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女作家「また、来たの。」
392 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 00:48:06.32 ID:XYJFTVZiO

――翌朝


女「…んぅ…すぅ…。」

とぅるるる とぅるるる…

女「…すぅ…んっ…?」

とぅるるる とぅるるる…

女「んぅ…。――電話。」

女(――男君、だよね。)

女(昨日はいつのまにか寝ちゃった、のか。)

女(どうしよう…。)


394 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 00:50:13.99 ID:XYJFTVZiO

とぅるるる とぅるっ

女(――あ、切れちゃった。)

女(……まぁ、いいか。合わせる顔、無いしね。)

女(…あんなこと、するんじゃなかった。)

女「…私の馬鹿。」


396 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 00:58:14.98 ID:XYJFTVZiO

男(…出ない、か。)

男(――しょうがないか、一人で朝飯食べに行こう。)

男(…『記憶に残すな』って言ったのは、先生の方なのに。)

男(――昼ご飯行く時に、もう一度電話してみるか。)

男(…。)

男(…もう、俺はあと数日しか居られないのに。)


398 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 01:07:00.51 ID:XYJFTVZiO

男「もう、ここに来るのも日課になっちゃったな。」

男「…なあ。毎朝俺に起こされて不機嫌だからって、ウィーンにまで雨を降らすなよ。」

男「あ、俺今日のウィーンフィルの演奏会、聴きに行くんだ。いいだろ。」

男「…まあ、お前のことだから聴きに来るんだろうな。」

男「あ、俺さ。明後日には日本に帰らなきゃいけないからさ、」

男「…また、しばらく来られなくなるよ。」

男「――じゃあ、また明日来る。」

男「…おやすみ。」


399 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 01:09:23.91 ID:UIHSJBU7O
ホント男はクズだな
好意無いなら二人でオーストリアなんかいくなよ


400 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 01:11:56.20 ID:e7ExTgZj0
気があろうがなかろうが、仕事なんだから行くだろ


401 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 01:13:55.25 ID:hyWQzxXMO
まぁ女性と二人っきりでも意識しない男だからなぁ
ホルン女先輩元気かなぁ


402 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 01:15:08.76 ID:XYJFTVZiO

女「ん、お帰り。」

男「あれ、先生。どうしたんですか?」

女「ねぇ、」

男「…はい?」

女「なんとか、仕上がりそうよ。」

男「…本当ですか。」

女「…ええ。」

男「それは、良かったです。」


403 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 01:18:24.20 ID:XYJFTVZiO

女「だから…、」

男「…?」

女「今日、ちゃんと行こうね?私、頑張るから。」

男「…勿論です。」

女「…よかった。」にこ

男「…はい。」

女「じゃあ、私部屋でもう少し書いて来るわね。」

男「はい、では後ほど。」

女「…うん。」


404 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 01:21:14.60 ID:XYJFTVZiO

ちょっと限界なので、二時間くらい寝て、また書きに来ます。

4時には帰って来まする。ノシ


405 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 01:23:13.83 ID:ZfCuSJIkO
いやちゃんと寝ろ


409 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 01:33:33.29 ID:h+ycCC55O
この話ってあれかよ…
特定厨がウザがられるのはわかってるけどあれだとするとこの展開は相当くるわ…
とりあえず無茶せずに寝てください
前も寝ないで頑張ってたから心配だわ


432 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 07:24:40.18 ID:Z7t5LWeSO
ほら、雨の足音が聞こえるよ
しらずしらずに ゆるむ頬 だって彼が来る
ゆるやかに染まる 落日の雨


434 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 08:07:50.17 ID:XYJFTVZiO
おはようございます。
すっかり寝坊してしまいました、うわぁ…

保守ありがとうございます。急いで身支度をしてきます。


435 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 08:19:43.82 ID:XYJFTVZiO

――その夜


こんこんっ


女「…はい。」

男「お迎えに上がりました。」

女「…ごめんなさい。5分だけ、待っていて。」

男「…はい。」


436 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 08:22:12.20 ID:XYJFTVZiO

