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人形「人間になりたい」
113 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 11:39:28.41 ID:Sr/JXnl60
数日後・女の部屋

ザァアア

女「う、ん…」

 「雨か」

 「今日も一日頑張ろう」

 「さ、人形ちゃん」

人形「……あー」

 「私、部屋にいるよ」

女「え?」

 「具合でも、悪かったりとか」

人形「そんなんじゃない」

 「気分だよ、気分」

 「行っておいで」

女「……うん」


114 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 11:44:24.58 ID:Sr/JXnl60
バタン

人形「……はぁ」

 「だって、一緒にいたって」

 「何も出来なくて、虚しくなるからさ」

 「人形離れしても十分な年頃だろう」

神『よ』

人形「……神か」

神『お前も一応神クラスなんだがな』

 『調子どう』

人形「いまいち」


115 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 11:53:48.74 ID:Sr/JXnl60
教室

女「おはよう」

女友「おっす」

男「おう」

女友「あれ、人形さんは?」

女「部屋にいるって」

女友「えーーー」

ザァァアア

女「雨、強くなってきたね」

男「そうだ、今朝のニュース見た?」

女「見てない」

女友「人形さん人形さん人形さんー!」バタバタ


116 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 11:58:59.63 ID:Sr/JXnl60
数学教師「では今日の授業はここまでとする」

 「で、お楽しみ中間テストの返却だ」

工工エエエエエェェ(´д`)ェェエエエエエ工工

数学教師「出席番号順に取りに来い」

 「平均点は42点、追試は20点未満からだ」

ザワ…ザワ…

男「………」

 「はっ!」ガバッ

 「……おし、平均超えた」

男友「男…裏切りものめ…」


117 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:04:30.21 ID:Sr/JXnl60
女「………」チラ

 「……ほっ」

女友「70点だと…化け物め」

女「女友さんは?」

女友「あたしは前より20点上がった」

女「……24点」

女友「ふ」ドヤ

女「お、おめでとう」


118 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:06:45.39 ID:NCsCDgJP0
おんなの名前アリスにしようぜ。俺アリス好きなんだよ
あ、アリスはもちろんアリス・マーガトロイドのアリスな


119 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:10:59.71 ID:Sr/JXnl60
女の部屋

人形「あのさ」

 「元の、ただの人形に戻してはもらえないかな」

神『え、無理』

 『許可はするけど否定は出来ない』

人形「じゃあ」

 「人間に」

神『もっと無理』

人形「そ、っか」

 「いっそ、意思なんて持たなければよかったと思うよ」

神『………』

 (人の身に近過ぎたが故、か)

 『ま、頑張って』

人形「………」

 (私はいない方が、いいな)


120 名前:脳内とかで [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:17:53.73 ID:Sr/JXnl60
キーンコーンカーンコーン

世界史教師「では、授業をはじめます」

 「と」

 「言いたかった、のです、が」

 「暴風警報が出たので下校です」

女「暴風警報?」

男「うん」

 「大型の台風がくるかもって言ってた」

女友「そーゆーこと先言えよ」


121 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:22:38.34 ID:Sr/JXnl60
街外れ、橋下

ザァァァアアアア

人形「………」

 「ほんとに寂しかったのは」

 「私かもしれないね」

 「………」

 「私は」

 「女を幸せにしてあげたかったんだ」

 「これでいい」

 「これで」ギュ


122 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 12:27:28.00 ID:JzaAEZ3v0
今さらだけどテストの平均が低すぎないか?


