■戻る■ 下へ
少年「そうだ!天使を見つけに行こう!」僧侶「私もお伴します」
- 120 名前:深夜にお送りします []
投稿日:2013/07/17(水) 18:09:40 ID:ZeIzH8l.
今日こそは投下し切りたい
いきます
- 121 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 18:10:50 ID:ZeIzH8l.
髭面「なんてこたあねぇ。ただの山だぜ」
深夜の激闘から夜明けを迎え、引き続き魔物の討伐を行うために山へ入った一行だった
魔術師「今のところ、なにかの呪物の気配を感じたことはない」
「ただ、先程までの魔物の気配は色濃く残っているがな」
僧侶「やはり魔孔が…?」
魔術師「ああ、開いている。それも二つもだ」
羽兜「ふ、二つもか!?そりゃあ、多いはずだ」
魔術師「しかもまだ成長している。早期で発見できたのは僥倖だった」
戦士「どちらにあるか、分かるか?」
魔術師「蛇の道は蛇ってな。任せておけ。一つはもうすぐだ」
魔術師が言った通り、魔孔が見つかった
- 122 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 18:19:25 ID:ZeIzH8l.
魔孔は本当に孔があるわけではない
便宜上それが適切だと判断され、そう呼ばれている
では、実際の魔孔とは?
それは空間の穢れ、不浄である
空間の穢れは、増大すればこちら側の世界の物質を、次々と侵食していく
侵食されればどうなるか?
簡単にいえば、尋常な生き物は住めなくなってしまうのだ
土地は毒に覆われ、植物が瘴気を出し、空気は汚染されてしまう
一度そうなってしまえば、数十年、あるいは数百年の地鎮を行うことで、ようやく正常に戻る
魔物を、魔孔を恐れる理由がこれだった
- 123 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 18:27:51 ID:ZeIzH8l.
僧侶「こ、これは…!」
髭面「こいつは、ひでぇ…」
あまりの光景に絶句する
規模こそ大したことはないが、既にかなり侵食が進んでおり手遅れだった
魔術師「ヤバかったな。これ以上放置していたらどんな怪物を呼び込んだことか」
羽兜「位置の記録は出来たかい?」
女盗賊「誰に向かって言ってんの?当然完璧だよ」
戦士「俺達にできることはこれだけだ。次の場所を……」
僧侶「ちょっと待っていただきたい。私に任せてもらえないでしょうか」
傷顔「あんた…払えるのか?もしかして…」
僧侶「ここまでの進度です。完全には不可能でしょう」
「ですが、これ以上侵食を進ませないようには出来るはずです」
そう言って、聞いたこともない呪文を、独特の作法で儀式を行なっていく
- 124 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 18:35:15 ID:ZeIzH8l.
魔術師「おおおお…凄い…これが浄化……。初めてお目にかかった…」
僧侶の浄化は無事成功し、感じていたプレッシャーが減ったような気がした
僧侶「これで一応の応急処置は出来たと思います」
「完全に払うには何年も、そして何人もの人が必要でしょう」
戦士「よし、じゃあ次へ急ごう。僧侶さん、次もお願いしていいですか?」
僧侶「もちろんですとも。任せて下さい」
魔術師「上の方だ。もしかしたら山頂付近かもしれない」
髭面「いやぁ、凄いもんなんだなぁ。なああんた、東の国の出だろ?」
羽兜「ああ〜。そういえば見たことのない服装だな」
僧侶「ええ。そうですよ」
- 125 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 18:51:36 ID:ZeIzH8l.
