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今、彼女が空へ向ける機械は誰にも愛されぬ彼の思い出
77 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:39:46 ID:czYYFPfk
機械「リョウカイ、シャサツシマス」ドン ドン

モブU「あ ぐぁっ!!」

モブN「きゃあぁアアぁあぁ!あっ、ぁっ」

機械「セイゾンカクニン、シボウ」

モブW「おがぁざーんッ!おがぁざぁぁん!」

ドンッ

機械「モクヒョウチンモク」

傭兵「テメェもな、沈黙しろや」ガチャ

ズドン


78 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:40:09 ID:czYYFPfk
機械「PRqlll…jgi…@」バチ、バチ

傭兵「ッチィ……!よくもまぁこんなにも殺して…調子コキ過ぎだテメェ等……」

女友「傭兵さん!」

傭兵「おぉ、女友ちゃん!無事だったんな」

女友「はい…!あの、女は…!?」


79 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:40:24 ID:czYYFPfk
傭兵「大丈夫、安全な所にいるから。それよりも…早く隠れろ。機械共が近付いてきてる。俺は仕事をせにゃならん」

女友「でもこんなたくさんの機械……傭兵さんが死んじゃう!」

傭兵「いやいや、俺ぁ傭兵よ?機械狩りだしてなんぼの金を貰うのが俺様よ?その俺が……機械から身を引いて、何が残る」


80 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:40:55 ID:czYYFPfk
女友「だから、死んじゃうって……!」

傭兵「想像してみろ。俺が死ぬところ」

女友「……っ!?」

傭兵「出来ねぇだろ?いいから、行け。邪魔だ」

女友「……!?」

傭兵「心配すな。ここは俺がきっちりケツ持つから。さぁ、早く行ってくれ」

女友「わかり…ました……死なないでくださいね……?」ダッ

傭兵「……精々頑張るよ。気持ち程度には」

機械「モクヒョウ、ハッケン」ガキョ

機械「pipi、パッケージ、サクジョ」ヂャギ


81 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:41:29 ID:czYYFPfk
機械「ピピ……コタイ、キョウ。gigi」

傭兵「感情もなく惰性に動くテメェ等め……」

ガキョン

ガキョン

傭兵「ふぅ〜………」ダッ

機械「!?」

ズドン

機械「knu……tc…?*$ギィ……」ドズ…ン

傭兵「怒りも湧かないような……」ユラァ…

傭兵「貴様等は死ね。惨たらしく惨めに!!」


82 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:41:48 ID:czYYFPfk
女「ねぇ博士……町のみんなは大丈夫かな…」

博士「それは僕にはわからんね。僕は全知全能ではないから」

女「イヤだよ……私、みんなが死んじゃうなんて……!!」

博士「落ち着きなさい。今の僕らには何も出来る事はないよ」

女「だって……ねぇ博士!その機械を使えば」

博士「ダメだ」

女「何でよ!?」

博士「ほぼ完成している。確かに機械は動く。だけど、今これを起動したとしても使い物にはならないんだ。町を救うことは、出来ない」


83 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:42:09 ID:czYYFPfk
女「……そんなの、やってみないと…………わからないじゃない!」

博士「わかるさ。僕自身が」

女「そうだよね……博士は人類を救わないといけないものね……あんな小さな町の為に一々機械を使ってられないもんね……!」

博士「失礼、僕は人の命の量を天秤で計ったことはないよ」

女「…………ごめん、なさい」

博士「いや…僕も不謹慎過ぎた。しかし……約束は守るよ。人類は救うし、今は君を守る」


84 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:42:32 ID:czYYFPfk
傭兵「ウォォルァァァあッ!!」ドゴォ

機械「w#5…#=<ー」ギ…キィ…ギゥ……ン

傭兵「アウトォォォ!!ハァァ〜ッ……ふっ はぁ……っぁぁああぁ!!あと、何アウトだクッソがぁぁ!」

ダン

傭兵「ぉ……ぁ…………?ガハッ……!?」ビチャ

機械「pipipi、MGE、ATK」

傭兵「イデェェェ!!痛ッ!!…ガッ!畜生………!クソッタレ!!あ゙ぁがあ゙ぁぁ゙ぁ゙ッ!?」ガクガク


85 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:43:02 ID:czYYFPfk
傭兵「シネェェェッ!!」

ズガッ

機械「」キュゥ…ゥ…ン

傭兵「がっ……はぁ、かっ………こほ!ごぼっ…………」

傭兵「…………っぅぅぅ゛……ヴ オ゛ェッ……!!」ピチャ…

女友「傭兵さん!」

傭兵「っ……あぁ……天使じゃあ、……な、ないみたいだ……な…」

女友「しっかり……しっかりして……死なないで!!」


86 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:43:17 ID:czYYFPfk
傭兵「慌てん、な……よ……ゴホッ!助かるもんも助からねーゾ……」