がちゃ

女「…お待たせ。」

男「いえ。」

女「…ネクタイ、似合ってるよ。」にこ

男「…ありがとうございます。」

女「では、行きましょうか。」

男「ええ。」


437 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 08:25:29.44 ID:XYJFTVZiO

男「…先生。」

女「…なに?」

男「ドレス、素敵ですね。」

女「…普段こんな洋服着ないから、少し、恥ずかしいわ。」

男「いえ、よくお似合いですよ?」にこ

女「…そう、ありがとう。」


439 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 08:44:04.11 ID:XYJFTVZiO

――ウィーン楽友協会大ホール


女「凄い、人ね…。」

男「日本とは違って音楽的な土壌が豊かですから、老若男女みんな来るんですね。」

女「へぇ…」

男「ましてや『比類無き音楽団』と言われるウィーンフィルの公演ですからね。」

女「うん、…どきどきしてきた。」

男「席に、行きましょうか。」

女「…ええ。」


441 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 08:48:49.62 ID:XYJFTVZiO

男「――トイレ、大丈夫ですか?」

女「…失礼ね、子供じゃないんだから。」

男「冗談、ですよ。」

女「…もう。」

男「…。」

女「あ、」

男「…はい?」

女「…ネクタイ、曲がっている。動かないでね。」

男「…はい。」

女「…。」


442 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 08:52:53.23 ID:XYJFTVZiO

男「ありがとうございます。」

女「…うん。」

男「…。」

女「…ねぇ?」

男「はい。」

女「…個人的な思い入れがある、と言っていたわよね。」

男「…はい。」

女「あれって…」


ぱちぱちぱちぱち…


男「始まりますので、また後程。」

女「…。」こくり


444 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:02:32.05 ID:XYJFTVZiO

男(――ラフマニノフ ピアノ協奏曲第三番…。)

男(ピアノ協奏曲は二番が一番有名だけれど…)

男(個人的には三番の方が好きだな…)

男(…さすがウィーンフィルだな。凄い。)

男(…。)ちらっ

女(……。)

男(…そんなに緊張して聞かなくても…。)

男(…問題は、)

男(――休憩後のチャイ5、だよな…。)


―。

――。


ラフマニノフ ピアノ協奏曲第三番
 (1/2)ttp://www.youtube.com/watch?v=ZzeXtWjwhNM (1/2)
 (2/2)ttp://www.youtube.com/watch?v=OJOEuJzsApU (2/2)

445 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:06:22.96 ID:XYJFTVZiO

ぱちぱちぱち…

女「…。」

男「…凄かった、ですね。」

女「…ええ。」

男「…休憩ですが、ラウンジに何か飲みに行きますか?」

女「…そうね。」

男「はい。」


446 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:09:28.36 ID:XYJFTVZiO

男「――コーヒーで、よかったですか?」

女「…うん。」

男「どうぞ。」

女「…ありがとう。」

男「…。」

女「…。」

男「…つまらない、自分語りになってしまいますが。」

女「――ええ。…聞かせて?」

男「…はい。」


447 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:18:34.83 ID:XYJFTVZiO

男「学生時代に、オケに乗ってやった曲なんですよ。」

女「…へぇ、凄いじゃない。」

男「…いえ。」

女「…それで?」

男「…。」

女「…?」

男「…っ。」

女「…そろそろ休憩終わるわね。席に戻りましょうか。」

男「…はい。」


449 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:28:45.65 ID:XYJFTVZiO

ぱちぱちぱち…


男(…始まる。)

男(――チャイコフスキー交響曲第五番…)

男(第一楽章…運命の動機。)

男(…。)

男(…なぁ。)

男(お前も…聴いているよな?)

