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詰めジャンル「抜くや抜かざるや」
- 262 名前:VIPがお送りします。 [sage]
投稿日:2008/02/08(金) 01:28:47.76 ID:/qZqOaA00
撫でた所と同じ箇所の病が治るという賓頭盧( びんずる)さんの木像。
本堂の脇でかわりに刺さっていたのは伝説の剣。
放っておけば参詣者が賓頭盧さんを撫でられないけど、像を介した接触感染は防げるか。
そう思っていたら伝説の剣によく似た人がつるりと剣を撫でて行った。
- 263 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 01:36:07.32 ID:/qZqOaA00
伝説の剣、抜けるのは世界にたった一人だけ。
この剣が教室に刺さっている限り、生徒たちは抜き打ちテストに怯えることもない。
とはいえ他人の安穏の中に恐慌を持ち込んでみたくなるのが人のさが。
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 264 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 01:43:12.94 ID:/qZqOaA00
爆発まで残り五分。
抜くべきコードは赤い方か、それとも伝説の剣の方か。
今までのパターンからするに迷うまでもなく剣の方が正解だろうが
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 265 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 01:46:09.22 ID:/qZqOaA00
駅前の大海、違法駐輪。
神が自転車を創ったとは聖書に書かれていない。つまり神は自転車に乗って世界を創ったのだ。
よってこの海はいくら神に祈っても割れることはなく、モーセたちも駅前で足止め状態。
海中に刺さっているあの剣は、自転車と一緒に間違って撤去されることでも期待しているんだろうか。
- 266 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:11:59.00 ID:/qZqOaA00
散歩中、煙草はないかと大統領がすっと手を出してきた。
ないと言ったら、じゃあ伝説の剣があったらちょっとくれないかと気安く催促。
ちょうど手を下ろした位置に当たる伝説の剣。うっかり、どうぞと抜いて渡してしまうところだった。
二人を点字ブロックの上に正座させ、煙草の害について小一時間ほどみっちり講習。
- 267 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:14:01.72 ID:/qZqOaA00
ランドセルにささっている定番アイテム、定規と縦笛。そして始まる下校チャンバラ。
一人だけ武器をとらぬ少年がいると思ったら、そのランドセルにささっていたのは伝説の剣。
抜けないのならランドセルごと振り回せば一番の攻撃力になるのにと、
家臣に背負われた竹千代の分析はやはり冷静だった。さすがはのちの東照権現。
- 268 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:15:47.12 ID:/qZqOaA00
この雪がいつまでたってもやまないのは、雪の小箱に剣が刺さって蓋を閉めることができないから。
和傘をちょいと斜(はす)に傾けて、箱を手に困り顔のうつた姫。
こうも雪がやまないと誰を殺そかかえって迷うと、なぜか人の顔見て婉然と笑む雪女郎。
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 269 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:19:10.38 ID:/qZqOaA00
つぼみがほとんど固いままなのは、さほ姫が桜の唄をうたわないから。
喉に伝説の剣が絡まりいがらっぽくてどうにも声が出ないらしい。
春が桜を待っている。この剣を抜けるのは世界にたった一人だけ。
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 270 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:24:38.11 ID:/qZqOaA00
今年の異常な冷夏は、群青の絵筆が伝説の剣の柄になっていて空を塗ることができないから。
それなのにつつ姫ときたら昼寝しやすくてちょうどいいやとうそぶく始末。
このままでは秋になって新鮮な食料の値段が高騰するかも。
嗚呼、この空、塗るや塗らざるや?
