■戻る■ 戻る 携 下へ
召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その14
- 18 : ◆1otsuV0WFc [sage saga]
:2010/04/28(水) 17:15:22.57 ID:7VELRRMo
国軍兵「す…すげぇ……」
深い闇の中へ落ちて行くフンババを呆然と眺め、一人の兵が呟く。
マジシャン「ボサっとしてんじゃねぇ!次来るぞっ!!」
副司令官「側面を固めよ!登りきらせるな!」
魔道兵「ってえぇ!!」
ドドンッ!!…ドドオォンッ!!
絶壁の岩場をよじ登る巨大な二つの影。
その恐怖を振り払うかのように、魔道兵達は次々と魔法を放つ。
大軍師「慌てるでないっ。魔力を増幅して確実に捉えよ!」
魔道兵「くそぉ!来るなぁ!!」
ドドォンッ!!
マジシャン「おいっ、粗過ぎるぞ!何とかしろ!」
大軍師「…分かっております」
ザッザッザ…
大軍師「慌ててはなりません。落ち着くのです」
- 19 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/28(水) 17:18:12.67 ID:7VELRRMo
大軍師は崖縁に並ぶ兵士達へ、背後から声をかける。
魔道兵「しかし…どんどんと近づいて……」
大軍師「闇雲に攻撃しても意味はありません」
大軍師の声に、一同はやや落ち着きを取り戻す。
大軍師「良いですか?諸兄らは右の魔物を攻撃しなさい」
魔道兵「……か、かしまりました」
国軍兵「も…もう一匹は…!?」
大軍師「私達がなんとか…食い止めましょう」
大軍師は羽扇を口元へ寄せ、マジシャンをチラリと見る。
マジシャン「………っ!?」
大軍師「……」
マジシャン「…ちっ!今日は厄日だぜ…!!」
マジシャンは頭を掻きながら、舌打ち交じりにぼやく。
大軍師「やれやれ…この戦、高くついてしまいましたねぇ…」
それに応えるかのように、大軍師も小さな声でぼやいてみせた。
- 20 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/28(水) 17:18:39.68 ID:7VELRRMo
ザザッ…
マジシャン「……んで、どうすんだ?」
大軍師「火や雷で攻撃しても、それは一時的なもの…」
マジシャン「まぁトドメとまではいかんわな」
大軍師「…ならば、ここは風を吹かせてみましょうか」
マジシャン「風…?」
大軍師「ひとまず舞台から退場して頂きましょう」
マジシャン「風ねぇ……」
大軍師「貴方と私の二人なら…なんとかなるかと…」
マジシャン「他人任せにしやがって。…ったく」
大軍師「私も頑張りますって」
マジシャン「当たり前だ!頑張ってもらわにゃ割に合わん!」
大軍師「ごもっともで…。さぁ、来ますよ」
大軍師の声を合図に、二人は呼吸を整え目を瞑る。
それは両者が互いの魔力を探るような、そういった動作である。
- 21 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/28(水) 17:19:25.72 ID:7VELRRMo
マジシャン(ほう…!?コイツ……ここまで…)
大軍師「来ますっ!!」
声を発すると同時に、崖よりフンババが飛びあがる。
大軍師は右手で羽扇をかざし、大きく振り下ろす。
大軍師「今ですっ!!」
マジシャン「おう!!」
振り下ろされた扇子からは轟音とともに突風が巻き起こり、
更にマジシャンの放つ風が衝突し、その威力を何倍にも増す。
ドドオオォォンッ!!……ゴアオオオォォッ!!
フンババ「!?」
マジシャン「吹っ飛びやがれぇ!!」
ゴアァッ!!…ググッ…
大軍師「一度浮けば……」
マジシャン「コッチのもんだっ!!」
大軍師は再び羽扇を振りかざし、マジシャンもそれに続き突風を放つ。
- 22 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/28(水) 17:20:08.26 ID:7VELRRMo
豪風は初撃で宙へと舞い上げられたフンババへまたも吹き付けられる。
ドドオオォォンッ!!……ゴアオオォォ!!
フンババ「うぉ……わ…っ!!」
強烈な風により、巨大な図体は後方へと飛ばされ始めるが、
その重さ故、期待ほどの効果は発揮しない。
大軍師「マジシャン殿っ!!」
マジシャン「分かってるよ!」
だが両者は既に読んでいたかと如く、阿吽の呼吸で次の一手を放つ。
二人の手は地面へと向けられ、瞬時に一本の巨大な土柱がフンババへと迫る。
ドドオオォンッ!!…バキバキイィ!!……ボゴオオォ!!
