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意地悪なメイド4
- 175 名前:【残暑】 [sage]
投稿日:2010/09/10(金) 00:52:46.75 ID:mfu7YcAO
妹子「あっづ〜ぃ……」
メ「全くですね。いやもう何この9月。有り得ないんすけど」
男「おい、そこの婦女子達。だらけるのは勝手だけどうちの子が真似するからやめなさい」
冥「あついー!」
命「あついー!」
メ「こんなくそ暑いのにきゃっきゃしてまぁ……親の顔が見てみたいっすね」
男「鏡はそこだぞ」
妹子「やだもぅ、兄くんったら。確かにいずれ義理の母にはなるけど今からうちの子だなんて」
男「順調に暑さで頭をやられてるな」
メ「にしてもなんでクーラー禁止なんすか。今更温暖化気にしてるとかじゃないでしょうね」
妹子「それともお金? 困ってるなら一日旦那さんになってくれるだけでお給料出しちゃうけど」
男「温暖化対策は意識してやってる訳じゃないし金も生きてくのに困るほどじゃない」
メ「じゃあなんですかー」
冥「なんでー?」
命「なんでー?」
男「それは今晩流しそうめんを庭でやるからだ。今夜は友ん家の庭でやるから、今からこの暑さに慣れてもらわないと」
メ「室内希望!」
妹子「それか私ん家とか!」
男「お前ら残暑を乗り切る工夫がクーラーしかないのか」
- 176 名前:【食欲の秋(メイド)】 [sage] 投稿日:2010/09/10(金) 00:57:29.57 ID:mfu7YcAO
メ「主様」
男「どした」
メ「栗ちゃん剥いちゃいました」
男「……天津甘栗な」
メ「栗ちゃん弄っちゃいました」
男「……栗きんとんな」
メ「栗ちゃん蒸れちゃいました」
男「……栗ご飯な」
メ「……食欲沸きます?」
男「むしろ性欲が」
メ「このどエロ星人め! 栗好き星人め!」
男「お前がど痴女なだけじゃねぇか!!」
メ「でもまろまろマロンちゃんのまろまろマロンをマロマロしたいんでしょ」
男「ふやけるまで」
メ「このど変態め!」
男「身を削ってまでやるネタか!?」
- 177 名前:【スポーツの秋(めいど)】 [sage] 投稿日:2010/09/10(金) 01:06:06.43 ID:mfu7YcAO
め「ご主人、ジョギングとやらを始めたいのですが」
主「君の唐突な提案ぶりってばもはや交通事故の領域だよね」
め「では当たられたと思って付き合ってください」
主「しかもやり方が轢き逃げレベル!?」
主「ほっほ。で、なんだかんだで付き合ってるんだよね、はぁ」
め「ぜぃ……ぜぃ……」
主「大丈夫か。万年出不精のめいどさん」
め「こん、……ぜぃ、はずで……ぜぃ」
主「いやいや、よく頑張ってると思うぜ。運動してないやつが急に頑張った割には」
め「ほめ、ら……げほ! げほ、……れてま、せん」
主「うん、まぁ手放しには誉めちゃいねぇさ。でも頑張りは認めるって話だよ」
め「ふぅ……しかし、たまにスポーツというのも、……ふぅ。悪くありませんね」
主「だな」
め「帰りは、負けません、よ」
主「おう、望むところだ」
め「では……へい、タクシー」
主「スポーツの良さ云々のくだりは何だったの!?」
- 178 名前:【芸術の秋(妹嬢)】 [sage] 投稿日:2010/09/10(金) 01:10:42.31 ID:mfu7YcAO
妹嬢「動かないでください」
男「で、でも」
妹嬢「いいから! ほら、腕が下がっていますよ」
男「わぁったよ……こうか?」
妹嬢「はい、よろしいです」
男「……」
カリカリ
男「でもなんで急に絵なんて」
妹嬢「いいじゃないですか。秋なんですから」
男「むぅ」
