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詰めジャンル「抜くや抜かざるや」
1 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:00:25.65 ID:gmuhuk300

それは選ばれし者のみが引き抜くことを許された伝説の剣。

どれほど無視し続けていても、なんとか抜かせようと手を変え品を変え行く先々に現れる。

でも冗談じゃない。

抜いたが最後、どんな理不尽な冒険に巻き込まれるか、わかったもんじゃないんだから。


2 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:01:40.56 ID:fxdPF+NP0

雨の日、滑る足元、転ぶ階段。

とっさに手を伸ばしたその先の、壁に刺さった伝説の剣。

でも常識的に考えて、掴んだところで支えになるどころか抜けるだけ。

緊急時の反射的反応を利用するとはこの伝説の剣、なんと小憎らしい罠をしかけるものよ。


3 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:04:35.50 ID:fxdPF+NP0

帰省ついでにお墓参り。

色褪せた卒塔婆にまじって伝説の剣がきらきらと刺さっていた。

卒塔婆は抜くものではなく挿すものなんだと教えてあげると、卒塔婆の方が頭を垂れた。

人の家のお墓に勝手に刺さっていたのはお前らの方だったのか。


4 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:10:47.49 ID:fxdPF+NP0

通りすがりにふと川面に眼をやれば、伝説の剣が浮き沈み。

今にも沈みそうな刀身が必死に何かを訴えかけてきている。

金属の分際で中途半端に浮き沈みしてるような気色悪い物体を、誰が拾ってやるものか。

じっと見ている眼の前で、伝説の剣は流れ去るでもなく不自然に同じ場所に浮いたまま。


5 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:17:07.13 ID:fxdPF+NP0

喉をからからにして帰宅一番、飛びつくと同時に開ける冷蔵庫。

いつもの位置のコーヒー牛乳を手に取ろうとしてそれが伝説の剣だと気がついた。

コーヒー牛乳はどこにやったと尋ねても、よく冷えた剣は答えない。

腹が立ったので野菜室の隅に落ちていたしなびた菜っ葉を刀身に巻きつけておいた。


6 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:23:04.48 ID:fxdPF+NP0

うっかり落としたボールペン。

拾おうとしゃがんだ視界に伝説の剣。

ついうっかり間違えて手に取るとでも思ったんだろうか。

ほかの人でも触れるだけなら触れるんだから、怪我させる前にさっさとどこかに消えとくように。


7 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:29:06.43 ID:fxdPF+NP0

自転車のサドルにかわって伝説の剣がささっていた。

さいわいサドルはかごに入っていたけれど、剣を抜かなければ元には戻せない。

抜きたくないのでそのまま自転車を押して家まで歩くことに。

再放送があるとはいえ、趣味の園芸・柳生真吾を見逃してしまうのはなんとも無念。


8 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:35:26.36 ID:fxdPF+NP0

満員電車の優先座席。妊婦老人怪我人となみいる強豪押しのけて、鎮座まします伝説の剣。

我こそはこの席に座らんと幾多の勇者が挑んだけれど、抜けるのは世界にたった一人だけ。

でも座りたいと思うほど疲れてもいなかったのであえてチャレンジには加わらず、

ドア付近に立ち窓の外にのんびり忍者をとばしていた。


9 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/02/07(木) 00:39:17.66 ID:T9Iw+vrBO
支援


10 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:41:01.50 ID:fxdPF+NP0

畑の隅に伝説の剣が刺さっていた。

その隣りで寒風の中に我を張るは半ば雑草化した水仙の花。

どちらも抜くわけにもいかないのでまとめて水をやっておく。

この冬が去れば剣も何か花を咲かせるだろうか。


11 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:46:49.33 ID:fxdPF+NP0

窓を開けて空気を入れ替えていたら、ふと眼を離した隙に伝説の剣が窓溝に刺さっていた。

おかげで窓が閉まりきらない。

時は冬、外は木枯し、頃は夜。

嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?


12 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:54:00.36 ID:fxdPF+NP0

剣は今日も雄々しく刺さる。

前の場所からどうやって次の場所に刺さるのだろう。

テレポートか空でも飛ぶか、はたまた謎の黒子が持ち運ぶのか。

抜く気はやっぱりないけれど、宅配伝票の剥がしかすだけはとっておいてやった。


13 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/02/07(木) 00:54:11.63 ID:ylKO/T0nO


14 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:59:06.60 ID:fxdPF+NP0

何に恋うるか雪女郎が唄う夜は、伝説の剣もこたつか鞘でおとなしくしているかと思いきや

降り積もった雪の中から福寿草に並んで切っ先を出し、月待ち顔でつんとおすまし。

新雪は踏みしめるもの、踏んだ先にとがったものが埋もれていては危険そのもの。

誰かが踏む前に抜けという気だろうが、空いている植木鉢をかぶせてはい解決。


15 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 01:06:46.37 ID:fxdPF+NP0

