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貴族「おやおや、可哀想に・・・」
1 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:15:13.15 ID:yTAiblgm0
巨大な青い石造りの門の下に、薄手の布に縛られ、身動きのできぬ少女がひとりもがいていた。
紺色のタイルの上に涙を湛え、栄養失調により衰弱しかけた体を、かれこれ十数分近くも赤子のように弱々しく揺らし続けているのである。
珍しくは無い。どこの村や街にも必ず一人はいるものなのだ。

彼女のような、貧しく不幸な人間が。

少女「はっ・・・は・・・」

貴族「この寒い夜空の下、そのような薄手の汚い服では堪えるでしょう」

体を引きずり動くこともままならない少女の傍らに、一人の男が歩み寄る。男は貴族のように豪華な服を纏い、嵐模様の仮面を被っていた。

少女「う・・・たす・・・たすけ・・・」

貴族「おお、おお、心配には及びません・・・大丈夫ですよ、貴女は私が守りましょう・・・永く守り続けましょう」

貴族「この“青の国”に入られたのならば、もう何も案ずる事はありません」

貴族「衣食住も、地位も、名誉も、力も・・・ここでは全てが、全ての者に足りるのです」

少女「や・・・いや・・・帰・・・」

貴族「さあ、お嬢さん・・・今夜はパーティです」

貴族「楽しく優雅に、全ての今を忘れましょう・・・お嬢さん」


2 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:22:34.16 ID:yTAiblgm0
「あら、侯爵様だわ」
「あら本当、侯爵様だわ」
「侯爵様よ、今夜も凛々しいお姿だわ」
「侯爵様は今夜もお美しいわ」

仮面を被ったドレス姿の婦人達が、道行く二人を遠目に眺めながら上品に口を覆い、聞こえる小声の話しをしている。

婦人らの仮面の下の暗いはずの双眸は、今夜の月よりも青い眼光を湛えていた。

少女「や・・・怖い・・・!やだ、帰る!嫌・・・!」
貴族「ははは、面白い事を言いますね怖いだなんて」

貴族「何も心配はいりません」
貴族「貴女がこの“国”で私といる限り、貴女もまた私と同じ貴族です」
貴族「貴族とは優雅で流麗で豪華なもの・・・」

貴族「何も怖い事などありませんよ、お嬢さん・・・ははははは・・・」
『フフフ・・・』
『ハハハ・・・』

まったくほほえましい光景であると言いたげな人々のしとやかな笑い声は、数十メートル先の青タイルまで静かに木霊する。

少女「!!・・・嫌だ、帰らせてっ・・・!お母さん!お母さんっ・・・!?」

『ハハハ・・・』
『フフフ・・・』


4 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:25:31.13 ID:yTAiblgm0
貴族「さて、美しいお嬢さん・・・パーティーとは華やかで、絢爛で、とても清潔な所です」ガシッ
少女「・・・!?や!触らないで!離して!」
貴族「お嬢さん、パーティーへ行くためには着替えをしなければなりません・・・そのような汚い服では、とてもとても・・・」
少女「嫌!パーティーになんて行かない!離して!私をお家に帰して!」
貴族「お嬢さん、お静かに・・・道行く婦人方が見てますよ」

『あらあら、ふふふ・・・』

水色のロングドレスの裾が一瞬立ち止まり、それは再び幽霊のように路地裏へと消えていった。

少女「・・・い、いやっ!いやぁっ!お母さんの所に帰りたい!」
貴族「・・・」

貴族「下衆な民め・・・大人しく富を享受しろ・・・!」
少女「・・・!?」
貴族「貴女はこの“国”に踏み入れたのだ・・・踏み入った以上はもう帰れない・・・」
少女「や・・・嫌だぁ・・・!」
貴族「貴女は一生をここで、優雅に・・・優美に過ごす・・・毎夜のパーティーを楽しみ、ダンスを踊り、ピアノを弾き続けるのだ・・・!」
少女「・・・!」

