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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その33
- 812 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2011/11/17(木) 23:57:52.51 ID:D/2b8aWMo
…
青年兵「準備は宜しいですか?」
戦士「おう」
ずらりと並ぶ猛者猛者猛者。国内、いやこの世界においても屈指の強者揃い。
戦士「さぁ、いくぜ」
盗賊「……あぁ」
戦士と盗賊。今まで何度、共に前衛として戦ってきた事だろうか。
もう今は、互いに信頼などという言葉すら無用。居る事が当たり前。そんな様相である。
戦士は左手に炎の斧盾、腰には新生雷切を携え、両手にゾディアックと騎都尉の戟を持ち、
まさにフル装備、何が何でも、どんな手を用いてもと言わんばかりの気迫である。
対して盗賊は、愛刀である薄緑を逆手に持ち、腰の鎖と太腿の止め具に仕舞い込んだ
クナイの塩梅を確かめると、ゆっくりと口元に布を当てて、身軽に歩き出す。
その2人の後に続き、格闘家と女隊員、そしえ男隊員の3人がゆっくりと進む。
女隊員「さぁ、行くッスよぉ!!」
男隊員「行く以外にねーだろっての……ヒャハハ!」
- 813 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/17(木) 23:58:32.25 ID:D/2b8aWMo
格闘家「……」
特殊遊撃隊。その過酷な任務を数々とこなしてきた彼らとて、早々、慣れるものではない。
恐怖、不安、後悔。幾多の失敗を重ねて、ここまでやってこれたのだ。
格闘家は大きく息を吸い込み、ピタリと止めると、両拳を鳴らせる。
お父との戦いでウォームアップは既に完璧。闘志も十分に溢れ出していた。
その横で外見からは想像もつかぬ程の怪力で、巨大なハンマーを肩に担ぎ、
まるでピクニックにでも行くかのように、女隊員が足取り軽く、前進する。
その反対側、表情は明るく見えるものの、その心中は不安も大きかった。
普段は頼るべき隊長がこの場には居ない。前線には自分ら3人しか居ない。
品行から楽観的な性格に見られがちだが、実は非常に注意深く、慎重な思考の持ち主だ。
同じく剣を振るって戦うファイタータイプに見られがちだが、実際は魔法が得手。
そのギャップに知恵のある魔物ならば騙せる事もあるが、今度の敵は違う。
隊長の代わりなど務まらぬかもしれない。しかし守るべき仲間が、部下がいる。
そして背後には頼れる先輩が、上司がいる。
その頼るべき男が今、ゆっくりと武器を引き摺りながら魔獣へと向かい進んでゆく。
- 814 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/17(木) 23:59:40.53 ID:D/2b8aWMo
西方司令「小僧共!! 余計な事はすんじゃねぇぞ!! 早く死ぬか退け!!」
偉そうな口調は絶対的な自信と、仲間への配慮の裏返しか。
複雑な性格の為、その心境は本人にしか分からないが、そう感じ取れるものもある。
人間平気とあだなされた彼の実力は、その名に恥じない。
更には前代未聞の超級な武器。文字通り兵器とも呼べる巨大な剣。
西方司令にとってもこれ程の昂りは始めてのもの。
ましてや敵は未曾有の未知なる相手。これ以上の興奮は得難い。
魔王ラーヴァナ戦の際は不甲斐ない結果を残してしまった。
別段、誰かに咎められたわけでもないが、彼にとっては汚点。悔いの残る結果。
2度目の失敗はない。あり得ない。あってはならない。
その思いを胸に、最後方から人間兵器が今、出陣する。
そしてそれらを率いるのは若き指揮官、青年兵。昨今は自信と実力を兼ね備え、
今や本国においてそれは欠かせないものとなっている。
青年兵自身も、これだけの実力者を指揮する事に最近は喜びすら感じていた。
逆に指揮される皆も、青年兵に全幅の信頼を寄せ、安心して戦いに専念している。
- 815 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 00:15:03.27 ID:zrhRCxsKo
…
魔獣「ヴオオォォォォーッ!!」
そんな集った猛者達と対峙する魔獣は、ただ咆哮と前進を繰り返すのみ。
一同はひたすら懸命に、その侵攻を食い止めるべく戦った。
進むべき方向を西の砦に。獲物を捕獲するべく用意した罠へ。
前衛の必死な攻撃も、魔獣が向きを変える事はなく、しかしながら
魔獣の足は滞り、第2の目的である時間稼ぎにおいては、まずまずの成功と言える。
ここでついに中衛のメンバーが動き出す。その核とも言うべき召喚士。
彼がとてつもない大きさの魔獣を食い止めるべく、進路を変えるべく、
放った一撃は、この召喚獣を召喚する事であった。
召喚士「行けっ! スフィンクス!」
シュイイィィィィン
西方の地にピッタリとマッチした西方発祥の召喚獣スフィンクス。
スフィンクス「じゃじゃーんからの〜っ、だっぶるぱーんちっ!!」
その一撃は前衛の集中攻撃を浴びた左前足を打ち抜き、魔獣は逆さに地へと倒れた。
- 821 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:21:55.14 ID:kiVfyAABo
ガクンッ…グッラアアァァァァ…
男隊員「うおぉ!?」
女隊員「ブッ倒れるッスよおおぉぉ!!」
青年兵「回避ーっ!」
ズッドオオオオォォォォン!!
