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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その20
664 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:43:21.25 ID:.C3avZ2o
〜王宮〜

タッタッタッタッタ…バンッ

エリート「…騒がしいな、どうした?」

青年兵「警備所から…連絡がございました…」

エリート「…急ぎか?」

青年兵「たった今…左大臣様がご訪問なされた、と…」

エリート「何っ!?直々にか!」

青年兵「…はい…っ」

エリート「…来い。玉座へ向かうぞ」

青年兵「はっ!」

カツカツカツカツ…

青年兵「左大臣様の狙いは何でしょうか…?」

エリート「…さっさと公判を終わらせて、処分を下す…。そんなところだろう」

青年兵「……」

エリート「失礼致します」


665 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:43:48.82 ID:.C3avZ2o
カチャッ…パタン

エリート「殿下、ご報告が…」

皇太子「動きがあったのか…!?」

エリート「左大臣殿が警備所へ向かったとの報告が…」

皇太子「……そうか」

エリート「奴らは判決を早めるつもりです。下手をすれば明日にも…」

皇太子「…警備所にはこちらも書簡を送った。あとはあちらが判断するさ」

エリート「しかし偽者は今だ見つからず。どうするのです!?」

皇太子「その時は止むを得まい。本当の事を公表するまでだ」

青年兵「そ、それでは…殿下のお立場が…!」

皇太子「事実は事実。余計な迷惑は掛けぬようにと黙ってはいたが…」

コツコツ…カツ

皇太子「やはり包み隠さず公表すべきであったのかもな…」

エリート「……」

皇太子「下がって良い。深夜に動きはないだろう…ひとまず明日を待とう」


666 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:44:16.68 ID:.C3avZ2o
エリート「……はい」

青年兵「失礼します」

カツカツカツ…ガチャッ…ギイィ

青年兵「どうなさるおつもりで…?」

エリート「…殿下に罪はない」

青年兵「勿論です」

エリート「首謀者は私だ。最悪の場合は私が責を負う」

青年兵「っ!?」

エリート「青年兵…君は右文官殿らと合流し、延長及び無罪の手段を考えたまえ」

青年兵「エリート様は…?」

エリート「…警備所へ行ってくる」

青年兵「!?……一体…どうするのですっ!」

エリート「左大臣殿へ…直に話してみるさ」

青年兵「……」

エリート「頼むぞ。行ってくる!」


667 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:44:54.91 ID:.C3avZ2o


テクテクテク

戦士父「お前が今の特遊の…隊長らしいな」

隊長「……」

戦士父「隠す必要はない」

隊長「何でそのような事を…?」

戦士父「情報なんてのはな、幾らでも入ってくるもんだ」

隊長「……」

戦士父「何代目なんだ?」

隊長「…さぁ。今は特に数えられてませんよ」

戦士父「そうなのか?」

隊長「ご存知の通り、任務が任務ですから。入れ替えが激しくてね…」

戦士父「……」

隊長「だからこそ、任期も長かった初代の方々が語り草になっとるんです」

戦士「……どうでもいい話だ」


668 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:45:21.32 ID:.C3avZ2o
テクテクテク…ザッ

隊長「……ここは?」

路地裏の小さな、お世辞にも綺麗とはいえない建物の前で戦士父は足を止める。

戦士父「…馴染みの店さ」

テクテクテク

戦士父「邪魔するぞ」

手狭な室内奥にあるカウンター。そこから男が顔を出す。

隊長「……」

戦士父「情報屋だ。馴染みの…な」

情報屋「…珍しいな。顔を出すとは…っ」

戦士父「本国まで来たついでだ。…それで、情報は?」

情報屋「…芳しくねぇな。進捗はない」

戦士父「…そうか」

隊長「…息子さんの件ですか」

戦士父「お前らも動いてるんだろ?」


669 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:45:47.40 ID:.C3avZ2o
隊長「ええ…まぁ」

