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農夫と皇女と紅き瞳の七竜
- 345 名前: ◆M7hSLIKnTI []
投稿日:2013/11/08(金) 19:42:58 ID:gXvHTkT.
……………
………
…
…更に二日後
…月の国、西の山岳地
傭兵長「…偵察に行かせた者の情報によると、やはりこの先の関所を防衛線として多数の兵を配置しているとの事…強行突破は難しいかもしれませんな」
男「追っ手が無いから期待したが、やはり西の台地へは近寄せないつもりか…」
傭兵長「追っ手にしても派兵はしておるのかもしれませんな。ただ月の兵が我々に寛容であるために本気で捜索をしないのでしょう」
西の台地までは、本来ならあと二日とかからない距離だ。
しかし現在地と禁足地であり半島の地形を呈したその場所への間には、越えるに現実的でない険しい山と監視船が多数浮かぶ海が隔たっている。
山岳地に三箇所ほどある通行可能な谷には全て関所が設けられ、海岸線もまた軍港を兼ねた施設が置かれており、隙は無い。
故郷の村と星の国の計らいで物資と装備は整った我が隊だが、絶対的な兵数の不足は如何ともし難い問題だった。
いかに月の兵の我々に対する敵意が薄くとも、直接の指揮官がいる大隊となれば邂逅すれば交戦せざるを得まい。
もしも上手く関所を突破できたとしても、今度こそ多勢の追撃を受ける事となるに違いない。
そうなればまさにジリ貧、いかに隊員達が優秀であろうともこれ以上に数が減れば竜討伐どころではなくなる。
- 346 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/08(金) 19:43:32 ID:gXvHTkT.
男「ひとまず少し道を戻って、山間に入った所で今日は野営を張ろう。ここは関所に近過ぎる」
傭兵長「もしかしたら、そこで長く凌がねばならぬかもしれませんな。兵が薄くなるにどれだけかかるか…」
男「食糧はまだ二週間はもつだろう。確か今朝方に湖の畔を通った。その近辺…水の補給が可能な位置に陣取るのが良かろう」
歩んだ道を後進し、湖の畔へ着く頃には夕方が近付いていた。
しかし湖畔その場所ではいけない。
水場の直近はこうして野営を張るに適しているが為に、警戒も強いはずだ。
そのまま湖畔を周り、森がある所を選って水場から30分ばかり離れる。
見通しは無いが少し開けた場所を探し当て、野営地を決する頃には日が落ちようとしていた。
- 347 名前: ◆M7hSLIKnTI [sage] 投稿日:2013/11/08(金) 19:52:19 ID:gXvHTkT.
こういう書かざるを得ない物語背景や状況の描写が一番つまらん
今更あんまり凝るんじゃなかったと後悔するわ…この辺は流し読みしといて下され
- 348 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/08(金) 20:13:44 ID:KC71yUMU
ところがどっこいじっくり読んでたりするんだな
- 349 名前: ◆M7hSLIKnTI [sage] 投稿日:2013/11/08(金) 21:10:57 ID:v7Ge3a5o
まじか、嬉しいけど手が抜けねえな…
今度こういうシーンでこっそりちくわ大明神とか忍ばせたら気づかれるだろうか
- 350 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/08(金) 21:12:06 ID:aIhAB47M
女ちゃんじゃなくて幼馴染ちゃんだった
- 351 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/08(金) 21:53:58 ID:auBVuAlo
農夫ってあるから最強の農家さんの話かと思った…あれはチートだ
- 352 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 09:12:40 ID:vyvPHclo
一時を思えば随分と隊の備品は充実していると思う。
