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妹「お兄ちゃん……中に……!」
190 :旋風(かぜ)の幹部B [] :2010/03/15(月) 07:47:39.15 ID:Xu/XV/yXO
〜悪の病院〜

幹部B「俺の配下たる者、自分の尻は自分で守れと日頃から言っているだろうが」

怪人「め、面目こざいません」

幹部Bは悪の病院に入院中の怪人を見舞うついでに、その不甲斐なさに苦言を呈していた

悪の組織本部戦闘部門B組は、天下に蛮勇を轟かせる暴虐の徒である

その一員が何処の馬の骨とも知れない相手に後れを取るなど、凡そあるまじき不始末であった

叱責を受ける怪人は、痛みを堪えてベッドの上に正座。脇に控える戦闘員達は、慄きながら風向きを窺う

幹部B「まあ好い、今日はそんな小言を言いに来たんじゃない。聞かせてもらおうか、お前を襲った犯人の特徴とやらを!」

用向きを告げた幹部Bは、怪人達を手厳しく叱った他方、内心ではその働きに満足してもいた

よくぞ襲撃に遭ってくれた。……フフ、うれしいね。上司の立場でなければ小躍りしたい気分だよ

大々的に市街へ展開させた怪人や戦闘員は、期せずして標的をおびき寄せる撒き餌にもなってくれた

被害者は同時に目撃者でもある。その証言は、まだ見ぬ敵を追い詰める為の有力な手掛かりとなる

ただし、思わぬ功績を上げた怪人が労われることは無かった。その程度の手柄は称賛に価しない

何故なら悪の紳士は、自らが選んだ人材は例外なく有能だと考えており、その確信を前提として部下を評価しているからだ

加えて、彼は悪逆非道で鳴らした武闘派の悪者である。“御苦労様”だなんて、そんな事……言える訳ないじゃないのっ!


191 :怪人・柑橘ジャム男 [] :2010/03/15(月) 07:56:03.24 ID:qOJKBVBB0
幹部B「――今回も犯人は女、身体的特徴も専門家の分析と符合、か」

怪人と戦闘員の説明を元に推理する幹部B。白昼堂々、街中で男の尻を狙った不埒な輩は何者なのか

幹部B「戦闘員には目もくれず、怪人を一撃で沈めた手並みも同じ、やはり同一犯と見て良いだろう。だが、どうも解せんな」

怪人「何がです?」

悪の紳士は病室内を探偵歩きする。質問する怪人は傷の痛みと足の痺れ、どちらで苦しもうか悩み始めていた

幹部B「ああ、俺が気になっているのはお前の尻だ」

戦闘員1・2「「ええ!?」」

幹部Bは振り返る。その眼光に射竦められた怪人は、なぜか不意に胸がときめいた。甘くて苦いママレード

怪人「だけど気になる。こんな気持ちは何故……」

幹部B「何か言ったか?」

怪人「いえ何も。それより続きをお願いします」

幹部B「……悪の医者の話では、怪人にそれほどの手傷を負わせることは、常人には不可能だそうだ。
それこそ、怪人並みの力をもって攻撃されたとしか考えられない、と。しかし、怪人に匹敵する!?そんな人間が居るのか?」

怪人の肛門が受けた損傷は深刻なもので、悪の手術を施さなければ日常生活もままならない程だった

だが例え変身前でも、一級怪人の肉体は強化されている。貧弱一般人の暴力如き難なく跳ね返せる筈である

それを破壊せしめた相手とは一体?新たな情報が更なる謎を呼ぶ。だけど必ず解決してみせる、悪の紳士の名にかけて!


192 :あの台詞を言う時は、やたらと男前の顔で [] :2010/03/15(月) 08:03:40.71 ID:Xu/XV/yXO
赤く色づいたソコは熱を帯び、穴からは止めどなく液体が滲み出して―――怪人の下半身は限界に達しようとしていた

怪人「今一番、アイツの笑顔に会いたい……」

幹部B「何の話だ?」

怪人「いえ別に。しかし、奴は明らかに人の姿でした。変身しない怪人など居ないと思われますが」

幹部B「ああ、そんな怪人は登録されていない筈だが、だったら何だ?正義の味方か?」

怪人「ヒーローでもない様に思います。何と言いますかこう、普通の格好でしたから。断じてヒーローの装いはしていませんでした」

幹部B「ふむ、依然正体は不明か。では、そいつが怪人を的にかける動機はどうだ?」

怪人「利益を得る為か、不利益を回避する為か。どちらも思い当たりませんね。しかし、これはただの私見ですが、
奴からはこう、私と同類というか、我々悪者に近い印象を受けました。目的、となるとサッパリ見当も付ききませんがね」

