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妹「お兄ちゃん……中に……!」
- 61 :げっちゅーに妹 []
:2010/03/14(日) 17:41:41.63 ID:vckn6hKp0
〜しばらく後街〜
夕刻の繁華街を行き交う人々は、どいつもこいつも各々の都合で動いている
飛び交う喧騒は妹などには目を留めない。そして、それは妹にしても同じ事だった
妹「うん、ちょっと体調悪くて……私、帰るね」
妹は気遣う友人達に別れを告げて駅へ向う。今の状態で皆と一緒に居ることは出来ない
“が……あ……離れろ……死にたくなかったら早く私から離れろ!!”叫べるものなら叫びたかった
妹「ク……疼く……こんな時にまで……」
利き腕を押さえて呻く。帰り着くまでの数十分を耐え切れるか
乗り込んだ各駅列車、座席が空いていたのは幸運だった。妹は目を瞑って俯き、湧き上がる衝動を堪える
妹「っは……し、静まれ……私の腕よ……怒りを静めろ!!」
電車の震動が体に響く。滴る汗が止まらない。一瞬でも集中が切れたら全てが終わる
妹「また暴れだしやがった……ぅ……く……」
何とか最寄り駅まで辿り着いた妹だったが、そこから家までの距離が果てしなく遠い
決して走らず急いで歩いて帰って、そして早く爆発しなければならない
爆発を我慢したままこんな街中歩くなんて、頭がフットーしそうだよおっっ
- 62 :VIPがお送りします [] :2010/03/14(日) 17:47:50.42 ID:vckn6hKp0
〜兄妹宅〜
妹は日に一回程度の爆発を必要とする
望む、望まずとに関わらず、それは妹として生きる上で欠かせない行為だ
しかしこの世は、好きな時に望む場所で爆発を行える様には出来ていない
爆発の許された然るべき施設、妹にとってそれは自宅地下の爆発室だった
体力、気力、小宇宙(コスモ)を燃やして帰り着いた家、靴を脱いで鞄を落とす
手摺に縋って闇の澱む階段を降りた先の爆発室へ。二重の扉を閉めてロックを掛けて―――
妹「ぁ……!」
響く轟音、世界が揺れた。全身から煙を立ち上らせる妹は虚脱と倦怠に倒れ伏す
視界が白む、力が抜ける。何も考えられない、冷たい床に体が沈んでゆく
妹「ふぅ……」
若干の微睡みの後、目覚めた妹は体を起こして一息吐いた。目を閉じる、頭が重い
妹「こんなの……初めて……」
意識さえ遠のく、今まで味わったことの無い感覚。今回の爆発はかつてない規模のものだ
もし街中で起こったら惨事は免れなかっただろう。日々高まる爆発力は妹の心配の種なのだった
- 63 :VIPがお送りします [sage] :2010/03/14(日) 17:51:07.83 ID:vckn6hKp0
〜妹部屋〜
妹「はぁ〜……私ってどうしてこうなんだろう……」
ひとしきり爆発を済ませた後に訪れるのは自己嫌悪。本能に逆らえない自分が憎い
妹の四大欲求の一つである爆発欲が有るのは仕方が無いが、世の妹達は街中で暴発などせずに暮らしている
こんな事で悩むのは自分だけなのだろうか。考えるほどに惨めで情けなく思えてきた
妹「昨日の分が軽かったのが良くなかったのかな……あ、そういえば……」
妹は玄関先に鞄を置き忘れたことに気が付いた
鞄を取りに一階まで降りる妹。通り過ぎた兄の部屋には明かりが点いていた
妹「さっきので起こしちゃったのかな?」
先程の爆発は家全体を揺るがした事だろう。それが兄の眠りを妨げたのだとしたら―――
妹「ゴメンナサイ」
若干の後ろめたさを感じる妹は、心の中で小さく詫びるのだった
妹「!」
部屋に戻って鞄を開けた妹は真っ先に携帯を確認した。着信を示す赤い光が点滅している
それは友人からのものだった。妹の具合を気に掛けてのことだろう。妹はすぐにかけ直すことにした
- 64 :覚悟はいいか?/うん、もうちょっと待って [] :2010/03/14(日) 17:55:12.09 ID:vckn6hKp0