土柱はフンババの腹部へ直撃し、その反動と先の突風により、
ついには遠く後方へと舞い上げられ、その姿を消した…。
マジシャン「おらっ!一丁上がりだ。ハッハッハ!」
大軍師「魔道兵っ!そちらの戦況を!」
大軍師はすぐさま振り向き、残るフンババの様子を伺う。
- 23 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/28(水) 17:20:53.36 ID:7VELRRMo
魔道兵「な、なんとか食い止めていますが……!!」
国軍兵「徐々にっ……登ってきて……」
マジシャン「ちっ…。情けねーなぁ」
スッ
大軍師「……」
マジシャン「…おい、通せって……」
大軍師「彼らを甘く見ないで下さい」
大軍師は防戦する魔道兵達をじっと見つめている。
大軍師「それに、貴方にはまだ余力を残して頂かないと」
マジシャン「散々こき使っておいて…全くよぉ…」
大軍師「さぁ!各自三列に配置をっ!!」
魔道兵「…!?……やりますか!!」
防戦中の魔道兵が三列に配置を変える。
ザッ…ザザッ
魔道兵「配置、完了致しました!!」
- 24 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/28(水) 17:22:10.75 ID:7VELRRMo
大軍師「……三段撃ちっ!!始めよ!!」
大軍師は号令とともに、羽扇を勢いよく突き出す。
合図と同時に最前列の魔道兵が一斉に魔法を解き放つ。
ドドンッ!!…ドオンッ!!…ドドドドッ!!
大軍師「退がれっ!次っ!!」
一列目の魔道兵が魔法を撃ち終えると、後方へ回り、
それと同時に二列目の魔道兵が最前列へと立つ。
大軍師「撃てぇ!!」
魔道兵「食らえぇっ!!」
ドドドンッ!!…ドンッ!!…ドドオォンッ!!
フンババ「…グゥ…!!」
無数に連なる落雷に、フンババは身を屈め、必死に崖へとしがみ付く。
魔道兵「よぉし…!足が止まったぞ!!」
大軍師「さぁ、これからですよっ!」
魔道兵「よし…次は俺達だっ!氷でいくぞっ!!」
- 25 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/28(水) 17:22:38.90 ID:7VELRRMo
魔法を撃ち終えた二列目の兵達が背後へと周り、
次に三列目の兵が前衛へと回りこむ。
マジシャン「なるほど…!こいつは効率的だな」
大軍師「こういった局地でしか使用できませんけどね」
マジシャン「ハッハ!それでもいいじゃないの…!」
魔道兵「撃て撃てーっ!!」
ドドオォンッ!!…ドドンッ!!…ギキイィィンッ!!
魔道兵達はフンババめがけ、一斉に氷柱を放つ。
その衝撃によりフンババの両手はいわばより離れ、まっ逆さまに地へと落下する。
……オオォォ………ドズウウゥゥン…
激しい衝撃音と共に、三対の魔物は全てその場より姿を消した。
魔道士「やった…!やったぞぉ!!」
騎兵「よっしゃあ!!」
大軍師「喜ぶのはまだ早いですよ」
副司令官「……」
- 26 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/28(水) 17:23:09.24 ID:7VELRRMo
大軍師「なんとか追いやった、までに過ぎません…」
副司令官「うむ…。魔物は再び襲い掛かってくるであろう…」
マジシャン「…だな」
大軍師「今のうちに進軍を急ぎましょう」
副司令官「…そうであるな」
大軍師「では……荷車の進軍を開始します」
国軍兵「よし、ゆっくりだ。ゆっくりでいいぞ!」
騎兵「魔道兵っ、道を開けろーっ!!」
ゴゴンッ…ギギッ……ゴンッ…ゴウンッ…
荷車が再びゆっくりと車輪を動かし始める。
大軍師「………」
マジシャン「…物影の動きから察するに…まだまだ数はいるな…」
大軍師「通常は森を棲みかにしているフンババまでも…このような地へ…」
マジシャン「敵さんも必死なのかねぇ…ハッハ!」
大軍師「全く……なんとも骨が折れますねぇ。…ふふふ」
大軍師は扇子で衣服の埃を払いのけ、ゆっくりと歩き始めた。
- 27 : [sage] :2010/04/28(水) 18:10:24.19 ID:OHfV9wSO
>>1乙 最近はまとめ読みだが、楽しく読ませて貰ってるよ
- 29 : [sage saga] :2010/04/28(水) 18:18:16.36 ID:7VELRRMo
それではまた後ほど来ますです!ご支援感謝!ノシ
かい摘んでですがちょっとレスなんぞを…
>>4>>11
ありがとうございます!今なお追いついて頂けるとは感謝です!
