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新しくもないジャンル「ドラゴン」
- 183 :VIPがお送りします []
:2008/07/21(月) 19:59:23.29 ID:u/DxTDFR0
落ちてなかったwwwwwwみんなありがと!!医療系専門学校の試験は地獄だぜ!!!
「キュイキュイ!!」ドラゴンが怒っている。まぁはっきり言って予想はできていた。
長時間ひとりで留守番をしなくてはいけないのだ。今までのドラゴンの行動から考えて我慢できる訳がない。
とりあえず今日のところは嘘をついてごまかそうと思っていたがどうやらドラゴンは学校がどういう所かある程度理解しているらしい。
すぐ帰ってくると言っても「キュイ!!」と鳴きながら俺の制服を噛んで離さない。意地でもついてくる気のようだ。
だがここは我慢をしてもらわなくてはならない。学校にドラゴンが来れば騒動にならない訳がない。
それにもし今回許してしまったら明日から毎日連れていかなければならない。ここは心を鬼にせねば!!!
「ドラゴン!!我がまま言うな!!これ以上わがままいうなら出て行ってもらうぞ!!」
「!!…(コクっ)」ドラゴンが制服を離す。どうやら納得してくれたようだ。心苦しいが仕方がない。
これもドラゴンのためなのだ。「今日は学校初日だし午前中で終わりだから。寄り道せず帰ってくる。我慢してくれよ。な。」
「キュイ…」ほんとにがっかりしている。「じゃあいってきます。」俺は後ろ髪をひかれまくりながら家を出た。
- 185 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 20:21:09.33 ID:u/DxTDFR0
俺は学校につくとまず校長室に行き挨拶をして、始業式が終わるまで応接室で待機することになった。
親父の仕事のせいで転校は何度も経験しているが慣れない。この緊張感は他では味わえない。自分という存在を受け入れてもらえるのか。
不安と期待。心臓の鼓動が自分でも分かる。それに今回は日本だ。俺には帰国子女という要りもしない称号が与えられる。
それに俺の容姿はどう見ても純粋な日本人には見えない。理由は簡単。俺はハーフだから。日本人とおそらく白色人種のハーフだ俺は。
なぜしっかりどこの国とのハーフか分からないのかも簡単な理由。母は俺が幼い時に死んだ。うっすらと記憶にある母はブロンドの髪で暖かい笑顔を俺に向けている。
親父に何度か聞いてはみたもののいつもはぐらかされた。何度も聞いている内に幼いながらもこれはあまり聞いてはいけないことだと理解した。だから俺は自分がどこで生まれたのかも知らない。
すこし茶色ががった髪。青い瞳。少し高い鼻。どうみても日本人には見えない。それに俺にはひとつコンプレックスがあった。
それは耳が人より長いのだ。尋常じゃない位というわけではないが明らかに大きい。それに先がすこし尖っているのだ。なので俺は髪を伸ばしどうにか耳を隠しているが油断するとすぐはみ出てきてしまう。
いろんな思いが胸にうずまきながらも少しずつ時間は過ぎていく。
- 192 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 20:38:53.65 ID:u/DxTDFR0
「おーい。転校生。入るぞ〜。」若い男の声がドアの外から聞こえる。ガラッという音とともに声の主が姿を現した。
「おぉ!!マジでハーフだ!!へぇ〜…。おれがお前の担任だ。よろしく。というか日本語わかるか??」パッと見高校教師には見えない男はそういった。
こんな人が先生か。目の前の男は顔は整っているが、髪はボサボサ。ネクタイもユルユル。足はスリッパを履いている。教師という言葉の対極にありそうな人だ。
しかし人を外見で判断してはならない。「日本語大丈夫ですよ。こちらこそよろしくお願いします。」生徒して失礼の無い様礼儀正しく対応する。
「…お前今こんな奴が学校の先生かよ!?って思っただろ?」「へ??」ズバリ言い当てられて間抜けな声が出てしまった。「い、いや…そんなことは」取り繕おうとしたが無駄だった。
