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アブソル「ほろびのうたを歌おうか」
191 : [] :2009/05/07(木) 18:19:20.94 ID:9TeNb9N40
ある日、いつもの時間にサトシは顔を見せなかった。
…また何かあったのだろうか。

以前顔を出さなくなったサトシに対しては、どうせ私に飽きたんだろう、という怒りに近い気持ちしか沸かなかったが、今回は違う。
もしかしたら、サトシに何かあったのかもしれない。

ざわざわとした胸騒ぎは、私の本能だ。
“わざわいポケモン”としての本能が、サトシに何かあった事を暗に知らせたと思った。

あてもなく、サトシとピカチュウの姿を探した。
探した、とはいっても、この世界もそこまで狭くない。
簡単に目当ての人物が見つかる訳ではないけど、それでもいいと思った。
見つからないかもしれないけど、探さないと後悔する。そんな気がしたからだ。


194 : [] :2009/05/07(木) 18:25:06.08 ID:9TeNb9N40

「アブソルが走り回っているなんて珍しいね」

茂みに足を進めていると、頭上からそんな声が聞こえてきた。
見上げれば、ピジョンが羽を広げたまま珍しそうに笑っている。

「ついにこの世界も終わりかい?」
「…そんなんじゃない」
「なんだ、違うのか」

つまらない、と言いながら、面白くもなさそうに笑ったピジョン。
一瞬迷ったが、そろりそろりとそのピジョンに訪ねてみる事にした。
…何でもいいから、手がかりが欲しかったから。

「人間と、ピカチュウを見なかったか?」

茂みに影を落として、ピジョンの姿は見えにくい。だけど、ひどく驚いた表情をしている事だけは分かった。

「アブソルともあろうポケモンが、人間探しかい?」

「…いや、そういう訳じゃないけど」

「こりゃ、雷が落ちるかもしれないね。野生のアブソルが人探しなんて」



197 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 18:29:04.06 ID:9mZYUkLAO
>>170
記憶曖昧なんだが図鑑データが、初代だと珍しさから乱獲されて絶滅寸前になり
金銀だと悲しげな声でいなくなった仲間を探す姿が目撃されているってやつなんだよ

ダークライとかアブソルとはちょっと違う感じだけど


198 : [] :2009/05/07(木) 18:31:09.84 ID:9TeNb9N40
天変地異だ。大変だ。と、ピジョンは羽をばたばたさせながら言う。
面白がられている事は分かっていたが、ひこうを持ち合わせない私の体では、ピジョンに何か危害を加えようにも術がない事はよく分かっている。

地面の土を爪でがりがり掻きながら、黒い霧を発射して怒りを表す事しか出来なかった。

こんな鳥ポケモンに構っていられないので、ひときわ大きく霧を噴射した所で、再び走り出した。
走る背中の向こうから、ピジョンの羽音が聞こえる。
まだ何か用なのか、と瞳をぎらつかせて睨み返したら、ピジョンは茶色い羽をはばたかせながらこう言った。

「そのピカチュウって、モンスターボールに入っていないピカチュウだろ?」

「…!知ってるのか?」

「さぁ。知らないけどね。西の方で今朝見かけた気がするだけだよ」

「…西…」

「あくまでも気がするだけだからね」


199 : [] :2009/05/07(木) 18:34:28.55 ID:9TeNb9N40

ばさばさと羽音を立ててそう言ったピジョン。

「…ありがとう」

噴射していた霧を納めて、西の方向へ走りだした。

「…アブソルがお礼を言うなんて…これは本当に天変地異が起こるかもね」

ぼそりと呟いたピジョンの声なんか、もう聞こえない。
ただとにかく、西の方角へ向けて走り出した。

自分でも、何にここまで必死に追い立てられているのか分からなかった。


200 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 18:37:46.30 ID:GE7WtctY0
    ∩____∩: :.+
ワク. | ノ      ヽ+.:
:.ワク/  ●   ● | クマ
  ミ  '' ( _●_)''ミ クマ
. /  ._  |_/__ノヽ   
 -(___.)─(__)─


202 : [] :2009/05/07(木) 18:38:41.47 ID:9TeNb9N40

西の方向へ近づくにつれて、自然と毛並みが逆立ってくる。
私の本能が、何かを察しているんだろう。

あの水辺から、まるっきり西の方向に、一つの街があった。
茂みで隠せるだけ体を隠して、街を覗く。
ぶるりと寒気がするほど、全身が何かを察知している。

間違いなく、ここにサトシはいる。

そう確信した時、私の赤い瞳が、自然と光ったと思った。


「答えろよ!サトシ!!」

サトシ、という名前に、大きな耳が反応した。
声が聞こえた方へ視線を合わせると、そこにはサトシと、一人の少年がいた。


203 : [] :2009/05/07(木) 18:40:19.21 ID:9TeNb9N40
>>200
アナロ熊見たばっかなので、それを見ると吹いてしまうwww

