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妹「兄さん、もう寝ませんか?」
283 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 00:46:16.19 ID:yCT8r8bW0
さて、そろそろよろしいですかね。


284 :VIPがお送りします [] :2008/08/08(金) 00:47:07.94 ID:CrFfVwFe0
wktk


285 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 00:48:29.95 ID:yCT8r8bW0
妹「今日私の誕生日なんだから、もちろん早く帰ってきてくれるんでしょ?」

兄「ああ、今日は早く帰れるさ、まだ新米の俺に重大事件が回ってくることもないだろうし」

 兄の出勤前のひととき。こんなやりとりを行ったその日、兄は帰ってこなかった。
 翌日、朝起きるなり掛かってきた電話、相手は私も良く知る兄の学生時代からの友人の警官。そして彼は重苦しい口調で私に告げた。

警「いいか、落ち着いて聞くんだ。君のお兄さんが、昨夜……亡くなった」

 サッと、血の気が引いた。
 昨日の朝まで元気にしていた兄が……死んだ?
 現実味がない。口が渇いて、声を発するのもおっくうになる。

妹「な、なんで……」

警「わからない。どうやら事故現場に様子を見に行った行った際に何者かに襲われたようなんだ」

妹「何者か……って、いったい、何なんです」

警「すまないが、人間がやったとは思えない死に方だった。それに……」

妹「聞きたくありません!」

警「すまないんだが、本人確認を、家族である君にお願いしたいと、本部が言っているんだ」

 ぐっ、と、私は腕を握った。先ほどから思考がまとまらなくなってきている。

(とりあえず最初から)


286 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 00:52:43.14 ID:yCT8r8bW0
 これは夢だ、そう思おうとしても、昨夜兄が帰ってきていないのは事実で。

妹「確認、します」

警「ありがとう、と言いたい所だが、遺体は相当にひどい状態だ。本来なら私は君には見せたくない」

妹「行きます。私、たった一人の、家族ですから」

 私達兄妹は、8つも年が離れている。そして私がまだ小学校に入ったばかりの頃、両親が亡くなり、すでに成人していた兄が私を一人で育ててくれた。
 かけがえのない家族として、行かないわけにはいかない。そんな風に私は覚悟を決めた。

 すぐに、警察官が2名ほどやってきて、私を県警に招いた。
 着くと、見慣れた、兄の友人の警官が出迎えてくれた。彼の表情は暗く、そのせいで、一層現実味を感じた。

警「妹ちゃん、行こうか。彼の元へ」

妹「はい」

 連れて行かれたのは、霊安室だった。
 ファスナーつきのモスグリーンの袋が、中央の大きな台の上に横たわっている。
 私達はその両脇に立ち、その袋に向かう。

妹「これが……?」

警「ああ。……妹ちゃん、もう一度聞くが遺体は相当にひどい状態だ、ショックを受けるだろう。それでも――」

妹「――見ます。開けてください」

 私は力強く言うと、彼は私の覚悟を受け取ってくれたのか、ただゆっくりと頷いた。


288 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 00:56:02.07 ID:yCT8r8bW0
 ジジィーッ
 彼がファスナーを開けると、まず見えたのは、血まみれの髪だった。
 次に顔にかかる白い布、最後に首元に目をやって、ふと、首が無いことに気づいた。

妹「い、いや……うそよ、何これ!? 首が……!」

 切断される、というより、もぎ取られている。
 確かにこれは、人間技ではない、と思う。しかしそんなことを思う余裕はまだある。
 普通死体袋に入っている死体に、白い布なんて掛けない。しかしその布の存在があるから、まだこれは兄ではないかもしれないと、心のどこかで私はまだ逃げる言い訳を探していた。

警「捻じ切られているんだ、とても強い力で」

警「布、取るよ」

 そっと、彼は死体の顔にかかっている布を取り除いた。

妹「っ!」

 吸い込んだ息で窒息しそうなほど、私は固まった。
 さっぱりとひげを剃った顎、小さめな口。唇の右下にあるホクロなど、兄の面影が残る部分が顔の5分の2。
 残りは、人間の中身すら無かった。
 ちぎれた顔面の筋繊維が張り付いた鼻骨の破片。
 両目と鼻があった部分には赤黒く落ち込んでいる虚空のみで。

