■戻る■ 下へ
姉「十年前から戻ってきたよっ!」
- 1 名前:VIPがお送りします(東京都) []
投稿日:2011/03/15(火) 22:39:12.86 ID:Cur5w1Qp0
なぜ落ちたし
- 2 名前:VIPがお送りします(九州) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:40:32.09 ID:Pfw30CIuO
スレ保持数減ってんだからそりゃ落ちるわ
- 3 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:41:00.23 ID:TptmAVrj0
一分で新スレ100個は立ってる気がする
- 4 名前:VIPがお送りします(福岡県) [sage] 投稿日:2011/03/15(火) 22:41:07.73 ID:JCLgkSxN0
来るかな>>1
- 5 名前:VIPがお送りします(東京都) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:41:35.60 ID:Cur5w1Qp0
それにしても早すぎでしょ
というわけで書いてくれたまえ
- 6 名前:米田 ◆YONE/zixE6 (長野県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:41:49.03 ID:W+7b/z3W0
(丑)_, ,_ 正捕手による保守
( ・∀・)
( つ @ J≡≡≡
と__)__)
_, ,_(丑)
(・∀・; )
( ∪ @
JY⌒ と__)__)
- 7 名前:VIPがお送りします(東京都) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:43:47.06 ID:Cur5w1Qp0
こないねぇ
- 8 名前:VIPがお送りします(神奈川県) [sage] 投稿日:2011/03/15(火) 22:44:16.04 ID:o4l/ydPi0
五分で落ちるとかクソワロタ
- 9 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:44:33.55 ID:lUFn3+XX0
結構揺れた。
とりあえず、また初めから投下。
- 10 名前:VIPがお送りします(東京都) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:44:40.26 ID:ldr6/B1U0
愛知は大丈夫なのか
まさか地震で
- 11 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:45:17.16 ID:lUFn3+XX0
とても穏やかな日々。
──ピンポーン。
何かが変わるなんて、思いもしなかった。
母「男ー、今、手が離せないから出てくれなーい!?」
男「多分、新しく来た隣の人だと思うぞ?」
引っ越し屋が荷物を運んでいるのを今さっき見たところだ。
母「いいから、お願い!」
男「分かったよ……めんどくせーなー……」
母「印象悪くないようにしてよ」
男「はいはい」
気乗りのしない足取りで、玄関へ向かう。
──ピンポーン。
男「今、開けまーす」
ガチャ……。
- 12 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:45:47.60 ID:lUFn3+XX0
少女「よっ、男っ! 戻って来たよっ!」
男「……え? 誰?」
そこにいたのは、とても小柄な女の子だった。
妙に馴れ馴れしく、けれど……
目に涙を浮かべていたのが、俺はとても気になった。
少女「忘れちゃったのっ! 私、姉だよっ!」
男「……姉?」
この子はいったい何を言ってるんだろう……。
少女「戻って来たのっ! 十年ぶりに帰って来たんだっ!」
男「興奮しないで……もしかして、君、お兄さんをからかってる?」
少女「そんな訳ないじゃないっ! もう、ほんと男、大きくなったわねっ」
男「そういえば、なんで俺の名前知ってるんだ?」
- 13 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:46:05.02 ID:lUFn3+XX0
少女「忘れるわけないわよっ、だって、あなたが赤ちゃんの頃から知ってるんだからっ」
男「……俺が生まれた時は、君は生きてないだろ……」
少女「今は、そうよっ。でも、昔はそうじゃないのっ」
男「……からかうのは止めなさい。お兄さん、怒るよ?」
ちょっと厳しい顔をして、怖がらせる。
すると、少女は小さな両足で地面を叩いて……。
少女「もう何で分からないのよっ! 私、姉よ! あなたの姉っ!」
……姉? この小さな娘が俺の姉さんだって?
男「……そんな馬鹿な話あるか。だって、姉さんは……」
──十年前に死んでしまったはず……。
男「……ん? 君はさっき何年前って?」
- 14 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:46:31.33 ID:lUFn3+XX0
少女「十年前っ! 十年前から戻って来たのっ!」
男「……え……」
そんな嘘みたいな話……信じられるわけがない……。
男「……姉さんは死んだはずだ……」
少女「うんっ、死んじゃったよ……」
少女「でも……でもねっ」
分かってる………からかわれてるだけだって気付いてるはずなのに……。
どうしてだろう、どうしてだ?
