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「おーい磯野、野球しようぜ!」
85 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:19:15.79 ID:RXgd8Ii60

次の日、学校が終わり帰途についていたカツオの前に急に人影が現れた。
花沢さんだった。カツオは大きくため息をつく。
「ち、ちょっと磯野君!た、大変…よ!」
「どうしたんだよ花沢さん?そんなに息を切らし――」
「いいから来なさい!」
花沢さんはグイっとカツオの腕を引っ張り走り出した。


86 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:23:59.76 ID:RXgd8Ii60
「ちょっと花沢さん!」
引っ張られること約五分、
カツオが無理やりつれてこられたのは学校の近くにある古びたバッティングセンターだった。
ところどころ緑色のネットが破れていて、危なっかしい。
「いい加減この手を離してくれないか?」
うんざりしたようにカツオは上を向く。
そんなカツオをお構いなしに花沢さんは物陰に隠れた。


88 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [トリつけとく] 投稿日:2007/12/02(日) 00:30:19.01 ID:RXgd8Ii60
「ここがどうしたっていうんだよ」
「見てよほら」
バッティングセンターの片隅に目を向ける。
そこには岩志高校の生徒と知らない学校の制服を着た三人の生徒がいた。
「オイオイ!!どーした、ひょろ男クン!」
「ヒャハハ!そんなへっぴり腰でボールが打てるかよ!!」
岩志高校の生徒は精一杯バットを振っているようだがちっともボールに当たっていなかった。
「よし、これでヒットの本数は…43対3だな。さっさと4千円だせや!」
「ひぃ…勘弁してください」
やりとりからするとヒットの本数で勝負をしているらしい。
まあ、お互い合意の勝負ではなさそうだが…。


90 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:34:01.90 ID:RXgd8Ii60
「あいつら飯田高校の野球部よ。
 あそこは野球強いけど、ガラが悪いって評判だわ。
 やられてるのはうちの一年の伊勢くんね」
聞いてもいないのに花沢さんはつらつらと説明してくる。
「それで?僕にどうしろと?」
「決まってんじゃない、磯野君の剛速球であいつらをやっつけてよ!」
昨日の朝は野球の話題を連想させて気まずそうにしていたくせに、一晩たったらこの有様だ。
カツオは呆れ返っている。


92 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:38:07.96 ID:RXgd8Ii60
 まだ全部完成してないんでもうちょっとしたら一回切ります
 再開は明日の昼ごろかと…それまでに完成させます
 とりあえずもうちょっと頑張る



「僕が野球をやめたのは知ってるだろ?」
「まあまあ人助けだと思って、ね?」
正義感が異常に強い花沢さんがこうなってしまっては説得のしようもない。
やれやれといったふうにカツオは肩をすくめた。
「好きにしたらいいさ」
「そうこなくっちゃ!」


96 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:42:22.70 ID:RXgd8Ii60
花沢さんはまさに水を得た魚だ。
物陰から飛び出した花沢さんは不良たちの前に躍り出た。
「待ちなさいあんた達!そのお金を彼に返しなさい!」
「なんだこの女?」
金髪の男が怪訝な目で花沢さんを見る。
「勘違いすんなよネーちゃん。
 俺達はこいつと真剣勝負して勝ったから金をもらったんだよ!なあ!?」
三人の中で一番背の高い男がバットを振りかざし伊勢君に怒鳴る。
「…いえ、その…はい」
弱弱しく呟く伊勢君。カツオ達以外周りに誰も人はいない。


98 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:46:43.84 ID:RXgd8Ii60
「だったらこっちが勝負に勝ったらお金を返してくれるってことよね?」
勝ち誇ったように腕を組む花沢さん。
「あ?」
「ここにいる彼と一打席勝負してもらうわ!」
カツオは無理やり前に押し出された。
三人組はジロジロとカツオを見て、なにやら話し合っている。
一分かそこら経っただろうか。
「よーしいいだろう、ついてこい」
そう言うと三人組はだらだらと歩いていった。
面倒なことに巻き込まれた。あらためてカツオはそう思った。
不良と関わることですらかなり面倒なのに、そのうえ野球勝負?
言いだしっぺの花沢さんは鼻を膨らませてやる気満々だ。鬱陶しい。
伊勢君の方を見てみる。震えてそれどころじゃなさそうだ。


