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従者「不老不死の呪い……ですか」女勇者「そうだ」
- 33 名前:深夜にお送りします []
投稿日:2012/11/30(金) 20:24:05 ID:v3WkNKH6
〜翌日〜
従者「娘さんを可愛がってるのはわかったけど兵士さんの話長かったな……」
女勇者「む……」
従者「あ、勇者様おはようございます」
女勇者「……おはよう」
従者「勇者様もこれから朝食ですか?」
女勇者「そうだ。お前もしっかり食べておけ。いつそれが最後の食事になるかわからないのだからな」
従者「驚かさないでください。……冗談ですよね?」
女勇者「冗談ではない。戦う以上、命を落とす可能性はどこまでもついてくる」
従者「…………」
女勇者「戦うのならば覚悟はしておけ」
従者「はい!……あの、すみません勇者様」
- 34 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/11/30(金) 20:31:06 ID:v3WkNKH6
女勇者「なんだ?」
従者「その、無礼を承知で尋ねますが勇者様はなぜ戦うのですか?」
女勇者「…………なぜそんなことを聞く?」
従者「いえ、あの!憧れである勇者様の志を聞きたかっただけでして……」
女勇者「……そうか」
従者「はい……」
女勇者「私が戦う理由、それは」
従者「…………」
女勇者「惰性だ」
従者「惰性、ですか?」
女勇者「そうだ、良くも悪くも私は戦うことしか知らない。魔王を倒した後も権力者達は私を持て余した」
従者「…………」
女勇者「やることが、やりたいことが何も無いのだ。おだてられ、もてはやされ、魔王を倒すためだけに生きてきた私にはな」
従者「…………」
女勇者「がっかりしたか?」
- 35 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/11/30(金) 20:35:33 ID:v3WkNKH6
従者「い、いえ!そんなことは……!」
女勇者「国の為、人の為。人々の平和を乱す魔物が許せない……そういったことが聞きたかったのだろう?」
従者「それは…………」
女勇者「別にそういうのも悪くないだろう、だがな……」
従者「…………」
女勇者「そういったモノを私に押し付けることは許さない……わかったか?」
従者「……わかり、ました」
女勇者「……ならばいい。朝食を取ろう」
従者「……はい」
- 36 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/11/30(金) 20:46:26 ID:v3WkNKH6
〜訓練所〜
ビュンッ!ビュンッ!
従者「…………はあ」
兵士「よう。精がでるな」
従者「……兵士さん」
兵士「まーた落ち込んでるのか。今度はどうしたっていうんだ。ええ?」
従者「……兵士さんは何のために戦ってるんですか?」
兵士「なんだよ急に?」
従者「教えていただけませんか?」
兵士「まあいいけどよ。だいたい察しがつくだろうが家族のためさ」
従者「…………」
兵士「俺は腕っ節くらいしか取り柄がねえしな。砦に来るまでに町があったろ?ちょっと大きいのがよ」
従者「はい、ありました」
兵士「そこに家族がいるんだよ。俺にとっちゃあ、戦うのはおぜぜを稼ぐのと魔物を町に行かせないためだな」
従者「そうなんですか……」
- 37 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/11/30(金) 20:53:08 ID:v3WkNKH6
兵士「で、それがお前が落ち込んでるのとどう繋がるんだ?」
従者「……勇者様になぜ戦っているのか聞いたんです」
兵士「へー、やっぱりお前は物好きだな。で?」
従者「……惰性だそうです」
兵士「へー、勇者様は惰性で戦っておっしゃるのかよ」
従者「そうみたいです……」
兵士「で、勇者様に憧れてたお前はそれにショックを受けた、と」
従者「有り体にいえばそうです」
兵士「んー、俺はいまいちピンと来ねえな。勇者様の戦う理由がどうだろうが俺には関係ねえしよ。悪いな力になれなくて」
従者「いえ、話を聞いてくださっただけでも十分です」
- 38 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/11/30(金) 21:01:00 ID:v3WkNKH6
兵士「つうかお前は昨日も言ったがいろいろ考えすぎだろ」
従者「ははは……」
兵士「やれることからやって行けばいいんだよ。考えんのはその後でいい」
従者「そ、それもどうかと……」
兵士「別になんとかなるぞ」
従者「あ、あははは……」
