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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その31
388 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:01:10.04 ID:PmQwxf4vo
〜バーテンの店〜

魔道士「……そんな」

戦士「何とか……ならねーのかよ」

天才「さっきも言ったろうが。展開によってのケースバイケースだ」

盗賊「……つまり、趨勢次第では……助かる道も」

天才「まぁ、そうかもな」

召喚士「……?」

天才「さぁ、本国で右大臣様が準備してくれてる。そろそろ行くぞ」

戦士「おっしゃ!」

魔道士「あの……マジシャンさんは……?」

マジシャン「……」

天才「もちろん……行くよな?」

マジシャン「……役には立たねーぞ?」

天才「戦力だなんぞ思ってねぇよ。リハビリ代わりだ」

マジシャン「言ってくれるねぇ……ハッハ!」


389 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:01:40.04 ID:PmQwxf4vo


大軍師「それでは、このまま本国へと向かいます」

大軍師「マジシャン殿、占い師殿はこちらの馬車へ」

マジシャン「おう」

テクテクテク

占い師「……ねぇ」

天才「あん?」

占い師「……いいの?」

天才「ん、ああ。……お前に頼みがあるんだが」

バーテン「……俺、か?」

天才「ああ。今回の戦いでお前の力を借りたい」

バーテン「……あ? 俺の?」

天才「いくら、とうの昔に退役したっつっても、テメーの腕前……ありゃ才能だ」

バーテン「買いかぶりすぎだっつーの」

天才「左翼長のタコが射れない今、オメーしかいねーんだよ」


390 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:02:12.09 ID:PmQwxf4vo
バーテン「……あ? 優秀な射手ならそこらじゅうに……」

天才「数の問題だよ。でなきゃ頭下げてねぇ」

バーテン「……」

天才「とにかくだ、3日以内に南へ来い。徴兵かけてでも来て貰うからな」

バーテン「……何が見えたんだよ」

天才「来れば分かる。来なけりゃ世界は滅亡して終わりだ」

ザッザッザ

バーテン「頭下げてねーじゃねぇか……」

去りゆく天才を見つめ、バーテンはポケットからタバコを取り出し、煙をくゆらせた。

占い師「ちゃんと言わなくて良かったの?」

天才「アイツだって元は軍人だ、そんぐらい分かってんだろ」

占い師「……」

天才「それに、時として全て語る必要がない場合だってある」

占い師「そうね……」

天才「ほれ行くぞ、戦いはもう始まってるんだ」


391 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:02:52.94 ID:PmQwxf4vo
〜赤壁〜

南方副司令「敵の動きは!? 数もだ!!」

南方兵「南東国からの増援はどうだぁ!?」

西方兵「まだだ! 伝令、三日月島への救援要請を頼む!」

南方魔道長「……慌しくなってきたな」

南方参謀「情報が乏しいからねぇ……。ま、仕方ないわよ」

南方魔道長「前回の魔王討伐で、かなりの魔道兵を失った……」

南方参謀「……」

南方魔道長「今回はどうするつもりだ?」

南方参謀「さぁね。それを決めるのは司令や大軍師の仕事でしょ」

南方魔道長「……」

南方参謀「私達は私達のやり方で、南方を守ればいいのよ」

南方魔道長「……ま、そうだな」

南方兵「何ぃーっ!? ま、魔物なのか!?」

南方参謀「どうしたのっ!?」


392 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:03:34.43 ID:PmQwxf4vo


タッタッタッタッタ…バッ!!