路傍の段ボール箱の中に伝説の剣が入っていた。しかも「拾ってください」ときたもんだ。

こっちを見つめてにゃあとか細く鳴く芸もないくせに、同情をひけるとでも思っているのか。

というかこの字はいったい誰が書いたんだ。

字に朱でチェックを入れる習字の先生の説明を、伝説の剣は鈍く光りながら聴いていた。


16 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 01:12:56.70 ID:fxdPF+NP0

道端に伝説の剣が刺さっていた。

飼い主はそこのスーパーで買い物中か、柄に犬がつながれている。

なるほど、選ばれし者にしか抜けないこの剣ならば、犬が剣ごと引き抜いて逃げる恐れはない。

なかなか考えたもんだと、首輪抜けを披露する犬を見ながら感心した。


17 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 01:19:52.01 ID:fxdPF+NP0

雨上がりの樹下に伝説の剣が刺さっていた。

その周囲には一夜きのこのコロニーが。

これ見よがしにきのこを片っ端から抜いたあと、剣の柄をぽんぽん叩き

胞子を飛ばさないことを確認してから家路に着いた。


18 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 01:27:15.21 ID:fxdPF+NP0

登りなれた山の道しるべが違うところにささっていた。

自分はよく知っているからいいものの、この山は素人さんだと非常に迷いやすい。

正しい場所に立て直そうとして、こいつが道しるべになりすました伝説の剣だと気がついた。

嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?


19 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 01:33:11.64 ID:fxdPF+NP0

遅刻しそうな曲がり角。思わずぶつかりかけたのは運命の人ではなく伝説の剣。

ぶつかった衝撃であやうく抜けてしまうところだった。

とっさに身をかわした反動でひねった足首をひきずって、今日はめでたく遅刻決定。

剣が転入してこなかったのはフラグを立てずにすんだからに違いない。


20 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 01:40:12.47 ID:fxdPF+NP0

借りてきた本がなんだか重いと思ったら、前の人の返却期限票のかわりに伝説の剣が挟まっていた。

栞がわりに挟み直そうとついうっかり手に取ることを期待したのか。

こんな奴に負けてやる義理もないので剣は挟んでそのままに、一気に七百ページを読破した。

眼は痛くなるは肩は凝るは手は痺れるはとひどい目に遭ったけれど、剣に勝ったからまあよしとしよう。


21 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 01:46:17.43 ID:fxdPF+NP0

真っ二つに割れた海の底に伝説の剣が刺さっていた。

不思議の現象に不思議の現象が重なった以上、そこに何らかの神意を感じるのが宗教人。

無視していっては指導者としての器を疑われるとモーセがきばるが、

ほらほら、早くしないとエジプト軍は追ってくるし、海ももうすぐ閉じちゃうよ。


22 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 01:51:35.18 ID:fxdPF+NP0

家を出たときにドアノブと認識していたものは、帰宅時に伝説の剣の柄と化していた。

そっと手をかけるとゆるゆる抜けそうになったので慌ててぐっと挿し戻す。

仕方がないので大統領にドアを開けてもらったけれど、

刀身がつっかえて開きにくいったらありゃしない。


23 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 01:58:11.77 ID:fxdPF+NP0

ささいなことで仲違い。

なんとか誤解を解こうにも、奥歯に物が挟まったような物言いしかできなかった。

だって奥歯に挟まっていたのはあの伝説の剣なんだから。

嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?


24 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 02:04:09.36 ID:fxdPF+NP0

矢鴨を現実に眼にする前に剣鴨を見つけてしまった日にはいったいどうすればいいんだろうか。

この剣を抜けるのは世界にたった一人だけ。

でも抜く抜かない以前の問題。矢鴨同様、こいつも近づいていけばひたすら逃げる。

嗚呼、この鴨、追うや追わざるや?


25 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 02:11:23.99 ID:fxdPF+NP0

ちくわの穴に伝説の剣が刺さっていた。

細切り野菜を詰めてしゃぶしゃぶのたれにつけ、丸かじりしようと思っていたのに。

生野菜スティックにつけるのはめんたいマヨ以外認めないと大統領がしつこいので

ちょっくら近くのスーパーまで行って、ちくわと一緒に買ってきてやるか。


26 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 02:21:24.89 ID:fxdPF+NP0

伝説の剣が温泉に柄まで浸かりゆったりくつろいでいた。

混浴泉なのであいにくとこいつの性別を知る手がかりにはなりそうもない。

性別といえばこいつが起こす諸現象は意志に基づくものなのか機能に基づくものなのか。

とりあえず、いっちょ前にタオルを柄尻にのせるのはやめろ。


27 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 02:27:30.15 ID:fxdPF+NP0

せっかく新しいおうちを見つけても、いつも伝説の剣が入っているから引っ越せないとやどかりが泣く。

なるほど、新しい貝殻にはいつも差し押さえ物件よろしく伝説の剣。

やどかりがどんなにはさみで引っ張っても殻ごとぶつかっても、抜けるのは世界にたった一人だけ。

嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?


