■戻る■ 下へ
新ジャンル「一服」
- 1 名前:VIPがお送りします。 []
投稿日:2007/11/03(土) 04:12:45.66 ID:VENuyHrA0
男「ふぅ」
一息、吐く息は紫煙。
立ち上る煙は頼りなげで、風に攫われ空気に溶けていく。
女「そんな体に悪い物じゃなくてこっちにしなー」
見れば女の手には紙コップが二つ、中には真っ黒な液体。
香り立つそれはコーヒーで間違いないだろう。
男「そっちはそっちで体に悪いだろ」
そうは言いつつ紙コップを手に取る。
……目が隣に座らせろと言っている。
周りを見回せばどれも満席、このコーヒーはそう言う訳か。
コーヒー代を払うために体を少しベンチの隅に寄せる。
女「少しなら大丈夫でしょー」
ベンチに腰を下ろし、ようやく女は口を開いた。
秋も酣、眼前に広がる山並みは紅葉に色付いている。
- 7 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 04:26:21.55 ID:VENuyHrA0
高校から大学に入った。
他県から今の大学に入った俺は当然のごとく一人暮らしで。
高校の頃抱いていた幻想は初めの一週間で泡と消えた。
丁度、中学生が高校生活に夢を見るようなもんだ。
そんなこんなで適当に大学生活を送っている時に女に出会った。
女「どうした男ー?」
コーヒーの煙の先、女の瞳がこちらの顔を窺っていた。
男「ん、いや。何でもねぇよ」
適当に言葉を投げて景色に目を移す。
女「なんでもないような顔してないぞー」
こうなると正直に言わないとしつこく問い詰めてくるのは半年間の間に嫌というほど思い知っている。
男「いや、もう半年も経つんだな、と思っただけだよ」
女「あーそうかー、もう半年も経つのかー」
男「梅雨前だったか」
改めて回顧に浸るとしよう、大学に入ったばかりの事を。
- 10 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 04:36:41.50 ID:VENuyHrA0
あの時もタバコを吸っているところにこいつが来たんだったか。
もっとも、その頃は器官に煙が入っただけで噎せるような状態だったが。
男「げほっ」
涙目になりながらタバコの火を揉み消して、
女「そんな体に悪い物無理して吸っちゃダメだよー」
体が軽く痙攣した、それはもうびくりと。
大学に入って、俺個人に掛けられた声なんて久しく聞いていなかったから。
女「隣、良いー?」
やけに間延びした声をした闖入者は俺の許可より先に俺の隣に腰掛けていた。
格好付けてタバコを吸おうとしていた俺の目の前に現れて、今みたいにコーヒーを渡してきた。
それはそれは格好の付かない出会いだったっけ。
- 12 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 04:38:36.76 ID:VENuyHrA0
つかこんな時間に立てるんじゃなかったな
眠くて仕方ねぇ('A`)
- 13 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2007/11/03(土) 04:39:04.75 ID:CrGwoSiJ0
もうちょっとテンポよく投下してくれるとありがたいんだが
- 14 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 04:40:05.65 ID:VENuyHrA0
>>13
善処する
遅筆ですまん
- 17 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 04:45:56.10 ID:VENuyHrA0
女「懐かしいなー」
目を細めながら、遠くを見るように呟く声に返事を。
男「そんなに昔の話じゃないと思うんだが、確かに懐かしいな」
そう言いながら見上げる空は晴天、秋空は心情とはいつだって反比例するんだろうか?
いや、多分俺だけだろう。
陽の光が何だが眩し過ぎるように感じるのは自分の責任。
両親の仕送りに頼りっきりで、かも学業にも身の入らない身からすれば責められているようにすら感じる。
- 19 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 04:49:35.47 ID:VENuyHrA0
女「あの時タバコ吸って噎せてたよねー、男ー」
そういう要らないところばかり覚えてやがる。
女「あの時の男は可愛かったのになー」
なんて言いながら頭を撫でてきやがる。
やめれ。
男「うっせぇ」
はずいだろ。
女「あー、顔赤い。可愛いー」
だからやめろって。
- 23 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 05:03:35.70 ID:VENuyHrA0
ダメだ、間が持たない。
と言うか俺の精神が持たない。
すっかり癖になった動作でポケットからタバコを取り出す。
女「だからタバコやめなよー」
のろまな動作で手からタバコの箱を奪われる。
女「没収です」
男「返せよ」
女「だめー」
分かってやっているのか、上に上げたら取ろうと思えば取り返せるんだが。
そんな気になる訳もなくため息なんかを一つ。
男「はぁ」
これ以上ないくらい面倒そうな動作で自販機へ。
俺はコーヒーより紅茶派なんだ。
財布を取り出し更に百円玉を手にとって自販機の投入口へ。
紙コップが落ちる音と紅茶の注がれる音。
何となく目を遣ると女はまださっきの紙コップを持ってちびちびと口へと運んでいる。
帰りがけに覗くと何やら琥珀色掛かった液体。
しかも白を基調にしている所を見るとミルクティーだろうか?
