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少年「そうだ!天使を見つけに行こう!」僧侶「私もお伴します」
145 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 22:36:37 ID:ZeIzH8l.
――花の街


女盗賊「はぁ〜。数日しか離れて無かったのに、なんだか凄く懐かしい気がするわ〜」

戦士「密度の濃い数日だったからな。流石に俺もしんどいよ」

女盗賊「あー、疲れちゃったなー。弟子ー、師匠の荷物持っといてねー」

戦士「ああ?」

少年「…はい、ししょー…」

戦士「あん?これは、どういうこった…?」
  「女盗賊、お前、なにしてんだ…」

女盗賊「なにって、師匠の荷物を弟子に持たせただけよ」
   「さあ、キリキリついといで!」



戦士「僧侶さん…一体何が?」

僧侶を見ると、面目なさそうに首を振った

僧侶「申し訳ありません。…止められませんでした…」

戦士「あの、 ク ソ ア マ 〜 …ッ!」


146 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 22:46:16 ID:ZeIzH8l.


女盗賊「げっ!なんか怒ってる。ほら弟子!逃げるよ!」

少年「え!?ぼ、僕もですか!」

女盗賊「師匠と弟子は一蓮托生、一心同体なの!……うわっ、こっちに走ってくる!」

少年「あっ、ちょっと待って…!」



結局、一時間後には双方倒れてしまい、僧侶に回収されることになった


147 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 22:54:56 ID:ZeIzH8l.
――翌日


戦士「さて、今後の方針だが…」

少年「僕が最後に見たのは北西に飛んでいく姿だけです」
  「だから今まで、西へ西へと移動して来ました」

戦士「そこでなんだが、途中に修道院が建っている」
  「そこは天使の伝説を記録ていてな、もしかしたら何かしらヒントが得られるかもしれない」

少年「ということで、次の進路はここから北にある修道院へ向かうことにしました」

僧侶「天使の伝説を…?」

戦士「ああ、ここから二日くらい行ったところにある」

女盗賊「馬車は?馬車はあるの?」

戦士「ちょいと調べたが、無いみたいだ」
  「……荷物は自分で持てよ?」

女盗賊「わ、わかってるよ!」

少年は女盗賊が密かにお尻を抑えたのを見逃さなかった


戦士「今から二時間後に出発する。各自荷物をまとめておくように」
  「では解散」


148 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 23:06:40 ID:ZeIzH8l.


――天使の修道院


酷くみすぼらしい院だった
しかし、良く手入れされているのか、清潔だった
屋根の上に天使を象ったものが置いてあり、それがその場を厳粛なものにさせていた


修道女「天使のお話を聞きに来たのですか?」
   「それは、まあ、珍しい方々ですのね」

武器を入り口に預けると、資料室へ案内された
いや、資料と言うよりは本、図書室というべきだろう
見ると様々な天使に関する文献から絵本まで揃っていた


149 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 23:11:49 ID:ZeIzH8l.

女盗賊「あたし、なんか目が回ってきちゃった…」

少年「ぼ、僕も…」

戦士「おいおいおい、しっかりしろよ。もちっとシャッキリしろよな」

一同、手分けして有用な情報を探し始める




一時間…
二時間…
三時間…


女盗賊「だぁーーーーッ!全部似たような話でなんも情報なんて無いじゃないのぉぉぉぉぉーー!!」

痺れを流石に切らしたのか、アホみたいに騒ぎ始めた

戦士「う、うむ…まさかこれほどまでに情報が無いとは思わなかった…」

女盗賊「もういい、疲れた、寝る」

その場でコテンと横になり、ふて寝し始めた


150 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 23:25:14 ID:ZeIzH8l.
戦士も僧侶も疲れたのか、休憩をとった

少年だけ、今だ黙々と資料を漁っている

戦士「おーい、あんまり根を詰めると見つかるもんも見つからんぜ」

少年「…………」

戦士「…大丈夫か?これ…」


少年「一つだけ、分かったことがあります」

戦士「お?なにか見つかったのか?」

少年「この部分です」


今から約400〜500年前に起きた人魔大戦
その戦いを人間の勝利に導いた偉大な勇者
敵の本拠地に軍を率いて乗り込み、自らの手で魔王の首級をあげたという
その際、勇者を守護する存在があった。それは天界から使わされた『天使』だった
勇者を影に日向に守護し、魔王の元まで導き、補佐したという
それから魔の物が力を取り戻すたびに、天使が現れ力を貸す伝説が生まれたという


戦士「…誰もが知ってる伝説だな。なにか変なところでも?」

少年「この一文『それから魔の物が力を取り戻すたびに、天使が現れ力を貸す伝説が生まれたという』」
  「ここにヒントがあったんですよ」


151 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 23:33:56 ID:ZeIzH8l.
僧侶「それはつまり…?」

少年「簡単に言うと、強い魔物が現れれば天使が出現する、ってことです」

戦士「うーむ。伝説通りってことか」

僧侶「しかし、先のクエストでは、かのミノタウロスまで出現したというのに、現れませんでしたよ?」

戦士「…もっとヤバい奴じゃないとだめってことか?」

女盗賊「魔孔の侵食度も関わってるかも!」

戦士「起きてたのか」

少年「でも、ヒントは得たけど、これからどうすれば……」

再び考えこんでしまった



戦士「かなり危険だが、ギルドのクエストを受けて行って、難度の高いものを遂行するしかないだろうな」

女盗賊「げっ!それってかなりしんどい方法じゃん」

僧侶「しかし、それが確実な方法でしょうな」


152 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 23:41:12 ID:ZeIzH8l.
戦士「だが、一つ疑問が残るぜ」
  「なぜ少年に見える位置で天使が飛んでいたかってことだ」

