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意地悪なメイド2
- 903 :パー速民がお送りします [sage]
:2008/07/20(日) 00:58:06.87 ID:RZiCnbw0
第十三話 「成果」
「わかりました。言うとおりにしましょう」
「……へ?」
「へ? じゃ、ありません。言うとおりにする、と言っているんです」
「え、いや、あの」
「合理性のかけらもない論理でしたが、確かな信念は感じました」
足を組み直し、さきよりも幾分柔らかい表情を見せる。
「だから、あなたの言うことを信じるといっているんです。何を呆けた顔をされてるんですか」
「だってさっきは全然ダメみたいなこと……」
「本来なら確固たる理論もないあなたの意見など聞くに値しませんが今回はどうにもならない要素がありますから」
「どうにもならない要素?」
「BETAですよ。あれは人間の都合で動いているわけではないですからね」
「人間の都合……あ」
「ええ。こちらからああは言いましたが、もしあなたの言動でどこかの国が得をする可能性もあります。事は慎重にならざるを得ない」
「けど、BETAはどこの益になることも考えてないから」
「はい。ですから本土への上陸を目指し移動を開始したことが観測されたならば、それは確定した要素です」
「つまり……」
「国連には無理がありますが、帝国軍の駐屯部隊を防衛基準を引き上げた状態で配置しましょうか」
「あ、ありがとう! ありがとな!!」
がば、と思わず手を握る。
「っ!! は、離しなさい!」
「うれしいんだよ! お前が動いてくれれば助かる人間がたくさんいるんだ! 本当に、本当にありがとう!」
「勘違いしないでください! そうしてもいいと考えたからのことです。それに考えてもみてください」
頬を染めたのも束の間、真剣な目で見返す馬鹿妹。
「あなたの話を信じるとして、私は何をしていいものか。何をしてもいいのか。もし何かのきっかけで時期や場所がズレたら?」
「……下手な動きを見せれば国家間のトラブルに発展する可能性があるのか」
「そうです。そのせいで私の計画……ひいては人類の勝利が遠のいたとしたら。そう考えれば簡単に首を縦に振れません」
「……すまん。な、なぁ、じゃあせめてこの基地からも援護を……」
「ここは国連の管轄です。先ほども言いましたが国連を動かすのは無理があります、あそこを動かすには政府からの要請が必要なんです」
「そんな……」
「こちらができる最大限の譲歩です。さすがに折れてください」
「わかった」
そうだ。何を勘違いしてるんだ。こいつはこいつなりに俺の意思を尊重してくれた。信じてくれた。
だったらそれでも十分すぎる。立場を鑑みればどれだけ無茶をしてくれてるかわかるってのに。
「すまん! でも本当にありがとな!」
「だ、だから!」
ぶんぶんと握った手をふって、感謝を示す。
とにかく、その日に何か起これば……どうやら俺は、本当に未来の知識を有していることになる。
まだ起こっていない事件が俺のこれからを左右する。何とも歯がゆく、しかし打てるべき手をうった灌漑(かんがい)のある状態だった。
- 904 :パー速民がお送りします [sage] :2008/07/20(日) 00:58:54.57 ID:RZiCnbw0
Xデー。そう呼べばいいだろうか。
その日はここにきてしばらく、心身ともにこの地に馴染んだころの休日。
そして俺が預言日だった。
「……」
きゅぽん。
間の抜けた音がした。
と、思った次の瞬間、
ブシュウウウウウウウウウ!!!!!!!
