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妹「兄さんって呼ばせて下さい」
1 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 01:43:31.67 ID:xt8eLDEu0
男「ええと……」

男性「こんなことになって、君には申し訳ないと思っている」

男「ちょっと待ってください。そ、それじゃ……」

男性「…………」

男「あいつがいなくなって、あの子は……」

男性「他に頼める人間がいないんだ、君以外には」

男「…………」

男性「やってくれるか?」

男「……分かりました」



男「僕が、彼女の兄になります」




3 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 01:44:41.84 ID:kRpmHzAt0
濃厚なホモスレ


5 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 01:48:21.95 ID:xt8eLDEu0
──自宅

男「……もしもし、母さん?」

男「うん、うん」

男「そうなんだ。仕事がやっと決まった」

男「はは、やっぱり、母さんの言った通りだったね」

男「うん……あ、でも、それは……」

男「ごめんね、こっちが落ち着くまでは戻れそうもないんだ……」

男「……うん」

男「分かったよ、頑張る」

男「母さんも元気でね? また時間できたら、すぐに向かうから」

男「うん、じゃあ、バイバイ」

男「…………」


9 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 01:51:41.55 ID:xt8eLDEu0
コンコン。

男「失礼しまーす」

ガラガラガラ……。

妹「……え?」

男「よっ! どう、元気にしてたか?」

妹「……す、すみません……ええと」

男「ん? どうかしたか?」

妹「その……わたし」

男「?」

妹「…………」

男「もしかして、俺のこと、覚えてない?」

妹「……すみません」


10 名前: 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/07(火) 01:51:44.01 ID:+mvMxlNb0
轟け雷鳴ッ! 叫べ烈風ッ! お兄ちゃんに届けッ! 今ッ、渾身の――――――――――支援ッッッ  


11 名前: 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/07(火) 01:55:25.18 ID:b3ELbvm70
おい男性どこいったんだよ


12 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 01:55:29.78 ID:xt8eLDEu0
男「そうか……そうだなぁ」

妹「…………」

男「こういう場合、どう言っていいのか、分かんないな」

妹「はぁ……」

男「この際、しょうがない。単刀直入に言うね」

男「実は俺、君の兄なんだ」

妹「……え?」

男「覚えてない? 顔とか、声とか」

妹「……え、す、すみません」

男「……そうか、覚えてないかぁ」

妹「…………」

男「あっ、そんなに落ち込まないで」


13 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/07(火) 01:56:26.49 ID:O63tNbz90
ホモ展開まだー?


14 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 02:01:10.51 ID:xt8eLDEu0
妹「わたし……昔のこと、全然覚えてなくて」

男「…………」

妹「気がついたときには、このベットで横になってて」

男「うん」

妹「何にも分かんないです……どうなったのかも、自分のことも」

男「……うん」

妹「悪気があるわけじゃなくて」

妹「……いや、すみません。これは、ただの言い訳ですよね……」

男「いいんだ。気にしなくていいよ」

妹「……はい」

男「…………」

男「ちょっと疲れさしちゃったみたいだね」

男「……うん、日を改めて、また来るから」


15 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 02:05:45.51 ID:xt8eLDEu0
──病室前

男「…………」

男性「どうだった?」

男「全く、気づいた様子ではないです」

男性「それは良かった」

男「でも、いいんですか?」

男性「何が?」

男「こんな偽るような真似して、後で問題になりませんか?」

男性「親の私がいいと言ってるんだ。その責任は、私が負う」

男「でも……」

男性「君が、そんなに難しく考えることはない」

男性「ただ、言われた通りにあの子の兄代わりをして欲しい」

男「…………」


19 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 02:13:06.51 ID:xt8eLDEu0
男性「君も、あの子の手首を見ただろう?」

男「それは……」

男性「大惨事だったんだ」

男性「風呂場が血の海で、それを見た妻は失神してしまった」

男「…………」

男性「これ以上、もう誰も失いたくない。分かってくれるか?」

男「はい……」

男性「良かった。それに、これは君にも利がある話なんだ」

男性「だからくれぐれも、良心の呵責に耐えきれなくなって」

男性「あの子に打ち明けるなんてことは、ないようにしてくれ」

男「……分かりました」

男性「よし。なら、会社に行っていいぞ」

男「はい、社長」


20 名前: 忍法帖【Lv=7,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/07(火) 02:16:47.82 ID:9YwSKuN80
まったく話が掴めん


22 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 02:20:24.07 ID:xt8eLDEu0
──会社

ドサッ。

男「……え?」

上司「この仕事、明日までに終わらせておくように」

男「ちょ、ちょっと待ってください」

上司「ん?」

男「こんな量……ただでさえ、入ったばかりですし……」

上司「そんなの言い訳になるか?」

男「……いえ、失言でした」

上司「徹夜してでも終わらせろ。いいな?」

男「はい……」

上司「あ? なんだよ、その不服そうな返事は」

男「…………」


26 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 02:25:31.68 ID:xt8eLDEu0
上司「フン、いいよなー?」

上司「こんな不景気でもコネがあるお坊ちゃん様はさー」

男「…………」

上司「中途採用のお前を入れるために、こっちは仲間を一人左遷してるんだ」

上司「加えて、新しく入った奴は即戦力にもならないと来てる」

上司「どれだけ皆の仕事が増えたと思ってるんだ?」

男「申し訳ない……です」

上司「そんなのデスクワークなんだから、さっさと済ませろ」

上司「慣れたらすぐに、外出てもらうからな?」

男「……はい」

上司「ほんと、上の奴は何考えてるか、分かんないわ」

上司「この糞忙しい時に、新卒より使えないボンクラ入れやがって……」

男「…………」


29 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 02:31:18.14 ID:xt8eLDEu0
──自宅

男「……ただいまー」

男「…………」

男「はは、空しいな」

男「返事がないの分かってるのに、慣れでいつも言っちゃう……」

男「……ふぅー」

男「さて、明日の出勤まで、残り二時間」

男「……これじゃあ、眠れないなぁ……」

男「…………」

男「……俺が、兄……か」

男「…………」

男「なぁ、親友」

男「なんで、お前……死んじゃったんだ……?」


30 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 02:36:10.12 ID:SaQTFOkXO
腹筋じゃなくてよかった

支援


31 名前: 忍法帖【Lv=7,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/07(火) 03:14:48.54 ID:Wt70REDE0


32 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 03:21:43.65 ID:k41NUFsh0
>>1はどこだ?


33 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 06:00:55.21 ID:xt8eLDEu0
──病院

コンコン。
ガラガラ……。

妹「……あ」

男「うん、また来た」

妹「お、兄さん……?」

男「もしかして、思い出した?」

妹「いや、違うんです。ただ、前にそう言ってたから……」

男「あーそうか……ごめん」

妹「いえ……」

男「え、ええとさっ」

妹「は、はい」

男「……どう? 体の調子とか」


35 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 07:55:49.75 ID:++dtjbK20
いい流れだ


36 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/07(火) 08:35:12.04 ID:sPgsOWuO0
いくら使えなくてもコネがある奴の扱いには気を付けないと自分も飛ばされかねない……


37 名前: 忍法帖【Lv=7,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/07(火) 08:48:02.16 ID:Tb97eT0Mi
コネで会社にいれてもらうが怖いな


44 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 17:04:58.62 ID:xt8eLDEu0
妹「体はもう回復してるみたいですけど……」

妹「お医者さんの話だと、まだ安静が必要だって」

男「そうか」

妹「呼び方は、『兄さん』……でいいですよね?」

男「あー……」

妹「えっと、前は違いました……?」

男「……そうだなぁー、昔は──『お兄ちゃん』だったなぁ」

妹「『お兄ちゃん』?」

男「うん、小さい頃からずっと、そう呼ばれてた」

男「自分で言うのもなんだけど、本当に仲の良い兄妹だったんだぞ?」

妹「そうだったんですか……すみません、思い出せなくて」


45 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 17:06:10.16 ID:xt8eLDEu0
男「いいんだ、焦る必要なんてないから」

妹「はい……」

男「うん」

男「……『兄さん』……ね」

妹「…………」

妹「……あの、『お兄ちゃん』?」

男「ん?」

妹「仲が良かった昔の話……聞かせてもらえないですか?」

男「…………」

妹「それを聞いたら、わたし、もしかしたら……」

男「……そうだなー」

男「あれは、まだ俺が小学生で」

男「近所にいる仲のいい友達といつものように遊んでたんだ」

……………。
………。


46 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 17:06:42.70 ID:k41NUFsh0
>>45
ktkr!


47 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 17:07:04.44 ID:xt8eLDEu0
男『おーい、こっちだ!』

親友『悪い悪い、遅くなって』

男『約束の時間から、もう一時間も経ってるぞ?』

親友『実はさ……その』

?『…………』

男『ん?』

親友『ええと、なんだろ、俺の妹?』

男『妹? お前に妹なんて、いたっけ?』

妹『うぅ……』

親友『すごく人見知りする奴でさ……ほら、挨拶しろって』

妹『そ、その……はじ、初めまして……』

男『う、うん……』


48 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 17:08:26.01 ID:xt8eLDEu0
親友『遊びに行くっつったら、今日は「私もついてく」って言うんだ』

親友『だからさ……』

妹『……うぅ』

男『……別にいいよ』

親友『本当か? ごめん……ありがとう』

男『気にすんなって! よし!』

妹『……ん?』

男『今日から、お前は、俺の妹になるっ!』

妹『ふへぇ……?』

親友『は……?』


49 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 17:09:21.34 ID:xt8eLDEu0
男『親友の妹なら、それこそ、俺の妹でもあるわけだろ?』

妹『お、お兄ちゃん……』

親友『いや、えっと……』

男『ん? 親友のことは『お兄ちゃん』って呼んでるのか』

妹『あ、うん……』

男『なら、俺のことは……』



男『──『兄さん』にしようっ!』




51 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 17:31:35.66 ID:DBKTgVWt0
おもしろいよー
支援するっきゃない


54 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:02:58.27 ID:xt8eLDEu0
──社長室

男「……失礼します」

ガチャ。

男性「おー、来てくれたかっ」

男「はい……それで、ご用件は……」

男性「もちろん、あの子のことだよ」

男性「最近、余り時間が取れなくてな……病院に行けてないんだ」

男「そうですか……」

男性「どうだ? 彼女の様子は?」

男「日が経つにつれて、元気を取り戻してるように見えます」

男性「うん、うん。それは良かった」

男「はい……」


55 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:10:26.87 ID:xt8eLDEu0
男性「……ん? 浮かない様子のようだな?」

男「え……」

男性「もしかして、会社内のことか?」

男性「確かに、無理やり入れこんだ感があるから」

男性「初めのうちは、君も苦労することだろう。しかし……」

男「……いや、そのことではなくて」

男性「ん?」

男「彼女のことです」

男性「私の娘の話か?」

男「はい」

男性「……どうした? 何が問題だ」

男「これは……いつまで続ければいいんでしょうか?」

男性「…………」


56 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:11:41.16 ID:xt8eLDEu0
男「今はまだいいです。彼女が思い出さないうちは、まだ」

男性「けれど?」

男「僕には分からないんです。この仕事の、終わりが」

男性「終わり……か」

男「何をもって達成とするんですか?」

男「彼女が事実を一人で、受け止められるようになってから?」

男性「……それは、恐らくない」

男「…………」

男性「事実がばれたら、そこで全て終わりだよ」

男性「私はまた大事なものを失う。それだけは避けたい」

男「……だから、永遠に隠し通せと?」

男性「いいか。そう難しく考えることなんかじゃないんだ」

男「…………」


57 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:12:47.15 ID:xt8eLDEu0
男性「君は死んだ私の息子の代わりをする」

男性「自責の念にかられている娘の兄となる」

男「……はい」

男性「幸いにも、生前の息子と私の関係は良好なものではなかった」

男性「会社の人間で、成人した彼の顔を知っているものはいない」

男性「それに……今、この会社には不穏な空気がたちこもっているからな」

男「……というと?」

男性「時期が来たら、また知らせる」

男性「どう転んでも、君には悪い話ではない。だから、心配するな」

男「……はい」

男性「あと、そうだな」

男性「そろそろ、機会を設けるから、私の妻にも会って欲しいな」

男「……分かりました」

男性「よし、話は以上だ。職務に戻って欲しい」


58 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:26:15.05 ID:rGQ7Igv00
しえん


59 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:35:33.93 ID:xt8eLDEu0
──病院

妹「……お兄ちゃん?」

男「あ、うん?」

妹「すごい思い詰める顔してましたよ?」

男「そうだったか……いや、最近、少し仕事で疲れててね」

妹「大丈夫ですか?」

男「はは、病人のお前に心配されるなんてな」

妹「ふふ、そうだ。お話でもしませんか?」

男「話?」

妹「そうそう、両親のこと聞かせてください」

男「ええと……」

妹「ん?」

男「それは、お前の父親と母親の話か?」

妹「もちろん、そうですけど……」


60 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:36:17.11 ID:xt8eLDEu0
男「あっ、うんとな……」

男「父さんは……その、ちょっと強面の人だったろ?」

妹「あ……はい」

男「初めて見た時、どう思った?」

妹「その……正直な感想言っていいですか?」

男「うん。親父には内緒にしとくよ」

妹「……実は、結構、怖かったんです……」

男「はは」

妹「だから、その父に「明日、お前の兄が見舞いに来るぞ」って言われた時」

妹「どんな怖い男の人がくるのかと、心配でした」

男「ほほう、それで」

妹「でも、実際の兄はとっても優しそうな方で」


61 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:36:55.22 ID:xt8eLDEu0
妹「だから初めて会った時、兄じゃない人だと思ってました」

男「……うん」

妹「……その……ええと」

男「ん?」

妹「もしかしたら、わたしのこ、恋人だったり……したらなーみたいな……」

男「『恋人』……か」

妹「いやっ、そのもちろん……違ったわけですけど……」

男「昔のお前には恋人はいたのかなぁ……」

妹「その辺、お兄ちゃんも知らないですか?」

男「プライベートについては、あまり話さなかったしなぁ」

妹「……私って、今」

男「うん、大学生」

妹「だったら、恋人の一人や二人くらい、いてもおかしくないですよね……」


62 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:37:56.93 ID:xt8eLDEu0
男「二人いたら困るけど、まあ、そういう年頃だよな」

妹「もしかして……わたしって、ブスだったりします……?」

男「……は?」

妹「その……恋人みたいな人が来ることもないですし」

妹「今は、自分の顔を見ても、なんだか自分のじゃない気がして」

男「…………」

妹「お兄ちゃんから見て、わたしってどうですか?」

男「……ええと」


63 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:38:44.36 ID:xt8eLDEu0
妹「正直に言ってください。気を使ったりは、絶対しないで」

男「…………」

男「……綺麗だよ。普通に」

妹「ほんとに?」

男「ああ、もしも、俺が兄じゃなかったら……」

男「お前を好きになってたかもしれないな」

……………。
………。


64 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:40:38.29 ID:rGQ7Igv00
なんかせつねえ


65 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:44:07.92 ID:PFNInmDT0
敬語妹に萌えに来たがシリアスだった
だが好きだ


66 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:45:05.16 ID:Sdg/5vpCO
これは期待せざるを得ないな
既に感動しそうになってるよ
支援


67 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:50:45.26 ID:kABiA3yP0
これはすごくいいな
おもしろくなりそうだ

完結するまで飯食わない


68 名前: 忍法帖【Lv=1,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:51:16.91 ID:+WsbMZNi0
支援あげ


69 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:58:35.82 ID:xt8eLDEu0
親友『おらー、当たれっ!』

妹『きゃっ!』

ビューン……。

親友『あっ、やちった』

男『おいおい、どこ投げてんだよ。草むらのほうに行っちゃったぞ?』

親友『くそぉ……なんで、お前、当たんないんだよ』

妹『お兄ちゃんこそ、本気で妹に当てにいくなんて、たち悪いよ……』

男『いいから、取ってこいって。多分、川までには行ってないと思うから』

親友『うー、めんどくせぇなぁ』

男『はやくっ』

親友『分かったよ……でも、今度こそ、お前に当ててやるからな!』

男『はいはい』

たたたたっ……。


70 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 18:58:46.36 ID:RiPqfDdDO
はよ書け気になるだろボケ


71 名前: 忍法帖【Lv=1,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:00:16.20 ID:+WsbMZNi0
支援あげ2


72 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:00:29.43 ID:xt8eLDEu0
男『やっと行ったな』

妹『だね』

男『しかし、こんな遊びに参加しなくてもいいんだぞ?』

妹『うーん……』

男『玉当たると、痛いぞ?』

妹『でも……外で見るだけじゃ、つまんないし』

男『いいんだよ、女の子はそれで』

男『学年も全然違うんだし、無理するなよ』

妹『……うぅ』

男『怪我したらどうすんだ。俺の母さんがいつも言ってるんだ』

妹『なんて?』

男『『女の子への傷は一生もんだから』ってさ』


73 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:00:59.55 ID:kABiA3yP0
>>70
水道水でも飲んで落ち着きな
案外うまいよ


74 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:01:20.77 ID:xt8eLDEu0
妹『ええと……意味わかんないかも』

男『実は俺も分かってない』

妹『なにそれ、ふふっ』

男『ははっ』

妹『あっ、兄さん』

男『ん?』

妹『ここほら、血が出てる』

男『あーほんとだ……でも、これぐらいの傷……』

妹『駄目だよっ! ばい菌が入っちゃったらどうするのっ!』

男『えっでも、いつもはこんなの……』

妹『ほら、こっち来て』

男『お、おう……』


75 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:02:39.13 ID:xt8eLDEu0
ガサガサ……。

妹『確かここに、キティーちゃんのバンドエイドがあったはず』

男『お、おい……?』

妹『うん、あった!』

男『やっ、やめろって、そんな女っぽいやつ』

妹『いいから、じっとしてて』

男『…………』

妹『消毒して……貼って……これで、よしっと』

男『……あ、ありがと』


76 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:07:39.35 ID:xt8eLDEu0
妹『ううん、いつも兄さんには優しくしてもらってるし』

妹『それに……やっぱり、使う時に使わないとね』

男『?』

親友『おーいっ! ボール見つかったぞっ!』

妹『あっ、お兄ちゃん戻ってきた』

男『…………』

妹『ほら、兄さんっ! 行こっ!』

男『う、うん』


77 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:23:18.90 ID:xt8eLDEu0
──会社

男「ふぅ……終わった」

上司「ん?」

がたっ。

上司「どうした? 俺はもう帰るぞ?」

男「頼まれていた仕事、とりあえず、全て終わりました」

上司「ほう……」

男「慣れるまで時間がかかってしまい、申し訳ないです」

男「いままでパソコンを使った作業をしてこなかったもので」

男「本当にご迷惑をおかけしました」

上司「……ふむ」

男「それで、追加のお仕事があれば早速……」

上司「いや」


78 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:24:17.35 ID:xt8eLDEu0
男「え?」

上司「今日はもう帰りなさい。今まで毎日、残業だっただろ?」

男「ですが……」

上司「いいんだ。警備の人からも話は聞いてる」

男「ええと」

上司「毎日、夜遅くまで、時には明け方まで……本当に頑張ったな」

男「…………」

上司「初めは全てにおいて鈍臭いし、やることは不慣れだし」

上司「本当に困ったやつを部下にさせられたものだと憤慨した」

男「……申し訳ないです」

上司「だが、人一倍の根性は持ってるみたいだ」

男「え?」


79 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:24:58.13 ID:xt8eLDEu0
上司「そういう奴は大成する」

上司「文句も言わずに、仕事を黙々とこなす奴を俺はもう貶さない」

男「……あの」

上司「四ヶ月、本当に大変だったな」

上司「明日からはもう新入りみたいな仕事はしなくていい」

男「…………」

上司「俺が進めている新規の顧客との会談に付いてこい」

上司「少なからず、得るものはあるはずだと思うぞ?」

男「……はいっ」

男「よろしくお願いしますっ!」


80 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/07(火) 19:28:35.14 ID:sPgsOWuO0
上層部から脅されたのか
かわいそうに


81 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:31:22.26 ID:RiPqfDdDO
支援


82 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:35:46.59 ID:xt8eLDEu0
──自宅

男「……ふぅ……」

男「今日も一日が終わった……っと」

男「よし、母さんに電話しようか」

ピッ……ピピッ。

男「……もしもし」

男「あっ、うん。夜遅くごめんね」

男「もう時間過ぎてる? あーそうか、でも電話、大丈夫?」

男「うん……あ、うん」

男「いや、こっちの仕事がうまくいきそうなんだ」

男「ん……ははっ、やっぱり、声が違う?」


83 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:36:50.56 ID:xt8eLDEu0
男「うん……頑張るよ」

男「みんなに認められるように……失敗はしちゃいけないよね」

男「うん、それは分かってる」

男「……そうだね」

男「俺も戻りたいんだけど……まだ、ちょっと難しそう」

男「うん……」

男「土日はいつも用事が入っててさ……」

男「もう少しすれば、こっちも落ち着けると思う」

男「うん……だから、その時にね」

男「ん、じゃあ、また」


84 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:44:20.32 ID:lBd8TCMcO
泣くヨカーン


85 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:44:53.49 ID:xt8eLDEu0
ちょい飯の準備してくる。


86 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 19:45:33.68 ID:IStKsD7tO
とっとと書いて下さいませ太郎


93 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 21:34:47.88 ID:Wr5NFG8/0
なんて切ない…


97 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 22:20:02.52 ID:5jbmcJyF0
おもしろい支援


98 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 22:29:54.52 ID:xzLoY11R0
面白いじゃないか支援だ


99 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 22:54:21.06 ID:axydL6Za0
まだか支援


100 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:19:35.11 ID:lBd8TCMcO
何時まで飯食ってんだ


101 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:24:39.70 ID:Ph99h41V0
まだ下準備、仕込みが終わってないんだろ察せよ


102 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:27:36.17 ID:xt8eLDEu0
──病院

妹「ちょっと質問してもいいですか?」

男「ん? なに?」

妹「お兄ちゃんは……お父さんの会社で働いてるんですよね?」

男「あ、うん」

妹「いつぐらいから?」

男「そうだな……ぶっちゃけの話でもいいか?」

妹「はい」

男「実は、今年に入ってからなんだ」

妹「ええと……じゃあ、その前は」

男「んと……まあ、フリーターみたいなことをしてた」

妹「じゃあ、どうしてまた急に?」

男「やっぱり、今のままじゃ駄目かなって」


103 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:28:23.46 ID:xt8eLDEu0
男「長い目で、将来のことも考えて……でも、そうだな」

男「自分の限界を知ったというか、ある意味、逃げてきたのかもしれない」

男「うん……そんなところだ」

妹「その実は……」

男「ん?」

妹「昨日、初めてお母さんに会ったんです」

男「あ、うん」

妹「その、今までは記憶を失ってるわたしと会う覚悟がなくて」

妹「でも、勇気を振り絞って会いにきたって、そう正直に話してくれました」

男「……そうか」

妹「嬉しかったです」

妹「優しそうな方で、どことなく顔立ちも自分と似てて」


104 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:28:58.46 ID:xt8eLDEu0
妹「本当にわたしはこの方の娘なんだなって……そう実感できました」

男「それは良かった」

妹「それで、その時にこれ……」

男「なんだろ? ええと……写真?」

妹「はい」

男「映ってるのはお前だな。大学の入学式か?」

妹「そうです。お兄ちゃんも覚えてます?」

男「……ああ」

妹「お母さんは、他にもいっぱい思い出の写真を持ってきてくれたんですけど」

妹「これだけは唯一、ちょっと違って」

男「どういうことだ?」


105 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:29:28.16 ID:xt8eLDEu0
妹「……お兄ちゃんが」

男「俺が?」

妹「撮ってくれたんですよね」

男「…………」

妹「お母さんが言ってました」

妹「『お兄ちゃんは写真家を目指してた』って」

男「……それは」

妹「そう言った後、お母さんは……」

妹「少し、まずいこと言ってしまったような顔をしてました」

男「……そうか」

妹「目指してたんですよね、写真家」

男「うん」

妹「でも、どうしてやめちゃったんですか……?」

男「…………」


106 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:30:44.85 ID:xt8eLDEu0
妹「すみません、人の傷口をえぐるみたいな真似をして」

