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詰めジャンル「抜くや抜かざるや」
490 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 15:43:15.73 ID:/qZqOaA00

鏡餅に伝説の剣が刺さっていた。

はやくどけと橙がせかすが、この剣を抜けるのは世界にたった一人だけ。

剣の上に乗せようにも、こいつ、微妙に傾いて刺さっていやがる。

仕方がないので橙はうつた姫にあげておいた。案外喜んでくれたようでなによりなこと。


491 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 15:47:09.34 ID:/qZqOaA00

扇風機の基部前面に伝説の剣が刺さり風を独り占めしていた。

うちの扇風機は首振りにすると不快な音できしむからよけい暑苦しくなってしまう。

風が来ない風が来ないとつつ姫は寝そべったまま、文句だけは止まらない。

見かねてか、後ろ側もわずかながら風は来ますよと背後霊が教えてくれた。


492 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 15:49:41.38 ID:/qZqOaA00

上座に刺さった伝説の剣、抜けるのは世界にたった一人だけ、ご来賓も招待者も困り顔。

そこで用意するのが脇息と一匹の猫とワイングラス。

剣の前に置くだけでほうら、【あのお方】のできあがり。

ご来賓も招待者も、皆がひれ伏す不思議の光景。


493 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 15:55:13.97 ID:/qZqOaA00

伝説の剣が墓標のように刺さっていて棺桶が開かないので、吸血鬼がうちに泊まりに来た。

まだなりたての吸血鬼なので筋骨がなく、血の詰まった皮袋みたいにぶよぶよしている。

放っておけば筋骨を備え、本格的に手のつけられない吸血鬼に育ってしまう。

うちに来たのをさいわい、そうなる前に鮟鱇に命じて吊るし切り。


494 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 15:58:35.87 ID:/qZqOaA00

南極点に伝説の剣が刺さっていた。

あれはあれで不動ではなく微妙に動いているものなので、結局伝説の剣は置き去りに。

新たな南極点に人が集まるのを遠目に眺めながら一人ぽつんと刺さる剣に卵を預け

ペンギンの夫婦は海まで遊びに行ってしまった。


495 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:03:32.36 ID:/qZqOaA00

ごみ袋に伝説の剣が刺さっていたせいで

これは燃えるごみなのできちんと分別してくださいと収集人に怒られた。

うちの界隈はごみ袋に氏名を書くタイプなので他人のふりをして無視するわけにもいかない。

嗚呼、この剣、抜くや抜かざるや?