兵士「ま、自分で決めることだしな。俺はこれ以上は口を出さねえよ。今やっとかなきゃいけないことをやろうぜ」
従者「そうですね」
兵士「そんじゃ訓練の続きをやりますか。これはやっとかねえと後でしんどいからな。お前もそう思うだろ?」
従者「ええ、皆に遅れを取らぬよう頑張ります」
兵士「死なねえためにも頑張れよ」
従者「はい!」
- 39 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/11/30(金) 21:14:05 ID:v3WkNKH6
〜砦〜
従者「……訓練きつかったな。やっぱり皆さんの方がベテランだな……」
女勇者「……む」
従者「……あ」
女勇者「……訓練帰りか?」
従者「そ、そうです。勇者様は……」
女勇者「……魔法について少し調べていた」
従者「勇者様は魔法も使えるのですか?」
勇者「不得手だがな」
従者「いったいどんな魔法を?勇者様には剣術だけで十分かと思うのですが……」
女勇者「…………不老不死の呪いについてだ」
従者「あ……」
女勇者「もういいか?」
従者「は、はい!」
- 40 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/11/30(金) 21:21:47 ID:v3WkNKH6
カツカツカツ……
従者「…………」
従者「勇者様は呪いを解きたいのだろうな……」
従者「勇者様ですらいまだに解呪ができないとはどれだけ強力な呪いなのか……」
従者「……不老不死とはいったいどんな気分なのか」
従者「……少なくともいいものではないか」
カンッカンッカンッ!
従者「ッ!魔物か?これだけの頻度で来るとは本当に激戦区だな……」
- 44 名前:深夜にお送りします [sage] 投稿日:2012/12/01(土) 08:48:53 ID:2XWA6fk6
>>37
おっしゃってるじゃなくておられてるじゃないか?
どうでもいいこと言ってスマン
支援
- 45 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 12:48:16 ID:Oj1p6bTs
〜戦場〜
兵士「うっし、お前ら!偵察の結果によると魔物達はもうすぐここへ来る!気を抜くなよ!」
「オオオォォー!」
従者「あの、勇者様」
女勇者「……なんだ?」
従者「なんというか、その……頑張ってください」
女勇者「私の心配より自分の心配を先にしろ」
従者「そ、そうですよね」
女勇者「……それだけか?」
従者「は、はい」
女勇者「……ならばこれ以上は話しかけるな。戦場で、とくにお前のような新入りこそ死にやすいのだからな」
従者「は、わかりました!」
- 46 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 12:49:16 ID:Oj1p6bTs
誤字脱字ごめんねorz
- 47 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 12:55:00 ID:Oj1p6bTs
「魔物が来たぞー!」
女勇者「……突貫する……!」
兵士「よし!槍でこちらへ近づかせるなよ!それと必ず多対一で攻めろ!」
「応!」
従者「はい!」
魔物「キシャアァアアアア!」
兵士「今日もおいでなすったな!突けええええ!!」
「オオオオォォ!」
魔物「キシャァァア!?」
兵士「このまま続けろ!」
- 48 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 13:01:13 ID:Oj1p6bTs
魔物「キ…………」
従者「?」
魔物「キッシャアアアアアアアアアアアア!!!」
兵士「っ!やべえ!」
ゾロゾロ……
魔物「シャアア……」
魔物「シュルルルル……」
兵士「くそっ!仲間を呼び寄せやがったな!?」
「ど、どうしましょう!?」
兵士「狼狽えるんじゃねえ!班を分けて多対一に持ち込むんだ!乱戦になったらそれこそ勝ち目がねえ!」
「了解……うわああああ!?」
兵士「くそが!何ボサッとしてやがる!とっとと言われた通りに分かれろ!」
魔物「シャアアァァァ!」
- 49 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 13:07:09 ID:Oj1p6bTs
兵士「くそっ!魔物のクセしやがって余裕振りやがって!……死んでたまるかよ!」
魔物「キシャァァア!」
従者「……自分が前に出ます!その間に態勢を立て直してください!」
兵士「おい!」
魔物「シャアアァァァ!」
従者(時間稼ぎくらいなら……!)
魔物「キシャアァアアアア!」
従者「はやっ……!?」
ザン!
