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( ^ω^)ブーン系小説シベリア図書館のようです★10
487 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 13/23 [sage] :2010/05/18(火) 23:16:26 発信元:59.135.38.148
(´・ω・`)「……行ってしまわれたな」

ζ(゚ー゚*ζ「はい」

(´・ω・`)「なんとも、徹底して豪気な方でございました……」

/ ,' 3 「そうだな。そこは噂通り、さすがというべきか」

(´・ω・`)「しかし、自身から和睦を蹴りかけておきながら、攻めいれば容赦しないとは矛盾も甚だしい発言ですな」

/ ,' 3 「それだけシェエラザードの持った武器が脅威に映ったのであろうよ。どれ、余にもそのジュウとやらを、よく見せてはくれぬか」

ζ(゚ー゚*ζ「それは帰途につきながらゆっくりと。あまりお外の兵隊様を待たせては、可哀想ですわ」

/ ,' 3 「それもそうだな。では、我らも都に戻るとするか」

ζ(^ー^*ζ「……はい」


488 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 14/23 [sage] :2010/05/18(火) 23:21:13 発信元:59.135.38.145
―――

/ ,' 3 「ふむ……見れば見るほど、余には子供の玩具にしか見えぬな」

(´・ω・`)「私もでございます。よもやこれが人を殺めうる威力を持つなぞ、娘が使ってみせるまで思いもよりませんでした」

/ ,' 3 「シェエラザードよ。お前はこのように危険な物を、どうやって作った?」

ζ(゚ー゚*ζ「はい。夢の娘がこれなる武器を分解する様を見て、何か有効に使える手立てはないかと、創意工夫して参った次第にございます」

/ ,' 3 「なるほどな……お主はもしかしたら、武器職人としての才も兼ね合わせておるのかもしれんな」

(;´・ω・`)「王様、父として不安になるようなことをおっしゃらないで下さいまし……」

/ ,' 3 「しかし、夢に見ただけの機器をこうして再現するなぞ、余人に容易く出来ることではないぞ」

ζ(゚ー゚*ζ「それは、私に協力して下すった職人様の力でございましょう。都に帰還した折には、王がお誉めになっていたとお伝えして差し上げれば、喜ばれるかと」

/ ,' 3 「ふむ、そうしよう。して、お前の言ったように、これを量産して女子供にまで持たせることは可能なのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「今より技術が進めば、可能になりましょう。けれど、私にそのつもりはございません」

(´・ω・`)「それは何故だ、シェエラザードよ? このように強力な武器を持ってすれば、我らが国の安泰は百年保証されようものを」

ζ(゚ー゚*ζ「お父様。それはあくまでも娘らの世界の武器なのですよ? それが我々の手にあること自体が、そもそも良くないことなのです」

/ ,' 3 「勘違いするでない。元より余とて、女子供を戦に巻き込むような武器を作らせるつもりはないぞ」

ζ(^ー^*ζ「……はい、王様ならそうおっしゃって下さると、思っておりました」


491 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 15/23 [sage] :2010/05/18(火) 23:26:08 発信元:59.135.38.147
(´・ω・`)「なればこれは、最早無用の長物ということか」

ζ(゚ー゚*ζ「家に着き次第、私が火にくべて燃やしてしまいましょう」

/ ,' 3 「うむ、それが良いな。それよりも……」ジロリ

(´・ω・`)「はっ……? 私めが、何か……」

/ ,' 3 「大臣、そちは戦における武器の心配より、己が弁を鍛えることを考えねばなるまいな」

(;´・ω・`)「……はい。今回のことで、私もそれが骨身に染みました。どうやら私の舌は、少々平和惚けしていたようです」

/ ,' 3 「理解しているのならば多くは言うまい。今後、今日のような無様を見せることのないよう、充分に精進してみせよ」

(;´-ω-`)「……畏まりましてございます」

/ ,' 3 「シェエラザード、お主も大義であったな。今宵そちがおらねば、今ごろ和平は成っておらなかったであろう」

ζ(゚ー゚*ζ「恐れ多い言葉を賜りまして、恐縮にございます」

/ ,' 3 「そちの働きに対し、余は褒美を取らせたいと思うが、何ぞ欲する物でもあるか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……それならば、都までの短い間で結構ですので、このまま王の隣で馬を駆ることをお許しください」

/ ,' 3 「何じゃ、そのような物を褒美と申すか。欲のない娘よの」

ζ(^ー^*ζ「私には、過ぎた褒美にございまする……」

(´・ω・`)(……!!)