「!!!!?」
すごい勢いの水音が耳元でする。
跳ね起きて隣を見れば水浸しのイド。
「……おはようございます」
「お、おはよう」
手に持ってるのはシャンパンのボトルか。
なるほど、本来これによってびしょびしょになるのは俺だったようだ。
実際は天井にある弾痕のようなものがコルクが垂直発射され、噴水よろしく自爆したことをうかがわせる。
おしおきをセルフで完了するとは、なかなか腕をあげたな。……って、そうじゃなくて。
「ほら、使っとけ」
こくこく。
俺からハンドタオルを受取り髪を拭う。
服はどうしようもないので、ちゃんと自分の部屋で着替えるように指示。
朝から本当に飽きさせないやつである。
「……失礼しました」
「本当にな。風邪ひくなよ」
こくこく。
と、その後ろ姿にもう一言付け加える。
「なぁ、今日さ、もしかしたら警報がなるかもしれないけど……絶対大丈夫だからな」
それを聞いて無言のイド。
だけど、それも数瞬。小さく頷き、
「……わかりました」
そう呟いて出ていく。
そうだ。今日は、その日なんだ。
- 905 :パー速民がお送りします [sage] :2008/07/20(日) 00:59:31.42 ID:RZiCnbw0
「……」
「何をソワソワしてるのよ」
「い、いや。してないぞ、ソワソワなんて」
「それを素で言ってるなら、鏡でも貸すけど?」
「男のくせに鏡なんか持ち歩いてるのかよ」
「あ、それ偏見だよ。ボクは男でも自分の身だしなみとか考えるのは大事だと思うよ」
「あー、はいはい、わかったわかった。……うぅ」
「何だよー、せっかく心配してるのにー。ねぇ、委員長さん?」
「ええ。まぁ本人がそういうんだからほうっておきましょう」
ええい、何とでもいえ。
俺としてはこれから先、いつ警報が鳴るかわかんなくてイライラしてるんだ。
もちろん鳴らないほうが、誰の身にも危険がないんだからいいとして、それでもどこか鳴ってほしいとも思ってしまう。
自分がうそつきになりたくない、という訳じゃないが、夢の中で会った誰かが居なかったと思いたくないから。
いや、もっと根本的に、俺は何かを求めているような……。
「ほら、早く食べないとさめちゃうよー」
「俺は猫舌なんだ、冷たいくらいがちょうどいい」
「何を屁理屈を言ってるんだか。……じゃあ、私はそろそろいくわね」
「おう。どこいくんだ?」
「訓練。そろそろあなたに一太刀くらいは浴びてもらいたいから」
そういえば、この前の近接戦闘訓練では圧倒したんだっけか。
なんだかんだで負けず嫌いなところは向こうでもこっちでも一緒か。
「んー、じゃあボクもサッカーでもやってこようかな」
「おうおう、がんばってこいよ、エース」
「えへへ、任せておいてよ」
こいつも相変わらずなところがあって安心だ。
どいつもこいつも、俺の知ってるまんまなところがあるのが嬉しい。
こういう何気ないところでそれを確認して、あっちとの繋がりを大事にしたい。
その為にも、俺が今後この世界の為になれるかもしれない、未来の情報。
それを確実に持っているとわかるように……鳴ってくれ!
- 906 :パー速民がお送りします [sage] :2008/07/20(日) 01:00:13.06 ID:RZiCnbw0
ヴィー! ヴィー!
「……!!」
「な、何!?」
「警報ね。それも第二種防衛基準態勢のもの。……いくわよ」
「うん!」
「おう!」
きた。その時が。
俺は思わず叫びたくなるのを抑え、二人のあとに続く。
いつもの教室に全員が集まると、メイド長は説明を始めてくれる。
「現在、○○地方へのBETAの侵攻が確認された。××島より出現したものだ」
「これが海岸沿いに展開していた帝国軍と戦闘を開始、一次防衛ラインが突破されるも付近に展開していた第12師団が合流」
「現在優勢に戦況を展開している。だが、BETAの侵攻のルートを割り出したところ、当基地へのモノだという判断が統計上下された」
一瞬、俺を除くみんなの間に緊張が走る。
「よって現在、当基地では第二種防衛基準体制に移行した。BETAの全滅が確認されるまでな」
「訓練生である貴様らはこれより自室にて待機、状況に対応できるようにせよ。以上」