幹部B「目的も不明の悪者か……分からん。まさか物取りの犯行でもないだろうに……」

怪人「いえ、奴はとんでもない物を盗んでいきました」

幹部B「?」

怪人「―――私の純潔です」

幹部B「黙れ」

ともあれ、このまま取り逃がしたとあっては、メンツ丸潰れってレベルじゃねーぞ


193 :侵略!悪の組織 [] :2010/03/15(月) 08:10:21.62 ID:qOJKBVBB0
〜数日後街〜
誰が言ったか知らないが、言われてみれば信じたくなる
新ヒーロー結成の噂が人の口に上り始めたのは、最後の英雄が姿を消してから一年程後のことだった

悪の組織が跋扈する世で、日々激しさを増す侵略に怯える人々は、正義の味方を待ち望んでいたのだ
“次代のウルティモマンか?” “能面ライダーの系譜を継ぐモノだろう” “いやいや電脳超人クリックマンの後継者だ”
新ヒーローを巡っては様々な憶測が飛び交ったが、その中に色彩戦隊色レンジャーの名を出す者は居ない

古来綿々と続いた正義の味方の歴史に、敗北という消えない汚点を残した色レンジャー、恥辱とともに刻まれた名前

仮に強大な悪者を相手に力及ばず敗れたのならば、同情を寄せる声もあったことだろう
しかし、彼等の醜聞にまみれた無様な負け方には、一雫の憐憫さえも注がれることは無かった

希望を背負った英雄の失墜は、メンバーの一人・黄色の過去に起こした傷害事件が暴露された事から始まった
次いで、青が違法薬物使用容疑で逮捕(本人は否認)。果ては、追い込まれて情緒に異常をきたした桃色の自殺未遂

その騒ぎを通して大衆は、『中の人』の存在を否が応でも認識させられたのだ
ヒーローが人間であることは許されない。結果、色レンジャーは休業を余儀なくされ、解散に到った

今、街行く人の誰に訊いても、こう答えることだろう“色レンジャーなどいない!”と

「―――あれは幹部AとCの部下?何故奴等が同じ作戦に……手を結んだとでもいうのか!?」

悪の組織の幹部達は対立していた筈……怪人と戦闘員が繰り広げる破壊の模様を遠目に、男は呟いた

悪の組織に何が起きたのか。いや、問うまい。あの光景は自分とは無縁のもの、その世界に身を置いたのは過去の話
何かを諦めた者が、尚もそれに執心するのは間違いだ。意識を向けるべきは新しい生活、残る心は棄てなければならない

もう未練は断ち切った、一般人の自分にとって奴等は恐怖の対象以外の何者でもない。男は葛藤をねじ伏せて車に乗り込む


194 :帰ってきたあの男 [] :2010/03/15(月) 08:20:09.25 ID:Xu/XV/yXO
〜しばらく後街〜
男「――そうっスね、結構怪人とか来てて、大分酷くやられた感じでしたね」

