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新ジャンル「囚人二人」
- 274 :231 []
:2008/10/19(日) 20:32:33.93 ID:8vnk+jCg0
男「よく人生の黄昏って言葉を聞くだろ?」
女「たまに聞きますね」
男「人生の黄昏ってのは少なくとも終わりがくる人間に使える言葉だ」
女「そうですけど、急になんです?」
男「俺はな、終身刑でここにいる」
女「……そう、ですか…」
男「無期懲役の俺は…いつ人生の黄昏が来るんだろうな」
女「人はみんないつかは死にます…だから男さんにも終わりはあります…きっと」
男「死してなお、罪に囚われるけどな」
女「そんな…悲しいこと言わないでください…」
男「それが俺の犯した罪の重さだ。だから仕方の無いことだと思ってる…うん、仕方の無いことだ」
女「………」
- 275 :231 [] :2008/10/19(日) 20:34:22.04 ID:8vnk+jCg0
男「さて、飯だ…いつもご苦労さん、看守」
看守「……あんたの罪は死んでも許されない…誰かが許しても俺が許さない…!」
男「ああ、それでいい…それで」
看守「チッ………この屑が…」
男「………」
女「…男さん、看守さんと何かワケ有りな感じでしたけど…?」
男「気にするな、お前には関係無いことだ」
女「……はいっ、これ!」
男「…なんだ、腕なんか伸ばして?」
女「みかんですっ! みかん! 特別に私のあげますっ!」
男「ッ……はは、ありがたく貰っておくよ」
女「そうするといいですっ」
- 276 :231 [] :2008/10/19(日) 20:35:33.81 ID:8vnk+jCg0
男「なあ?」
女「はい、なんですか?」
男「どうしてお前みたいな性格の奴が人を殺したんだ?」
女「それは……」
男「いや、無理に話せとは言わない。話したくないときは言わなくていいぞ」
女「……はい」
男「俺も…酷いこと聞いたな…ごめん」
女「大丈夫…です」
男「………」
女「………あの」
男「ん、なんだ?」
女「私が…私がここを出るときに教えますね」
男「……ああ」
- 278 :231 [] :2008/10/19(日) 20:36:49.52 ID:8vnk+jCg0
女「あっ! 男さん、外見てくださいっ!」
男「星、かぁ…」
女「えへへ…綺麗ですねぇ」
男「そうだな」
女「星って…ううん、星だけじゃない、太陽や月も! どんな人にも平等に輝きを与えてくれる、これって素敵なことだと思いません?」
男「…そんなこと考えたこともなかったな」
女「こんな小さな鉄格子から見える星でも、私には優しく微笑んでくれてる。そう思ってたりしてます」
男「俺には、微笑んでくれてるかな…?」
女「きっと男さんにも微笑んでますよ、きっと!」
男「だと、いいな」
女「はいっ!」
- 279 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 20:45:33.58 ID:im06Y2Jh0
>>274
細かいところを突っ込んですまないが「終身刑」と「無期懲役」は別物じゃなかったか?
- 280 :VIPがお送りします [sage] :2008/10/19(日) 20:47:18.18 ID:UPNRSRCL0
確かに無期懲役はただ詳しく表記されてないだけで出れる。
しかし脳内補正というのry
- 282 :VIPがお送りします [sage] :2008/10/19(日) 20:49:35.84 ID:A6MAb/bd0
まぁ細かいアラは言いっこナシなのが新ジャンルスレのマナーだしなー
- 283 :231 [] :2008/10/19(日) 20:56:50.91 ID:8vnk+jCg0
>>279
おぉ……すまない('A`)
調べながら書いてたつもりだったんだが、見落としてたな…
以後、注意するよ
- 285 :231 [] :2008/10/19(日) 21:09:06.23 ID:8vnk+jCg0
女「男さんは、もしここから出れたら何かしたいことはありますか?」
男「そういうことは考えないことにしてるんだ、考えるだけ虚しいからな」
女「もしですよ、もしっ!」
男「…そうだな…馬鹿だけど、どこか放っておけないくて…迷惑なほど性格の優しい女と付き合えればいいかな」
女「それって…」
男「ま、そんな女がいればの話だけどな…といっても、ここから出れるわけないから無駄なことさ」
女「私は…」
男「ん?」
女「私がもしここから出れたら…他人なんて興味ない感じで、愛想も悪いんだけど、いつもどこか寂しげな声の人の傍にいてあげたいです」
男「…へぇ…お前みたいな奴が傍にいたらそいつは大層迷惑だろうな」
女「迷惑で結構ですっ、私が一緒にいたいと思うからいたいんですからっ!」
男「ふふ…でも」
女「はい?」
男「その男はきっと幸せだろうな」
女「…はいっ、ぜったい幸せですよ!」
- 287 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 21:12:04.99 ID:3ubSyQP80
ゲーム理論スレかとおもた
- 288 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 21:13:39.48 ID:TQ1PgMMmO
誰か>>1の続きを…
- 289 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 21:17:22.37 ID:dIAcIML2O
>>287
ジレンマのことか?
