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意地悪なメイド2
- 624 :【バーチャルボーイ】 [sage]
:2008/06/24(火) 09:37:51.66 ID:maDNAQAO
メ「不遇なハードですよね」
男「プレステとサターンがなけりゃ埋もれることはなかったろうに……」
メ「まさに谷間の世代!」
むにゅ
男「……」
メ「ふ、谷間に視線を感じますね」
男「……うるせ」
メ「つまり主様はバーチャルボーイ世代!」
男「勿論買ってないけどな」
メ「ちなみに私もやったことなかったりします」
男「形状見てると近未来的なデザインだよな」
メ「首疲れそうですけど」
男「あー、まぁ確かに」
メ「でも私の谷間は見てても疲れませんよ?」
男「何故張り合う」
メ「実はバーチャル!」
男「質量のある胸部バーチャルだと!?」
メ「M.E.P.EならぬO.P.P.A.Iですね」
男「じゃあ触って確かめさせてもら……う、嘘だから。そんな目で見るな!」
- 625 :【三時のおやつ】 [sage] :2008/06/24(火) 09:43:26.14 ID:maDNAQAO
男「文明堂のカステラ買ってきたぞ」
メ「おお?! あの幻の!」
男「いや、普通に買えるから」
メ「ですが残念……」
男「ん? お前カステラはダメだっけ?」
メ「いえ、大好きです」
男「じゃあなんで遠慮してんだよ」
メ「もう四時ですもの……」
男「んな律儀に守らいでも」
メ「ダメです! 三時にしか食べません!」
男「けど明日まで置いといて味が落ちても知らないぞ?」
メ「ああ、大丈夫です。朝の三時に食べますから」
男「……太るぞ?」
メ「栄養はだいた胸にいきますから」
男「世の中の大半の女性を敵に回す発言だな、おい」
- 626 :【寝顔は天使】 [sage] :2008/06/24(火) 14:26:23.10 ID:maDNAQAO
男「ったく……どいつもこいつも人の気も知らないでぐーすかと」
メ「……むにゃ」
男「こいつも悪態つかずに静かにしてりゃ、すごく可愛いし」
委員長「……」
男「いいんちょも小言とか言ってこなきゃ美人さんだし」
女「く〜……く〜……」
男「女さんもおどおどしたり急に変なこと言わなきゃ可愛いし」
妹嬢「……すぅすぅ」
男「こいつに至っては有り得ないくらい美人だしなぁ」
妹「か〜、く〜」
男「妹ちゃんもわがままさんじゃなきゃ無邪気なもんだし」
姉「おとちゃん……えへへぇ」
男「姉さんは……まぁ姉さんだけど」
男「みんなこうしてる分には天使みたいなもんだよなぁ……」
メ「どんな夢見てるんでしょうか」
委員長「すごく満足してる顔だけど」
妹「やらしいことだったりして!」
妹嬢「兄さんはそんな夢をみたりしません!!」
女「でも本当に幸せそうだね〜」
姉「んふふ、かぁいいよね〜」
つんつん
男「むにゃ……。……」
メ「今は私の名前を言いましたね」
委員長「私ね」
女「わ、私だったような……」
妹嬢「皆さん聴覚は正常ですか? 私でしたよ」
妹「私じゃなかったね。間違いないもん!」
姉「私だったと思うけど……」
全員「…………」
ゾクッ!
