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新しくもないジャンル「ドラゴン」
259 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 13:38:07.98 ID:8FUsBB7p0
――うちの神社にはドラゴンがいる。

巫「お掃除の邪魔ですよ。どいてくださいな」

D 「グガゴォウ」

巫「グガゴォウじゃありません」

D 「ボフゥ――ブフォオゥ」

巫「炎は落ち葉をぜんぶ集めてから!」

D 「ゴキュルルルルルルル――」

巫「嬉しそうに喉を鳴らすんじゃない」

D 「キュウー」

巫「ほめてー、じゃなくて」

――なぜかわたしが世話係。


260 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 13:39:33.68 ID:JpBrjJWU0
神社にドラゴン…なんという不協和音


261 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 13:42:43.00 ID:8FUsBB7p0
――このドラゴンがいつからいるのかは誰も知らない。

D 「?」

巫「これこれ、そちらに行ってはいけません」

D 「クルルルルルル――」

巫「宮司さんが雨乞いの祈祷中なのです」

D 「ボフゥ――!」

巫「炎ではなく雨ですよ」

D 「ボフゥ――ボブフォオオオオオオ!」

巫「やめなさいと言っているでしょう!」

D 「キュウウウ――(しゅん)」   

巫「意気込みは買いますがおまえに雨は降らせられまい」

D 「……(べたん)」

巫「ああ。いつまでたっても雨が降らないし、暑いですねえ」

――少なくとも龍神ではないらしい。


262 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 13:55:20.15 ID:8FUsBB7p0
――この神社の木像狛犬は本堂の脇に座っている。

D 「……(ぺちぺち)」

巫「狛犬はおもちゃではありません」

D 「キシャアアアア!」

巫「吠え返されないからといってやりたい放題しない」

D 「……(どんっ)」

巫「こらっ。落としちゃだめでしょう! めっ!」

D 「キュウウウ――(しゅん)」

巫「図体だけは馬並みのくせに子供じみたことばかりする」

――本当にこのドラゴンは何なのだろう。


263 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 14:05:23.93 ID:8FUsBB7p0
――体格もよく炎も吐くくせに気が弱いのはどうにもならないことのようで。

D 「ククククククク」

犬「……」

D 「グガゴォウ!」

犬「……ガルルルルルルルル」

D 「グガゴォウ!」

犬「グヮン! グヮングヮン!」

D 「クウゥー(そそくさ)」

巫「荷物を運ぶ邪魔です。隠れ切れていないのだからどきなさい」

犬「グルルルルルル――」

巫「おまえもっ。飼い主の祈祷が終わるまでおとなしくしている!」

犬「キュウウーン」

D 「!」

――ドラゴンの中でわたしの株が少し上がり、わたしの中でドラゴンの株がかなり下がった。


264 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 14:13:57.50 ID:8FUsBB7p0
――合理性を求めさらなるオカルトへと踏み込むのはよくあること。

爺「ドラゴンなんているわけねえ」

D 「ク?」

爺「こいつぁきっとムジナが化けてるにちげぇねえ」

D 「キュウウウ――」

爺「こらっ。正体を現せ、悪いムジナめ!」

D 「グガゴォウ!」

爺「調子こくなムジナ! 土佐犬に吠えられて逃げ出すような分際で!」

巫「もぉし。あんまりいじめると火を噴きますよ」

――ドラゴンは近所のひまな爺さまなどによくこうして絡まれている。


265 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 14:22:19.01 ID:8FUsBB7p0
――景気の悪化は地域企業からの寄付に頼る神社の経営にも影響が大きくて。

D 「クウゥー、クウゥー(すりすり)」

巫「ご飯ならさっきあげました」

D 「グガゴォウ」

巫「ずっとその大きさなのだからいまさら育ち盛りでもないでしょう」

D 「キシャアアア――」

巫「けっこう餌代がかかるのですよおまえは」

D 「クウー」

巫「いっちょ前のドラゴンならおやつ分ぐらいは自分の力で満たしなさいな」

D 「ク?」

巫「でも猪や烏みたいに人の畑を襲ってはいけませんよ」

D 「クククワァ――! (ばさっばさっ)」

巫「わかっているんですかねえ」

――目撃者によるとドラゴンは川で魚を獲ろうとしそのまま水遊びをしていたらしい。


266 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 14:39:25.45 ID:8FUsBB7p0
――龍は馬であり馬は龍でありすなわち龍馬である。