声が明らかに動揺している。「正直に言え。」先生がこちらを見ながら言ってくる。「はい。すいません…。こんな小汚い輩が教師のなのかとつい思ってしまいました。」なので包み隠さず本音を言った。
「お前なぁ!!もう少しオブラートに包んだ物の言い方はできねぇのかよ!!正直にいいすぎだろ!!」「あなたが正直に言えって言ったじゃないですか!!」
教室に行く前から早速ひと騒動。騒がしい学校みたいで少し…いやかなり安心した。先生なりに俺の緊張をほぐそうとしてくれたのかもしれない。
「この糞がきが!!おら!!早く教室いくぞ!!」…どうやら考えすぎのようだ。この人は見た目どおりの人間だ。
- 195 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 21:01:38.39 ID:u/DxTDFR0
教室の前に着く。教室のプレートには「普通科 2年B組」という文字。教室はとてもざわついている。どうやらこのクラスに転校生が来ることは周知の事実のようだ。
俺の緊張が最高潮に達する。「緊張してんじゃねぇよ。転校生。」「しない訳ないでしょう。転校生なんだから。」「入るぞ。覚悟できてるか?」「望むところです。」
ガラガラっ!!勢いよくドアが開けられる。教室のざわつきがにわかに静かになるがおれの姿をみると生徒はまたざわつき始めた。「おいっ!!静かにしろ!!」
先生が注意してもどうやら無駄のようだ。ざわつきが収まる気配は一向に無い。「まぁもう皆知っていると思うが転校生だ。転校生。自己紹介しろ。」なんとも投げやりな感じで俺の自己紹介になる。
「今日からこのクラスに入る男です。日本には昔少し住んでいましたがここに来る前は親の手伝いで色んな国に住んでいました。」今までの転校の経験から俺は可も無く不可も無い挨拶をしていく。
変に目立とうしてはいけない。「まだこの学校の勝手がわからないのでよかったら教えてください。」目立とうしても目をつけられるだけだ。最初の挨拶はこのくらいでちょうどいいのだ。
だが俺の計算はある一人の男によって脆くも崩れ去る。「しつもーん!!男くんには彼女とかいるんですか〜!!」なっ…!!質問タイムがあるかもと予想はしていたがいきなりそんなハイレベルな質問だと!?
「えっ…えと…」一度崩れた計算はもう組みなおすことはできない。俺は答えることができず黙ってしまった。
そこからはもう地獄だった。騒ぎ出した生徒たちは次々に質問を始め生徒の暴走を止める役割の先生まで一緒になって質問し始める始末。結局1時限全て俺への質問タイムで終わってしまったのだった。
- 198 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 21:22:35.25 ID:u/DxTDFR0
疲れた…。60分間ハイテンションの高校生達に質問攻めにされたのだ。その疲れたるや尋常なものではない。それは休み時間になっても終わることはなかった。教室の外にもたくさんの人が集まってきている。
日本では転校生というものがそんなに珍しいのか?それとも俺がハーフだからだろうか?いつまでたっても質問は尽きない。少々うんざりしていた時「いや〜!!転校生くん!!大変そうだな!!」
俺の計算を崩した張本人が話しかけてきた。やけにハイテンションな野郎だ。「誰のせいだと思ってんだよ!?誰の!?」少し声が大きくなってしまった。しまったと思ったがなんら気にすること無くそいつは話を続けた。
「俺のせいか?それならすまん事をしたな。まぁこれも何かの縁だ!俺のことは遠慮なく友と呼んでくれ!男よ!「誰が友だ!?それにいきなり呼び捨てかよ!?」全くなんて奴なんだ?礼儀知らずにもほどがある。
だが気がつけば俺はこのクラスに溶け込めていた。おれとこいつのやりあいを見て皆笑っている。どうやら大丈夫みたいだ。俺はこのクラスにしっかり順応できた。もしかしたら…こう思いたくないがこいつのおかげなのかもしれない。
- 200 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 21:45:19.20 ID:u/DxTDFR0
