■戻る■ 下へ
兄妹SS 「輝く日常」
- 323 名前:1 ◆nvHRXDRbXY []
投稿日:2008/04/29(火) 21:06:35.02 ID:u3b+2lCf0
「思い出したんだ。俺はあの公園で長谷川を殴ったあと、意識をうしなった。」
まいの頭をなでながら話す。
「そう。それで……病院で目が覚めたのよ。」
まいは俺の胸に顔をうずめながら小声で答えた。
俺はまいを離し、ベッドの隣同士に腰掛けて話を続ける。
「俺、まったく覚えてなかった。長谷川の事も親父の事も…お前の事まで…存在自体を」
「病院でしゃべってて分かったわ。本当に驚いた。
お医者さんが言うには精神的に負荷がかかりすぎて兄貴の脳が
自らを守る為に記憶を封じ込めたんじゃないかって」
もうまいは、兄貴と呼んでいた。
「そ、そうか。でも、なんで急に思いだしたんだ?―――あっ!」
俺は感づいた。まいもうなずく。
お墓参りだ。
「多分親父の名前を見てから…」
「私もそう思って、あそこでお父さんの事を言おうとしたんだけど
また倒れられたら困るから、ここに帰ってから言う事にしたんだ。」
「それで思い出したんだ、多分そういう事だな。」
その時目を細めて俺を見ながら妹が
- 324 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:12:23.10 ID:u3b+2lCf0
「本当に、思い出してくれてよかった…
お医者さんに無理に思い出させるために
あの日の事については離すのはよくない。隠して生活した方がいいって、言われて
わ、わたし…兄貴が自分で思い出すのに賭けるしかなくて…」
と震える声で言った。涙がぽろぽろと零れ、俺の手に落ちた。
急激にいとおしくなった。こんなに心配してくれていたんだ。
「ごめんよ。心配かけちゃったな。」
「うう……」
まいの頭をゆっくりなでる。
「う、うう……ほ、ほんとに…思い出してくれて、良かったああ…」
そう言って泣き崩れてしまった。
その様子を見ながら俺はすぐに聞きたい事が思いついたが…それを今のまいに聞くのは
酷な気がした。もしかしたら目黒達が隠してくれているかもしれない。
とにかく、目黒に聞いてみよう。
そう思った俺は泣きじゃくっているまいに
「ちょっとここで休んでな。目黒とかに連絡する。」
そう告げ、ベッドに転がした。
「う…ううっ…」
そう言いながらまいは布団の中にもぐりこんだ。
ベッドから起き上がり、俺はすぐに目黒に電話を入れた。
- 325 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:14:14.41 ID:u3b+2lCf0
「はい、もしもし。」
「目黒か?」
「おう!どうしたよ部長!何か用か?」
明るい声だ。
「俺、あの日の事…思い出したんだ。」
「なにをだよ!あの日の事……って、…え!?」
「ああ、あの日の事すべて思い出した。」
「ほ、ホントなのか!?」
「ああ、母親の墓参りに行ってさ、そこで親父の名前があって、それが引き金になったみたいだ。」
「そ、そうかぁ!!よかったなぁ!本当に良かった!」
目黒は心底うれしいといった声で俺の記憶復活を祝ってくれた。
でも俺はまだ全部を知ったわけではない。
「なぁ…目黒。」
声のトーンを真剣なそれに変える。
「ははは…あ、ああ。それでどうしたんだ?」
向こうも合せてくれる。
「俺が意識を失ってから4日間の事について教えてくれ。」
「あ、ああ。あれから――――」
目黒はゆっくりと正確な情報を教えてくれた。
- 326 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:18:41.17 ID:u3b+2lCf0
あの時俺が意識を失ったあと、警察が5,6台のパトカーで駆けつけたらしい。
そして意識のない俺と死んだ親父、気絶している長谷川を見つけて全員を病院に運んだ。
親父はもうその時には息絶えていた、が一応病院で御臨終みたいな事として処理されたらしい。
長谷川は病院で意識を取り戻した後、警察の事情聴取に対して一切口を開かなかったらしいが、
なんでも社長の調査のおかげで、ついに長谷川の悪事の言い逃れのできない証拠を見つけられたらしく、
それを警察が言うと長谷川は観念したようにうなだれたという。
なんでも俺達の進めていたプロジェクトも、長谷川の裏の仕事を会社ぐるみでやりやすくする事が目的だったことが判明して、
取引先の幹部も長谷川に関連する人物は全員逮捕されたらしい。
とにかく当分長谷川は暗い刑務所の中で過ごすことになりそうという話だった。
親父の葬式は俺の意識がないうちに行われた。
何故かはわからないがまいがそう懇願したらしい。
これはあとで聞いてみないとな。
そこまでを一気にしゃべってくれた目黒に感謝を述べる。
「そうか。なるほどな…だいたい分かった。感謝するよ。」
「いやいや、知りたいのは当然だからな。
でもお前が記憶喪失したって妹さんから聞いた時はわが耳を疑ったぜ。
今まで会ったことないからなそういう人に」
「ははっ俺だってねえよ!」
「だろ?」
目黒がいつもの調子で笑う。
- 328 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:22:03.51 ID:u3b+2lCf0
「でもお前、妹さんにはホントに感謝しなくちゃいけないぞ?