妹「――うん、うん、ホントごめんね。もう大丈夫だから。うん……明日も学校行くから。じゃ」
電話を切った妹は携帯を閉じて充電器に挿した。何か友人を騙しているようで気が重い
体調が悪かったのは確かだが、妹のそれは心配してくれる様な種類の物ではないのだ
交友関係に始まり、恋愛、学業、健康等々、妹は悩みの尽きない生物である
妹「今日いっぱい爆発したから、明日は遊べるかな……あ、お金ないんだ……」
そう毎日遊び歩けるほど妹は金を持っていない。これも心痛の元の一つだった
妹「バイトしたいんだけどな……」
金銭を得るには労働が必要だ。しかし、爆発する危険のある体で、出来る仕事など在るのだろうか
妹「う〜ん……あ!」
とある考えが浮かんだ妹の目が輝く。自分で稼げないのなら、金の有る所から奪えば良い
『兄を利用する』『秘密は守る』「両方」やらなくっちゃあならないのが「妹」の辛いところだな
- 65 :団長兄 [] :2010/03/14(日) 17:59:05.72 ID:vckn6hKp0
〜兄部屋〜
17時、椅子に胡坐をかいた兄は自室でパソコンに向っていた。オナニーも既に済ませてある
兄にとってこの時間帯は、昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらない平穏なものだ
別に妹の爆発で目を覚ました訳ではない。それよりもずっと早くに起きて一日を始めている
朝7時頃に寝て15時前後に起きる。その後、21時半前に出勤するまで家で時間を潰す、それが兄の日常だった
週に一回程度スーパーに食料品等を買い出しに行く以外は外出することも少ない
勤め先が悪の組織だという点を除けば、誠に規則正しく、清く正しく、そして不健全な生活である
兄「……」
薄い壁を隔てた隣室から聞こえていた声が止んだ。妹は通話を終えたようだ
兄「だけど……アイツも大変だな」
兄は妹を思う。多くの物を犠牲にして爆発の中に生きる妹は、果たして幸せなのだろうか
しかし、こういう発想が出来るのは妹を労われる余裕が生まれたという事で、それはそれで喜ぶべきなのだろう
元通りの当たり障り無い兄妹関係に戻れたら理想的なのだが―――
兄「!」
部屋の扉を叩く音に思慮は断ち切られる。兄はタバコへ伸ばしかけた手を止めた
- 66 :魚兄 [] :2010/03/14(日) 18:03:34.79 ID:vckn6hKp0
妹「――えっとね……」
部屋に呼び入れたは良いが妹の様子が普段と違う。伏目がちで仕草に落ち着きが無い
その上、いつもなら単刀直入に突き付ける筈の用件を、今日はなかなか切り出さない
兄「どうした?」
妹「お兄ちゃん……お金貸して……」
兄「何故だ?」
歯切れも悪く妹が口にした要求は、兄には理解し難いものだった。言いたい事は解るが理由が判らない
妹「何でって…………。遊びに……行きたいから……」
兄「そういう事じゃない。何でそれを俺に頼むのか聞いてるんだ」
この兄妹の間に金銭の遣り取りをする習慣は無い。兄が問題視しているのはその点だ
妹「私はお金が欲しいの。お兄ちゃんの仕事のこと……お母さんに言っちゃうよ?」
兄「……そういう事か……」
途切れながら震える声と、決して逸らすことなく見詰める瞳は、妹の遠慮がちな決意を感じさせた
兄は「言葉」でなく「心」で理解できた。妹は自分を強請るつもりなのだ、と
- 67 :生ハム兄 [] :2010/03/14(日) 18:08:09.62 ID:vckn6hKp0
兄「で、いくら欲しいんだ?」
兄は一つ大きな溜息を吐くと顔を上げた。そして足元の鞄から出した財布を携えて妹に聞く
妹「え……?」
兄「お前は俺を脅迫してるんだろ?それなら仕方ない」
妹「本当に……良いの?」
あまりにも無抵抗な兄に妹は当惑する。しかし、兄は己の行動に一切疑問を抱いていなかった
恐喝を受けた者が金を渡す、実に単純明解な行動様式だ。そして兄の脊髄はそれさえ有れば機能する
理由さえ判れば納得も出来る。何を隠そう、俺は納得の達人だ!!
