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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その36
224 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:04:30.37 ID:qOBzZPqJo
……――

お師匠『想定外だな……っ。こいつに予言など通用しないという事か』

天才『お師匠……あ、あんたまさか……』

 クルクルクルッ ジャキッ

お師匠『はーっはっはっは! 俺の時代は終わった。次はお前らの時代だ!』

天才『やめろぉ!! お師匠が死んだら誰が……』

お師匠『次の大元帥はお前だ、天才。俺の後を継げ! ナイトの意思を継げ!』

天才『……っ』

お師匠『お前らは勇敢で、慎重で……自信を持て。お前らが勇者だ』

天才『お師匠……世話になりました』

お師匠『次の一撃でサタンを止める。おそらく数秒だろうが、その隙に退け』

天才『……』ザッ

お師匠『さぁゆけいっ!! 若き勇者達よ!! 俺達の意思はお前らに……託すぞっ!!』

天才『……っ』タッタッタッタッタッ

 ガカアアアアァァァァ――――


225 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:05:48.53 ID:qOBzZPqJo
――……

占い師「…………んっ」

天才「やっと起きたか。いつまで俺様の背中に担がれてる気だコラ」

占い師「あ……っ。ご、ごめんなさい……」スタッ

天才「はー重て。お前、ちょっと太ったんじゃねぇの?」

占い師「失礼ねっ」

天才「ただでさえ距離が長くなったんだからよー、勘弁してくれよな」

占い師「距離? 何それ……?」

天才「見て気付かねぇか? いや、よほど気にでもしてないと街中じゃ分かんねーか」

占い師「……?」

天才「世界がな、広がったんだよ。東西にな」

占い師「……大丈夫?」

天才「まぁいい。そのうち分かる」

占い師「はぁ……」

天才「世界が広がった。つまり……東方での戦いは終わり、いよいよってわけだな。ハーッハッハ!」


226 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:08:39.17 ID:qOBzZPqJo


占い師「……あらっ、何かしら?」

 ガラガラガラガラッ

天才「本国の馬車だな。随分と急だが、何事だ?」

 ガラガラガラッ……ドドォ

占い師「止まった……って、あそこ病院じゃない!?」

天才「……」

 タッタッタッタッ ザッ

天才「いよぉ右大臣様。何事だ? まさか国王陛下が崩御でもしたか?」

占い師「縁起でもない事言わないでっ! あっ、こ……今晩は」

エリート「……」

 バタンッ カツカツカツ……ドンッ

エリート「貴様、何故……青年兵に知らせなかった!」

天才「……ああ、そっちか。知らせたさ。手紙は大軍師に渡した」

エリート「だったら何故――」


227 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:10:31.57 ID:qOBzZPqJo
天才「そういう親子なんだよ。不器用な母子なのさ」グイッ

エリート「……っ」

天才「んで、青年兵は?」

エリート「東方は出た。今日の夜には着く」

天才「間に合うのか?」

エリート「それを今、確認しに来たのだ!」

 ザッ カツカツカツカツ……

占い師「ね、ねぇ……。今の話って……」

天才「気にすんな。人の生き死になんざ宿命だ。お前が1番よく分かってんだろ」

占い師「……っ」

天才「人ってのは悲しみを乗り越えた時が最も成長する時なんだ」

占い師「……ええ」

天才「不謹慎な話だけどよ、こういうめぐり合わせってのはやっぱ宿命なんだろうな」

占い師「……悲しすぎるわ……そんなのって」

天才「それが人生だろ。悲しみがあるから、喜びが大きくなるんだ」


228 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:12:34.03 ID:qOBzZPqJo
……――

