■戻る■ 下へ
意地悪なメイド2
- 164 :パー速民がお送りします [sage]
:2008/04/14(月) 01:23:13.04 ID:0Mu7eQw0
音が重たい。きっと、相当な重量があるのだろう。
そう五感の全てで感じさせる扉が閉まった。
今中にいるのは、私と彼女と、その御付達。
たった一人苦しそうに顔を歪めるその子が、私に声をかける。
妹嬢「姉、さん。申し訳、ありませんが……今日、この日よりあなたを拘束させていただきます」
姉「なんでー?」
妹嬢「それは、その……父の、言いつけですから」
姉「ふぅん」
妹嬢「とは言いましても、その、大丈夫です。本当に手足を拘束してしまうということではありませんので」
姉「いいよ、しても。別に私は」
妹嬢「いえ、その……すみ、ません。では、これより、姉さんにはこの部屋で過ごしていただきます」
姉「了解だよ〜」
妹嬢「……っ。失礼、します」
七歳の誕生日。三つ年下の妹から与えられたのは檻。
なるほど、私のような獣にはぴったりの贈り物だろう。
笑いがこみ上げてくる。……こんなもの、意味ないのに。
ばかみたい。
はじめまして。これが、私。
ねぇ、あなたも見てるんでしょう?
- 165 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:23:48.30 ID:0Mu7eQw0
外から見られるのには慣れてる。
プライバシーというものが外にはあるらしいけれど、ここは例外。
それも当然かもしれない。人としての権利というのは、社会の中で保障されるもの。
ここはただの檻。閉じた世界。刳り貫かれた伽藍。
中に居る私は、世界の異物だから。それだけのこと。何ら不都合はない。
とはいえ、私だって生きているからには欲求というものがある。今も渇いてはいるけど、我慢できないほどじゃない。
それでもいずれ、耐えられないときが来るかもしれない。
嗚呼、いずれ……この器官を、それらで満たしたい。
そんな、生物として当然の本能。欲求に、正直に。
どろどろとした思考の沈殿物。それを上澄みで隠しながら、檻の中から外の“動物”たちを観察する。
怯えて、恐れて、慄いて。可愛い動物。
でも、だからといってこの鎖は切れそうにない。
後数年。きっと私の*し方が見つかるその日までは我慢できる。
そう、思っていたのに……。
男「……あんた、誰?」
はじめに抱いた印象は、何者にも変えがたい大切なものだというもの。
でも、それは私の欲求を満たしてくれるということで、結局は私は彼を……。
- 166 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:24:07.14 ID:0Mu7eQw0
臭いで分かった。彼が自分と同じモノであると。
ここへ――檻へ迷い込んだ彼を、私は、
姉「私は君のお姉さん。聞いてない? 君にはお姉さんがいるって」
男「え? あ、と……そういえば、聞いたこと、ある、かも」
姉「じゃあその聞いたことあるお話の人が、私だよ」
男「姉、さん?」
姉「そうだよ。私が、君のお姉さん」
捕まえた。
手のかかる妹のように。最愛の姉としてあれるように、私はこの関係をはじめた。
今にして思えば、このころから私の鎖は、少しずつ千切れ始めていたんだと思う。
彼はたびたびここを訪れた。誰からも止められないのだろうか。
知られていない可能性も考えたがすぐに打ち消す。ここは覗き小屋。
見られていない時間なんてないのだ。だとすれば、きっと彼も私と同じような環境にあるのだろう。
ああ可哀想な弟、無知であるが故に可愛い弟、哀れで無邪気な弟。私だけの……。
男「ねえさん!」
姉「なぁに? おとちゃん」
男「えっとね、今日はこれを一緒に見よう!」
姉「うん、いいよ」
私一人では最低限しか使わないこの部屋の機能を、二人でならフルに活用する。
人間らしい生活。人間のような娯楽。彼がここにいる間だけ、私は人になる。
勿論、そんなことは望んでいないけれど。
