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少女「治療完了、目を覚ますよ」−オリジナル小説
- 645 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga]
投稿日:2012/10/22(月) 19:28:21.61 ID:NmcSo/nB0
こんばんは。
◇
何度も読み返すようにしていますが、誤字脱字が
どうしても解消できません。
気をつけるようにいたしますので、
引き続き教えていただけますと嬉しいです。
◇
題名は特に決めていませんので、しっくりいくものを
探していければと思います。
おたんこナーバスが個人的にウケました。
◇
第九話を投稿させていただきます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
- 646 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:30:01.92 ID:NmcSo/nB0
☆
薄暗い部屋の中、少年三人は背中合わせに立っていた。
三人とも、白い病院服の所々が鋭利な刃物で切り刻まれ、
血が流れ出している。
彼らの周りには、同年代の少年や少女達が、
刃物で喉笛を切り裂かれ、無残な死骸となって転がっていた。
「通信が繋がらない……完全に遮断されたぞ!」
少年の一人がそう言う。
彼らは、手に何も持っていなかった。
ヘッドセットを地面に叩きつけ、もう一人の少年が言った。
「チッ。完全にジャックされてやがる。
精神世界と現実世界が、これでもかと完璧に切り離されてる」
- 647 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:30:48.66 ID:NmcSo/nB0
「大河内、何か構築できるものはないのか?」
大河内と呼ばれた少年が、青くなり震えながら言う。
「……出来ない……精神防壁が張ってある。
石ころ一つ持ち上げられない……」
「しっかりしろ。ここであいつを倒さなきゃ、
俺達もどの道犬死にだ」
「で……でも高畑……!」
高畑と呼んだ少年に、大河内は叫ぶように言った。
「丸腰じゃどうしようもないよ!
みんな、完全に『殺され』た!
俺達も死ぬしかないじゃないか!」
- 648 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:31:30.77 ID:NmcSo/nB0
「安心しろ、大河内、高畑。お前達は僕が必ず守る」
そこで、もう一人の少年が口を開いて、足を踏み出した。
そして腰を落とし、腕を体の横に回し、拳闘の構えを作る。
「腕一本になっても、お前達は僕が守る。
高畑は僕のサポートを。
大河内は外部との連絡通路を急いで構築してくれ。
一からでいい」
冷静に指示を出し、彼は周りを見回した。
一面、蜘蛛の巣だらけの空間だった。
時折、引きつったような奇妙な笑い声が暗闇に反響している。
「決して、何が起こっても慌てるな。
僕が死んでも、お前達二人はすぐに現実世界に戻れ。
分かったな?」
- 649 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:32:07.38 ID:NmcSo/nB0
大河内が泣きながら何度も頷く。
そして、彼は空中の、
目に見えないパズルピースを掴むような動作をして、
それを見えないキャンバスにはめ込み始めた。
高畑が少年の脇で同じような構えを取り、低い声で聞く。
「……大河内はあの調子だ。何分もたせればいい?」
「二分……二分三十秒」
「最悪だな」
キチキチキチキチ。
金属のこすれる音がして、
二人の前方に、奇妙な「物体」が現れた。
- 650 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:32:48.30 ID:NmcSo/nB0
ドクロのマスクを被った人間の頭部。
そして、丸いボールのような体。
所々が腐食して崩れ、内部の歯車やチェーンが見えている。
ムカデのような足。
蟹股のそれらが、カサカサと蟲のように動いている。
手は、数え切れないほど巨大な、
丸い体から突き出していた。
それらの手一つ一つに、ナタのような刃物を持って、
振り回している。
また、キチキチキチキチと音がして、
ドクロのマスクがこちらを向いた。
- 651 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:33:36.65 ID:NmcSo/nB0
「スカイフィッシュのオートマトンか。でもどうして……」
「高畑、考えている暇があったら動け。来るぞ!」
少年がそう言って、
こちらに向かって猛突進をしてきた奇妙な「物体」に向けて走り出す。
そして彼は、数十本の腕が振り回す鋭利なナタを一つ一つ、
見もせずにかわすと、丸い胴体部分に、腕を叩き込んだ。
放射状の空気の渦が出現するほどの、早い拳速だった。
空気が割れる音と共に、
二、三メートルはある「物体」が数メートルは宙を浮き、
足をばたばたさせながら、背中から地面に落下する。
大河内がそこで悲鳴を上げた。
