■戻る■ 下へ
猫「吾が輩は猫である」
- 63 名前:VIPがお送りします [sage]
投稿日:2010/06/23(水) 18:48:51.94 ID:ypZpfZTlP
――翌朝
ちゅんちゅん……
猫「……ん」
男「……ZZZzzz」
猫(どうやら眠ってしまっていた様だ)
男「むぅ……ぐぅ」
猫(嗚呼。この男はその様に馬鹿な顔をして眠るのか。――しかし)
男「くぅ……」
猫(“友人”か……。ふむ。思えば吾輩には久しく友と呼べる者は居なかったように思うな)
男「むにゃ……すぅ」
猫(初めは奇怪な男を壱百人目に選んでしまったと思っていたが。
或いは壱百人目はこの男で良かったのやも知れぬ)
男「……ぐぅ」
猫(友人、か……)
- 64 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 18:55:49.02 ID:ypZpfZTlP
開始早々申し訳ないですが確りと書き貯め作って来ます。
>>60 残念ながら自分は絵心がありませんので。御自由に御想像して下さい。
- 65 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/23(水) 19:05:22.63 ID:WBS7xl1iO
続きが楽しみ。面白い。
- 68 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 20:47:18.01 ID:ypZpfZTlP
ガラッ。
男友「男ちゃ〜ん。朝よ〜ぅ!」
男「……ZZZzzz」
男友「あらぁ。可愛い寝顔だわ。
いいこと? 10秒以内に目を覚まさなかったならばアタシの熱い接吻で
男ちゃんの爽やかな朝の目覚めを演出しちゃうわよ〜ぅ?」
男「一体その目覚めの何処が爽やかなのですかッ!?」がばっ
男友「あら。起きて居るじゃない。つまらないわね」
男「そんな戦慄を覚える言葉を掛けられれば、誰でも飛び起きますッ!」
男友「冗談はさて置き。早く起きて準備をなさい。朝食ももう出来て居るわよ」
男「あぁ……済みません」
男友「ん? 何が?」
男「いえ。朝食を作って頂いてしまって」
男友「良いのよぅ。この間、欧羅巴の割烹着を街で買ってね。
エプロン、と謂うらしいのだけれど。どうやら其れは裸体に直接着る物らしくて。
可愛いのよぅ。 今度男ちゃんにも見せてア、ゲ、ル♪」
男「いえ……それは結構です」
- 72 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 20:53:36.59 ID:ypZpfZTlP
――居間
男「そう謂えば男友さん」
男友「なぁに〜?」
男「御嬢様はどちらに?」
男友「あぁ。御嬢様ならばもう女学校に行かれたわよ」
男「へぇ。随分と早起きなのですね」
男友「訊く処に拠ると、異国の球技の練習があるとかで早く御出掛されているらしいわ」
男「へぇ、彼女は壱から拾までハイカラなのですね」
男友「其れはまぁ、この辺りでも有数な名家の御嬢様ですもの」
男「其れはさて置き男友さん」
男友「なぁに?」
男「この朝食は実に美味しいです。昨晩も思って居りましたが、
男友さんは本当に料理が御上手だ」
男友「あらぁ! 嬉しい事を謂ってくれるじゃな〜い!
エプロンの御陰かしらぁ?」
男「其れは断じて違うと思いますが」
- 73 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:01:27.41 ID:ypZpfZTlP
――玄関
男友「さぁ、行くわよ男ちゃん」
男「……はい」
男友「あら? 元気が無いじゃない。どうしたの?」
男「あ、いえ……。いよいよ帝国大学に行くのかと思うと少々緊張してしまって」
男友「まぁ。誰だってそうね。大丈夫、アタシが付いて居るから」
男「有難う御座います」
男友「ま。落ち零れのアタシは反面教師として上手く使って頂戴」
男「そんな事は無いですよ」
男友「あら、優しいのね」
男「いえ。そんな事は」
男友「いいこと? でも気を付けなさい。
あんまり誰にでも優しくしていると、
本当に大切な人への優しさが伝わらなかったりもするものよ」
男(そう謂えば、今朝から猫さんを見て居ないですね)
男友「どうしたの? 行くわよ?」
男「あ、はい」
- 74 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:06:26.53 ID:ypZpfZTlP
――帝国大学
男「ここが……」
男友「そんな事をしていると、御上りさんだってばれちゃうわよぅ?」
男「あ……いえ。こんなにも活気の有る処は初めて見た物ですから」
男友「さぁて。先ずは色々と手続きを済ませないとね」
男「男友さんは今日の講義は在るのですか?」
男友「まぁ、在ると謂えば在るわね」
男「では、私も一緒にその講義を受けて見ても宜しいでしょうか?」
男友「良いけれど、アタシは仏蘭西文学科よ?」
男「確かに私は仏蘭西文学には通じて居りませんが、
折角なので壱日でも早く何か講義を訊いてみたいのです。
……駄目でしょうか?」
男友「……解ったわ。
正直に謂うと、アタシこの講義はサボタージュしてばかりだったから。
真面目に講義に出る良い切っ掛けかも知れないわね」
男「……サボタージュ?」
男友「そうね。良い事を思いついたわ!
