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意地悪なメイド4
770 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/08/11(木) 01:10:18.74 ID:xjWFWHc90
第35話 「決意/陰」

幾人かの歩哨、そして戦術機での警護を残した全員がその場に集まっていた。
近衛軍、俺達国連軍……の訓練兵の隊。そして、米軍の人間。

「――敬礼!」

拝謁の栄誉に賜り……そんな定例句から始まる言葉をささげるのは指揮官である少佐どの。
さすが俺達(俺本人を除く)とは違って堂々としたものだ。歩哨に立ってる委員長はさておき、他のみんなはガチガチだ。
無理もない。本来国連軍所属とはいえ、将軍が目の前にいるって事はこの世界で言えば現人神を目の前にするようなもの。
一生に一度あるかないか。普通の人生であればまずないままなくらいのものだ。
そんな緊張とは無縁に、少佐どのと殿下は話を続ける。もっとも、中身などあってないようなもの。
儀式的なやり取りの後、指揮官から今回急に収集を行った旨を説明願う形となる。
当然だ。今この時だって、決起軍が歩兵による強襲をかけてきてもおかしくない中、日本のトップとはいえ急な呼び出し。
如何な理由とて、作戦の遂行において妨げになっていることは疑いようもない。

「少佐、此度の我が国に対する米軍の尽力、日本国将軍として心よりの感謝を表します」

だから、殿下からそんな言葉と、頭を下げるという行為がなされたことに、その場の全員が息を飲む。

「――なんと畏れ多い、殿下、そのような……」

さすがの少佐どのも慌てずにはいられない。このような状況下であれ、将軍が一介の将校に頭を下げるなんて有り得ないからだ。
だが殿下は止まらず、少佐だけでなく他の衛士にまで感謝の意を表する。
当然、近衛軍側の顔色は優れない。当然だ。この国の対米感情を鑑みれば、自分達の戴く存在が他国の、それも米軍に頭を下げるなんて。
感情では抑えきれないものはあるだろうが、それでも立場をわきまえ、言葉にも態度にも出さないように勤めている。
でも、殿下はわざわざこんな事をするためにみんなを集めたのだろうか。
続けて、一人ひとりと話がしたいという申し出に少佐は断りを入れる。
建前として、世界秩序と国連協調体制の維持、そして祖国から下された命である今回の任務に全身全霊をもってあたるという言葉で返す。
だが、先の本音。愚かな国云々の言葉を聴いたあとではどこかドライに聞こえてしまう。
それでもこの人たちが悪いんじゃない。色々な策謀や暗躍は本土のお偉方のやっていること。
現場でこうして命がけで戦ってくれることは事実なんだ。女さんと話してたユーニさんっていう衛士もそうだ。
きっと殿下の感謝の言葉は、気持ちは……伝わってるはずだ。

「では少佐、国連軍部隊の指揮官をこれに」

「は! メイド長軍曹」

呼ばれ、先の少佐と同じように働きをねぎらう言葉をかけられる。
また、それだけに留まらず言葉は訓練兵である俺達にも向けられる。

「あなた達も訓練兵でありながらこのような困難な作戦に従事するとは、さぞや辛いことでしょう」

それは感謝や労いに留まらず、

「我が国の此度の混乱、すべてこの朱鷺之宮の力不足に端を発すること。同じ日本人として、国を預かるものとして心よりお詫びします」

「「「「――――!!?」」」」

まさかとは思った。でも、この人は俺達訓練兵にまで頭を下げたんだ。

「あ。ぅ……」

「そ、そんな……」

「……」

それぞれがそれぞれに、言葉をなくす。
国連軍に所属しているとはいえ、誰もが日本人。今目の前で起こったことが信じられないでいる。

「――っ、殿下!?」

異様な空気に呑まれる俺達。気づけば侍従長さんの制止をやんわりと遠ざけ、殿下がこちらへと向かってくる。
まず立ったのは妹ちゃんの前。憮然とした態度ながらも、さすがにこんな事態は想定してなかったのか、いつもより殊勝な姿だ。