貴族「私は侯爵・・・そして貴女はその娘・・・何を嫌がる必要がある?」
少女「(・・・やだ・・・嫌だ・・・!私はこんなところ・・・!)」


5 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:29:14.27 ID:yTAiblgm0
濃霧に半分隠れた大きな青い城の脇には、竜でも住みつきそうなこれもまた巨大な屋敷が聳えていた。

目も眩む豪勢な装飾が、少女の眼を通り抜けて悲しみと不安の思考を停止させる。


少女「・・・う、わ」
貴族「ははは、どうです、美しいでしょう?」
少女「・・・全然」
貴族「ははは、そうですか、ならばまた改装し、豪華にしなくてはなりませんね・・・」

門番「おお、侯爵様、よくぞお帰りなさいました・・・パーティーはいかがでしたか?」
貴族「うむ」

少女が屋敷の高さを測っていると、すぐ傍らに仮面をつけたスーツ姿の男が近づいてきた。
屋敷の大きな門を守る、門番である。
やはり彼も、通りで見かけた人々と同じように仮面を被っている。

貴族「とても有意義な時間を過ごせたよ、夢のような一時だった」
門番「それは何よりです、侯爵様」
貴族「貴方も明日開くパーティーには出てはいかがかな?」
門番「おお侯爵様、喜んで・・・」


6 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:31:42.95 ID:G5B6QrQtQ
記者とジェミニ好きだ


7 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:34:11.35 ID:yTAiblgm0
少女「(・・・嫌・・・怖い・・・)」
少女「(街中は青だらけ・・・人はみんな仮面を付けて・・・笑って・・・)」
少女「(この人も・・・あの人も・・・みんな、変・・・!)」

少女「(何なの?ここはどこなの?)」

少女「(お母さん、どうして私をこんな所に・・・捨ててしまったの!?)」

貴族「さあ、お嬢さん」
少女「!(ビクッ」
貴族「門が開きましたよ、中へどうぞ」
門番「この美しいお嬢さんは・・・?」
貴族「ははは、私の娘だよ」
門番「ほお!なるほど、どおりでお美しい・・・!」

門番「この屋敷のお嬢様ということであれば止める理由などありません、さあ是非とも中へ!」

少女「いや・・・入りたくない・・・!」
貴族「ははは、入りたくない?」

貴族「・・・何度私を怒らせれば気が済む・・・?」
少女「・・・!」

バシッ


8 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:39:00.18 ID:yTAiblgm0
 ―屋敷内

少女「・・・」
貴族「おお、素晴らしい、ピッタリだ」
少女「(すごい・・・こんなの、初めて着た・・・すごいドレス)」

少女「(でも・・・青い)」

メイド「麗しいお姿です」キュィィン
貴族「そう思うだろう?ははは、私の娘だからな」
少女「(違う、あなたなんて知らない・・・私はお母さんの娘・・・)」
貴族「うむ・・・やはり親子だ」
少女「・・・親子じゃない」
貴族「・・・ふ、私と同じで華やかな姿がよく似合う」

少女「・・・こんな服・・・」
貴族「(ギロリ」
少女「っ・・・!」

貴族「そうだ、この子は今日よりこの屋敷に住う事となる」
メイド「公爵様の“娘”としてお育てになられるのですか?」
貴族「ああ、まだ慣れないようだからな、何かあったら“教えて”やってくれないか?」
メイド「かしこまりました、侯爵様」

メイド「子供は、しつけが大事ですものね?うふふふふふふふ」
少女「・・・!」ゾワッ


9 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:39:41.30 ID:SiqHBJAlO
青の国ときいてカタハネしか出てこなかった


10 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:42:42.01 ID:yTAiblgm0
少女「(・・・こんな・・・こんな服嫌だ・・・こんな家嫌だ)」
少女「(今まで通りの汚い服でいいよ、狭い家で良いよ・・・帰らせてよ・・・!)」