講義が終わったら、アタシのサボタージュの行き付けである喫茶に連れて行くわよぅ」
男「それは楽しみです!」
- 75 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:13:09.69 ID:eAWzpKsk0
男:神谷浩史
猫:井上和彦
- 76 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:13:56.40 ID:ypZpfZTlP
――大学内事務課
女事務員「――では、之で手続きは御仕舞です」
男「はぁ」
女事務員「何か質問は?」
男「いえ。大丈夫です」
女事務員「では、講義には明日から出て下さい」
男「はい。有難う御座います。では失礼します」
バタンッ。
男事務員「へぇ。あれが」
女事務員「ええ。あの変わり者の先生の御宅に
新しく下宿することになった書生らしいですわ」
男事務員「あの先生も何をお考えなのか良く解らんよなぁ」
女事務員「まぁ私たちには関係の無い事ですが」
男事務員「はは。其れは違いない」
- 77 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:23:18.72 ID:ypZpfZTlP
男「お待たせしました」
男友「あら。意外と早かったのねぇ」
男「そうですか? 煩雑で矢鱈と永く感じたのですが」
男友「アタシ、あの眼鏡の女事務員なんだか苦手だわぁ」
男「嗚呼。私も何だか苦手だと感じてしまいました」
男友「――さて。じゃあ行くわよぅ」
男「?」
男友「そんなに小首を傾げないでよぅ。“仏蘭西文学の基層”の講義よ」
男「ああ」
男友「男ちゃん、ひとつ謂っておくけれど」
男「なにか?」
男友「……随分と退屈な講義よ?」
男「はぁ」
- 78 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:33:14.73 ID:ypZpfZTlP
――大講義室
老年教授「――拠って、この騎士道的な理想を以って拾壱世紀に書かれたローランの詩は」
男「……」
男友「……」
老年教授「此処で、このシャルルマーニュと謂うのはカロリング朝を開いた小ビビンの子で――」
男「……」
男友「……」
*
りーん……ごーん……。
老年教授「では次回はこの続きから……」
男「――あの、男友さん」
男友「なによぅ」
男「この講義を理解する事により仏蘭西文学の基層を理解出来るのだとすれば、
私は今仏蘭西文学とは最も縁遠い書生の一人だと謂う事になると思うのですが」
男友「安心して。アタシもその一人よ」
- 79 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:43:48.11 ID:ypZpfZTlP
――街中
男友「まぁ。大学の講義なんて大体はあんなモノよ」
男「そうなのですか……」
男友「全く。あの膨大な知識量を詰め込む事に一体何の意味が在るのかしら
なんてアタシは考えてしまうのだけれど」
男「はぁ」
男友「で。此処がアタシの行き付けの喫茶よぅ」
男「へぇ。随分と洒落た門構えですね」
男友「夕食の準備まで少し時間の余裕もある事だし、
少し珈琲でも嗜んでいこうじゃない」
男「珈琲……ですか」
男友「あら。ひょっとして初めてかしら?」
男「ええ。何かの本で読んだ事は有るのですが……」
男友「初体験がアタシとだなんて、光栄だわぁ〜♪」
男「……」
- 80 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:52:51.17 ID:ypZpfZTlP
――喫茶「ライオン」
からりんっ。
旦那「いらっしゃ――おや。男友くんじゃないか」
男友「いやぁねぇ、マスター。そんなにがっかりしないでよぅ!」
旦那「ははは。そんな事は無い。男友くんはウチの大切な常連さんだからな」
男友「あらぁ。嬉しい事謂ってくれるじゃあない」
旦那「処で――そちらの青年は? 御友達かな?」
男友「あぁ、この子はアタシの隣の部屋に下宿してきた子で」
男「男と謂います。宜しくお願い致します」
旦那「宜しく。歓迎するよ。
しかし、男友くんと下宿が一緒と謂う事は……」
男「あ、はい。先生の御宅に御世話になって居ります」
旦那「ふぅむ。成程なぁ」
- 82 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/23(水) 21:58:09.15 ID:fJbA00Th0
っC
sage進行?