俺は彼女の次の言葉が聞きたい。
嘘でもいいから……聞いてみたかったんだ。
少女「戻って来たのっ! あなたに会いにっ! 死んだ世界からっ!」
- 15 名前:VIPがお送りします(東京都) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:46:43.55 ID:Cur5w1Qp0
きてくれたか
- 16 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:46:52.26 ID:lUFn3+XX0
男「……う、うそだ……」
そう、絶対、嘘に決まってる……。
少女「嘘じゃない、ほんとよっ! 男、本当に会いたかった!」
男「……ああ」
信じたくないような信じたいような現実が、そこにはあって。
だから、俺は……。
男「……ね」
男「──姉さん……?」
姉「うんっ! 久しぶりっ!」
昔呼び慣れた彼女の名を、呼んだんだ。
……………。
- 17 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:47:19.09 ID:lUFn3+XX0
それは、とても穏やかな日々。
何かが変わるなんて、思いもしなかった。
姉さんが死んでしまってから十年が経ち、
何事も変わらない日常に、少し嫌気がさしていた。
そんな時、一人の少女が我が家を訪ねた。
自分を、俺の姉だと言った。
顔も違う、声も違うはずなのに……
少女の笑みに惹かれてしまうのは、
懐かしさを感じてしまうのは……どうしてだ。
でも、何となく気付いている。
彼女が姉だって、死んでしまった姉さんなんだって。
季節は秋。
俺は、死んだはずの姉に出会った。
けれど──
これは、幸せな物語では断じてない。
……………。
……………。
- 18 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:47:32.77 ID:lUFn3+XX0
俺には昔、姉が一人いた。
とても自慢になる、歳が五つ離れた、たった一人の姉。
いつからかは分からない。
けれど、物心ついたときには、『姉さん』と呼んでいた。
小さい頃から、彼女の後ろを追い続けて、
どこに行くにも、彼女の手を握りしめていた。
そんな俺を、少しも嫌がりもせず、可愛がってくれた。
とても慕っていたんだ。
両親たちよりも……姉のことが家族で一番好きだった。
自意識過剰かもしれないけど、
姉さんも、俺を好きでいてくれると信じていた。
ある日のことだった。
……………。
- 19 名前:VIPがお送りします(埼玉県) [sage] 投稿日:2011/03/15(火) 22:48:27.88 ID:TohiglOm0
まぁ時期が時期なだけに今はSSスレたてねーほーがいいな
不謹慎とは言わないが、ゆったり書いてると速攻で落ちるし
見る人も少ないだろう
- 20 名前:VIPがお送りします(dion軍) [sage] 投稿日:2011/03/15(火) 22:48:33.34 ID:pql3CPE50
姉「生理が来た・・・」
- 21 名前:VIPがお送りします(東京都) [sage] 投稿日:2011/03/15(火) 22:49:26.38 ID:Cur5w1Qp0
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/
こっち行ったほうがいいかもね
- 22 名前:米田 ◆YONE/zixE6 (長野県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:51:43.68 ID:W+7b/z3W0
_, ,_ FA移籍?
( ・∀・)
( ∪ ∪
と__)__)旦~~
- 23 名前:VIPがお送りします(中部地方) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:52:24.50 ID:YXJ1LmkH0
NO!ヘッドハンティングされたのさ
- 24 名前:VIPがお送りします(東京都) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:52:54.66 ID:Cur5w1Qp0
俺としてはどこでもいいから続けて欲しい
- 25 名前:VIPがお送りします(福岡県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:53:45.54 ID:Z123Bq3L0
保守
- 26 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:54:42.42 ID:lUFn3+XX0
コンコン。
男「姉さん、入って良いかな?」
姉「もちろんよっ、ほら、こっちにおいでっ」
男「うんっ」
姉「それで、今日は何があったの?」
男「あんまり今日は面白いことは無かったんだけど……」
姉「いいのいいのっ、聞かせてっ」
男「うんとねー、友達の山北が……」
……………。
- 27 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:55:18.67 ID:lUFn3+XX0
俺は、いつも通り彼女の部屋に行って、
今日あった一日の話を詳細に伝える。
姉はそれを黙って……時には笑い、そして驚きながら、
聞き入ってくれた。姉は、聞き上手だったんだ。
でも、その日はそんな姉さんに質問がしたくなった。
本当に、俺を好きでいてくれてるのか。
つまらない話を実は聞きたくないんじゃないか。
他人の感情を少し気にし始めた年齢だった。
俺は怖かったんだ。彼女の好意を確認したかった。
だから。
……………。
- 28 名前: 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 (大阪府) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:55:46.26 ID:aHYp+mBx0
Ho
- 29 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:56:02.40 ID:lUFn3+XX0
男「ねぇ、姉さん……」
姉「ん?」
男「ちょっと、質問してもいいかな?」
姉「真面目な話?」
男「うん……少し……」
姉「いいわよ。私に答えられることだったらね」
男「…………」
姉「……どうした? 男?」
男「……ね、姉さんは」
姉「うん」
男「こんなつまらない話……聞いてて楽しい?」
姉「えっ……急にどうしたの? 楽しいわよ?」
男「でも、忙しい日も半ば無理矢理に聞かされてる感じだし……」
- 30 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:56:59.08 ID:lUFn3+XX0
姉「別にそんなの気にしないでも……」
男「だから、はっきり教えて欲しいんだ」
男「……姉さん、実は、俺のこと嫌いだったりしない……?」
姉「……男……」
男「…………」
姉「もう、何馬鹿なこと言ってるの?」
男「……うぅ……」
姉「私が、実は男のことが嫌い? 話がつまらない?」
男「……う、うん……」
姉「そんなわけあるはずないじゃないっ」
男「……えっ」
姉「私が男のことを嫌うわけがないわよ」
姉「それに、つまらない話だなんて思ったこともない」
男「で、でも……」
- 31 名前:VIPがお送りします(青森県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:57:08.37 ID:5WB7JZTP0
あれなんか見たことあるぞこれ
デジャヴ?
