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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その17
582 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:05:42.57 ID:E5gLkEwo
鴉鳴く夕焼け空。その夕日を浴びて、三騎ばかりの馬が山を駆け抜ける。

〜東方、藤蔵家〜

ザッザッザ…

盗賊「……」

風忍「どうしました…?特に…変わりはありませぬぞ?」

きょろきょろと周囲を見回す盗賊に、風忍は声をかける。

盗賊「いやっ…そうではなくて……」

…ッタッタッタッタッタ

盗賊「!?」

タッタッタッタッタンッ!!

盗賊「っ!!」

ガバッ!!…ギュウゥッ!!

侍女「姫ぇ〜!!おかえりなさーいっ!!」

風忍「…ああ。これ…ですか」

盗賊「…うん。……ただいま」


583 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:06:11.52 ID:E5gLkEwo
〜藤蔵家、盗賊の部屋〜

盗賊「……うぅ…っ」

侍女「はいはい。文句言わないの」

盗賊「だってぇ…動き辛い……」

侍女「そういう物なのっ。おしとやかになさい…っな!」

キュッ…ススッ

侍女「はい、おしまい。……胸、苦しくないですか?」

盗賊「うーん…大丈夫かな……」

侍女「立派になっちゃって…。これなら殿方も放っては……」

盗賊「た、たわけ…っ!」

侍女「何を仰います。姫ももう二十一を迎えるのですよ?」

盗賊「……」

侍女「一昔前では行き遅れ、ですわよ?」

盗賊「ふん…。そちこそ行き遅れまくりじゃないかっ」

侍女「っ!?…………姫…うぅ…っ」


584 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:06:39.66 ID:E5gLkEwo
〜客間〜

風忍「御館様…お成りで御座いまする」

ザッザッザ…ドスッ

名代「ご無沙汰しておりまする」

御館様「陰陽頭殿…。帝のご様子は如何か?」

名代「はっ。最近はめっきり剣術に没頭しておりまして……」

御館様「左様か」

名代「老中様は逆に安堵なされているようですが…」

御館様「静かになって良いのかもな…」

風忍「早速、最北の件についてですが……」

名代「盗賊様がお見えになられてからに致しましょうか」

御館様「……」

風忍「か、構いませぬか…?」

御館様「…ああ。好きにせい」

腕を組み仏頂面で、御館様は承諾の言葉を述べる。


585 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:07:32.57 ID:E5gLkEwo
〜盗賊の部屋〜

盗賊「……兄様に会ったよ」

侍女「……っ!?」

盗賊の髪を櫛で梳かす侍女の手が、一瞬ぴたりと止まる。

侍女「若様…と…?」

盗賊「うん……」

侍女「今は…どちらに……!?」

盗賊「…もう…いないよ」

侍女「…!?」

盗賊「全部話すから…行こ?」

侍女「…え、ええ…っ!」

盗賊「もう…立っていい?」

侍女「あっ、ごめんなさい…。もう大丈夫よ!」

盗賊「ん…ありがと」

前髪をくるくるといじりながら、盗賊は笑顔で礼を言う。


586 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:08:33.25 ID:E5gLkEwo
〜客間〜

侍女「……失礼致します」

スッ

御館様「……」

名代「……」

スッスッスッ…

盗賊「……お招き、まことに有難う御座いまする」

御館様「……うむ」

名代「最北での一件、詳細は盗賊殿が存じておられます」

御館様「申してみよ」

盗賊「はっ。私はかの地で…魔物と交戦致しました」

風忍「……」

盗賊「魔物の名はネクロマンサー…。不死の…強敵です」

侍女「……」

盗賊「共に戦った者…それは、影忍と名乗る……兄様でした」


587 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:09:01.21 ID:E5gLkEwo
御館様「……続けよ」