「「「「「了解!」」」」」
- 907 :パー速民がお送りします [sage] :2008/07/20(日) 01:00:29.40 ID:RZiCnbw0
そして戻ってきた自室で、俺は声をあげかける。
こうして、起こることが起こった。
何がいいとか悪いとか、そういうのはまだ言えないが、それでもきっと死なないですんだ人間が増えたと思える。思いたい。
未来を変えたとか、そういうことじゃないけど、胸に湧く実感だけは本物だろう。
どこかまだ夢心地の達成感を胸に秘めて、妹の部屋に向かった。
「馬鹿妹!」
「そんな大きな声を出さなくても聞こえてますよ」
「なぁ、ありがとう! ありがとな!」
「別にお礼を言われることじゃありません。……それに」
「ん?」
「いえ、何でもありません。それより、これ、本当に見覚えはありませんか?」
「えっと、うぅん」
やはりあのときの方程式らしきもの。
どこかに引っかかるが、やはり思い出せない。
「すまん、役立たずで……」
「いえ、いいんです。……すみませんが出ていってもらえますか?」
「え? あ、おう」
溜息が出てきそうな、そんな表情の馬鹿妹を背に俺は部屋を出る。
何かうまくいってないのだろうか。
先ほどの熱のあがっていた胸の内に冷や水をあびせかけられた気分だった。
少し冷静になりながらも、俺は廊下をわたる。しかたない、さっさと地上に戻って……とそういえば。
この地下にある妹の部屋の近くに、確かイドの部屋があったんだっけ。
俺は頭の中に描いた地図を思い浮かべながらその場所へと移動した。
そして、そこで俺は出会うことになる。
イドと、過去と、そして……。
- 908 :パー速民がお送りします [sage] :2008/07/21(月) 09:12:56.53 ID:0CRQW6Uo
ふと思ったんだが、これってメイドが[らめぇぇっ!]で[禁則事項です]な目にあったってうわなにをするやめr
- 909 :パー速民がお送りします [sage] :2008/07/21(月) 09:55:44.31 ID:QkAsbkDO
>>908
四肢切断とか頭食われたりとか脳みそだけになったりを思い出すからやめて
-
意地悪なメイド ver2.5
- 30 :【意地悪なメイド オルタネイティヴ】 [sage] :2008/08/05(火) 02:14:47.19 ID:ULUObxc0
第十四話 「出逢い/サイカイ」
部屋の近く、というよりほぼ隣接した場所にそれはあった。
何故俺はここを訪れなかったのだろう。訪れたくなかったのだろう。
答えるように、そこにはイた。
「……」
ぺこり、と頭をさげるイド。
その後ろに。
「何、だ。これ」
淡い光。薄暗い室内を青白く照らす。
それは一つの柱。その中央から発光する。
いや、柱そのものの中心。
“人間の脳”らしきそれが部屋の中に光を湛えていた。
くい、と袖をひかれ俺の意識が戻ってくる。
「イ、ド」
「……」
ぺこり、と改めて頭を下げられる。
「……そうだな。よう、元気にしてたか?」
こくりと頷く小さな頭。
彼女のそんないつもどおりの様子に俺は、落ち着きを取り戻す。
しかし、
「何なんだよ、これ」
改めて眺めたそれは、ひどく生々しい。
不安をかきたてられるその情景に自然と表情はこわばる。
「怖い、ですか?」
「え? あ、いや……」
「怖いですか?」
「……」
怖い、か。そう聞かれるとなぜかそうは思わない。
怖いとか、そういうんじゃないんだ。これは、きっと。
「怖くは、ない。けど、何だか……な」
「……」
「すまん、自分でもよくわかんねぇや。それより、警報鳴ったけど大丈夫だったろ?」
「はい」
「俺の言ったとおりだったよな。もしかして俺、予知能力があるかもしれないわ」
俺の中に生まれた不安を否定するように、そんな話を切り出す。
- 31 :パー速民がお送りします [sage] :2008/08/05(火) 02:15:37.11 ID:ULUObxc0
「でも予知できるってんならこのよくわかんない世界とおさらばできるような、そんな未来でも見えないかねぇ」
「……」
「っと、すまん。訳わかんないこと言ったな」
「いえ。知っていますから」