50点満点のテストだと思ったら100点満点方式だったでござるの巻


123 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:30:43.51 ID:Sr/JXnl60
ザァァア

ヒュオオ…

女「風、強くなってきたなぁ」

女友「暴風だし」

男「あのさ、電車止まったかもしれないから」

 「泊めってもらってもいいかな!」

女「うん、いいんじゃない?」

女友「あ、じゃ、あたしも泊まるー」

 「どうせうち帰ってこないだろうし」

男「じゃあお菓子でも買って」

女「はやくかえろ?」


124 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:30:50.95 ID:Tswm6ygXO
>>122
こんなもんだろ

まぁ知らんが


125 名前:数学はうちの高校だとこんなもん [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 12:39:43.45 ID:Sr/JXnl60
女家

女「ただいま」

女友「お邪魔しまー」

男「お邪魔します」

女母「あら、いらっしゃい」

女「台風で帰れないから、泊まりたいって」

女母「あらあら」

女友「お世話になりまー」

男「ご厄介になります」


126 名前:あ、過去形ですよ?念のため [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:43:52.02 ID:Sr/JXnl60
女の部屋

女友「人形さーん」ガチャ

シィン

女友「あれ」

 「いなくない?」

女「え?」

 「ほんとだ」

男「いないな」

 (……まさか)


127 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:48:52.26 ID:Sr/JXnl60
男「あ、あのさ」

女「うん?」

男「人形さん、何か悩んでたみたいで」

 「もしかしたら、……」

 「ちょっと探してくる!」ダッ

女友「あ、あたしもっ!」ダッ

女「そんな…」

 「人形ちゃんが…悩んでたなんて」


128 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:55:43.26 ID:Sr/JXnl60
男「一応レインコート持ってきてるんだ、貸すよ」

女友「気がきくじゃん」

 「あたし東の方探すから」タッタッタッ

男「俺、西」タッタッタッ

女「わ、私も」

ヒュオオオオオ

女「っ」

 「風…飛ばされたり、しなきゃいいけど」


129 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 12:59:37.03 ID:Sr/JXnl60
女「気付かなかった」

 「気付いてあげられなかった」

 「…一番、近くにいたのに」

 「悩んでたなんて」

 「………」

 「昔、よく悩み、聞いてもらってたよね」

 「どうしても泣きたいときは、よくあの橋の」

 「……!」ダッ


130 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:04:36.35 ID:Sr/JXnl60
男「どうだった?」

女友「ダメ」

 「女は?」

男「あれ」

 「女も捜しに行ったのか」

ピロリロリン

男「「メールだ」」女友

 『多分、街の外れの橋の下だと思う

  昔ね、よくあの子とそこに行ったから』

男「どこ?」

女友「こっちだ」ツイ


131 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:08:26.06 ID:Sr/JXnl60
女「よし」ピ

 「今、行くから!」

女は堤防沿いを走っていった。

傘。骨が折れたから、捨てた。

合羽。顔を覆う部位が水に濡れ煩わしく、

向かい風に押されるのもあり、外した。

首から上は直に雨を受けていた。

その隙間から滲む滴と、走り続けたことの汗で、

どのみち、女の身体はベタベタとなっていた。

横目に流れる川は、体積を増して、荒く。

牙を剥くときを、今か今かと待ち構えているかのようだった。


132 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:12:16.74 ID:Sr/JXnl60
人形「雨、止まないな」

 「風もきつくなってきたし」

 「地面も泥ッ泥じゃあないか」スッ

 「……まったく、気が滅入るね」パンパン

 「もうちょい、上にのぼろ」

 「う」ズル

 「しま――」

女「人形ちゃん!」ザザザ


133 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:13:06.48 ID:vHJ3yPCX0
人形ちゃんがどんな人形なのか気になるな


134 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:14:52.85 ID:NCsCDgJP0
>>133
上海だよ


135 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:19:02.37 ID:Sr/JXnl60
男「まだかよ!」

女友「うっせぇもうそこだ!」

 「ほら、あの橋のことだ、きっと」

男「あれは…、下に女と…人形もいるか?」

女友「見えねーよ遠いし」

 「いるんだな、そこに?」

男「あ」

 「ぁ?」

女友「何さ」

男「飛び込んだ。川に」

女友「はぁ?!」


136 名前:>>133 女が3歳のとき、祖母が姿を似せて作ったものでした。削ったの忘れてた [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:22:49.57 ID:Sr/JXnl60
 『ぼくが、ぼくのバラの花をとてもたいせつに思ってるのは…』

