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偽勇者「ククク……勇者どもの手柄をかっさらってやるぜ」
- 34 名前:VIPがお送りします []
投稿日:2013/12/23(月) 23:06:29.34 ID:O82VYKAT0
─ 東の王国 城 ─
東国王「ふ〜む……おぬしらの魔王討伐に協力、か……」
東国王「どう思うかね、大臣」
東大臣「我が国はまだ魔王軍に侵略されておりません」
東大臣「また、侵略されても問題ありません」
東大臣「彼らが勝手にやっていることです。手助けの必要はないでしょう」
東国王「うむ、余もそう思っていた。我が国は魔王など恐れぬ」
勇者「しかし……! 魔王軍は神出鬼没です! 現に他の国では──」
東国王「もう下がりたまえ。余は忙しいのだ」
東大臣「…………」ニヤッ
偽勇者(こっそりついてきたが……あの大臣、犬歯が妙に長くねえか……?)
偽勇者(……揺さぶってみるか)
- 36 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:10:06.38 ID:PXV0cMxs0
しえん
おもしろい
- 37 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:10:20.80 ID:gFV4T8hx0
ゴクリ…
- 38 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:11:02.56 ID:O82VYKAT0
「ヘイ、勇者たち! まだ斬らねえのかい!?」
勇者「へ?」
「城内で人間に化けてる魔物を、謁見中に斬り殺すって手はずだったろ!?」
「モタモタしてんなよ!」
戦士(この声はあの人だが……なんの話だ!?)
東大臣「ちいっ……」シュウウ…
勇者「!?」
魔物「まさかバレていたとはなァ……!」シュウウ…
正体を明かす大臣。
東国王「大臣っ!?」
魔物「スキを突いて勇者たちを暗殺し、その後ゆっくり国を乗っ取る予定だったが……」
魔物「さすがは勇者といったところか!」
勇者(ま、まさか大臣が魔物だったなんて……!)
魔物「まぁいい……。まずは勇者、お前から死ねいっ!」シュバッ
- 39 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:14:03.90 ID:ZLRkoviU0
手柄譲ってる件
目標は魔王だし良いのか…
- 40 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:14:12.09 ID:zPzBtSA30
面白い
しえ
- 41 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:14:28.08 ID:ScQZSf/gO
安定の大臣
- 42 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:15:35.73 ID:O82VYKAT0
キンッ!
魔物「むっ!?」
勇者(俺だって、あの人のようになりたくて特訓してるんだ!)
勇者(力をほどよく抜いて、剣を振るうっ!)
ズバァッ! ザクッ! ザンッ!
魔物「ぐ、はァ……!」ドサッ…
勇者「ふう……なんとか倒せた……」
勇者(あの人がいなかったら……俺たちはみんな殺されてただろう……)
勇者「王様、これでも魔王は恐ろしくない、といえますか?」
東国王「い、いや……余が甘かった。まさか大臣が魔物だったとは……」
東国王「我が国も、全力を挙げて君たちをバックアップさせてもらうよ」
勇者「ありがとうございます!」
- 43 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:18:38.56 ID:O82VYKAT0
─ 宿屋 ─
戦士「いやぁ〜、こんな豪華な宿まで用意してもらえて」フカフカ…
戦士「きわどい場面も多いが、旅は絶好調だな!」
勇者「ああ……」
魔法使い「大臣が魔物だったと知って、王様もとたんに態度を変えたからね」
僧侶「でも、本当に危ないところでした」
勇者「うん……」
勇者「ところで、いつも危ないところで俺たちにアドバイスしてくれるあの人は」
勇者「いったい何者なんだろう?」
- 44 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:19:59.14 ID:0K9QNK8p0
でろりんスレとは珍しい
- 45 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:21:47.57 ID:JD4q7MuKO
ドラクエ3のやりこみ勇者一人旅の奴だな偽勇者。
- 46 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:21:59.60 ID:tosBFmrA0
偽勇者だけでいいんじゃね?
- 47 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:23:13.62 ID:lIlrA3zJ0
偽勇者かっけえ!
- 48 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:24:37.59 ID:O82VYKAT0
戦士「俺は最初、勇者の血筋が流れる人間だと思ってたけどよ」
戦士「お前の親戚ってわけでもないんだろ?」
勇者「うん、ちがう。あんな人、見たこともないよ」
僧侶「じゃあ、いったい……」
魔法使い「もしかして、ずっと昔からやってきたかつての勇者、だったりして」
戦士「ああ〜……たしかに。あの落ちつき具合は、ベテランって感じだもんな」
僧侶「ロマンがある話ですね」
勇者「勇者……か」
勇者(あの人が何者であれ、実力でいえばあの人こそが勇者に相応しい)
勇者(でもどうして、表舞台に出てこようとしないんだろうか)
勇者(なにか、表舞台に出られない理由があるんだろうか……)
- 49 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:29:47.00 ID:O82VYKAT0
東の王国でも、勇者たちは大人気となった。
ワアァァァァァ……!
