■戻る■ 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その39
- 267 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2012/05/29(火) 18:20:17.55 ID:c0E3QSENo
…
六道門・地獄。ついさっきまでは城内へと続く道があった。
しかし今は門のすぐ先には、断崖絶壁の暗闇が広がっている。
戦士「すっげ……っ。これ、名士がやったんだよな……?」
東方司令「退がってろとはよく言ったものだ」
天才「アイツの指示に従ってなけりゃ、俺様達も消し飛んでたな。ハーッハッハ!」
ジュニア「……っ」
天才「んで、この穴の奥にベルちゃんの核があるってわけだな」
青年兵「この感じ……」
戦士「ああ……っ。地獄に似てるな」
天才「さーて、そんじゃちょっくら行ってくるかぁ」
召喚士「あのっ、天才さん!!」
天才「あん?」
召喚士「…………っ」
天才「何だよ?」
- 268 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/29(火) 18:20:51.15 ID:c0E3QSENo
召喚士「……俺……俺……っ」
天才「情けねーなぁ。なーに涙目になってやがんだよ」
魔道士「なっ、なりますよ……!!」
天才「……」
召喚士「あの……っ、ありがとうございましたぁ!!」
天才「……別に、感謝されるような事はしてねーよ」
青年兵「そんな事はありませんっ!!」
天才「……」
男隊員「あんたは、英雄なんだ。俺達の……世界中の」
天才「ハーッハッハッハッハ!!」
皇太子「……」
天才「今まで数えきれんくらい無理強いして戦争を起こしてきた」
格闘家「……」
天才「その度に、何十人、何百人の命を捨てさせた」
東方司令「……っ」
- 269 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/29(火) 18:21:26.34 ID:c0E3QSENo
天才「自分はおめおめと生き延びて、腐るほどの命を奪い取ってきた」
大軍師「……」
天才「そんな奴は英雄なんて言わねぇんだよ」
召喚士「でもっ、天才さんの功績は紛れもない――」
天才「いいか? もし俺様が死んだ後に称えてでもみろ」
召喚士「……」
天才「そん時ぁ、呪い殺すぜ」
青年兵「私はあなたから、数多くの事を学びました!!」
天才「……」
青年兵「わずか5年という期間ではありましたが、私がこうして
大元帥として存在するのは司令っ、あなたのお蔭であります!!」
天才「勘違いすんなよ。そりゃお前の才能と実力だ」
青年兵「しかしっ! 学んだ事については間違いはありません!!」
天才「……青年兵」
青年兵「はいっ!!」
- 270 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/29(火) 18:22:09.14 ID:c0E3QSENo
天才「お前は生真面目すぎるのがやや難点だが、真っ直ぐで人徳もある」
青年兵「……っ」
天才「ただ上に従うだけじゃなく、自分の意思をしっかり持って任務を全うしてる。
だからこそ俺様は、お前を大元帥に押し上げる事を決めたんだ」
青年兵「……司令」
天才「お前なら世界を、正しい道に導ける。自信を持て! いいな!」
青年兵「……はい……ぃ!!」
天才「陛下」
皇太子「貴方には色々と、世話になったな」
天才「お互い様だよ。国軍として無茶を言い続けた。助かったぜ」
皇太子「……」
天才「あんたの性分は分かってる。だが、国だけは捨てるなよ?」
皇太子「……そうだな」
天才「そこの右大臣様に余計な心配かけんなよ、ハーッハッハ」
エリート「……っ」
皇太子「皇族を代表して、感謝するぞ。ありがとう」
- 271 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/29(火) 18:22:49.34 ID:c0E3QSENo
天才「格闘家!」
格闘家「はいっ」
天才「こっち来い」
格闘家「はい!」ザッ
天才「これをやる」サッ
格闘家「……これは」
魔道士「マスク・ド・ジーニアス!!」