- 32 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:57:28.32 ID:lUFn3+XX0
姉「もう……ほら、耳貸しなさい」
男「……え」
姉「もっとこっちに寄って」
男「う……うん」
姉「この際だから言ってあげる。誰にも言っちゃ駄目よ?」
男「秘密の話?」
姉「そう二人だけの秘密。約束できる?」
男「うんっ」
姉「よしっ」
姉「……実はね、私……」
──世界で一番、あなたのことを大事に想ってるの
……………。
……………。
- 33 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:58:00.93 ID:lUFn3+XX0
場所を移動して、小さな少女と近くの喫茶店へ。
未だ状況を掴めない俺は、内心の焦りが顔に出ないよう、
必死に平然を装っていた。
姉「うわぁ……お洒落なお店だね」
男「あ、うん……」
姉「私が生きてた頃には確かなかった。でしょ?」
男「数年前に新しく出来たんだ」
姉「やっぱりそうだ。んー……何頼もうかなぁ」
メニューを無邪気に覗いている様は、
ただの年相応の女の子にしか見えなかった。
男「……なぁ」
姉「うん?」
男「……本当に、姉さんなのか?」
姉「そうだよ。……んー、パフェ頼んでもいい?」
男「そりゃ構わないけど……」
- 34 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:58:23.20 ID:lUFn3+XX0
姉「やったっ! 何か甘い物食べたかったのっ」
そう言って、ウエイトレスを呼んでいる。
男「……おい」
姉「正直ね、私も混乱してるのよ」
男「どういうことだ?」
姉「これまではずっと普通の女の子として生きてたから」
姉「記憶が戻ったのも……ほんの少し前のことだし」
男「……え」
姉「引っ越したから挨拶しにいきなさいって、ママに言われて……」
姉「呼び鈴鳴らして待ってたら、急にばぁーって」
男「そこで思い出したのか……」
姉「だから、死んだ昔の私と、今の私がごっちゃになって」
- 35 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:58:45.13 ID:lUFn3+XX0
姉「絶賛混乱中です、ははっ」
男「笑い事かよ……」
そんな様も死んだはずの姉にそっくりだ。
何事もボジティブを忘れない、彼女はいつもそうだった。
男「……二人には会わなくていいのか?」
二人とはもちろん、両親のことだ。
姉「うーん」
会わせようとする俺を断り、外で話をしようと切り出したのは、
少女……つまり、姉さんの方からだった。
男「喜ぶと思うけど……」
姉「それは分かるんだけど……ちょっとね」
男「…………」
- 36 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:59:08.96 ID:lUFn3+XX0
姉「今の私にはたくさんの親がいるの」
男「ああ、そうか」
姉「この頭の状態で会ったら、今以上に混乱しそうでね」
姉「それに……信じて貰えない可能性だってあるし」
男「俺は信じたのに?」
姉「男は別。だってあなたは私のたった一人の弟だもん」
男「何だよそれ……」
姉「ふふっ、でも、ほんとに男大きくなったね」
男「……そりゃあ、十年経てばな」
姉「私の後ろにいつも隠れてたのになぁ……」
姉「可愛いって感じではもうないね」
男「俺ももう二十歳だぞ? 可愛かったら逆に気持ち悪い」
- 37 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 22:59:33.22 ID:lUFn3+XX0
姉さんが死んだときは、十歳。
それから十年が経とうとしている。
姉「そうかぁ……二十歳なんだぁ……」
男「…………」
姉「時の流れって早いもんだね……」
男「……そうだな」
彼女が言うと、それは重みのある言葉だった。
姉「今は大学に通ってるの? 二十歳なら二年?」
男「一浪しちゃったから、一年だな」
姉「ははっ、浪人してたんだ」
……………。
話は尽きなかった。
なんせ十年ぶりに会ったんだ。
その間に話したかったこと、聞きたかったこと……
幼少の頃に戻ったかのように、俺は彼女に話し続けた。
- 38 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:02:24.74 ID:lUFn3+XX0
その間も、彼女は昔のように、笑って聞いてくれた。
身体は変わってしまったけれど、
俺の自慢の姉さんに違いない……そう確信する。
俺の話はひとまず終わり、次は姉さんの番だ。
……………。
姉「わたし?」
男「そう、次は姉さんが話せよ」
姉「でもなぁ……話すことと言っても……」
男「今まで、その女の子として生きてきたんだろ?」
男「何だっていいんだよ。教えてくれ」
すると姉は、ニヤリ笑って……
姉「なに? もしかして今の私に惚れた?」
- 39 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:02:51.23 ID:lUFn3+XX0
男「……は?」
思いがけないことを言い出した。
姉「今流行りのロリコンってやつねっ」
男「……違います」
姉「もう、恥ずかしがる必要はないのよっ? むしろ、嬉しかったり?」
男「いや、本当に違うから、やめて……」
姉「しかし、あの男がねぇ……」
男「何だよそれ……」
姉「ほら、だって昔は年上キラーだったじゃない?」
男「年上キラー?」
姉「覚えてないかな、初めて私の親友を連れてきた日のこと」
……………。
……………。
- 40 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:03:15.95 ID:lUFn3+XX0
姉の親友は、能天気で明るい姉さんとは対照的な……
落ち着いていて、けれども、どこかしら艶かしさの漂う人だった。
当時、姉が中学生だったにもかかわらず、
小学生の自分がそう感じたのだから、相当なものだと思う。
ある日、姉さんに連れられて姉の部屋に入ると、
座布団に座った彼女と目が合った。
目尻の横に小さなほくろがあって、
優しそうな笑みを浮かべて、こっちを見ていたっけ。
……………。
男「……え、誰?」
姉「私の親友よっ、仲良くしてねっ」
親友「どうも初めまして、男クン」
男「あっ、どうも」
姉「照れない照れない」
- 41 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:03:42.19 ID:lUFn3+XX0
男「て、照れてないよっ」
親友「お話はお姉さんから色々聞かせて貰ってるわ」
男「え……どんなこと?」
親友「とっても可愛い弟がいるんだって」
姉「ちょっと、余計なこと言わないのっ」
親友「ふふ、聞いてはいたけど、実際に見て納得したわ」
姉「……なんかいやらしい目つき」
男「ね、姉さん、失礼だよ……?」
親友「かなり手なずけてるのね。いいわー姉が羨ましい」
姉「手なずけるって……ペットじゃないんだから」
