■戻る■ 下へ
少年「そうだ!天使を見つけに行こう!」僧侶「私もお伴します」
23 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/09(火) 22:56:35 ID:zFGoU.lM
――――

無事パーティーを組んでから四日が過ぎていた
二人は今クエストを受け、その護衛目標の馬車に揺られていた

――

喜んだ少年としてはすぐにも旅立ちたかったが、現実はそうも言っていられなかった

少年「うっ…。お金が、無い……」

旅に出るには様々な物資が必要だった
食料と水。他には固形燃料や場合によってはマントやテント

特に方角しかわかっていないはぐれ旅には、より多くの装備が必要だったのだ


僧侶「私が出しましょうか?」

少年「い、いいですっ」

僧侶「パーティーなんですから、遠慮なさらずに。これは共通財産ですよ」

少年「そ、そうりょさん……」



が、結局二人分を合わせても、長旅に必要な金額には足りていなかった

そこで、冒険者は冒険者らしく、クエストを達成させてお金を稼ぐことになったのだ


24 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/09(火) 23:15:22 ID:zFGoU.lM

――

クエストの内容はこうだった

【 品物を隣の町まで運びたいが、最近になってその道中に魔物が出没するようになった。
  依頼人、馬車、品物を魔物から守り、町まで護衛してほしい――難易度 低 】


少年「魔物……出ませんね」

僧侶「いいことですよ。安全なんですから」

少年「でも、なんかただでお金貰うようで…ちょっと気が咎めるというか…」

依頼人「冒険者の方、気にしなくていいんですよ。無事が一番!そんな時もありますって」
   「それにいちいち気にしてたら疲れちゃいますよ」

少年「はあ、そ、そうですか……」

依頼人「そうですって。……ん、ここいらで野営しましょうか」

大きな木の下に着き、そこで一夜を明かすことに決めた


25 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/09(火) 23:42:32 ID:zFGoU.lM

食事を終え、焚き火を囲みながら、依頼人が作った紅茶を飲んでいた


依頼人「後、一日、二日くらいですかね。この調子だと」

僧侶「その間も何事もなければいいですね」



ガサッ



少年「そ、そ、そうも言ってられないみたい……」
  「い、いつの間にか……囲まれてる!」


犬のような人のような、気味の悪い体を持ち、頭は人の顔している
おぞましい怪物が十数匹、彼らを取り囲んでいる

僧侶「魔を誅するのも我らが本懐。依頼人どの、馬車へ!」

ふわりとした足取りで魔物へ近づいていく

異様に発達した前足をかかげ、僧侶へ襲いかかる
それを巧みに避け、封魔の力を込めた拳打を素早くお見舞いしていく


26 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/09(火) 23:49:52 ID:zFGoU.lM

少年「強い!……わ、こっちくんなっ!」

大多数は僧侶が相手どっているが、漏れたわずかの魔物は少年と、少年が守る依頼人へ襲いかかった

剣を突き出し、正面から突撃した魔物の頭部へ突き刺さる
初めて肉を切り、骨を砕く感触に思わず身震いする

少年「う、うわあああぁぁぁぁーーーーッ!」

怯えを、叫ぶことで追い出し、迫り来る怪物たちを迎撃する


27 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/09(火) 23:50:46 ID:zFGoU.lM

ぅうしゃぁぁぁーーーっ!!


魔物たちが奇声をあげ襲いかかってきた
それを力いっぱいなぎ払う

少年「せいっ!ィヤァッ!!」

ジャクリッ ジャクリッ

なんとも言えない音と感覚が伝わってくる

少年「ぅあっ! ぁぁぁあああーッ!」

背後から体当りされ、もんどり打つ一人と一匹
もがきながらも直感で相手を蹴り飛ばした

少年「キモい……んだよッ!」

ドガッ!


28 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/10(水) 00:13:42 ID:1fGqkMHk
突き飛ばした魔物が焚き火へ突っ込んでいった
火だるまになった魔物が悲鳴をあげてのた打ち回る

火のついた魔物が他の魔物へ突っ込んでいった

ひぎゃあ! あぎゃぁぁぁぁ!

あわを食ったように無様に慌て、火だるまになった魔物を避けだした


そして気付いた


火のついた薪を手に取り、近くにいた魔物に押し付ける

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ

人の言葉で酷く汚い叫び声をあげる

少年(火に…弱いのか!)

