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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その31
- 760 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2011/09/04(日) 21:48:23.73 ID:phHbR+OOo
〜スグリーヴァの城〜
オーク「わああぁぁぁぁ!」
マーマン「いっけえぇ!」
ハヌマーン「攻めよ、攻め続けるのだ」
ヴァーリン「何が力だっ、出来るものならさっさと見せてみろ」
スグリーヴァ(……あれはもう、何千年前になるか)
ヴァーリン「……」
スグリーヴァ「……」
兄弟であり、かつては同様の容姿を持った両者であったが、
今では大人と子供程の差がある体躯に、スグリーヴァは呆れていた。
だがそれ以上に強く感じている者がここにも1人。
ハヌマーン(スグリーヴァ様とヴァーリン様……。かつては互角であった2人だが……)
ヴァーリン「何だ、最早そんなものかぁ!」
ハヌマーン(今現在となっては、その差は明白だがな……)
両者に比べ倍以上小さくなった己の拳を見つめ、唇を噛み締める。
- 761 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 21:52:12.33 ID:phHbR+OOo
グゴゴゴゴゴゴ…
マーマン「押し負けるなよぉーっ!」
オーク「うぐぐぐ〜っ!」
ハヌマーン「流石はヴァーリン様……か」
ヴァーリン「貴様等の言う力とやらも、これまでのものであったなぁ!」
スグリーヴァ「……ッ」
グオオォォォォッ!!
マーマン「な、何だぁ……!?」
オーク「ヴァーリンの体が……光って……」
ヴァーリン「我が力の全て、とくと味わい、思い出すが良いわ!!」
ハヌマーン「あ、あれは……っ!!」
ヴァーリン「喰らええぇぇぇぇいいぃぃ!!」
凝縮した魔力が体内で爆発し、ヴァーリン自身が光り輝く巨大な弾丸となり、
スグリーヴァらの元へ一直線に襲い掛かる。
ヴァーリン「さぁ、さっさとくたばれええぇぇ!!」
- 762 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 21:52:55.07 ID:phHbR+OOo
ズゴゴゴゴゴゴッ
ハヌマーン「マーマン! 水で押し返せっ!」
マーマン「無茶言いやがるぜぇーっ!!」
ハヌマーン「オークは炎だっ、出せる限り撃ちこめ!」
オーク「はいです!」
ドドオオォォォォン!!…ズガガガガガガッ
ハヌマーン「うおおぉぉぉぉ!」
マーマンの水、オークの火、そしてハヌマーンの風が壁代わりを務め、
ヴァーリンの猛突撃を力の限り防御する。
マーマン「すっげぇ……力……ッ!」
ハヌマーン「踏ん張るのだ、ここで食い止めねば……城にまで被害が及ぶぞ!」
オーク「う……ぐぐぐぐうぅーっ!!」
ヴァーリン「吹き飛べええぇぇ!!」
スグリーヴァ「はあぁ!!」
ヴァーリン「!?」
- 763 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 21:54:19.55 ID:phHbR+OOo
ズザッ…ガシィ!!
ヴァーリン「貴様……ッ!」
ハヌマーン「スグリーヴァ様っ!」
スグリーヴァ「皆にばかり任せてはおけぬ」
ヴァーリン「貴様が加わろうと、無駄な事おぉ!!」
スグリーヴァ「我らの力を、侮るでないぞ!」
ゴゴッ…ゴゴゴゴゴゴ…
マーマン「スグリーヴァ様がいて、まだ押されるのかよ……っ!」
ハヌマーン「それ程までに力量差があるという事だ」
スグリーヴァ「…………」
ハヌマーン(やはり、以前のようにはいかぬか……)
オーク「う……ううぅぅぅぅーっ!!」
ザスッ…ジュウウゥゥゥゥ!!