知名度低いのに知って頂けるのはありがたい事ですね
>>9
以前にツクールでシコシコやってみたのですが、
スクショ撮ったらいかんせん街とか分からなくて…また頑張ります!
>>27
ありがとうございます!お暇な時にまとめて読んで頂ければ光栄です!
- 34 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/29(木) 02:23:49.53 ID:WNHVsNYo
〜北方司令部、北東の平野〜
ドドッドドッドドッ…
親衛隊「トロル隊…動きはありませんね」
皇太子「……」
親衛隊「オーク隊はほぼ壊滅状態…それにしては…」
皇太子「諸君……」
親衛隊「はは!」
皇太子「周囲の警戒を怠るな」
親衛隊「心得まする!」
親衛隊は散開し、潰走するオーク達を倒しながら周囲を警戒する。
皇太子「……左翼が押されているな」
本国兵「はっ、将校様やや苦戦のご様子」
皇太子「このようなオーク如きに苦戦とは…。右翼は?」
本国兵「右翼、エリート様はオーク隊の悉くを撃破!現在こちらへむかっておりまする」
皇太子「よし、左翼へ兵を当たらせろ。態勢を整え直すぞ!」
- 36 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/29(木) 02:28:30.78 ID:WNHVsNYo
皇太子は手綱を曳き、左翼へと方向転換する。
皇太子「続けっ!!」
親衛隊「はは!」
本国兵「全軍!左翼へあたれーっ!!」
パカラッパカラッパカラッ…
エリート「…殿下は!?」
本国兵「左翼が押され気味につき、布陣を変更致しておりまする!」
エリート「よし…我らも遅れを取るなっ!」
本国兵「ははっ!!」
エリートは皇太子を追うように、左翼へと馬を走らせる。
戦場は左翼…つまりは東方向へと主戦を変え、なおも両軍の攻防が続く。
本国兵「進路を切り開けぇ!!」
オーク「ぬぐぅ!!」
キィンッ!!…ガキィ!!…ザシュッ!!
皇太子「よし…!今だっ!突破せよっ!!」
- 37 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/29(木) 02:33:14.02 ID:WNHVsNYo
皇太子は歩兵の切り開いた進路を一気に駆け抜ける。
皇太子「将校!!」
将校「…こ、これは殿下!?」
皇太子「無事か?」
将校「申し訳…ありませぬ!」
皇太子「無事ならそれで良い!背後を任せる!」
将校「・・・かしこまりました」
皇太子「このまま西へ抜ける!エリート合流せよっ!」
親衛隊「おぉ!!」
皇太子を先頭に馬を走らせ始めるその時、こうほうより羽音が響き渡る。
バサッ・・・…バサァ・・・バサッ・・・
親衛隊「・・・な、なん・・・だ!?」
本国兵「・・・…!!」
皇太子「どうした!?」
親衛隊「で…殿下!!上空を・・・っ!!」
- 47 : [sage] :2010/04/29(木) 19:18:10.31 ID:8GHFWQDO
眼鏡って武器なんだっけ?
つか武器持ってたっけ?なんか犬のイメージしかないんだよね
H×Hに出てきたスクワラみたいな感じで
- 48 : [sage] :2010/04/29(木) 19:39:14.07 ID:lLVL2vQo
>>47
鉱山のときに剣を持っているという描写はある。
どんな剣か分からないけど。
- 51 : [sage] :2010/04/29(木) 21:56:16.77 ID:0wPC.4E0
眼鏡の炎は黒いイメージだな
そうゆう描写があった気もするが
- 52 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/29(木) 23:38:36.43 ID:WNHVsNYo
左翼、それはつまり北の空の暗闇から聞こえる物音。
それは巨大な翼を羽ばたかせる魔物の忍び寄る音である。
バサッ・・・バサッ・・・…バサァッ
本国兵「あ・・・あ、あれは……!?」
皇太子「ド…ドラゴン!!」
その巨大な両翼を上下に羽ばたかせ、空飛ぶ魔物達は徐々に近づく。
親衛隊「殿下っ!!背後を!!」
皇太子「…!?」
親衛隊「トロル隊およびオーガ隊が進軍再開致しました!!」
本国兵「空と陸……両方からっ!?」
皇太子「これを……待っていたのか…」
親衛隊「如何致しますか!?」
皇太子「これだけの相手を一度にするのは難しい…。一旦退くぞ
親衛隊「かしこまりました!」
皇太子は退却の合図を出すと、馬を反転させ走らせ、親衛隊もそれに続いた。
