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少女『あなたは明日、私に会うわ。必ず。』
- 88 名前:VIPがお送りします []
投稿日:2010/11/04(木) 04:42:24.01 ID:3HBC2IzAO
構内にある大きな時計は17時前を指していた。
会社帰りのサラリーマンが増えると、皆が皆自分を犬を見ているような目で見ている気がした。
少し若いOLの目には臭うモノのような、ギャルには空気、オシャレな若者にはゴミ扱いを受けている気がした。
電車の中の広告には格安ブライダルの宣伝が貼ってあった。
家の近所のコンビニで、フリーペーパーの求人誌と飲み物を買った。
調子に乗って下ろした金は、電車代とコーヒー代だけだった。
張り切ってわりと多額を財布につっこんでいる割に使い道などあるわけもない。
もう日が大分傾いて、薄暗かった。
ただ黙々と歩いて、何にも考えなかった。面倒だった。何かに関わりを持つから面倒で、じっと当たり障りなくひっそりしていた方が楽なんだと思った。
家に帰ってきて服も全部脱ぎ捨ててベッドへ転がり込んだ。
何にも音がしなかった。
男「……………………ぐっ…」
涙より先にしゃくりあげて、止まらなくなって、苦しい声を上げながら、自分はベッドの上で大の字になって
何に泣いてるのか全くわからなかったが
それすらもあまりにも情けなくて、ただひたすら嗚咽を漏らしながら泣いていた。
夕日はもう落ちていた。
- 89 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 05:01:53.63 ID:JkUv3cq9O
なんかいい雰囲気のSS
- 91 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 05:25:27.86 ID:8TuQAURKO
前のやつ読んできた
代理で立ててもらった今回は 最後まで書くと信じて
保守
- 93 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 07:34:13.77 ID:6oMxN/mm0
前のやつ読んできたけど、読まなきゃよかったよ
未完のままのSSとかもやもやして最悪なんだよ
くそ面白かったけど
- 98 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 13:27:49.44 ID:3HBC2IzAO
すみません落ちてました。
保守していただいている皆様本当にありがとう御座います。
- 100 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 13:33:50.92 ID:3HBC2IzAO
ひとしきり泣き終わると、自分はベッドの上でぼーっとしていた。
何をしたらいいのかよくわからなかった。
ただしばらくそうしていると急激に目蓋が重くなってきた。
疲れる、という感覚は久し振りだった。
あやふやな意識の中、自分の頭に映っていたのは
名前も知らない、優しい彼女の笑顔だった。
目を覚ました時、辺りが真っ暗だった。
- 101 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 13:44:31.88 ID:3HBC2IzAO
普段なら手元においてあるはずの携帯を寝ぼけ眼で探しては見るものの
帰宅した時に、そのまま脱ぎ捨てたズボンに入ったままだと言うことに
ぼーっとした頭で気がつくまでには少し時間がかかった。
男「…………………あぁ…」
寝起き独特の枯れたような
面倒くさそうなうなだれた声が自然と漏れる。
ずるずるっと半分だけ体を起こした状態でベッドから這い、
定位置でもあるベッドの縁に落ちた。
とりあえず、腰を据えて体を伸ばし鞄を手にとった。
携帯と煙草を出し、その辺に鞄をほおりなげ、買ってきていた飲み物の封をあける。
煙草に火をつけて、
テレビも電気もつけず真っ暗な部屋の中でじっと煙を吸っては吐いていた。
テレビの横に置いてある時計は夜中の2時を指していた。
- 102 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 14:16:09.25 ID:3HBC2IzAO
自分は段々と頭が冴えてきた。
少しづつ出来事を思い出しながら、整理していく。
少し時間が経ったせいなのか、良く寝たせいなのか、自分は1つ1つよく考えてみて、出した結論は
なんだ、この陳腐な話
だった。
さして考えれば、そこまで何か変わった訳じゃない。