- 652 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:34:15.98 ID:NmcSo/nB0
振り返った二人の耳に、大量の、
キチキチキチキチキチという、機械の部品がこすれる音が響く。
幾十、幾百もの「物体」が、こちらに向けて近づいてきていた。
「二分三十秒でいいんだな、坂月!」
高畑がそう言って腕を構える。
坂月と呼ばれた少年は、
自分達を取り囲む「物体」の大群を見回し、
一瞬だけ口の端を吊り上げて笑った。
しかしすぐに無表情に戻り、
唖然としている大河内の頭を、ポン、と撫でる。
「いや、一分三十秒でいい」
- 653 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:34:42.42 ID:NmcSo/nB0
彼の声に、大河内がすがるように言う。
「そんな短時間じゃ無理だ! 扉を作るのはいくら僕でも……」
「もう作らなくてもいい」
彼はまた、口の端を吊り上げた。
「スカイフィッシュ……僕を誰だと思ってる……」
彼は腰を落とし、醜悪に、舐めるように、呟いた。
「僕は、S級能力者の坂月。坂月健吾だぞ」
- 654 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:35:18.74 ID:NmcSo/nB0
★Karte.9 name★
「汀ちゃん、しっかりして! 汀ちゃん!」
担架に乗せられて運ばれていく汀を、
理緒が必死に追っている。
汀は、左腕を押さえて、意味不明な言葉を喚きながら、
担架の上でもだえ苦しんでいた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛いー!」
彼女の絶叫が響く。
担架を押しながら、大河内が、
看護士に押さえつけられている汀に口を開いた。
「すぐに痛みは消える。もう少し我慢するんだ!」
「せんせ……死ぬ! 私死んじゃう!」
- 655 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:36:07.97 ID:NmcSo/nB0
「大丈夫だ死なない! 私がついている!」
大河内がそう言って汀の右手を握る。
担架を冷めた目で見ながら、施術室の扉に、
腕組みをして圭介が寄りかかる。
そこに、冷ややかな瞳でソフィーが近づいた。
「……どういうことか説明してもらいたいですね、ドクター高畑」
「何だ?」
「どうして、私まで強制遮断されて戻ってきてしまったのかしら?
これは、故意だとしたら重大な過失だと思うのですけれど」
彼女の脇に、黒服のSPが二人ついて、腰に手を回して圭介を見る。
「施術は中止だ。予期しない出来事は、
この仕事にはよくあることだろう?」
- 656 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:36:46.82 ID:NmcSo/nB0
飄々と返した圭介に、ソフィーはバンッ! と
壁を平手で叩いて怒鳴った。
「私一人でも治療できました!
ドクターだって仰っていたではないですか、これは『競争』だと。
なら何故、そちらのマインドスイーパーがミスを犯した時点で
やめさせられなければいけないのでしょうか!」
「君一人が治療に成功しても、何の意味もないんだよ」
そこでソフィーは、発しかけていた言葉を飲み込んで固まった。
圭介が、ゾッとするような冷たい目で自分を見ていたからだった。
「で……でも……」
言いよどんだ彼女に、圭介はポケットに手を突っ込みながら言った。
「それに、君一人ではこの患者の治療は無理だ」
- 657 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:37:26.59 ID:NmcSo/nB0
「何ですって!」
「君の事は、よく知ってる。調べさせてもらったからな。
この患者は、特異D帯Cタイプだ。その意味が分かるな?」
「え……」
一瞬ポカンとして、次いでソフィーは青くなった。
「Cタイプ……?」
「聞いていた『情報』と違ったかな?」
圭介がせせら笑う。
「……人でなし!」
そう叫んで掴みかかろうとしたソフィーを、
SPの二人が押さえつけて止めた。
- 658 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:38:03.16 ID:NmcSo/nB0
「この件は正式に元老院に抗議させていただきます。
ドクター高畑。
あなたはマインドスイーパーを何だと思っているのですか?」
歯を噛みながらそう言ったソフィーを、意外そうな顔で圭介は見た。
「ん? 天才なら、とっくに気づいていると思ったがな」
「茶化さないで! Cタイプの患者に、
よくも私を一人でダイブさせたわね!」
「君達マインドスイーパーは道具だ。
それ以上でもそれ以下でもない」
圭介はそう、冷たく断言すると、
押さえつけられているソフィーの前に行って、
ポケットに手を突っ込んだまま無表情で見下ろした。
- 659 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:38:49.64 ID:NmcSo/nB0