- 24 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 05:04:14.52 ID:VENuyHrA0
男「俺のはブラックコーヒーだったよな?」
振り向きこちらを見る女。
女「あれー、そうだっけ?」
こいつは……まぁ良いか。
思いながらも隣に腰掛ける。
大学の昼下がり、いつもの調子で昼休みを過ごした。
- 25 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 05:09:25.71 ID:VENuyHrA0
何か違う気がする
- 27 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 05:10:55.70 ID:BFtcteLq0
>>25
お前が違ったら、どうしようもないじゃないwwwww
( (
( ( (. )
. -‐ ) ‐- .
.´,.::::;;:... . . _ `.
i ヾ<:;_ _,.ン |
l  ̄...:;:彡|
} . . ...::::;:;;;;;彡{
i . . ...:::;;;;;彡|∧_∧ これでも飲んで
} . .....:::;::;:;;;;彡{´・ω・`)
!, . .:.::;:;;;彡 と:....... 落ち着いて?
ト , . ..,:;:;:;=:彳:―u'::::::::::::::::::::::::::..
ヽ、.. ....::::::;;;ジ.::::::::::::::::::::::
- 29 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 05:11:54.36 ID:VENuyHrA0
>>27
こりゃありがたい
って訳で一服してくるよ、十分程。
- 38 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 05:30:53.24 ID:VENuyHrA0
雨、天気と同じように気温も下り坂。
真っ青な空よりこっちの方がやはり性に合っている。
おまけに今日は休みな訳で、絶好のデート日和だ。
と一人思っても独り身の俺には寒いだけの話。
おまけに同じ感覚を有している女性となるとそれはそれは希少種ではないだろうか。
なんて考えながら傘を差して並木道を歩く。
女「おー、男ー」
何故だろう。やけにリアルな、やけに間延びした幻聴が聞こえる気がする。
しかも幻覚を伴って、手を振りながらこっちに近づいてくる。
女「こんな雨の日になんでこんなとこ居るんだー?」
それはこっちの台詞だ。
心の中で吐いておく。
- 44 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 05:41:26.65 ID:VENuyHrA0
男「何故だ」
百歩譲って女が居たことはまぁ良いとしよう。
でも何で、
男「何で俺はこんなところでお茶してるんだ」
しかも女と。
女「いやなのかー?」
男「あ、いやそういう訳じゃないから。な、泣くなって」
女「うん」
何なんだろう、秋の空と女心は……って奴か?
本当に泣きそうな顔から瞬時に満面の笑み。
と言うかこいつこんなに可愛かったんだ、
って。俺は何考えてんだ!