最初から無かったことにすればいいのだ。
幼馴染とか、友人とか
あぁそんな奴いたね。ってなものだ。自分には関わりのない、少し知ってる程度で、
そうすれば、ああそうなんだ。
ぐらいですべて解決する。
自分はそう思い、テーブルに置いてあった求人誌を真っ二つに引き裂いて、燃えるゴミに捨てた。
一度立ち上がり窓を空けると、ひんやりとした風が吹いてくる。
寒いぐらいだったが、部屋に立ち込めた煙もそう。
全部入れ替えたかった。
トイレに行き、用を足して戻ってくると、部屋の電気はつけないままで、テレビの電源を入れる。
そこで男は、『映る少女』をはっと思いだした。
- 108 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 17:17:55.62 ID:9HbjeKkX0
こんな上手いSS久々に見たわ。
- 109 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/04(木) 17:42:04.92 ID:udsC2Qhl0
田口トモロヲのナレーションみたいだ
- 113 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 19:35:51.87 ID:3HBC2IzAO
自分は思い立ったようにテレビのリモコンを手にした。
今、テレビの中の少女に会ってどうこうしようといった事はない。
ただ、今なら思い出せそうだったのだ。少女の事を。
自分はリモコンをテレビに向けた。
主電源の切れていたテレビはリモコンではつかなかった。
自分は立ち上がり、テレビの縁にある主電源に手を伸ばそうとした。
その時だった。
プツン
まだボタンに触れていない僕の目の前で、
一切の明かりがともっていなかったこの部屋で、
自発的にテレビは活動を開始したのだ……
- 114 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 19:50:51.40 ID:3HBC2IzAO
男「まじかよ………」
目の前で、電源の入ったテレビのモニターに光が点り始める。
しばらく、そこに何が写っているのか全くわからなかった。
画面の中に、少女はいなかったのである。
それだけではない。
自分が更に驚愕したのは、今までは思い出せなかった背景が、今度は明らかに知っている場所だった。
男「…………これ……」
テレビに写っていた画面の映像は、今もなおそこにいるはずの自分自身が立っている
自分の部屋だった………
男「………自分の…部屋?」
急激に怖くなった。
男はボタンに手を伸ばし、不可解についているテレビを消そうとしたが、
何度押しても画面が暗くなることはなかった。
自分は完全に震え上がっていたが、ふとある言葉を思い出していた。
『もう一度会えば、ちゃんと思い出せるんじゃない?』
消すという行為を諦め、自分はテレビから離れ、いつもの定位置に腰を落とし、テレビと向かい合った。
男「………出てきてよ……話をしよう。」
テレビに話しかける。
- 116 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 20:19:52.93 ID:xKGSy/dB0
いきなり怖くなってきた
- 119 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/04(木) 22:16:52.90 ID:hAKTbeuZ0
おもしろくなってきた
- 124 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 02:35:02.51 ID:fRNhFyKBO
更新遅くて大変申し訳ないです。
ようやく落ち着いて書けます。
保守していただいた皆さん本当にありがとう。
- 125 名前: ◆iMC5nbsIdM [] 投稿日:2010/11/05(金) 02:48:29.28 ID:fRNhFyKBO
男「…………」
なんて言ったって端から見れば滑稽な光景だった。
子供ではあるまいし、自分以外は誰もいない真っ暗な部屋で、夜中に淡く光る画面の中の
自分の部屋に『写っているはず』の少女に声をかけている男がいるのだ。
男「…………………」
男「…………あれ?」
男は画面を見つめていた。
確かにそこに写っているのは、紛れもなくそろそろ住み慣れた自分の部屋だった。
しかし、初めて見た時よりも、個室の鏡で見たときよりも、
冷静に向き合っているという状況で細部までよく目を凝らすと
画面の中の世界には男の現実の世界には見当たらない小物が合った。
