■戻る■ 下へ
悪魔「魔王さま! とうとうお目覚めになられたのですね!」
161 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 14:51:39.62 ID:JKvSaMmh0
――――馬車
魔王「しかし、なんでまた港街に?」

魔物「目的地には徒歩でもいけるんですが、船の方が早く着くんですよ」

魔王「旅行しながらゆっくりじゃダメなのか?」

魔物「本当はそうしたかったんですが……陸路で迂回しながら行くと一年はかかります」

魔王「……船なら?」

魔物「2週間ってところですね」

魔王「なら、3年の旅は2年の旅になったのか?」

魔物「……残念ながら」

魔王「しかし……そんなに繰り上げてまで急ぐって、目的地はどこなんだ」

魔物「勇者が出生した国です」


163 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 15:04:04.97 ID:JKvSaMmh0
――――港町
魔王「……海!」

魔物「……初めて見ましたが、やはりすごいですね」

魔王「ああ、そこら辺中、人だらけ、物だらけ、商人だらけだ、流石港町」

魔物「とりあえず、宿を取っておきますから、次の船の乗船券でも買っておいてくれませんか?
    えっと、待ち合わせ場所は……あの無駄にでかい勇者の像でいいでしょう」

魔王「本当に無駄にでかいな」

魔物「魔王様が討伐されて、ここは相当潤ったんでしょうね……、奴隷、強奪した金品、亜人達から搾取した物資……」

魔王「……まぁ、昔の話だろ? 今はそうじゃないならそれでいいじゃないか」

魔物「その昔のせいで未だに苦しんでいる一族もありますけどね……」


167 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 15:12:00.38 ID:JKvSaMmh0
――――乗船券売り場
魔王「次の船はいつですかね」

店員「次の船ですかー、次の船なら出る予定はないですよ?」

魔王「はい?」

店員「そろそろ戦争を始めるらしくて、怖がって乗客は来ないし、貨物船の需要が上がったからみんな貨物船の状態ですね」

魔王「……貨物船に乗せてもらうには?」

店員「船長との交渉しだいじゃないですか?」


168 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 15:21:41.75 ID:JKvSaMmh0
――――宿屋「海の水平線」
魔王「かくかくしかじか」

魔物「ちゃんと言ってください」

魔王「戦争が始まるらしくて船が出ない、貨物船ならいっぱい出るけど船長と交渉しないと乗れない」

魔物「なるほど……戦争って勇者の母国と他国の戦争ですよね?」

魔王「そりゃあ、そうじゃないのか?」

魔物「……これはチャンスかもしれませんね」

魔王「へ?」

魔物「いいですか、勇者は基本的にそこら辺をぶらぶらしています、つまり殺そうと思ってもどこにいるのかがわからないわけです」

魔王「……まぁ、そうだろうなぁ」

魔物「そこで私は勇者の情報を得るべく、勇者の母国へ行こうとしていたのですが、戦争となればあいつは絶対に来ます」

魔王「なんでまた」

魔物「あいつはそういう奴なんですよ、横から入ってきて全てを無茶苦茶にかき乱す、そういう男なんです」


169 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 15:28:51.98 ID:JKvSaMmh0
魔物「こうしてはいられません、早速貨物船の船長達と交渉しに行きましょう!」

魔王「……行きたくねぇなぁ」


――――波止場
魔物「今日にも出る貨物船と話はつけました、さぁ、乗りますよ」

魔王「早!? 宿はどうするんだ!? 新鮮な海の幸は!」

魔物「宿は前金を払っておいたから大丈夫です、船の上で釣りでもしたら海の幸も食べれるでしょう
    さぁ、さっさと行きますよ!」

魔王「…………戦争、ねぇ」


171 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 15:37:54.06 ID:JKvSaMmh0
――――船
魔王「死ぬ、辛い、気持ち悪い、下ろして」