盗賊「…ネクロマンサーの狙いはヤマタノオロチと龍脈……」

御館様「……」

盗賊「詳細は分かりません…。ただ……」

名代「…ただ…?」

盗賊「ヤマタノオロチには生娘がどうの…と」

風忍「どういう意味でしょうか…?」

名代「おそらくは贄ですね」

侍女「贄…?」

名代「生贄ですよ。妖怪を蘇らせる為のね…」

御館様「それで、影忍は?」

盗賊「…五行を放ち…両者とも消えました」

風忍「両者?」

御館様「申してみよ」

盗賊「実は……」


588 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:10:07.54 ID:E5gLkEwo


侍女「……っ!!」

名代「そ、そのような事が…有り得るのか…っ!」

風忍「にわかには…信じ難いが……」

御館様「……」

御館様は目を瞑り、ただ黙って話を聞く。

盗賊「兄様はあわよくば…あの場で終わらせようと考えていたに違いありません」

侍女「……」

盗賊「でも…きっと生きていると思います!」

御館様「死んでおるのであろう?」

盗賊「あっ、そ…そうですけど…っ、死んでいるけど生きていると…なんというか…」

名代「……」

盗賊「と、とにかくっ…兄様にはまだ成すべき事があったように感じるのですっ!」

風忍「だから…死んではおらぬ…と?」

盗賊「……はい」


589 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:10:37.79 ID:E5gLkEwo


御館様「ご苦労。この件に関しては、こちらで預かる」

名代「お願い致します。私も微力ながらご協力致します…」

御館様「かたじけない。すまんな」

名代「いえ…」

御館様「そなたらは下がって良いぞ」

風忍「ははっ」

侍女「失礼致します…」

スッ…ススッ

御館様「盗賊っ」

盗賊「……!?」

ピタッ

御館様「…とやら。怪我をしているように見受けるが…?」

盗賊「……軽傷です。兄様に比べればこの程度」

御館様「……ご苦労であった」


590 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:11:13.28 ID:E5gLkEwo
盗賊「――っ!!」

御館様「東方の為に働いてくれたのだ。それなりの持て成しはさせて貰うぞ」

盗賊「……」

御館様「傷が癒えるまで、今しばらく此処へ留まるが良い…」

盗賊「……!!」

御館様「たまには…冒険者の談を聞くのも余興と言うもの…」

盗賊「……はい…っ」

御館様「…下がるが良い」

盗賊「……失礼…しま…す…っ!」

スッスッスッ…パタン

侍女「全く…。素直じゃないんだから。…ねぇ?」

盗賊「ひぐ…っ、ふ…うっ……」

侍女「ちょっと!?着物で拭かないでっ!!」

盗賊「だ…ってぇ……っ!」

侍女「もうっ、これ使って!……早く部屋に戻りましょ!」


591 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 18:11:19.05 ID:HL12mQQo
俺、未だに帝様の性別が分からないんだが…


592 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 18:12:06.49 ID:byT2li2o
男の娘だよ帝は


593 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:12:16.90 ID:E5gLkEwo
〜藤蔵家、正門〜

