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市松人形「私……呪われてますから」
52 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 17:29:49.78 ID:XB8nAD1m0
▼某日/昼/男宅

男「お前さ、俺が学校行ってる間は何してるの?」

市「んー、特に何もしてないですよ」

男「何もって、せめて散歩ぐらいしてくればいいのに」

市「それができればいいんですけど、私、人形から10mも離れられないんですよ」


53 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 17:35:42.12 ID:XB8nAD1m0
男「そうだったのか。そんなんじゃ退屈だったよな」

市「大丈夫です! 置いてもらえるだけ幸せですから!」

男「……お前意外と健気なんだな」ジ〜ン

市「えへへ///」

男(これからはTVくらいつけといてやるか)


55 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 17:42:27.72 ID:XB8nAD1m0
▼某日/昼/男宅

男「いらない。これもいらない。これは……いらないか」ガサゴソ

市「ゴミ捨てですか?」

男「そうだよ。家は常に綺麗にが俺のモットーだ」ガサゴソ

市「感心感心……って私(人形)もゴミ袋に入ってるじゃないですか!?」

男「チッ、バレたか」

市「バレたかじゃありませんよ! ドサクサに紛れてなんてことを!」

男「へいへい。すみませんでした」

市「捨てられても呪いの力でまた戻ってきてやるんですからね!」

男「本当に戻ってきそうで怖えな……」


56 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 17:45:51.34 ID:XB8nAD1m0
▼某日/夜/男宅

男「なぁ、市。お前も夜は寝たりするの?」

市「寝るというか、人形の中に入って休んでますね」

男「それって寝るのとは違うのか?」

市「そうですねぇ。見ようと思えば外も見れますし、音も聞けますけど」

市「男さんが寝られた後とかは、中でずっとボーッとしてる感じですかね」

男「そうやって呪いパワーを充電してるのか……」

市「違いますよ! 人形の中だと落ち着くんです!」

男「冗談だよ。そんなに怒んなって」

市「もう!」


57 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 17:55:11.78 ID:XB8nAD1m0
▼某日/夜/男宅

男「お前って幽霊みたいなもんなんだよな」

市「そうですね。普通の人には視えませんし、触れませんし」

男「ってことは、お前が見える俺には霊感があるのか?」

市「ん〜。それとはちょっと違う気がします」


58 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 17:59:07.25 ID:XB8nAD1m0
市「私を見れるのは人形の持ち主だけですし」

市「だから男さんの霊感の有無は関係無いと思います」

男「そっか……」

市「もしかして、『俺には特別な力が!?』とか思ってたんですか?」ニヤリ

男「バーカ。違うよ」

男「そんなんじゃないけど、ちょっと、残念だなって……」

市「……男さん?」

男「悪い、何でもない。忘れてくれ」

市「はい。……わかりました」

市(男さん、なんか寂しそう……)


59 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:00:58.57 ID:XB8nAD1m0
▼某日/夜/男宅

男「そうだ。明日の宿題しなきゃ」ガサガサ

市「これは数学ですか。うむむ」

男「おっ。この問題わかるか?」

市「……私、呪われてますから」シクシク

男「だからごまかすな。わからないならそう言え」

市「全くわかりません」キリッ

男「素直過ぎる!」


61 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:06:04.89 ID:XB8nAD1m0
男「……」カリカリ

市「男さ〜ん。遊びましょうよ〜」

男「……」カリカリ

市「暇ですよ〜。将棋しましょうよ、男さ〜ん」

男「……なぁ市」

市「はい、なんですか!? 将棋の用意なら出来てますよ!?」

男「邪魔」

市「……うぅ」

男「……」カリカリ


62 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:09:36.75 ID:XB8nAD1m0
市「うわぁ〜ん! 男さん酷いよ〜!」ボロボロ

市「私が呪われてるから遊んでくれないんだぁ〜!」ボロボロ

男「(ハァ……) あと30分だけ待ってたら遊んでやるから」

市「わぁ〜い! やっぱり男さんは優しいな〜!」スリスリ

男「さわれないクセにほおずりすんな。邪魔」


63 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:16:02.55 ID:XB8nAD1m0
▼数時間後