南方兵「あそこです!! 北の空……っ!!」

南方魔道長「何だぁ!? いや待てよ……あれは……」

南方参謀「召喚獣!? 青龍召喚隊じゃない……?」

ガチャッ…ザッ

南方司令「何事か?」

南方参謀「北からの竜騎士隊が到着したみたいよ」

南方副司令「何!? もう着いたのか! 早い!」

南方魔道長「これで……勝てりゃいいけどな」

バシュウウゥゥゥゥ…スタッ

南方参謀「ご苦労様。早かったわね」

青龍士官「大事ですからね。それに、我ら竜騎士隊にとっては造作もない事です」

南方副司令「頼もしい限りだ。それじゃ早速、司令室へ行こうか」

青龍士官「はい」


393 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:04:05.42 ID:PmQwxf4vo
〜司令室〜

コンコン…カチャッ

南方参謀「司令、竜騎士隊が到着したわよ」

南方司令「おぉ、早かったな!」

西方参謀「連絡受けてから半日も経ってねぇぞ? ヒック」

青龍士官「それで、戦況は?」

南方弓長「動きはないわ。相手はゆっくりと進軍しているみたい」

西方参謀「丁度いい。作戦の大まかな流れを決めたかったとこだ……ヒック」

南方参謀「どうするの?」

南方弓長「私達の結論としては、赤壁で迎え撃つには危険じゃないかって……」

南方司令「篭城するには数が多すぎる挙句、ここからの退路がない」

南方副司令「同感だな。だがしかし、どうするというのだ?」

西方参謀「前線を押し上げるっきゃねぇわな」

南方魔道長「……つまり?」

南方司令「……南の町を使う」


394 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:05:46.58 ID:PmQwxf4vo
〜南の町〜

ヒュウウゥゥゥゥ…

ボス「……」

ザッザッザッザ

チンピラ「な、なぁ……そろそろ赤壁に戻らないか?」

ゴロツキ「あぁ。町人はもう全員避難しただろうし……」

チンピラ「なぁボス、このままじゃ俺達……魔物と遭遇しちまう……」

ボス「俺らはよぉ、物心ついた頃から親の顔も知らねぇ悪ガキでよ……」

ゴロツキ「!?」

ボス「戦災孤児だか捨てられたか……んな事ぁどうでもいい。だけどよ……」

チンピラ「……ボ、ボス」

ボス「そんな拠り所を持たねぇ俺達を育ててくれたのが……この町じゃねぇのか?」

ザッ

ボス「そんなこの町を俺はよぉ、見捨てるなんて事ぁ……出来ねぇんだよ!」


395 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:06:38.42 ID:PmQwxf4vo
〜赤壁〜