- 42 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:04:23.58 ID:lUFn3+XX0
親友「私もこんな弟欲しかったなぁ……彼氏でもいいけど」
男「……えっ」
姉「ちょっとっ! 相手は小学生よっ、なに言ってるの!」
親友「愛に歳の差は関係ないのよ? 知ってた?」
姉「そういう問題じゃないっ、手出したら絶交よ?」
親友「もう、そうカッカしないの。あんたの弟クンは取らないから、ね?」
姉「心配だなぁー……」
親友「でも、弟クンはどう?」
男「な、何がですか?」
親友「わたしのこと好きになったりしない?」
男「えええっ」
姉「ちょっと親友っ! 何言ってんのっ!」
……………。
……………。
- 43 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:04:50.13 ID:lUFn3+XX0
確かに言われてみれば、年上に好かれることは多かったかもしれない。
姉が死んだ後に付き合った女性は、偶然にも、みな年上だった。
男「…………」
姉「そのだんまりは、やはり思うところがあるんでしょ?」
男「……さあね」
しかし、はぐらかす俺の対応には、納得がいかないようだ。
目の前の少女は、一丁前に厳しい顔つきで……。
姉「何誤魔化してるの?」
男「いや、誤魔化してないって」
姉「そう言えば、まだ聞いてないことがあった」
男「何だ」
- 44 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:05:13.76 ID:lUFn3+XX0
姉「今、付き合ってる女性はいる?」
男「いない」
それは本当だ。
姉「じゃあ、今までは?」
男「…………」
姉「それは、イエスと取っていいのね?」
姉「……お好きなように」
姉「……何よそれ……嘘だと言ってよぉー」
男「そりゃ、二十歳にもなれば恋の一つや二つしているさ」
姉「私の弟が知らぬ間に穢されてる……うぅ……」
男「穢されてるって……」
姉「あっ!」
- 45 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:05:29.63 ID:lUFn3+XX0
バンっ、と音が鳴る。
小さくなった姉が、その幼い掌でテーブルを叩いたのだ。
姉「も、もしかして、親友と付き合ってたとかないわよねっ!」
なかなか鋭い質問だ。
男「……ないよ」
姉「それは本当っ? 嘘じゃない?」
姉「あの娘のことだから、邪魔者がいなくなったとばかりにアプローチかけたんじゃないの?」
男「それはまぁ……当たらずと雖も遠からずって感じだけど」
姉「何よっ、きちんと説明しなさいっ!」
男「ええ……」
姉「お姉さん命令ですっ!」
- 46 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:05:50.31 ID:lUFn3+XX0
幼い彼女が腰に手をやっている様は、何とも可愛らしい。
そんなこと、口には絶対に出さないけれど。
男「うーん……あんまり言いふらすのはどうかと思う」
姉「駄目、姉には聞く権利があるんだからっ」
男「…………」
仕方ない。ここは話すしかなさそうだ。
男「姉さんが死んで直ぐってわけじゃない」
男「そうだな……俺が高校生の時だ」
男「しばしばあの人が訪ねてきた頃があってな……」
……………。
……………。
- 47 名前:VIPがお送りします(神奈川県) [sage] 投稿日:2011/03/15(火) 23:08:25.41 ID:o4l/ydPi0
wktk
- 48 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:09:19.48 ID:JIo/y2P/0
ほ
- 49 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:11:07.44 ID:lUFn3+XX0
彼女が姉に線香をあげたいって家を訪ねたことがあった。
その時、俺は高校一年生。
姉の死で、まだ立ち直れず、無茶やっていた頃だった。
葬式で会った以来の彼女はとても綺麗になっていて、
胸元が大きく開かれた服装に、内心は、どぎまぎしていた。
けれども俺は、ずっとむすっとした表情で、
彼女との会話に付き合うつもりは更々なかった。
話の途中、母が買い物のため抜けた後、
彼女と二人っきりの時に、久しぶりの会話が始まった。
……………。
親友「ねぇ、男クン?」
男「……はい?」
- 50 名前:VIPがお送りします(東京都) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:11:27.52 ID:Cur5w1Qp0
ほしゅ
- 51 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:11:39.62 ID:lUFn3+XX0
親友「さっきから黙ってるけど、何か怒ってる?」
男「別にそういうことじゃないです」
親友「なんか顔つき変わったわね」
男「…………」
親友「昔はあんなに可愛かったのに、今はちょっと怖いくらい」
男「……そうですか」
親友「まだ、立ち直れないの?」
男「…………」
親友「私から言うのも変だけど、あんまり考えても意味はないわよ」
男「……無駄ってことですか?」
親友「そう、意味のない時間を割いてるだけ」
親友「早く前を向きなさい。それが生きてる者の務めなんだから」
- 52 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:12:09.94 ID:lUFn3+XX0
男「生きてる者の務めですか、詩的ですね」
親友「馬鹿にしないで。今のあなたは最低よ」
男「……最低ねぇ」
親友「一体、どうしちゃったの? 何でそんな風に?」
男「自分では何も変わったつもりはないですけどね」
親友「いや、変わったわ。自分自身でも分かってるはず」
男「…………」
親友「はぁ……今のあなたをお姉さんに見せてやりたいわ」
男「……っ」
親友「なんて言うでしょうね。大体、想像はつくけど」
男「……なんて言うと思います?」
- 53 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:14:10.87 ID:lUFn3+XX0
親友「……早く」
男「え?」
親友「『早くしゃきっとしろっ!』」
男「……な」
親友「いつまで引きずってるつもり? あれから何年経ってると思うの?」
男「……引きずってなんか」
親友「嘘言いなさい。構って欲しくて仕方ないって顔してるわよ」
男「してねぇよ」
親友「だったら鏡で見て来なさいよっ、ふ抜けたアホの顔が見れるから」
男「……お前……」
親友「ついにはお前呼ばわり、滑稽ね」
男「……ッ」
- 54 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:14:50.27 ID:lUFn3+XX0
男「早く立ち直れ? しゃきっとしろ?」
男「部外者が口を開けば、偉そうに──」
男「この数年、線香もあげにこないで、良く人のことが言えたもんだなっ!」
