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少女「こんばんは、お兄さん。今日の夕飯はコンビニ弁当?」
39 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 06:29:57.54 ID:kjmLZtlq0
男「まったくあいつは、人が休んでるときにもー」

少女「あ、あの、ごめんなさいお兄さん。私が玄関開けちゃったから……」

男「少女ちゃんのせいじゃないよ。どうせ勝手に開けて入ってきてただろうし」

男「黒服ならそれぐらいやりかねん」

少女「……黒服さんって、何者?」

男「あいつはな……とっと」

少女「ちょ、お兄さんとりあえず布団に戻って! ふらふらしてる!」

男「そうだな。……っと、ありがと」

男「ああそうだ、忘れてた。少女ちゃん、塩まいといて」

少女「……それだけ元気があれば大丈夫かな」

少女「ちょっと待っててね、ついでにリンゴすってくるから」


少女「はい、どうぞ」

男「おう、いただきます……うん、おいしい」

男「で、黒服の話?」


40 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 06:37:27.24 ID:tvakrK0f0
この黒服の正体は俺と見た


41 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 06:39:21.01 ID:8OSxSz2q0
俺は黒服はテル先生だと思ってる


42 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 06:39:43.30 ID:kjmLZtlq0
少女「あ、その、お兄さんが話したくなければ……」

男「はは、なんだよ。初めて会ったときの強引さはどこに消えてるんだ?」

男「気にしなくても、別に話しにくい事じゃないよ」

少女「えっと……うん、聞きたい、かな」

男「よろしい。ま、よくある話だよ」

男「俺の家は代々続く医者の家系で、俺はその跡取り」

男「一応医大は出てるけど、親父のあと継ぐのがいやで飛び出したバカ息子ってわけさ」

男「さっきの黒服は親父の秘書で、俺の教育係でもあった奴だ」

男「頑固で融通きかないけどスゲー奴だったからな」

男「逃げ出した俺の足取りも追っかけてくるんだよ。何度引っ越しても」

男「で、今回もまた見つかっちまったてわけだ」

男「見つかったからってすぐに無理矢理連れ戻されるわけじゃないんだが、何となく嫌だから逃げ回ってるんだ」

男「我ながらガキっぽいとは思うけどな」


44 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 06:48:40.19 ID:kjmLZtlq0
少女「……お兄さんは、なんでお医者さんになるのが嫌なの?」

男「なんでかな。嫌なのは、医者になる事じゃないのかもしれない」

男「ある日、俺は医者をさせられる、って考えてしまってからはもうダメだったな」

男「やりたいことがあるんだ! って叫んで家を飛び出したのが2年前」

男「バイトを転々としながら何とかかんとかのその日暮らしだ」

少女「お兄さんのやりたかった事って、何?」

男「……さあな。やりたいことなんてなかったんだよ。ただの口実だった」

男「親父に縛られないことが、俺のやりたかったことなのかもしれない」

少女「だから病院に行くのを嫌がったんだね。つながりでバレるかもしれないから」

男「ああ」

少女「……お兄さんは、バカだね」

男「また随分だな。……まあ、そういわれても仕方ないか」

少女「そんなお兄さんにコレ、契約書」

少女「幸せになるお手伝い、させてもらえないかな?」


45 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 06:57:19.18 ID:kjmLZtlq0
男「このタイミングで出してくるのか、なかなかやるな」

少女「えへへ〜」

男「そういや君に何が出来るかってのは、具体的には聞いたことなかったな」

男「もし良ければ教えてくれるかい?」

少女「おっと、そんなこと聞いてくるなんて、さてはお兄さん心が揺れてますね?」

男「そうかもな。今なら落とせるかもしれないぞ?」

少女「えっとね、私が使える魔法はひとつだけ」

少女「前に話した通り、ビーム出したりとか悪霊退散とかそんなんじゃないの」

少女「人をほんのちょっとだけ幸せにする魔法」

男「そこまでは聞いたな」

少女「うん。とっても抽象的なの」

少女「実際に私の魔法がかけられた人のその後って、詳しくはわからないしね」

男「ふーん」

少女「ま、この辺はいいよね。進めるよ」


46 :VIPがお送りします [sage] :2009/09/23(水) 07:06:58.42 ID:j+uUDdet0
あ〜バイト行かなければ・・・
今まで楽しませてもらいました>>1さんありがと