99 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:48:13.47 ID:RXgd8Ii60
「ここでいいだろ」
デブの男が空き地を指差した。
その空き地はかつて中島とピッチング練習をしていた空き地だった。
皮肉なものだ。カツオは懐かしげに空き地の土管を眺めた。
デブは土管に噛んでいたガムを吐き捨て、また新しいガムを噛み始めた。
「俺らが負けたらこいつに金を返す。で、俺らが勝ったらいくらくれるんだよ?」
金髪は明らかになめた口調でボールを弄んでいる。
強い風が、空き地を吹き抜けた。


100 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:52:07.78 ID:RXgd8Ii60

なぜか、無性に腹が立った。
こいつらがこの空き地にいることが気に食わなかった。
消えろ。消えろ。消えろ。
気がついたらとんでもないことを口走っていた。

「バットにボールが当たったら一万円あげるよ」
「磯野君!?」
「ああ!?ナメてんのか!?」
金髪がこちらを睨む。
「いいじゃねえか、楽に金が手に入るんだからよ」
ノッポとデブはへらへら笑っている。


101 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:58:00.54 ID:RXgd8Ii60
「ちょっと磯野君!大丈夫なの!?」
駆け寄ってくる花沢さん。
言いだしっぺは彼女なのに大層慌てている。
「黙ってってくれないか」
うざったそうに花沢さんを振り払い、カツオは三人組から離れた場所に歩いていく。
どうやら金髪の男が勝負するようだ。
「それじゃあ、始めようか」
カツオはゆっくりと振りかぶる。
空を見上げると、いまにも雨が降りそうな真っ黒な雲が広がっていた。


もう誰も見てないかもしれないけど
ここで切ります皆さん乙でした
再開は明日(っていうかもう今日ですが)の昼ごろです
スレタイは一緒にしときます
このスレが残ってればここ使います。


102 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:58:30.07 ID:zSZCAyB8O BE:692827283-2BP(0)
>>59
主語じゃなくて一人称


103 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 00:58:42.61 ID:KocDNo3s0
>>101
激しく乙!
楽しみにしてるよ


119 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 02:40:28.80 ID:5heDgCdzO
サザエ好きで野球好きの俺も>>1氏の文才には手放しで賞賛せざるを得ない

俺はこのスレを守ることに決めた


136 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 08:21:05.71 ID:FaflCA4sO
イクラ「なぁ、ワカメ…ワシのチンチンが寂しがっとんねん。慰めてくれや。」


147 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [] 投稿日:2007/12/02(日) 10:02:05.31 ID:RXgd8Ii60
スレが残ってる!
保守の皆さん本当に乙
ほとんど完成したので
12時くらいから書き始めようと思います


154 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 10:19:15.41 ID:ERrsUvNb0
丁度追いついたところで>>1帰還か

>>90の飯田高校で吹いたw
地元にそのまんまの名前の高校あるわ
野球は弱いけどね


161 名前: [] 投稿日:2007/12/02(日) 11:04:00.04 ID:B5LXxd2a0
再開します

不良達がボールを投げた。
いい球ではあった。「第一球空振り!」
不良達がわらっている。今のカツオの手には当時の感覚はなかった。
「第二球空振り!」
不良達が声高々に言う。

そういえば、中島との野球もこんな感じだったっけな。
「第二球空振り!おい、磯野。それじゃあ来週の試合には間にあわないよ」
あのときの中島の声が突然聞こえた気がした。

不良達が3球目を投げる。カツオがそれに対して大きく振りかぶる。
「空振り三振!!!!」
結果は残酷だった。不良達にやすやすと負けるほどカツオの腕は落ちていたのだ。


162 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 11:08:55.43 ID:UMqXV5dm0
再開ktkr
また読ませてもらうぜ


163 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:12:26.77 ID:TO0Ga/8L0
なぜカツオがバッター?


