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召喚士「行けっ!コカトリス!!」 その21
- 929 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga]
投稿日:2010/11/23(火) 23:40:34.04 ID:r2muZ2Uo
バサッバサッ…バサァ
弓隊「な、なんだ…!?何か来るぞ!!」
隊長「魔物…?増援か…!?」
西方参謀「にしちゃあ、数が少ない…ってか、一匹だぞ?」
夜行「……お前さんかい」
ヤタガラス「お言葉やなぁ……」
夜行「何だってんだい?助っ人なら無用……」
ヤタガラス「阿呆っ!いつまで遊んでんねん!」
夜行「……?」
ヤタガラス「人間共、とっくに巣へ入ったで」
夜行「何…っ!?」
ヤタガラス「ソイツら、本隊に見せた囮や。あんさん騙されたんや」
夜行「――ッ!!」
ヤタガラス「ほな、分かったらさっさと帰るで!」
夜行「……ナメやがってぇ!」
- 930 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/23(火) 23:41:18.21 ID:r2muZ2Uo
ヤタガラス「さーて、ちゃっちゃと……ん、何や…?」
ザッ
隊長「そいつは良い事聞かせて貰ったぜ」
西方参謀「無事、辿り着いたってワケだ。がははっ!」
夜行「悪いねぇ。お前らと遊ぶのも悪くなかったんだが…急用だわ」
隊長「そうはいかねぇよ」
西方参謀「んな話聞いちまったら…おめおめ帰すわけにゃいかねーなぁ」
夜行「……」
ヤタガラス「あんなぁ、お前らみたいな囮と遊んどる場合ちゃう……」
夜行「まぁ待て、コイツらを始末してからでも遅くはあるまい」
ヤタガラス「だからー、コイツらは囮でだなぁ……」
城主「囮、囮と言いますけどね…れっきとした本陣なのだぞ!」
足軽「そうだそうだ!カラスの分際で生意気だぞ!!」
弓隊「これでも食らいやがれっ!」
ググッ…ヒュオッ!!
- 931 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/23(火) 23:41:54.24 ID:r2muZ2Uo
ヤタガラス「おわっ!あぶな!……調子に乗りくさってぇ…!」
西方参謀「おっ、いいぞいいぞ!どんどん挑発しちまえ!」
夜行「帰るかい?」
ヤタガラス「この生意気な連中…始末しちまえっ!」
夜行「ヒヒッ!」
城主「来るぞっ!迎撃準備ぃーっ!!」
ザザッ
隊長「あっちが成功してるなら…チンタラ時間稼ぐ必要もなくなったな」
西方参謀「まぁ、城主殿らはハナっからそんなつもりもなかったみたいだけどな」
隊長「…よーし、大将首は俺が頂く!」
西方参謀「仕方ねぇ。支援してやっか」
夜行「さぁて、まとめて地獄へ葬ってくれるわ」
ヤタガラス「良質の生娘がいたら殺さず捕らえるんやでぇ」
夜行「…人間のメスなんぞいないよ。ヒヒッ」
ヤタガラス「そら残念…。ほんなら、皆殺しや!」
- 932 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/23(火) 23:43:36.71 ID:r2muZ2Uo
ほぼ同時刻、洞窟の最深部…。
女剣士「……」
戦士「鬼丸、背後は任せる」
鬼丸「……あいよ!」
戦士と鬼丸。二人は背中を合わせ武器をその手に構える。
名代「召喚士殿……」
召喚士「…はい。いつでも準備は」
名代「実はな、先の戦闘で手持ちの札が残り三枚……」
召喚士「名代さんの切り札は、いざという時に。それまでは俺が…」
名代「……助かる」
召喚士と名代。二人は背中を合わせ同時に頷く。
帝「女剣士、私の刀を」
女剣士「……あくまで防護の為にお使い下され」
魔道士「ずいぶん…大きな刀ですね……」
帝「十束剣と申してな。拳十個分の刀身を持っておる」
- 933 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/23(火) 23:44:42.48 ID:r2muZ2Uo
戦士「上様も剣を扱えるのか…!?」
鬼丸「…グハハッ!ありゃ大したモンだぜ?」
戦士「見た事あんのか?」
鬼丸「一度だけなぁ…交えた事があってな。そりゃもう……」
戦士「……どした!?」
突如正面の壁を見上げる鬼丸。
鬼丸「来やがったぜ…っ!」
名代「ヤマタノオロチか…!?」
鬼丸「いんや……雑魚だ」
その時、周辺にそびえる壁の穴から、何かが這いずるような音が聞こえ始める。
名代「な、何の音だ……?」
召喚士「あ……あれは…っ!?」
ズズズッ…ドシャアァ