D 「クウゥー。クウゥー」

巫「これこれ、今日は月次祭の日。邪魔をしてはいけません」

D 「……(どすんどすん)」

巫「なんですか落ち着きのない」

爺「ふん、このムジナめ。いっちょまえに神馬でも気取りたいのか」

D 「グガゴォウ」

巫「龍は馬に化身するといいますがドラゴンはさて――」

爺「化けの品目がないんだろう。未熟者が」

D 「キュウウウ――」

巫「そんなに神馬になりたいんですか?」

D 「ボフゥ――ブフォオゥ」

――神馬は興奮しても炎なんか吐きはしない。


267 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 14:47:58.13 ID:8FUsBB7p0
――そういえばついついこの怪獣をドラゴンと呼んではいたけれど。

巫「一口にドラゴンといっても種類は様々」

D 「ク?」

巫「むしろすべてのドラゴンに共通する特徴など無いのかもしれません」

D 「クワアアアー! (ばっさばっさ)」

巫「興奮しない。おまえがムジナだとは言っていません」

D 「クルルルルル……」

巫「ひょっとしたらおまえはれっきとした日本の怪獣なのかも」

D 「クー」

巫「記紀や古説話を調べれば、いわゆるドラゴンに相当する怪獣もいるやもしれぬ」

D 「グワアアアアー!」

巫「でもそこまでひまでもないのです」

D 「グガゴォウ」

――そういうわけでこの怪獣はやっぱりドラゴンのままなのだ。


268 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 14:56:27.46 ID:8FUsBB7p0
――年に一度の大祭が近づけば小さな神社でもそれなりに忙しくなってくるもので。

D 「クウゥー」

巫「これこれ。舞台に顎を乗せて舞いの稽古を覗くんじゃありません」

D 「グガゴォウ!」

巫「わたしも今日は忙しいのですよ」

D 「グウゥー(どすん)」

巫「ああこら、舞台に乗らない! 稽古の邪魔です」

D 「〜♪ (どすんどすん)」

巫「やめなさい! 本当に怒りますよ!」

D 「グガゴォウ!」

巫「一緒に舞いたいのなら空でやりなさい。仮にもドラゴンでしょう!」

――というわけでドラゴンは空を舞いながら派手に炎を吐いている。見上げなければ気にはならない。


270 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 15:10:09.73 ID:8FUsBB7p0
――ドラゴンがじいっと神輿を見つめていた。

巫「乗ってはいけませんよ」

D 「……(じーっ)」

巫「まさか担いでみたいとかいうのではないでしょうね」

D 「ク?」

巫「ならよいのです」

D 「クウウウウゥー」

巫「ひょっとして御神輿の屋根飾りが気に入ったのですか?」

D 「グガゴォウ!」

巫「またおかしなものを」

――祭当日、屋根飾りを頭につけて神輿の後を練り歩くドラゴンはやけに楽しそうだった。


271 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 15:21:27.11 ID:8FUsBB7p0
――どんな世界にもマニアがいれば品評会というのもあるもので。

爺「うちの尾長が品評会で銀賞をとってのう」

巫「おめでとうございます」

爺「んんー? なんだうらやましいのかこいつめ」

D 「グルルルル――」

爺「おおーっとこれは受賞御礼の奉納品だ。おまえにはやらん!」

巫(でもお供えしてさげた後、みんなで分けるのですがね)

D 「クアァー! クアァー!」

巫「おまえも賞がほしいのですか、困りましたね」

D 「グガゴォウ」

巫「お仲間がいないのだから品評会の開きようもない」

D 「クウゥー(すりすり)」

巫「やはり同族のお仲間がほしいんですかねえ」

――ドラゴンどころか日本土着の龍さえも見たことなんかないのだけれど。


272 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 15:31:57.02 ID:8FUsBB7p0
――不信心者が鳥居にさしかかると上から落ちてくるおばけがいるそうな。