あと支援ありがとうございます。
少しでも多くの人がアブソルたんを好きになりますように。

ちょっとタイプし過ぎで手がヤバイので、一旦書きためてきます。


206 : [] :2009/05/07(木) 18:53:44.02 ID:9TeNb9N40

カメックスを従えたその少年は、サトシをきつく睨んでいる。

「逃げるのか!?」

「…逃げる訳じゃないよ」

「逃げてるだろ!!お前がバトル引退したら、俺はどうなる!!一生お前に負けたままじゃないか!!」

そんなのは許さない、今すぐに勝負しろ。
そう詰め寄る少年を、サトシはただ、真っ直ぐ見つめるだけだ。

やがて少年は、腰につけたモンスターボールを地面に叩きつけて、唇をかみしめた。

「…俺は、四天王にも何度も勝った…!少なくとも、カントーやジョウトで俺にバトルを申し込んでくる奴はいない…!」
「俺は絶対に無敵だ!俺のカメックスだって、絶対に負けない!!」

「お前だけだ!!お前だけ…」


「お前に勝たないと、俺は真のポケモンマスターにはなれないんだよ!!」


207 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 18:54:54.07 ID:wpraeDvrO
シゲル…


208 : [] :2009/05/07(木) 18:55:27.06 ID:9TeNb9N40

少年の叫び声に、サトシは肩を揺すっていた。
サトシの隣で、ピカチュウは相変わらず小さく丸くなっている。
サトシをちらちらと見て、心配そうに黄色い体を縮めていた。

「シゲル、俺はもうポケモン同士を戦わせる事はしたくない」

「やっぱり逃げてるじゃないか!!お前は負けるのが嫌なだけだ!!」

「違う!!逃げてるんじゃないよ…」

ピカチュウを片手で抱きよせて、サトシは悲しそうな表情をする。

「ただ、もうこいつ等を傷つけたくないだけなんだよ」

「…そんな甘っちょろい事を言ってるやつに、俺は負けたままなのか…」


少年が、怒りで震えだした。
少年の怒りを察した様に、カメックスが威嚇する様にピカチュウを睨みつける。


209 : [] :2009/05/07(木) 19:00:49.30 ID:9TeNb9N40
カメックスの威嚇に、ピカチュウのポケモンの本能を返す。
私と会ったばかりの頃のように、頬袋に電気を溜めて、ぱちぱちと放電の準備を整えていた。

「シゲル、俺にはもう戦わせるポケモンがいないんだ」

「そのピカチュウは飾りか!?」

「ピカチュウは友達だ!」

「友達でもなんでも、ポケモンはポケモンだ!」

「そうだけど…!」


威嚇を続けるピカチュウをなだめるように、サトシはピカチュウの頭を撫でている。


「…シゲル、最後に戦った時の事覚えてるか?」

「……」

「もう俺には手持ちがいなくて…みんな瀕死で…」

「あぁ」

「シゲルのカメックスだけ、元気なまま。俺も、傷つききったアブソルしか手元にいなくて…」


210 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 19:06:36.95 ID:9mZYUkLAO
(´・ω・`)
個体値とか性格とか拘ってサーセン…


211 : [] :2009/05/07(木) 19:06:47.64 ID:9TeNb9N40

「もう絶対に勝てない、と思った」
「だけど、アブソルは、何も言わないまま、“ほろびのうた”を歌ったんだ」

痛み分けになるかもしれないけど、負ける俺を見たくないとアブソルが言った。
静止する俺の命令を、アブソルは聞かなかった。

何も出来ないまま、気付けば目の前でカメックスもアブソルも倒れていた。

審判が、手持ちのポケモンを調査し始めた。
俺のリザードンがかろうじて立っていたので、勝者は俺になった。

「覚えてるか?」

「…忘れるわけないだろ、お前が俺からチャンピオンの座を奪っていった瞬間なんだから」

悔しそうに拳を握る少年、シゲル。
そんなシゲルに、サトシは小さく首をふって見せた。

「違う、おれはチャンピオンになったんじゃない」
「アブソルの命を犠牲にして、名前だけ手に入れたんだ」


212 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 19:09:38.20 ID:/ZdQ7EM7O
アブソル「アブソル」