オーク「が……ああぁぁぁぁ!!」
マーマン「お、おい……お前っ!?」
- 764 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 21:55:09.23 ID:phHbR+OOo
巨大な隕石ののようなヴァーリンの突撃に対し、魔法による防御壁と、
スグリーヴァが直々に受け止めていたが、その威力は弱まる事を知らない。
ハヌマーン「オーク、私も手を貸すぞ!」
止まらぬ勢いに痺れを切らしたオークが飛び出し、スグリーヴァの下で両手を広げる。
それを見たハヌマーンも素早く横に並び立ち、スグリーヴァと共にヴァーリンを受け止める。
マーマン「どいつもこいつも……馬鹿なんだよっ!」
タタッ…ジュウウゥゥゥゥゥ!!
マーマン「ぐああぁぁ……っ!!」
スグリーヴァ「離れよお主等、支えきれるものではないぞ!」
オーク「じゃあどうしてぇ、スグリーヴァ様は支えているのさあぁ!!」
スグリーヴァ「ッ!?」
マーマン「そ……うだぜっ、皆で1つなんだ! 力を見せてやろうじゃねーかよおぉ!」
ハヌマーン「見て下さいスグリーヴァ様。これが、貴方の望んだ世界なのです」
スグリーヴァ「……ッ!!」
ヴァーリン「な、何だ……貴様等ああぁぁ!!」
- 765 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 21:56:05.02 ID:phHbR+OOo
ドドドドッ
ゴブリン「オオォォォォーッ!!」
ガーゴイル「おらぁ、もっと集まれ! まだまだ足りねーぞ!」
オーガ「ウガガアアァァ!!」
スグリーヴァ「お……お主等ッ」
ヴァーリン「何だ、何なのだこれは……ッ!!」
トロル「くっそおおぉぉ! 止まらねーぞ!!」
ヴァリーン「無駄だと分かっていて……何故ここまで……」
オーク「だって……負けちゃ駄目だからだっ!!」
ヴァーリン「魔族が他者の為に……自ずから動くなどとは……」
マーマン「テメーにゃ分からねぇだろ! 結束の力ってもんがよぉ!」
ハヌマーン「我らの絆、こんなものではない」
ヴァーリン「……アァ?」
ドドドドドド…
ヴァーリン「……!?」
- 766 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 21:56:48.22 ID:phHbR+OOo
ワアアァァァァ
ラクシャーサ「お、おおぉぉぉぉーっ!!」
ヴァーリン「おぉ貴様等、助けに来て――」
ラクシャーサ「うわああぁぁぁーっ!!」
ヴァーリン「!?」
ラクシャーサ「ダメだっ、逃げろ! 逃げろーッ!」
ヴァーリンの脇を無我夢中で潰走するラクシャーサ達。
スグリーヴァ「ヴァーリン、分かったであろう? 結束の力というものを」
ヴァーリン「……ヌゥ!」
スグリーヴァ「所詮、心通わぬ者同士。離れればこんなものよ」
ハヌマーン「本物の結束、仲間の力……それがどんなものか……」
ヴァーリン「魔族が力を合わせれば、結束だとでも言うのかぁ!」
ドドドド…ドドッドドッ…
ヴァーリン「な、何の音だ……?」
スグリーヴァ「お、おぉ……っ!!」
- 767 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 22:00:21.34 ID:phHbR+OOo
ドドッドドッドドッ
剣士「盟友、スグリーヴァ様のお力となる為……推参!」
弟者「雑魚は蹴散らした! あとはデカブツ、てめぇだけだぞ」
ヴァーリン「人間……人間が……ッ」
錦将軍「人間様の底力、見せてやるよぉ!」
ヴァーリン「まさかこの地に……人間があぁ!!」
白馬騎士「遅くなりました、スグリーヴァ様」
スグリーヴァ「いや、有難い。助かるぞ」
ハヌマーン「これが絆。信じる者の……仲間の力だ」
兄者「それい、我らも出来得る限りの魔力と力で押し返せいっ!」
幼女「はいっ!!」
ググッ…ググググググッ
ヴァーリン「ぬ……ぐぐ……うぅ!!」
スグリーヴァを初めとする志同じ仲間達。その結集した力が強大な
ヴァーリンの一撃を、ゆっくりとゆっくりと、静止させるに至り始めた。
- 768 名前:NIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage] 投稿日:2011/09/04(日) 22:54:56.74 ID:mNxc5tkAO
主役の剣士はやっぱりカッコイイ
- 769 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 23:55:25.25 ID:phHbR+OOo
〜南方、南西平野〜
ゴゴゴゴゴゴ…
アスラ「…………」
魔道士「ワ、ワルキューレ……っ」
ザッザッザ
――「すまない、遅くなったな」
召喚士「あなたは……アマゾネスさん!」
色黒「私達もいるぞっ!」
ポニテ「さーてペガサス、あたし達はあっちへ行くわよーっ!」
ツインテ「わ、私も行くーっ!」
盗賊「……あいつらは確か」
魔道士「アマゾネスさん達……っ!?」
シヴァ「何だ貴様等ァ……ッ! 新手の召喚――」
アマゾネス「ワルキューレ!!」
シヴァ「!?」
- 770 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 23:56:03.50 ID:phHbR+OOo
ズガガガガッ!!…ドドオオォォォォン!!
