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人形「人間になりたい」
87 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 09:19:00.32 ID:Sr/JXnl60
翌日・教室

女友「おっす」ペカー

人形「や、やぁ」ゲッソリ

女「…どうしたの?」

女友「分かんない」

人形「女ぁ」ピョン

女「うん?」ダキッ

人形「やはりここが落ち着く」

女友「お、新しい机きてんじゃん」

女「綺麗だね」

女友「思わず傷を残したくなる」シャカッ

女「やめよう?」


88 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 09:26:48.63 ID:Sr/JXnl60
キーンコーンカーンコーン

女友「おっ昼ぅ」ガチャン

男「さりげなく」ガチャン

女「うん」

人形「うん」

男「そういや」

 「そろそろだな。中間テスト」

女「そうだね」

女友「……え?」

女「え、って告知あったけど」

女友「……何もやってねぇ」

 「女!勉強会をしよう!」ガバッ

 「女ん家で!」

女「うん、いいよ」

男(好機…ッ!)


89 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 09:33:16.94 ID:Sr/JXnl60
街中

女「こっちの方」

男「へ、へー」

 (一緒に帰るどころか家まで)

 (ついてるぅ)

DQN女「おー、面白いもん咲いてる」プチッ


90 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 09:40:20.44 ID:Sr/JXnl60
女家

女「ただいま」

女母「あら、おかえり」

女友「お邪魔しまー」

女母「あら、いらっしゃい」

男「お邪魔します」

女母「あら、」

 (……今度は異性連れてきてる)

 (女ちゃんの交友関係って…)


91 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 09:45:38.07 ID:Sr/JXnl60
女の部屋

女「ここが私の部屋」

男「ほー」

 「おんなの子の部屋ってはじめて入った」

女友「かまととぶってんじゃねーよー」

男「ほんとだって」

 「本、いっぱい置いてあるんだな」

女「うん」

 「気に入ったのあったら貸すよ?」

男「あ、いや」

 「まだ星のやつ読み終わってないし」

女友「あんな短いもんすぐだろ」


92 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 09:53:06.60 ID:Sr/JXnl60
男「活字って苦手なんだよ」

女「え……?」

 「じゃあ、無理に薦めちゃってたかな」

男「いや!そんなことは!」

 「女さんが好きだから好きです!」

 (――あ、言っちゃった)

女「…?なら、いいんだけど」

男(流されたー!)

 「べ、勉強、はじめましょうよ」

女友「そうだった」


94 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 10:03:06.83 ID:Sr/JXnl60
女「――で」

男「うん」

女友「うーーん?」


女「――でしょ」

男「あーなるほど」

女友「ヴァー」ゴロゴロ


女「ってこと」

男「そういう」

女友「ほれ、猫じゃらし」ピョコピョコ

人形「私を何だと思っているのか」


95 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 10:07:39.73 ID:Sr/JXnl60
女友「うーん」ジー

人形「………」

女友(そもそも)

 (人形さんにテスト助けてもらえば)

人形「………」

 「自分でやれよ?」

女友「……はい」


96 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 10:12:24.12 ID:Sr/JXnl60
女「じゃ、またね」フリフリ

人形「………」フリフリ

男「お邪魔しましたー」

バタン

女友「あんた家どっち?」

男「駅まで歩いて電車」

女友「遠いとこからよくやるな」

 「あたしこっちだから」

 「じゃ」

男「おう、また」


97 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 10:19:47.51 ID:Sr/JXnl60
電車内

男「………」ガタンゴトン

 「わりとローカルな駅までだから」

 「各駅停車の普通なんだよな」

 「………」ガタンゴトン

 「そうだ、このヒマな時間に」スッ

ペラ

 「………」ガタンゴトン

 「……酔った」ガタンゴトン


98 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 10:25:55.46 ID:Sr/JXnl60
夜・女友家

女友「ただいまー」

 「ん」

 「また書き置きか」

 『夕飯、つくってあるので

  あたためて食べてください

  今日も帰り、遅くなります

  女友母』

女友「ま、いいけど」

 「いつものことだし」


100 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 10:30:42.60 ID:Sr/JXnl60
夜・女家

女「いただきます」パチ

女母「いただきます」パチ

 「女ちゃん、最近よくお友だち呼ぶようになったわね」

女「うん、まぁ」

 「この子のおかげなんだよ」

人形(………)

女母「またそんな人形持ち出して」

女「ほんとだって」

人形(女、友だちも出来たし)

 (次、何やればいいんだろう)


