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今頃魔王ってのもないようです
- 1 :1 ◆kmZtCE0ADw []
:2009/08/06(木) 21:08:49.60 ID:xVUECNfh0
魔王の子孫「はぁ……ご先祖が倒されてもうウン十年」
魔子「街に行くと、いまだに石投げられるわ、殴られるわ、なじられるわ……」
魔子「こないだなんて家に火つけられそうになったぞ……」
魔子「何世代も前のじいさんの事なんて俺が知るかよ……人間マジで自重しろ……」
- 2 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 21:14:49.09 ID:xVUECNfh0
魔子「人間の方がよっぽど魔物じゃないか。ケダモノどもめ」
魔子「はぁ〜あ。心安まるのはこうして人里離れた古池でつりしてる時だけだな」
魔子「……釣れないけど」
魔子「ええい、(元)天下無敵の魔王サマに逆らおうってのかこの雑魚どもめ」
魔子「……いや、『雑魚』はやめよう。魔王の子孫が言うと印象悪い」
- 3 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 21:22:48.69 ID:xVUECNfh0
× × ×
がさがさがさ
× × ×
魔子「ん? 魔物か?」
魔子「またスライムがおこぼれもらいに来たか?」
魔子「まったスライムの奴味をしめやがって……」
魔子「…………ん!?」
× × ×
がさがさがさ
女の声「……ううん。いいよ、ここで待ってて」
人間の声A「あぁ……? でもそっちは きったねぇ 池があるだけだぜ?」
人間の声B「そうだぜそうだぜ……あ、まさかお前、お花つみか?」
人間の声A「お前wそれセクハラwwwwうぇうぇwwwwww」
女の声「……そんなんじゃないよ。とにかく、行ってくるから」
- 5 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 21:27:16.08 ID:xVUECNfh0
× × ×
魔子「!」
魔子「(ま、マズイ! なぜこんな所に人間が……!?)」
魔子「(い、いや! とにかく隠れなければ――!)」
魔子「(よ、よしちょうどよく落ちていたこれを使うんだ……!)」
ごそごそごそ
- 6 :VIPがお送りします [] :2009/08/06(木) 21:30:08.42 ID:mkyO4ldUO
今頃勇者ってのも〜の人なの?
- 9 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 21:33:31.07 ID:xVUECNfh0
× × ×
がさがさがさ
女「……ふぅ」
女「……ホントにここは汚い池だなぁ。まがまがしいって言うか」
女「……ん? なんか転がってるな――?」
× × ×
□ ←(不自然にぽつんと転がるダンボール)
× × ×
女「……」
女「……やっぱりこういう まがまがしい 所がが好きなのかい?」
× × ×
□<……
× × ×
- 11 :VIPがお送りします [] :2009/08/06(木) 21:36:25.86 ID:95QxvCRHO
昔似たのあったけど同じ人?
- 12 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 21:39:03.25 ID:xVUECNfh0
女「魔子、メタルギアのやり過ぎだ。それでやり過ごせるのはゲームの中だけだ」
× × ×
□<……ちっ
× × ×
がぽ
魔子「よくぞ見破ったな人間よ。人間にしてはなかなかやるじゃないか」
女「……まぁ、ありがとうと言っておくよ」
- 13 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 21:39:53.86 ID:xVUECNfh0
魔子「む……おまえ」
女「ひさしぶり」
魔子「誰かと思えば……勇者の子孫さまじゃないか」
勇者の子孫(女)「最近街に現れないと思ったらこんなところで釣りかい?」
魔子「こんな所とはなんだ。ここは俺の癒し空間だぞ」
魔子「お前のようなリア充で清廉潔白とした奴が入れる所じゃないんだ。さっきのDQN共連れて
さっさと出て行け。しっし」
勇子「……」
勇子「実は話したい事があるんだ」
- 14 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 21:41:03.33 ID:xVUECNfh0
>>6
覚えてるのか! すごいな!