姉「〜♪ おろ? いもちゃん、おとちゃん。何してるの?」
妹嬢「ね、姉さん!?」
男「ああ、姉さん。実は今バカ妹が急に絵のモデルやってくれとか言い出して」
姉「ね、いもちゃん。なんであっちは服着てるのに絵のおとちゃんは裸なの?」
男「なにぃ?!」
妹嬢「い、いえ、これはだからその!」
姉「あはは、おとちゃん丸出しだー」
男「何やってんだてめぇぇえ!?」
妹嬢「芸術! これは芸術ですから!?」
- 179 名前:【運動会】 [sage] 投稿日:2010/09/10(金) 01:22:08.30 ID:mfu7YcAO
メ「今日は楽しい運動会」
男「携帯ゲームやりながら言う台詞じゃないからな。あと周りの親御さんの目が痛いからマジでやめろ」
メ「だってうちの子出てないじゃないっすか」
妹子「そうだよ、めいめいコンビはまだなの?」
男「五年生は次のプログラムだから我慢しろ……って、お前がなんで居るんだ!」
妹子「暇だったから」
メ「さっきから私の携帯にメイド長さんから熱烈ラブコール着まくりですよ」
妹子「居ないって言っといて」
メ「ばっちりこちらですと連絡しましたが」
妹子「ちょ、何すんのよバカメイド! ああもうすぐ着ちゃうじゃんあの人!」
メ「やーい、いい気味ー」
妹子「くぅぅ〜、兄くん! なんか言ってやって!」
男「冥、いいぞ〜、可愛いなぁ。お、命もいい感じだな! よし、そこだ! よぉし!」
妹子「親ばかだ。親ばかがいる。むぅ……私だって兄くんの子なのに」
メ「覚えてないかもですが妹子がちっこくてまだ素直な頃は同じようにドップリだったんですよ、我々は」
妹子「え……兄くんとあんたが?」
メ「……。ま、私の子でもありますからね、妹子は」
妹子「……ば、バカじゃないの! あんたなんて他人なんだから!」
メ「あなたがどう思おうと構いません。ただ信頼し託された以上はこちらからも勝手にしますが」
妹子「ぬ、ぅぅ……」
メイド長「お嬢様」
妹子「ひゃわ!? いつの間に!」
メイド長「御迷惑をおかけしたようで」
メ「今更でしょ。それより一緒に見ていきません?」
メイド長「しかし……」
男「冥ー! こっち向いてくれー! 命はカメラ意識しすぎ! 普通にー!」
妹子「こんな兄くんを見られる機会はめったにないよ」
メイド長「……ですね。では少しだけ」
妹子「よし!」
メ「ただ妹子が学園に連れ戻される事実は変わりませんが」
妹子「えぇー!?」
- 180 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/09/10(金) 01:34:15.92 ID:z7uKZ2AO
主様乙ー
なんだかんだできちんと愛されてるあたり妹子は幸せだな
そしてめいどさんは運動出来ないんだww
ギャップ萌えってこういうことなんですね、わかります
追える夢があるというのはいいことだな…
心と体の健康には気を遣って頑張ってくれー
あ、あと俺にとってもここはオアシスだよ!
- 181 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/09/10(金) 06:57:50.82 ID:0TV1j7.o
ジョギングで蒸れ蒸れのストッキng
- 182 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/09/10(金) 09:21:28.09 ID:mfu7YcAO
略せてない! 略せてないよ!
さておき、ジョギング中くらいはきっとジャージなんでしょう。……いや、なんか動きにくい格好な気がしてきた。
ちなみに主さんペースでジョギングするとだいたいの人はああなります。
意外とスポーツマン!
