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妹「ねぇ、お兄ちゃん?私、もうすぐ死んじゃうの?」
1 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 01:23:38.94 ID:sRgL4Rm+0
移転したから懲りずにまた立てました
作者続きお願いします


2 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/19(土) 01:24:36.94 ID:OLIh3D0E0
兄「ん?そうなん?ははは」


17 名前:あ、どうもです。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 08:20:42.80 ID:P4VDLL6BO
待っててね。


28 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 12:13:33.43 ID:P4VDLL6BO
妹は、相当疲れていたのだろう。


スッと、胸の中で眠りにつく。


俺は、その体を背中に担ぎ、車に向かった。

夕陽も沈み、辺りは薄暗くなる。
夏の夜は、どうしてこんなに心を涼ませるのだろう。

背中にいる少女は本当に気持ちよさそうに寝ている。
はたしてどんな夢をみるのだろう。
いっそうの事その寝顔をずっと見ていたい。
きっと飽きることはないんだろう。
人形のような顔を、もう一度その顔を眺める。

たくさん泣いて、たくさん怒って、たくさん笑って、色んな顔を魅せてくれた。

今は寝ている顔。



どんな顔でも、綺麗で愛おしい妹は、ずっと眠り続けたままだった。



そう、眠り続けたままだった。


29 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 12:15:07.25 ID:P4VDLL6BO
楽しい時間はあっという間に過ぎるというけど、俺の場合、長く感じることが出来たのは、とても充実していたからにからに違いない。

『兄』と『妹』。

俺たちはお互いに意識し合い、分かち合った。
それは偶然にも奇妙なバランスで保っていた。
そしてそれが偶然ではなくなったことがお互いに気づいて、これから一緒に支え合おうとしていた。


だけど、


そのバランスの均衡が崩れてしまった。


30 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 12:18:04.89 ID:P4VDLL6BO
『急性心不全』
そう医師から伝えられたのは、異変に気づき、それから一日経ってからであった。


もう、何もかもわからない。


それは、あまりにも突然すぎた。

「死んだ?どうして?死ぬ意味があるのか?」
自分に言葉を投げかける。

昨日の朝まであった元気な姿はもうここにはない。


携帯が鳴る。

俺の携帯ではない。妹の携帯。

画面には『高峰さん』と表示されている。
『もしもし、私だけど』
俺は、その携帯に出ていた。
「………」
『ん?どうしたの?昨日報告するって――』
「高峰」
『!?………どうして君が出るんだい?』
訝しく思ったのか、声が小さくなる。
「…………………今日、海に出かけたんだ――」
俺は、今日の出来事を振り返るように話を紡ぎ出した。


31 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 12:21:33.12 ID:P4VDLL6BO
頭の中が真っ白だ。

自分が今、何をしているのかわからない、何処にいるのかわからない、何を見ているのかわからない。わからないわからないわからないわからないわからないわからない。

過去の記憶がこびりつく。
先のことは考えたくなかった。何も知りたくない。


――― お兄ちゃん


顔を上げる。
そこに、いつも笑ってくれる少女の姿はなかった。

俺の妹。大好きな妹。
お願いだ、もう一度、その拗ねた顔を俺に見せてくれ。


32 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 12:22:35.52 ID:P4VDLL6BO
無情に時間は流れ去る。
ただ、淡々と行事が行われた。


高峰は葬式に来ていた。
俺に話しかけてきたが、何を話したかは覚えていない。覚えているのは、真っ白な顔で眠り続ける妹の姿だけだった。
心に空いた穴は、埋まらなかった。埋めてくれる人が、もういなかった。


涙が出ない。
どうしてなのかな、こんなに悲しいのに。
俺は、妹の死を受け入れたくなかった。

俺は、楽しかった時のことを思い出す。
いつも妹が近くにいた。

俺は、妹に何をしてあげれたのだろう。
何が嬉しかった?何が楽しかった?何が嫌だった?
答えは訊けない。

俺は、兄として誇っていいのか?なぁ?