市「ここに歩を置いて……いや、こっちに銀が……」ブツブツ

男「なぁ市、いいかげんもう寝たいんだけど……」

市「ダメです! まだこれからです!」

男「だってお前、もうこれ――」

市「男さん、恐れてますね?」

男「は?」

市「ここから始まる、私の大逆転劇を恐れてるんですね!?」

男「……続けたいならどうぞ」


64 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:19:07.19 ID:XB8nAD1m0
市「閃いた! これが私の神の一手です!」

市「あ。ここに角でお願いします」

男「はいはい」パチッ

市「ふふふ。覚悟して下さい、男さん! これが男さんの牙城を打ち砕く――」

男「はい王手。逃げても持ち駒で攻めれば結局詰むから」パチッ

市「ま、待ったぁ!」

男「待った無し! さぁて寝るぞー!」

市「うわぁ〜ん! 酷いよ〜! 男さんなんて呪ってやる〜!」


65 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:22:40.99 ID:XB8nAD1m0
▼深夜

男「……」ZZZ

市「男さん寝ちゃいました?」

男「……」ZZZ

市「本当は起きてるんですよね?」

男「……」ZZZ

市「お・と・こ・さ〜ん? 寝顔覗いちゃいますよ〜? ……いつも覗いてますけど」

男「……」ZZZ

市「……よし」


66 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:27:20.52 ID:XB8nAD1m0
市(男さんの寝顔いつ見てもカワイイ〜っ!///)

市(顔近づけても、もっと近づけてみてもいいですか!?////)ソロ〜ッ

市(ひゃあ近いよ近いよ! これ以上近づいたら、唇が――///)

市(もうダメ! 市、突撃します!)

男「TKGは卵かけご飯の略です!」

市「うひゃいっ!?」ビクッ

男「じゃあQBKって何じゃらほい……」ムニャムニャ

市「ね、寝言ですか……。も、もう!」ドキドキ


67 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:30:00.42 ID:XB8nAD1m0
▼朝/男宅

男「ふわぁ〜。あっ、おはよ、市」

市「お、おはようございます」ドキドキ

男「ん。どうしたの?」

市「いや、その……」ドキドキ

男「何?顔になんかついてる?」

市「なな何でもないです! 男さんなんか呪ってやるですー!」ピュー

男「おい! ちょっと待てよ! ……なんだよ朝っぱらから」

市(ドキドキしてまともに顔見れません///)ドキドキ


68 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:35:57.56 ID:PYH1hmFC0
▼某日/昼/男宅

市「む〜……」フワフワ

市(男さんは学校行ってしまってヒマですね……)

市(たまにはおウチの中を散策してみましょうか)

市(何か面白いものでも見つかるかも――あっ!)

市「そういえばずっと気になってるものがありました」

市「リビングにある、このお仏壇は誰のなんでしょう」

市「遺影は……もしかして、男さんのお父さんとお母さん……ですか?」


69 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:39:07.49 ID:PYH1hmFC0
市(男さん、ご自分のことあまり話さないから知りませんでしたけど)

市(よくよく考えると、男さんはこの広い家でお一人ですよね……)

市(そっか。この前の自分に霊感が無いのかって話はこれだったんですね)

市(あれはきっと、お父さんとお母さんを……)

市「…………」


71 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:41:21.29 ID:PYH1hmFC0
市(……男さんのお父さん、お母さん)

市(男さんは真面目で、勤勉で、とても立派な方です)

市(だから、ご心配なさらないで大丈夫ですよ)

市(それになんてったって――)

市「男さんには私がいますから!」ニコッ


72 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:44:12.10 ID:PYH1hmFC0
▼某日/夕方/男宅