「ふぅ〜…」学校初日というわけで授業は一切無くクラス内での役割決めや掃除の場所等事務的なことばかりだった。
休み時間も休むこと無く質問攻めにあっていたので時間はあっという間に過ぎて行った。午前の授業が全て終了した。
帰る準備をしようとしていたその時「男!一緒に昼飯を食べよう!そして友情を育もうではないか!」友が話しかけてきた。
っていうか今なんて言った?昼飯?「おい?友?お前今昼飯って言った?」「あぁ。言ったぞ。午後からは生徒会の総会があるからな。」
マジかよ…。そういえば前日にもらったプリントそんなことが書いてあったような気がしてきた。はぁ…初日から購買部のお世話になるとは。
「男。ちなみに今日は学校初日だからな。購買も学食もあいてないぞ。」友が絶望の言葉を俺に投げかける。
「やはり弁当を忘れんたんだな…。うっかりものめ。まぁ心配するな!私の飯を分けてあげよう!!っておい!!男!!」
俺は友の言葉を最後まで聞くこと無く教室を出た。学校の近くにコンビニがあったはずだ。だがそれも叶わなかった。正門も裏門も完全に閉まっている。
なんてこった…。このまま空腹で勝手も分からない学校の生徒会の話を聞かなければならないのか。俺にはハードすぎるミッションだ。
「はぁ〜…」溜息をついたその瞬間 バサバサ どこかで聞いた音が聞こえてくる。回りを見渡すが何も無い。というか昨日もこんなことをしたな。
上をみると「キュイ〜♪」そこにはドラゴンがいた。「お前なにやってんだ!?家で留守番しろって言ったろ!?」「キュイ〜…」
なぜドラゴンが学校に?納得してくれたはずなのに?だがそんなことは今は関係無い。ドラゴンがばれたらそれこそ大問題だ。
「ドラゴン!!屋上だ!!とりあえず屋上にいけ!!」「キュイ」ドラゴンが屋上に向かって飛んでいく。一体どうしたっていうんだよ?ドラゴン?
- 201 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 22:04:02.02 ID:u/DxTDFR0
俺は全速力で屋上まで駆け上がる。何の考えも無く屋上と言ったが、運よく屋上は立ち入り禁止だった。不幸中の幸いといったところか。
屋上のドアを開けるとそこにはドラゴンが待っていた。「キュイキュイ〜♪」俺を見つけると嬉しそうに俺の所に駆け寄ってくる。
だが、まず確認しなきゃいけないことがある。「待て。ドラゴン…俺は家で待っててくれと言ったよな?それが何でここにいるんだ?」
「キュイ…」ドラゴンが申し訳なさそうに鳴く。自分がしたことを悪いとは思っているようだ。だがここはしっかり言っておかなければ。
こんなことを二度としないように。「朝から言っただろ!?バレたらどうなるかくらい賢いお前なら分かるだろ!?何で学校来たんだよ!お前のこと心配してる俺の気持ちわかんないのかよ!?」
気づいたら声に怒気がこもっていた。どうやら俺が思っていた以上に今回の件は俺の頭に来ていたようだ。何故だろう?裏切られたからだろうか?それは自分でも分からなかった。
「キュ…イ」ドラゴンはかなりショックだったみたいだ。目には涙が限界まで溜まっている。するとドラゴンの背中から何かが落ちてきた。それは
お弁当箱だった。大きい弁当箱と小さい弁当箱の二つ。ドラゴンが持ってきたのだ。弁当を忘れた俺が腹を減らしていないかと。もしできるなら二人でごはんを食べようと。弁当を作り持ってきてくれたのだ。
- 203 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 22:18:52.88 ID:u/DxTDFR0
心がジンと暖かくなっていくのが自分でも分かる。俺はなんとも馬鹿な男だ。理由も聞かず叱りつけて女の子を傷つけてしまった。
だが俺は傷つけてしまったことを悔やむ気持ちよりドラゴンのことが可愛く思えて仕方がなかった。
俺は目いっぱいに溜めたドラゴンの涙を拭ってやる。「ごめんな。ドラゴン。訳も聞かずに怒鳴っちまって…プリント見て弁当届けてくれたんだな?」
「…(コクっ)」ドラゴンが頷く。言葉は通じずとも気持ちは伝わる。ドラゴンの優しさはどんな言葉でも表わすことはできない。俺のこの気持ちもドラゴンに伝わっているだろうか?