魔獣の転倒。それは辺り一面に砂埃を巻き上げ、一時的に霧のような状況と相成った。
召喚士「青年兵くんっ!」
青年兵「ええっ。全軍後退! 南に進路を取れぇーっ!!」
ズザッ
戦士「南って……どっちだっつうの!」
盗賊「付いて来い、こっちだ!」
砂塵舞う中、一同はそれをかきわけ、一斉に南側の砦へと走り出す。
西方参謀「さぁこれでどうなるかだ……ヒック」
魔獣が気配と怒りに釣られ、砦へと進路を変えれば成功。変えなければ……。
少しずつ砂煙が晴れ始め、重たい体を持ち上げて起き上がる魔獣の姿が浮かび始めた。
- 822 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:22:42.75 ID:kiVfyAABo
…
ズズウウウウゥゥゥゥ…
衝撃音と再び舞い上がる砂埃。その中心部で魔獣が起き上がり、態勢を立て直した。
西方副司令「……・ごくっ」
格闘家「……」
魔獣「ヴッオオオオォォォォーッ!!」
ビリビリビリッ!!
怒りに打ち震え、雄叫びを発する魔獣。その足がようやく前へと進みだした。
青年兵「――っ!?」
召喚士「……だ……めかっ」
しかし進路に変更はない。魔獣は砦ではなく、ただ真っ直ぐ本陣へ第1歩を踏みしめた。
召喚士「スフィンクス!」
スフィンクス「あいあ〜い! どっしーんっ!」
ドッシイイィィィィン!!…ズズズズッ
スフィンクス「ぐおおーっ! なんて力……うぎぎぃ〜っ!」
- 823 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:23:21.28 ID:kiVfyAABo
魔獣「ヴオオオオォォォォ!!」
西方司令「加勢だクズ共ぉ! 俺様に続けやおらああぁぁ!」
召喚士「行けっ! コカトリス!!」
先頭を駆ける西方司令の頭上にコカトリスが召喚され、何者よりも早く、魔獣の元へと飛ぶ。
召喚士のとった行動の意味合いは容易であった。コカトリスと西方司令、
魔獣の口部を破壊した張本人を前面で見せ付ける事により、その怒りを買う。
言わば進攻を変える最後の手段とも言えた。だが、結果は失敗。魔獣は無反応であった。
召喚士「……っ」
青年兵「こいつ、何が狙いなんだ……っ?」
困惑する討伐隊とは裏腹に、魔獣はゆっくりと4本の足を前へ前へと進め続ける。
この時点で作戦は進攻方向の転換ではなく、全力にて足止めへと決定した。
いち早く飛び掛る西方司令を合図に、前衛が一斉に襲いかかる。
それとほぼ同時に、青年兵はすぐさまワイバーンを反転させ、本陣を目指した。
青年兵「召喚士さんっ、ここはお任せします!」
召喚士「うんっ!」
- 824 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:23:53.53 ID:kiVfyAABo
バシュウウゥゥゥゥ…
西方司令「さぁ断末魔の叫びをこの俺様に聞かせてみろやああぁぁ!!」
ヴヴヴヴヴヴッ…ズッギャアアァァ!!
