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意地悪なメイド4.5
- 329 名前:【異能生存体】 [sage;saga]
投稿日:2011/04/18(月) 00:36:24.88 ID:G80UgtZt0
妹嬢「異能生存体。つまりは強運という言葉すら生ぬるいレベルでどんな活動領域ですら活躍可能であり、生存能力が高い固体。……一人心当たりがありますね」
男「へぇ。やっぱお前の知り合いとかなるとそういうすごい奴がいるんだな」
妹嬢「誰とは言いませんがね。ええ、言いませんが」
男「でもすごいよなぁ。周りがすごい奴らの中にいても全然平気なんだろ? 羨ましいよな」
メイド長「……本気で仰ってますか?」
男「え? 何か変なこと言いました、俺」
メイド長「いえ、何でもありません。失礼しました」
妹嬢「自覚がない分、厄介なのかそうでないのか」
男「……?」
委員長「くす。そうね、そういう意味ではこの子はやっぱりそういう星の元に生まれてるわ」
命「あん? 何かいったか?」
委員長「何も。あなたを御守代わりにするのも悪くはないと思っただけよ」
命「ていのいい抱き枕か何かとしか思ってないくせによ」
委員長「ええ、そうね。そうかもしれないわね」
命「認めるかよ普通……。いやいいけどよ」
- 333 名前:【いいんちょは死んだ!もういない!!】 [sage;saga] 投稿日:2011/04/18(月) 01:13:00.63 ID:G80UgtZt0
命「だったらよかったんだが、な」
委員長「珍しく私をお題に入れている中では優しい内容ね」
妹「え?!」
命「もっと鬼畜なのが来ると思ってただけに拍子抜けだな」
委員長「そうね。まさか味方側の扱い、それも重要なキーマンポジションとは思わなかったわ」
妹(なんでこんなひどいお題なのに平然としてるの!? これ全然扱い良くないよ、お姉ちゃん!!)
命「でも委員長が本当にそうなったら、泣いてくれる奴なんているかね」
妹「なっ……いるに決まってんでしょ!」
委員長「命は泣かないでいてくれるかしら?」
命「当然だろ。俺は泣くわけねぇ」
妹「最低! あんた、お姉ちゃんと一緒に頑張ってるんじゃないの!」
命「何一つ頑張ってねぇよ。むしろ死ぬような思いを何度もさせられたし、利用だってされた」
委員長「そうね」
妹「うっ」
命「だから、泣いたり悲しんだりなんてのはねぇよ。そうだろ?」
委員長「そうね」
命「俺はあんたが死んでも立ち止まりもしないし、振り返らない。先に待ってる、それだけだ。いつか会える。そうだろ?」
委員長「ええ」
命「それだけのことだ」
妹「……お姉ちゃん、命……」
委員長「ね? 有情なお題でしょ」
妹「そう、なのかもね」
命「普通なら最悪のお題だけどな。あんただけだよ、似合うのは」
妹「ちょ、せっかくいい空気なのに何台無しにしてんのよ! バカバカバカ!!」
命「ははは」
委員長「くす」
妹「がるるる!」
- 339 名前:NIPPERがお送りします(関西・北陸) [] 投稿日:2011/04/19(火) 00:31:53.20 ID:aJjRdn4AO
妹「……」
委員長「どうしたの、妹。あれがどうかした?」
命「……」←あれ
妹「ふぇ?! な、なんでもないよ。なんでも……」
委員長「……。まぁ見てくれはいいものね」
妹「ちょ、ち、違うよお姉ちゃん! 勘違いしないで!」
委員長「あの子は追われるより追う方が本気になるタイプよ。あまり自分から仕掛けるものじゃないわ」
妹「だから違うよ! 私はそんな、全然あいつの事なんかっ」
委員長「でも一夏の思い出くらいにはちょうどいいわね。あの歳にしてはなかなかうまいし顔もいいもの。少し貴女は垢抜けてきなさい」
妹「お姉ちゃん、話を聞いてってば!」
委員長「だったら私がもらっていくわね。あれでもお気に入りなのよ、あの子」
妹「だ、ダメっ!!」
委員長「くす。あら、どうして?」
妹「それは、その……ほら、お姉ちゃんにあいつなんか釣り合わないからで。だからお気に入りでもそんなのダメで」
委員長「だったら貴女となら釣り合いが取れるのかしら」
妹「わ、私!? そ、いや、でも」
命「さっきから何二人でギャーギャーやってんだ。うるせぇな」
妹「ひぅ!? あ、ああ……」
命「あン?」
妹「あんたなんか、あんたなんかぁぁぁあああ!!」
バチン! ドダダダタ
命「っ、つぅ〜〜! なんのつもりだよ、あいつ!」
委員長「さぁ。でも可愛いでしょ」
命「あ? なんだそりゃ。それよりお前の妹はいきなり殴って逃げるのか」
委員長「私の血縁だもの」
命「何か変に納得しちまった」