101 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 10:36:42.94 ID:Sr/JXnl60
女の部屋

女「お母さんったらまだ信じてくれないんだよね」

 「『おとなの人ってものは、

   よくわけを話してやらないとわからないのです。』かー」

人形「女」

女「うん?」

人形「今さ、悩み事とか相談とか、何かないかな」

女「とくにないかなぁ」

人形「そ、そっか」

女「うん」

人形(………)

女「じゃ、電気消すねー」

パチン

人形(何、すれば……)


102 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 10:42:36.02 ID:Sr/JXnl60
夜・男の部屋

男「……よし」

 「今日は全部読むぞー」

ペラ

 『ぼくはつるべを、王子さまのくちびるにもちあげました。

  すると王子さまは、目をつぶったまま、ごくごくとのみました。

  おいわいの日のごちそうでもたべるように、

  うまかったのです。

  その水は、たべものとは、べつなものでした。

  ほし空の下をあるいたあとで、車がきしるのをききながら、

  ぼくのうでに力をいれて、くみあげた水だったのです。

  だから、なにかおくりものでもうけるように、

  しみじみとうれしい水だったのです。』

  ………


103 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 10:48:11.71 ID:Sr/JXnl60
翌日・学校

女「おはよう」

女友「おっす」

男「おう」

人形(挨拶…は自分からするようになったしなぁ)

男「あ、昨日読み終わったよ」

女「うん、どうだった?」

男「寂しい終わり方だったね」

 「でも」

女「でも?」

男「優しい終わり方だった」

女「……そうだね」


104 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 10:56:10.83 ID:Sr/JXnl60
授業中

現国教師「でー、この曇り空という一文がー、心理を描写していてだなー」

女(うんうん)

現国教師「ではー、ここの段落においてー、作者の意図は何かー」

女(これは…)ウズ

人形(女がとても発言したそうにしている)

 「は――

女「はい」

現国教師「じゃあ女ー」

人形(え……)


105 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 11:02:53.75 ID:Sr/JXnl60
女「――、っと、私は思います」

現国教師「なるほどなー、そうとったかー」

 「いい発想だぞー」

女「……ほっ」ガタン

 「………」テレ

人形(………)シュン


106 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 11:06:35.60 ID:2xYVI+M20
人形に魂が宿ったのは悪魔だと聞くが……支援


107 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 11:08:21.87 ID:Sr/JXnl60
キーンコーンカーンコーン

女友「おっひ」

女「とう」ガチャン

女友「るぅ」

 「うお、負けた」

女「えへ」

男「俺もいるぞ」ガチャン

女友「あんたはいつも遅いなー」

男「場所が悪いから仕方ない」

人形(………)


108 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 11:10:02.67 ID:B7pe/gcB0
朝起きたら女になってた の人?


109 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 11:14:33.20 ID:Sr/JXnl60
女友「うさりんご剥いてきたよー」

 「ってあれ」

 「人形さん、元気なくない?」

人形「……ん」

 「そんなことはない」

女「どうか、した?」

人形「別に」

男(……?)


110 名前:>>108 いいえ [] 投稿日:2010/06/26(土) 11:21:22.65 ID:Sr/JXnl60
………

人形「………」

ペラ

 『ねえ…ぼくの花…、

  ぼく、あの花にしてやらなくちゃならないことがあるんだ。

  ほんとによわい花なんだよ。

  ほんとにむじゃきな花なんだよ。

  みのまもりといったら、四つのちっぽけなトゲしか、

  もってない花なんだよ。…』

人形「いつまでも弱い花じゃーない、か」

男「ね」

人形「……!」ビクゥ

男「どうしたの」

 「やっぱ様子おかしくて、心配になった」

人形「あー」


111 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 11:27:26.58 ID:Sr/JXnl60
人形「正直私はもう、いらない存在なんじゃないかってね」

男「え?」

人形「前の女ったらさ、ずっと一人ぼっちで」

 「よく私に話しかけてきたんだよ」

 「他人に話せない悩み事とか」

男「そうなんだ」

人形「人形ながらも私はさ」

 「女とは長い付き合いだから」

 「何とかしてやりたいと思ってた」

男「うん」


112 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 11:32:30.59 ID:Sr/JXnl60
人形「何とかなった」

 「今の女、楽しそうだろ」

男「そうだね」

 「よく話すし、よく笑うようになった」

人形「もう、もし何かに悩んだって」

 「友だちがついてるから、大丈夫だよね」

男「………」

 (『きみが、きみのバラの花をとてもたいせつに思ってるのは…』)

………



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