情報屋「唯一新しい情報としては……」

パサッ

情報屋「眉唾モンだが、既に偽者を捕らえたって話がある」

隊長「バカなっ!?そんな話…聞いてねぇぞ!?」

情報屋「高齢な商人の目撃情報なんでな…信憑性が疑わしい」

隊長「気にはなるが…見間違いだろ」

戦士父「…何か分かったらまた教えてくれ」

情報屋「…鳩にする?それとも店にするか?」

戦士父「どちらでも構わん。頼むぞ」

ザッザッザ

隊長「…少なくとも軍にはそんな話、入っておりません」

戦士父「……ああ」

隊長「…畜生…っ。何をどうすりゃいいんだ…!」

戦士父「……」


670 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:46:27.92 ID:.C3avZ2o
ザッ…テクテクテク

隊長「…?」

戦士父「警備所へ行ってみる」

隊長「…無駄ですよ。左翼の連中には何を話しても通じません」

戦士父「……」

隊長「…さっきも話しましたが…暖簾に腕押し」

戦士父「……」

隊長「…分かりましたよ!俺も行きます」

テクテクテク

隊長「……あ」

戦士父「……」

隊長「待てよ…!?もしかしたら……っ」

戦士父「…行かんのか?」

隊長「行きます!行きますとも!!」

戦士父「…?」

隊長「貴方ならもしかしたら…。さぁ、早く行きましょう!」


671 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:46:56.77 ID:.C3avZ2o
〜警備所〜

警備兵「……」

ザッザッザッザ

警備兵「…?」

隊長「高官を頼む!」

警備兵「…はぁ、少々お待ちを」

隊長「早くしてくれよ」

警備兵は怪訝な表情で奥へと歩いて行く。

隊長「あとは……良心があるかどうか…」

ザッザッザ…ワイワイ

隊長「…?」

左大臣「ではァ、頼んだぞ」

カツカツカツカツ…

隊長「……っ」

高官を待つ隊長の背後を過ぎ行く左大臣の一団。


672 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:47:22.93 ID:.C3avZ2o
左大臣「…あれは誰だァ?」

左秘書官「…さて、存じませぬが。誰か知っておるか?」

左文官「…あれは…国軍の特殊遊撃の者では…?」

左秘書官「特遊の?なぜこのような所に…?」

左大臣「……」

左文官「…さぁ、手下がヘマでもやらかして訴訟でも抱えたのでは?」

左文官「ふはははっ!それは滑稽な事だ…!」

左大臣「…おい」

左秘書官「はっ」

左大臣「このタイミング…気になる。一応調べておけぃ。それと……」

左秘書官「…成程。畏まりました」

カツカツカツカツカツ…

隊長「……」

カツカツカツ…

警備兵「…お待たせ致しました」


673 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:48:00.71 ID:.C3avZ2o
隊長「…おう」

高官「…何なのだ貴様は。先程から…」

隊長「悪いな」

高官「…分かっておるのだろう?今は無駄話などしている場合ではないのだ」

隊長「分かってるっての。だが、ちょっと会って欲しい人がいんだわ」

高官「……?」

隊長「10分…いや、5分でいい。時間をくれ」

高官「…どこにいる?この近くか?」

隊長「ああ。すぐ外で待って貰ってる」

高官「……」

隊長「付いてきてくれ」

警備兵「……」

高官「…心配するな。すぐに戻る」

警備兵「は、はは…っ!」

随行しようとする警備兵を、高官は手で追い払い、隊長に続いて警備所を出る。


674 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:48:26.64 ID:.C3avZ2o
ザッザッザ

