■戻る■ 下へ
偽勇者「ククク……勇者どもの手柄をかっさらってやるぜ」
1 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 21:49:58.22 ID:O82VYKAT0
─ 城下町 ─

ザワザワ…… ガヤガヤ……

町民A「聞いたかよ! ついに勇者様たちが魔王討伐の旅に出るらしいぜ!」

町民B「ああ、聞いた聞いた! 今、王様に謁見してるんだってな!」

町民A「勇者様なら、絶対魔王を倒してくれるぜ!」

町民B「なんたって、かつて魔王を封じた“勇者”の血をひく人だもんな!」



偽勇者「…………」

偽勇者(……ようやくか)

偽勇者(この時を待ってたんだ!)

偽勇者「ククク……勇者どもの手柄をかっさらってやるぜ」


3 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 21:54:22.79 ID:O82VYKAT0
まもなく、勇者たちの出発式が盛大に行われた。

ワアァァァァァ……!

「頼むぞぉっ!」 「しっかりなっ!」 「頑張ってえっ!」

勇者「皆さん、行ってきます!」

戦士「俺の剣技で、必ず魔王を倒してくるぜ!」

魔法使い「ボクの魔法なら、魔王なんてチョチョイのチョイさ」

僧侶「私がこの三人を死なせはしません!」



偽勇者(この四人が、勇者パーティーか)

偽勇者(悪いが、お前たちには俺の踏み台になってもらうぜぇ……)


4 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 21:59:19.36 ID:O82VYKAT0
─ 村 ─

偽勇者(まずは、近くの村に立ち寄った、か……)



村人「お願いします、たびたび村を襲う魔獣をやっつけて下さい!」

勇者「分かりました!」

戦士「俺たちに任せとけ!」

魔法使い「この程度のことなら、ボクだけでも十分だよ」

僧侶「村のために頑張りましょう!」



偽勇者(よし……こいつらが弱らせた魔獣を、俺がブッ倒して手柄にするとするか)

偽勇者(こういうコツコツとした積み重ねが大事だからな)


6 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:02:00.63 ID:36OsjY0/0
弱らせたのに放置はしないだろ


7 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:03:41.78 ID:O82VYKAT0
─ 村の近く ─

魔獣「ガルルル……!」ザッ…

勇者「お前が村を襲う魔獣か! いざ勝負!」チャキッ

戦士「十秒で片付けてやるぜ!」スラッ…

魔法使い「やれやれ、つまらなそうな相手だ」

僧侶「回復はお任せを!」



偽勇者(なんだ、大したモンスターじゃねえな)

偽勇者(これじゃ弱らせる前に終わっちまうだろうな……)

偽勇者(ま、お手並み拝見といくか)


8 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:09:08.47 ID:O82VYKAT0
魔獣「ガルァ!」バッ

バシィッ!

勇者「ぐはぁっ!」ドサッ

偽勇者(え?)

化け物「ガルルァ!」

ドゴォッ!

戦士「ぐええっ!」ドサッ…

偽勇者(お前が十秒でやられてるじゃねえか!)

魔法使い「──いたっ!」ガリッ…

魔法使い「呪文唱えようとしたら、舌噛んじゃった……回復して!」

僧侶「あわわ、どうしましょ、どうしましょ〜!」

偽勇者(魔法使いも、紅一点の僧侶も役立たずかよ!)

偽勇者(なんなんだ、こいつら!?)


10 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2013/12/23(月) 22:11:27.24 ID:P3SXC6y70
こんな北の果てにもちゃんと勇者サマがいるから安心しろいっ!

ニセもんだけどなぁ!!


11 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:11:28.74 ID:ScQZSf/gO
おや、勇者のようすが…?


12 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:14:42.45 ID:O82VYKAT0
勇者「くそ〜っ!」ブンブン

戦士「まだまだァ!」ブンブン

キンッ! ギンッ!

魔獣「ガルルァ!」

偽勇者(あのモンスターの胴体は頑丈だ! あんな剣さばきじゃとても斬れねえ!)

偽勇者(頭を狙えよ、頭を!)

魔法使い「痛いよ……舌が痛いよ……!」シクシク…

僧侶「わ、私、どうしたらいいんでしょ……!」オロオロ…

偽勇者(後方支援のこいつらはこいつらで、パニックになっちまってるし……)

偽勇者(前線はどうしても頭に血が上るんだから、お前らは冷静じゃなきゃダメだろ!)

偽勇者(ああもう、しょうがねえなぁ!)