諦めることと納得すること、『現状を受け入れる』という指向性に於いて、その二つに大きな差異は無い
諦めることに長けた兄が、納得を特技とすることに何の不思議があろうか(反語)
“仕方ない”と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は決まっているんだッ!
けれども、その従順すぎる兄の態度は、妹から見て不気味以外の何物でもなかった
- 68 :魚妹 [] :2010/03/14(日) 18:13:45.03 ID:vckn6hKp0
〜妹部屋〜
自室の隅で膝を抱える妹、その手には兄からせしめた一万円札が二枚
妹の悪者デビューは万事滞りなく円満に完了した。だが、その心中は穏やかではない
妹「フゥゥゥ〜ッ初めて…………人を脅しちまったァ〜♪でも想像してたより、何てことはないな」
嘘だ。自分を誤魔化そうとしても、胸の内には拭えない罪の意識がある
その罪悪感に耐え切れないのなら、楽になりたいのなら、方法は簡単だ。思考を止めて感情を切れば良い
妹「お兄ちゃんが……悪の組織なんかで働いてるお兄ちゃんが悪いんだ……」
それも嘘だ。言い訳だ。―――そうだ、それで良い。己を偽れ。虚構で固めてしまえ
現実の行いから目を背け、自分を納得させることで心の平穏を保とうとする
それが、先程妹を戸惑わせた兄の応動と同じものだと、妹は気付いていなかった
- 69 :さん、はい 女幹部はっ!「おっぱいだっ!」 [] :2010/03/14(日) 18:18:31.57 ID:vckn6hKp0
〜数日後街〜
女幹部がその男に会ったのは21時半過ぎ、通勤途中の駅での出来事。数年ぶりの再会だった
偶然の再会ではあったが運命の再会ではない。そもそも女幹部は、男から告げられるまで名前も忘れていた
女幹部「――ああ、そう。久しぶり」
男は学生時代の元同級生だという。記憶から削除されているということは、大して価値の無い人間だったのだろう
女幹部は役に立たないと判断したら、顔も名前も覚えない。無駄を省く事によって脳容量の最適化を図っているのだ
元同級生「×○さん(女幹部の本名)はあんま変わってないね。すぐに分かった」
女幹部「そう。それがどういう意味かは聞かないけど。○○君?は結構感じ違うんじゃない?」
好い加減に応対しながらも、女幹部はおぼろげに男を思い出し始めていた。うん、非常にどうでも良い人間だった
彼の学内における地位はその他大勢で、対する女幹部は多数派の一人。元から交わらない人生だったのだ
元同級生「まあ、俺はあの頃地味だったからね。俺は今、○×○で働いてるけど、×○さんは?」
女幹部「秘密」
元同級生「……そう」
女幹部「それじゃ。私、急いでるから」
返事も聞かずにその場を後にする女幹部。どうでも良い男に、どうでも良くない事を訊かれて気分を害してもいた
自分は世間様に堂々と顔向けできる様な身の上ではない、一般的な幸福など望むべくもない。そんな事は判っている
悪の道を志したからには、邪道と非道を究めるだけ。もの言わず揺れる花よりも、大地を駆ける獣であれ
だから女幹部は名乗るのだ……そう―――!誇りを持って、悪の組織の幹部を!!!(名乗らなかったけどさ)
- 70 :ガンダリウムとかアダマンチウムとかみたいな [] :2010/03/14(日) 18:23:17.75 ID:vckn6hKp0
――それにしても趣味の悪い格好だった。電車に乗り込んだ女幹部は、先程会った男のことを思い返す
小奇麗にまとまった服装に似合わない多くの貴金属が、全体の調和を致命的に乱していた
女幹部は自分を飾る事を好まない。全ての装飾は虚飾に通ずるものだと考える。そもそも見た目にはそれ程拘らない
外見に不自由を感じたことはないが、それ以上を求めようとは思わない。一定の均整が重要なのだ
また女幹部は、金属というモノに対してある種の劣等感を抱いていた。それを身に付けるなんてとんでもない!