「あなたのお名前は?」

「……妹。妹訓練兵です」

「そうですか……あなたも……」

その名前を聞いて、何かを得心したように殿下は話し出す。
自身の忠臣を今回の事件でなくしたこと、その事実を深く悲しんでいること。
そしてその親族である妹ちゃんに対し、改めての侘びの言葉と感謝の言葉を送る。


771 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/08/11(木) 01:11:21.49 ID:xjWFWHc90
「……もったいない、お言葉です」

それに対し、目を合わせることなく俯き、言葉だけを返す。
あの子の心が少しでも軽くなってくれればいいけれど。
そう思う反面、さっきの休憩でのやり取りを思い出すと不安になる。

『そっか。……あいつ、まだ姉ちゃんに心配かけて……自分はのうのうとお飾りやってるくせに』

あの時の言葉。あれは真なる憎しみがこめられていた。

『……私達みたいな陰も存在するだけ悪だけどね。それ以上に、その上に胡坐かいて生きてた奴等はもっと悪だ』

俺はもしかして、大きな勘違いをしてるんじゃないのか。
この子は……妹ちゃんは、親族の死を悼んでいないのではないか。
いや、それどころか……。

そんな考えに囚われそうになった時、涼しい声音が次の兵にかけられる。

「そなたのお名前は?」

「は、はひ、おおお、おん、なくんれ、んへい……ですっ!」

緊張でガチガチになりながら、必死に受け答えをする女さん。
普段からあがり症だ。この場で卒倒してもおかしくない。大丈夫だろうか。
そんな心配をよそに、殿下はゆっくりと彼女の心労を解きほぐしていく。
彼女の父、事務次官に対して認識があること、またその激務に理解を示し、その上でこう告げる。

「お父上は往々にして厳しい立場にお立ちになることでしょう。されど弛まぬ努力によって日本にもたらされる公益は、決して小さくありません」

「あ……」

「私と同様、さぞやあなたもお父上を誇らしく思われているでしょうね」

「え……」

「だからこそ、あなたも国連軍に身をおいているのでありましょう?」

「……はいっ! あ、ありがとうござい、ます、殿下っ!!」

女さんの悩みであった父の立場。それを将軍からお墨付きをもらったようなもんだ。
これで全部不安が吹き飛ぶ、なんて単純なことじゃないけど、少しは気が楽になったろう。

「そなたのお名前は?」

「はい、友訓練兵です」

「私の不徳が斯様な事態を招き、あなたのような訓練兵にまで過酷な任務を課す始末……。此度のこと、申し訳なく思うと共に、心より感謝致します」

「いえ、任務ですので、どうかお気になさいませんよう」

そんな提携のやり取りを、将軍は自身で否定する。
訓練兵をこのような味方同士で争うような事態に巻き込んだことは責任とし、消えるわけではないという。
何より幾人かの将兵に師事してきた中で、何れの支もこのような状況を嘆いているだろう、と。


772 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/08/11(木) 01:12:21.98 ID:xjWFWHc90

「人は国のためにできることを成すべきである。そして国は人のためにできることを成すべきである」

「……! そ、れ……その、言葉は」

俺の記憶の断片が確かなら、それは友の祖父さんの言葉。
だとしたら、将軍は友の祖父さんに師事していたってことなのか。

「とある師の教えですが、この言葉は常に私の心にあります」

「――!」

「今この時ほどこの言葉の意味するものを大きく、そして重く感じることはありません」

「…………」

「このままではまこと、恩師達に合わせる顔がありません。されど私も愚弟の謗りに甘んじるつもりはありません。今しばらく、堪えていただけますか?」

「はい」

「あなたに、心よりの感謝を」

この数奇な運命のつながりを尊く感じる一方で、その繋がりから友女大尉との繋がりを知っている可能性も思い至る。
だとすれば、そこから友との繋がりも……。殿下は一際じっと友の目を見つめていたような気もする。
どこまで、知っているんだ? ……いや、意味がない。殿下がそれをクチにしなかったことを、考えても意味はないんだ。
今は、信じよう。