- 271 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:26:39.73 ID:/qZqOaA00
十二月半ばを過ぎても山がまだ緑のままなのは、紅葉の錦に伝説の剣が通り、織り進めないから。
織り機の前でたつた姫は杼(ひ)を弄びながら月を仰いで詩を吟じている。
紅葉がなくても秋の二大のもう一方、名月は無事なんだから別に放っておいてもいいような。
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 272 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:29:19.51 ID:/qZqOaA00
炎天下のコンクリートに伝説の剣が刺さって金(かな)臭く焼かれていた。
隣りにはプレートアーマーフル装備の騎士が鎧に焼かれて転がっている。
二人とも日本の夏をなめていないか。
おもしろいので如雨露を持ち出し、一滴ずつかけては蒸発するさまを楽しんだ。
- 273 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:35:49.25 ID:/qZqOaA00
かつては同じ高さで刺さっていた伝説の剣を追い抜いて、
恐れを知らぬ勢いで夏を駆け抜けて育つ竹の子たち。
語り合う相手もいないまま、
剣は秋を迎えようとしていた。
- 274 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:39:03.83 ID:/qZqOaA00
サミット後の集合写真、首相の立ち位置にささっていたのは伝説の剣。
大統領がちゃっかり剣と肩を組み、伝説の重みを我が物にせんと企んでいる。
首相の立ち位置がない以上、右上別枠扱いは確定だけど
どうせ毎度毎度一行の中で一番しょぼくれて写るんだから、剣を抜いてやる必要もないだろう。
- 275 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:42:31.78 ID:/qZqOaA00
血のつながっていない伝説の剣が刺さっていた。
義母義妹、義姉に興奮する程度の奴ならばあるいは後先考えず抜くかもしれないけれど、
ようするに姑・小姑のことじゃんと指摘してやったとたん、大統領が悲鳴をあげた。
選挙の前に夢から覚めてよかったね。
- 276 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 02:46:55.40 ID:/qZqOaA00
順調に走っていたバスが急停車。
窓の外を馳せる忍者を呑気に追っていて油断した。
椅子の肩についている手すりに慌てて掴まりほっと一息。
ふと上を見ると、吊革のかわりに伝説の剣の柄が握りやすげにぶら下がっていた。
- 277 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:25:28.19 ID:/qZqOaA00 BE:1615992678-2BP(5938)
いつもよりはるかに重たい数値を示す体重計、見ればちゃっかり刺さる伝説の剣。
こいつを抜かねば真の体重はわからない。
でも抜けば真の体重がわかってしまう。
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 278 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:26:53.79 ID:/qZqOaA00
二番穂もすっかり枯れて真白になった田んぼの脇に伝説の剣が刺さっていた。
用が済めば案山子は抜き上げ、供養するのがこの一帯の風習と聞く。
でもこの剣を抜けるのは世界にたった一人だけ。
餌の乏しい冬の烏が遊びがてらに群がっているので、放っておいても別にさびしくはないだろう。
- 279 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:29:45.59 ID:/qZqOaA00
名水を汲み上げようとポンプを押したとたんに感じた、いつもと違う妙な手ごたえ。
調べてみるとあと一押しで伝説の剣が汲み上げられるところまで迫っていた。
うしろには名水を汲もうとポリタンク持参の行列が。
嗚呼、この剣、汲むや汲まざるや?
- 280 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:32:35.14 ID:/qZqOaA00
百人一首も達人レベルとなれば札を取るというより反射的にはじくもの。
でも今回ばかりは自分が素人なのが幸いした。札にかわって場に刺さっていたのは伝説の剣。
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの あふこともがな
いや、二度と遭いたくないんだけど。
- 281 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:33:46.26 ID:/qZqOaA00
天浮橋でイザナギとイザナミが途方にくれていた。
天沼矛のかわりに伝説の剣が刺さっていて二人では手にとることもできず国産みを始められないのだ。
このままでは日本終了のお知らせ以前に何一つ始まりすらしないじゃないか。
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 282 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:37:19.03 ID:/qZqOaA00
京の五条の橋の上、あと一本で千本の悲願達成、武蔵坊弁慶。
しかしなんという運命のいたずらか、千本目こそはかの名高き伝説の剣。
抜きたくないのはいつものことだけど、弁慶の方から絶対に俺が抜くから邪魔するなと言ってきた。
周囲を跳ねる鬱陶しい出っ歯を暇なので川に突き落としてやると、ユリカモメが驚いて飛び去った。
- 283 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:41:39.90 ID:/qZqOaA00
塩田に海水がぶちまけられていた。伝説の剣はといえばちゃっかりその水分とすりかわっている。
ということは海水から剣を抜かなければ天然塩は得られない。
でもこの剣を抜けるのは世界にたった一人だけなので、蒸発を百年待っても無駄なこと。
しょぼくれる太陽を嘲った木枯しは、滝に行き当たってすごすご引き帰していった。
- 284 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:43:19.34 ID:/qZqOaA00
部屋に戻ると伝説の剣が主づらして座敷わらしを威圧していた。
今にも泣き出しそうな眼でこっちを見るな座敷わらし。
そもそもお前ら、怪力乱神の分際で人間さまの人生に干渉しようたぁ生意気な。
もっとほかにやるべきことはないのかと、二人まとめてお説教。
- 285 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:46:08.97 ID:/qZqOaA00
蚊が鬱陶しいのでキンチョールを掴んだものの、ふと嫌な予感がして振ってみた。
思った通りこの手に伝わる感触は中で液体がゆれるものではなく、伝説の剣が引っかかっているもの。
剣が霧状になって出てくるのか、そのままにゅるりと出てくるのかは気になるが、
ここはぐっと我慢の子。
- 286 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:52:15.33 ID:/qZqOaA00
崖の上から落ちてくるものを待ち受ける無数の白い腕。
その中にまじって伝説の剣が刺さっていた。
白い腕たちが値崩れで出荷されずトラクターで轢き潰されたあとも剣だけが一人さびしく刺さったまま。
どんなに仲間のふりをしてもしょせん剣は剣。いつも最後は一人ぼっち。
- 287 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:56:18.12 ID:/qZqOaA00
大きいつづらか伝説の剣、どちらかどうぞと雀に言われた。
そんなことを言われたって大きいつづらには魑魅魍魎が詰まっていると知っているんだから
結論は一つしかないだろう。
汝の宝を天に積め。イエスの教えに従って、大きいつづらをその場で開けて剣の上から被せてやった。
- 288 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 03:59:03.21 ID:/qZqOaA00
ある晴れた昼さがり。市場へと続く道を荷馬車がごとごと、伝説の剣を乗せて行く。
売られていくのがわかるのだろうか、刀身は悲しみをたたえ鈍く光っている。
荷馬車に並んで歩きながら、伝説の終焉を格調高く歌い上げる吟遊詩人。
いや。別に助けようとは思わないから。好事家に秘蔵されてオブジェとして余生を過ごせば?