- 53 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/29(木) 23:52:35.83 ID:WNHVsNYo
ドドッドドッ…
エリート「殿下っ!?」
本国兵「エリート様!上空をっ!!」
エリート「上空…?な、なんだ…っ!?」
パカラッパカラッ…
伝令「全軍に告ぐ!退却っ!退却されたしーっ!!」
本国兵「退却!?」
エリート「態勢を一旦立て直すのであろう…」
ザッ…
本国兵「エリート様…?」
エリート「お前は右翼の部隊をまとめ、後方へ退却せよ!」
本国兵「エリート様は如何されるので!?」
エリート「殿下をお守りする!……すぐに戻るっ!!」
エリートは手綱を力強く引き、馬を前進させる。
エリート「……殿下っ!」
- 55 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/30(金) 00:37:56.38 ID:X17XJNUo
親衛隊「殿下!!殿は我らが…っ」
本国兵「歩兵隊、まもんく退却完了致します!」
皇太子「将校は?」
親衛隊「まだ前線に…!まもなくこちらへ向かわれるかと…」
本国兵「どうやら迎撃の態勢に……っ!!」
皇太子「迎撃っ!?無茶を申せ!……ドラゴンが三匹だぞ!!」
皇太子は槍を腰の脇に引き、馬を駆る。
親衛隊「殿下っ!!」
グイッ…パッカパッカ…パカラッ
皇太子とその親衛隊が馬を走らせた瞬間、左翼方面からは多数の矢が打ち上げられる。
シュシュンッ!!…シュンッ…シュシュシュッ!!
その音に反応し、一同が上空を見上げる。…が、親衛隊の一人が異変に気付き皇太子へと声をかける。
親衛隊「殿下ぁーっ!!」
打ち上げられた矢の一本が、方向を誤り皇太子の胸目掛け迫っていた。
ドズッ!!………
- 56 : [] :2010/04/30(金) 01:05:25.34 ID:vgpSsF.0
これで皇太子が死んだら
責任とらされるのは大軍師?参謀?左翼長?
- 58 : [sage] :2010/04/30(金) 01:30:25.62 ID:Xb/mjsAO
責任取るのはいつでもトップじゃね?
トップがいい加減で口達者なら下の者が無理やり責任とらされるかも知らんが
- 59 : [] :2010/04/30(金) 01:35:08.85 ID:vgpSsF.0
じゃあ国王ってこと?
今回の戦いのトップって誰になるんだ?
いつもは各司令がトップなのはわかるんだが
今回皇太子参加してる癖に前線で戦いに参加しちゃってるし
- 60 : [sage] :2010/04/30(金) 05:19:44.36 ID:QAkm9N.o
魔王軍にとって一番都合が悪い人物が責任取らされるに決まってんだろ
多分大軍師が引き摺り下ろされる
- 61 : [sage] :2010/04/30(金) 14:47:05.20 ID:j7krqVgo
だが待ってほしい
皇太子に矢が迫る描写はあるがまだささっていない
しかも擬音が「ドズッ!!………」 よく漫画ではドスッだがドズッではない
つまり言いたいのは家からスモークチーズのにおいがする
- 64 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/30(金) 17:34:11.59 ID:AzgVHRIo
親衛隊「殿下っ!!」
皇太子「……!!」
皇太子は落馬し、自分に覆いかぶさる男とともに、
矢により絶命する馬を見つめる。
エリート「…殿下ご無礼を!お怪我は…!?」
エリートは突き落とした無礼を詫び、皇太子の身体を起こす。
皇太子「構わぬ!それよりも何が起きたのだ!?」
親衛隊「誤射があり、矢がこちらへ何本か…!」
皇太子「迎撃は無理だ!将校を引き上げさせよ!」
親衛隊「はは!」
数騎の親衛隊が馬を走らせ、左翼前線へと向かう。
エリート「……殿下、私の馬へ」
皇太子「お前は…どうするか…?」
エリート「…の、後ほど…合流いたします」
皇太子とエリートはしばし見つめ合い、沈黙する。
- 65 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/30(金) 17:34:51.43 ID:AzgVHRIo
皇太子「……承知した」
エリート「それでは早く馬へ…」
皇太子「…と、でも言うと思ったか?」
エリート「!?」
皇太子「馬もなくどうやってお前は切り抜けるのだ」
エリート「……」
皇太子「ドラゴン相手に徒歩でか?」
エリート「それは…」
皇太子「話にならんな。無謀すぎる」
エリート「……」
皇太子「ははっ、お前に言われたくない…。そんな顔をしているな」
