■戻る■ 下へ
嬢「では、着替えを頼む。」
- 27 名前:VIPがお送りします []
投稿日:2012/02/11(土) 23:42:10.26 ID:e4tL1ZY70
――――――――――
嬢「オイ、キタロウ!」
執「お呼びでございますか?」
嬢「うむ。お前は優秀であるな。」
執「この次からは応じないと肝にお命じください。」
嬢「ものは相談なのだが。」
執「はい。如何いたしましたか?」
嬢「明日は新月だな?」
執「左様でございますね。」
嬢「つまり、日光を恐れることなく行動できる日でもある。」
執「存じ上げております。」
- 28 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/11(土) 23:48:19.41 ID:e4tL1ZY70
嬢「メイドと行動をともにしたいと思うのだが、可能か?」
執「わたくしどもは使用人でありますれば、そのようにお命じくだされば。」
嬢「だが、お前は逆らってばかりではないか。」
執「誤解なさらぬよう。使用人と言えど無条件に従うというものではございません。」
嬢「聞ける事と、聞けぬ事があるというわけだな。」
執「左様でございます。そして、それはメイドも同じこと。」
嬢「メイドは聞き入れると思うか?」
執「仕事の範疇に収まることであれば、断る理由はないと思われます。」
嬢「では、明朝、私を起こしに来るよう、言づてを頼む。」
執「かしこまりましてございます。」
- 29 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/11(土) 23:49:24.57 ID:l/Uc/85dO
面白い。支援
- 30 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/11(土) 23:51:39.17 ID:e4tL1ZY70
女「おーい、嬢ちゃん。朝だぞ。」
嬢「んー?」
女「ホントに棺桶で寝るんだな。」
嬢「おお、メイドではないか。」
女「はい。メイドですよ。」
嬢「待っておったぞ。」
女「お待たせしました。」
嬢「早速だが、着替えを頼む。」
女「その前にひとっ風呂浴びませんか? 失礼ですが、ちょっと臭ってますよ。」
嬢「ほう。」
- 31 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/11(土) 23:56:29.69 ID:e4tL1ZY70
女「おぉ……真っ白でスベスベじゃないですか旦那。」
嬢「お前の旦那になった覚えは無いぞ?」
女「しかし、この白さはちょっと病的だな。日にあたってないからか?」
嬢「滅多なことを言うでない。これを見よ。」
女「なんじゃこりゃ?」
嬢「私にとって太陽は忌むべきもの、ひとたびその光を浴びればこのように焼けただれてしまう。」
女「人間にしか見えないけどな。」
嬢「今は新月だからな。今日一日は人間として過ごせるのだ。」
女「でもこれ……」
嬢「うむ、お前に見せようと思ってな。昨日のうちに描いて色を塗っておいた。」
- 32 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/11(土) 23:58:35.84 ID:6f9ZxMBM0
みてるよ
- 33 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/11(土) 23:59:06.34 ID:e4tL1ZY70
女「なんです? ジロジロ見て。」
嬢「お前は胸が大きいな。」
女「んー…あたしのは普通ですよ。そりゃ嬢ちゃんに比べれば大きいですけど。」
嬢「どうすればそのようになれるのだ?」
女「俗説だと揉むと大きくなるとは言いますけどね。」
嬢「よし、では揉んでみよ。」
女「いやいや、あたしは別に大きくなりたくないし。」
嬢「たわけ、私の胸を揉むのだ。」
女「あー……これも仕事のうちだよね? うん、仕方ない。」
嬢「おい、手加減せぬか! 痛いぞ。」
女「そんなに力入れてませんけど? あぁ、あたしも成長期は触ると痛かったっけ。」
嬢「ほう。」
- 34 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:01:00.95 ID:XekU9Lcn0
女「シャンプー目にしみない?」
嬢「目をつむっているので平気だ。しかし……」
女「ん、なにか?」
嬢「その気遣いが心にしみる。」
女「マセてんな、お前。」
嬢「時に、メイドよ。」
女「なんでしょーか、お嬢様。」
嬢「夜の間、働くことはできんのか?」
女「昼休んでていいなら、夜に働きますけど?」
嬢「しかと聞いたぞ。二言は無いな?」
女「ていうか、嬢ちゃんいつも寝てるから暇持て余してますしね。」
- 35 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:04:31.26 ID:e4tL1ZY70
嬢「つかぬことを聞くが、お前は人間ではないのか?」
女「人間ですけど?」
嬢「では、メイドと言うのは偽りか?」
女「は? あたしはメイドですよ……たぶん。」
嬢「人間であり、メイドでもあるということか?」
女「そういうことですね。なんか不味い事でもありました?」
嬢「ククク、なるほど……わかったぞ、わかってしまったぞ。」
女「ところで、このガチョウさんは――」
嬢「見誤るでない。これはアヒルちゃんであるぞ。」
