■戻る■ 下へ
魔女「果ても無き世界の果てならば」
497 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:04:36 ID:qoY72bTQ
お待たせして申し訳ございません。

遅筆等の叱咤、内容に対してのお褒めの言葉、ありがとうございます。

最近やっと、職場での繁忙期も終わり、約一ヶ月ぶりの休みを得ることができました。

遅筆の謝罪をすると共に、今後、遅れを取り戻すことができるような更新スピードを心掛けたいと思いますので、もうしばらくこの駄文にお付き合い下さいますようお願いいたします。

更新します。


498 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:08:10 ID:qoY72bTQ

――――――――――――――――――――――――



少女「私の結界に進入するなんて普通の魔物じゃ考えられないね」

 少女の表情は険しい。

魔法使い「君は魔法を仕えないんじゃないの?」

少女「儀式系の大掛かりな物は、一度発動させておけば維持するのには対して魔力は使わないからね」

 ただ、と少女が言葉を続けた。

少女「ただの人間では魔力の操作が難しいから出来ないだけさ」


 試しに、と術式と理論を聞いてみて後悔する。

 こんなもの常にしていたら、他に何もできやしない。


499 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:09:16 ID:qoY72bTQ

魔法使い「やっぱり規格外だね」

少女「何事も慣れ、さ」

 こんなものに順応するにはやっぱり人間辞めなきゃ無理だろう。

戦士「さて、手分けして現状解決を図るか」

魔法使い「戦力を考えれば、少女以外で魔物の討伐に向かうのが良策かと思うんだけど」

少女「魔物を関知できる私と戦士で討伐、勇者は僧侶の探索、魔法使いは勇者の補助だ」

 ……。


500 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:09:33 ID:qoY72bTQ

魔法使い「いいのかい?」

少女「さぁね、後で後悔するかもしれない」


 少女は既に歩き出していた戦士を小走りで追いかける。


 そして、ある程度進んだところで振り返り言葉を付け足す。

少女「今後悔したままだと夜もおちおち寝れやしないからね」


魔法使い「なかなか男前だね」

少女「こんな美少女に使う言葉じゃあないな。 そっちは頼んだよ」

 さて、鈍感な勇者を連れて迷える仔羊を保護しに行こうかね。


501 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:11:12 ID:qoY72bTQ


 鬱蒼と茂る木々の中を勇者と歩く。

勇者「……僧侶」

 勇者は険しい顔をして道を切り開く。

 いくら鈍感な彼でも気づいたのだろうか?