天才『何をボケッと突っ立ってやがるっ!! 逃げろ!!』

師匠『……ごふ……っ』ヨロッ

マジシャン『だ、大元帥……っ?』ポタタッ

天才『作戦は失敗だ! もう勝ち目は0なんだよ! 早く――』

マジシャン『アイツらはどうするんだよっ!! 見捨てろって言うのか!?』

天才『分かってんだろお前だってよぉ。あの2人は死んだんだよ!』

師匠『……マジシャン、行くぞ』

マジシャン『フザけんなよ……? 予言じゃ俺とてめぇが死んで……サタン倒すんだろうが!!』

師匠『いい加減にしろ! 無駄死にしてーのか!』

天才『朱雀の言う通りだ。生きて、仇を討つ。それが科せられた役目だ』

マジシャン『……ふ……ざけんなよっ、クソ……! ごほっ、ごほ!』

師匠『俺とこいつはサタンに半分持っていかれた。逃げる足手纏いになったら、迷わず捨てていけ』

天才『ああ。そうさせてもらうが……てめーらも貸しっぱなしじゃあ癪だろうが』

マジシャン『当たり前だ……っ! 持ってかれた分……キッチリ取り戻してやるからなああぁぁ!!』


229 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:14:04.87 ID:qOBzZPqJo
――……

〜本国、ターミナル〜

御者「到着〜っ!!」

 ガラガラガラッ……ドドォ

御者「ふーっと。しっかし何だか随分と長く感じたなぁ」

おっさん「アンタもそう思うかい? なんか道が伸びたってか、距離が遠くなった感じなんだよな」

御者「よう。そうなんだよ! 魔道学園までの距離がどうみても伸びてやがる……」

おっさん「昨日、一昨日くらいからだよな」

御者「ああ。これも何かの影響なのかねぇ」

 ボーッ ボーッ

御者「おっ、本国の船だ! 東方からのご凱旋だぞ!」

おっさん「噂じゃ20年振りだかに大元帥が誕生するらしいぜ?」

御者「そりゃめでてぇ! さぁー仕事仕事ぉ!」

おっさん「距離が伸びた分、今まで以上の件数で稼がないとなぁ!」

御者「おうよ!」


230 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:14:41.61 ID:qOBzZPqJo
 既出の通り、魔王マーラを倒した事で、東西の世界は元通りとなり、

 世界はまた1つの繋がりへと戻っていた。それは歴史的にも大変な出来事であった。

 しかしそれをそう感じる者は、今の世界には皆無と言っても良い程であった。

 日頃より道を使う者達が違和感を覚え、何かあったと認識する程度なのである。

 この事が大々的に明らかとなるのはこれより数ヵ月後。測量と航海が行われての後である。

 ゴッゴオオォォォォン

国軍兵「ターミナルへ入港致しました」

青年兵「ここで休憩、船の燃料などを補給した後、本国へと向かいます」

召喚士「了解です」

東方参謀「それでは我らは、ここで失礼するぞ」

格闘家「お疲れ様でした。色々とありがとうございました」

東方司令「またすぐに会う事になるさ。嫌でもな」

盗賊「それじゃ、また」

魔道士「お疲れ様でした!」

 敬礼の後、東方司令部の面々は船を後にし、東方司令部へと向かって行った。


231 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:15:57.39 ID:qOBzZPqJo


 昨晩のうちに東方を出航した船は、正午にはターミナルでの補給を終え出航すると、

 その晩には本国、国軍の港へと無事、入港した。

〜本国、軍港〜

 ザッザッザッ

戦士「久々の本国!」

魔道士「本当ですね〜っ。東方も良かったですけど、やっぱり本国が一番落ち着きますっ」

戦士「んで、これからどうすんだ?」

青年兵「えぇと、陛下が王宮でお待ちのようですので、ひとまず王宮へ向かいます」

盗賊「我らもか?」

青年兵「陛下と右大臣様からの伝令ではご一緒にと」

召喚士「了解。それじゃ一緒に向かいましょうか」

魔道士「はいっ」

 タッタッタッタッタッ

本国兵「青年兵様っ!」

青年兵「ご苦労様です」

本国兵「急ぎ、馬車へお乗り下さい!」

青年兵「……?」


232 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:16:59.67 ID:qOBzZPqJo
〜本国、王宮〜

 カツカツカツカツ ザッ

青年兵「青年兵、ただいま東方での戦いを終え、無事、戻って参りました」

皇太子「ご苦労だった。朱雀先生らもよくぞやってくれた」

召喚士「ありがとうございます」

皇太子「まずは報告など伺いたいところだが……」

エリート「陛下」

皇太子「分かっている。先に要点のみ済ます。報告は後日、改めるものとする」

青年兵「……?」

 カツカツカツ

エリート「青年兵、男隊員。両名は前へ」

男隊員「はい」カツカツ

皇太子「総司令が退任した為、臨時で私が任命する」

 スッ

皇太子「青年兵。君を、国軍大元帥に任命する」


233 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:18:49.01 ID:qOBzZPqJo
エリート「これにより国軍の指揮権は青年兵、君に移るものとする。良いな?」

