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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その33
87 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:33:56.03 ID:/RsGvWwwo
〜大陸港の町、バーテンの店〜

バーテン「よいしょっと」

ガチャッ…チリチリン

バーテン「さーて」

ガチャッ

マジシャン「何だ、お前も今戻ってきたとこか?」

バーテン「しばらく店空けてたからな。食材の買い出しだよ」

マジシャン「ああ、そういう事ね」

バーテン「そっちはどうだった?」

マジシャン「どうったって、まぁ掘り返すわけにもいかんからなぁ……ハッハ」

バーテン「そりゃそうだ」

マジシャン「変化なし。ま、問題ないでしょ」

バーテン「そうか」

マジシャン「それより腹減ってないか? さっきそこでリブサンド買ってきたんだ。食おうぜ!」

バーテン「おう、サンキュ」


88 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:34:31.52 ID:/RsGvWwwo
ガチャッ…チリチリン

バーテン「悪いな、今日は店やってね――」

マジシャン「お、お前っ!!」

戦士父「……」

バーテン「フラフラじゃねぇかっ、とにかくそこ座れ」

戦士父「何か……食い物を……」

マジシャン「……ったく、しゃあねぇなー。ほれ、食え」

戦士父「……すまん」

バーテン「っておい! それ俺のリブサンドじゃねぇのか!?」

マジシャン「しょうがねぇだろ」

戦士父「……」

ガバッ…モグモグ

マジシャン「あぁ!! てんめぇ……誰が2つ食っていいって言ったぁ!?」

バーテン「ぶははっ! おいおい、しょうがねぇだろ〜?」

マジシャン「くっそ……」


89 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:35:00.06 ID:/RsGvWwwo


バーテン「ふー。あれから1人でブラブラ戻ってきたわけだ」

マジシャン「お前さんもよ、元国軍なんだから頼れよな」

戦士父「……それもそうだな」

バーテン「ったく、マイペースは相変わらずだな」

ズキッ

戦士父「……っ」

バーテン「腕、痛むのか?」

戦士父「痛むのもあるが、もう肩が上がらん」

バーテン「無理するからだ。馬鹿野郎」

マジシャン「どうせ使えねーんなら切っちまえば? 俺とお揃だぜハッハ!」

戦士父「それは勘弁だな」

バーテン「ったく、お前らにしろ師匠にしろ、揃いも揃って腕上がらねぇとか……」

マジシャン「お前も仲間入りしろ」

バーテン「仕事に支障きたすだろがっ!」


90 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:35:48.65 ID:/RsGvWwwo


マジシャン「んで、行くアテもねぇんだろ?」

戦士父「ああ」

マジシャン「んじゃしばらく、ここでリハビリがてら厄介になってたら?」

バーテン「はぁ?」

戦士父「それは助かるな」

バーテン「はあぁ!?」

マジシャン「ハッハ! いいじゃねぇか。薪割りやら樽運びなんざいいリハビリになんぜ?」

戦士父「おぉ、そうだな」

バーテン「……ここは便利屋じゃねぇんだぞ?」

戦士父「すまんな」

バーテン「まぁいい。2階の部屋空いてるから好きに使え」

マジシャン「流石隊長っ!」

戦士父「流石隊長」

バーテン「うるせぇ!!」


91 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:36:30.17 ID:/RsGvWwwo
〜鉱山の町、鍛冶屋の家〜

おかみ「なるほどねぇ。事情は分かったよ」

鍛冶屋「確かにここじゃ設備が乏しいし、時間がかかってしまうからね」

戦士「ああ、そうなんだよ。どうしても短期間で仕上げてぇんだ」

おかみ「でも、何でこの人なんだい?」

戦士「えっ?」

おかみ「だってさ、国軍には顔の利くフリーの鍛冶職人が大勢いるじゃあないか」

鍛冶屋「それもそうだよね。ボクなんて軍を抜けた身だし……」

戦士「それは……だな……」

召喚士「……鍛冶娘さんのお願いだからです」

おかみ「えっ!?」

戦士「お、おいバカ……っ」

召喚士「正直に言っても、何も問題はないと思うよ」

戦士「……っ」

召喚士「鍛冶屋さん、おかみさん。俺達は鍛冶娘さんに頼まれたんです」


92 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:37:03.63 ID:/RsGvWwwo
おかみ「ほ、本当なのかい……っ?」

戦士「ああ、本当だよ」

鍛冶屋「鍛冶娘が……」

戦士「国軍は、設備は貸すが、人や材料は割けないそうなんだ」

召喚士「そこで、鍛冶娘さんが仕事の合間に協力してくれる事になったんです」

鍛冶屋「そうなんだ……」

戦士「それで、どうしてもあいつの助けになる、腕の立つ職人が必要なんだ」

おかみ「それで……私達を……っ?」

召喚士「そういう事です」

戦士「なんか知らんが、俺達に連れてきてくれってな」

召喚士「本人からは頼みにくいんですよ」

鍛冶屋「……」

召喚士「鍛冶娘さんは今、1人で国軍の技術者として入隊し、頑張っています」

おかみ「……」

召喚士「親に世話をかけたくない。その思いがきっとあるんですよ」


93 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:37:57.28 ID:/RsGvWwwo
戦士「なるほど……」