勇者「なぁ、魔法使い」

魔法使い「ん?」

 勇者は真剣な顔をして僕に問いを投げかけてきた。

 彼は言った。

勇者「僧侶が何故居なくなったか、心当たりはないか? ほら、お前がその、胸を強く叩きすぎ……」

 僕は手に持っている杖を思い切り振り抜いた。


502 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:12:05 ID:qoY72bTQ

 手加減は一切無しだ。

 霊樹を切り出した大杖は勇者の側頭部を的確に捉えると小気味良い音を立てた。

 空っぽの頭だからね。 良い音が鳴るはずだ。


魔法使い「殴った理由は僕の口からは説明しないよ? 僧侶を見つけたら僧侶にでも聞けば良い」


 このうすらトンカチのとーへんぼくめ。


503 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:12:56 ID:qoY72bTQ

勇者「理由か……むぅ、わからん、けど」

 勇者は頭をさすりながら立ち上がる。

 おかしな事を言ったら、今度は魔力を込めた一撃をお見舞いしてやる。

勇者「僧侶は頭の良い奴だし、性格だって聖女さんみたいに優しい奴だ、たぶん俺が悪いんだろうから、謝らにゃならんよな」


 分かってるんだか分かってないんだか。


504 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:13:46 ID:qoY72bTQ


 僧侶の魂の波長を探る。

 そう遠くないところに居るみたいだ。

 ぼんやりと方角まで感知できる。 

 ただ、急いだ方がよいかもしれない。

 進む先には、確かに感じ取れる程の障気が渦巻いていた。


 歩みを進める毎に肌に粘着質の不快な感覚が纏わりつく。

 感知能力があがったからこその弊害だ。

勇者「僧侶ー!!」

 その点、前を歩くこの朴念仁はそんな物を気にも止めていないようだ。

 元気に森林伐採を行いながら道を突き進んでいる。

 こんな所まで鈍感らしい。


505 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:14:49 ID:qoY72bTQ

魔法使い「近いね」

 このペースで行けば、そうかからないうちに、僧侶を見つけることができるだろう。

 障気の発生源も近い所を鑑みれば、先に戦士と少女が僧侶を見つけているかもしれない。

 そんな事を考えているうちに森の開けた場所にでた。


506 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:15:33 ID:qoY72bTQ

勇者「僧……侶?」


 あぁ、なんて事だ。

勇者「大丈夫なのか!?」

 駆け寄る勇者。

僧侶「来ちゃ、駄目…で…す」

 涙を流している僧侶。

 駄目だ――。

 そう叫ぼうとした時には既に、鮮血が舞っていた。



 目の前の光景を信じたくはなかった。

 目を伏せその場でしゃがみこみ、悪い夢であると言い聞かせたい程に。


507 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/23(火) 20:17:12 ID:qoY72bTQ
今回の更新は以上になります。

近いうちにまた更新したいと思います。


510 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/23(火) 21:02:51 ID:DHw41hwE
乙〜 
作者さんの作品好きだけど、無理はしないで。自分のペースで進めてください


513 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/26(金) 13:19:53 ID:TQdsyaNI



戦士「遅かった……か」


勇者「戦……士?」

魔法使い「あ……あぁ、なんで」


 僧侶と勇者の間に戦士が立ちふさがっている。

 再開を邪魔している無粋な行為。 なら良かったのに。

 彼の鍛え上げられた頑強な岩山のような肉体には、今にも折れてしまいそうなか細い指先が突き刺さっている。

 目を疑った。

 いっそ僕の二つの瞳が壊れてしまっていたならば。

 そう思って、何度瞳を懲らそうとも、映し出す光景は変わらない。


514 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/26(金) 13:21:36 ID:TQdsyaNI

 あの僧侶が、戦士の腹部に手刀を突き立てている光景。

戦士「ぐはっ!!」

 戦士の巨体が宙を舞う。

 僧侶はまるで、幼子が戯れにぬいぐるみを放るように、無造作に戦士を投げ捨てた。

魔法使い「あぁ……うぁ」

 嗚咽にも近い、言葉にならない悲鳴が吐息と共に漏れる。

 嫌だよ……。 こんなの見たくないよぉ……。

僧侶「うぁぁあああぁぁぁあああッッ!!」

 僧侶が金切り声をあげる。

 悲しみや怒りが入り交じった慟哭。

 耳を塞ぎたい。  聞きたくない。

 僧侶のこんな声は嫌だ。

 痛いよ、心が張り裂けそうだよ。


515 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/26(金) 13:22:28 ID:TQdsyaNI



勇者「僧侶っ!?」

 勇者が僧侶の肩を掴む。


 普段なら勇者に肩を掴まれたら、赤面して俯くのに。


僧侶「嫌ぁ……」


 僧侶が勇者の手を振り払う。

 勇者はぼろ切れのように吹き飛ぶ。


魔法使い「僧侶!!」

 思わず指先に魔力を込め、僧侶に狙いをつけた。



勇者「待て、魔法使い…」


516 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/26(金) 13:22:54 ID:TQdsyaNI
また更新します。


517 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/26(金) 13:42:32 ID:yRYyyJWc
なんと……


520 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/30(火) 19:48:20 ID:XKMo23pc
おちんちんとかおっぱーいとか下ネタマジキチをたまーに書きたくなる衝動に襲われますね!