- 356 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/04/21(木) 23:25:24.21 ID:ISID7BU00
めらめらと燃える建物。目の前で崩れていく様を身ながら、漠然と思うのは自身の生。
「生きて、た」
確かめるように自身への言葉を呟く。
あがくだけあがき、最後の瞬間にだめだと思って、しかし生きた。
一緒に押し出されたか、何かの拍子で詰まりがとれたか。
どちらにせよ、退路となった場所に壁だったゴミが散乱している。
ぐずり、と。その時点で自分が抱いていたものに気づく。
ぬらぬらと、どこか禍々しい肉と汁気を帯びたそれは、頭部。
「……何で、だよ」
自分から離れたことか。この結末に対してか。
言葉を交わすことない存在故に、その心内がわからぬままに離別となった。
その少女の顔を、彼は今一度強く抱く。
「思ったよりも無事だったようね。もう少し危うい場面があるかと思っていたのに」
背中にかかる涼しげな声に振り向けば、やはり彼女の姿がある。
「委員長」
「ええ、私よ。あなたが思いのほか頑張るものだから、脱出させるタイミングが遅くなったわ」
こともなげにそう言いきる彼女。恐らく、また彼女の暗躍で自分は助かったのだろう。
いや、違う。……きっとそうじゃない。
「こいつが目的だったのか」
隠すように腕の内にある頭部を抱え直す。
彼女は言っていたはずだ。この部位だけは持ち帰るのだと。
「知ってたんだろ。こいつがあの中にいたの」
「そうね。知っていたわ」
悪びれることなく、その目的も肯定し、彼女は平然と返す。
「それで、厄介なやつの始末と、目的の回収も兼ねたから、あのタイミングなんだな」
「あなたの頑張りで予定を繰り上げなくちゃならなかったのは本当。けれど、そうね。大体は命の思う通りよ」
ならばあの状況も、危機を作り出したのも彼女。
人を利用することを何ら罪と思わず、自身の目的を達成する。
改めてこの女が恐ろしい、と彼は思う。
けれど、助かった。ならば、今はそれでいい。
「……。これから、どうすんだ」
「迎えは来るわ。ここは監視下だもの。すぐに異変は気づかれるわ」
「なら、俺の役目も終わりか」
- 357 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/04/21(木) 23:25:56.64 ID:ISID7BU00
そう。彼の役目は獣の少女の導き手。その対象が消えた今、彼女はただ目的のモノを回収すれば終わりだ。
つまり、今の命の存在など足手まといであり、邪魔でしかないはず。
彼の言う役目の終わりとは、その短く空虚だった人生の終点を意味していた。
しかし、
「ダメよ。対価はまだ払い終えていないでしょうに」
彼女は薄く笑うと、彼の頬に手を添え、
「報酬は与えるわ。あなたがこの地を無事に脱するという。だから」
奪う。ただほしいままに、その唇を。
「……っ、は。だから、あなたの魂、毛の一本に至るまで、私のもの。そういう契約でしょう」
「そう。だったな」
そうだ。少女の未来は無くなり、同時に無くなったのはその守護のみ。
命の無事も契約として含まれていた。
きっとそれは、無意識に期待していたことで、やはり自身の死は受け入れていなかった。
だから、まだ生きる。……生き延びる。
今はその約束された生に、安堵を得るのだった。
- 358 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/04/21(木) 23:26:47.42 ID:ISID7BU00
あれだけ激しく燃え上がっていた火は、しかし不思議なことにあたりに広がることはなかった。
ある程度開けた場所だとはいえ、森の中。下手をすれば山火事だったろう。
だが事実として、炭となり燻ったのは建物と少しの周囲のみであった。
「さすがにあの化け物もこれだけ焼かれりゃおしまいか」
「どうかしらね。ただ現状として襲ってこないなら問題ないわ。後始末は私の仕事じゃないもの」
「……。それで、動かずいたのは新しい救援待ちか何かか?」
「そうね。賭け、みたいなものかしら。どちらが先に来るかわからないから」
「あ?」
遠まわしな物言い、その意味の不明さにただ聞き返すしかない。
「貴方、自分がどれだけ恵まれているか、知らないでしょう」
「何の話だよ」
「……賭けは私には不利なほうに転んだみたいね」
彼女が告げた瞬間、いつの間にか人影が辺りに広まっている。
「いつの間に」
「怖いわね。私も全く気づけなかったわ」
「味方にビビってどうすんだよ、らしくねぇ」
「そうね。味方相手にならこんなに警戒しなくてもいいのだけれど」
「おい、何言って……」
