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妹「お兄ちゃん……中に……!」
- 167 :VIPがお送りします [sage]
:2010/03/15(月) 02:44:52.32 ID:iPn+Gsgg0
自分用に人物一覧作ってみたのであげとく。1/2
兄:元自宅警備員で、現在は悪の組織事業部の下っ端として働いている。
改造手術により、怪人・ガール男に変身できるようになった。得意技はD.T.フィールド。人間時も発動可能。
基本的に何事にも無関心な性格で、何よりも身の回りの平穏を願う草食系男子。
妹:今では珍しい爆発する妹。
激しい爆発の発作、兄への恐喝に対する不安(?)等、何かと悩めるお年頃。
ある日、行き場のない怒りを怪人にぶつけてしまったことで、組織の新たな敵と見なされつつある。
両親:兄妹の両親。子供にはあまり関心を示さない。
- 168 :VIPがお送りします [sage] :2010/03/15(月) 02:45:45.40 ID:iPn+Gsgg0
悪の組織事業部の皆さん
女幹部:兄の上司。高卒の異名を持ち人心を自在に操る高貴なる女幹部。参>>44-45
かつてはその力量と強運で「色彩戦隊色レンジャー」の解散に暗躍した実力者。
しかし、”影”の役割を負っているため、幹部の中では発言力が弱い。
同僚A:ナイス☆ガイ
同僚B:仕事が速いので、よく暇している。
同僚C:きっとできる奴。
同僚D:きっとすごい奴。
悪の組織事業部代表(代表):最近の本部に不満を持つお方。
本部と事業部の力関係を逆転できないかなぁ、なんて思ったり。
代表補佐:代表の頼れる右腕。
悪の組織本部の皆さん
幹部A:どちらかというと武闘派。出世欲のため、女幹部を警戒している
幹部B:どちらかというと頭脳派。vs色レンジャー時代は女幹部の上司だった。
女幹部を再び支配下に置き、出世を目論む。
幹部C:どちらかというと武闘派。こいつも女幹部を警戒している。
色彩戦隊色レンジャー:かつては悪の組織に対抗していた正義の味方だが、女幹部らの活躍によって解散。
皮肉なことに、彼らがいなくなったことで悪の組織が張り合いをなくしたのも事実。ヒーローって難しい。
よく分かる悪の組織相関図>>56
- 169 :168です [sage] :2010/03/15(月) 02:48:36.21 ID:iPn+Gsgg0
2/2って入れるの忘れてた。
あくまで自分の主観ありきなので、あまり参考にはなさらぬよう…
- 170 :VIPがお送りします [sage] :2010/03/15(月) 03:41:12.67 ID:iPn+Gsgg0
ほ
もうむりぽ
残ってる人いたら保守頼む
- 174 :1 [] :2010/03/15(月) 06:04:49.42 ID:Xu/XV/yXO
保守してくれた人、多謝。
こんな俺にアリガトウ こんな俺なのにアリガトウ
“謝”りたいと“感”じている
だから感謝というのだろう これを感謝というのだろう
――という訳で、続き行きます。
※ちなみに、>>147のタイトルは「爆殺シューター妹」ね
- 176 :二部はフリーダム。最初からクライマックスだぜ! [] :2010/03/15(月) 06:13:06.67 ID:qOJKBVBB0
その邪悪なる魂はそこに居た
我が身の為なら世界をも滅せる、狂った破滅思想を携えて、都会の片隅で静かに息を潜ませていた。絶
対的な自信の無さに裏打ちされた、確かな消極性を漲らせて、ほの暗い安息の場所へ心を預けていた。
射し込む光など無ければ良かった。闇は優しく、その姿を包み込んでくれる筈だった。何も見えなくなって
しまう事を願う。暗黒は安息をもたらす。視界に何も映らない、意識に何もよぎらない、そうであれば良か
った。否定した、拒絶した。無を望んだ、乞うた、求めた。無色透明無味無臭人畜無害無理無茶無謀。何