男(…第二楽章。)

男(……ホルンソロ、上手い…)


―。

――。


チャイコフスキー 交響曲五番
ttp://www.youtube.com/watch?v=VLKhvlWglkQ
チャイコフスキー交響曲第五番 第二楽章
ttp://www.youtube.com/watch?v=Wl978YU7aDU

450 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:37:58.66 ID:XYJFTVZiO

ぱちぱちぱち…


「ブラーボ!」 「ブラボー!」


男(…凄、かった。)ぱちぱちぱち

女(…。)ぱちぱちぱち…


ぱちぱちぱちぱち…


指揮者「…。」ぺこり

指揮者「…。」すっ


男(え?)

女(…アンコール?)


451 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:38:58.21 ID:RizWe8dSO
素晴らしい


453 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:47:32.99 ID:XYJFTVZiO

女(…っ!!)

男(――ははは。ここまで来ると誰かの悪戯としか思えないな…)

女(…ラヴェル)

男(――亡き王女の為のパヴァーヌ。)


ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」
http://www.youtube.com/watch?v=1FDBDnD2c5g

454 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:51:33.72 ID:XYJFTVZiO

女(綺麗だけど、悲しい曲…。)


――いつまでそうやって一人でウジウジしてるの!

男(…え?)

――相変わらず考え過ぎなんだよ! 私の事なんて忘れていいんだから!

男(…え?お前…なのか?)
――いい人じゃない。隣の方。優しいし、綺麗だし。

男(…なぁ、)

――なに?

男(…。)


456 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:52:25.67 ID:XYJFTVZiO

男(…ありがとう。)

――うん。


ぱちぱちぱちぱち…


「ブラボー!」 「ブラーボ!」

ぱちぱちぱちぱち…


―。

――。


458 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 09:53:28.34 ID:gjlKT6LXO
あれ?景色が歪んでるんだけど?


459 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:55:10.47 ID:7kymiyvl0
男おおおおおおおおお幸せになってくれえええええええええええええええ


460 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 09:55:25.13 ID:XYJFTVZiO
朝ごはん食べてきます。


そしてごめんなさい、今日も昨日と同じ時間帯でお仕事です… 行きたくない…。


463 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:07:18.63 ID:XYJFTVZiO

――帰り道


女「…凄い、演奏会だったね。」

男「…ええ。」

女「…どうしたの?そんなに放心して。」

男「…いえ。」

女「…?」

男「女さん。」

女「…はい。」

男「付き合って欲しい場所があるのですが…」

女「…うん、いいよ?」


464 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:10:59.76 ID:XYJFTVZiO

ざっざっざっ…


女「すごい、街の灯りが綺麗…」

男「小高い丘の上に墓地を作るなんて、西洋人らしいですよね。」

女「…うん。」

男「…先程のお話の、続きをします。」

女「…うん。」


465 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:15:58.70 ID:XYJFTVZiO

男「……私は、学生の頃にある女性とお付き合いをしていました。」

女「…。」

男「…お付き合いを初めて一ヶ月程後の事です。
  彼女はヴァイオリン、私はホルンでオケに乗って、大学内のコンクールに出場することになりました。」

女「…。」

男「……その時の曲が、チャイコフスキー交響曲第五番。先程の曲です。」

女「…うん。」


466 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:21:29.51 ID:XYJFTVZiO

男「…彼女は学内でも頭抜けたヴァイオリニストで、校内のコンクールが終わった後に、留学をする事になっていました。」

女「…。」

男「…ウィーンに。」

女「――えっ?」


467 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:28:07.52 ID:XYJFTVZiO

男「…コンクールは銀賞でした。私がソロを吹き損ねたせいだ、と彼女は笑って言い、ウィーンへ飛んで行きました。」

女「…。」

男「…それから、一年と少しの後でしょうか。」

女「…。」

男「急に大学時代の友人から連絡がありました。」

女「…。」

男「…彼女が亡くなった、と。」

女「…っ。」


468 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:30:13.95 ID:c2NlmVIMO
綺麗なSSだな