妹「うぐっ!」

 襲ってきた吐き気に耐えながら、思わず屈み込み、下を向いた。
 間違いなく、昨日送り出した兄。
 しかし、見慣れた姿はもう無く、人間にすら見えない状態だった。


289 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 00:59:18.97 ID:yCT8r8bW0
妹「うっ、あ、兄さん……兄さん」

警「間違い、ないね……」

妹「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 その後、私は意識を失った。
 目を覚ましたのは、休憩室の片隅だった。
 付近に居た婦警に話を聞くと、あれから3時間が経ったらしい。
 休憩室であたたかいお茶を飲んで、私が少し落ち着きを取り戻した頃、兄の友人である彼がやってきた。

警「落ち着いたかい」

妹「……なんとか」

 私は、彼の顔を見ることもできない。ただただ、行き場の無い喪失感をもてあましていた。

妹「犯人は……見つかりました?」

 聞くと、彼は口をつぐむ。私は不審に思って顔を上げると、彼は責められたような、苦い表情を顔に張り付けていた。
 そして私の視線に気づき、ゆっくりと話し始めた。

警「犯人は……居ない」

妹「そんな…」

警「事故だったんだ。パトカーが盗まれたから、事件だと見て捜査していたんだが」

警「どうやら、事故現場で爆発が起こったらしい、それで……」


290 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 01:01:09.44 ID:yCT8r8bW0
 終始、何かに責められるような、落ち着かない表情のまま、目を時折泳がせ、彼は続けた。

警「爆発の時に、車のフレームの一部が顔面に。それで……」

妹「もう、いいです」

警「え……」

妹「説明は、いいです。それより、兄の遺品を、後で家に」

警「あ、ああ。夜にでも、私が持っていくよ」

妹「お願いします」

 私は、県警を後にした。
 家に帰り、兄の部屋に向かった。

妹「兄さん……なんで、こんな目に」

 4畳半の部屋の中は普段と何一つ変わらない。
 たたんだ布団、開いたカーテン。小さな洋タンスに、薄い本棚。
 壁掛けカレンダーの昨日の日付には赤丸がつけてあり、その下には『妹誕生日』と書かれている。
 最後に、作業用のデスクを見た。
 そこで一つだけ、普段と違ったものを見つけた。
 書類の山に隠れるようにして置いてあった、小さな紙袋。

妹「これ……」

 私は紙袋を開け、中を覗くと、綺麗にラッピングされた、箱が一つ。


291 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 01:01:44.28 ID:yCT8r8bW0
 そっと、箱を取り出す。
 丁寧に包装を開ける暇も惜しみ、ビリビリと多少乱暴に包装紙を剥ぎ取る。
 横から開閉するタイプのピンク色の紙箱を開くと、そこにあったのは、ひとつの時計だった。
 ピンクのベルトに、薄い楕円の文字盤、透き通った針。

妹「っ! これ、私が、話してた――」

 ――以前テレビでこの時計のブランドが紹介されたとき、一言“いいなぁ”と漏らしただけだった。
 兄の収入で生活している私にはとても手の届かない値段で、バイトをしようにもまだ高校に入ったばかりの私には無理な相談。
 兄にしても、自分の趣味も我慢していたのに……。

妹「兄さん……っ」


 時計を抱えて、私はうずくまった。
 兄さんの死体を見たときも、目を覚ましたときも出てこなかった涙が、今になってあふれ出してくる。
 楽しかった思い出、辛かった思い出、嬉しかった思い出、悲しかった思い出。
 そのどれにも、兄の姿があった。

妹「うっ……ぁ、兄さん、にいさぁん……」

 それから、ただひたすら、泣いた。
 そんなことをしても、洗い流される辛さなどないというのに。
 私はただ、兄を想い、涙を流し続けた。

 数時間後、兄の友人の警官が訪ねてきた。

警「妹ちゃん、遺品、持ってきたから」

妹「どうぞ、上がってください」


292 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 01:02:38.25 ID:yCT8r8bW0