天才「きょうからテメーがマスク・ド・ジーニアスだ!」
格闘家「師匠……っ」グッ
天才「本当、お前の事は散々、利用しちまって……申し訳ねーと思ってる」
格闘家「そんな事はありません!」
天才「お前の才能は本物だ。一切武器も持たずここまで上り詰めた奴は初めてだ」
格闘家「師匠の教えがあってこそです」
天才「その拳は本物だ。だからこそ俺様は無理に武器を持たせたりしなかった」
格闘家「……」
- 272 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/29(火) 18:23:30.19 ID:c0E3QSENo
天才「そしてその拳は、今後は平和の為に使ってくれ。そのマスクと共にな!」
格闘家「師……匠……っ!」
天才「お前の拳に憧れて、次の奴らが己を磨く。その手本となってくれや」
格闘家「……はいっ!」
天才「特遊のお前らもご苦労だったな」
女隊員「司令……っ」
天才「数々の辛い任務だったろうが、この戦いが終わった後はようやく解散だ」
ボス「……」
天才「ゆっくり休んで、今後は下の連中を育ててくれ」
男隊員「解散はしねぇぞ!」
天才「……」
男隊員「特遊はなぁ! アンタや初代や、そして……隊長の大事なモンが残ってんだ!」
天才「ああ、そうだったな」
男隊員「俺は最後までずっと……特遊を全うしますっ!!」
天才「……そんじゃあ、お前らの隊長に伝えておいてやるよ。ハーッハッハ」
- 281 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:14:07.23 ID:yDhZWGy8o
ザッ
盗賊「……っ」
天才「お前にゃ割と簡単に、正体バレちまったよなぁ」
盗賊「……ごめん」
天才「別に謝るような事じゃねーよ。俺様こそ色々と悪かったな」
盗賊「……?」
天才「ほら、パンツ捨てたりしちまっただろ? ハーッハッハ」
盗賊「――!? いっ、いいよそんな事は……っ」
天才「お前のセンスはスバ抜けてる。戦いにおいては天才的だ。俺様が保証する」
盗賊「……」
天才「だが、生きる事に関しては不器用だ。いいか? もっと笑え」
盗賊「……っ」
天才「どんな事も自分の糧にするんだ。辛い時こそ高らかに笑え。いいな?」
盗賊「……頑……張るよ」グスッ
天才「平穏な時代に力は要らねぇ。必要なのは笑顔だ。ハーッハッハ!」
- 282 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:15:18.67 ID:yDhZWGy8o
戦士「……」
天才「戦士、うつむくなよ」
戦士「……うっせ」
天才「お前は常に前を向いてなきゃなんねーんだ。それが役目だろ?」
戦士「……」
天才「お前の信念や人柄は魔物ですらを変える。それは俺様にもないスキルだ」
戦士「天才……っ」
天才「魔王を倒した後も魔物は残ってる。それを担えるのはお前の仕事だ」
戦士「ああ」
天才「それと、家族と大切な仲間、盗賊を守ってやれよ」
戦士「……ああ」
天才「楽しかったぜ。ハッキリ言って、お前みたいな奴は大好きだわ。ハーッハッハ」
戦士「やめろ……っての……っ」ギリッ
天才「オヤジにもヨロシク言っといてくれや」
戦士「……伝えとくよ、必ず」
- 283 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:16:16.93 ID:yDhZWGy8o
召喚士「……っ」
天才「だーから、何泣いてんだよ」
召喚士「泣かない人は……いませんよ……っ」
天才「アホ。戦いはまだ終わってねーんだぞ。泣くのは全てが終わってからにしろ」
召喚士「すみません……」
天才「ほんと、お前は頼りがいのない奴だ」
召喚士「……」
天才「だが、いざという時には必ず結果を残し、そして想像以上の力を発揮する」
召喚士「……っ」
天才「だからこっちも強敵相手に泳がせちまった。悪かったな、苦労をかけた」
召喚士「望んでやった事です! だからっ、いいんですよそんな事は……っ」
天才「お前に言う事ば1つしかねぇわな」
召喚士「……?」
天才「感謝してる。そんだけだ」
召喚士「!?」
