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少女「嗤うは骸か人類か」
- 1 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 []
投稿日:2013/04/14(日) 23:05:47 ID:ueLqpkUo
これは夢だ。幻だ。
「ケタケタケタケタ」
目の前のそれは、首を傾げながら私に近づいてくる。
「ケタケタケタケタ」
夢だ。悪い夢に決まっている。
歯を剥き出しにして。
歯どころか骨を剥き出しにして嗤うそれは、どう見ても人間ではなかった。
「ケタケタケタケタ」
そう、そういえば理科室で見たことがある。
肉のない、骨だけの、それ。
それが今、動いている。
私はなぜこんなところにいるのだろう。
目の前にいるこれは、一体何なのだろう。
頭がゆっくりと状況を整理しようとし始めた。
- 2 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:15:39 ID:ueLqpkUo
夏。
私の両親が死んだ。
事故死だった。
その日、私は両親に連れられて、親戚の家を訪れていた。
行きたくなかったけれど、仕方ない。
「やあ、久しぶり、学校はどうだい」
「ええ、楽しく過ごしていますわ、伯父さま」
「勉強の方は、頑張っているかな」
「ええ、なんとか」
「嘘おっしゃい、前よりも順位を二つ下げてしまったじゃないの、頑張りが足りないわ」
私と伯父の会話に口を挟んできたのは母だった。
母は学力至上主義の人で、私に勉学に励むよう常に言い聞かせてきた。
- 3 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:18:21 ID:ueLqpkUo
中学生になっても門限は5時だった。
中学生になっても携帯電話は与えてもらえなかった。
中学生になっても月のお小遣いはなかった。
そのかわり、毎日家庭教師がついた。
外出の際は母が送り迎えをしてくれた。
必要なものは、すべて母の財布が買ってくれた。
- 4 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:22:00 ID:ueLqpkUo
「勉学の妨げになる物は、あなたは持つ必要はありません」
そう、毎日のように言われた。
ペットを飼いたい、と願ったときも。
キャラクターものの筆箱がほしい、とねだったときも。
運動会の実行委員に立候補したい、と言ったときも。
友だちと遊びたい、と言ったときも。
部活動を始めたい、と言ったときも。
- 5 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:25:35 ID:ueLqpkUo
「この子はよく頑張っているじゃないか、悪いのはあの家庭教師だ」
隣で父が私を庇う。
「結果が伴っていない、そろそろ代えどきかもしれんな」
父も、母と同じく学力至上主義の人だ。
ただし、私が社会に出たときのためにと、最低限の経験は積ませてくれる。
受験に有利だからと、部活動や委員会活動にも参加すべきだと父は言った。
ただ、私は友だちのいる陸上部に入りたかったが、それは叶わなかった。
「陸上部などに入ってどうなる」
「そんなものが将来役に立つのは、ごく一部の恵まれた才能の持ち主だけだ」
「茶道部か華道部にしなさい、日本文化を身につけておくことは必要だ」
「生徒会に入りなさい、社会の縮図だから、人間関係もそこで学べばいい」
私は、両親が引くレールをただのろのろと走るトロッコのようなものだ。
あるいは、マリオネット、操り人形だ。
- 6 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:29:25 ID:ueLqpkUo
「ごめんなさい、今日は家庭教師が来る日なの」
「ごめんなさい、早く帰らないと母がうるさくて」
そう言って、友だちの誘いを断ったことが何度あっただろうか。
最初のうちは残念がっていた子たちも、すぐに私を誘わなくなった。
両親にとって、友だちなんていうものは「勉学の妨げになる物」の一つでしかないのだ。
私は楽しそうに放課後遊ぶ彼女たちが羨ましくて、そして憎かった。
あの輪に入れない自分は、本当に将来のために今を生きているのか。
今、楽しくなくとも、本当に将来この我慢が役に立つというのか。
私にそうさせた両親のことも、憎くて仕方がなかった。
- 7 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:31:53 ID:ueLqpkUo
親戚の家での会食は、私にとって苦痛でしかなかった。
多くの親戚が集まっていたが、その関係性はまだよく覚えられていない。
記憶系の勉強は苦手だった。
誰誰の息子が今度どこどこの大学に推薦が決まっただとか。
ピアノコンクールで金賞を受賞しただとか。
学年トップの成績を修めただとか。
結局はみな、自慢したいのだ。
自分の血を分けた子どもが、自分のできなかったことを達成することに喜びを感じているのだ。
父も母も勉学においてそれほど突出した才能があるわけではない。
ここにいる大人はみな、平凡な人間だ。
それなのに。
それなのに、自分たちの子どもには重荷を背負わせる。
