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「おーい磯野、野球しようぜ!」
- 1 名前:VIPがお送りします。 []
投稿日:2007/12/01(土) 22:16:14.59 ID:RJji9MBO0
そう言って最後にあいつが家にやってきたのはいつだっただろうか。
トーストの匂いがする。窓から太陽の光が射し込み、カツオは目を覚ました。
気持ちのいい朝だった。季節は春、四月の下旬だ。
磯野カツオは今年の春から高校生になった。
小学生のころから成績があまりよくなかったカツオが
ハイレベルの進学校に入れたことは快挙だった。
合格を知らせたときの波平の喜びようをカツオは今も覚えている。
カツオは布団から這い出て、コトコトと音のするキッチンに顔を出した。
- 2 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:17:55.08 ID:RJji9MBO0
キッチンでは珍妙な髪型の女性が目玉焼きを作っている。
「あら、今日は珍しく早いじゃないカツオ」
フグ田サザエ、歳の離れたカツオの姉だ。
お魚くわえたドラ猫を裸足で追いかけたりするくらいパワフルな女性だ。
「僕だって早起きすることぐらいあるよ。失礼だな姉さんは」
「ゴメンゴメン。もうすぐご飯できるから顔洗って来なさい」
- 3 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:19:54.63 ID:RJji9MBO0
洗面所には先客がいた。
「おはよう、マスオ義兄さん」
「あ、カツオ君か。おはよう。もう少し待ってもらえるかい?」
髭剃りを中断して挨拶を返すマスオ。
その律儀な性格。さすが姉さんの夫が勤まるだけのことはあるとカツオに思わせた。
- 4 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:22:21.42 ID:RJji9MBO0
間が持たないなと思ったカツオはマスオに話しかける。
「マスオ義兄さん、父さんの姿が見えないけどまだ寝てるの?」
「お義父さんは朝一で会議があるらしくてね。もう出かけちゃったんだ」
「そうなんだ、父さんもまだまだ元気だな」
「お義父さんの心配をするなんてカツオくんもなかなか親孝行になったじゃないか」
髭剃りを終えたマスオは笑いながら洗面所を後にした。
- 6 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:24:21.11 ID:RJji9MBO0
身支度を整えたカツオは居間で家族と朝食をとる。
波平は出かけ、タラヲはまだ寝ているため五人での朝食だ。
「お母さん、私今日はちょっと遅くなるかも」
「おや、何か用事でもあるのかい?」
「ちょっと友達と野球部の練習試合の応援しようと思って」
「暗くならないうちに帰ってきなさいよ」
「はーい」
- 7 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:26:34.08 ID:RJji9MBO0
カツオはトーストはかじりながら、フネとワカメのいつも通りの会話を聞いていた。
磯野フネ、カツオの母でありよく気がつく優しい女性だ。
最近は少し体が弱くなってきているみたいだが、本人はまだまだ元気と言い張っている。
妹のワカメはさっさと朝食を終え、中学校へ出かけようとしていた。
玄関に向かおうとしたワカメはなにか思い出したように振り返った
「そういえばお兄ちゃん、うちの中学って今年も野球部強いんだっけ?」
- 8 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:28:36.81 ID:RJji9MBO0
―――去年の夏―――
「フォアボール!」
その夏一番の暑さだった。
気温は35度、照りつける太陽の下、ここ山馬グラウンドで中学野球地区大会の決勝戦が行われていた。
制球が定まらなかった。帽子を取った少年はユニフォームで汗をぬぐい、マウンドの上でふうっと息をつく。
9回裏2−1 1アウトランナー2塁1塁 少年のチームは1点リードのまま最終回を迎えていた。
「タイム!」
- 9 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:31:34.21 ID:RJji9MBO0
メガネをかけたキャッチャーの少年がマウンドに駆け寄ってくる。
「球はまだ走ってる。悪くないぞ!あとひとふんばりだ磯野!」
カツオは腕を組んでおどけて答える。
「まあ、負けても命までとられるわけじゃないからな。いつも通りやるさ」