女友「うん……!うん……!医者、お医者さん呼べば……」

傭兵「あぁ……コホッ!カハッ!……おごっ……頼む……」

女友「死なないでね……ちょっと、人呼んでくるから……!」ダッ

傭兵「畜生……久しぶりに……死にかけだわ……」



ダンン……

傭兵「え……?」


ドサァ……


87 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:53:13 ID:czYYFPfk
その日彼女は不運な巡り合わせにより

形を遺すこともなく、言葉を遺すこともなく

想いを伝える事も出来ず誰に看取られる事もなく笑うこともなく

それは世界全体から見ればただの一つの現象である死と言う出来事により

彼女の倒れるまでの時間はまるで人生のオマケの時間の中、さりとて想うことも出来ることも何もなく

トクン、トクンと心の臓腑は脈打ちながら陽炎のように彼女の命が消えた


88 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:53:33 ID:czYYFPfk
天にまします我らが神よ

今日、尊い命があなたの身元に旅立ちました
願わくば母が我が子にキスをしてその荷を下ろすように
御霊に安寧をお与えください
その広い身座にて寝床をお与えください

女「……」

そして安らかにその御霊があなたの身座にあらんことを、祈り申し上げます

神よ、我らが崇めたる神よ
暗い現し世に於いて旅立つ親愛なる御霊に祝福をお与えください

女「……」


89 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:53:49 ID:czYYFPfk
『……つまり、新しい計画では、民間人からも広く参加者を募ると言う事ですか?』ガ…

『その通りです。毒を以て毒を制す言葉通り、人と機械の融合により、従来の機械よりも大幅に性能を上げた人間として生まれ変わることが出来るのです』

『しかし人道的、倫理的な問題が』

ヴヴズ……ザサ……些末なことであると言い切りましょう。人の手が作り出した機械によって人が滅ぶなど滑稽極まりない。なりふり構わず足掻かなければならないのです。そのために受ける非難は真摯に私が受け止めます』


90 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:54:10 ID:czYYFPfk
『なぜこのようにたくさんの人からの協力を得ようと?』

『人体の機械化には二つの壁があります。一つは適応性、もう一つは自らを維持できる精神力です』

『前者については先天性のものですが、後者については各々どれだけ自我を保っていられるか……早い話、機械をどれぐらい憎んでいるか、と言う事です』

『人の機械化は本当に必要なのでしょうか?生身の人の力だけで対処は……』


91 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:54:22 ID:czYYFPfk
博士「出来ない」

『出来ませんね。周知の通り、戦争のため機械を生み出した大国は今や滅びノーマンズ・ランドに成り果てた。生き物の住めない所となったのです。機械は、機械自身が生み出しているので、そこに乗り込み元を絶たない限り……奴らは増え続ける』

『そこで、融機人、ですか』

『はい。限りなく人間を残し、性能を限りなく機械に近付けた人は、もはや従来の機械を凌駕する、人の進化の延長線上の存在です』


92 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:54:57 ID:czYYFPfk
『その機械となる人hブッ


博士「…………」

博士「おはよう」

女「……」

博士「僕からは何も言えない。出来ることもない」

女「……女友ちゃんが…………死んじゃったの……」

女「私ね……お父さんもお母さんもお姉ちゃんも殺されて…………でも、女友ちゃんが私を励ましてくれて……博士と出会って…………希望はあったの……」ポロポロ


93 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:55:32 ID:czYYFPfk
女「でもね……でも、もう、冷めちゃった……私、もう、自分がイヤになった……」

博士「ならば、どうするね?」

女「私は……機械を許さない。私は衝動に従う」

博士「そして君は融機人となるのか。それは間違いだぞ。人を捨てて、君は何になりたいんだ?」

女「人間以外の私になるわ。機械への殺意をたぎらせて」

博士「…………人の人生に口出しを出来ないと言ったのは僕だ。だが、言わせてもらう。君の判断は本当に間違っている」


94 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:56:03 ID:czYYFPfk
女「うん……だと思うな。それでも私は抑えられないの」

博士「君は……自分を無くしたいのだね」

女「そう……かもね……」

博士「もうすぐに僕のやってきた研究が成果を成そうとしているのに……何故……」

女「それとこれとは……また別よ。私はもう…………博士、さようなら」

博士「……」

女「こんな良いお天気の日に、私は行きます。お別れです……ありがとう」ザッ


96 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:56:32 ID:czYYFPfk
博士「何故だ……」

博士「そんなものに成り果ててまで、復讐をしたいのか……」

博士「わからないよ僕には……君は真っ当に生きるべきなんだ……」

博士「僕は君に救われたが……僕は君を救えないのか……」

博士「空しいな……」


97 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:56:59 ID:czYYFPfk
傭兵「よう先生、荒れてんな」イテテ

博士「君か……重傷だと聞いたけど、大丈夫なのか?」

傭兵「頑丈なのが取り柄でな。あいにくと簡単には死なない身体なんよ。つーか機械のアレスゲーな。あの銃!連射!」

博士「機関銃?」

傭兵「それだ機関銃。あれ、間合いを制圧するぞ。いとも簡単に。畜生、ズルいよなぁ」

博士「少々……目立ちすぎたね君」

傭兵「あぁ……ッコイショ……派手にやりすぎたよ」


98 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:57:30 ID:czYYFPfk
博士「こんな小さな街で局所的に機械が行方不明となれば……」