ふと、その言葉に視線を辺りに戻せば向けられるのは銃口。
「おいおいおい。何の冗談だよ、これは」
後ずさる先にもいつの間にか死の予感が迫っている。
囲まれた、というべき状態だろうか。しかし、違和感を感じ、その銃口の先をたどればどれ一つをとって自分を向いていない。
その凶口が向けられる先は、
「……。こんな辺鄙な場所にまでご苦労ね。飼い犬さん」
全て委員長のもと。
決して多くは無い人影だが、その全てがとてつもない威圧感を放っている。
その先が自分に向けられていれば喋ることすらままならないだろう、と命は思う。
それでも涼しげに返した先、人影の中から見目麗しい女性が出てくる。
「主よりの厳命ですので。それにしても、まさか貴女が噛んでいたとは」
どこかで見たことのあるその姿は、侍女服姿であり、この場にそぐわないもの。
けれど、何故かこの中で誰よりも存在感を発し、決して場違いだとは思えない姿。
「亡者に縛られるなんて。貴女達の忠犬ぶりには頭が下がるわ」
「でしたらそのまま無抵抗で。こちらも無駄な手間も労力も弾丸も惜しいものですので」
「嫌よ。私に触れていいのは私だけなんだから」
言いながら、委員長の側に引き寄せられる。
自分が割り込む余地がないと、黙っていただけに唐突なアクションに何ら抵抗なく流されてしまう。
- 359 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/04/21(木) 23:27:14.64 ID:ISID7BU00
「その方を離しなさい」
「ダメ、とは言わせてくれないわよね」
「交渉の余地など最初から存在しませんが。ですがこちらとしてもその方を危険に晒すのは本意ではありません」
「じゃあ、見逃してくれないかしら」
「それこそ本意ではありません。先に告げておきます。私から貴女方の目的そのものに関与する気はありません」
その視線の先にあるものは、獣の頭。
「それは有り難い申し出ね。命、それ、こっちに渡しなさいな」
「……」
何か、とても嫌な予感がする。
それはきっと、自分ではなく、目の前の相手のことで……。
「命。契約、私に破らせないでくれるわよね」
無事を約束する、というもの。
何となくわかることは、この侍女服の女と、その一団は自分を助けようとしているということ。
けれど、彼女はどうなのだろう。
「あんたは、どうすんだよ」
「決まってるでしょ。次に行くだけよ」
「……。それは」
その先の言葉が出るより先に、抱きすくめられる。
周囲の空気が固く、緊張の糸が張られる中、彼女は命にだけ囁く。
「命。貴方との蜜月。思いのほか楽しませてもらったわ。だからイイ事を教えてあげる」
それは容赦なく、
「何も考えず、ただ非日常に憧れた馬鹿な子を、私は一度たりとも相手にした覚えはないわ」
塞ぐことの出来ない耳朶に、
「私はね。貴方なんて一度も見ていないの。貴方の姿に未練と憎悪をぶつけただけ」
もっとも彼が忌み嫌うことを、
「貴方のパパの事、私は好きだっただけ。わかった? 貴方自身に価値なんてないのよ。お人形さん」
たたきつけた。
- 360 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/04/21(木) 23:27:59.18 ID:ISID7BU00
呆然と、ただ抜け殻のように立ち尽くす命の手から、するりと獣の頭が抜き取られる。
離れる際にその手癖を披露しながら、彼女は彼の頬に口付ける。
それは、別れの合図。
「さ、持ってかえってあげなさい。親鳥の巣へ」
とん、と。背中を押されただけで、彼の足は自然と侍女服の元へと歩を進める。
「ご苦労様でした。貴女が原因とは言え、ここまで護っていただいた事だけは感謝しましょう」
その力ない身体を侍女服は支え、
「身体に怪我、不調等はありませんか?」
確認を取り、彼が力なく頷くのを確認すると、
「では、こちらの任務は達成しました。次のステージへ移ります……」
撃て、と小さく、令を出した。
「!」
その言葉の意味を理解し、振り返った先に彼女はいない。
けれど耳にした音は確かな発砲音で、彼女の居た場所には少量の鮮血。
そして先ほどまで居た人影のほとんどが姿を消している。
信じられないという表情で見やる侍女服の相手は淡々と説明をくれる。
「我々の最優先目標は貴方の身柄、そして安全の確保。第二に下された命令はこのような事態を起こした相手の特定と」
殲滅です、と彼女はいう。
「お、おい。やめさせてくれよ! 別にいいだろ、俺は無事だったんだから!」
「貴方に命令権はありません。ただ自身の無事を噛み締められるとよろしいかと。では移動します」