またお世話になります。童貞神です。
- 15 :VIPがお送りします [] :2009/08/06(木) 21:41:15.36 ID:oTngBDEfO
メタルギアでも森の中で段ボールはバレるwwww
- 18 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 21:47:38.18 ID:xVUECNfh0
魔子「なんだ。今更改まって」
勇子「今年で僕は16になる。この意味がわかるかい?」
魔子「知るか。ええい、イライラするしゃべり方は相変わらずだな」
勇子「ははは、君も相変わらず容赦がないな」
勇子「……」
勇子「君とこうやって憎まれ口をたたくのも最後になりそうだ」
魔子「なに?」
勇子「旅にでるんだ」
魔子「旅? なぜ?」
勇子「16歳になったら、かつての勇者と同じように旅に出るのさ。もっとも、魔物なんてもう
ほとんどいないから、世界を解放した記念の式典としてね」
勇子「世界を巡るから、しばらくは帰ってこれそうもない」
- 19 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 21:53:39.76 ID:xVUECNfh0
魔子「そうかそうか。それは良い話だ。さっさとどっか行け。勇者の子孫なんてのが近くに
いると俺もやりづらかったんだ」
勇子「そうか。悪かったね」
魔子「まったくだ。挨拶がすんだならどっかに行け。俺は釣りをしたいんだ」
勇子「そうか」
勇子「……」
勇子「……邪魔をしたね。でも最後にあやまっておきたかったんだ」
魔子「何を」
勇子「……とぼけちゃいけないよ」
勇子「子供頃の、忘れられない記憶だ。君も忘れてないはずだ――」
- 21 :VIPがお送りします [] :2009/08/06(木) 21:56:56.38 ID:mkyO4ldUO
おお!やっぱりアンタか
支援しよう
- 24 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 21:58:54.78 ID:xVUECNfh0
× × ×
(十年前……森の中で)
子供勇子「(ど、どうしよう……帰り道がわかんない)」
子供勇子「(うぅ、母さんの言いつけをやぶって森になんか入ったからだ)」
子供勇子「(ごめんなさい母さん……う、うぅ……)」
子供勇子「ひぐ……ひっく……」
子供勇子「おなかすいたよ……ひっく……ぅ、うわぁぁぁぁ」
がさがさがさ
魔子「なんだぁ、うるさいぞ」
子供勇子「!」
魔子「腹が減ったのか?」
子供勇子「……」
- 25 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 22:01:56.45 ID:xVUECNfh0
魔子「ふん、返事くらいしろ」
魔子「おいスライム。お前の頭を少しかじらせろ」
スライム「ぴ! ぴぎー!?」
魔子「なに? 『お、親分あっしはアンパ○マ○じゃないですぜ!?』だって?」
魔子「うるさい。俺は魔王の血筋だぞ。お前がスライムだろうがアンパンだろうが知らん!」
スライム「ぴ、ぴー……」
魔子「おい、お前。こいつをかじれ」
勇子「で、でも……スライムをかじるなんて」
魔子「早く食え。でないと食ってしまうぞ」
勇子「ひっ、た、たべる! たべるよ」
- 28 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 22:04:45.38 ID:xVUECNfh0
勇子「……ふーん。魔王の子孫なの」
魔子「うむ。俺は偉いぞ」
勇子「なんで森の中に住んでるの?」
魔子「お前はなんで待ちに住んでるんだ」
勇子「え? うーん……」
魔子「同じだ。俺にもわからん」
勇子「ふーん……」
勇子「あのさ、お礼したいから街に来ない?」
魔子「何? 街に?」
- 29 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 22:09:59.96 ID:xVUECNfh0
魔子「しかし街には人間がいるだろう」
魔子「俺の姿を見ろ。角も生えているし目も赤い。歯も鋭いぞ」
魔子「こんな俺がいったら、人間達は俺を殺そうとするんじゃないか?」
勇子「そんな!」
勇子「魔子は僕を助けてくれた! それを話したら大丈夫だよ」
魔子「しかし……」
勇子「あ、もう暗くなっちゃう! 太陽がある間に行こっ」
魔子「おい待て! 俺は魔王の子孫なんだぞ!」
勇子「大丈夫大丈夫! さ、行こうよ!」
- 30 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 22:18:26.76 ID:xVUECNfh0
× × ×
町人A「この野郎! この化け物が!」
町人B「まだ生きてるわ! この! この!!」
町人C「ダメだ! せいすい を持ってこい! ぶっかけるんだ!!」
魔子 は なぐられ、 けられ、 くるしんでいる!
魔子「ぅ――ぐぅ――!」
勇子「やめてよ! やめて! その人に助けてもらったんだ!」
勇子母「勇子! 早くこっちに来なさい!」
勇子父「まったくとんでもないモノを連れてきおって――!」
勇子「違うよ! お願いやめさせて!」
- 32 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 22:20:31.33 ID:xVUECNfh0
魔子「ぅぅ……ぐぁ……!」
町人A「おら! これでも食らえ!」
町人A は せいすいを ふりまいた!
魔子 の はだ が せいすい で 焼ける!
