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意地悪なメイド4.5
919 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/10/12(水) 02:01:25.51 ID:Srk5GYM40
【命と委員長 前回までのあらすじ】

委員長との出会い、付いていく日々が過ぎて一年近く。
“本家”と呼ばれる人外魔境にて過ごすうち、命はいくつかの疑問を抱くようになる。
別人のはずの、しかし瓜二つにしか見えない委員長の妹。
謎に満ちた組織とその全容。そして委員長自身の持つ因縁。
あらゆる事柄を知りたいと、もっと近づきたいと思って行動した結果、彼は傷を負うことになる。
結果として今まで命に対して放任主義を貫き、一切の情報を与えなかったはずの委員長が初めて彼にチャンスを与える。
それは多くを知り、戻れなくなる道を選ぶもの。けれど同時に与えられたのは全てを捨てて日常へと戻るというもの。
命はその答えは最初から決まっていると豪語するも……。

そうして訪れた運命の日。そこで彼が目にするものとは。






「おはよう」

命が目を覚まし、最初に見たのは艶やかな着物姿の女性。
それは妖艶ながらも凛とした姿で、誰かすぐに分からず押し黙ってしまう。
やがて覚醒の度合いが進むにつれ、その正体を把握し、その名を呼ぶ。

「いいんちょ」

「ええ、私よ」

「……おはよう」

見慣れたはずのその顔を何故かその日は直視出来ず、ぶっきらぼうに朝の挨拶を交わす。

「朝食、届いてるわよ。食べるわよね」

「ああ」

少し前まで、自分に与えられていたのは残飯とすら形容できなかったモノ。
それが今では豪華な食事が与えられている。それは勝ち取ったもので、手に入れたもの。
そうするために、あの子を蹴落として、だ。

「……ずず」

だからといって、その感傷を引きずる意味はない。
すましと一緒に胃の中へと落とし、大きく息をつく。
うまい。そう、感じるはずの食事が、けれど空しく感じるのは何故だろう。
この人に付いて、無茶をし、駆けずり回っていた頃は質素だろうが飢えていようが満たされていた。
なのに。ここしばらくはどうしても空虚でしかない。
少し前に負った傷はもはや痕を残さないほどに治っていたが、その下にある疼きのほうがよっぽどに現実味を感じる。

「なぁ、いいんちょ。今日なんだよな」

「そうね。今日が貴方にとっての分水嶺。帰るべき場所へと案内する日になるはずの、ね」

「……。分水嶺なんだろ。どっちに転ぶか、あんたが決めるな」

「くす。自分で言い出したことだものね。貴方の言う通りよ」

鈴の音のような音を喉で鳴らし、彼女は笑う。
その姿がいつもの憎まれ役とはかけ離れた存在に思え、命は箸を止める。

「ちそうさん。うまかった」

「顔にはそう書いてないわよ」

「なら、そういうことなんだろ」


920 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/10/12(水) 02:01:55.41 ID:Srk5GYM40
会話が続かない。元々、互いにべらべらとクチを並べるタイプではない。
けれど、何故か今日という日の二人にある溝は明確で、どうにも埋めがたい。

「……。先延ばしにしてもいいわよ」

ふと告げられる、『今』への未練。

「いい。連れてってくれ。そして、俺にあんたの真実を教えてくれ」

それをきっぱりと跳ね除けられるほどには、彼の成長はあった。
嬉しく思うのか。寂しく思うのか。それとも別の感情があったのだろうか。
けれどそれらを表に出すことなく、彼女は立ち上がり襖に手をかける。

「いいわ。それじゃあ、行きましょう、命」

ゆったりと歩を進める彼女の後ろに連れ立ち、移動する。
その先に何があるのか。何が待ち構えるのか。

(何だっていい。俺は、あんたに付いていく。それは、あんたに隷属を誓った時に決めたことなんだ……。決めたことなんだよ)

強がりの想いは、彼のうちですら素直になれず。
契約という言葉を持って、自身を縛る。どこまでも不器用な、曲がった男の秘め事だった。


921 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/10/12(水) 02:02:53.87 ID:Srk5GYM40

「私達姉妹は、元々はそれなりにやんごとなき血筋の出だったの」

長く、暗い廊下を進む内、ぽつりと呟かれた言葉。

「母方が、そういう家系の人で、蝶よ花よと育てられたそうよ。私が物心付くころに母と呼ばれる人を紹介されたことがあるけれど……」

あからさまに他人を見るような態度を忘れない、と彼女は言った。

「あの人にとっては恋というものが初めてで、全てだったわ。だから私はその過程に出来た荷物でしかないの。ええ、それこそ誰にも必要とされることのない、ね」

元よりそのような血筋ではあったが、厳格に決められた相手との交配のみを強いていた訳ではない。
だが、そうであったとしても禁忌というものは存在する。たとえば、表の家柄と、裏の家柄の交わりだ。

