。ケルベロス』


360 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:05:21.47 ID:7C7d4xWpo
――……

ムクッ

魔法剣士「……」

眼鏡「……やぁ、目覚めはどうだい?」

魔法剣士「すまん。すっかり眠ってしまったようだな」

眼鏡「疲れているんだろう。徹夜続きだったからね」

魔法剣士「……あんたは……平気なのか?」

眼鏡「ははっ。僕は1年くらい寝なくても大丈夫だよ」

魔法剣士「……笑えない冗談だな」

眼鏡「冗談……そうだね、冗談さ」

魔法剣士「……何故だろう」

眼鏡「ん……?」

魔法剣士「あんたと居る時は、いつも眠ってしまうんだ」

眼鏡「僕はそんな魔法、使えないぞ?」

魔法剣士「強いから……安心出来るのかもしれんな」


361 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:06:34.37 ID:7C7d4xWpo
眼鏡「……1つ言っておくよ」

魔法剣士「……?」

眼鏡「僕は、変な趣味は持ち合わせていないよ」

魔法剣士「奇遇だな、俺もだ」

眼鏡「さて、冗談はここまでにして、この先どうする?」

魔法剣士「確か、ここは……」

簡易的に設置した寝床から程なく歩くと、目の前に広がるは大きな川。

〜三途の川〜

眼鏡「そう。以前この川で交戦した経験があるよね」

魔法剣士「……」

眼鏡「サイクロプスみたいな奴だけなら、いいんだけど」

魔法剣士「……俺らの任務は陽動。戦う必要はない」

眼鏡「うん。そう思ってる」

魔法剣士「……」

眼鏡「ただ、あちらもそうはさせてくれないみたいだけど」


362 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:07:29.24 ID:7C7d4xWpo
〜魔王城〜

アスタロス「……」

魔王ベルゼブブの傍に、常に控えていると言われる大公爵アスタロス。

ベルゼブブに対し、比類なき忠義を持って仕え、何事においてもそれが揺らぐ事はない。

薄暗い城の一画、左手を腰に当ててぼんやりと、しかしその様は凛然と直立している。

空いた右腕は、肘の辺りから毒蛇を模しており、獰猛な牙を尖らせていた。

スゥッ

アスタロス「……何だ」

ネクロマンサー「ククッ、お勤めご苦労様です」

アスタロス「…………」

ネクロマンサー「何やら、外は騒がしいみたいですねぇ」

アスタロス「……問題ない」

ネクロマンサー「そうですね。しかし、此処を攻めるにはやや少ないかと」

アスタロス「……」

ネクロマンサー「おそらく、狙いは別にありあすね……クククッ」


363 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:08:25.29 ID:7C7d4xWpo
アスタロス「だから何だ」

ネクロマンサー「……?」

アスタロス「我が君に危害なくば、それで良い」

ネクロマンサー「成程。素晴らしい忠義です」

アスタロス「……」

ネクロマンサー「しかし、私にとってはちと厄介……」

アスタロス「……」

ネクロマンサー「他の魔王が潰れると、動き辛くなりますからねぇ」

アスタロス「……」

ネクロマンサー「駒を動かしても?」

アスタロス「我が君の迷惑とならなくば……好きにしろ」

ネクロマンサー「……ククッ。感謝致します」

軽く一礼すると、ネクロマンサーは闇の中へと姿を消した。

スウッ…

ネクロマンサー「……まぁ、既に動かしているんですがねぇ。クククッ」


364 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:09:09.48 ID:7C7d4xWpo
〜三途の川〜

魔法剣士「……」

ザッザッザッザッザ

だだっ広い川ではあるが、浅い部分も多く、魔法剣士と眼鏡の身構える足元は、

足首程度のところまでが水に浸かり、小さな水音を立てている。

そんな足元は気にも留めず、二人は正面より迫り来る人影をじっと凝視していた。

魔法剣士「……」

眼鏡「……やれやれ」

バシャッ…

北方司令「……」

お父「…………」

魔法剣士「またか。……どっちをやる?」

眼鏡「どっちでもいいよ。お好きな方で」

魔法剣士「……デカいのを頼む」

眼鏡「了解」


365 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:10:54.24 ID:7C7d4xWpo
〜火山、西側〜

男隊員「何だっ、あの火柱はよぉ!?」

隊長「ついにお出ましってとこか」

ゾワッ

隊長「!?」

男隊員「――っ!!」

ゴゴゴゴゴゴ

隊長「こっちも来たみたいだな」

男隊員「とんでもねぇ……威圧だな……っ」

山の斜面に伸びる影が、中央に集まり、一つの影へと姿を変える。

ズズズッ…ズズッ

男隊員「女……っ?」

隊長「あんた、名は?」

ドゥルジ「人間に名乗る名は、持ち合わせてないねぇ」

全体が薄暗く、モノトーンの女性を模した魔物は、ゆっくりと言葉を発す。


366 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:12:03.70 ID:7C7d4xWpo
ドゥルジ「ふふっ、そんな怖い顔しないでよぉ。冗談よ、冗談」