俺は、

俺は、

俺は、……。


33 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 12:25:04.86 ID:P4VDLL6BO
気がつくと自分の部屋で虚空を見つめていた。
あの日から何日が経ったのか、そんなこと、もうどうでもよかった。

「………」
何度目だろうか、窓をたたく雨滴の音に再び現実に呼び戻される。
体が自然と妹の部屋に向かった。

部屋のドアをノックする。

「おい、入るぞ」
……。
返事がない。

「いるんだろ?入るぞ」
……。

「……」
戸を開く。

そこは、あの日から何も変わっていなかった。一つを除いて。


34 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 12:25:31.42 ID:P4VDLL6BO
俺は部屋に入る。

「おいおい、パジャマは脱ぎっぱなしするなよ」
拾い上げたパジャマをたたみ、ベッドに置く。
「あー、これ俺が無くしたと思っていた本じゃねーか。 お前が持っていたのか?まぁもう少しぐらいなら貸してやってもいいぞ」
本を机の上に置く。
「今度、お前が欲しがっていた本でも買いに行くか。知らないと思うが、駅前に大きな書店が出来たんだぞ」
一呼吸おく。
「また、一緒に駅前行こうな。どこでも行ってやる。でも、前みたいな高級デパートは勘弁な」
笑いながら振り返る。

そこに少女はいない。
笑った顔、泣いた顔、怒った顔、拗ねた顔、照れた顔、嬉しそうな顔、楽しそうな顔、眠そうな顔、いつも様々な顔で応えてくれる妹が、いない。

「そう拗ねるなよ。ちゃんと行くからさ、な?」
机の方に向き直る。

綺麗に並べてある本の中に、一冊の日記があった。
「………」
俺はそれを手にとって開く。


39 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 13:38:19.84 ID:P4VDLL6BO
―――― 3月17日(水) ―――――――――――――――――――――――――

今日は、お兄ちゃんとけんかした。
お兄ちゃんがゲーム弱いのがいけないんだよ。
でも、くやしくておこっちゃうお兄ちゃんがちょっとかわいかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


40 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 13:38:58.72 ID:P4VDLL6BO
―――― 5月8日(土) ――――――――――――――――――――――――――

今日は、みんなで街に行った。
でも、街に出ることはなかったよ。
私は、街があまり好きじゃない。
人混みが好きじゃないし、
多分、お兄ちゃんは私を一人にして先に行っちゃうと思うから。
もしそうなったら、もうあえなくなる気がしてすごくさみしいもん。
だから、街に行った時は、最初から車の中にいることにしてる。
そうすればお兄ちゃんとまたあえるから。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


41 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 13:39:38.08 ID:P4VDLL6BO
―――― 7月31日(土) ―――――――――――――――――――――――――

夏休みになった。
今年も海に行ったよ。
暑くて大変だった。
お兄ちゃんがあまり相手してくれなかった。


で、今から書くことは私だけのヒミツ。誰にも言わない。
今日、お兄ちゃんがひかげで寝ているときに、いたずらしちゃった。
遊んでくれるって言ったのに呼んでもおきないから、寝顔がかわいかったから、

お兄ちゃんにキスしちゃった。へへ。

私の初めてのキス。お兄ちゃんも初めてかな?
いいよね、だってお兄ちゃんが起きないのがいけないんだからね。

また海行きたいなー。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


43 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 13:42:07.76 ID:P4VDLL6BO
―――― 4月18日(火) ―――――――――――――――――――――――――

衝撃の新事実!