- 83 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 21:58:47.96 ID:fJbA00Th0
ああ、聞いといてsageるの忘れてた。ゴメンチャイ
- 84 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:00:06.91 ID:ypZpfZTlP
旦那「注文は珈琲で良いのかな?」
男友「ええ。珈琲を二つお願いするわ」
こぽぽぽぽぽ……。
旦那「嗚呼、そうだ。男友くん」
男友「なにかしらん?」
旦那「さっき、女友くんが来たよ。後でまた顔を出すと謂っていたね」
男友「あら、そう……」
旦那「なんだい? 随分浮かない顔をしているじゃあ無いか」
男友「そ。そんな事無いわよう」
旦那「――はい。お待たせ」
カチャリ。
男「之が珈琲ですか」
旦那「おや。男くんは珈琲を飲むのは初めてかな」
男「あ、はい」
男友「マスターの淹れる珈琲は美味しいわよう」
旦那「おいおい。彼に変に期待をさせてしまうと僕が困るよ」
- 85 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:09:00.27 ID:ypZpfZTlP
カチャリ。
男「香りが……とても良い香りです」
旦那「そうかい。それはどうも有難う」
男友「うぅ〜ん。退屈な講義を受けた後は、やっぱり之よねぇ」
旦那「折角だから、何かレコードでも流そうか」
男「レコードをお持ちなのですか!?」
旦那「この時勢、最早珍しいものではないよ」
男友「このマスターも物好きでね。欧羅巴のレコードを沢山集めて居るのよ」
旦那「新しい常連さん候補を迎える事が出来た祝いに、
なにか目出度い曲を流すとしよう」
からりん。
男友「……げ」
女友「マスター、牛乳を持って来たぞ――あ。男友! 男友じゃあないか!」
男友「……御久し振り」
女友「久し振りだなぁ! 元気だったか!」
男(あの男友さんが押されている……)
- 86 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 22:12:24.14 ID:ypZpfZTlP
>>83 どちらでも御好きに。
書くのが遅いのでsageでのんびりとやろうかと思っているだけなので。
そして入浴して参ります。上がったら一晩書くよ。
- 90 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:09:02.35 ID:ypZpfZTlP
旦那「やぁ。女友ちゃん。牛乳をどうも有難う」
女友「いや。いつもウチを贔屓にして貰って此方こそ有難うと伯父上が謂っていたぞ」
男「男友さん、この方は?」
男友「ええとね」
女友「男友っ!」
男友「なによう。急にそんな大きな声を出さないで頂戴」
女友「しっかり大学には行っているのか!?
お母様もさぞかし御心配をなさっているだろう」
男友「いくらアタシでも貴女に心配される程落ちぶれちゃいないわ」
女友「なんだと!? 人が折角心配をっ――」
男友「あら。御存じないの? そう謂うのを余計な御世話と謂うのよ?」
女友「むきーっ!」
*
旦那「……二人とも、落ち着いたかい?」
男友「はい」
女友「店内で騒がしくして申し訳無かった」
- 92 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:10:21.81 ID:AMC7hESS0
あばばば>>1が寝るのかと勘違いした、まったくスマヌ
- 93 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:15:32.10 ID:ypZpfZTlP
男「――で。御両人は御知り合いなのですか?」
男友「ええ、まぁ。ちょっとした腐れ縁ね」
女友「わたしと男友は同郷なのだ」
男「同郷? というと北国の……」
男友「まぁ。アタシは大学に進学するときに一人で下宿の為に東京に来たんだけれどね」
女友「わたしは伯父上が東京で商店を営んでおられてな。
今はそちらに御世話になっているんだ。
わたしも此方の女学校に進学をする為に男友より少し後に東京へと来たと謂う訳だ」
男「はぁ。成程」
男友「この喫茶で偶然会って以来、彼是と口煩くされていると謂う訳よ」
女友「なんだと!? 折角の人の親切をっ!」
旦那「こほんっ」
- 94 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:23:29.49 ID:ypZpfZTlP
男友「ああ。そう謂えば紹介が遅れたわね。この子は男と謂って」
男「どうもはじめまして」
男友「アタシの夫よ」
女友「ええっ!?」がっしゃーん
男「期待通りの反応ですね」
旦那「……うおっほん」
*
男友「冗談はさて置き」
女友「マスター。皿を割った弁償として今度から牛乳は割引で……」
男友「この子はアタシと同じ下宿先なのよ。昨日此方に来たばかりなの」
女友「そうか! わたしは女友! 宜しくな、男さん」
男「此方こそ宜しくお願いします」
女友「余り男友に毒されてはいけないぞ」
男「はい?」
女友「この男は東京に来てからと謂う物、真面目に大学にも行かず
故郷のお母様に御心配ばかりお掛けしている不肖者なのだ」
男「はぁ」
- 95 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:24:30.07 ID:ypZpfZTlP
>>92 お気になさらず。保守とかありがとう。
- 96 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:31:17.86 ID:ypZpfZTlP
男「そう謂えば女友さんは現在女学校に通って居られるのですよね?」
女友「ん? そうだけれど?」
男友「嗚呼、そうそう。女友は御嬢様と同じ女学校に通っているのよ」
女友「そうか! 男友と同じ下宿先と謂う事は女さんと一つ屋根の下に
御住いと謂う事だったな!」
男「何故態々其の様な謂い方をなさる」
女友「いやぁ。女さんは我が女学校でも最も美しく、かつ才女として名高いからな!