姉「あ、なんかおとちゃんが震えてる」
メ「きっと怖い夢を見てるんですね」
妹(こいつら……)
- 627 :【天誅】 [sage] :2008/06/24(火) 15:33:59.91 ID:maDNAQAO
男「忍アクションゲームを思い浮かべた」
メ「天誅をやり始めたころはだいたい屋根登って遊んで満足だった記憶しか!」
男「かなり自由度高かったよなぁ」
メ「1以降やってないですが。ところで主様の実家って忍者とか飼ってるんですか」
男「お前は俺ん家をなんだと思ってるんだ」
メ「お金持ち」
男「お前の中でお金持ちはみんな忍者を飼うのかよ」
メ「外国だとヒットマン?」
男「絶対何かの漫画とかアニメの見過ぎだ」
メ「ゲーム脳ですから」
男「なんつー便利な言葉だ。とりあえず分かってると思うが忍者なんていないぞ」
メ「ああ、メイド長さんがその代わりなんですね」
男「……なんだろ。否定出来ない」
- 628 :【マウントポジション】 [sage] :2008/06/24(火) 16:53:27.10 ID:maDNAQAO
男「……」
メ「……」
男(な、なんだこの状況)
メ「……」
男(確かきっかけはいつも通り些細なことで始まった言い合いが取っ組み合いになって)
男(なんかこう、気付いたら俺が上で……)
メ「……」
男(なんつぅかその時点で急にこいつが黙るから)
男「……」
メ「……」
男(なんだってんだ! つか、なんか……可愛い)
男(って違う! 何変な気分になってんだよ、俺!)
メ「……ん」
男「……?!」
男(何顔赤らめて目なんか閉じてんだよ! 早くいつもみたいに何か言えよ!)
男(じゃないと……じゃない、と)
男(あ、あれ。なんか体が勝手に……顔、ちかづいて……)
ガチャ。
妹嬢「兄さん、お久し……」
男「んのやろ!」
メ「こなくそ!」
妹嬢「何を二人で取っ組み合ってるんですか」
男「知るか! 危うく気の迷いで大変なことになってただけだ!」
メ「ええ、同意見ですね!」
妹嬢「はぁ。……いいから離れてください。二人ともいい歳なんですから」
男「当たり前だ! こんな奴とくっついてられるか!」
メ「当然ですね! ほら、早く離れてください!」
妹嬢「何があったか知りませんが……二人とも仲良しなのはよくわかりました」
二人「「どこが!」」
妹嬢「はいはい」
- 629 :本日、六月二十四日は全世界的に、UFOの日です [] :2008/06/24(火) 18:43:35.76 ID:MlNHvQAO
俺のゴリアテをどうしてくれる
- 630 :本日、六月二十四日は全世界的に、UFOの日です [sage] :2008/06/24(火) 19:23:33.45 ID:1EoiQkYo
好きな女の子にマウントをとられるのは永遠の男のロマンだよね
じゃ、お題行ってみよっか
【それは しょうゆ です】
【食べ物で遊ぶな】
【それが俺のジャスティス】
【メトロノーム】
【サドンデス】
【兄さん、壁に手をついてください】
- 631 :本日、六月二十四日は全世界的に、UFOの日です [sage] :2008/06/24(火) 19:36:44.31 ID:1EoiQkYo
悔いは無い!妹殿に掘られて死ぬのなら本望だ!
「ん」と「う」を取ったら友だ!
- 632 :本日、六月二十四日は全世界的に、UFOの日です [sage] :2008/06/24(火) 23:13:51.92 ID:maDNAQAO
掘られて死ぬってどれだけハードなプレイなんだww
もしくはそんな凶器持ちなのか……ゴクリ
友「あとボクはホモじゃないよ!!」
そして中の人は土曜日にオカマバーいきます。
店のお姉さん達といくから大丈夫と思うけど……
新世界を見ないで済むよう頑張ります
- 633 :【それは しょうゆ です】 [sage] :2008/06/24(火) 23:53:41.09 ID:maDNAQAO
メ「あるじさま」
男「な、なんだよ……ニコニコして」
メ「じゅーす かってきます」
男「そ、そうか」
メ「コーラ のみたいです」
男「……金、か?」
メ「ほしいです」
男「まぁ出不精なお前が行くってんだからたまにはいいか……ほい、千円な」
メ「ありがとうございます いってきます」
男「気をつけてな〜」
メ「ただいまかえりました」
男「おう、おか……」
メ「コーラ おいしいです」
男「どう見ても醤油だよ!」
メ「おいしいです」
男「だから飲むなって!?」
メ「げほっ?!」
男「ほら見ろ! 言わんこっちゃない!」
メ「ぐ……ここまでやったんだからAAの一つくらいにはなれるはず……!」
男「なんかよくわからんが無駄な努力な気がしてならないぞ」
- 634 :本日、六月二十四日は全世界的に、UFOの日です [sage] :2008/06/25(水) 00:01:09.15 ID:o1Fyv.SO
>>632
数日後、そこには後ろの口が開きっ放しになった中の人の姿が!