親友「……それは」
男「そんなお前に俺の何が分かる?」
男「この数年間会ってこなかったお前が、何が分かるんだっ!」
男「分かってもいないのにっ、偉そうなことほざくんじゃねえっ!」
親友「…………」
親友「……あなたの言う通り」
親友「私には他人の気持ちなんか分からない。分かる訳もない」
親友「残念だけど、私は男クンじゃないし、肉親が死んだわけでもないから」
男「……ッ」
- 55 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:15:22.02 ID:lUFn3+XX0
親友「でもね、今のあなたを見てるといらいらするのよ」
男「…………」
親友「そろそろ立ち直るべきよ。もう悲しんでる日々は終わりなの」
男「俺は立ち直ってるつもりだ」
親友「その不良崩れの態度が? 死んだ姉に胸はれる?」
男「……くっ……」
親友「今日は姉に線香をあげるために来たんじゃないわ」
男「じゃあ何しに来たっていうんだよ」
親友「あなたに会いに来たの」
男「……俺に? 何のために?」
- 56 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:15:45.18 ID:lUFn3+XX0
親友「そのひねくれた性根、叩き直しに来たのよ」
男「……何だよそれ……」
親友「冗談なんかじゃない。これから何度だって来てやるから」
親友「……覚悟しなさい」
……………。
久しぶりの出会いは、喧嘩別れだった。
彼女が帰った後の俺は、何かと物に怒りをぶつけ、
けれども、胸の中に残る感情を持て余していた。
後になって気付く。
姉が死んだ後、そうやって怒りを表面に出したのは久しぶりだと。
初めて、自分の想いをぶつけたんだって、気付いたんだ。
それからというもの、彼女は何かと我が家に足を運んだ。
時には殴り合いになりそうな時もあった。
- 57 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:16:08.19 ID:lUFn3+XX0
そんな日々が続いた。
でも、ある日のことだった。
いつの間にか……彼女との言い合いを楽しみにする自分を見つけてしまう。
今までの自分がいかに愚かで情けなかったか。
それに気付いてしまった。
そして、その日も、いつものように彼女は我が家を訪れた。
……………。
親友「さあて、今日こそは白黒はっきりさせるわ」
男「……ああ」
親友「ん? 今日はやけに元気がないわね?」
男「……そんなことないさ」
親友「もしかして、風邪でも引いた? 体調悪い?」
- 58 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:16:26.77 ID:lUFn3+XX0
男「悪くない」
親友「キツいなら言いなさいよ。今日は線香だけあげて帰るから」
男「……なぁ」
親友「なに?」
男「どうして、あんたはそんなに親切にしてくれるんだ?」
親友「……親切って、別にあなたの性根が気に食わないだけ」
男「死んだ親友の弟ってだけだろ? ここまでする必要あるか?」
親友「だから……」
男「……もう分かったんだよ」
親友「……え」
男「俺が間違ってた……俺が悪かったよ……」
- 59 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:16:51.43 ID:lUFn3+XX0
親友「男クン……?」
男「ははっ、久しぶりにその呼び名で呼んだな……」
親友「だ、だって……」
男「ありがとうな。俺……もう、やめるよ」
親友「…………」
男「しっかり生きる。前を見る」
親友「本当?」
男「おう、今のままじゃ、姉さんに顔向け出来ない」
親友「……やっと分かったじゃない」
男「ありがとう……あんたのお陰だ」
親友「…………」
男「だから、聞きたい」
- 60 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:17:09.97 ID:lUFn3+XX0
男「どうして、こんなに親切にしてくれたんだ?」
男「あんな駄目なヤツだったのに……めげずに向かって来てくれたのは何故だ?」
親友「……分かんない?」
男「んー、俺は馬鹿だからな」
男「あんたが実は俺のことを好きなんじゃないかなって、馬鹿げた理由しか思いつかない」
親友「正解よ」
男「……え?」
親友「あなたのことが好きだから。いや、好きだったから」
男「ちょ、ちょっと待てよ……からかってんだろ?」
親友「実は初恋だったのよ。小さな可愛い男の子に惚れちゃったわけ」
男「う、嘘だ……」
- 61 名前:VIPがお送りします(神奈川県) [sage] 投稿日:2011/03/15(火) 23:17:35.29 ID:o4l/ydPi0
すごいペースだな
猿来るぞ
- 62 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:17:35.62 ID:lUFn3+XX0
親友「嘘じゃないわ。そうじゃなければ、こんな面倒なことしない」
男「…………」
親友「本当はもっと前に会いたかった……」
親友「でも、姉が死んでから直ぐって訳にはいかなかったし」
親友「それに、私も頭の整理の時間が必要でね。正直、姉の死で堪えたの」
男「……それはそうだな」
親友「良かった。これで、やっと振り出しに戻れるのね」
男「…………」
親友「好きよ。私、男クンが好き」
……………。
……………。
- 63 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:18:07.79 ID:lUFn3+XX0
結局、付き合うことはなかったけれど、
彼女にはその後、色んなことを教えて貰うことになった。
彼女がいなければ、今の俺はいない。
いつまでもへこたれて、下を向くばかりだったはず。
時には、ベットを共にしたこともある。
女性の扱い方から、男らしくあるためには、など。
様々なことを学んだ。
姉「……そうなんだ」
男「彼女には感謝してるよ」
けれど、大人の付き合いがあったことは、
姉さんに伏せておいた。
理由は分からない。
でも、そうする方が良い気がした。
- 64 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:18:26.97 ID:lUFn3+XX0
姉「それなのに、付き合わなかったんだ?」
男「ああ……何でだろうな」
姉「好きだったの?」
男「……分からない」
姉「分からない?」
男「あの頃は、恋愛感情はなかったのは確かだ」
けれど、最近は思う。
もしかしたら、俺は……
彼女のことを好きだったのかもしれない。
男「でも、終わったことだ」
姉「……男」
男「姉さんがこれ以上気にすることはないさ」
- 65 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:18:51.86 ID:lUFn3+XX0
姉「……それで、親友は今どうしてるの?」
男「大学を卒業して、海外に行った」
男「料理を真剣に勉強したいんだって。俺は応援したよ」