壁に掛けてある時計。
テーブルに乗っているノートとペン。
これらには見覚えがある。
はっきりとはしないが。
一番気になったのは、自分が普段携帯を置いてある場所。
ベットの横につけてある小物置きの位置に、写真立てが置いてあった。
写真立てともなると、自分は普段あまり活用しないものになるので、記憶があやふやになることはないと感じていた。
これには見覚えがない。
そう確信をもてるほどだった。
写真立ての中に入っていた写真の細部までは、荒く確認出来なかった。
- 126 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 02:58:27.94 ID:fRNhFyKBO
男は確かに自分の部屋だと感じ、多数の小物がそれを確信させてはいたのだが、
どうにも『今』自分が住んでいる状態ではないと言うことにも疑問を持ち始めていた。
男はこの時、自分が画面や鏡越しに見ているものに対してある事実にはまだ気がついていなかった。
計三回の不可思議な現象は、写っていた場所も、少女の容姿も全く違っていた
にも関わらず、男はその中で気になっているものには
『確かではないが覚えがある』
『全く覚えがないのに目に付く』
という意識がある。
写真立てと、2回目の少女が首に下げた2つの指輪がついたネックレスが後者に当たる。
男「………………出てこないの?」
男「何でもいいから…言ってくれよ……」
男「思い出したいんだ……ちゃんと…………」
独り言のように呟いていた。
- 127 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 03:16:09.74 ID:fRNhFyKBO
男「………………?」
微かにだが、足音が聞こえる。
しかし、少し音が遠い。
自分は住んでいるアパートの住人かと思った。
が、ここ数日、夜更けに起きている時間帯が多い自分がこの時間帯に家に帰ってくる他の住人がいると音ではあるが確認したことはない。
推測すれば、たまたま夜中に帰ってくる事だってあるだろうとは考えられるが、
玄関先の渡り廊下を誰かが歩いている音とは明らかに違う。
そのくらいは聞き分けがついた。
少し画面から目を離し、真っ暗な闇にの中に冷たく映る玄関のドアを見た。
足音の大きさは微かにだが大きくなる。
ドアを見ることによって傾けた耳の位置がちょうどテレビと対になったことによって明らかになった。
音は、こっちからじゃない。
テレビの中の部屋の外から聞こえているんだ…
自分はソレに気がつくとすぐに画面に視線を戻した。
音の出所に気がつくと、映っている自分の部屋にどんどん音が近付いているのがわかる。
コッ……コッ……コッ……
音が止まる。
- 128 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 03:20:41.84 ID:fRNhFyKBO
ズッ………
ガチャ……
キィー……………
扉が開けられていく。
開けられていくのは音でわかるが、写っている位置からでは玄関が確認出来ない。
男「……………誰?……」
食い入るように画面に見入っていた自分は、意識しない所で言葉を漏らしていた……
バタンッ…………
『ただいまー』
女性の…………声だった。
プンッ
画面が真っ暗になる。
男はあまりに突然の事態に思わず立ち上がった。
男「……っ!!」
- 129 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/05(金) 03:24:03.18 ID:Q6OIgOoFO
こええええええよ
- 130 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 03:32:32.21 ID:fRNhFyKBO
男「嘘だろ……!!」
慌ててテレビの主電源を入れると、意外とあっさり画面に光が灯る。
しかしそこに写っていたのは、仕様もない地元のテーマパークをわざとらしい地方弁をつかった司会が、
ぎこちない笑いを入れながら紹介している
(それももう何回も再放送されてるであろう)
地元局の番組だった。
自分は呆気にとられていた。
目線は画面に向いてはいたものの、もう視界がぼやけ、力が抜けてぴくりとも動かなかった。
しばらくそのままの状態ではあったが、まず1つ、気がついた。
画面の中に帰ってきた女性の声は、少女のものとは少し違った。
新しい誰かのような気がした。
自分はとりあえず目の前にある飲み物をぐっと入れ、喉を潤した。
その後、煙草に火をつけて、朝起きた最初の1本のようにゆっくりと吸った。