当たり前のような顔をして。
見ろ、この場にいる子どもは、みな死んだような眼をしているじゃないか。
大人は誰一人気づかない。
あるいは気づいていても、目を逸らしているのか。
- 8 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:34:09 ID:ueLqpkUo
不快な会食の最中、突然誰かが言った。
「……揺れてる」
その言葉を頭が認識している間に、天井からほこりが落ちてくるのを目が捉えていた。
「きゃあっ」
突然の大きな揺れ。
横方向に引っ張られる。
地震が起こったときは机の下に避難する。
そう先生が言っていたのを思い出したが、頭でわかっていても身体は動いてくれなかった。
目の前のテーブルにしがみつき、揺れが収まるのをひたすら待った。
- 9 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/14(日) 23:36:00 ID:e30pVnbI
なんかドキドキするC
- 10 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:37:05 ID:ueLqpkUo
「……おさ……まった?」
恐る恐る目を開けると、ほこりが充満していたが、ぼんやりとみんなの顔が見えた。
「驚いた、いきなりだもんな」
「かなり大きかったよね」
「電気が消えてるな」
「みんな、無事か?」
私も、みんなの顔を見回す。
みな怯えたような顔で、私の方を見ている。
ふと横を見ると、さっきまで隣に座っていた父と母の顔が見えない。
私の横には、倒れてきた重そうな箪笥があるのみだった。
- 11 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:42:59 ID:ueLqpkUo
葬儀は滞りなく終了した。
というか、覚えていない。
ぼーっとしているうちに、すべてが終了していた。
同級生のすすり泣く声と、線香の匂いをかすかに記憶しているだけだ。
それよりも。
見たか。あの親戚の顔を。
一緒に死んでいてくれればよかったのに、と言いたそうな顔を。
誰があの子を引き取るの、と顔を見合わせる大人たちを。
私は勉学に励み、苦手な記憶系も一生懸命頑張ってきた。
しかし最も身に付いたのは、相手の顔色を窺って「よい子」であろうとする防衛反応だ。
今どうするのが得策か、冷静に考えて対応する能力だ。
- 12 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:47:15 ID:ueLqpkUo
父の兄夫婦に引き取られると決まったとき、私は真っ先に「よい子」であろうとした。
「ご迷惑をおかけします、中学を出たら働いてお金を入れます」
「それまで、申し訳ありませんが、お世話になります」
「いいのよ、そんな」
「両親が亡くなって辛いだろう、私たちを本当の家族と思って、楽にしてくれ」
「いえ、そんな」
「高校にも、ちゃんと行きなさい、それくらいのことはしてあげられるつもりだよ」
「では、その代わりに、家のこと、なんでもします」
伯父さんも伯母さんも、「いい人」であろうとした。
私たちは互いに仮面をかぶって生活をするのだろう、と思うと憂鬱になった。
- 13 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/14(日) 23:49:27 ID:Fi59w832
良い雰囲気だ
- 14 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:52:46 ID:ueLqpkUo
父と母の遺骨がお墓に入ったとき、私は一人でお墓の前に立った。
周りには誰もいない。
線香をあげ、花を添えて、墓をじっと見つめた。
どんな感情が込み上げるか期待したけれど、悲しみは湧いてこなかった。
「……っふふ」
「……うふふふふうふ」
「……っはっははは」
「あははははははははははは」
湧いてきたのは、笑いだった。
- 15 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/14(日) 23:56:13 ID:ueLqpkUo
「あっはっはっは!! なにこれ!! 娘より先に死んじゃうなんてさあ!!」
「あはは!! おかしい!! なにやってんの!!」
「私をがんじがらめに教育しといてさあ!! 途中ではい、さよなら!!」
「残った私は!? どうして生きていけばいいのよ!?」
「引かれたレールを走ることしか能のない私が!?」
「最低!! もう、最低!!」
「あっはっは、泣いてなんかあげない!!」
「私が一緒に死ねたら、もっとよかったのにね!!」
- 16 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 00:00:06 ID:JiKiu6nc
ひとしきり、罵倒して、笑って、そうだ。
そして、涙がほんの少しだけ、出たんだ。
悲しみの涙じゃない。
嬉し泣きでもない。
ただただ、無力で情けない自分を、憐れんで泣いたんだ。
本気で死ねばよかったと、そのとき思ったかもしれない。
涙でぼやけた視界が歪んで、黒くなって、赤くなって。
平衡感覚が狂って、口がだらしなく開いて。
それで?
それで、どうなった?