あんなに取り乱しながらも俺達事件の事を知っているもの全員に
「兄貴は記憶を失っているのでその事には触れずに付き合って下さい」
なんてひとりひとりお願いするなんてあんまり出来ることじゃねえよ。
お前が本当に心配だったんだな。」
「え?あいつそんな事してたのか?」
「そうさ!お前の親父さんのお葬式で俺も頼まれたよ。」
そんな事してくれてたのか…
「ああ、分かったよ。今から妹とも話すからそんとき礼言っとく。」
「ああ!そのほうがいいぜ!俺は今から会社の奴ら、とくに社長は責任感じてたからな!
真っ先にだ!お前の記憶が戻った事を伝えてくる。とりあえず、今日はゆっくり休むんだぞ?」
「ああ、分かってるよ。ありがとう、じゃな」
「ああ!!」
俺達はお互い笑い合って電話を切る。
布団に戻り座ると後ろからつつかれた。
まいが顔の上半分だけを出して起きている。
「目黒さん…だっけ?どうだった?」
小声でつぶやくように尋ねる。
目はまだ真っ赤に腫れている
- 329 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:31:24.40 ID:vfK34aP90
フヒヒ
- 330 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/29(火) 21:32:19.20 ID:jGhWOb8xO
長谷川死刑だな
俺が認める
- 331 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:34:57.90 ID:u3b+2lCf0
「ああ、いろいろ聞いたよ。大変だったみたいだな。」
「うん。ホントにいろいろあったよ。
上野さんなんか兄貴の事を知った時私よりも号泣してたんだから。」
「ああそうか!上野もお前の見張り役として来てもらったんだな」
当然のようにまいの事を思い出したと同時に上野の事も思い出していた。
「記憶が無くなってるって聞いた時もまた泣いてた。」
そういえば病院に見舞いにはこなかったな。
そう思ってまいに聞いてみる。
「でも上野お見舞いとか来なかったよな。」
「当然でしょ!?兄貴はあの子の事忘れてたでしょ!私の事も忘れてたんだから。」
呆れた顔で言われた。
あぁ…そうだった。
もうすべて思い出した安心感から俺はド忘れしていた。ついさっきまで上野の事も忘れて
まいの事もまいがしゃべった内容でインプットしてたんだった。
確認のために聞いてみる。
「まい、お前の言ってたその…俺の義理の妹だったっていう設定は…お前が考えたのか?」
俺達は本当に血が繋がってない
その事実をまいは知っていてそうしたのだろうか…
でもそんな俺の心配は杞憂に終わった。
「え?あははっ。何言ってんのよ!私があんなの思いつくわけないでしょ!
お医者さんと打ち合わせして決めたのよ。私達は本当は血が繋がってるんだからそんな発想私からは出ないって!!」
「そ、そうだよな。あはは…」
良かった。まいは…まだ俺達が血が繋がっていない事を知らずにいるんだ。
その安心感から俺はついニヤニヤ笑ってしまっていた。
- 332 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/29(火) 21:35:35.22 ID:5N6Jpzkf0
上野さん出番無し?
- 333 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/29(火) 21:36:20.77 ID:5N6Jpzkf0
あ、話題に出たww
- 334 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:39:15.66 ID:u3b+2lCf0
「なに変な顔してんのよ!?馬鹿兄貴!」
妹が変な目で俺を見てきた。
「ん?なにが?」
そう言えば馬鹿兄貴って久々に言われたな、はは。
そんな事を思いながら質問に質問で返す。
すると、まいは俺の予想外の質問でさらに応戦してきた。
「そういえばさ…上野さんって兄貴の事好きなんじゃないの?