- 284 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:17:01.64 ID:yDhZWGy8o
天才「お前が居なきゃこの計画は、もっと過酷なものになってただろうな」
召喚士「そんな事はないですよ……っ」
天才「いーや。お前の力は紛れもなくこの世界唯一のもので、人類の宝さ」
召喚士「……っ」
天才「だからこそ危ういとも思ったが、お前の道は正しかった。真っ直ぐだった」
召喚士「天才さんが導いてくれたからこそです……っ!」
天才「俺様は足元を照らしてただけに過ぎん。進んだのはお前本人。それに……」
召喚士「……」
天才「手を取りあってくれた仲間、誘導してくれた師匠達に感謝しな」
召喚士「はい……っ」
天才「そして、今後はそんな力は封印して、自分の為に生きてくれ」
召喚士「は……ぃ……!!」
天才「お前は紛れもない救世主だ。もう1度言う、感謝してる」
召喚士「……っ!!」
天才「また会おうぜ。きっと、な」
- 285 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:17:44.31 ID:yDhZWGy8o
召喚士「天才さああぁぁん!!」
ザッザッザッ
天才「……お前は流石に泣かないんだな」
東方司令「ずっと聞かされていた。今日の日の事を」
天才「ま、そりゃそーだ」
東方司令「お師匠……アンタは……」
天才「正直、合わす顔もねーんだよな。ホントはよ」
東方司令「……?」
天才「予言で全てが見えるってわけじゃねぇんだが、それでも……」
東方司令「兄くんの事なら、お師匠が気に病む必要はないよ」
天才「そうはいくかよ」
東方司令「兄くんだってボクだって、いつ死を迎えるか、覚悟の上で付いてきたんだ」
天才「……」
東方司令「いや、ボクらだけじゃなく、彼らもそうかな」
天才「――!?」
- 286 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:18:34.19 ID:yDhZWGy8o
ザッ……ザッ……
天才「……瀕死じゃねぇか、ったくよ」
南方司令「……生きているだけ……マシですよ」
西方司令「そそっ、そうですよ……うぅっ」
天才「情けねぇ弟子どもだ。だけどよ、お前ら……最高だよ」
南方司令「私も、あなたのような師を得て、最高でした」
西方司令「そそそっ、そうそう!!」
東方司令「いつまでも、あなたはボクのお師匠だ。ありがとうございました!」
南方司令「ありがとうございました」
天才「礼を言われるような事はしてねーよ。むしろ、こっちの台詞だ」
西方司令「師匠おおぉぉぉぉ……っ」ボロボロボロ
天才「お前らはひねくれもんで性格に難があって、どうぢようもねー奴等だけどよ」
西方司令「ひいいぃぃ……っ!」
天才「それでも人を惹きつける芯を持ってる。だから司令としてやってこれたんだ」
南方司令「……はい」
- 287 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:19:10.09 ID:yDhZWGy8o
天才「今後は大元帥の支えとなって、国軍をまとめてくれや」
東方司令「はい……っ!」
天才「お前らは俺様の大事なガキだ。決して孤児なんかじゃねぇ! 誇りに思え!」
西方司令「師匠おおおおぉぉぉぉーっ!!」
天才「本当はここに、お前の兄貴も居たら……最高だったんだけどな」
東方司令「……っ」
南方司令「もしっ! 生まれ変わったならば……っ!!」
天才「……」
南方司令「次こそは本当の親子として生きる事を……望みます!!」
天才「ありがとな。俺様もそう願いたいよ」
東方司令「お……師匠……ぉ」
天才「ハーッハッハッハ! 情ない顔すんなよ、兵が見てるぞ」
西方司令「ありがどぉ……ございまじ……だああぁぁ……っ!!」
南方司令「……っ」
天才「じゃあな――」
- 288 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:20:02.97 ID:yDhZWGy8o
――『水を差すようで悪いが、邪魔するぞ』
召喚士「!?」
天才「な……んだ?」
ズゴゴゴゴゴゴゴ……
青年兵「下からですっ! まさか……っ」
天才「退がれええぇぇーっ!!」
ゴッゴオオオオォォォォ!!