D 「クウウウゥゥゥ――――」

巫「こらあ! 鳥居の上に留まらない! 折れるでしょう!」

D 「グガゴォウ! ボォウ、ボッフフォオオオオオ――!」

巫「火まで吹いて! そういうことは地獄の入り口でやりなさい!」

――通りすがりの人々は面白がってみていたが、くせになるといけないので一応きつく叱っておいた。


273 :VIPがお送りします [sage] :2008/07/22(火) 15:35:43.72 ID:2isFlj8sO
んー…
時間被ってるなー

やっぱ違うんかなー


274 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 15:40:52.63 ID:8FUsBB7p0
――雪。

D 「クウゥー(ぱたぱた)」

巫「困りましたね」

D 「クルルルルル――」

巫「その図体で本殿の隅に居座られては、ご祈祷にいらした方々の迷惑です」

D 「クウゥー」

巫「そんなに寒いのはいやですか」

D 「ククククク――」

巫「物置にでも放り込みましょうかねえ」

D 「グガゴォウ! グガゴォウ! グガゴォウ!」

巫「寒いのはいや、みんながいないところもいや。本当にこのドラゴンは――」

D 「クウァウウゥー! クウウァウウゥー!」

――散歩に連れていってもらえない犬みたいに啼かれては無下に追い出すわけにもいかなくて。


275 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 15:42:27.27 ID:8FUsBB7p0
>>273
フフフフフ……


276 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 15:52:00.34 ID:8FUsBB7p0
――風。

D 「クウウウウゥー(すりすり)」

巫「こら、邪魔しない。幟を片付けているんです」

D 「クァ?」

巫「台風が近いようなので」

D 「グググググ――グワァオォウ!」

巫「吠えても無駄です。いくらおまえでも台風にはかなうまい」

D 「グガゴォウ! (ばさっばさっ)」

巫「どこに行くのですか! まさか台風に?」

D 「――クウウウウアアアァァー」

巫「なにを考えているのだか――」

――でも食事の時間にはちゃんと帰ってきた。もちろん台風の襲来も予定通り。


277 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 16:02:09.26 ID:8FUsBB7p0
――雨。

巫「蒸し暑い雨」

D 「クウゥー」

巫「この拝殿もすっかり雨の日のおまえ用ですね」

D 「ボフゥ――ブフォオゥ!」

巫「やめなさいよけい暑苦しい」

D 「……」

巫「……」

D 「ブフォフォフォオォウ!」

巫「やめなさいというに」

D 「キュウー」

巫「炎で雨粒を蒸発させるのが気に入ったのですか」

D 「グガゴォウ」

巫「やみませんねえ」

――それにしても雨の日の獣はよく臭う。


278 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 16:15:28.71 ID:8FUsBB7p0
――月。

巫「始まったようですね」

D 「クヮ?」

巫「観月会の奉納雅楽ですよ」

D 「クワアァ――(どすんどすん)」

巫「おまえはいかなくてよろしい」

D 「ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ――」

巫「ひょっとしてそれは謡っているつもりですか?」

D 「グガゴォウ!」

巫「こちらで堅苦しくないお月見会もやっています」

D 「クアァー?」

巫「おまえもこちらで無礼講に騒ぐ方がよいでしょう」

D 「グヮ! グヮ! グヮ!」

――このドラゴン、酔うと意外に佳い声で謡うものだとこのあと知った。


279 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 16:16:37.28 ID:TmOcxkPF0
萌えるwwドラゴンかあいいww


280 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 16:29:05.09 ID:8FUsBB7p0
――烏といい犬といい狐といい、知能に余裕のある動物はたいていコレクションを構築する。

巫「なんですかこれは」

D 「クウゥー」

巫「おまえがしょっちゅう御禁足の山に出入りしているからなにかと思えば」

D 「グウーゥー(ひょい)」

巫「プレゼントか買収か知りませんがいりません!」

D 「キュウゥー」

巫「集めるのならきれいな石や面白い倒木ぐらいにしておくように」

D 「クウゥー」

巫「ちゃんと謝りに行かないといけませんね――もちろんおまえも一緒です!」

D 「クキュウゥー」

――公園やバス停のベンチばかり二十台近く。せめてもっと宝物っぽいものにしてほしかった。


281 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 16:42:24.31 ID:8FUsBB7p0
――桜。