魔獣「ヴオオォォォォーッ!!」
西方司令「まだだっ!! もっと聞かせろおおぉぉ!!」
戦士「絶好調みてぇだな。俺らも後ろに回りこんで攻撃すんぞっ」
盗賊「……ああ!」
男隊員「いけぇ、特遊が遅れを取るなんざ恥だぞ恥ぃ!」
格闘家「援護お願いします」
女隊員「おいっしょおぉ!!」
振り上げる格闘家の拳と女隊員のハンマーに、男隊員の魔法が付加し、光り輝く。
一撃、また一撃と重たい衝撃が魔獣に放たれる。それでも魔獣は動きを止めない。
痺れを切らした男隊員も、細身の長剣片手に、他の2人に合流し、攻撃を仕掛けた。
10分経過。魔獣は数十メートルであろうか、その1歩を完了させ、次の1歩へとまた歩き出す。
結局、決定打に欠ける中、魔獣は10分が経過する度、着実に本陣へと進攻していた。
- 825 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:24:23.85 ID:kiVfyAABo
バシュウウゥゥゥゥ…ズザァ
青年兵「司令」
天才「駄目か」
青年兵「……申し訳ありません」
天才「謝っても仕方ねぇ。んで、到達時間は?」
青年兵「推定、2時間40分後」
天才「結局、稼いだ時間は40分か」
青年兵「現在も奮闘中です。もう10……いえ、15分程度は何とか致します」
西方魔道長「トータルで残り3時間。今からで間に合うかねぇ」
天才「間に合わせるんだよ。下書きは無しだ。発動場所は本陣100メートル手前」
西方魔道長「あいよ。結界石運ぶの手伝っとくれ」
西国兵「かしこまりましたっ!」
ザザッ…タッタッタッタッ…
天才「いいか、次……進路を変えられたらゲームオーバーだ。分かってんな?」
青年兵「はっ。必ずや誘導してみせます」
- 826 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:24:58.64 ID:kiVfyAABo
ジャキッ
戦士「うおっりゃああぁぁ!!」
ビュオッ!!…ズガガガガッ!!
格闘家「双槍!? す、凄いな……」
西方司令「てんめぇ!! 俺様より目だってんじゃねぇぞこらあぁ!!」
グアッ…ズッドオオオオォォォォン!!
戦士「目だってねぇってか、あぶねぇな!!」
盗賊「時間は?」
召喚士「目標まであと1時間弱です!」
西方副司令「本陣まであと1キロ付近まで到達! ギリギリよっ!?」
西方参謀「うーむ……酒が切れたわ。一時、撤退する」
男隊員「フザけんな! 踏ん張れっつーの!」
西方参謀「無茶言うなよ。こちとらラーヴァナ戦から魔力使いっぱなんだぞ?」
ドドドドドド…
戦士「あれは……っ!」
- 827 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:25:47.58 ID:kiVfyAABo
王子「西国軍、推参! 側面よりあたれぇーっ!」
青年兵「陛下!?」
傭兵「砦で指咥えて見てるわけにゃいかんだろがよっ。ここは西国だぜ?」
親衛隊「我らがやらないでどうするかぁ!」
女隊員「おぉ、頼もしいッス!」
青年兵「動ける者は陛下らの護衛に回れ!」
召喚士「了解!」
西方参謀「いいタイミングだ。そんじゃ一度、戻る」
男隊員「しゃーねぇ。特遊は西国軍の支援に回るぞ……ヒャハハ!」
女隊員「正面は任せたッスよ!」
盗賊「了解っ」
王子「押せ押せ押せぇーっ!!」
親衛隊「陛下が先頭に出るという事は、我らが遅れている証拠。恥と思え!」
青年兵「本陣までの距離はそう遠くないぞっ。何が何でも死守するのだ!」
召喚士「いっけぇーっ!!」
- 828 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:26:29.23 ID:kiVfyAABo
…
ズザァッ
天才「……時間は?」
西方魔道長「残り30分」
天才「ちっ、もうあんな近くまで来てんじゃねぇか」
魔獣「ヴオオオオォォォォン!!」
ビリビリッ
魔道士「と、とうとう本陣まで……っ」
サモナー「まだ大丈夫。大丈夫だけど、ここまで来られるとはね……っ」
神官「物資の輸送は?」
西国兵「滞りなく。既に大半は砦へと搬出致しました」