492 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 16/23 [sage] :2010/05/18(火) 23:32:51 発信元:59.135.38.143
(´・ω・`)「……王様。私は少し、後ろの兵の様子を見て参ります」

/ ,' 3 「む? そうか?」

(´・ω・`)「はい。ここは二人でごゆるりと、帰路の旅をお楽しみ下され」

/ ,' 3 「そうか。では、頼む」

(´・ω・`)「……王様。今宵、娘を政敵へ渡さずにいて下すったこと、臣下としてではなく父として感謝いたしますぞ」

/ ,' 3 「そちに改めて礼なぞ言われると、おぞけが走るわ。良いから早くゆけ」

(´・ω・`)「佐用でございますか……では!」ススッ

/ ,' 3 「……あやつめ、変なところで変な気を効かしよる」

ζ(゚ー゚*ζ「それがお父様の処世術なのでしょう。私は、そんなお父様も好いてございます」

/ ,' 3 「そうか……そなたが言うと、それすらも美点に聞こえるから不思議よな」

ζ(^ー^*ζ「うふふ……なれば、和平の成った記念に、また一つ娘らのお話をさせていただきましょうか」

/ ,' 3 「おぉ、それは良い。そちの話で、あの殺伐とした空気の残滓をすすがせてくれ」

ζ(^ー^*ζ「はい、承知いたしました」


494 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 17/23 [sage] :2010/05/18(火) 23:35:34 発信元:59.135.38.149
【幸せ】

ζ(゚ー゚*ζ「これなる娘のお話は、本来なら妹のドゥウンヤザードと二人で話すつもりであったお話です」

/ ,' 3 「ほぅ、そうか」

ζ(゚ー゚*ζ「その娘は、いつも愛した殿方と一緒におりました。話す時も物を食す時も、常に二人一緒でありました」

/ ,' 3 「ほぅ、して?」

ζ(゚ー゚*ζ「はい。これは愛しあう者同士が、片時も離れず一緒にいるという、ただそれだけのお話です」

/ ,' 3 「……何?」

ζ(゚ー゚*ζ「王様も、ご存知なのではありませんか? 愛したる者と同じ時間を過ごす、という幸福を」

ζ(゚ー゚*ζ「このお二人は、まさにその言葉の通り、寄り添うことの幸せを体現したかのようなお二人なのです」

/ ,' 3 「幸福……で、あるか……?」

ζ(゚ー゚*ζ「はい。このお二人は数ある娘らの中でも、五指に入るほど私の好きなお二人でございます」


496 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 18/23 [sage] :2010/05/18(火) 23:38:34 発信元:59.135.38.141
ζ(゚ー゚*ζ「お二人の会話は、実に些細で和やかなものです」

ζ(゚ー゚*ζ「昨日何を食したか、や、何時何時にどこへ行ってきた、など、今までの娘らと違い、大仰なところなど一つもありませんでした」

/ ,' 3 「……」

ζ(゚ー゚*ζ「その姿はまるで、その些細なこと自体が幸福であると言っているように、私には思えました」

/ ,' 3 「それは良いな……うむ、実に羨ましい」

ζ(゚ー゚*ζ「はい」

/ ,' 3 「……余も一度、そのような想われ方をしてみたいものよ」

ζ(゚ー゚*ζ「え? 王は、このような恋路を経験したことがないのですか?」

/ ,' 3 「余は王族であるぞ? さような恋情とは、この齢に至るまで無縁であったわ」

ζ(゚ー゚*ζ「……では、お妃様とは?」

/ ,' 3 「……恋情と呼ぶには程遠い、半ば政略結婚のような形で結ばれたな」

/ ,' 3 「余からすれば、平民であるそちの方が経験豊かに思えるが、そちこそそのような浮いた話はないのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「私のような若輩が殿方を選り好みしていては、悪評高くなりそこには住めなくなりまする」

/ ,' 3 「佐用か……」

ζ(゚ー゚*ζ「佐用でございます」


498 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 19/23 [sage] :2010/05/18(火) 23:41:22 発信元:59.135.38.142
ζ(゚ー゚*ζ「……何やら、私と王様は似ているのでございますね」

/ ,' 3 「似ている? 一体どこが似ているというのだ」

ζ(゚ー゚*ζ「互いにこの齢まで恋情を知らず、そして互いに愛情に餓えていたところなぞ、そっくりかと」

/ ,' 3 「そちが愛情に餓えているとは、初耳であるな」

ζ(゚ー゚*ζ「……私とドゥウンヤザードは、父一人の手で育てられたようなものでございますれば」

/ ,' 3 「あの大臣にか?」

ζ(゚ー゚*ζ「はい」

/ ,' 3 「そちの母御は、どうしたのだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「ドゥウンヤザードを産んだ際に、命を落としたと……」

/ ,' 3 「む……すまぬ、失言であったか」

ζ(゚ー゚*ζ「お気になさりませぬよう。私も、顔すら覚えておらぬお母様ですから」

/ ,' 3 「う、うむ……」


502 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 20/23 [sage さるった…] :2010/05/19(水) 00:00:20 発信元:59.135.38.144
ζ(゚ー゚*ζ「思えば私の夢の娘も、母の顔を知らぬ寂しさから見た幻なのかもしれませぬ」