- 17 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/15(月) 00:00:41 ID:JiKiu6nc
こんな感じで
次から異世界の話が続きます
- 18 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/15(月) 00:13:30 ID:Ij2b9YzE
ああ、>>1の一言は要らなかった
一気に現実に引き戻されたわ
- 19 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/15(月) 00:43:47 ID:HHSAs38U
俺はきにならぬ
- 21 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/15(月) 20:26:34 ID:JiKiu6nc
書き終わりのレスのつもりでしたが、いらんこと言わん方がよさそうですね
淡々と行きます
- 22 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/15(月) 20:31:16 ID:JiKiu6nc
「ケタケタケタケタ」
目の前にいる嗤う骸骨は、消えていてくれなかった。
ゆっくりと、こちらに近づいてくる。
私は腰を抜かしたまま、必死に頭を働かせようとする。
「ケタケタケタケタ」
周囲は真っ黒。
暗いんじゃない。
黒いのだ。
こんな世界、見たことがない。
しいて言うなら、地獄。
「ケタケタケタケタ」
この嗤う骸骨も、地獄にはお似合いではないか。
- 23 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 20:41:23 ID:JiKiu6nc
もはや眼前に迫った骸骨を、私は払いのけることもできなかった。
煮るなり焼くなり、好きにしてくれ。
これは悪夢だ。
きっと目が覚めると、あの少々寝心地の悪いベッドにいるのだ。
いや、もしかしたら両親が死んだところから夢かもしれない。
それならば、あの殺風景な畳の部屋の布団の上だろうか。
両肩を掴まれる。
骸骨が口を開ける。
その奥には暗闇。
私は喰われるのだろうか。
骸骨に喰われる夢とはまた、趣味の悪い話だ。
起きたときに覚えていませんように。
私はそう願い、目を閉じた。
バキィン!!
なにかが砕ける音がした。
- 24 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 20:46:33 ID:JiKiu6nc
「馬鹿野郎、無抵抗すぎるだろ」
私の両肩を掴んでいた骸骨は、首が無くなっていた。
その代わり、赤く光るなにかがそこにあった。
「おら!!」
バキィン!!
その赤い光も、今砕けた。
「ほら、もう大丈夫だから」
私の両肩を掴んでいた骨の手は、今さらさらと、消えていくところだった。
私はまた、だらしなく口を開けていた。
- 25 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 20:52:04 ID:JiKiu6nc
「立てるか?」
骸骨の向こう側にいたのは、私よりも何歳か年上であろう男の人だった。
手を差し伸べてくれる。
私は素直に、その手を握った。
「ケガは?」
「な、ないです」
「そうか、そりゃよかった」
何枚も服を重ねて着ている。
どれも薄汚れた色で、元がどんな色だったかわからない。
右手には鉄パイプが握られていた。
「それで、あの骸骨を倒したんですか?」
「ああ、そうだけど」
- 26 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 20:56:52 ID:JiKiu6nc
「あの、ここは、ここは……」
どこなんですか、と尋ねるべきか、なんなのですか、と尋ねるべきか。
学年でもトップクラスに入るはずの私の頭は、こんなとき、うまく働いてくれなかった。
「おれにも、わかんねえよ」
「はあ」
「強いて言えば、地獄」
「……やっぱり」
やっぱり、と言いつつ、私の頭はその言葉をまだ受け入れられていなかった。
地獄ねえ、うふふ、おかしい。
そんなもの、あるはずがないのに。
私、地獄に落ちるような悪いこと、してないのに。
- 27 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 21:01:25 ID:JiKiu6nc
「ここではさ、定期的にさっきみたいに骸骨が襲ってくるから、気をつけろ」
「定期的に!?」
私の口は、すぐに反応した。
この状況に、少しずつ慣れてきたのかもしれない。
あんなのがこれからも来るっていうのなら、こんなところ、いやすぎる。
「今までも、襲われてるやつは見かけたんだけど、無傷で助けられたのは初めてだ」
「あ、あの、ありがとうございます、助けていただいて」
「いや、気にすんな」
私としたことが、お礼を言うのがこんなにも遅くなるなんて。
やはり本調子ではないみたい。
- 28 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 21:10:03 ID:JiKiu6nc
あなたは……
そう言いかけて、やめた。
そんなことを聞く前に、どこか安全なところへ行きたい。
またさっきみたいなのに襲われたらたまらない。
「どこか、安全なところはないのですか?」
「安全なところ、ねえ」
男の人は少し困った顔をした。
眉を寄せて、考えているようだ。
その顔は、ちょっと魅力的だと思った。
- 29 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 21:15:38 ID:JiKiu6nc
「君、安全と健康、どちらを望む?」
私にはその質問の意味が良くわからなかったけれど、とりあえず「安全」と答えた。
「ん、まあ、ついてきな」
鉄パイプを肩にすたすたと歩いてゆく。
私はあわてて後を追った。
「安全」と「健康」?