そして妹子は昔から色々あっただけにみんなからの愛されっぷりも一番です。
本人は大きくなって表面上はひねくれましたがww
- 183 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/09/10(金) 18:43:45.88 ID:ZtBgngko
>>175
昼間っからじゃダウンしちゃってそうめん流しどころじゃなくなるような・・・
水風呂おすすめ、ここ数年窓辺に葦簀&水風呂&冷風扇で乗り切ってる
つかクーラー無いwwなくても何とかなるから購入に踏み切れない
冷風扇無い人は扇風機の風に霧吹き(できるだけ細かいミストになるものが良い)で水を乗せてやるとかなり冷たくなるよ
俺のとこじゃ昨夜はTシャツだけじゃ寒いくらいになったから必要ないけどww
ところでそうめんって以外にカロリーあるから食欲があるときは普通のメシにしたほうが良いよ
しかも栄養バランス偏ってるから続けると体のだるさが抜けない
食欲無くてもつるっと喰えてとりあえずカロリー取れるから暑くて食欲ない時に食べるという知恵なわけで
食欲あるときはカロリー過多になりがち注意
>>176 まろまろマロンちゃんが判らなくてググったら犬が山ほど出てきたでござる
>>178 骨格から肉付けしていけば完璧に復元できるってそんな奴ァいねえ!!(駒井 悠)のネタ思い出したww
- 184 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/09/12(日) 03:40:37.12 ID:L0A/XEAO
メ「素晴らしき暮らしの知恵。だが文明の利器の前にはあまりにも無力!」
男「いいこと聞いたしクーラー戒厳令だな」
メ「弾圧だ! 横暴だ! 自由への束縛だ! 我々の聖地を返せー!」
男「全力で阻止にきたな」
メ「当たり前でしょうが。私は適温の中でしか生きられないか弱い生命体ですよ」
男「いっそ殺菌されちまえよ」
メ「ぴぎぃ! ぼくはわるいメイド菌じゃないよ!」
男「善玉菌か」
メ「いえすいえす。ちょっと共生させてもらってるだけです」
男「寄生だよな」
まろまろマロンちゃんは昔ラーメンズのコントで出たワンフレーズなんでわからなくて当然っすww
- 185 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/09/12(日) 03:46:39.19 ID:L0A/XEAO
メ「主様ってなんでこうランジェリー大好きなんでしょうね」
男「知らん。なんかもうそれ履いてる女性ってだけで性的に見ちゃう」
メ「気持ち悪い!」
男「仕方ないだろ。性癖なんだし」
メ「しかもどっちかってぇと刺繍入り大好きだし」
男「その方がエロくない?」
メ「いや、ただ単に履きにくいだけですが」
男「慣れたろ!」
メ「慣れた自分が悲しい……ちゅうか最後は脱がすんだからなんでもいいじゃない!」
男「俺は脱がさないぞ」
メ「……そういえば」
妹子「その会話が不潔だってば! 私だって脱がないまま頑張れるし!」
メイド長「あれは一種ののろけあいですから付き合うだけ精神と時間の無駄ですよ」
妹子「ぐぬぬ……私だってイチャイチャしたい!」
メイド長「旦那様とされてはいかがです」
妹子「あ、あんなやつとイチャイチャなんて! ……し、しない、はず。だもん」
メイド長(と、言いつつ唯一素直に甘えられる人は彼くらいしかおられない訳で。おかしなところで強情ですね)
- 186 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/09/12(日) 17:53:40.17 ID:jrye4Ago
X クーラー戒厳令
○ 汗だくハァハァ
- 187 名前:GEPPERがお送りします [sage;saga] 投稿日:2010/09/12(日) 22:58:39.80 ID:WzYnRd60
め「汗を大量に流した状態、というものは不潔に思われますが」
主「そういう需要もあるんだな、これが」
め「理解に苦しみますね。だいたい、匂いの原因などになります」
主「そうだな、そういう感じ方が普通だよな」
め「ですから、ご主人。着替えましょう」
主「だが断る!! お前が悪いだんぞ、ジャージの下にストッキングはいたままだった、お前がな!」
め「それはジャージ、というものを初めて着たためです。無知故の失態かと」