水が充分確保できる時は、盥に湯を汲み荷馬車の幌の中で軽い湯浴みもできる。
そのおかげで、女性陣のストレスも少ない。
女「…先にお湯を頂戴しました。男さんも汗を流されては?」
男「ああ、そうする」
涼しい気候だからか、隊員達は数日に一度ほどしか湯浴みをしないようだ。
俺も自身としてはそれでも良いのだけど、女と寝床を共にする事を思えば一日の垢を拭わなければ落ち着かない。
相変わらず口の悪い隊員に、いつも『しっかり洗っておかないとマナー違反ですよ』などと冷やかされるが、気にしない事にした。
充分な数のテントが確保されているから今は俺と女、幼馴染と時魔女はそれぞれ二人ずつで一基が割り当てられている。
だからといって、隊員達が思うような不純な行為はしていない。
でもあまりそれを言い張ると今度は俺のカラダの機能を疑われかねないから、そこについても主張するのはやめた。
- 353 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 09:13:12 ID:vyvPHclo
俺がテントの方へ戻ると、女は外で星空を眺めていた。
見上げれば確かに満天の星屑が、落ちてきそうなほどに近い。
男「…綺麗だな」
女「はい…王都の空より、ずっと」
王都では夜通し何かしら城や城下の灯りがあったから、こうも星は見えなかった。
俺は昔から故郷の村でこれに近い星空を見てきたから珍しくもないが、彼女の目にはまだ新鮮に映るのだろう。
女「あ…流れ星!…男さん、見ました?」
男「いや、気付かなかったな」
女「願い事をするような間は無いものですね。せめていつ流れるか判っていれば、できるかもしれませんけど」
ふと、もし願う事ができるなら、彼女は何を唱えるのだろうと気になった。
この旅を無事に終える事か、それとも不穏な陰りをみせる祖国の安定だろうか。
俺なら…やはり翼竜を討つ事を願うだろうな。
- 354 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 09:13:43 ID:vyvPHclo
そして夜空にはまた、一筋の星が尾を引く。
女「………ますようにっ」
それに間に合ったかは解らなかったが、その時に彼女が早口で唱えた言葉は先に思ったいずれでも無かった。
言った後から彼女は口元を押さえ、俯き加減に横目遣いで俺を見る。
男「随分、照れ臭い事を言ってくれるな」
女「…言葉そのままの意味だけではありません」
…なるほど、確かに色んな意味を含むだろう。
旅の無事、翼竜の打倒、身の上の安定など…その全てが叶わなければ、彼女の望みは満たされない。
男「まあ…待っててくれよ」
女「…浮気が心配ですけど」
男「しない…してないって。テント入ろう、湯冷めしてしまう」
女「はい」
女が先にテントに入り、その後に続こうとした。
- 355 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 09:14:15 ID:vyvPHclo
その時、星明かりに照らされた周囲の照度が、一瞬落ちたように感じて空を見る。
男(…あれは、飛翔魔獣だな。このまま飛び去ってくれればいいが)
この山岳地には飛翔能力を持つ魔物が多く巣食う。
小さなものではハーピーやバルチャー、更に大型のガルーダが生息すると聞いた事もあった。
例えガルーダであったとしても勝てない程の相手ではないが、夜間の戦闘は面白くない。
男(…鳥型の魔物なら夜目はきくまい、向こうから襲ってはこないと思うが)
その予想は正しかったようで、空を舞う影は真っ直ぐ山の向こうへと消えていった。
女「…どうされたのです?」
男「ん…いや、先に休んでおいてくれ。ちょっと傭兵長に、見張りの増員を頼んでくる」
女「そんな事を言って、幼馴染さんと逢引するつもりじゃないんですか」
男「馬鹿言え、もう勘弁してくれよ…」
- 356 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/09(土) 11:30:49 ID:G2hQ8Kzw
嫉妬する女さんprpr
