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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その39
622 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 17:59:23.50 ID:WQrV5ZQbo
〜北方、最北の村〜

 ザッザッザッ……

参謀「ここ、ですか?」

副官「はい……」

 参謀と副官をはじめ、数人の目の前には川らしき黄奎が広がっている。

 らしきとは、つい先日出来たばかりで、まだそれが川と認識されたわけではないからだ。

青年「ヒゲのオッサンはよぉ……最後まで戦い抜いたんだぜ……」

参謀「ええ。彼もまた屯田兵、つまりは本国の軍人でありました」

副官「……っ」

参謀「献花を」

 ザザッ……スッ

青年「オッサン、安らかに眠ってくれ。この村は必ず……俺達が守っていくからよ」

参謀「……さて、行きましょう」

副官「……はい……っ」スクッ

 この後、新たに川として認められたそれは、ヒゲの男の名前を冠した。


623 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:09:55.75 ID:WQrV5ZQbo


参謀「では、我々は北方司令部へ戻らせて頂きます」

青年「ありがとうございやした」

副官「……」

青年「副官のネーチャンよ、いつまでも悔やんでても仕方ないぜ」

副官「……ええ」

青年「オッサンだってきっと、そう思ってる。あんたはほんと、良くやってくれたんだからよ」

副官「……ありがとう」

青年「そんじゃまた。たまには顔見せに来てくれよなっ!」

参謀「また収穫期になったらお邪魔しますよ。手伝いもかねて」

青年「そいつはいいや! 待ってるよ」

 ザッザッザッ……

参謀「この村は君が思っている程、弱くはないですよ」

副官「そう、ですね……」

参謀「次は君が強くなる番です。私は支えますよ、貴女は私の副官なのだから」


624 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:10:46.13 ID:WQrV5ZQbo
〜東方司令部〜

東方参謀「……もう昼か。あんな戦いがあった後だと、時が早く感じるわい」

東方司令「独り言がデカイな。流石ジジイだ」テクテク

東方参謀「行き遅れのババアが偉そうに」

東方司令「生き遅れてないっ! ボクは行ってないだけだ!」

東方参謀「ふん」

東方司令「北側に魔王軍の残党が2000ほど終結してるそうだ」

東方参謀「結構な数だな。面倒な真似を」

東方司令「ここの兵を全軍、海峡に移す」

東方参謀「何? ここはどうするのだ?」

東方司令「解体する。前にもそのつもりで話したはずだ」

東方参謀「……本部の許可は?」

東方司令「本部が言ってた事だろ。東方司令部を解体するってな」

東方参謀「何時の話だ。あれは左大臣一派の……」

東方司令「うるさいなぁ。とにかくここはもう要らん。東方司令部は解散する」


625 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:11:30.78 ID:WQrV5ZQbo
東方参謀「お主はそれで良いのか?」

東方司令「良い? 良いに決まってるだろ」

東方参謀「なら、何も言うまい」

東方司令「左大臣もお師匠も死んだ。各司令部にボク達が駐屯する意味はもうない」

東方参謀「それもそうだな。しかし、皮肉なものだな」

東方司令「皮肉?」

東方参謀「かつて捨て石とされた海峡が残り、月の宴の拠点とされたここがなくなるとはな」

東方司令「時代の変化ってやつだろ。これが正しい姿なんだろうな」ザッ

東方参謀「しかし、解体となると……ワシも参謀職を外れるわけか」

東方司令「本国にでも戻ったらどうだ? 東方セ・ン・セ」

東方参謀「貴様はどうする?」

東方司令「ボクは自由に生きる。全てが終わったらな」

東方参謀「……」

東方司令「それじゃ、進軍の手配は任せたよ」ザッザッ

東方参謀「勝手な奴よ。全くもってな」ザッザッ


626 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:12:16.71 ID:WQrV5ZQbo
〜夕刻、大きな街〜

 パッカパッカパッカ……

魔道士「うわぁ、久しぶり〜!」

召喚士「確かにそうですね。いつ以来だろ……」

魔道士「街並みもそんなに変わってないし、なんだか落ち着くなぁ〜」

召喚士「色々と、思い出深い所でもありますよね」

魔道士「そうですね〜」

 パッカパッカパッカ……ドドォ

魔道士「着いたーっ!」

召喚士「……っ」ゴクッ

魔道士「まだ正面も空いてる。召喚士さん、行きましょう!」

召喚士「あ、はいっ」

 スタスタスタ

使い「へい、毎度どうも! 明日の取引もヨロシク!」

魔道士「あ、使いさんだ!」


627 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:12:58.24 ID:WQrV5ZQbo
使い「むむっ、すんませんね今日はもうお終い……」

魔道士「使いさん、お久しぶりです!」ニコッ

使い「お終い……おし……しいいぃぃぃぃ!?」ダッ!!