南方魔道長「つまり、南の町で迎撃し、魔王軍の戦力を削ぐって事か?」

西方参謀「ちょいと地図を見てくれ。奴らは遥か南からこっちへ向かってる」

南方弓長「そこで最初にぶつかるのはここ、南の町」

トントン

南方司令「ここで敵を迎え撃てば、奴らの進軍を東西に分断出来る」

西方参謀「そうすりゃ、東側は南東国の援軍、西側は南方司令部の増援」

南方参謀「その2つで当たる事が出来る……か」

南方副司令「だけどな、そんなもの……死にに行くも同然だぞ?」

西方参謀「だろうなぁ。分断ならいざ知らず、包囲されたら打つ手なしだ」

南方魔道長「自ずから死地に足を運ぶなんざ、誰も行かんだろ」

南方司令「居るではないか、ここに」

南方魔道長「……あ?」

南方司令「これは無謀ではない、勇敢なる戦いだ。我ら正義の南方戦隊のな!」

南方副司令「戦隊かどうかは置いといて、やっぱ俺らが行くしかないか」


396 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:07:32.20 ID:PmQwxf4vo


南方参謀「さーて、それじゃまずは敵戦力の把握ね」

南方弓長「どうやって?」

西方参謀「その為のコイツら何じゃないのかい? うぃ……ヒック」

南方司令「頼まれてくれるか?」

青龍士官「無論です。竜騎士隊、早速出るぞ!」

青龍兵「各員っ! 出撃翌用意!!」

南方参謀「いい? 交戦は絶対に控えてよ……?」

青龍士官「分かっております。そんな度胸はもうありませんよ」

南方副司令「それじゃ任せたぞ。同時に俺らも南の町で待つとしようか」

南方魔道長「出撃するぞ。偵察隊と先に出しておけ」

南方弓長「衛生兵と伝令も準備して。それから輸送隊もね」

西方参謀「兵はどの程度連れてくんだ?」

南方参謀「有志……かしらね」

西方参謀「がはははっ! 有志かよ、そりゃあいい!」


397 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:08:04.70 ID:PmQwxf4vo


西方参謀「……」

偵察隊「それでは先行して出発致します」

南方弓長「くれぐれも気を付けてね。私達も続きましょ」

南方司令「それでは、赤壁の指揮は任せたぞ」

西方参謀「い、いや……任せたって言われてもだな」

南方魔道長「西方司令もいるし大丈夫だろ。役立つか知らねーが」

南方副司令「そうそう。それに司令らも向かっているだろうしな」

西方参謀「俺が言いたいのはそっちの話だよ!」

南方司令「ん?」

西方参謀「有志って……50人もいねーじゃんかよ!」

南方司令「あぁ、それなら安心しろ。本当の力が出せる」

西方参謀「……は?」

南方司令「大きな悪へ立ち向かう時こそ、正義の南方戦隊は本領発揮を――」

西方参謀「……アホだ」


398 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 20:08:45.29 ID:PmQwxf4vo
南の町を更に南下した先、人間が立ち入る事など皆無であるこの地。

その上空を、真一文字で青龍召喚獣が隊列を連ねている。

バシュウウゥゥゥゥ

青龍士官(……もう間もなく、魔王軍の領土に差し掛かるか)

まず最初に気が付いたのは、先頭を疾走している1人の青龍兵であった。

青龍兵「……っ!?」

青龍士官「なんだこの音は? 地響き……?」

薄暗くなる夜の闇の奥。遠めには地面が波打つように蠢いている。

青龍士官「な……なんだ!?」

ゴゴゴゴゴゴ

青龍兵「――っ!!」

竜騎士兵「ま……まさかっ! まさかこんな……っ!!」

耳では伝わっていても、その光景を目の当たりにした彼らは驚愕と共に、

改めて魔王軍、さおして魔王の恐ろしさを痛感し、絶望を覚えた。

闇夜に光る数十万の瞳が光る大群は、整然と、そして悠々と北上を続ける。


403 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:43:36.86 ID:PmQwxf4vo


ザッザッザッザッザ

アスラ「……ん、あれは召喚獣か?」

ラクシャーサ「すっ、すぐに始末致します!」

ラーヴァナ「構わんよ」

ラクシャーサ「は……っ?」

ラーヴァナ「どうせ偵察だろう。放っておいて構わん、と申したのだ」

ラクシャーサ「し……しかし……っ」

アスラ「死にたいか?」

ラクシャーサ「……ッ!?」

アスラ「ラーヴァナ様が良い、と申しているのだ。貴様は逆らうのかな?」

ラクシャーサ「しっ、失礼致しましたぁ!!」

ラーヴァナ「まぁそうカリカリするな。折角の行軍が台無しになるではないか」

アスラ「各自、隊列は崩すなよ。小物など相手にする必要はない」

ラーヴァナ「そうだ。あくまで優雅に堂々と、だ」


404 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:44:06.36 ID:PmQwxf4vo


バシュウウゥゥゥゥ

青龍士官「……っ」

青龍兵「ひ、ひとまず南の町へ向かいましょう。先陣もいずれ到着するでしょうし」

青龍士官「だな。無人のうちに地形の把握と使えそうな物を選定しておこう」

ゴウッ…ドシュウウゥゥゥゥ

青龍兵「間もなく南の町……んっ!?」

竜騎士兵「今……何かいなかったか?」

青龍士官「降りるぞ。召喚は解除するなよ。敵に備えておけ」

オオォォォォ…スタッ

青龍兵「……人間?」

ボス「……?」

青龍士官「貴様等、ここで何をしている」

チンピラ「な、何って……魔王軍を待ち受けて……」

青龍士官「今すぐ退避しろ。邪魔だ」


405 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:45:09.32 ID:PmQwxf4vo
ボス「……あ?」

青龍士官「これから南の町は戦場と化す。ここに居ては危険だと言ったのだ」

ボス「じゃあ丁度いい。そのつもりでここにいるんだからな」

青龍士官「お前ら、国軍の者か?」

ボス「……だったら何だよ」

ザッザッザ…ガシィ!!