213 : [] :2009/05/07(木) 19:13:34.39 ID:9TeNb9N40
じばく、みちづれ、だいばくはつ、ほろびのうた…
自滅的な攻撃を覚えているポケモンから、その技を忘れさせようとした。

「だけど、アブソルだけは、絶対に嫌だと言ってほろびのうたを忘れようとしなかった」

『私は、サトシに仕えているけど、それでも所属の誇りだけは忘れたくない』
『“ほろびのうた”は、私の誇りだ』

だから、サトシはアブソルを手放そうと思ったらしい。

「博士に相談したら、人間になついたアブソルは野生に返すと生きていくのが難しいって言われて」
「人間の街を荒らして生きていくポケモンだから、人間になつくと生きるための材料を揃えられなくなるって」

博士に言われて、悩んだサトシは、そのアブソルの記憶を消して野生に返そうと思ったようだ。


214 : [] :2009/05/07(木) 19:18:25.13 ID:9TeNb9N40
シゲルは、一通りサトシの言葉を聞いていたが、やがて皮肉の笑みを浮かべた。

「結局、ポケモンは友達なんて言ってるけど、お前もポケモンを道具として見ているじゃないか」

「そんな事…」

「お前が育てたアブソルだろ。お前と一緒にいた記憶すら奪われて、今もそのアブソルはどこかで人間に忌み嫌われてるんだぜ」

「……」

「責任持って最後までお前が育てるべきだったろ」

「……」

「結局、ポケモンが自滅していく姿を見たくない、というお前のエゴで、アブソルは人生をめちゃくちゃにされたんだよ」


シゲルの言葉に、頭のどこかが痛かった。
ズキズキ痛み過ぎて、思わずその場にうずくまってしまったほどだ。


215 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 19:20:13.04 ID:9mZYUkLAO
アブソル…


216 : [] :2009/05/07(木) 19:23:29.08 ID:9TeNb9N40
ズキズキ痛む頭の片隅で、ふと見えた映像は、何とも懐かしい。

サトシが笑っていて、ピカチュウも笑っている。
あの、紫色の菓子を食べて、サトシにもっと菓子をくれ、とねだる自分の姿。
これはひどく、遠く昔の記憶に思える。

「それでも!!」

サトシの大きな声に我に返った。

「…それでも、瀕死のポケモンをポケモンセンターに連れていって蘇生させて…また戦わせる…」
「そんな事は、もうやりたくないんだ」

サトシは、シゲルに頭を下げていた。
戦えない、と言って、深く頭を下げている。

シゲルの隣にいるカメックスも、サトシの隣にいるピカチュウも、戸惑っていた。


217 : [] :2009/05/07(木) 19:28:29.93 ID:9TeNb9N40

「とにかく、シゲルとはもう戦えないから」

じゃあ、と背中を向けたサトシに、シゲルは全身で怒りを表せていた。

「…勝ち逃げなんか…一番卑怯じゃないか…」

怒りで震えるシゲルは、カメックスに視線を送る。
カメックスは躊躇いなく、背中を向けたピカチュウに向かって突進していった。

気配に気づいたのが少し遅かったらしい。
自分よりも何倍も大きな体に突進されたピカチュウは、軽々と宙を舞って地面へ叩きつけられた。

「ピカチュウ!」

土に汚れたピカチュウの体をかばいながら、サトシはまた、あの悲しそうな表情を浮かべる。

「ピカチュウ…大丈夫?ピカチュウ…」

サトシが、泣きそうだと思った。
きっとまた泣いて、目が赤くなろうだろう。
それは見たくないと思った。


219 : [] :2009/05/07(木) 19:33:14.44 ID:9TeNb9N40
茂みの奥から、全身の気を逆立てて霧を噴射した。
どす黒い霧に、シゲルもカメックスも困惑した表情を見せる。

爪で喉を切り裂いてやろうと思った。
こいつ等は邪魔だ、と本能的に察したからだ。

存在を示すように、鳴き声を上げた。

「…アブソル?」

私の鳴き声に気付いたのはサトシで、傷ついたピカチュウを抱きしめながら周りをきょろきょろと見渡し始める。

「アブソル!!やめてくれ!!」

私を静止するサトシの声が聞こえてきたが、もう狙いは定まっているので、関係ない。
ザクザクと土を踏んで、勢いよくシゲルへ向かって飛びかかった。

「アブソル!!」

サトシの声が聞こえるのと、黄色い体が目の前を塞いだのは、ほぼ同時だ。


220 : [] :2009/05/07(木) 19:39:04.61 ID:9TeNb9N40
思いきり尖らせた爪は、目当ての人間ではなく、黄色い体をかすめた。