少女「(お母さん・・・ここはどこなの?この人は誰なの?)」
少女「(お願い・・・お母さん、捨てないで・・・お願い、帰らせて・・・)」

貴族「さあ」
少女「!」
貴族「パーティーへ行きましょう、お嬢さん・・・これから嵐財閥の集まりがありますからね」
少女「え・・・パーティーはさっき行ったんじゃ・・・」
貴族「ははは、何を言うのですか」

貴族「パーティーは毎日、毎夜、何度も続けて行われるものでしょう?」
『ふふふ』
『ははは』
少女「!」

仮面を被ったメイドと執事が同時に、同じ長さの笑い声を上げた。

貴族「おっと、外界とは風習が違うのでしたね、ははは、貴女も早く慣れなければなりませんね」
貴族「さあ、行きましょう?」


11 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:46:55.14 ID:yTAiblgm0
門番「いってらっしゃいませ、公爵様」
貴族「ああ、留守の間は屋敷を頼んだよ・・・その間に何かあれば、メイドと執事らと共に対処しておいてくれ」

通ったばかりの正面口を出て、仮面の男にしばしの別れを告げた。
だが、少女にとって最初の夜はまだ、明けていない。

少女「(・・・眠い)」

貴族「さあ、お嬢さん・・・手を」
少女「・・・」
貴族「繋ぐのですよ、わかるでしょう?」
少女「・・・いや」
貴族「いや?」
少女「・・・」
貴族「何が」
少女「・・・」
貴族「言いなさい」
少女「嫌だ・・・全部・・・!ここに居る事が・・・!」
バシッ

少女「・・・った・・」
貴族「何が」
貴族「嫌なのです?」
少女「・・・」

少女「いえ・・・何も・・・」


13 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:49:29.92 ID:ebGfmL9m0
スレタイで髭男爵しか浮かばなかった


14 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:51:41.99 ID:yTAiblgm0
「あら、侯爵様だわ」
「あら本当、侯爵様だわ」

貴族「やあご婦人方、今晩は、良い夜ですね」
「ええ、良い夜ですわ」
「ええ、本当に良い夜ですわ」

少女「(・・・!)」
少女「(あの人達も・・・人形だ)」
少女「(顔は仮面で隠れて見えないけれど・・・間違ない、人形!)」

少女「(同じ事しか喋らない、同じ笑い声しか出さない・・・機人でもない、あれは人形・・・!)」
少女「(近くでちゃんと見ると、首の付け根が・・・やっぱり、この人たちは人間じゃない!)」
少女「(・・・人形が街を歩いているの・・・?そんなの狂ってる・・・!)」

貴族「・・・お嬢さん、疑問に思っていますね?」
少女「・・・!」
貴族「何故、彼女らが人形なのか」
少女「・・・・悪趣味な所・・・!」
少女「人形相手に挨拶なんて・・・!」
貴族「口を慎みなさい、彼女らの目の前ですよ」
少女「・・・」

貴族「ふ、要らないのですよ」
少女「・・・?」

貴族「必要無いのですよ・・・この“国”に、下級の民は」


15 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 22:55:41.28 ID:yTAiblgm0
少女「下級って・・・」
貴族「ふふ、貴女が気にかけることではないのです」
少女「・・・」
貴族「貴女は私の、侯爵の娘・・・貴女の今までの生活よりも、遥かに豊かな生活が約束されている」
少女「ち、違う!私はティ・・・」
貴族「黙れ」

少女「・・・」
貴族「汚れた名前など捨ててしまいなさい」
少女「汚れてなんかない!お母さんからもらった、大事な名」
貴族「黙れ!」
バシッ

少女「・・・った・・・!」
貴族「名前・・・ふむ、そうですね、そういえばまだ貴女の名前を決めていなかったですね・・・名前か・・・」

貴族「・・・よし、考えておきましょう・・・しかし、それはパーティの後にでも良いですね」
貴族「今はただ、享楽に耽る事にだけ夢中になればいい・・・そうですね?」
少女「・・・」
貴族「大丈夫」