伝わってほしいと思う。全力で伝えたいとも思う。だから俺はドラゴン頭を撫でる。言葉では表せない俺の感謝の気持ちを。
「よし!しんみりは終わり!二人で昼飯たべよう!腹減ったよ!ドラゴン!中身はなんだろうな?」「キュイ〜♪」
中身は分からないが美味しいに決まってる。こんなやさしい女の子の弁当がまずい訳がない。
- 204 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 22:32:27.92 ID:u/DxTDFR0
大きい弁当はドラゴンのものだった。小さい弁当だと思っていたほうはサイズとしては普通の大きさの弁当箱だった。
大きい弁当箱が大きすぎるのだ。面積にしてみたら俺の弁当箱の三倍はある。まぁドラゴンの食欲を考えれば当然か。
ちなみに弁当の中身は典型的な日の丸弁当だった。白飯の横にはおかずとしてタコさんウインナーに卵焼きにとんかつといったごはんが進むものばかりだ。
若干…いやかなりおかずの一つ一つのサイズが大きいが。いくらドラゴンが器用とはいえ流石に普通サイズに卵焼きやタコさんウインナーを作るのは無理のようだ。
だがとても美味しそうだ。「よし。じゃあ食べようか。いただきます」「キュイ!」その時だった。
「男!弁当を忘れたのだろう!友である俺を頼りたまえ!君のためなら弁当くらいわけてあげよう!って…」
場の空気が一瞬にして凍りつく。立ち入り禁止ということだからすっかり油断していた。鍵くらい掛けておくべきだった。だが時すでに遅し。
「なああああああああああああああんだあああああああああ!!その生き物はぁああああああああ!!!」友の声が青空に響く。またも懸案事項が増えた…。
- 206 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 22:48:39.85 ID:u/DxTDFR0
「グルルルル!!」ドラゴンが牙を剥く。目が明らかに血走っている。殺る気の目だ。ドラゴンは今発見者である友をマジで殺そうとしている。
「ドラゴン!落ち着け!流石に殺すのはまずい!」「殺す!?殺されてしまうのか!?俺は!?」「友!静かにしてくれ!事情を今から説明するから!」
「グワァル!!」「うわぁ!噛みつこうとしないでくれ!男!どうにかしてくれ!」「ドラゴン落ち着けって!今からこいつと話をするから!」「そ、そうだぞ!ドラゴン!俺は男の親友なんだぞ!」
「誰が親友だ!?誰が!?」「余と君だ!!」「なんでいきなり曹操っぽくなってんだよ!?」「お!?男、三国志が分かるのか?いや〜やはり気があうな〜!流石心友だ!!」
「漢字が変わってるぞ!心じゃねぇだろ!親だろ!」「そんなことまでわかるなんて流石朋友…」「レベルうPさせてんじゃねぇ!!」男と言い合う友を見てドラゴンは安心していた。男の友達。なら大丈夫。
だが男と言い合う友を見ているのもなんだか面白くない。なのでドラゴンは男と言い合う友の後ろに忍び寄り カプッ 甘噛みをした。
「うぎゃあああああああああああ!!噛まれてる!!」今日二度目の友の慟哭が響きわたる。
- 210 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 23:13:51.03 ID:uvJbWNyk0
もう少し改行・・・
このままだとちと見にくい
- 211 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 23:15:55.91 ID:u/DxTDFR0
「ふむ。なるほど。そういうことだったのか。」友に状況を説明し終える。もう少し驚くかと思ったが案外すんなり納得してくれた。
「そういうことって…もっとなんかあるだろ?ドラゴンなんかいるわけないじゃないかとか」「そうは言っても現にいるではないか。男よ。」