- 167 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:24:36.14 ID:0Mu7eQw0
ああ、ただ勘違いしてもらいたくないのは、私一人では何の娯楽も楽しまないわけじゃないということ。
私だって読書だってするし、好きなお話がある。
そして、私にとってそれは普遍的な一つの童話。
ヘンゼルとグレーテル。大好きなお話。
元々は、長く続いた飢饉での、口減らしの話。
いらなくなったと森に捨てられる子供達。彼らはそこでパンの家を見つける。ああ、今はお菓子の家が有名だっけ。
そんなのはどちらでもいい。とにかく、夢のような“餌”を与えられる。
そしてその餌を撒いた魔女は、彼らを太らせ、食べようと画策し……しかし敗れる。
可哀想な魔女。目がよく見えず、頭の回る妹に騙され、兄を食べられず、自分は業火に焼かれ死ぬ。
仕向けられたレールに従った彼女は、悪役として、淘汰されるべきものとして、忌み嫌われて死んだ。
こんなひどい話、こっけいな舞台劇、出るだけ損な戯曲。私なら演じてやらない。
そう、私なら何のヘマだってしない。
まるまる太らせて、したたるほどの肉汁を楽しんで、その血肉の一片すら残さず……
食べてあげる。
男「姉さん!」
ここ数日、彼がここを訪れない日の方が少ない。
慕われるようにしてきたし、そうなれるような立ち回った。
後は、鎖を付けてやるだけ……。
さりげなく、そういった話題を振ってあげれば、
姉「えへへ、面白かったね。特に最後の、恋人同士のキスシーンとか、憧れちゃうよね」
男「姉さんでもやっぱり、そういうの、気になるんだ」
姉「あ、ひどいよぉ。私を何だと思ってるの〜?」
男「あはは、姉さんは全然そういうの、興味ないと思ってたよ」
姉「むぅ、私だって好きな人くらい……」
男「え……?」
姉「ふ〜んだ」
男「ねえさん、ねえさん」
姉「なぁに〜?」
男「あのさ、ねえさんって好きな人、いるの?」
ほら、ね?
後は簡単。
- 168 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:24:59.87 ID:0Mu7eQw0
姉「私の大好きなのはおとちゃんだよ! あ、勿論みんなのことも好きだけどぉ、一番はおとちゃん!」
男「……そう、なんだ」
姉「うん!」
男「そっかぁ。……」
ぎゅっ
姉「ふにゅ? どしたの、珍しいね、おとちゃんから甘えてくれるなんて」
男「……。いや、その。ね」
姉「でもいいや、嬉しいもんね」
男「うん」
嬉しいよ。
もう君は、私のモノ。
男「俺は……好きだ。姉さんのこと」
姉「それは、家族として? それとも……」
男「ううん。違う。俺は姉さんのこと、一人の女の子として、好きだ」
あとは最後のご馳走をあげるだけ。
姉「私も。おとちゃんのこと、弟としてじゃなく、好きだよ」
男「……姉さん」
そう、弟なんて、そんな見方したこと、一度もないよ。
私にとってあなたは、大切な、大切な……。
男「姉さん!」
姉「おいで」
さぁ、召し上がれ。でも、大丈夫。
私は魔女とは違うから。あなたが今、一番食べ頃だって、わかってるよ。
大好き、おとちゃん。
少しの痛みをもらって、それが極上のスパイスだと言い聞かせた。
涎が止まらない。もう、隠せない。
満足そうな顔、信頼しきった顔、幸せの絶頂だと語るその顔を見て……。
私の胃が、はじめて、啼いた。
- 169 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:25:18.17 ID:0Mu7eQw0
姉「おとちゃんに、私全部あげたから……今度は、おとちゃんの全部をちょうだい」
男「……うん、俺は、姉さんになら、全部あげるよ」
姉「本当?」
男「うん」
姉「ほんとのほんとに?」
男「ああ、本当の本当に」
姉「そっかぁ……えへへ」
本人の承諾も得た。これで邪魔なものはない。
きっと今から起こることも、覗かれているのだろう。
けれど、それだけ……。黙認してくれるはず。
だってこんな禁忌すら見逃すんだもん。
もう一つぐらい、いいよね?