妹「でも、その話を聞いた時に何か胸の奥で、ひっかかるものがあって」

妹「きっとそれは、自分の記憶を取り戻すきっかけになるんじゃないかなって」

妹「本当に、ごめんなさい……でも、無理なら」

男「……そうだな」

妹「お兄ちゃん?」

男「俺は小さい頃から、写真の魅力に取り付かれてた」

男「人の一瞬、物事の一瞬」

男「その場面で一番最高な瞬間を、写真という形で後世に残す」

男「そんな仕事をする写真家に、憧れていたんだ」

……………。
………。


107 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:34:28.28 ID:UM5RJxIA0
俺だったらここで少し動揺するわ
支援


111 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:43:43.68 ID:2qw24HQZO
もう書き溜め終わったんすか…


112 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:44:41.46 ID:xt8eLDEu0
親友『…………』

男『あーつまんねーな……』

親友『そういえば、もうすぐ小学生卒業だな』

男『うん、あっという間だった』

親友『中学生かー』

男『正直、心配だよな』

親友『何が?』

男『ほら、お前の妹』

親友『ああ……』

男『俺たちがいなくなっても、ちゃんとやってけるかな』

親友『大丈夫だろ? 見てくれはいい方だしさ』


113 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:45:28.59 ID:xt8eLDEu0
男『どうすんだよ、逆に好きで意地悪するみたいな男子がいたら』

親友『はは、お前、そんなこと心配してんのか』

男『……ちょっとだけね』

親友『大丈夫。もし、そんなことがあったら』

男『どうする?』

親友『妹が必ず、俺たちに相談してくるはずだから』

男『つまり、その時に──』

男・親友『『そいつをボッコボッコにしてやろうっ!』』

男『ぷっ』

親友『くっ』

男・親友『『はははっ!』』


114 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:46:00.28 ID:xt8eLDEu0
男『やっぱり、お前とは気が合うよっ』

親友『俺も今、同じこと考えてた』

男『このまま、二人で仲良くやっていければいいよな』

親友『それこそ、妹もいれて三人でな』

男『ああ……』

親友『なんだ? どうかしたか?』

男『いや、もしあいつが男の子だったらなって思ってさ』

親友『ああ、そしたらもっと楽しかっただろうな』

男『うん……余計なこと考えなくても済むし』

親友『……余計なこと?』

男『……察してくれ』

親友『まあ、もう少ししたら俺たちからは離れていくかもな』


115 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:46:34.85 ID:xt8eLDEu0
男『四年違いか』

親友『そういうこと』

男『……で、さっきからお前、何見てんだ』

親友『これのこと?』

男『うん』

親友『いや、世界を旅してる写真家の本』

男『そんな本見て、楽しいか?』

親友『めっちゃ楽しい』

男『ふーん……それはよく分かんないわ、俺』

親友『すごいんだけどなぁ……』


116 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:56:00.79 ID:xt8eLDEu0
──親友宅

女性「今日は、よく来てくださいました」

男「いえ、こちらこそ……」

男「本来なら、もっと早く、お伺いすべきでした」

女性「いいですよ。その辺の事情は聞いていますから」

男「申し訳ありません……」

女性「どうぞ、線香をあげていって下さい」

女性「きっと、あの子も」

女性「長いこと、あなたに会いたがっていたはずですから」

男「…………」


117 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:56:13.08 ID:c6iYij7OO
既に感動の予感
涙目で支援


118 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/07(火) 23:56:25.82 ID:xt8eLDEu0
女性「久しぶりに親友同士が対面するんですね」

女性「きっと話したいこと、考えたいことがあると思いますので」

女性「私はリビングの方で待っております」

女性「全てが終わったら……そちらの方で、お話しましょうね」

男「ご配慮ありがとうございます」

女性「気を使わず、ゆっくりとなさっていって下さい」

女性「こうやって遺灰をまだお墓に入れないのも、あなたのためでしたので」

男「…………」

女性「では、また」

ガチャ……。


119 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:04:29.28 ID:2Ntte71gO
やっとキター!!!
支援


120 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:17:14.23 ID:LURKkJPd0
男「…………」

男「…………」

男「……っ」

男「……は、はは……」

男「久しぶりに会ったと思ったら……」

男「こんな小さな壷に入っちゃうって……」

男「……何してんだよ……お前」

男「どうしてこんなことに……なっちゃったんだよ……」

男「ああ……」

男「…………」

男「……昔のこと、お前は覚えてるか?」

男「確か、あれは俺たちが中学生だった頃」


121 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:17:46.31 ID:LURKkJPd0
男「漫画の巻頭グラビアにあるアイドルに俺が目を離せなくて」

男「そんで、お前にも共感して欲しくて見せたらさ」

男「いちいち、アイドルのポーズについての批判しまっくって」

男「そんなの誰も聞いてないって言うんだっ」

男「そんで、俺が言った」

男「『だったら、お前の言う最高のポーズはどれだよ』って」

男「そしたらお前、嬉しそうに鞄からどこぞの写真集持ち出してきてさ」

男「『このシーンはここが凄い』『このアングルはこの場面だから生きる』とかさ」

男「でも俺からすれば、その写真は全部、白黒だったから」

男「はっきり言って、微妙だったんだよ」

男「そしたら、そんな俺を見かねて、お前はこう言ったよな」


122 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:18:47.02 ID:LURKkJPd0
男「『なら、この本の中でお前が一番好きな写真はなんだ?』ってさ」

男「…………」

男「分かったよ、もちろん、分かってる」

男「本当、お前ってやつはさ……死んでもなお、厄介な奴だ……」

男「でも……今は無理なんだよ」

男「それよりも、大切なことがある」

男「お前なら、全て成し遂げろって言うと思うけど」

男「不器用な俺は、どうやったって器用にはできないんだ」

男「結局、何かを為すためには、何かを犠牲にしなきゃいけない」


123 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:19:41.59 ID:LURKkJPd0
男「だから、分かってくれ」

男「お前の気持ちは分かる……でも、それでも」

男「本当に……ごめんな……」

男「……要するに、俺は──」




男「敗者になっちまったんだよ……」





124 名前: 忍法帖【Lv=4,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:24:29.64 ID:6zy1GFpk0
しえん


125 名前: 忍法帖【Lv=5,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:29:44.45 ID:1JBlulC/0
支援せざるを得ない


126 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:46:15.71 ID:LURKkJPd0
──病院

男「……結局、あいつの形見を渡されちゃったな」

男「カメラ……」

男「……まだこれ、使ってたのか……」

男「…………」

男「よし、切り替えないと」

男「ふー……」

コンコン。
ガラガラ……。

妹「あっ、お兄ちゃん」

男「よっ!」

妹「今日も、来てくれたんですね」


127 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:46:52.02 ID:LURKkJPd0
男「そりゃ、愛しの妹のためだからな」

妹「ふふ。今日は一段と機嫌がいいみたい」

妹「何か、良いことでもありました?」

男「そうだなぁ……」

男「……久しぶりに、大切な人に会えたかな」

妹「……大切な人、ですか」

男「深い意味はないよ。ただ、懐かしかったんだ」

妹「懐かしい?」

男「今まで、無駄に逃げ回ってたんだけど」

男「会ってみると意外と気楽に話ができた」

妹「……いいですね、そういうの」

男「もっと早く、それこそな……」


128 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:47:55.61 ID:LURKkJPd0
男「色々、話さなきゃいけないことがあったはずなんだ」

男「はは。俺は、やっぱり、どうしても駄目人間だよ」

妹「でも、お兄ちゃん」

男「ん?」

妹「これからがあるじゃないですか」

男「…………」

妹「やっと、その人と仲直りできたのなら」

妹「これからの関係を大切に。幾ら、過去を悔やんでも仕方ないんですから」

男「……ああ」

妹「今度、また会ったら、色々話し合ってくださいね」

妹「そうすれば、今までのわだかまりもきっと……」

妹「いつかは時が解決してくれるはずですから」

男「…………」


129 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:48:39.22 ID:LURKkJPd0
男「……そう、だな」

男「また会ってみるよ」

妹「はいっ」

男「それこそ、かなり時間がかかっちゃうかもしれないけど」

男「いつか、きっと。また、会える日が来るはずだからさ」

妹「……?」

男「気付かせてくれて、ありがとう」

妹「……あの」

男「ん?」

妹「わたし、もしかして、見当違いなこと言っちゃいました?」

男「そんなことないって」


130 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 00:50:10.97 ID:LURKkJPd0
妹「……でも」

男「それよりっ」

妹「え?」

男「ほら、これ」

妹「……あっ、カメラ?」

男「今から撮るぞ? 最高の表情してくれよ?」

妹「え、ええとっ、そんな急に……っ」

男「ハイチーズ」

妹「あっ……」

……………。
………。


131 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 01:03:35.99 ID:pbCfQ4W10
兄さん…


132 名前: 忍法帖【Lv=5,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/08(水) 01:04:23.19 ID:8anvTxTN0
本日の志貴スレ


133 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 01:30:40.04 ID:s+2M6S5w0
おもしろい


134 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 02:08:15.70 ID:NJDstfVN0
いもスレは文化知産


135 名前: 忍法帖【Lv=5,xxxP】 【Dnews4vip1306778764885349】 [] 投稿日:2011/06/08(水) 02:09:15.01 ID:IcRuSEVJ0
>>1は脚本家か


136 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/08(水) 02:20:59.95 ID:tg2qijNg0
三点リーダー見るに普段から書いてるっぽいな


137 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/08(水) 02:30:53.22 ID:RlGbWKVF0


138 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/08(水) 02:44:01.08 ID:U2UAAgtv0
こういう雰囲気は結構好きだ


141 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 03:32:38.62 ID:rCcjccb20
妹がシャムワオで体拭いたらミイラになった


174 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 16:36:06.69 ID:vKYK+dxm0
ハッピーエンドになるといいな
C


181 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/08(水) 18:58:22.71 ID:KeJzMAuT0
久々の良スレだ。
前見た良スレも妹ものだった気が…

ってことで保守


188 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 20:58:53.69 ID:LURKkJPd0
パシャ!

男『なっ……』

妹『もう不意打ちやめてよ、お兄ちゃんっ!』

親友『はは、ごめんごめん』

男『ったく、このカメラ好きめ……』

親友『でも、我ながら、今のはいい感じに撮れた』

妹『ほんとに?』

親友『ああ。いつに増して、可愛く写ってる』

妹『ふふ、ならいいや』

男『そうやってすぐに甘やかすなよ。だから、調子に乗るんだぞ?』


189 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 20:59:39.50 ID:LURKkJPd0
妹『でも、兄さんとツーショットだったよ?』

男『いや……まあ、うん』

妹『あとで、焼き増し貰おうね』

男『……お、おう』

親友『はは、いつもお前は妹に弱いな』

男『うるさい。いいから、お前も宿題手伝え』

親友『だから、俺の答えを見せてやってるじゃん』

男『時間がないんだって。書き写し手伝ってくれよ』

親友『そこまでは面倒見切れないって。頑張れ』

男『……はぁー』


190 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 21:00:07.22 ID:LURKkJPd0
妹『兄さん』

男『……ん?』

妹『わたしは手伝ってるから、えらいよね』

男『ほんと、お前は兄と違って優しいやつだなぁ』

妹『いいのいいの。困ったときはお互い様』

親友『……ほー、お前もそんな言葉知るようになったのか』

妹『まあね』

男『四歳も年下には見えないな。えらいえらい』

妹『へへへ』


191 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 21:00:44.31 ID:LURKkJPd0
親友『…………』

親友『よし』

パシャッ!

男『あっ、お前っ!』

妹『あれ? 今、もしかして、お兄ちゃん撮った?』

男『フィルムをかせーっ!』

親友『やなこった!』

男『ま、まてっ! 逃げるなぁ!』

だだだだだっ……。


192 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 21:01:27.00 ID:t4TjIPdx0
待ってたぜ


193 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 21:02:44.37 ID:uSz90ShDO
お兄様!


194 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 21:14:21.99 ID:2Ntte71gO
きたー…のかと思ったらまたいなくなった?


195 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 21:21:58.27 ID:LURKkJPd0
──親友宅

男性「わざわざ、来てもらってすまない」

男「いえ」

男性「今後について、改めて、話し合う必要が出てきた」

女性「…………」

男「それは……」

男性「母さん」

女性「実は、あの子の退院が昨日、決まったんです」

男「……退院ですか」

男性「もちろん、私は反対したよ」

男性「ずっと病院にいてくれたほうが、安心だからだ」

男性「……だが」

女性「それじゃあ、あの子が可哀想だと思いまして」


196 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 21:22:51.99 ID:LURKkJPd0
女性「私がこの人を説得したんです」

男「……その、記憶の方は?」

男性「まだ戻ってない」

男「……はい」

男性「だからこそ、形としては自宅療養となると思う」

男性「医者は前の環境に合わせたほうが、記憶の戻りの促進に繋がると言っている」

男性「いや……本当は、思い出してなど欲しくないのだがな」

女性「…………」

男性「私たちからすれば、今のままの彼女でいい」

男性「確かに、思い出を共有できないという悲しさはあるが」

男性「……あの子の命には替えられないからな」


197 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 21:23:20.53 ID:LURKkJPd0
男「じゃあ……大学は?」

女性「そのことなんですが、実は、学長さんに休学願いを提出しました」

男「そうですか……」

女性「記憶がないあの子からしたら、見る人会う人が初対面のはずですし」

女性「下手に仲良かった人たちと出会ったら、逆に混乱しちゃうと思うんです」

男「…………」

男性「……君が言いたいことは分かる」

男性「だが、私たちにはもう他に選択肢がない」

男「はい……」

男性「分かってくれ……親の私たちでさえ本当は辛いんだ」

女性「…………」

男「…………」

男性「……そこで、君に折り入って話がある」


202 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 21:58:46.70 ID:rLeUU9Qw0
最初のテンポの良さが嘘のようだ


203 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:02:41.85 ID:GMWCbp4t0
お前ら催促し過ぎだろ
焦らせて文体おかしくなったらどうすんだよ


204 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:16:21.60 ID:LURKkJPd0
男「……話?」

男性「いや、ここからが今日の本題だと言ってもいい」

男「……どういった話でしょうか?」

女性「その前にまずは謝らせて下さい」

男「謝るって……」

女性「あなた」

男性「ああ……」

男性「子供たちと昔からの付き合いだった君に」

女性「死んだ息子の代わりになってくれ、なんて残酷な真似をしてしまい」

男性「本当に、申し訳ないことをした……」

女性「この通り、申し訳ありません」


205 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:16:37.31 ID:LURKkJPd0
男「そ、そんなっ、いいから、顔を上げて下さいっ」

男性「にもかからずっ」

男「……えっ?」

ダンッ!

男「……立ち上がって、一体、何を……」

女性「……ごめんなさい」

男「……あ……」

ドン……ドン……。

男「…………」

男「……あ」

男「ああ」

男性「…………」

女性「…………」


206 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:17:05.61 ID:LURKkJPd0
男「──僕に土下座なんてやめて下さいっ!」

男性「頼むっ! この通りだっ!」

男「いいからっ、早く立って……」

男性「あの子が退院しても、彼女の兄を演じ続けてくれ!」

男性「この家に住んで、この家で、あの子を支えてやってくれっ!」

女性「一生のお願いです……っ」

男「……そんなこと、言われなくても……っ」

男「……って」


207 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:17:33.71 ID:LURKkJPd0
男「……あれ?」

男性「……いいのか?」

男「え?」

男性「文字通り、始めたら最後……」

男性「君は息子の代わりをするだけじゃなくなるぞ」

男「……それは……」

男性「端から見れば、君は私たちの息子となる」

男「……俺が……?」

男「……息子……」

………。
……………。


208 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:17:57.31 ID:LURKkJPd0
親友『なあ、知ってるか?』

男『ん?』

親友『世の中には、「弱肉強食」って言葉があるだろ?』

男『ええと、弱いものは強いものに食われるってことだっけ?』

親友『そうそう、もっと具体的に言うとさ』

親友『この社会は弱い奴の犠牲によって栄えてるってこと』

男『……う、ん』

親友『お前はそれ、どう思う?』

男『つまり、強者と敗者がいるってことだよな』

親友『そうそう。んで、敗者は要は社会の犠牲者みたいな感じかな』

男『……んーなんだろうな』


209 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:18:25.31 ID:Fea1fUpF0
さるよけ


210 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:18:26.53 ID:LURKkJPd0
親友『結局、勝者ってのは、自分の思い通りになんでも出来る訳』

親友『でも、みんなが思い通りに行動をしてたら、社会が回らなくなる』

男『それは俺でも分かるよ』

親友『じゃあ、我慢してるのは?』

男『敗者?』

親友『そういうこと』

男『……うわぁ……大人になりたくねぇな……』

親友『もし仮にさ、将来、俺たちが勝者じゃなくて敗者になっちまった時』

親友『どうすれば、そこから抜け出せられると思う?』

男『いや、もう無理なんじゃない?』

男『貧乏くじ引いてる時点で、もう泥沼じゃん』

親友『うん……そう普通は思うよな』


211 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:19:05.77 ID:LURKkJPd0
親友『でも俺、気づいちゃったんだよ』

男『何を?』

親友『とっておきの、抜け出し方法』

男『……え?』

親友『実は、すごい簡単な事なんだ。なんで、みんな知らないのってぐらい』

男『教えてくれよっ』

親友『仕方ないなぁ。本当は誰にも言いたくないんだけどな』

親友『……お前だけは特別だ』

男『さすがっ!』

親友『方法は簡単さ。よく聞いとけよ?』

親友『それは──』

……………。
………。


212 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:19:36.52 ID:LURKkJPd0
男性「……断るのなら、この瞬間にして欲しい」

男性「始めてしまったから、辞めたいと言われても困るんだ」

男「…………」

男性「前に君は私に聞いた。『終わりはいつですか』と」

男性「分かるだろ? 終わりがあるとしたら、今だ」

男「……はい」

男性「……終わりにしてくれてもいい」

男性「だが、今のあの子は、君をこの世界で一番頼りにしている」

男性「本当の兄じゃないと疑うことも知らずに、信じきっている」

男「…………」

男性「実の兄が、自分のせいで死んでしまい」

男性「ついには自責と後悔の念に耐えきれず」

男性「自分が自殺未遂を謀ったということも知らない」

男「……っ」


213 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:20:08.98 ID:LURKkJPd0
男性「残念ながら、彼女に必要なのは私たちじゃないんだ」

男性「私たちが代わりをやれるなら、何を捨ててでも成し遂げる」

男性「けれど、現実は不条理だな」

男性「あの子が、この世界で、唯一必要としているもの……」

男性「皮肉にも、それは君なんだ」

男「……それは」

男性「止めてくれても、一向に構わないぞ」

男性「けれど、君には捨てられるのか?」

男性「あの子を……──見殺しに出来るか?」

男「…………」


214 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/08(水) 22:26:32.98 ID:joU8vS2N0
しえn


215 名前: 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:29:26.26 ID:VvVAraw90
C

ハッピーエンド待ってます


216 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/08(水) 22:29:38.65 ID:O25JrGxM0
がんばれ


217 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:34:20.65 ID:LURKkJPd0
──病院

パーンっ!

妹「きゃっ」

男「退院おめでとうっ!」

妹「お兄ちゃん……もう、びっくりしました……」

男「はは、それは良かった」

妹「もう、病院でクラッカーなんて迷惑ですよ?」

男「妹の新たな門出なんだ。せめて盛大にと思ってな」


218 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:48:10.28 ID:SO8Umast0
支援


219 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:49:22.66 ID:HI3oXHdfO
読んでないけど湊余裕


220 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:51:29.01 ID:LURKkJPd0
妹「めっ、ですよ」

男「なんだそれ」

妹「あれ、わたし、なんか変なこと言いました……?」

男「言っただろ。『めっ』て」

男「俺をやんちゃな子供だと思って、言ったのか?」

妹「いや、その……なんか、不意に」

妹「ていうか、そもそも、お兄ちゃんが悪いんですから」

妹「もっとすまなさそうにしないと、駄目です」

男「まあ、確かにそうだな」

妹「ニヤニヤしないっ!」

男「無意識なんだから、許して」

妹「だーめーですー」


221 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:51:52.32 ID:LURKkJPd0
男「ならこの顔は?」

妹「どことなく小馬鹿にされてるみたいです」

男「……んー、ならこれ」

妹「……今度は、イヤらしいですね」

男「なら……んっ、よしこれでイケメンになったろ?」

妹「……はぁ」

妹「今日はいつになく、テンション高いですね」

妹「でも、そんなことしてると、彼女さんに嫌われますよ?」

男「そう思うだろ?」

妹「……えっ」

男「こう見えてもな、俺の学生時代はなー」

妹「は、はい」

男「…………」


222 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:52:06.87 ID:LURKkJPd0
男「やっぱり、モテなかった」

妹「……ですよね」

男「同意しないでくれない? ちょっと悲しいよ?」

妹「そう言われても……」

男「しかし、最近のお前って、毒舌じゃないか?」

男「ほんと、初めのしおらしい子が嘘のようだ」

妹「それはわたしが言いたいです」

男「なんで?」

妹「お兄ちゃんも、前はもっと丁寧なしゃべり方でした」

男「そうか?」

妹「覚えてないんですか? 例えば……」


223 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:52:16.33 ID:LURKkJPd0
妹「『いいんだ。気にしなくていいよ』」

妹「『ちょっと疲れさしちゃったみたいだね』」

妹「『……うん、日を改めて、また来るから』」

男「……確かに」

妹「少女漫画に出てくる好青年みたいでした」

男「いいんだ。今の方が本来の俺に近いし」

妹「ちょっとげんなりですね」

男「それより……そろそろ、家に向かうか」

妹「あっ、はい」

男「病院の横に車を止めてあるんだ。急ごう」


224 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:53:21.73 ID:LURKkJPd0
あぁ……無理だぽ。


225 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/08(水) 22:56:23.33 ID:zB0GG5lY0
眠いのか?


226 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:56:33.63 ID:NJDstfVN0
どうしてベストを尽くさないのか


227 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 22:58:24.21 ID:0w380iid0
by上田次郎


228 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 23:17:17.03 ID:19jIceszO
しえ


229 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 23:17:31.29 ID:NhRp8LI00
俺は寝る。
皆のもの、保守を頼む


230 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/08(水) 23:25:41.10 ID:2Ntte71gO
俺たちで保守するからお前もちゃんと続けてくれよ


237 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/09(木) 00:21:44.96 ID:LXi2Lo7J0
涙腺がうるっときた俺は弱すぎるかも・・・

保守

といいつつ寝る よろしく・・・


249 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 04:11:19.31 ID:FlpExjDEi
面白いんだが、一度に投下する量が少なすぎる
がんばって


266 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 11:37:11.01 ID:K/2hVcUJO
この遅さなら製作行った方が良いんじゃね?

ほしゅ


267 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 11:43:31.43 ID:sQOl1pBM0


268 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 11:49:14.30 ID:SMMTOcDq0
いるぜ
http://niiyann.blog.shinobi.jp/


275 名前: 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/09(木) 13:44:41.25 ID:V7XM9p1E0
まーた下げちまっただ


276 名前: 忍法帖【Lv=5,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/09(木) 14:00:37.12 ID:Sj3k1km+0
mu


277 名前: 忍法帖【Lv=8,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/09(木) 14:20:00.72 ID:MdE3EkXZ0
↓保守の間隔


280 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 15:03:57.42 ID:zDBj2Qc+0
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内


283 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 15:43:08.45 ID:fl+A33C2O
>>280
今こんな早いの?