魔物「予想はしてましたけど凄まじい勢いで酔ってますね……」

魔王「……二週間もこのままなのか?」

魔物「はい、二週間もこのままです」

魔王「…………ウップ!」

魔物「私に吐いたら船から落としますよ!」


――――勇者の母国
魔王「…………魔物、なぁ、俺はちゃんと立てているか……? 俺は……生きているのか……?」

魔物「さっさと宿取りに行きますよ、今までと違ってここは大きいですから、この国を巡るだけでも相当長くなりますよ」

魔王「……どれくらい?」

魔物「ざっと名所を巡るだけでも5日間、それに勇者の情報が手に入るまでしばらくはこの国にいようかと」


173 :VIPがお送りします [] :2009/04/09(木) 15:47:54.68 ID:1NLyJ/yk0
支援

魔王かわいいよ魔王


174 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 15:59:10.94 ID:JKvSaMmh0
――――勇者の家
魔王「いきなり勇者の所在地をあててしまったじゃないか」

魔物「これは大昔の勇者の家を再現した観光スポットですよ、ほら、ここに勇者について書いてる看板とかありますよ」

魔王「ふむふむ……大昔に魔王を封印した英雄、魔王を封印した後は水の姫と暮らしていたが、水の姫が魔物達に殺される
    それ以来、世界の平和と守るべく世界中を放浪している……」

魔物「人間達からすれば平和を守ってるかもしれませんが、亜人達からするとただの虐殺者ですけどね」

魔王「この水の姫って……?」

魔物「あの水の都にいたっていうお姫さまですよ」

魔王「……あー、あのお城ね、ならあそこもある意味、勇者に関係ある所だったわけか」

魔物「勇者について情報を得るどころか、色々と失いましたけどね……お金とかお金とか……」


175 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 16:00:38.49 ID:JKvSaMmh0
――――内部
魔王「普通だな」

魔物「普通ですね……」

魔王「ん? この机…………?」

魔物「なんでも、大昔からずっと残ってる机らしいですね
    数少ない実際に勇者が使っていたもの、と書いてあります」

魔王「勇者が使っていたものって……勇者今でもそこら辺ぶらぶらしてるのにな」

魔物「まぁ、大昔からある! っていうとたいしたものじゃなくても凄そうに見えますからね……魔王様と一緒で」

魔王「あれ、今すごく酷いこと言われた気がする」


176 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 16:13:46.51 ID:JKvSaMmh0
――――騎士団
魔王「ここも観光名所なのか?」

魔物「ええ、実際に訓練してるところを見れますし、なんでもここは実際に勇者が所属していたらしいですよ
    ……つまり騎士団の剣の技をそのまま勇者が使ってるかもしれないって事です、ちゃんと見ておいてくださいよ」

魔王「ふむ…………なんか、一突きで木の葉を4枚突き刺してるんだが」

魔物「騎士団の得意技だそうです、なんでも勇者は落ちてくる木の葉全て突き刺していたらしいですよ」

魔王「……あっちでは剣に重りをつけて振ってるな」

魔物「勇者は常に重りを全てつけていたそうです、それでも木の棒の如く振り回したとか」

魔王「とりあえず、勇者と戦いそうになったら即座に逃げようという俺の覚悟が決まったな」


178 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 16:24:45.33 ID:JKvSaMmh0
――――料亭「黄金の麦」
魔王「……ここは」

魔物「大昔から続いているといわれている料亭、黄金の麦
    長い間引き継がれているその味は代を重ねるごとに深みを増している
    かの勇者もここでの料理に舌鼓を打ったとか……」

魔王「…………」

魔物「ここでのお勧め料理は……」

魔王「鴨肉のソテー……」

魔物「……知ってたんですか?」

魔王「いや、思い出した、大昔から変わってないんだな」


――――食後
魔王「味は変わってた……」

魔物「……別に、って味でしたね、不味いわけでもないですが期待したほど美味しくもない」

魔王「なにもかも、変わらずにはいられないということなのかっ……!」

魔物「もう老舗ってだけで興味本位で観光客が食べに来ますから、味の追求は忘れちゃったんでしょうねぇ」


179 :VIPがお送りします [] :2009/04/09(木) 16:29:21.98 ID:dm3zu9J80
支援

そういえば鳥娘はもうでないの?


180 :VIPがお送りします [] :2009/04/09(木) 16:34:20.14 ID:bq5gql5YO
なあ 封印される前の魔王を倒したのは今いる勇者なのか?