神官「よし。それでは最低限の者のみ残し、砦へ避難せよ」
西国兵「し、しかし……っ」
神官「万が一に備えてだ。心配無用」
隊長「ああ。ここで必ず、あの魔物を仕留めてみせるさ」
- 829 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:27:09.71 ID:kiVfyAABo
西国兵「了解です……っ」
隊長「司令っ、そっちはどうなんです!?」
天才「あぁ? もう半分終わったよ! あとちょっとだ!」
魔道士「……皆さん、頑張って下さい」
サモナー「僕らにはもう、祈るしか……ごほごほっ、ごほっ!」
魔道士「サモナーさんっ!?」
マーメイド「……っ」
サモナー「こんな僕でも……祈る事くらいは出来るさ。ごほごほ……っ」
祈りで何とかなる。現実はそう甘くはない。刻一刻と時間が進む中、
魔獣の足音は着実に本陣へと迫っていた。その巨体は最早。目と鼻の先である。
西方司令「何を手間取ってんだコルアアァァ!!」
天才「うるせぇな! ぶっ殺すぞ!」
西方魔道長「よし……っ。こっちは終わったよ!」
天才「五行メンバーは今すぐ来い! 準備に入んぞ!」
魔道士「は、はいっ!」
- 830 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:27:48.53 ID:kiVfyAABo
ザザッ…ドドオオォォォォ
魔獣「ヴオオオオォォォォ!!」
青年兵「……くはぁ、はぁ……はぁっ」
召喚士「流石に、魔力もそろそろ厳しいね……っ」
青年兵「ええ……っ。魔王相手ですらないって言うのに、情けない話ですね」
召喚士「全くだよ……ははっ」
ジャリッ
召喚士「行けっ! コカトリス!!」
青年兵「出でよ、ワイバーン!!」
シュイイィィィィン…ゴッゴオオォォォォ!!
召喚士「これが……最後の攻撃だぁーっ!!」
青年兵「1秒でも多く……時間を稼いでやるさっ!!」
ドッゴオオォォォォン
召喚士「ぐはっ!!」
青年兵「ち……くしょう……っ」
- 831 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:28:21.81 ID:kiVfyAABo
魔獣「ブッオオォォォォーッ!!」
戦士「召喚士っ、青年兵!!」
男隊員「攻撃を食らったわけじゃねぇ! 安心しろっ!」
格闘家「こちらで回収致します」
西方副司令「時間はぁ!?」
王子「あと……20分!!」
ザザッ
西方参謀「命の水……補給完了っ、ヒ〜ック」
西方司令「ナイスタイミングだこのクズ! さっさと付加しろやああぁぁ!!」
ダンッ!!…グワァッ
西方司令「ジャンピングスーパーウルトラなんとかかんとかああぁぁぁぁ!!」
西方参謀「早いっつーの!!」
ドオオォォォォン…ガッカアアァァァァ!!
魔獣「ヴオオオオォォォォーッ!!」
西方司令「ざまーみろやこのでくのぼうがっ!! ワーッハッハッハ――」
- 832 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:28:54.22 ID:kiVfyAABo
グオォッ!!
西方司令「んなっ――」
ドッシイイィィィィン!!
西方司令「がっはああぁぁ!!」
西方副司令「調子に乗るからですよっ、もう!」
クルクルクル…グサァ
西方司令「ぎゃああぁぁ!! し、死ぬっていうか……もう死んだあぁ!!」
男隊員「誰かそこの武器拾ってやれ!」
傭兵「こんな武器、誰が持ち上げられるかってんだよぉ!」
女隊員「残り10分ッスよぉ!!」
戦士「仕方ねぇ。誰か、このゾディアックに五行を……」
盗賊「無茶を言うなっ、死ぬ気か!」
男隊員「全くだ。それに、この状況でどこに五行撃てる奴がいるってんだよ」
戦士「……あとちょっとなんだぞ! ここでやらないでどうすんだよ!」
女隊員「足が来るッスよぉ!! 回避ぃーっ!!」
- 833 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/18(金) 18:29:28.93 ID:kiVfyAABo
ドッズウウゥゥゥゥン!!