284 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 16:13:56.72 ID:GogCu21XO


285 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 16:14:42.94 ID:S3CxxU/kO
忍者のおかげで遅くなったんじゃないかな


286 名前:VIPがお送りします [ sage ] 投稿日:2011/06/09(木) 16:21:13.40 ID:8higJDTA0
>>283
んなこたーない


287 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/09(木) 16:55:11.45 ID:3L7N+YVJ0
30分たってるけどまだあるね


288 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 17:02:31.50 ID:hd1xRp8L0
おかしいじゃねえかああああああああああああああああああああああああああああああああ


293 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:39:27.74 ID:5XIqJLN+0
――車内

男「そうだ、少し言い忘れたことがあった」

妹「何ですか?」

男「ほら、父さんと母さんの二人、今日、病院に来なかっただろ?」

妹「……あ、はい」

男「ちゃんとした理由があるんだ。話してもいいか?」

妹「別に……特に何とも思ってませんよ」

男「いや、聞いてくれ。二人とも本当は来たがっていたんだけど」

妹「…………」

男「親父は取引先との急な仕事が入って、休日出勤」

男「お袋は、親戚の方が突然倒れたっていうんで、急いで病院に行ったんだ」

妹「……そうですか」


294 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:39:52.93 ID:5XIqJLN+0
男「二人とも悪気があったわけじゃない」

男「お前の病院に行こうとするのを、俺が何とか食い止めて」

男「だからさ、今日は俺だけだったけど、許してくれよ?」

妹「……ふふ」

男「へ?」

妹「もうそんな必死にならなくてもいいですよ」

妹「今日、お兄ちゃんが異様にテンションが高い理由も分かりましたから」

妹「本当は、わたしに気を遣ってくれたんですよね?」

男「……いや、それはだな……」

妹「それに、思うんです」

男「ん?」


295 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:40:57.65 ID:5XIqJLN+0
妹「逆に、お兄ちゃんだけでよかったなって」

男「…………」

妹「もし二人がいたら、なんだか、緊張してしまって」

妹「気まずい空気が流れてたかもしれません」

男「……そんなこと」

妹「本当は、もっと自然に振る舞えればいいんですけど」

妹「やっぱり、親と子の関係って、そう簡単にはいきませんね」

男「なら、兄妹は?」

妹「『友達』……みたいな感じかな?」

男「…………」

妹「どうかしました?」

男「いや、気にしなくていい」

男「それより、もうそろそろ、家に着くぞ」

妹「は、はい」


296 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:41:14.34 ID:5XIqJLN+0
男「緊張してる?」

妹「……ええと」

男「…………」

妹「…………」

男「……不安か?」

妹「え……?」

男「知っているはずの家に戻るはずなのに」

男「何の感慨も覚えない自分が怖い?」

妹「……それは」

男「大丈夫、焦る必要はないから」

男「仮に今後、過去を思い出さなかったとしても」

男「あの二人はきっとお前を温かく迎えてくれるはずだ」

妹「…………」


297 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:41:36.53 ID:5XIqJLN+0
男「もちろん、俺も含めてね」

妹「……うん」

男「よし、なら安心だな」

妹「お兄ちゃん……ありがと」

男「はは、感謝されて嫌な奴はいないよなぁ」

妹「……ふふ」

男「……さて」

キキッ……。

男「我が家への到着です」

妹「……うん」

男「ちょっと待ってろ。エスコートする」

妹「え?」

バンッ……トコトコ……。

……ガチャ。


298 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:42:01.45 ID:5XIqJLN+0
男「さて、どうぞ」

妹「……意外と紳士なんですね」

男「だろ?」

妹「ふふっ」

男「ほら見ろよ。豪華な周りの家々に引けを取らないぐらい」

男「我が家も、捨てたもんじゃないだろ?」

妹「……うん」

男「早速、入ろうか?」

妹「ちょっと待って」

妹「もしかしたら……何か……」


299 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:42:20.67 ID:5XIqJLN+0
男「……ん」

妹「……いや」

妹「だめ……みたいですね」

男「無理するなよ?」

妹「……分かってはいるんですけど、やっぱり……」

男「家にも思い出の品は一杯あるからさ」

妹「うん……」

男「開けるぞ?」

ガチャリ……。

妹「…………」

妹「……え?」


300 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:42:37.41 ID:5XIqJLN+0
パンッ、パーンッ!

男性・女性「「退院おめでとうーっ!!」」

妹「う、うそ……だっ、だって……」

男「はははっ」

妹「まさか……」

男「簡単な騙しのテクニックだよ」

男「一度、小さなサプライズをやって、油断させる」

男「そして、そこから……」

妹「お、お兄ちゃんっ」

男「どうだ? 最高だったろ?」

妹「もうっ! 本当にびっくりしたんだから……」

男「お叱りは後で聞くよ、今は……」

妹「あっ……」


301 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:42:57.69 ID:5XIqJLN+0
女性「本当におめでとう……こっちに来て頂戴」

妹「は、はい」

ギュッ……。

妹「お、お母さん?」

女性「…………」

妹「あの……」

男性「お前が、どんなことになろうとも」

男性「決して、私たちの絆が切れることはない」

妹「…………」

男性「安心しろ」

男性「ここが、お前の居場所だから」

男性「家族四人で乗り切ろうな……」

妹「……っ」

妹「……は、はい……」

男「…………」


302 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:43:19.80 ID:5XIqJLN+0
──リビング

女性「さーて、準備は整ったかしら」

男性「おー、今日はいつに増して豪華な夕飯だなっ」

女性「お祝いの日だからね。かなり奮発しました」

男「確かに、これはご馳走だなぁ」

妹「食べきれるかなぁ……」

男「なんだ? みんなの分も全部、食うつもりか?」

妹「は……?」

男「こりゃまた、凄い食欲だな」

妹「ち、違いますっ!」

男性「確かに、昔から食いっぷりは良かった」

妹「お、お父さんまで!」


303 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:43:41.70 ID:5XIqJLN+0
男「はは、やっぱりそうじゃん」

妹「お兄ちゃんっ!」

女性「そろそろ、可愛い妹弄りはその辺にしときなさい」

女性「ほら、温かいうちに食べましょ?」

女性「お父さん、いつものお願いしますね」

男性「分かった」

男性「じゃあ、みんな、手を合わせて」

男「よし」

妹「は、はい」

男性「頂きます」

男・妹「「いただきまーすっ」」

……………。


304 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:44:06.02 ID:5XIqJLN+0
男「いやぁ……食った食った……」

妹「もう何も食べられないです……」

女性「ありがとうね。綺麗に完食してくれて」

男性「ふぅー、やっぱり母さんの作る飯はうまいな」

男性「さて……食後の一服を」

女性「お父さん、煙草はベランダで吸って下さい」

男性「まあ、そう堅い事は言わずにな」

男性「どうだ、お前も吸うか?」

男「……ええと、止めとくよ」

女性「あら? いつ頃から吸うの止め……」

男性「母さん」

女性「……あっ」

妹「?」


305 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:44:36.01 ID:5XIqJLN+0
女性「で、でも、いい傾向ですよ」

女性「やっぱり、このご時世、煙草を吸う男性はだめよね?」

妹「え? いや、どうでしょうか……」

男「最近は、嫌いな人多いからね」

男「父さんも早くやめないと、秘書の人たちに嫌われるよ?」

男性「今更止めたところで、好感度は上がらないさ」

男「はは、そりゃそうか」

妹「あの、昔は、お兄ちゃんも吸ってたんですか?」

男「……うん、そこそこね」

妹「へー意外」

男「そうか?」

妹「なんか、そういうの吸う感じの人には見えないですね」

女性「顔が童顔だからね」


306 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:45:03.87 ID:5XIqJLN+0
妹「ふふ、分かります。少し、男らしさには欠けてるかも」

男「止めてくれよ、気にしてるんだから」

妹「今日の意地悪のお返しですよーだっ」

男「根に持つ奴だなぁ……」

男性「…………」

男性「……本当に仲がいいな」

女性「そうですね」

妹「え?」

女性「こんなこと言うと、あなたは傷つくかもしれないけど」

女性「記憶を失ったとは、到底、思えないぐらい」

妹「そ、そう見えますか……?」

男「…………」

男性「……ああ」


307 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:45:24.09 ID:5XIqJLN+0
男性「かつての頃のままだ……」

男性「何もかも……」

女性「…………」

妹「……ええと」

男「…………」

男「……つまり、だ」

妹「え?」

男「俺たち兄妹には、次元を超えた見えない絆があるわけさっ」

ぎゅっ。

妹「ちょ、ちょっと兄さんっ!?」

男「過去なんて関係ないぞーっ」

男「昔から大好きだー、妹よっ!」

妹「抱きつくの、止めてっ。禁止ーっ!」


308 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:45:39.94 ID:5XIqJLN+0
男「はは、顔真っ赤にしてやんの」

妹「はぁー……はぁー……」

妹「もう急になんてことするんですか……心臓に悪いです……」

男「心の準備が必要だったか?」

妹「そうです。これから、抱きつく時には事前に言って下さいよ」

男「いや、兄妹で抱きつくシーンなんてそうそうないから」

妹「あっ……そうでした」

男「でも、お前が良いっていうなら──」

妹「へ?」

ぎゅうっ!

男「何度だって抱きしめてやるぞーっ!」

妹「ちょっ、心臓がっ! 事前にっ! 約束違うーっ!」


309 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:46:02.45 ID:5XIqJLN+0
──親友の部屋

男「…………」

男「……今日は、疲れたな」

バタン……。

男「はー……」

男「いいのかな……」

男「……本当にこれで間違ってないんだろうか……」

男「…………」

男「……ええと、カメラはどこに……」

男「ん、あった」

男「……よし、これで」

男「…………」

男「……なあ、親友」


310 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/09(木) 18:46:29.04 ID:S5/G/Heo0
きた!


311 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:46:33.25 ID:5XIqJLN+0
男「もしかしたら、俺は、最低なことをしてるのかもしれない」

男「アイツを騙して、お前に成り代わって」

男「……うん」

男「やっぱり、俺は最低だよ」

男「…………」

男「……お前の両親に頼まれた時な」

男「正直、本当は困った」

男「だって、ずっと前から、早くこの関係が終わればいいと思ってたから」

男「他人だったお前を演じるのは、難しいし」

男「それに……お前との友情を踏みにじってる気がするから」

男「なぁ……?」

男「お前……怒ってないか?」

男「本来なら、この日常は、決して俺のもの何かじゃない」


312 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:46:40.55 ID:OetOR0PJO
C


313 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:47:09.96 ID:5XIqJLN+0
男「お前は死んじまったけど、俺が成り代わっていいものじゃないはずだ」

男「結局、俺はさ……」

男「土下座して頼み込んだ二人の願いを渋々聞いてやって」

男「妹のためだから、見殺しにはできないから、なんて理由つけて」

男「そんな体裁を守れないと、踏み出せないちっぽけな人間なんだ……」

男「……多分、お前は言うと思う……」

男「『やるなら、やりきれ』『迷うな』って」

男「……でも、俺は」

男「こうしている間も、この行動の善悪を決めかねてる」

男「ぐだぐだと、正解のない問いを悩み続けてる」

男「……そのくせ」


314 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:47:29.99 ID:5XIqJLN+0
男「俺が、とうの昔に失った……」

男「家族っていう幸せの形を、楽しんでる……」

男「……どうだ? 最低だろ?」

男「……なあ、親友」

男「……頼むからさ……」

男「返事してくれよ……」

男「……俺を……罵ってくれよ……」

男「…………」

男「……はぁ」

男「…………」

男「ん?」


315 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:47:53.19 ID:5XIqJLN+0
ピピピピッ……。

男「……え? 電話?」

男「ええと……このタイミング……」

男「いや、違う。そんなことある訳がない……」

男「……母さんだ」

男「そういえば、最近電話してなかったからなぁ……」

ピピピピピッ……。

男「…………」

男「…………」

ピピピピピピッ……。

男「…………」


316 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:48:15.04 ID:5XIqJLN+0
ピピッ……ピッ……。

男「…………」

…………。

男「……ふぅ……」

男「…………」

男「……出れるわけ、ないよな……」

……………。
………。


317 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:48:47.03 ID:K/2hVcUJO
しえん

何か怖いヨカーン


318 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 18:57:04.39 ID:K/2hVcUJO
さるった?


319 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:00:39.29 ID:S5/G/Heo0
しえん


320 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:04:36.76 ID:DkC6scnR0
キテトゥーー


321 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/09(木) 19:14:49.64 ID:w4L2t5tZ0
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール(897)


322 名前:321 [sage] 投稿日:2011/06/09(木) 19:15:58.58 ID:w4L2t5tZ0
ごめん
>>321は誤爆


323 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:21:19.11 ID:RdyJfW9U0
今北。
この手のSSはすごい好きだ。
考えて読む感じの。

とりあえずC


324 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:31:29.30 ID:5XIqJLN+0
男『…………』

男『……すぅ……すぅ……』

──■■□ッ!

男『……ん?』

男『あれ……今、なんか音がしたような……』

男『……一階?』

男『…………』

男『まだ父さんと母さん、起きてるのかな……?』

ガバッ……。

男『……行ってみよう』

トコトコ……ガチャ。

……………。


325 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:31:51.88 ID:5XIqJLN+0
トコトコトコ……。

男『…………』

男『……ん?』

男『…………』

男『……あっ』

?『一体、こ……から……のよっ!』

?『まだ家の……も、あなたっ……分……てるの!?』

男「これは……』

男『……母さんの声……?』

男『もしかして……』


326 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:32:44.40 ID:5XIqJLN+0
父親『うるせぇっ! 言われなくてもそんなこと分かってる!』

母親『だったらどうして!?』

父親『仕方ねぇだろ、クビになっちまったんだからさっ』

母親『いい加減にしてよっ! また酔って帰ってきたと思ったら』

母親『急に、会社を辞めさせられたじゃ、こっちも納得できないわっ!』

父親『何を聞きたいんだっ』

母親『辞めさせられた理由よっ!』

父親『……それは』

母親『いいから言って! あなた、一体、何したっていうのっ!?』

父親『……った』

母親『聞こえないわっ。もっと大きな声で言って!』

父親『あーもうっ! 殴ったんだよっ!』


327 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:33:11.35 ID:5XIqJLN+0
母親『……殴った? だ、誰を?』

父親『前から言ってた、いけ好かない上司だよ……』

母親『……どこで』

父親『昼間、会社の中でだ』

母親『……そ、そんな……』

父親『腹が立ったんだ。いつも俺に雑用ばっかり押し付けて』

父親『その割に、何かあると責任は俺にあるとほざく』

母親『…………』

父親『それでも、俺は我慢した方だ』

父親『けど、結局、こうなる運命だったんだよ』

母親『……ああ……』

母親『…………』

父親『ふんっ……』


328 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:34:02.96 ID:5XIqJLN+0
母親『…………』

母親『……ねぇ』

父親『あっ? まだ、文句あんのか?』

母親『……もしかして、あなた』

父親『何だよ』

母親『そのときも、酔ってたんじゃないでしょうね?』

父親『…………』

母親『質問に答えて』

父親『……だからさ』

母親『アルコール中毒のあなただけど』

母親『会社に酒を持ち込んでたりしないわよね?』

父親『…………』


329 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:34:27.31 ID:5XIqJLN+0
母親『……なんで、黙ってるの?』

母親『何か、言ってよ』

父親『……それは……』

母親『なに?』

父親『……つい、な……』

母親『……なっ……』

父親『…………』

母親『最低よっ! あなたは本当に人間の屑っ!』

父親『……そこまで──』

ガシャーンっ!

父親『いてっ……』


330 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:34:29.09 ID:xHtQNLEd0
支援


331 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:35:06.62 ID:5XIqJLN+0
母親『こんな時ぐらい、酒を飲むのはやめなさいっ!』

父親『な、なにすんだっ!』

母親『毎日、帰ってくるのは深夜をとうに回って』

母親『時には、女の香水つけた背広で機嫌良く帰ってくる』

母親『暇さえあれば、酒は飲むわ、煙草は吸うわ』

母親『あなたは夫としても、父親としても、失格よっ!』

父親『……っ』

ガタンッ……。

母親『な、何をっ……』


332 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:35:06.71 ID:5XIqJLN+0
母親『こんな時ぐらい、酒を飲むのはやめなさいっ!』

父親『な、なにすんだっ!』

母親『毎日、帰ってくるのは深夜をとうに回って』

母親『時には、女の香水つけた背広で機嫌良く帰ってくる』

母親『暇さえあれば、酒は飲むわ、煙草は吸うわ』

母親『あなたは夫としても、父親としても、失格よっ!』

父親『……っ』

ガタンッ……。

母親『な、何をっ……』


333 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:35:38.84 ID:5XIqJLN+0
バチッ!

母親『きゃっ……』

父親『言いたいことを言わせておけばっ!』

父親『くそっ! なんで、お前に、そこまで言われなきゃいけない!』

母親『……叩いたわね……』

父親『あっ?』

母親『……もう嫌……もう、いやよ……』

母親『これ以上は耐えられない……』

父親『何だと?』

母親『……私と、別れて下さい』

父親『……あ?』

母親『お願いですから……もう、別れて下さい』

父親『なっ……』

父親『こ、この……糞女が……』


334 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:36:09.37 ID:5XIqJLN+0
母親『……お願いです……』

父親『うるせぇっ!』

バンッ!

母親『……うっ』

父親『別れないぞっ! 絶対に別れてやるもんかっ!』

バゴッ!

母親『……くふっ……』

父親『お前だけいい思いをするなんて、そんなこと……』

たたたたたっ!

父親『あ……』

男『やめてっ!』

ガバッ……。

母親『……男……?』


335 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:36:41.62 ID:5XIqJLN+0
男『もう母さんに乱暴するなっ!』

父親『ち、違うんだ……』

男『殴るなら俺を殴れっ。それで気が済むなら、我慢するからっ!』

父親『……あ、ああ……』

男『母さん……母さん……』

母親『……う……うぅ……』

男『もう大丈夫だから……大丈夫だからさ』

母親『……うぅ……ああ……うあああ……』

男『うん……僕が、母さんを守るよ……』

父親『…………』

父親『……俺は』


336 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 19:36:53.50 ID:5XIqJLN+0
父親『な、なんてことを……』

父親『………ああ』

父親『…………』

父親『……手が震える』

父親『……駄目だ……』

父親『……もう……』

父親『俺は……』

父親『…………』


339 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:12:03.03 ID:GogCu21XO
一気に来るなぁ


340 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/09(木) 20:12:11.09 ID:LXi2Lo7J0
いい感じに進んできたな

保守


341 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:17:34.23 ID:ZiIPI3cEi
ほす


342 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:19:06.58 ID:5XIqJLN+0
……………。
………。

男「…………」

……ン……ン。

男「…………」

コンコンっ!

男「あっ……」

……ガチャ。

妹「……お兄ちゃん?」

男「な、何だ……?」

妹「結構、扉をノックしたんですよ」

男「あ、ああ……気づかなかったみたいだ……」


343 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:19:24.58 ID:5XIqJLN+0
妹「その、大丈夫……?」

男「……何がだ?」

妹「顔、真っ青です……」

男「……え」

妹「体調が悪いなら、また明日にしますよ?」

男「いや、いいんだ……」

妹「で、でも……」

男「ほら、入って入って」

妹「……お兄ちゃんがそう言うなら」

男「よし」

男「でも……ちょっとだけ、時間くれ」

妹「はい……」


344 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:19:48.71 ID:5XIqJLN+0
男「…………」

妹「…………」

男「……ふぅー……」

妹「お兄ちゃん……?」

男「いや、少し嫌な記憶を思い出してな」

妹「嫌な記憶?」

男「まぁ、なんていうか……」

男「思い出したくない過去って、誰にも一つや二つあるだろ?」

妹「……その」

男「ん?」

妹「わたしは昔のこと覚えてないので……」

男「……あっ、ごめん……」


345 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:20:11.60 ID:5XIqJLN+0
妹「いや、いいんです」

男「くそっ……何やってんだ俺」

妹「余り気にしないで下さいね?」

男「本当に悪い……まだ頭がうまく切り替わってないみたいだ」

妹「……あの──」

妹「聞いてもいいですか?」

男「ん? 今、思い出した過去をか?」

妹「そうじゃなくて……その」

男「うん」

妹「昔の記憶があるって、どんな感じなんですか?」

男「……それは」

妹「やっぱり、唐突にぱっと思い浮かんだりするんですか?」

男「……たまにだけどね」


346 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:20:32.45 ID:5XIqJLN+0
妹「それは楽しかった記憶も?」

男「もちろんだ……というより」

男「嫌な記憶を思い出すなんてことはめったにない」

妹「でも、時にはある……」

男「……稀にだけど」

妹「そういう時、お兄ちゃんはどうしてます?」

男「どうするっていうのは?」

妹「辛くて苦しくて、とっても悲しいような、嫌な思い出が沸き起こった時」

妹「お兄ちゃんは、それをどうやって対処してるんですか?」

男「……そうだな」

妹「…………」


347 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:21:05.55 ID:5XIqJLN+0
男「受け入れる」

妹「『受け入れる』?」

男「……どう足掻いたって、過去は変えられない」

妹「……はい」

男「どんなにやるせなくて、なんとかしたくても」

男「過ぎてしまった日々は、もうやり直すことは出来ないんだ」

妹「…………」

男「だから、受け入れる」

男「前へと進む」

妹「……ん」

男「そうしないといけない」

男「いや、そうするしか方法がない」


348 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:21:34.90 ID:5XIqJLN+0
妹「……そうですか」

男「俺もさ、昔やったヘマを今でも思い出す」

男「何で、あの時、ああしてなかったんだろうって」

男「悔しくて、でも、どうしようもなくて」

妹「…………」

男「苦しいし、もがき続けてしまうこともあるよ」

男「でも、それに意味はないんだ」

妹「本当に?」

男「うん」

男「後悔をし続けても、その先には何もない」

男「終わり無き道が永遠と続いているだけなんだ」

妹「…………」

男「だからこそ、時には振り返ってしまうかもしれないけど」

男「ひたすらに、必死に、前へと足を進める」


349 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:22:03.30 ID:5XIqJLN+0
男「結局、それが一番なんだ」

妹「……凄いですね」

男「……そう思うか?」

妹「はい、凄く強いと思います」

男「……強くなんかないよ」

妹「でも、そうやって過去を乗り越えられるって」

妹「そう容易くできない気がするんです」

男「……俺は、ただ」

男「『今』に必死なんだと思う」

妹「……今……」

男「だから、後ろを振り返る余裕がないだけなんだ」

男「強くなんかないし、凄いわけでもない」

男「ただ、がむしゃらに生きてるだけ」


350 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:22:32.68 ID:5XIqJLN+0
妹「……それでも」

妹「わたしは、お兄ちゃんを立派だと思いますよ」

男「…………」

妹「いつか、わたしも」

男「……ん?」

妹「これから、仮に記憶が戻ったとしても」

妹「そうやって、前へと進むような強い意志があるといいです」

男「…………」

妹「わたしが記憶を失った理由。自らで、自分の命を断とうと思った訳」

妹「お兄ちゃんは事情を知っていると思いますが」

妹「それを、わたしは何ひとつ知りません」

男「……うん」

妹「相当、辛い過去なんだと思います」


351 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:23:01.31 ID:5XIqJLN+0
妹「だからこそ、今のような自分になったんだと思います」

男「……それは」

妹「お兄ちゃんのような、強い意志」

妹「躊躇わず、今を生きようとするその覚悟」

男「…………」

妹「わたしに、その時が来ても」

妹「どうか、授かっていますように」

男「……妹」

妹「もし、それでも──」


352 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:23:24.83 ID:5XIqJLN+0
妹「わたし一人じゃ、どうにもならない程のものだったとしたら」

妹「お兄ちゃん……」

男「……ああ」

妹「わたしの側にいて……」

妹「一緒に、背負ってくれますか? 助けてくれますか?」

男「…………」

男「……もちろん」



男「──そのつもりだよ」



……………。
………。


357 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:55:35.21 ID:5XIqJLN+0
男『今度こそ、負けないからなっ』

親友『倒せるもんなら倒してみろよ』

男『ちっ、いい気になりやがって』

親友『そりゃ、今まで全勝だから、いい気分ではあるね』

男『くそっ……絶対に倒してやる』

妹『頑張れーっ!』

親友『……おい』

妹『もぐもぐ……ん? わたし?』

親友『菓子食ってばかりいる、そこのお前だよ』

妹『なによ、お兄ちゃん』

親友『そうだ、お前は俺の妹だろ?』

妹『だから?』


358 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:55:52.55 ID:5XIqJLN+0
親友『応援するのは、俺にしろって』

妹『んー……』

妹『やっぱ、兄さんを応援する』

親友『なっ……』

男『残念だったな。この子は優しい『兄さん』がいいみたいだ』

なでなで。

妹『ふふっ』

親友『ちっ……今に見てろよ』

男『はは、燃えてきたじゃねぇかっ』

……………。


359 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:56:12.44 ID:5XIqJLN+0
男『よっしゃーっ!』

妹『やったね! 兄さんっ!』

親友『……まぐれだ……絶対、まぐれだ……』

男『うおおおっ! 勝利の雄叫びっ!』

妹『ひゃあほおおおっ!』

ぎゅっ。

男『この可愛いやつめっ!』

妹『うわっ、に、兄さん……』

男『あ……ご、ごめん』

妹『……え、ええと』

男『その……感極まってさ……本当に悪い……』

妹『い、いや、別に……』


360 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:56:31.76 ID:5XIqJLN+0
親友『…………』

親友『おーい、そこのお二人さん』

男・妹『は、はいっ!?』

親友『キリもいいし、そろそろゲームを止めよう』

男『ん? いいのか、俺の勝ちで終わりで』

親友『ふんっ、たかが一勝で何言ってんだよ』

男『……まあ、そうりゃそうだけど』

妹『良かったね、兄さん。勝ち逃げだよ』

男『お、おう』

親友『そんなことより──』

親友『じゃーん、これはなんでしょう?』

男『ん? ビデオ?』

妹『あっ!』


361 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:57:16.42 ID:5XIqJLN+0
親友『実は、こないだ借りてきた映画があるんだ』

妹『……それは……』

男『?』

親友『他の奴は全部二人で見たんだが』

親友『この一本だけは、未だに見る事ができない』

妹『お兄ちゃん……やめようよ……』

男『どういうことだ?』

親友『見てみろ』

男『……ん……』

男『……ホラー映画か?』

親友『正解』

妹『……うぅ……』

男『ああ、だから嫌がってたわけか』


362 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:57:27.53 ID:5XIqJLN+0
親友『そこで、今日こそは、これを見ようと思う』

妹『お兄ちゃん……やめようよ……』

親友『何だよ、お前、約束しただろ?』

親友『『兄さんも入れて、三人なら見る』ってさ』

妹『言ったけど……』

男『…………』

親友『てなわけで、鑑賞タイムだ』

親友『部屋も暗くして、雰囲気も出そう』

……………。


363 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:57:45.26 ID:5XIqJLN+0
──ぎゃあああああああっ!