「そうだな」
「……」
そういやそうだ。
俺の素性を知ってるのは、こいつと馬鹿妹だけ。
でも、それでもそうやって、俺が俺なのだと知ってくれる人がいるのは素直に嬉しい。
「はぁ、しっかしどうにもな。自分が自分じゃないような感じがして気持ち悪いな」
そのせいか、イドの前ではすらすらと本音が出てしまう。
「それに、何だか焦ってるんだ、俺。何をどうしたらいいのかわかんないのにさ」
「ただひたすらに足りてないんじゃないか、とか。これでいいのか、って」
「まるでテスト当日になって、今さらやばいんじゃないか、でももう手遅れだし、みたいな」
と、そこまで言って気づく。
「っと、ごめんな。一人でペラペラと。しかも最後のは訳わかんない例えだよな。ごめんごめん」
それでも無言な彼女の髪の毛に、くしゃりと手櫛を入れる。
柔らかいその感触を楽しみ、ふと、気付く。
「ん? イド、その腕章……」
デザインそのものは通常の軍服と何ら変わりない。
だがそこに記された単語が違う。
「オルタネイティブ、W?」
呟いた瞬間、
「がっ!? っづ……!!!!」
再び頭を襲う痛みの奔流。
ぎりぎりと締め付けられ、意識が俺の手を離れそうになる。
またか、と思う。いつもこうやって、大事なところだけがわからないまま。
悔しいし、歯がゆい。もどかしく、辛い。
それでも流されてゆく俺を、そっと引き止めてくれる手があった。
「イ、ド……!」
「……思い出してください。あなたは、そのためにここにいます」
カチリ、と何かが填まったような感覚。
いつものような曖昧な感覚ではない、曖昧模糊で、それでも意識できる空間。
そこに、また俺がいた。
- 32 :パー速民がお送りします [sage] :2008/08/05(火) 02:16:01.01 ID:ULUObxc0
「よお」
「……俺、か」
「そうだな。で、その様子から見るに……思い出せたか?」
「思い出す? いったい何のはな……」
戦場が見えた。
いくつもの屍を越えた。
とめどなく血が流れた。
硝煙が渦巻き、声が涸れても吠えた。
敵がいた。倒して、倒して、倒して。
そして残ったのは敗北だった。
「!?」
走馬灯のように、俺の中に流れ込む情報。
委員長の願。女さんの幸せ。
妹ちゃんの意地。友の未来。
たくさんの想いがあった。
でも、それを助けられなくて、救えなくて。
「……俺、は」
「ようやく俺のお役目も終わりだな。イドに感謝しろよ? 寝ぼけてるお前を無理矢理起こしてくれたんだからな」
「イドが?」
「たぶんな。少なくとも、“今までの俺”はあいつと深くかかわれなかったからな。それはお前の役目だ」
「……」
「頼むぞ、俺。今度こそ、この星を……頼む」
そして、小さな温もりが手の中にあった。
「……大丈夫ですか?」
「あ、ああ」
握ってくれるその掌を感じながら、俺は胸に手をやる。
そこに感じる鼓動が、二重にも三重にも感じた。
「そう、か。……俺は」
俺は、この世界を救いにきたんだ。
何度も味わった絶望の先から。
- 33 :パー速民がお送りします [sage] :2008/08/05(火) 02:16:39.03 ID:ULUObxc0
世界は、人類は負けた。
俺の知っている世界は三つある。
元々俺がいた世界。
温かで、馬鹿みたいに、幸せな世界。
『俺』が見てきた世界。
滅びゆく、終焉の場所。終わった世界。
そして、今ここだ。
緩やかに滅びようとする、しかしまだ希望があるはずの世界。
俺は確かにここにいた。
その滅びこそ思い出せないが、世界は壊れたのを見届けたはずだ。
人類はBETAに敗北する。
そのシナリオが鮮明に思い出される。
それもすべて『オルタネイティブW』が失敗に終わったからだ。
俺はその詳細こそ知らないが、馬鹿妹が今この瞬間も研究を続けているはずのそれ。
しかしそれは完成せず、人類はたった数十万の人間だけを逃し最後の抵抗を行った。
G弾による徹底的な破壊工作を持って、しかし相手を滅ぼすことはできなかったんだ。
「イド、ごめん。ちょっと馬鹿妹のとこ、いってくる」
「……」
俺の焦りと、この知らない間に身につけた技術と体力の正体。
それが何かわかった。だから次にすることは……あいつの狙いだ。