貴族「・・・この国にも、すぐに慣れますよ」


16 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 23:00:31.69 ID:yTAiblgm0
少女「・・・なんで、パーティになんて行かなきゃならないの・・・」
貴族「ふ、好奇心旺盛なのは良い事です」

貴族「・・・青の国は外界とは違い、非常に豊かな国なのです」
貴族「だから毎晩パーティを開き、毎晩疲れるまで楽しんだとしても・・・また次の日も楽しむ事が出来る」

貴族「素晴らしい財力でしょう?それが青の国なのですよ、ふふふ」
少女「(・・・毎日パーティなんてしていたら飽きると思うな・・・)」

貴族「――飽きなどはきませんよ」
少女「!」
貴族「ふふふ、欲とはそういったものです」
少女「・・・私は!?」
貴族「?」

少女「私はこれから、どうなるの・・・!?どうして私なの!?」
貴族「・・・」

貴族「お嬢さん、これから貴女は嵐財閥侯爵の娘として、青の国で優雅な人生を過ごしていただきます」
少女「・・・嵐、財閥・・・」
貴族「ふふふ」


17 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 23:04:37.24 ID:yTAiblgm0
貴族「ここは“青の国”」
貴族「この世で最も裕福で、豪華で、気品に溢れる“国”・・・」
貴族「それがここ、“青の国”なのですよ」

少女「・・・本では、世界に国は10しか無いって・・・その中に青の国なんて」
貴族「本?ははは、お嬢さん、外界で習う事などこの“国”では役にたちませんよ」
少女「・・・?」

貴族「ここは“青の国”」
貴族「“国”なのです」
少女「で、でも私は」
貴族「“国”なのです」
少女「・・・」

貴族「そして私、お嬢さん貴女がこれから属する財閥・・・それが青国三大財閥のうちのひとつ、“嵐”財閥なのです」
少女「・・・なにそれ」
貴族「ふふふ、それは」

貴族「これから始まる“嵐財閥”所属者のみのパーティを見ればわかるでしょう・・・」

「おや侯爵様、よくぞいらっしゃいました」
「どうぞお入りくださいませ」
ギィィィ・・・


18 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 23:07:08.24 ID:1Zz3zcgfP
イングウェイか


19 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 23:08:54.47 ID:yTAiblgm0
貴族「さあ、お嬢さん」
少女「・・・」
貴族「この館がパーティーの会場です・・・さあさあ、中へどうぞ」
少女「・・・」

少女「(・・・青いカーペット・・・薄水色の壁・・・食事を運ぶ人の服も青・・・)」
貴族「美しい内装でしょう?煌めくほどに磨かれた青の大理石・・・」
少女「・・・悪趣味」
貴族「ははは、お嬢さんにはまだ芸術は早かったようですね?」
少女「・・・」

貴族「さあ、会場はこの先です・・・お嬢さん、会場ではあまり大声で騒がないようにお願いしますよ?」
少女「・・・」
貴族「でないと・・・」
少女「わ、わかってる・・・」
貴族「口の聞き方」
少女「・・・わかってます・・・」
貴族「ん、よろしい」


20 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 23:09:17.47 ID:n4zvqxex0
敵は
赤い国=ソ連
ですね分かります


22 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 23:14:31.77 ID:yTAiblgm0
「あら、侯爵様がいらっしゃってるわ」
「侯爵様よ、侯爵様だわ」
「なんと凛々しいお姿だ・・・」

少女「(・・・何・・・何なの・・・この空間は・・・)」

貴族「皆様、こんばんは・・・お楽しみの所割り入って申し訳ございません、ささ、気にせずどうぞお食事を」

少女「(青い壁・・・青いテーブルクロス・・・青い炎が灯る燭台・・・)」
少女「(ドレス・・・タキシード・・・青い・・・青青青青・・・)」
少女「(・・・嫌!頭がおかしくなりそう!)」
少女「(こんな所に何分もいたら、目が・・・心がどうにかなってしまう・・・!)」