- 290 :VIPがお送りします [sage] :2008/10/19(日) 21:20:10.20 ID:3ubSyQP80
んだ、囚人のジレンマ
- 295 :231 [] :2008/10/19(日) 22:04:25.65 ID:swTT2F+P0
男「ここにきて2年になるが、お前みたいなやつ初めてだよ」
女「あ、それって喜んでいいことですか?」
男「好きにしてくれ…」
女「えへへ、やったぁ」
男「ほんとお前は変わってる奴だな」
女「でも、そんな変わった奴と付き合ってる男さんも変わってる人ですよ」
男「……ああ、そうかもな」
女「変わってるコンビの結成ですね」
男「一日で解散だな」
女「あうっ!」
男「それじゃ、俺は寝るぞ」
女「もう少し話しません?」
男「俺が眠い、じゃ…おやすみ」
女「冷たい人ですねぇ…おやすみなさい」
- 296 :231 [] :2008/10/19(日) 22:05:31.08 ID:swTT2F+P0
男「……女、起きてるか?」
女「………」
男「起きてるなら、そのまま聞いてくれ」
「…俺とあの看守は兄弟なんだ。看守は…弟は俺なんかと違って出来のいい奴だった」
「当然、両親にもずいぶん可愛がられてたよ」
「ある日さ、サークルの飲み会でかなり酔っ払って帰ってきたんだよ」
「俺の父親ってかなりの厳父で、そんな弟をみて辛辣な言葉を言ったわけ」
「そしたら弟もキレてさ、近くに置いてあった灰皿で父親の頭を殴って、殺したんだ」
「父親と弟の騒ぎを聞いて、二階から降りてきた母親はその現場をみて倒れたらしく、弟は倒れた母親も殴って殺した」
「そして弟もその場に倒れた」
「弟が目を覚ましたとき、その場には両親の遺体とそれを見下ろす兄の姿」
「自分が殺したことなんて分かるわけもなく、弟はすぐに警察に通報したよ」
「だから、俺は弟の殺人を自分がやったことにした」
「俺も…お前のとこにいた男と似てるんだよ、ほんと馬鹿な人間だと思う」
「でも、後悔はしてない…これは俺がこうなるべくしてなった事だと思ってる、運命ってやつだな」
「…これを人に話すのはお前で最初だ…そして、最後だと思う」
「ごめんな、こんな話して…おやすみ」
女「………」
女「………ばか」
- 299 :231 [] :2008/10/19(日) 22:30:27.35 ID:i1qhTp3L0
男「女…朝だぞ…おい」
「………」
男「おい、女…! 朝だぞ、起きろっ! おい、聞いてんのかっ!」
「………」
男「そんな…嘘だろ…いくらなんでも……早すぎる……まだ、まだ…ッ! くっ…!」
女「あ、あの…男さん」
男「女ッ!」
女「…ごめんなさい、まさか泣いてしまうなんて…」
男「ば、馬鹿言うなよ! 泣いてるは、はず、ないだろっ!」
女「男さんは私なんかよりも、ずっとずっと優しい人ですね」
男「………」
女「その優しさを、忘れないで大切にしてくださいね」
男「…女?」
女「私、今日死刑執行みたいです」
- 300 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 22:30:39.59 ID:ke6goif5O
>>1はもう来ねぇの?