「父は“本家”の人間。所謂、陰陽であったり仙道なんかに精通するこちら側の人間だった。元来、そんな存在は表に出てはいけないの。分かる?」

それは優れた力を見せること、それ自体が問題だという。
大多数の人間に“不公平感”を与えてはならないという不文律がこの世に存在するからだ。

「そんな特異性であり、優位性を持った存在が、高貴なる血筋にあったと分かればそれは畏怖の対象であり、同時に妬みの対象になるわ」

あくまで上に立つ人間とは、全ての人間の代表でなければならない。
それは特別であることが許されぬ立場。敬われるのは、血筋であって力であってはならないのだ。

「……だから、私は生まれてしばらく。母方の人間のわずかな抵抗が続く間だけ、雅な生活をおくっていたわ。けれど、大多数の人間がそれを許すわけもない」

結局、彼女とその母は還俗を命ぜられ、縁を切られた。
父は押し付けられたその位置を全うしただけだというのに、けれど得られたのは罪人の烙印。
生活能力どころか、全てを他者に預けて生きた母がうまく生きられるはずもなく、幼くしてほとんどを自身の手で行わなければならなかったのが彼女の真の意味での原初だ。

「ただ、情をかけてくれた人もいたわ。侍従長さん、忘れもしない……あの人だけは味方だった」

だから、不幸に陥ったのだけれどね。
そう呟く委員長の顔は、命からは見えない。
一度区切られたその話は、ここから先がひとつの分け目であることを告げている。
まだまだ続く暗い廊下は、この話と同じで行き先はまだ見えない。

「大丈夫だ。続けてくれ」

漠然と胸のうちに抱く不安に抗うように、命は先を促す。
こんなところで止まる気はない。
彼女と、もっと、ずっと、歩く。そう決意を新たにしながら。


922 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage] 投稿日:2011/10/12(水) 02:28:50.00 ID:qEvYayjAO
やったねたえちゃん! お題がふえるよ!

ありがとうございます。中の人です。
今夜は導入みたいなもんなのでちょっと短いですがご容赦をば。
あと自分以外の方が一人でもおられたら頑張れますので!
逆に自分以外の書き込みがひと月くらいなかったらその時は大人しくたたみますので、はいww

てな訳でいただいたお題をありがたく考えつつ……




男「後半秋関係なくないか?!」

女「あぅ」

会長「楽しみですね」



今夜はこれにて!


923 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/10/12(水) 07:43:12.34 ID:wUm9von/o
>>918
俺もいるぜ

いつのまにか900行ってたのかww


924 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/10/13(木) 00:42:39.28 ID:RBBDoOGno
まとめながらチェックしたら、オルタ話数重複ガ多くて多分次回は44か45話
31話がいっぱいwwww


925 名前:NIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage] 投稿日:2011/10/13(木) 01:53:07.37 ID:AwniwIwAO
一部は前後編にする予定で同話にしてたりしましたが途中からカウントがちょーいい加減になってたのは事実だったりします。
の、脳内変換でよろしくお願いします……

てな訳でおこんばんわ。中の人です。
見直しなんてしない人生! チェーンのエリは振り向かないぜ! ←BBBRばっかやってるフラグ


さておきもうすぐ1000ですね。
さすがに半年以上かけてたおかげでいっちゃいそうですね。
逆に言えば半年以上かけて1000いかないペースということで……ごくり。

しかし気付けばvipでスレがたってから早……何年だ。
え、初代が2007年の11月くらいだから……もう4年か?!

ぐ、同じ年月やってる人なら二桁スレくらい行ってそうだぞこれ。
募る謎の危機感! いや謎じゃないけど。

とにもかくにもこんなペースで続けようと思います(が一応ペースアップも視野に入れつつ)ので今後ともよしなに。



なんか事あるごとにこんな書き込みしてる気がする!
主にペースアップ的な意味d


926 名前:【読書の秋】 [sage] 投稿日:2011/10/13(木) 02:00:16.88 ID:AwniwIwAO
メ「主様。読書気張りますんで金ください。諭吉を二、三人くらい」

男「お前は何の専門書やらを買いあさるつもりなんだ」

メ「気にしてたデアゴスティーニのシリーズを大人買いしようかなと」

男「完全におまけ狙いだろお前!」

メ「ラノベ買いあさると言い出さないだけ成長したと思って!」

男「実用性で言えば、確かにそうだな」

メ「余った金で表紙買いするくらいで基本は買いません」

男「金が支給される前提のとこ悪いが出さないぞ」

メ「鬼! 悪魔! ひとでなし!」

男「何とでも言いやがれ。出さないもんは出さないぞ」

メ「女装癖! 下着フェチ! 下半身節操なし!!」

男「ごはぁ?! ……ぐ、わ、わかった。わかったからこれ以上は」

メ「さぁ、ブックオフにいきましょう。中古のゲームを買いあさりに」

男「もはや趣旨が変わっとる!?」


927 名前:【スポーツの秋】 [sage] 投稿日:2011/10/13(木) 02:11:43.88 ID:AwniwIwAO
メ「主様のことだから運動はベッドの上しか気張らないとか言い出しそうですね」