戦士「伝説の通りなら、強力な魔物がいないと会うことすら出来そうにないぜ」

少年「近くに魔物が出たとか、そういう話は聞いたことなかったです」

女盗賊「もしかしたら、また魔王が出てくるのかもね」
   「なーんて……」

空気が凍りついてしまった
全員彼女を見つめたまま止まってしまっている

女盗賊「や、やだなー、ただの冗談だって、ジョーダン!」


戦士「いや、もしかしたらそのまさかかも知れんぞ」

女盗賊「え?」

戦士「気付いてる奴は居ないと思うが、ここ一年くらいで、規模のデカイ魔孔の出現率が跳ね上がってるんだ」

少年「そうなんですか?」

戦士「あの山でもそうだ。近くに二つも魔孔が開くなんて普通じゃないと思ったんだ」
  「魔王、もしくはそれに匹敵する何かが関係してた、ってなら合点はいく」


153 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 23:44:50 ID:ZeIzH8l.
女盗賊「ち、ちょっと待って、話が飛躍しすぎ!ただの冗談だから!」

僧侶「私も結論を出すのは早計だと思います」
  「ですが、奇妙なところがあるのも事実です」

僧侶「なにか確証が得られればよいのですが…」


少年「天使を探していけば…きっとそれにも答えが出ると思う…」
  「勘……ですけど…」

戦士「でも西かぁ。どこまでの西なんだろうなぁ…」

女盗賊「西にあるのは、帝国と霧の山を挟んである霧の国くらいか」
   「それ以上行っちゃうと田舎も田舎、ど田舎があるだけ」

僧侶「帝国、ですか…」

戦士「だがべらぼうに遠いな。馬車を乗り継いでもひと月くらいか?」

少年「その途中で討伐クエストがあったなら、積極的に受けて行きましょうか」
  「そして、とりあえずの最終目標地は帝都でいいですか?」

僧侶「いいと思います」

戦士「異論はないぜ」

女盗賊「できる事なら近ブァッ!ちょっと叩かないでよ!」


154 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 23:53:29 ID:ZeIzH8l.

こうして四人に増えた一行は、西の地を目指して征くことになった

女盗賊は難色を示していたが、戦士に言いくるめられて渋々ついてきていた


少年は女盗賊に無理やり弟子にさせられたが、一応師匠の勤めは果たすらしく、
道中彼に稽古をつけていった

それを見て腕が疼いたのか、女盗賊が教えない日は変わって彼が剣術を教えることになった

「私の弟子だぞ!」といきり立ったが、再び言いくるめられて承知した



少年の旅路はにわかに危険なものになった
しかし、今や仲間と呼べる者が三人にも増えたのだ

少年は嬉しかった。あれほどまでに誰も信じなかったのに、今はこんなに目的を共にする仲間がいる、と
少年は(絶対に天使を見つけてやる)と、固く心に誓った





しかし、伝説に挑むのならば、相応の試練を受けねばならない
彼らの行き先は、不吉な暗雲がたちこめていた


155 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 23:55:16 ID:ZeIzH8l.

――――――
―――


「星々がついに動き始めました…」

「地の動きは?」

「力を蓄えつつあります」

「天は?」

「気付かれておりません…」

「望みがありそうなのは?」

「今のところ覚醒しているのは獣の一つだけ…」
「しかし、後二つ。可能性があります」

「龍は?」

「まだなんとも…」
「恐らくこれからわかります」

「ご苦労…」

影が蠢く…


156 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 23:56:17 ID:ZeIzH8l.
「時は来た。今こそ我らの悲願成就の時…」

影の声に周囲がざわめく

「長らく辛酸を嘗めてきたが、それもこれまでだ」

「人の人による人のための勇者!」
「人を守護する最後の盾にして剣!」

「今ここに、勇者計画の発動を宣言するっ!」


ォォォォォォオオオ……


鳴き声とも、歓声ともつかぬ声が空間にこだまする


「思い知らせよう!我らを玩具とした者達に!」

「思い知らせよう!我らを騙し利用した者達に!」


「そして、報いを受けさせるのだ!我らが人の手でッ!」

狂喜に満ちた者達の拍手は、いつまでも、いつまでも鳴り止まなかった……





157 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/17(水) 23:58:46 ID:ZeIzH8l.
ここまで読んでくださってありがとうございます
なんか長くなってしまって申し訳ない

最後のは蛇足感がありますが、許して欲しいです。加えるか迷ったんですが…


158 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/18(木) 00:04:19 ID:4c94NbNY
乙。すげー面白かった


159 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/18(木) 02:30:25 ID:ma98P0s6

こっから第二部にいくわけか


160 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/07/18(木) 07:13:59 ID:EWhF2.92
前の話が第一部じゃないの?

ドラクエ4みたいな感じど続くのかな?
これからどう収束していくのか楽しみだ


162 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/18(木) 14:54:54 ID:6ry28q32
埋れた名作って感じ


164 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/07/19(金) 03:25:30 ID:udB5eP2s

コレに続く話があるですか?


165 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/07/19(金) 05:25:59 ID:gKu9U.Jw
乙ここ最近で一番いい
続編も楽しみだ


166 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/19(金) 11:37:11 ID:JK2SDL7U



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