かを感じる心は害悪だ。感覚も感情も不要だ。余計な物は要らない。自分は自分であるだけで良い。し
かし、その自分とは?それも不要ではないのか。特に目的も持たずに生きてきた、その理由は?死ぬ理
由も無いから生きているだけでは?そんな自分は否定し、拒絶されなければならない。無だ、やはり在る
べき形は無だ。自分は要らない、存在だけがそこに在れば良い。だが、空気に溶けて消えるには、足跡
を残しすぎた。闇に紛れて消えるには、あまりに純粋すぎた。何者にも成れない、消えることすら出来な
い。そして更に残念なことに、何事かを成し遂げる力も目的も持っていない。ついでに言えば職も無かっ
た 。それが本来あるべき姿なのかも知れない。楽になるためならば如何なる苦難にも身を投じた。しか
し、今や自己を捧げるべき日常は崩れ去った。もう何処へも流れ着くことは叶わない、ただ沈んでゆくだ
け。今ここに在るのはただの自由だった。目的を持たない者にとって自由とは不安だ。その不安という名
の毒は、腹の底から生まれ出て沈殿し、堆積してゆく。蓄積した毒は青から紫、紫から赤へと色を変える
。やがてそれは形を成した。突き出す何本もの棘を内臓に食い込ませ、肥大しながらその身を捩る。 痛
みは脊髄を伝って脳へ向かい、そこに停滞して恐怖と化す。痛みの種は常に腹の中に存在していた。た
だそれが芽吹かない様に、何も感じない様に心を殺してきた。耐えるだけの日々、それ以外に生きる術
を知らない。もはや痛みは感じなくなった。麻痺させた神経は揺るがない。腐らせた脳髄は濁らない。そ
して思う、何も手に出来なかった過去、何も持っていない現在、さらには未来をも失った 。今まで何も手
に入れられなかった人間が、何かを手にしたいと願うのは間違っていた、そんな事が許されて良い筈は
無い。こうなったのは仕方がない。許されない事を願うのは罪悪で、咎には罰が与えられなくてはならな
い。ならば自分の行く末は予定された、道理の中にある必然というべきものだ。それは仕方ないが、そ
れでも―――と考えたい。人間には出来る事と出来ない事がある。幾多の物を諦めてきたといえど、そ
れが不可能な物も存在する。だが何が出来る?出来る事など無い。何も変わらない。自分は所詮、自分
でしかない。結論は既に出ていた、ずっと前から決まっていた。他の結果はあり得ない※
無職の兄がそこに居た ※部は読み飛ばし可
- 177 :小ネタのフラグ立てに心血を注ぐ、それが俺のジャスティス [] :2010/03/15(月) 06:25:10.41 ID:Xu/XV/yXO
〜兄妹宅二階〜
妹「?」
22時前、夕食を終えて部屋に戻る妹は不審に気付いた。通り掛った兄の部屋に気配があるのだ
灯りは点いていないが、その中には何者かが居る。いつもなら、兄はとっくに出掛けている筈の時刻である
妹「お兄ちゃん?居るの?」
扉を叩いた、応答は無い→声を掛けた、反応は無い→ノブに手をかけた、扉を開く
妹「!……お、お兄ちゃん!?」
覗き込んだ暗い部屋、モニタの光に照らされた顔がこちらを向いていた。返事が無い、まるで屍の様だ
ただならぬ様相に、妹は底知れない寒気を感じた。いつにも増して表情の無い兄が、見てはいけないモノに思えた
妹「……いや、どうしたの?」
“こわくないよ”そう自分に言い聞かせる妹だったが、このまま兄が灰になって崩れ去ってしまう様な恐ろしさを覚えてもいた
兄「何の用だ?―――ああ、そうか……」
魂の抜けた、出来損ないの彫刻の様な面で侵入者を眺めていた兄は、何やら思い当たった風に鞄を探りだす
妹「え?なにやってんの?」
妹は混乱している
- 178 :よく考えたら、妹はロクな事してねーな [] :2010/03/15(月) 06:32:48.07 ID:Xu/XV/yXO
兄「で、今日はいくら欲しいんだ?」
兄は一つ小さな溜息を吐くと視線を上げた。そして足元の鞄から出した財布を携えて妹に聞く
