■戻る■ 戻る 携 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その24
795 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/01(火) 23:59:18.75 ID:BzF/9Okio
ズザッ

ゲーデ「ふん……っ!」

十字架を模したステッキ状の剣を振るうゲーデ。

その挙動の最中、ふと目の前の光景に疑問を抱く。

ゲーデ(こやつ……左利きであったか……?)

戦士が眼前で雷切を振るうその軌道、それは今までとは逆の、

つまりは右から左へと流れる軌道であった。

戦士「……」

自由落下の最中、戦士は既視感を覚えた。

それは隊長との特訓風景。その中に似たような場面があったのだ。

向かい合う剣の軌道であれば、再び弾かれるは必死。

ならばこそ、敢えて左手でその軌道を逆とする。

そこで生まれる後の先。幾多の戦いで戦士を助けたカウンターの一撃が生まれる。

ゲーデの右手で放たれた一閃をしゃがんでかわし、戦士はすかさず

ガラ空きとなった、ゲーデの腹部へと左手の雷切を振り上げた。


796 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:00:05.00 ID:ZReGT45co
フォンッ

戦士「…………」

ゲーデ「……」

戦士「……」

ゲーデ「……フッククク、クククッ!」

ザッ

ゲーデ「……見事」

戦士「これで、俺の勝ちだろ」

ゲーデ「……フックククク!!」

戦士「……」

ゲーデ「……ああ、君の勝ちだ」

戦士「……ピンピンして言われてもな」

ゲーデ「まぁそう言うな、勝ちは勝ちだ。私が不死でなくば今の一撃で絶命していたさ」

戦士「それで、約束通り……皆を解放して貰おうか!」

ゲーデ「……ふむ」


797 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:00:32.08 ID:ZReGT45co
戦士「まさか今更、出来ねぇとか言うんじゃねーだろうな?」

ゲーデ「……安心したまえ。私は約束を守るよ」

ザッザッザ

ゲーデ「その辺の低俗な魔物と一緒にしないで欲しいものだな」

戦士「じゃあ早くしろよ」

ゲーデ「もうしたさ」

戦士「……?」

ゲーデ「約束通り、運命の呪縛からは開放した」

戦士「……」

ゲーデ「だが、彼らが歩む道の途中で開放したのだ」

戦士「何だってん――」

ゲーデ「どこで途中下車したかは知らぬ。知るは彼らのみだ」

戦士「はぁ!?」

ゲーデ「約束が違うなどとは言うなよ?」

戦士「……っ!」


798 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:00:58.15 ID:ZReGT45co
ゲーデ「この地へ戻すなどとは、一言も申しておらんのだからな」

戦士「てめぇ……っ」

ゲーデ「生きていればあた会えるのだから、良いであろう?」

戦士「……くっ」

ゲーデ「それに、君等の命を許してやったのだ。安いものさ」

戦士「確かに……生きてんだな!?」

ゲーデ「何度も言わせるな。私は嘘は付かぬ」

戦士「……」

ゲーデ「伯爵もそうであったろう?」

戦士「知るかよ……っ」

ゲーデ「伯爵か……。仇は……討てなかったな」

戦士「……」

ゲーデ「それも運命か……。致し方あるまい」

戦士「もう、襲ってはこねぇんだな?」

ゲーデ「襲って欲しいならそうするが?」


799 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:01:25.79 ID:ZReGT45co
戦士「……まっぴらゴメンだ」

ゲーデ「フッククク!」

ザッザッザ

戦士「なぁ!」

ゲーデ「人間に手は貸さぬ」

戦士「……」

ゲーデ「二度とは言わぬぞ。……フッククク」

戦士「……あんたさ、人間だったんんだろ」

ゲーデ「……何故そう思う?」

戦士「何となくだ。別に理由はねぇ」

ゲーデ「人間だったとしても、それがどうだというのだ?」

戦士「……捨てたのか?」

ゲーデ「捨てて得るものがあるのならば、捨てるかもしれんなぁ」

戦士「……」

ゲーデ「私の話だなどどうでも良かろう。これで終いだ」


800 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:01:53.88 ID:ZReGT45co
戦士「待ってくれ!もう一つだけ……」