隊長「……」

ドゥルジ「私の名はドゥルジ。生きた証に覚えておくといいわ」

男隊員「ドゥルジ……!!」

隊長(……ちっ、外れか)

ドゥルジ「私、戦いって嫌いなの。野蛮で暴力的でしょ?」

ズズズズズッ

隊長「!?」

ドゥルジ「だから、私の僕と楽しんで頂戴。ねっ」

眷属の一人、ドゥルジの足元に広がる、大きな円の影より、続々と人影が姿を現す。

男隊員「こっ、これは……!!」

隊長「惑わされるな! 中身は魔物だ!」

子供「うわああぁぁん! 怖いっ、怖いよーっ!!」

女「嫌よぉ!! 死にたくないいぃぃ!!」

子供、女、老人。2人の前に現れた人々は、戦場には似つかわしくない者らであった。


367 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:13:00.23 ID:7C7d4xWpo
〜火山、中央〜

ズズズズズ…

魔道士「な、何の音……っ!?」

ジュニア「どうやら上で、何か起きてるみてーだな」

天才「何だ、起きちまいやがったか」

大軍師「どう致します? 一旦戻って、備えますか?」

天才「んー」

賢者「……」

天才「眷属が外出して、意外とアンラちゃんの首でも取れたりしてな!」

――「そうはさせん」

天才「あん?」

ゴゴゴゴゴゴ

ジュニア「どっ、どこだ……っ!?」

魔道士「……っ」

その瞬間、洞窟内の地面と壁が大きく揺れ、砕け散った。


368 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:13:48.51 ID:7C7d4xWpo
ズガアアァァァァッ!!

ジュニア「な、何だぁ!?」

天才「ちぃ……っ!」

タタッ…ガシッ

魔道士「きゃっ!!」

天才「各自、洞窟内より外へ出ろぉ!!」

魔道士を脇に抱え、天才は来た道を必死に戻る。

それに続き、大軍師、ジュニア、賢者が慌てて後を追った。

タッタッタッタッタ

天才「おいっ、こいつを頼む」

ジュニアへっ!?」

ポイッ

魔道士「きゃあぁ!」

ガシィ!!

ジュニア「な、投げるんじゃねぇ!!」


369 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:15:14.32 ID:7C7d4xWpo
天才「いいかっ! 洞窟を出たら開けた所まで後退しろ!」

ジュニア「あ、あんたは……っ!?」

天才「足止めする! 心配すんなっ!」

タタッ

ジュニア「お、おいっ!!」

大軍師「行きましょう。司令はそう簡単に、やられたりしませんよ」

賢者「……ふぅ」

ザザッ…タッタッタッタッタ

天才「さーてと、そろそろ姿を見せたらどうだい?」

バギャアアァァァァ!!

天才「うおおぉぉ……っ!?」

隆起する地面が弾ける様に一気に砕け散り、山の天井部分をも吹き飛ばす。

天才「ちいぃ……っ!!」

押し上げられるように天才は、岩石の破片と共に、空中へと身を投げ出された。

天才「出やがったなぁ」


370 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:15:49.15 ID:7C7d4xWpo
ゴゴゴゴゴゴ…

ジュニア「な、何だあのバカデケェ奴はよっ!」

大軍師「あれが……眷属っ」

山の一部のように、上半身が突出し、耳をつんざく咆哮が周囲に響き渡る。

サルワ「オオオオォォォォォォ!!」

ゴアッ!!

魔道士「きゃあっ!!」

ジュニア「まるで……暴風だな……っ」

ドドオオォォォォ…

天才「……うーん」

クルクルクルッ…スタッ

天才「なぁなぁ、お前さん……名前なんてーの?」

サルワ「……あぁ?」

天才「テメーの名前聞いてんだよ、このデカブツ」

サルワ「……」


371 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:21:16.46 ID:7C7d4xWpo
天才「あぁ、先に俺様の名前を教えてやろうか」

サルワ「それには及ばん。俺はサルワ。まぁ尤も――」

天才「まさか、これから死ぬ貴様には云々……とかほざくんじゃねぇだろうなぁ?」

サルワ「……」

天才「あーあ……」

ビキビキビキッ

サルワ「ゴミ風情が……囀るなぁ!!」

天才「おぉっと、短気なのねぇ……サルワちゃん!」

サルワ「オオオオォォォォォォ」

ドッズウウゥゥゥゥンッ!!