女「このアヒルちゃんはどうするんです?」
嬢「ゼンマイを巻いて、湯船に浮かべよ。」
- 36 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:08:07.11 ID:XekU9Lcn0
――――――――――
嬢「おもてを上げい。」
執「もとより、下げてはおりませんが。」
嬢「私の見立ては間違っていなかったぞ。この目腐れ。」
執「何のことやらわかりかねますが、申し訳ありませんでした。この青瓢箪。」
嬢「まあ、責めているわけではない。そうかしこまらずともよい。」
執「順序立てておっしゃっていただくとありがたいのですが。」
嬢「他でもない、あのメイドの事だ。」
執「何かお嬢様に無礼を働いたのでございますか?」
嬢「割れ鍋と自負するのでなければ、話の流れを汲んで欲しいものだな。」
執「僭越ながら、テメエに言われる筋合いはシラミの胃袋ほどもございません。お嬢様。」
- 37 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:12:32.42 ID:XekU9Lcn0
嬢「結論から言えば、あのメイドは人間であったぞ。」
執「如何にして確認なされたのですか?」
嬢「直接、問いただした。」
執「左様でございましたか。」
嬢「しかし、お前の見立てもまた間違ってはいなかったようだ。」
執「つまり、メイドであると?」
嬢「そうだ。」
執「如何にして確認なされたのですか?」
嬢「直接、問いただした。」
執「左様でございましたか。」
- 38 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:15:00.82 ID:XekU9Lcn0
執「しかし面妖な……斯様なことが……」
嬢「フフ、戸惑っておるな。だが、私は瞬時にある真理を見出したのだ。」
執「では、その戯れ言をお聞かせ願えますか?」
嬢「その前に問う。」
執「なんでございますか?」
嬢「私は何だ?」
執「お嬢様にてございます。」
嬢「そうではない。私は何かと訊いている。」
執「恐れながら、時間が惜しゅう御座います。慣れぬことはなさらぬが賢明かと。」
嬢「ほう。」
- 39 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:19:27.80 ID:XekU9Lcn0
嬢「私はヴァンパイアでもあり、人間でもある。」
執「あぁ、つまりはかの者も、メイドと人間の混血なのですね。」
嬢「私はその時、閃いたのだ。メイドと人間の合いの子もまた、存在し得るのではないか? と。」
執「混血ということならば、双方の知見にも矛盾は出ませんね。」
嬢「そして、その存在は形而上のものではなく、我々の近くに存在していると仮説を立てた。」
執「それで得心いたしました。」
嬢「然る後に、私はあのメイドはメイドと人間の混血だという考えに至ったのだ。」
執「ご用件は以上でございますね?」
嬢「どうだ? 我ながら完璧な推論であろう?」
執「では、わたくしめはこれで。」
嬢「フフ、もっと褒めちぎっても構わ――」
嬢「ほう。」
- 41 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:20:47.32 ID:nPAO8cWK0
なんかハヤテみたいにお嬢に仕えたい
- 43 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:23:55.98 ID:XekU9Lcn0
女「あ、お疲れ様です。執事さん。」
執「はい。」
女「嬢ちゃんに言われてさ、働く時間を夜にしたいんだけど?」
執「左様でございますか。」
女「手続きとかって、どうすればいいの?」
執「特に手続きなどは設けておりません。」
女「じゃあ、勝手に夜に起きて働けばいいの?」
執「左様でございますね。」
- 44 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:28:16.87 ID:XekU9Lcn0
女「この館って、他には誰か居ないの?」
執「居るとも居ないとも言えます。それがどうかなさいましたか?」
女「うん、あたしは他に人が働いてるの見たこと無くてさ。」
執「左様で。」
女「でも、この広い館の手入れなんて三人で間に合うとは思えないし。」
執「その勘定ですと、お嬢様の手を煩わせるわけにはまいりませんので、実質は二人ですね。」
女「そういやそうか。まあ、でも不都合無さそうだから不思議だなと。」
執「では、明日の夜にでもご説明いたします。」
女「明日の夜?」
執「はい。今宵は新月でございますれば。」
- 45 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:32:09.28 ID:XekU9Lcn0
女「ところで、お嬢ちゃんの親御さんってどこに居るの?」
執「先代と、その奥方様でございますか?」
女「先代? てことは今は嬢ちゃんが館の主なの?」
執「左様でございます。先代へのお目通りをご所望ですか?」
女「うん、そう。挨拶もしてないし。このままでいいのかなって。」
執「お二人とも鬼籍に入っておられますれば……」
女「あー、なんか悪い事聞いちゃった?」
執「いえ、むしろわたくしめには喜ばしい事でして。」
女「そうなの?」
執「あの外道がくたばりあそばしたおかげで、お嬢様へのお仕えが叶っておりますれば。」