東国王「たった数日間滞在しただけで、今や余をもしのぐ人気だ」
東国王「これが勇者殿の持つ人徳というものであろうな」
勇者「いえ、そんなことは……」
東国王「いや……余もおぬしをすっかり気に入ってしまっておる」
東国王「大臣に化けていた魔物を倒してくれたこととは関係なく、な」
東国王「おぬしほど誠実な若者はそうはおらぬ」
勇者「そこまでおっしゃっていただけて、光栄です」
東国王「この国を出れば、すぐ“剣の王国”だ」
東国王「世界でもっとも剣術の栄えた国……きっと魔王討伐の役に立つ情報もあろう」
東国王「ぜひ立ち寄ってみるといい」
勇者「はいっ!」
- 50 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:30:27.25 ID:ScQZSf/gO
不穏な空気…
- 51 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:34:15.06 ID:O82VYKAT0
─ 剣の王国 ─
魔法使い「この国は剣術がとても盛んなんだってね」
僧侶「首都にある闘技場では、今度剣術大会が開かれるそうですよ」
戦士「へぇ……。なあ勇者、俺たちも出てみないか?」
勇者「えぇっ!? 俺たちは魔王退治の旅の途中だぞ!」
戦士「だからこそ、だよ」
戦士「もしここで苦戦するようなら、魔王なんかとても倒せねえぞ?」
勇者「たしかに……」
勇者(おそらくあの人でも、そうするだろうな)
勇者「分かった! 挑戦してみよう!」
偽勇者「…………」
- 53 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:38:57.43 ID:O82VYKAT0
─ 闘技場 ─
キィンッ! ギンッ! キンッ!
闘技者A「ま、参った! ──完敗だ!」
勇者「こちらこそ、いい試合ができたよ」
闘技者B「ぐおおっ……力で押し切られたか」ガクッ
戦士「よっしゃあ!」
ワアァァァ……! オオォォォ……! ワアァァァ……! オオォォォ……!
魔法使い「すごいよ、二人とも! 他の参加者たちを全く寄せつけない!」
僧侶「当然ですよ、過酷な冒険をくぐり抜けてきたお二人ですもの!」
魔法使い「それに、大会が進むにつれて、二人のファンが増えてるね」
僧侶「二人とも、正々堂々相手の力を引き出しつつ、打ち負かしてますからね」
偽勇者(今のあいつらなら、この程度の大会は余裕だろう)
偽勇者(そして……薄々感じてはいたが、やはり奴らは俺とはちがう……)
- 54 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:41:37.70 ID:ScQZSf/gO
成長してたか
- 55 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:41:41.88 ID:O82VYKAT0
決勝戦──
ギィンッ!
戦士「ぐっ……降参だ!」
審判「そこまで! 剣の王国闘技大会、優勝者は──勇者!」
ワアァァァァァ……!
戦士「へっ……やられたぜ。さすが勇者」
勇者「こっちこそヒヤッとしたさ。強い仲間を持つことができて、嬉しいよ」
「すごいぞ、勇者!」 「戦士もよく頑張った!」 「二人ともカッコイイぞ!」
魔法使い「勇者も戦士も、もうすっかりヒーローだ……!」
僧侶「お二人の激闘が、剣が盛んな国の人々の心を掴んだんですね」
- 56 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:45:09.86 ID:O82VYKAT0
─ 剣の王国 城 ─
剣国王「君たちが勇者パーティーか。なるほど、みごとなものだ」
勇者「いえ、この国の闘技者たちも、強い人ばかりでした」
勇者「まだまだ修業が足りないことを思い知らされました」
剣国王「いやいや、君たちほど強い剣士を、私は見たことがないよ」
戦士「へへへ、剣の王国のお墨付きだ!」
剣国王「うむ。他に君たちほど強い剣士は──」
剣国王「……いや。一人だけ……いたな」
魔法使い「え?」
僧侶「勇者さんや戦士さん並みに、強い剣士の方がいたんですか?」
剣国王「うむ……強さだけならば、我が国の歴史上でも一番だったかもしれない」
- 59 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:50:39.54 ID:O82VYKAT0
剣国王「だが……剣士としてはあまりにも非道だった」
剣国王「剣を相手を殺すための道具としか見なしておらず」
剣国王「ひとたび戦いとなれば、相手が降参しようと容赦なく命を奪い」
剣国王「名誉欲や支配欲が強く、自分を認めない人間がいると徹底的に攻撃し」
剣国王「喝采を浴びたいがために、人をそそのかして騒動や事件を起こさせ」
剣国王「それを自分で解決するなどといった工作もやっていた」
戦士「とんでもねえヤロウだ……」