お兄ちゃんは猫が好きらしい。
意外だなーっと思った。

でも、いいこと聞いちゃったな。
お母さんに猫を飼っていいか、ってきいたら、
「ちゃんと世話をするならいいわよ」と、言ってくれた。

ふふふ、今年のお兄ちゃんの誕生日プレゼントは決まったね。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


44 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 13:42:59.40 ID:P4VDLL6BO
―――― 7月12日(木)――――――――――――――――――――――――――

今日、お兄ちゃんが女の人と帰ろうとしていた。
すごく綺麗な人だった。くやしいけどお兄ちゃんとお似合い…、かも。

だから私、お兄ちゃんを無理やり私に向かせようとした。
お兄ちゃん困った顔してた。あとで謝る。

焦っちゃダメだよね。お兄ちゃんは鈍感だから。
明日はお兄ちゃんを誘って街に買い物に行こうと思う。
平日なら人は少ない方だと思うし、
それに、二人で行ったらデートになるから。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


45 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 13:47:01.50 ID:P4VDLL6BO
―――― 7月13日(金)――――――――――――――――――――――――――
今日は本当に色々あった。書くことたくさんあるかも…。
お兄ちゃんを校門で待っていたら、突然高峰さんに話しかけられた。
名前を教えてもらった。それと…、
「君のお兄さんは狙ってないから、心配しないで」って言って、それから、
「お兄さんは、『兄』にこだわりすぎてるね」ってことも言ってた。
最後に「お兄さんを良い男にしてあげてね」って言われちゃった。無理だよー。
私、お兄ちゃんが声をかけるまで、しばらく考えちゃった。
高峰さんは顔も頭も良いんだ…あこがれちゃうな。
それから、なるべくお兄ちゃんと一緒にいたかったから、歩いて駅前まで行った。お兄ちゃんの近くにいると、全然疲れなかった。
何も考えずにデパート選んじゃったから、お兄ちゃん困ってた。
でも、そのおかげでお兄ちゃんの手を握ることに成功したよ。ずーっと心臓ドキドキしてた。それと、お兄ちゃんの手、温かかった。
アクセサリー買った。肝心のアレも買った。楽しみ。
いつもは全然おしゃべりできないけど、帰りの時にはたくさんお兄ちゃんとお話したよ。
お兄ちゃんは役にたったか?ってきかれた。
だから私は高峰さんが言ってたことを話した。
そしたら、またお兄ちゃんを無理やりむかせようとしちゃったの。
でも、お兄ちゃんは私を受け入れてくれた。抱きしめてくれた。
おかしくなりそうなくらいドキドキした。すごく嬉しかった。
今度、お兄ちゃんに「お兄ちゃんは立派なお兄ちゃんだよ」って言うね。
それと、
そんな立派なお兄ちゃんが大好きだよ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


46 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 13:50:20.09 ID:P4VDLL6BO
―――― 7月16日(月)――――――――――――――――――――――――――

今日、道で高峰さんと会ったよ。
お兄ちゃんにこと訊かれてちょっとドキッとした。
そしたら、私に電話番号教えてくれた。
どうして?って訊いたら、相談にのってあげるって言ってくれた。
高峰さんは優しすぎるね。うらやましいな。

それでね、さっき電話したよ。
私の話を聞いてくれてた。
高峰さんはお兄ちゃんのことを「面白くて変な人」って思っているらしい。

違うよ、かっこいい人だもん。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


48 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 13:51:08.25 ID:P4VDLL6BO
―――― 7月27日(木)――――――――――――――――――――――――――

明日はお兄ちゃんと海に行くよ。

さっき高峰さんに電話してね、相談したよ。
そしたら「せっきょく的にいってみなよ」って言われた。
そんなこと、かんたんにできたら苦労しないよー。

でも、私あまり気にしないようにする。

明日はいっぱい遊ぶ。

だって、お兄ちゃんと一緒にいることが一番楽しいから。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


52 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 14:05:46.43 ID:P4VDLL6BO
日記はそこで止まっていた。

ヒラリと栞が落ちる。

裏に何かが書いてあった。
『上から二番目』と。

そして俺は、妹の引き出し上から二番目を引く。
そこには、綺麗に包装された袋があった。

カードが貼ってあり、こう書かれていた。
『ずーっと一緒にいようね。』
袋を開ける。

中には――――


53 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 14:06:15.65 ID:P4VDLL6BO
家のチャイムが鳴る。