- 302 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 22:37:26.13 ID:TQ1PgMMmO
>>299ヤバい涙が…
- 306 :231 [] :2008/10/19(日) 23:09:49.09 ID:aRgpPwFJ0
男「そ…んな…」
女「えへへ…思ったより早くきちゃいましたね…」
男「あ…ああ…あ…」
女「私がいなくなっても泣いちゃダメですよ? あ、ちょっとこれ生意気かも。ふふ、でも最後くらい生意気言ってもいいですよねっ」
「もっと、もーっと男さんとお話したかったです。それで男さんのこといっぱい、いーっぱい知りたかったです」
「でも、ダメみたいですね」
「私、男さんと話せてよかったって心から思ってます」
男「女ッ! 俺は…!」
女「あ、それ以上先を言っちゃダメですよ? 私、行きづらくなるじゃないですか」
「うん、別れるときは笑顔のほうがいいですよっ」
男「ば、馬鹿だろっ! お前!」
女「あ、バカって言いましたね! 最後くらいバカって言うの止めましょうよ!」
男「何度でも言ってやる! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿……馬鹿…」
女「………はい、自分でもそう思います」
「そういえば、ここを出るときに何で私が人殺したか教えるって言いましたよね」
「……私も男さんと同じなんです、えへへ…奇遇ですね、あ! これも運命なんですよ、きっと!」
「………運命なんて、こんな運命なんて嫌いです…」
看守「……そろそろ時間だ、いくぞ」
女「あ…はい」
女「男さん、短い、あ、あい…あ、あれ? お、おかしいな…? な、なみだが止まらないじゃ、ないですか」
「な、なんで……泣かないって決めてたのに…どうして、止まって、止まってよ…!」
男「女………」
女「え、えへへ…私も泣いちゃいました……よしっ、もう泣きません」
「男さん」
「大好きでした」
- 309 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 23:11:35.95 ID:dCq+d77f0
男「ここで問題だ!君にとって死とは何か?」
女「なによ禅問答のつもり?くだらない」
男「まあそう言うな。暇つぶしだよ暇つぶし。お互い死ぬ身だ。語ろうじゃないか」
女「お互い死ぬって……遅かれ早かれ死は誰にだって来るわ」
男「俺らが殺した人間たちにもな」
女「……」
男「俺らは殺し、また殺される。こんなに死が身近な立場っつたら後は病人くらいなもんだ」
女「そうなるわね」
男「で、改めて死というものに向き合ってみようということさ」
女「だからそれがくだらないっつってんのよ」
男「なぜだ」
女「だって命を軽々しく扱ってきたからここに入ってるんでしょ。その私たちが……」
男「命じゃねえ死だ。間違えんな。それに俺は死を軽々しく扱った覚えはない。命なんかは知らんがな」
女「ガキくさ……」
男「はっは!どうとでも言え。所詮壁越しの会話、悪口暴言なんでもござれだ」
- 310 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 23:13:55.20 ID:dCq+d77f0
女「じゃあ何?死んだ後どうなるかとかそんな話?」
男「いいや死ぬこと自体にさ」
女「私にとって、ね……。うーん、終着点、かしらね」
男「ほほう終着点か」
女「ゴールじゃなくて、終着点。ここであなたの人生は終わり……って感じ」
男「それはあんたが殺した人間にも言えるのか?」
女「……今日はずいぶんとつっかかってくるわね。そういうあなたはどうなのよ」
男「俺か?俺にとって死は見苦しいものだ!」
女「見苦しい?」
男「死ってのは無理やりねじ切った糸の断面みたいなもんだ。ほころびが多いし見栄えも悪い。だから気も使う」
女「それはあなたが殺した人間でしか死を体感できなかったからでしょ」
男「はっは!そのとおりだ!だが俺はたとえ天寿を全うした老人を見ても見苦しいと思うだろう」
女「一応聞いてあげる。何故?」
男「どう考えたってしわくちゃの爺婆だからだ!」
女「……身も蓋もないって言葉、こういうときに使うんでしょうね」
- 312 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 23:16:11.67 ID:dCq+d77f0