 『にんげんっていうものは、このたいせつなことをわすれているんだよ。

  だけど、あんたはこのことをわすれちゃいけない。

  めんどうみたあいてには、いつまでもせきにんがあるんだ。

  まもらなけりゃならないんだよ、バラの花とのやくそくをね……』


137 名前:終わったら、没案のところ貼ります [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:26:51.51 ID:Sr/JXnl60
………

『……な』

『女』

女「う…ん……」

『起きて』

女「はっ」

 「人形ちゃんは…!」

『ここにいるから』

女「え……」

 「その姿は…」

人形『何よ』

 『私はこれでも、女の保護者のつもりだったんだ』

女(お姉ちゃんがいたら…こんな感じなのかな…)


138 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:29:31.76 ID:Sr/JXnl60
人形『悪かったね』

 『暴走した』

女「…ううん」

 「私こそ」

 「ごめんね、気付けなくて」

 「私の悩みは、聞いてもらってたのに」

人形『言わなかったからなぁ』

女「言ってよ…」

 「そんなに、頼りない?」

人形『…意地みたいなもんかな』


139 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:32:31.32 ID:Sr/JXnl60
人形『私の悩み、聞いてくれる?』

女「うん」

人形『頼りない妹分がいて、不安で仕方なかった』

女「………」

人形『だから、背中を押してやった』

 『するとびっくり』

 『その子は自分で歩いていけた』

女「………」

人形『成長を喜ばしく思う反面』

 『寂しかったかな。ちょっと』

女「………」


140 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:35:45.24 ID:Sr/JXnl60
人形『ここからは約束』

女「約束?」

人形『強く生きて』

 『私を不安にさせないように』

 『私に出来ることはもう、これが最後』

女「それ、って」

人形『さ、目を閉じて』スッ

 『次に目が覚めたら、そこがあなたの居るべきところ』

 『友だちを、大切に、ね』ポワ

女「………」クラ

ポワン

人形『はぁ』


141 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:37:58.28 ID:Sr/JXnl60
人形『本当はさ』

 『やっぱりそばに居たくて仕方ないんだ』

 『願いが叶うんだったなら』

 『私は人間になりたかったよ』

神『無理だって』

 『その姿で我慢するって話だろう』

人形『はいはい』

 『……しっかりな。女』


142 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 13:41:21.14 ID:c7mdJByYO
あの、さるきました


145 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 14:05:15.99 ID:Sr/JXnl60
 『あんたたちのためには、しぬ気になんかなれないよ。

  そりゃ、ぼくのバラの花も、なんでもなく、

  そばをとおってゆく人が見たら、

  あんたたちとおんなじ花だとおもうかもしれない。

  だけど、あのいちりんの花が、

  ぼくにはあんたたちみんなよりもたいせつなんだ。

  だって、ぼくが水をかけた花なんだからね。

  おおいガラスをかけて、ついたてで風にあたらないようにして、

  ケムシをはらって、――チョウになるよう、少しはのこしておいたけど、

  ふへいもきいてやって、じまんばなしもきいてやったし、

  だまっているならいるで、ときにはどうしたのだろうと、

  ききみみをたててやった花なんだからね。

  ぼくのものになった花なんだからね。』


146 名前:とけた [] 投稿日:2010/06/26(土) 14:08:31.29 ID:Sr/JXnl60
………

「……な!」

「女!」

女「う…ん……」

「起きて!」

女「ん」

女友「おい目覚ましたぞ」

男「よかった、もしものことがあったらって」

女「人形ちゃんは…?」

女友「手」

女「……!」ギュ

人形 ギュ

女友「ずっと握ってたんだ、手を」

 「助かってからもずっとな」


147 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 14:11:14.84 ID:Sr/JXnl60
男「結構水飲んでて危なかったらしいんだけど」