妹「違う……そんな事言ってないじゃん」
兄「でも、他に用なんか無いだろ?」
妹「〜〜〜〜ッッッ!!!」
兄の不可解な応対の真相を知った時、妹の頬は紅潮した。面の皮一枚、羞恥によっても人は悶えるのだ
兄「だけど、これから先はあまり金をやれくなるかも知れん。すまん」
勝手に謝って落ち込んでいる兄は、金を脅し取られることに何の抵抗も感じていなかった。抵抗がない、即ち超伝導である
兄は金銭に頓着しない。自宅警備員時代の激務の日々が物欲を腐敗させ、綺麗に削ぎ落としてしまったからだ
また、それほど金を遣うこともない。交友関係など一切無い、趣味も特に無い、そもそも仕事以外で出歩くことは殆どなかった
支出の多くは食費とタバコ代で占められていた。まったく不健全であった。仕事を除いた兄の人生とは、単なる暇潰しに過ぎなかったのだ
そして業界最大手だけあって悪の組織の給料は悪くない。それが末端構成員であっても
事業部移籍に伴って多少下がったとはいえ、毎月受け取る額は兄には到底遣いきれないものだった
そんな兄であるから、妹に渡す金に執着は無かったし、そればかりか逆にその行為に満足している節さえあった
今まで碌に関わってはこなかった、そんな妹に何かを与えられことに、新鮮な充実感を発見してもいたのだ
- 179 :西部劇で地面を転がってるアレ [] :2010/03/15(月) 06:38:05.37 ID:Xu/XV/yXO
兄はもう、金銭の遣り取りを抜きにして自分を見ることが出来ない。妹は自分の行いを恥じ、悔いる
妹「違うよ……全然違うよ。お金のことじゃない……」
兄「だったら何だ?」
立てば枯れ草、座れば落ち葉、歩く姿はタンブル・ウィード。腰を上げた兄は、ひどく憔悴した様子だった
妹「いや、こんな時間だけど、仕事に行かなくて良いのかな、と思って……」
兄「仕事か……」
兄の顔に一層暗い影が差す。吹けば飛びそうな儚さ、触れたら壊れそうな脆さがそこに現れた
妹はそんな兄をついぞ目にしたことが無かった。いつだって無神経だった、泰然自若に何事も諦めていた
そこまでの悪人ではなかったが、血も涙も無かった。殺す術もないかに思われた不思議生物が弱りきっている
兄「仕事には、もう行けない」
妹「それって……」
その先を訊くことは憚られた。兄がどれほど仕事を大せts
兄「クビになった」
兄が言った
- 180 :死を恐るる心也 [] :2010/03/15(月) 06:42:56.55 ID:Xu/XV/yXO
妹「そうなんだ……。やっぱり私のせい……なの?」
重苦しい気持ちが伝播したのは、兄が解雇された原因に、自分が関わったという心当たりが有るからだ
兄「お前が気に病んでも意味は無い。気にしなければ気にならない事を気にするな」
自分の人生に介入されることを恐れる兄は、他人に責任を求めない。妹のした事など、気に留めるつもりはなかった
だが、それでは妹の気が済まない。仕事を失い、明らかに気落ちしている兄を、放っておく気にはなれないのだ
妹「でも、大丈夫なの?悪の組織って、そんなに簡単に辞められるものなの?」
兄「大丈夫じゃないだろうけど仕方ない。組織に刃向かう事なんて無理だし、逃げたってどうせ捕まるだろう――」
兄は悲観的な理屈を自己完結させて気を持ち直すと、諦観から捻り出した台詞を淡々と並べ始める
兄「――大体、俺みたいな駄目な野郎が職に就こうってのが間違いだったんだ。こうなる事は判ってた筈だったのにな。
自分に期待してみても結局、俺は俺にしかなれなかった。何をやったって、しくじるもんなのさ。ゲス野郎はな」
挫折と失意に魂のせて、行け行け弱気の漢道。頼みの綱は現実逃避、死を視ざること帰するが如し
妹「大丈夫じゃないのに、何でそんなに平気でいられるの?そんなのおかしいよ!」
兄「お前には解らなくて好い」
絡み付く悲嘆を気合で跳ね除け、妹は敢然と立ち向かう。なんだかんだで、兄VS妹 ファイッ!