47 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 07:09:35.29 ID:kjmLZtlq0
少女「私の魔法にかかるとね、少しだけその人の器が大きくなるの」

男「器……?」

少女「うん、心の器がね。たとえば、他人に対して大きな心を持てるようになる」

少女「運も良くなる。今まで取りこぼしてたあと少し、届かなかったあと一歩が届くようになる」

少女「あと、健康になる。心の器が大きくなると、その分丈夫になって壊れにくくなるから」

少女「心が丈夫になると、体もその分丈夫になる」

少女「もちろん今言ったのは全部ほんの少しだけだよ」

少女「幸せになるために一番必要なのは、本人のがんばりなんだってことは忘れないでね」

男「つまり、今までより少し心が広くなって、運が良くなって、健康になる、と」

少女「そう。でも、なかなか実感しにくいと思うけどね」

男「何を言ってるんだ、すばらしい魔法じゃないか!」

男「君は人にとんでもない力を与えることが出来るんだぞ」

少女「ほらほら、だからお兄さんもこの契約書にサインをだね……」

男「おおっと、そこはお互いに感動しとくとこだろ」


48 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 07:10:17.69 ID:kjmLZtlq0
>>46
こっちこそありがとー
いってらー


50 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 07:20:29.00 ID:kjmLZtlq0
男「うん、でも俺はいいよ」

少女「どして? お兄さん自分ですばらしい魔法って言ってくれてるのに」

男「何でかな。意地みたいなもんだと思う」

男「親に反発して家を出て、ずっとふらふらしてて……」

男「今まで育ててもらった恩も全部ほっぽらかし。別に親父のことが嫌いなわけじゃないのにな」

男「それなのになんの努力もしないでそんな力を手に入れるのは、反則だよ」

男「君が言ったんだぞ、結局モノを言うのは本人のがんばりだ、って」

少女「……そういう人にこそ、この魔法はかけたいんだけどなあ……」

男「まあ、魔法のことは保留しておいてくれよ」

男「まだ猶予期間は残ってるから」

少女「うーん、わかったよ。でも、看病だけはしっかりさせてね」

男「ああ、そこはお願いするよ」

少女「もう見つかったんだし、これ以上悪くなるようだったら遠慮なく病院に連れてくからね!」

男「しかたないな」


51 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 07:31:42.12 ID:kjmLZtlq0
男「完! 全! 復! 活!」

少女「いぇーい、復活ー!」

男「少女ちゃんの看病のおかげだ。ありがとな」

少女「いやいや、まあまあ……それよりお兄さん、バイト遅れるよ」

男「おおっとそうだった。ちょっくら行ってくるわ!」

少女「いってらっしゃ〜い、気をつけてね〜」

少女「さて、私は夕飯の買い物でも行こうっと」


少女「えーっと、快気祝いにいいもの何かないかなー」

黒服「お嬢さん、少し良いですか?」

少女「おおっとぉ! ……びっくりしたー。こんにちは、黒服さん」

黒服「おや、男様から私の話を?」

少女「うん、聞いたよ。何でも出来るすごい人だって」

黒服「それはもったいないお言葉。ですが、私はそんなに大した人間ではありません」

少女「謙遜するところもかっこいいって言ってたよ。ところで私に何か用?」

黒服「はい、少しお時間いただけたらと思いまして……」


52 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 07:42:16.02 ID:kjmLZtlq0
少女「それで、話っていうのは?」