召喚士「行っちゃった……」

魔道士「……?」キョトン

 タッタッタッタッタッ!!

大商家「ま、魔道士……っ」

母「魔道士……魔道士っ!!」ダッ

魔道士「お父さん、お母さん……ただいまっ!」ダッ

 ギュッ

母「よくぞ無事で……っ、良かった……!!」

魔道士「い、痛いよぉ……もうっ、えへへ」ギュッ

大商家「朱雀先生も元気そうで何よりですな。ささ、中へ」

召喚士「は、はい……っ。失礼致します」

使い「お嬢さん……っ! ますますお綺麗になられて……くぅ〜っ!!」


628 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:13:26.93 ID:WQrV5ZQbo
〜大商家の家、居間〜

母「ごめんなさいね。帰ってくるならご馳走を用意したのに〜」ドササッ

大商家「そうだぞ全く。どうしていつも、連絡をくれないんだ」ゴトッ

 コンモリ

召喚士「……」

魔道士「十分だと思うけど……」

母「そう? とりあえず有りあわせの商品を持ってきたんだけど」

使い「旦那様っ、酒はこんなもんで良かったですか?」ドサッ

大商家「ご苦労。お前もそろそろ休んでくれ」

使い「へいっ!」

大商家「さぁ、まずは飲もうじゃないか」キュポン

召喚士「い、いただきます……っ」トクトクッ

母「この前、大きな戦いがあったでしょう……? 大丈夫だったの?」

大商家「そうそう。それに良からぬ噂も流れておったようだし……」ゴクゴク

魔道士「うん。えっと実は……」


629 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:14:06.64 ID:WQrV5ZQbo


大商家「ほうほう、そうだったのかぁ」

母「それじゃあまだ、最期の戦いが残っているのね……」

魔道士「うん」

母「それが終わったら、落ち着くのよね?」

魔道士「うん。私、絶対に無事……戻ってくるから!」

母「当たり前よ、もうっ」

大商家「それで、その時にか?」

魔道士「へっ?」

大商家「今日はその為に、朱雀先生を連れて立ち寄ったのだろう?」グビッ

召喚士「その為? あ……」

魔道士「違う違う違う違うっ!! 違うのっ! それは関係なくてまた後での事なのっ!」

母「後で?」

魔道士「――っ!! もうっ! いいからその話はおしまいーっ!!」カアァ

召喚士「……っ」


630 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:14:44.21 ID:WQrV5ZQbo


母「お風呂の準備が出来たみたいだから、入ってきたら?」

魔道士「あっ、じゃあお母さんも一緒に入ろうよ!」

母「そうね、じゃあ一緒に入りましょうか♪」ニコッ

魔道士「それじゃ行ってきますー」

大商家「男湯の方も準備出来てるようだな。朱雀先生も先に入ったらどうかね?」

召喚士「いえっ、お先にどうぞ!」

大商家「いやいや、私は自分の風呂があるのでね。気にしなくて結構だよ」

召喚士「そ、そうですね。それじゃあ……」スクッ

大商家「場所は分かるかな? 正面玄関の右手側だ」

召喚士「ありがとうございます」

 スタスタスタ

召喚士「しかし、ほんとホテルのような家だなぁ……」

 スタスタスタ

召喚士「あ、ここか……」


631 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:15:12.45 ID:WQrV5ZQbo
 カポーン