「…!」

しっかりと切り裂いた体は、ピカチュウの体だ。

「ピカチュウ!!!」

慌ててサトシがやってきて、深く傷を負ったピカチュウを抱き起した。

「ピカチュウ!…すぐ、すぐにポケモンセンターに連れていくから!」
「ピカ…」

情けない声を上げたピカチュウは、傷を自らの手で覆って、サトシに見せないようにしていた。


私の爪を見れば、しっかりと黄色い体を傷つけた跡が残っている。
唖然としたまま、ただこう叫んだ。

「なぜだ!!なぜこんな人間をかばう!!」

私の叫び声に、ピカチュウとサトシは同時に顔を上げた。
ピカチュウは、苦しそうな表情のまま、こう言った。

「分からない」



222 : [] :2009/05/07(木) 19:43:56.01 ID:9TeNb9N40
「でも、人間は傷つけたらいけないよ」

「本当に悪い人間なんて、きっといないから」

ぽつぽつと聞こえるピカチュウの声。
サトシは、私を見るでもなくすぐに走り去っていった。きっと、ピカチュウをポケモンセンターへ連れていくんだろう。

私は、その姿を見たことがあると思っていた。
それは昔むかし、ぼんやりと薄れる記憶の中の思い出。

『アブソル!アブソルしっかりして!!』

ごめんね、ごめんね、と繰り返す声は、サトシの物だ。

そして私は、サトシへこう返す。

『お前が負ける姿なんか、似合わない』


ふと気付けば、眠っていたらしい私。
水辺に浮かぶ月も、大分傾いていた。

夢ではないと思った。これはきっと、過去の私の記憶だ。


224 : [] :2009/05/07(木) 19:48:59.97 ID:9TeNb9N40

それからしばらく、またサトシは水辺に現れなくなった。
きっと、ピカチュウの看病で忙しいのだろう。

ふぅ、とため息をつく音すら聞こえてくるほど、この水辺は静かで綺麗だ。

そんな静かなこの場所に、人間の足音が聞こえた。
一瞬サトシかと思ったけど、違うだろう。足音が複数だから。

「オーキド博士、さすがですね」
「この辺りはまだ誰も開拓していないですよ」
「…えっと、資料によるとこの辺りはアブソルが多く生息している洋ですね」

話声に集中していると、やがてその声の人間達が姿を現せた。
白衣を身にまとった数人の人間。

「アブソルか…どうりで誰も開拓しない訳だ」

あの種族は災いを呼ぶからな、と言った人間は、周りの奴らから『オーキド』と呼ばれていた。


237 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 20:54:05.53 ID:WmS5IhGb0
アブソルはエルレイドとの差別化がむっといんだよなぁ


241 :VIPがお送りします [sage] :2009/05/07(木) 21:06:38.31 ID:sAo9pd50O
これからはバクフーンにちゃんとポロックもあげます


242 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 21:12:05.43 ID:dPYL+b59O
アブソルたんもふもふ支援
http://imepita.jp/20090507/761060
http://imepita.jp/20090507/762160
http://imepita.jp/20090507/762900


250 :VIPがお送りします [sage] :2009/05/07(木) 21:46:07.15 ID:2DfIXFP/O
アブソルのエロ画像探してくる
みんなもエロ画像貼ってパンツ下ろして保守!


251 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 21:47:05.17 ID:wlthOfjn0
遅レスだけど>>168のダークライって映画版のことか


258 :VIPがお送りします [sage] :2009/05/07(木) 22:17:29.46 ID:QDvj5gMk0
ロケット団「アブソルはいただいてくわよ〜」

サトシ「許さないぞ、ロケット団!!」


259 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 22:17:44.08 ID:YNCQpdnzO
しかし、これからほろびのうたが使いにくくなるなあ。


267 :VIPがお送りします [] :2009/05/07(木) 22:45:49.45 ID:FqTRk93wO
スーパーゲームボーイでポケモンやってて敵ポケモンが自爆した時にカーチャンが「あーあ、かわいそう…」って言ってから
どのゲームでも自爆系は使えなくなってしまった


268 :VIPがお送りします [sage] :2009/05/07(木) 22:54:32.11 ID:2DfIXFP/O
強運
命の玉
不意打ち 辻切り 馬鹿力 身代わり
バトンから繋いでるが、読みが冴えるとキモいくらい強いわ



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