- 46 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:36:44.86 ID:XekU9Lcn0
――――――――――
嬢「入るぞ。」
女「これはこれはお嬢様。呼んでもらえればあたしの方から……」
嬢「よい。私が来てみたかったのだ。」
女「でも、使用人の私室なんて嬢ちゃんには相応しくないんじゃないの?」
嬢「私は、構わん。」
女「へーへー、では大したもてなしもできませんが、くつろいでってくださいな。」
嬢「何かしておったのか?」
女「特には。強いて言えば暇つぶしかな。」
嬢「暇つぶしとはなんだ?」
女「地雷探知機を使わずにV48コング探してました。」
- 47 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:39:40.61 ID:XekU9Lcn0
嬢「その作業? を暇つぶしと言うのか?」
女「ああ、暇つぶしって言うのは退屈を紛らわすためにやるいろいろな事です。」
嬢「では、他にもあるのか?」
女「ストマックXを綺麗に並べてからTTフリーザーで一掃してみたり。」
嬢「ほう。」
女「イベント終ってるのに、ドラム缶を押しに行ってみたり。」
嬢「それらは楽しいのか?」
女「あんまり楽しくは無いね。ぼーっとしてるよりはマシってだけ。」
- 48 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:43:44.06 ID:XekU9Lcn0
執「こちらにおいででございましたか。お嬢様。」
嬢「今、メイドに暇つぶしの手ほどきを受けている。後にせよ。」
執「左様でございますか。」
嬢「なかなかに興味深い。」
執「お言葉ですが、暇つぶしなど、お嬢様ひいては我々には無用でございます。」
嬢「なにゆえか?」
執「無為を無為と受け入れられぬ弱き者、つまり人間達の逃避行為に他なりません。」
嬢「では、お前は仕事などもなく、食事でも寝るでもない退屈な時間はどう過ごすのだ?」
執「外壁のレンガの総数を数えたり、中庭の石畳の石を数えて時が過ぎるのを待ちます。」
嬢「ほう。」
- 49 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:49:05.49 ID:XekU9Lcn0
執「それよりも、新月が過ぎましたのでお嬢様には眼を入れていただきたく……」
嬢「おお、そうであったな。」
女「眼?」
執「メイドにも教える手筈になっております。ご同行願えますか?」
嬢「そうか、お前はスミスも、ヨハンセンも、えーと……とにかく知らぬのだな。」
執「あとは、グナイゼナウ、シャルンホルスト、マーフィー、マンフレッティ、トンヌラ、サトチーでございますね。」
嬢「名前など意味を持たぬ。」
女「?」
執「ですが、ご自分でお付けになった名前を忘れるのはいかがなものかと。」
- 50 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:54:05.78 ID:XekU9Lcn0
執「こちらでございます。」
女「ここに他の人がいるの?」
執「足元にお気を付けください。スミスが控えております。」
女「足も――うわっ!?」
執「ご紹介いたします、こちらがスミスでありますれば……」
女「骨! ほねだコレ! いわゆるBone!」
執「いえ、こちら、スミスでございます。」
女「スミスさんの骨?」
執「では、お嬢様。よろしくお願いいたします。」
嬢「うむ。」
- 51 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 00:58:36.71 ID:XekU9Lcn0
骨「…………」
嬢「傅(かしず)け。」
骨「ケタケタケタケタ!」
女「!!」
嬢「どうだ? 上手く行ったか?」
執「お見事にございます。久々に初回でのご成功であらせられますね。」
女「…………」
執「このように、お嬢様がアニメイト――ん?」
女「……」
嬢「立ったまま居眠りとは、器用な奴だな。」
- 52 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 01:02:47.17 ID:XekU9Lcn0
女「人食い酋長が大太鼓――あ!?」
執「気がつかれましたか?」
女「えーと……かなりショッキングなモノを見たような気が……」
執「アレが当家の労働力、収入源でございますれば、早めに馴染んでいただければ。」
女「あの骨が?」
執「以前はそうではありませんでしたが、使い続けるうちにあのような姿に。」
女「お嬢ちゃんが動かしてるの?」
執「左様でございます。とはいえ、お嬢様の魔力は新月の度に消えてしまいますので。」
女「毎度毎度かけなおしてる?」
執「左様でございます。」
- 53 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 01:06:29.73 ID:XekU9Lcn0
嬢「済んだぞ。全員に眼を入れて来た。」
執「ご苦労さまにございます。」
女「労働力って?」
嬢「館の手入れや、農作業を担当させているのだ。」
女「農作業?」
執「主にマンドラゴラや、ゲルセミウム・エレガンスの栽培をさせております。」
嬢「アレらは単純作業の反復しかできんのでな。」
執「恐れながら、それは使役者が未熟なためでございます。」
嬢「ほう。」
次へ 戻る 上へ