久しぶりにお題でも
【ラガーマン】
【プロテイン】
【加圧トレーニング】
結構前に話になったいじメイを楽しみにしてるんだが
中の人気が向いたら頼んます
- 635 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 00:09:19.28 ID:cZirNHco
>>634
おお 神の刃は 人の愛
祈りを込めて 貫け!
男「アッー!」
※どっちが貫いたのかは想像にお任せします
こうですか?分かりません
- 636 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 00:15:57.69 ID:6TrtG.AO
ははは、そんなバカなアッー!
いじメイはPCが復活しないと難しいかも……
携帯でも書けるけど、1ヶ月以上かかるだろうしその間お題の消化速度が落ちそう。
んでもまぁ……こんなの言い訳ですね。
よし! 待ってくれる人がいるなら俺は書く!
という訳でマヴラブオルタのオマージュ作品、いじメイオルタ、今日から早速書いてこうかと。
無論、大筋はあれに沿っていくけどうろ覚えなんでところどころは俺のオリジナル入ると思います。
知ってる人はニヤニヤと、知らない人は新鮮な気持ちで読んでもらえれば幸いです。
んではいってみましょう!
それは、あいとゆうきのおとぎばなし。
- 637 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 00:29:08.91 ID:cZirNHco
オリジナルか・・・
脳と脊髄が[ピーーー]だけは正直再現して欲しくない俺ガイルww
- 638 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 00:41:51.52 ID:L53Kz2AO
また書いてみたよ
−朝−
冥「あれから約1ヶ月経ちますが」
zzz……
冥「何故か雇われる羽目になってしまいました」
zzzz……
冥「……」
zzzzz……
がすっ
男「いてぇ!!」
冥「人が苦悩してる時にのうのうと爆睡してるからです」
男「…明らかに不条理な事でだよな?」
冥「滅相もない」
- 639 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 00:45:14.11 ID:cZirNHco
不条理メイドktkr
- 640 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 00:53:09.36 ID:L53Kz2AO
もしゃもしゃ
もしゃもしゃ
男「……」
冥「……」
もしゃもしゃ
もしゃもしゃ
男「……」
冥「……」
もしゃもしゃ
冥「…一つ聞いてもいいでしょうか」
男「…なんだ」
冥「メニューがもやし尽くしなのはn」
男「仕様だ」
冥「……」
男「……」
もしゃもしゃ
もしゃもしゃ
冥「せめて他にh」
男「先日てめえが食い荒らしたラーメンが最後だ」
冥「……」
男「……」
もしゃもしゃもしゃ
もしゃもしゃもしゃ
- 641 :【意地悪なメイド オルタネイティブ】 [sage] :2008/06/25(水) 01:02:05.11 ID:6TrtG.AO
第一話 「世壊」
目が覚める。部屋に満ちる静寂。
よし、今日は目覚ましに勝ったみたいだ。
手探りでスイッチを切って口うるさい姑ようなこいつを黙らせる。
個人的には寝覚めは悪くないが、問題はそこじゃない。
それ以上にこれから寝だすという常識を遙か彼方に置き去った同居人が口うるさくなるのでそれの対策だったりする。
「ふぁぁ……飯、飯っと」
確かまだ買い置きしてある食パンがあったことを思い出しながらキッチンへ。
途中、あいつの部屋の前を通るけど無音なあたりもう寝たんだろう。
本当にいい身分だ。昼飯をあえて作り忘れてやろうか。
そんな風に思いながら二人分の昼食を用意してしまう。……きっと習慣だ。
何故か自分に言い訳してしまいながら、さっさと支度を済ませる。
時間はまだたっぷりある。とはいえ、あいつの睡眠の邪魔してうるさくされるのも癪だ。
自分の分の弁当を引っ付かんで家を出た。今から行けばいいんちょあたりに会えるかもしれないし。
そんなことを考えながらドアを開け、朝日に目を細めつつ……
男「なっ……?!」
俺は絶句した。
- 642 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 01:11:31.33 ID:o1Fyv.SO
な、なんだか大変なことを言ってしまったのでは…
元ネタ知らんので、新鮮な気持ちで見るんだぜ
ほんと、感謝、感謝です
応援しか出来んが、頑張ってくれ!