165 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 11:15:34.25 ID:UMqXV5dm0
うはwwwよく見たらIDちげーよ/(^o^)\


166 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 11:16:21.63 ID:ehKUjZK6O
だまされたwwww


168 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:19:24.78 ID:RXgd8Ii60
あれ俺が二人いるwwww

早めに再開



曇り空の下、岩志高校のグラウンドでは十数人の部員たちが守備練習をしていた。
「よーし集合!」
監督の声が響く。部員たちは監督の前へと急いで集合した。
「えー、急な話だが今週の土曜日に飯田高校と練習試合をすることになった」
部員たちのあいだにざわざわとした声が広がる。
「飯田ってあの強豪の?」
「たしか去年は県でベスト4に入ったよな…」
「おい、静かにしろ!まあ、胸を借りるつもりでやれ。練習試合だからな」
監督が話し終えるとポツポツと雨が降り始める。
「今日はこれで解散!土曜日は十時に試合開始だからな、遅れるなよ!」
練習は雨のせいで早めに終わることになったようだった。


169 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:21:03.85 ID:5heDgCdzO
カツオちゃんの身を真剣に案じてしまったではないか!
あー、ハラハラした…


170 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:21:47.34 ID:RXgd8Ii60

「冗談じゃないぞ」
雨の降る帰り道で中島は一人つぶやく。
まだ四月。チームはしっかりとまとまっていない。
そんな中で、飯田高校と練習試合?
だからこその練習試合か…。チームには良い経験になるだろう。
しかし今はピッチャーが一人怪我をしていて、まともに投げられるのは一人。
明らかに戦力に差がありすぎる。勝つのは厳しい。


174 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:24:07.76 ID:RXgd8Ii60
部員が少ないこともあり
一年生ながら中島はキャッチャーとしてレギュラーに入っていた。
真っ暗な空を見上げる。
負けたらそこで終わりなんだ。
おじいちゃんは練習試合でも例の約束を持ち出してくるだろう。
ちくしょう。勝てる気がしない。でも…負けるわけにはいかない。


175 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:26:21.70 ID:RXgd8Ii60
磯野…。
いや、磯野はもういないんだ。
時々、思うことがあった。
僕は磯野の投げる球を誰よりも信頼していた。
でも僕は磯野を信頼していたのではなく、
いつの間にか野球を続けるために利用していたのでは?


176 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:27:49.85 ID:RXgd8Ii60
どちらにせよもう磯野に頼ることはできない。
あいつに僕の事情を押し付けるのは卑怯だから。
「そう、決めたんだ」
先ほどから急に降り出した雨は、ますます激しさを増していった。


177 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:29:18.54 ID:RXgd8Ii60

たった三球投げただけ。
それなのに、頭がくらくらした。


178 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 11:29:46.81 ID:Rzwrbl7F0
カツオの鳴く頃にwwwww


180 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:31:31.25 ID:RXgd8Ii60
激しい雨が降る中でカツオは空き地に背を向けた。
金髪はバットを持ったまま立ち尽くしている。
その後ろでノッポとデブは呆然としている。
三球、すべて直球だった。
しかしバットはボールにかすりもしなかった。
やがて三人組は逃げるように空き地を出て行った。
「てめえ、おぼえてろよ!」
金髪が去り際に何か言っているように聞こえたがカツオの頭には入ってこない。