天才「そうそう、俺様の名は天才。まぁ尤も、外れのお前に名乗ってもしょうがねぇけどな」

サルワ「外れ……だぁ!?」

天才「大外れ。くじ運ねーんだなぁ……」

サルワ「ふざけるのも大概にしろぉ!!」

天才「大真面目だっつーの。バーカ!!」


372 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:27:36.46 ID:7C7d4xWpo
〜火山、東側〜

召喚士「……」

タルウィ「……」

空中で両者が、無言のまま顔を見合わせる。

青龍兵「……う……っ」

召喚士「大丈夫ですか!?」

青龍兵「な、何が起き……」

召喚士「喋らない方がいいです。傷口が開きますよ」

ドシュウウゥゥ

青年兵「召喚士さんっ!」

召喚士「あいつがタルウィだ。とにかく、早いうちに治癒を」

青年兵「ええ。そうしましょう!」

コカトリス「一度退くか?」

召喚士「……うん」

2匹の召喚獣は大きく旋回し、低空飛行へと入ると、火山お東側に位置する森へと消えて行った。


373 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:41:11.16 ID:7C7d4xWpo
オオォォォォ…

タルウィ「……あいつ、見覚えがある」

ザリチュ「……旧知?」

タルウィ「どこで会ったかな? まぁいい」

ザリチュ「……無関心」

タルウィ「ザリチュ、他の連中は?」

ザリチュ「……出てる」

タルウィ「それならいい。どうも不穏な動きがある」

ザリチュ「……窮地?」

タルウィ「まさか。虫ケラがうようよ、しているだけさ」

ザリチュ「……」

タルウィ「この身に誓って、我が主の元へは近づけさせん」

ザリチュ「……うん」

タルウィ「まずはあの、目障りな召喚獣から殺ろう」

ザリチュ「……そうだね」


374 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2011/04/28(木) 18:43:01.67 ID:7C7d4xWpo
それではここまでにて!ご支援ありがとうございました!
GWはお休みモードで投下させて頂きます…
一応、日刊でいきますがまとめ読みして頂ければと…

では、失礼致します!ノシ


378 名前:NIPPERがお送りします(大阪府) [sage] 投稿日:2011/04/28(木) 19:26:05.14 ID:JdicJQ5M0
>>1乙
各地の魔王所在地と今作戦の各軍の動きを大雑把にまとめてみた。
http://wktk.vip2ch.com/vipper5103.jpg 携1 携2 携3

【北方面】
▼北方司令部軍
本軍。北方司令部より北進。

▼青龍士官
斥候&対空防御部隊。

▼眼鏡、魔法剣士
ワーカーを引き連れて最北の村へ入りそこを拠点に遊撃活動。

▼東方司令部軍
北上し海峡兵と合流。海路で北方地帯へ入り、
北方中央地帯まで進軍し魔王軍に対し牽制を行う。

▼東方軍
マーラ監視
 
【南方面】
▼南方司令部軍
本軍。赤壁へ向けて進軍

▼西方司令部軍
南方司令部へ入る。

▼西国軍
西方司令部入り。

▼南東国&スクリーヴァ軍
南東地方警戒(対ラーヴァナ)


379 名前:NIPPERがお送りします(大阪府) [sage] 投稿日:2011/04/28(木) 19:34:30.73 ID:JdicJQ5M0
【アンラ・マンユ眷属討伐隊】

第1軍 召喚士、青年兵、名代、神官、玄武娘、朱雀嬢
2番艦で東から鉱山の村を経由して火山へ向かう

第2軍 総司令、大軍師、ジュニア、賢者、魔道士
3番艦で西から迂回して火山入り

第3軍 隊長、戦士、盗賊、格闘家、男隊員、女隊員ちゃん(28)
1番艦で中央を進み、南西砦へ入る。

【アンラ・マンユ眷属】
タルウィ   炎を操る
ザリチュ   毒や渇きを操る
サルワ    水と風を操る
ドゥルジ   不死を操る
タローマティ 不明 ナンバー2?

あと少し前にあった魔王サタンの封印された場所が出てくる描写(7xまとめ様)
第四部の段階でこんな謎を置いてあったとかすげーな
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/summoner_ike_Cockatrice/1257265640_03.html



389 名前:NIPPERがお送りします(東京都) [sage] 投稿日:2011/04/29(金) 00:14:50.64 ID:Km60YP3po
召還組→タルウィ
魔法組→ザリチュ
近接組→サルワ

を相手にしようとしてたんだっけ?
ドゥルジが出てきたのが想定外だったのかな


391 名前:NIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2011/04/29(金) 01:50:24.30 ID:JjA08RiAO
>>389

ザリチュとサルワが逆だな


393 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/04/29(金) 03:32:47.79 ID:DnU6LBXSO
ついに来たタルウィ戦。むねあつ!いちおつ!



次へ 戻る 戻る 携 上へ