玄関には傘を差した高峰がいた。
俺を一瞥し、視線をそらす。俺の泣き顔が酷いのだろう。
「どうした?」
なるべく明るく言ったが、高峰は哀しそうな顔になる。
「今日は君の誕生日だよね」
あー…そう、だったな。
胸が苦しくなる。
「そうだな」
憮然と答える。
「それで、これを、」
高峰は腕の中に丸まっている小さいものを俺に渡した。
それは、小さい子猫だった。


54 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 14:06:41.90 ID:P4VDLL6BO
「………」
「その子猫はね、君の妹さんが選んだんだよ」
チリン。
俺の手から、さっきまで持っていた首輪が抜け落ちる。
「………」
「私に相談しにきたけど、『自分でちゃんと選んだほうがお兄さんも喜ぶと思うよ』って言ったら、嬉しそうに返事してたよ」
高峰はそっと子猫に手を伸ばし、優しく撫でた。
「私はその子猫を、君の誕生日まで少し預かることになっててね」
高峰の手が僅かに震えている。
「私は君の妹さんが羨ましかった。毎晩、本当に楽しそうに君の話をするんだよね。
 そして、君も羨ましかった。こんなに妹に愛されて幸せだなー、って……」
彼女の声はしだいに濁っていく。
「大切にしてあげて……」
それだけ言って、高峰は立ち去ってしまった。

部屋に戻る。
子猫が腕からするりと抜け出る。
俺はその場にしゃがみ込んだ。
「……ぅぅ………」
涙が溢れ出る。
「……ぅぅ…ぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁ……」
声を出して泣いた。全てを吐き出すように。


56 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 14:10:54.19 ID:P4VDLL6BO
にゃぁ

子猫が鳴く。

その鳴き声で我に返る。

丸くて曇りのない純粋な眼をこちらに向けていた。

頭を撫でる。

気持ち良さそうに眼を瞑った。

妹の嬉しそうな顔を想い出す。

「……大切にするよ」

心の穴が少し埋まった気がした。気がしただけかもしれない。


57 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 14:11:37.57 ID:P4VDLL6BO
チリン。


今日もまた、どこかで鈴の音が聞こえる。





――― お兄ちゃん?





――― なんだ。



――― ………腹筋しよ?



――― ………まじでか!?



――― へへ、油断大敵だよ。

―――――――――― END ―――――――――――――


58 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/19(土) 14:12:06.75 ID:esXE/Rke0
ま、まさかの釣りorz


59 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/19(土) 14:12:21.96 ID:lu26tlOD0
ガチで泣かされるとはな・・・



60 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 14:13:01.84 ID:P4VDLL6BO





…………さぁ、好きなだけ俺を叩け。







61 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/19(土) 14:13:34.57 ID:esXE/Rke0

感動した


62 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/19(土) 14:14:43.68 ID:lu26tlOD0
  ∧_∧ パーン
 ( ;∀;)∧_∧
   ⊂彡☆))Д´)←>>1


63 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/19(土) 14:18:14.06 ID:mf8AsUBKO
vipで泣いたのは久しぶりだ
妹に見られたしorz


64 名前:誤字脱字が多くてスマン。高嶺→高峰とか……。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 14:26:38.94 ID:P4VDLL6BO
俺も妹スレはかなりまわってるから、また、どこかの妹スレで逢おう!


65 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 14:27:28.29 ID:lu26tlOD0
>>64俺のスレにも来いよ
いつ立てるか分からんが


66 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/19(土) 14:31:08.20 ID:5GaSmZ0L0
再見!


67 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/19(土) 14:35:10.25 ID:/cj8mWu60
最後まで読めて良かった
>>64また逢おうぜ!


68 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/19(土) 14:48:33.03 ID:zcwmWmym0
高峰いいな


70 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 16:46:45.84 ID:b3RihpxxO
>>64
何度もスレ立ててすまん;;
でも最後まで読めて良かった!
ありがとう



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