181 名前:サイドストーリーです [] 投稿日:2007/12/02(日) 11:32:35.20 ID:aUq9AJnzO
カツオが投げた。一球目今中ばりの大きく落ちるカーブ、不良のバットは中村紀のように大きく空をきった。
ふりかぶって二球目。山本昌のようなスクリューボール。不良のバットは井上のようにくるくるまわった。
そして三球目、岩瀬が乗り移ったような外角低めストレート。不良はウッズのような豪快な三振。
カツオはニヤリと笑った。そこへ花沢さんがかけよってきて「磯野くんすごーい」「私ほんとに惚れちゃった」カツオ「俺は投げるのもすごいけどバットはもっとすごいぜ」「花沢さん、ためしてみるかい?」
花沢さん「ええっ、嬉しいけどカオリちゃんはだいじょうぶ?」
カツオ「黙ってればわからないさ。場所は…そうだな、部室でも借りるか」
カツオ「おいっ、不良達。しばらく部室をかりるぞ」
不良「はいっ、わかりました」カツオ「盗み聞きなんかしたらしょうちしねえぞ」不良「はいっ!」
カツオ「じゃ花沢さん、行こうか」花沢さん「うん、でも優しくしてね」
カツオ「当たり前だろ、俺はいつもジェントルマンだぜ」
花沢さん「磯野くん…」


182 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:34:09.02 ID:RXgd8Ii60
カツオはゆっくりと空き地を去ろうとする。
「待って!磯野くん!!」
花沢さんが必死にカツオを追いかけて走る。
「ごめんなさい、磯野くん…わたし――」
「鬱陶しいんだよ…」
「え…!?」
花沢さんは今にも泣きそうな顔をしてその場に突っ立っている。
カツオはそれ以上何も言わず、重い足取りで雨の中を歩いていった。


183 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:35:02.36 ID:aUq9AJnzO
ごめん、>>1帰ってきてた
ロムにもどります


185 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:37:02.24 ID:RXgd8Ii60
なんだっていうんだ!
ただボールを投げるだけじゃないか!
それがどうしてこんなにも苦しいんだ?
どうしてこんなに頭が痛いんだ?
ボクハナニヲコワガッテイルンダ?
どこからか声がする。
「怖いんだろう?磯野カツオ」
黙れ。
「またミスをして見捨てられるのが怖いんだろう?」
黙れ。
「あんな肝心なところで暴投した奴は愛想を尽かされて当然さ!」
「黙れ!!!」
叫んだ。
周りにいた人が何事かとこちらを見る。
ダメだ。その場に跪く。
早く帰ってゆっくり風呂にでも入らなきゃ…。


187 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:39:26.36 ID:RXgd8Ii60

家に帰ったカツオはすぐさま風呂に向かう。
体は鉛のように重い。
脱衣所に誰かいるのに気が付いた。
半裸の波平がそこにいた。
「父さん。どうしたのこんな早く?」
「おお、カツオ。今日は会社が早く終わってな、久しぶりに一緒に入るか?」
波平が一緒に風呂に入るのは何か話したいことがあるからだと、カツオは分かっていた。
「いいよ」
口数少なくそう答えた。


191 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:43:52.57 ID:RXgd8Ii60
「父さん、背中流そうか?」
「おお、すまんな」
波平はこちらに背中を向けるといつもの調子で話し始めた。
「お前が岩志高校に合格したことがワシは本当にうれしかった」
波平は上機嫌で語る。
「またその話?」
そう言うと波平の様子が急に変わった。
「カツオ、本当に野球をやめてよかったのか?」
話す内容はいつものものではないようだ。


194 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:45:59.57 ID:RXgd8Ii60
カツオは何も答えられない。
「カツオ、中島君ともまだあのままなのか?」
「え!?父さん?」
「みんな気づいとるぞ。母さんもサザエもマスオくんも心配しとる。
 ワカメは全然気づいてないみたいだが」
みんなに心配をかけている、カツオはなんとなく分かっていた。
サザエたちは何気に中島や野球の話をするのは避けていたから。
ワカメは気にもせずに話していたけど。


195 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 11:46:38.71 ID:CzWWycbA0
タラちゃん出てきてないなあ


196 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:47:43.17 ID:RXgd8Ii60
「お前ももう高校生だ。ワシらがああしろ、こうしろとは言わん。
 まあ、ちょっとしたきっかけで友達と気まずくなることはよくある。
 ワシも昔そんなことがあった。」
「父さんも?」
「それじゃあ話すとするか。あれはワシが高校二年の頃だった。
 そう、ワシの髪がまだふさふさで、秋の紅葉がうっすらと赤く染まる季節…」
それにしてもこの禿、ノリノリである。


199 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 11:51:52.86 ID:PTV9NFPXO
>>1書くの飽きてきた?