男「いつからそんなキャラ付けになったんだ俺は」




メ「主様、主様。ジョギングしませう」

男「お前の口から物珍しくまともな提案が出たな。構わないけどいつ行くよ」

メ「今からで」

男「夜中の今からか?!」

メ「夜中だからいいんじゃないっすか」

男「まぁ、人通りが少ないし道を選べば確かに」

メ「我々のメイド服姿を御近所様に見られずに出来ますからね」

男「待て。我々って何だ。メイド服でって何だ」

メ「レッツ・ジョギング!」

男「全くごまかしきれてないからな!?」




メ「むー。結局ジャージとかつまんない」

男「文句垂れるな。せっかく運動すんだしきちんと準備はしないと」

メ「へいへーい」

男「ったく。ほら柔軟やるから座れ。ほい、押すぞー。ってかた?!」

メ「ぐぐぐ、これ以上無理っす」

男「嘘だろおい。お婆ちゃんレベルじゃねぇか」

メ「失礼な。華の十代前半をつかまえて。……犯罪じゃん!」

男「いい空気吸ってんのは分かったから黙ってなさい。ま、ゆっくりほぐすか」グイグイ

メ「主様、あたってますよ」

男「あてるもんがねぇよ」

メ「下半身のが」

男「あててねぇよ!」

メ「視線がバチバチ胸に」

男「……なんで巨乳ジャージってエロいんだろうね」

メ「造形が強調されるからかと。このスゲベ主様」

男「言い返せん……!!」





男「で、結局走ってすぐこれか」

メ「はー楽チン楽チン」

男「ったく、おぶる側の気持ちになれよ」

メ「だってこうしたかったんだから仕方ないっしょ」

男「へ?」

メ「なんでもないっすよー」

結局そのあと数キロの道のりを二人なりに楽しんだとかトラブったとか。


928 名前:【食欲の秋】 [sage] 投稿日:2011/10/13(木) 02:21:03.04 ID:AwniwIwAO
姉「じゅる……」

妹嬢「姉さん、はしたないですよ」

姉「だって目の前にご馳走があるんだもん!」

妹嬢「ふふ、最高級の素材を仕入れ最高の技術で調理し、最適な器に盛り付けただけです」

姉「それが一番いいよね〜。いもちゃんはその辺心配ないから安心だよっ」

妹嬢「お褒めいただきありがとうございます。ではいただきましょうか」

姉「わーい! それじゃ、いただきまーす!」

男『ふむぐ!? ふむー!!』 ← 器





メ「という夢を」

男「夢で良かった……メンツ的に皿まで食らう人がいるだけに」

メ「ちなみに主様は鶏肉っぽい味だったとか」

男「あんまり想像したくない台詞を出すなよ!?」

メ「そう言われても中から主張される以上発散しないとなかなかしんどいので」

男「……無理強いてんな、悪い」

メ「そういう台詞はいいんでうまいもん食べにいきましょ。栗とか粟とか」

男「字面にして分かりづらいの並べやがって。というか何故そのチョイスよ」

メ「主様に松茸とか頼んでもせいぜいメイドinチャイナが限界だと思いまして。主人の顔を立ててみました」

男「思いっきり泥ぬりやがって。わかったよ! 本物の松茸料理ってのを食わせにいってやらぁ!」

メ「いや、それならマックの新作で適当に済ませて余った額でゲームを」

男「お前は本当に風情とか楽しもうとしないのな!?」


929 名前:NIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2011/10/13(木) 08:16:09.96 ID:vLHYRzk7o
変な意味の松茸じゃなくて良かった


930 名前:NIPPERがお送りします(関西地方) [sage;saga] 投稿日:2011/10/14(金) 02:23:22.06 ID:PoVrQGe80
男「変な意味の松茸ってなんだ」

メ「主様には関係ない話ですね。……このシメジ野郎め」

男「し、しめじは言いすぎじゃないかな」

メ「実際に見たことある人間が言うんだから間違いない。このシメジめ」

男「ごふっ。……ど、どてっ腹に散弾銃ぶちかましてきやがったな」

メ「自分が水鉄砲(制限年齢6歳以上)しか持ってないからって私にそんな豪勢な銃を持たすとは」

男「もうちょっと制限年齢高いよ! せめて12歳以上はだな!」

メ「えらい低いな、自身での尺度」



主様は背伸びしない人なのでした。
今夜は委員長の過去つづき!



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