従者「あ…………」
兵士「あの……馬鹿やろうが……。なにしてやがる!今のうちに立て直せ!」
「応!」
- 50 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 13:16:35 ID:Oj1p6bTs
魔物「シャルルル……」
従者(もう、おしまいか)
魔物「シャアア!」
従者「……勇者……様」
魔物「キシャアァアアアア!」
ザシュ
魔物「キ、キルル?」
ドサッ
女勇者「……だから言っただろう」
従者「……勇者様」
女勇者「お前のような新入りか死にやすいのだと」
魔物「シャ、シャルル!?」
兵士「よし!相手が混乱し始めた!この隙を逃すな!突いて突いて突きまくれぇぇぇ!」
「オオオオオ!!」
従者「……今回も私たちの勝ちですね」
- 51 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 13:25:21 ID:Oj1p6bTs
女勇者「……そんなことより自分の心配でもしていろ」
従者「はい……」
女勇者「残りを始末してくる」
従者「頑張って、ください」
女勇者「……馬鹿が」タタタッ
従者「…………勇者様、速いなあ……」
兵士「よし!もう少しだ!踏ん張れ!」
「オオオオオ!!」
魔物「キシャアァアアアア!?」
兵士「へっ、人間様がそう簡単にやられるわけねえだろうが」
ザン!
女勇者「少し手間取った」
兵士「……いえ、犠牲も出ましたが今回も勇者様のおかげで勝てました」
女勇者「…………そうか」
- 52 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 13:38:11 ID:Oj1p6bTs
〜砦〜
兵士「うーっす、大丈夫かー?」
従者「あ、兵士さん。大丈夫では、ないですね」
兵士「そりゃあそうだろうな。ま、胸を張れよ。名誉ある負傷なんだからよ」
従者「あははは……。っつう!」
兵士「おっと悪い。……なあ?」
従者「なんですか?」
兵士「なんでお前、飛び出したんだ?言っちゃあ悪いが俺たちのために命をかけたとかいうのならただの馬鹿だ」
従者「…………」
兵士「ただ気になっただけだ。言いたくねえのならそれでいい」
- 53 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 13:49:17 ID:Oj1p6bTs
従者「……勇者様に戦う理由を聞いた時、勇者様は惰性だと言いましたが、本当は国のため、人々のためだと言って欲しかったんです」
兵士「……自分の憧れに理想を抱いてるっつうのはよくある話だな」
従者「勇者様はそれがわかっていたんです。私にそれを自分に押し付けるなと言いましたよ」
兵士「……それで?」
従者「勇者様は余りいい顔をしませんでしたけど、国のため人々のために戦うのは素晴らしいことだと私は思っています」
兵士「……で、その自分の理想を貫くために体を張ったと」
従者「……そうなりますね」
兵士「はぁ……」
従者「兵士さん?」
兵士「お前、馬鹿だ」
- 54 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 13:55:04 ID:Oj1p6bTs
従者「え?」
兵士「本当にこういう奴っているんだな。……早死にするぞ?」
従者「それでも、誰かを助けたいんです。昔、私を救ってくれた勇者様のように」
兵士「大して強くもねえひよっこが何言ってんだか」
従者「そうですよね……」
兵士「ま、好きにしろよ。お客さんも来たみたいだし俺は退散するわ」
従者「お客さんですか?」
兵士「おう。じゃあな、お大事に」
従者「お見舞いありがとうございました」
兵士「あいよ。とっとと治しちまいな」
従者「はい」
- 59 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 17:50:32 ID:Oj1p6bTs
女勇者「…………む」
兵士「これはこれは勇者様、お見舞いですか」
女勇者「一応だが私の従者だからな」
兵士「それはそうでしたね。では、私はこのへんで」
女勇者「ああ」
カツカツカツ……
女勇者「…………」
従者「……勇者様、お見舞いありがとうございます」
女勇者「……気が向いて顔を見にきただけだ」
従者「それでもありがとうございます」
女勇者「……それにしてもなぜわざわざ自分の身を危険にさらした?少なくとも前に出なければお前はそんな怪我をしなかっただろう」
- 60 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 18:01:36 ID:Oj1p6bTs
従者「…………」
女勇者「私相手にだんまりを決め込むつもりか?えらくわがままな従者も居たものだな」
従者「……助けたかったんです」
女勇者「……なに?」
従者「あのままじゃ誰かが死んでいたかもしれなかったんです」
女勇者「……そんなことでわざわざそんな大怪我までしたのか?」
従者「私にとっては大事なことなんです」
女勇者「……くだらないな。英雄気取りか?自惚れるな」
従者「…………」