やったら話破綻しちゃうんでしませんが

更新します。


521 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/30(火) 19:49:39 ID:XKMo23pc

 勇者の声で思いとどまる。


勇者「……駄目だろ、仲間同士でこ……んなのは」


 勇者は打ち所が悪かったのか、ふらつきながらも立ち上がる。


勇者「だって見て見ろよ、僧侶の顔を……」



 幽鬼のように立ち尽くす僧侶。

 純白の法衣を返り血で染め、空を仰ぐ僧侶。


 彼女は――。


魔法使い「なんて顔で泣いてるんだよ君は……」


522 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/30(火) 19:50:05 ID:XKMo23pc

 喋る度にころころと表情を変える君が……。


 まるで仮面みたいな無表情で、ただ涙だけを流している。


魔法使い「どうしちゃったんだよ……君にそんな顔をして欲しくないよ……」


 見たくないよ、そんな顔。


523 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/30(火) 19:50:45 ID:XKMo23pc

僧侶「あぁ……あ」

 僧侶が僕に向けて手を振りかざす。

魔法使い「んぅ……あ、ぐぅ」
 喉が見えない手に絞められているみたいに苦しい。

 視界が歪む。

 苦しさで涙が滲んできた。

 いや、苦しさだけじゃないや。

 僧侶、君がつらそうな姿は見たくないよ。

 仲間だから。

 大切な、誰にも代え難い仲間だから。

 誰かの為に流す涙はこんなにも胸を痛ませるのか。

 そんな事を考えている内にどんどんと意識は薄れていく。


524 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/30(火) 19:51:23 ID:XKMo23pc

魔法使い「ごめんね」

 結局僕は誰にも救えないのかな……。

魔法使い「ごめんね」

 いくら強くなれても、魔法を覚えても。

魔法使い「ごめ……んね」

 パパを救えなくて泣いていた子供の頃と変わらないじゃないか……。

魔法使い「……め……んね」






 違う……。


魔法使い「救ってみせるよ、今度は」

 心に誓いを立てる。

 無力を原因にして諦めるのはもうまっぴらだ。


525 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/04/30(火) 19:52:13 ID:XKMo23pc
今回の更新は以上になります。おっぱい。


526 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/30(火) 19:54:45 ID:ZyFje2p.
それは弟子がきっとヤってくれるはずだ


527 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/04/30(火) 20:21:54 ID:kpVKUFbQ
おい「やる」の字ちげえぞ!まあ相思相愛なんて次元のレベルじゃないし、下世話だが少年と魔女はやることやってそうだが・・・


なんにせよ乙!更新待ってたよ!


532 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:48:31 ID:tDlbi7FQ
割と大量に更新します。


533 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:50:12 ID:tDlbi7FQ


勇者「ふりゃあッ!!」


 勇者が僧侶と僕の間の空間に向け、剣を振るう。

僧侶「……く」

 喉を締め付ける感覚が解けた。

 その隙に距離をとる。


魔法使い「あぐぁ……げほっ」

 新鮮な酸素が肺に流れ込む。

 薄れていた意識は徐々に鮮明になっていく。

魔法使い「はぁ、はぁ。 勇者、見えたの?」

 僕を襲っていた不可視の腕。

 勇者は見えていたのだろうか?