 私はダンボールと封筒を小脇に抱えた彼を招き入れる。
 彼は顔を曇らせながら、私の後について居間に向かう。
 彼が座るのを確認した後、私は彼を見つめながら言った。

妹「本当のこと、話してくれますか?」

警「まず謝る……すまない。あの場ではああ言うしか無かった」

妹「一体、何があったんですか?」

警「まず、犯人が居るのは確かだ。奴は君のお兄さんを殺してパトカーを奪って、GPSと車載カメラのデータボックスを破壊して逃走」

警「私たちは今日の朝になって崖下に転落しているパトカーを発見した」

警「そして君が倒れた後すぐ、パトカーの車載カメラの映像が復元できたんだ。それに、犯人の姿が、映っていた」

妹「それなら、犯人は――」

警「――それが、その映像検証中に、上からの通達が来た」

 ダン! と、彼は、机を叩き、怒りを抑えきれない様子で言った。

警「“全ての捜査記録を破棄し、即時撤収” 冗談かと思った! 明らかに兄を殺す犯人の姿を捉えた映像があるっていうのに!」

妹「それってまさか……」

警「完全にもみ消しだ! キャリアだが、新米の俺が何を言おうと全く通じない」

妹「警官さんは……、犯人の顔見たんですか?」


293 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 01:03:14.15 ID:yCT8r8bW0
書き溜め分終了ですのでここからスローペースになります


294 :VIPがお送りします [sage] :2008/08/08(金) 01:03:44.35 ID:oUMGtPwK0
>>107あたりの警官の身内の話か


296 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 01:07:27.60 ID:yCT8r8bW0
>>294
あってますよー


298 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 01:19:25.99 ID:yCT8r8bW0
警「実は、映像は回収されたんだが、映像をキャプチャした画像を印刷したものがある。これだ」

 彼は、小脇に抱えていた封筒から、3枚の写真を取り出し、机に並べる。
 1枚目は、少し遠い。兄より背の低い人影が兄のほうを向いているのがわかる。
 2枚目、兄の顔が体に対して180度後ろを向いた状態。写真を見る限りでは、手でひねられているような。
 3枚目、崩れ落ちた兄の体と、微笑む――それは少女だった。

警「血しぶきが、フロントガラスにかかったみたいでここから先ははっきり映ってないんだ」

妹「こんな女の子が、兄さんをあんなふうに!?」

警「ああ、動画で見ていたが、まるでCGみたいに、簡単にやっていた」

 私には、信じられなかった。どう見ても私と同じか、少し上くらいに見える少女がこんなことをやっただなんて。

妹「兄さん……」

 3枚目の写真の少女の顔をじっと見た。しかし見覚えがあるわけでもなく、ただただ薄気味悪さを感じるだけ。

警「この写真は、妹ちゃん、キミが預かっておいてくれないか? 俺が持っていても、いずれ見つかるかもしれない……」

妹「わかりました、預かります。けど……」

警「すまない。あいつの為に俺が出来ることは、今は何も無い。けどな――」

 彼は決意したように、ぐっとこぶしを握り締めて言った。

警「――必ず、犯人を見つけ出す。何でもみ消されたのかも、突き止めてみせる」


303 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 01:39:38.24 ID:yCT8r8bW0
 彼は、それだけ言って、席を立った。

妹「何か分かったら、また」

 そして帰り際、私の腕を見て気づいたように彼は言った。

警「その腕時計、キミへのプレゼントだったんだな……似合ってる」

 彼は、微笑み、そして去った。
 
 それから、時間はあっという間に過ぎ去った。
 毎日葬式や片付けに追われ、親戚や兄の友人の相手をしているうちに、私はすっかり疲れ果てていた。
 毎夜毎夜見る悪夢も重なり、睡眠不足にもなった。
 学校にはしばらく行っていない。行く気も起きない。
 そして、私の引き取り先が、同じ県に住んでいる親戚へと決まった頃、私は倒れた。
 原因は過労とストレス。兄のことを考えないようにと、無理をしていたのがたたった。
 