ζ(゚ー゚*ζ「長女として父親を助け、いずれは何処かの殿方の元へ嫁ぐしか孝行しようのない我が身が

      自身を憐れみ慰めるために、都合のよい出鱈目を作り上げたのでしょうか」

ζ(゚ー゚*ζ「だとすれば、私は自身で自身の糸を手繰る、糸繰り人形のようなものでございますね」

ζ(゚ー゚*ζ「私は、なんと滑稽な道化なのでございましょうか。どうか私をお笑いくださいませ」

/ ,' 3 「……シェエラザード。そのように己を卑下するでない」

ζ(゚ー゚;ζ「あっ……も、申し訳ございません。つい口が過ぎてしまいました……不快を感じたのであれば、謝罪いたします」

/ ,' 3 「良い。頭を上げい」

/ ,' 3 「シェエラザードよ、良く聞くがいい」

ζ(゚ー゚*ζ「は……はい」

/ ,' 3 「もしも仮にそちが言うように、娘の話が荒唐無稽な絵空事であったとしても、

     その絵空事によって、余や大臣、シュッドーダナ、ひいては我らの国の民が

     救われたことになんら変わりはないのだ」

/ ,' 3 「だから胸を張れ。己を馬鹿にする者あれば、得意の舌戦で切って捨てよ。下を向くなぞ、そちには似合わぬ姿なのだからな」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい」


504 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 21/23 [sage] :2010/05/19(水) 00:03:22 発信元:59.135.38.148
ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとうございます。王の励ましは、私に取って大変嬉しいものでございました」

/ ,' 3 「そうだ、今のように悲しくとも笑ってみせよ。さすればきっと未来は明るいぞ」

ζ(゚ー゚*ζ「はい……そういえば、私めにとって、もう一つ嬉しいことがあったのを忘れておりました」

/ ,' 3 「む? それは何じゃ」

ζ(^ー^*ζ「はい。それは、会見の最後に、王様が私のことを、『余の愛した臣下である』と言って下すったことです」

/;,' 3 「むぅ……覚えておったか。余としては、忘れておって欲しかったことだが」

ζ(゚ー゚*ζ「王様。王様は先ほど私に、ご褒美を下さると言って下さいましたね。ならば、こうして

      隣り合わせに走ること以外に、今一つだけお願いがあるのですが」

/ ,' 3 「……何か嫌な予感がするが、言うてみよ」

ζ(゚ー゚*ζ「王がよろしければ、もう一度だけ、私めを愛していると言ってはくれないでしょうか」

/;,' 3 「む…むぅ……」

ζ(゚ー゚*ζ「もちろん、無理にとは申しませんが……」

/ ,' 3 「……分かった。これでそちへの恩が返せるとは思わぬが、それで良いならそちの気が済むまで言ってやろう」

ζ(゚ー゚*ζ「はい。どうか、宜しくお願いいたします」


505 :いやあ名無しって [sage] :2010/05/19(水) 00:04:43 発信元:121.2.98.95
なんとまぁ


506 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 21/23 [sage] :2010/05/19(水) 00:04:59 発信元:59.135.38.149
/ ,' 3 「あー……ごほん。では、申すぞ」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい」

/ ,' 3 「シェエラザード。余はそちに絶大なる感謝をしておる」

ζ(゚ー゚*ζ「はい……」

/ ,' 3 「そちにはいくら感謝をしても、し足りぬほどじゃ。一国の長として、敬意を現そう」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

/ ,' 3 「……そのように真顔で見つめるでない。何やら緊張して言いにくいではないか」

ζ(゚ー゚*ζ「申し訳ございません。小さき身の上の私では、期待で胸はち切れんばかりなのです」

/ ,' 3 「……ならば余は、その期待に見事応えて見せようぞ」

ζ(゚ー゚*ζ「はい……私の準備は、いつでも出来ております」


507 :いやあ名無しって [sage] :2010/05/19(水) 00:06:14 発信元:118.15.55.19
良いね
支援


508 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ 23/23 [sage] :2010/05/19(水) 00:07:31 発信元:59.135.38.144







/ ,' 3 「シェエラザードよ。余はそちを愛しておる」

/ ,' 3 「願わくば我が妃となり、この国の行く末を、共に見守ってはくれぬか?」

ζ(゚ー゚*ζ「!!」









509 :いやあ名無しって [sage] :2010/05/19(水) 00:09:36 発信元:121.2.98.95
おお


510 :いやあ名無しって [sage] :2010/05/19(水) 00:11:08 発信元:210.136.161.48
キター


511 :/ ,' 3 新ジャンル千夜一夜のようですζ(゚ー゚*ζ [sage] :2010/05/19(水) 00:15:33 発信元:59.135.38.143
以上、今回の投下は終了
次回、ようやっと最終回にございます

関連新ジャンル一覧

新ジャンル「幸せ」…http://www.kajisoku.com/archives/eid302.html

軍事マニアはググっても出て来なかった……蛇屋さんとこにあったと思うんだけどな

それと、冒頭でも言いましたが、シベリア連載のテンプレートを無視しまくってごめんなさい
重ねてお詫びいたします

そんじゃ、近いうちにまた来ます ノシ



軍事マニア 物置 絵遊び

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