召喚士「それに仕事上、色々な職人を見てきたはずです」

おかみ「……だろうね」

召喚士「その上で両親であるお2人を頼った。それがどういう意味か……」

戦士「そうか、そうだよな。あいつ自身もおやっさん達の腕が一流だって言ってるようなもんだ」

召喚士「だから尚更、自分からは言いにくい事なんじゃないかな」

おかみ「……全く、どこまでひねくれてる娘なんだか。誰に似たのやらだね」

鍛冶屋「でも、嬉しいじゃないか。そう思ってくれるって事はさ!」

召喚士「でも、本人にはくれぐれもこの事、言わないで下さいよ……?」

おかみ「分かってるよ! あの子の性格は私達が1番良く分かってるんだから!」

鍛冶屋「やははははっ! そうそう!」

戦士「すまねぇ、おやっさん……おかみさん。この借りは必ず……」

おかみ「何言ってるんだい。私達とあんた達の仲じゃないか。気にしないでおくれよ」

鍛冶屋「そうだよ! それに僕だって世界一の剣を作成出来るんだ。願ったりだよ!」

戦士「……ありがとう、おやっさん」


94 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:40:28.50 ID:/RsGvWwwo


鍛冶屋「それじゃ、身支度して明日には到着出来るようにするから!」

召喚士「宜しくお願いします」

おかみ「はい。これメモね。とりあえずこの材料だけは最低限用意しといておくれ」

戦士「おう! 昼のうちに買い出ししておくよ」

召喚士「それではまた明日!」

戦士「ありがとう!」

鍛冶屋「2人も気を付けてね!」

召喚士「行けっ、コカトリス!」

シュイイィィィィン…バシュウウゥゥゥゥ

おかみ「おぉっ!? いやぁ凄い! 私も乗ってみたいモンだねぇ〜」

鍛冶屋「ちょちょっ、怖いよ! 落ちたらどうするの!?」

おかみ「でも空を飛べるなんて夢みたいじゃないかっ!」

鍛冶屋「……うーん。空かぁ、でもやっぱ怖いものは怖い……っ」

おかみ「ほれっ、さっさと明日の用意するよ!」


95 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:41:31.65 ID:/RsGvWwwo
バシュウウゥゥゥゥ

召喚士「良かったね、2人共承諾してくれてさ!」

戦士「ああ! これで何とかなりそうだな!」

召喚士「うんっ!」

戦士「魔王イブリースか。どんな奴なんだろうな」

召喚士「相当強いって話だけど、あんまり詳細は聞かないよね」

戦士「なんか軍団長みてぇのは居ないんだろ?」

召喚士「らしいね。だから有利って事もないんだろうけど……」

戦士「だよな。アンラ・マンユは自分の一部を眷属にしてた」

召喚士「ラーヴァナは軍団長を己の駒として使って、戦ってた」

戦士「それがないイブリースってのは、個の力がハンパねぇって事だよな?」

召喚士「多分……だけどね。今までのタイプとは違う意味で厄介だね」

戦士「ガチンコか。手強そうだな」

召喚士「……うん」

寒さのせいか身震いする2人を乗せ、コカトリスは西国の港へと夜空を羽ばたいた。


96 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:42:49.48 ID:/RsGvWwwo
〜西国拠点、商店街〜

踊り子「へえぇ〜っ! それじゃホントに魔王を倒しに来たんだ!」

盗賊「そういう事」

踊り子「すっごぉい! 憧れちゃうなぁ〜」

魔道士「そう? そんな事ないけどなぁ……」

踊り子「えぇ〜? だってアタイと同い年ですっごいじゃん!」

魔道士「私達より年下なのにワーカーで頑張ってる子だっているんだよ〜?」

踊り子「うっわ! そうなん!? うわ……うわぁ、アタイ……もっと頑張らないと!」

盗賊「……何か……夢があるのか?」

踊り子「うんっ! アタイはね、西方で……ううんっ、世界で1番の踊り子になってやるのさっ!」

魔道士「へぇ〜っ! いいじゃんいいじゃんっ!」

踊り子「でっしょ〜? だからもっと頑張って……みんなに負けてられないねっ♪」

魔道士「そうだよっ! お互い頑張ろうねっ!」


97 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:44:37.48 ID:/RsGvWwwo
踊り子「うんっ! あ、そろそろ時間だ。それじゃまったね〜!」