召喚士「……はぁ〜っ」バシャッ

 ガラッ

召喚士「!?」

使い「おっと、これはお客人! ご一緒させていただきますよ!」ザブン

召喚士「あ、どうぞどうぞ」

使い「すいやせんね。元来、従業員用の風呂なもんで」

召喚士「なるほど、だからこんなに広いんですね」

使い「そうなんですよ。ぷっはぁ〜」ザバァ

召喚士「使いさんは、ここでお勤めしてもう長いんですよね?」

使い「そっすねぇ。お嬢さんがまだこーんな小さい時から務めてますから」

召喚士「まだお若いのに?」

使い「孤児だったんで、8つの時からなんで、もう20年目っすわ。はははっ」

召喚士「20年……ん? てことは、28ですか!?」

使い「へいっ!」バシャバシャ


632 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:15:47.90 ID:WQrV5ZQbo
召喚士「俺と同い年ですよっ」

使い「そうだったんですかい!? いやぁ、信じられないっすわなぁ」

召喚士「そうですか?」

使い「ええ。あっしはただのしがない商売人見習いじゃあないっすか」

召喚士「そんな事は……」

使い「いえいえいいんす。でもお客人、あなたは違う。立派な方だ!」

召喚士「俺にとっては、使いさんの方が全然立派ですよ」

使い「へぇっ!?」

召喚士「1つの事に20年間、逃げ出さずに頑張ってる」

使い「いやぁ、それしかする事も出来る事もねーし、何より好きなんすよ、この仕事がねっ」

召喚士「そういう風に思える事が素晴らしい事だと思います」

使い「へへっ。そいつはありがとうございやすっ!」

召喚士「やっぱり将来は商人に?」

使い「そうっすねぇ……。今は旦那様の下にいるのが楽しいんで、考えてないっす」

召喚士「へぇ〜」


633 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:16:20.16 ID:WQrV5ZQbo
使い「取引のまとめ役やらして貰ってるんでそれがもう楽しくて」

召喚士「大商家さんも信頼して、使いさんに全部任せているんでしょうね」

使い「ははっ、そうだといいっすけどねぇ」バシャッ

召喚士「これからは商人の時代になりますよ」

使い「えっ?」

召喚士「魔物との戦いが終われば、ワーカーは激減するでしょう」

使い「ああー、そうっすねぇ」

召喚士「そうすれば食糧やハンティングの頻度も減りますし……」

使い「そうかっ! 流通する物資が減る。そして仕入れる側も減るってわけだ」

召喚士「流石ですね」

使い「でも、何でそれが商人の時代に?」

召喚士「仕入れが減るという事は、今後は自分達で仕入れなくてはいけません」

使い「えぇっ!? あ、でもそうか……」

召喚士「はい。しかし経験がないので経験者を募る必要がある」

使い「そうっすねぇ。今まではお抱えのワーカーとか……あっ!!」


634 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:17:04.68 ID:WQrV5ZQbo
召喚士「そうです。今後は自分達が元ワーカーを雇う事になると思います」

使い「そうだよなっ、競争率も激しくなるし……」

召喚士「いくら魔物がいなくなったとはいえ、獰猛な獣を相手にしたりもします」

使い「断崖絶壁の崖や、辺境の地にも行くかもだし……」

召喚士「その為にはワーカーの力が必要なんです」

使い「……こりゃあ今からでも動く必要があるな」ニヤッ

召喚士「……?」

使い「だってそうっしょ。いい人材からドンドン消えていっちまう! 今から声をかけとかないと!」

召喚士「そうですね!」

使い「他のとこに取られちまったらどうしようもねぇ! さっそく調査だ!」ザバッ

召喚士「は、早いですね……っ」

使い「善は急げってね! 色々とありがとうございやす!!」

召喚士「いえ、こちらこそ」

使い「なかなかセンスありますよ、商売のね!」

召喚士「!?」


635 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:17:32.29 ID:WQrV5ZQbo
使い「あ、そうそう」ザバッ