- 357 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 11:54:34 ID:vBYxDnHs
…四日後、同じ野営地
連日、数名の隊員を偵察に送っているが、関所が手薄になった様子は無いとの報告しか上がってこない。
幸い今のところ野営地には魔物の襲撃は多くなく、二日目にハーピー数羽が近付いたが、交戦前に向こうから逃亡した。
そのハーピー達が仲間を引き連れて再来する可能性は否定できないが、野営地を変更するほどの理由にはならない。
そうして四日目の正午も過ぎようとしていた頃の事。
先の僅かな危惧は、現実のものとなったのだ。
見張り兵「魔物襲来!ハーピー多数、大型の鳥型魔獣もいます!」
男「くそ…本当に来るとはな。弓兵、出番だ!腕を鈍らせてはおるまいな…!」
弓兵「へっ!隊長は眺めてるだけしか出来ますまい、まあ指でも咥えてて頂きましょう…!」
全く、イキのいい隊員が揃ったものだ。
見るにハーピーは20羽以上、恐らくガルーダと思われる大型の鳥獣も二体見える。
- 358 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 11:55:47 ID:vBYxDnHs
幼馴染「へっへーん、ちょっと腕を振るうのも久しぶりだもんね。かかってきなさいっての!」
男「調子に乗るな、ハーピーはともかくガルーダは気を付けなければ喰われるぞ」
ガルーダは鳥型魔獣としては最大の魔物、個体数は少ないがこの月の山岳地を主な生息地とする。
渡り鳥としての性質もあるらしく、寒くなるこの後の季節はあの砂漠の方面へと移動するらしい。
蛇の姿をしたヴリトラの存在があったからだろうか、砂漠ではガルーダは蛇を喰らう神鳥として畏敬の対象であるという。
その巨鳥にとって今は、砂漠への移動に向けた喰い溜めの時期に当たる。
女「魔法の使用許可を…!」
男「ああ、任せた!」
女が火炎魔法の詠唱を始める。
俺も傭兵長も、数名の隊員と共に見守るしかできない。
矢を受けた魔物が地に墜ちでもすれば出番もあろうが、地味な役割だ。
- 359 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 11:57:45 ID:vBYxDnHs
弓兵の活躍により、ハーピーの個体数は目に見えて減ってゆく。
幼馴染「…炸矢っ!」
女「業火に焼かれて貰いましょう…!」
そして彼女らの活躍により、ガルーダも飛ぶ速度と高度を落とし始めていた。
勝利は見えた、被害はありそうに無い…誰もが油断したその時。
傭兵長「いかん…!幼馴染殿、背後です!」
幼馴染「えっ…!?」
別の角度から滑空し密かに接近していた三体目のガルーダ、避ける間も無くその爪が幼馴染に迫る。
幼馴染「しまった…!ああぁっ…!」
男「幼馴染っ…!」
巨鳥は彼女を攻撃するのではなく、その足に捕らえて飛び去ってゆく。
彼女に当たる可能性を思えば、矢も魔法も放つ事はできない。
既に高度は100フィートを超えている、彼女自身が抗って解放されても地上に叩きつけられてしまうだろう。
群れの他の個体も彼女を捕らえたガルーダと共に飛び去ってゆく。
巣に持ち帰り、彼女を喰らうつもりなのだ。
- 361 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/09(土) 12:53:11 ID:m9bdorV.
幼馴染フラグ?
- 362 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 12:59:40 ID:vBYxDnHs
男「時魔女!」
時魔女「解ってる!時間停止…!」
対象の個体が動きを止める。
しかしそれだけだ、時間稼ぎにしかならない。
男「時魔女…もし幼馴染が落ちたとしたら、地上近くでアイツの時間を止める事はできるか…!?」
時魔女「時間停止を解いたら同じ落下速度を取り戻すから、意味が無いよ…どうしたらいいの…!」
俺は飛び去る他の個体がどの方向に行くかを覚えようとした。
男(くそっ…だからどうなるってんだ!)