496 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:07:03.92 ID:/qZqOaA00

伝説の剣が竜巻に翻弄されていた。

たぶん選ばれし者ならこの竜巻に手を突っ込んで、無傷で剣を掴めるのだろう。

もちろん抜く気はないのでずっと見ていた。

剣が抜かれないということは台座もそのままということなのか、竜巻はいまだ衰える気配も見せない。


497 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:14:21.50 ID:/qZqOaA00

砂時計のくびれたところに伝説の剣が引っかかっていた。

これでは時間が計れない。

だいたい抜こうにもこの砂時計には開け口がない。

でもボトルシップの一種と思えば、大統領の誕生日プレゼント程度にはちょうどいいかも。


498 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:17:11.69 ID:/qZqOaA00

伝説の剣が当たりつきになったらしい。一本しかないものが当たりつきになってどうしたいのか。

そんな子供だましに釣られて抜いてやるとでも思ったか。

ふと見ると円卓の王の剣にあたりと大きく書かれていた。

剣は惜しいが当たりもほしいと真面目に悩む円卓の王。どこで引き換えてもらえるの。


499 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:22:08.89 ID:/qZqOaA00

お内裏さまとお雛さまと伝説の剣。三人並んで約二名、とってつけたようなすまし顔。

雛祭りはもう終わったけど、もちろん剣は雛壇から抜けやしない。

さっさと片づけないと家の娘の婚期を逃すというけれど、

父親がなんだかとても満足そうにしているので抜く必要もないだろう。


500 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:26:47.29 ID:/qZqOaA00

天に関山、花開き、地に関山、花敷き積む。

染井吉野に遅れて咲く里桜もまた愛づべきもの。

さほ姫がいくら招けど枝から散らぬ伝説の剣も

今日この日ばかりは桜色。


501 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:30:20.80 ID:/qZqOaA00

ボタンと見れば押してみて、路地と見れば足を踏み入れ、扉と見れば開いてみるのが人のさが。

連続するボタンを片っ端から押していたらその中にさりげなく伝説の剣が混じっていた。

押すと抜くではさすがに動作が真逆だし、

ボタンを押すのに釣られて抜くような馬鹿などいまい。


502 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:33:34.81 ID:/qZqOaA00

ウツボカズラに伝説の剣が刺さっていた。

ひょっとしてこいつならやってくれるんじゃないかと期待が膨らむ。

でも結局ウツボカズラでも剣は溶かせず、ハエジゴク、モウセンゴケ、タヌキモに笑われていた。

その後紆余曲折を経て、四天王一人目のウツボカズラは思ったとおり仲間になった。


503 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:37:14.89 ID:/qZqOaA00

健康乗馬機に伝説の剣が刺さっていた。

しかもスイッチを入れて気持ちよさげに揺られていやがる。

負けじと騎士たちの眼を盗んで円卓にまたがって遊んでいた円卓の王だったが

先生に見つかり怒られて、円卓と二人で理科室の鉄砲魚の世話をさせられている。


504 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:40:24.16 ID:/qZqOaA00

貯金箱の投入口に伝説の剣が刺さっていた。まだいっぱいになっていないのになんということ。

だから壷にしておけばよかったのにと、床下に隠した銭壷を夜な夜な眺めにやつきながら長者どん。

自分以外がこの壷を見たら銭はみんな蛙になれ、と長者どんが呟くのを確かに聞いた。

仕方がない。貯金箱はひとまず措いて、蛙を獲りにいってくるか。


505 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:45:07.26 ID:/qZqOaA00

円卓の王が人のうちの七輪でサンマを焼いていた。

サンマの塩焼きジュウジュウ、大根おろしショリショリッ。炊き立てご飯パカッフワッ。ポン酢トットットッ。

換気扇をつけようとして気がついた。立ち込めているのは煙じゃなくて伝説の剣だ。

危ない危ない。 換気扇をつけていたら剣が引っ張られて抜けてしまうところだった。


506 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:50:31.26 ID:/qZqOaA00

たんすの引き出しに伝説の剣が入っていた。

ちょっとだけ出しかけた瞬間を狙ってばすんと閉める。柄の先が挟まれる。

見ていた大統領が思わず、いたっ、と口走る。

剣に痛みがあるのかどうかはしらないけれど、ほんのちょっぴり気分が晴れた。


507 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:53:49.97 ID:/qZqOaA00

放送時間の終了したテレビ画面、砂嵐の中に伝説の剣が刺さっていた。

普通の放映中に刺さっていても邪魔なだけだが、

深夜の砂嵐に刺さっていたら鬱陶しいというより気味が悪い。

緑化財団の人たちはと見れば、使い込みが露見して砂嵐の中に頭だけ出して埋められていた。


508 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 16:59:39.00 ID:/qZqOaA00

