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意地悪なメイド3
848 名前:パー速民がお送りします [sage;saga] 投稿日:2010/07/13(火) 00:05:18.23 ID:v8JR0lw0
「……。ふぁ」

目が覚めると高級感溢れるシーツ。
隣を見れば乱れたベッド。

「あー、そうか」

昨日、寝たのか。女と。
いつも通りのそんな寝起きの考え。耳を澄ませばシャワー音。

「いいんちょ、か」

久々に極上だと思えた。
けど。何というか。

「うへ。腰、これ抜けてるのか」

初体験すぎて戸惑う。
巧い、というか。若さでぶつかるくらいしか対抗できない。
快楽。その言葉にただ流されるような時間。
それなりに経験は豊富なつもりだったものの、一切通用しなかった。
なんか、悔しい。

「あら、起きたの?」

惜しげもなく裸体を晒しながらこちらに歩いてくる。
見事なプロポーションに、生理現象とは違う、明らかな欲情をしてしまう。

「素直ね」

見透かされる恥ずかしさ。けれどそれすらも納得するほどの経験の差。

「する?」

ああ。けどそれ以上に。
素直な自分が恨めしい。悔しいほどに。



数時間後。
相手の年齢を知って大きく後悔することになるが、それはまた別の話。


849 名前:パー速民がお送りします [sage;saga] 投稿日:2010/07/13(火) 00:22:10.10 ID:v8JR0lw0
命「よんじゅう!!?」
委員長「そうだけど? 何か問題でもあったのかしら」
命「……親父やお袋と同い年くらいじゃねぇかよ」
委員長「そうなの? それで、それが何が問題?」
命「いや、別に問題ってわけじゃねぇけど……」
委員長「いいじゃない。親を抱いたわけでもないんだから」
命「……」
委員長「あら? 近親はよくないわよ。……まぁ遊びでならいいかもしれないけど」
命「ああああああ、もう!!」
委員長「へぇ。あなた、割と日常に飽きてるのかしら」
命「日常? ……そりゃ、まぁ」
委員長「そう。そうなのね。……だったら、私と一緒に来てみる?」
命「一緒に、何するんだよ」
委員長「そうね。仕事、かしら」
命「……。あー」
委員長「退屈はさせないわよ?」
命「ううう」
委員長「刺激がほしいならいくらでもあげるわよ。少なくとも日常が恋しくなるくらいには」
命「……俺は既に自分の齢の倍以上の女を抱いたって時点で刺激がヤバすぎてどうにかなりそうだ。20代後半だと思ったのに」
委員長「ありがと。けど、正真正銘、あなたの父親くらいの年齢だから」
命「あああああ、マジかよおおおおおお!」


委員長「それで。答えはどうするのかしら」
命「行くよ。ああ、行くさ! その代わりだな」
委員長「何?」
命「その、まぁ。……もう一回、だな」
委員長「来なさいな。好きなだけ」


851 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/13(火) 00:51:48.43 ID:sYpI4oAO
色香にほだされて。
気がつけば日本の中のどこだここ。
先週までは高級ホテルでドブ生活が一転、いきなりのサバイバル生活の開始だった。

「どこまで、いくんだ、よ」

「バテたの? 若いのに早いわね。昼も夜も」

「若いから、早いんだよ、と」

皮肉に自嘲で返す。
同じかそれ以上に向こうの方が重たい荷物のはずなのに。
数時間、山歩きを続けた俺は既に限界が近かった。

「先週、みたく、ホテルに、泊まれる、なら! ……はぁ、はぁ。ヘリかなんか、チャーター、しろよ」

「ダメよ。あんな土地に空からなんて危ないわ」

「……さいで」

よく分からないが要は着陸出来ないんだろう。
とはいえこの悪路をひたすら歩くのはもう嫌だ。
この女の前でこれ以上弱みを見せたくなかったが、ついにギブ宣言をしかけた時、