妹『きゃああああああっ!』

ぎゅっ!

男『……あっ……』

妹『やだやだっ! もういやっ!』

親友『うわぁ……想像以上にグロいな……』

妹『兄さん兄さんっ』

男『……な、なんだよ』

妹『もう……怖いシーン終わった?』

親友『終わったぞ』

──うぎゃあああああああっ!

妹『嘘つきっ!』

親友『はははっ、騙されるほうが悪いんだぞ』


364 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:58:13.68 ID:5XIqJLN+0
妹『もうやだよぉ……やめようよぉ……』

ぎゅっ!!

男『……お、おう』

親友『本当に、妹は怖い系、苦手だよなぁ』

親友『あー、部屋からカメラもってくれば良かった』

親友『今なら妹のベストショット撮れたのになぁ』

男『おい、タチが悪いぞ』

妹『そうだよ、お兄ちゃんっ!』

親友『分かってるって。撮らないからさ』

妹『……兄さん、終わった?』

男『……うん、大丈夫』


365 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 20:58:52.08 ID:5XIqJLN+0
妹『はぁ……やっと見れるよ……』

男『…………』

妹『ねぇ、兄さん』

男『ん?』

妹『終わるまで、手握っててもいい?』

男『……え』

妹『だ、駄目かな?』

男『……い、いいよ』

妹『ありがと、兄さん』

男『…………』


369 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 21:55:20.16 ID:Ra3BBqP20
心がざわざわする
だが、C


370 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 21:57:25.41 ID:5XIqJLN+0
──会社

男「……あの」

上司「ああ、来てくれたか」

男「その、何か、ミスでもしましたでしょうか?」

上司「いや……お前は、ここ最近、よくやってくれている」

男「そうですか……でも、何の用件で?」

上司「聞いたぞ」

男「……は?」

上司「なぜ、もっと早く言わなかった」

男「すみません……その何の話か……」

上司「なかなか、隙を見せない奴だな」

上司「……いや、流石といったところか」

男「……はい?」


371 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 21:57:48.90 ID:5XIqJLN+0
上司「お前、社長の息子なんだろ?」

男「……え」

上司「さきほど呼び出されたよ」

上司「『いままで黙っていたが、実は……』とな」

男「社長からですか……?」

上司「ああ、全く気がつかなかった」

男「……その」

上司「別に隠していたことを怒っている訳じゃない」

上司「ただ、そんな重大なことに気づけなかった自分を恥じると同時に」

上司「驕りや高慢な態度をとらないお前を凄いなと思ってな」

男「……いや」

上司「正直に言おうか」

上司「ただただ、感心したよ。降参だ」


372 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 21:58:05.87 ID:5XIqJLN+0
男「……いや、そんなことは全くありません」

上司「それだっ!」

男「へ?」

上司「その低姿勢が君の魅力なんだ」

上司「身分が判明したというのに」

上司「まだ続けようとする、根っからの素直さ」

男「…………」

上司「今まで、なぜかと疑問に思っていたんだが」

上司「やっとしっくりとくる理由が分かった」

男「……疑問ですか?」

上司「ほら、そのだな、初めのうちは君に厳しく当たっただろ?」

男「いえ、それは僕に必要なことでした」


373 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 21:59:09.39 ID:5XIqJLN+0
上司「君はそう言ってくれるが、やはり私怨がなかったとは言い切れない」

上司「かわいがっていた部下が飛ばされて、確かに、君へ当たった」

男「そんなことは──」

上司「いや、そこは謝らせて欲しい。申し訳なかった」

男「そんな、頭を上げて下さい……」

上司「けれどだ。君をいつの間にか、慕っている自分に気がついた」

上司「初めは無能な部下……いや、これまた、すまん」

上司「その、新入りを俺が鍛えてやろうという気持ちだと思っていたんだが」

上司「無駄に、私の仕事に連れて行きたくなり」

上司「多少のミスも何故だか、自然と許せるようになっていた」

男「……そうだったんですか?」

上司「それが、君の魅力だよ」


374 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 21:59:39.51 ID:5XIqJLN+0
上司「上の身分の者が醸し出す、独特な高圧感が君にはない」

男「……はぁ」

上司「本当に、今まで、その才能を持っていたというのに」

上司「どこで胡座をかいていたというんだ」

男「……その」

上司「……まあ、そんなことはどうでもいい」

上司「ただ、少しだけ忠告をしておこうと思ってな」

男「忠告ですか?」

上司「というより、だてに長く生きていない年配者の知恵というか、だな」

上司「それを君に授けたい」

男「あ、ありがとうございます……?」

上司「どうせ私は後数年経ったら、定年の身分だ」

上司「出世が遅くてね。もうこれ以上、上にはいけないだろう」

男「いや、そんなことは……」


375 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 21:59:56.01 ID:5XIqJLN+0
上司「でも、君は違う」

男「…………」

上司「創業者である社長の息子だ」

上司「今しばらくは下っ端で経験させているだろうが」

上司「もう少し経てば、自ずと上の役に就くだろう」

男「……それは」

上司「今ではもう若くない社長も」

上司「ゆくゆくは、会社を息子に継がせたいと思っているはずだ」

上司「君が今後、幾ら無能だったとしても」

上司「自然と重役となり、ひいては、社の長となるだろう」

男「…………」

上司「だが、それでは、部下はついてこないぞ?」

上司「馬鹿な上司だと思われて、身内は敵ばかりとなる」

男「……はい」


376 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:00:31.49 ID:5XIqJLN+0
上司「だからこそ、今の君の魅力を将来にも生かすんだ」

上司「加えて、実績も出せば、誰一人文句を言わないはずだ」

上司「例えそれが、コネでのし上がった若者であっても、な」

男「……あ」

上司「分かっただろ?」

上司「少しでも私の想いが伝わればいいと思っている」

上司「しかし、本当に、君は恵まれているな」

男「……そうでしょうか?」

上司「何を言ってるんだ。もっと親に感謝しなさい」

男「親に……」

上司「君をこの世界に誕生させ、ここまで育ててくれたんだ」

上司「その魅力ある性格も加えてだ」

男「……そう、ですね」

上司「ああ」


377 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:00:51.16 ID:5XIqJLN+0
男「そうだ……」

男「……そうだよ……」

上司「ん?」

男「今の自分がいるのは……親のおかげ……」

男「だからこそ、俺は……」

上司「お、おい、どうした?」

男「なんで、こんな大事なこと……」

男「……でも」

男「どうすればいい……?」

男「俺は……一体……」

男「…………」

男「やっぱり……駄目だ」

男「……この世界からは、もう抜け出せない……」

男「母さん……」

男「……ごめんね……」


378 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:03:02.81 ID:K/2hVcUJO
良いなぁ
この感じ好きだわ


384 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:51:44.33 ID:5XIqJLN+0
──車内

妹「わたしに、月に一度の検査って、なんか不思議ですよね」

男「どうしてだ?」

妹「だって、病院に行ったところで、記憶が戻るわけないじゃないですか」

男「それはそうだが……」

妹「家に戻ってから数ヶ月」

妹「けれど、一向に過去を思い出す気配もないんですから」

男「……それでも」

男「やっぱり、お医者さんに見てもらうのは大事だよ」

妹「……分かってはいるんですが」

妹「どうも駄目ですね。最近、ネガティブな思考ばっかりです」

男「…………」


385 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:52:37.39 ID:5XIqJLN+0
妹「お兄ちゃんはなんでだと思いますか?」

男「ん?」

妹「わたしの記憶が未だに戻らない理由」

男「それは……」

妹「お兄ちゃんが、どう考えているのか、聞きたいです」

男「……いや、俺は専門家じゃないから分からないよ」

妹「お願いします」

男「…………」

妹「…………」

男「……はぁ」

男「こんなことは言いたくないんだが……」

男「昔の生活をなぞっているのに、過去を思い出せないってことは」

男「それが今の日々に必要ないってことなんじゃないか」


386 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:53:05.35 ID:5XIqJLN+0
妹「……必要ない?」

男「もしかしたら、記憶があること自体、問題なのかもしれない」

男「思い出すことによって、今に支障をきたすからこそ」

男「身体が無意識のうちにそうさせているんだと思う」

妹「……自殺未遂するほどですからね」

男「もう、やめよう……」

男「これが建設的な会話だとは、俺には思えない」

妹「でも、お兄ちゃんの意見はすごく参考になりました」

妹「何となく、わたしもそんな気がします」

男「…………」

妹「最近、わたし、思うんです」

男「……さっきの話の続きか?」

妹「はい」


387 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/09(木) 22:53:20.59 ID:0lt5L5Vb0
しぇn


388 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:53:33.24 ID:5XIqJLN+0
男「なら、今は聞きたくないな」

男「病院に着いて、検査を受け終わってからにしよう」

妹「……これで最後にします」

男「……ふぅ」

男「分かったよ……」

妹「……ありがとう」

男「…………」

妹「その、わたしが記憶が戻らないのには多分大きな訳があるんです」

男「……どうして、そう思う?」

妹「調べたんですが、大抵の記憶喪失はすぐに治るみたいです」

妹「それは今までの生活をなぞったりすれば、次第に気づくから」

男「……ああ、だから、今もそうしてるだろ?」


389 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:53:56.67 ID:5XIqJLN+0
妹「本当ですか?」

男「どういうことだ……?」

妹「なにか、欠けてるんじゃないんですか?」

男「……は?」

妹「実のところ、わたしも全く思い出せないという訳じゃないんです」

男「……そ、それは本当に?」

妹「はい。誰にも言いませんでしたけど、事実です」

男「いや、待てっ。それは、かなり重要なことなんじゃないか?」

妹「でも、結果的に駄目なんですから意味はないですよ」

男「それでも……」

妹「問題は、思い出そうとする瞬間」

妹「何かが、わたしの記憶が蘇るのを遮ることです」


390 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:54:28.27 ID:5XIqJLN+0
男「……遮る?」

妹「それが何なのか、前までは分からなかったんですけど」

妹「最近、違和感が」

男「……なんだ?」

妹「昔通りと言っている生活に、何か、不自然さを感じるんです」

男「……それは」

男「昔のように、大学に行ってなかったりするからだろ?」

妹「そんな些細なことじゃなくて、もっと根本的な……」

妹「前提をひっくり返すような、そんな感覚です」

男「…………」

妹「お兄ちゃんは、見当つかないですか?」

男「……いや」


391 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:54:49.76 ID:5XIqJLN+0
男「俺には、分からないよ」

妹「……そうですか」

男「すまん……」

妹「いや、お兄ちゃんがそう言ってるなら、わたしの勘違いなんでしょうね……」

妹「でも……何かが、おかしいんですよ……」

男「…………」

男「……少し、焦りが出てきてるみたいだな」

妹「え?」

男「過去を取り戻せない自分に、憤りを感じているんだろ?」

妹「…………」

男「よし、そうだ。今度、時間を作って、どこか──」


392 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:55:18.42 ID:5XIqJLN+0
妹「『前に進みたい』」

男「……え?」

妹「わたしも、前に進みたいんです」

男「…………」

妹「今のままじゃなくて、わたしもお兄ちゃんみたいに」

妹「辛い過去を乗り切って、今を生きたい」

男「……それは……」

妹「ねぇ、お兄ちゃん」

男「……ん?」

妹「最近、見るからにお兄ちゃん、疲れてますよ?」

男「俺が?」

妹「顔も窶れてるし、最近はふざけるのも少なくなりました」


393 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/09(木) 22:56:10.31 ID:0lt5L5Vb0
支援


394 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:56:20.52 ID:5XIqJLN+0
男「は、はは……それは、構って欲しいのか?」

妹「はぐらかさないで」

男「…………」

妹「一体、どうしたんですか?」

男「……別に、なんでもないよ」

妹「仕事のこと?」

男「…………」

妹「それとも、人間関係がうまくいってない?」

男「…………」

妹「或いは……」

妹「わたしのことで……」


395 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 22:56:56.25 ID:5XIqJLN+0
男「――違う」

妹「それは、本当に断言できますか……?」

男「違う、お前のことじゃない」

妹「……でも、なら」

男「…………」

男「あまり、人には話したくはないことだ」

妹「…………」

男「でも、強いて言うなら……」

男「自分自身の存在意義に、疑問を感じてる……ってとこだ」

……………。
………。


399 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 23:24:25.59 ID:5XIqJLN+0
担任『よし、配り終わったな』

担任『では、志望先を記入しておいてくれよ』

担任『書き終わったら、委員長に渡すか』

担任『それが嫌なら、職員室の私のところまで自分で持ってくるように』

キーンコーンカーンコーン。

担任『……チャイムが鳴ったな』

担任『くれぐれも、適当に書くことはないように』

担任『分かったな?』

担任『では、また明日』

……………。


400 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 23:24:49.07 ID:5XIqJLN+0
男『んー』

親友『どうした? もう書けたか?』

男『今のところ、普通に進学するつもりなんだけど』

男『どこの高校にしようかなって思ってさ』

親友『何だよ、俺と一緒じゃないのか?』

男『だって、お前、頭いいだろ? 俺は入れそうもないよ』

親友『何言ってんだ。今まで通り二人三脚で助けるぞ?』

男『それはありがたいが……』

男『いつまでも、お前の足を引っ張ってばかりじゃなあ……』

親友『そんなこと言わず、これからも仲良くやろうぜ』

親友『俺はお前と同じ高校いけるなら、少しぐらい苦労構わないさ』

男『……本当か?』

親友『もちろん』


401 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 23:25:16.30 ID:5XIqJLN+0
男『申し訳ないな……いつも、迷惑かけて』

親友『いいよ、気にすんな』

男『はは、持つべきものはやっぱり友だ』

親友『だなっ』

男『そうだ、この後どうする?』

親友『ん? どっか遊びにでも行くか?』

男『隣街のゲーセン行ってみないか? 新型色々入ってるらしいぞ』

親友『ただ、今月厳しいからなぁ』

男『それだと、無理そうだな……』

親友『……そうだ』

男『ん?』

親友『久しぶりに俺ん家来ないか?』


402 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 23:25:36.70 ID:5XIqJLN+0
男『……お前ん家?』

親友『ああ、そこなら金もかからないし』

親友『古いゲームしかないけど、昔みたいに盛り上がろうぜ』

男『あ、うん……』

親友『それにさ……』

親友『妹のやつも、最近、お前と会ってないし』

親友『この前、『兄さんはもう家来ないの……?』って、半泣きだったぞ?』

男『……いや』

親友『どうしたんだ? 何が問題だ?』

男『別に、何かあるってわけじゃないんだが……』

親友『なら、いいだろ?』

男『……気乗りしない』

親友『…………』

男『やっぱり、今日はやめとこう』


403 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 23:26:08.12 ID:5XIqJLN+0
男『俺も、家でやることあるしな』

親友『……なぁ』

男『ん?』

親友『お前、避けてるだろ?』

男『……何の話だ』

親友『しらばっくれるなよ。こっちは分かってんだぞ?』

男『聞きたくないな、その話は』

トコトコトコ……。

親友『お、おいっ』

男『じゃあな、また明日』

親友『…………』

親友『……何でなんだよ』

親友「何で……』

親友『…………』


404 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 23:27:39.00 ID:5XIqJLN+0
ここから少し長めに時間を貰いまふ。
次以降は一気に投下したいんで、申し訳ない。


405 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 23:29:45.76 ID:i5Z5kuvHQ
ここまで待ったからもっと待とう


406 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/09(木) 23:30:29.19 ID:LRwMJPBT0
待つのには慣れた
いいのを期待してる


412 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:38:27.35 ID:enymi4QR0
──リビング

男性「ふぅ、今日も疲れた」

女性「いつもご苦労様です。仕事の方は順調?」

男性「ああ、今のところはな」

女性「そう、それは良かったですね」

男性「ふむ。で、どうだ。最近、お前の方は」

男「…………」

男性「……ん?」

男「…………」

妹「……お兄ちゃん」

ゆさゆさ……。

男「あっ……な、なに?」


413 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:40:47.16 ID:enymi4QR0
男性「いや、最近どうだと聞こうと思ったんだが……」

男性「どうした? 疲れてるのか?」

男「いや、大丈夫だよ。ちょっと……考え事を、ね」

女性「……ご飯もまだ全然食べてない」

女性「もしかして、口に合わなかったかしら?」

男「……違うんだ。いつも通り、おいしいから安心して」

妹「…………」

男「もぐもぐ……うん、やっぱり、母さんは料理上手だな」

男性「はは、そりゃそうだ」

男性「私が何度も何度も、アタックしたというのに」

男性「そうそう首を縦に振らなかったからなあ」


414 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:41:41.55 ID:enymi4QR0
女性「だって、あの頃のあなたは、今みたいにお金なかったじゃないですか」

女性「やはり、家庭を築くなら、少ないよりあったほうがいいですし」

男性「でも、結局は、貧乏な私と結婚してくれたんだぞ?」

女性「あまりにもしつこいから、仕方なしです」

男性「はは、そりゃ困ったなぁ」

妹「仲いいんですね」

男性「ん?」

妹「両親が二人とも仲いいって、見てて幸せになります」

女性「そ、そう?」

妹「はい。ねっ、お兄ちゃん」

男「…………」


415 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:43:00.76 ID:enymi4QR0
妹「……お兄ちゃん?」

男「……聞いてるよ。いいなぁ、仲良くて」

妹「う、うん……」

男「妹がそう言う訳も分かるよ」

男「家庭の幸せってこういうものなんだなって、つくづく実感する」

女性「あら、お父さん。息子が嬉しいこと言ってくれますね」

男性「……あ、ああ……」

男「もし仮に、ここに不幸な家庭しか見てこなかった子供がいたとしたら」

男「羨ましく……いや、妬ましく思う程、幸せな光景だよね」

女性「……え?」

男性「……ちょっと、席を外すぞ」

ガタン……。


416 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:43:28.54 ID:enymi4QR0
男「大丈夫だよ、お父さん。僕は、正気だから」

男性「本当か? やれるのか?」

男「心配しないで。これでも、人一倍の親思いなんですから」

男「今までの人生をかけてきた、実績もありますよ」

男性「…………」

妹「……え、ちょっと、どういう……」

男「いいから、お父さん、座って下さい」

女性「あ、ええと……」

男性「……駄目だな……こっちに来──」

男「どうしたんですか? 何か、問題でも?」

男性「自分でも分からないのか?」

男「何がです?」

男「……これはもう無理だな」

女性「…………」


417 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:43:45.29 ID:enymi4QR0
男性「すまんな……気づけなかった私が悪い」

男「ちょっと待って下さい。みんなも、何か変だと思いますか?」

男性「……………」

女性「……え、えっと」

妹「お、お兄ちゃん……」

男「どうしたんだよ、妹」

男「そんな、異常者を見るような目つきで……もう困るなぁ」

妹「……うぅ」

男「お父さん、いい加減にして下さい」

男「冗談だと言っても、からかわれ続けるのはいい気分がしません」

男性「……………」

妹「……く、口調」


418 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:44:30.75 ID:enymi4QR0
男「ん?」

妹「お、お兄ちゃん……喋り方が……」

男「なに? 喋り方?」

妹「……お父さんに、敬語使ってますよ……?」

男「は、はは……そんなことない──」



男「です、よね……お父さん?」




419 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:45:10.78 ID:enymi4QR0
男性「…………」

男「……っ」

男「ごめん、席を外す」

ガタン……。

男性「すまん、仕事で疲れていたみたいだ」

男性「会社での会話が、こっちまで入りこんでしまったんだろう」

男性「気にせず、食事を続けてくれ。なっ?」

女性「は、はい……」

妹「……お兄ちゃん……」

妹「……一体……」


420 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:45:36.97 ID:enymi4QR0
──親友の部屋

男「……くそっ!」

男「なんて失態だっ! 何をやってるっ!」

男「馬鹿なことを一人で考えてるから……」

男「……こんな些細なミスを置かすんだっ!」

男「……くっ……」

バタッ!

男「……何が、何が不満なんだ……?」

男「いや……」

男「……俺は、一体、何を恐れてる?」

男「…………」

男「……あ……」


421 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:45:53.14 ID:enymi4QR0
男「カメラ……」

男「……あいつの、大好きだった写真撮影」

男「でも……」

男「別に……好きじゃない……」

男「……親友……」

男「ああ……」

男「俺は……」

男「──一体、誰、なんだ……?」

男「…………」


422 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 00:45:59.77 ID:TYDoS0tr0
限界近いのか…


423 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:46:14.26 ID:enymi4QR0
男「……は、はは……」

男「なんてことだ……」

男「……そんな、自分を見失うなんて……」

男「……親友を演じる事で……自分が分からなくなるなんて……」

男「……はは、はははっ」

男「……うぅ」

男「なんて……滑稽なんだ……」

男「……幸せな家庭」

男「違う、違うっ」

男「俺の家には……そんなものはなかった……」

男「……なら、今は?」

男「今は……」

男「…………」


424 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:46:48.64 ID:enymi4QR0
男「分からない……」

男「駄目だ……自分が自分でないようで」

男「頭がおかしくなりそうだ……」

男「……助けてくれ」

男「おい、親友……」

男「……近くにいるなら、狂った俺を助けてくれよ」

男「もう、俺は……」

男「壊れかけているみたいんだ……」

男「…………」

男「…………」

男「……母さん」


425 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:47:18.44 ID:enymi4QR0
男「母さんしか、いない……」

男「今の俺を……正気に戻してくれるのは……」

男「……俺の、たった一人の母さんしかっ──」

……ピピピピピッ!