兄貴…告白されたりしたの?昔…」
「は、はぁ!?なんだよ急に!あはは!そんな事あるわけねぇだろ。」
思わず笑ってしまった。
昔から仲がいいだけの関係だろうしな。そんな事を言う妹がおかしかった。
何故か憮然とした表情で妹はさらに続ける。
「でも!…兄貴はなんとも思ってないの?」
「いやそりゃ友達としては好きだけどさ。
そういう好きであって恋愛感情は持ってねえよ。
第一お前の友達だろうが。手出す気になれないし。」
普通に思っていることを口にする。
「ふ、ふーん。そ、そう!ま、まぁそれはそうよね
友達だもんね。第一ホントにそんな感情抱いてたらいやだし!!」
「なんだそりゃ。んじゃ聞くなよ」
「ふふ。ま、まあいいじゃん。」
何故かそう言って布団をかぶってしまった。
- 335 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:39:19.79 ID:9kmcXqDeO
親父が、まいに話した。
- 336 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:45:46.40 ID:u3b+2lCf0
結構しゃべりやすい雰囲気になったと感じた俺は
目黒との会話で疑問に思っていた事をまいに聞いてみた。
「なぁ…なんで親父の葬式すぐする様に取り計らったんだ?」
布団の中でまいがビクッと体を震わせたのが分かった。
布団から出てきて言う。何故かいきなり涙声なのには動揺した。
か、軽い気持ちで言ったんだけど…
「だ、だって…」
「だって?」
「あ、兄貴はお父さんの事を憎んでるんでしょ!?」
ああ、そういう事か…
まいは俺が親父にふだんから暴力をふるっていると聞かされていた。
んでまぁ当然俺が親父を恨んでると思ってる。
なら俺が目覚める間に葬式等を済ませておかないと
俺が葬式で何かしら騒ぎでも起こしかねないとか思ったんだ。
ちょっと変だがだいたいこんなとこだろうと考えた俺は、
すぐにそれがまったくの勘違いである事に気づいた。
まいはそう言った後、付け加えたんだ。
「だ、だって!兄貴はいっつもお父さんに殴られたりしてたんだから!!」
「―――――――ッ!?」
俺はその発言で固まった。
まいは…知っている?
- 337 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:47:06.46 ID:vfK34aP90
知ったにしては態度の変化が薄いな
- 338 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:49:34.81 ID:xiRyYZ1w0
親父が誤解を解いたって発言は思い出してないの?
- 339 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:49:34.95 ID:u3b+2lCf0
その時、俺の脳裏に親父の死に際の言葉が急速に蘇ってきた。
「ただ妹の誤解はといておいた。あいつは全部知っている。」
そう言っていた。
伝えたんだ。全部。固まりつつそう確信した俺に
まいはさらに話し続ける。
「前に兄貴にいきなり抱きついちゃったことがあったでしょ?」
記憶の糸をたどる。
長谷川が会社をやめてすぐの頃にそんな事があった気がする。
「ああ。」
「その日のお昼にお父さんから電話があったの。」
そういうまいの顔は苦しそうだ。
「お父さん、ずっと私を騙してたって言ってた。
何の事だか全然わかんなかったから聞いたらお父さんと…兄貴の事だった。
俺はいっつもアイツに殴られていたとお前に言っていたがそれが逆で、
あいつを俺がいっつも殴っていたんだ。
母さんが死んでからはあいつにお金をやってもなかった。って」
そこで区切って俺を見るまいの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
近くにおいてあったティッシュで拭いてやる。
可愛い顔が台無しだ。とか思った。
俺がティッシュを顔に当ててやるとまいは
「ひゃっっ」と言って
ビクついたが
「顔拭いてやるからじっとしてな。」
と言うとありがと、と短く言い素直に従った。
綺麗になったまいはさらに続けた。
- 340 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/29(火) 21:50:09.47 ID:jGhWOb8xO
兄は妹とくっついてほしいな
- 341 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:52:58.65 ID:xiRyYZ1w0
血が繋がってない事はいつ伝えるんだろうか
- 342 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 21:55:59.57 ID:u3b+2lCf0
「お父さん、長谷川って人と悪い事をしているって言ってた。
それで兄貴が長谷川って人の標的になったという事を知った時に、急に後悔したんだって。
今まで俺は実の息子になんて事をしてたんだって言ってた。」
「おかしな話だな。」
意味がわからない。
なんで親父がそこまで気づくのにそんなに時間を要したのか全然理解できなかった。
そんな俺の気持を察したのか妹が言った。
「なんか今までお父さん長谷川さんに脅されてたらしいよ?