「……そうだな。やっぱり磯野は落ち着いてるな。じゃあ、いつも通り頼むよ」
そう言って中島はポジションにもどっていった
カツオはもう一度ユニフォームで汗をぬぐう。
- 10 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:35:11.29 ID:RJji9MBO0
カツオと中島は小学校からの親友で、
昔から時間があるたびに野球ばかりして遊んでいた。
二人は中学校に入ると当然のように野球部に入った。
カツオはそのしなやかなフォームからくり出されるノビのある直球を、
中島は強肩と意外性のあるリードを監督に評価されてバッテリーを組まされた。
親友同士ということもあり二人の相性は抜群で様々な試合で活躍していった。
そして三年最後の夏、ついに地区大会決勝までたどりついたのだった。
- 11 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:37:05.77 ID:cHMKf86i0
俺は楽しみにしてるから
- 13 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:38:56.72 ID:RJji9MBO0
>>11
d
「ストライク!バッターアウト!!」
矢のようなストレートが中島のミットに吸い込まれていった。
「ナイスボール!」
中島がうれしそうにボールを返す。
お前こそいつも通り落ち着いているじゃないか、とカツオは苦笑した。
相手チームの3番を三振にとり、これで2アウトランナー2塁1塁。
- 14 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:40:46.68 ID:RJji9MBO0
「あと一人よ〜、磯野く〜ん!」
ベンチでマネージャーの花沢さんが声を張り上げている。
花沢さんは昔からカツオにぞっこんで今もこうしてくっついてきている。
カツオは昔から彼女のことを少し鬱陶しく、しかしそれでいて鬱陶しく感じていた。
あと一人といってもその一人が4番なんだ…。簡単に言ってくれるなよ。
そう思いながらもカツオはテンポよく投げ込んでいく
- 15 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:44:43.20 ID:RJji9MBO0
「ストライク、ツー!」
低めのスライダーで空振りを取りカウントは2−2となる。
この暑さでカツオはかなりスタミナを消耗していた。
カツオは目の前がボーっとしてきていたが
強く首を振り、しっかりしろと自分に言い聞かせる。
「あと一球、か」
- 16 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:46:59.13 ID:RJji9MBO0
中島のサインを確認して首を縦に振る。
インコース高めのストレート。このバッターの苦手コース。
さすがに中島はよく研究している。これで終わりだ。
残りの力を振り絞り、カツオは要求通りの球を放った。
その時、中島は目を疑った。まさか。
- 17 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:49:53.09 ID:RJji9MBO0
カツオの球をヒットにするのは難しいと判断したバッターは奇策に出た。
バント。打球は勢いなく正面、ピッチャーとキャッチャーの間に転がる。
「俺が取る!」
駆け出したカツオは声を張り上げボールをつかむ。その瞬間カツオの体がふらっとよろめいたのを中島は見た。
「磯野!!」
カツオの投げたボールは―――ファーストの横を大きく逸れていった。
- 18 名前:VIPがお送りします。 [ ] 投稿日:2007/12/01(土) 22:52:37.24 ID:JWhgIJTpO
>>14
>少し鬱陶しく、しかしそれでいて鬱陶しく感じていた。
鬱陶しく感じすぎwwwwww
- 19 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:52:53.87 ID:RJji9MBO0
「―――お兄ちゃんったら、ねえ?」
ワカメは不思議な顔をしている。
「ん?ああ、まあそこそこ強いんじゃないかな」
気のない返事をする。
「ふーん、お兄ちゃんがいたときはすごく強かったのにね。いってきまーす」
ワカメはそんなことを言って、短いスカートをヒラヒラさせ駆け出していった。
- 20 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:55:22.12 ID:CAr1VMjL0
中学生になってもあのパンチラは不滅ですか?