ゲーデ「何かね?」

戦士「自分の運命は……見えなかったのかよ……?」

ゲーデ「見えぬ。己の運命なぞ見えたら……面白いかね?」

戦士「……どうだろうな」

ゲーデ「私はつまらぬと思うよ」

戦士「……」

ゲーデ「人生は何があるか分からぬからこそ面白い。違うかね?」

戦士「……そりゃあそうだな」

ゲーデ「つまり、そういう事だ」

戦士「……」

ゲーデ「そうだ、名を聞いていなかったな」

戦士「……戦士」

ゲーデ「戦士…か。では戦士、人生を楽しむが良い。道は切り開くものぞ……」

こだまする笑い声が徐々に小さくなり、しばらくの後、洞窟は漆黒に包まれた。


801 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:02:19.84 ID:ZReGT45co


ザッザッザッザッ…ザッ

戦士「……くそっ」

ゲーデの退却により洞窟は元ある形へと姿を戻す。

灯りもない状態の戦士は、手探り出口を目指し、ようやく明かりの差す一画へと辿り着く。

戦士「……っ」

洞窟の外へ出ると、眩しい日差しが戦士の目に飛び込んだ。

戦士「……召喚士、魔道士」

ザッザッザ

戦士「魔法剣士……盗賊」

ザッザッザ

戦士「必ず、探し出してやる……っ!」

グッ…タッタッタッタッタ…

つい先程まで五人であったパーティーは戦士ただ一人となり、

単身、左翼長らの控える本隊へと足早に向かった。


802 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:03:10.87 ID:ZReGT45co


ゴオオォォ…ドサッ

魔法剣士「……ぐっ!!」

ゴオオォォ…ドサッ

盗賊「……っ」

ゴオオォォ…ドサッ

魔道士「きゃ……っ!!」

ゴオオォォ…ドサッ

召喚士「……っつう!!」

ヨロッ

召喚士「今度は……どこだ!?」

ヨロッ…テク……テクテク

召喚士「みんな…!?おーいっ!誰かーっ!!」

その声は空しくかき消され、周囲には召喚士以外の人影は見当たらない。

目に入るものは、壁のように多い塞がる突風の嵐と一軒の民家のみであった……。


804 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:32:55.68 ID:ZReGT45co


ゲーデ「……」

……――

ババ様『予言が全て……人助けになるとは限らんて』

ゲーデ『では何ゆえ、このような力を持って……何もしないと言うのですか!?』

ババ様『使うべき者が使いこなせば良いのじゃ』

ゲーデ『……っ』

ババ様『ただ己の慢心で使うは、ただの偽善じゃ。不幸を生む……』

ゲーデ『私には分かりませぬ!……分かりませぬっ!!』

ドドドドドド…

女『何故……わつぃだけ助けたのよぉ!!』

ゲーデ『……』

女『みんな死んだ……私だけ……何故……っ』

ゲーデ『死にたかったとでも……言うのですか……?』

女『死なせてよぉーっ!夫も子供達もみんな……っ、何で……私だけぇ!!』

ゲーデ『……っ!!』


805 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:37:48.14 ID:ZReGT45co


ババ様『分かったであろう?命を救う事だけが助けではないのじゃ』

ゲーデ『では、見捨てろと言うのですかっ!?』

ババ様『正しき者が使え、と申しておるのじゃ……』

ゲーデ『何が正しいだっ!!目の前の人間が死んでゆく!それを救えぬなど……っ』

ババ様『その意味が分からぬうちは、未熟だという事じゃて……』

ゲーデ『何が予言の民かっ!このような所にひっそりと暮らし……世を捨て……』

ババ様『……ゲーデ』

ゲーデ『私は出来ぬっ!!そんな事は到底……出来ぬっ!!』

運命なんてものは変える為にあるんだ。決して諦めたりするものではない。

死に於いてだって変えられるからこその運命……。

――『違うな』

ゲーデ『!?』

――『死を受け入れるは宿命。決して抗えぬ宿命』

ゲ−デ「……っ!!」

――『そして、余の手によってここで貴様が死するも……宿命』


806 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:41:11.09 ID:ZReGT45co


ザッザッザ

ゲーデ「……」

魔王殿と呼ばれる異質の部屋。ゲーデは久方ぶりにこの地へと赴いた。

ゲーデ「……お久しゅう御座いまする」

――「……何用か?」

アスタロス「…………」

ゲーデ「二人きりで話とう御座りまする」

スッ

アスタロス「……」

――「アスタロス、良い。下がっておれ」

アスタロス「……はっ」

スゥッ…カツカツカツカツ…

ゲーデ「ありがとうございます……ベルゼブブ様」

ベルゼブブ「して、何用か?」


807 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:45:17.23 ID:ZReGT45co
ベルゼブブと呼ばれた人間のような魔物。

