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女作家「また、来たの。」
1 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 18:33:29.74 ID:mRPOyB5j0

女「また、来たの。」

男「ええ。」

女「何度も言うようだけれど、」

男「はい。」

女「もう、書けないのよ。」

男「お気持ちは分かりますが、此方も仕事ですので。」

女「それは分かっているわ。でもね、」

男「…。」

女「出て、こないのよ。言葉が。一欠片たりとも。」

男「先生なら、書けますよ。今は調子が悪いだけです。」

女「…気休めは止めて。」

男「申し訳ありません。」

女「…悪いけれど、もう帰って。」

男「――失礼します。」


5 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 18:35:52.73 ID:mRPOyB5j0

女「また、来たの。」

男「一応、これが仕事ですので。」

女「…そう。」

男「…ええ。」

女「折角来て貰って悪いけれど、今日は体調が悪いの。」

男「風邪、ですか?」

女「ええ、そうみたい。」

男「分かりました。失礼します。」

女「うん、ごめんなさい。」


7 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 18:38:03.11 ID:mRPOyB5j0

女「…体調が悪いって、言ったでしょう?」

男「ええ。ですから、」

女「…?」

男「風邪薬とポカリスエットを、買って来ました。」

女「――貴方もお人好しね。」

男「そんなこと無いです。」

女「…1行も、書けていないわ。」

男「書こうとしてくれているだけで、十分有難いです。」

女「…そう。」

男「では、失礼します。お大事に。」にこっ


8 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 18:42:05.45 ID:mRPOyB5j0

女「また、来たの。」

男「ええ。参りました、酷い雨で。」

女「…仕方ないわね、上がってちょっと待っていて。」

男「え?」

女「はい、タオル。拭かないと風邪ひいちゃう。」

男「すいません、お借りします。」ごしごし

女「…コーヒーと紅茶、どっちがいい?」

男「コーヒー頂きます。」


9 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 18:46:32.95 ID:mRPOyB5j0

女「ブラックでいい?」

男「はい。」

女「どうぞ。」ことっ

男「頂きます。」こくっ

女「…。」こくり

男「―温かくて美味しいです。」

女「…そう、良かった。」にこ

男「…。」


10 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 18:51:47.33 ID:mRPOyB5j0

しとしとしと…

女「――凄い、雨ね。」

男「ええ。」

女「…今日は、聞かないのね。」

男「見れば、分かりますから。」

女「…そう。」

男「伊達に、何年も担当やってないです。」

女「――ごめんなさい。会社で催促されるでしょう。」

男「…些末な事です。」

女「…。」

男「随分、長居をしてしまいました。」

女「…帰るの?」

男「ええ、失礼します。コーヒー、御馳走様でした。」

女「いえ。」

男「では、また。」


12 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 18:56:26.12 ID:mRPOyB5j0

女「ち、ちょうどいいタイミングに来たわね。」

男「どうしたんですか?何やら今日は歓迎モードですね。」

女「いいから、早く上がって。」

男「はい、お邪魔します。」(…?)

女「…いた。お願い、やっつけて。」

男「ああ、ごきぶ…あ、飛んだ。」

女「き、きゃーっ!」

男(女さんが叫ぶのを初めて見たな。)