金属に対する人体の物質的価値、鉄の刃で容易く切り取れる肉片に、一体どれほどの値打ちがあるのだろう
彼女の魂は金属の価値に全面降伏していた。故に、その輝きや強度と自分の肉体を較べることを恐れる
したがって、身に付ける金属は、衣服の金具類と腕に埋め込まれたションボリウム合金製の機械のみである
女幹部「まあ良いか……」
そこまで気に留める必要のある男でもない。きっと半年後には存在すらも頭に残っていないだろう
そして二駅目を過ぎた頃、既に彼女の思考は、これから職場へ着いてからの苦行に向けられていた
他の各部署に頭を下げて回り、浮いた仕事をかき集めなければ、部下を働かせてやることが出来ない
やはりこの業務形態には無理がある。何か考えなければ……そんな事を思っている内に、電車は目的地に到着した
- 71 :携帯から書いてみるテスト [] :2010/03/14(日) 18:28:00.41 ID:g+lnDK2aO
〜しばらく後悪の組織事業部女幹部個室〜
女幹部「――改造手術は成功か。それは良かったな。今日が最後の検査か?」
研究所から戻った兄は、女幹部個室で女幹部に子細を報告していた。迎えた女幹部は兄の記録に目を通す
兄「そうですね。これで本格的に職場復帰っって形になります」
精密検査の結果、特に異常も発見されなかった。これでもう研究所へ顔を出さなくて済む
女幹部「そうか。ところで兄、お前らは今の仕事量が倍になっても平気か?」
兄「はい、平気だと……あ、いえ、大丈夫です」
女幹部からの問い、反射的に口をついた言葉に焦る兄だったが、それは考え直すまでも無い本心だった
仕事が増えるのは寧ろ望ましいことだ。二倍だろうが三倍だろうがバッチ来い、である
女幹部「今、新規業務を検討中でな。お前たちに異存が無いなら、すぐに上との交渉に入ろうと思う」
兄「ええ、問題は無いと思いますよ」
女幹部「分かった、下がれ」
兄の反応に眼を細める女幹部。この兄に出来ると思う事が、他の部下に出来ない筈は無い
兄「失礼します」
一礼した兄は女幹部個室を出てオフィスに向かう。午前3時、やりかけの仕事を終わらせるには丁度良い時刻だろう
- 72 :同僚Aは扇風機が欲しい [] :2010/03/14(日) 18:32:54.12 ID:g+lnDK2aO
〜悪の組織事業部一階オフィス〜
同僚A「今日の仕事終わっちまってやる事ねーんよ。オイ兄、帰っていいかな?俺もう帰っていいかな?」
自席に戻った兄に同僚Aから気だるい声が飛ぶ
兄「え……?いや……いいんじゃねーか?」
同僚A「いいワケねーだろ!勤務時間は後3時間もあんだよ!何も知らねーくせに知ったような口を聞くな!!」
兄の無責任な放言に、同僚Aは罵倒とも愚痴ともつかない物言いで食ってかかった
それも無理のない話だ。この職場に於いて、仕事を早く終わらせてしまう事は死を意味する
事業部内で半ば部外者扱いの兄の部署には定められた業務というものが無い
そして余所から仕事を回してもらうにしても、その絶対量には限りがあるのだ
その為、不用意に割り当てられた作業を急いで片付けてしまおうものなら、
終業時間まで地獄の退屈を耐えねばならない運命にあるのだった
兄「そうか、それは大変だな」
他人の不幸は水の味。同僚Aの嘆きなど兄の関知するところでは無い
兄にはやる事が有る、それで十分だ。何はともあれ、この無気力で怠惰な日常に彼は帰ってきたのだ
- 73 :VIPがお送りします [] :2010/03/14(日) 18:36:16.51 ID:g+lnDK2aO
〜数日後悪の組織本部戦闘部門C組事務所〜
怪人1「これから紅茶淹れますけど、幹部C様はミルクに砂糖二つでしたよね?」
麗らかな陽射しの射し込む悪の組織本部二階、戦闘部門C組は優雅な午後の一時を過ごしていた
やがて怪人が紅茶とクッキーを配り、悪の幹部Cは口中に広がるアールグレイの香りに目を閉じる
幹部C「暇だな」
怪人1「そうですね」
本日は出撃の予定も無い。穏やかなる安息の時間、それは物騒な世界の野蛮な人種にとって望ましい物ではない
近頃緊張感を失くしつつある部署に、幹部Cは内心危機を感じ始めてもいた
幹部C「色レンジャーが居た頃はこうではなかったな……」
呟きに苦笑、憎むべき宿敵に、この様な思いを抱く日が来るとは皮肉なものだ
怪人2「色レンジャーですか……奴等、再結成とかしないんでしょうか?」
独り言を聞きつけた怪人が話題を振る。彼らにも、あの戦いを懐かしむ気持ちがあるのだろう
幹部C「あり得んな。スポンサーが手を退いて世間の支持も無い。再結成する意味がどこに在る?」
怪人3「まあ、そうでしょうな」
汚名を被り、地に堕ちたヒーローに再び起き上がる力は残っていまい。敢えて言おう!カスであると!