泣いたが


470 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:38:36.54 ID:XYJFTVZiO

男「…原因は事故でした。」

女「――そんな…。」

男「…事情を知っている友人や先輩は、直ぐに私をウィーンへ送り出そうとしました。」

女「…。」

男「…でも、行けませんでした。」

女「…どうして?」

男「彼女の死を、受け止めることが……怖かったのだと思います。」

女「…。」

男「――全く、我ながら情けない話です。」


471 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:42:26.67 ID:XYJFTVZiO

女「――ごめんなさい、私…。オーストリアに行きたい、だなんて…」

男「…いえ。」

女「…。」

男「…それからもう、どれくらいの時間が経ったのか。」

女「…。」

男「…こうして、ウィーンに来る事が出来て。ようやく彼女に挨拶が出来ました。」

女「…。」

男「…女さんには、感謝しています。」

女「…そんなっ、」

男「…ありがとう、ございます。」

女「…っ。」


472 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:45:58.42 ID:XYJFTVZiO

男「…ここに、彼女が眠っています。」

女「…。」

男「…いや。今は起きていて、私の下らない自分語りに痺れを切らせているかもしれません。」

女「――ひょっとして『デート』って…」

男「…恥ずかしながら。」

女「……そう。」

男「…はい。」


474 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:51:58.13 ID:XYJFTVZiO

女「…私も、ご挨拶していい?」

男「…喜ぶと思います。」

女「…ありがとう。」

男「――いえ。」

女「…。」

――男君を、宜しくお願いします。

女「えっ…?」

男「どうしました?」

女「…優しい、女性ね。」

男「…え?」

女「…でしょう?」

男「…ええ。その通りです。」にこ


476 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 10:59:02.55 ID:XYJFTVZiO

男「――さっき、」

女「…ん?」

男「…ラヴェルを聴いているときに、あいつの声が聞こえた気がしたんです。」

女「…。」

男「――叱られてしまいました。情けない、と。」

女「…そう。」

男「――だから、もう腹を決めます。」

女「…?」

男「…。」すぅ


男「女さん、好きです。俺と付き合ってください。」

女「――えっ…。」


―。

――。


477 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 11:00:22.52 ID:XYJFTVZiO
一区切りなので、家を出ますね。
どうしよう、遅刻しそう…


見てくれてる方、ありがとうございます。
もう少し、お付き合い下さい。


481 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 11:25:02.02 ID:s1nQeEM4O
悲しい・・・・
しかし彼は彼女を・・

支援


486 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 12:42:17.33 ID:9T8gC2KN0
特定だなんだって言ってるけどさ
明らかに続きなんだから別にいいんじゃない?
知ってる方が間違いなくより楽しめるし


489 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 13:03:18.35 ID:lPzstqJl0
>特定
このスレが初見な俺に言わせれば萎えるだけ

前スレ見てなくても分かるように書いてるんだから
要らんこと言わんで黙って見てろよ


491 :VIPがお送りします [ほしゅ] :2009/07/05(日) 13:16:01.04 ID:bEWImpBaO
>>486
前作って書かれてて気になってたけどこれは続編なのね!
そっかぁ…それなら皆が泣けるって言ってるのわかるかも。

うちはそのキーワードだけで満足だー。


497 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 14:09:29.72 ID:gtwuqiBgO
もう夏かww


498 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 14:10:00.46 ID:AEKBNMBH0
夏厨の季節ですね


499 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 14:19:36.32 ID:o1cJa3Pa0
続編じゃなくてスピンオフだろー


500 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 14:29:15.80 ID:rdbA+Ah70
もうそんな季節になったんだな……
昔は俺が夏の到来を知らせる役だったのに……


522 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 18:27:24.52 ID:XYJFTVZiO
いま終わりました。
みなさん、保守ありがとうございます。


今から帰って色々と片付けて、また21時30分には戻ってきたいと思います。
1スレで終わると思います。

では。ノシ


523 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 18:40:33.64 ID:XYJFTVZiO
…と思ったけど、保守のお礼に少しだけ投下しまする。



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