主「そう、失態だな! だからむれむれストッキングはお前が悪いから替えちゃいけません!」
め「何故なのですか。めいど、この不快な格好からいち早く着替えを行うことを最良としますが」
主「それでは罰にならないじゃん! 帰りは結局俺におぶってもらったんだから罰ゲームだぞ!」
め「それはもはや呼吸困難手前まで体調が悪化するとは思っていなかったためです」
主「つまりお前は迷惑をかけちゃった自覚もあるんだってことで。だからNO着替え。YES蒸れ蒸れ!」
め「わかりました……ではせめてクーラーをいれてください」
主「えー。それだと汗ひいちゃうじゃん」
め「はい、それが目的ですので」
主「じゃあダメだな。ふはは! 諦めてこのまましばらく俺に蒸れ蒸れを鑑賞させるんだな!」
め「それはかまわないのですが」
主「あれ? いいのか? じゃあなんでさっきから着替えの提案しまくりなのかね」
め「いえ。めいどの着替えはいつでもかまわないのですが、この部屋のクーラーまで切っているせいでご主人が汗だくなままです」
主「む。いや、そりゃ俺も走ってたわけだし」
め「ですので、お早く着替えていただきたいと思いまして」
主「ははぁん。なるほど、そうやって気遣うフリで自分もうまいことやろうという魂胆だな」
め「……わかりました。めいど、ベランダに出ておきますので、ご主人だけでも涼んでください」
カラカラ
主「あ、あれ? めいどさん?」
め「何か? これで万事解決かと思ったのですが」
主「……あー。ご主人命令です。お風呂にはいってきなさい」
め「はぁ。いえ、しかしそれでは罰が完遂できないのでは」
主「いいから、命令だってことで」
め「わかりました。……不思議な方ですね。全く」
ばたん
主「……。う、うぅむ。やっぱ俺うまいことだまされてるのか、これ」
- 188 名前:GEPPERがお送りします [sage] 投稿日:2010/09/12(日) 23:07:43.72 ID:jrye4Ago
フロ トツゲキ シロ -ナナシ
- 189 名前:GEPPERがお送りします [sage;saga] 投稿日:2010/09/13(月) 00:31:50.29 ID:65gasow0
め「ご主人は紳士ですからそんなことされませんよ」
主「……」
め「尚且つ、私を先に薦めたのはあくまで善意。そういったやましい気持ちは毛ほどもないはずです」
主「……」
め「故に宣言します。めいどは、これからもご主人の心配りに応えようと」
主「……」
め「では、改めて失礼します。ご主人、信頼関係というものは素晴らしいですね。では」
ピシャ
主「こ、ここまで先手うたれてる時点である意味意地悪だよな。絶対悪意だよな、これ」
- 190 名前:GEPPERがお送りします [sage;saga] 投稿日:2010/09/13(月) 00:32:26.66 ID:65gasow0
委員長・退魔夜行記 獣面人編
「起きなさい」
気遣いのない揺さぶり、というより蹴り転がされるような感覚に目を覚ます。
浅い眠りはより深い眠りと休息を求めて疲れと倦怠感という形で身体に訴えかける。
無理矢理それを抑え込みながら、起き上がれば出発を促す委員長の姿。
「……すぐ、用意する」
いつの間に膝の上から頭を動かされたのかは分からない。
それだけ眠りに貪欲だったのか、はたまたそういった技術があるのか。
結局彼女に起こされることになりながらも、寝る前に準備しておいた諸々の準備物を背負う。
「今回は何かしらの痕跡を見つけるまでは戻らないから。そのつもりでいるほうが楽よ。気が」
こちらの様子など見向きもせず、一方的にそんなことだけ告げて、彼女はさっさと歩き出す。
その背中を追う様に小屋を飛び出す。なるほど、彼女がここが唯一休める場所だとかなんとか言っていたわけがわかった。
今の俺からすればこんなゴミ小屋がたまらなく魅力的な建物に見える。
けれど、もう置いていかれるわけにはいかない。きっと彼女は終えるべきことを終えればここに戻りはしないから。
そうなれば俺なんて置いていくだろうことも、わかっていたから。
道なき道を行く。比喩ではなく、本当に歩くことすら困難な土地。
それをスイスイと進む委員長を追う傍ら、俺は首筋のあたりに感じるチリチリとした感覚に悩まされていた。
ここに着いた頃感じていたそれと同様のもので、どうにも落ち着かない。