- 181 :流兄と若き野獣妹 [] :2010/03/15(月) 06:50:08.42 ID:Xu/XV/yXO
「――『努力』なんてねえ。『達成感』なんぞ感じねえ。負けねえ。悔しいこともねえ。
嬉しさもねえ。思い切り何かをすることもねえ。なぜならオレは、何者にもなれないから。
何物にもなれないからオレは──────人生ってヤツを…………楽しんじゃいけねえのさ」
兄は両腕を広げて嘲笑う。僅かに残った気力を振り絞って、元気に弱がって見せる
妹「何でお兄ちゃんはそんなになっちゃったの……?」
兄「いや、何でって……」
妹「憶えてる?お兄ちゃんはその昔……ちっちゃい頃……迷子になって凍えている私を助けてくれたことがあったよね」
兄「?」
妹「――でも死ね」
想いは拳に、嘆きは牙に。ショートアッパーが兄の肝臓を打ち抜いた。よろめき落ちるその胸ぐらを両手で掴まえて引き起こす
妹の脳裏に蘇っていたのは、兄の忘れているであろう追憶の風景。あの時の兄は胸を張って『兄』と呼べる存在だった
それが妹の願う在るべき兄の形なのに、それなのに、今の情けない姿は何だ?どうしてこうなった?
妹「大人しく聞いてれば勝手な事ばっかり……誰もがお兄ちゃんの事をどーでも良いと思ってると思ったら大間違いだよ!」
耳を覆いたくなる様な、
- 182 :またミスった [] :2010/03/15(月) 06:53:08.09 ID:qOJKBVBB0
「――『努力』なんてねえ。『達成感』なんぞ感じねえ。負けねえ。悔しいこともねえ。
嬉しさもねえ。思い切り何かをすることもねえ。なぜならオレは、何者にもなれないから。
何物にもなれないからオレは──────人生ってヤツを…………楽しんじゃいけねえのさ」
兄は両腕を広げて嘲笑う。僅かに残った気力を振り絞って、元気に弱がって見せる
妹「何でお兄ちゃんはそんなになっちゃったの……?」
兄「いや、何でって……」
妹「憶えてる?お兄ちゃんはその昔……ちっちゃい頃……迷子になって凍えている私を助けてくれたことがあったよね」
兄「?」
妹「――でも死ね」
想いは拳に、嘆きは牙に。ショートアッパーが兄の肝臓を打ち抜いた。よろめき落ちるその胸ぐらを両手で掴まえて引き起こす
妹の脳裏に蘇っていたのは、兄の忘れているであろう追憶の風景。あの時の兄は胸を張って『兄』と呼べる存在だった
それが妹の願う在るべき兄の形なのに、それなのに、今の情けない姿は何だ?どうしてこうなった?