髭面「するってぇと、あの『帝都の魔人』の生まれ故郷か?」
「そりゃスゲーのも納得できるぜ」
傷顔「『帝都の魔人』か…。良くもあんな怪物が生まれたものだ」
羽兜「あいつが名を馳せてから何年だ?」
戦士「六十年だよ」
魔術師「ほとんど妖怪だな。しかもまだ現役ときた」
僧侶「……」
羽兜「二十五年前の邪竜騒ぎ。アレを対峙したのも魔人だからな」
髭面「まさに魔人!人に非ず!」
羽兜「僧侶さん、あんたの出身国なんだろ?なんか魔人のことで知ってたりすることってないの?」
僧侶「……申し訳ありませんが、その事について語る口を持たないのです…」
髭面「ああ?どういうこった?」
戦士「お国の問題があるんだろう。無駄口はそこまでにしてくれ」
「到着したそうだ」
- 126 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 19:39:42 ID:ZeIzH8l.
そこは、先ほどの魔孔よりも侵食が進行しており、近寄るのでさえも困難に見えた
魔術師「これはマズイ。非常にマズイ」
戦士「どうした?魔術師どの」
魔術師「孔を通って何かが現界してくるぞッ!」
戦士「なっ!?伏せろォォォーーッ!」
空気がググッと圧縮し、次の瞬間、瘴気をまき散らしながら爆発した
間一髪で地面に伏せたため、全員すんでのところで被害はまぬがれたようだ
――グロロロロロロロ………
魔術師「こんな、まさか……ミノタウロス!?」
牛頭の怪物は、人間の倍ほどもある戦斧を手に持っていた
- 127 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 19:55:54 ID:ZeIzH8l.
牛頭は、人の姿を見つけると、大戦斧を力任せに打ち落とした
あまりの重さと力に、土が舞い上がる
髭面「おい!どうする!?殺るか!」
羽兜「いやいや無理だろ!今の見たか!?」
戦士「いや、殺るしかなさそうだぞ!逃がしてはもらえないみたいだ!」
第二撃が地面をえぐる
魔術師「大魔術で一気に片を付ける!俺を守ってくれ」
そう言って詠唱に入る魔術師
髭面「うおおおおお!チックショー!やってやらぁぁぁぁ!」
怪物との戦いが始まった
- 128 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 20:05:29 ID:ZeIzH8l.
戦士「足だ!足を狙え!」
曲刀、戦斧、大刀、大剣が、足元を動き回りながら斬りつけていく
さすがの熟練者達で、いかに大怪物といえど安定した立ち回りを演じていく
しかし、それを巨体を活かした力任せの攻撃で跳ね除けていく
ピシュッ!
ナイフが空を裂き、牛頭のふくらはぎへ突き刺さる
女盗賊「ちょっと、アタシを忘れないで貰いたいね」
思わぬ傷に、いきり立ち突撃してきた
戦士「女盗賊、避けろ!!」
女盗賊「ったく…見るからに脳みそまで筋肉でござい、って姿してるな…」
目に向かってナイフを投げつけた
見事に命中し、巨体がよろめいた。それでもまだ女盗賊へ猛進している
僧侶「ハッッッ!!」
気合とともに、牛頭の側頭部を蹴り抜いた
- 129 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 20:12:33 ID:ZeIzH8l.
強力な一撃で、ついに牛頭の足は止まり、ドウと倒れた
女盗賊「念の為だ、もう一個の方貰っておくよ!」
ダメ押しに、残った目に向かってナイフを投げつけ命中させる
――グォォォォオオオオオッ!!
痛みのあまりにのたうち回る
戦士「チィ…これだけしたのに、まだ来るのかよ…」
両の目を潰されたことで逆上したのか、やたらめったら大戦斧を、巨木のような腕を振り回している
木が次々となぎ倒されていく
戦士「女盗賊!もう一度足を狙ってくれ!」
女盗賊「あいよ!」
三発続けて投げつける
- 130 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 20:19:28 ID:ZeIzH8l.
痛みに更に怒り狂い、今まで以上の力で大戦斧を、ナイフが飛んできた方向に叩きつけた
戦士「せぇぇぇーーーのぉおおおおッ!!」
大振りになり、大戦斧が足元から離れたところを狙っていたのだ
四人の武器が一斉に牛頭の足を襲う
――ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
雄叫びを上げて膝から崩れ落ちた
もう、動けないだろう
傷顔「魔術師!まだか!」
魔術師「待たせたな!みんな!離れてくれ!!」
- 131 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 20:22:44 ID:ZeIzH8l.