- 289 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:01:31.40 ID:/qZqOaA00
冬の間の池普請。水を抜いてごみと泥をさらう予定が、満々と満たされていたのは伝説の剣。
この剣を抜けるのは世界にたった一人だけ。
このままでは工事が始まらないけど
小春日の剣上をまどろむ鴨とアヒルを見ていたら、それもいいかと思えてきた。
- 290 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:02:54.78 ID:/qZqOaA00
幽霊に伝説の剣が刺さっていた。実体のないものに刺さるとはなんという厨設定。
抜いてくれるまで居座ってやるといわれたので叩き出そうと思ったけれど、幽霊なので触れない。
かといって祓ったりしようものなら剣を抜いたことにされる恐れも。
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 291 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:04:44.01 ID:/qZqOaA00
雪女郎に伝説の剣が刺さっていた。これで平然としているんだからしょせんこいつは水の魔物か。
でも絶対に抜けないのなら剣を極にして電流でも流してやれば、
かねてからの予想通り、剣の分子と雪女郎の分子が化合して、水じゃなくなるんじゃなかろうか。
浪漫のない妄想ねぇと、雪女郎は剣が刺さったまま笑っていた。
- 292 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:07:45.96 ID:/qZqOaA00
志貴山城絶体絶命。
伝説の剣を献上すれば助けてやらんこともないと信長は言うが、抜けるのは世界にたった一人だけ。
一代の梟雄松永久秀、抜けないのならと剣に爆薬を仕込んでもろともに自爆。
巻き添えを食った茶器に合掌。もし抜いてあげていたら歴史はどう変わっただろうか。
- 293 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:10:23.49 ID:/qZqOaA00
コンビニのレジに置かれたおでん鍋に伝説の剣が刺さっていた。
ほこりだのなんだのが入っていると噂のコンビニおでん、いまどき誰が買うのかと思っていたら
騎士が物欲しげに凝視している。
ただ、おでんがほしいのか剣が目当てなのかはよくわからなかった。
- 294 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:12:54.07 ID:/qZqOaA00
山菜は調理の前に灰汁抜きが必要。
でも灰汁にかわって伝説の剣が染み出はじめたので慌てて灰汁抜き中止。
せっかく遠出して摘んできたものなのでなんとしてでも食べたいが、山菜の灰汁は体によくない。
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 295 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:16:33.16 ID:/qZqOaA00
ビデオデッキに伝説の剣が刺さっていた。これではテープを入れられない。
そろそろDVDに買い換える時期か。
とりあえず録画時間を確認してみたら軽く千年を超えていた。
ああ伝説の剣よ、お前はその刀身にいったいどれほどの物語を刻んできたのか。
- 296 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:19:18.10 ID:/qZqOaA00
スーパーの試食品、いつものように通りすがりに手を伸ばしたら、
楊枝のかわりにウインナーにささっていたのは伝説の剣だった。
流浪の騎士が今日こそ剣を手に入れんと張り切っていたが、
試食しないのならお断りと、おばちゃんにすげなく追い払われていた。
- 297 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:22:05.69 ID:/qZqOaA00
さっきから人の部屋に居座る異国の騎士。そして伝説の剣。
欲しがってる人んちの子になればいいのに、この剣もたいがい強情な奴だ。
抜けないのならばせめて聖剣の守護者となってこの城を守っていこうなどと
世迷言をほざく騎士に悲しみの一撃を食らわせてやった。
- 298 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:26:35.89 ID:/qZqOaA00
そぼ降る雨の中、道路脇に伝説の剣が刺さっていた。隣りにはもう捨て猫のいない段ボール。
考えてみれば猫には足があるんだから雨が降ればどこかにいくだろうし、
まだ自力で歩けないほど幼ければさっさと力尽きて死んでいる。
からの段ボールをかけてやって恩返しに来られてもうざいので、無視してそのまま帰宅した。
- 299 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:29:05.15 ID:/qZqOaA00
いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな
いちめんのなのはな いちめんのなのはな でんせつのけん いちめんのなのはな
いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな
ええ、鬱陶しいっ! こんなにも引っこ抜いてやりたいと思ったのは初めてだ!