シヴァ「グク……ッ」
アマゾネス「黙って寝ていろ。まだ話は終わっていない」
シヴァ「何だとぉ!?」
アマゾネス「南西砦からの援軍が間もなく到着する」
召喚士「本当ですか!?」
アマゾネス「ああ。その間、何とかこのデカブツを引きつけよう」
召喚士「ええ、その通りです!」
盗賊「戦士、いけるか?」
戦士「当たり前だろ。あの程度でくたばってたま――」
ゾクッ…クルッ!!
戦士「……っ」
盗賊「……どうした?」
戦士「今のは……いや、何でもねぇ……っ」
盗賊「……」
- 771 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 23:56:42.90 ID:phHbR+OOo
バシュウウゥゥゥゥ
青龍士官「あれは……召喚獣?」
青年兵「援軍か!」
青龍士官「青年兵っ!」
青年兵「ああ。これだけいれば、このでかい奴に集中出来る……っ!」
バサァ
ポニテ「青年子さーん!」
青龍士官「青年子?」
青年兵「わああぁぁーっ!! ご無沙汰してます!!」
ポニテ「助けに来ったよー!」
青年兵「ありがとうございます! 下のラクシャーサをお願い出来ますか?」
ポニテ「まっかせて〜! 行くわよツインテ!」
ツインテ「セイレーン! 行くだにゃー!」
ズガアアァァァァン!!
ラクシャーサ「ゴハアアァァ!!」
- 772 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/04(日) 23:57:55.73 ID:phHbR+OOo
ドドドドドド…
青龍士官「……」
青年兵「流石だな、あっという間に押し込んでるぞ」
青龍士官「……なぁ」
青年兵「ん?」
青龍士官「青年子って何だ?」
青年兵「そんな事はどうでもいい!!」
青龍士官「っ!?」
青年兵「今のうちに、一気にカタを付けよう!」
青龍士官「あ、あぁ……そうだな」
青年兵「やるか」
青龍士官「……おう」
ザッ
青年兵「出でよ……っ!!」
青龍士官「バハムート!!」
- 773 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/05(月) 00:00:37.38 ID:QJR5VXIco
ズゴゴゴゴゴッ…ドドドドドド…
竜騎士兵「お……おおぉぉ!!」
魔道士「あれって確か……」
召喚士「バハムート!!」
2匹の巨大な龍がアジ・ダハーカの前に立ちはだかる。
アジ・ダハーカ「グゴオオォォォォ」
青龍士官「行くぞっ」
青年兵「ツイン……バハムート!!」
バハムート「グゴアアァァァァーッ!!」
僅か一瞬である。瞬きと同時に視界より消えると、2匹のバハムートは、
アジ・ダハーカの巨体を遥か後方へと吹き飛ばしてた。
アジ・ダハーカ「……ッ!?」
何がおきたか理解出来ずにいるアジ・ダハーカへ、2匹のバハムートは容赦なく、
その首と羽を鋭い牙で捉え、引き摺るようにそのまま空中へと放り投げる。
直後、アジ・ダハーカが空中で体勢を整えると、2つの打ち放たれた閃光に包まれた。
- 776 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/05(月) 18:09:38.17 ID:tHxhHLM2o
〜赤壁東側、渓谷〜
大軍師「…………」
少し、風が吹き始めていた。夏特有の生暖かい東南の風だ。
大軍師「…………」
渓谷に吹き付けるその風に、やや生臭さが交じり、漂い始める。
