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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その40
242 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:27:44.62 ID:mBz8BlVAo


召喚士「……う……っん」

 ピチョン ピチョン ピチョン

召喚士「……?」ノソッ

 真っ暗な闇。身体に突き刺さる空気は洞窟のような感覚に近い。

 しかし呼吸は乱れ、まるで雲上の標高へ居るかの如くであった。

召喚士「ここが……」

 起き上がりながらつぶやきかけた瞬間、召喚士は何かの声を聴いた。

召喚士「……行けっ、サラマンダー」

 シュイイィィィィン ボウッ!!

サラマンダー「なんや――」

召喚士「しっ! 静かに!」

サラマンダー「……」

召喚士「こっちだ」

 息を潜めてこきゅうをするような音。誰か居る。そう確信した召喚士はその方向へ走った。


243 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:28:35.47 ID:mBz8BlVAo
 タッタッタッッタッ

召喚士「幼女ちゃん!」

幼女「!! 召喚士さん……っ」

召喚士「大丈夫!? えっと、他のみんなは……」

幼女「分からない……。私だけ」

召喚士「……そっか」

サラマンダー「なぁ、あそこにも誰かおるでぇ」

召喚士「!?」

西方司令「あん? 朱雀じゃねぇか」

召喚士「西方司令さん!」

西方司令「他の連中はどしたぁ?」

幼女「分からないの。みんな、バラバラみたい……」

召喚士「探しましょう。このままでは危険です」

西方司令「しっかしこの暗闇じゃーなぁ。どこをどう進みゃいいんだか」ポリポリ

召喚士「……ひとまずここを起点に、真っ直ぐ行ってみましょう」


244 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:29:04.81 ID:mBz8BlVAo


魔道士「……うぅ」

男隊員「生きてっかー?」

魔道士「……男隊員さん……っ」モゾッ

弓使い「地獄へは来たみたいだけど、みんなはぐれちゃったみたいね」

白虎長「何の為に編成したんだか、全く……」

男隊員「とにかく合流すんぞ。なにかあってからじゃ遅せぇからな」

魔道士「はいっ」

 タッタッタッタッタッ……

魔道士「あっ!!」

賢者「……ふぅ」

名代「魔道士殿、一体ここは……地獄なのですか?」

男隊員「紛れもなくな。少し走っただけで息苦しい。どう考えても地上とは別世界だ」

白虎長「そうね。何だか空気も重たいっていうか、気持ち悪い感じだし……」

弓使い「2人だけ、ですか?」


245 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:29:39.14 ID:mBz8BlVAo
賢者「そうだね……ふぅ」

名代「上様は……」

魔道士「きっと無事ですよ! 探しに行きましょう!」

 全員が無事、地獄へと辿り着きはしたものの、その着地点は様々で、

 各自が何とか、他の誰かと合流しようと躍起に探し回っている状況であった。

戦士「くっそ……どっちに進めばいいかサッパリだ」

朱雀嬢「とにかく、歩くしかありませんわね……はぁ、はぁ」

帝「地獄とは、こんなにも空理が重いものなのか……」ザッ

 はたしてどれ程歩いたか、どのくらいの時間を費やしたかも分からぬまま。

盗賊「……気配はない」

ジュニア「んじゃ、こっちに行ってみっか」

美女「もぉ〜まだなの〜?」

火の先生「つべこべ言わず歩かぬかっ」

剣士「他の皆も無事ならいいんだけど……」

青年兵「ええ」


246 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:30:08.65 ID:mBz8BlVAo
 サラマンダーの明かりを頼りに、召喚士らは真っ直ぐ真っ直ぐ、闇を進んでいた。

召喚士「!?」

青龍士官「朱雀先生!?」

サモナー「良かった。でも、これだけか」

召喚士「ええ。何とか微かな明かりと音で判断してここまで来たんですけど」

青龍士官「召喚が出来るという事はまだ、結界内にいるみたいですね」

召喚士「うん。俺もサラマンダーをだせてるからそう思うよ」

 バシュウウゥゥゥゥ

ワイバーン「いたぞ。この先に4、5人程の人間が集まってる」

青龍士官「よし、ではそこへ合流しよう」

召喚士「そっか。召喚獣で探索を……」

サモナー「うん。マーメイドにもお願いしてるよ」

召喚士「だったら俺も……」

サモナー「召喚士くんは温存しておいてくれ。きっと君の力が要になるはずだから」

召喚士「……はい」


247 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:30:50.93 ID:mBz8BlVAo
 しばらく経ったのだろうか。ほとんどの者が1か所に集まっていた。