女勇者「そんなことをしても割に合わない。感謝されるのはその一瞬だけ。命をかけた見返りなぞかえってこない」
従者「見返りが欲しいんじゃないんです」
- 61 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 18:09:11 ID:Oj1p6bTs
女勇者「……ならばなんだ」
従者「昔、自分を助けてくれた人のようになりたいんです。まだ何もかもが遠いのですけど」
女勇者「……くだらない」
従者「勇者様……」
女勇者「くだらないくだらない!そんなものを大事にしている貴様が気に食わない!」
従者「…………」
女勇者「そんなものを目指しても何にもなりはしない!」
従者「それでも、いいんです。決めたから」
女勇者「……貴様は本当に馬鹿だ」
従者「別の人にも言われてしまいました」
女勇者「……そうだろうな」
- 62 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 18:15:59 ID:Oj1p6bTs
従者「でも止めません。突き進んで、いつか本当に……勇者様みたいになるんです」
女勇者「…………」
従者「…………」
女勇者「……そんな大怪我をしておいてよくもそこまで大きな口が叩けるものだ」
従者「……未熟なのはわかっています。まだ何もかもが足らないことなんてことは」
女勇者「……今回のことではっきりとした。私は貴様が気に食わない」
従者「……すみません」
女勇者「……だから教えてやろう。その先に進んでも貴様が望むものなんて何も無いということを」
従者「……え?」
女勇者「……お前が行き着く途中でくたばらないようにはしてやる。……やる気があるのならばな」
- 64 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 18:24:00 ID:Oj1p6bTs
従者「それは、私に稽古をつけてくれるということですか……?」
女勇者「……貴様が望むのならな」
従者「ぜ、ぜひよろしくお願いします!」
女勇者「……なら早くその怪我を治せ」
従者「わかりました!」
女勇者「……嬉しいのか?」
従者「はい。嬉しくないはずがありません」
女勇者「…………」
従者「勇者様、私が何かお気に障ることでも……」
女勇者「黙れ」
従者「…………」
女勇者「……話はこれだけだ。失礼する」
従者「……ありがとうございました」
- 65 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 18:37:25 ID:Oj1p6bTs
〜訓練所〜
従者「ていっ!」
ブゥン!
兵士「おっす、久しぶりだな」
従者「あ、兵士さん」
兵士「怪我の調子はどうだ?」
従者「もう大丈夫です。最前線なだけあって怪我の治療もちゃんとしてくれましたし」
兵士「まあ逆を言えば怪我をしてもほとんど休めないってことだけどな!」
従者「ははは、そうですね」
兵士「それにしてもお前は本当に変わり者だな。勇者様に教えを受けてんだろ?命がいくつあっても足りねえだろ」
従者「そんなことないですよ」
兵士「そうかいそうかい。俺としてはまだ魔物の相手のほうがマシだね」
従者「いえ、ちゃんと教えてもらってます。……だめ出しばかりですけど」
兵士「そりゃそうだろ。あんなのが比較対象じゃ誰も勝てねえって」
- 66 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 18:45:25 ID:Oj1p6bTs
従者「でもいつかは勇者様に認めてもらえるような立派な従者になりたいんです」
兵士「頑張るねえ。俺からはなんとも言えないわ。ていうか勇者様はそんな立派かねえ?」
従者「……勇者様が考えていることは私にはよくわかりません。ですがいつかきっと分かり合えると思っています」
兵士「熱いねえ。それに青臭い」
従者「……いけませんか?」
兵士「いんや?そこらへんは個人の勝手だろ。別に俺の考えを押し付けたりはしねえよ」
従者「…………」
兵士「ま、せいぜい愛しの勇者様に嫌われないようにな」
従者「そ、そんなんじゃ無い!」
兵士「あっははは!そうかいそうかい!」
- 69 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 20:47:58 ID:X3XPOauM
不死身になったら果てしなくイケメンになる努力するわ
- 70 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/12/01(土) 21:02:32 ID:Oj1p6bTs
従者「からかわないでくださいよ!」
兵士「はっはっはっ!悪い悪い……お、勇者様……」
従者「えっ!?」
兵士「……は居ないなあー」
従者「兵士さん!」
兵士「はっはっはっ!じゃあな!」
従者「本当にもう……!」
従者「……なんだかんだでいい人なんだよな。新入りの私も気にしてくれいるんだから」
従者「……頑張ろう」
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