姉「じゃあ、いただきます」
男「……え?」
そして私は、初めて自分の中にある、“食欲”を満たすために動いた。
気付いた瞬間は、理解が追いついていなかった。
だが否応なしに現実という名の痛みが、俺を襲った。
男「ぁ……ああ、ああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
痛み? そんな生易しいものじゃない。
電気信号が、神経という回路をショートするくらいの負荷をかけて駆け抜けていく。
処理しきれない。だから結果として、痛みよりも恐怖が、俺を叫ばせる。
これはいけない。ここに居ちゃいけない。逃げろと。
目の前のソレを見て、無くなった肩の肉片を感じて、ただひたすらに危険という警報が俺の中で鳴り響く。
ぐちゃり、くちゃりと、咀嚼する音が耳を犯す。
その恍惚とする顔、口元から滴る緋色の体液。
どれもが美しく、非現実的で……
姉「おとちゃん……おいしい」
その言葉がこれが現実なのだと、俺を打ちのめす。
知らず、涙が出る。何故、と口は言葉を発し、しかし答えてくれる人はおらず、ただ愛おしい人の顔が近づく。
その目に映る俺は、どんな顔をしていたろうか。
- 170 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:25:37.21 ID:0Mu7eQw0
さっきの性行為には、これといった充足感はなかったけれど、恥ずかしながら、今絶頂に達したといっても過言じゃない。
これが欲望を満たすということ。我慢に我慢を重ねた結果。
私が魔女じゃなく、勝利者になった証。
口の中ではゴムのような弾力と、鉄臭さが入り混じり……至上の味となる。
美味しい。美味しい美味しい美味しい美味しい!!!!!
ああ、こんなにも私は飢えていた。渇いていた。
我慢できるなんて嘘! こんな甘美にして、魅惑的な、生物の根源を満たす行為を、我慢し続けるなんて!
ハレルヤ! 世界は素晴らしい。今私は、幸せだ。
男「な、ぜ……」
裏切られたという悲しみと、状況を理解しきれない困惑と、絶対的な生物としての恐怖に顔を歪ませて、彼は問う。
ならば答えてあげなくちゃいけない。だって、そうすればきっと……もっと美味しくなるから。
姉「だって最初から、ずっと我慢してたんだもん。それに、全部くれるって言ったでしょ?」
男「そん……な……」
じゃあ全ては嘘だったの? と瞳が問う。嘘? 何が嘘なのかがわからない。
ああ、そうか。彼は私に愛欲を満たしてほしかった。だから、今までの全てが嘘だと知れば……
知らず震える。そんな愛しい彼に顔を近づけ、
姉「……そうだよ? 何か勘違いしてた? ……あはは、ばかなおとちゃん」
男「――ぁ。あぁ、ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
壊れた。その一言で。
ああ、たまらない。こんなに美味しくなってくれるなんて。
大丈夫、愛してるよ、おとちゃん。だから……もっと、食べてあげる。
- 171 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:26:11.24 ID:0Mu7eQw0
そうして、俺の肉片は、次々と彼女の胃に納められていった……
だけど、結局私は全部を食べてあげられなかった。
バタン!!
メイド長「そこまでにしていただきましょうか」
姉「……何? 今更出てきて」
メイド長「もう一度だけいいます。そこまでにしていただけますね?」
姉「質問に答えてくれたら考えてあげる」
メイド長「……“バレました”。これでよろしいですか。では……」
姉「そっか。残念。でもごめん、やめないよー」
メイド長「では実力行使でいきますが、かまいませんね」
姉「やれるものなら」
メイド長「ここにある全戦力を投入します。さすがのあなたでも」
姉「あはははは! ……いきがらないでよ、みんな私の餌のくせに」
メイド長「知っていますか? 傲慢なライオンは、狡猾な狐に負けるんですよ?」
姉「ふぅん。じゃ、やってみなよ、狐さん」
メイド長「では、お望みどおりに」
結果として、俺が生きているんだから、この先は言うまでもない。
ただ一つ付け加えておくならば、姉さんを止めたのはメイド長じゃない。うちの親父だ。
その後、俺が目を覚ましたとき、最初に声をかけてくれたのは妹だった。
泣きながら、でも本当に安心したって感じで。ずっと傍にいてくれたそうだ。
馬鹿な奴だ。俺みたいなのにかまってないで、自分のことだけに専念すれば、もっと上を目指せてただろうに。
……だから、そんなこいつに、言ってやるとすれば、やはり「馬鹿」の一言に添える、礼の言葉。
- 172 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:26:56.59 ID:0Mu7eQw0