東方司令「う……っお」
エリート「な、何事か……っ」
戦士「……何だ、あの球体は……っ!!」
ゴゴゴゴゴゴ
――『在って成らぬのだ。人間如きが、此の様な事象を引き起こすなど』
召喚士「ベルゼブブ!!」
ベルゼブブ『如何にも。余はベルゼブブ、魔族の王で在る』
召喚士「これが……ベルゼブブの核なのか……!?」
- 289 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:20:41.67 ID:yDhZWGy8o
ベルゼブブ『故に余は、決して下等なる人間に敗北を喫する事等、許されぬ』
盗賊「――!!」
ベルゼブブ『此処より先、決して一人として帰さぬ。余と共に地獄へ堕ちよ』
天才「ちいいいぃぃぃぃーっ!!」ババッ
ガッカアアアアァァァァ!!
魔道士「……う……っ」
ジュニア「油断……したっ、まだ力が……あったとはな……」
賢者「……?」ヨロッ
大軍師「し……司令っ!!」
天才「…………」
ベルゼブブの核が起こした爆発。一同はその衝撃により門のすぐ近くまで吹き飛ばされた。
が、天才はただ1人、皆の壁となるが如く、両手を広げ立ちはだかっていた。
天才「……さ……せるかよ……っ」
ベルゼブブ『次で終わりだ。今度は逃がさぬ。確実に仕留める』
天才「させるか……って、言ってんだろうがよ!!」
- 290 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:21:19.49 ID:yDhZWGy8o
ゴアァッ!! ズゴゴゴゴゴゴ……
ベルゼブブ『……?』
天才「ここから先には、何であろうが通さねぇ」
ベルゼブブ『壁……? 魔法に由るものか……ッ』
青年兵「魔法の……壁……?」
エリート「あ、あり得ない……っ。どこにこのような力が……」ググッ
賢者「……命さ。彼は命を燃やして、魔法の壁を作り上げているね……ふぅ」
ベルゼブブ『死ぬ、か?』
天才「ああ、死ぬぜ。テメーを道連れでなぁ!!」
ベルゼブブ『……どうやら、伊達や酔狂では無い様だ』
天才「テメーの魔法はおろか、蠅の1匹さえ通さねぇ」
ベルゼブブ『為らば止むを得ん。閉門させて貰おうか』
天才「――!?」
ガゴンッ!! ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
魔道士「門がっ!!」
- 291 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:22:50.01 ID:yDhZWGy8o
召喚士「しまった!! 閉じ込める気か……っ!!」
天才「全員、外へ出ろぉ!!」
盗賊「間に……合うか……っ」
天才「クソッタレがああぁぁぁぁ!!」
ゴゴゴゴゴゴ……ガッゴオオオオォォォォン!!