妹「大人しく聞いてれば勝手な事ばっかり……誰もがお兄ちゃんの事をどーでも良いと思ってると思ったら大間違いだよ!」
耳を覆いたくなる様な、消極的で後ろ向き且つ自虐的にして投げやりな言動は、感情を起爆させるのに充分な苛立ちをもたらした
妹「何でそんな簡単に自分を諦めちゃうの!?ねぇ!もっとちゃんと考えないとダメだよ。私なんかに、こんな事言われないでよ!!」
力の抜けた兄の頭蓋を、SATSUGAIする勢いで揺さぶりながらまくし立てる妹。秘め持った本性は獰猛、その猛威が今、瀕死の兄に牙を剥
- 183 :ブラザーブレイカー妹 [] :2010/03/15(月) 06:58:26.51 ID:Xu/XV/yXO
兄「俺が駄目なのは……俺が俺だからだ。俺がこうなったのは俺の所為で、その責任は俺が負うしか無いだろ」
打ちひしがれ、打ちのめされた心にはもはや、妹に対する精神的優位など残っていない
受け流すことの出来ない勢いに気圧され、圧倒された兄は弱音を吐き続ける事しか出来なかった
妹「オレ、オレって……何?詐欺?そんな自分の事ばっか考えてるのに、何でそこまで自分を嫌いになっちゃうの?」
眼前に迫る顔、今にも泣き出しそうな目、その奥に覗くのは怒りとはまた違った感情。だが、そこに至っても尚、兄は兄だった
兄「好きになれる訳なんてないだろ。俺を誰だと思ってるんだ――」
自分の弱点をどれだけ攻撃しても、そいつを殺せはしないと兄は知っている
だからこそ、突き刺さる言葉を防ぐ手だても逃げ場も無いこの場に於いて、自嘲は最後の拠り所だった
兄「――俺には何も無いよ。何も手には入らない、何をやっても失敗する。自分に裏切られるのはもう嫌なんだよ」
妹「ウソだね。お兄ちゃんは結局、悲惨そうな顔で一杯一杯なフリをしてるだけで、本当は悩んでなんかいないじゃん。
何をやってもダメって言えるぐらい何かをやろうとしたの?裏切られて凹むほど自分を信じてないでしょ?」
兄「違う、お前は分かってない。おr……」
妹「わかるよ、そうやって自分を責めてれば楽だよね。他人からそれ以上責められずに済むからさ」
許しを希いながら自ら傷口を晒し、血を吐いてのた打ち回ってみせる兄を妹は容赦なく責め立てる
いいぜ、兄が終わりの無い自己否定に安住しようってんなら、まずはそのふざけた根性をぶち殺す
- 184 :VIPがお送りします [] :2010/03/15(月) 07:05:13.45 ID:g74Ke/ZR0
本文読むけど、タイトル見てタイトルで頭いっぱいになる
最近タイトルに書く人少ないよな
- 185 :駄目だと思う奴は何をやっても駄目 [] :2010/03/15(月) 07:08:14.28 ID:qOJKBVBB0
身体から毒を搾り出す様な兄の懺悔は続く。その瞬間が最悪であることを祈る様に
兄「真っ当に生きようったって俺には無理なんだよ。普通の奴等が普通にやってる事が出来ない。何かが欠落した異常な人間なんだろうよ」
妹「奇人?変人?だから何。お兄ちゃんが変なのなんか知ってるよ。でもそんなの、何もしなくて良い理由にはなんないよ」
兄「だけど、どうせ俺には何も出来ない。仕事を始めてマトモになれた気がしたけど、やっぱり駄目だった」
妹「“どうせダメだ”って思ってるから“やっぱりダメだ”って思っちゃうんだよ。最初の心構えが間違ってんの」
“来い、弱音の全てを否定してやる”と、妙な使命感で迎え撃つ妹だったが、自らの言葉に言い知れない違和感を覚え始めてもいた
考える必要も無く駄目出しが浮かんでくる。まるで自分の意思を離れた何かに言わされている様な感覚があるのだ
兄「そうだな、間違ってた。人並みになろうってのは間違いだった。そんな事、許されないよな」
妹「あのさ、そんな風に自分を悪く思おうとしても無駄だよ?」
兄「え……?」
妹「自分には何も出来なくて当たり前だって思いたいだけでしょ?最初から無理って事にしとけば、上手くいかなくても辛くないから――」
これまでの無為な人生を諦められず、かといって満足することも出来ない兄は、自身を最底辺の存在と見做すことに逃げ道を見出していた
何者にもなれず、何かを願う権利も無い自己を仮構することで、現実と向き合わない理由を作り、間接的にそれを正当化しようとしたのだ