男「……へ?」

男「か、母さん……?」

……ガバッ!

男「…………」

男「……違う」

男「……何だ? 知らない番号?」

……………。
………。


426 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:47:45.70 ID:enymi4QR0
親友『少し話がある』

男『なんだよ、朝っぱらから』

親友『……重要な話だ。来てくれ』

男『ここじゃ、出来ない話なのか?』

親友『ああ……ここじゃ無理だ』

男『……分かったよ』

男『お前に付いて行けばいいんだろ?』

親友『助かるな……』

男『いいさ、まだ朝礼までには時間がある』

親友『ああ、それまでには終わらせるよ』

男『…………』

……………。


427 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:48:10.40 ID:enymi4QR0
男『……さて』

親友『…………』

男『まさか、屋上が開いてるなんてな』

男『確かに、内密な話をするには絶好の場所だが……』

男『お前、このためだけに錠を壊しただなんて言うなよ?』

親友『……だったらどうする?』

男『……え?』

親友『話をしよう』

男『ちょっと待てって』

男『本当にお前が……』

親友『今は、そんなことどうだっていいさ』

男『……でも』

親友『お前に、聞きたいことがあるんだ』


428 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:48:32.53 ID:enymi4QR0
男『……何だよ』

親友『俺の……妹のことだ』

男『…………』

親友『こないだは、うまく逃げられたからな』

男『今日だって、走って逃げるかもしれないぞ?』

親友『残念だったな。扉に近いのは俺の方だ』

親友『そこまで話したくないっていうなら』

親友『俺を殴り倒していけよ』

男『……そんなことするわけないじゃないか』

親友『そうか? よっぽど、話したくないことだと俺は考えてるけどな』

男『…………』

親友『どうして、あいつを避ける』


429 名前: 忍法帖【Lv=7,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:49:11.44 ID:JFLoiDYh0
表でろ


430 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:49:30.63 ID:enymi4QR0
男『……避けてないさ』

親友『分かりきった嘘をつくなよ』

男『嘘じゃない。ただ、巡り合わせが悪いだけだ』

親友『違うな。あまりにも、不自然さが臭う』

男『……お前がそう思ってるだけだろ?』

親友『待て。そう、過剰に反発しないでくれ』

親友『ただ、俺は理由を聞いてるだけだ』

男『別に……怒ってないさ……』

親友『そうか? 俺には凄く、感情的に見えるが』

男『いいから、早く聞けよ』

親友『だから、避けている理由を聞いてるんだ』

親友『はぐらかしたら、また同じ質問を繰り返すからな?』

男『……ちっ』


431 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:50:51.34 ID:enymi4QR0
男『……簡単だよ』

親友『ん?』

男『もう、幼い女の子と遊ぶ気になれないんだよ』

男『ああ……そういうことだ』

親友『……あんなにアイツに優しかったお前がか?』

男『人は変わるよ』

親友『……違うな』

男『違わない』

親友『いいか、小さい頃からの友達だった俺に嘘をつくな』

男『……別に嘘なんて……』

親友『なら、はっきりと言ってやろうか?』

男『……何を』


432 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:51:04.35 ID:enymi4QR0
親友『お前が、妹を避けるようになった理由だよ』

男『なっ……』

親友『俺が分からないとでも、思ったか?』

親友『そうだったとしたら、お前は、相当な大バカ者だ』

男『……くっ』

親友『いいか、お前は……』

男『や、やめろっ!』

親友『妹のことが好──』

男『……ッ』


433 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:51:52.42 ID:rFBgyVdCO
おお来てた


434 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:51:55.13 ID:enymi4QR0
バゴッ!!

親友『……くっ』

男『それ以上、言うなっ』

男『分かっていても、言うんじゃないっ!』

親友『……何でだよ……何が問題……なんだ?』

男『いいから、止めろ』

男『頼むから、やめてくれよ……』

親友『……お前……』

男『……っ』

たったったった……。

親友『…………』


435 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 00:53:17.40 ID:7dNKV4En0
いいなぁ


支援


438 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 01:11:10.85 ID:MXjjWAzd0
私怨しとかないとさるさんくらいそうなペースだな


439 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:19:30.88 ID:iI+fMJD0O
なんだろう……
家族計画思い出して泣いた


440 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:21:36.75 ID:6BFAuDcZ0
支援


441 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:25:07.82 ID:enymi4QR0
──書斎

ドンドンドンッ!!

男性「……な」

ガチャ……。

男「…………」

男性「……君か……」

男「…………」

男性「ど、どうした? まだ、気分が悪いのか?」

男性「もしそうなら、数日間、仕事を休んでも──」

男「……終わら、せましょう……」

男性「……は?」

男「……もう、こんな芝居」

男「……やめてしまいましょうよ……」

男性「ま、まて……」


442 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:26:04.29 ID:enymi4QR0
男性「……君には言ったはずだと思うが」

男性「今のあの子には、君という兄が必要で……」

男性「それに、途中でやめる事は……」

男「……昔」

男性「……ん?」

男「……酒を飲んでは溺れて」

男「暇さえあれば、煙草を吸っているような男がいましてね……」

男性「……な、何の話だ?」

男「ヘビースモーカーっていうんですか……?」

男「僕は煙草を吸わない事にしてるんで、よく分かりませんが」

男「そんな骨の髄まで腐り切った、駄目人間がいたわけですよ……」

男性「……男君」

男性「もしかしたら、私が思っている以上に、君は……」


443 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:26:35.90 ID:enymi4QR0
男「でも、父親だったんです……」

男性「……え?」

男「そんな駄目人間でしたけど、間違いなく、僕の父でした」

男「……愛すべき、家族だったんです」

男性「…………」

男「でも、そんな男ですから、家庭に幸せは訪れなくて……」

男「気がついた時には、遅かったんです……」

男「……既に、何もかも歯車が狂い始めていて……」

男「不思議に思いませんでしたか……?」

男性「……何を?」

男「どうして、僕が……この街に再びやってきたのか……」

男性「それは、知らない……」

男「実はですね……」

男「……仕事のあてを探しにきたんです」


444 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:27:02.32 ID:enymi4QR0
男「それも、ある程度、お金になる仕事をね……」

男性「……どういうことだ?」

男「最後に頼むのは、親友っていうでしょ?」

男「だから、何年も訪れていないこの街に……」

男「……かつての友人を頼ってきたわけです……」

男性「…………」

男「そしたらびっくり……まさか、ソイツが死んじまってて……」

男「……妹は、記憶喪失……」

男「……は、ははっ……」

男「笑っちゃいますよね……どんなタイミングだよって……」

男性「……っ」

男「でも、あなたは僕に提案した」


445 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:27:32.62 ID:enymi4QR0
男「……『息子の代わりをしてくれ』と」

男「『妹の兄になってくれ』と」

男「この際だから、はっきり言いますね……」

男「……そんな大役、僕に務まるわけないんです」

男「一人でさえ精一杯になのに……どうして、そんな余裕が?」

男性「……けれど、君は承諾したぞ」

男「……その通りです」

男「……だって、仕事が貰えたから」

男「かなりの金が入る仕事が、得られたから……」

男性「いったい……どういう……」

男「僕にはいるんですよ、お金が」

男「……それも少しじゃなくて、大量に」


446 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:28:13.03 ID:enymi4QR0
男性「……何のために?」

男「……手術費用です……」

男性「手術費用……?」

男「……父の話はしましたよね?」

男「ヘビースモーカーの、煙草吸ってばかりの父がいたって話」

男「それが、最悪なことに、母の病気を生みまして……」

男「医者の話によると、副流煙は非常に身体に悪いそうです……」

男「……で、それを大量に吸っていた母は……」

男「──肺ガンになった」

男性「……そうだった、のか……」

男「まあ、月々の医療費ぐらいならなんとかなったんですが」

男「……有名どころの先生に手術を頼むとなると、相当かかるらしくて……」

男「でも、母さんの残された命は僅かで……」


447 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:28:49.80 ID:enymi4QR0
男「……たった一人の守るべき家族なんです」

男「かつて、僕は誓いました……けど、その母を救うことができない……」

男「……そんな時に舞い込んできた、不幸の中の幸運だったからこそ」

男「かつての……友人、妹のためになるという頼みだったから」

男「今まで、精一杯、頑張れた……」

男「……自分には不可能だと思える事も、やり通せた」

男性「……なら、これからも……」

男「でも、もう意味ないんです……」

男性「……どうしてだ?」

男「……さきほど電話がかかってきました」

男「母が……」



男「──死んだそうです」




448 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:29:50.96 ID:enymi4QR0
男性「…………」

男性「……なっ……」

男「もう……僕には無理ですよ……」

男「こんな……自分の生きる方向性を見失った人間に……」

男「守ると約束した人を救えない、裏切り者に……」

男「……親友を演じて、その妹を救うなんて……」

男「そんな、大役……無理なんです……」

男性「…………」


449 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:30:36.37 ID:enymi4QR0
男「そもそも、これからの人生……」

男「一体、どうしていいのか……」

男「……でも、まずは」

男性「帰るのか?」

男性「母親のいる故郷の病院に帰るんだな?」

男「…………」

男「……はいっ」

男「……ごめん……なさい……」

男性「…………」


450 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:31:58.82 ID:hXdNGf/Oi
支援


451 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 01:39:14.95 ID:Ad8TwOc60
先が気になって寝れない...


452 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:44:16.66 ID:iI+fMJD0O
神スレすぎて眠れない……頼むから死守ってくれよ!


453 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:50:52.70 ID:enymi4QR0
──路上

ザーザーザーッ……。

男「……雨、か……」

男「日中はあんなに晴れてたのになぁ……」

男「……ここから、何時間かかるんだっけ……」

男「ええと……」

男「まあいいや……」

男「とりあえず、車に乗らないと……」

男「…………」

男「『時間がかかってもいいから、落ち着いたら戻ってきて欲しい』か……」

男「は、はは……」

男「こんな自分を、まだ必要としてくれてるんだな……」

男「…………」

男「母さんに会いに……行こう」

男「…………」


454 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:52:00.98 ID:enymi4QR0









──『お兄ちゃんっ……』









男「……え?」

男「嘘だろ……だって……」


455 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:52:33.32 ID:enymi4QR0
妹「!!」

男「……あっ……」

男「あいつの部屋は……そうか、道路沿いか……」

男「……やっぱり、一言ぐらいかけたほうが……」

男「…………」

男「……おーい、聞こえるかっ!」

ザーザーザーッ……。
ザーザーザーッ……。

妹「?」

男「……だめ、か……」

男「そうだよな……」

男「雨降ってるもんな……これじゃあ、向こうに届かない……」

妹「…………」

男「…………」


456 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:53:13.18 ID:enymi4QR0
男「……なぁ」

男「本当のことを言うとな」

男「実は、俺……」

男「……お前の兄じゃないんだよ……」

ザーザーザーッ……。
ザーザーザーッ……。

男「昔、別れも言わずに消えた……ただの知り合いなんだ」

男「お前にとってみれば、冷たくされた相手かもしれないな……」

男「この前に、約束したよな」

ザーザーザーッ……。
ザーザーザーッ……。

男「……そばにいるって」

男「助けてやるって」

男「でも……ごめん」


457 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:53:49.67 ID:a879QAvp0
しえん


458 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:53:54.23 ID:enymi4QR0
男「……もう、俺には出来そうもないんだ……」

男「今のおれじゃ……お前に勘づかれちまう……」

男「足引っ張っちゃうだけ……になるんだ……」

ザーザーザーッ……。
ザーザーザーッ……。

男「だから……」

男「また、別れを言わなかった俺を」

男「……恨まないでくれよ……」

男「…………」

男「じゃあな……」

男「──さよなら……」

ガチャ……。

……………。
………。


459 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 01:55:55.39 ID:8pi1E+4C0
sien


460 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:56:10.13 ID:RASYtrw1I
泣く
これは泣く


461 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 01:58:38.63 ID:M//f7Jmm0
なんなの……なんなのこれ……
どうしてくれるのよ……


464 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:06:55.60 ID:rFBgyVdCO
うわああああああ


465 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:16:26.01 ID:KSYWsgzm0
くそう、眠れん


466 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:16:36.23 ID:enymi4QR0
男『…………』

男『……朝か……』

ガバッ……。

男『昨日は、母さんと父さん、喧嘩してたけど』

男『……でも、大丈夫だろ』

男『一日経てば、二人とも冷静になれると思うし』

男『……最後、父さん……自分のやったこと、後悔してるもんな』

男『うん……きっと大丈夫』

男『何事もなく、うまくいくはずだ』

男『……やっぱり、家族は仲良しが一番だ』

男『これを機に、父さん、変わってくれないかなぁ……』

トコトコトコ……。

男『でも、会社をクビか……』


467 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:17:01.11 ID:enymi4QR0
男『……厳しいんだな、大人の世界は』

男『腹が立っても、殴れない、か……』

男『そんなこと言ったら、こないだ、親友を殴った俺は』

男『学校をやめなきゃいけなくなるな……』

トコトコトコ……。

男『うん……今日、謝ろう』

男『やっぱり、殴った俺が悪い』

男『それに……このままだと変な空気がずっと続きそうだからな』

男『大切な友達を、そんなことで失ったらもったいない』

男『……それに妹のことだって……』

トコトコトコ……。

男『でも……どうしような……』

男『もし仮に、あいつがあの子に言ったりしたら……』


468 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:17:19.91 ID:enymi4QR0
男『……気持ち悪がらないかな? 今までみたいに遊んでくれるかな?』

男『あーわかんねぇっ、恋人いたことねぇからなー』

男『それに……あの三人の関係を壊していいのか……』

男『『兄さん』が『妹』を好きになったなんて……』

トコトコトコ……。

男『……ふぅー』

男『とりあえず、その件はひとまず置こう』

男『まずは、親友と……』

男『………ん?』

男『なんだろ、この臭い……』

トコトコトコ……。

男『リビングからかな? もしかして、誰か起きてる?』


469 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:17:48.35 ID:enymi4QR0
ガチャ……。

男『…………』

男『……え』




父親『…………』




男『……首を……』

男『…………』

男『……うっ!』

……ぐええええぇぇっ!!


470 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:18:10.26 ID:enymi4QR0
男『はぁ……はぁ……はぁ……』

男『いいか、落ち着け、落ち着くんだ……』

男『……今、この家に男は俺しかいない』

男『だから、俺がしっかりしないと……』

男『そうだっ、まずは母さんをここに入れちゃいけないっ』

男『こんな父さんの姿は……見せちゃいけない……っ』

男『ことがすむまでは……絶対に……』

男『…………』

男『……父さん』

男『今、降ろして上げるからね』

男『ちょっと待っててよ……今、椅子と鋏を』

ががっ……。

男『……よし』


471 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:18:42.72 ID:enymi4QR0
父親『…………』

男『…………』

男『……うぅ……くっ……』

男『駄目だっ……泣くな……男は泣くなっ!』

男『全てが終わったら……一人で泣くんだっ』

男『……父さん』

男『約束する……』

男『俺……絶対に強い男になるから』

男『母さんを守るから』

男『俺が……必ず……』


472 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:19:15.72 ID:enymi4QR0
男『……ん』

男『……今、降ろすね』

男『少し乱暴になるかもしれないけど、許して』

男『父さんの身体を支えられるだけの力はないんだ』

男『……だから、地面に落ちる時、少し痛いかもしれない』

父親『…………』

男『うん、じゃあ切るよ』

男『……よし』

男『せいのっ……』

……バタンッ!


473 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:26:19.91 ID:s87MMFWy0
このスレが日曜か月曜に立ってたら自殺してたかもな


474 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:37:38.07 ID:zeFQe6YB0
寝る前にしえん


475 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:39:31.57 ID:enymi4QR0
──病院 霊安室

看護婦「……お母様のご遺体はこちらに」

男「…………」

看護婦「……その」

男「……はい」

看護婦「お母様、癌の病にしては、とても安らかに亡くなられました」

男「…………」

看護婦「それに……」

看護婦「いつも、自慢の息子がいるのだと、誇らしげに言っておられまして」

看護婦「亡くなられる直前も、あなたの自慢話を聞かせて頂きました」

男「……そうですか」

看護婦「……はい」


476 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:40:33.88 ID:enymi4QR0
男「すみません……」

男「少しの間だけ……母と二人だけにして頂けますか?」

看護婦「……もちろんです、失礼します」

男「……本当に申し訳ないです」

ガチャン……。

男「…………」

男「……やあ、母さん」

男「半年ぶりかな? それとも、それ以上、経ったっけ?」

男「ここ最近忙しくてさ、あんまり時間の感覚が分からないんだ」

男「……うん」

男「そうか、死んじゃったんだね」

男「せっかく、この業界で有名なお医者さんに手術を頼もうと思ったんだけど」

男「間に合わなかったみたいだ」


477 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:40:57.44 ID:enymi4QR0
男「……結局、俺、何も出来なかった」

男「こんなことになるならさ……」

男「前の街になんか戻らずに、母さんの側にいれば良かった」

男「前の仕事だと給料は安かったけど、結構、時間は取れたからね」

男「もっと病院へ通って、母さんと話が出来たはずだ」

男「……ごめん……本当にごめん……」

男「電話も何度もしてくれたのに、それも出なくて……」

男「……本当に、俺は親不孝者だよ」

男「役立たずにも程があるよ……」

男「……父さんが死んだ前の夜、結局、俺は止められなかった」

男「いつもと様子が違ったのに……気づけなかったんだ」

男「……あの時から、何も変わってない」


478 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:41:17.03 ID:enymi4QR0
男「身体は大きくなったけど、中身は成長できていないんだ」

男「いつもそうなんだよな……」

男「俺って不器用だからさ、どうあがいても器用にはいかない」

男「大事なところで、肝心な場面で」

男「……ミスをおかす」

男「ただただ、運命に翻弄され続けてる」

男「…………」

男「ごめん……母さん……」

男「……本当に……」

男「……父さんと約束したはずのに……」

男「守るって……言ったのに……」

男「……うぅ……くっ……」

男「……で、でもっ」


479 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:41:34.26 ID:enymi4QR0
男「今は、涙をこらえるよ……」

男「母親の前で、大きなった息子が泣くなんて」

男「あまりにも、みっともなさすぎるからね……」

男「……だけどね、母さん」

男「……俺さ」

男「正直、これからどうしたらいいか、分からないんだ」

男「……もう、何もかも、失った気がするんだ……」

男「……俺は……」

男「一体……どうすればいいんだろう……?」

男「…………」

……………。
………。


480 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:43:06.71 ID:a879QAvp0
胸が苦しい


481 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:47:06.82 ID:fhidaSyS0
だめだ
だめだよ


482 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 02:47:31.09 ID:w3Ds1NpQO
あせらずにじっくり進めて欲しい。
しっかり読ませていただきます。


483 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:52:39.21 ID:FKAJHUJc0
追 い つ い た ぞ

あえて言わせて貰おう。支援すると


484 名前: 忍法帖【Lv=4,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 02:56:25.25 ID:lAf9SjX10
久々に最高傑作を生で見れるとは幸せだ


485 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:00:13.81 ID:rFBgyVdCO
翌朝まで保守頼んだよ…
バタッ


486 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:09:47.46 ID:enymi4QR0
親友『……大変なことになったな』

男『ああ……』

親友『明日、引っ越すんだろ?』

男『うん』

親友『……遠いな、自転車じゃ行けないぐらい、遠いよ』

男『……ああ』

親友『高校はどうするつもりだ?』

男『向こうで、働く予定』

親友『……そう、か』

男『それよりさ……』

親友『ん?』

男『悪いな、妹に黙っててもらって』


487 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:10:42.43 ID:enymi4QR0
親友『ああ、気にすんな……こうなったら、仕方ない』

男『うん……』

親友『……でもさ』

親友『ほんと、こういう時って、何て言っていいのか、分かんないな』

親友『何言っても、下手な同情みたいだし』

親友『俺たちの間に、そんな感情があったら駄目だし』

男『……ありがとうな』

親友『……なあ、男』

男『ん?』

親友『「頑張れ」なんて有り触れた言葉は言わない。てか、言えない』

親友『でもな、これだけは分かってて欲しいんだ』

男『……何だ?』


488 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:11:18.03 ID:enymi4QR0
親友『どこに行ったとしても、お前には、俺がついてるから』

親友『どんなに辛くても、苦しくても……』

親友『悲しい時は、一緒に悲しんでやる』

親友『泣きたい時は、一緒に泣いてやる』

親友『それで……時間が経ってな』

親友『大丈夫って、胸を張って言えるようになったらさ』

男『…………』

親友『そん時は……』



親友『一緒になって、笑ってやろうぜ』



……………。
………。


494 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:45:50.63 ID:enymi4QR0
男「……ああ……」

男「……一緒になって……か……」

男「はは……」

男「……懐かしい、な……」

男「……でもよ……」

男「お前も……もう、死んじまったじゃないか……」

男「……何で……」

男「何で、俺の大事な人たちはみんな……」

男「……俺だけを残して、死んじまうんだ……」

男「……うぅ……」

男「くっ……うっ……うぁっ……」

男「……何でだっ」

男「どうして、こんなにうまくいかないっ……」


495 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:46:19.97 ID:enymi4QR0
男「これ以上、俺に……」

男「俺に……どうしろって言うんだ……よ……」





──『先に、■きになったのは■■じゃないから』





男「……あ」

男「違う……」

男「まだだ……」

男「……まだ、俺には……」

男「……そうだよ」


496 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:46:43.81 ID:enymi4QR0
男「……アイツがいるんだ……」

男「俺のことを必要としてくれる……あの子が……」

男「俺はっ!」

──……さんっ……さんっ

男「……ん?」

男「あっ……もしかして……」

男「……これは夢だったのか……?」

……………。
………。


497 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:47:23.99 ID:enymi4QR0
──待合室

ゆさゆさっ!

看護婦「男さん、男さんっ!」

男「……えっ?」

……ピピピピピッ!

男「電話……?」

看護婦「さっきから、男さんの携帯が鳴ってますよ?」

男「ええと、う、うん……」

看護婦「大丈夫ですか? 目覚めてますか?」

男「あ、うん。もう、大丈夫」

ピピピピピッ……。

看護婦「なら、そろそろ電話出てあげたほうがいいですよ」

看護婦「この時間です。きっと緊急の用のはずですから」

男「ありがとう……出るよ」

看護婦「はい」


498 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:48:18.96 ID:enymi4QR0
ピッ。

男「もしもし……」

父親『男君かっ……!?』

男「は、はい……一体どうしたんですか?」

父親『今、君は母親の元に行ってるんだよなっ?』

男「そうですが……その」

男「多分、今週中には戻れると思います」

父親『……そ、そうなのか?』

男「……はい」

男「恥ずかしいことですけど」

男「一度回りきって……やっと大事なことに気づけたみたいです」

父親『そ、そうか……それは良かった』

男「で……あの、どうかしたんですか?」


499 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:48:46.63 ID:enymi4QR0
父親『いや、そのだな……実に言いにくいことなんだが』

男「はい?」

父親『……今の君に聞かせるのは、正直、心許ない……』

父親『だが、覚悟を決めてくれたのなら』

父親『今はもう、家族の一員である君に伝えるほかない』

男「……ええと」

父親『……実はだな』




父親『君がいなくなった後……妹が────────」




男「…………」


500 名前:     [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:48:51.64 ID:gMPl6TXB0
追いついた・・・


501 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:50:11.29 ID:enymi4QR0
ぽとっ……。

『男君……? 聞いてるのか、男君っ……!?』

看護婦「あ、あの……」

男「……ん?」

看護婦「その……ええと、携帯」

男「ああ」

看護婦「いいんですか? 床に落ちちゃって……」

看護婦「……その、相手先の方はまだ、お話が」

男「気にしなくていいよ」

看護婦「で、でも」

男「いいんだ。もう終わったからさ」

看護婦「……それなら、私は別にいいですけど」

男「それより、少し話を聞いてくれないか?」


502 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:51:04.25 ID:bNcLiRQc0
C


503 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:51:33.98 ID:enymi4QR0
看護婦「は、はい」

男「雨だったんだ」

看護婦「え?」

男「もっと早くに気づくべきだったよ」

男「俺とした事が、やっぱり、ミスをしてた」

看護婦「そ、その……一体……」

男「彼女の俺を呼ぶ声が聞こえた」

男「つまりいえば、彼女の声は俺に届いてた」

男「雨だったけどね」

看護婦「…………」


504 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:52:09.42 ID:enymi4QR0
男「ってことはだよ? 逆もしかりと言える」

男「俺の言葉は……その実、全部向こうに伝わってた」

看護婦「……あの」

男「やっちまったなぁ」

男「せっかく、思い出せたっていうのにさ」

男「本当に自分がやらなきゃいけないこと」

男「大切にしなければいけなかったこと」

男「それが全部、さっき、分かったはずだったんだ」

看護婦「…………」

男「でも、また、駄目だった」

男「失敗した。間に合わなかった」

男「また失った。無くした」

看護婦「……男さん?」


505 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:52:25.77 ID:enymi4QR0
男「今度こそ、綺麗さっぱり、俺は失った」

男「俺の生きる意味はもう……」

男「──ない」

看護婦「…………」

男「……はは、はは」

男「笑える。最高に笑えるよっ!」

男「なんて滑稽なんだっ!」

看護婦「これは……もしかして……」

男「く、くははっ」

男「くはは、ははははっ!」

男「ははははははははははははっ!」

看護婦「……だ、誰かっ!」

看護婦「誰か来てっ! こちらの方が──」

……………。


506 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:54:00.89 ID:enymi4QR0
──ふあふあする

──全ての枷が取り除かれたように……
   あたかも、風船のように空に飛んで行けるような、
    そんな気持ち

──世界は歪んでいき、滲んでいき……
   滲む? もしかして、俺は泣いてるのかな?