まぁそうなんだが…。「なに!世界は広いからな!ドラゴンの一匹くらい居てもいいじゃないか!いやむしろいたほうが面白い!」
こいつなかなか剛毅な奴だな。今までハイテンションぶりからしてみればなんか意外だった。それにドラゴンのほうも
「…」俺の後ろに隠れているが(もちろん隠れきれていない)さっきみたいな殺気は無い。というかこいつ人見知りするやつだったんだな。
初対面の俺にあんだけ懐いてきたんだから友にもすぐ懐くと思ったんだけどな。これまた意外だったな。「しかしドラゴンか…男よ。名前はなんて言うんだ?」
「名前?」「そうだ?名前くらいあるだろう?」そういえばそうだな。ついつい流れでドラゴンと呼んでいたが…名前なんて考えもしていなかった。
「ドラゴン。お前名前ってあるのか?」「(フルフル)」首を横に振る。名前なかったのか…。これはどうにかしないとな。
「男!心配するな!俺が考えてあげようじゃないか!そうだな…シル○ィードというのはどうだろう?」「いやそれ色々まずいから」「(フルフルっ!!)」
ドラゴンも勢いよく首を横に振る。 キーンコーンカーンコーン その時チャイムが鳴った。
「男よ!予鈴だ!体育館に行くぞ!」「ちょっ!俺まだ飯食ってないんだけど!」「いいからいいから。早くしないと遅れてしまうぞ!うちの生徒会は厳しいからな。遅れたら腕立て110回だぞ!」
「マジか…。わかったよ。ドラゴン放課後まで屋上で待っててくれ。終わったら迎えにくるから」「キュイ♪」
どうやら今回は何の不満もなく納得してくれたようだ。それにしても名前か…どんなのがいいんだろう?
- 214 :VIPがお送りします [] :2008/07/21(月) 23:41:17.72 ID:u/DxTDFR0
>>210
申し訳ない。努力します。
なんというか凄まじい生徒会の総会だった。中身が濃いというかなんというかとにかく凄かった。教師だろうがPTAだろうが理事だろうがお構いなし。言いたいことをずばずば言っていく。
生徒の自主性を重んじる校風らしいが生徒会があそこまで権限をもつのはどうかと思う。まぁ俺には関係のないことだ。生徒のための学校作りというわけだから生徒である俺に不利益はない。
それに俺は総会そっちのけであることを考えていた。ドラゴンの名前だ。いくら流れとはいえそのままドラゴンと呼んでいたなんて。改めて自分の気遣いの無さが身にしみる。
俺は今日気づいた。ドラゴンは親父から言われたから一緒に住んでいるわけではない。きっかけはそうだったかもしれないが頼まれたから世話をしているなんて気持ちは毛頭ない。
弁当を作って持ってきてくれたりなどむしろ俺のほうが世話になっているくらいだ。ドラゴンは立派な同居人なのだ。だからいい名前を考えてあげたいのだが…
「う〜ん…」どうしてもいい名前が思い付かない。ドラ。シェン。ロン。センコー○ーラー。浮かんでくるのはそんなどこかで聞いたような名前ばかりだ。自分のセンスのなさに嫌気がさす。
あれこれ悩んでいる間にもう教室に着いてしまった。ドラゴンを待たせているからな。早く屋上に行かないと。教室を出てからすぐに「男!見ろ!この紙に書かれたリストを!ドラゴンくんの名前を俺も考えてあげたぞ!」
友が大声で叫んで来たので黙らせるために一発殴り俺は屋上に急いだ。
- 216 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 00:03:02.28 ID:yWgPxVAP0
「う〜ん…」帰り道でも俺は悩み続けていた。ちなみに今ドラゴンはどこにいるのかというと空を上空高く飛んでいる。
目を凝らして見てようやく影が見えるくらいだ。何も知らない人には鳥にしか見えないだろう。
こうなったら姓名判断師にでも相談しようかと思っていた矢先だった。「ちょっと…やめてください!」女の人の声が聞こえる。なんなのだろうか?