格闘家「……あと、1歩」
西方参謀「魔方陣は……っ」
クルッ
西方副司令「もう100メートルもないですよ……」
魔獣「――――!?」
その時、魔獣の左前足がみるみるうちに砂漠の中へと飲み込まれていく。
青年兵「な、何だ……?」
ズズズッ…ゴポォ
召喚士「水……っ!?」
ドッシャアアァァァァ
液状化する砂の地面。まるでそこにオアシスが出来上がったかのようである。
魔獣の足は底なし沼にはまったかのように、水の中に埋まり、もがいている。
その水場から、罠をしかけた張本人が姿を見せ、胸を撫で下ろしたような顔で笑った。
マーマン「何とか間に合ったな! さぁ、いよいよい本番だ!」
- 836 名前:NIPPERがお送りします(新鯖です)(東海) [sage] 投稿日:2011/11/18(金) 19:16:03.14 ID:YvfPypJAO
>>1乙
西のMVPはマーマン!マーマン!
- 843 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/19(土) 01:23:00.52 ID:uWQB2J1Wo
ズッズウウゥゥゥゥ
魔獣「ヴオオォォォォーッ!!」
傭兵「おーおー。怒り狂ってやがんぜ」
男隊員「これで……間に合うだろ」
ザシャッ
女隊員「ミッションコンプリート……ッスね」
格闘家「後は真っ直ぐ進んでくれるだけ」
ザバァッ
マーマン「おっと、こうしちゃいらんねぇわな」
スッ…タッタッタッタッタ
魔道士「あっ、マーマンさん! 探しましたよっ、どこ行って――」
マーマン「悪りぃ悪りぃ。んじゃ、始めようぜ!」
天才「おーし、そんじゃいいか? まずは全員、所定の位置につけ」
隊長「……ここか?」
天才「ちげーよ。テメーはそっちだ。間違えるなよ? 各位置に決まった行があるからな」
- 844 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/19(土) 01:23:56.25 ID:uWQB2J1Wo
ザッザッザ…スッ
魔道士「私は、ここ」
西方魔道長「揃ったね」
天才「あとは俺様が合図するまで、集中力高めて魔力を捻出しろ」
マーマン「うー緊張していたぁ」
天才「ひたすら魔力放出しねーとバンバン吸われっからな」
マーマン「吸われるとどうなんだい?」
天才「不足分はそいつの生命力から補う。気を付けろよ? リアルに寿命が縮むぜ?」
魔道士「……っ」
西方魔道長「老い先短い寿命を、これ以上短くされてたまるかいっての」
ズオオォォォォ
魔獣「ヴオオオオォォォォ!!」
天才「さぁ、客人も元気に叫んでるぞ。こっちも盛大に出迎えようじゃねぇか!」
隊長「ああ。全力でいく!」
魔道士「私だって……役に立ってみせるっ!」
- 845 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/19(土) 01:24:55.13 ID:uWQB2J1Wo
キュイイィィィィ
召喚士「!?」
盗賊「魔法陣が……光り始めた……っ」
戦士「いよいよ……だな」
王子「……っ」
一同が固唾を飲む中、魔獣がゆっくりとマーマンの罠から這い出し、再び大地に立つ。
広大に描かれた魔法陣までその足はあと1歩踏み込むのみである。
男隊員「……勝ったな」
青年兵「ええ。僕らの粘り勝ちです」
そしてついに、魔獣の足が地面を離れ、その力強い1歩を、
白く光り輝く魔法陣の中へと踏み入れた。
ズッシイィィィィン
天才「今だぁ!! 発動!!」
魔道士「やあぁーっ!」
ドッズオオォォォォン!!
- 846 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/19(土) 01:26:04.05 ID:uWQB2J1Wo
天才の合図と同時に、5人が持ちうる全ての魔力を放出する。
隊長「ぐ……っおおぉぉ!!」
マーマン「な……んだよこれっ! 魔力……吸い取られ……っ」
西方魔道長「なんて……力だい……っ!」
天才「気張って制御しろよぉ! 逃すと暴走すんぞおおぉぉ!!」
魔道士「くううぅぅ……っ!!」
ギュイイイイィィィィ!!