- 21 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:55:53.92 ID:RJji9MBO0
「カツオ、あんたもそろそろ出ないと」
姉さんと母さんは朝食の後片付けを始めていた。
「うん姉さん。今行くよ」
玄関を出ると春にしてはまだ少し肌寒い風が吹いていた。
「野球部…か」
誰にも聞こえないような声でカツオは呟いた。
- 23 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 22:59:32.24 ID:RJji9MBO0
カツオの通う岩志高校までは徒歩で約三十分。
いつもの道をカツオは一人で歩いていた。
「磯野くーん、おはよー!」
大きな声でカツオの名をよぶのは花沢さんだった。
静かに登校したかったカツオにとっては少し鬱陶しい。
- 25 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:03:43.18 ID:RJji9MBO0
彼女もカツオと同じく岩志高校に進学していた。
まったく、どこまで僕についてくる気なんだろう。
カツオはやれやれと首を振った。
「磯野君、聞いたわよ。こないだの学力テストで学年三位だったらしいじゃない。
昔は全然勉強できなかったのにね磯野君。どうしちゃったのよ?」
ガハハハと笑いながら花沢さんが話しかける。
- 27 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2007/12/01(土) 23:05:24.57 ID:q1KPFSFi0
花沢自重せよ
- 28 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:06:02.25 ID:RZfoY/vaO
wktkしてやんよ( ´Д`)y──┛~
- 30 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:07:31.64 ID:A4sfbJrGO
学年3位wwwwwww
頑張り杉wwwww
- 32 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:07:53.97 ID:RJji9MBO0
「別に。他にやることがなかっただけだよ」
前を向いたままつまらなそうにカツオは答える。
「あ、ごめんね…磯野君」
花沢さんは申し訳なさそうな顔をしている。
「何が?」
それだけ言うとカツオは歩くスピードをあげて一人で学校へと歩いていった。
そう、他にやることがなかっただけさ…。
- 33 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:08:15.68 ID:OK7I7l7q0
中島「おーい!磯野〜」
カツオ「皆、中島が来たから帰ろうぜ・・・」
- 34 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:08:58.17 ID:QyPpTpgN0
でも現実でもカツオみたいな子が中学から伸びるよね。
真面目だと精神的に潰される。
遊びでストレス発散できる奴は上がっていく
- 35 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:11:13.98 ID:t1lGiTM10
タラオは絶対将来ニートになる
- 36 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:12:13.07 ID:RJji9MBO0
中島がカツオと同じ高校に入学したのは予想外だった。
”あの試合”以来二人は話すこともなく疎遠になってしまっていた。
決勝のミスのことでチームのみんなはもちろん、中島もカツオを責めなかった。
しかしそれからというもの中島は急によそよそしくなった。
二人でやっていたピッチング練習にも来なくなった。
初めはそのうち来るだろうと思い、カツオは高校野球に向け一人で硬球を使って投げ込んでいた。
二人は同じ高校に進学して、甲子園を目指そうと前から言っていたからだ。
しかし一週間たっても中島は来ない。おかしいと思ったカツオは中島のクラスに行って事情を聞くことにした。
- 37 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:12:35.93 ID:OK7I7l7q0
>>35
よく、不良になる説を聞くよね・・・
- 39 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:14:58.99 ID:9hPzXf8mO
タラオはそのうち誰かに殺されろ。
- 40 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:16:35.00 ID:RJji9MBO0
「どうしたんだよ中島。最近ぜんぜんピッチング練習に来ないじゃないか」
少し強めの口調でそう言ったカツオに対して中島は何か後ろめたそうな顔をしている。
「あ、磯野…」
「もしかして怪我でもしたのか?」
「いや、怪我はしてない…」
「わかったぞ、彼女でもできたんだろ?」
「いや…」
- 41 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:18:28.96 ID:RJji9MBO0
中島は妙に歯切れが悪かった。
「じゃあ、いったいどうしたんだよ。俺のミスのこと怒ってるのか?」
「違う!そんなんじゃないんだ…。ただ…」
「ただ?」
「…」
中島は何も言わない。
「おいおい、本当にどうしたんだよ。
二人で野球推薦とって、高校で甲子園目指すんじゃなかったのかよ!」
「…」
- 44 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:20:30.57 ID:A4sfbJrGO
アッー!か?
- 46 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:22:28.02 ID:RJji9MBO0
中島は黙ったまま。こいつ、何考えてんだ。
カツオは中島の肩をつかみ、声を荒げた。
「やっぱりあんな凡ミスするような奴とは組めないってのか!