前を見てみると女の子に男二人が絡んでいる。「いいだろ〜ちょっとだけ遊んで行こうよ!ねっ!ちょっとだけ!」「変なことしかしないからマジで!」
「え…今変なことしかしないって…?」「「…」」三人の間になんとも微妙な空気が流れる。「と、とりあえずいいじゃん行こうぜ!」「そうそううん!行こう行こう!」
馬鹿な男たちだ。というか変なことしかしないと公言した男たちの暴走を見て見ぬふりをするわけにはいかない。
「お前ら。やめろよ。嫌がってんだろ。というか変なことしかしないって言っちまった時点で諦めろよ。」「え…」
「なんだてめぇ!格好つけてんじゃねぇぞ!」「そうだぞこら!痛い目に会いたいのか!」ヤンキーの一人が俺の襟を掴んでくる。
おれはその手を握り、少し力を加え力を受け流す。するとヤンキーの体はふわっと宙に舞い背中から地面に思い切り叩きつけられた。
- 218 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 00:23:02.26 ID:yWgPxVAP0
親父の仕事の手伝いをする上で俺は護身術を親父から叩き込まれた。それに数えきれる程度でしかないが親父の仕事のせいで普通の高校生じゃ遭遇もできないような修羅場に巻き込まれたこともある。
その辺のゴロツキが相手なら負ける気はしない。「ぐっ…がっ!」投げられたヤンキーは思い切り打ちつけられて呼吸ができないようだ。もう少し加減をすべきだっただろうか。
まぁ時間経てば呼吸も戻るし怪我もないだろう。もう一人の相手をしようとしたがもういなくなっていた。友達を見捨てていくとは。なんとも情けない奴だな。「あ…あの…」「ん?」
「あ…ありがとうございます!」あ〜…そういや結果的に俺が女の子助けたみたいになってんのか。「いやお礼とかいいよ。あいつらがあんまり馬鹿なこと言うもんだから注意しただけだし。」
「でも…」女の子が何か言おうとしたその時だった。「兄貴!!こっちです!!」さっきのヤンキーが戻ってくる。後ろにはもう一人男を連れてきている。「お前か…鉄をやったのは…」
「ひっ…!」ものすごい眼光の持ち主だ。女の子が脅えている。兄貴と呼ばれるそいつはうちの制服を着ていた。よく見るとヤンキー二人もうちの学校の制服をきていた。おいおい…なんか面倒なことになってきたぞ。
- 220 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 00:45:39.24 ID:yWgPxVAP0
これはマズい!なんだかものすごい誤解されている気がする。これは早いとこ説明したほうが勝ちだ!
「いや違うんだ!兄貴さん?だっけ。俺は君の友達が女の子に絡んでいたから注意したんだ!そしたらそいつが俺の袖を掴んできてだな。これは正当防衛なんだ!」
「それは…本当か…?」兄貴と呼ばれる男が静かに言う。「違いますよ兄貴!こいつがいきなり殴りかかってきたんです!「鋼…お前には聞いていない…」」
鋼と呼ばれた男が黙る。「女…今こいつが言ったことは本当か…?」「え…私?はっはい!本当です!間違えありません!」なんなんだ一体?兄貴と呼ばれる男は何がしたいんだ?