爺「ぬわあっ? 今年もか!」

D 「グガゴォウ」

巫「ドラゴンに桜がわかるのですか?」

D 「ゴー、グー」

爺「枝の成長に合わせて微妙に変わる絶好の花下、こいつは毎年そこにおる!」

巫「それはそれは」

爺「ええいムジナは腹でも出して踊っておれ。その席、人間さまに譲るのだ!」

D 「ガアアアァァァ――!」

巫「なにをやっているのだか」

――花を知るこのドラゴンはやはり日本生まれの怪獣なのかもしれない。


282 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 16:53:33.30 ID:8FUsBB7p0
――近所のお寺さんまで少々重い荷をドラゴンの背に乗せて。

巫「こういうときだけはおまえも役に立ちますね」

D 「クウゥー(ぽてぽて)」

巫「匂いを嗅ごうとしなくてよろしい」

D 「キュウゥー」

巫「お寺さんへのお中元で、おまえのものではありません」

D 「ククククク――」

巫「ただ飯喰らいの身分で駄賃の要求とは図々しい」

D 「グガゴォウ!」

巫「少し、黙りなさい。暑苦しい」

D 「グゥ――(ぽてぽて)」

――結局、先方の住職がドラゴンの視線に負けてしまい、お中元の品を食わせてしまった。


283 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 17:12:57.58 ID:8FUsBB7p0
――星。

巫「――おや」

D 「クウゥー?」

巫「もう空の端に宵の明星が昇る頃」

D 「クッファアァー」

巫「あの星から飛来した魔王が京の鞍馬にいるそうですよ」

D 「クー」

巫「魔王というより宇宙人と言った方がいいかもしれませんね」

D 「ククククク――」

巫「果たしてドラゴンと宇宙人とではどちらが強いのでしょうか」

D 「ボフゥ――ブフォオゥ!」

巫「こんなところから金星に炎を吐いても、鞍馬にだって届きやしませんよ」

――負ける気はないようだ。犬に吠え負けるドラゴンより宇宙人が弱いかどうかは知らないが。


284 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 17:29:41.65 ID:8FUsBB7p0
――教会劇で使いたいというので牧師さんにドラゴンを貸し出す。

牧「聖ゲオルギウスのドラゴン退治のお話を」

巫「定番のお話ですね」

D 「グガゴォウ!」

牧「あれ……何かドラゴン、怒ってません?」

巫「怒っています」

牧「だ、大丈夫ですか?」

巫「あとで牧師さまがおいしいものを奢ってくださるのだから我慢なさい」

D 「グガゴォウ!」

牧「あれ……やっぱドラゴン、怒ってません?」

巫「喜んでいます」

牧「は、はあ……」

――劇中ずっとよだれを垂らしていたドラゴンは、それはそれでけっこう嫌らしい獣っぽかった。


285 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 17:39:47.17 ID:8FUsBB7p0
――冬の風が電線をぼぅと掻い鳴らす黄昏時。

D 「クルォアアアアアアァァ――!」

巫「対抗しなくてよろしい。電線の音です」

D 「クウゥー(ぶんぶん)」

巫「おまえには悪魔かなにかが音を立てているように見えるのですか?」

D 「キュウゥー」

巫「確かに尋常ではない音ですが、自然とはドラゴンのさらに上をいくものなのですよ」

D 「クククゥー! (ばっさばっさ)」

巫「こら。どこに――」

D 「――グガゴォウ! グガゴォウ!」

巫「電柱の上でなにを虚勢張っているんだか」

D 「……(じーっ)」

巫「言っておきますが電線に火を吹いたら怒りますからね!」

――吹きはしなかったが爪で引っかけ、結局電力会社にこっぴどく怒られた。


286 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 17:55:22.24 ID:8FUsBB7p0
――新商品。