数時間後、レジを閉めて掃除を済ませ、閉店の準備を終えた店内で、男は店長と帰る前の世間話をしていた

店長「他人事だとは思えないよね。ウチの辺りだっていつ襲撃に遭うか―――。あのヒーロー共が役立たずだった所為で……」

男「……そうですね。それじゃ、自分はこの辺で失礼します」

男は相槌を切り上げて暇を請う。人と話すのは嫌いではないが、いかんせん体が疲れている

店長「うん、お疲れ様。また今度ヒマがあったら御飯でも食べに行こうよ」

男「そうっスね、はい。んじゃ、お疲れ様でした」

店長に頭を下げると男は家路に就いた。花屋の仕事にも大分慣れた、こんな慌しい日常も悪くない

花の種類、その取り扱い、配達先の地理等々、兎角覚えることは多いし体力も要る。だが、その忙しさは何よりの救いだった

労働は妄執を忘れさせてくれる。まだ接客がてら商品の管理を学んでいる段階だが、いずれはアレンジも出来る様になりたい

生きる場所を得たのは数ヶ月前、開店後間もない店には問題なく馴染むことができ、環境に不満も無い。この店で働けて良かったと思う

多くの人と接する中で、新たな自分を発見する喜びを知った。このまま上手くやっていけば、幸せなんてモノも見付けられるかも知れない

「あンた、男さンだな?」

男「ん?」

自宅に向かう男の前に現れたのは、悪者風の出立ちをした、無駄に長い前髪に両目が隠された、要するに悪の貴公子ブラック兄だった


195 :山の貴公子ブラック兄 [] :2010/03/15(月) 08:28:26.37 ID:Xu/XV/yXO
男「あの、どちら様でしたっけ?」

不審人物に名前を呼ばれた男は怪しんだ。全身から小悪党の闘気を立ち上らせる様な、そんな胡散臭い知り合いは持った覚えが無い

悪の貴公子ブラック兄「なに、怪しい者じゃない、見ての通りただの悪者だ」

男「いや、言ってる意味がわk……」

悪の貴公子ブラック兄「俺の事はどうでも良い。それより、アレがあンたの店か」

男「いや、だk……」

悪の貴公子ブラック兄「しばらく待たせてもらッたよ。どうだ?仕事は楽しいか?」

男「だから、お前は誰なんだよ!?」

ひとり登場した、会話の成り立たないアホの質問文に、男は質問文を叩き付ける。ちなみに、この解答はテスト0点である

悪の貴公子ブラック兄「それは秘密。何故ならその方が格好良いからッ!いや、実はあンたに頼みたい事があるンだ」

男「名前も明かさない奴の頼みが聞けるか」

会話を打ち切って歩き出す男。無礼千万、不愉快至極、常識も弁えない不躾な手合は、相手にするだけ時間の無駄だ

悪の貴公子ブラック兄「まあ待て、男さン―――もとい、元、色レンジャー赤」

男「な……」

瞬間、血の気は引き、俄かに鼓動が早まりだす。悪の貴公子ブラック兄の口から出たのは、決して暴かれてはいけない過去だった


196 :名前が変わります [] :2010/03/15(月) 08:36:09.38 ID:Xu/XV/yXO
兄「悲劇のヒーロー様にお願いがあってな。どこか静かな所で相談したいんだが、確かアンタの家はこの近くだったよな」

赤「何故そんな事を……」

名前や過去だけではなく住所も……この悪者は何処まで自分について知っているのか。赤はいよいよもって困惑した

兄「アンタの事は色々知ってる。色レンジャー解散後、ソロ活動で正義の味方を続けようとしたことも、
それが頓挫したことも、職を失って妻に逃げられたことも、復帰を諦めて数ヶ月前からそこの花屋で働いていることも」

赤「……!?」

絶句する赤。人は自分について知られることを怖れる。例えそれが秘密ではなかった場合でも同じ様に

何故なら、人間は未知なる物を怖れると同時に、その未知に対して一定の価値を見込んでいるからだ

知らないことの価値は概ね不変であり、知ることの価値は時と場合に大きく左右される

従って、自身についての何かを知られることは、自分の有する不変の価値が失われることを意味する

そして、それを許容する為には、そこに自信なり信用なりの、未知を上回る価値が認められる必要があるのだ

兄「俺に分からない事は無い。その気になれば、アンタのチン毛の本数だって調べられる――」

大嘘である。兄は他人の調べた情報、貰った資料の中身を羅列してみせただけに過ぎない

しかし、真実の中に紛れ混ませた嘘は説得力を持つ。相手が冷静さを欠いていたなら尚の事だ

兄「――まあ、その先はアンタの家でゆっくり話そうじゃないか」

兄は放心して立ち尽くす赤の肩を叩く。知る者と知らない者、主導権の在処は火を見るよりも明らかだろう


197 :VIPがお送りします [sage] :2010/03/15(月) 08:37:33.58 ID:iPn+Gsgg0
わーいスレ生きてた!支援
人物のアレ作ったものです。勝手に作ってすまなんだ。


198 :オラこんな家イヤだ [] :2010/03/15(月) 08:42:33.24 ID:Xu/XV/yXO
〜男宅〜
一体何がどうなったら、初めて会った怪しい男に案内されて、自宅まで帰ることになるというのか

兄「これはまた……えらく小ざっぱりしたと言うか……」

赤を連れて彼のアパートに上がりこんだ兄は、あまりに殺風景な室内を驚きを持って見回す
テレビも無ぇ、ラジオも無ぇ、車もそれほど走ってねぇ。最低限の調度品だけが据えられた彩りの無い家