「そうか…それはすまなかった…こちらに非がある…」「あっ兄貴!?」ほっ…良かった。どうやら兄貴は話が分かる人のようだ。「だが…友を殴られて黙っている程…」えっ!?まさか…
兄貴は静かに言う。「俺は…温厚では無い…」言い終わると同時に雷光のような鋭い突きが兄貴から繰り出される。間一髪でそれをよける。だがよけるだけで精いっぱいだった。
「よけた…か…」兄貴が微妙に微笑む。兄貴はどうやらめちゃくちゃ強い。これは予想以上に面倒なことになってしまった。後ろでは女の子が驚いて声も出せないでいる。
「早く逃げたほうがいいよ。面倒なことになってきたから。」「え…でも…」「いいから!!…ね?」「はっはい!」女の子が走っていく。それを兄貴は黙って見過ごす。
「行った…な…」兄貴がまたも呟く。「女がいては…戦いにくいからな…」はぁ〜…ドラゴンにばれるまでに終わるといいんだけど。でも兄貴めちゃ強ぇしなぁ…。
- 223 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 01:03:32.49 ID:yWgPxVAP0
「はっ!ふっ!」兄貴の鋭い突きが次々繰り出される。しかもそれらはすべて的確に人体の急所を狙ってくる。防戦一方にならざるを得ない。俺は受け流すことだけしかできないでいる。
兄貴は本当に強い。早い突きのテンポに慣らされたところでいきなり緩い突きをいれこちらの隙を窺ってくる。並の奴なら間違いなく1分ももたないだろう。だが兄貴は「突き」しかしてこない。
正規の試合ならまだしもこれは喧嘩だ。ならばなぜ?おそらく兄貴は蹴りに自信がないのだ。だからこそ一撃必殺の突きを鍛えここまでの技に磨きあげたのだろう。それならば勝機は十分にある!!
兄貴が俺の隙をつこうと再度緩い突きを打ってきた。今だ…!俺はその突きを左手で払い前に踏み込む。そして右手で兄貴の水月に掌底を打ち込んだ。 メキッ!!! 鈍い音が響く。水月に右足がめり込んでいた。
そう右足だ。兄貴の右足が俺の水月にクリーンヒットしていた。「がっ!!くっ…」俺の読み違いか。兄貴は誘っていたのだ。俺が兄貴の戦法を読んだと思いこみ隙をみて打ち込んでくるのを。完敗だ…。
- 228 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 01:32:45.26 ID:yWgPxVAP0
「なかなかの…男だったな…」兄貴は驚いていた。こんな男がこの町にいたとは。男の掌底は速くあと一瞬でも兄貴の反応が遅ければ結果は逆になっていただろう。
「鋼…行くぞ…」「はい。鉄!おい起きろ!」兄貴が鉄鋼とともにその場を去ろうとしたその時だった。上空から物凄い速度で何かが落ちてくる。その何かは正確に兄貴を狙っていた。
それを感知した兄貴は間一髪でそれを避ける。「ギャアアオオン!!!!」なんだ…この生き物は?「うわぁ!!ドラゴン!?」鋼が叫ぶ。ドラゴンと…いうのか?この生き物は…?
そのドラゴンという生き物は明確な殺意を俺に向けてきている。だがその殺気は男が持つ鋭いそれでは無い。ねっとりドロドロした粘着質な憎悪のようなもの。女だけがもつ特有の殺気。
それをこのドラゴンとやらは体中から溢れさせている。「そうか…この男…お前の飼い主か…」「グワアアアアア!!」ドラゴンが叫ぶ。どうやら合っているようだ。
「ドラゴンとやら…これは男の決闘だ…主のような女が汚していいものもではない…ここでもし主が俺に手を出せば…それは男の名誉をも傷つけることになる…」「グワっ!?グウウウ…!」
殺気は変わらないがどうやら俺の言葉がわかったようだ。男の道が理解できるか。イイ女だ。「わかったなら…男を連れて行け…気絶してるだけだ…」「グワァル!!」言われずともわかっている!といったところか…。
ドラゴンが男を背に乗せ、空に飛ぼうと羽ばたいている。こちらをじっと睨んできてはいるが。「ドラゴンよ…男に伝えろ…また闘ろうと…」「…(コクっ)」無精無精といった感じだが頷く。
「それと…ドラゴン…また会おう…」俺が言い終わる前にドラゴンは飛んで行った。気がつくと俺は笑っていた。久し振りだな…。喧嘩のあとに笑えたのも…。男にドラゴンか…。覚えておこう。そしてできるならもう一度会いたいものだ。
- 229 :VIPがお送りします [] :2008/07/22(火) 01:37:05.24 ID:yWgPxVAP0
期待されてるかたすいませんがそろそろおねむなのでお休みしたいと思いますのことよ。
明日もできれば夜の9時くらいから再開したいんで保守してくだされば幸いです。
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