- 643 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 01:13:05.09 ID:cZirNHco
さてと、俺はどっちにwwktkすればいいんだ?
- 644 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 01:13:43.19 ID:6TrtG.AO
荒廃。そんな単語が脳裏をよぎる。
この日本で、そんな事を思う日がくると思ってなかった。
いや、今でもこれが夢なんじゃないかとしか思えない。
瓦礫や砂塵、それらがひたすらに広がり見慣れた街並みは一切存在しない。
「おいおい……なんだってんだよ」
呆然とそんな事を呟きながらも、すぐに大切な事を思い出す。
「メイドっ!」
その名前を呼びながら振り返る。しかし……
「……嘘だろ」
そこにあるのは見慣れたアパートではなく、武骨な鋼鉄の骸。それがただ鎮座しているだけ。
「なんの冗談だよ……ドッキリだよな?」
今にもこの大掛かりな残骸の中から、見知った意地悪な笑顔がすっかり混乱するを迎えてくれるんじゃないかと思う。
だが、実際にはいくら待てども事態は変わらない。
「……くそ、冗談にしちゃやりすぎだろ」
それでも俺は何かを認めたくないのか、足が自然と動きだす。
向かう先なんか特に決めてない。
だが、少なくとも信じちゃいなかった。
こんな壊れた世界が実在することなんて。
思えば、これが俺の最初の逃げだった。
- 645 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 01:14:56.72 ID:6TrtG.AO
ちなみに俺は書きながらも不条理メイドさんにwktkしてる!
- 646 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 02:10:35.89 ID:6TrtG.AO
あいつが居ない。
壊れた世界。
そんな事態に俺は無意識に別の知り合いを探していた。
結果として彼女に出会えはしなかったが……
「ここはちゃんとあったか」
なんだか気が弛みそうになる。
彼女の影を追って進んだ先。
学園がそこにあった。
それだけで胸に安堵が広がる。
「そうだよな。ドッキリの幕引きはこのあたりでするべきだ」
言い聞かせるようにつぶやく。
そこが多少、俺の見知った施設よりも物々しく見えても、意識から追いやる。
認めたくない。俺はまだここへ来て……
「おい! そこのお前!」
「は、はひ?! って、俺っすか?」
「お前以外、誰がいるというんだ」
「あ〜……いや、なるほど。今回はそういうシチュなのか」
「……?」
「わかってんだよ。大方、妹のバカがやらかしてんだろ? こんな大掛かりなことまでして。いいから入れてくれよ」
そう、きっとこれは夢や冗談で済ませられると思ってたんだ。
「……怪しい奴め!」
「え、な、ちょ、ちょっとまって! あいた、いたたた!」
「うちの訓練士の服のようだが少し違うな」
「どこからかの間諜かもしれん。上に指示を仰ごう」
「ぐ、ぎぎ……」
すごい力で抑えつけられる。
いや、力そのものより技術が本物なんだろう。
身動き一つ取れなかった。
- 647 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 02:15:02.43 ID:6TrtG.AO
悔しくて涙が出そうになる。
何の抵抗も出来ないことがじゃない。
ただひたすらに、目を背けていた事実を痛みが直視させたことがだ。
「とりあえず尋問を行うそうだ」
「ならばB棟だな。ほら、行くぞ!」
「……」
ずるずると引きずらるようにして移動させられる。
そんな様子を向こうは好都合と思ったか、ひたすらに引っ張られる。
きっと諦めて抵抗をやめたと思われているのだろう。
……大正解だよ。
乾いた笑いがこみ上げてくる。
これは現実だ。
どうしょうないくらいに。
泣いてみても、
怒ってみても、
笑ってみても、
変わらない現実。
そう、この日を境に俺の世界は壊れたんだ。
- 648 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 02:16:16.37 ID:6TrtG.AO
という訳で一日一話くらいのペースでのんびりいきます。
いつになれば終わるか見当もつかないけど……
気長にお付き合いください。
無論、お題の消化もやってきますので
- 649 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 02:44:28.11 ID:cZirNHco
>>冥土の人
相変わらずの理不尽ぶりに全俺が吹いたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ラーメン食い尽くすとかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
>>主様の人
長編ktkr
続きが楽しみだ
オルタは面白いんだけど全年齢版が全年齢版じゃない・・・
普通に中高生には刺激が強すぎる
- 650 :パー速民がお送りします [] :2008/06/25(水) 08:07:55.11 ID:eZcYK.AO
邪神なの?冥土なの?