青龍士官「今がどんな時だか分かっているのか!」

ボス「……離せ」

青龍士官「何?」

ボス「俺はこの町で生まれ育った。そして国軍に入って南方を守り続けてきた」

グイッ

ボス「だからここにいんだろうが! 俺がこの町守らねぇで誰がやるんだよ! あぁ!?」

竜騎士隊「おい、この方が青龍先生だと知っての事か? 今すぐその手を……」

青龍士官「……構わん。分かった、ならば付いて来い。手を貸して貰おうか」

ボス「……」


406 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:45:43.36 ID:PmQwxf4vo


青龍士官「俺達はたった今、魔王軍の様子を見てきたところだ」

ボス「……」

ゴロツキ「やっぱり……大軍なのか?」

青龍兵「ハッキリ言う。敵の数は数十万は間違いない」

チンピラ「――っ!!」

青龍士官「正直言うが、綿密な作戦なくして勝利はまず不可能に近い」

ボス「……」

青龍士官「間もなく南方軍が合流する。地の利はアンタらが分かってるはずだ」

ボス「当たり前だ」

青龍士官「俺達、竜騎士隊は上空より出来る限りの援護をする」

ボス「んで、俺らが地上で敵を分断すりゃあいいんだろ?」

青龍士官「……そういう事だ」

ボス「……見せてやろうじゃねぇか。チンケな人間の意地ってモンをよぉ」

青龍士官「ああ。見せてやろう、召喚士の……国軍の、そして人間の力を」


407 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:46:22.99 ID:PmQwxf4vo
〜本国〜

召喚士「それでは、お気を付けて」

魔道士「私達も明日にはすぐに行きますから!」

大軍師「ええ、お待ちしていますよ」

天才「……お、来やがったな」

パッカパッカパッカパッカ

エリート「……ご苦労。いつでも出陣可能だぞ」

天才「おーう。今すぐ行くぞー」

エリート「もう……か?」

天才「いつでも行けるっつったろーがよ」

エリート「んむ、まぁ……な。おい、全軍出陣準備だ」

本国兵「ははっ! 各員、出陣するぞ! 目標は南方……赤壁!」

テクテクテクテク

占い師「お待たせ〜。さぁ、行きましょうか」

マジシャン「それじゃあ死地へ向かうとしようかねぇ……ハッハ!」


408 名前: ◆1otsuV0WFc [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:47:33.91 ID:PmQwxf4vo
戦士「アンタらも先に行くのか?」

マジシャン「残ってても特にやる事ねーしな。お前らはゆっくりしとけよ」

盗賊「……」

大軍師「本部と本国の兵でどの程度です?」

青年兵「先発隊がおよそ1万。総動員でも2万といったところです」

天才「分かっちゃいるが……明らかに劣勢だわな」

戦士「それを覆すのがアンタらの仕事じゃねーのかよ」

天才「ハーッハッハッハ! そりゃそうだわな!」

大軍師「本国での情報はどうなっていますか?」

エリート「余計な混乱を招かぬよう、報道規制は敷いていないが露出は控えている」

大軍師「成程、それが宜しいでしょうね」

天才「おっしゃ、それじゃあ出発すんぞ!」

エリート「全軍、出陣!」

マジシャン「そんじゃ、先に行って待ってるぜ」

召喚士「はい。また……明日!」


409 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/08/17(水) 23:49:49.48 ID:PmQwxf4vo
お盆期間中は随分とさぼってしまいました…ごめんなさい!
明日からまた頑張りますので、ご支援宜しくお願い致します!