何とか言えよ、中島!」
「ちょっと磯野君、落ち着いてよ!」
中島と同じクラスの花沢さんがカツオの制服を引っ張る。
- 47 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:24:55.11 ID:5Qu51HfnO
高校の名前が岩志=イワシ=鰯とは芸が細かいな。
- 48 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:27:53.74 ID:RJji9MBO0
そのとき、次の授業開始を告げるチャイムが鳴った。
いつの間にか、教室にはカツオ達以外の生徒はいなくなっていた。
中島のクラスは次の時間移動教室だったらしい。
「…じゃあ、行くから」
中島はそんな言葉を残しカツオの前から去っていった。
「磯野君…」
花沢さんは心配そうにカツオの顔を見つめている。鬱陶しい。
何も言わなかった中島の背中を見つめながらカツオはギュっと唇を噛み締めた。
- 49 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:28:39.10 ID:t1lGiTM10
花沢がブサイクじゃなかったら・・・w
- 50 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:31:13.34 ID:5fhJHKsOO
欝陶しいで吹くwww
- 51 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:32:54.77 ID:RJji9MBO0
その日以来カツオは野球の練習をしなくなった。
自分に何も言わずに野球をやめた中島のことが信じられなかった。
それからというもの二人の関係はぎこちなくなり、今までのように話せなくなってしまった。
そして野球を辞めたカツオは勉強に精を出し始める。
元から頭の回転は速かったカツオは、ぐんぐんと成績を伸ばした。
そしてこの春県内トップクラスの進学校である岩志高校に合格した。
疎遠になった中島の志望校など知るはずもなかったカツオは入学式で中島をみかけたときひどく驚いたものだ。
- 52 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:37:22.50 ID:RJji9MBO0
花沢さんと出会った事以外はこれといったこともなく一日をを終え、
学校から帰宅したカツオは家族で晩御飯を食べていた。
TVではプロ野球中継が流れている。
「さあロッテが1点リードのまま9回表、ロッテはマウンド上に小林雅英を送り込んできました!」
「それでね、練習試合は一点差でうちの学校が負けちゃったのー。惜しかったんだから!」
今日のできごとを波平とフネに話すワカメ。もはや晩御飯時の定番だ。
- 54 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:41:42.38 ID:oNjvEbp8O
コバマサw炎上フラグwww
- 55 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:41:53.46 ID:RJji9MBO0
ワカメは話し続ける。
「野球部の人ってやっぱり巨人ファン多かったわ。お父さんも巨人ファンよね?」
「左様」
「あーっと、1アウトを取ったところまでは良かったんですが、
そこからヒット、そして二者連続フォアボールでなんと満塁です!!!!」
「そういえばお兄ちゃん、中島さんが試合見にきてたわよ」
「え?」
- 57 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:47:10.43 ID:RJji9MBO0
動揺が走る。カツオは箸でつまんだ大根の煮物を落としそうになった。
「一生懸命後輩の応援してたわよ。中島さん、高校でも野球部入ったんですって。
お兄ちゃんも入れば良かったのにね。」
「あ…ああ、そうだな。ご、ごちそうさま」
「あら、もういいの?」
サザエが驚いた顔でカツオを見た。
「うん、部屋で宿題してくるよ」
「ひっかけた!4、6、3 ダブルプレー!!ゲームセット!
7−6 乱打戦を制したのはロッテ!!自分で作ったピンチを自分で切り抜けました小林雅英!!!」
カツオは足早に居間を出た。
TVの野球中継がひどく不快に聞こえた。
- 58 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:48:24.99 ID:RJji9MBO0
部屋に戻ったカツオは混乱していた。
どういうことだよ中島…。
あの時、何も言わずに野球をやめたのはお前のほうだろ?
それを今更になって、なんだっていうんだ。
机を叩く。
そうだ、僕にはもう関係ない。
何をこんなに動揺しているんだ僕は。
もう、終わったことなんだ…。
結局その日の宿題はまったくはかどらないままだった。
- 59 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:51:07.49 ID:A4sfbJrGO
そういえばカツオって主語僕なんだな
- 60 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:51:30.52 ID:RJji9MBO0
中島の部屋のドアが開く。
「博、今日はずいぶん帰りが遅かったな」
中島の祖父権造はひどく不機嫌そうだった。
「後輩の練習試合の応援に行ってたんだよ」
遠慮がちに中島は口を開く。
- 62 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:52:27.95 ID:t1lGiTM10
これはハッピーエンドで終わって欲しいが
スレタイからして何か嫌な予感がするw
- 63 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:52:52.77 ID:o/Gt8qED0
コバマサwwwwww
- 64 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:52:58.65 ID:p65Ed5sb0
カツオの鳴く頃に??