巫「おまえの絵馬はないのかとまれに問われます」

D 「クウゥー」

巫「そういえばおまえはこの神社の何なのです?」

D 「キュウー(すりすり)」

巫「下手をすれば神社で飼っているペットの犬を絵馬にデザインするようなもの」

D 「クアアアァー!」

巫「犬ではないと言われても、おまえがここに居着いた際の記録がないのだから仕方がない」

D 「クウゥー! クウゥー!」

巫「だいたいおまえに人の祈りをかなえる力があるのですか?」

D 「グガゴォウ!」

巫「その根拠のない自信はこの図体のいったいどこから湧いてくるのか――」

――オリジナル切手と同じノリで作ってみたら意外と好評で驚いた。


287 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 18:12:31.52 ID:8FUsBB7p0
――木陰からぼんやりと入道雲を見上げるドラゴン。

D 「クウゥー」

巫「もしかしておまえが炎を吐くのは寒さをしのぐためなのですか」

D 「ク?」

巫「それとも暑さより湿度の方が堪えているのでしょうか」

D 「クウゥー」

巫「なんにしてもおまえがおとなしくしてくれていれば助かります」

D 「キュウゥー(ちょんちょん)」

巫「また氷ですか? おなかを壊しても知りませんよ」

D 「クウゥー! クウゥー!」

巫「真夏の動物園のシロクマみたいなドラゴンですねえ」

――本当におなかを壊され、糞の始末が大変だった。


288 :VIPがお送りします [sage] :2008/07/22(火) 18:22:49.10 ID:2isFlj8sO
>>275
フフフってなんだよぅ

前600レス近く一人で淡々と続けたことあったよな
あんたいつ寝てんだよ
怖えーよ


289 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 18:33:31.08 ID:8FUsBB7p0
――夕焼け小焼けで日が暮れて。

烏「ギャアァ! ギャアァ! ギャアァ! ギャアァ!」

巫「ねぐらの山に帰るのにわざわざこの神社の上空で待ち合わせなどしなくてよいのに」

D 「グガゴォウ!」

巫「いくら地上でドラゴンが吠えようと意にも介しませんね」

D 「グルルルルルル――」

巫「放っておきなさい」

D 「グワァー! (ばっさばっさ)」

巫「ああ、こら!」

D 「――ブフォオゥ!」

巫「やめなさい! 神社の上で烏を焼いてはいけません!」

烏「ギャアアアアアアァー! ギャギャギャギャギャアアアアアァー!」

D 「グヮアーオ! グヮアーァオ!」

巫「烏は散りましたが、これで本当に勝ったつもりですかおまえは――」

――烏に顔を覚えられたドラゴンはそれから一月、寝そべっている間の糞害に悩まされることになる。


290 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 18:40:33.76 ID:7Qu9m8wxO
いい味でてるよ


291 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 18:54:01.78 ID:8FUsBB7p0
――行列行列、大名行列、蟻の行列。

D 「……(じーっ)」

巫「なんですか天下のドラゴンともあろうものが犬みたいに寝そべって」

D 「クウゥー(じーっ)」

巫「蟻の行列など眺めて楽しいですか?」

D 「……(じーっ)」

巫「……」

D 「――ボフゥ!」

巫(炎風で蟻を吹き飛ばした――)

D 「……(じーっ)」

巫(蟻の方も行列を建て直す――)

D 「グガゴォウ――」

巫「まあおまえがそれで楽しいのなら別に構いはしませんがね――」

――次に見たとき、今度は不意に飛び立つ蝉に火を吹きかけて遊んでいた。


292 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 19:10:49.37 ID:8FUsBB7p0
――神社手製の御札と業者から仕入れた量産品のお守りを同じように売るのもどうかとも思うけど。

D 「クコ……(ぺったん、ぺったん)」

禰「ようし。あと五十枚頼むぞ」

D 「クアァー! (ぺったん、ぺったん)」

巫「何をなさっているのですか禰宜さん」

禰「こいつの生手形でドラゴン御札を作ろうと思ってねえ」

巫「それは――どのような御利益が?」

禰「問題はそこなんだよね」

巫「まずそこを考えてください」

D 「グガゴォウ!」

巫「いや。ここの神様よりおまえの御利益の方が上というのはまずいでしょう」

D 「クアァー! クアァー! クアァー!」

巫「御本殿を威嚇してはいけません! やめなさい!」

――結局、無難なところで、子供がドラゴンのように力強く育つ御利益という設定になった。


293 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 19:21:01.91 ID:8FUsBB7p0
――ひと気もまばらな境内をドラゴンがぼんやりと見つめている。