魔法使い「力はあるのに、その使い方を間違っちゃったタイプだね」
剣国王「むろん、皆もバカではない」
剣国王「すぐさまそれらの悪事は知れ渡り、奴はこの国に居場所を失った」
剣国王「誰よりも強かったが、誰よりも嫌われていた男だった……」
剣国王「皆に好かれる勇者殿とは正反対──いや、比べることすら失礼かもしれん」
- 61 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:54:28.09 ID:O82VYKAT0
勇者「ところで、その剣士は今どこに……?」
剣国王「……分からん」
剣国王「あの性格を正さぬ限り、どこにいってもやってはいけないだろう」
剣国王「案外今もどこかで、懲りずに悪巧みをしているのかもしれない」
剣国王「いや、これは余計な話をした。どうか忘れて欲しい」
剣国王「今日は我が国を挙げて、優勝者であり英雄である君たちを歓迎しよう!」
戦士「やったぜ!」
魔法使い「ありがとうございます!」
僧侶「剣の王国の王様だけあって、さっぱりした気風の方ですね」
勇者「…………」
- 62 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:57:32.93 ID:ScQZSf/gO
サッパリサッパリ
- 63 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:59:31.78 ID:O82VYKAT0
─ 剣の王国 城外 ─
偽勇者「懐かしい景色だぜ……」
偽勇者「この国に帰ってくるのも、何年ぶりかな……」
偽勇者「さすがにこの国では顔を知られすぎてて」
偽勇者「ずっとあいつらについてるワケにゃいかねえな」
偽勇者(勇者たちが優勝した闘技大会……)
偽勇者(俺もずっと昔、対戦相手を全員ブッ殺して優勝したが、拍手や喝采はなかった)
偽勇者(あれから俺はどうしても皆に認められたくて、あれこれ策を練ったが)
偽勇者(どれも裏目に出て……この国を追い出されるはめになった)
偽勇者(おっと……イヤなこと思い出しちまった)
- 64 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:03:07.47 ID:6J1pNAKd0
見てるよ
- 66 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:03:42.06 ID:ZLRkoviU0
ずっと見てるよ
このスレのこと
- 67 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:04:35.08 ID:cZtBrg470
偽勇者ェ…
- 68 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:08:23.43 ID:cYz+Xt/G0
剣の王国を出発し、勇者たちの旅はいよいよ佳境を迎えた。
─ 魔王軍基地 ─
勇者「──よし! 魔王軍幹部を討ち取ったぞ!」
戦士「こいつの指揮がなきゃ、俺ら人間界の軍隊がだいぶ有利になるぜ!」
魔法使い「ボクらの旅も……ついに終わりが見えてきたね」
僧侶「もうひと踏ん張りです。頑張りましょう、皆さん!」
偽勇者(まだまだ俺から見りゃ、スキだらけだが──)
偽勇者(こいつら、だいぶやるようになったじゃねえか)
偽勇者(──ん?)
- 69 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:14:35.32 ID:cYz+Xt/G0
少年魔族「た、助けて……」ガタガタ…
戦士「生き残りがいたのか。気は進まねえが、復讐に来られたら面倒だしな」チャキッ
勇者「待ってくれ、戦士!」
戦士「! なんだよ……? なんで止めるんだよ?」
勇者「俺たちは魔族を滅ぼすために戦ってるんじゃない」
勇者「人間を守るために戦っているんだ……これ以上、血を流す必要はない」
戦士「へっ……分かったよ」スッ…
勇者「おい、君」
少年魔族「は、はい!」
勇者「これは戦いだ……俺たちがやったことを、君に謝るつもりはない」
勇者「だけど、もし恨みを忘れられなかったら、直接俺に挑みにきてくれ」
勇者「俺はいつでも受けて立つ」
勇者「みんな、行こう。魔王城はもう目の前だ!」クルッ
偽勇者「…………」
- 70 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:18:24.55 ID:cYz+Xt/G0
─ 魔王城付近 ─
勇者「いよいよ明日……魔王城に乗り込む」
勇者「今さら夜襲もないだろう。今夜はぐっすり休んでくれ」
戦士「おうよ!」
魔法使い「念のため、周囲には結界を張っておくけどね」
勇者「ありがとう。それじゃ俺は、少し夜風に当たってくるよ」
僧侶「勇者さんも、早めに眠るようにして下さいね」
一人きりになった勇者。
勇者「…………」ザッ…
勇者「そこにいらっしゃるんでしょう?」