「ついたわよ。今日、泊まる場所」

「マジか!?」

と、最後の体力を振り絞って見た先に、

「……ゴミ?」

そうとしか言えない微妙な固まりが。

「山小屋ね。使われていないけれど」

「嘘だよな?」

「ここから先を考えると最後のまともな人工物だけど。それが嫌なら進む?」

「喜んでこちらで寝かせてもらうよ。ちくしょう!」

さっさと進んでいく委員長の後ろに続く。ふと、視線を感じ振り返るが。

「……気のせい、か?」

今は疲れを癒やしたい俺は責任を気のせいに押し付けてさっさとゴミ小屋に進むのだった。



ガサッ


935 名前:【出オチ】 [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 00:04:13.42 ID:oFejdkAO
メ「ぶひゃひゃひゃ! ひぃー、ひぃー」
男「笑いすぎだ。俺はいいと思うぞ。夏だしな」
命「……」
メ「だ、だからって、ぷぷ、ぶひゃひゃひゃ!」
命「くそっ」
男「まぁまぁ。何があったか知らないけどさ。お前なりに何かあったんだよな」
メ「あひゃひゃひゃひゃ!」
男「お前は少し黙ってろ。……なんか覚悟でも決めたか?」
命「……知らねぇ」
男「そっか。まぁいいさ。急に消えて帰ってきたと思ったらまさか……」


ガチャ


冥「たらいまんとひひ〜……って、うあ! ぼーずだ!」
メ「丸坊主! 丸坊主! だひゃひゃひゃ!」
命「……〜〜っ」
男「はぁ、うちの女衆は……で、またでかけんのか」
命「そうだよ! ああもう!」
男「金は要るのか」
命「要る。十万」
男「それで足りるか」
命「後は……何とかする」
メ「法事とかで? ぶ、ぷぷふ」
冥「ぼーず! ぼーず!」
男「わかった。すぐ用意する……からまぁ、勝手に家出した罰として笑われとけ」
メ「いひゃひゃひゃ、いや、さすが我が子! 帰ってくるなり出オチとは! あひゃひゃひゃ」
冥「おぼーさーん!」
命「……ちっ」


936 名前:【必殺】 [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 00:10:46.04 ID:oFejdkAO
命「……嘘」
委員長「嘘なんて何もついてないわよ」
命「なんだよあんた……女のくせに何ハイキックなんて綺麗に決めてんだよ」
委員長「女かどうかは関係ないでしょ」
命「そりゃ、そうだけどよ。……明らかに自分の背より高いとこに決めてなかったか」
委員長「そこじゃなきゃ打撃する意味がないもの」
命「いや、そういうこっちゃなくてだな。しかしこんな必殺技持ってたとは」
委員長「何言ってるの? こんなの必殺でもなんでもないわよ」
命「通常技かよ! 小パンかよ!」
委員長「……? あのね、必殺っていうのは」

ザク……ブシュ!

委員長「こうして動きを征した相手の息の根をそれに適した兵装で攻撃して止める行動を取って初めて言えるものよ」
命「……ぁ、ぅ」
委員長「とはいえ、この程度ではこいつら相手には必殺足り得ないけれどね」


964 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 20:21:06.67 ID:1IrpbwAO
委員長と命シリーズ

【前回までのあらすじ】

偶然知り合った委員長と名乗る女性に付いていくことにした命。
初めの数日はホテルでドブ生活だったものの急に連れ出されることに。
気がつけば国内かと疑うような森の中を行くことに。
都会っ子が一日目にしてへばった頃、ゴミ小屋に泊まることになった訳で……





(むぅ……やっぱり何もない。入る時に感じた視線は気のせいだったかな)

「寝ないの?」

「腹減ってそれどころじゃねぇよ。なんかないか」

「無くは無いわよ。量はそんなに用意してないけれど」

言って渡されたのは缶詰め。中身はコンビーフか。

「……まさかこれだけじゃないよな?」

「クラッカーならあるわよ」

言って放り投げられるのを慌ててキャッチ。
この様子では他は当然ないんだろう。
仕方なくそれらを開封して安い味を堪能する。
ここまでの疲労もあってか意外とうまく感じるが、なんとなく口の中の水分がヤバい。
ただそれほど用意していない水を簡単に消費も出来ず、舐めるようにして水分を補給する。
ああくそ……ひもじいな、おい。

「そういや、いいんちょは食わないのか」

「要らないわね。仕事中は食べても胃が受け付けないし、何か入ってると有事の際に不利だから」

「さいで」

なんとなく深く突っ込んだら負けな気がする。というか知らない方が絶対良さそうだし。
それよりもっと建設的な話をしよう。具体的にはいつ帰れるかとか。

「じゃあ今回仕事ってのはどれくらいかかるんだ?」

「さぁ? 早ければ明日かもしれないし、遅ければ半年かもしれないわね」

……は? 半年!?