盗賊「またな」

魔道士「踊り子ちゃん、また会えるよね?」

踊り子「普段は西国に居るからさっ、劇場に遊びきなよっ!」

魔道士「うんっ! 絶対行くね! えへへっ」

踊り子「へっへ〜! 待ってるよ〜♪」

タッタッタッタッタ…

魔道士「素敵ですねぇ」

盗賊「うん。華があるし何より……」

魔道士「スタイルが抜群……」

盗賊「あんな露出の高い衣装……」

魔道士「とてもじゃないけれど、無理ですよ……」

盗賊「無理ですね……」

魔道士「無理です……」


98 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:45:30.36 ID:/RsGvWwwo
〜西方、砂漠〜

ドドッドドッドドッドドッ…

隊長「……」

男隊員「あぁ!? 何だってぇ? 」

ドドッドッ…パッカパッカ…ザザァ

男隊員「砂嵐とその頭に巻いた布のせいで何にも聞こえないんだよ!」

隊長「西国西の砦から真っ直ぐ西に進んだよな?」

格闘家「方位磁針に狂いがなければ」

女隊員「こんな西は初めてッスから、星の動きも読みづらいッスね……」

隊長「ま、感覚からして問題ないだろう」

男隊員「じゃあ聞くなよ」

隊長「念の為だ。何があるか分からんだろうが」

男隊員「まぁ、そりゃそうだけどよ」

隊長「この先、正面に山がそびえてるのが見えるか?」

女隊員「……かすかにだけど見えるッス」


99 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:46:36.79 ID:/RsGvWwwo
隊長「あれが最西端への山道だ」

格闘家「そこを超えれば……」

隊長「魔王イブリースの棲み処だと言われている」

男隊員「んでぇ、どこまで偵察すんだ? まさか魔王様のツラまで拝もうなんつう気じゃねぇよな?」

隊長「俺はそれでも構わんぞ?」

男隊員「……じ、上等じゃねぇか。俺だって構わんぜ……ヒャハハ」

女隊員「乾いた笑い声ッスねぇ」

隊長「どうせあっちから仕掛けてくる可能性は皆無だ。安心しろ」

男隊員「言い切れるのかよ」

隊長「過去何千年が証明してる。その超低確率にでもブチ当たってみるか?」

格闘家「確かに……確立はほぼ0ですね」

女隊員「本当に行くんスかぁ?」

隊長「偵察が任務だ。当たり前だろう。何だ、お前まで臆病風に吹かれたか?」

女隊員「臆病風って言うか、砂嵐に吹かれてだるいッス!」

隊長「……」


100 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:47:26.01 ID:/RsGvWwwo
ゴオオォォォォ

格闘家「景色が変わらないと言うのは辛いですね」

男隊員「ああ。どんんだけ進んだのか、サッパリだぜ……」

隊長「……ん?」

ゴオオォォォォ

隊長「魔物だ! 散れっ!」

女隊員「了解ッス!」

ズッゴオオォォォォ!!

サンドワーム「ブゴオオォォォォーッ」

男隊員「何だこりゃ!? で、でけぇ……っ!!」

格闘家「まるで……小高い丘が動いているようだ……っ」

隊長「……」

女隊員「隊長!?」

隊長は馬を駆り、巨大なサンドワームへ並走すると、一気にその背中へと飛び移った。

ガシッ…ザザザザッ


101 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:48:56.79 ID:/RsGvWwwo
隊長「はあぁ!!」

ガシュッ!!…ガキイィィィィン!!

隊長「外皮が硬いなっ、やはり簡単にゃいかねぇか」

サンドワーム「ブゴオオォォォォ!!」

隊長「!?」

背中の隊長を振り落とすかのように暴れるサンドワーム。

その衝撃で、隊長はたまらず馬上へと落ちるように飛び移り、事なきを得る。

隊長「物理攻撃は困難。すると有用な手は……」

男隊員「魔法付加だなっ!」

隊長「水行頼む!」

男隊員「了解っ」

キュイイィィィィン…ドドオオォォォォン!!

隊長「でっりゃああぁぁ!!」

ズガシュウウゥゥゥゥ!!

サンドワーム「グガアアァァーッ!!」


102 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/10/21(金) 17:50:44.05 ID:/RsGvWwwo
女隊員「あんまり効いてないッスよ?」

男隊員「うるせぇな、水行はあんま得意じゃねぇんだよ!」

隊長「ちっ」

ドドオオォォォォン!!…ズガガガガッ!!

隊長「こんだけ砂があるなら……土行もやりやすいってモンだ」

格闘家「しかし、砂の魔物相手にでは……」

隊長「これでいい。あとは……」

男隊員「……?」

隊長「逃げるんだよ!!」

格闘家「!?」

グイッ…ドドッドドッドドッ

女隊員「先に言って下さいッス!」

男隊員「結局逃げるんじゃねぇか!」

隊長「ある程度の情報は得た。それに気配感じただろ。あの先、魔物がうじゃうじゃいやがる」

格闘家「確かに、もうすぐ夜も明けますし、頃合いかもしれませんね」



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