姉「…………」
男「だから、姉さんが会いたくても今は無理だけど」
姉「……本当に」
男「ん?」
姉「本当に、海外に行きたかったのかな?」
男「……そう聞いてる」
姉「止めて欲しかったんじゃないの? 男に」
- 66 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:19:21.42 ID:lUFn3+XX0
どうだろうか。
今はもう分からない。
それに……
仮にそうだったとしても、もう手遅れなんだから。
……………。
少しの後、喫茶店を出る。
- 67 名前:VIPがお送りします(福岡県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:19:58.58 ID:Z123Bq3L0
良スレ支援
- 68 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:19:59.78 ID:lUFn3+XX0
二人で並んで歩道を歩いた。
ただそれだけが、俺にはとても懐かしかった。
昔、姉の手を握り、二人でよく歩いたものだ。
彼女の歩幅に必死に合わせようとして、膝を擦りむいた。
そんな過去が今では良い思い出だ。
今は、幼い姉に二十歳の弟。
今度は彼女に合わせるのが、俺の役目。
向かう先は──
彼女の要望で、地元の中学校へ。
死んでしまう前の姉が、毎日登校していた場所。
かつては俺も通った……そのせいだろうか。
思い出すまでもなく、身体が自然と学校へ向かう。
懐かしの場所へ、俺達は戻って来た。
- 73 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:26:38.44 ID:lUFn3+XX0
姉「うわぁ……」
男「どう? 久しぶりだろ」
姉「うん……とっても、懐かしい」
男「…………」
姉さんは、ゆっくりと校庭を歩きながら、
校舎をただじっと眺めていた。
姉「十年も経ってるのに、変わってないね」
男「そうだなぁ」
姉「私、何度もここを通ったんだ」
姉「晴れの日も雨の日も……ずっとね」
男「うん」
- 74 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:27:40.28 ID:lUFn3+XX0
姉「そうかぁ……そうなんだ……」
男「ん?」
姉「あと卒業まで数ヶ月だったのに……」
姉「私、死んじゃったんだね」
男「…………」
姉さんが死んだのは、冬のことだ。
あと三ヶ月で終わる中学生活だった。
姉「もったいないことしちゃった」
男「……いいんだよ」
姉「え?」
男「もう一度、繰り返せば、さ」
姉「…………」
- 75 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:28:13.47 ID:lUFn3+XX0
男「折角、新しい身体になったんだから」
男「前の分も一緒に、楽しめよ」
姉「……そうよね」
男「一回やってるんだから、勉強だって楽だろ?」
姉「はは、男、良いことに気が付いたっ」
二人で笑い合う。
でも本当は、笑えるような話ではない。
彼女にしてみれば、辛く苦しい現実のはずだ。
この俺が想像もつかないほどの、
悔しさを感じているに違いない。
だけど。
- 76 名前:VIPがお送りします(広西チワン族自治区) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:29:07.30 ID:7FMhZUbSO
なんか前に見たな
- 77 名前:VIPがお送りします(福岡県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:30:52.07 ID:Z123Bq3L0
C
- 78 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:31:50.95 ID:lUFn3+XX0
久しぶりに姉さんと会えたこの日を……
少しでも暗くするのは、嫌だった。
姉「ねぇ、あれ」
男「どうした?」
姉「ほら、体育館っ」
男「ああ、そうだな……行ってみるか?」
姉「うんっ」
男「よし」
二人で体育館に向かう。
その時、横にいる姉が小さな声で呟いた。
姉「男は覚えてるかな?」
姉「昔もこうやって二人で来たことあったよね」
姉「休みの日に体育館に忍び込んで──」
……………。
……………。
- 79 名前:VIPがお送りします(東京都) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:34:04.27 ID:Cur5w1Qp0
ほ
- 80 名前:VIPがお送りします(チベット自治区) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:34:32.85 ID:ks/OI7ZW0
あれこれ去年の夏だか秋だかにも見た気がする
スレタイは違った気がしたが
- 81 名前:VIPがお送りします(長野県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:35:14.12 ID:Z3bYyDXl0
米田さんって長野でしたか
- 82 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:37:00.30 ID:lUFn3+XX0
中学三年になると、学芸発表会という催し物がある。
各クラスが自分たちが決めた出し物をして、
それを全校生徒の前で発表するというものだ。
俺が小学四年、つまり、姉さんが中学三年の時。
彼女のクラスでは、合唱をやることになった。
一人の生徒がピアノの伴奏をして、
それに合わせて他の生徒たちが歌を唱う。
そのピアノの演奏者として白羽の矢が立ったのが、
俺の姉さんだった。
けれど、あの頃の俺の心に宿ったのは、一抹の不安で。
男「でも姉さん、ピアノ引けるの?」
姉「小ちゃい頃に少しだけ習ってたよ」
男「えっ、それで大丈夫?」
- 83 名前:VIPがお送りします(関東・甲信越) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:37:39.76 ID:Mu3h+ScMO
まとめブログに載りそうなスレだな
良スレ支援
- 84 名前:VIPがお送りします(京都府) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:38:00.69 ID:Cat+jBS60
>>81
死んでなくてよかったな
米田は数少ないコテの良心
- 85 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:40:51.57 ID:lUFn3+XX0
姉「うちのクラス、他に引けそうな人がいなくてね」
姉「私がやるしかないんだ」
男「……そうなんだ」
姉「でも、久しぶりに鍵盤触ったし……正直不安だよ」
男「練習はした?」
姉「うん、最近帰りが遅かったのもそのため」
姉「自分では結構やれた感触はあるんだけど、んー」