965 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 20:35:03.75 ID:1IrpbwAO
「冗談じゃねぇぞ、こんな生活をそんなになんて! 第一食料とか着替えとかどうすんだよ!」

「食料なんてそこら中にあるでしょう。着替えなんて不要な事もする気はないわ」

「まさか……」

持たされたバックパックを確認すれば勿論衣類なんて皆無。
唯一用意されたロープやら何やらの中にタオルが見えるが……

「替えはないわよ。大事に使いなさい」

しばらく何か文句を言うつもりで口を開けては何も浮かばず閉じることの繰り返し。
やがては観念して、

「……完全に付いてく相手を間違えた」

うなだれるしかなかった。

「そうね。私もあなたの事は本当なら荷物でしかないわ」

「くそ、はっきり言いやがって」

「でもね。私はあなたを連れていきたかったの。これは私のわがまま」

つまり、

「あなたに対しての借りみたいなもの。だから代価として……」

しゅるり、と衣擦れの音。

「いつでもあなたには躰を開いてあげる」

妖艶に微笑む姿に体の芯が暑くなるのがわかる。

「要は体の言い空気人形扱いな訳だ。お互いさ」

「そうね。理解が早い子は好きよ」

嫌みに対してなんら動じない。逆によりその花に引き寄せられる感覚。
僅かに香る麝香に魅せられ、俺は眠るまでに今日と明日の体力をすべて使い切るハメになるのだった。


969 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/27(火) 00:27:44.23 ID:bCtb46AO
あれから4日。
日に日にサバイバル味が増していき、初日のように色香に雄の本能が反応しなくなった頃、事態は少し動いた。

「止まねぇな」

雨。決して土砂降りという訳じゃない。
けどあたりに光源もなく、鬱蒼とした森の中では動きようがない。
ちょうどいい窪みを見つけ、休んではいるがいつまでこうすればいいのか。
更に言えばここで待て、と言ったサバイバルの先達が未だ帰ってこないせいで俺はとにかく暇を持て余していた。


「今何時くらいか……」

俺が持っていた腕時計は既に壊れていたし、昼頃だろうとは予想がつけば十分だ。
仮に時間がわかったところでいつまでという区切りがない以上、この退屈が紛れる訳でもない。

「……はぁ」

何度目かになるため息をつきながら森を見やる。
なんら変わらないままのその姿にまるで時間が止まっているかのような錯覚を……

ガサッ

「……!」

草の擦れる音。
いいんちょが帰ってきたのか、と思い軽く腰を浮かす。
だが、一向に姿が現れる様子はない。

「動物か何かか?」

再び座り込み、そう結論付ける。
こちらの気配に気付いて遠ざかったのだろう。きっと草食か何かだ。
と、待てよ。つまり肉食の獣なんかと鉢合わえば……

「ま、まさか、な」

嫌な考えを頭の隅に押しやり無理矢理笑う。……笑えるか、ちくしょう。


970 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/27(火) 00:36:39.60 ID:bCtb46AO
しかしふと思うことがある。これだけの自然が残る地で、今まで動物を見ただろうか。
そう考えだせば違和感はすぐに湧き出す。……今まで一匹だって見ていやしない。
それも生息している気配すらなく、小鳥一羽すら鳴きやしない。
何か先までとは違う嫌な感じを覚え、改めて音がした草場に目をやる。

「……何か、いるのか」

ガサッ

「……!」

やはり、居る。
何かはわからない。けれど確実に、何かが。

普段ならば君子危うきに近寄らず、がモットーだがこの時は好奇心が疼いた。
先程までの退屈と、音の大きさが対したことのないものだったこと。
それらが勝手な安全と興味を生み出し、気付けば雨具を羽織り俺は音の方へと向かっていた。




「何かいるのかー?」

見つけたい。だが大声をだしたくない。
矛盾するその行動はどこか恐れを忘れきってはいないからか。
適当に草を踏み分け、固めながら(やり方はいいんちょのを真似つつ)少しずつ進んでいく。
だが十分もした頃には好奇心もナリを潜め段々と危険を思う方に心が傾く。