──でも、いいんだ

──だって、もう、終わりだから

──これで終わり

──何も出来ずにおしまい

──…………

──……なあ、親友



──また、俺たち二人が笑え合える日って、くるのかなぁ……



……………。
………。


507 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:54:32.57 ID:phjUxKjK0
しえん


508 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:54:57.63 ID:enymi4QR0
親友『そん時は……』

親友『一緒になって、笑ってやろうぜ』

男『……お前』

親友『俺だけじゃない。俺の妹も……』

男『…………』

親友『癪だから、お前には絶対言いたくなかったけどさ』

男『……ん?』

親友『先に、好きになったのはお前じゃないから』

男『……は?』


509 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:55:52.84 ID:enymi4QR0
親友『お前と初めて出会った時』

親友『悔しいけど、その時から、アイツはお前に惚れてんだよ』

男『そ、そんな……』

親友『…………』

男『……嘘だろ……』

親友『……本気で言ってんのか?』

男『…………』

親友『妹と仲良しの『お兄ちゃん』が言ってるんだぞ?』

親友『いいか、どうせ、お前はさ……』

親友『別れるって分かってるなら──』

親友『アイツに会っても意味はないって、思ってるんだろ?』

男『…………』

親友『でも、忘れないでくよ』


510 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:56:30.70 ID:bNcLiRQc0
支援


511 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:56:35.36 ID:enymi4QR0
親友『アイツは……今も昔も……』

親友『──『兄さん』のことが、大好きなんだから』

男『……っ』

親友『そう遠くない未来、戻ってこい』

親友『そして、想いをアイツにぶつけてやれ……』

男『……ああ』

男『……約束する……』

親友『よし、なら、もう俺から言う事はない』

親友『でも、早くしないと、他の誰かに奪われちまうかも知れんぞ?』

男『はは……よく言うよ』

親友『どうしてだ?』

男『お前なら、きっと覚えてるはずだ』

親友『……ん?』


512 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:56:59.96 ID:enymi4QR0
男『「どうすんだよ、逆に好きで意地悪するみたいな男子がいたら」』

親友『……あ』

男「頼むぜ、俺は信じてるからな?』

親友『……ふん……』

男『……言うぞ……』

男『……ふぅー……』

男『どうするんだよ、俺のいない間にアイツに寄ってくる男がいたら』

親友『…………』

親友『大丈夫。もし、そんなことがあったら』

男『どうする?』

親友『妹が必ず、俺に相談してくるはずだから』


513 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 03:57:33.21 ID:enymi4QR0
男『つまり、その時に──』








──そいつをボッコボッコにしてやろうっ!









514 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 03:57:55.36 ID:Wus5h5AB0
C


515 名前: 忍法帖【Lv=4,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:02:48.53 ID:gMPl6TXB0
みなのもの、伏線が解放されたぞ


516 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:16:11.56 ID:GVm7T4400
しえん


517 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:17:43.77 ID:enymi4QR0
………………………。
…………………。
……………。
………。







【──五年後──】








518 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:18:09.31 ID:enymi4QR0
女「……志望動機ですか?」

女「その、以前から貴社の評判を伺っておりまして」

女「このたびは、ええと……」

女「……え?」

女「本音を聞きたい?」

女「…………」

女「いや……はい、分かりました」

女「実は……」

女「前の会社で、嫌な上司にセクハラを受けまして」

女「それで、思わず……」

女「……はい」


519 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:18:29.54 ID:enymi4QR0
女「バチンって、頬を引っ叩いてしまいました……」

女「……いや、申し立てようとも思いましたが」

女「その人にも家庭があるし、子供もいたんで」

女「その……なんていうか、躊躇われちゃって……」

女「……家族ですか?」

女「家族は……もう、いません」

女「……はい」

女「い、いえ……気になさらずに……」

女「…………」

女「敗者の定義……ですか?」

女「……それは、何か、採用に関係が?」

女「あ、はい。分かりました」


520 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:19:18.29 ID:enymi4QR0
女「そうですね……」

女「敗者って……」

女「つまり、やりたくもないことをやらされている人ですよね?」

女「その中には、辛くて、でも、必死に頑張って苦労してる人もいるのに」

女「どうしようなく、もがき苦しんで……」

女「…………」

女「だから、とっても可哀想な人だと思います」

女「……すみません、幼稚な考えで……」

女「え?」

女「そうですか……それは、ありがとうございます」


521 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:19:45.74 ID:enymi4QR0
女「……敗者が抜け出す方法」

女「んー……これは少し、難しいですね」

女「……でもやっぱり」

女「こういう社会に生きている以上、犠牲は必要ですよね……」

女「みんなは幸せにはなれないから、誰かが苦労しないといけない」

女「……だから、可哀想だけれど」



女「私は、簡単に抜け出す方法はないと思います」




522 名前: 忍法帖【Lv=3,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:20:15.62 ID:rVDVaAVT0
新展開だ


523 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:21:41.31 ID:ModKMfe60
話がミエナイ


524 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:29:53.04 ID:enymi4QR0
──会社

男「…………」

部下「あ、部長」

男「どうした?」

部下「もう帰られますか?」

男「ああそのつもりだが……どうかしたか?」

部下「その、出来上がった資料を見て頂きたくて」

男「……んー、そうだな」


525 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:30:11.27 ID:enymi4QR0
男「本当は、今すぐにでも確認したいのだが……」

男「実は、今日は急ぎの用があるんだ」

部下「あっ、そうなんですか?」

男「すまん……明日の朝一でもいいか?」

部下「そういうことでしたら、全然構わないです」

男「悪いな……また明日」

部下「はいっ、お疲れさまでした」

……………。


526 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 04:30:44.22 ID:s3pU8+gL0
しえん


527 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:31:05.21 ID:enymi4QR0
男性「……あ」

男性「そこの君っ!」

男「ん?」

男「……って、社長じゃないですか」

男性「珍しいな、帰りが一緒になるなんて」

男「定時に帰るなんて久しぶりですよ」

男性「はは、私もだ」

男「じゃあ、また家で会いましょう」

男性「……ん、どうだろう」


528 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:31:46.56 ID:enymi4QR0
男「はい?」

男性「運転手付きの車に一度乗ってみたい気はないか?」

男「……それは、お誘いってことですね?」

男性「無論だ」

男「ならば、社長の誘いを断る部下はいませんよ」

男「もちろん、お供させて頂きます」

男性「ん、よく出来た返事だ」


529 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:34:41.96 ID:enymi4QR0
ってことで、今日のノルマ終了です。
予定では>>500以内を目指してたんだけど、ちょっとオーバーしちゃった。
遅くまで付き合ってくれた方、本当にありがとうね。
また明日来ます。

しかし……十八時ぐらいからぶっ通しで書いたから、
なんか、頭がおかしくなりそう。。
てか、今から寝て七時に起きられるだろうか……無理そうだな。


530 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 04:37:11.22 ID:w3Ds1NpQO
おつかれさまです。
みんなで保守するからゆっくり休んでください


531 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 04:38:03.72 ID:s3pU8+gL0


532 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:38:08.03 ID:rVDVaAVT0

頑張って保守しとくぜ


533 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:38:10.67 ID:l/aYGU9N0
保守は任せて寝てください


534 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 04:38:17.17 ID:ModKMfe60


535 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 05:05:34.13 ID:1J6MyEZG0
追いついた
泣けるぜバカヤロウ・・・


538 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 05:50:34.49 ID:uEgr7AyWi
やべえ俺の理解力じゃわからなくなって来た
妹=女なのか?
>>499で家出かなんかしたってことかな


539 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 05:52:24.94 ID:MFdW04m60
予想とかマジ要らないんで死んでください


543 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 07:00:21.08 ID:p+ptbNao0
5年後か。年はいくつになっただろう


552 名前: 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 09:02:31.28 ID:qVcHNtM20
ウルトラ保守


553 名前: 忍法帖【Lv=9,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 09:03:16.87 ID:1etLd3Z90
Lv6程度がウルトラとはな・・・


554 名前: 忍法帖【Lv=3,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 09:10:50.72 ID:w3Ds1NpQO
どれ


555 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 09:12:32.27 ID:qVcHNtM20
くっ・・・・Lv9だとっ・・・!
しかし、このスレへの思いは・・・誰にも負けん!!


558 名前: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 09:50:37.15 ID:zFHc4TyL0
ウルトラ保守ってのはこういうのを言うんだよ


559 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 09:53:07.20 ID:IT9yA0gii
ほしゅ!


560 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 10:00:14.92 ID:hXdNGf/Oi
今なら1時間ほっといても落ちないだろ


565 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 11:45:48.98 ID:qVcHNtM20
>>558が眩しくて生きるのが辛い・・・。


566 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 12:07:54.80 ID:rxKoF7B+0
なきそう


567 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 12:23:00.93 ID:phjUxKjK0


568 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 12:23:33.37 ID:Gm2cocmai
しかしせつないな
男にはなんとかして頑張ってもらわないと


569 名前: 忍法帖【Lv=9,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 12:34:51.18 ID:1etLd3Z90
俺ちょっと試験受けてくるけど
帰ってくるまでに落ちてたら許さないから


570 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 12:50:29.71 ID:mH3I8eQb0


571 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 12:57:03.08 ID:2JHfCrbo0
>>569
フラグ


577 名前: 忍法帖【Lv=5,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 14:02:17.57 ID:SgFrvwPy0
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内


578 名前: 忍法帖【Lv=1,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 14:20:23.94 ID:9vfDGnG90


579 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 14:20:49.39 ID:KgJD39jQO
>>577
これは言い過ぎ



584 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 15:12:50.12 ID:h1vjPlw90
この時間帯なら一時間近くは平気
心配なら45分ぐらいでおk


590 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 17:29:11.23 ID:rFBgyVdCO
あんまり頻繁に保守しすぎると続きを縮めかねないから気をつけないとな


591 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 17:35:00.49 ID:atZTTpTI0
けどそう言って余裕ぶっこいてたら落ちたスレがチラホラ


592 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 17:35:59.40 ID:5c4WqATTO


593 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 17:51:31.86 ID:M//f7Jmm0
じゃあ保守
続き楽しみにしてる


602 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 19:53:22.56 ID:aHcopNvq0
ハッピーエンドになるよな?!
ハッピーエンドなんだよな?!!
なぁそうなんだろ?!


603 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 20:11:17.62 ID:Li198jWS0
神スレになってた…
SSよりADV読んでる感じ。


606 名前: 忍法帖【Lv=8,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 20:55:30.21 ID:+XORChgb0
追いついた!しえん


607 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 21:04:29.44 ID:P31cXiJX0
うわぁ・・・なんなんだこの感覚は・・・



608 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 21:10:17.54 ID:6kykzZ1+0
ご飯食べてたらもう一つのいもスレ落ちてた…


609 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 21:10:25.53 ID:Li198jWS0


610 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 21:19:02.29 ID:rVDVaAVT0
>>608
好きですのやつだろ


611 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 21:19:22.20 ID:T9xxo1tK0
>>608
すまん、間に合わなかった


612 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 21:27:20.87 ID:N2vILtZi0
弟のスレも落ちてたな

弟「ボクおにいちゃんのオナホじゃないよう・・・・・・」ってやつ


613 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 21:35:48.05 ID:enymi4QR0
今帰った……ただ、ごめん。
少しだけ仮眠取らせて下さい。
明日は15時頃まで予定ないんで、起きたらぶっ通しで書きますね。
終われるといいなぁ。。


626 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/10(金) 23:02:15.57 ID:PEqaZEGk0
>>612
そのスレはまた立ったぞ


627 名前: 忍法帖【Lv=3,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/10(金) 23:03:38.57 ID:VTDe6T2iI
ほしゅ


628 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 23:05:05.41 ID:h1vjPlw90
もう少し間隔あけても大丈夫
30分ぐらいは保つ
心配でも20〜25分ぐらいでおk


629 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 23:06:13.04 ID:N2vILtZi0
>>626 今そのスレ見てるよ


635 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/10(金) 23:55:11.85 ID:VsPAcG8L0
一文字保守やめろ


636 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 00:09:07.38 ID:IMfduIzOI
保守!


637 名前:VIPがお送りします [age] 投稿日:2011/06/11(土) 00:17:48.11 ID:twUgxk9I0
やっと追い付いた…
神スレ支援
保守は俺たちに任せろ


638 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 00:31:08.91 ID:dr+Il1bhO
なんで一文字だめなの?


639 名前:() [] 投稿日:2011/06/11(土) 00:32:33.03 ID:pvckL3pM0
>>637
頼んだ・・・


647 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 01:33:15.30 ID:sD11h9Ta0
保守早いだろjk
最近は一時間でも落ちないから間隔あけろよ


650 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 02:42:28.56 ID:GF6t6hp70
>>647
レベル10が一気に増えてるから、じきにピーク時15分で落ちるようになるさ


651 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 03:10:41.05 ID:ppXhiq1A0
ひゃっはー


652 名前: 忍法帖【Lv=1,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 03:11:36.54 ID:RfdTxP7v0
お兄さんもいいけどお兄ちゃんも捨てがたい


661 名前: 忍法帖【Lv=9,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 05:49:52.33 ID:9Y1tpo3I0
久々に>>1がきちんと書き続けているSSスレ見た気がする


662 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 05:56:50.65 ID:gSORDqL50
仮眠のつもりがかなり寝てしまいすみまそん。。
今から、後半部分の詳細プロット作成します。
出来次第すぐに執筆の方に入らせて頂きまする。
もうしばらく、お時間下さい。


663 名前: 忍法帖【Lv=9,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 05:57:01.02 ID:mCom7pgA0
ホシュシュシュシュ


664 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 05:59:16.15 ID:mCom7pgA0
キタ━━━━(。A。)━━━━!!!!


665 名前: 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 06:13:36.09 ID:0xxoLgW80
きたああああああああああああ


666 名前: 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 06:16:19.63 ID:qLBHTrNl0
きたああああああああ


667 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 06:20:51.57 ID:ovTUF1LQ0
何年か前に妹を殺して乳を切り取ってタッパに詰めてた兄の事件があったけど
あれって結局どんな判決がでたの?


670 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:14:57.45 ID:gSORDqL50
──車内

男性「どうだ、最近の調子は」

男「おかげさまで順調です」

男「昇格した当初こそ、うまくいかないことも度々ありましたが」

男「今では、何とかやれているという実感があります」

男性「ふむ……それはいい兆候だ」

男性「社内でも君の評判はすこぶる良いし」

男性「今のところ、何の問題もないな」

男「ありがたい話ですね」

男性「……どうだ、あの話は考えてくれたか?」

男「……それは」

男性「君にとっては重圧かもしれないが」

男性「私は、それを成し遂げる才を君が持ち得ていると考えている」

男「……でも、いいんでしょうか」


671 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:15:26.09 ID:gSORDqL50
男性「何が問題だ?」

男「…………」

男性「引け目を感じる必要などないのだよ」

男性「結果も残しているし、誰も不満には思わないだろう」

男「会社の人間はそうでしょう……でも」

男性「……やはり、死んだ息子のことか」

男「……はい」

男性「それは、私が口に出来る範疇のことではないな……」

男性「……息子と君だけの問題だ」

男「…………」

男性「もうしばらく、検討していてくれ」

男性「出来るだけ前向きにな」

男「すみません、お時間を取らせてしまい……」

男性「いいんだ。今でも、君は十分にやってくれているよ」


672 名前: 忍法帖【Lv=3,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 07:15:46.64 ID:w94c/3mU0
見た瞬間きた


673 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:16:14.78 ID:JYPrOxip0
>>672
同じく


674 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:16:19.47 ID:gSORDqL50
男性「何が問題だ?」

男「…………」

男性「引け目を感じる必要などないのだよ」

男性「結果も残しているし、誰も不満には思わないだろう」

男「会社の人間はそうでしょう……でも」

男性「……やはり、死んだ息子のことか」

男「……はい」

男性「それは、私が口に出来る範疇のことではないな……」

男性「……息子と君だけの問題だ」

男「…………」

男性「もうしばらく、検討していてくれ」

男性「出来るだけ前向きにな」

男「すみません、お時間を取らせてしまい……」

男性「いいんだ。今でも、君は十分にやってくれているよ」


675 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:16:56.35 ID:gSORDqL50
男「……内緒です」

男性「社長の私にも言えないのか?」

男「ここからは、ただの息子と父の関係ですからね」

男性「それを言われると、強気に出れんな……」

男「まあ、後少しの辛抱です。すぐに分かる事ですよ」

男性「楽しみにしてるよ」

男「さて……そろそろ着きそうですね」

男性「ん、頭を切り替えんとな」

男「はい」

男「……ただ」

キキッ……。

男「……着きましたね」


676 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:17:24.18 ID:gSORDqL50
ガチャ……。

男「どうぞ、父さん。お降りください」

男性「はは、ありがとう」

男性「……で、今、何を言いかけたんだ?」

男「……その」

男性「ん?」

男「……そろそろ一年経ちますね」

男性「……あ」

男性「そういうことか……」

男「…………」

男性「分かっている……余り、考えたくはないがな」

男「はい……」

男性「……よし、開けるぞ? 心の切り替えはいいか?」


677 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:17:47.58 ID:gSORDqL50
男「……ん、大丈夫です」

男性「ならば問題ない」

ガチャン……。

男「ただいまぁー」

?「……あ」

たったったったっ……。





妹「お兄ちゃん、おかえりっ!!」






681 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:53:27.27 ID:gSORDqL50
──リビング

パーンパーンっ!

妹「うわっ……」

男「誕生日おめでとうっ!」

妹「お、お兄ちゃん……ありがとうございます」

父親「おめでとう」

母親「ふふ、おめでと」

妹「お父さん、お母さんも、ありがとう……」

男「しかし、今日は豪勢な料理だね」

父親「七面鳥の丸焼きなんて、ほんと久しぶりに見たな」

母親「この子も手伝ってくれたんですよ」

妹「ちょっとだけですけどね」

父親「なんだ、誕生日の本人も料理に参加したのか」

母親「もちろん、私はしなくていいって言ったんですけど……」


682 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:54:01.22 ID:gSORDqL50
妹「でも……やっぱり、悪いですから」

男「何だ、まだ家族に遠慮してるのか?」

妹「……だって、その」

母親「いいじゃない。私は凄く助かったんだから、ね?」

男「まあ、そうだけど」

男性「よし、早速、ご飯にしよう」

男性「おいしそうな料理を温かいうちに食べないと罰が当たるからな」

女性「そうですね……でも、その前に」

男性「ん?」

男「父さん、もう忘れてるのか?」

男性「あ……ああっ、そうだった!」

男「しっかりしてくれよ? ほんと、歳なんじゃないのか?」

男性「やかましい……」

妹「ええと……」


683 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:54:25.91 ID:gSORDqL50
女性「お父さん、早く」

男性「ん……妹、誕生日おめでとう」

妹「あ、はい」

男性「それで、家族の皆からプレゼントを渡したい」

妹「……えっ」

男性「私からはこれだ。色々、迷ったんだがな……」

妹「……あの、開けても?」

男性「もちろんだ」

ガサガサ……。

妹「……あっ……腕時計……」

男性「うむ。どうだ? 気に入ってくれたか?」

妹「は、はいっ……すごく、可愛いです……」

男「でも、歳の割には、ちょっと可愛すぎるかもな」

男性「……あっ……そ、そうか……」


684 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:54:50.63 ID:gSORDqL50
妹「お、お兄ちゃんっ! 大丈夫ですよっ! 全然、付けられますからっ!」

男性「それならいいんだが……」

女性「じゃあ、私からこれね……よいしょ……」

妹「お、大きいですね」

女性「うん」

ガサガサ……。

妹「最新型のフードプロセッサー!」

男「なんだよ、それ……」

父親「おい、自分のために買ったんじゃないだろうな……」

女性「違いますよ。この子、料理がとっても好きみたいだから」

妹「ありがとうございますっ! しかも、赤で可愛いっ!」

男「……思いの他、凄く喜んでるじゃん……」

父親「なんだ……そういうので良かったのか……」


685 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:55:09.90 ID:gSORDqL50
妹「うわぁ……夢広がるなぁ……」

男「……コホンコホン」

妹「……あ」

男「そろそろ、大トリの出番だな」

妹「お、お兄ちゃんも……?」

男「当たり前だろ。ほら」

妹「……ええと」

男「いいから開けてみろ。喜ぶかは保証出来ないけどな」

妹「う、うん」

ガサガサ……。

妹「……これ……もしかして……」

男「…………」


686 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 07:55:23.26 ID:gSORDqL50
……パカッ。

妹「…………」

女性「……指輪ね」

男性「あ、ああ……」

男「ど、どうだ? もしかして……気に入らなかった?」

妹「……ううん」

妹「わたし……凄く、嬉しいですよ……」

妹「うん……本当に……」

妹「…………」

妹「ありがとう……お兄ちゃんっ」


687 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 08:01:43.45 ID:9QOrtSMt0
しえん


688 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 08:21:43.55 ID:gSORDqL50
──会社

男「さて、今日も一日、必死に汗をかかなければならないわけだが」

男「業務連絡の前に、皆に伝えておくことがある」

男「……よし、こっちに来てくれ」

?「……は、はい……」

男「本日づけで、われわれの部署に新しいメンバーが加わる」

男「主な業務は私専属の秘書みたいなものだが」

男「君らが忙しく困ったときにも、雑務などを手助けてしてくれるはずだ」

男「では、紹介しよう」

男「……新しい仲間、女さんだ。みんな拍手」

パチパチパチ……。

女「これから、よろしくお願いしますっ!」


689 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 08:24:08.16 ID:gSORDqL50
──部長室

男「これが、今週中の私の予定表だ」

女「は、はい」

男「それと、今後のスケジュール管理は君に一存する」

男「何か問題や重複があった際には、その都度、私に聞いてくれればいい」

女「分かりました」

男「初めのうちは不慣れなことが多いはずだ」

男「だから、少しでも疑問が生まれたときには、すぐに私に聞くように」

女「了解です」

男「今の段階で、分からない事は?」

女「特に……ないですね」

男「よし、あとアポ無しの面談希望は基本断っていいからな」

女「あ、はい」

男「最近、本当に多いんだよ」


690 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 08:24:58.00 ID:gSORDqL50
男「このご時世だからこその、なりふり構わずの営業なんだろうが」