200 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:53:39.51 ID:RXgd8Ii60
>>199
一応もう全部書いてあるんだ
いまはそれを添削しながら貼ってるだけ


縁側で夜風に当たる。
父さんの話を聞いているうちにのぼせてしまったようだ。
つまるところ友達を大切にしろってことらしいが、そんなこと百も承知だった。
ただ、今更どうしろっていうんだよ。


201 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:54:53.65 ID:RXgd8Ii60

週の終わり金曜日、授業が終わるとカツオはさっさと荷物をまとめ教室を後にした。
廊下はこれから部活の生徒や、友達と談笑する生徒でにぎわっていた。
カツオはそれらを気にもとめずに廊下を歩いていると、隣のクラスの女生徒の会話が耳に入ってきた。
「聞いた?明日野球部練習試合するんだって」
「へえー、どこの学校とやるのかな?」
「飯田高校とだって」


202 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:55:56.73 ID:RXgd8Ii60
それ以上は聞く気にならなかった。
飯田高校。この間の三人組の学校。たしか去年はベスト4だったか。
カツオは窓の外に見える野球部の練習に目を移した。
この学校の野球部では勝つのは難しい。カツオの率直な感想だった。
見たところ打線は中島もいるからそこそこのものだろう。
守備も高校野球のレベルとしては標準的だ。
問題はピッチャー。


205 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 11:57:33.16 ID:RXgd8Ii60
中島がリードしたところであのピッチャーだけでは苦しいだろう。
悪いピッチャーではない。
ただベスト4のチームを相手に最後まで持つかどうか。
せめてもうひとりピッチャーがいれば何とかなるかもしれないな。
そこまで考えてカツオはハッとした。


208 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 12:01:00.28 ID:RXgd8Ii60
なんで僕はこんなことを考えてるんだ。
最近の僕はどうかしている。
花沢さんの人助けに付き合ったり、こんなところで野球部の戦力分析をしたり…。
未練でもあるのか僕は…。
「まあ…精々頑張れよ、中島」
グラウンドで一際よく動いている人影にむかってカツオはそんな言葉を投げかけた。
「帰るか」
最後にもう一度だけグラウンドに目をむけ、カツオはすっかり人の少なくなった廊下を一人歩いていった。


210 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 12:01:54.09 ID:RXgd8Ii60
午後十時、すっかり暗くなった道を一人の少女が歩いている。
少女は小さくため息をつく。
花沢花子は落ち込んでいた。
軽率な行動で磯野君の古傷をえぐるような真似をしてしまった。
もちろん、伊勢君を助けるのが第一の目的だった。
でも、もしかしたら磯野君がもう一度野球を始めてくれるきっかけになるかもって。
それが見事に逆効果。あーあ、私ってドジな女。もう一度大きなため息をつく。


211 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 12:03:40.67 ID:VsrB3ZBUO
ヒロインみたいなポジションにいることが鬱陶しいな


213 名前:1 ◆8jF6DdCTlE [sage] 投稿日:2007/12/02(日) 12:04:13.98 ID:RXgd8Ii60
「――わかっとるな、博」
すぐそばの家から大きな声が聞こえた。
「明日の試合で負けたら―――」
そういえばここは中島くんの家だっけ。
そんなことを思う。
「―――てもらうからな」
チラリと聞こえた会話の内容が妙に引っかかる。
よし。
少女はいつの間にか聞き耳を立ててその場にしゃがみこんでいた。



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