魔王って数百年封印されてたんだろ?
もしそうなら 勇者っていくつなんだ??


181 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 16:37:35.81 ID:JKvSaMmh0
――――宿屋「王国の品位」
魔王「さて、明日はどうするかねぇ」

魔物「明日は戦場ですよ」

魔王「……へ? 観光しないのか」

魔物「ええ、明日は勇者と一緒にいたという魔法使いの家などを見ようと思ったのですが……
    なんでも、明日、戦場に勇者が来るという噂を聞きました」

魔王「……俺は絶対に戦わんぞ!」

魔物「今回は様子見ですよ、……魔王様が勇者に勝てるかの」

魔王「……そんなの放っておいて旅行楽しめばいいのに」


182 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 16:43:13.16 ID:JKvSaMmh0
>>180
現在の勇者
勇者は神へと昇華しました

鍛冶の神と一緒でなんかを極めたら勝手に神になっちゃいます
けど、元は亜人だったり人だったりだから結構普通です

そしてヤボ用のため少し停止


184 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 16:49:02.56 ID:nlTBS9ucO
>>180
コノ物語の設定は知らんが
数ある小説の中には、人間から不老不死的存在に昇格するって話しはあるよ


185 :VIPがお送りします [] :2009/04/09(木) 16:57:59.30 ID:GrrYVDRq0
なんつうか
お腹減るよね


193 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 17:53:52.53 ID:JKvSaMmh0
――――戦場
魔物「ここが良さそうですね、戦場を一望できます」

魔王「おー、凄まじい人数だな……人がゴミのようだ!」

魔物「目、潰しますよ、お、動き始めましたね」

魔王「……あっちの青い旗が勇者の国の方か?」

魔物「ええ、あっちの青いのが王国の方です、それであっちのカラフルな旗は連合軍ですね」

魔王「連合軍?」

魔物「ええ、それほど大きくない街が、少しずつ兵を出し合ってできてます」

魔王「……おお、カラフルな方が押してる」

魔物「戦場で活躍すれば活躍するほど自分の街の発言力が上がるわけですから、士気も高いんでしょう」


194 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 18:01:08.56 ID:JKvSaMmh0
魔王「…………あ」

魔物「どうしました?」

魔王「あそこにいるのが勇者じゃないのか?」

魔物「……あー、見えますね……この戦場で死にませんかね」

魔王「見た感じ、無理そうだな」

魔物「ですねぇ……相変わらず曲芸みたいな戦い方してますね」

魔王「あれ、全部剣だけ切り落としてるのか?」

魔物「そうですよ、大昔もそうでしたから」

魔王「おお、カラフルなのがどんどん崩れていく……」


196 :VIPがお送りします [] :2009/04/09(木) 18:04:38.08 ID:pGqgiJbyO
なんで神になった勇者が人の戦争に加わるんだぜ


197 :VIPがお送りします [] :2009/04/09(木) 18:07:07.87 ID:oMeWa3wbO
>>196
これだから携帯厨は…
黙って見とけ


198 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 18:09:05.62 ID:JKvSaMmh0
――――終戦
魔王「……すごい量の捕虜だな」

魔物「それだけ勇者が活躍したって事でしょうね」

魔王「あれだけの捕虜、どうするんだ」

魔物「全部開放されますよ」

魔王「……そんなことしてたら戦争いつまでも終わらない気がするんだが」

魔物「見てたら理由がわかりますよ」


202 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 18:25:16.24 ID:JKvSaMmh0
――――戦場跡
将軍らしき男が声を張り上げる

「捕虜諸君! 我々は非常に寛大である! 貴殿らを奴隷にすることなく解放しよう!
 ただし、今回の戦で我々も犠牲を出した! 何の罰も与えなければ国民が黙っておいてはくれん!
 そこで我々は諸君らの処罰は国民の象徴たる勇者に任せようと思う!」

そこまで言うと将軍らしき男は口は閉ざし、続いて勇者が声を張り上げた

「捕虜諸君! 私は君たちに罰を与えなければならない! そこで私は君達には呪いをかける!
 呪いと言ってもすぐ死ぬようなものではない! 少し寿命が短くなるだけのものだ!」