偽勇者「!」ピクッ
- 73 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:24:58.02 ID:l4WNnuwC0
もう強さは逆転してるな
- 74 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:24:58.77 ID:cYz+Xt/G0
偽勇者「俺の気配に気づくとは……ずいぶん成長したな」
偽勇者「なにもかもがド素人だったあの頃が、まるでウソのようだぜ」
勇者「俺が……いや、俺たちが強くなれたのはあなたのおかげです」
勇者「元々俺たちは血筋や学校の成績だけで、魔王討伐を任された四人だったんです」
勇者「素質こそあったんでしょうが、実戦経験はゼロでした」
勇者「あなたがいたから俺たちは強くなることができ、増長することもなかった」
勇者「本当に……感謝しています」
偽勇者「……で、話はそれだけじゃなさそうだな?」
勇者「あなたが何者なのか、俺にはもう分かっています」
偽勇者「……剣の王国で聞いたのか」
勇者「はい」
勇者「あなたがなぜ、俺たちを助けてくれてたのかも、分かったつもりです」
偽勇者「それで……どうするつもりだ?」
偽勇者「邪心を抱く悪党を……この場で倒そうってか?」
偽勇者「俺はかまわんぜぇ?」ニィッ
- 75 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:30:56.23 ID:cYz+Xt/G0
勇者「いえ……逆です」
偽勇者「?」
勇者「どうか……俺たちの仲間になってくれませんか」
勇者「いや、俺の代わりに勇者になってくれませんか!?」
偽勇者「な……!」
勇者「過去の経歴はどうあれ、あなたの性格がどうであれ」
勇者「俺たちがここまでこれたのは、全てあなたのおかげです」
勇者「それに実力でいえば、まだまだあなたの方が上でしょう」
勇者「現に俺は、魔王には勝てる自信があるが、あなたに勝てる自信はまるでない」
勇者「たとえ他の三人と一緒に戦ったとしても、です」
勇者「世界を救ったという名誉、魔王を倒したという快挙──」
勇者「俺よりも、あなたにこそ相応しい」
勇者「戦士たちも、まちがいなく納得してくれるはずです」
偽勇者「…………」
- 77 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:37:58.86 ID:cYz+Xt/G0
偽勇者「ありがたい話だが、俺にそんなつもりはねえよ」
勇者「なぜです? ……あなたは、勇者になることを望んでたはずだ!」
偽勇者「そう……そのとおりだ」
偽勇者「俺は誰よりも強くなりたかった。目立つことや褒められることが大好きだった」
偽勇者「だから、体がイカれるほど修業して、あれこれ策を練った」
偽勇者「だが……やり方をミスっちまって、慕われるどころか皆から嫌われて」
偽勇者「残ったのは……放浪生活で得た経験と、剣の腕だけだった」
偽勇者「やがて俺は、勇者の血を引く人間が住むという国に流れ着いた」
偽勇者「俺はこれが最後の大逆転チャンスだと悟った」
偽勇者「魔王とお前らを始末して、魔王を倒した勇者になっちまえば──」
偽勇者「みんなから慕われることができると!」
勇者「そうだ……あなたには資格がある。少なくとも、俺よりずっと!」
偽勇者「そう、俺もそう思ってた」
偽勇者「戦いのイロハも知らねえお前より、俺こそが勇者に相応しいと思っていた」
偽勇者「だが……そうじゃなかった」
- 78 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/24(火) 00:44:30.96 ID:cYz+Xt/G0
偽勇者「お前らは冒険の途中で、大勢の人間に勇気を与えた」
偽勇者「たとえ、活躍に見合わない報酬でも文句一ついわず」
偽勇者「闘技大会では、負かした相手を決して貶めず、称えさえした」
偽勇者「時には、敵である魔族にすら情けをかけた」
偽勇者「これは……とても俺じゃできねえことだ」
偽勇者「剣は殺すもの、弱い奴が死ぬのは当然、ってのが心の根っこにある俺じゃあな」
偽勇者「“勇者”は強いだけじゃダメだ。それがようやく分かったんだよ」
偽勇者「そして──これを俺に教えてくれたのも、お前だ」
偽勇者「もう俺に、お前に取って代わろうなんて気はねえのさ」
勇者「だけどッ!」
偽勇者「もういいッ! これ以上頼まれたら、また野心が戻ってきちまいそうだ……」
偽勇者「行け、勇者!」
偽勇者「明日……魔王をブッ倒してこい!」
勇者「……はい!」
そして、翌日──
- 79 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2013/12/24(火) 00:46:53.91 ID:DvpwffjUO
偽…
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