男「こちらからすれば迷惑この上ないのでな」

女「そうですね……」

男「あまりにもしつこい場合は、そのときに言ってくれ」

男「私の方で対処しておくから」

女「はい」

男「ん、まあ、こんなところかな?」

男「あとはもう、やってみない限りは分からないだろう」

男「私に聞きたいことはあるか?」

女「その……」

男「ん?」

女「す、凄いですね」

男「何がだ?」

女「私と面接のときから、お会いしていたじゃないですか」


691 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 08:25:14.79 ID:gSORDqL50
男「ああ。だから、君を採用した」

女「その時には、年齢も少し上ぐらいに見えましたし」

女「だから、ただの人事部の方だと思っていまして」

女「……まさか、部長さんだとは」

男「まぁ実際、かなり若いからな」

女「……その若さで部長ってことは、相当、やり手なんですね」

男「はは、違うよ。大きな声では言えないが……」

女「は、はい」


692 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 08:25:30.58 ID:gSORDqL50
男「実は、親の七光りなんだ」

女「……え?」

男「具体的には、父がこの社の社長ってこと」

女「そ、そうなんですか?」

男「だからはっきり言うと、ただのボンボンってやつだな」

女「……は、はぁ」

男「不甲斐ないところが多少見受けられるかもしれないが」

男「その時は、そういうことなんだなって、受け流してくれよ?」

女「わ、分かりました」

男「ん、なら、雑談は終わりだ。仕事を始めようか」

女「はいっ」


693 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 08:28:24.18 ID:gA7TRhRV0
さるよけ


694 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 08:32:44.38 ID:iK+Px+O1O
仕事中に読むんじゃなかった
なんか泣けてきた


695 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 08:46:48.08 ID:gSORDqL50
ちょい飯食ってる。書くの数分後から再開しますね。


701 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:22:05.32 ID:gSORDqL50
──車内

男「さて、月に一度の病院での検査だ」

妹「はぁ……」

男「気乗りしないか?」

妹「……そうですね」

男「いつも言っているが、やはり万全を期さないとな」

男「それは、お前も分かってるはずだろ?」

妹「はい……」

男「ん、ならいい」

妹「……お兄ちゃんは嫌になりませんか?」

男「嫌になる?」

妹「わたしは、この日が来る度に……」

妹「自分が未だ病気のままなんだって、再確認させられます」

男「…………」


702 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:23:05.10 ID:gSORDqL50
妹「普段は何の支障もなく、それこそ、楽しい生活を送っていて」

妹「だけど、やっぱり、今のわたしは本来の自分じゃなくて」

妹「……何年ぐらいになるんですか?」

男「ん?」

妹「わたしが昔の記憶を失ってから……合わせてどれくらいに?」

男「……約六年だ」

妹「六年……もですか」

男「…………」

妹「そんな長い事、思い出せなかった」

妹「何度繰り返しても、また、同じことの繰り返し」

妹「同じ場所を行ったり来たり……ただそれを永遠と」

男「違う。少しずつだけど、前進してる」

妹「そう思いますか?」

男「ああ」


703 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:23:30.24 ID:gSORDqL50
妹「わたしは今回も駄目な気がしちゃうんですよね」

妹「以前と確かに状況は違うみたいですけど」

妹「急激な変化があったわけでもないですし……それこそ」

男「考えすぎても駄目だぞ?」

妹「でも……」

男「ほら、俺があげた指輪」

妹「え?」

男「形にしたプレゼントを送ったのは初めてだ」

妹「…………」

男「そうやって、些細な変化が積み重ねって」


704 名前: 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 09:23:45.67 ID:rjyO1L230
ほしんぬ


705 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:23:53.66 ID:gSORDqL50
男「いつの日か、きっと前に進める日が来るはずだ」

妹「……そう願ってます」

男「ん……」

妹「…………」

妹「最後に一つだけ」

男「……何だ?」

妹「わたしが今感じてる感情は……」

妹「……昔のわたしも抱いていたんでしょうか……?」

男「…………」

男「……すまん」

男「……俺には分からない……」


709 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 09:38:51.08 ID:MhprJDp60
>>674てコピペミスかな
>>671と同じだし>>675の内緒です発言がなんのことなのかわからない


710 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:39:27.96 ID:gSORDqL50
──親友の部屋

男「…………」

男「……なぁ、親友」

男「お前に語りかけるのは、久しぶりだな」

男「とっくの昔にお前は死んじまってるっていうのに」

男「形見のカメラに向かって、こうやって語りかけている」

男「未練がましいというより……」

男「正直、端から見ると異常だな」

男「……でも、少しだけ」

男「自分でも分からなくなったんだ……」

男「俺の前回の選択は、明らかに間違いだったのかもしれない」

男「仕方ないと言えば、それで話は終わりなんだが……」


711 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:40:45.16 ID:gSORDqL50
男「あいつに……無駄な心配をさせてしまっている自分が嫌になるんだ」

男「妹がどんなに苦しくても、辛くても、悲しくても」

男「俺は、あの子の代わりをしてやることが出来ない……」

男「想像は出来ても、実際、どんなことを考えているのかは分からない……」

男「昔の、無駄に悩む癖に、決断はできなかった自分はとうに捨てたよ」

男「これが正しいと、例え、誤りでも前に進もうって」

男「この5年間、そう常に言い聞かせてきた」

男「けれど……」


712 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:40:57.78 ID:gSORDqL50
男「今回はやってしまったのかもしれない」

男「……俺だけが苦しむだけなら、幾らでも構わないんだ」

男「けど、アイツが……」

男「…………」

男「……やめた」

男「こんなことやっていても、どうにもならない」

男「親友は……もう、死んだんだ」

男「この世界に、心を委ねられる友は……」

男「一人もいない」


713 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:43:13.35 ID:gSORDqL50
>>709
ほんとだ……完全にミスってる。
以下を脳内補完して下さると助かります。


714 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:44:26.55 ID:gSORDqL50
>>674の置き換え部分】

男「……ありがとうございます」

男性「……ん、話を変えよう」

男性「それで、君は何を買った?」

男「え?」

男性「ほら、分かるだろ?」

男「あー、はい」

男性「高価なものか? 今なら十分な給与もあるしな」

男「はは、全てお見通しですね」

男性「会社の社長は私なんだぞ?」

男性「部下がどれだけ稼いでいるかは、大体、把握しているよ」

男性「特に君の場合は浪費癖もないし」

男性「口座の残高は見るときは笑いが止まらないだろう」

男「そんなことはないですよ」

男性「またまた……で、何を買った?」


715 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:47:01.18 ID:gSORDqL50
幸いにも話の重要な展開には関係のない部分でしたが、
今後も、そういったミスがあるかもしれません。

その都度、指摘して下さるとありがたいです。
よろしくお願いします。

>>>>709さん、ありがとう。


716 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 09:49:00.73 ID:bYIQ4pVn0
しえん


717 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 09:54:52.12 ID:inK3vjLT0
>>498でどうなったのか


720 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 10:24:00.23 ID:gSORDqL50
──部長室

男「……ふー」

コンコン……。

女「入ってもよろしいですか?」

男「ああ」

……ガチャ。

女「お茶を持ってきました」

男「気が利くね。ありがとう」

女「実はお茶とコーヒーで迷ったんです」

女「もしかして、後者の方が良かったですか?」

男「あー……うん、今度はそうして貰った方が嬉しいかな」

女「分かりました。お砂糖はいくつで?」

男「いらない。ブラックでいい」

女「了解です」


721 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 10:24:46.11 ID:gSORDqL50
男「……どうだ? 仕事には慣れたか?」

女「おかげさまで、一通りのことは何とか」

女「同僚の方もみなさん良い人たちばかりで、感謝してます」

男「そうか、それは良かった」

女「お仕事、大変そうですね」

男「ん……まあな」

女「今日、お昼休み取ってませんよね? 部屋から出てきませんでしたし」

男「ちょっと仕事の進行が遅れててな」

男「今後に支障をきたすから、早めにこなしておかないと」

女「そうですか? 部長は仕事が早いと、もっぱら噂ですよ?」

男「はは、これまた誰が持ち上げてくれたんだ?」

女「みんなです」

女「上が出来ると俺たち部下は大変だって」

男「そんなことも言ってるのか」


722 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 10:25:15.58 ID:gSORDqL50
女「ここだけの内緒の話ですよ」

女「だから、聞かなかったことにして下さいね?」

男「ふむ……内緒の話なら仕方ない」

女「ふふっ」

男「……そうだ、少し時間をもらってもいいか」

女「何でしょうか? 仕事の話?」

男「いや、ものすごく私事の話」

女「私事……」

男「少し女性の意見が聞きたくてな」

男「もしもだぞ、本当に仮の話なんだが……」

女「はい」

男「理由は分からないが、落ち込んでいる女性がいる」

女「……へ?」


723 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 10:25:57.09 ID:gSORDqL50
男「そんな女性を励ます時、一番、効果的なのはどんな手段だ?」

女「何かと思えば……ふふ、そうですねぇ……」

男「あくまでも、仮の話だからなっ」

女「その女性は部長とどんな関係なんですか?」

男「……まぁ、近しい関係であることは確かだ」

女「なら、何でもいいと思います」

男「おいおい、適当に流さないでくれ」

女「いや、本気で言ってますよ」

女「部長自身が励ましてやりたいって、元気にしてあげたいって」

女「そう思ってした行動なら、きっと」

女「彼女さんは、分かってくれるはずですから」

男「……そうなのか?」

女「女っていうのは、意外と単純なんですよ?」

女「男性の方の多くは、余り分かっていないようですけど」

男「…………」


724 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 10:26:17.25 ID:gSORDqL50
女「人と人の付き合いだからこそ、想いが大事なんです」

女「それは、異性同性問わず一緒のことだと思いますよ」

男「……そうか」

女「少しでも参考になりましたか?」

男「ああ、胸の中の靄が消えたようだ」

女「それは良かったです。じゃあ、これで」

男「ん、ありがとう」

女「はい。では失礼します」

男「……あ、そうだ」

女「何ですか?」

男「『彼女さん』じゃないからな」

女「……ふふっ」


727 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 10:48:48.50 ID:dr+Il1bhO
あれ?本当の兄じゃないって妹にばれたんじゃなかったっけ?


728 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 10:50:30.06 ID:bYIQ4pVn0
予想はつくけど黙ってるのがよろしくてよ?


731 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:20:09.31 ID:gSORDqL50
──妹の部屋前

男「…………」

男「……よし」

コンコン……。

妹「はーい」

男「俺だけど、入ってもいいか?」

妹「お、お兄ちゃん? 何の用ですか?」

男「ちょっと二人で話をしたいなって思ってな」

妹「え、ええと……」

男「それとも今日はやめた方がいいか?」


732 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:21:23.94 ID:gSORDqL50
妹「い、いやっ! そんなことないですっ!」

妹「でも、ちょっとだけ待ってて下さいねっ!」

男「それはいいけど……」

妹「すぐに終わりますからっ!」

ガサゴソッ!ガタンッ!バタンッ!

男「…………」

……………。


733 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:21:51.89 ID:gSORDqL50
ガチャ……。

妹「はぁ……はぁ……」

妹「もう入ってもいいですよ……」

男「う、うん」

妹「どうかしました……?」

男「凄くげっそりしてるけど、大丈夫か?」

妹「……色々、片付けたいものもありましたし」

妹「この際、良い機会でした」

男「そ、そうか……」

妹「はい。そこのベット座っていいですよ」

男「ありがとう」

妹「……で、話って何ですか?」

男「いや、特に決まった話題があるわけじゃないんだが」

男「少しお前と雑談でもしたいなぁって思ってさ」


734 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:22:17.75 ID:gSORDqL50
妹「でも、夕飯の時もしましたよね?」

男「二人だけじゃなかっただろ?」

妹「あ……はい」

男「どうだ、身体の調子は?」

妹「いたって健康です。お兄ちゃんも仕事の方はどうですか?」

男「順調……って、わけにはいかないなぁ」

妹「もしかしていじめられてたり……?」

男「はは、そんな学生時代じゃあるまいし」

男「ただここ最近は、仕事の量がいつになく多くてな」

妹「……大変そうですね」

男「楽しくはあるよ。充実してるっていう実感もある」

妹「流石、お兄ちゃんです」


735 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:22:55.01 ID:gSORDqL50
妹「あっ、そうだ」

男「ん、どうした?」

妹「お兄ちゃんに、わたしからも話がありました」

男「というと?」

妹「実は今日、久しぶりに服でも買いたいなって思って」

妹「日中、買い物をしに外に出てたんですけど」

男「ほう、いいじゃないか」

妹「それで、気に入った服が一つ見つかって」

妹「お店の方に『試着をなさいますか?』って聞かれたんです」

男「ああ」

妹「……その、この前の誕生日にお兄ちゃんから指輪貰いましたよね」

妹「だから、わたし、最近、いつも指輪をはめているんですけど」

妹「その時に、店員さんがわたしの指輪を見つけて……」

妹「『とても綺麗な指輪ですね。お似合いですよ』って」


736 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:23:29.98 ID:gSORDqL50
男「……うん」

妹「とっても、嬉しかったです」

妹「なんかここ最近、一番、幸せだった気がします」

男「そんなに喜んでもらえるとは、贈った俺も嬉しいよ」

妹「……お兄ちゃんは」

男「ん?」

妹「多分、わたしを励ましにきてくれたんですよね?」

男「……え?」

妹「大丈夫ですよ。わたしは、落ち込んだりしてませんから」

妹「今も毎日が、幸せですから」

男「お前……」

妹「『些細な変化が積み重なって』」

妹「『いつの日か、きっと前に進める日が来るはず』」


737 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:24:03.15 ID:gSORDqL50
妹「お兄ちゃんの言った通りです」

男「……そうなのか?」

妹「…………」

男「本当に、全く心配がないって言い切れるんだな?」

妹「……それは」

男「お前を見てるとさ、いつも頑張りすぎているような気がするんだ」

男「弱音を吐かずに、他人を心配させまいと必死になって」

男「端からは、何の問題もなく過ごしているようだけど」

男「でも……そんなわけ、ないじゃないか」

妹「……っ」

男「他の家族に言えない事でも」

男「俺は、お前の全てを受け入れてやりたい」

男「…………」

男「……そうだな」

妹「お兄ちゃん……?」


738 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:25:46.82 ID:gSORDqL50
男「『どんなに辛くても、苦しくても……』」

男「『悲しい時は、一緒に悲しんでやる』」

男「『泣きたい時は、一緒に泣いてやる』」

男「だから」

妹「……うん」

男「俺の前では隠さなくてもいいんだ。我慢しなくていいんだ」

男「……言うだけでも、少しは楽になるぞ?」

妹「……う……」

妹「…………」

妹「……あ、あのね……」

男「ああ」

妹「……本当は……怖い……」


739 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:26:27.45 ID:gSORDqL50
妹「怖くて、怖くて……」

妹「時には、気が狂っちゃうぐらい、恐ろしい」

男「……やはり……か」

妹「その中でも、寝る時が一番怖いかな?」

妹「朝起きて、もしもまた記憶を失ってたら……」

妹「そう考えたら、夜も眠れない……」

男「…………」

妹「ねぇ、お兄ちゃん……」

男「……ん?」

妹「もしも、明日」

妹「或いは、これから先」

妹「……記憶を失ったら、今のわたしはどうなるんですか?」

男「…………」

妹「死んじゃうの? 消えちゃうの?」


740 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:27:18.96 ID:gSORDqL50
男「……それは」

妹「怖いよ……本当に怖い……」

妹「今の自分がなくなっちゃうって……嫌だよ……」

妹「せっかく、指輪も貰ったのに……」

妹「こんなに毎日が楽しくて幸せなのに……」

妹「そうやって抱いた記憶も、感情も……」

妹「想いも……」

妹「全部、なくなっちゃうの……?」

男「……っ」

ぎゅっ……。

妹「お兄ちゃん……」

妹「明日が怖いよぉ……」


741 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:27:44.15 ID:gSORDqL50
妹「……失うのが怖いの……」

男「分かってるっ」

男「俺が側にいるからっ、守るからっ」

男「だから、だからっ!」

妹「……うん」

妹「……ありがとう、お兄ちゃん」

妹「…………」

妹「でも……」

妹「何となく、分かってる」

妹「……今回は、長く持った方だよね……」

男「……え……」

妹「わたしは……」

妹「もう……」


742 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:28:10.58 ID:gSORDqL50
男「……あ」

男「ああ……」

妹「…………」

男「……妹……?」

妹「……え?」

ぎゅっ!

妹「あの……」

男「いいんだ……」

男「……何も言わなくていいんだ……」

妹「……えっと……」


743 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:28:36.62 ID:gSORDqL50
男「…………」

妹「すみません……」

妹「こんなこと、失礼かもしれませんが……」








妹「──あなた、誰ですか……?」









744 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:28:50.93 ID:9QOrtSMt0


745 名前: 忍法帖【Lv=7,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:30:12.39 ID:oczKTHJr0
きついな


746 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 11:30:27.19 ID:lA7kLGWh0
>1は確実にSistersをプレイしているとみた!


747 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 11:31:23.18 ID:zeB/NCjK0
博士の愛した数式と同じパターン?

つらいな


748 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:37:18.33 ID:I6wWMcsI0
まじかよ...


749 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:38:24.07 ID:XoOADOjv0
記憶喪失モノって結末で評価変わるよな。
まあこの>>1はデキるから期待。


750 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:44:25.14 ID:AIttAxXC0
ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁおぉぁぁ。
支援保守。


751 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 11:50:05.79 ID:WxNsIMtfP
なかなかいい


752 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:00:43.97 ID:ppXhiq1A0
こんなのありかよおおおおお


753 名前: 忍法帖【Lv=9,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:05:11.72 ID:ywVsPdp80
あー俺一乃のパターンか。可哀想に。


754 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:09:34.64 ID:XtdyxoRhi
追いついた〜
と思ったら今一番良いところじゃないか〜


755 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:17:07.21 ID:ddUbfTkD0
おいついたー
efの新藤千尋と同じか、、、?


756 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:26:29.35 ID:xK5p5H590


757 名前: 忍法帖【Lv=1,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:26:42.06 ID:hGl6HCHL0
追いついた
>>743はどういう意味?


758 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:27:45.20 ID:cb4UStGF0
ksk


759 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:27:50.70 ID:ppXhiq1A0
>>757
また記憶を失くしたちまったんだよ


760 名前: 忍法帖【Lv=1,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:31:12.16 ID:hGl6HCHL0
>>759
なんで指輪のことは覚えてるの?
誰かに聞いたのか?
読解力なくてすまん


761 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:31:31.56 ID:gSORDqL50
──病院

男「…………」

男「…………」

男「考えろ、考えろ考えろっ」

男「次の方法だ……次の……」

男「……っ」

男「くそっ!」

……ガンっ!

男「どうしてうまくいかないっ!」

男「何が悪かった? 何をミスしたっていうんだっ!」

男「……くそ、くそ……」

男「…………」

男「……ふぅー……」

男「落ち着け……落ち着くんだ……」


762 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:33:27.61 ID:gSORDqL50
男「焦っても仕方ない……もう一度……」

男「今度こそは失敗しないぞ……」

男「…………」

ガチャ……。

男「……ん」

男性「……大丈夫か?」

男「俺のことはいいです……彼女は?」

男性「今、先生が検査しているところだ」

男性「まあ、毎度のこと、同じ結果だろうがな」

男「…………」

男性「……しかし、何度経験しても辛いものだな」

男性「ああやって、急に初対面の対応をされると……」

男性「……胸を締め付けられるものがあるよ」

男「……七回目」

男性「ん?」


763 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:34:04.46 ID:gSORDqL50
男「アイツが再度記憶を失うのはこれで、七回目ですよ……」

男性「…………」

男「初めてを入れれば、八回……」

男「……何も前に進む事が出来ていない」

男性「だが、今回はいつもより長かっただろ?」

男性「全く進んでいないとは、言い切れないんじゃないか」

男「そんなのたかが数ヶ月の違いですよ……」

男「しかも今回の場合、彼女を相当苦しませてしまった……」

男「……にもかかわらず、この結果です」

男性「……そんなに自分を責めるな」

男性「君がいたからこそ……あの子も約一年過ごせたんだ」

男「…………」

男「……あ……」

男性「どうした?」


764 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:36:27.69 ID:gSORDqL50
男「……『君がいたからこそ』か……」

男「…………」

男性「……何か、問題があったか?」

男「違います……もしかしたら」

男性「なんだ?」

男「……今までをもう一度、整理してみましょう」

男性「あ、ああ」

男「……彼女が二回目に記憶を失った時」

男「あれは俺のせいですが……妹は兄の死を知ってしまった」

男「そして、記憶を失った」

男性「そうだったな」

男「三回目から七回目までは、余り、変化もなく……」

男「一年も経たない程度で、まあ、長さに若干の違いはありましたが」

男「これまた、記憶を失いましたね」


765 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:37:51.21 ID:gSORDqL50
男「そして、八回目」

男性「…………」

男「彼女が約一年周期で、記憶を失っていることを本人に伝えました」

男「あえてその事実を隠さずに、アイツに認識してもらったわけです」

男「そのせいで、妹は日々を悩み続けることになったわけですが……」

男性「その代わり、猶予が伸びた」

男「でも、結果は同じ」

男「俺にとっては、余り大差はないです」

男性「…………」

男「だから、今度」

男「次は今までと全く変わった手段を取りましょう」

男「それが『急激な変化』になる……」

男性「……どうする?」

男「俺は家を出ます」


766 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:38:30.91 ID:gSORDqL50
男性「……なっ」

男「兄を偽るという前提……」

男「それを一旦、やめてみませんか?」

男「兄という存在を、今回は、無かった事にするんです」

男性「しかし、君は一度、会っているんだろう?」

男「その辺りは、うまく誤摩化してもらうことにして……」

男「今後はしばらく病院で生活してもらうようにしましょう」

男「その間に親友の荷物は一旦、違う場所に移して」

男「兄の存在がない家にしてから、彼女に普段の生活を送らせるんです」

男「ん……そうすれば、うまくいく」

男性「…………」

男「どうかしました?」

男性「……本当に意味があるのか?」

男「今は、分かりません……もしかしたら、悪い方向に進むかもしれない」

男性「なら……」


767 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:39:21.71 ID:gSORDqL50
男「でも、前に進むことを躊躇っていたら」

男「いつまで経っても、同じことの繰り返しです」

男「永遠に、彼女は元の記憶を取り戻さない」

男性「……それは」

男「はい?」

男性「それは、そこまで必要なことなのだろうか……?」

男「……どういうことです?」

男性「確かに、昔の思い出も全て思い出せば」

男性「私としても嬉しい事だ……だが」

男性「結局、あの子は現実で兄の死を受け止められず」

男性「自殺未遂を謀ったんだぞ……?」

男「…………」

男性「もし仮に、今後、記憶が戻るとして……」

男性「けれど、その時には……」

男性「あの子が自殺してしまう可能性が生まれてしまう」


768 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:40:20.09 ID:gSORDqL50
男性「親としては、それだけは避けたい」

男「……しかし」

男性「君の気持ちは理解しているつもりだ」

男性「だが、最近、私は思う……」

男性「一年毎に娘が記憶を失ってしまったとしても」

男性「別段、何の問題もないのじゃないか、と」

男「……それを彼女本人に言えますか?」

男「一年しか……いや、一年も生きられない、あの子に?」

男性「……もちろん、言えんよ」

男性「だが、生きていることに変わりはないだろう?」

男「…………」

男性「幾ら記憶を失おうとも、親の子に対する愛は消えたりしない」

男性「それにな……最早、私は、あの子より君の方が心配だ」

男「……はい?」


769 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:41:00.74 ID:gSORDqL50
男性「少し取り憑かれているんじゃないか?」