シュバッ…スタッ

水忍「姫が戻られたって?」

土忍「戻ったか。…らしいな」

水忍「他の者は…?」

土忍「風は既に着座。火は最北に居残り。雷は男色だ」

水忍「男色…?あぁ、帝の世話か……」

土忍「御館様もお待ちだ。行くぞ」

水忍「……」

〜広間〜

風忍「遅いぞ。何をしている」

水忍「すまん。それより……」

風忍「姫か?もう間もなく来ると思うぞ」

水忍「…そうか」

土忍「…早く、着座しろ」


594 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:13:18.39 ID:E5gLkEwo


名代「私まで…宜しいのですか?」

御館様「無論。大した持て成しも出来ぬが…」

名代「とんでも御座いません…。光栄です」

侍女「失礼します」

スッ

盗賊「……」

侍女「さぁ、御館様の横へ…」

盗賊「…いいの?」

侍女「もちろんっ。ねぇ、御館様?」

御館様「……大切な『客人』だからな」

侍女「……もうっ」

盗賊「では…失礼します」

水忍「……」

土忍「…どうした?」


595 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:13:55.10 ID:E5gLkEwo


盗賊「…どうぞ」

御館様「うむ」

トクトクトクッ

盗賊「名代様も…」

名代「これはこれは。有難く…」

トクトクトクッ

侍女「姫は駄目ですからね。はい、お茶」

盗賊「う、うん…」

グビッ……コトッ

御館様「……旨い」

名代「ええ…。まことに」

御館様「…ボソッ」

名代「…何か?」

御館様「いや、何でもない。気になさるな」


596 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:14:21.73 ID:E5gLkEwo


侍女「姫、しばらくいるんでしょう?」

盗賊「……多分」

侍女「…そっか。良かった」

盗賊「……」

風忍「久々に藤蔵も明るくなりまするな」

盗賊「あの…さ……」

水忍「……?」

盗賊「……」

土忍「どうなされた?」

盗賊「稽古……つけて欲しいな…って」

侍女「まぁ、稽古嫌いな姫が…どういう風の吹き回し!?」

風忍「それはもう、喜んで」

水忍「昔のように甘くはありませんぞ…?」

土忍「…我らの全て、伝授致す」


597 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:15:43.83 ID:E5gLkEwo
盗賊「……ありがとう」

風忍「では、傷が完治次第…稽古を致しまする」

侍女「宜しいですねっ、御館様?」

御館様「……好きにせい」

土忍「では、初日は某から」

水忍「いやいや、ここは私が……」

風忍「待て待て…。やはりここは任せて貰おうか」

侍女「えぇ…?まずは私が良いんじゃないかしら?」

御館様「……」

盗賊「えっと…あの…」

御館様「……初日は儂が、技量をみて決める」

水忍「どうぞどうぞ」

侍女「どうぞどうぞ!ふふふっ!」

御館様「……ぐむ…ぅ」

盗賊「……父様…ありがとうございます…っ」


598 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:16:24.80 ID:E5gLkEwo


侍女「それでは名代様、ごゆるりと……」

名代「かたじけない」

盗賊「では…失礼致します」

御館様「うむ」

風忍「我らも任務に戻りまする」

水忍「失礼をば…」

スッ…パタンッ

御館様「……」

名代「……」

御館様「さ、飲まれよ」

名代「おぉ、これはどうも…」

トクトクトクッ

名代「先ほどの……」

御館様「……?」


599 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:16:53.12 ID:E5gLkEwo
名代「御館様の御言葉…『あいつもおれば』とは…」

御館様「聞いておられたか」

名代「申し訳ありません。聞こえてしまいました…」

御館様「つい、口に出てしまった」

名代「若君の事で…御座いまするか?」

御館様「……」

グビッ

御館様「まこと……勝手な奴よ」

名代「死してなお、安寧を願い…戦い続けておられるとは…」

御館様「……」

名代「まこと、忠義の士で御座いまするな」

御館様「死んでは何も始まらぬ」

名代「……」

御館様「それよりも此度の件、如何見るか?」

名代「ええ…。近日中に再び…一波乱起きそうですね」


600 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:17:33.18 ID:E5gLkEwo
御館様「……」

名代「まもなく、北の城の改築を行います」

御館様「度々訪れておるようだな」

名代「……ただの視察です」

御館様「別に詮索はせぬ」

名代「……」

御館様「北の城を拠点に、妖怪と戦うつもりか?」

名代「そうなるでしょう。都では遠すぎます」

御館様「間に合うかね…?」

名代「間に合わせます。それに……」

御館様「……」

名代「間に合うと思いますよ」

御館様「断言出来るかね?」

名代「数日経っても再戦なき状況…。あちらも急げぬようですね」

御館様「何を企んでおるのか。得体の知れぬ敵よ…」


601 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:18:40.08 ID:E5gLkEwo


盗賊「……」

ジャリッ

侍女「冷えますよ?」

盗賊「うん…。もう少しだけ……」

侍女「星が綺麗ですねぇ…」

盗賊「ここから見る夜空が…一番好き」

侍女「ふふっ。私もですよ」

盗賊「なぁ、侍女?」

侍女「はい?」

盗賊「兄様の事…好きだったの?」

侍女「……嫌いな人なんているのかしら」

盗賊「そうではない。その…こ、恋心を抱いて…たの?」

侍女「どうでしょうね…。遠すぎて、そんな気にもならなかったのかも…」

盗賊「……そうか」


602 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:19:44.95 ID:E5gLkEwo
侍女「姫ったら…どうしたんですっ?」