貴族「お嬢さん?」
少女「・・・うう・・・」
貴族「さあ、挨拶をして回りますよ、ははは、なに、要人にだけですよ、全員に挨拶していては疲れてしまいますからね」
少女「(嫌ぁ・・・嫌ぁ・・・!)」
貴族「お嬢さんには、嵐財閥の人間としてまずは色々と覚えておかなければなりませんからね」


23 :VIPがお送りします [sage] :2010/05/02(日) 23:17:28.62 ID:pzpDA/zF0
久しぶりだな


24 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 23:18:06.76 ID:yTAiblgm0
貴族「こんばんは、良い夜ですね?」

伯爵「! ・・・おや、公爵様、これはこれは」
少女「(この人も仮面・・・どうしてみんな、顔を隠しているの・・・)」

伯爵「む?そのお美しい子は一体?」
貴族「ああ、紹介がまだだった、彼女は私の“娘”となる子ですよ、ははは」
少女「!・・・ね、ねえ」
貴族「ん?どうしました?」

少女「・・・これ」
貴族「?・・・ああ、これはステーキですが?」
少女「ステーキって・・・お肉?」
貴族「ふふふ、ええ、そうですよ?珍しいですか?遠慮なさらず、さあ、ここにあるものは自由に食べても良いのですよ」
少女「・・・!」グッ

伯爵「はは、何をこらえて唇を噛みしめているのですか?」
少女「! え、いや、違・・・」
貴族「太って醜くならない程度なら、好きに食べて構いませんよ、ははは・・・」

少女「(・・・ステーキ!初めての、ステーキ・・・!)」
少女「・・・い、いただきます!」


25 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 23:21:15.97 ID:C4VQMl8YP
ハッピーハッピー教思い出した

ブルーブルー…
なによりもとうめいにちかい
ブルーブルー


26 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 23:22:06.06 ID:yTAiblgm0
モグモグ・・・ムシャムシャ・・・


貴族「ふふふ、よく食べる・・・捨てられた時はよほど、空腹だったのでしょうね」
伯爵「・・・」

伯爵「・・・侯爵様」
貴族「ん?何かな?」

伯爵「・・・彼女が、その」
貴族「声を抑えなさい」
伯爵「! すみません」

貴族「・・・そうです、この子が私の“娘”なのです、ふふふ」
伯爵「・・・」
貴族「念願が叶ったといいましょうか、いえ、またひとつ前に歩を進めることができた・・・と言いましょうか」

伯爵「・・・可哀そうに」ボソッ
貴族「ん?何か言いましたか?」
伯爵「? いいえ、何も申しておりません」
貴族「ふむ、そうですか」

貴族「・・・そして伯爵、彼女を手にしたこの時を境に、お前に頼みがある・・・命令だ、聞け」
伯爵「・・・はっ」


27 :VIPがお送りします [] :2010/05/02(日) 23:27:40.06 ID:yTAiblgm0
モグモグ・・・

少女「んぐ・・・もぐ、んむんむ・・・!」

伯爵「・・・では、私はこれで」
貴族「ええ、よろしくお願いしますよ」
少女「もぐもぐ、んぐ・・・」
貴族「ははは、そんなに急がなくとも、食事は逃げませんよ?」
少女「・・・」

ゴクン

少女「・・・」
貴族「ふふふ、どうです?最高級の味は」
少女「・・・色は良くないけど、味は普通なんだ」
貴族「ほう!普通とはまた!?ははは、貴女にとってはここのシェフですらまだまだ、ということですかね?」
少女「・・・」
貴族「ふふ、しかし満足していただけたのなら幸いです」
少女「・・・?」

少女「(この人・・・本当は良い人?)」



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