牛頭の頭上に現れたのは巨大な火球だった
それが落ちていき、着弾した
周囲を焼きつくすような火柱が上がる
――ブォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!
牛頭の断末魔だろう。周囲に木霊していく
牛頭を焼き尽くした火柱は、徐々に収束していき、後に何も残さず消え去った
山火事になるかと肝を(密かに)冷やしていた戦士は、その様子に驚いていた
戦士「魔術ってのはそういうことも出来るのか……お見事、魔術師ど…」
称賛を贈ろうと魔術師の方へ顔を向けると、バッタリと倒れていた
それを傷顔が介抱している
傷顔「まだまだ若造なんでな、デカイの一発やるとすぐ枯渇しやがる…」
「だが、良くやった」
あまり表情は動かなかったが、わずかに誇らしげだった
- 132 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 20:28:07 ID:ZeIzH8l.
先ほどの魔孔より念入りに浄化を行い、一応の沈静化を見せた
夜中から戦い詰めだったため、帰りはふらふらしながら下山していった
ふもと、村へ帰還すると、村人が総出で出迎えてくれていた
どうやら居残った仲間が事情を説明していたらしい
すぐに手厚い看護を受け、それぞれ用意された部屋で泥のように眠った
目を覚ますと、小奇麗な衣服を受け取った。これに着替えるそうだ
着替え終えると、村人に案内され、村長の元へ案内された
- 133 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 20:35:25 ID:ZeIzH8l.
村長「冒険者の皆さん…本当にありがとうございます…!」
「あなた方に感謝を伝えるべく、宴を一席設けました…存分に堪能してくだされ!」
ワッ!と賑やかになる
どの顔も晴れ晴れとした笑顔をしている
出された料理も豪華…とまではいかなかったが、色とりどりの料理が並んでいる
飢えた身体には持って来いのボリュームだった
酒、歌、踊り、音楽
疲れた身体に染み渡る数々な催し物に、一同は酔いしれていた
- 134 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 20:37:33 ID:ZeIzH8l.
酔った戦士が少年に話しかけた
戦士「おー!少年、楽しんでるかー!」
少年「戦士さん。ハイ。なんだかすごくって、圧倒されてます」
戦士「ん?こういうの初めてか?」
少年「お祭りは初めてじゃないんですけど、なんていうか、雰囲気?」
「なんだか凄く清々しくて…」
戦士「…ああ、感謝されて、人の笑顔を見て食うメシは、うまいよなぁ」
「分かるぜ、その気持ち」
戦士「その感覚を持って初めていっぱしになれるんだ。あんたは今、ようやくいっぱしの冒険者になれたのさ」
少年「いっぱしですか?」
戦士「そうさ。ほら、見てみろ。この村の人達の顔を。みんなうれしさに溢れてる」
「その顔にしたのはあんたなんだぜ。いや、精確には俺達、だけど」
少年「僕達……」
戦士「俺達みたいな無頼者があんなにも嬉しそうな顔に出来るんだ…これぞ冒険者冥利につきるってやつだ」
「俺はこれが見たくて冒険者をやめられない」
- 135 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 20:47:45 ID:ZeIzH8l.