「おい! やめろ! あいつは、委員長は関係ないだろ! 俺が勝手についてっただけなんだ! だからやめてくれ!!」」
そんな少年の無力な叫びを無視し、彼女達は進む。
そうして再び得られた平和は、しかし彼の中から何もかもを奪う結末しか残りはしなかった。
- 361 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/04/21(木) 23:28:41.77 ID:ISID7BU00
「なぁ」
日常の中の風景。見慣れぬ道をゆく社内で、命は隣の侍女に声をかける。
「何か」
「俺は、……」
「……」
「何でもない。それとは別で頼みがある」
「叶えられる範囲であるならば」
「髪、切ってくれるか。短く、してくれ」
「何故そのような行為を。我々としては刃物を持ち出すことすら躊躇われる状況ですが」
「切りたいんだ。あいつらのとこへ、戻る前に」
「けじめのつけ方はそのようなものではないと思われますが」
「区切りだよ。俺は、それくらいしか、今思いつかないから」
「言葉遊びですか」
「覚悟だよ。俺に、何かさせてくれ」
「……。わかりました。それで貴方の無力感が削がれるならば」
言外に、それで大人しくなるならば、と。
厄介ごとを極力排するようなニュアンスを込められていることに気づきながら、しかし事実を受け止める。
泣き叫ぶことも、暴れることも。
今の自分が行ったところで、無意味だから。
力がほしいと思った。
揺れることもなく、静かに進みゆく社内。
耳に入る鋏の音だけを聞いて、彼はその生で初めて、欲っするものが出来た。
「ぎ、が……!?」
「おい、どうし……ひ!」
すでに通信が途絶えた組が2つ出、撤退の二文字が彼らの頭の中で浮かび始めたころ、3組目の犠牲者が出る。
手負いの獣とは聞かされていたが、狩られているのはどちらなのか。
深追いはするな、と釘は刺していた。しかし、所詮相手は一人とどこかで侮っていた部分は確かにあった。
相手からすればホームグラウンドとまではいかずとも、向こうの側の土地であることは間違いない。
その場で無理に追撃を仕掛けるのは得策ではない以上、現状としてこうなってしまっていることもわかる。
けれど、それでも。追撃を始めてわずか“半刻”のうちにこれだけの被害が出るものなのか。
あれだけの傷を負いながら、何故これほどまでに動ける。
そして決して低くない練度を誇る者がこうも手玉に取られるのか。
尽きぬ疑問を、後を任された部隊長は飲み下し、撤退の命令を下す。
命がその場を離れ、約一刻。
委員長の無事は、彼に知れることなく確保されるのだった。
- 362 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/04/21(木) 23:29:32.63 ID:ISID7BU00
「おかえり」
そう、何事も無かったかのように迎え入れる父。
「ぶ!? ボーズだ! ボーズ、BOUZU!! ぶひゃひゃひゃ!!」
もともと頭の螺子が緩んでいた母は涙を流すほどに笑い転げ、
「ぼーず、ぼーず!」
同じようにアホの子はアホの子なりに帰宅を喜び、
「全く。心配させないでよね。あんたに何かあったら、みんな悲しむんだから」
腹違いの姉は、怒りながらも無事を喜んでくれた。
そして切り出すのは、家を自分から出て行くという話。
「だから、金が欲しいんだ」
要約して、まとめた結論がそれだった。
「帰ってきて早々親に金せびるとかこの子大丈夫っすか、主様」
「いいよ。何か決めたんだろ? 自分の中で」
そんな無茶苦茶な要求も、何故か止められない。
「うっわ、主様が何か厨二病的な会話を! ポエムを!」
「ぽえむー!」
「黙ってなさい、君達。……で、今度は探すなってのも言いたいんだよな」
あっさりとこっちのもう一つの要求も見透かしてくる。
本当に、いけすかない。
「……ああ」
「そんな! 何でよ、別にやりたいことならここでも出来るじゃないの!」
その様子に、一人慌てるのは半分血の繋がった姉。
「ごめん、妹子姉ちゃん。ここじゃ、ダメなんだ」
「何よそれ。訳わかんない! 私は嫌っていっても探すんだからね! ていうか家出なんてさせないから!」
心の底からこっちの身を案じてくれる。
本当の意味で、この人だけは、信じていいと思う。
けれど、
「ごめん」
「……うう。馬鹿!」
謝る姿も、そっぽを向かれてしまう。彼女なりの許しなのだろうか。
そんな様子に困った顔をしながら、父は何かを取り出す。
- 363 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/04/21(木) 23:30:41.24 ID:ISID7BU00