魔道士「無事に合流出来て良かったです〜!」

青年兵「あと不在なのは……」

白虎長「大軍師と戦士父さん、それにボスと南方司令ね」

水の先生「無事ならいいんだけど。やられたなんて事はないよね」

アマゾネス「不謹慎な事を言うものではないぞ」

魔法剣士「交戦の気配はない。きっとどこかに居るんだろう」

戦士「探すっきゃねぇ。サタンと鉢合う前にな」

青年兵「ですね。行きましょう」ザッ

召喚士「……不思議な所だなぁ」

玄武娘「何がですの?」

召喚士「周囲に障害物を感じない。壁がないんですよ」

剣士「確かに。空気が真っ直ぐ流れていて、障害物がないね」

召喚士(明かりがない限り状況が分からない。広い場所なのか? それとも……)

 周囲をきょろきょろと警戒しながら、召喚士は皆の後に続いて進んで行った。


248 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:31:56.88 ID:mBz8BlVAo


ボス「……はぁ、はぁ……はぁっ」

大軍師「大丈夫ですか?」

ボス「あんたらよく、平然としてられますね……っ」

戦士父「いや、きつい事はきついぞ」

南方司令「特に、先へ進めば進むほど苦しくなってくるな」

大軍師「……」

戦士父「どうした、行くぞ?」

大軍師「何かおかしいと思いませんか?」

ボス「どういう事ですか?」

大軍師「我々は何故、ここを真っ直ぐ進んでいるのでしょうか」

南方司令「他の者と合流する為だろう」

大軍師「いえ、そうではなく……ルートは幾らでもあるはずなのに何故」

戦士父「自らの意思だぞ? まさかそれが敵の罠だとでも言うのか?」

大軍師「分かりません。ですが、何かがおかしい事は確かなのです」


249 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:32:50.50 ID:mBz8BlVAo
 大軍師の言葉は不自然であったが、間違いでもなかった。

戦士父「大軍師の言う通りかもしれん」

ボス「……?」

 自分の足で進んできたはずの道であるにも関わらず、理由がない。

 何故この道を選んだのか、この方角を選んだのか。説明が付かないのだ。

 あてもなくただフラフラと散策し、思いもがけぬ場所へ行き着くなんて事はよくある話だ。

 しかしそれとこれとは違う。まるで何かに導かれるが如く、進んでいるのだ。

大軍師「……引き返しましょう」

南方司令「何?」

ボス「引き返すったって、どこに行くんです!?」

戦士父「引き返す事こそ敵の罠かもしれないぞ」

大軍師「ですがやはり、何かがおかしいのです。経験則からの独断ですが」

南方司令「まぁ、大軍師の判断に誤りがあるとは考えにくいのも確か」

戦士父「引き返すか」

大軍師「ええ。そう致しましょう」


250 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:33:46.32 ID:mBz8BlVAo
 引き返すという選択肢を実行に移した事は大軍師の洞察力と精神力の賜物。

 結界という僅かな希望に区切られた領域を手さぐりで探すには、

 暗闇の中という恐怖心と、誰かが一緒だという安心感が冗長して、

 来た道を戻るという選択を引き出す事はなかなか容易ではないものだ。

 だが、4人にとって折角引き出したその選択も、無駄なものであった。

戦士父「……?」

 ズウウゥゥゥゥン

南方司令「何……だっ!? 足が重い――」

ボス「――――っ」

大軍師(これは敵の攻撃かっ? 動きを封じられた挙句、声が発せられない……っ!)

戦士父(いつだ、いつ攻撃を浴びせてきた? そんな素振りはなかったはずだ)

 スローモーションのように流れるその光景。全員が誰かを助ける事はおろか、

 自分自身がその攻撃らしきものから逃れる事すら困難であった。

大軍師(何とか風で……押し出すっ)

 もがく大軍師の耳元に幻聴か、はたまた何かブツブツと声が聞こえ始めた。


251 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:34:19.48 ID:mBz8BlVAo
――「やめておきなさい。そんな事をすれば死にますよ?」

大軍師「!?」

戦士父(敵か!? いやこれは……)

 他の3人を見てようやく、自分も身体が宙に浮いているという事に、各々は気付いた。

ボス(くっそぉ……っ!!)

――「諦めろよ。俺はお前だ。お前は俺に従えばいいんだ」

 声の主は自分であった。これも不思議な表現であるが、まさしく自分の声であった。

南方司令(……憑依か)

 この時、ボスを除く3人はその声の正体を憑依と判断。

 憑依には2通りのパターンがある。1つは生者に対するもの。もう1つは死者に対するもの。

 今回の場合は前者だ。生きているものに憑りつきその心身を乗っ取るのだ。

 つまり憑依は心の中に隙を作り、そこへ入り込む事で対象を意のままに操る。

 かつて天才が魔道士の夢魔を救ったように、精神に依存するところが大きい。

 一同は同時に、憑依を防ぐべく威圧を放ち、精神を統一すべく心構えた。

 が、それは既に布石にすぎず、4人は次なる攻撃へと晒される事となる。


252 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:34:49.48 ID:mBz8BlVAo
戦士父(……!?)

 グググッ

 身体に違和感を生じる。宙に浮いた段階で自分の意思とはかけ離れているが、

 更に四肢が自分の思うように動かない。動いていないわけではない。勝手に動くのだ。

ボス(――っ!!)