 ゆっくりと、病院の天井を見つめる生活になったのは、兄が殺されたあの日から、ちょうど1ヶ月後だった。
 そしてお見舞いに来てくれた最初の人は、警官の彼だった。


305 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 01:58:08.28 ID:yCT8r8bW0
警「大丈夫? ずいぶんと無理してたみたいだけど」

妹「はい……」

 そっと話しかけてくれる彼、しかし私は気力の大半を失っていた。

警「もう、あれから1ヶ月経ったなんて。信じられるか?」

妹「…………」

警「だよな……」

妹「あれから、手がかりは、見つかりましたか?」

 私は、ずっとそればかり考えていた。
 彼は、頷くと、私の近くに歩いてきて、告げた。

警「ああ、どうしてもみ消されたのか、犯人は誰なのかも。わかった」

妹「話して、ください」

警「ああ。まず、犯人は、OXOXOXという少女だとほぼ断定した。あの画像と顔が同じで、事件当日の夜と、翌日のアリバイが無い」

妹「OXOXOX……」

警「で、もみ消された理由だ。 実はな、この少女の通っていた研究施設が、防衛省から多額の援助を受けている施設だった」



306 :VIPがお送りします [] :2008/08/08(金) 02:04:57.90 ID:ju4hr9IcO
シーカーはもう死んだ後だよね


307 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 02:13:50.58 ID:yCT8r8bW0
妹「防衛省……」

警「何でも、生物兵器の研究を行っている施設だったらしい」

警「それが明るみに出ないために、どうしても上はこの事実をもみ消さなければならなかったようだ。この平和の国で、世界最先端の、しかも人間倫理に反する研究だからな……」

妹「ふふっ。あは、あはははは!」

 あまりにバカらしくて、思わず笑ってしまった。
 生物兵器? あの少女が?
 戦争の道具を作るために罪もない兄さんが殺されたことすら嘘になるなんて……。

妹「ふざけるなっ!!」

警「な…」

妹「何故兄さんが死ななければいけなかったの!? ゴミみたいなものを作るための犠牲に、なぜ兄さんが!!」

警「お、落ち着くんだ。このことを知っているとバレたら、俺達もただではすまない」

 私は、ベッドから起き上がり、警官さんの胸倉をつかんだ。

妹「公表してください、この事実を。マスコミに」

警「だめなんだ……情報管制で、もみ消される。それに、証拠も、キミが持っている写真以外はおそらく……」




308 :VIPがお送りします [] :2008/08/08(金) 02:15:39.23 ID:0Dn4TZab0
殺された兄さんはもしやあのパトカーの兄さんか?


309 :VIPがお送りします [sage] :2008/08/08(金) 02:23:09.04 ID:oUMGtPwK0
>>308
そのようだ


311 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 02:31:24.00 ID:yCT8r8bW0
妹「じゃあ、どうしろって言うんですか!?」

警「あんな大口叩いておいて、正直、何も出来ない」

 彼は、申し訳なさそう、という以上に、悔しそうに頭を下げた。

警「すまない……俺に力が無くて」

妹「一つだけ、教えてください。犯人の住所です。……わかってますよね?」

警「……知っている、が、それを使って何を?」

妹「話を、してきます」

警「……わかった。メモを渡すよ」

 彼はサラサラと手帳にメモをし、ページをちぎって私に渡した。

妹「ありがとうございます……」

警「危ないかもしれない。行かせたくは無いが、キミは、行くだろう?」

 私は軽く微笑み、彼に言った。

妹「もう、疲れました」

警「ああ、長い間すまなかった。もう帰るよ」


315 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 02:50:12.91 ID:yCT8r8bW0
 彼を半ば強制的に帰らせた私は、メモを確認した。
 記されていた住所は、ここから歩いて行ける距離だ。
 看護婦の来る時間を見計らって、去った直後に普段着に着替え、私はすばやく病室を抜け出した。
 足元がすこしふらつくが、歩くのに困るほどではない。