13 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:18:33.84 ID:O82VYKAT0
「勇者と戦士、頭だけを集中して狙え! あと剣を握る時はあまり力むな!」

勇者&戦士「!」ビクッ

勇者「はいっ!」チャキッ

戦士「お、おうっ!」ギュッ…

「魔法使い! 舌噛んだって死にはしねえ! 我慢して、小声で魔法を唱えろ!」

魔法使い「う、うん!」グスッ…

「僧侶! まずは落ちついて深呼吸しろ! お前が落ちつかなきゃ全滅するぞ!」

僧侶「分かりました!」スゥ…ハァ…

勇者「でりゃあああっ!」ブンッ

戦士「どりゃあああっ!」ブンッ

魔法使い「赤き火よ、敵を燃やせ!」ボッ…

ザシュッ! ズバァッ! ボワァッ!

魔獣「グギャアァァ……!」ドサッ



偽勇者(ふう、どうにか倒したようだな……)


14 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:21:42.23 ID:ScQZSf/gO
ナイスアシスト


15 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:23:23.68 ID:O82VYKAT0
勇者「さっきの声……いったいだれだったんだろう?」

戦士「なんにせよ、あの声がなければヤバかったぜ」

魔法使い「ボクも舌噛んだら、血がいっぱい出て死んじゃうと思ってたから……」

僧侶「あの声のおかげで、私も冷静になれましたわ……」ホッ…



偽勇者(オイオイ、マジかよ……)

偽勇者(こいつらについていって、こいつらが魔王を倒すところまできたら)

偽勇者(こいつら四人と魔王の両方を始末して、俺が丸ごと手柄をいただく計画……)

偽勇者(なんだか不安になってきたぞ)

偽勇者(いや、今日はたまたまこいつらの調子が悪かっただけだ、うん)


16 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:23:33.00 ID:itwni6ek0
天の声さんじゃないですか


17 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:26:42.65 ID:O82VYKAT0
─ 村 ─

村人「ありがとうございました……!」

村人「おかげで村が救われました! この包帯と薬草を持っていって下さい!」

勇者「助かります!」

勇者「ですが、また村に魔物や魔獣が現れるかもしれないので」

勇者「村の警備を怠らないようにして下さい」

村人「はい!」



偽勇者(ったく、俺だったらもっといいもんよこせって文句つけるがな)

偽勇者(人のいいヤツだ……)


18 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:30:21.12 ID:O82VYKAT0
─ 迷いの森 ─

勇者「険しい道だな……。みんな足元に注意して──」

戦士「おう」

魔法使い「いたっ!」ドデッ

魔法使い「っつぅ〜……足をすりむいちゃった」

僧侶「今、回復を……」スッ…



偽勇者(バカか!?)

偽勇者(あんなケガでいちいち回復してたら、すぐ魔力切れを起こすだろうが!)

偽勇者(ったく……まるでなっちゃいねえな)イライラ…


19 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:33:56.37 ID:O82VYKAT0
「僧侶!」

僧侶「へっ!?」ビクッ

「回復魔法なんか使うな!」

「さっきの村でもらった包帯や薬草を使えばいいだろ!」

「そんなケガで魔法を使ってたら、肝心なところで息切れしちまうぞ!」

勇者「この声は、村で俺たちを助けてくれた……!」

戦士「魔法を使うなっていってるぜ?」

僧侶「どうしましょう?」オロオロ…

勇者「ここは……声のいうとおり、魔力を温存しよう」

勇者「僧侶の回復魔法は切り札のようなものだからね」

僧侶「分かりました……では、私が包帯を巻きますわ!」

魔法使い「魔法でも包帯でもいいから早くしてぇ……」ズキズキ…


20 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:35:05.03 ID:S2k1HYAa0
僧侶が紅一点ということは
やたら可愛らしい魔法使いはショタっ子か!?


21 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:36:35.33 ID:O82VYKAT0
僧侶「傷口に薬草を塗り込みましたが……」

僧侶「包帯の巻き方はこんな感じでいいのでしょうか?」グルグル…

勇者「いいんじゃないか?」

戦士「そんなもんだろ」

魔法使い「なんだか、すごく足が締めつけられてるんだけど……」



偽勇者(なんだ、あのメチャクチャな巻き方は!? ふざけてんのか!?)

偽勇者(あんな巻き方じゃ、傷はおかしくなるし、血管は傷めるし、ろくなことねえぞ!)