煙は口から吐くというよりは、隙間からもやもやと漏れるようで、赤々と燃える先から出た一筋の白い線も、すーっと上に延び、
少し高いところで空気と混じって、散って消えた。
- 131 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 03:36:07.93 ID:fRNhFyKBO
皆さん今テレビつけたら少女移るかもしれませんね
と煽って見ますが、このSS、即興なんですが路線があやふやに……
大丈夫だ。問題ない。
- 132 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/11/05(金) 03:44:48.72 ID:Q6OIgOoFO
>>130が無かったら確実にトイレ行けなくなってた
- 134 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 03:52:06.22 ID:fRNhFyKBO
煙草を吸い終わると、自分は少し変な気持ちになっていた。
ついさっきまではぐわっと激情に駆られ泣いていたくせに、今は全く気にならなくなっている。
むしろ、あ、そう。と言ったものだった。
今は目の前で起こっていた事実の方がよほど気になる。
熱いコーヒーを飲もうと思い立ち、いつも起きた時のようにポットでお湯を沸かしながらカップにインスタントの粉を入れる。
テレビからはまだ仕様もない司会の下手くそなナレーションが聞こえてくる。
『もう一度会えば、ちゃんとおもいだせるんじゃない?』
その通りだった。
真剣に向き合えば、なんとなく記憶を紐解いていけそうな気がするではないか。
自分はさっぱりとする為、洗面所で顔を洗おうと思い、そこへ向かった。
ポットの中で、湯が沸き立つ音がする。
- 135 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 04:11:07.26 ID:fRNhFyKBO
男「…………ははっ」
もう笑いしかでなかった。
洗面台の鏡には、今までのどの少女よりも大人になった少女が写っていた……
男「………………誰?」
恐る恐るではなく、ちゃんと思いだそうとしてるんだよという意図が少しでも伝わるようになんとか言葉に含みを持たせたつもりだった。
鏡の少女は何も答えない。
男「話さないんだね。……まぁいいや。今は感謝してる。きっと君は自分の知ってる人なんだろ?」
男「いつか……どこかで会えるのかな。そしたらちゃんと話してみたいな。こんな夢みたいな話……バカみたいなんだけど………」
男「…………君は……………」
鏡の中の少女はじっと自分を見つめていた。
男「………あれ?」
急に、頭の中で絡まっていたもやもやが紐解かれていくような気がした。
少女はニコッと笑う。愛らしい笑顔で。
自分も返して優しく笑いかける。
何故だかわからないのだけれども、少女と会うのはこれが最後なんじゃないのか、そんな予感がした。
その時、鏡の中の少女は目を閉じて、小さな口をゆっくりとあけ、淡々と小声で言った。
少女「来るよ。もうすぐ。あたしが。」
自分は、それがどこから来てるのか全くわからなかったが、すーっと一筋涙が頬をつたっていた。
- 136 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 04:28:04.27 ID:fRNhFyKBO
ゆっくりと手を伸ばし、顔を洗った時に濡れた水滴がまだ少し残る人差し指を
そっと鏡に近づけた。
それは鏡の冷たさではなかった。
それは鏡の平らな硬さでは確かになかった。
柔らかくふわっと、すこしだけ感じる生暖かさ、自分は確かに『映る少女』の優しい唇に触れていた。
少女は目を閉じたまま、自分の触れていた指に唇をすぼめ、キスをした。
自分はもう涙で視界がぼやけていた。
空いていたもう片方の手でそれを拭うと、もう鏡には自分以外誰も写っていなかった。
そっと鏡から離した手を強く握ってよくわからない何かを確かめた自分は、その場で立ち尽くしたまま考えた。
ここで少女に会えた事が、自分のあやふやな記憶の断片をゆっくりと繋いでいく。
男「わかった……………」
男「ははっ」
男「………………助けてもらってばかりだ」
自分は用意していたコーヒーなど全く気にとめず、すぐさま携帯を取りに戻った。
- 137 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/11/05(金) 04:32:42.23 ID:6QOHCLXuO
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