女「どうして死に気を使うのよ。どうせ結果は一緒でしょ」
男「俺は見苦しいのは嫌いだ。だから見苦しくない死を探した。そしたらここに来ちまった」
女「探し方が間違ってたんじゃないの?医者にでもなればよかったのよ」
男「はっは!正論だ。だが俺にはいかんせん学ってもんが無かった」
女「だから殺したっていうの?言い訳にすらならないわよ」
男「医者にならなかった言い訳にはするが殺した言い訳なんざにはするつもりはない」
女「あら殊勝な心がけね」
男「周りの連中はこぞって心の闇なんて陳腐な言葉を当てはめようとするがな」
女「滑稽極まりないわ。こうして会話を交わせる人間に心の闇なんてあるわけない」
男「信用してるのか?」
女「闇すら持ちようがないほどあなたは単純で子供って意味」
男「いいねえその毒舌。惚れそうだ」
女「……くだらない」
- 315 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 23:26:48.63 ID:dCq+d77f0
男「自分の死についてはどう思う?」
女「え?」
男「今まで散々殺してきてとうとう自分の番が来たんだ。何か思うことくらいあんだろ」
女「別に……やっと終わりかってくらいよ」
男「かぁー!風情がねえな」
女「ならあなたはそれは素敵なポエムでも聞かせてくれるのかしら」
男「俺は俺自身の死も見苦しいだろうと確信している。それだけは絶対だ」
女「全てにおいて例外は無いって悟ったのね」
男「いいや?おまえさん人を絞殺したことはあるかい?」
女「だいたいナイフか拳銃だったけど」
男「そうか。だったら覚えとけ。人間ってのはな、吊るしあげるとそりゃあ醜い顔になるんだ」
女「へえ……」
男「加えて俺らは絞首刑。見苦しくならないわけがない」
女「あなたこそ風情もくそもないじゃない」
男「はっは!死に風情を求めてもしょうがないってこったな!」
女「ったく……」
- 316 :231 [] :2008/10/19(日) 23:30:20.73 ID:khyaM+lg0
女「あ、男さん! 遅いですよー!」
男「お前が早いだけだ…」
女「もう…待ち合わせに遅れると女の子に嫌われちゃいますよ?」
男「そのときはそのときだ」
女「どんなときですかっ! 今度はちゃんと守ってくださいね?」
男「分かったよ、ほら、そこでクレープ買ってやるから機嫌直せ」
女「わっ! ほんとですかっ? えへへ、私これがいいです!」
男「…こら、そんなにベタベタするな…人が見てる…」
女「いいじゃないですか! 私たち付き合ってるんですからっ」
男「…ったく、しょうがない奴だな」
女「えへへ、あっ! 見てください! 雲ひとつない青空ですよ!」
「………」
看守「結局あんたはそうやって逃げるんだな」
「………」
看守「俺を庇った? ふざけるな、あんたは現実から逃げたかっただけだ」
「………」
看守「なんとか言ったらどうなんだ? おい!!」
「………」
看守「俺は…俺は…絶対に許さない……聞いてるのか……兄さん」
「………」
看守「………聞こえますか、囚人番号xxxが自殺しました」
=終=
- 317 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 23:33:03.96 ID:O0XErJ3ZO
わあああああorz
- 318 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 23:33:16.21 ID:hA5oRAot0
おおおおおおお
- 319 :231 [] :2008/10/19(日) 23:34:38.18 ID:khyaM+lg0
これで終わりです。
>>1もきたことですからROMに戻ります。
それでは、失礼します。
- 320 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 23:38:50.41 ID:LdzWVoMM0
>>231
乙でした
鬱エンドが最初から見えてるジャンルにも関わらず参加してくれて、
本当に乙でした
- 321 :VIPがお送りします [] :2008/10/19(日) 23:42:22.23 ID:dCq+d77f0
>>320
あなたも頑張れ
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