仕事に失敗したら兄貴を殺すとかなんとか…いっつも言われてたみたい。」
「!?」
「それで毎日を過ごすうちに、だんだん兄貴の事が重荷になってきて…当たるようになってた。
とか言ってた気がする。詳しくは覚えてないけど…」
「……」
なるほどな、
ガキの頃に「お前がいるから」という言葉を何回か浴びせられながら殴られてた記憶がある。
親父は脅されて最初は俺の事を気遣ってくれていた。
けどそれに疲れたってことか。
んで俺が本格的に長谷川の標的になった時に父親としての何かが再び芽生えた。
は!冗談じゃない!わけわかんねぇぞ親父。
推測でしかないけど。そこまで考えた俺は
変なイライラが溜まりつつも、とりあえず自分を納得させようと努力した。
- 344 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 22:00:01.87 ID:u3b+2lCf0
「それで?他には何か言われたか?」
とりあえずまいの話を最後まで聞くことにする。
まいは俺の目をしっかりと見つめながら答えていく。
それから親父は罪滅ぼしに俺を事件の関係者にはしないように、
長谷川と行動していたと言われたという事。
金は真面目に働いた時の分を残してあるから使えと言われたという事。
そこまで簡単に話した後、まいは黙り込んでしまった。
話が終わったという感じでもない。なにか言うのを迷っている様だったので
話しやすいように助け舟を出してやる。
「今更あいつが何を言ってたか聞いても俺は何にも思わないよ。
何か言いたいことがまだあるんなら言ってみな?」
ホントは今のところ親父の事は許せていなかったが、そう言った。
なんとか助け舟となったようだ。
まいは再び目に涙を浮かべて話し始めた。
- 345 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/29(火) 22:02:30.91 ID:B9DgF6sgO
朝霧麻衣
- 348 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 22:05:07.17 ID:u3b+2lCf0
「お、お父さんは私の事も兄貴の事も本当は愛してたんだと思う。
だ、だから隠してて、それが結果的には最悪の方向になっちゃったけど。
お父さん…最後に言ってた。
「あいつがお前にこの事を言わなかったのは、
俺がお前に手を出すのを警戒していたからだろう。
自分だけが犠牲になって解決するのならそれがいいと判断したんだろう。
これからもあいつとは普通に接してやれ。
あいつはお前の事をいつも考えてくれる最高の兄貴だ。俺は…最悪の父親だがな。」って…」
はっ!今までそんな風に思っててくれたんならもう少し優しくしてくれてもよかったんじゃね?
おやじよぉ…
そう漠然と思った。親父がそんな事を言っている姿なんて…想像できなかった。
でもまいの話しぶりから嘘というわけではなさそうだ。
何故か突然、再び…親父の死に際の言葉がフラッシュバックされる。
「あっ」
まいが俺を見て驚いた声をあげる。
「――――え?」
俺は――――――泣いていた。
「あ、あれ?な、なんで泣いてんだ俺。あ、ははっ!おっかしいなぁ。
普通にあっそうぐらいにしか思わな…かった…の、に…」
そう言った俺をまいが優しく抱きしめてくれた。
- 349 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 22:11:07.82 ID:u3b+2lCf0
「兄貴、今までごめんね?私全然気づかなくって…
馬鹿兄貴馬鹿兄貴っていっつも罵倒するだけで、
お父さんの話を聞いている時は恨んだりもして…ホント、馬鹿妹だよね。
さ、最低だよね?」
抱きしめつつ俺の頬に触れているまいの頬に涙がつたっているのが分かった。
「今まで本当にごめん。
私の為にいっつも一生懸命だったんだよね?
兄貴は昔のまま…私を大切にしてくれてたのに。
私はいっつも疑ってた。ホントは兄貴は私の事を迷惑に思ってるんじゃないかとか…」
「そんなわけないだろ。お前は大事な大事な俺の妹だよ。」
普段は恥ずかしくて言えない事をその時のおれは平然と言っていた。
「うん。やっとわかった。私は兄貴の事を何も分かろうとしなかった。」
「いや、お前は知らなかっただけだ。
隠していたのは親父の言うとおり俺の独断だからな…
お前が親父に傷つけられないかだけが毎日心配だった。
親父に聞かされて、さんざん悩んだんだろ?