いちいちそんなことを言い出すわけにはいかないので、我慢をしているがどうにもじれったかった。
そんな感覚に悩まされるが、半日も歩かないうちにいきなり俺達は本命に近いであろう存在と遭遇することになる。
「な、あ、あれ!」
「思ったより川を下ったときのダメージが抜けていないようね。ありがたいことに」
「い、今のやつ……顔が!」
視界の端に捉えたのはこちらを確認するなり走り出した獣の顔をした人型。
それは爺やあの娘とは違う、獣を思わせるような人の顔、ではない。
完全に人の身体の上に獣の頭が乗っているだけ。まさにそんな状態。
- 191 名前:GEPPERがお送りします [sage;saga] 投稿日:2010/09/13(月) 00:33:39.57 ID:65gasow0
「そういえば貴方は見たことなかったのね。あれが大部分の姿よ、貴方が接してきた者たちの」
醜悪なそのフォルムは人を思わせることはない。
だからだろうか。俺は咄嗟にあの子や爺とは別の生き物と感じてしまう。
けれどあれが……あいつらが俺が関わろうとしていた者達。
わかっていたつもりだった。それだけだった。
俺は……あれを人と認められない。心ではなく、本能がそう告げる。
けれど、それでも。浮かぶ二人の姿に、俺は無理矢理、苦汁のようにして納得の意思を飲み下す。
「追うわよ」
その短い言葉が告げられるまでの数瞬で命が覚悟を決め、委員長が走り出す。
こうして始まった追走劇。途中、大きな崖を挟む行程となったそれだったが、結局はどうということはない。
初め、彼女が言ったように。対象は最初から逃げ切れるほどの体力を持っていなかった。
だから、俺が追いついたとき。
それは既に終わっていた。
「対象としては目的の基準を見たしていなかったわ。残念ね。まだ帰れないわよ」
そう言って振り向いた彼女。
真紅に染まったコートと頬。その在り様があまりにも当然のようで。
髪の黒と肌の白。そして鮮血の朱があいまったそれは……怖いほどに美しい。
見とれるわけでもなく、ただ畏怖の感情で見つめた彼女の足元。
わずかに動くのは、事切れていたと思っていた獣の死体。
それを見て取るやいなや、彼女は懐から肉厚のナイフを取り出し、その刃先を足元へと向ける。
「おい! 待てよ!」
「何かしら? 邪魔しないでくれる?」
無駄かと思った静止の言葉に、彼女は意外にも動きを止める。
自分でも、わかっている。それが獣でしかないと。きっと、種としてあまりにも違うのだと。
- 192 名前:GEPPERがお送りします [sage;saga] 投稿日:2010/09/13(月) 00:37:30.44 ID:65gasow0
「ころすな。……そいつ、人間なんだろ」
けれど、自分の中では決めた。それが人だと。
形がどうあれ、知性がどうだとして。同じ、人間なのだと。
だから、助けられるのならば。そう望んでしまう。
「なりそこないよ。私と同じで」
だが、結局。それすらも見越した上で、彼女は見せたのだろう。
あまりにも違いすぎる、生態を。
ぐじゅり、と抉り取られたのは心の臓。未だ脈打つそれは幾本かの管を通してまだその役割を果たす。
その半分を潰され、抉られていたとしても、だ。
「だから、見ていなさい。これが末路なのよ」
そう告げて、彼女は無造作に手の中の臓物を落とし、踏み潰した。
香るは麝香。汗と硝煙と血の匂いを覆う、彼女の匂い。
重苦しい沈黙の中、終始表情を変ることのなかった委員長。
その口から放たれた言葉に、
「抱いてみる? 今、すごく、そんな気分だわ」
「誰が……お前なんか!!」
反応する身体を。もたげる本能を。求める心理を。
全てをねじ伏せ、命は初めて、拒絶を示した。
「そう。まだ中途半端ね、貴方。だったら面白いものを貸してあげる」
そういって放られる、黒い塊。
ずしり、と。命の手の中に収まったそれは拳銃の類か。
「これ、って」
「お守りよ。好きに使いなさい。そうね……例えば、殺したいほど憎い相手を、撃つ。なんて使い方で」
嘲笑うその表情は暗に撃てといっているのだろうか。目の前の相手を。
けれど、彼女の言うように、まだ中途半端な彼にとってそれはあまりにも重たい選択肢。
結局、手の中の塊を見つめるのみな命に、委員長はひとつ嘆息をつくと移動を始める。
その背中を、ただ追うことしかできない。止まることも、止めることも。
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