偽勇者(あぁ〜もう!)ダッ


22 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:39:28.73 ID:ScQZSf/gO
そらキレるわな


23 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:42:24.08 ID:O82VYKAT0
偽勇者「貸せ!」バッ

僧侶「きゃっ!?」

戦士「だれだてめえ!?」チャキッ

勇者「待った! あなたの声は──」

偽勇者「いいか、包帯の巻き方はな……こうしてこうしてこうするんだ」グルグル…

僧侶「なるほど……!」

戦士「すげえ、さっきと全然ちがうぜ!」

魔法使い「わっ、すごく足を動かしやすい!」クイクイッ

勇者「あ、あの……ぜひお名前を!」

偽勇者「名乗るほどのもんじゃねえよ、じゃあな!」ダッ

勇者「行ってしまった……」


24 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:44:03.16 ID:OfdbVzp10
ちょっと気になったんだけど勇者とか魔法使いって元ネタって何?
どのSSでも登場するから、ひょっとして既存のゲームかなんかなのかなーって・・・
それとも完全にオリキャラ想像でいいのかな?


25 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:46:27.52 ID:O82VYKAT0
勇者「あの後すぐ、巨大植物のモンスターが出てきたけど……」

勇者「僧侶の魔力を温存してたおかげで、どうにか乗り越えられた……」

戦士「あのアドバイスがなかったら、回復が間に合わず全滅してたかもな」

魔法使い「ボクの足も、あの人のおかげですっかりよくなったしね」

僧侶「名前さえ教えてくれませんでしたが、あの人はいったい……」



偽勇者(あの程度の食人植物に手こずりやがって……情けねえ)

偽勇者(俺がかげながら援護してなきゃ、全員食われてたぜ)

偽勇者(しかも、植物モンスターは根を壊さないと復活するっての……)

偽勇者(ま、根は俺が壊してやったけどな)

偽勇者(これも全て、俺が最後に手柄を奪うためだ!)


26 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:52:23.44 ID:O82VYKAT0
─ 洞窟 ─

暗闇の中を進む勇者パーティー。

フッ……

勇者「しまった! たいまつの炎が消えてしまった!」

戦士「げえっ! 暗くてなにも見えねえよ!」

魔法使い「ボクも火を出そうにも、もう魔力が……!」ボシュッ…

僧侶「ど、ど、ど、どうしましょう! く、暗いのは怖いです、苦手です!」

ドタバタ……



偽勇者(暗闇で一番やっちゃいけないのは、パニックになることだ!)

偽勇者(ただでさえ目が利かないんだからな!)

偽勇者(なんでこいつら、そんなことも知らないんだよ!)イライラ…


27 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:52:31.66 ID:ScQZSf/gO
アフターケアも万全か…


28 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:53:20.22 ID:ZLRkoviU0
これは面白い


29 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2013/12/23(月) 22:56:00.12 ID:P3SXC6y70
>>24
一応ドラクエ3がこういう系の原点だろうな


30 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:56:44.77 ID:O82VYKAT0
偽勇者「こっちだ! 俺についてこい!」ボッ…

勇者「あっ、あなたは!? 村や森で俺たちを助けてくれた……」

戦士「アンタ、たいまつ持ってたのか……おかげで洞窟を楽に歩けるぜ!」

偽勇者「いや、これは消す」ジュッ…

魔法使い「な、なんでさ!?」

僧侶「そうですよ! この暗闇じゃ、たいまつは必須です!」

偽勇者「お前らが暗闇に慣れるためだ!」

偽勇者「いいか、暗闇では絶対パニックになるな!」

偽勇者「落ちついて、空気の流れや気配を肌で感じ取るんだ!」

偽勇者「そうすりゃ、そのうち外と同じように動けるようになる! 分かったか!」

勇者「は……はいっ!」


31 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 22:58:22.96 ID:V/KKtqVo0
しかしこの偽勇者
ストーカーである


33 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/12/23(月) 23:00:40.15 ID:O82VYKAT0
ようやく洞窟を抜けた勇者たち。

魔法使い「やったぁ〜! やっと洞窟を抜けられたぁ〜!」

僧侶「これで暗闇とはお別れですね……だいぶ慣れましたけど」

戦士「太陽がまぶしいぜ……」

偽勇者「少しずつ慣らしていけよ。目がやられちまうぞ」

勇者「あ、あの……ありがとうございました」

偽勇者「あ? 気にすんな。じゃあな」ダッ

勇者「あっ……」

勇者(何者なんだろう……。彼も冒険者だろうけど、俺とは大違いだ……)

勇者「さて、もう少し歩けば“東の王国”だ」

勇者「城に着いたら事情を説明して、魔王討伐に力を貸してもらおう!」



次へ 戻る 上へ