前提を否定する事による発想の逆転、“開始線に立たなければ、走り出さなくても良い”という理論である
妹「――でもね、それで楽になれた?やっぱり苦しいまんまだったら意味無いじゃん。そんなんじゃダメなんだよ」
兄の悲観的な生き様は自己防衛の手段でもあった。労力に見合った効果が得られない点を考えなければ、優れた方法と云えるだろう
- 186 :ani - mendokusee yo koitsu [] :2010/03/15(月) 07:16:06.72 ID:qOJKBVBB0
妹「お兄ちゃんは、弱くて 卑屈で 孤独で 情けなくて 臆病で 暗くて 気が小さくて 頼りなくて
卑怯で 嘘吐きで 自分勝手で 消極的で 無気力で 不器用で 鈍感で 変なトコだけ繊細で
要領悪くて 気が利かなくて 無神経で 内向的で 自信が無くて 挙動不審で 不健全で 足が臭くて
意志が弱くて 意気地がなくて 頑張れなくて 嫌になって もがきたくて 足掻きたくて 止めたくて
成長したくて 打開したくて 方法が無くて 逃げ出したくて 苦しくなって 楽になりたくて 足を止めて
挫折して 途方にくれて 落ち込んで 欝になって 後悔して 希望は無くて 死にたくなって 出来なくて
拒絶されて 否定されて 落ちこぼれて 見放されて 見限られて 居場所は無くて 閉じ篭もって
壊れたくて その理由も無くて 信じたくて 自分を騙して 裏切られて 変わりたくて 変えられなくて
助けを請いたくて 救いを求めたくて 許しを願いたくて でも言えなくて 叶わないって諦めて 言い訳して
勝手に傷付いて また思い込んで また元に戻って また繰り返して 巡り巡って そんな自分が
嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに
嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに
嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに嫌なのに
本当に嫌いにもなれなくて、そのままでいることに納得しちゃって、そんな自分もやっぱり耐えらんなくて、だけど……え〜と……」
兄「言いたい放題だな。もう良いだろ……」
妹「あれ?自分ではあんなメタクソ言うクセに、私に言われるのはダメなんだ」
妹は見透かした様に笑って手を離す。既に自由は奪った、いつまでも捕まえていなくても声は届く
余裕を失った無表情は妹を見据える。追い詰められた草食動物が、捕食者から視線を外すことは出来ない
妹「やっぱね、自分を大事にしてあげたい気持ちってのは誰にでもあってさ。それを変に無視しようとするからオカシくなっちゃうんだよ」
兄「もし……いや……仮に、そうだとしても、自分で駄目にしたこの人生は、俺を許してくれないだろう」
妹「知らなかったのか?自分からは逃げられない……!でも、何とかしないと一生このままだよ。誰も助けてくれないよ?」
妹が抉り出したもの、それは兄の知ろうとしなかった本当の兄だった。兄の見捨てようとしたジブンジシンだった
- 187 :次話は目に優しいものを用意して御座います [] :2010/03/15(月) 07:25:32.73 ID:qOJKBVBB0
兄「一生……」
妹「無論、死ぬまで。自分を嫌いになろうとしたまま生きてくなんて無理だよ。どんだけ人生ナメてんのよ」
兄「人生ナメてる、か。そうかもな。でも、それを否定したら、無駄だと思ったら、その意味も無くなる。そんな事は……」
自らを否定し、尚且つその存在であり続けるという自家撞着、その不可能を可能にしていた物は、兄の持つ意外な精神力だった
だだ残念なことに、その驚嘆すべき力は盛大に使い道を誤っていた為、意味を成していたとは言いがたい
そして兄は、その過程で得た辛苦の全てを、無価値だと断ずることを恐れる。その大いなる徒労こそが生きる術だったからだ
妹「出来もしないクセに、何でも一人でやろうとするからアホなんだよ。お兄ちゃんに出来ないなら私が否定する。無駄無駄(略)無駄ァ!!