 「医師の話じゃ、後遺症の心配もなさそう、って」

女「そっか」

 「きっと守ってくれたんだね」ハグ

人形

女「人形ちゃん?」

 「………」

人形

女友「女……」

………

  『子どもたちだけが、なにがほしいか、わかっているんだね。

  きれでできた人形なんかで、ひまつぶしして、

  その人形を、とてもたいせつにしてるんだ。

  もし、その人形をとりあげられたら、子どもたちは……』


148 名前:前半は引用改変です [] 投稿日:2010/06/26(土) 14:14:33.60 ID:Sr/JXnl60
さて、今となってみると、もう、確かに六年前のことです。

私は、この話をまだ、誰にもしたことがありません。

その後、私にあった知人たちは、

私が生きているのをみて、たいへん喜びました。

私は悲しかったのですけれど、知人たちには、

『なにしろ、疲れているので……』

と言っていたものです。

今となっては、悲しいことには悲しいのですが、

けれど私は悲しみません。

彼女と約束しましたから。

私は、まだ彼女の人形を、繕って部屋に置いてあります。

弱音を聞かせるためではなく、

私の生き様を、見守っていてもらえるように。

fin.


149 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 14:16:57.60 ID:JzaAEZ3v0


150 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 14:17:27.90 ID:Sr/JXnl60
本編は以上です。
お付き合いありがとうございました。



151 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 14:18:55.28 ID:r/o3K0aGO
乙!

で の続き期待


152 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 14:19:52.23 ID:Sr/JXnl60
◆没案1

女家・女の部屋

女「はー」

この部屋の主は、今日何度目かのため息をついた。

女「それでね、また失敗しちゃって」

彼女の部屋は、年頃の娘の部屋にしては、装飾が少ない。

女「皆に笑われちゃったんだー」

そんな彼女の部屋で、女の子らしさを感じさせるものが、

学習机に鎮座した、かわいらしい、小さな人形だった。

この人形は女が三歳のとき、祖母が姿を似せて作ったものだった。

幼かった女は、人形をいたく気に入ったものだ。

それは今も、なお。

女「私、どうしたらいいのかな。人形ちゃん」

彼女は、人形に話しかけていた。


153 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 14:21:21.90 ID:Sr/JXnl60
◆没案2 はじめはこんな感じだったのですがめんどくさくて会話文のみに

人形(はー)

その人形は、いろいろなことに頭?を悩ませていた。

女のことである。

十六歳にもなってこんなおままごとじみた真似を、だとか、

先ほどから上の空で、宿題が全然進んでいないぞ、だとか、

そんな気持ちを伝えられない、自分の無力感について。

人形は、女との付き合いは彼女の両親に次いで長いと自負しており、

女のことは自分の妹のように思っている。

女の相談に乗ってあげたいのはやまやまなのだが……。

人形(人間になりたいな)

人形(そうしたら、女を助けてあげられるのに)

叶わぬ願いと知りながらも、思わず嘆息してしまうのだった。

神『別にいいけど』

人形(え)


154 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 14:22:00.82 ID:JzaAEZ3v0
個人的には人間サイズにもなれて
人間として一緒に暮らすエンドが
ご都合主義的丸出しで好き


155 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 14:24:50.84 ID:Sr/JXnl60
改めて記載を。

星の王子さま サン・テグジュペリ 作

内藤濯 訳、 岩波書店

若干改変とかで字数削ったりもしました


156 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2010/06/26(土) 14:28:26.99 ID:k9w2g8pv0
人形「人参になりたい」


157 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 14:29:56.98 ID:Tswm6ygXO
遅れたが乙!


158 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2010/06/26(土) 14:31:38.73 ID:Sr/JXnl60
至らない点は脳内補正などで

とにもかくにもお疲れ様でした



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