ベルゼブブ『!?』
戦士「門が……止まった……?」
天才「ぜぇーっ、ぜぇ……ざ、ざまあみろ!!」
ベルゼブブ「まさか其処までの事が可能とは……ッ」
召喚士「天才さん……っ」
大軍師「今ですっ! 脱出しますよ」ザッ
皇太子「しかしっ」
天才「これでいい!!」
皇太子「……!?」
天才「これでようやく……全てが終わる」
- 292 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:23:24.18 ID:yDhZWGy8o
青年兵「司令……っ」
天才「大軍師の指示に従え。モタモタしてっと、門が閉じちまうぞ……っ」
魔道士「天才さああぁぁんっ!!」
天才「大軍師!!」
大軍師「はい」
天才「持ってんだろ? よこせ」
大軍師「……」
エリート「なん……だ?」
ザッザッザッ……ズイ
大軍師「先程、輸送体より預かりました。分かってらしたのですか?」
天才「さーな。単なる偶然だろ」
青年兵「あ……れは……っ」
召喚士「総司令の仮面っ!?」
天才「……ふーっ」
カポッ……スチャッ
- 293 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:24:15.16 ID:yDhZWGy8o
天才「前に言ったんだ。総司令は2度、蘇るってな」
大軍師「司令……っ」
天才「最後くらい、国軍の人間として逝ってやるよ。ハーッハッハッハ!!」
東方司令「お師匠っ!!」
格闘家「師匠……!!」
魔道士「天才さ……っうあぁ……うぐっ!!」
天才「魔道士!! 泣くな!!」
魔道士「っ!!」
天才「お前は認めたくねーだろうが、お前には王家の血が流れてる!!」
魔道士「うっ、うぐ……ぅ」
天才「王は如何なる時でも、威風堂々たるもんだ。そうだよな?」
皇太子「……ああ」
天才「お前のその血は、必ずや役に立つ。忘れるなよ?」
魔道士「うぐっ、ううぅぅ……っ!!」ボロボロ
天才「眠れる王子を救えるのは姫、ただ1人なんだからよ」
- 294 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:25:01.52 ID:yDhZWGy8o
魔道士「うああぁぁ……うっ、ううぅぅ……!!」
天才「……はぁ。命を燃やし尽くしちまった。動くこともままならねぇ……」
召喚士「天才……さ……っん」
天才「大軍師、やれるか?」
大軍師「あと1発だけ、撃てます」
天才「流石だな。んじゃ、背中押してくれや」
大軍師「……っ」
天才「死への誘いじゃねぇ。天への羽ばたきだ」
大軍師「畏まり……ました」
ザッ
天才「じゃあな、勇者達――――」
背中越しに振り向いた天才さんの顔は、濡れていた。
仮面の下から流れていたのは涙なのだろうか、それとも……。
大軍師さんが羽扇を仰いで風を起こした。扇の羽が風に飛ばされた。
白い羽は天才さんの背中に広がり、まるで天使のような姿だった――。
- 295 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:26:00.19 ID:yDhZWGy8o
ゴゴウッ!!
召喚士「天さ――――」
ガッゴオオオオォォォォン!! シュウウゥゥゥゥ
盗賊「……っ」
大軍師「門が……閉じました」
青年兵「司令……司令……っ!!」ザシャッ
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
ジュニア「……!?」
ドッドオオオオォォォォォォォォン!!
今までで最も広範囲な光柱が、魔王城全体に広がり、天を貫く。
門外に影響はない。全て、場内の根こそぎを昇天させるかのように。
戦士「五……行……」
エリート「終わったの……だな」
大軍師「……っ」
光が広がる。五行に加え、朝日の柔らかな日差しが北の空へと広がる。
- 296 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/05/30(水) 17:26:55.17 ID:yDhZWGy8o
魔道士「ううぅぅっ、うぅ……うぐぅ……っ!!」
盗賊「……っ」ギュッ
召喚士「六道門……天」
戦士「……?」
召喚士「だから開いてて、そして上空にあって……」
戦士「……なるほどな」
召喚士「天才さんが……笑ってる……」
青年兵「ええ」
召喚士「俺達も……笑わなくっちゃ。でなきゃ、怒られちゃうよね」
青年兵「……ええ」
戦士「あんたの死は、絶対に無駄にはしないぜ。俺達が必ず……決めてやる」
盗賊「そうだな」
魔道士「……っ」
召喚士「サタンを倒したその時、改めて言うよ……」
天才さん、ありがとう――――。
次へ 戻る 戻る 携 上へ