黒服「もちろん男様のことです。将を射んとせば〜と言いますので」

少女「私はお兄さんの馬じゃないんだけどなあ……ここのチョコパフェおいしいね」

黒服「単刀直入に言いましょう。貴女から男様に実家に戻るよう口添えを願いたいのです」

少女「えー、それはどうかなあ。心にもないこというのは嫌だし、お兄さん聞かないと思うよ?」

黒服「貴女は男様の恋人ではないので?」

少女「ぶっ、なんでそういう話になるの!? 私の外見でそう見える?」

黒服「男様は昔から小柄な女性が好きでしたので、もしやと思いまして」

少女「そうなんだ……まあいいけど。私はただの居候で、お兄さんに何か言える立場じゃないよ」

黒服「居候……? まあ、貴女の身柄に関して追求するのはやめておきましょう」

少女「そうしてもらえるとありがたいかな。私はお兄さんに幸せになってもらいたいだけだから」

黒服「おや、それは私の目的と一致しますね」

少女「無理矢理にでも家に連れ帰るのがお兄さんの幸せだと?


53 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 07:53:34.03 ID:kjmLZtlq0
黒服「無理矢理連れ帰る気はありませんよ。事実、今までだってしていませんし」

少女「あくまでもお兄さんの意志で帰ってもらいたいって事?」

黒服「その通りです」

少女「じゃあさ、なんで連れ帰った方がお兄さんは幸せだと思うの?」

黒服「親元で暮らすんですよ? それで十分じゃないですか」

少女「う、それは正論だ。お兄さんも院長さんのこと嫌いじゃないって言ってたし」

黒服「院長も男様のことは愛しております。それは間違いありません」

少女「うん、黒服さんの言いたいことはわかったよ」

黒服「では、ご協力していただけますか?」

少女「ごめんなさいだけど、それは無理。言った通り、心にもないことは言いたくないし」

黒服「そうですか、それは残念です」

少女「じゃあ、私は行くね。夕飯の準備しなきゃ」

黒服「はい、お時間とらせてしまって、どうもすみません」

少女「いえいえ。じゃ、またね。ごちそうさま」



54 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 08:05:09.04 ID:kjmLZtlq0
少女「あ、おかえりお兄さん」

男「ああ、ただいま」

少女「すぐご飯出すねー。ちょっと待ってて」

男「おう、サンキュー」

少女「そういえばさ、今日黒服さんに会ったよ」

男「お、おおお?」

少女「私のこと、お兄さんの恋人か? だって。照れちゃうよねもー」

男「あいつは……。で、他に何か言ってたか?」

少女「お兄さんには、自分の意志で戻ってきてもらいたいって」

男「……そっか」

少女「説得、されてみる?」

少女「黒服さんから、お兄さんを説得してって頼まれたの。断ったけどね」

男「やめてくれよ、冗談きつい」

少女「ごめんごめん。ご飯入れてくるから、テーブル拭いてて」

男「わかった……ん? 何か落としたぞあいつ。写真?」


55 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 08:07:23.63 ID:kjmLZtlq0
むう、ダメだ眠い
仮眠とってまだ残ってたら続き書きます


61 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 09:12:04.70 ID:eRmgdF9uO
獣が空気だな


63 :VIPがお送りします [sage] :2009/09/23(水) 09:53:02.96 ID:hRt7APVCO
新感覚癒し系魔法少女!


73 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 13:00:08.23 ID:L7Ysy5eZ0
獣 フェレットぽいくせに
ダンディーだよなぁ


76 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 13:19:40.53 ID:kjmLZtlq0
おおお、残ってる!
保守してくれた人たちありがとう、そしておはよう
続き投下します


78 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 13:27:04.22 ID:kjmLZtlq0
男「おお、きれいな人だな。少女ちゃんに似てるけど、お母さんかな?」

男「にしては若すぎるなあ。かといってお姉さんにしてはちょっと年離れすぎな感じだし」

男「ま、年の離れた姉妹だっているし、若く見えるお母さんだっているか」

男「早いとこテーブル拭かないと、どやされちまう。布巾布巾っと」

少女「お兄さーん、準備できたー?」

男「ああ、いいぞー」

少女「よーし、じゃーん、今日の夕飯でーす!」

男「おおう、えらく豪勢だな」

少女「お兄さんの快気祝いだよー!お金のことなら心配しないで。獣ちゃんががんばって稼いだんだから」

男「へ?」

獣「…………」

少女「芸するフェレットっていう謳い文句でね、道ばたで」

男「うわあ、マジか。ありがとな、二人とも。嬉しいよ」

少女「えへへ」

獣「……うむ」


79 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 13:34:25.04 ID:kjmLZtlq0
男「ふう、ごちそうさま。おいしかったよ」