青年兵「……はっ。ありがとうございます! より一層、務めさせて頂きます!」

皇太子「続いて男隊員。特殊遊撃強襲隊の隊長へと任命する」

男隊員「!?」

エリート「位は上級大佐となる。引き続き、任務を頼む」

男隊員「……はっ」ザザッ

皇太子「他の者については追って連絡する。まぁ尤も、今と任務が変わるものではないがな」

エリート「陛下、そろそろ……」

皇太子「うむ。以上だ。何か他にあれば伺う」

青年兵「特にございません。大丈夫です」

皇太子「ならば良い。さて……」

エリート「私から。青年兵、君に大切な話がある」

青年兵「……?」

エリート「君の……お母上の事だ」

青年兵「!?」


234 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:19:30.80 ID:qOBzZPqJo


 タッタッタッタッタッ

青年兵「はぁ……はぁ……はぁ、はぁっ」

 タッタッタッ バンッ!!

ドクター「!?」

青年兵「……はぁ……はぁはぁ」

〜病院、病室〜

 テクテクテクテク

青年兵「…………」

ドクター「青年兵さん……っ」

青年兵「…………」

ドクター「……どうぞ」スッ

ナース「……っ」パサッ

青年兵「母……さん……」

ドクター「本日早朝……息を引き取りました……っ」


235 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:20:33.51 ID:qOBzZPqJo


 タッタッタッタッ……カチャッ

召喚士「……失礼……します」

魔道士「……っ」

 霊安室にはぼんやりと蝋燭が灯り、薄暗い部屋の中、青年兵が1人、直立していた。

戦士「青年兵の……おっかさんが……」

青年兵「綺麗な顔してるでしょう、死んでるんですよ……それ」

魔道士「――っ!!」

青年兵「はは……っ。笑っちゃいますよね……大元帥になったその日に……」

召喚士「青年兵くん……っ」

青年兵「やっと……っ、やっと報告出来るっていう時に……」

盗賊「……」

青年兵「馬鹿ですよね……っ、分かっていたのに……手紙を貰って……分かっていたのにっ」

 崩れ落ちる青年兵の肩へ手を伸ばそうとする召喚士だったが、

 背後から首を横に振る戦士に制され、無言のまま4人は霊安室を後にした。


236 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:21:26.97 ID:qOBzZPqJo


戦士「多分、今のあいつには俺達が何を言っても……意味はない」

召喚士「……うん。分かってる、分かってるけど」

戦士「こういう時は1人にしておいた方がいい」

盗賊「そうかも……しれないな」

魔道士「……こんなの……悲しすぎますよ……っ」

戦士「ほんと、あと1日……いや、半日早ければ。皮肉なもんだよな……」

召喚士「お互いを思うがあまり……すれ違ってしまったんですよね……」

魔道士「青年兵さん、大丈夫ですよね……?」

盗賊「あいつは強い。すぐに立ち直り……いや、乗り越えて帰ってくるさ」

戦士「そうだな。つらいとは思うが、これくらいで潰れるような男じゃねぇさ」

召喚士「……とりあえず今日はこのまま、宿に帰りましょう」

戦士「だな。明日にでももう1度、青年兵の様子を見てみよう」

盗賊「魔道士、行くよ」

魔道士「……はい」


237 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:23:18.54 ID:qOBzZPqJo


ドクター「では、葬儀の日程など決まりましたらご連絡を」

青年兵「はい。ありがとうございました」

ドクター「……申し訳ありませんでしたっ。我らがもう少し、頑張っていれば……」

青年兵「いえいえ。院長を始め、皆様には本当に良くして頂きました。感謝します」

ドクター「いえ……っ」

青年兵「ここへ運ばれて来た時点で、もう末期の状態だったにも関わらず……」

ドクター「……素晴らしきお母様でしたね」

青年兵「ええ。口煩い事も多かったですけれどね……ははっ」

 ザッ

青年兵「それでは明日にでも、また打ち合わせを」

ドクター「お待ち……しております」

 スタスタスタ……

ナース「もう立ち直られたようで、良かったですね院長っ」

ドクター「そんなわけがあるか。表面上は明るく振舞っておられるが……相当つらいでしょう」