- 651 :【意地悪なメイド オルタネイティブ】 [sage] :2008/06/25(水) 12:31:49.88 ID:6TrtG.AO
第二話 「歪んだ鏡」
ダンッ!
「だからさっさと本当の事を話せ!」
何度目になるかわからない質問。
俺はちゃんと答えてるつもりだし、わからないところは素直にそう言ってる。
それだけでこんな風に怒鳴られてしまうと困ってしまう。
途中までは真剣に問答してたけど、だんだん答え方もおざなりになってしまう。
今俺が考えるのは何度も叩かれる机が可哀想ってことだ。
「だから名前は男。出身は日本の○○。高校生で……」
「そんな人物は存在しない! いい加減にせんと……」
いい加減にしてほしいのはこっちだ。俺が存在しない?
だったらここにいる俺はなんだよ。
俺の日常を話したときなんて、そんなものがあり得るかとすら言われたもんだ。
もういい、後は野となれ山となれ。
もはや暴力的な匂いを隠すことなくこちらを見据える相手に覚悟を決めた……その時だった。
「おい」
もう一人。確か校門のところにいた奴が入ってくる。
「どうした?」
「長官がお呼びだ。直接話がしたいと」
「なっ?!」
よくわからないがさっきまでの雰囲気を一瞬にして霧散させる目の前のおっさん。
どうやら予想外の事態らしい。
「……ちっ」
「ほら、行くぞ」
もう一人の方に立たされ、俺は部屋を出ることになった。
流されるまま、逆らうことなく。
- 652 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 12:39:41.50 ID:6TrtG.AO
「……本当にお前は何者なんだ」
「知らないっすよ」
二人で廊下……にしてはやたら作りが頑丈そうな場所を歩いてる最中、おっさんがもらす。
答えが欲しいのは俺の方だってのに。
「本来お前のような不審な相手を長官が呼ぶなどあり得んのだが」
「その長官ってどんな人なんすか?」
「ん……まぁ、会えば分かる。非常に若いが優秀な方だ」
「ふぅん」
まぁこんな屈強なおっさんがあっさり従うんだ。
きっと切れ者って感じの若い司令官のお兄さんが……
「……?!」
一瞬見えた窓の外。そこに見知った姿を見た気がした。
思わず窓に張り付き、グランドにその影を探す。
「おい! 何やってる!」
「待ってくれ! 違うんだ、見知った人間がいた気がして……」
「いいから来い! 自分の立場をわきまえろ!」
ぐい、と肩を掴まれ引き離される。
どんどん離れていく視界の先に、さっきの影はもう見えなかった。
「はっ、はっ……」
「うぅ、また抜かされちゃうよぉ」
「はっ、はっ……無駄な会話はペースを乱すわよ」
「だってぇ、って、ああ! あっさり抜かして置いてかないでぇ〜!」
「はっ、はっ……」
「……さっきの視線。一体……」
- 653 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 12:49:35.36 ID:6TrtG.AO
結局その後、窓の近くを通る度にグランドに視線を走らせるが見つけられない。
やはり見間違いだったのか。
暗澹たる気持ちを飲み下し、今は前を見据える。
豪奢とは言わないがほかとは一線を画する作りの扉。恐らくここに俺の命運を左右する人物がいる。
先の人影が見間違いなら、ここは俺の知る世界じゃない。
誰一人知り合いの居ない世界、自分だけを信じて進むしかない。
どんな相手だろうと、一歩も引くものか。
「長官、件の人物を連れて参りました」
「ご苦労様。あなたは下がっていいですよ」
(……え?)