「やっぱり勘違い、か」

誰に言う訳でもなく見つけていないことをアピールしながら元きた道を引き返そうとする。
その時、視界の端に何かを捉える。

「え……?」

それはこの場所に有り得ないであろう姿。

「女、の子……?」

その後ろ姿。


971 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/27(火) 22:23:12.79 ID:r1fjVqgo
命はいいんちょからサバイバルスキル教えられてないのか・・・


983 名前:パー速民がお送りします [sage;saga] 投稿日:2010/07/27(火) 22:38:04.17 ID:1OZzGEg0
はい、命は何も教えられてません。
じゃあ何でこんな素人連れてきたの? といわれると……

委員長「性欲解消のためよ」
命「……だそうで」

本当にそうなのかどうかは今後にご期待くださいませw

さて、もうすぐスレが埋まりそうなのでアンケート。
テンプレはいつものを使いつつ、今回の反省を生かして出来るだけコンパクトにまとめる予定。
なのですが、問題はタイトル。
久々に『新ジャンル』を冠するかどうかを迷ってまして。ええ、はい。
……2年もやって新もくそもないと思いますが、でもやっぱり新たな書き手の人が着てくれたらなぁと思うので、はいw
そこらへんの意見を伺いつつ、次スレに向かいたいと思います。そんな感じでw


987 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/29(木) 00:04:04.77 ID:fzs7VEAO
「おい! 待って、待ってくれ!」

森の中。濡れた足場は最悪で、靴の中は数歩でぐしゅぐしゅと嫌な感触を返す。
いいんちょは自分だけやたら年季の入ったブーツっぽいの履いてたっけか。
ずるいとか思う以前に俺にも用意させろよ。なんて考えながら。
微かに司会の端に捉え続ける人の姿を追ってよろけながら、転げながら先に進む。
体のラインと仕草で勝手に女の子だと決めつけて追ってるがこれがただの野郎だったら……。

「はぁ、ぐ……くっそ!」

途端に足から力が抜けかけるがそこは思い直して踏ん張りをきかせる。
こと、女に関しては自信を持とう。見間違いではない。絶対だ。
よくわからない理論から結論にいたり、なりふり構わず後を追う。
バクバクとオーケストラな心臓ともはや役目を果たしていない雨具が煩わしい。

「くっ、そ……! おい、君! 俺は怪しいもん……じゃないとは言い切れないけど、だからってそう邪険にしなくてもだな!」

いかん。頭が回ってない。湯だってはいるけど。
何だかやってることが先日つるし上げたストーカー野郎と同じような気がしてどんどんやる気メーターが下がってく。
というかなんで俺はこんなに必死に追いかけてんだろう。
色々と考えた末に至った結論は諦めの一言だったが。

ガサッ!

いきなり司会が開けた先、轟々と濁流が押し寄せる川と……

「……!」

フードらしきものを被った少女がいた。


988 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/29(木) 00:15:30.38 ID:fzs7VEAO
「お、あ。えぇと」

相対してやはり目的が無かったことに気付く。追ってきたはいいがどうしたいかなんて一切考えてなかった。
ただ、雨具にも見える服装はフードが邪魔で顔を隠す。けれど体のラインは女の子のそれだ。

(む……ちっこいけどミッチリか。あー、疲れマラも相まってヤバいな)

状況を鑑みない自身の体の正直さに呆れつつ。
この状況で唯一目標が出来たので実行に移す。

「あの、さ。君、この辺の人かな? 俺、命って言うんだ」

とにもかくにも相手が女の子ならやることは一つ。ナンパだ。

数mの距離を置いて二人は対峙する。かたやどうでも良い話題を持ちかけ、かたや警戒してか堅い空気。
平行線を間に敷く二人は、やがて片方が折れることで動き出す。

「あー……。オール無視ですか、そうですか。わかった、了解、把握しましたよ。帰るわ」

連れないならば諦める。それも立派なナンパの選択肢だ。
更に言うならば雨脚はよりひどくなり視界も音も相手に届いているか怪しい。
こんな状況で続ける意味もなし。そう結論付けて背中を向けることを決める。
と、不意に川の上流。相対する彼女の背後側から何か音を感じる。
この雨脚の中、聞こえる音の大きさ……その規模に視覚的にも気付いた瞬間、命は飛び出していた。