男「たまには一緒に外に出て散歩でもしてみるか?」

市「えっ、どうしたんですか急に!?」

男「家の中ばっかりじゃ退屈だろ? 気分転換だよ」

市「いいんですか!? 行きたいです!」


74 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:49:05.11 ID:PYH1hmFC0
市「あっ。でも私、ここから動けませんし……」

男「人形から離れられないってやつなら、人形も一緒に連れていけば問題ないだろ?」

市「それだけじゃなくて、私ほら、男さん以外の人には見えないですから、外で話すのも……」

男「夜ならこの辺りは人通りも少ないし、よっぽど大声で話さなきゃ怪しまれないだろ」

男「もし何か言われたら、『独り言です』で済ませばいいんだよ」

市「でも……」

男「余計なことは気にするな。お前が行きたいかどうかを聞かせてくれ」

市「……本当にいいんですか?」

男「いいんですよ」

市「迷惑じゃないですか?」

男「俺が誘ってるんだからそんなわけないだろ」


75 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:52:36.09 ID:PYH1hmFC0
市「なら、行きたいです!」

男「よし決まり!」

市「わぁーい! お外だー! お散歩だー!」

男「そんなにはしゃぐことかよ」

市「男さんとデートだぁ!」

男「は、はぁ!?///」


76 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:57:06.13 ID:PYH1hmFC0
▼夜/丘の上公園

市「男さん、着きましたよ! 公園ですよ!」

男「わかったわかった。はしゃぐなって」

市「うわぁ、ここ広いですね! 夜空もよく見えます!」

男「ふふふ、この公園の良さは広さだけじゃないんだよなぁ」

市「何かあるんですか?」

男「奥に行けばわかるよ。それまでのお楽しみ」スタスタ

市「奥ですか、――!?」


77 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 18:59:55.32 ID:PYH1hmFC0
市「ふわぁ……綺麗……」

男「この公園、街の一番高い丘の上にあるから街中が一望できるんだ」

市「家の明かりって、集まるとこんなに綺麗なんですね」

男「だろ? それに今夜は月も綺麗だよな」

市「え!?///」

男「ん?どうした?」

市「い、いや、何でもありません///」アセアセ

男「?」


78 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:06:28.67 ID:PYH1hmFC0
――ガタンゴトン、ガタンゴトン

市「男さん、電車! 電車が見えますよ!」

男「公園のすぐ隣に線路が通ってるんだよ。ほら、この先のあの明るいところが駅。わかる?」

市「あそこですか? 他よりもっと明るいですね」

男「駅前は朝までやってる店が多いからな」

市「そうなんですか。でもホントに、すごいキラキラしてます!」


79 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:09:45.44 ID:PYH1hmFC0
男「よし。せっかくだから、ここで夜景でも見ながら髪切ってくか」チャキチャキ

市「何でハサミなんか持ってきてるんですか!?」

男「髪を切ってやる為だよ」

市「本気ですか!?」

男「本気だよ。家を掃除する手間も省けるし、いいだろ?」

市「でも、恥ずかしいですよ///」

男「誰にも見られないクセに何言ってるんだよ。それとも嫌か?」

市「そんなことないですけど……///

男「じゃあ切ろう。最近だいぶ伸びてきたし」

市「わ、わかりました///」


80 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:14:17.23 ID:PYH1hmFC0
――チョキチョキチョキ、チョキ

男「……よし。はい、お仕舞い」

市「ありがとうございます」

男「今日はいつもより短めに切ってみた」

市「今回も素敵です。男さん、前回よりさらにお上手になりましたね」

男「フフン。実はけっこう勉強と練習してるからな」チャキチャキ

市「それって、私のためにですか?///」

男「はっ?/// いや、それは……///」アセアセ

市「私、すごい嬉しいです!///」テレテレ

男「お、おう///」


81 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:14:29.71 ID:P1thMj4p0
???「月が綺麗ですね」


82 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:20:05.41 ID:PYH1hmFC0
市「男さん、ありがとうございます」