どちらかしか保証されないのだろうか。
それとも、健康を望んだら置いていかれたのだろうか。
その二つの違いが、私にはよくわからない。
あの人は私よりも少し長く生きているようだから、私が知らないこともたくさん知っているのだろう。
そう、納得した。
- 30 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 21:19:05 ID:JiKiu6nc
「ここなら、とりあえずは、安全」
男の人が連れてきてくれたのは、どう見ても不健康そうな、陰気でジメジメとした建物だった。
ビルと呼ぶには傾いていて壁がぼろぼろだ。
廃屋と呼ぶには背が高い気がする。
塔と呼ぶには高さが足りない。
「どうして、安全だってわかるんですか?」
「ん、おれがここにいる間、この中に骸骨が入ってきたことはないから」
「はあ……それじゃあ、安全、ですかね」
「おれがここにいる間」って言うのが、どれくらいの期間かを聞き損ねた。
私の間抜け。
- 31 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 21:22:29 ID:JiKiu6nc
「じゃあ、私が『健康』って答えてたら、どうなってたんですか?」
「ん、そりゃあ……」
彼は少しばつが悪そうな顔で言った。
「水と食料がたんまりあるけど、今にも崩れそうで骸骨の多いビルの方へ行ってた」
今にも崩れそうな……って。
ここよりも崩れそうなビルがあるのか。
ピサの斜塔の方がよっぽど安定していると思う。
「安全」を選んで正解だった。
- 32 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 21:29:20 ID:JiKiu6nc
「あの、あなたはいつからここに?」
私は、上手く質問できただろうか。
「おれは、そうだな、もう一ヶ月くらいかな」
そんなに。
気が遠くなりそうだ。
こんな変な世界に一ヶ月だって。
シャワーもお風呂もベッドもなさそうな世界で。
「あ、この服? 拾った」
聞いてないけど、答えてくれた。
優しい人だ。
なにより、私を助けてくれた。
- 33 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 21:41:36 ID:JiKiu6nc
「あの骸骨な、頭砕いたら赤い光があるんだよ」
「はあ」
「君も見たろ?」
「え、ええ、見ました、赤い光」
「あれを壊したら消えるんだよ、なんでかは知らないけど」
「そう、ですか」
- 34 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 22:08:57 ID:JiKiu6nc
「みんなさ、あれに掴まれると震えて動けなくなるのか」
「今までに何人も、喰われていった人たちを見てきたよ」
「何人も……」
「さっきも言ったけど、無傷で助けられたのは、君が最初」
「食べられた人は……」
「消えた」
「消えた……?」
さっきの骸骨のように、さらさらと消えるのかしら。
人がむしゃむしゃと食べられる様子は想像しただけで気持ちが悪い。
そんな死に方はごめんだ。
- 35 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 22:20:00 ID:JiKiu6nc
「さっきの骸骨みたいに、さらさら消えるの?」
「そう」
ちょっとホッとした。
でも、それって、どういうことなんだろう。
「とにかく、今度骸骨が現れたら頭を狙え」
そう言って、彼は私に棒をくれた。
鉄パイプとは違う、でもずっしりとした、棒。
「どこかで布を見つけて、持つところに巻こう」
「これで、戦えっていうの?」
「じゃなきゃ食べられるぞ」
「そう……よね」
剣道なんて、やったことないのだけれど。
- 36 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 22:27:59 ID:JiKiu6nc
「ねえ、食べ物はどうしているの?」
「……サバイバル」
「サバイバル!?」
「そう、食材を探して食いつなぐしかない」
「……どんなもの?」
「小動物とか、木の実とか」
私は気が遠くなってきた。
小学校の臨海学校で自炊をしたときも、四苦八苦していたというのに。
私にサバイバルは荷が重すぎる。
- 37 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 22:42:17 ID:JiKiu6nc
「でも、少ないけど缶詰とかもあるんだよな」
「缶詰ですか!?」
それなら開けるだけで食べられる。
……消費期限次第だけど。
「こんな世界じゃさ、まともな食べ物が転がってる方が不思議だろ」
「そ、そりゃあそうですけど……」
「さっき言ってた危ない方のビルへ行けば、色々食料があるんだよ」
「は、はあ」
「君、きちんと調理されて皿に乗ってるものしか食えないタイプ?」
「……」
反論できない。
- 38 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/15(月) 22:46:24 ID:JiKiu6nc
「ま、早く抜け出せればそんな心配もなくなるさ」
「で、でもあなたは一ヶ月もここで……」
「そんだけ暮らせば、逆に慣れちゃうよ」
「ううう……」
言ってることはわかるけど、いやすぎる。
骸骨に食べられるのもいやだけど、ここで、こんな所で一ヶ月もだなんて……
- 39 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/16(火) 00:38:00 ID:1roZM1q6
終わったら一言ぐらいいいのでは
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