少年「でも、僕は途中で怪我しちゃって…役に、立てませんでした…」
戦士「ハハハハハ!そう落ち込むな!誰だって怪我すればああなるさ」
「だが、その後援護してくれたじゃないか。痛みを堪えて助けてくれたじゃないか」
少年「でも!」
戦士「そう自分を卑下するな。評価してる俺が居た堪れなくなってくる」
少年「え…?」
戦士「技術や経験は確かに足りない。でもな、一番大事なのは心だ。心根の良さなんだよ」
「君はクエストで受ける時、周りが怖がって躊躇していたのにクエストを受けようとしていたな?」
戦士「自分も怖いと、不安と想っていたのに。僧侶さんの後押しがあったとはいえ、君はそれを選択したんだ」
戦士「そして、自分が怪我をしてても、仲間のために頑張ろうとしていただろ?」
「そんなこと、中々出来るもんじゃない…」
戦士「君は勇気がある!誇っていい!君はきっとあの赤髪をも超える、偉大な冒険者になる!」
少年「あ、あの…。酔ってます?」
戦士「酔ってない!よっってないぞぉ!」
- 136 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 20:50:09 ID:ZeIzH8l.
ピタリと今度は喋らなくなった
少年「あの、戦士さん?大丈夫ですか?」
戦士「…………ゲフゥ…」
少年「……酔っぱらいって、誰も似たようなもんなんだなぁ」
しばらく大人しくなったあと、ポツリと戦士が聞いてきた
戦士「少年、君はなんで冒険者になったんだ?」
少年「え?理由ですか?」
戦士「俺は赤髪に憧れてなぁ。十五の時、冒険者になったよ」
少年「僕は………」
戦士「どうした?」
少年「あの、笑いません?」
戦士「なんで笑う必要がある?ほら、言ってみな」
- 137 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 21:14:19 ID:ZeIzH8l.
少年「僕の故郷で…天使を……その、見たんです」
「でも、誰にも信じてもらえなくて、だから…その……」
戦士「見返したくて?」
少年「はい……子供、ぽい、ですよね……」
「天使なんて…伝説でしか、ないのに……」
戦士「……それは、僧侶さんも知って?」
少年「え?は、はい。知ってます」
戦士は密かに衝撃を受けていた
少年は、まさに自分が目指していた冒険者そのものだったのだ
弱気を助け、まだ見ぬ未知の世界を探求する
戦士はそれに憧れて冒険者になったのだ
しかし、彼は未だに目標を持っていなかった
その上、今時彼のような冒険者は殆どいなくて、パーティーすら組むことが出来なかったのだ
- 138 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 21:16:53 ID:ZeIzH8l.
各地を放浪して、戦士は様々なクエストをこなしていった
次第に名が売れ、ギルドの間では人気の冒険者になっていった
その名声に群がり、彼とパーティーを組もうとする人は増えた
しかし、彼と志を同じくする人物は、一向に現れることは無かったのだ
彼の下に来るのは、実力を当てにしたもの、自分の名を売ろうとする者ばかりだった
そんな連中ばかりを見てきた彼にとって、今眼の前に居る子供が、
自分が求めてやまないものを持っていることに衝撃を受けた
戦士「君は、天使を探しているのか…そうか、天使…」
少年「あの、その、は、はい……」
戦士「で、どんな姿をしていた?やっぱり伝説の通り?」
少年「はい………えっ?し、信じるんですか?」
戦士「嘘なのか?」
少年「ち、違いますよ!」
- 139 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 21:23:52 ID:ZeIzH8l.
戦士「俺は君が羨ましく思う。君は進むべき道を知っている…」
「俺には、それがない。見つけられなかった…」
少年「羨ましい、ですか?」
戦士「俺は赤髪に憧れてたって、話したよな?俺は彼のように神秘を解き明かしたかったんだ」
「だが、それには仲間が必要だった。彼のように…」
戦士「しかし、時代なんだろうな。俺が実力、知識共に充実してきた頃には、彼のような冒険者はいなくなっていた」
「もちろん、一人で探したこともあったが…あまりの過酷さに、断念してしまった」
少年「そう、だったんですか」
戦士「俺が甘かったんだ。慢心していた。たった一人で挑めるほど、神秘ってやつは優しくなかった…」
少年「………」
戦士「そこでなんだが…」
少年「はい?」
戦士「俺に、君たちの目的の手助けをさせて欲しい」
「それに、これは俺の夢でもあるんだ」
少年「え、え、えええええぇぇぇええ!?」
- 140 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 21:37:09 ID:ZeIzH8l.