少女「おそまつさまでしたー」

男「あ、そうだ少女ちゃん」

少女「んあ?」

男「さっきコレ落としたよ」

少女「……! あ、ありがとう」

男「きれいな人だな。お母さんかお姉さん?」

少女「え、ええと、うん、そう」

男「ん? どっちだよw」

獣「姉だ」

男「ああ、お姉さんか。じゃあ将来は少女ちゃんもこんな美人になるんだな」

少女「……へへへ」

男「そんときに俺がまだ独り身だったら、恋人に立候補しようかな、なーんて……」

少女「…………」


80 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 13:43:13.25 ID:kjmLZtlq0
男「冗談だよ、冗談」

少女「あ、そうじゃなくて、嫌とかじゃないんだけど……なんて言ったらいいのかな……」

獣「我の目にかなうのなら、認めてやろう」

少女「ちょ、獣ちゃん!」

男「おっと、強力な保護者がいたか。こりゃ手強いぞ」

獣「厳しく審査するからな。覚悟しておけ」

男「ああ、それまで自分を磨いておくことにするよ」

少女「もー、二人とも、私の意志は無視!?」

男「ははは、悪い悪い。ついね」

獣「くっくっく」

男「さて、洗い物してくるよ」

少女「あ、それなら私が……」

男「いいって。そのかわり、お茶入れててもらえるか?」

少女「あ、うん。わかったよ」

男(さっきの少女ちゃんの顔、困ってるんじゃなくてなんか悲しそうだったな……)


82 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 13:57:04.90 ID:kjmLZtlq0
男(昨日の写真の件以来、なんか少女ちゃんの様子が変だな)

男(もしかして触れられたくない部分に触れてしまったのか?)

男(だとしたら悪いことしちゃったなあ、偶然とはいえ)

男(かといってまたこの話題振るわけにも行かないし、少し様子見るか……)

ピンポーン

男「お、客か」

少女「お兄さん、出るよ?」

男「ああ、お願い」

少女「はーい、どちらさま……あれ、黒服さん」

男「げっ、居留守使えば良かった」

黒服「こんにちは、お嬢さん。男様はいらっしゃいますか?」

男「……ああ、いるよ」

黒服「本日は院長からの言伝を預かって参りました」

男「……ま、とりあえずあがれよ」

黒服「…………よろしいのですか?」


83 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 14:09:16.63 ID:kjmLZtlq0
男「玄関先にこんないかついのおいておくわけにはいかないだろ」

黒服「では、お邪魔いたします」

少女「「私、お茶淹れてくるねー」

男「ああ、お願い。……で、親父からの伝言ってのは?」

黒服「検討はついているかと思いますが、男様に戻ってきて欲しいとのことです」

黒服「それともうひとつ。『やりたいことは見つかったか?』と」

男「…………っ」

黒服「院長は男様を大変気にかけておられます。いつ戻ってきてもいいように、準備は怠っていません」

黒服「男様が生涯をかけて出来る仕事を見つけることが出来たのなら、援助も惜しまないとおっしゃっていました」

黒服「ただ、一度でいいから顔を見せに戻ってきて欲しい、と」

男「…………」

黒服「男様」

男「……わかったよ。考えておく」

黒服「ありがとうございます」

黒服「こちらが私の連絡先です。いつでもお待ちしておりますので」


86 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 14:17:19.99 ID:kjmLZtlq0
少女「お兄さん、どうするの?」