13 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:02:34.19 ID:mRPOyB5j0

ぱんっ

男「やっつけましたよ。」

女「ご、後生だから私にその潰れた状態の虫を見せないで処理して。」

男「…了解です。」

女「――もう片付けた…?」

男「ええ。二重にしたビニール袋に入れてゴミに捨てました。」

女「…そう。よかった。」


14 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:04:48.98 ID:mRPOyB5j0

男「――しかし、相変わらず本だらけの部屋ですね。」

女「仮にも、小説家だもの。」

男「スランプに悩む若き女性小説家ですね。」

女「形容詞は、増やせばいいというものでは無いわよ。」

男「あ、ごきぶり。」

女「きゃっ!」びくぅ

男「あはは、冗談ですよ。」

女「私、今ちょっと怒ったわよ?」

男「では、そろそろ会社に退散します。」

女「ええ、今日はありがとう。」

男「いえ。では失礼します。」


15 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:08:21.78 ID:mRPOyB5j0

女「また、来たの。」

男「今日も蒸し暑いですね。差し入れにハーゲンダッツを買って来ました。」

女「…上がって。飲み物を淹れるわ。」

男「…お邪魔します。」

女「――ちょうど水出しで淹れておいたんだけど、ブラックでいい?」

男「はい、ありがとうございます。」

女「どうぞ。」ことっ

男「…頂きます。」

女「…。」

男「――あ、美味しい。」

女「…そう、良かった。」にこ

男「アイスどうぞ。どっちがいいですか?」

女「バニラ、頂こうかな。」

男「どうぞ。では私は抹茶を。」


16 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:13:15.12 ID:mRPOyB5j0

女「…。」はむっ

男「…。」ぱくっ

女「…おいしい。」はむっ

男「抹茶も中々ですよ。」ぱくっ

女「一口貰っても、いい?」

男「ええ、どうぞ。」

女「ありがとう。」

男「…。」


18 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:17:19.53 ID:mRPOyB5j0

女「抹茶もおいしい。」にこ

男「それはよかったです。」

女「バニラ、一口食べる?」

男「…いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」

女「…そう。」

男「コーヒー、ご馳走様でした。」

女「…もう帰るの?」

男「ええ、仕事が溜まっているので。」

女「…そう。」

男「では、失礼します。」


19 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:20:56.30 ID:mRPOyB5j0
こんな感じでだらだら静かにとやりまふ。
noえろnoもえだす。ごめんなさい。ふひひ


20 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:21:46.87 ID:i5R/wBKO0
構わん続けろ


21 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:23:33.52 ID:mRPOyB5j0

女「また、来たの。」

男「ええ、ちょっと雨宿りに。」

女「貴方は何か、勘違いをしているようだけれど。」

男「失念していました。仕事で来ました。」

女「…仕方ないわね、上がって。」

男「お邪魔します。」

女「――何か飲む?」

男「いえ、どうぞお気遣いなく。」

女「ついでだから。今日はアイスレモネードよ。」ことっ

男「好物です。頂きます。」ごくっ


22 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:24:56.41 ID:wjRWcQPHO
あぁ雨音が聞こえてくるようだ


23 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:27:17.11 ID:mRPOyB5j0

女「……どう?」

男「凄く、美味しいです。先生が作ったんですか?」

女「暇つぶしに、ね。」

男「へぇ。そう言えば先生って、料理とかはなさるんですか?」

女「――必要最低限のものなら。」

男「…必要最低限とは?」

女「一週間飽きずに、ご飯が食べられる程度には。」

男「…なるほど。」

女「レモネード、もっとあるけれど。飲む?」

男「いえ、そろそろお暇します。雨脚も弱まりましたし。」

女「…そう。」

男「レモネード、ご馳走様でした。」

女「…いえ。」

男「では、失礼します。」


25 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:34:10.09 ID:mRPOyB5j0

女「また、来たの。」

男「ちょっと、トイレを借りに。」

女「…次はもう少しまともな言い訳を考えて来なさいよ?」

男「善処します。」

女「入って。玄関先でお漏らしをされても困るから。」

男「はい、お邪魔します。」


27 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:40:31.42 ID:mRPOyB5j0

じゃーっ


男「お借りしました。ありがとうございました。」

女「鯛焼きがあるんだけれど、食べる?」

男「あ、頂きます。」

女「温め直すから、少し待って。」

男「はい。」

女「…。」


28 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:43:36.71 ID:mRPOyB5j0

男「先生、ラヴェルなんてお聴きになるんですね。」

女「…まぁ、ね。」

男「――亡き王女の為のパヴァーヌ、ですか。」

女「…意外と詳しいのね。以前楽器を?」

男「学生時代に少し、触った程度です。」

女「へえ、何の楽器を?」

男「……ホルンです。」

女「…意外ね。」

男「あはは、自分でもそう思います。」

女「――はい、お待たせ。」


29 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:47:29.50 ID:mRPOyB5j0

――ことっ


男「飲み物は水出しの緑茶ですか。美味しそうです。」

女「貴方は毎回、私の家にお茶を飲みに来ているみたいね。」

男「いやはや、面目無いです。」

女「いいのよ。温かいうちに召し上がれ。」

男「はい、頂きます。」もぐっ

女「…どう?」

男「美味しいです。中が胡麻餡なんですね。」

女「…ええ。」はむっ


31 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:52:59.33 ID:mRPOyB5j0

男「――しかし先生。」

女「なに?」

男「平日の昼間から聴くには、これはあまりに哀しい曲ではないでしょうか。」

女「…仕方ないでしょう。書いている話のイメージと近いのだから。」

男「えっ?」

女「なにを狐につままれたような顔をしているのよ。」

男「…いえ。――書き始めて頂けているんですか?」

女「…こう見えて私は小説家だもの。」

男「それはここ数日耳にした中で最も嬉しいニュースです。」

女「そう。良かったわね。」


33 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:55:14.41 ID:mRPOyB5j0

男「…原稿、見せて頂けませんでしょうか?」

女「まだ、見せられるような段階ではないの。ごめんなさい。」

男「いえ、書いて頂けているのであればそれで十二分です。」

女「それに…。」

男「…え?」

女「…いえ。――いつか、完成したら読んで貰うわ。」

男「ありがとうございます。一読者として、楽しみにしています。」

女「…ええ、ありがとう。」

男「では、そろそろ失礼します。執筆の邪魔をしてはいけませんし。」

女「――この時間が私の執筆の原動力だ、と言ったら?」

男「…えっ?」

女「…冗談よ。気を付けて帰ってね。」

男「あ、はい。では、失礼します。」


34 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:56:50.50 ID:EJunL0YDO
紫煙くゆらす女作家とかもいいよね