健全な男子諸君としては、泉のように湧き上がる欲望を
抑えきれぬ夜を送って居るのでは無いかと思ってな!」
男「はぁ」
旦那「そう謂えば、あちらの先生は今は異国に学問を修めに行かれて居るとか」
男友「そうよ。英吉利に文学を学びに行って居るのよう」
女友「――と謂う事は、現在御宅に居らっしゃるのは若い男女のみと謂う事にっ!?」
男友「アンタ、本当に一々煩いわねぇ。野良犬だってもう少し御行儀が良いわよ」
- 97 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:45:54.28 ID:ypZpfZTlP
男「学校では女さんはどの様な方なのですか?」
男友「それはアタシも気になるわねぇ」
女友「んー。余り人と仲良くするようなタイプでは無いかしらね。
無口な方よね。
わたしも何度か庭球を一緒にやった事があるけれど、
流石のわたしでも打ち解けることは叶わなかったわ」
男「庭球?」
女友「なんと謂えばいいのかしらね。異国から伝わった球技なのだけれど」
男友「アンタがそんなハイカラな物をやっているなんて知らなかったわ」
女友「まぁ、人が足りないと謂う事で頼まれただけなのだけれど」
男「成程」
女友「只、やはりあの井出立ちだから。
学校でも一部の――そうね。特に後輩は憧れ……のような物を持っている
女学生も少なくない様ね」
男友「ふぅん。アンタももう少し器量良く生まれれば良かったわね」
女友「なんだとぅ!?」
旦那「いやいや。女友ちゃんは、また別な魅力がある淑女だよ。
ねぇ、男くん?」
男「え? あぁ、まぁ」
- 98 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/23(水) 23:56:06.72 ID:ypZpfZTlP
女友「じゃあ、逆に訊くけれど」
男友「何よ」
女友「女さんはお家ではどの様な方なの?」
男友「あー。そうね……」
男「……」
女友「どうしたの? 何か謂いづらい事でも?」
男「あ、いえ。私はまだ昨日越して来たばかりなので良くは解らないのですが……」
男友「――とても、素敵な方よ。
書生であるアタシ達にも良くして頂いて居るわ」
男「え」
女友「そうかぁ。やはりあの美しさは内面から滲み出ている物なのだな!」
男友「え、ええ。そうねぇ。アンタも見習いなさい」
女友「わたしは女性らしくするのは苦手なのだっ!」
男友「無い胸を張るのはみっとも無くてよ」
女友「なんだとーっ!?」
男友「あ。マスター。アタシ達そろそろ行かなくては」
旦那「あぁ、そうかい」
男「御金は御幾らでしょうか」
旦那「ああ。いいんだ。
男くんに新たに常連になって貰う為に、今日はサービスしておくよ」
- 100 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/24(木) 00:12:40.83 ID:r9vqhJP8P
――帰り道、夕刻
男「……」
男友「どうしたのよう。そんな難しい顔をして」
男「あ、いえ。何故あの様な嘘を?」
男友「嘘って?」
男「女さんは素敵な方だ、と」
男友「あぁ、その事。……そうねぇ」
男「……」
男友「同じ女学校ならばきっと御嬢様や御家族の
あまり愉快では無い噂を耳にする機会も有る筈なのに、
どうして女友は、先刻男ちゃんから御嬢様の学校での評判を聞かれたときに
其の様な事を謂わなかったか、解る?」
男「いえ……」
男友「女友は余り、人の悪口だとかそう謂う物に縁が無いというか――苦手なのよ」
男「はぁ」
- 101 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/24(木) 00:19:20.89 ID:r9vqhJP8P
男友「あの子はは昔から性の真っ直ぐな女でね。
ほら、アタシってこんなんでしょ?
子供の頃なんて良く虐められていたんだけれど、
其れを助けてくれたのもあの子だったわ」
男「……成程」
男友「だから。口裏を合わせる――と謂うのも少し違うのかも知れないけれど。
あの子が御嬢様の事を悪く謂いたくは無いと思っているのなら、
それに付き合ってあげようと思ったのよ」
男「男友さんは、人の事を考えられる優しい方なのですね」
男友「そんな事無いわよ。人から嫌われるのが怖いだけ。
もう散々人からは嫌われて生きて来たから」
男「……」
男友「さぁ! 早く帰って夕餉の支度をしないと御嬢様に怒られてしまうわ!」にこっ
次へ 戻る 上へ