「男訓練兵」

「は」

「成行き上あなたとは、存分に言葉を交わせました故、ここで多くを語るのは詮無いことでしょう」

「……はい」

「されど、改めてこれだけは言わせてください」

――あなたに、心よりの感謝を。

言葉と共に、俺の手が殿下の手によって包まれる。
小さな、それでいて華奢なはずなのに、全てが包まれているような感覚。
強化装備越しで、体温なんて感じられないはずなのに、冷え切っているはずなのに。

(暖かい……)

そう、感じられる。
俺はこの人に畏敬の念を抱いているのだろうか。
『この世界』の人間じゃない、俺が。

「男……。あなたが某かの答えを得る手がかりになればよいのですが」

最後に、そう告げて殿下が離れていく。
でも、その言葉の意味は当然わかるはずもない。――そう、この時は。


そして――。
殿下はそのまま、元の位置へと戻られる。
歩哨に立っているからとはいえ、いいんちょの方は一瞥もしない。
徹底しすぎとすら感じるその振る舞いに、けれど応えるようにいいんちょからも殿下を見ることはない。
ここまで必要なのか。二人の関係の維持には。
もしかしたら2度と会えなくなるかも知れないのに、目も合わせないほどの、徹底が。
くそ、俺の力じゃふたりの想いを酌んでやれるような方法は思いつかない。
ひたすら歯がゆく思うものの、どうしようもない。

「……さて、米軍及び国連軍衛士の皆様、今暫くお時間を戴くことをお許しください」

凛とした声に気づけば、殿下はまだ話が終わっていないことを告げている。
そして、そこから紡がれる言葉は、人類が抱える不安、そして現在自身を中心として起こる事実。
それを自らの至らなさと戒めつつも、民の心のある魂を。、国を護りたいという言葉。

「これは……」

いつだったか。俺が『前の世界』でいいんちょから直接聞いた言葉と同じもの。
あいつも人々のもつ心を、魂を、志を護りたいといっていた。国とは、日本とはそういうものを指すのだと。
俺からしてみれば『国』とは政府とかそんなものを浮かべてしまう。
けれどいいんちょも、この人もそういう考えを持っていたんだ。


773 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/08/11(木) 01:12:55.70 ID:xjWFWHc90

「私と同じく、この想いは全ての人が持っているに違いない――私はそう信じています」

決起に走った者たちはその想いが強すぎたのだと、純粋であるが故に立ち上がらざるを得なかった。
それは近衛の人間からすれば紙一重にて抱いていた心のあり方。
結果として彼等は罪を犯し、相応の報いを受けなければならない。だとしてもその意気を宥恕してほしい。
そう、殿下は告げる。何故なら、その責めを負うべきは自身であるのだから、と。

誰もが言葉を発することができない。

その中で、殿下は言葉を続ける。
ここまでの道すがら、様々な想いや考えに触れ、それぞれに信じるものがあった。
けれど骨肉相食む戦場ではその尊さも色あせ、空虚になってしまう。