- 74 :VIPがお送りします [] :2010/03/14(日) 18:41:15.25 ID:g+lnDK2aO
怪人4「――新しいヒーローを立ち上げるとかって話は無いんスか?」
幹部C「考えられなくもないが、今のところその動きは見られん様だ」
すっかり室内は和やかに歓談する雰囲気になっていた。その弛緩した長閑な空気がいけない
怪人5「しかし、あれですかね?新ヒーローが現れたら、また女幹部達を呼び戻すんですかね?」
幹部C「女幹部か……」
幹部Cは女幹部を事業部へ追いやった日を思い起こす。あの時、自分は恐れていたのか、それとも恨んでいたのか
悪の組織と色彩戦隊色レンジャーの火花散る闘争、厳しくはあるが意欲に満ち溢れた日々
僅か五人でありながら、悪の組織の圧倒的物量に立ち向かう色レンジャーは、組織からも恐るべき敵と認識されていた
激闘の中で悪の総統も倒れ、組織は壊滅の危機に瀕した。そこで思わぬ活躍を見せたのが、女幹部率いる情報工作組だった
その策謀の限りを尽くした工作によって、宿敵は土台から崩壊してしまった。想定も期待もされていなかった幕切れである
戦闘部門が真っ向から打ち破ったのなら士気も上がろうものだが、全ては水面下で進行し、残ったのは『勝利』という結果だけ
そして女幹部は、本部中の反感を一身に引
- 75 :ミスった [] :2010/03/14(日) 18:46:24.81 ID:g+lnDK2aO
怪人4「――新しいヒーローを立ち上げるとかって話は無いんスか?」
幹部C「考えられなくもないが、今のところその動きは見られん様だ」
すっかり室内は和やかに歓談する雰囲気になっていた。その弛緩した長閑な空気がいけない
怪人5「しかし、あれですかね?新ヒーローが現れたら、また女幹部達を呼び戻すんですかね?」
幹部C「女幹部か……」
幹部Cは女幹部を事業部へ追いやった日を思い起こす。あの時、自分は恐れていたのか、それとも恨んでいたのか
悪の組織と色彩戦隊色レンジャーの火花散る闘争、厳しくはあるが意欲に満ち溢れた日々
僅か五人でありながら、悪の組織の圧倒的物量に立ち向かう色レンジャーは、組織からも恐るべき敵と認識されていた
激闘の中で悪の総統も倒れ、組織は壊滅の危機に瀕した。そこで思わぬ活躍を見せたのが、女幹部率いる情報工作組だった
その策謀の限りを尽くした工作によって、宿敵は土台から崩壊してしまった。想定も期待もされていなかった幕切れである
戦闘部門が真っ向から打ち破ったのなら士気も上がろうものだが、全ては水面下で進行し、残ったのは『勝利』という結果だけ
そして女幹部は、本部中の反感を一身に引きき受けることとなった。だが、それはもう過去の話だ。今の女幹部は閑職で燻っている
怪人1「暇ですね」
幹部C「そうだな」
幹部Cはカップを置いた。西日の差す悪の組織本部二階には、在ってはならない筈の平和な時間が流れていた
- 77 :VIPがお送りします [] :2010/03/14(日) 18:50:53.71 ID:g+lnDK2aO
〜数日後街〜
サイレンにどよめきと悲鳴が混じる。抉れた道路に散らばる瓦礫。火の手の上がる建物を遠巻きに見守る人々
18時過ぎ、陽の落ちかかった街で、悪の組織本部戦闘部門は今日も街の破壊活動に精を出しているのだった
怪人「よ〜し、そろそろ撤収するぞ」
戦闘員「「「ニー」」」
街には目に見える被害を与えた、この位で十分だろう。怪人の号令で戦闘員共は帰り支度を始める
怪人「しかし、お前らもう少し気を入れて出来んのか?」
戦闘員の働きぶりを咎める怪人。予定ならば17時前には終わる筈の作戦である。1時間以上も過ぎた原因は怠慢以外に考えられない
戦闘員「「「ニー……」」」
やっつけ仕事でもノルマをこなせてしまうのは困り物、もはや彼らの業務を妨げられる者など居ないのだ