238 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:25:28.23 ID:qOBzZPqJo


青年兵「…………」

 宿舎の屋根。青年兵は膝を抱えて座り込み、星空をぼーっと眺めていた。

青年兵「……慰めなら要りませんよ、天才さん」

天才「ほぉ、よく気付いたな。気配は消したつもりだったけどな」ザッ

青年兵「からかうのはやめて下さい。今日ばかりは……洒落がききそうにもありません」

天才「ハーッハッハ! 青二才がほざきやがる。何なら試してみるか?」スチャッ

青年兵「いいですよ。多分、そう簡単には負けませんから」ゴゴゴゴゴゴ……

天才「……ハーッハッハ! 冗談だよ。こんな所で無駄な魔力使ってられるかってんだ」スッ

青年兵「同感ですね」

天才「んで、どーすんだ? お前の中身、悲鳴を上げてんぜ?」

青年兵「…………」

天才「自分に嫌気がさして、人間やめるか?」

青年兵「……僕は、沢山の人を殺してきました」

天才「……」


239 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:28:07.20 ID:qOBzZPqJo
青年兵「今回の東方では、藤蔵の皆を見殺し、隊長や妖である鬼丸までも……」

天才「そうだな」

青年兵「イブリース戦では民間人の踊り子さんらを巻き込み、ラーヴァナ戦では、
      南東国の五虎将を始め、多くの将兵を犠牲にしました」

天才「そうだな」

青年兵「アンラ・マンユ戦では南東砦長やアマゾネスさん達の村まで奪い、
      挙句の果てには、東方司令部で女記者さんを失い……ウィッチさんも」

天才「そうだな。全部とは言わんが、俺様とお前のせいだ」

青年兵「因果応報、ですね」

天才「これから先も、お前は人を殺し続ける。間接的にだがな」

青年兵「……」

天才「何故か分かるか? まぁ分かってるだろうけど」

青年兵「……」

天才「お前が人の上に立っているからだ。誰が死んでもお前は生きなくちゃいけねぇんだ」

青年兵「……」

天才「それが、お前の宿命なんだよ」


240 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:28:58.52 ID:qOBzZPqJo
青年兵「天才さんは、ずっと歩いてきたんですね。この過酷な道を」

天才「俺様には元々、失うものがほとんどなかったからな」

青年兵「だからワーカーとして戦い続け、司令としては仮面で全てを隠し続けた」

天才「考えすぎだ」

青年兵「乗り越えるしかない……か」

天才「超えられなかったらお前は人間を捨てるだろう」

青年兵「……」

天才「その時は俺様が真っ先に殺しに来る。覚えとけよ」

青年兵「1度、止められなかったからですか?」

天才「……!?」

青年兵「ご安心を。あなたの弟子のようにはなりませんよ」

天才「ハーッハッハ! そう願うぜ」

青年兵「ありがとうございます。天才さん」

天才「じゃあな。先に北で待ってるぜ」ヒュバッ

青年兵「……っ」


241 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:31:47.01 ID:qOBzZPqJo


 スタッ

天才「……あん? 何だ、まだいたのかよ」

占い師「気にしない素振りみせておいて、優しいじゃない」

天才「個人的なモンじゃねぇ。人類の存亡がかかってんだよ」

占い師「はいはい。それで、青年兵くんは大丈夫そう……?}

天才「大丈夫なんじゃねーの?」

占い師「曖昧ねぇ……」

天才「あいつ、一切『司令』と呼ばなかった。完全に割り切ってやがる」

占い師「……?」

天才「そんだけの覚悟と意思の強さがある。こりゃ……化けるぜ」

占い師「そう……っ」

天才「悲しみは深ければ深いほど、その反動はデカイ。予想以上になるかもしれねぇな」

占い師「……これから北へ向かうの?」

天才「ああ。だがその前にやる事がある。お前も来い。過去との決別だ」


242 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 18:33:33.66 ID:qOBzZPqJo


 召喚士「行けっ!コカトリス!!」

    〜第五十六部〜



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