wiki作ったものだけど
- 65 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:53:09.84 ID:RJji9MBO0
「フン。お前は中島家の跡取りだぞ、いつまでも野球なんぞにうつつをぬかしおって。
ゆくゆくはワシの会社を継いでいかねばならぬ身。野球とは早々に縁を切るべきなんだ。
中学の時でやっと終わったと思うたのに…。高校に入ってまたわがままを言いだしおって。
もう一度言っておくがな、あと一度でも試合に負けたら野球はそれまで。勉強に専念してもらうからな」
「わかってるよ…おじいちゃん」
どこか説明口調の権造はフンと鼻を鳴らして部屋を出ていった。
- 66 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:53:35.59 ID:VbjD5AqcO
波平バカ 「モーーーンwwwww」
- 68 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2007/12/01(土) 23:54:05.61 ID:YSvB7vg30
権造うぜぇwwwwww
- 69 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:54:27.35 ID:RJji9MBO0
>>64
よく分からんが違うと思う
- 70 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/01(土) 23:55:53.78 ID:RJji9MBO0
中島の両親は十年前に事故で他界していた。
残された兄弟の面倒を今までみてくれていたのは父方の祖父権造だった。
権造は大会社の社長をしている。
跡継ぎの父さんが不運な事故で亡くなってからは中島の兄を跡継ぎとして育てていた。
権造は時に厳しく兄に当たった。跡継ぎとしての兄に対する期待の表れだったのだろう。
- 72 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:00:15.28 ID:RXgd8Ii60
しかし、そんな生活に嫌気がさしたのだろうか。
二年前、中島の兄は何も言わずに突然行方をくらました。
やはり家に不満があったのかもしれない。
いなくなった今、兄の真意を確かめる術はどこにもなかった
- 73 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:04:22.13 ID:RXgd8Ii60
そして残った弟の方に権造の期待が集中するのは当然のことだった。
しかし当時中学生だった中島は熱心に野球に打ち込んでいた。
権造には野球は中学で終わりにしろと言われていたが、
”地区大会で優勝したら、これからも野球を続けさせて欲しい”
そう権造に進言したのは中島だった。
- 74 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:05:09.19 ID:RXgd8Ii60
キャプテンだった中島は自分のチームの実力を十分に把握していた。
このチームなら問題なく優勝できると。
そしてなによりカツオの投げる球を誰よりも信じていた。
しかし結果は…。
優勝できなかった中島は野球をやめさせられて、勉学に励むことになった。
- 75 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:08:56.88 ID:RXgd8Ii60
キャッチャーミットを磨きながら物思いにふける。
祖父には感謝していた。両親のいなくなった僕をここまで育ててくれたんだから。
それでなくても息子夫婦の突然の死、
孫の失踪で祖父の精神状態はボロボロだということに僕は気づいていた。
これ以上祖父を傷つけるのは避けなければならなかった。
それでも野球を捨てたくなかった。どうしても野球を続けたかった。
だから条件付きでもう一度だけ野球をやらせてもらっている。
- 79 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:10:26.20 ID:pire1Wk3O
俺が本気出した方が文章上手いな
- 80 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:11:38.34 ID:bJJk8ioF0
。があったりなかったりして見にくいな
- 81 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:13:38.85 ID:9x2IiyiK0
異常厨どもの考察
- 82 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:14:13.07 ID:wdzLmoQ+0
>>81
×考察
○横槍
- 83 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/12/02(日) 00:15:41.36 ID:RXgd8Ii60
>>79-80
大目にみてくだしあ
磯野には本当のことを言っていなかった。
言えば自分のせいで僕が野球をやめることになったと自分を責めただろうから。
でもあいつはきっと僕がいなくても野球を続けるに違いない。
そう思っていた。だが磯野は野球を捨ててしまった。
僕の態度にひどくショックを受けたのかもしれない。
磯野には本当に悪いことをしたな。
あれから、なんとなく磯野とは気まずくなってしまった。
何か気の利いた言い訳でも考えておけばこんなことにはならなかったかもなと今も後悔している。
ごめんな、磯野。
窓の外を見ると半分欠けた月が夜空にうかんでいた。
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