兄「――それにしたって、もう一つくらい有っても好いんじゃねーか?」

テーブルの前、ただ一つ置かれた椅子に座ろうとした兄は、少し考えた後に、思い直して赤に譲った

赤「必要ないんだ」

腰を下ろした赤は吐き捨てる様に一言。まるで歓迎できない来客に、生活の事まで口を出される謂れは無い
二つ目の椅子など彼には不要だった。一切を捨て去って真っ更な自分を始める為には、余分な物が在ってはならない

兄「……相当、今の暮らしが気に入ってるみたいだな――」

花の図鑑、園芸の雑誌、卓の端に積み上げられた書籍類を眺めながら、兄は勿体つけて本題に入る支度に掛かる

兄「――アンタの店、小さいけどキレイだし、店長達も善い人そうだ。しかし、アンタの過去が明るみに出たらどうだろう。
かの色レンジャーだったことが知れたら、店にも居づらくなるんじゃないのかね。まあ良い。俺の用件はアレだ、要するに脅迫だよ」

赤「……金か?」

兄「いやいやとんでもない。俺が金で動く様な安い男だと、見損なってもらっちゃ困る」

兄は金銭に拘らない類の小悪党である。それは、赤にとって金よりも大切な物が脅かされることを示唆していた


199 :今更明かされる舞台設定。季節は秋 [] :2010/03/15(月) 08:51:23.23 ID:Xu/XV/yXO
〜兄妹宅〜

妹「……」

窓の外に吹く風が木の葉を揺り落とす。灯りを消した部屋で、寝る支度を済ませた妹は布団を被っていた

数日間、部屋に引き篭もっていた兄が、悪の組織と戦うなどと言い出したのは、昨日の夕方のことだった

いきなり突拍子も無い事を言われて愕然とした妹だったが、どうもそれは考えに考え抜いて出した結論の様だった

引き篭もっている間も壁越しに生存を確認はしていたが、そんな事を企んでいるとは夢にも思わなかった

無謀すぎる兄を止めようにも、他に代案がある訳でもないし、焚き付けたのは自分だという気がしないでもない

それに、あの臆病者がそんな事を思い立ったのだから、余程の自信と目算があるのは間違いないだろう

外に出てきた兄は、無駄に長い前髪の奥に潜む瞳に意志の光を宿した、立派な小悪党の様になっていた

無気力な駄目人間が、一段上の悪者に進化してしまったことを、喜んじゃいけないのかも知れない

それでも、この間の今にも死にそうな、何もかもを諦めた様な態度と比べれば、もっとずっとマシになった

兄が生き返ったことは嬉しかったし、少しの後ろめたさもある。自分に出来る事があるなら、手伝ってあげてもいいと思う

妹「でも……お兄ちゃん、大丈夫なのかな……」

出掛けていったきり、こんな時間になっても帰って来ない兄。心配しだすと眠れなくなる妹だった


200 :×赤 [] :2010/03/15(月) 08:57:54.01 ID:qOJKBVBB0
〜赤宅〜

兄「――ってな訳で、悪の組織を潰す為に力を貸してくれ。ヒーロー様には慣れた仕事だろ?」

テーブルを挟んで立った兄は赤に向かって、圧倒的に優位な立場から、多分に強制力を伴ったお願いをしていた

赤「もう俺は、正義の味方じゃない」

断れないと判っている頼み事ほど、屈辱を与えるものは無い。赤は慎ましやかに反論することしか出来ないのだ

兄「なに、別に正義の味方に戻れって言ってるんじゃない。悪に立ち向かうのが正義の味方だとしたら、
―――→この場合、正義の味方は俺ってコトになるだろう。だったら、アンタは正義の味方の味方で良い」

赤「お前が……正義の味方……だと!?」

静かに脅されていた赤が目を剥いた。かつて全てを捧げた道を侮辱するかの様な発言は、何があっても捨て置k

兄「うん、合格。それだけ熱くなれるんだ、アンタにはまだ正義の心がある。アンタは今でも正義の味方だよ」

赤「は……?」

満身の力をこめて、今まさに振り下ろさんとする握り拳だ……った赤の逆上は、軽くいなされて空気中に揮発する

兄「うんうん、流石は正義の戦士様だ。きっと他の皆さんも同じ気持ちなんだろうな」

赤「アイツ等も引っ張り出そうっていうのか?ムリダナ」

兄「何故だ?」

他メンバーが話題に上った途端、やにわに自分を取り戻した様な赤に、兄は何やら不吉なものを感じるのだった


202 :1人じゃないから難しくないもん! [] :2010/03/15(月) 09:03:31.13 ID:Xu/XV/yXO
赤「――アイツ等はもう戦えない。それ以前に連絡さえ取れないだろう。
緑は田舎に帰った。黄色は二度目の傷害で塀の中。青はコロンビアで貿易業をやってる。
そして桃色は……あいつは、お花畑の住人になっちまった。もう帰って来れないかもな」