暑い日々が続きますが御身体など壊さぬようお気を付けて!
それでは失礼致します!おやすみなさい!ノシ


415 名前:NIPPERがお送りします(東海) [sage] 投稿日:2011/08/18(木) 08:20:42.03 ID:PAJP/XGAO
>>1乙

最近の主人公は天才だな
カマセ臭を醸してた頃が懐かしい


420 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 17:54:42.30 ID:oWvJAaLEo
ドドドドオオォォォォ…

戦士「よし、俺らも明日に備えてホテルに戻るか」

召喚士「そうだね」

盗賊「……ん? あれは……っ」

テクテクテク

サモナー「やぁ、やっぱり召喚士君達だったか」

魔道士「サモナーさん!」

召喚士「西に戻ったんじゃなかったんですね」

サモナー「大きな戦いが始まってる。やると決めた以上、もう戻るつもりはないよ」

召喚士「……なるほど」

サモナー「それより召喚士君、何か……あったかい?」

召喚士「えっ!?」

サモナー「いや、以前より少し……晴れた顔をしているから」

召喚士「……ええ、まぁ」

サモナー「もしかして召喚術の事かな?」


421 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 17:55:31.24 ID:oWvJAaLEo


サモナー「済まないね。立ち話のような形になってしまって」

召喚士「いえいえ。流石に街中へマーメイドさんは連れて行けませんよ」

マーメイド「私の事なら気にしなくていいのに……」

召喚士「……いや、流石にその……何でもないです」

サモナー「それで、詳しく聞いてしまっても大丈夫かな?」

召喚士「あ、ええ……」

街外れにある池のほとりに腰掛け、召喚士は話を始める。

内容は勿論の事、先日起きた出来事の一部始終である。

召喚士「……と、言うわけなんです」

サモナー「…………」

魔道士「私も……ビックリしました」

サモナー「だろうね。にわかにはとても信じ難い話だね」

召喚士「ええ……」

サモナー「でもまぁ、今なら信じるしかないよね」


422 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 17:56:17.11 ID:oWvJAaLEo


サモナー「つまり召喚士君には、予め複数の属性による血を持っていたわけだ」

召喚士「ええ、そういう事のようです」

サモナー「おそらくその発想は古よりあったはずだよね」

召喚士「ですね。でなくば父達も研究にはこぎ付かなかったはずです」

サモナー「うん、そうだね。しかし先人らは到達出来なかった」

召喚士「はい。やはり普通は有り得ない事なんです」

サモナー「それを召喚士君は、奇跡的に為し得たわけだ」

召喚士「ええ。予め白虎召喚獣を所有しながら、別の精霊召喚獣を得たんです」

サモナー「そこで不自然が生じたわけだ。結果、それによって道は拓けた」

召喚士「はい。1つの属性のみではなく、全ての道が拓けたんです」

サモナー「そしてそれは君の父である白虎次男さんが成し遂げた……」

召喚士「人間が召喚獣になる……という事です」

サモナー「やはり間違っていなかった。人も召喚獣も……命は繋がっているんだ」

召喚士「……はい。サモナーさんの言う通りでした」


423 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 17:57:14.09 ID:oWvJAaLEo
テクテクテクテク

戦士「飲み物持って来たぞー」

盗賊「……ついでに夜食も。もぐもぐ」

魔道士「ありがとうございますっ、えへへ!」

召喚士「サモナーさんもどうぞ」

サモナー「あ、うん。ありがとう」

戦士「そんで、話はまとまったのか?」

サモナー「うん。やっぱり研究は間違いではなかったんだ」

召喚士「ただ、それはあくまでも禁呪です」

サモナー「……確かに、そうだね」

召喚士「父は死の寸前、止む無く召喚獣となりました」

盗賊「……」

召喚士「それも良いとは思いませんが……」

サモナー「普通の人間が召喚獣になるなんて、それは人の業……かな?」

召喚士「だから俺は、止めなくちゃいけないんです」


424 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 18:00:17.73 ID:oWvJAaLEo
サモナー「止める?」