鳥が数十分で飛ぶ距離を歩めば一日もかかるだろう。
巣を探したところで出来るのは彼女の骨を拾う位の事だ。
男「畜生…打つ手が無い…!」
未だ彼女を掴んだまま止まっている巨鳥を睨む。
その時、俺の視界は更なる魔物の姿を捉えた。
- 363 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 13:00:11 ID:vBYxDnHs
傭兵長「あれは…!」
男「嘘だろう…獲物を横取りに来たってのか!」
ガルーダを凌ぐ巨体、鷲の頭と翼、そして獅子の身体。
本来、月の国にいる筈のないこの魔物が何故ここに。
女「グリフォン…!」
数は八体にも及ぶグリフォンの群れは、V字編隊から散開して巨鳥を襲う。
しかしそれと同時に、幼馴染を捕らえていたガルーダが閃光に包まれた。
時魔女「幼馴染ちゃんが…!」
喰われる位なら堕ちて果てた方がましだと考えたのか、囚われの彼女自身が炸裂の矢を放ったのだ。
宙に投げ出され、見る間に落下速度を上げてゆく幼馴染の身体。
ずっとガルーダの動きを封じていた時魔女には、すぐに幼馴染の時間を縛る事もできない。
男「幼馴染っ…くそおおおぉぉぉっ…!」
一体のグリフォンが落下する彼女に向かうのが見えた。
喰われる相手が変わるだけか、それとも地面に叩きつけられるか。
いずれにしても絶体絶命の彼女を、救う術は無かった。
- 364 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 13:01:23 ID:vBYxDnHs
時魔女「男…違う…!」
時魔女が何かに気付く。
接近したグリフォンが幼馴染を捕らえた。
時魔女「あのグリフォンは…!」
目を凝らす。
そうだ…グリフォンの脚は獅子のものに同じ、人間を掴めるようなつくりではない。
彼女を捕らえたのは、その魔獣の背だ。
その背には…
男「鞍がある…人が乗っている…!」
話に聞いた事はあった。
グリフォンを駆る、誇り高き一団の存在を。
その名は…
時魔女「白夜の騎士団…!」
.
- 365 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/09(土) 14:36:51 ID:SGcH/Nsw
定番のタイミングで新キャラか
- 366 名前: ◆M7hSLIKnTI [sage] 投稿日:2013/11/09(土) 14:58:35 ID:vBYxDnHs
ありきたりでも王道を貫くぜ
なぜなら考えるのが楽だからだ!
- 367 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/09(土) 15:03:17 ID:Ui.EE.U2
それがたまらん
- 368 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/09(土) 17:59:43 ID:B.m0zic6
「さすが◆M7hSLIKnTI!ありきたりな王道展開を平然とやってのけるッそこにシビれる!あこがれるゥ!」
ほめ言葉ですよ?
- 369 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2013/11/09(土) 18:00:43 ID:B.m0zic6
補足
王道展開大好物れす
- 370 名前: ◆M7hSLIKnTI [sage] 投稿日:2013/11/09(土) 19:51:08 ID:vBYxDnHs
あ…ありのまま今、起こった事を話すぜ!
「おれは貶された思ったらいつのまにか褒められていた」
な…何を言っているのか
- 371 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 19:52:55 ID:vBYxDnHs
幼馴染を受け止めた一騎はこちらを目指し、残りの七騎はガルーダとハーピーを驚く程の早さで一掃せんとしていた。
俺達の前に舞い降りる、幼馴染の救世主たる騎士。
雄々しく巨大なグリフォンの背に、白銀の甲冑を纏った男が幼馴染を抱きながら跨っている。
男「幼馴染…!」
幼馴染「…ごめん、男が気をつけろって言ってくれたのに」
騎士の腕が解かれグリフォンが首を下げると、彼女はその背から地に降り立った。
ガルーダの鋭い爪に掴まれた事により、その肩は鮮血に染まっている。