隊長「今…ちょうど左大臣の連中も帰ったようですな」

戦士父「…ああ。見たよ」

高官「…それで、会って欲しいというのは?」

隊長「ああ、この方だ。覚えてるだろ?」

戦士父「……」

高官「……ぁ…っ…!?」

隊長「…お前もモチロン覚えてるよな?」

高官「……っ」

隊長「覚えてるとかそんなチンケなもんじゃねーか…」

高官「…一番…槍の……っ」

戦士父「それで、俺はこの者と話をすればいいのか?」

隊長「コイツにとって…いや、俺らにとって貴方は命の恩人なんすよ」

戦士父「……」

隊長「なぁ、一番槍と話をしてくれ」


675 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:48:54.19 ID:.C3avZ2o
高官「…は、話すのは構わん。だが…この方と何が関係あるのか!?」

隊長「…勘ぐるなよ。俺だってたまたま会ったまでだ」

高官「……っ」

隊長「だが、妙な噂を聞いたぜ?」

高官「噂…?」

隊長「お前が逮捕した戦士っての。この旦那の息子らしいぜ」

高官「な…っ!?」

戦士父「…すまぬ。子供の責任は親の責任…。変わって詫びる」

戦士父はその場に膝をつき、深々と頭を下げる。いわゆる土下座である。

高官「な…何をなさってらっしゃる!!頭をお上げ下さいっ!!」

隊長「……っ!!」

戦士父「許してくれとは言わん。変わりに…何か方法はないだろうか?」

高官「とっ、とにかく…頭をお上げ下さい!」

隊長「…戦士父様、目立ちます。頭を上げて下さい」

戦士父「……」


676 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:49:22.87 ID:.C3avZ2o
ザッ

隊長「…なぁ、もういいだろ。戦士を開放してくれ」

高官「……」

隊長「お前の下らん逆恨みでな、みんなが迷惑してんだよ」

戦士父「……」

隊長「ブン殴られたぐらい殴り返して仕舞いでいいだろがっ!」

高官「……そうは…いかんのだ」

隊長「あん?」

高官「最早…そんな簡単な問題ではないのだよ」

隊長「…どーいう意味だよ?」

高官「知っているか?朱雀先生のパーティーが国軍付になっただろ?」

隊長「…ああ。それが何だよ」

高官「その情報は…たったの二日で左大臣様の耳に入ったのだ」

隊長「!?」

高官「立ったの二日だぞ!?その意味が分かるか…!?」


677 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:49:54.17 ID:.C3avZ2o
隊長「……最初から…狙われてたのかよ…っ」

高官「戦士…殿が私を殴った当日より、私はすぐに素性を洗った」

戦士父「……」

高官「無論、突き止める事など容易い。次の日には朱雀先生らだと判明した」

隊長「…んで?」

高官「逮捕の手続きを進めていた折だ。とんでもない情報が入ってきたのは…」

隊長「…国軍付に右翼が絡んでるって話か」

高官「ああ…そうだ。そうなっては一官僚の権限では下手に動けない」

隊長「だろうな」

高官「そこで……」

戦士父「左大臣へ相談をして…という事だな?」

高官「…その通りです」

隊長「…それで左翼の連中は嗅ぎつけたわけだ。美味しい餌の臭いをよ…!」

戦士父「…待っていたのだな。戦士や他の仲間が問題を起こす刻を」

高官「……仰る通りです。それからは…恐らくご存知の通り…」


678 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:50:20.65 ID:.C3avZ2o
ドドッドドッ…ドドォ

戦士父「馬車…?」

高官「あれは……っ」

ガチャッ…ザッザッザ

左大臣「…おやおやァ?忘れ物を取りに戻ればァ…どういう事かなァ?」

高官「左…大臣…様」

隊長「……っ」

左秘書官「…左大臣様、こ…この男…っ!」

左大臣「……?」

戦士父「……」

左大臣「…見覚えがあるなァ。そう…かつては英雄と称えられた男に似ておる」

戦士父「…人違いだな。英雄になどなった覚えはない」

左大臣「…して、高官。こ奴らと何をしておるのだァ?」

高官「……い、いえ。知人でございますので…世間話を…」

左大臣「…ほぉ。そうであったかァ」


679 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:50:55.37 ID:.C3avZ2o
隊長「…何か問題でも」