「もはやこの状況を看過する訳にはまいりません」

次第に語気を強めていく殿下に、何か固い決意があることだけは分かる。

「況して私ごときのために、人類の護りたる者達が鬼籍に入るなど断じてまかりなりません」

けれど、その答えは……。

「私が自ら、決起した者達を説得して参ります」

決して認められるものではなかった。


当然のように反対の意を発する少佐どの。
俺だって同じ考えだ。今は殿下を護りきれるかすら怪しいのに、みすみす相手に殿下を差し出すなんて!
口調こそ慇懃ではあるが、少佐の反対の言葉が続く。
ごり押しして介入した今回の作戦が失敗に終わるなんて、許されない。
何よりここに来るまでに死んだ米軍兵が無駄死にだったってことになる。だから認められない。
けど、そんな風に思う傍ら、その提案はこれ以上の消耗を避けつつ事態の収束をはかるという意味では理にかなった方法だとも思う。
クーデター側の最優先目的は殿下からの勅命を賜り、自分たちの行為を正当化すること。
もはや引き返せぬほどの大罪を犯してきた彼らにしてみればそう殿下の身柄を押さえたところでそう簡単に話が進むとは思っていないだろう。
友女大尉は、反オルタネイティブ勢力やオルタネイティブX推進派に利用されただけだと知っているんだろうか。
それとも、それを知った上でその思惑すらも利用し、目的を達しようとしているのか?
いや、経緯はどうあれ、彼女が今の状況を作ったことに責任を感じていないはずがない。だからこそ、最前線に自ら乗り込んできたんだ。
となれば、殿下の目の前でこれ以上の争いは避けたいと思っていても不思議じゃない。
ここで殿下が投降を呼びかければ諦めて従う可能性も低くないんじゃないか。
あっちがヤケになって殿下を拉致する可能性もなくはないが、そんなことをすれば正当性を得るどころか本当に逆賊になりさがる。
そしてそれは政府や軍の上層部が待ち望んでいる事態でもある。
仮に今殿下が大尉達の手に落ちたとしても、勅命が下されることは絶対ないだろう。この状況で殿下がそんなことをするわけがない。
こうなると考えられる最悪のケースは大尉が殿下を手にかけることだ。
逆に殿下だって儀に背くようなことを共用されるくらいなら自らの死を以て大尉達を諌めるかもしれない。

「……」

違う。そうじゃない。
思い出すのは先に二人になって殿下と話した言葉。

『そして……悲しいことですが、それら全ての者達の望みを満たす道が、常にあなたの前にあるとは限りません』

そうだ。今、殿下の前には全ての人の望むを満たす道はない。

『そして、自らの手を汚すことを、厭うてはならないのです』

だとすれば……この状況下で、殿下の言う自らの手を汚すこを、っていうのは。

『心配は無用ですよ。お飾りとは言え軍の最高司令官。実機で96時間ほどですが戦術機の心得もあります』

自分の手で……友女大尉を討ち取るつもり……なのか!?

『男……。あなたが某かの答えを得る手がかりになればよいのですが』

それが俺が答えを得る手がかりになるっていう事なのか?!


774 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/08/11(木) 01:13:53.98 ID:xjWFWHc90
俺がいきついた一つの可能性に驚きを隠せないでいる中、少佐と侍従長さんは再び激しい意見のぶつかり合いを見せる。
片や彼らの儀を信じ、殿下の意見を尊重する。片や敵は敵と判断し、最悪のケースを回避するために必要とあれば近衛を切り捨てるとまで発言する。
それぞれがそれぞれの主張をぶつけるなか、殿下は侍従長さんを下がらせる。

「殿下、改めて具申致します。先程の殿下のお考え、今一度考え直しを」

「此度の由、承認を求めているのではありませんゆえ、あなたに従う事叶いません……どうかお許しを」

「で、殿下!?」

「侍従長、武御雷を持て!」

「――ははッ!」

戦術機を持ち出すということは、いよいよ俺の考えが現実味を帯びてくる。
決意は固く、もはや誰も止められぬ。

「――お待ちください!」

そのはずだった。
全員が視線を送るのは、今まで陰のごとく存在を消していた者。

――い、いいんちょ!?