兄さんに傷一つ残させず、全て治療を終えた。その間、一年近く。
意識が戻ったのはそれから数日後のこと。このまま起きないのではないかと思うと、毎日怖くて仕方なかった。
私があの時、もっと早く気付いて止めてあげられていれば……悔やんでも悔やみきれない。
ただ一つ救いがあるとするならば、兄さんがあの時の記憶を少し誤って覚えていることだけ。
その淡い恋慕はそのままに、自分が襲って、結果として最後の時に反撃されたんだと認識してる。
だから何も怖いことを覚えていない。これが救いなのかはわからない。
けれど少なくとも兄さんの心まで、あの人に食べられていない。それだけが、私にとっての……
姉「あーあ」
また、檻の中。とはいえ、前のは籠。今は本当に檻だと思う。
ちょっと本気でも出るに出られなさそう。残念だ。
姉「またひとりぼっちかぁ」
別にそれはどうでもよかった。本当はそんなことじゃない。
私は過去に想いを馳せ、感覚を蘇らせる。そう、あの味を……あの至福の瞬間を。
恍惚に震える身体を押さえ、その時を待つ。あの子の話が本当なら、もうすぐ……
- 173 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:27:13.16 ID:0Mu7eQw0
コンコン
ほら。
男「ねえ、さん?」
姉「何? おとちゃん」
男「その……ごめん。俺、全然、姉さんの気持ち、理解しきれてなくて」
姉「理解って?」
男「……好きでも、きっとあれじゃ、気が早すぎたんだよ、な」
姉「……」
男「もっと時間をかけて、お互いを理解しなきゃ、いけなかったんだ。なのに、俺は……」
姉「でも、好きでいてくれてるんでしょ? まだ」
男「俺、は……」
あは、嬉しいな。
まだ……ううん、“また”美味しく食べられる。
姉「じゃあ、いいよ。でも私たち、会うの禁止されちゃったね」
男「うん。それで、話があって」
姉「何?」
男「俺、この家でていくことになった」
姉「そうなんだ」
男「……だから、一つだけ約束する」
姉「何かな?」
男「また、くるから」
姉「それは、信じてもいいのかな?」
男「……必ず、くるから」
姉「うん!」
こうして彼は行ってしまった。
だけど、いいの。きっと彼はここへ戻ってくるから。
私のために。私だけの……ために。
- 174 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:27:25.56 ID:0Mu7eQw0
母「……で、どうすんの?」
父「どうするって?」
母「馬鹿息子と馬鹿娘」
父「勝手に乳繰り合って死に掛けるような子供を持った覚えはない」
母「とかいって結局尻拭いしたくせにぃー」
父「うっせ。……まぁあいつもいい経験になったろ」
母「でもダーリンがニフラム的に関与したからか経験値はいってないよ、あの馬鹿息子」
父「何? あいつ、あれだけのこと都合よく忘れたのか」
母「みたい。だからまたさっきも会いにいってたみたいだし」
父「……真性のアホかつマゾだろ。まぁいい、今度付ける『アレ』に適当に仕込んどく」
母「仕込むんだ」
父「ああ、少しずつトラウマをほじくってやる。ったく、世話のやける」
母「じゃあ次帰ってきたときは、きっと面倒なことになるんだろうなぁ」
父「気にするなよ。いつも通り、お前はお前でいればいいさ」
母「言われなくてもそうするけどね。それよりダーリン! 今度の新作格ゲーなんだけど!」
父「はいはい」
これは俺が、一人暮らしを始める、少し前の話。
- 175 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:28:15.47 ID:0Mu7eQw0
んではそんなこんなでしばらくはお題消化に戻りますww
微妙に読みづらい文体でごめんよ!
ああ、やっぱり俺には馬鹿な会話のほうが似合ってるやwwww
- 176 :パー速民がお送りします [sage] :2008/04/14(月) 01:38:33.68 ID:WyHCyAMo
逆レイプどころか・・・(((((゚Д゚;)))))
- 177 :パー速民がお送りします [] :2008/04/14(月) 16:38:53.00 ID:aoQoxwDO
>>175
((((゜Д゜;))))こ、怖っ
でもってGJ
- 178 :パー速民がお送りします [] :2008/04/14(月) 20:06:41.44 ID:TN/5UkAO
某魔女スレみたいに母=メイド、父=男で
ループしてるみたいに感じた
- 179 :パー速民がお送りします [] :2008/04/14(月) 20:38:12.58 ID:u6HU1Dg0
メイドが……いやまさかな
次へ 戻る 上へ