左大臣「…いいやァ。だが高官殿は多忙の身…あまりお引き留めなさいます様…」

戦士父「…ああ、済まなかったな」

カツカツカツ

左文官「書類を取って参りました」

左大臣「…おう、これこれ。年を取ると…物忘れが酷くてなァ…ふははっ!」

高官「……っ」

左大臣「では失礼。高官殿…明日もやる事は数多くある。早めに引き上げよ」

高官「…はっ。ご心配感謝致します」

左秘書官「では…」

カツカツカツカツ…バタンッ

戦士父「……」

左大臣「……出せ」

左秘書官「はっ。いいぞ、出発しろ」

ドドッ…パッカパッカパッカ…


680 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:51:23.63 ID:.C3avZ2o
高官「……く…っ」

隊長「…悟られましたね。完全に…」

戦士父「ああ。書類もあえて置いていったのであろう」

高官「……」

戦士父「……あれは?」

ドドッドドッドドッ…

エリート「……はぁっ!」

ドドォ…ザッ

エリート「……!?」

隊長「…確か、本国の…エリートっつったか?」

エリート「高官殿に…特殊襲撃隊の…っ」

高官「エリート…殿?」

エリート「……貴方は…?」

隊長「戦士の父親だ。元特遊の…一番槍と言った方が馴染み深いか」

エリート「!?……な、なんとっ」


681 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:52:08.31 ID:.C3avZ2o
ザッ

戦士父「初めてお目にかかる。右翼の腹心…エリートさんか」

エリート「…はい。父は右大臣です。貴方には多々お世話になったかと」

戦士父「こちらこそ右大臣殿には大変世話になった」

高官「エリート殿…何故ここへ?」

エリート「率直に申し上げます。戦士殿の公判についてですが…」

高官「…時間が欲しいと…申されるのであろう?」

エリート「…如何にも。お願い出来ませんでしょうか?」

高官「……」

隊長「…この期に及んで無理とか言わねーだろうな…?」

高官「……三日」

エリート「!?」

高官「いや…引き延ばせて二日です。それで宜しいか?」

エリート「……ありがとうございます。感謝致します」

高官その間に解決なされて下され。間に合わなければ…当然判決を下します」


682 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:52:36.79 ID:.C3avZ2o
戦士父「…分かった。その時はその時だ。素直に受け入れざるを得ないだろう」

エリート「…お任せ下さい。必ずや…!」

高官「…では、私はこれで」

隊長「もう行くのか…?」

高官「…書類が山積みだ。早めに片付けておきたい」

隊長「…あんま無理すんじゃねーぞ?」

高官「……お前に言われると…鳥肌が立つよ」

隊長「んだとぉ!?」

ザッザッザ

高官「……私が出来るのはここまでだ。明日からはまた…」

隊長「…ああ。分かってるよ」

戦士父「感謝する!」

高官は無言で会釈し、警備所内へと戻って行った。

隊長「これでなんとか首の皮一枚…繋がったか」

エリート「…ええ。しかし勝負はこれからです」


683 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/10/20(水) 21:53:03.54 ID:.C3avZ2o


パッカパッカパッカ…

左大臣「……」

左文官「…どうなさいました?」

左大臣「…高官め、ここにきて…役に立たん男よ」

左秘書官「……」

左大臣「拾ってやった恩を仇で返すとはなァ…」

左秘書官「…如何致しますか?明日にでも被告を実刑判決にて…」

左大臣「…いや、たかがしれておるわァ」

左文官「…と、申しますと?」

左大臣「分からんかァ?高官は起訴を取り下げるであろうなァ」

左秘書官「そうか…っ、そうなると残る罪は国民からの軽い起訴のみ…」

左文官「大した罪にはならない…。実刑は難しいですね…っ」

左大臣「それでは右の連中に打撃とはならん…。だったらだァ……」

左秘書官「……?」



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