穴から這いずり出るは、白と黒、二種類の大蛇。
鬼丸「……ありゃ、大蛇だな」
- 934 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/23(火) 23:45:23.61 ID:r2muZ2Uo
戦士「オロチ…?」
鬼丸「蛇の化けモンだ。なかなか厄介だぜ」
ズルゥ……ズズッ
魔道士「ひ…っ!」
召喚士「魔道士さん、退がって下さい。それに上様も……」
帝「……ふふっ」
テクテクテク
帝「行くぞ」
女剣士「決してお傍を離れなさらぬよう…」
ゆっくりと前進する帝の前に回りこみ、女剣士は腰の得物をゆっくりと鞘より抜く。
戦士「おいおい…っ、出るのかよ!?」
鬼丸「俺らが通さなきゃいいだけの話だろ…ガハハッ!」
戦士「…ま、そりゃそうだがよ」
召喚士「戦士っ、来るよ…気を付けて!」
戦士「おっぱじめるとするか!」
- 935 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/23(火) 23:46:25.40 ID:r2muZ2Uo
ズズズッ
地を引き摺るその独特の移動音。それは一同、中でも魔道士にとって、
その容貌と相まって、嫌悪感、不快感を感じさせる。
魔道士「……うぅ…っ」
その名の通り、鬼丸の図体より遥かに大きく太い白と黒の大蛇。
七人の侵入者を取り囲もうと、次々に周囲の穴より這い出し姿を見せる。
ゆっくりと近づく大蛇らに対し、戦士を中心に鬼丸、女剣士が前面へ出る。
ザッ
女剣士「……」
戦士「あんんまり出過ぎるなよ…?コイツら集団で……」
女剣士「…指図するな、殺すぞ」
戦士「……」
そのやや後方、刀を手にした帝を挟むように、召喚士と名代が立つ。
召喚士「…名代さん、こいつらは本命じゃない。…後方から指揮をお願いします」
名代「…相分かった」
- 936 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/23(火) 23:47:19.10 ID:r2muZ2Uo
最後尾の魔道士が一つ、身震いをして召喚士へ近づく。
タッタッタ
召喚士「魔道士さん。前衛の三人…補助をお願いします!」
魔道士「わ、分かりました…っ!」
戦士「……さぁ、どっから来る…?」
周囲を取り囲む大蛇。しかし仕掛けてくる様子は依然なし。
女剣士「…………」
ズズズッ
鬼丸「……ッ!?」
戦士「下だぁ!!飛べっ!!」
突如、大声で叫ぶ戦士。それに反応して鬼丸と女剣士が高く跳躍する。
ボゴォッ!!
名代「地面のしたから大蛇が……っ!!」
戦士「何匹かいんぞ!このまま叩く…っ!!」
召喚士「……行けっ!コカトリス!!」
- 937 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/23(火) 23:48:17.16 ID:r2muZ2Uo
シュイィン…
戦場へ現れる見慣れた巨鳥。召喚されたコカトリスが即座に上空を舞う。
女剣士「……ふん」
鬼丸「…っらぁ!」
戦士「でりゃああぁぁ!!」
コカトリスと入れ違うように降下する三人は、そのまま武器を振り上げ、
地中より這い出てきた大蛇へと力任せに叩きつける。
グオッ……ドッゴオオォォッ!!
女剣士「再び土の中へ…!?」
戦士「ちっ、チョコマカと……」
召喚士「全員、中央を空けて下さい!」
名代「…!?」
召喚士「コカトリス!!」
コカトリス「おう」
急降下するコカトリスは、そのまま空いた中央へと石化の吐息を放つ。
- 938 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/23(火) 23:54:57.08 ID:r2muZ2Uo
ゴオオォォッ…
帝「地面の土が……石に……!?」
召喚士「上様、お乗り下さい」
名代「…成程っ、これで地中からの奇襲は防げるという事ですな」
召喚士「ええ。戦士、ここを中心に展開を!」
戦士「おっしゃ!聞いたか、あの石床を拠点に戦うぞ」
鬼丸「おぉし、周りを固めるぜぇ!」
ザッザッザ…
女剣士「上様…っ!?」
帝「分かっておる。危うくなればここへ退がれば良かろう…?」
名代「妖怪は下からのみではありませぬからな。重々……」
帝「その言葉、そのまま返すぞ」
鬼丸「グハハハ!旦那は肉弾戦、からっきしだもんなぁ…」
女剣士「一本取られたな」
名代「……っ」
- 940 名前:三日目東R59Aがお送りします [] 投稿日:2010/11/24(水) 02:41:44.70 ID:jWUnFXw0
1乙
鬼丸が戦ったことがあるってことは
覆面は帝だったってことかな…?