挙動不審な動きで顔を逸らした。
- 45 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 05:49:37.77 ID:VENuyHrA0
女に(半分拉致された形で)連れ込まれた喫茶店は、
心地いい程度に落ち着いた雰囲気だった。
作り物の匂いがしない、そうあるのが自然な内装。
後付の飾りも何もない、ずっとここにあったような、
ずっとここに居たような錯覚すらするような。
男「こんな喫茶店あったんだな」
この辺りはよく知っているつもりだったのだが……。
女「いい店でしょー?」
素直に頷く。
と、女は嬉しそうに笑った。
女「ここ、お気に入りの店なんだよー」
そのときの女の顔は、友達に宝物を自慢する子供みたいな、
でもそれよりずっと素直な笑顔だった。
- 51 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 06:00:00.67 ID:VENuyHrA0
夏休み、一番嫌いな季節がやってきた。
太陽は燦燦と輝き、遠慮もなくアスファルトを焦がす。
外に出るのも億劫で、夏休みに入ってから食料の調達以外ではまだ一度も外に出ていない。
後ろ向きに平穏で、濁った清涼な空気に肌を晒しながら。
やることもないので課題に勤しんでいたのだが、それも三日と待たず終わってしまった。
そこにいきなり電話のけたたましい電子音が響いたのは果たして夏休みも中盤に入ってのことだった。
- 53 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 06:05:29.43 ID:VENuyHrA0
?「もしもしー」
どこかで聞いたことあるような……。
男「どちら様でしょうか?」
?「あー、男ー? 私ー、女だよー」
男「何で俺の電話番号知ってるんだ?」
女「秘密ー、それより頼みがあってさー」
何故だろう、男として女性に頼られるのは悪い気がしない気がするのは。
男「なんだ?」
女「課題見せてー」
何故か肩が落ちるような、そんな錯覚がした
- 56 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 06:11:03.62 ID:VENuyHrA0
梅雨の雨の日に行った喫茶店で待ち合わせることになった。
外に出るのは億劫だったが自分で交わした約束を破るなんてことも出来ず、
一念発起、夏の日差しが降り注ぐ外へ。
実に一ヶ月振りの外出を、それも昼間に敢行する。
- 60 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 06:20:40.52 ID:VENuyHrA0
例の喫茶店へ、約束のキッカリ五分前に到着した。
待たせるのは性に合わないしな。
すると女は既に窓から遠い奥まった一席に座っていた、前と同じ席だ。
男「いつから待ってた?」
挨拶もそこそこに第一声。いや、挨拶の後だから第二声か。
そんな下らない事は頭の隅に追いやって女の対面に腰掛ける。
女「電話掛けた時からだよー」
男「そうか、それは済まなかった……って一時間も居座ってたのかよ!」
女「大丈夫だよー」
いや、大丈夫とかじゃなくて。
女「ここ私の家だし」
男「え?」
- 63 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 06:26:57.36 ID:VENuyHrA0
女「だからー、ここ私の家なんだよー」
それは初耳だ。
聞いてない。
男「本当か?」
女「嘘言ってどーするのさ?」
まぁそれもそうだが……。
にしても、そうと知ると何だがそわそわと体中に違和感が。
他意はない、と思うんだが。
何故か、少し居心地が悪いような。
言ってしまえば女友達の家で食事を頂いている訳で……。
- 65 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 06:35:22.40 ID:VENuyHrA0
その後課題を渡して、すぐに帰ろうと思った物の外は相変わらずの日差し。
無理もない、昼過ぎなんて一番暑い時間帯な訳で。
女「ゆっくりして行きなよー」
迷いぬいた果て、結局しばらくお邪魔することにした。
女「で、何飲むー?」
男「いや、良いよ」
女「何飲むー?」
男「……」
女「…………」
男「……じゃぁ紅茶で」
女「お母さーん、紅茶お願いー」
何かもう、やめて下さい。
- 66 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 06:42:48.81 ID:VENuyHrA0
店長(女母)「はい、紅茶。あと女はミルクティーで良いわよね?」
男「あ、どうも」
女「うんー、ミルクティーで大丈夫ー」
随分とテキパキしたお母さんだ、女と違って。
母「似てないなーと思った?」
わずかに笑顔で心中を探り当てられた。
男「い、いやそんなことは!」
母「ふふ。本当、誰に似たのかしらねぇ?」
遠いところを眺めるような目、ここには居ない人の事を思い出しているんだろうか。
その笑顔は女に似ているのに、どこか似ていないような、そんな気がした。
きっと大人と子供の違いだと一人納得する。
母「どうしたの?」
男「いや、やっぱり女さんと似てるなと思って」
母「そりゃ親子だものw」
それはそうだ。
- 68 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 06:45:53.69 ID:VENuyHrA0
サーセン
少しばかり仮眠取りたいと思います
- 69 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2007/11/03(土) 06:46:32.87 ID:Vbewrn9s0
>>68
おやすみ。良いスレをありがとう。
- 72 名前: ◆ftDY.hjzxY [] 投稿日:2007/11/03(土) 06:51:16.10 ID:VENuyHrA0
あっと次からは多分携帯からになるんでトリ付けときますね
>>69
ありがとう
お世辞でも嬉しいw
上へ 戻る