男性「勝手な私の見解だが、君は人生をあの子にために犠牲にしている」

男「……何を言うかと思ったら」

男性「…………」

男「『犠牲』?」

男「俺が、あいつの為に人生を無駄にしてる?」

男「そんなことありませんよ」

男「……というより、逆です」

男性「……逆?」

男「アイツがいてくれているからこそ、今の俺がいる」

男「生き恥晒しながら、生きていられるんです」

男「……もしも、妹が今後、死んだりなんかしたら」

男「そのときこそ、俺の死ぬときですね」

男性「……今までも、薄々感じていたが」


770 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 12:41:14.43 ID:gSORDqL50
男性「……君は少し異常だな……」

男「……かもしれません」

男「けど、今の俺にはアイツしかいないんです」

男「父も、母も、親友も失った今」

男「アイツだけが、俺をこの世界に繋ぎ止めてくれる」

男「大切な人たちを無意味に奪っていった、汚いこの世界からね」

男性「…………」

男「俺は諦めません」

男「仮に誰もが匙を投げたとしても、俺だけは決して」

男「──諦めない」


775 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 13:22:26.46 ID:F1thKTgt0
C
VIPのSSでこんな良い物が読めるとは…


776 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 13:32:22.28 ID:3Ik7gV6A0
追いついたぜ・・・ちくしょう・・・ハッピーエンドであってくれ・・・
全力で支援


779 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:06:50.74 ID:gSORDqL50
──部長室

男「…………」

男「……仕事が全く進まないな……」

男「あれからまだ一週間も経たないというのに、この調子か……」

男「アイツに会えないっていうのは……」

男「想像していた以上に辛い……」

男「……でも」

男「今度は、うまくいくような気がする」

男「今までとは違う、全く新しい試みだ」

男「……きっと、アイツも昔のように……」

男「根拠はないのに、そう信じてしまいそうだな……」

男「…………」

……………。


780 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:07:30.79 ID:gSORDqL50
コンコン……。

女「部長、失礼します」

男「……ああ」

……ガチャ。

女「コーヒーをお持ち……って、どうかしたんですか?」

男「……ん?」

女「その……」

男「……何だ?」

女「凄く辛そうな表情をしてましたよ……?」

男「……はは……そう見えたか?」

女「は、はい……」

男「……少しな、プライベードで色々あって」

女「もしかして……こないだ言っていた『彼女さん』のこと?」

女「うまくいきませんでしたか?」


781 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:08:24.38 ID:gSORDqL50
男「『彼女さん』じゃないよ……妹──」

男「……って……」

女「……妹?」

女「部長に妹がいたんですか?」

男「……話すつもりはなかったんだがな」

男「思わず、口走ってしまったみたいだ……」

男「……ほんと駄目だな……」

女「その……差し支えなければいいんですけど」

女「……少しお話を聞かせて貰えませんか?」

男「……それは」

女「私、思うんです」

女「時には、他人に話すってだけで」

女「気持ちが多少和らぐことが……誰にでもあるって」

男「……確かにそうだ」


782 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:08:56.24 ID:gSORDqL50
男「なら、少しだけ話させて貰おうかな……」

女「……はい」

男「……実のところ」

男「私には……いや、俺には妹がいるんだ」

女「そうだったんですか」

男「ああ……で、こないだ話した、落ち込んでいる子っていうのが」

女「妹さんだったんですね……」

男「その通り」

女「どうやって、励まそうと?」

男「話を聞いてやって、悩みを受け止めて」

男「それで一緒にそれを背負ってやる……的なことを言った」

女「……私は、凄くいいと思いますよ」

男「でも、結果は駄目だったんだよ」


783 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:09:38.90 ID:gSORDqL50
男「……何度も何度も、繰り返した」

男「時には遠ざけたり、辛く当たってみることにもした」

女「……ええと」

男「でも、そんな些細な変化じゃ何も生まれなくて」

男「逆に、悪化させてしまうこともあった」

女「…………」

男「だから、今回こそはうまくいくって思ってたんだけどな」

男「アイツには辛い思いをさせちゃったけど、仕方なかった」

男「最早……手段がなかったんだ」

女「……はい」

男「でも、結末は変わらない」

男「何度やっても、同じ事の繰り返し」

男「……けど、今度こそは……もしかしたら、ってね」

男「思わずにはいられないんだ」


784 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:10:20.08 ID:gSORDqL50
女「すみません……」

男「ん?」

女「途中から少し分からなくなってしまって……」

男「ああ、ごめん……後半、独り言のようになっちゃったな」

男「余り気にしないでくれ……今日の俺はどうかしてるから」

女「……でも、何となく分かりました」

女「部長は、その妹さんのことを凄く大切に感じていて」

女「掛け替えのない家族の一人だとか思っているんですね」

男「……家族、か」

女「私にも、昔、一人の弟がいました」

男「弟?」

女「すっごく、やんちゃな子だったんですよ」

女「いつも帰ってくると、服を泥だらけにして」

女「そのまま廊下に上がるもんだから、よく母に怒られていました」

男「……そうか」


785 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:11:27.47 ID:gSORDqL50
女「それに悪戯好きで、その対象はいつも私」

女「時には腹が立つこともされましたけど、今となってはいい思い出です」

女「怒られたときに、しゅんとする表情なんて」

女「とても愛らしくて……今でも懐かしくて……」

男「……君の家族は」

女「はい、死にました」

男「そうだった……面接の時にもそう言っていたな」

女「みんなで県境の山にキャンプに行く予定だったんです」

女「弟なんか、絶えず車内で、はしゃいでいて」

女「私は平常を装ってましたけど、内心は凄くわくわくしていました」

女「大好きな両親と愛らしい弟と」

女「テントを張って、近くの川で魚釣りをして」

女「夜はバーベキューでおいしいものを食べて、みんなで仲良く寝る」

女「そんな光景が、容易に想像できたから……」

男「…………」


786 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:12:08.54 ID:gSORDqL50
女「でも、高速を降りて二車線の県道を走っていた時」

女「居眠り運転をしていた対向車線の車がはみ出してきて……」

女「……一瞬でした」

女「大きな衝撃が一回……その後の記憶はありません」

女「気がついたときには、病院のベットで管という管に繋がれて」

女「……みんな、死んじゃったんです」

女「私だけを残して……そう、みんな……」

男「……ああ」

女「それから数年程、生きる気力が湧かない時期が続いて」

女「何度も、自分で命を断とうとも思ったんですけど」

女「その時に限って、弟の笑顔が浮かぶんです」

女「私より小さかった、あの子の笑い顔が頭から離れなくて……」

女「……それで思いました」

女「弟の分も生きよう。強く生きようって」

男「…………」


787 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:12:40.87 ID:gSORDqL50
女「すみません……なんだか急に私の身の上話をしちゃって……」

男「いや、いいんだ」

女「……余り他人に話したくない内容だったんだけどなぁ」

女「部長って、よく聞き上手って言われますか?」

男「はは、生憎、君が初めてだよ」

女「ならなんだろ……でも、部長と私って」

男「ん?」

女「もしかして、凄く似たもの同士なんじゃないですか?」

男「…………」

女「初めて会ったときから」

女「この人は……私と似てるな……って思ったんです」

男「……それはさ」

女「はい」

男「当たり前の話なのかもしれない」

女「……え?」


788 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:13:18.39 ID:gSORDqL50
男「俺も、君が話しやすいって感じているから」

男「だからこそ、秘書に採用したわけだしね」

女「……でも、それって」

男「実のところさ……俺もな」

男「両親がいないんだよ……」

女「え?」

男「だから、共感できるのかもしれない」

男「二人とも家族を失っているから、かな?」

女「……えっと」

男「ん?」

女「でも、部長」

男「何だ?」


789 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:13:38.48 ID:gSORDqL50
女「部長には、お父さんがいるじゃないですか?」

女「この会社の社長が……あなたの父親でしょ?」

男「…………」

男「……ぷ」

女「え?」

男「はははっ」

女「そ、その……」

男「駄目だなっ、今日の俺は本当にうっかりしてるよ」

女「……ええと、はい……」

男「この際だ。君に打ち明ける」

女「?」

男「社長と俺は血が繋がってない」

男「数年前に、養子縁組をしただけなんだ」


790 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 14:16:48.70 ID:pI7GpRNN0
私怨


791 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:20:55.62 ID:+wiaRLuJi
俺が支援するっていってるんだぜ?


792 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 14:25:49.02 ID:2EBC5XAv0
1000までに終わるのか


793 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 14:35:30.94 ID:Fw0mCaOK0
やっと追いついた


794 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:37:10.56 ID:JYPrOxip0
この本どこで売ってるの?


795 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 14:43:49.66 ID:q1JBljwb0
支援


796 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 14:45:47.53 ID:e8gPoDxw0
男×女とか誰得


797 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 14:47:50.10 ID:tsZvF8Ll0
>>796
ハーレムルートで俺得


798 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:53:52.70 ID:9+532KzN0
>>796
スレタイ1000回読み直せ


799 名前: 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 14:56:48.19 ID:guvevl4I0
資縁だな


800 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:02:30.79 ID:gd4x1XESi
なるほど、>>798でやっとわかったわ


801 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:10:17.36 ID:zmfcxbcp0
支援玉


802 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:10:42.34 ID:iK+Px+O1O
書籍化しないかな


803 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:11:39.17 ID:zd+o1xt8O
支援


804 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:31:03.19 ID:gSORDqL50
──飲み屋

女「……妹さんが記憶喪失?」

男「誰にも言うなよ? バレると色々厄介なんだ」

女「それは分かってますが、何でですか?」

男「恐らくだが……」

男「兄の死に自責を感じて、現実から逃避しているんだと思う」

女「……あー、はい……」

男「その内容について詳しくは俺も聞いていない」

男「今更、彼女の両親に聞くのは躊躇うよ」

男「なんだか、辛い過去を抉っているように思えるし」

女「…………」

男「どうかしたか?」

女「……いや、気にしないで下さい」

男「それで、俺は親友の代わりをすることにした」

男「……そこからは話した通りだ」


805 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:31:52.99 ID:gSORDqL50
女「大変ですね……」

男「昔はそう思ってたけどな……」

男「今は、アイツのためにやれることがあるだけ」

男「何もないより、随分気楽だと思えるようになった」

女「……そうですか」

男「俺にはもう何もないからさ」

男「大切な人はアイツを残してこの世にはいない」

男「でも、彼女がいるだけ、俺はマシなんだ」

女「……その」

男「どうした?」

女「部長の父親が亡くなって、お母さんが病に倒れて」

女「その間、部長は何をしていたんですか?」

男「……お袋が入院したのは、田舎に戻ってすぐだから」

男「同級生が高校に通い始めたぐらいから、ずっと働いていた」


806 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:32:33.19 ID:gSORDqL50
女「医療費を稼ぐ為に?」

男「ああ……初めのうちは大変だったよ」

女「……じゃあ、部長」

男「うん」

女「その時からずっとですか?」

男「何がだ?」

女「……誰かのために生きていることです」

男「それは……」

女「この長い人生の中で……」

女「部長が自分のためだけに、何も考えずに過ごしていた時期って」

女「中学までの、そのたった短い間だけだったんですか?」

男「…………」

女「それって……」

男「異常か?」

女「……はい」


807 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:33:04.02 ID:gSORDqL50
男「はは、彼女の父親にも言われたよ」

男「『……君は少し異常だな……』ってね」

女「…………」

男「でも、俺には分からない」

男「それが当たり前だったし、今まで疑問を感じた事すらない」

男「自分のためだけに日々を過ごすっていうのは、俺の価値観にそぐわない」

女「……普通の人はみんな自分のために生きてますよ?」

男「そうなのか?」

女「え、ええと……」

女「それで……今、妹さんは?」

男「今度は、一旦、距離を置く事にした」

男「死んだ兄を偽っても無理ならば、存在自体無かった事にすればいい」

男「今回はそれでやってみる」

女「……その、一つ気になることがあるんですが」

男「何だ?」


808 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:33:43.56 ID:gSORDqL50
女「それで、部長はいいんですか?」

男「……ん?」

女「妹さんは一年ぐらいの周期で記憶を失うんですよね」

男「そうだ」

女「今回の方法で、仮に妹さんがそうならなかったとします」

女「でも、前の記憶を取り戻さないままだったら……」

女「……部長、あなたは彼女と今後、会えませんよ?」

男「それが、何か問題か?」

女「…………」

女「……問題ですよ」

男「どうして?」

男「俺の中で、最優先なのは妹が過去を思い出す事」

男「けれど、それが叶わなくても」

男「記憶の存続が一年周期っていう縛りさえなくなれば」

男「かつてのアイツは戻らないが、彼女は第二の人生を始めることが出来る」


809 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:34:04.51 ID:gSORDqL50
男「何の問題はない」

女「……部長が妹さんに会えなくても?」

男「そうだ」

女「…………」

女「……やっと分かってきました」

男「ん?」

女「常に誰かのために生きてきて」

女「他のことを考える暇もなく過ごしてきた、あなたは……」

女「自己犠牲なくしては、生きられない人間になっているんです」

男「……自己犠牲って……そんな大層もんじゃ……」

女「なら、妹さんが今後、亡くなったら?」

女「もしかして、その時は一緒に死のうなんて思ってませんか?」

男「……それは」


810 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:34:57.57 ID:gSORDqL50
女「自分を犠牲にして、誰かを救う状況がなければ」

女「自分の生きる意味すら見失ってしまう」

男「………」

女「今日、私と部長は似たもの同士だと言いましたが」

女「……全く内面は違いますね」

男「……そうか」

女「こんなこと言うのは、大変失礼ですが……」

女「記憶を失い続けている妹さんのためにも言わせて下さい」

男「……アイツのため?」


811 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 15:35:26.36 ID:bYIQ4pVn0
しえん


812 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 15:35:44.03 ID:lA7kLGWh0
くそう!目から汁が・・・


813 名前: 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:36:56.43 ID:7HzmRhPH0
昨日ポカリ飲み過ぎたせいか目からポカリが


814 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:38:37.08 ID:ASuN34CZO
さっきから汁がにじむんだが、
このスレにはこの曲が必要なようだな

http://www.youtube.com/watch?v=Wb5_oplH4tM


815 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:40:38.38 ID:gSORDqL50
女「あなたには……自己ってものがないです」

女「中身が空っぽというか……空虚なんです」

女「だから──」

女「そんな部長は、彼女の近くにいてはいけない人間ですよ」

女「だって……そこまでして妹さんは救ってもらいたくないから」

女「自分を犠牲にしてまで助けて欲しい……なんて」

女「彼女は少しも望んでないはずですよ?」

女「妹さんを救うとか、救えないとか、その前に……」

女「……部長には今一番にやるべきことがあるんです」


816 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:41:02.44 ID:twUgxk9I0
またまた支援


817 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:42:18.94 ID:gSORDqL50
女「自分が何をしたいのか」

女「自分の望みは何なのか」

男「…………」

女「それを確認しなければいけません」

女「……それも、無理なら……」

妹「…………」

女「……きついことを言いますが……」

女「部長は妹さんの元を去った方がいいです」

女「そうすれば、きっと、誰も傷つきませんから……」


818 名前: 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:43:06.41 ID:7HzmRhPH0
!? 妹いつのまにw


819 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 15:47:00.79 ID:Sh6Ihs570
今日の分やっと追いついた

支援


820 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:47:25.83 ID:7W/zIqGm0
>>814
ないた


821 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:55:32.87 ID:gSORDqL50
>>818
うわぁぁぁぁぁぁ!? 大事な場面でやってもうたっ!!!

そんなわけで、すみません。ここまでです。
これから外出するんですが、今日は家に帰れないと思うので、
再開は明日の昼ぐらいからになってしまいます。
本当に申し訳ない。。

あと、残りスレじゃ書ききれないと思いますし、
焦って展開を早めるのも嫌なんで、
最悪の場合は、SS速報をお借りしたいと思います。
出来れば、どなたか、立ててくれると嬉しいです。
すみません、急ぎにて、これで失礼させて頂きます。

ではまた。

追記:ペース的にも、多分明日、完結すると思います。


822 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 15:56:51.04 ID:lA7kLGWh0
>>821
SS速報ってどこ!?
道先案内だけしてほしぃーですぅー!!!

今晩は寝られない;;


823 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 15:58:08.45 ID:twUgxk9I0

後は俺たちに任せろ


824 名前: 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 16:04:57.73 ID:2aWJEUkK0
誰かのために生きてこの時が全てでいいでしょう


825 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 16:15:15.93 ID:RfdTxP7v0
明日まで残ってたらいいんだが


826 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 16:21:54.63 ID:+wiaRLuJi
切ないじゃないか・・・


827 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 16:29:07.43 ID:M8Wrn2pr0
ん?SS速報って製作速報とは違うのか?


828 名前: 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 [] 投稿日:2011/06/11(土) 16:29:51.87 ID:HmQThnSI0
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/


829 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 16:42:13.78 ID:JYPrOxip0


830 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 16:47:16.72 ID:zeB/NCjK0
支援

まじ支援


831 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 16:48:19.30 ID:zeB/NCjK0


また、いいところで終えやがって・・・このSが


832 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 17:09:21.15 ID:oSQmb6vZ0
土エス乙。


833 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 17:35:10.37 ID:twUgxk9I0
必要ないかもだけど保守


834 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 17:57:45.54 ID:twUgxk9I0
>>821
連投スマソ

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307782586/
立てておいたけど、落ちてたらゴメン


835 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 18:34:46.27 ID:ppXhiq1A0
じゃあこっちは落とすの?保守


836 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 18:35:18.50 ID:iK+Px+O1O
このSSだけは最後まで見たい
見たいんだ


837 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 18:35:22.89 ID:twUgxk9I0
>>835
ね、残しておきたいところ


838 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 18:37:08.12 ID:X+H+Xlzxi
最近1000で終わらせられるssってみたこたない
見る方も書く方ももう少し考えればいいのに


839 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 18:46:59.95 ID:wi6zvQ+U0
4日飯抜きの>>67は無事なのだろうか


840 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 19:01:37.83 ID:KQ1X+esk0
水分はとってるんだし死んではいないと思うが


841 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 19:26:24.17 ID:sD11h9Ta0
一週間ぐらい飲まず食わずなら死ぬ
……まだ大丈夫だな


842 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 19:49:09.69 ID:lug8SOrO0
漂流してた人で筋肉なら水分が分泌されて数週間生き延びた人がいるらしいな


843 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 20:09:37.98 ID:1dEkiAsw0
支援!!
最後まで絶対見届けるからな!


848 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 21:41:49.65 ID:wOzBemVrO
完結がとても待ち遠しい


849 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 21:56:30.04 ID:XoOADOjv0
取り敢えずここ読んでる人いるかもしれんから保守


852 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 22:34:07.13 ID:Hmt1re+N0
お前らよく保守しててくれたな
落ちてないか心配だったんだ。ありがとう。


853 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 22:39:39.97 ID:0FNaWxu80
ごめん、>>834てどこの板?
iPhoneのアプリで見たいんだけどどこか分からなくて


854 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 22:41:31.67 ID:XHJN508a0
>>853
外部板を追加


857 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/11(土) 23:07:14.61 ID:0FNaWxu80
>>854
ども


861 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/11(土) 23:58:04.00 ID:Ox+ounplO
夜勤中だが続き気になって仕事にならねぇ…


866 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 00:41:06.37 ID:xYfhX+LS0
>>834があるから保守いらなくないか?


867 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 00:42:38.82 ID:7j3+vbfw0
>>866
勝手に立てたスレだから微妙かもしれん


868 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 00:49:29.72 ID:NwC9wBJUO
1がそっちに気付かず保守しなくて落ちたらあれだし


869 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 01:05:18.07 ID:PoLobiYq0
とりあえず1の確認待ちだな


874 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 02:02:50.78 ID:weONuu7Q0
まだあったか
スレ乱立してるから怖い


875 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 02:22:28.83 ID:+E/Kk87J0
一気に読んだ


876 名前: 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/12(日) 02:43:19.23 ID:FaqdY5Lu0
てか別に残さなくてもいいのでは?
SS速報に新しく立ってるし・・・・・











とか言いつつ残そうとしてしまう・・・・保守(?)埋め(?)


877 名前: 忍法帖【Lv=5,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/12(日) 02:55:00.44 ID:WIv40LHA0
>>1が見る前に落ちると次スレ混乱しそうだしな。
極力残そうぜ


884 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 05:04:48.72 ID:/uB7PJDD0
BB2Cでみてるんだが外部追加にURLいれても追加できない
続きがみれなきなるorz


888 名前: 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/12(日) 05:43:10.22 ID:GZ3n0/140
>>884
説明を見ろよ


911 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 12:51:34.16 ID:weONuu7Q0
>>1は確認できたんだろうか


912 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 13:02:07.04 ID:Y1lkmM6h0
はやく


913 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 13:10:59.29 ID:SdEXgJVM0
もう保守だけで埋まりそうだし、さっさと埋めてSS速報で待てばいいんじゃね


914 名前: 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [] 投稿日:2011/06/12(日) 13:12:22.24 ID:Erq7jw4+0
>>913
お前のID超惜しいな


915 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 13:20:15.06 ID:HIOIB7jx0
C


916 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 13:22:21.50 ID:SdEXgJVM0
>>914
ほんとだな。
つまりいつもいいところで失敗するって意味なんだろうな


917 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 13:34:33.40 ID:1mCLfLit0
>>916
で、リアルは実際どうなんだ?


918 名前: 忍法帖【Lv=9,xxxP】 【東電 71.0 %】 [] 投稿日:2011/06/12(日) 13:52:47.56 ID:NBnJxbxHi
VIPが好きです。


919 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 13:59:15.14 ID:SdEXgJVM0
>>917
察しろよ
言わせんな恥ずかしい


920 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 14:01:55.67 ID:HIOIB7jx0
続きが気になりすぎてバイト行けないんだがwwwwww

休んだらてんちょに掘られる…


921 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 14:11:08.02 ID:YzbY3+600
続きはリアルタイムに拘らなければいつでも見られる
掘られたら、それは一生の思い出になる


922 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 14:11:12.89 ID:uUkhsEySO
掘られてこい


937 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 17:08:03.52 ID:HIOIB7jx0
ぐわわわ
バイトさぼっちまったおwww


とりあえずC


938 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 17:08:48.70 ID:1mCLfLit0
>>937
掘られる道を選んだか・・・


939 名前: 忍法帖【Lv=9,xxxP】 [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 17:27:33.54 ID:Dmu0/dft0
>>1が確認してくれるまでは残しとかないと


940 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 17:40:38.10 ID:j52k7FgG0
みなさん、保守ありがとう。
>>834の方も、立ててくれてありがとう。。

二日酔いですが、ぐっすりと寝させて頂きました。
今から書き進めて行きますね。
残りスレを消化した次第、SS速報のスレに行きたいと思います。

というより、SS速報の方にも一緒に投下してくんで、
どっち見てもらっても、構わないです。
それとも、こっちは落とした方がいいのかな?


941 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 17:42:40.91 ID:Sl/vT0cr0
中途半端だからこっちは埋めたほうがいい希ガス


942 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 17:44:25.35 ID:qAcLfof60
こっち埋めるの?


943 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 17:46:14.70 ID:kkOjQTCj0
埋めて向こうで書いてくれ


944 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 17:47:36.16 ID:qAcLfof60
じゃみんなで埋めようか


945 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 17:48:06.45 ID:j52k7FgG0
了解です。
向こうで書き進めますね。

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307782586/
続きは次スレになりますので、
みなさん、よろしくです。


953 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 17:54:37.71 ID:kkOjQTCj0
>>1000なら妹は俺の嫁


954 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 17:56:35.97 ID:qAcLfof60
妹は俺の嫁と言いたいとこだが妹は男の嫁だろ


959 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 17:59:17.37 ID:j52k7FgG0
梅参加


969 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 18:03:07.22 ID:qAcLfof60
向こうはまだ書いてないねwまだかな楽しみだ


978 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2011/06/12(日) 18:06:54.16 ID:+vm8K1tC0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307782586/


983 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 18:08:25.95 ID:j52k7FgG0
>>1000なら、なぜか作者逃亡。


1000 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2011/06/12(日) 18:18:30.93 ID:j52k7FgG0
>>1000なら、みんな嬉しいハッピーエンドっ!


次スレはこちらです。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307782586/



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