変な方向に、いくら頑張ったって意味なんて無いんだよ。でもね、そんな中でも出来ることがあるんなら、全部が無駄だったワケじゃない」
何だか自分は、とんでもない事を言おうとしてるんじゃないかと思わないでもない妹だったが、だからといって手が鈍る訳でもない
妹は急に止まれない。Live Like a Rocket!言葉の重みを仏恥義れ。心に牙を突きたてろ
はだかの兄の心は、まあ、はだかっつっても心の話だからなんつーか、こう、心がまる出し状態みたいな意味なんだけど
丸出しのソレを屈服させられるものは、兄を上回る独善と、それを押し通す強固な意志。約束された結末まで、ロケットで突き抜けろ
兄「俺に出来ることなんt……」
妹「うん、もう良いよ。お兄ちゃんが自分を許さないなら、私が代わりに許す。大丈夫だって思えないなら、私が代わりに思う」
兄「代わりに思う……だと……?そんな事が可能なのか!?」
妹「出来るよ、間違いないね」
堂々と断言する妹、対する兄は殊の外落ち着いていた。頸に掛かった牙は振り解けない、相手が勝ち誇った時、兄は既に敗北している
兄「――っ痛……」
妹「だ、大丈夫?ゴメンね、思いっきりグーで殴っちゃって」
抵抗の意思も失せ、全身の力を抜いて壁に凭れた兄は、痛む右脇腹に眼を落とした。それを気遣う妹は手を伸ばす
・ ・ ・ ・
兄「謝るなよ、偽善者。お前が大丈夫だと思うんならそうなんだろう。お前ん中ではな」
妹の打ち込んだ致命的な致命傷でダメージはさらに加速した。兄は否定的な自分を否定されることを望んでいたのだ
- 188 :イメージしてた映像に、近いものが書けた気がしています。 [] :2010/03/15(月) 07:33:13.49 ID:qOJKBVBB0
こともあろうに兄は許されてしまった。また、それと同時に許されなくもなった
密かに望みながら、決して手は届かないと望むことを諦めていたものがそこに在った
そうか
この掌にあるもの
これが
心
心
心 心 心 心
心 心 心 心
心 心
心 心 心
心心心心心心
か か
か か
かかかかか か
か か か
..か か か
か か
...か ..か..か
か
- 189 :妹はビーナスでクィーンでマドンナ [] :2010/03/15(月) 07:41:36.78 ID:qOJKBVBB0
その世界は妄想と現実の狭間で、極めて危うい均衡の上に成り立っていた
兄「俺に出来ることか……」
妹の去った部屋、体を起した兄は痛む脇腹と鳩尾に手を添えた。そして独り考える。耳に残ったのは妹の言葉
出来ることが在るのなら、何かをしなければならない。望まない事が許されなくなった今、蓋然性は自分を縛る
ずっと崖の縁に佇んでいた。風が吹く事を期待しながら。足元が崩れれば好いと願いながら
だが、大気は動かず大地は盤石、このまま朽ち果てる時を待つのも悪くない思った
するとその時、妹が背中を押した。落ちる、墜ちる、堕ちる―――
叩き付けられる先は何処か分からないが、地面にブチ当たるまでは堕ちていく感覚に酔えば良い
頭の中で人生を生きる兄は純情可憐、過激に一途、思い込んだら命懸け
一つの理解があれば、それがそのまま事実認識として機能してしまう。だから認識する全ての事象は必然だった
理解の変換に時間が掛かる兄の腰は重い。しかし一度動き出した後にその質量は、容易には止まれぬ慣性力となる
もう、イジけた目つきはしていない……彼の心には、さわやかな風が吹いた……
必然で満ちた世界に、迷いの生ずる余地は無い。行く手を阻む物を薙ぎ倒し、踏みしだき、破滅の途を兄は征く
この日生まれ出でた怪物は、『悪の貴公子ブラック兄』……
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