エリート「そんな滅相も…!」
皇太子「助言せよ」
エリート「…!?」
皇太子は肩の埃を払い、上空より迫るドラゴンを見上げる。
- 66 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/30(金) 17:35:52.44 ID:AzgVHRIo
皇太子「…ここに留まり、迎撃する」
エリート「……挟撃により全滅かと」
皇太子「この馬に二人で乗り、退却…」
エリート「…ドラゴンは振り切れぬかと」
皇太子「あえて左翼へ北進し、敵を振り切る」
エリート「……北進…ですか!?」
皇太子「ああ。どうせあちらも退くと踏んでいるのだろう…」
エリート「た、確かに…。しかし、この先は川ですぞ!?」
皇太子「川を背に戦うか…。全く…戦術も何もあったものではないな」
皇太子は腰に手をやり、苦笑する。
ドドッドドッドドッ……
親衛隊「殿下!!」
将校「ご無事でしたかっ!?」
エリート「!?」
皇太子「うむ。なんとか合流出来たな…」
- 67 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/30(金) 17:36:19.53 ID:AzgVHRIo
親衛隊「あとは我々のみです!早急に退却を!」
皇太子「エリート、歩兵の指揮は?」
エリート「先ほど信頼のおける者に委ねております」
皇太子「……」
親衛隊「……ん?あれは…?」
親衛隊の一人が西方向より駆け寄る馬を見つける。
伝令「皆様ご無事で!?」
エリート「伝令か…!」
将校「どうした!?」
伝令「北方司令より伝令!弓騎兵を率い西方面より援護との事です!」
エリート「左翼長殿が!?」
皇太子「…これは朗報だな」
将校「如何…なさるので?」
皇太子「……我らはこれより北へ進路をとる」
親衛隊「北…!?しかし……」
- 68 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/30(金) 17:37:25.27 ID:AzgVHRIo
エリート「北は川…。退路はありません」
将校「…では何故…?」
エリート「もしここで我らが魔王軍の後続を迎撃出来れば…」
皇太子「先程退却した歩兵、そして左翼長の率いる弓騎兵が背後より…」
親衛隊「そうか!挟撃の体勢が…!!」
エリート「あとはドラゴンを振り切れるか…ですね」
将校「歩兵は森へ身を潜めば良いが…我らは…」
皇太子「なんとか逃げ回る以外にないな…」
エリート「あいにくこの暗闇。分散すれば小回りの効く我らに利はあるかと」
皇太子「……おい」
親衛隊「は!」
皇太子「使える馬をかき集めよ」
親衛隊「馬…ですか!?」
皇太子「オークとの交戦で乗り手を失った馬がこの先にいるはずだ」
親衛隊「かしこまりました!行くぞっ!!」
- 69 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/30(金) 17:37:58.99 ID:AzgVHRIo
ドドッ…
皇太子「お前はこのまま北進し、先刻立ち寄った場所で布陣の用意を」
将校「承知しました!おい、行くぞ!」
将校は数名の騎兵を連れ、真っ直ぐ北へと馬を走らせる。
皇太子「伝令、この事を至急左翼長へ伝えよ」
伝令「ははっ!……ご武運を!!」
伝令は再び西方面へ馬首を返し、その場より走り去る。
グイッ…パカラッパカラッ…
皇太子「さて…」
ゴソゴソ…ポイッ
エリート「…!?」
皇太子は懐より傷薬を取り出し、エリートへと投げ渡す。
皇太子「私を庇ったときに負傷したであろう?」
エリート「!?」
エリートは咄嗟に左腕を掴む。
- 70 : ◆1otsuV0WFc [sage saga] :2010/04/30(金) 17:38:50.21 ID:AzgVHRIo
皇太子「隠しても分かるよ。無理をするな」
エリート「……申し訳ありません」
ドドッドドッ…
親衛隊「殿下!」
親衛隊の一騎が馬を連れ、二人の元へと駆け寄る。
親衛隊「とりあえずは一頭、ご用意を!」
皇太子「よくやった!引き続き馬をまとめ上げ北進せよ!」
エリート「密集しては空から迎撃される。極力四散して向かえ!」
親衛隊「かしこまりました!」
皇太子「トロル隊とオーガ隊の動きにも注意を計れよ」
皇太子は馬に跨り、兜のバイザーを深く下げる。
皇太子「さあ正念場だ…。もうひとふん張りいこうか」
エリート「殿下…」
皇太子「もちろん無謀ではなく…勇敢になっ!!」
皇太子とエリートの二騎はドラゴンの真下を抜け、北へと駆け出した。
次へ 戻る 戻る 携 上へ