大軍師「……来ましたね」
最早トレードマークでもある白い羽扇をひらひらと扇ぎながら、
大軍師は崖の上から渓谷の遥か奥をじっと見つめていた。
ドドッドドッドドッ
騎兵「来ました! ラクシャーサです!」
大軍師「数は?」
騎兵「かなりの数です。しかし……」
大軍師「……」
騎兵「右大臣様の攻撃でかなり押し込まれているようで、統制は乱れております」
大軍師「そうですか。流石ですね」
- 777 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/05(月) 18:10:22.44 ID:tHxhHLM2o
ドドオオォォォォ
工兵「見えてきました! うわ、すっげぇ数……っ」
大軍師「敵は乱れています。恐れる事はありませんよ」
工兵「分かっております。ここで失敗でもすれば……皆の努力が台無しですからね」
大軍師「よし、それでは配置について下さい」
工兵「みんな、行くぞ!」
ダダッ
大軍師「……あとは、見極めるのみ」
ここまでの作戦において、大軍師の懸念は2つあった。
1つは魔王軍がこちらの手の内に勘付いて、引き返すかどうか。
しかしこれはエリートによる背後からの完璧と言っていい突撃により、
仮に気付いたとしても退路は封じ込めるという素晴らしい形に出来上がっていた。
そしてもう1つの懸念は軍団長クラスの有無。
前日までの交戦結果で不在と判断した大軍師だが、結果は言わずもがな。
懸念は取り除かれ、この時点で人間側の勝利は目に見えたものであった。
- 778 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/05(月) 18:11:14.94 ID:tHxhHLM2o
ザザザザッ…タタタッ
ラクシャーサ「くっそ、くっそぉ」
強襲され、よもや抗う術は残されていなかった。
ラクシャーサ「んっ? お……おいあれっ!」
遥か遠くまで見渡せる魔族の瞳が捉えたのは、巨大な建造物であった。
ラクシャーサ「人間の拠点だ! よし、こうなったらこのまま真っ直ぐ突っ込むぞ!」
ダダッ
ラクシャーサ「この数なら張り付きゃ陥れられるはずだっ」
大軍を率いて圧倒するはずが、同等以上の兵力を整えられ、しかも初撃にて
敗戦濃厚の空気が漂っていた魔王軍に一縷の望みが見えたその矢先であった。
ドドドドドドッ…
ラクシャーサ「……な、何の音だ……ッ!?」
およそ3万5千程であっただろうか。渓谷を進む隊列の最後尾が悲鳴を上げる。
ラクシャーサ「グワアアァァァァーッ!!」
渓谷の道を塞ぐ勢いで、大量の落石が崖上より落とされた。
- 779 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/05(月) 18:11:47.81 ID:tHxhHLM2o
ゴガッ!!…ゴゴゴゴゴゴッ
工兵「いいぞ! 全ての縄を切るんだっ、急げ!」
ラクシャーサ「落石だとぉーッ!? くっそぉ、罠だ!!」
大軍師「まずは成功ですね。さて……」
ザッザッザ
大軍師「準備は?」
工兵「いつでもいけますっ!」
大軍師「……よし、今です!!」
ブツブツブツッ…ブチイィン!!
無数の縄が一斉に切られると、蓋をしていた木材や岩が一斉に崩れ落ちる。
そして、けたたましい音と共に、大量の水が渓谷へと流れ落ちていく。
ズドドドドドドッ…ドドオオォォォォ!!
ラクシャーサ「な、なんグブアアァァ――」
ドドドドドドッ!!