- 300 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:31:58.02 ID:/qZqOaA00
東風が梅の香を運んで来る頃、郷里の花でも思い出したか、いつになく物思いにふける騎士。
異国の抜けやしない剣を我が物にせんとねばるより、聖杯でも探しに行けばといってやったら
騎士ならば名のある剣を求めるものだと一蹴された。
一方、羽柴秀吉は鳥取城近隣の食料を金に糸目をつけず買い求めていた。
- 301 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:35:29.75 ID:/qZqOaA00
背後霊が悩んでいた。伝説の剣、どっちが背後なのかわからないと。
そんなもの、こっちにだってわかるわけがない。
わからなくても憑かねばならない背後霊。抜く気がないと知っていてしつこく付きまとう伝説の剣。
いったいこいつらに何の事情があるというんだか。
- 302 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:38:40.75 ID:/qZqOaA00
部屋の隅に伝説の剣が刺さっていた。
電気を消してもなんだか薄らぼんやりと伝説的な光を放っている。
抜かれるのを待っているだけとわかっていても、目を離した隙ににじり寄ってきそうで落ち着かない。
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 303 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:42:27.84 ID:/qZqOaA00
小気味よく一定のリズムを刻んでいたコピー機が悲鳴をあげる。
排出口にコピー用紙ではなく伝説の剣がつまっていた。
たとえ業者を呼んだところで、この剣を抜けるのは世界にたった一人だけ。
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 304 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:46:05.70 ID:/qZqOaA00
リモコンの電池が切れたっぽいので交換しようとカバーを開けたら、中に伝説の剣が刺さっていた。
この剣を抜かなければ新しい電池を入れられない。
天井付近に据え付けられたエアコンを、まさかいちいち手動で動かすわけにもいかないし、
嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?
- 305 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:50:20.18 ID:/qZqOaA00
知恵の輪に絡まる伝説の剣。
何となく手慰みにと思ったけれど、この場合はどうなるんだろうか。
この剣を抜けるのは世界にたった一人だけ。
簡単に剣は抜けるのか、それとも通常の知恵の輪程度の技量は必要なのか。
- 306 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:52:36.61 ID:/qZqOaA00
蛍光灯を交換しようと思ったら伝説の剣が刺さっていた。抜かなければ交換できない。
仕方がないので電気を根元から抜き、普段使わない部屋の電気と交換。
それにしても伝説の輝きってのは東芝の蛍光灯ほどの光量もないんだと愚痴ってやったら
そう責めるものでもないと、紙燭の灯りに照らし出された夕顔の死に顔が微笑んだ。
- 307 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 04:57:48.37 ID:/qZqOaA00
駅のロッカーを開けると中に伝説の剣が刺さっていて、その奥の荷物が取れなかった。
下のロッカーからはなにやら赤いものが流れ出ている。
どうやら剣が下に入っていた何かを刺し貫いているらしい。
荷物は惜しかったが、とりあえず黙ってその場を立ち去った。
- 308 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 05:00:08.40 ID:/qZqOaA00
伝説とまで謳われた剣が現出したということは、
のちの世に伝説として語り継がれるに足る危機が迫っているということか。
それとも逆に、伝説の剣を抜いたればこそ、伝説的な出来事にでくわすのか。
とりあえず口内炎が三つできて痛いんだけど、そっちの方が我が人生の一大事。
- 309 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 05:03:25.27 ID:/qZqOaA00
交差点の中央に伝説の剣が刺さっていた。
かといって交通整理するわけでもない。
たまに伝説的な輝きを見せてはいるものの、行き交う人はみな信号の輝きに目を奪われる。
なんだかかわいそうになってきたけど、場所が場所だけに抜きにいったらこっちが危ない。
- 310 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 05:07:03.16 ID:/qZqOaA00
火葬場でお骨と一緒に出てきたのは伝説の剣。
掴めるのは世界にたった一人だけ。
これはさすがに不謹慎だろうと正座させて説教すること小一時間。
痺れをきらせた故人の骨が足を崩そうとして全身ばらっと崩れ去った。
- 311 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 05:11:00.27 ID:/qZqOaA00
この剣を譲ってくださいと勝海舟がやってきた。でも抜いてやる気はないのでお断り。
ならばと海舟は毎夜のように道具を持って剣を模造しにやってきた。
そして剣を模造し終えた日、どうせ自分じゃ使わないし、この剣はあなたが持っていたほうがいいと
抜いて渡して やるとでも思ったかこの伝説の剣がっ!
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