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意地悪なメイド
- 658 :【岩盤浴】 [sage]
:2008/01/18(金) 13:59:40.71 ID:YPIRlIAO
パラ……
妹嬢「……っ、兄、さん?」
男「やっと……気付いたか、バカ妹」
妹嬢「ぅ……私達、肝試しの最中に、変な洞窟を見つけて……そう、中で急に天井が崩れて兄さんが覆い被さって……」
男「で、今に至る、と」
妹嬢「!! に、兄さん、まさか私をかばって……!」
男「ん。まぁ背中の上は岩だらけだな。しかもなんか地味に熱いし。岩盤浴かっての」
妹嬢「そ、そんな……!」
男「落ち着け。あんまり動いたり騒いだりすんな。今は止まってるけどこれ以上騒ぐとまた崩れるぞ」
妹嬢「な、ならばせめて辛いでしょうから体勢を……」
男「動かせねぇんだよ。言ったろ? 下手に動いたらヤバいって」
妹嬢「ですがそれでは!」
男「落〜ち〜着〜け、っての。お前、どっか痛いとこあるか?」
妹嬢「い、いえ……兄さんのおかげで全く」
男「ならいい。幸い、風は感じるから隙間が一切ない訳じゃないらしい。息の心配はいらないぞ」
妹嬢「……」
男「まぁそのうち異常に気付いて誰かがきてくれるだろ。どうせメイド長さんも来てんだろ?」
妹嬢「はい……」
男「だったら大丈夫だな。それまでは俺が絶対守ってやるからな? 兄貴なんだしさ」
妹嬢「兄さん……」
『おれはあにきだからな! おまえのこともまもってやる!』
妹嬢「くす……兄さんは兄さんですね」
男「あん? なんのはな……痛っ」
妹嬢「兄さん?!」
ぬるり
妹嬢「……こ、この感じ……まさか兄さん、出血を?!」
男「たいしたこと、ねぇよ。かすり傷だ」
妹嬢「ですが! ……っく、体が動けば……!」
男「だから動くなって。まぁどっちにせよ半分埋まってる俺らは動けるはずないか」
妹嬢「……っ」
- 659 :【続・岩盤浴】 [sage] :2008/01/18(金) 14:13:54.79 ID:YPIRlIAO
妹嬢(私一人ならば多少の無茶はききますが……兄さんが一緒では……!)
男「どうした? どっか痛むか?」
妹嬢「い、いえ」
男「そか……はぁ……っく」
妹嬢(バカ! 兄さんに気遣いなんてさせて……本当にバカな妹! ……私は、こんなにも……無力!)
男「……なぁ」
妹嬢「あ、は、はい」
男「昔、なんか隠れん坊か何かしてた時、こんな感じで二人でベッドの下、隠れたよな」
妹嬢「ぁ……はい。私がお稽古が嫌だとぐずって、兄さんが隠れん坊だって無理矢理」
男「ぬ、そんな不真面目なきっかけだっけ」
妹嬢「はい。兄さんとの思い出を一つだって間違えて覚えたりはしませんから」
男「ま、まぁそうだとして、あん時は結局二人でそのまま寝たんだよなぁ」
妹嬢「ふふ、メイド長さんに毛布をかけてもらって……その後、仲良く叱られましたっけ」
男「仲良くというより一方的に俺が怒られてたような……」
妹嬢「ふふ、それはそうですよ」
男「んまぁ俺のせいだからな」
妹嬢「ふふ……」
妹嬢(違いますよ。そのまま二人で怒られそうだったのに、兄さんが全部自分が悪いって言い出して……)
ぽた……ぽた……
妹嬢(……? 水滴……汗、ですか?)
妹嬢「兄さん、先程からずっと汗が止ま……」
じゅぅぅ……
妹嬢「……!?」
男「は、はは……なんでかなぁ。さっきまでは我慢できたけど、今やたら上が熱いわ」
妹嬢「あ、熱いなんてレベルじゃ!? この匂い、兄さんの背中が焼けてるとしか!」
男「だからってどうすることも出来ないだろ。自然の岩盤浴だと思って我慢だ」
妹嬢「しかし……!」
男「……あいつらを信じようぜ」
妹嬢「っ……は、い」
妹嬢(誰でも……誰でもいい、兄さんを……兄さんを助けて!!)
- 714 :【岩盤浴 メイドサイド】 [sage] :2008/01/25(金) 19:43:59.96 ID:CnYYPdo0
メ「ふふ、お姉さんと妹嬢さんと楽しんだ後はこの私とゴーストバスターズツアーですよ主様」
メ「さて、どんな仕掛けをしようかしら。んふふ〜」
メ「……にしても遅いなぁ。やる気あんのかね。全く」
メ「は! ま、まさか妹嬢ったらこの段階で勝負を決めにきたとか!」
メ「……ま、相手はあの恋愛感覚が麻痺してる主様だから大丈夫っしょ」
メ「だったら何かこう、特殊メイクとか準備しておいて、と……そんな技術ないけど!」
メ「……虚しい。おーい、早くきてよ主様ー、退屈だよー。このままじゃ私爆発でもしかね……」
ズガァァァァアアアン!!!!