ラクシャーサ「退がれえぇーっ、退がれって! 前は無――ガフアアァァ!!」
- 780 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/05(月) 18:12:27.55 ID:tHxhHLM2o
押し寄せる水流が木々や大地もろともラクシャーサを飲み込んでゆく。
大軍師「……」
工兵「水計……大成功ですね」
大軍師「とどめを差しますよ。弓兵、魔道兵……前へ」
ズザザザザザッ…チャキッ
大軍師「……撃てぇーっ!!」
落石では退路を塞ぎ、両脇の渓谷同様、高い壁のように重なり合っていた。
そしてバケツをひっくり返したように渓谷へ流れ落ちる貯水は、
その中へ湖を生み出し、魔物らは息も絶え絶えに足掻くのが精一杯であった。
バシュシュシュシュシュッ…シュンッ
空を切り裂く多数の音。矢は魔道兵による雷の魔法を付加し、黄色く輝いていた。
ラクシャーサ「…………」
空より降り注ぐ魔物らは、それを視界に捉えるがどうする事も出来ず、
ただ無言でそれが水面へと落ちていく様を、スローモーションのように眺めていた。
そして、激しい雷鳴と稲光の下、次々とその目を閉じていった。
- 781 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/05(月) 18:12:58.34 ID:tHxhHLM2o
ズガガガガアアァァン!!…ゴガアアァァァァ…ドオオォォォォン!!
工兵「くあ……っ!」
弓兵「す、凄い光……やったか!?」
バリバリバリッ…バチバチィ…パチッ…
大軍師「…………」
音と光によって一時的に弱まった視力と聴力が徐々に正常化する。
見つめるその先には、とても表現するには忍びない光景が広がってた。
騎兵「うぅ……っ」
そして次の瞬間、後方で積み重なっていた落石による岩壁が崩れ落ちる。
水の勢いに押され支えきれず、渓谷の道は再びその姿を現したのだ。
ゴトッ…ドドドドドドッ…ズガアアァァァァ…
大軍師「……水の力で崖崩れが生じる可能性があります。十分気を付けて下さい」
騎兵「り……了解であります……っ」
大軍師「……」
駆ける騎兵隊の後姿を、大軍師はじっと見つめていた。
- 782 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/05(月) 18:13:28.96 ID:tHxhHLM2o
〜新月闇夜の日、心曇る刻〜
大軍師は僅かな手勢を引き連れて、遺跡を山脈伝いに、西へと馬を飛ばしていた。
その真意は、赤壁建造の際に治水事業として行っていた貯水池の視察である。
赤壁は深い谷に囲まれている為、天然の要害となるこの地は、拠点に最適であった。
しかしその反面、土地の形状から、水害が懸念されていた。
大軍師「…………」
そこで大軍師は、山の一部を削り、貯水池を建造。更には川の流れを変え、
南方の北側に水脈を確保した。内政としては非常に多大なる成果である。
だが一方、彼の中にはもう1つの考えが浮かんでいた。それは罠である。
これだけの水を渓谷へ流し込めば、仮に大軍が攻め込んできても、
かなりの被害を与える事が可能である。渓谷以外に大きな道はないのだから。
大軍師は先の戦いによる召喚士の計略を大きく買っていた。それだけ価値があった。
いつかその日は来る。彼の中に確信めいた思いが強く繰り返されていた。
魔物は多大なる犠牲を払う事になるであろう。そして木々や草花の自然も。
今は避難されても良い。後世がきっと評価を下してくれれる。
- 783 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2011/09/05(月) 18:14:06.88 ID:tHxhHLM2o
〜赤壁〜
西方参謀「音が止んだ……」
マジシャン「大軍師の策、成功したようだな」
占い師「よく分からなかったんだけど、どういう作戦だったの?」
西方参謀「まず、魔王軍を渓谷に誘き入れる」
マジシャン「5万の数をまとめては無理だからな。ある程度は殲滅した上でだ」
西方参謀「そうそう。後方から叩いて、蓋をするように押し込めるんだ」
占い師「成程ね……」
西方参謀「そこで、落石で出口を封じ水計で一気に魔物を叩く」
マジシャン「更には金行で感電させトドメ。まぁ、恐ろしいもんだよ」
占い師「ひとたまりもないわね……っ」
マジシャン「残った魔物も逃げるしかねーわな」
西方参謀「それをエリート率いる騎兵が追い討ちをかける」
マジシャン「赤壁めがけて進軍してきた連中は、それでほぼ全滅だろうな」
西方参謀「ああ。あとは他の奴らが頑張ってるかどうか……ヒック」
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