 無事病院を抜け出し、私はメモの住所へと向かった。
 夕方、朱に染まる前のまだ明るい時間帯。
 20分ほど歩くと、目的の家にたどり着いた。

 ピンポーン
 チャイムを鳴らすと、しばらくしてがちゃり、とドアが開き、少女が姿を現した。

妹2(原作)「あれ、あなたは……?」

妹「あなた、OXOXOXさん?」

妹2「そ、そうだけど、あなたは?」

妹「あなたが一ヶ月前に殺した警官の、妹」

妹2「っ!」

 妹2の顔色が変わった。明らかに何か思い当たるものがあるような、そんな表情をしている。
 私は、病院で使っていた点滴の針を妹2へ向け、言った。

妹「やっぱり、あなたがやったのね? この、化け物!!」


316 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 03:06:27.99 ID:yCT8r8bW0
妹2「ち、違うわ、私は、やってない!」

 あたふたと、慌てふためき、まるで普通の女の子のようで。

妹「証拠写真もある。正直に言って」

妹2「本当よ! 私は、やってない!」

妹「あくまで、シラを切るつもり?」

兄2「お前ら! なにやってんだ!?」

 横合いから腕を掴まれ、私はそちらを向く。すると、一人の青年がこちらを向いて驚いていた。

妹2「お兄ちゃん…」

妹「あんた、あんたも、関係してるんでしょ?私の兄が、この娘に殺されたことと……」

 青年に向かって問い詰める。しかし、私は彼の、悲しそうな顔を見た。

兄2「違う。キミの兄さんを殺したのは、妹じゃない。研究所で開発していた生物兵器だ」

妹「だから、それがその娘じゃ……」

兄2「違うんだ。生物兵器、シーカーは、擬態する能力を持っていたんだ」

妹「擬態……」

妹2「私も、擬態されて、シーカーは私の姿になったの」


322 :VIPがお送りします [] :2008/08/08(金) 03:20:31.20 ID:FGS/NSFk0
兄「…………」
妹「兄さん?」
兄「…………」
妹「途中で寝てしまったんですか」
兄「悔しいよ俺は……」
妹「よくあることです」
兄「気づいたら5時間も過ぎていた……」
妹「 ◆j3vp2NYuuE の小説は終わったんですね」
兄「乙レスしたかった……」
妹「でも兄さん、次に ◆zK/vd3Tkac が書いてくれていますよ」
兄「嬉しいことだ」
妹「どこまでいきますかね、早朝の釣りスレは」
兄「見届けられたらいいな」
妹「寝てる間に落ちる可能性も無きにしも非ずですけどね」


遅くなりましたが ◆j3vp2NYuuE 乙でした!
引き続き ◆zK/vd3Tkac 頑張ってください


323 :VIPがお送りします [sage] :2008/08/08(金) 03:24:33.17 ID:oUMGtPwK0
>>322
お前のおかげで良いものが見れた


324 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 03:29:27.86 ID:yCT8r8bW0
 意味が分からない。SFを超えてファンタジーの領域だ。
 擬態? なりすまされた?
 しかし、兄の死体の惨状から、妙な現実感がつきまとう。

兄2「警察官の姿だったこともあった。きっとそれがキミのお兄さんだったはずだ……」

妹「あ、あんたたち、何なのよ!? 擬態? なにそれ! 頭がおかしくなったの!?」

兄2「俺も最初はそう思ったさ。周りの世界全部が狂って、常識なんて役に立たなかった」

妹2「あのときの映像。まだ研究室に残ってます。行きましょう」

 そう言って、妹2が私と兄を引っ張り連れて行こうとしたところで、車がやってきた。

博士「やっほー二人とも元気してた? 特に兄君〜」

博士「って。あら、見慣れない女の子がもう一人……」

 車の運転手は女性で、すこし大人びた雰囲気だった。

博士「いいもんいいもん。どおせ若い娘がいいんでしょ、兄君は〜」

兄2「違います。この前のシーカー暴走の被害者のご遺族ですよ」

妹2「研究室の監視カメラの映像を見たいので、研究室まで乗せてください」

博士「いいわよ。というか、むしろ、見せないといけないわ……」

 私は、流されるままに車に押し込まれ、暇も無く車は発車した。


327 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 03:51:01.98 ID:yCT8r8bW0
博士「まず、一番最初に謝っておくわ。本当に、ごめんなさい、あなたのお兄さんを巻き込んでしまって」