言い終わると、勇者は魔法を唱え始めた
先ほど宣言した呪いというものをかけるためであろう

勇者の手をかざすと、白い雪のようなものが捕虜達に降り注いだ


203 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 18:31:20.73 ID:JKvSaMmh0
魔王「なんだあれ」

魔物「呪いですよ、人によって効果は違いますが、一般人なら2年か3年で死にます」

魔王「……えげつないな」

魔物「魔力が高いものなら10年、20年と生き続けますが、25年以上生きたものは聞いた事がないですね」

魔王「しっかし……わざわざ殺さずに剣だけを切り落としておいてなんで呪いとかかけるのかねぇ」

魔物「…………呪いを解くにはどうすればいいと思います?」

魔王「……聖職者に解いてもらえばいいんじゃないか?」

魔物「術者を殺す事ですよ」



205 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 18:39:39.50 ID:JKvSaMmh0
――――宿屋「王国の品位」
魔王「ようするに……勇者は常に誰かに狙われるのを好むって事か?」

魔物「多分、あの中の誰かが強くなって、命を狙ってくるのを期待してるんでしょう」

魔王「……それって、それだけ自分の強さに自信があるって事じゃないか?」

魔物「でしょうね」

魔王「もしかして……放っておいても勝手に誰かが勇者を殺してくれるんじゃ……」

魔物「大昔から、あの呪い使ってましたけどね……」

魔王「……もしかして、お前が勇者に執着するのって」

魔物「……ちょっとタイプは違いますけど似たようなものです」


207 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 18:48:54.55 ID:JKvSaMmh0
魔王「タイプは違う?」

魔物「強化版と言いますか……大昔の話ですけど、魔王様が封印されて暫く後
    人間達が略奪しに亜人達の村や街に攻め入りました」

魔王「ふむふむ」

魔物「しかし! そんなのを黙って見過ごす我が一族ではありません!
    魔力が強いのもあって、人間達を一掃してやりました! ……が」

魔王「勇者に捕まって呪いをかけられたと?」

魔物「はい、おまけに子孫にすらかかるように……」

魔王「……お前の一族って後どれくらいいるんだ?」

魔物「一人です」


209 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 18:59:09.89 ID:JKvSaMmh0
魔王「悪いが俺では勇者は倒せないと思う」

魔物「…………でしょうねぇ、ことごとく期待外れでしたから」

魔王「だが、一緒に旅をするくらいならできる」

魔物「……役立たずですね」

魔王「…………」

魔物「けど、まぁ何もないよりはましですか……
    私が死ぬまで一緒に遊んでくれますか?」

魔王「ああ」


210 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 19:11:33.31 ID:JKvSaMmh0
――――魔法使いの家
魔物「と、いうわけで早速観光です!」

魔王「おういえ! ……けど、ここも地味だな」

魔物「ですね……」

魔王「観光客向けの看板によると……、勇者と旅をした魔法使い
    数々の魔法と神より授かった武具で勇者を助けたが魔王との戦いで犠牲となった」

魔物「……因みに魔法使い関連の観光施設はここだけのようですね」

魔王「どうせならもっと有名なら、こいつを倒した俺の鼻も高かったのに……」


――――内部
魔王「…………ここは廃屋か!?」

魔物「どうやら、観光客もあまりこないから掃除や補修がちゃんとなされてないようですね……」

魔王「けど……何故か落ち着くな、ここは」

魔物「きっと、同じように人々から存在自体が忘れ去られようとしているからじゃないですか?」


211 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 19:11:48.33 ID:h7mDTrplO
あ、あれ…なんかいい話に…?


212 :VIPがお送りします [] :2009/04/09(木) 19:13:39.79 ID:UWvraNqLO
魔物の絵まだー?


213 :VIPがお送りします [sage] :2009/04/09(木) 19:18:34.95 ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、次なる街へ行きたいと思います」

魔王「おう」

魔物「と、その前に……簡単にこれからのルートを説明したいと思います
    今度は船を使わずに陸地をわたっていって、来た道とは被らないように魔王城に戻りたいと思います」

魔王「最後は魔王城に帰るのか?」

魔物「はい、やっぱりみんなと一緒の場所で眠りたいですから」



次へ 戻る 上へ