- 945 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/24(水) 18:02:32.82 ID:Juck93so
スゥッ…
帝「…では、参るぞ」
十束剣<とつかのつるぎ>。刃渡りは拳十個分相当の長さを持ち、
これは大の大人の拳に当たる為、おおよそ80cm程あろうかという長剣である。
束とは東方の単位の一つで、1伏が指一本分の太さで数えられる。
4伏=1束となり、親指を除いた拳一握りが1束の目安とされていた。
タッタッタ…
齢十三に過ぎぬ帝にとって、それは非常にアンバランスな得物であり
小柄なその身で扱うには至難の技であった。
大蛇「……キシャアアァァーッ!!」
帝はお世辞にも俊足とは言えぬ突進で石床より前衛へと移る。
そこへは待ち構えていたと言わんばかりに、大蛇が地中より獰猛な牙を剥く。
帝「……」
大蛇が顔を出した瞬間、帝は急停止し先程とは比べ物に成らぬ程の一瞬で、
バックステップのまま大蛇の喉元を一閃の元に斬り付けた。
- 946 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/24(水) 18:03:36.27 ID:Juck93so
ヒュオッ…ザシュウゥゥ!!
大蛇「ギ……イイィィ!!」
戦士「……おぉ…っ」
スタッ
女剣士「お見事」
帝「…いや、まだまだだな」
女剣士「……?」
帝はおどけたような表情で、身につけた衣服の袖を持ち上げる。
スゥッ
帝「返り血が付いてしまった。これは侍従に怒られてしまうな…ふふっ」
急所を一撃で裂かれ、悶絶しつつ地中へ逃れる大蛇。その横で帝が笑う。
魔道士「あ、あんな大きな剣で……」
召喚士「上手いですね。遠心力をうまく使って…自在に扱ってます」
名代「天賦の才でしょうね。素直には喜べぬが……」
確かな腕であるが故に、名代は心配そうにその行動を見守る。
- 947 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/24(水) 18:04:30.98 ID:Juck93so
ザッ
戦士「こっちも負けて……らんねぇぜ!」
ザシュッ!!
鬼丸「おーよ!!」
ザンッ!!…ブシュウウゥゥ
帝の流れるような動きとは正反対に、二人の男は力任せに武器を振るう。
荒々しくも暴力的な攻撃であるが、その裏打ちされた実力と技術によって、
力任せの攻撃が回避不能の攻撃へと昇華する。
鬼丸「…っと、あんまり出張るのもよくねぇな」
戦士「ほぉ〜冷静だな」
鬼丸「当ったり前よ。この後にゃ大物が控えてらっしゃるかんなぁ!」
戦士「いいのかよ、かつてはお仲間だったんじゃねーのか?」
鬼丸「俺は楽しけりゃそれでいいんだよ!強い奴と戦ってなぁ!!」
戦士「……はっ!頼もしい限りだよ」
鬼丸「おっしゃあ!ガンガンいこうぜ……相棒ッ!!」
- 948 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/24(水) 18:05:11.61 ID:Juck93so
ゴウッ
数時間前とは状況が違い、開けた視界を素早く飛び交うコカトリス。
交戦する前衛の動きを見据えた後、召喚士へその視線を移す。
召喚士「……」
コカトリス「……ふむ」
召喚士が風のレイピアで手振りを交え指示を促すと、
コカトリスはそれに従い、左右の壁へめがけて石化の息を吹きつけた。
ゴオオォォ…
広範囲に渡り届く澱んだ吐息。それは壁に空いた無数の穴を次々と塞ぐ。
名代「成程……。先に穴を塞いでしまう、というわけか」
魔道士「これなら増援も来られないですね!」
召喚士「……来たとしても、時間は稼げるはずです」
コカトリス「さて、次は……」
大蛇「キシャアアァァ!!」
コカトリス「!?」
- 949 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/24(水) 18:05:46.09 ID:Juck93so
まだ塞がっていない穴より大蛇がコカトリスめがけ飛びかかる。
コカトリス「……」
しかしそれは、いとも容易くコカトリスの尾に払われ、泉の中へと落ちていった。
バシィ!!……ザッパアアァァンッ!!