魔獣「ヴッゴオオオオォォォーッ!!」
魔法陣の中心に足を踏み入れ拘束される魔獣は、断末魔の叫びをあげる。
もがき苦しむが為す術もなく、ただ体を痙攣させているだけに留まる。
やがて、魔法陣の光が縦に伸び、五行魔法のように、天高くへと放たれた。
魔獣はその中で徐々に溶け込まれ、半透明へと姿を変える。
魔獣の咆哮は魔法陣五行の音にかき消され、やがてその音も空高くへと消えてゆく。
まるで昼間のように輝いたその一瞬。再び夜を取り戻した時、そこには魔物の姿はなく、
魔法陣五行を放ち、疲弊した5人が座り込む姿だけが残っていた。
- 850 名前:NIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2011/11/19(土) 19:41:05.05 ID:yFY82M2AO
マーマン!マーマン!
- 853 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/20(日) 03:01:27.39 ID:DLX/6ELCo
ギュバアアァァァァッ!!
魔道士「うあぁ……っ!」
西方魔道長「なっ、なんだいこれは……」
マーマン「魔力が吸い上げられてんぞおぉ!!」
キュイイィィィィ…ドシュウウゥゥゥゥ
魔獣「ヴオオォォォォ――――」
パアアァァァァ……
天才「……はぁーっ」
隊長「く……っ、はぁ……はぁ……っ」
ザシャッ
隊長「心臓を鷲掴みにされたような感覚だな」
天才「何とか持ったな。しかし、意外だったな」
魔道士「……?」
天才「てっきりお前が枯渇するかと思ったが、よく粘ったじゃねぇか」
隊長「……いや、俺だってそうだと思ってましたよ」
- 854 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/20(日) 03:01:57.92 ID:DLX/6ELCo
ヘタッ
西方魔道長「まさか、アタシが枯渇するとはねぇ」
魔道士「西方魔道長さんっ、大丈夫ですか!?」
西方魔道長「大丈夫大丈夫。ちょっと腰にきちまっただけさ」
天才「オメーもよくギリギリで魔力合わせられたな」
隊長「思ったより魔力が放出できてな。ここだと土行の相性がいいのかもしれないな」
マーマン「倒したんだよな……?」
天才「ああ。テメーもあんだけ魔力使った中で、よく頑張ったな」
マーマン「へへっ。俺っちの魔力をナメるんじゃねぇっての!」
タッタッタッタッタ
戦士「ど、どうなった!?」
盗賊「やったんんだ……よな?」
天才「おう。デカブツはブッ倒した。前哨戦はこっちの勝利だ」
王子「やった……っ、やったよ!!」
召喚士「うんっ! やったんだ……っ」
- 855 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/20(日) 03:02:24.49 ID:DLX/6ELCo
…
ザッザッザッザッザ
神官「お疲れ様でした。やりましたね」
天才「おーう。何とかだけどな」
男隊員「文字通り、総力戦だったけどな」
女隊員「本当ッスね。もうクタクタで早く休みたいッスよ……」
神官「脅威は取り除かれました。我らも本陣に帰還致しましょう」
親衛隊「砦も無事で、良かったですね王子」
王子「おうよ! ヒヤヒヤしたけどなっ、あははっ!」
神官「それでは、参りましょうか」
召喚士「魔道士さん、大丈夫でしたか?」
魔道士「ええっ。私はなんともありませんよ、えへへっ!」
天才「……お前、魔法陣五行ぶっ放して、まだ余力あんのか?」
魔道士「えっと……そんな余裕ってわけではないですけれど……」
天才「……ふぅん」
- 856 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/11/20(日) 03:02:51.78 ID:DLX/6ELCo
…
西国兵「資材はいい。必要な荷物だけ馬とラクダに積めっ!」
ザッザッザ
戦士「さぁいよいよ、魔王様への道が開かれたぜ」
格闘家「ええ」
サモナー「あの奥に、魔王イブリースが待っているんだ」
巨大な山、いや……魔獣を葬った事により、西の果てにはぽっかりと道が出来上がっていた。
魔道士「やっと……ですね」
盗賊「ああ。満身創痍だが……やるしかあるまい」
召喚士「……」
ザッザッザ
天才「討伐予定日まであお8日、いやもうじき7日になるか」
隊長「1週間あれば、ある程度は回復すんだろ」
戦士「まぁな。てか、してもしなくてもやんなきゃいけない事に変わりはねーだろ?」
隊長「そりゃそうだな」
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