召喚士「……?」

使い「どうか、お嬢さんの事……宜しくお願いしやす!!」ペコッ

召喚士「へっ!?」

使い「先生なら安心ですわ。旦那様も含め、みーんな喜んで賛成ですよっ」

召喚士「えっ、あの……っ!」

使い「良かったらこの大商家を継いで、2人で更に繁盛……」

召喚士「いやいやいやっ!! それは無理です!!」

使い「……そうっすか、残念。そしたら俺も働き甲斐があるってもんなんだけどなぁ」

召喚士「そっ、そもそも一緒になるなんてまだ一言も……」

使い「そこは頼みます」

召喚士「!?」

使い「あなたは本当に立派な人だ。お嬢さんを守っていけるのはあなたしかいないっ!」

召喚士「……っ」

使い「だからこそっ、どうか頼みます……お嬢さんを!」


636 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:18:07.45 ID:WQrV5ZQbo


大商家「長かったね、ゆっくり出来たかな?」

召喚士「は、はいっ。いい湯でした……っ」

大商家「使いと一緒だったらしいね、聞いたよ。のぼせたんじゃないか?」

召喚士「えっ、ええ……色んな意味で……」

大商家「じゃあちょっと、バルコニーで涼しみがてら、1杯付き合わんか?」

召喚士「え、ええ。喜んで」

 スタスタスタ……

召喚士「あぁ〜涼しいっ」

大商家「だろう? 今日は少し、肌寒いくらいかな」スッ

召喚士「あ、いただきます」

大商家「……あれから、魔道士はどうかな?」

召喚士「え……っ?」

大商家「私達が本当の親ではなく、自分が落胤だと知ってから……」

召喚士「色々と悩でいる時もありました。でも、今はもう……」


637 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:20:06.10 ID:WQrV5ZQbo
大商家「そうか」

召喚士「むしろ魔道士さんにとって、お2人は本当の親なんだと思います」

大商家「……?」

召喚士「魔道士さんは王家の落胤だという事をむしろ……否定的で」

大商家「……」

召喚士「あっ、もちろん憶測なんですけど、でも言葉の節々にそれを感じるような事も」

大商家「そうか……」

召喚士「ついこの前もそうでした」

大商家「この前?」

召喚士「はい。サタンとの最終決戦を前に、家族と会っておけという話が出たんです」

大商家「……」

召喚士「その時、魔道士さんは王家ではなく、お2人の事だけを語っていました」

大商家「……っ」

召喚士「そしてそれは、俺も同じ意見であり、気持ちです」

大商家「魔道士……っ」


638 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:20:46.50 ID:WQrV5ZQbo
召喚士「魔道士さんは王家の人間なんかじゃない。紛れもなくこの大商家の1人娘なんです」

大商家「……ありがとう」

召喚士「……いえ」

大商家「左大臣の時の事もあって、王家は完全に魔道士から手を引いている」

召喚士「え、ええ……。あの……それが何か?」

大商家「私はあの子の父親で、良いのだな?」

召喚士「もちろんです。それが、みんなが幸せになる1番の形だと思います」

大商家「では、あの子の父親として言う。どうか、魔道士を幸せにしてやってくれ」

召喚士「――――っ!?」

大商家「朱雀先生、君ならば付き合いも長いし、あの子の全てを受け入れてくれている」

召喚士「あの……あの……っ」

大商家「どうか魔道士と一緒になって、本当の自由を、翼を与えて欲しい」

召喚士「そ、そんな……っ!」

大商家「かつてあの子は言った。自分は籠の中の鳥なんだ、と」

召喚士「……っ」


639 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:22:05.98 ID:WQrV5ZQbo
大商家「魔道士は気付いていたのかもしれないな」

召喚士「え……っ?」

大商家「落胤であり、それを知る我らがお目付けとして家族を演じていた」

召喚士「……っ」

大商家「常に監視の目があり、どこへ行くにも護衛が付いていた」

召喚士「大商家さん……」

大商家「私達のそういった思いも、自然と伝わっていたのかもしれないな」

召喚士「そんな事はありませんよ……!」

大商家「だがこれだけは勘違いしないで欲しい」

召喚士「……はい」

大商家「私達夫婦は、彼女を本当に娘だと思っていたし、愛してきた」

召喚士「はい。もちろんそれは、感じますし分かっています」

大商家「……今、魔道士はようやく、羽ばたける機会を得られた」

召喚士「……」

大商家「魔道士を、私の娘をどうか……っ! 幸せにしてやってくれ!」


640 名前:NIPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2012/06/14(木) 18:28:33.24 ID:WQrV5ZQbo
ほのぼのは苦手…戦闘はもっと苦手だけど…

今日はここまでにて失礼致します!!
今日もご支援ありがとでした!それではまた!ノシ


643 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/06/14(木) 18:38:12.30 ID:uAj4658IO
…ヒゲ川か



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