力を見せ付ける為の建前的な出撃、それはただの示威行動である。それ以上でも、それ以下でも無い。そして出来る事はそれ以外に無い
世界征服を一応の目標に掲げる悪の組織だが、その道は遙か遠い。戦力を充実させるには、まだまだ時間が掛かるのだ
さらに根本的にして深刻な問題も生じている。資金の不足に伴う本部と事業部の関係悪化である
組織が大きくなる程に維持に要する労力は大きくなった。財政面の基盤を持たない本部は経済を事業部に依存せざるを得ない
そして次第に事業部の発言力は大きくなり、中には本部の不要を叫ぶ者まで出てくるという、本末転倒な事態に陥っていた
- 78 :VIPがお送りします [sage] :2010/03/14(日) 18:51:42.45 ID:IQLE8MH80
電撃か角川辺りに投稿すべき
- 79 :VIPがお送りします [] :2010/03/14(日) 18:54:21.56 ID:g+lnDK2aO
〜街〜
夜の街、妹は服を見に来ていた。欲しい物を選んでいるだけで楽しい、いくらでも時間は過ぎてゆく
兄から金を巻き上げる事を覚えてから価値観は変わった。欲望は日々力を蓄え、精神に彩りを与えてくれる
今は満足に買い物も出来なかった頃とは違う。悪者となった妹は邪悪な幸福にその身を浸していた
そんな訳で、今日は少しばかり遠くの街まで足を伸ばした。そして、それが良くなかった
妹「静まれ……静まれぇ……!」
爆発癖が顔を出したのだ。あまり遅くまで出歩いているべきではなかったが、それを悔いても詮無い事
妹「く……はぁ……」
塀に手を付いて俯き、一歩、また一歩と崩れそうな足を踏み出す。駅から離れた店を覗いたのも失敗だった
妹「……!?」
角を曲がり、苦悶に歪んだ顔を上げた妹の目の前に尋常ならざる光景が広がった
狭い道路を支配する奇怪な一団、街灯に照らされたそれは、闇の内にも一際その禍々しさを発現させていた
黒地に白い模様の入った装束に身を包んだ群れ、20人以上居るだろうか。そして更に怪しさを放つ人影
妹「あれは……?怪しい……人――→怪人!?」
遠かりし時は音にも聞き、近くば寄って目にもの見た。奴等こそが悪の組織は本部が住人、戦闘部門の郎党なり
- 80 :出来る 出来るのだ [] :2010/03/14(日) 18:58:22.86 ID:vckn6hKp0
妹「ち……こんな時に……」
体を蝕む爆発衝動、行く手を阻む怪人と戦闘員。そこは現地の原住民さえ迷わせる魔の住宅街である。妹は他の道を知らない
混濁しつつある意識、熱に浮かされた様な思考、意思を介さず体は前へ、支える足は次の歩を落とす
集中すべきは己を抑える事、本能は隙あらば気力を喰い破ろうとする
体調は悪い、機嫌も悪い。何が悪い?誰が悪い?悪い――→悪――→悪の…………組織!謎はすべて解けた、目の前のコイツらが悪い
考えが纏まれば行動在るのみ。世の人を戦慄させる怪人も、今の妹から見れば単なる邪魔者でしかない。恐怖?何ソレ、美味しいの?
妹「邪魔」
怪人、戦闘員「「?」」
妹は戦闘員を押しのけて怪人の前に立つと、体幹に渦巻く爆発力を利き腕に滑らせた
見よ、異形の悪者共を困惑させる少女の姿。見よ、 断裂せんばかりに筋繊維を引き絞って構えたる拳
その構えから導き出される脅威の一閃の方程式は 『爆発力×体重×スピード=破壊力』ッッッ!!!!
爆発する妹の拳は怪人を退けられるのか?このスレは今日中に完結できるのか?
- 81 :VIPがお送りします [sage] :2010/03/14(日) 19:00:46.48 ID:LjNEqBPk0
頑張れ!!
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