あなたさえいればほかに何もいらない、君が僕のすべてだった。いつ聞いても似たような歌詞。

馬鹿の一つ覚えとはこのことか、うた歌いどもは脳を何に使って生きているのか。

剣に選ばれし者だって、どうせ死ねば次の選ばれし者が出てくるに決まっている。

この世に代替の利かぬ人間など一人もいない。そう、いつだってかわりはいるはずだから。


509 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:02:30.26 ID:/qZqOaA00

硬いつぼみがあまりに天を仰ぐから、桜並木に風花が舞う。

雪女郎がつぼみに息を吹きかけているのは花の魂を奪うためではなく、

さほ姫の歌声を待ちわびる桜に、冬来たりなば春遠からじと教えるため。

ああ。この剣に抜かれる日などきやしないということを教えるには、いったいどうすればいいんだろう。


510 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:04:31.60 ID:/qZqOaA00

隅々まで見落としなく掃除したと思っても、なぜか髪の毛の一本二本は落ちているもの。

それも掃除機をしまってから現れる。きっと妖精さんの仕業に違いない。

とはいえさすがに掃除したあとに伝説の剣が落ちているのはどうかと思った。

髪の毛の一本二本は結局放置するように、剣もまるっと無視しておこう。


511 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:11:19.18 ID:/qZqOaA00

作業場に伝説の剣がヘルメット着用で刺さっていた。

構内ではヘルメットと安全靴の着用が義務付けられているのに、こいつは靴を履こうとしない。

これをいじめと受け取ったのか、工場は泣きながら自宅に引きこもってしまう。

寄せ書きを持っていって説得するので何か書いてくれと、伝説の剣によく似た人に頼まれた。


512 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:20:24.81 ID:/qZqOaA00

牛肝のような物体に目玉が二つついてぷるぷるしていた。

これぞ大中華の神秘、食っても食っても再生する生きた食料、視肉。

さて伝説の剣は今回こいつに刺さって一緒にぷるぷるしているわけだが、

まさか視肉同様何度でも抜けるんだろうか。いや、まさか、そんな、しかし、でも。


513 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:23:49.18 ID:/qZqOaA00

うつた姫が虎落笛を鳴らす夜に、伝説の剣が窓の外から室内をのぞきこんでいた。

室内では大統領がこたつに半身を突っ込み半分眠りながらスパロボ中。

そうか、暖かい室内がうらやましいか。孤独な屋外がさびしいか。

こたつから大統領を引っ張り出し剣の隣りに投げ捨ててやった。これでさびしくないだろう。


514 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:27:43.69 ID:/qZqOaA00

部屋に吸血鬼がいた。鍵穴から自在に出入りできるというから侵入経路はそこだろう。

お引取り願おうにも鍵穴には伝説の剣が栓のように刺さっている。

でも中の人が起きていたら、普通に窓でもドアでも開けて叩き出せばいいんだけどね。

うちわで叩くように逐ってやったら、まだなりたてで筋骨のない皮袋状の体でもぞもぞと出て行った。


515 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:29:37.93 ID:/qZqOaA00

たまたま居合わせた郵便局に強盗侵入。

結局なにも盗らずに逃げようとするその背にぶつけようとしたカラーボールは、

何となく予測はしていたけど伝説の剣にすりかわっていた。

抜く抜かない以前に、これぶつけたら強盗死ぬって。


516 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:31:08.81 ID:/qZqOaA00

スケートリンクのど真ん中に伝説の剣が刺さっていた。

いまだ不抜棒が未設置なこのスケート場では、初心者がつかまるのにちょうどいいと好評だ。

転倒しかけて慌てて掴み、勢い余って抜いてしまうなんてことを狙っているんだろうけど

そもそもスケート自体しないから。


517 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:35:21.09 ID:/qZqOaA00

時折振り返りながらさほ姫が歩く。新緑を撫でる風に乗って、足取り軽く、皆の前を歩いていく。

さほ姫が通ったあとからは、みんなつられて歩き出す。

寝ている人も車中の人も、座っている人も働いている人も、一斉についていく。

お前に連れて行ってほしいか伝説の剣。でもお断り。春爛漫の中、一人だけずっと刺さってろ。


518 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:37:17.64 ID:/qZqOaA00

農家の軒先、干し柿と一緒に伝説の剣が吊るされていた。

柿と一緒にうっかり剣を取り込んでしまうことを期待したんだろうが

あいにくここは他人のお宅。

ひょっとして干し柿泥棒でもするような人間と思われたのかこの野郎に。


519 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:39:02.77 ID:/qZqOaA00

糠に伝説の剣が刺さっていた。

こんなやわらかいものでは刺さり甲斐がないだろうに。

それともまさか、ここまでしてやったら抜きやすいだろう、と人を馬鹿にしてるのか。

むかついたのでとりあえず、刀身のみならず柄まで全部糠に沈めておいた。


520 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:39:55.64 ID:/qZqOaA00

豆腐に伝説の剣が刺さっていた。

葱が怒り、紫蘇が吠え、生姜は猛り、茗荷は憤り、花鰹は殺気立つ。

いや、さすがにこの剣は薬味じゃなかろうし、嫉妬することもないだろうに。

それでも五大薬味の怒りは収まらず、世界はその人口の実に七分の五を失った。


521 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:41:33.32 ID:/qZqOaA00

みんなで海に遊びにいって数週間後、右膝が痛い、中で何か動いていると騎士が言う。

そういえばこいつ、フジツボのいた岩場でこけていたなと思い出し、医者に見せれば伝説の剣。

この剣を抜けるの医者にもあらず呪者にもあらず、世界にたった一人だけ。

どうしようかね、騎士の左膝で夏茜を仰いで一句詠んでる人面疽さん。


522 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:44:36.44 ID:/qZqOaA00

晩秋の風に揺られるすすきの穂、そのうちのどれが別れを惜しんで振るたつた姫の手なんだろう。

行く秋を惜しんでずっと見ていたけれど、

うつた姫に袖を引かれて我に返れば、すすきは枯れ果て、すでに冬。

すすきの中に埋もれていた伝説の剣があらわになって、木枯しの色に染まっていた。