コカトリス「……!?」
ギュオッ……バサァ
召喚士「大丈夫!?」
コカトリス「ん、ああ。それよりも……」
召喚士「……?」
コカトリス「あの泉、何かいるぞ」
召喚士「!?」
コカトリス「気配を絶っている…と言うか、眠らされているのか」
召喚士「眠り…?封印されてるって事?」
コカトリス「…さぁな。だが微かに気が漏れている」
召喚士「なるほど。それを感じとったわけだね…」
- 950 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/24(水) 18:07:13.34 ID:Juck93so
大蛇「シャアアァァーッ!」
女剣士「……」
螺旋状に身体を縮め、一気に飛びつく大蛇。女剣士はそれをひらりとかわす。
トーンッ……ヒュオッ…スタッ
女剣士「…お主、魔法が使えるんだよな?」
魔道士「え、あ…はいっ!」
女剣士「すまぬが……援護を頼む!」
タタッ……ヒュンッ
再び身を捻りながら空中を舞う女剣士は、刹那の内に大蛇の元へと間を詰める。
女剣士「……」
チャキッ
魔道士「やあぁ!!」
ドドオオォォンッ!!…ゴオオォォ
大蛇「ギキャアアァァーッ!!」
燃えさかる女剣士の刃が、大蛇を真っ二つに斬り裂き、炎に包んだ。
- 951 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/24(水) 18:08:40.23 ID:Juck93so
ゴオオォォ…バチィッ
帝「……ほぉ、あれが魔法剣とやらか。凄いな」
ザッザッザ
女剣士「見事だ。やはり弱点は火……」
魔道士「以前も蛇には通用しましたから…おそらくと思って」
女剣士「…他の輩にも付加を」
魔道士「はいっ!!」
戦士「いよっしゃ!お次はこっちだ!」
鬼丸「俺もだ!!」
魔道士「そ、そんな一遍に言わないで下さいっ!」
ドドドドオオォォンッ!!
名代「な、なんと……同時に!?」
戦士「っらあぁ!!」
鬼丸「グハハ!すっげぇな!!」
戦士の戟と鬼丸の金棒が唸りをあげ、炎の尾を帯びながら大蛇へ直撃する。
- 952 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/24(水) 18:10:07.05 ID:Juck93so
バゴォッ!!…ズドオォンッ!!
帝「いやはや、お見事」
女剣士「上様、出すぎですぞ。お退がりを……」
帝「私だけ除け者か?」
女剣士「御戯れを……」
帝「冗談だ。だが安心せよ」
女剣士「……」
帝「妖怪を斬れば斬る程、十束剣は歓喜を上げておるわ」
召喚士「…?」
名代「あの刀は特殊でね…。妖を斬れば斬る程、その威力を増すのですよ」
召喚士「!?……じゃ、じゃあ…っ」
名代「既に大蛇を何匹か葬っております」
魔道士「…という事は、剣は更に強く…っ!?」
名代「はい」
召喚士「……」
- 953 名前: ◆1otsuV0WFc [sage saga] 投稿日:2010/11/24(水) 18:11:15.98 ID:Juck93so
ヒュオッ
帝はうまく石床への出入りを駆使しつつ、十束剣を大いに振るう。
女剣士「……上様、とどめを」
ヒュオッ…スパッ!!
大蛇「ギ…イィ!!」
帝「……っ」
ドズッ……ズシャアァ
帝「無理に生かさずとも良いぞ?」
女剣士「しかし、その方が刀の成長も早く……」
帝「手を焼かせてすまんな。お前は本当に頼りになるよ」
女剣士「そ…そんな…っ、私は……あの…っ」
ザシュッ!!
戦士「ボケっとしてんじゃねぇ!後ろに迫ってんだろ!」
女剣士「…五月蝿い。殺すぞ」
女剣士の背後に迫る大蛇の胴に、女剣士の刀と戦士の戟が同時に刺さった。
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