メ「………!!!?」
メ「え、何今の……え、あれ、私爆発? いやいやいや。で、でもあの火柱って、明らかに……」
ザッ
メ「あ、あんたは確か妹嬢さんとこの……」
メイド長「緊急事態です。あなたに謝る義理はありませんが、あえて言わせてください。すみません、こちらの手落ちです」
メ「何の話をして……」
メイド長「賊にこの島の位置と、こちらのスケジュールがバレていたようです。……お嬢様の命が現在進行形で狙われています」
メ「じゃ、じゃあさっきのって……」
メイド長「……あなたがそれ以上知る必要はありません。とにかく、今宵のイベントは中止とさせていただきます」
メ「そんな!」
メイド長「あなたはここでじっとしていることです。無闇に動けばあなたにも危険が及びますよ」
メ「……!」
メイド長「それは坊ちゃんも望まぬところ……故にこの緊急時にこうして時間を割いています」
メ「……」
メイド長「いいですね、もうここは戦場です。……では、私はいきますので」
メ「ま、待てよ!」
メイド長「……何か?」
メ「……私もいく」
メイド長「何故?」
メ「……主様もそこにいるんでしょ、さっきの言い方だと」
メイド長「……」
メ「私がいくとしたら、主様がいるってことだから、心配させたくないなんていったんじゃないの」
メイド長「そこまでわかっているならば」
メ「いく。絶対いく。無理矢理でもついてってやる」
メイド長「……自分の身は自分で守ってくださいね」
メ「たりまえっすよ」
メイド長「……こちらです」
メ「ん!」
- 715 :パー速民がお送りします [] :2008/01/25(金) 20:11:36.69 ID:Zet/ncAO
戦場wwww
これはいい燃え展開
- 725 :【岩盤浴 続メイドサイド】 [sage] :2008/01/27(日) 21:07:25.17 ID:D7pCj6.0
メ「いくつか、はぁ……はぁ、質問、いいです、か」
メイド長「……かまいませんが。息が保つなら」
メ「っ……なら、賊ってのは何なの? はっ、はっ……っていうか、若干まだ信じられないんですけど」
メイド長「お嬢様がどういう方かご存知ならば分かると思いますが」
メ「ブラコンな、ただの女の子……でしょ、はぁ」
メイド長「……世に名だたる○○や××という企業の名前に心あたりは?」
メ「そりゃ、しって、ますよ。有名じゃ、ないっすか……」
メイド長「それらの取り締まり役をなさっているのが、お嬢様です」
メ「……は? え、じゃああの子がいつも言ってるのって……マジだったの?」
メイド長「あなたも坊ちゃんと同じ考えだったんですか。全く、どこから貴方の給金が出ているかわかっていないとは」
メ「……」
メイド長「ですから、お嬢様は味方や傘下の者も多い反面、敵も多いんですよ」
メ「だ、だからって」
メイド長「っ! 止まってください」
メ「わ、っと」
メイド長「……囲まれました」
メ「え?」
メイド長「伏せて!」
メ「わ!」
ヒュッ……! カカカ!
メ(ひ、ひぃぃ!! は、刃物刃物!! ここ日本でしょー! あ、今は違うのか……って、ンなこと考えてる場合じゃ!?)
メイド長「……じっとしていなさい」
メ「い、言われなくたってっ」
メイド長「……」
メ「……ごくり」
メイド長「……」
メ「……って、あれ? 終わり?」
メイド長「……ふぅ」
すくっ
メイド長「遅いですよ」
ざっ
メイドA「申し訳ありません」
メイド長「状況は?」
メイドB「ほぼ制圧が完了しています」
メイド長「お嬢様は?」
メイドC「それに関しては……」
メ(え、映画の撮影? な、何なのこの展開……!!)