そう判断し、依頼人にも火を持つように促す

少年「依頼人さん!火をッ!」

依頼人「わ、分かった!」

弱点を見つけて勇気づけられたのか、少年の背後を守るように依頼人も戦いに参加した

依頼人「う、後ろは、ま、まかせてく、れ…!」


29 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/10(水) 00:23:25 ID:1fGqkMHk

退くに引けなくなったのか、そもそもそんな考えを持つ脳みそがあるのか……
ともかく劣勢になっても、魔物たちは少年たちを襲うのを諦めたりはしなかった

少年「えーいッ!」

火と剣で確実に勢いを削ぎ、一匹ずつ減らしていく
既に感覚は麻痺していて、最初に感じた嫌悪感は無かった

ただ、生き残らなきゃ、守らなくちゃ。その思いだけで少年は戦っていた


依頼人「わは、わははあ、ハハハハハハハハーーッ!」

依頼人はわけもなく笑っていた
目にはうっすらと涙を浮かべ、ひたすら迫り来る怪物たちを、火で打ち払っていた

もはや現実なのか夢なのか、それすらも混乱して分かっていなかっただろう




小半時もたったか、僧侶が最後の一体に掌打を叩きこみ、魔物は全滅した

少年「ハァ…ハァ……」

依頼人「お、終わった……?」


30 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/10(水) 00:28:55 ID:1fGqkMHk

僧侶「よかった、そちらは無事のようですね」

わずかに汗をかいているが、戦闘前の様子と変わらない僧侶が、少年たちの元へ戻ってきた

少年「そ、そうりょさぁん……」

ヘナヘナとその場に崩れ落ちる少年
苦しげに息を荒げている


依頼人「は…ははは……と、父ちゃんやった、ぞ……」

こちらも疲労と緊張のためか、糸の切れた人形のようにぱったりと倒れている
どうやら気絶しているようだ


僧侶「……無事の、ようですね…」





31 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/07/10(水) 00:32:42 ID:m1XxCWeA
ほう
興味深い


32 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/10(水) 00:35:57 ID:1fGqkMHk
その後僧侶は、二人をちゃんとした寝床に移し、一人で魔物たちの死体を片付けていった
お祓いを行い、その場を浄化する
魔物の出現で不浄に満ちていた場が一転、清潔な聖域へと変わっていった

僧侶「…これでよし。これで魔孔は塞がれたはず」


――魔孔

魔物が現れる孔。偶然出現し、魔界と繋がっていると言われている
たいていは低級の魔物が通るくらいの小さな孔しか開かない
その孔を通ってきた魔物を倒し、然るべき措置をとることで、孔を閉じることが出来る
穴を閉じる作業は、主に教会で訓練を受けた神父が行なっている

―――

僧侶「手持ちは少ないが、薬を作っておこうか。起きた時、きっと大変な事になっているに違いない」

そそくさと準備をして、薬草を組み合わせて薬を作っていく


――――

少年「ん……ン。…ふあぁぁ〜……」

僧侶「おはようございます。…さ、これを飲んで下さい。元気が出ますよ」

少年「んム……・・・!?ゲホッ、ゴホッ!な、なんですかこれ!うあぁぁ、すっっっごく苦いっ」

僧侶「ハハハ、効くでしょう?私もこの苦さにはまだ慣れないんですよ」


33 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/10(水) 00:41:54 ID:1fGqkMHk

僧侶「味は最悪ですが、効果はテキメンですよ。一口に飲んだほうが、さほど辛くない」

少年「ん、んんんー………」

鼻をつまんで一気に飲み干した
苦味が口内を暴れ回り、舌が麻痺した感覚におちいった……気がした


程なくして依頼人も目を覚まし、先ほどの少年と同じリアクションを取り、笑いを誘った


――

再び旅を再開した一行
残りの道程は何事も無く、予定通りに町へ到着した


依頼人「ハハ。一時はどうなることかと思いましたが、無事たどり着けました。ありがとうございます!」

少年「そんな!こちらこそ危険に晒してしまってごめなさい」

依頼人「いやいや!あなた達は素晴らしい活躍だったじゃあないですか!」
   「もっと胸を張って下さい!保証しますよ。あなた方はきっと素晴らしい冒険者になる!」


そう言い残して朗らかに笑いながら去って行った


34 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/10(水) 00:44:56 ID:1fGqkMHk
中途半端ですが残りは本日の夕方頃に投下したいと思います
読んでくれた方ありがとうございました。レスくれた方も感謝


37 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/07/10(水) 10:48:16 ID:qVF5NDP.
僧侶が便りになりすぎてツラい


38 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/07/10(水) 11:44:39 ID:yu/mYQtk
モンク僧って感じか


39 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/07/10(水) 12:57:48 ID:umu2K8nU
少林寺のお坊さん思い出した



次へ 戻る 上へ