兄「嘘……だろ……?」

赤が語った色レンジャーの元メンバー達の現況を聞いて、兄は譫言の様に呟いた
彼等が全員揃うことを当て込んだ勝算は、暗雲に包み隠されてもはや影も形も見えはしない

赤「俺一人で悪の組織を丸っと相手にしろってか?無茶言うなよ」

皮肉交じりに嗤う赤。兄の計画が実現不可能だと判ったことは、彼の精神に充分な余裕を与えていた

兄「……きみとなら、きっとできること。ココロとココロで手を結んで……諦めちゃダメだ……そうですよね?坂本さん――」

兄は虚ろな眼で独り言を垂れ流しはじめた。大丈夫…………きっと出来る。勇気の扉、ちょっと開けるだけだよ……

兄「――ああ、問題ない。俺だって怪人に勝った、それに妹だって居る……」

自らをを説き伏せた兄は顔を上げる。前後不覚、錯乱した思考状態の内に、彼の持つ自分を納得させる能力が、
今まで『何かを諦める』為にしか使われなかった力が、生まれて初めて前向きな意図を持って行使される機会を得たのだ

兄「俺は自分の生活を守る。その為にアンタには付き合ってもらうぜ。当然ながら拒否権は無い。
分かるだろ?アンタだって自分の生活を守りたい筈だ。そして、守りたいものが一緒なら、俺達は戦友だ」

赤「え?あ、ぁあ!?」

差し出された手を思わず握り返してしまった赤は過ちに気付くが時既に時間切れ

OK、協力者ゲット。味方がふえるよ!!/やったねお兄ちゃん!


203 :ラブリーチャーミーな女幹部 [] :2010/03/15(月) 09:11:05.76 ID:Xu/XV/yXO
〜翌日女幹部宅〜
女幹部に幹部Bから電話が掛かってきたのはその日の昼過ぎ、就寝真っ最中の出来事だった

安眠を妨げられた女幹部は、話を終えた後、些かの憤慨をもって悪の紳士に就いて思案していた

他者を顧みず我を通す強引さは、悪者に欠かせない資質である。しかし、それだけでは一流の悪とは云えない

一分の曇りも無い純粋で至高の悪、則ち『完全澄悪』を志す彼女は、幹部Bの限界がそこに在ると考える

他者の意思を無視して狼藉をはたらくだけの蛮行は、そこらの三下にも容易く出来る低俗な悪行だろう

そこに留まることなく、他者の懊悩や絶望さえも利用するのが、女幹部の理想とする悪者の姿なのである

それはさておき、幹部Bの用件は怪人襲撃事件に関して、犯人を探すため協力してほしい、というものだった

女幹部は色よい答えを返してみせたが、事件の究明は情報工作組の存亡にも関わりかねない危険性を持っている

無論、要求に応えるつもりは微塵も無い。むしろ、思う存分組織の足並みを乱してやろうと目論んでいた

人の心の中空を、漂い、機を読み、風に乗り、日和見気取り風見鶏。親の総取り良いトコ取り。天と地、股に掛ける蝙蝠

臨機応変、変幻自在、奇想天外、四捨五入、出前迅速、落書無用。事件のあらましを知った女幹部の軌道修正は早かった

兄をクビにした翌日には早速、架空の新ヒーロー達を創り出し、部下達を使ってその情報を各方面にバラ撒く

そして、明くる日には複数の同業他社に、悪の組織の内部分裂について、ある事ない事書き立てた怪文書を送り付けた

また、それらの下準備と並行して――――――。女幹部は嫌がらせのプロである。妨害工作ならお手の物

どこまでも卑劣に、陰湿に、躊躇なく、そして秘密裏に。混乱よ来たれ!愛と真実の悪を貫く愉悦に、彼女の魂は打ち震えていた



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