もうそんな事で悩まなくてもいいよ。
お前の馬鹿兄貴が、長年勝手に馬鹿やってたってだけなんだから。」
穏やかに笑い、そう言う。
相変わらず俺も涙を流していた。とまらない。
- 351 名前:VIPがお送りします。 [sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22:13:08.65 ID:jGhWOb8xO
兄貴のバカ野郎(´;ω;`)
長谷川死ね!
- 352 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 22:15:30.21 ID:u3b+2lCf0
俺がそう言った後、
まいはいっそう強く俺を抱きしめて俺の顔を見た。
「う…うう、ご、ごめんね。ごめんね。兄貴。」
「いいんだ。これから2人で頑張っていこう。
それが俺に対しての最大級の恩返しになる。」
妹の顔を見つめながら穏やかに言う。
大粒の涙を流しながらまいは
「うう…あにき…あにきぃ」
ふいにそう言って…俺の顔を自分の顔に近づけていく。
視線が近くで…交錯していく。
「・・・んっ・・・」
妹は突然、俺の唇に自身のやわらかい唇を重ねてきた。
―――――――――ッ!
5秒ぐらいしてゆっくりと話す。
- 354 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 22:17:51.03 ID:u3b+2lCf0
「お、お前…」
「ご、ごめん…」
それだけ言ってうつむく。
顔を真っ赤にしているが体は離そうとしない。
「お、俺たちは兄妹なんだぞ。こ、こういうのは良くないよ。」
そう言う俺に対してまいは―――。
「うん、分かってる…分ってるよ…でもごめん。
今、本当に我慢ができなくなっちゃったの。
兄貴の事を考えたら…どうしちゃったんだろ私。」
そう言ってきた。
こいつは、俺と血が繋がってない事を知らない…はずだ。
「と、とにかくもういいよ。お前の気持は分かった。なんか、嬉しいよ」
ドキマギしつつ答える。明らかに声が裏返っていたが何とか言えた。
まいも
「うん。…ごめんね。」
と言い、ベッドに横になった。そして俺を見ながら
「ねぇ、昔みたいに一緒に寝ない?」
そう言ってきた。
「迷惑?」
「いや、別にいいよ。昔みたいに寝てみるか。たまには」
「うん!!」
そう言って俺たちは一緒のベッドにもぐりこんだ。
- 355 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/29(火) 22:19:46.09 ID:9kmcXqDeO
や〜らしぃ
- 356 名前:VIPがお送りします。 [] 投稿日:2008/04/29(火) 22:22:01.54 ID:xiRyYZ1w0
兄妹以上恋人未満
- 357 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 22:31:32.66 ID:u3b+2lCf0
これからこいつを守っていけるのは俺だけだ。
精一杯守っていかなくちゃな。
俺の全部をかけてこいつをまもろう。
そう誓いながら隣を見ると…すでにまいはすやすやと寝息を立てている。
その可愛い寝顔を見ながら一言つぶやいた。
「これから…一緒にがんばろうな」
そう言ったあと急激に恥ずかしくなり俺も布団にもぐりこむ。
実はその時妹が起きているのには気づかなかった。
- 358 名前:1 ◆nvHRXDRbXY [] 投稿日:2008/04/29(火) 22:31:44.08 ID:u3b+2lCf0
―――――――――――――深夜―――――――――――――。
《夜が更けていく、私はずっと目を開けて兄貴を見ていた。
兄貴の可愛い寝顔に向けて、そっとつぶやく。
「兄貴は隠してるつもりだろうけど、
私…私たちがホントは血がつながってないって知ってるんだ…
お父さんに聞いた時には本当にびっくりしたけどね。」
兄貴がさっき
私が兄貴に教えた設定を私が考えたのか?
って聞いてきた時は、本当に焦っちゃった。
お医者さんが提案したって言ったけど。
兄貴の予想通り、ホントは私が提案したんだ。
「びっくりしたけど…なによりうれしかったよ。
だって…ずっと疑問に思ってた事が解決したんだもん。」
そう言って兄貴の鼻先を指でこする。
「フガッ?う、ううん…スースー…」
「ふふっ。なんで実の兄貴の顔を見るたびに、
ドキドキするのかって…ずっと思ってたんだよ?」
兄貴がさっき、寝ていると思っている私に向って言っていた言葉を思い出す。
「ふふ、これから一緒に頑張っていこうね?兄貴…いや、お兄ちゃん♪」
「…大好きだよ。」
私は…そう言って兄貴の隣の布団にもぐりこんだ。
今日はいい夢が見られそうだな…そんな事を思いながら、私は眠りについた。》
エピローグに続く。
次へ 上へ 戻る