傭兵「敵は学習してここに傾注する」

博士「しかし君は間違ったことはしていないよ。責務を果たし村人を護ったんだし。結果だよ……結果がこうなったんだ」

傭兵「遅かれ早かれこうなる事か……他に道はあったんだろうか」

博士「今となっては考えるほど後悔さ」


99 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:58:07 ID:czYYFPfk
傭兵「……なぁここさ、何でこんなに孤立してるんだ?」

博士「孤立?」

傭兵「いや、孤立させてるんだな。すまん今答えてもらう前にわかった。機械に攻められても最小限、問題ないように構えてある。現実的には。だろ?」

博士「現実的……?まぁ、その通りだね」

傭兵「だが、精神的には孤立し過ぎるなココは。あんた今、独りだろ?先生」

博士「……とても余計な、お世話だよ」


100 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:58:34 ID:czYYFPfk
傭兵「クク……あ、いてぇ……!彼女な、さっきここに来るときにすれ違ったよ」

博士「それがどうかした?」

傭兵「何か、言葉を残されたよ。最後みたいな言葉」

博士「彼女、融機人になるつもりらしいからね」

傭兵「んなッッ!?何で……!ッデェェ!」

博士「騒ぐといくら何でも傷が開くぞ?」

傭兵「いいから!!何で彼女が融機人になるんだよ?」

博士「僕は彼女じゃないから機微まではわからんけど……気が済まないらしいよ。自分で機械共を壊したくてならないらしい」


101 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:59:06 ID:czYYFPfk
傭兵「……何ッで…………止めなかった…」

博士「止めたよ。そこはある程度食い下がらなかった。でもね、やっぱり衝動に従うんだって、後悔してもいいから、自分で機械を潰したいって」

傭兵「衝動に……あ〜…ああぁ、あ〜ならしょうがないか……そこらへんは……」

博士「……やけにあっさりな…」

傭兵「ぅヴごげはぁ!!」ピチャビチャ

博士「うわ」


102 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/12(日) 23:59:36 ID:czYYFPfk
傭兵「そんな、簡単な問題なわけあるかぁ!?」

博士「あぁ、簡単じゃないさ。彼女は今となっとはもう……」クシャ

傭兵「他の誰が無理だろうと、それが神だろうと、あんたなら……止めれた筈だ。なぁ、亡国の融機人」

博士「……うるさい。もうこの話はやめよう」

傭兵「その身体を見せてやりゃあよかったんだ。鋼にあがなわれて人類の進化にうたわれたそれを」

博士「やめろ、と言っただろ……」


103 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/13(月) 00:00:01 ID:E/it6.pM
傭兵「どこまでその身体は紛い物なんだ?お?一端以上に戦えるガタイなんだろ?」

博士「話が通じん。し、話にならん」ガッ

傭兵「ッ…… !!  ぁハ… !」ギリギリ

博士「このまま首をヘシ折っても、よかったぞ?」パッ

ドサァ

傭兵「ッっぉごほっ……!! カッ ハッ 腕はぁ、っき、機械か……」

博士「ついで言うと、両脚、両腕、顔面半分、内蔵諸々、半分……やいやい……三分の二、は、機械か」

傭兵「で……でら凄ぇ……!」


104 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/13(月) 00:00:56 ID:E/it6.pM
傭兵「しかしそんなアンタだからこそ、彼女を止めるべきだっただろ。違うか?」

博士「……彼女の選んだ道の覚悟は、僕の言葉よりも重いものだったよ。会えばわかる」

傭兵「話にならんのは……アンタの方だ。先生、俺は帰るぜ」

博士「別に引き留めてはいないさ。お帰りはあちらです」

傭兵「知ってるっつの…………あ、あ、そうだ。あんたが知ってどうなるかは別に関り知らんけど……ここ来るとき彼女に言われた事があってな」

博士「……」ピク

傭兵「聞きたい?」


105 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/13(月) 00:01:40 ID:E/it6.pM
博士「ハハハ、意地悪だな。もっ回その喉締めようか?」

傭兵「勘弁。あのな、さっき女ちゃんが……すっげー寂しそうな笑顔でな……俺の横、通った。あの笑顔はダメだなって思ったよ」

傭兵「と思いきや、俺を引き止めて一言」


『傭兵さん、博士を守って下さい。博士は絶対に、人を救える方なんです』


傭兵「わかるか?わかるよな?わかれよ。あんたが今孤独だと思っていても」

傭兵「何のことはない。彼女だけはまだお前を信じてる」


106 名前:深夜にお送りします [] 投稿日:2012/02/13(月) 00:06:14 ID:E/it6.pM



博士「…………っ」

博士「〜……っ」

博士「ッッッ…………〜!」

救えるわ。天使の羽が降り注いでいるんだもの。私が、お願いするもの

博士「まだ…………まだ…………!!」ズリズリ

博士「まだ…………応えれないのか…………!!」ガン!

博士「すまない…………」ギリ…



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