カシュ。
「あら? もう今日は下がってとお願いしたはずですが……」
「オルタネイティブWは完成できるのか? そのために俺が必要なのか!?」
「……!? ……すぐに扉を閉めてこちらへ」
「おい! 俺の話を……」
「話題が穏やかではありません。知っておられるならこれがいかに重要な機密かおわかりになりでしょう?」
「う……そりゃ、そうだ」
言われたとおり、さっさと奥のソファへと腰掛ける。
その正面に彼女は座ると、今までにないほどの冷たい視線で俺を見る。
- 34 :パー速民がお送りします [sage] :2008/08/05(火) 02:16:56.62 ID:ULUObxc0
「それで? オルタネイティブWについてどこまでご存じなのですか?」
「12月の末までに完成させなきゃ、人類が滅ぶ。わずか数十万人を逃がす船を今宇宙(そら)で造ってるってのも知ってる」
「……続けて」
「その為に、この前見せられた公式みたいなのも完成させなきゃいけない……んだと思う」
「ええ。それから?」
「そして俺がそのために必要だから、いろいろと面倒見てる。んだと、思う」
「……」
そこからはしばらくの沈黙が場を包む。
やがてひとつ溜息を吐くと、彼女は話始める。
「まず、最後の質問まではほぼ正解です」
「……最後は、違うのか?」
「それについても、半分は正解です。もう半分は違いますがね」
「半分?」
「あなたの戸籍データですよ。興味を持ったのは。あなた、本来ならば死んでるんですから」
「そう……だったな」
確か聞かされた記憶がある。
無論、“今”の俺は初耳だけど。
「もちろん最初に仰った、平和な世界というものに興味がなかったわけではありませんが、そちらの方が確実な動機でした」
「だって死人が現れたんですから。調べていこうとしたんですよ。敵のスパイだとしても泳がせないことにはしっぽがつかめませんし」
「なる、ほど」
「そして調べていく内に、あなたの肉体は十分に訓練を積んだそれだというのにあなたの知識が浅すぎる。そこが引っ掛かりました」
「それであの情報を?」
「ええ。何かのヒントになればと。無論、未来人というのは言葉の綾……いえ、私の願いから出た言葉でしたが」
「実際はあなたがどこかからの間諜ならばこれで何らかの動きがあってもおかしくないと思いましたし」
「む、ぅ」
「そしてある意味予想通り、あなたはアクションを起こしましたが……意外なものでしたしね」
「警報の件、か」
「ええ。ここを狙うにしては関係のない場所を指定してきましたから。正直かなり迷いました」
ですが、と一息つき席を立つ。
- 35 :パー速民がお送りします [sage] :2008/08/05(火) 02:17:13.03 ID:ULUObxc0
その背中から表情はうかがえない。
「目的が分からない以上、こちらからアクションを起こすこともできません。そこでいぶり出してみようと思い実行に踏み切りました」
「そして、結果としてBETAの襲撃が起こった」
「ええ。驚きました。本当に未来からあなたが来たのではないかと思いました」
「……実際そうなんだ」
「はい。今回の件で確証を得ました。無論、まだ疑いは晴れているわけではありませんが」
「……」
「こちらも立場が立場ですので。ご理解ください」
「ああ」
正直、こっちだってまだ自分のことなのにわかってるといえない。
だから彼女にすべてを信じてもらわなくてもかまわない。
今すべきことは、別にある。
「俺はこれから先、歴史を変える。そのために動く」
「……」
「その為に協力できることは何でもする。だからそっちも気が向いたら助けてくれ」
「……。利害が一致すれば、ですが」
「頼んだ。じゃあ、まず俺が知ってるこれから起こるだろうこと、思いだせる範囲で話す。まずは……」
こうして俺は過去と出会った。
そして再開する。本当の意味での戦いが。
それは遠い道のりなのかもしれない。でも、一つの大きな出来事は動かすことができた。
だから次だ。そう、次は……。
『総合戦闘技術試験』
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