鼓膜を震わす声。
そんなバカなと叫びたくなる。
「は、しかし僭越ながら……」
「私の言うこと、聞いてもらえないのかしら」
「……イエス・マム。ほら、入れ」
「あ、ああ……」
何重もの施錠が解かれているのだろう。
鍵の開く男のカルテットかクインテットなりを聞きながら、俺は呆然と歩を進める。
今さっき決意したばかりなのに。一人でも頑張ろうって。
なんだよ、やっぱりお前が全部裏でドッキリを指揮してたんだよな。
自然、頬が緩む。そして……
「ようこそ、というべきかしら」
予想通り、彼女が……俺の妹がそこにいた。
- 654 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 12:59:55.29 ID:6TrtG.AO
「やっぱりお前か」
「……やっぱり?」
「白をきるなよ、全部ドッキリなんだろ? ったく、大掛かりなことしすぎなんだよ」
「あの、何を仰っているのか分からないのですが」
「分からないって……バカ妹のくせにまだバレてないと思って……」
「……へぇ」
カチャリ、と。軽い音。
俺はそこで言葉を切ることを強制させられる。
軽そうな。本当に軽そうな凶器がそこにある。
きっと俺の命もあの音のように軽く奪えるだろう。
「まだ名乗っていないはずなんですがね。それに私をそう呼ぶ人物は限られます」
「余程優秀な諜報機関が後ろについておられるのかしら? どうしましょうか。これ一丁では少し不安ですね」
「お、おい。何の冗談……」
パンッ!
「……ぁ」
頬が熱い。触れて分かる。滲む血がそこにある。
「なるほど……今の動きを見る限り、これ一つで問題ありませんね」
「では今からあなたが発言を許されるのは質問に答える時のみ。それ以外の言葉は一切禁じます」
もし喋れば……。そんな事を確認するまでもない事が分かる。
「物分かりはよろしいようで結構。では質問を始めます」
にこり、と。
俺のよく知る笑顔が胸に刺さる。
ああ……やっぱりここは壊れてるんだ。
- 655 :パー速民がお送りします [sage] :2008/06/25(水) 13:20:27.07 ID:6TrtG.AO
質問は当たり障りのないものから、俺の個人情報へ。
やがて俺の日常にまで及びだす。
「って、感じでさ。おかしな話だろ? そのメイドの理不尽さと言ったら……」
「ええ、分かりました。それでは最後に質問にお答えください」
「ん」
「あなたは今の状況、どう思いますか?」
「……俺は異世界に飛ばされた。いや、平行世界にきたんだと思う」
「平行世界、ですか」
「ああ、向こうの世界の妹のお前の事ならなんでも知り合ってるような仲だ。うなじにあるほくろを気にしてる事だって知ってる」
「……そんなことまで」
「だからこそ、俺は平行世界にいると思うんだ。じゃなきゃお前が俺を知らないはずないからな」
「確かに。先の呼び方に加え、そんな些細な情報まであるんです。疑いようがありませんね」
男「そっか」
これで何とか立場自体は悪くならないはずだ。
なんたってこいつがいかに俺に懐いてたかも話したんだ。
悪いようには……
「では選択権を差し上げます」
「選択?」
「ここで虚偽の情報を流し続けた間諜として殺されるか」
「なっ?!」
銃口は未だにこちらに向いている。
いつでも言葉通りに俺なんて殺せるだろう。
「私の実験の協力者として生き長らえるか。さぁ、どうします?」
何が選択だ。俺が選べるのは一つしかないだろ。
「……後者だ」
「ふふ、ではこれからも利用させていただきますね」
「はぁ……お前は本当、そういう言い方しか出来ないのかよ」
歪んだ鏡のような、この世界を俺は歩き始めた。
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