少年「え、え、い、いいですけど…」
少年(出会った時もそうだったけど、唐突な人だなぁ〜)
戦士「ああ、ありがとう。俺にも、ようやく全てを掛ける目標が出来た……」
少年「でも、いいんですか?あてなんて殆どありませんよ?」
「北西っていう情報しか…」
戦士「大丈夫だ。探求ってのはそういうもんだ」
「むしろ、それでもやめようとしない君が凄いと思うね」
女盗賊「ちょっと。なに相談もなく勝手に話し進めてんのよ」
戦士「お?聞いてたのか?スケベだなぁ…」
女盗賊「どういう意味よ、酔っぱらい!」
- 141 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 21:47:00 ID:ZeIzH8l.
女盗賊「アタシは嫌よ。そんなガキとパーティー続けるなんて」
戦士「じゃあ、ここでパーティー解散か?」
女盗賊「グググ……あんたって本当こすい奴よね…ろくな死に方しないわ!」
戦士「お互い様だよ、盗っ人娘」
少年(この女の人苦手だなぁ…)
少年「僧侶さん、それでいいですか?」
僧侶「少年殿が決めたのなら、異論はありません」
戦士「ありがたい。……こんなに気持ちのいい気分は初めてだ!」
そう言ってダンスの輪に突撃していった
- 142 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 21:56:34 ID:ZeIzH8l.
女盗賊「……ガキ」
少年「ガキじゃないです」
女盗賊「師匠にそんな口聞いていいと思ってんの?」
少年「弟子入りした覚えはありませんよ!」
女盗賊「あの時私の技を伝授したじゃない。あれは私のところの秘伝なのよ」
「高弟にしか伝授されないの」
少年「で、でもあの時は……」
女盗賊「男なんだからつべこべ言うな」
「伝授されたってことは、その門派に入門しなければならないのよ。でないと…」
少年「な、なんです…?」
女盗賊「技術の漏洩と、悪用を封じるために殺さなくてはならないの……」
少年「そんな!僕が望んだわけじゃないのに!」
女盗賊「望もうが、望むまいが、あんたは既に僅かといえど覚えてしまったの」
「さあ、選びなさい。私の弟子になるか、命を絶つか」
女盗賊「言っとくけど、冗談じゃないから。そこのハゲも手出し無用よ」
「私は殺ると言ったらやるの。それが決まりなのよ」
- 143 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 22:01:00 ID:ZeIzH8l.
少年「…………どうしても、ですか?」
女盗賊「そうよ」
少年「分かりました……弟子に、なります」
女盗賊「そう……」
女盗賊はニンマリと意地の悪い笑みを浮かべた
女盗賊「じゃあ、これを持ちなさい」
少年「これ、ナイフですか?装飾が綺麗ですね」
受け取ったナイフは華美な装飾が施されていた
どうみても実用的なものではない
女盗賊「これは入門したものに、その証として贈られるの」
「なくしちゃダメよ」
女盗賊「それから、これからはあたしの事を師匠と呼ぶように。分かった」
少年「……はい…師匠……」
- 144 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 22:34:28 ID:ZeIzH8l.
僧侶「少年殿、まあそう気を落とされるな」
「彼女の技術は確かに非凡なものが見受けられます。ここはチャンスと思ったほうが…」
少年「う、うん。ありがとう僧侶さん。……そう、思うようにするよ…」
それから丸一日騒ぎ通しだった
よほど嬉しかったのだろう
翌日の昼に全員が起きだし、昼食が振舞われた
それを食べたあと、行きと同じようにギルドの馬車で帰ることになった
別れ際、随分惜しまれたが、特製のパン等のお土産を受け取って、泣く泣くわかれた
次へ 戻る 上へ