- 729 :【岩盤浴 続々メイドサイド】 [sage] :2008/01/27(日) 23:22:49.55 ID:D7pCj6.0
メ「ここが現場っすか。って何あの瓦礫の山みたいの! しかも焦げてるし……」
メイドC「元は洞穴でした。それを重火器によって粉砕、お嬢様ごと、という事だったようです」
メ「じゃ、じゃあ主様はこの下に!?」
メイドB「現状、お二人の無事は確認することができましたが、それ以上については」
メ「何でそんなのわかるんすか! こんななってるのに!」
メイドA「それはあなたが……」
メイド長「やめなさい」
メイドA「……ですぎた真似を」
メ「え、な、何?」
メイド長「今は気にすることではありません、とにかくお二人は無事。しかし予断を許さない状況ということには変わらない、と」
メイドC「……はい。先ほどまでは火の手もあがっていました」
メ「……」
メイド長「くっ……」
メイドA「消火作業は終了しましたが、先ほどまでかなりの勢いで火が出ていましたので……」
メイド長「まずいですね、この下にいるとなると、今頃中はどれほどの温度に達しているか……」
メイドB「無理にでもこじ開けられないこともありませんが、中の状況が確認できない今、それを行なってよいものかどうか」
メイド長「く、こんな時に大お嬢様をおいてきたことが悔やまれます。私の一存では……」
パラ……
メ「おーい、主様ー」
メイド長「なっ! あなた、何を! 下手な刺激を与えて崩れでもしたら……!」
メ「無理矢理あけたいんすけど、いいっすか」
メイド長「そんな呼びかけが通じるはず……」
メ「……いいですって。思い切りやってくれだそうで」
メイド長「本当、ですね?」
メ「嘘だったら私、主様のメイドやめたっていいっすよ」
メイドA「……メイド長」
メイド長「ええ……あなたがそこまで言うならば、本当なのでしょう。では、無理矢理にでもこじ開けますので、そこをどいてください」
メ「いいっすけど、一個約束してください」
メイド長「?」
メ「……絶対主様、助けてくださいね」
メイド長「善処します」
- 730 :【続々・岩盤浴】 [sage] :2008/01/27(日) 23:32:19.21 ID:D7pCj6.0
男「っつ……」
妹嬢「う……」
男「だいじょ、ぶか。そっちも暑いだろ」
妹嬢「へいき、です。兄さんに比べれば、こんなの……」
男「……俺も平気だ」
妹嬢「嘘ばっかり」
男「お前も、な」
妹嬢「くす……」
男「はは……」
妹嬢「……もう、ここまでかもしれませんね」
男「何弱気になって……」
妹嬢「これが最後かもしれない、そう思ったら、どうしても言いたい事ができました」
男「わかった、それはでてから聞いてやる、だから……」
妹嬢「にいさん」
男「ん、む……」
妹嬢「私ね、ずっとずっと前から、兄さんの……」
パラ……
男「え? メイ、ド?」
妹嬢「え?」
男「……」
妹嬢「……あ、あの」
男「わかった!! 思いっきりやれ! 遠慮はなしだ!!!」
妹嬢「ひゃう! い、一体何を……」
男「妹。俺達助かるかもしれないぞ」
妹嬢「え……」
男「けどその前に少しやばいことになるかもしれんらしい。けど、大丈夫だ。俺が絶対守ってやる」
妹嬢「な、何をいって……」
男「……くる!」
ガバッ
妹嬢「!!」
ぎゅっ
ズガァァァアアアアン!!!!!
- 731 :【岩盤浴 終】 [sage] :2008/01/27(日) 23:44:14.35 ID:D7pCj6.0
姉「おとちゃぁぁあん! いもちゃぁぁあん!!」
がばっ
男「うぉっと、いたた……姉さん、落ち着いて」
妹嬢「そ、そうです、兄さんは今全身火傷で……」
姉「うあぁぁん! 心配したんだからぁぁぁあ! うわぁぁぁん!」
男「……そうだよな、ごめん。無事かえってきたから、さ」
妹嬢「泣かないで、ね?」
姉「ぐす……うん」
男「じゃ、姉さん。ただいま」
妹嬢「ただいま、姉さん」
姉「うん! おかえり!」
メ「一件落着ってとこですか」
男「だな」
メ「落着の割には全身包帯まみれっすね」
男「何か戻って病院いくまではこのままでいなきゃいけねーんだと。気休めだと思うけどなぁ」
メ(気休め、ね……でも、メイド長さんが)
メイド長『お嬢様が坊ちゃんに火傷のあとが一つでも残れば自分も同じところにつける、と仰るので……』
メイド長『現状できるだけの全ての処置は施してあります。また日本へ戻ってからも最新鋭の治療を受けていただきます』
メイド長『ですからあなたは何も心配いりません。……全く、本家とはほとんど無縁の相手だというのに』
メ(何て言うからにはきっと本当に最高の治療されてるんだろうなぁ……気付かぬのは本人ばかり、と)
男「それよりさ、メイド」
メ「はい?」
男「何か俺、中でやばくなってたときお前の声聞こえた気がしたんだけどさ」
メ「気のせいですよ、きっと」
男「……かな?」
メ「ええ、私はいち早く逃げてましたから」
男「そっか。まぁそうだよなぁ、外の音なんてほとんど聞こえなかったし、あん時は意識も朦朧としてたしな」
メ(おかげで私の泣き顔見られずにすんだから私も助かったってもんですよ)
妹嬢「あ、兄さん! こんなところに……もう、勝手に動き回らないでください、重傷患者さんなんですから!」
男「あー悪い悪い。あ、そだ、妹。お前さ、あん時何言おうとしてたの。何か助け出されるちょっと前」
妹嬢「え……あ、そ、それは、その……何でもないです! 気にしないでください!」
男「えー、気になるから教えろよー、なぁってばー!」
妹嬢「だ、ダメったらダメです! あ、ちょっと! 脇をそんな……あははは! だ、ダメですってばぁ!」
メ(仲良しさんめ。……羨ましくなんてないぞー。……しかしいくら主様が庇ってたとはいえ、妹嬢さん、何で無傷なんだろ……)
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