その人だった。

「何事だ訓練兵!? 勝手に持ち場を離れるな!」

固まった空気を一番に破ったのは少佐の声。
鋭い叱咤の声も受け流し、いいんちょが殿下の前へと歩いていく。
あの二人がいつ以来になるか分からないまでも、久しぶりに顔を合わせることになる。
こんな状況、こんなトラブルでも起きないと言葉すら交わせない二人。

「あなたは……」

「衛士訓練部隊所属、委員長訓練兵であります」

「…………」

「殿下……ご尊顔を拝し奉り恐悦至極に存じます」

今、こうして二人は顔を合わせる。
そう。何だって……やっと対面できたんだ。それだけは、素直に喜べばいいんだろう。

「此度の件における殿下のご心痛の程、私ごときには察することも出来ぬ、深いものでございましょう」

けれどかしづいたまま、顔を上げようとしない委員長。
せっかくの対面のはずが、お互い顔をみることすらできずにいる。

「そして、殿下の先程のご提案。それが民草への限りなき自愛とご配慮に溢れたものであることは、疑うべくもございませんが……」

しかし、と続ける。

「畏れながら、現況を鑑みますに少佐殿にも一分の理が有るのではないかと小官は思惟致します」

一刻も早い事態の収集、無益な流血を避けることを図るため、相克を乗り越え、全部隊が一致団結することが肝要だと告げる。
当然、それを十分に承知している殿下に、だからこそと委員長はひとつの提案をあげる。

「決起せし者達を説得する大任、この私めに拝命賜りたいと存じます」

今度こそ、全員が絶句する。


775 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/08/11(木) 01:14:28.59 ID:xjWFWHc90
「真に畏れ多い事ではございますが、私は常日頃より、殿下に生き写しの命を受けております」

「……」

「とある儀によりこの身は殿下の器として在るよう造られております故……御身を拝借する御無礼をお許しいただけるならば」

バレるはずもなし。俺の記憶の断片が告げている。
それは真実である、と。委員長の身体は、魂は特定の人間と入れ替えることができるんだと。

「されど……」

「この身を殿下のお役に立てる機会、今を於いて他にございません。何卒……」

確かに、難しいことかもしれない。仮にもし殿下の身体に何かあればそれは日本国として大事である。
けれど、その魂は存在としては生きながらえることが可能なのだ。人を構成するのは肉ではない。魂なのだ。
だからこそ、委員長はそれを提案している。自身を、真の意味で身代わりにしたいと。
それが……こいつの生き様なのだ。それが陰として生きる、委員長としての役目なのだ。
俺がそれを否定することなんてできない。あいつにとってそれは自分の存在意義であり、信じてきたもの。
だから否定なんてできやしない。だけど……。

「あなたの申し出、大変嬉しく思います。されどこれは、私自身が果たさねばならぬ責務……」

「畏れながら、殿下」

「……」

「御身の責務とは、そのような事ではございますまい」

「……、……」

今まで、誰ひとり止められなかった殿下の言葉を、委員長が始めて止めた。
いや、初めて殿下が間違えた、ともいえるのか。

「民を慈しみ国土を育み、それらを広く深い徳を以て治め導く。それこそが御身に課せられた第一の責務ではございませんか?」

「………」

もはや、殿下に返す言葉などない。

「今、殿下に万に一つの大事があれば、遠からず帝国は滅びましょう。此度の騒乱の責任が御身にあると申されるならば……」

「………」

「今、枢要なのは、彼の者達を御自ら誅する事ではございますまい」

「――!」

殿下の表情が全てを物語っている。
おまえも、そう思ったんだな。俺みたいに殿下とゆっくり話す機会もなかったのに。それでもわかったんだな。
本当にお前は、殿下の想いが……。

「ご心痛いかばかりかと存じますが……事後の民のためを第一にお考えくださいますよう、伏して申し上げます」

誰もが、その気高さに言葉をなくす。
お前は陰なんかじゃない。他の誰が何といおうと、お前は、光だよ。

「説得の大任、何卒……何卒、御裁可戴きますよう……」

そして。

「………わかりました。あなたに、任せます」

全てを託すよう、殿下の一言が、委員長に渡された。



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