男「ん? ああ、家に帰るって話?」

少女「うん、あんなに嫌がってたのに、どういう風の吹き回しなのかな、と思って」

男「……なんでかなあ。前にも言ったけど、別に親父のことが嫌いなわけじゃないんだ」

男「わけのわからない反発心で出てきたけど、俺にも里心がついたってことなのかな」

少女「黒服さんの話聞くと、どうも無理矢理お兄さんをお医者さんに、ってわけでもなさそうだし」

男「うん、まあ。ずっとそんな感じではあった」

男「やっぱり親父としては医者を目指して欲しいってのはあったはずだし、俺も昔はそれに応えようとしてた」

少女「そりゃ、嫌々ながらは医大は卒業できないよね」

男「そうだな。もしかしたら、遅い反抗期だったのかもな」

男「中学高校の時はそれこそ親に反抗する暇もなく勉強してたし」

少女「その反動で今、ってこと?」

男「かもな」

男「まあ、気が向いたらいっぺん帰ってみるのも悪くないか」

少女「そーだねー。私も家族は仲がいい方がいいと思うよ」


87 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 14:26:09.42 ID:kjmLZtlq0
男(あれから三日……)

男(どうしようかな、そろそろ連絡してみようかな……)

少女「お兄さーん」

獣「ここ数日、上の空になることが多いな」

獣「まあ、無理もないか」

少女「おーい、お兄さーん。バイトの時間だよー」

男「あ、ああ。そうか。んじゃ行ってくる」

少女「がんばってきてねー」

男(よし、今日帰ったら電話しよう)

少女「……大丈夫かな、お兄さん」

獣「まあ、心配事のたぐいではないからな。問題なかろう」

少女「そだね」

少女「さって、お兄さんが帰ってくるまでお掃除、洗濯、ご飯の準備〜っと」


88 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 14:37:02.00 ID:kjmLZtlq0
獣「……ここに来てから、随分と楽しそうだな」

少女「うん、とっても楽しいよ。お兄さんいい人だし」

少女「獣ちゃんもそうでしょ?」

獣「そうだな、ここは居心地が良い」

少女「でしょでしょー」

獣「久しぶりに『家族』を感じているのかもしれんな」

少女「そうだねー、なんかここにいるとほっとするよ」

獣「だが、若干長居しすぎたとは思う」

少女「……あー、それはそうかも」

少女「お兄さんが契約するにしろしないにしろ、あと一週間ぐらいかー」

獣「我らより、むしろ男殿の方に申し訳がない」

少女「……私たちは、慣れてるからね」

獣「まあ、それが我らの定めだ。出来ることを精一杯やるしかあるまい」

少女「だね。……とりあえずお掃除かな。ぃよいしょ、っと」

獣「…………」


91 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 14:50:23.72 ID:kjmLZtlq0
男「ふー、今日も一日よく働いた」

少女「おかえり、お兄さん」

男「おう、ただいま」

男「さて、黒服に電話するか……えっと番号は」

ピンポーン

男「ってだれだよ、こんな時間に」

男「はいはい、どちらさん…………いいタイミングだな。ちょうど連絡しようと……」

黒服「男様、一緒に来ていただけますか?」

男「何だよ急に。今からその段取りを立てようとしてたとこだぞ」

黒服「無礼は承知して、こんな時間にやってきました。急を要します」

男「……なにがあったんだ?」

黒服「院長が倒れました」

男「…………すぐ行く。車は?」

黒服「表にあります。もし良ければ、お嬢さんもどうぞ」


92 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 14:52:48.38 ID:mGxzdKQ+0
王道だな 支援だ


94 :VIPがお送りします [] :2009/09/23(水) 14:57:37.60 ID:kjmLZtlq0
黒服「少しとばしますので、気をつけてください」

男「ああ。……ところで、親父の容態は? 原因は何なんだ?」

黒服「……今現在、病院で手術中です。倒れたのは……脳梗塞で、です」

男「……っ」

黒服「現段階では何とも言えませんが、助かると私は信じています」

男(くっそ……ようやく会いに行く決心つけた矢先にコレか)

男(ぐずぐずしてないでさっさと帰ってりゃ……)

少女「お兄さん、大丈夫? 手つなごうか?」

男「おっ……と。ありがと少女ちゃん、ごめんな心配かけて」

男「うん、平気だ」

少女「きっと、大丈夫だよ」

男「え?」

少女「院長さん。大丈夫、ちゃんと会えるよ」

男「……そうだな」



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