しかしながらその肌は赤黒く、眼光はぎらつき、一睨みにおいて通常の人間など気を失うであろう。

ゲーデ「私は……」

ベルゼブブ「……」

そのような化物と呼ぶに相応しい魔王を、ゲーデは最後に選択した。

ゲーデ「……人間に飽き飽き致しました」

ベルゼブブ「……」

ゲーデ「しかし、魔族に対しても同様です」

ベルゼブブ「ほぉ、死ぬか?」

ゲーデ「死にまする」

ベルゼブブ「それで、余に剣を向けるとでも申すか?」

ゲーデ「はい」

ベルゼブブ「無意味な事を……」

ゲーデ「無意味です。しかし、最後はせめて……人間らしく」

ベルゼブブ「……」


808 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 00:53:02.53 ID:ZReGT45co
ゲーデは問答無用に魔王へ飛び掛かる。

今まで己の中に燻っていた、人間としての想い。魔族としての想い。

その葛藤を胸に秘めつつ、伯爵の下、人間であった者に不死の命を与え、

魔族、即ちアンデッドとする事であたかも救いを差し出していた錯覚に誤魔化しを得ていた。

ゲーデ「はああぁぁっ!!」

それが過ちであると知りつつも、為す術もなく、探す術もなくもがき苦しんだ。

それが突如現れた一人の人間と剣を交える事で微かな、ほんの微かな光明を見た気がした。

ベルゼブブ「……」

ゲーデ自身は何も変わらない。それでも、世界は変わろうとしている。

そう感じた時、ゲーデは己の役目や信念、そして自分の運命という名の道の終着を得た。

ゲーデ「――っ」

ベルゼブブ「…………」

ゲーデの肉体はおろか、剣すらもベルゼブブに触れる事はなく、その決着は迎えた。

十字架のステッキが回転しながら床へと、あたかも墓標のように魔王殿の端へひっそりと突き刺さる。

その傍らで、ゲーデの体は霧のように蒸発し、この世からその全てを消失した……。


809 名前:NIPPERがお送りします [] 投稿日:2011/02/02(水) 00:56:51.65 ID:ZReGT45co
とりあえずここまで!もうちょいで三十四部も終わりですー!
何だかまた、無駄にながくなってしまってすみません…

それでは、ご支援ありがとうございました!おやすみー!ノシ

〜オマケ〜

召喚士「……占いの館?はぁ、最近ツイてないし見て貰おうかな……」

テクテク

召喚士「すみま……うわぁ!!」

ゲーデ「いらっしゃ〜い。フッククク」

召喚士「……めっちゃ…怪しい」

ゲーデ「今日はどうされましたぁ〜?」

召喚士「最近ツイてないんです…」

ゲーデ「例えば?」

召喚士「女装させられたり、主人公の座が怪しかったり……」

ゲーデ「ふーむ、なるほど。それは名前が宜しくない。改名すべきですね」

召喚士「改名!?ど、どうしたら……」

ゲーデ「ペニス」

召喚士「……はい?」

ゲーデ「ペニスに改名すれば運気も急上昇――」

召喚士「いやだああぁぁーっ!!」


822 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 17:15:52.57 ID:H4gYduBMo
伯爵『私はね、人間が大嫌いだ』

ゲーデ『私もです。死して魔族となりて、その思いは強くなりました』

伯爵『人間は平気で嘘をつく。短命の分際で生へ執着する』

ゲーデ『……』

伯爵『魔族化すれば永らくの命を得られ、力を手にする事が出来る』

ゲーデ『だから人間を魔族かすると?』

伯爵『言ったであろう?嘘をつく人間は嫌いだ』

ゲーデ『……』

伯爵『だが正直に欲し、望む者は受け入れる。それが私だ』

ゲーデ『成程』

伯爵『選ばれし人間のみが我等と共に共存する。それこそが理想郷』

ゲーデ『……』

伯爵『強い者だけが生きる。これぞ当たり前の世界ではないか』

ゲーデ『そうかもしれませんね』

伯爵『その時、人々は己の愚かさ、過去の過ちを恥じる事となるのさ』


823 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 17:16:26.28 ID:H4gYduBMo