召喚士「父の残した資料を、手にした人間がいます」

サモナー「それってまさか……」

魔道士「……神官さんっ!?」

召喚士「ええ。神官さんはそれを元に何かしようとしています」

盗賊「……確か彼は……召喚獣の研究を」

召喚士「……はい。古の召喚獣……アヌビスの研究です」

戦士「おいおい……っ、まさかアヌビスの研究にそれが……」

サモナー「そうか……っ! そういう事だったのか……!」

魔道士「……?」

サモナー「アヌビス。それは、己の命を犠牲にして召喚獣となる事……だね?」

召喚士「俺も全く同じ予想です。神官さんは研究の末、それを突き止めた」

戦士「それで女侍達に依頼をして、その資料を探させたのか!」

魔道士「それってまずいじゃないですか!」

召喚士「……神官さんは自分の命を犠牲にするつもりです。絶対に止めなくては」


425 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 18:01:21.59 ID:oWvJAaLEo
盗賊「……何て事を……っ」

サモナー「……分かった。その役目、僕が引き受けよう」

召喚士「……」

サモナー「彼は今、何処に? 西国かな?」

召喚士「神官さんは三日月島にいます」

サモナー「三日月島……か。よし、明日にでも訪ねてみよう」

召喚士「いいんですか?」

サモナー「うん。こういった事でした力になれないからね」

召喚士「……じゃあ、お願いしてもいいですか?」

サモナー「任せてくれ。何かあったらワークショップ経由で連絡するよ」

召喚士「ありがとうございます。それじゃ、お願いしますね」

サモナー「ああ。おっと、時間を取らせてしまったね。そろそろ……」

魔道士「あっ、そうですね。私達も戻りましょうか」

召喚士「……ええ」

サモナー「それじゃ、みんなも頑張って……いや、生きてまた会おう」


426 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 18:02:18.52 ID:oWvJAaLEo


サモナー「……」

マーメイド「次は、三日月島って所へ行くの?」

サモナー「あ、うん。本国からはそう遠くないはずだよ」

マーメイド「……」

サモナー「な、何?」

マーメイド「サモナー。貴方……何か考え事してない?」

サモナー「うーん。まぁ何ていうか……召喚術の研究も色々と――」

マーメイド「嘘」

サモナー「……」

マーメイド「……絶対に、勝手な真似はしないでね」

サモナー「マーメイド……」

マーメイド「貴方には貴方の、ちゃんとして人生があるんだから」

サモナー「……ああ、分かっているよ。マーメイド」

マーメイド「……」


427 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 18:03:21.34 ID:oWvJAaLEo


ザッザッザ

戦士「大丈夫かね、サモナーさん」

魔道士「何がですか?」

戦士「いや……なんか企んでるんじゃねーかと思ってよ」

召喚士「……」

盗賊「……あ奴には生き甲斐がある。下手な真似はせんだろうさ」

召喚士「……」

戦士「余計な心配だわな。それよりも俺らは俺らの心配をせんとな」

魔道士「召喚士さん、魔力はどうですか?」

召喚士「えっ、ああ……微々たるものですけど、少しずつ戻ってますよ」

魔道士「良かったぁ……っ!」

戦士「そんじゃ今日はゆっくり寝て、朝一で南方へ向かうぞー!」

魔道士「おーっ!」

盗賊「おー」


428 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/08/18(木) 18:05:03.27 ID:oWvJAaLEo
〜ホテルの部屋〜

召喚士「……ふーっ。サッパリした。戦士〜」

戦士「ぐごーっ」

召喚士「もう寝てる……。珍しいなぁ」

テクテクテク

召喚士「ふー」

召喚士はベッドへ腰を落とし、窓から夜空を眺め、物思いに耽る。

本当に三日月島へ、サモナーを行かせて良かったのかどうか。

おそらくサモナーは白虎次男の残した研究資料を欲している。

確信はないが、召喚士はそう思えて仕方がなかった。

それは何故か。答えは至極簡単。召喚獣になる事が出来るからだ。

サモナーが召喚獣になる事を望んでいるか否か。明白であった。

全てはマーメイドの為。人間として残り僅かとなった命を天秤にかければ、

その選択肢は選択するにも及ばないのかもしれない。しかし止める権利はない。

召喚士はサモナー自身の意思にそれを委ねた。彼が自身で答えを出す為に。



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