男「そうかぁ……ちょっと心配だね」
姉「ははっ、私がしくじると大変なことになっちゃうしね」
男「……姉さん」
- 86 名前:VIPがお送りします(不明なsoftbank) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:43:52.79 ID:IIdm03410
支援
落ちそうで怖い
- 87 名前:VIPがお送りします(広西チワン族自治区) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:45:19.22 ID:81SDfq2/O
これ前にみた
- 88 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:45:29.18 ID:lUFn3+XX0
姉「大勢の人の前で演奏したことないからなぁ……どうなることやら」
男「……ねぇ」
姉「ん?」
男「良ければ、僕に聞かせてみてくれないかな?」
姉「え……何を?」
男「姉さんの演奏、聞いてみたいなぁ」
……………。
何となく口に出た言葉だった。
だけどそれを聞いた姉さんは、少し考える様子を見せた後、
綺麗な笑顔見せて……
- 89 名前:VIPがお送りします(埼玉県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:47:43.41 ID:EY2PzHS60
支援
- 90 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:47:58.39 ID:lUFn3+XX0
『見せてあげる』
そうとだけ言った。
暗い夜道、手を繋がれて向かった先は、
彼女の中学校。
本当なら怖いはずなのに、
その時は胸がワクワクするだけだった。
大好きな姉さんと、二人きりの演奏会。
それが始まるんだって、高まる気持ちを抑えられなかったんだ。
偶然にも、体育館の窓の鍵が一つかかっていなくて、
俺と姉さんはそこを潜って中へと入った。
真っ暗闇の体育館。
窓の外から、綺麗な満月が見え、
そのか細い光が舞台を照らし出す。
- 91 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:48:13.61 ID:lUFn3+XX0
美しく輝く、大きなグランドピアノがそこにはあった。
そして──
……………。
男「うわぁ……綺麗……」
姉「男、引くね?」
男「う、うんっ!」
姉「ところどころ失敗するかもしれないけど」
姉「その辺は、勘弁してね」
男「大丈夫だよっ、姉さんなら絶対大丈夫だっ」
- 92 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:50:27.03 ID:JIo/y2P/0
ほ
- 93 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:54:15.01 ID:lUFn3+XX0
姉「ふふっ、ありがと」
姉「姉としては、弟の期待には応えないと駄目よね」
姉「……よし」
男「……う、ん」
姉「…………」
姉「では、聞いてください」
姉「三年D組、合唱。唱う曲は……」
……………。
あの日、美しい音色を聞いた。
- 94 名前:VIPがお送りします(不明なsoftbank) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:57:50.53 ID:IIdm03410
支援
- 95 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/15(火) 23:59:04.46 ID:lUFn3+XX0
彼女は俺のために歌声まで聞かせてくれた。
暗い暗い世界の中で、
月に照らされた姉さんはとても美しく見えて、
幼い俺は、ただ呆然とその姿を眺めているだけだった。
いつも近くにいるはずの、身近な存在の彼女が
遠く果てまで行ってしまうようなそんな錯覚に落ち入った。
それは、幻想的な時間だった。
けれども、畏怖すら抱かせた。
俺は恐ろしかったのだ。
大好きな姉と、いつかは離れなければならない時が来ると。
今までのように、永遠に一緒に居続けることは出来ないと。
- 96 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:00:54.52 ID:iL1ro5Ca0
幼い俺とは違って……
姉さんは高く高く飛ぶことが出来るのだ。
果てしなく、どこまでも。
いつかは別れの時が来る。
それが不幸にも……そう遠くはなかった。
三ヶ月後。
姉さんは……死んだ。
……………。
……………。
- 97 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:02:07.67 ID:iL1ro5Ca0
時はまた、現在へと戻る。
職員室で昔馴染みの教師の許可を貰い、
校舎の階段を上がって、俺達は屋上へ。
姉「うわぁ……すごい……」
雲一つない大空がそこには続いていた。
地平線の彼方に見えるのは、赤く輝く太陽。
少しずつ、空が紅の色に染まっていくのが分かる。
男「こんないい天気久しぶりに見る」
姉「だね……私達の再会を祝福してくれてるみたい」
男「はは、なんだそれ」
姉「もう笑わないのっ、こっちは至って真剣なんだから」
男「……そうか」
小さな身体の少女が俺の横にいる。
- 98 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:07:00.18 ID:JMTa9l1v0
ほ
- 99 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:07:20.69 ID:iL1ro5Ca0
姉「もう今日も終わるんだね」
男「そうだな……日が暮れるのも早くなったな」
姉「ふふっ、楽しいことってすぐに過ぎちゃうね」
男「ん……」
俺の腹ほどの背丈の少女が横にいる。
姉「……でも不思議……またこうやって二人でいられるなんて」
男「…………」
姉「奇跡ってあるんだねっ。そんなの信じてなかったのに」
男「俺もだ」
姉「でも、今一緒にいるよ?」
男「ああ、そうだな……」
- 100 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:10:04.05 ID:8tTRxse10
ほしゅ
- 101 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:13:06.40 ID:iL1ro5Ca0
今まで見たことのなかった少女が俺の横にいる。
姉「……ほんと、不思議」
男「…………」
姉「ねぇ、男」
男「ん?」
姉「私と会えて、嬉しい?」
男「勿論だ」
姉「本当に?」
男「嬉しくないわけがないだろ?」
姉「……っ」
男「おおっ」
- 102 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:15:26.52 ID:JMTa9l1v0
ちゃんと終われるのかい?