D 「クウゥー」

巫「なんでおまえが授与所の番をしているのです?」

D 「グガゴォウ!」

巫「外で飼っている犬が油断していると家に上がり込みたがるようなものでしょうか」

D 「クルルルル――」

巫「なぜ誰も止めなかったのでしょう――」

D 「ク?」

巫「いいですか。誰か来たらきちんと神社の人を呼ぶのですよ?」

D 「グガゴォウ!」

巫「呼びなさい」

D 「グガゴ――」

――その日は結局だれも授与所に来なかった。そんな日もある。


294 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 19:32:39.01 ID:8FUsBB7p0
――ドラゴンが倒れた。

D 「クウゥ――」

巫「しっかりしなさい。それでも幻獣の王ドラゴンですか」

D 「クウゥー。ククゥー……ゲフッゲフッ」

爺「声がかすれておるな」

巫「ドラゴンのお医者さまなんているはずもないし――」

爺「ふん。ムジナぐらいその辺の獣医でも診れるわい」

D 「クグ……グ……」

爺「ぬ。これは本格的にいかん」

D 「……(じーっ)」

巫「大丈夫です――大丈夫ですよ。おまえはドラゴンなのだから――」

――加持祈祷ではドラゴンは救えない。それは当の神社関係者が一番よく知っている。


295 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 19:37:31.95 ID:8FUsBB7p0
――原因などわかるはずもない。ドラゴンの診察なんて誰もしたことがないのだから。

巫「栄養を摂って絶対安静。結局は自然治癒力頼みですか」

D 「……(くー、すー)」

巫「死んだら承知しませんよ」

D 「……(くー、すー)」

巫「死後、祀られて神になるなんて、おまえには百年早い」

D 「……(くー、すー)」

巫「というかお社を造るお金がないのです」

D 「……クウ(もそもそ)」

巫「いいから寝ていなさい。最後の恩返しとかそういうのはいいですから」

D 「……クウゥー」

――それから四日間、わたしは泊まり込みでドラゴンを看病し続けた。


296 :VIPがお送りします [sage] :2008/07/22(火) 19:41:29.13 ID:2isFlj8sO
悲しい終わり方はやだからな
絶対やだかんな!


297 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 19:46:44.56 ID:8FUsBB7p0
――妙に烏の啼く夜だった。

爺「そうか。あやつは」

巫「ええ、仕方のなかったことなのでしょう」

爺「馬鹿な奴だ――」

巫「いまさら言っても詮無いことです」

爺「明治に陸蒸気と張り合ってはね殺されていた馬鹿なムジナどもと変わらん」

巫「……」

D 「グガゴォウ! ボフゥ――ボブフォオオオオオオ!」

巫「ガス袋(仮称)のガス欠で死にかけるようなドラゴンは馬鹿で十分でしょう」

爺「駄目元で畜産試験場に見せてみるもんだのう」

D 「ブフォオオオオ!」

巫「だから用もなく無駄に火を吐くんじゃありません!」

――今日から火を噴くのは一日十分まで。


298 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 19:50:26.93 ID:8FUsBB7p0
――うちのに神社はドラゴンがいる。

巫「お掃除の邪魔ですよ。どいてくださいな」

D 「グガゴォウ」

巫「グガゴォウじゃありません」

D 「ボフゥ――ブフォオゥ」

巫「炎は落ち葉をぜんぶ集めてから!」

D 「ゴキュルルルルルルル――」

巫「嬉しそうに喉を鳴らすんじゃない」

D 「キュウー」

巫「ほめてー、じゃなくて」

――いつからいるのか知らないし、いつまでいるのかもわからないが、なぜかわたしが世話をしている。


299 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 19:56:34.41 ID:8FUsBB7p0
ではID:yWgPxVAP0を待ちたい方は保守なりネタなり頑張ってください



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