兄2「すまなかった」

妹2「申し訳ありません」

妹「そんな、身勝手な!」

博士「そうよ、身勝手なの。謝罪で許されるものでは無いのは分かっている、でも、言うしかないの」

 理不尽。それだけだった。
 兄を殺されて、その償いが謝罪のみ!?
 信じられなかった。

妹「……」

博士「でも、あの生物兵器の暴走は全面的に私の責任。妹2ちゃんや、兄君も被害者なの。そこだけは、勘違いしないで」

妹「犯人の顔した相手が隣に座ってるのに、そんな考え方は無理よ。私は賢者じゃない」

妹「それにね、兄の死因はもみ消されたわ! あんたがこれからも戦争のオモチャを作り続けれるようにね!?」

博士「それは違う! 私だって自首しようとはしたんだ。しかし、防衛省のやつら保身のために私に自首すらさせない」

博士「もう、私はシーカーの研究はしていない……」

妹2「そろそろ、着きますよ……」


331 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 04:07:52.66 ID:yCT8r8bW0
 山間に、大きな白い建物が見えた。
 車から降り、ガラス張りの正面から、私たちは中へ入った。

妹「こんな山奥に、施設が……」

 博士はコンソールを操作し、ライブラリから過去の監視カメラデータを呼び出し、モニターに映す。
 モニターに映ったのは、間違いなく兄だった……定期的にベルを鳴らし、反応を待っているようだ。
 ――ふと、兄はカメラを見た。
 そして、にたりと笑ったところで、強烈な違和感を覚えた。

妹「なにこれ、兄さんだけど、兄さんは絶対こんな笑い方しない!!」

兄2「信じてもらえたか? これが、真実だ」

妹「今……シーカーは?」

妹2「私たちが、倒しました」

博士「もう、死体も防衛省に接収されてしまった」

 やり場の無い憎悪、どんどん肥大していくそれを、私はしかし、どうすることもできなかった。

妹「じゃあ、私、どこにこの気持ちをぶつければいいんですか?」

妹「警察にもみ消され、犯人はすでに死んでいて……」

妹「兄が浮かばれない……こんなのじゃ……」

 頭を抱え、私はうずくまった。


333 : ◆zK/vd3Tkac [] :2008/08/08(金) 04:29:35.69 ID:yCT8r8bW0
兄2「……キミに、そんなに思ってもらえて、お兄さん、きっと嬉しがってると思う」

 ぽつん、と、声が聞こえた。

兄2「なあ、キミ、ココロって、何だと思う?」

妹「ココロ?」

兄2「ああ、ココロだ。俺は、人間はココロがあれば人間らしく生きていると思っている」

兄2「そして、ココロある人間が強く想うと、また、ココロが生まれる」

妹「じゃあ……私にはココロが無いのね。だって、こんなにも想っているのに、ココロが生まれないんだもの」

兄2「違うな。シーカーにだってココロはあった。キミは、生まれたココロに気づいてないだけだ」

妹「……気づいてない?」

 ふと、着けている腕時計を見た。
 自分から見た兄。兄から見た自分。
 相互が混ざり合い、思い出の中で融けていく――

妹「――兄さん、私は、幸せでした」

 そしてこれから、兄さんと過ごした日々ぐらい幸せな毎日になるように――

兄「――妹、がんばれよ」

 ココロの奥、すこし離れた場所から、ふと、兄の声が聞こえた気がした。
*END*


334 :VIPがお送りします [] :2008/08/08(金) 04:36:06.69 ID:jq/LZPOc0
>>333

面白かった


340 : ◆j3vp2NYuuE [] :2008/08/08(金) 05:23:56.86 ID:7qes+vrfO
おはよう
起きたらすごく面白いものが投下されてるwww
◆zkさん、乙です!



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