「わかった。でもそんな適当な金額じゃ、やりたいことも出来ないだろ」
そう言って差し出されるのは一枚の通帳。
「……おいおい。何だよ、この額」
こちらが要求していたよりもゼロの数がひとつ多い。
「お前らの母親からのプレゼントだ」
「ちょ、主様。ネタバレいくない」
急にあたふたしだす母親の姿に、珍しく父が意地の悪い顔で解説をする。
「こいつ、お前らのために毎月3万ずつ貯めてたらしい。昔、俺がやってた給……げふん。小遣いから」
「いいのか」
「いいよ。元々お前らの金だ。俺が渡した訳じゃない。遠慮しないでもってけ」
施しなのか、餞別なのか。結局どうあれ、頼ってしまった結果なのだ。
そうするしかないと分かっていても、憮然としてしまう。
「……。絶対返す」
「遠慮か? 孝行か?」
- 364 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/04/21(木) 23:31:13.42 ID:ISID7BU00
本当にいけすかない。答えがわかっていて、言葉で聞きたがる。
嫌なやつ。
「意地だ」
「なら良し。いってこい、馬鹿息子」
「お前に息子なんて呼ばれたくない」
だからせめてもの抵抗。
「ぬ、ぐ」
「やーいやーい」
「あんたも母親として見てねぇ」
せめてもの強がり。
「お、女として!? やばい、そういうタブーはちょっと燃える!」
「燃えるな、頼むから」
「けど、……すまん。助かった」
そして、素直な言葉は……
「そういう時はありがとうだよ!」
純粋な肉親の後押しもあり、
「……。あり、がとう」
言葉にできた。
「おう。時々手紙くらいよこせよ」
「メールでいいじゃん。メールで」
「方便だっつうの! わかれよ!」
「主様ってばマジアナログ。アナログマー」
「もはや過去の遺物なのに!!」
そんないつもどおりのやり取りを背中に、扉に手をかける。
「あ。おい、飯くらいどうだ?」
「いい。その代わり」
「おう?」
「次に来た時は、土産話の代わりに、うまいもん、頼む」
「了解」
そうして、俺は家を出る。
まだ少し漠然としていても、目的は出来た。
あいつに……委員長に会う。
それで、どうするか。分からないけれど。
でも、今度は俺を俺として認めさせる。
何があっても、絶対。そして……。
「思いっきり、抱いてやる」
いいんちょ・命 退魔夜行 『獣面人編』 了
- 365 名前:NIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage] 投稿日:2011/04/21(木) 23:57:42.17 ID:K3PCqjrjo
乙
命がやっぱりガキのまま、か
ところでこれでえろいんちょの出番減るのか・・・?
- 366 名前:NIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage] 投稿日:2011/04/22(金) 00:15:41.66 ID:Oun3PuIAO
委員長「逆かしらね。これから出番は増えるわよ」
命「……ふん」
委員長「くす。可愛い子ね。ゆっくり大きくなりなさい」
命「精々余裕こいてろ。絶対追い付いてやる」
委員長「期待しないで待つわ」
という訳で今後は飛ばし飛ばしにでもこいつらのとこ書いてきますので。
期待しないで待っててくださいww
- 370 名前:NIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage] 投稿日:2011/04/22(金) 00:54:24.38 ID:Oun3PuIAO
妹「お姉ちゃんのそういうとこ、いつの間にか公式になっちゃったよね」
委員長「そういうとこ、というのはどういう意味かしら」
妹「え、あ、いや。そ、そう! つまりスタイリッシュが板についたねって事だよ、うん!」
委員長「そうかしら。どちらかと言えば泥臭いようなやり方ばかりよ、私」
妹「ううん! だってこう、当たり前みたいに銃とかでババババーって! かっこいいよっ」
委員長「死に場所が欲しいだけなんだけれど」
妹「お、お姉ちゃん!?」
委員長「……冗談よ。妹は真に受けすぎ」
妹「だ、だって」
委員長「私に許されるのはそんな安寧ではないもの。それより、命ならあっちよ」
妹「あいつはどうだっていいの! 私はお姉ちゃんさえ居てくれればっ」
命「なんだ。呼んだか?」
妹「へぅ?! きゅ、急に来ないでよバカー!」
バチン! ドダダダ
命「……嫌われすぎだろ、俺」
委員長「そんな事ないわよ。ふふ」
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