 無論、混乱をきたす。しかし声を出せない今、叫びすら発せられない。

大軍師(幻術……? いや違う、これは全て実際に起きている出来事か……っ)

 こうなるともう、どうする事も出来ない。ただ為すがままに攻撃を受けるのみだ。

 やがて4人は、憑依していた影に取り込まれるかのように、宙へと浮いたまま、

 黒い球体となって、ゆらりゆらりと上空を彷徨った。

 タッタッタッタッタッ

召喚士「今こっちで何か感じたっ!」

盗賊「間違いない。一瞬だが、人の気配を感じたぞ」ズザッ

ジュニア「……誰もいねぇぞ」

召喚士「……」


253 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:35:19.10 ID:mBz8BlVAo
白虎長「ねぇっ、あれ……何かしら?」

 指差す先に浮かぶ黒い球体。一同が一斉に、その怪しげな光景を目にする。

魔法剣士「魔物? いや、何か変な感じだな」

名代「ん? なんだろう……身体が重い……」

 ズウウウウゥゥゥゥン

戦士「んなっ――」

 周りの全てがスローになる。平常なのは頭の中だけだ。

 青龍士官が何か叫んでいる。しかしそれは誰の耳にも届かない。

 召喚士は咄嗟に感じた。これは敵の攻撃であり、似たような経験をした事があったからだ。

 シュイイィィィィン

 音もなく召喚獣ノームが呼び出されていた。音を消したわけではなかった。

 召喚士は確かにいつも通り、召喚の声を叫んでいたのだが、叫べなかった。

 ノームの効力により身体が軽くなると同時に、召喚士は次なる召喚を行う。

 召喚獣シルフ。シルフのその力により、声を瞬時に取り戻した。

召喚士「ぷはぁーっ!!」


254 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:35:52.23 ID:mBz8BlVAo
 災難の手は止まらない。召喚士の耳元で召喚士の声が囁く。

 だがその声はほんの一瞬で消失する事となる。召喚獣サラマンダーの存在だ。

 サラマンダーの能力として、憑依状態の解除がある。

 既にサラマンダーを召喚していた事は幸いであった。憑依攻撃を無効としたのだ。

 召喚士は初めて災難の後手より切り抜けた。同軸に並んだ。

 そして更に召喚士は、災難の先手をいくという行為を成し遂げて見せたのだ。

召喚士「行けっ! ウンディーネ!」

 確証はなかった。だが可能性はあった。ノーム、シルフ、サラマンダー。

 3体の基本精霊が打ち破る事の出来る攻撃が自身に加えられている。

 だからこそウンディーネの能力で破る事が出来る、変化攻撃があるのではないかと。

 考えたわけではない。身体が自然とそう、動いていた。そして予感は的中する。

 災難が降り注ぐ前に、変化の攻撃はウンディーネにより打ち消された。

 黒い4つの球体が人の姿へと戻り、その場に落ちたのだ。

召喚士「!?」

 同時に闇の空間は、青白い光に照らされて、1つの世界を示し始めた。


255 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:36:39.67 ID:mBz8BlVAo
 ゴ……ゴ……ゴ……ゴ……ゴ……ゴ……ゴ……ゴ……

男隊員「う……っげぇ」

 押しつぶされそうな重圧が一同を襲う。身構える事すらやっとである。

青年兵「……っ」

 今まで何体もの魔王と、何度も戦ってきたからこそ分かる事もある。

王子「次元が違う……こんな事……が……っ」

 力や威圧だけで言えば恐らく、魔王イブリースが最も強かったであろうか。

 だがそれこそを遥かに凌駕する存在感。それが魔王サタンであった。

魔道士「う……あぁ……ぁ……っ」

サモナー「これがサタン……か」

 死を覚悟した。誰しもが。到底、勝ち目が見出せない。勝つ術が思い浮かばないのだ。

 だが男は1人、果敢にも前へと足を進めた。恐怖はあるが、死は乗り越えた。

召喚士「……魔王サタン。貴様を倒しに来た!!」

サタン「……ほぉ」

 長い1日が今、始まった。


256 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/07/10(火) 18:38:00.95 ID:mBz8BlVAo


 召喚士「行けっ!コカトリス!!」

      〜第六十三部〜



260 名前:NIPPERがお送りします(大阪府) [sage] 投稿日:2012/07/10(火) 18:58:04.54 ID:n7XiA62Ro
>>1乙 
召喚士が活躍している・・・?


261 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/07/10(火) 19:14:04.82 ID:kClt+US10
あの超チョイ役がよくもまあここまで成長したな…


262 名前:NIPPERがお送りします(長屋) [sage ] 投稿日:2012/07/10(火) 19:19:31.00 ID:7O+REGB1o
まぁ、主人公だしな
最後に美味しい所は全部かっさらって行くのだよ


263 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/07/10(火) 19:28:16.17 ID:X8N2NIDZo
>>1乙!
基本召喚獣の効果が活躍してるとか胸熱だな



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