魔子「ぐぁぁぁぁぁぁああ――!?」
勇子「魔子ぃぃぃ――――!!」
- 34 :VIPがお送りします [] :2009/08/06(木) 22:23:16.44 ID:ppWLfx1uO
魔王の子孫 だから
まし、と呼ぶのだな
- 35 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 22:26:11.24 ID:xVUECNfh0
× × ×
(現代にもどる……)
勇子「……思い出したかい」
魔子「うーむ……」
魔子「覚えているが、この回想ちょっとドラマチックすぎるぞ……」
勇子「なんにせよ、君と今生の別れになるかもしれない」
勇子「だから今、あの時の事をあやまっておこうと思ってね」
- 37 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 22:27:47.87 ID:xVUECNfh0
魔子「ふん。勇者の血筋に同情なんぞされたくないわ」
魔子「気が済んだらさっさと行け。二度と帰ってくるなよ」
勇子「……」
勇子「そうだな。気は済んだ。だからもう行くよ。そしてもう帰ってこないと思う」
魔子「……」
勇子「それじゃ……」
× × ×
魔王「……ふぅ、行ったか」
魔王「……」
魔王「ふん。せいせいするわ」
魔王「……気分が乗らん! もう帰る!!」
- 38 :VIPがお送りします [] :2009/08/06(木) 22:28:38.57 ID:ppWLfx1uO
>>37
あ まおう
- 39 :VIPがお送りします [] :2009/08/06(木) 22:29:45.40 ID:NTPNZDU00
お、ついに
- 40 :VIPがお送りします [] :2009/08/06(木) 22:30:42.41 ID:4fO7azgp0
魔王様の復活だ!!
- 41 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 23:17:10.79 ID:MUgsq7ks0
〔森片隅にある、とある小屋へ……〕
がちゃ
魔子「ただいまー」
魔子「うぅむ……結局収穫はゼロか。明日の食事はどうしたものかな」
魔子「人間にあまり頼れないからな、家計のやりくりが大変だ……む?」
× × ×
揺れる椅子に座る老人「…………」
魔子「じいさま……ただいま」
老人「…………」
魔子「(へんじはない。ただのしかばね――)」
魔子「いやいや、生きてるよ」
老人「…………」
魔子「(しかし半分死んだも同然か……)」
- 42 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 23:18:14.95 ID:MUgsq7ks0
お、VIPふっかつ
- 43 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/06(木) 23:45:47.40 ID:MUgsq7ks0
魔子「(ボケちまってから何ヶ月たった?)」
魔子「(口も全く聞かなくなってしまうとはなぁ。ボケってのはもっとしゃべるもんだと思ってた
のだが)」
魔子「じいさま、作り置きのスープだ。飲んでくれ」
老人「…………」
魔子「あぁ、こぼしちまって……あぁ」
魔子「(……人はもろいなぁ)」
魔子「(あの時はあんなにたくましかったのにな……)」
- 47 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/07(金) 01:35:33.27 ID:ySQGmT6e0
× × ×
(再び十年前……)
魔子「…………」
町人A「まぁだ息があるぞ」
町人B「魔王の血筋だからな。ゴキブリ並の生命力だ」
町人C「ここまで来たらあと一息だ。油をかけて火をつけよう」
どぼどぼどぼ……
魔子「……」
魔子「(やっぱり殺されるんじゃないか……)」
魔子「(なんにもしてないのになぁ……)」
老人「おい貴様ら! 一体何をしとるんだ!?」
- 49 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/07(金) 01:37:46.59 ID:ySQGmT6e0
お、かきこめた
- 51 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/07(金) 01:49:57.32 ID:ySQGmT6e0
町人A「あぁ! 老勇者さん、見てください」
町人B「魔王の血筋よ!」
町人C「今なんとか駆逐しようとしてたんでさ」
老勇者(老人)「なんだと……!?」
魔子「……ぅぅ……」
老勇者「なんと言う事を……! おい、今すぐその子供から離れろ!」
勇子父「お父さん! こいつを助ける気ですか!?」
老勇者「お前こそ、こんな年端もいかぬ命を奪う気か!?」
町人A「老勇者さん気でも狂ったか……!?」
町人B「魔物に子供も大人もないわ!」
町人C「そうだそうだ!」
- 52 :1 ◆kmZtCE0ADw [] :2009/08/07(金) 01:50:47.86 ID:ySQGmT6e0
老勇者「えぇい馬鹿者共が! どけ! この子はわしが引き取る!!」
勇子母「パパ!」
勇子父「お父さん、そいつは遺恨を残すことになりますよ……!」
老勇者「遺恨を残さないためにここで殺すというのか! 生まれた子供に腕がなければお前達は
殺すのか!?」
老勇者「馬鹿げておる! この子はわしが引き取り、わしが守り育てる!」
勇子父「お父さん、もうろくしておかしくなってる……」
勇子母「正気じゃないわ、パパ!」
老勇者「我が身をふり返り見てから、同じ言葉を吐いてみろ!」
勇子母「その魔物を引き取るというなら、パパとはもう絶縁よ!」
老勇者「かまわん。お前達はわしの勇者の称号を盾にしてノウノウと暮らしておる! ここら
が潮時じゃ」
魔子「(……なんか俺とは関係ないとこでケンカしてんな)」
魔子「(でっかい手だな……ごつごつしてる……)」
魔子「(…………)」
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