「道具は文句は言わない。もし言ったとしても、
それは道具の戯言であって、ただのノイズだ。
道具はただ、俺の思うとおりに動いていればいい」
圭介はせせら笑いながら、鉄のような目でソフィーを見た。
「図に乗るなよ。道具」
「この……!」
「次のダイブは三時間後だ。
精々『情報』を整理しておくんだな」
髪を逆立てんばかりに逆上しているソフィーを尻目に、
圭介は施術室を出て行った。
- 660 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:39:34.52 ID:NmcSo/nB0
★
「薬で眠らせてある。大丈夫だ。
精神世界と現実世界の区別がつかなくなって混乱していただけだ」
大河内が、赤十字の病室でそう言う。
汀は、ベッドに横になってすぅすぅと寝息を立てていた。
寝る前によほど錯乱したのか、ベッドの上は乱れきっている。
それを丁寧に直しながら、理緒は涙をポタポタと垂らした。
「ごめんなさい……ごめんなさい……
私が、もっとちゃんと出来てれば……」
圭介は一瞬それを冷めた目で見たが、
手を伸ばし、理緒の頭を撫でた。
- 661 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:40:12.79 ID:NmcSo/nB0
「気にするな。俺も確実なナビが出来なかった。
君一人の責任じゃない」
「高畑先生……私、やっぱり……」
そこで言いよどみ、しかし理緒はおどおどしながら続けた。
「私、大人の人の心の中にダイブするの、
向いてないんじゃないでしょうか……
今回だって、汀ちゃんの足手まといにしかならなかったです」
圭介と大河内が、一瞬顔を見合わせた。
そして圭介は軽く微笑んでから言った。
「そんなことはない。君がいなければ、
汀を制御することは今よりもっと難しくなってる」
「……本当ですか……?」
「ああ、本当だ」
- 662 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:40:48.72 ID:NmcSo/nB0
圭介はそう言って、理緒の手を握った。
「汀を頼む。この子には、ストッパーが必要だ。君のような」
「すみません……ありがとうございます……」
また涙を落とし、手で顔を覆った理緒を椅子に座らせ、
大河内は圭介のことを、カーテンの向こうの隅に引っ張っていった。
そして強い口調で囁く。
「……まさか、ダイブを続行させるつもりじゃないだろうな?」
「察しがいいな。当然だろ?」
「二人とも、ダイブが出来る精神状態じゃない。
ソフィーも協力する気が皆無だ。
このプランは見合わせた方がいい」
「そうでもないさ」
- 663 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:41:23.74 ID:NmcSo/nB0
「何を根拠に……」
大河内は、そこで入り口に立ってこちらを睨んでいる
ソフィーに目を留めた。
SP二人は、病室の入り口に立っている。
「……少し、話をさせて欲しいわ」
ソフィーはそう言うと、理緒を指差した。
「ドクター大河内、ドクター高畑、席を外してくださる?」
「え? 私ですか……?」
きょとんとして理緒がそう言う。
ソフィーは不本意そうに鼻を鳴らし、言った。
「他に誰がいるのよ」
- 664 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:41:58.39 ID:NmcSo/nB0
★
圭介と大河内が病室を出て行き、
ソフィーは椅子の上に無作法に胡坐をかいて、汀を睨んでいた。
「あ……あの……」
理緒が言いにくそうに口を開く。
「お話っていうのは……」
「とても不本意だけど、あなた達に協力を要請したいわ」
理緒はきょとんとして、彼女に返した。
「協力……? でも、私達とは競争したいって……」
「事情が変わったのよ。協力、するの? しないの? はっきりして」
ヒステリックに声を上げるソフィーを手で落ち着かせ、
理緒は続けた。
- 665 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:42:37.00 ID:NmcSo/nB0
「私としては、あなたのような優秀なスイーパーさんと
ご一緒できるのは嬉しいですけれど、
汀ちゃんが何と言いますか……」
「こんなかたわ、何の役にも立たないじゃない。
特A級なんて、聞いて呆れるわ」
彼女を蔑むようにそう言ったソフィーに、
理緒は深くため息をついた。
「……めっ」
そう言って、彼女の鼻に、人差し指をつん、と当てる。
何をされたのか分からなかったのか、
ポカンとして停止したソフィーに、理緒は言った。
「人を、『かたわ』なんて言ってはいけません。
人を、馬鹿にしてはいけません。
いつか自分にそれが返ってきますよ」
- 666 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:43:13.36 ID:NmcSo/nB0
「こっ……子供扱いしないでよ!」
真っ赤になってソフィーが怒鳴る。
人差し指をそのまま自分の口元に持っていき、
静かにするように示してから、理緒は汀の頭を撫でた。