ババ様『馬鹿だねぇ。まんまと踊らされてさ』

ゲーデ『……』

ババ様『自分でも分かっていたんだろう?過ちなのかもしれないと…』

ゲーデ『今更ですよ……』

ババ様『だから無益な殺生をしなかったんじゃろう?』

ゲーデ『……』

ババ様『伯爵の仇だなんて、本当は礼を言いたかったんじゃないのかい?』

ゲーデ『どうでしょうね……』

ババ様『とにかくいこれで、呪縛から解き放たれたんだ』

ゲーデ『ええ…。ようやくです……』

ババ様『あとは信じて、ゆっくり休む事じゃて……』

ゲーデ『はい、そう致しましょう――』

――……

ゲーデ「戦士…と言ったか。見させて貰うぞ……遠い彼方――」


824 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 17:17:05.23 ID:H4gYduBMo
パアアァァッ…

ベルゼブブ「…………」

スッ

アスタロス「……我が君」

ベルゼブブ「問題ない。最後を見届けてやっただけの事よ」

アスタロス「……」

スゥッ

ネクロマンサー「いやはや、惜しい人材を失いましたな」

ベルゼブブ「そうかね?」

ネクロマンサー「彼はなかなか、面白い思考の持ち主でした故…クククッ」

アスタロス「我が君に於いて、そんなものは無用」

ネクロマンサー「……」

アスタロス「我らとて駒……いや、それ以下の存在に過ぎぬ」

ネクロマンサー「…ククッ、それもそうですねぇ」

瘴気の満ちた部屋から音が消え、再び暗闇が訪れた。


825 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 17:17:46.40 ID:H4gYduBMo


ゴオオォォォォ…

召喚士「どこ……だっ?」

地上である事は間違いなく、傍らには一軒の民家が佇むのみ。

ゴオオォォォォ…

召喚士「……っ」

その民家を中心に、周囲を風の壁が覆いつくしている。

召喚士「何なんだ……っ」

吹き荒れる突風は天高く伸び、その果ては見えない。

ザッザッザ…ゴオウッ!!

召喚士「……うっ!!」

ズザァ

召喚士「近づく事も無理……か」

突風に近づくものの押し返される召喚士。立ち上がりふと、背後を見つめる。

召喚士「……あとは、あの家か」


826 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 17:19:15.45 ID:H4gYduBMo
ゴオオォォォォ…

召喚士「……」

テクテクテク…コンコン

召喚士「……」

ドアをノックするが空く様子もなく、声すらも特にない。

召喚士「……失礼…しまーす」

カチャッ

召喚士「誰か……いますかー?」

民家に人の気配はなく、薄暗い室内が広がっている。

召喚士「……」

カツカツカツ…コツ

召喚士「……何か…いるのか?」

ふと、一番奥の部屋で足を止める召喚士。目の前にある扉の向こうから、

何か気配のようなものを感じ取ったのだ。

召喚士「……っ」


827 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/02/02(水) 17:33:59.76 ID:H4gYduBMo
カチャッ…キイィ

召喚士「…………」

カツカツ…カツ…

召喚士「――っ!?」

恐る恐る進む召喚士の足元で何かが動く。

ネズミ「チューッ」

タッタッタ…

召喚士「何だ、ネズミか……」

部屋を足早に出て行くネズミを見送り、召喚士が再びふと振り返ると、

――「何をしている」

召喚士「わあぁぁーっ!!」

突如、前方より老人の声が響き渡った。

老人「ここで何をしている?」

召喚士「……人間…!?」



〜第三十四部、完〜


828 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/02(水) 17:41:47.76 ID:FQVioceno
えっ


829 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/02/02(水) 18:15:22.91 ID:qSmgrcLfo
・・・・えっ?



次へ 戻る 戻る 携 上へ