28 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 02:34:18.31 ID:fxdPF+NP0

21 万軍の主は言われた。「見よ、この剣を抜けるのは世界にたった一人だけ」

いつの間にすりかわったのか、主が抜かれようとしたアダムの肋骨は伝説の剣にほかならなかった。

22 かわりに抜いてやらねば主は唯一神たるプライド上、アダムの脇腹に手を入れられたままだろう。

そして最後の審判の日まで、世界はずっとそのままなのだ。


29 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 02:44:11.28 ID:fxdPF+NP0

一塁ベース前に伝説の剣が刺さっていた。

攻撃妨害と審判が告げたものの哀しいかな、この剣を抜けるのは世界でたった一人だけ。

仕方がないので選手総出でグラウンドの表面を掴み、ずずっと横に動かした。

一塁側ベンチにずれた伝説の剣にその座を奪われた監督を慰めているうちに試合は無事終了。


30 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 02:52:05.99 ID:fxdPF+NP0

山頂の岩に伝説の剣が刺さっていた。

登山者は山頂を示すこの岩を踏むのが楽しみなのに、剣が邪魔で踏めやしない。

京都市と高槻市の境にあるポンポン山がざまぁみやがれと笑っていたが、

名前だけで別にポンポンなんて音しないじゃんと指摘すると、急に近くの山と関係ない話を始めた。


31 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:00:27.53 ID:fxdPF+NP0

バス停にかわって伝説の剣が刺さっていた。

本物のバス停はといえばはやく抜けよといわんばかりにベンチに腰掛けだらけている。

自宅前まで少しずつ引き寄せるのは諦めた大統領が刀身に時刻表を書き写しているが

時間通りに来るは京都市バスの恥晒しと、同系統のバスが三台つらなり笑いながらやってきた。


32 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:06:03.94 ID:fxdPF+NP0

夜の浜辺で海亀が途方にくれる。

産卵しようと思っていたところに無粋に刺さる伝説の剣。

別の場所に産めばとは思うものの、海亀には海亀なりの都合というものがあるのだろう。

嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?


33 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:15:22.00 ID:fxdPF+NP0

洋式便器の蓋に伝説の剣が刺さっていて開けない。

これじゃ座れないじゃないかとさっきから便所魔王のベルフェゴールがやかましいのなんの。

花子さんとこっくりさんでもしてろといってやったら、二人そろって剣が邪魔で紙が置けないとぬかす。

あまりにぎゃあぎゃあ騒いでいたせいか、烏枢沙摩明王に四人そろって正座させられ説教された。


34 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:22:10.55 ID:fxdPF+NP0

豆腐小僧が助けを求めてやってきた。

いつも持ち歩いている豆腐に刺さっている伝説の剣が重くて肩が凝って仕方ないらしい。

なぜこいつが昔おばあちゃんにあげたはずの肩たたき券を持っているのかは知らないが、

出された以上は凝った肩をもんでやるしかないだろう。


35 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/02/07(木) 03:24:52.07 ID:ylKO/T0nO
保守age

落ちそうだってば


36 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:34:22.30 ID:fxdPF+NP0

プールの中の不抜棒。隣りに刺さるは伝説の剣。

このままでは泳いでいる最中に子供が二本の棒につっかえて、この夏最大の惨事になるかも。

水中こそは空中を泳げない人類が血を吐く思いで手に入れた理想郷。

嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?


37 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:39:42.40 ID:fxdPF+NP0

布団に入ると天井に伝説の剣が刺さっているのに気がついた。

この剣を引き抜けるのは世界にたった一人だけとわかってはいても、これでは落ち着いて眠れない。

今にも自分で勝手に落ちてきそうな分際で、抜けと人をせかす気か。

嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?


38 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:45:19.04 ID:fxdPF+NP0

道端に伝説の剣が刺さっている。

誰も引き抜けないままあまりにも長い時間が過ぎたせいか、これが剣であることは忘れ去られ

刃上では蝸牛角上の二大国と並ぶ超大国が栄えていた。

ここでいきなり剣を抜けば、世界は面白いことになるんだけどな。


39 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:51:38.11 ID:fxdPF+NP0

ハードルに混じってちゃっかりと、グラウンドに伝説の剣が刺さっていた。

飛び越えるのではなく蹴倒す派だと知っての挑戦か。

たとえ蹴飛ばして抜けたとしても、抜いたことにはされるんだろう。

嗚呼、このハードル、跳ぶや跳ばざるや?