小白が、汀の枕元で丸くなって眠っている。
「他人は、自分を映す鏡だって、私は小さい頃、
私の『先生』に教わりました。
怒っていれば怒るし、悲しんでいれば一緒に悲しんでくれます。
それが、他人なんです。
ですから、ソフィーさんは、もっと私たちに優しくしても、
大丈夫なんですよ?」
「…………」
「それが、ソフィーさんのためになるのですから」
- 667 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:43:45.68 ID:NmcSo/nB0
「……脅し?」
小さい声でそう聞いたソフィーに、慌てて理緒は言った。
「そ、そんなことはないです。
そう受け取ってしまったのなら謝ります。私はただ……」
「まぁ、私を貶めようとしているわけではないことだけは
評価してあげるわ」
腕組みをして、ソフィーは、
この話は終わりだと言わんばかりに指を一本、顔の前で立てた。
「私達がダイブさせられようとしている人間は、
D帯のCタイプ型自殺病発症患者よ」
「D帯? Cタイプ?」
- 668 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:44:16.19 ID:NmcSo/nB0
「あなた、本当に何も知らないのね。
そんなでよくA級スイーパーの資格を取れたものね。
驚いて声も出ないわ」
「汀ちゃんも、この前気になることを言っていましたけれど……
自壊型と防衛型とか……」
「ああ、日本ではそう言うのね」
ソフィーは頷いて、手を開いた。
「いい? 馬鹿なあなたに教えてあげる。
自殺病は、大別して五つの分類に分けられるわ。
一つは、通常、緩やかに進行していくAタイプ。緩慢型と言うわ」
指を一本折って、ソフィーは続けた。
- 669 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:44:52.67 ID:NmcSo/nB0
「二つ目は、あなたがさっき言った自壊型。
これは緩慢型が悪化したケースね。
これにかかった患者は、精神分裂を起こし、
結局は自殺するケースが最も多いわ。
Dタイプよ。
防衛型は心理的防衛壁が大きいタイプ。これがBタイプ」
すらすらと医者のようにそう言って、ソフィーはまた二本指を折った。
「そして、防衛型の反対、攻撃型。
攻撃性が異常に強い患者の精神内壁のことを指すわ。これがEタイプ」
「そ……そうなんですか……」
- 670 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:45:37.64 ID:NmcSo/nB0
「そしてCタイプ……まぁ、その中でもいろいろ種類があるんだけど、
説明しても分からないと思うから、しない。
とにかく、Cタイプは『変異型』という特殊な型が分類されてるの。
その中でも、D帯Cタイプというのは、
日本語で言えば『特化特異系トラップ優位性変異型』と言えるわ」
「どういうことですか?」
首を傾げた理緒に、髪をかきあげながらソフィーは続けた。
「簡単に言えば、マインドスイーパーに対する精神的トラップを、
訓練によって心の中に多数植えつけた人間のこと。
私達が最初に入った部屋とか、次に入った空間、
異様に面倒くさい手順だったでしょ?
防衛型の特徴も出てるけど、ああいうのは、
時間稼ぎをして私たちのタイムアップを狙ってくる、
完全な意図的トラップなの」
- 671 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:46:17.24 ID:NmcSo/nB0
「じゃあ、今回の患者さんって……」
「ええ。マインドスイープに深く関わっている人間で間違いないと思うわ。
それだけに、危険性が急上昇するのよ」
「私達に対する対策を、知っているわけですからね……そ
ういえば、中で私達の名前が呼ばれたような……」
「知ってるからよ。私達のことを。
アミハラナギサって言うのは、気になるけど」
ソフィーは鼻を鳴らして、忌々しげに言った。
「それでも、私なら一人で出来ると思ってたけど、
この患者、D帯ということは攻撃性も持ってるの。
通常、D帯とCタイプが合わさった場合、
専門のスイーパーでチームを組んで、十人単位のグループでダイブするわ」
「え……?」
思わず聞き返した理緒に、ソフィーは頷いた。
- 672 名前:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY [saga] 投稿日:2012/10/22(月) 19:47:06.83 ID:NmcSo/nB0
「私達、ハメられたのよ。あの高畑とかいう医者に。
ドクター大河内も信用は出来ないわ」
「そんな……お二人とも、良い方々です」
狼狽しながらそう言った理緒を馬鹿にするように見下し、
ソフィーは吐き捨てた。
「信じるのは勝手だけど、
夢を見るのは結果を見てからにした方がいいと思うわ」
「お二人が私達を騙すなんてこと、ありません。
ソフィーさんの思い違いです」
断固としてそう言う理緒を呆れたように見て、
ソフィーは肩をすくめた。
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