523 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:46:20.38 ID:/qZqOaA00

伝説の剣の刀身に文字が刻まれていた。

この文字を完全解読できれば倭の五王時代の研究が大きく前進すると意気込む学者たち。

でも例によって剣は半分刺さっていて、肝心の部分が読めやしない。

それにしても邪馬台国ではなく倭の五王時代というあたり、なんとも心憎い奴。


524 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:48:45.98 ID:/qZqOaA00

少しずつほころんでいく花のつぼみ。その中のどれが春待つうつた姫の笑顔なのか。

一つずつ探しているうちにさほ姫の歌声が聞こえてきて、もうわからなくなってしまった。

たぶんうつた姫はもうどこにもいないだろう。

チューリップの花の中に刺さっていても、うつた姫と間違えたりはしないからもう諦めろ、伝説の剣。


525 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:53:40.62 ID:/qZqOaA00

命蓮上人が飛ばしてよこした托鉢の鉢が伝説の剣に刺し貫かれてもがいていた。

蔵一つ鉢に乗っけて飛ばすほどの神通力も、伝説の剣の前では形無しか。

もがいていた鉢は、しかし、ついに刺し貫かれたまま地球ごと持ち上げ飛んでいった。

剣と上人、どちらも譲らぬ大勝負。地球上なる上人ははたしていかに地球を受け取るつもりか。


526 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:56:50.56 ID:/qZqOaA00

稲穂は実るほどに頭を垂れるというけれど、麦にそんな話は関係ない。

誰よりもはやくあの夏を、あの空を掴み取ろうと競い合って背伸びする麦とさほ姫。

一緒になって背筋を伸ばしていないで、お前は少し遠慮しておけ伝説の剣。

さほ姫の手が麦より先に天に届いたと見えた瞬間、もうそこに夏は来ていた。


527 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 18:00:16.96 ID:/qZqOaA00

大仏の顎に伝説の剣が柄元までしっかり刺さっていた。罰当たりだけど抜く気はない。

みんな口にしたくても耐えていたのに、大統領が我慢しきれず「一発芸・ファラオ」って言っちゃった。

その瞬間、剣と大統領以外、すべて一つ残らず消え失せて

世界は再び一からやり直し。


528 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 18:03:16.88 ID:/qZqOaA00

もしも秋まで残っていたらたつた姫に伝えてくれよと、つつ姫が蝉の抜け殻にこめるメッセージ。

下手すりゃ夏のうちにそこらの子供に見つかって持っていかれてしまうものに託すとは

もう少し頭と労力を使えばいいものを、残暑が厳しいとそれすらこいつは面倒なのか。

伝説の剣を刺しておけば誰にも持ち去れなくなるが、そこまでしてやる義理もない。


529 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 18:06:19.21 ID:/qZqOaA00

冬の抜け道を伝説の剣に教えているのはだぁれ? それはきっと隙間風。

こいつさえ封じれば伝説の剣も冬の間はそうそうあちこち神出鬼没とはいくまい。

そのときさっと吹き込んできた隙間風が首筋に魂も凍る息吹を吹きかけ、妖しく笑い、抜けていった。

隙間風とは、ああ、姿を見せぬ雪女郎のことだったのかと、このとき初めて合点がいった。


530 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 18:09:00.69 ID:/qZqOaA00

卵を割ったら殻の小さなかけらが混じってしまった。

焼くのなら無視してもいい大きさだけど、あいにくこの卵はすき焼き用。

卵液の中を鰻逃げする殻を捕まえたと思ったら、はい、予想通り伝説の剣でした。

でもまあいいや。円卓の王はこの剣がほしいみたいだったから、このまま出しても別にいいでしょ。


531 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 18:11:15.50 ID:/qZqOaA00

満月が栴檀の実と語る夜は、ふだん見えないものが見えるもの。

庭先に刺さったままの伝説の剣を何となく眺めていたら気がついた。

柄尻から延びた赤い糸がこっちの足に結ばれている。

即座に噛みちぎり、月下老を引きずり出してうつろ舟に乗せ補陀洛渡海強制チャレンジ。


532 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 18:13:14.30 ID:/qZqOaA00

誕生したこの宇宙に何を入れるか、外の人たちが考えていた。

星の素を入れてみようということになったはいいが、先にちゃっかり納まっていたのが伝説の剣。

抜けるのは宇宙の内外にたった一人だけ。このままでは星も命も生まれやしない。

それとそこで中に入ってみようと隙を窺うタカアシガニ。アサリじゃないんだ、やめておけ。


533 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/02/08(金) 18:14:16.53 ID:52WRXIUoO
保守


534 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/02/08(金) 18:14:26.33 ID:eKAHoOzI0
ほしゅ


535 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 18:15:51.12 ID:/qZqOaA00

新緑が水面に映える初夏の疎水に沿って木々のざわめきと同じ速さで歩いていたら

小舟にゆっくりと追い抜かれていった。舟のへさきには伝説の剣が刺さっている。

こちらが少し歩を早めれば小舟も負けじと流れに掉さす。

舟はどうだっていいんだけれど、自分は刺さったままの分際で人さまの先をいく剣が腹立たしい。


536 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 18:21:15.72 ID:/qZqOaA00

いつもの通り道、いつもの伝説の剣。

相変わらず抜く気はさらさらないけれど、通りすがりにふと、軽く挨拶。

行き過ぎた背に挨拶を返されたような気がして振り返る。

伝説の剣はいつもと変わらぬ聖なる輝きを放っていた。


537 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/02/08(金) 18:26:00.42 ID:m/kiZdf20
こいつ・・・・42時間書き続けてやがる・・・・!!!!!化け物だ!!!
もはや48時間は当然か・・・


538 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/02/08(金) 18:32:43.25 ID:3ImnHvmv0
ROMせざるおえない



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