989 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/29(木) 00:25:53.22 ID:fzs7VEAO
突然駆け出した命に一気に警戒心を露わにした少女は素早く身を伏せる。
前方へ四つん這いと態勢を移行し、その後ろ足に力を込めた瞬間、彼女も気付く。
それは流木。それもかなりのサイズが自分の背後に迫っていることに。
振り返った瞬間、驚きで固まった体はそれが直撃することを本能的に悟らせた。
もはや残された手が目を瞑りその瞬間の痛みに耐える覚悟を作るくらいだったが……。

「の、おお……!」

横合いからの突然の力に体が範囲外へと動くのが分かる。
そして見開いた瞳が見たものは自分の代わりに大木に弾かれその体を濁流へと吸い込まれていく命の姿だった。



「っっ、が!」

背中に感じた熱と全身を駆け巡る痛みと衝撃。次いで大きな水音とめまぐるしく変わる景色。
まず息を、と酸素を求めた口内に水、水、水。
同時に鼻、耳を一瞬にして水が満ちていき、何が起こったか理解が追いつかぬまま、ただ漠然と危機を悟る。

(やべ……しねる……)

もはや五感のほとんどが利かなくなり、ただただ成り行きに身を任せるしかない状況。
そんな中、こちらの体を強い力が引いたような気がする。

「――ごぼっ!」

その真偽を確認するまでに至らず、意識が散っていく。
闇の中へと落ち行く視界が最後に捉えたのはフードの中。少女の愛らしい猫耳だった。


993 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/29(木) 23:47:52.71 ID:fzs7VEAO
「ん……っ、ぁ」

目覚めは痛みから始まった。鈍く重たいそれはジワリと全身に広がる。
嫌な目覚め方。ここ最近の中でもワースト3を堂々飾るレベルだ。
ちなみに他の2つは寝た女が倍近い年齢だったり親と姉の夢で夢精したというものだったりする。
フィジカルもメンタルも痛々しすぎてマジで笑えない。


痛みから未だに開くことの叶わない瞼を歯を食いしばって開けようとする。
基本的に根性はない方だがそれくらいは男の子。やらねばならぬ何事も。

「……っ!」

と、心配そうな、けれどこちらが気付いたと分かるや否や警戒態勢の表情を作る少女がいた。

「ああ、……えーと」

うん。誰だ?
というよりここはどこだ。なんとなく洞窟っぽいような、こんな場所は見たことがない。
それに背中に当たる感触は柔らかな草か。どうにも野生味溢れ過ぎだろうと思う。

「……」

時間にして十秒ほどが経過して、互いの沈黙も飽きてくる。

「君さ」

ビクッ!

おお、分かりやすい反応。あわあわして辺りを見回すその子がなんとなく可愛くて。

「可愛いな」

思ったまんまを口に出しその手を取ろうとした。

「――っっ!!?」

スルリと避けられた手にクロスカウンターよろしく拳打が見舞われ、命はこの日二度目の昏睡に陥った。


994 名前:パー速民がお送りします [sage] 投稿日:2010/07/29(木) 23:57:00.22 ID:fzs7VEAO
「ぬ……」

再びの目覚め。
今度はジンジンと鼻の頭あたりが痛む。
体全体も未だ鉛が入ったように重たいが致し方ない。
なんとか動かせる視界で、目の保養をと人影を探せば。

「起きたか」

爺と目が合う。

「……」

「ふむ、だいぶ良くなったか。その傷でよく……っておい、寝るな! 話を聞け!」

いやだって起き抜けに爺はなぁ。せっかく元気なムスコがみるみるしおれてくじゃねぇか。
ほら、あの娘を出せ。あの娘を。

「こ、こやつ……無言のくせになんとなく言うとるが分かるし最低じゃな、おい」

「お・ん・な! お・ん・な!」

「……何故あの娘はこんなのを拾ってきたかの」

「そりゃお前、女が俺を放っておくかよ」

「なんか知らんがやっぱ捨ててこようかの」

「待て待て爺。それはあの娘が悲しむからやめろ」

「ああもう! マジで腹立つなお前さん!」

よくわからんが爺がヒス起こし始めた。嫌だねぇ、見てらんない。
と、ふと気になるパーツを発見。これはまさか……

「ね……猫耳爺だと」

最悪の目覚めワースト四天王が出揃っちまったじゃねぇか。

「あ、お前さんまた何か失恋なこと考え……おぉい?! 人の顔見てえづくなよ!?」



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