男「おう。また伸びてきたら切ってやるよ」

市「そうじゃなくて」

男「?」

市「私をそばに置いてくれて、です」

男「はぁ? き、急にどうしたんだよ///」

市「最初はいつか捨てられるんだろうと思ってましたから」


83 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:23:03.86 ID:PYH1hmFC0
市「私、今すごい楽しいです。幸せです」

市「こんな風にずっと続いてくれるといいなって思ってます」

男「そっか///」

市「……男さんはどうですか?」

男「え?」

市「男さんは何で私なんかを近くに置いてくれるんですか?」


84 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:26:35.61 ID:PYH1hmFC0
市「本当は嫌々なんじゃないですか?」

市「本当に捨てたいって思う時もあるんじゃないですか?」

男「……初めは面倒なことに巻き込まれたなと思ったよ」

男「でも、今ではお前がいてくれてよかったと思ってる」

男「お前がいると家の中が明るいんだ」

男「こんなに明るく感じるのは、まだ親父たちがいた時以来だな」

市「……」


85 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:28:45.60 ID:PYH1hmFC0
男「だからそんなこと気にしなくていいんだよ」

男「これからも、何てゆうか……わかるだろ?///」

市「ふふっ。そうですね」クスッ

市「これからもこんな感じで、よろしくお願いします!///」

男「おう、よろしくな///」

市「はい!///」ニコッ


86 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:34:22.67 ID:PYH1hmFC0
男「じゃあ帰ろうか」

市「はい、帰りましょー!」

男「いやぁでもよかったな。警察とかに補導されなくて」スタスタ

市「……」ジーッ

男「市、どうした? ボーッとして」

市「えっ!? いえ、何でもないです!」

男「すごいマヌケ面してたぞ」

市「ほ、本当ですか!?」

男「嘘嘘。冗談だよ」

市「もう! 男さん!」


88 名前:VIPがお送りします [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:36:27.74 ID:+knoTSWu0
髪の伸びる市松人形がある市に住んでるけど質問ある?


89 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:38:11.86 ID:PYH1hmFC0
男「で、どうしたんだよ」

市「別に何でもないですよ! いーだ!」

男「そんなに怒るなって」

市「マヌケ面で悪かったですね」ツン

男「冗談だって。ゴメンゴメン」

市「……」

男「市、本当にどうした?」

市「……いえ、本当に何でもないです」

男「そんなハズないだろ。気になることがあるなら言えって」

市「…………」


91 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:40:49.24 ID:PYH1hmFC0
市「……笑いませんか?」

男「は?」

市「私が何言っても笑わないって約束しますか?」

男「あぁ。約束するよ」

市「…………あのですね。あの……その……」

男「?」

市「私、霊じゃないですか。フワフワしてるじゃないですか」

男「そうだな」

市「それで家の壁とか柱とか、男さんのこともスカスカって通り抜けられちゃうじゃないですか」

男「確かにな」


92 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:44:50.85 ID:PYH1hmFC0
市「でも、今、ちょっと思っちゃったんですよね」

市「男さんの……隣で……手をつないで歩けたらなぁ〜って///」モジモジ

男「……///」

市「そ、それだけです!///」

男「……そ、そっか///」

市「あ、男さん笑ってますね!?」

男「はぁ!? わ、笑ってねぇよ!」

市「いえ、顔がニヤケてます!完全に笑ってます!」

男「そんなことねぇよ!あーもうウルサイ!」

市「うるさいってなんですか!?」

男「ウルサイうるさい!」


93 名前: ◆j9t2MtZrb2 [] 投稿日:2013/03/27(水) 19:46:01.12 ID:PYH1hmFC0
市「だから言いたくなかったんですよ!」

男「だから笑ってねぇよ!」

市「あっ!逆ギレですか!?」

男「俺は笑ってない!断固認めない!」

市「もう!ホントに、もう!」


94 名前:VIPがお送りします [sage] 投稿日:2013/03/27(水) 19:47:11.98 ID:+knoTSWu0
甘甘すぎて死にたくなってきた。ちょっと市松人形のある寺に凸ってくる



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