- 103 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:15:29.65 ID:iL1ro5Ca0
急に、横から衝撃を受ける。
同時に、彼女の身体がすっぽりと腕に収まった。
少女は顔を上げない。
姉「……ごめん……」
男「何だよ、急に……」
姉「……ごめん、ね……」
男「……なんで」
なんで姉さんが謝るんだ……。
姉「ごめん……ごめん……」
男「いいから、謝るな」
姉「……でも……」
男「会えたんだよ、俺達は」
男「十年かかっちゃったけど、もう一度会えたんだ」
- 104 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:17:03.63 ID:iL1ro5Ca0
姉「……うん」
男「だから、謝る必要なんてない」
男「そもそも、姉さんが謝る理由なんてないんだ」
姉「……男」
そう、本当に謝らなければいけないのは──
男「今は、久しぶりのこの再会を喜ぼう」
姉「…………」
男「しんみりしたのは嫌いなんだ。昔みたいに明るくしてくれ」
姉「何それ……私、能天気みたいじゃん」
男「ははっ、違ったか?」
姉「もう……男ったら……」
男「悪いな、でも、本当にいいんだぞ?」
姉「……うん」
- 105 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:20:41.23 ID:8tTRxse10
ほ
- 106 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:22:57.57 ID:iL1ro5Ca0
男「また会えて良かったな」
姉「うん、良かった……」
姉「本当に良かったよ……」
男「ああ……」
姉「……ねぇ、男」
男「どうした?」
目を赤く腫らした見知らぬ少女がいる。
姉「……私ね」
- 107 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:23:17.11 ID:iL1ro5Ca0
姉「遠い遠いところから……」
姉「……やっと」
とても幼くて、背丈も小さくて。
今まで出会ったこともない、顔も知らない少女。
だけど、本当は──
男「…………」
姉「……戻って来れたよっ」
俺の姉……自慢の、大好きな姉さんなんだ。
……………。
……………。
- 108 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:24:05.97 ID:sg2ZdECp0
追い付いた支援
- 109 名前:VIPがお送りします(神奈川県) [sage] 投稿日:2011/03/16(水) 00:27:53.74 ID:FJYbiyPG0
wkwk
- 110 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:31:40.69 ID:iL1ro5Ca0
繰り返すが、それはとても穏やかな日々。
ある秋の日の物語だ。
平凡な青年が、十年前に死んだはずの姉と再会した。
現実では有り得ないような奇跡──
けれど、どこかしら有り触れた展開の印象も拭いされない。
でも、当人たちにとっては幸せだろう。
どれほど陳腐な物語だとしても、俺も姉さんも、
これほど待ち望んだ、最良の日は今までなかった。
二度と会う事が叶わなかった二人が、
十年という時を経て、奇跡的に再会することが出来たんだ。
互いの姿形が昔と多少違うことなんて、
今の俺達にとっては無価値に過ぎない。
- 111 名前:VIPがお送りします(東京都) [sage] 投稿日:2011/03/16(水) 00:32:39.14 ID:WuK7lFJL0
かなり前に同じスレみたことあるんだけど今度は完走しろよ
- 112 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:32:40.07 ID:iL1ro5Ca0
胸が温まる、そんな物語。
ちょっとの暗い過去はあったかもしれないけど、
そんなこと全て水に流して、新たな人生を共に始めればいい。
二人はこれから、手を取り合い互いを助け合いながら、
幾重もの障害という壁を破っていく。
だから。
ここからはきっと意味がない。
話は終わり。エンドロールは流れきった後だ。
……………。
学校の屋上。
一人の青年と、一人の少女。
再会の喜びを共に涙を流して分かち合い、
何とも言えない、虚脱感に身を委ねていた時だった。
姉「ねぇ、男」
- 113 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:33:27.27 ID:iL1ro5Ca0
今や静まり返った空間の中で、
彼女が小さく俺の名を呟き、こう続けた。
それは、今までの感動の流れを断ち切るように……
姉「そろそろ本題に入ろう」
本題……?
首を傾げる俺を、彼女は微笑んで見つめる。
姉「駄目だよ。とぼけたって、お姉ちゃんには分かるんだから」
男「おいおい、一体何を……」
けれど、俺の言葉は途中で遮られ──
- 114 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:33:44.19 ID:iL1ro5Ca0
姉「言い難いなら、私から言ってあげよう」
男「え……」
姉「あの男」
男「…………」
姉「まだ、生きてるんだね?」
…………。
美しく透き通るようだった空は……
いつの間にか、闇に覆われていた。
……………。
……………。
- 115 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:35:19.58 ID:VQ5rShGW0
まさか…
- 116 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:37:16.68 ID:sg2ZdECp0
寝る前支援
どっかにまとめられてるといいな
- 117 名前:VIPがお送りします(catv?) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:40:03.50 ID:8tTRxse10
ほ
- 118 名前:VIPがお送りします(新潟県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:42:00.17 ID:+Qvk2JYL0
あった
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1286790610/
- 119 名前:VIPがお送りします(不明なsoftbank) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:45:31.19 ID:GKBSXq4Y0
>>118
サンクス
- 120 名前:VIPがお送りします(愛知県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:47:16.05 ID:iL1ro5Ca0
この辺りからは新規。ただその前に休憩させて下ひゃい。
落ちてしまった場合は、
また今度、VIPが落ち着いた時に改めてスレ立てします。
- 121 名前:VIPがお送りします(内モンゴル自治区) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:48:22.00 ID:CL7gr0ZYO
追いついたが寝不足で眠い
- 122 名前:VIPがお送りします(dion軍) [sage] 投稿日:2011/03/16(水) 00:48:52.06 ID:9zpU395l0
あれ? これずっと前に書かなかった?
- 123 名前:VIPがお送りします(兵庫県) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:49:02.56 ID:OQsIyYOu0
正直保守は難しい
- 124 名前:VIPがお送りします(不明なsoftbank) [] 投稿日:2011/03/16(水) 00:49:10.24 ID:GKBSXq4Y0
>>120
とりあえずお疲れ つ旦
落ちて次立てるときはは同じスレタイで頼むよ
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