男「時魔女、時間逆行は間に合うか?」
時魔女「うん、あと少しでロードできると思うから、充分間に合うよ」
幼馴染「だ、大丈夫…大した事ないよ」
時魔女「いいから、あっち座ろうよ」
時魔女に呼ばれ、幼馴染はちらちらと後ろを振り返りながら俺の横を通り指差された方へ向かう。
その際に見た彼女の顔は、些か紅潮して見えた気がした。
- 372 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 19:53:50 ID:vBYxDnHs
男「…白夜の騎士とお見受けする。まずは礼を言わせてくれ、本当に助かった」
???「礼には及びませぬ。…私個人の想いとしても、幼馴染殿を救えてよかった」
男「…あいつを知っているのか」
そこまで尋ねた後から、俺はハッとした。
幼馴染から聞いた、五年前の白夜と旭日の共同作戦だった洞窟竜討伐の時の話を思い出す。
???「私は元・白夜の騎士団の長を務めていた『騎士長』と申す者…お見知り置きを」
つまり彼こそが幼馴染にプロポーズをした主、白夜のドラゴンキラーその者なのだ。
なるほど、幼馴染が頬を染めていたのはそれ故か。
騎士長がグリフォンの背から降りようとした時、彼の後ろに次々と他の七頭が集う。
この僅かな時間で魔物を殲滅したのだろう。
騎士長は他の騎士団員が地上に降り立つのを待って、改めて俺に正対した。
- 373 名前: ◆M7hSLIKnTI [sage] 投稿日:2013/11/09(土) 19:59:06 ID:vBYxDnHs
騎士長「元・月の国討伐隊隊長、男殿とお見受けする」
男「いかにも…だが何故『元』という点を知っておられるのだ」
騎士長「星の国を経由し、貴殿の情報を得ました故。…先ほどはグリフォンの背、高いところからの挨拶となり申し訳なかった。ご容赦のほど願いたい」
男「気にしないで頂こう。今の俺は貴方が改まって話さなければならないような立場には無い…ただのゴロツキの長なのでね」
俺の後ろに纏まり無く立つ頼もしい隊員達が、くっくっ…と抑え切れない笑いを漏らす。
どっちが優れているなど考える必要も無いが、少なくとも向かう騎士団の面子の方が上品なのは間違いない。
男「まあ、そういうわけだ…言葉を砕いていこう。先ほど騎士長殿も『元』騎士団長と言ったと思うが、どういう事なのか」
騎士長「では、私も気を楽にさせて頂く。まあ…はっきり申せば、白夜王が崩御される際の遺言で任を解かれた…つまりクビになったのだ」
男「クビ…?国にとって大事なドラゴンキラーをか」
騎士長「白夜では騎士という称号に比べれば、ドラゴンキラーなどという肩書きに大した意味などない。亡き我が主君も若かりし日には騎士王であった」
男「…なるほど。では、なぜこの国…しかもこのような辺境に?」
騎士長「知れた事…何のために星に情報を仰ぎ、数日もかけて男殿の部隊を探したと思われるか」
- 374 名前: ◆M7hSLIKnTI [] 投稿日:2013/11/09(土) 20:00:34 ID:vBYxDnHs
そして騎士長とその部下達は再度姿勢を正し、思いもしなかった言葉を告げた。
騎士長「我々を男殿が率いるゴロツキの部隊の一員として、雇って頂きたい。それを願うために馳せ参じた次第だ」
どういう事だ、なぜ俺が白夜の騎士を率いる事になど。
しかし信じて良いものなら、これほど心強い申し出はない。
まして空を駆けるグリフォンの力があれば、関所を越えるにこれほど確実な方法は無いだろう。
男「…雇うために必要な見返りは、何を求めるのか」
騎士長「我が主君の仇を討つ、それ以上の報酬はありますまい」
男「…騎士がゴロツキ連中とつるんだのでは、主君の名折れになるのでは?」
今度は騎士団の方から笑いが漏れる。
しかしそれは我々を蔑むようなものではない。
騎士長「先ほどは男殿の言葉を借り、ゴロツキなどと申したが…今、貴殿の部隊が何と呼ばれているかご存知か?」
男「いや…知らん、月の逆賊とでも?」
騎士長「星の国で聞き申した。濁った月の光を避けながら、勇敢にも竜に挑もうとする誇り高き部隊がある…と」
我々自身が知り及ばないところで囁かれ始めていた、この部隊の呼称。
騎士長「誰が名付けたかは知れぬ…が、貴方がたは今や『月影の師団』と呼ばれている」
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