盗賊「へっ…?」

侍女「そんな話するなんて…もうっ、すっかり色気付いちゃってぇ〜」

盗賊「たっ、たわけ!違うわ…!」

侍女「もう〜照れちゃってぇ……」

盗賊「違うと言っておるであろうっ!」

侍女「見ましたよ〜?さっき着替える時、猫の…『りすとばんど』って言うんでしたっけ?」

盗賊「――っ!!」

侍女「あんな可愛らしいもの付けてるなんて、どんな心境の変化……」

盗賊「うるさいっうるさいっ!うるさーいっ!」

顔を真っ赤にした盗賊が侍女に詰め寄り、侍女はそれをなだめながら言う。

侍女「若様…、また…会えますよね」

盗賊「……必ず…会えるよ」

侍女「…ふふっ。さぁ戻りましょう。傷に障りますよ?」

盗賊「うん…っ」


603 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:20:23.47 ID:E5gLkEwo
〜本国、王宮〜

コンコン…カチャッ

大軍師「こんばんは。いよいよですね……」

皇太子「ああ…」

エリート「私は胃が痛いですよ…」

右秘書官「今日の予算案会議、なんとか優勢に持ち込みたいですな」

エリート「勿論です。今日の一手で少なくとも、向こう一年の方針が決まりますから」

皇太子「……」

大軍師「殿下、基本方針をお聞かせ頂けませんか?」

皇太子「基本方針は軍備増強、研究費の増大」

大軍師「……ですね」

皇太子「軍事的な事を言えば……」

エリート「……」

皇太子「三年以内の…魔王討伐だ」

皇太子の一言により、会議室内がどよめきだつ。


604 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:20:55.07 ID:E5gLkEwo
大軍師「左大臣様相手に…強気ですね。ふふふ…」

皇太子「臆してどうする。それが私の志だ」

右文官「だからとて、要らぬ反発を買うような事は…」

皇太子「いずれは提案せねばならぬ事。で…あれば、まとめて片付ける」

大軍師「…ふふふっ、そうですね」

エリート「経済政策はいかがしますか?おそらく最も突付かれますぞ?」

皇太子「研究機関の成果こそ我らの望む経済だ」

右秘書官「……う…むぅ」

皇太子「通信…交通…建築、全ての分野で新たな技術を取り入れねばならん」

大軍師「ほぅ…っ」

皇太子「左大臣らの言う、現状の廉価な技術を増やしたところで…」

大軍師「未来はない…ですか」

皇太子「その通り。我らは革新を以って、この世界を作り上げていかねばならん」

エリート「それをいかに…押し通せるかですね…」

皇太子「……やってやろうではないか。後の世の為に…!」


605 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 18:20:58.78 ID:byT2li2o
御館がダチョウ式にwwww


606 名前:GEPPERがお送りします [sage saga] 投稿日:2010/07/23(金) 18:26:23.58 ID:E5gLkEwo
長い…二十部の終わりが見えない…orz
まだ1週間も経っていないというのに…
ほんとごめんなさい。そろそろキンクリしてサクっと進みますので!

それでは失礼致します!ご支援ありがとうございました〜!ノシ


608 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 18:33:22.27 ID:xUkQ446o
キンクリなどせずこのまま続けてくれていいのだy


612 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 20:02:05.25 ID:AYzNBk2o
だから御館はいつまで他人ごっこやってんだよおおおおおおおおおおおお
兄様といいよおおおおおお


613 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 20:52:22.38 ID:HL12mQQo
御棺様は至高のツンデレ


617 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/24(土) 00:31:00.46 ID:og9rYgSO
>>1 乙過ぎる。

翌朝…
御館様「本国から極秘に手に入れた“かめら”の使い方を確かめてるだけだ。盗賊よ、気にするでない。」パシャッ パシャッ


618 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/24(土) 01:01:21.50 ID:3aa2eEAO
書く労力考えるとキンクリしないでっていうのも言いづらいな


619 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/07/24(土) 01:02:08.91 ID:xp4w8Mgo
いいかキンクリするなよ?
絶対にするなよ?絶対だぞ?



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