534 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:50:42 ID:tDlbi7FQ


勇者「いや、見えたっていうか、感じた?っていうか」

 なる程ね。


 存在はする訳だ。

 なら――。

魔法使い「僧侶に当てないように周りを攻撃しまくれば」


魔法使い「〜〜」

 大気中の水分を集め、研ぎ澄まし幾つもの杭を作り出す。

魔法使い「意味はあるんじゃないか?」


535 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:51:20 ID:tDlbi7FQ

 一斉にその杭を撃ち出す。

 少しでも操作を誤れば僧侶に傷を負わせてしまう、が。

僧侶「ガアァッ!」

 風切り音を立てて飛翔する氷杭が僧侶の髪を掠める。

 問題ないね、絶対に当てないから。

勇者「手応えは?」


少女「ないんじゃないか?」


魔法使い「え?」

 いつの間に現れたんだこの女狐。


536 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:52:10 ID:tDlbi7FQ

魔法使い「いつから居たんだい?」

 確かに手応えはなかったけれど。

少女「今し方着いたところさ」

 どうやら戦士とは別行動をしていたらしい。

魔法使い「で? 聡明な、それはそれは聡明な空虚の魔女様なら、僧侶がどんな状況なのか勿論ご説明いただけるんだよね?」


少女「君にそんなに褒められるとは光栄だな」

 皮肉だよ、本当に嫌らしい性格だ。

 ただ、こいつが来たってだけで妙な安心感があるのも事実だ。

 腹立たしいことに、この黒髪の魔女は僕の信頼に当たる程の実力を有している。


537 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:53:28 ID:tDlbi7FQ

少女「まぁ、聡明で可憐で儚げな私は僧侶に起きた事態も理解しているし対策も練ってきた」

 本当に腹立たしいことに、だけどね。

魔法使い「で、方法は?」

 少女は少し悩みながら、口を開いた。

少女「命をかけて、成功するかしないかわからない方法と、安全かつ最小限の被害で確実に成功する方法があるけどどっちにする?」

 少女は無表情だ。

 視界の端に先程から映っている勇者が吹き飛ばされて宙を舞っていた。 通算五回目だ。


538 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:54:20 ID:tDlbi7FQ

勇者「話し込んでいるのもいーけど、早く何とかしないと俺がやばいって……ぐほぉっ!?」

 六回目。 今気づいたけれど、彼は異様に受け身がうまい。

 恋愛に対しても受け身だからかな。 取りあえず死なない程度に痛めつけられちまえ。



少女「まぁそう急がないで、まずは今僧侶に起きている現象なんだけど」


 少女が無表情に言葉を紡ぐ。

少女「かなり高位の精霊に憑かれた状態だ」

魔法使い「精霊?」


539 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:55:14 ID:tDlbi7FQ

少女「精霊と言っても、邪悪さから封印されていた類の奴が魔王に追従して復活したのさ」

 僧侶もやっかいな物に憑かれたね。


少女「で、それだけ力のある精霊、便宜上邪精とでも呼ぼうか。 だからこそ結界をすり抜けてここまできた」


魔法使い「そこにふらふらしてた僧侶が居たから取り憑いたってことか、でもおかしいね、僧侶は神の洗礼を受けている身だ。 そういった類に対しては耐性がある筈じゃ?」

少女「……それは」

 少女が若草色の外套の端を握り締め、小さく洩らした声は震えていた。

少女「私の所為……だと思う……」

 なんとなく、僧侶が邪精に魅入られた理由が分かってしまった。


540 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:55:59 ID:tDlbi7FQ

少女「邪精は……人の負の感情を糧にするんだ……」


少女「……勇者に対しての想いを閉じ込めようとして……生まれた嫉妬、後悔」


 軽率だった。

 昨夜の出来事が原因なら僕にも責任がある。

 安易に僧侶の心に踏み込んだから。


541 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2013/05/13(月) 11:56:41 ID:tDlbi7FQ

魔法使い「でも、あのまま吐き出さずに涙を我慢したままの僧侶なんて嫌だよ」

 我ながら自分勝手な理由だと思う。

魔法使い「だから、さっさと治して謝って、僧侶は勇者に話して全部すっきりしよう」

少女「ずいぶん前向きになったね」


魔法使い「後ろ向きじゃあ未来は見えないよ、過去なら十分見たしね」

少女「違いない」



次へ 戻る 上へ