40 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:56:38.77 ID:fxdPF+NP0

玄関のドアを開けようとしたら何かにつっかえた。

隙間から覗いた先には思ったとおり伝説の剣。

でも、わかってるんだろうか。

いくらこいつが邪魔でもドアを開け切らなければ抜きにいけないということが。


41 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 04:02:19.42 ID:fxdPF+NP0

仕事はひどくいい加減なくせにイベントごとにはまめに顔を出す我らが市長。

カメラ目線の晴れやかな笑顔でさっと取り払った幕の下、記念碑はなく伝説の剣が刺さっていた。

イベント会場はたちまちにして糾弾の場に。

剣を抜いてやれば誤解も解けるだろうけど、他人の不幸は面白いので黙って見物を決め込んだ。


42 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 04:07:08.92 ID:fxdPF+NP0

深夜のコンビニ前に伝説の剣が刺さっていた。

不良が深夜にたむろするのは決まって灯りと物があるところ。

使い手に真の勇者を選ぶくせに、自身は闇と無聊に耐えられないのか。

軽く侮蔑のまなざしを向けてやると、伝説の輝きが少しだけ褪せたように感じられた。


43 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 04:12:29.31 ID:fxdPF+NP0

今日もまた伝説の剣が行く手をさえぎり刺さっていた。

とある戦国大名は選ばれし者が持つ一本の名刀より雑兵が持つ百本の槍と喝破した。

武具がもっとも必要とされる時代においてさえ、現実とはそういうものだったのだ。

それでもお前はたった一人、この時代において我を張り続けるというのか、伝説の剣よ。


44 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 04:17:49.75 ID:fxdPF+NP0

門扉をさえぎるように伝説の剣が刺さっていた。

おかげで門がきちんと閉まらない。

こんなちゃちな門などあってもなくても泥棒さんには関係ないとわかっていても

ぴしっと閉まってくれないとなんだか気分が落ち着かない。


45 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 04:24:05.82 ID:fxdPF+NP0

裏の畑でポチが鳴く。

散歩はさっき行ったはず、覗いてみると伝説の剣が刺さっていた。

ポチよ、まさかお前までもがこいつを掘れといいたいのか。

仕方がないので風は冷たかったがもう一度散歩に連れて行くことにした。


46 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 04:27:05.56 ID:fxdPF+NP0

家の前に伝説の剣が刺さっていた。

狭い道路、車が通れるか通れないかのぎりぎりに。

たとえば大型トラックがこいつを避け切れず全重量をかけてぶつかったらどうなるんだろう。

剣ごとアスファルトがはがれるんだろうが、問題はどこまでが台座として剣に付着しているかだ。


47 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/02/07(木) 04:40:25.26 ID:vfU5mzlAO
あの忍者の人だよな!?おまえの文章大好きだぜ
保守


48 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 04:47:27.64 ID:fxdPF+NP0

清々しい朝、忌々しい剣。

柄にとまった小鳥がおはようとさえずる。

このまま営巣でもされようものならどうする気だろう。

雛を振り落としてまで抜かれたいというのなら、お前に伝説の名はふさわしくない。


49 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 04:48:34.12 ID:fxdPF+NP0

美女の閉じ込められた箱に次々と刺さるマジシャンの剣。

いざ引き抜く段になり、どうしても抜けない最後の一本、いつのまにすりかわったか伝説の剣。

舞台は騒然、断りもなく下りる幕。

嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?


50 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 04:56:32.06 ID:fxdPF+NP0

台車の上に伝説の剣が刺さっていた。

底を覗いても切っ先はどこにも見当たらない。

こいつに理屈を求めるのは無駄だとわかっちゃいたけど、

それにしても台車とは人間さまが乗って押してもらうための乗り物だろう。


51 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 05:01:27.02 ID:fxdPF+NP0

公園の砂場、子供が作った山の上に伝説の剣が刺さっていた。

このまま放っておけば砂場に針を混入するどころの騒ぎじゃない。

そしてこの剣を撤去できるのは世界にたった一人だけ。

やむをえず磁石を片手に砂場を探る。剣にかちっとくっついた。


52 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 05:09:44.48 ID:fxdPF+NP0

伝説の剣とさしで飲み明かしている人がいた。

伝説をつまみにするとは、酒飲みはほんとにどんなことでも飲む理由にするから困る。

抜きて振るわれるも伝説、抜かれぬまま朽ちゆくのもまた伝説、ともに風流なものさと言うけれど

風流も何もただ邪魔なだけなんですがね。



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