35 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 19:57:03.02 ID:mRPOyB5j0
御免なり、30分ほど席を外しまする。


39 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:15:34.62 ID:mRPOyB5j0

女「また、来たの。」

男「ええ、まぁ。」

女「扉の前で待っているなんて、意外といじらしいのね。」

男「いらっしゃらないようなので、困っていた所でした。」

女「そう。」

男「お買い物、でしたか?」

女「…ええ。」

男「お邪魔しても?」

女「――どうぞ。」

男「ありがとうございます。」


41 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:19:22.52 ID:mRPOyB5j0

女「ところで、お昼はもう食べた?」

男「あ、いえ。まだですが。」

女「今から作るから、…食べていかない?」

男「是非、頂きたいです。」

女「…そう。」

男「以前にも、料理のお話しは少ししましたが」

女「…。」

男「何を、作って頂けるのですか?」

女「お茶漬け。」

男「へっ?」

女「…嫌なの?」

男「いえ、大好物です。」

女「…。」


42 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:22:11.52 ID:mRPOyB5j0

女「お待たせ。」


――ことり


男「え…?」

女「…冷やし茶漬け。具は鮪のお刺身と、とろろ、青紫蘇、刻み海苔、山葵。」

男「知りませんでした。お茶漬けが、こんなに豪華に成り得る料理だったとは…」

女「付け合わせに香の物もどうぞ。」

男「えっ、と。…頂いても?」

女「ええ、召し上がれ。」

男「頂きます。」


47 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:28:32.60 ID:mRPOyB5j0

男「ご馳走様でした。」

女「お粗末様。」

男「なんだか、幸せな気分です。」

女「…そう。良かった。」

男「ええ。」

女「…。」

男「…。」

女「あの、ね。」

男「…はい。」


48 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:29:00.30 ID:4FoXqbq6O
いつか竹葉亭で茶漬けを試してみたい支援


50 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:31:17.86 ID:FV2OQXVOO
前にここで何か書いてない?


52 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:33:35.73 ID:mRPOyB5j0

女「――筆が、止まってしまったわ。」

男「…そうですか。」

女「……ごめんなさい。」

男「先生の気が向いた時に書いて頂ければ、それでいいですので。」

女「…ありがとう。」

男「…いえ。」

女「…。」

男「では、そろそろ失礼します。」

女「…ええ。」

男「冷やし茶漬け、美味しかったです。」

女「いえ。…またね。」

男「はい。失礼します。」


53 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:34:58.51 ID:sVmF7HaEO
>>50 詮索無用


54 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:38:50.46 ID:mRPOyB5j0

女「また、来たの。」ひっく

男「…先生、飲んでいらっしゃったんですか?」

女「んー?」

男「昔から、先生が酔うと碌なことがありません。私の経験が警鐘を鳴らしています。」

女「まぁ、いいじゃない。上がって。」ひっく

男「……お邪魔します。」


55 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:40:28.13 ID:mRPOyB5j0

女「男君も飲む?いいウィスキーを頂いたんだ。」

男「いえ、仕事中ですので…。」

女「むう。」じとっ

男「目が据わってますよ、先生。」

女「一人でお酒を飲むのは、寂しいことなんだよ?」

男「なら、何処かに飲みに行けばいいじゃないですか。」

女「冷たいな、男君は。」

男「…この、無惨にも床に散乱している大量の原稿用紙は?」

女「全部、失敗作だよ。」ひっく

男「…そうですか。」

女「――ごめん。」


58 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:46:43.38 ID:01v4eCwo0
これはいいもっと書け書いてください


60 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:48:47.37 ID:jOKa8Owm0
これはいい雰囲気のSSだね


61 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:50:01.57 ID:mRPOyB5j0

男「先生ー。」

男(…留守、か?)

男「先生ー?」

男(…?)

男(――あれ、鍵が…)

かちゃっ

男(開いてる…。)

――きぃ

男「先生ー?男です、お邪魔しますよー?」

男(…?)


62 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:53:01.40 ID:mRPOyB5j0

男「…あ。」

女「すぅ…すぅ…」

男(ソファで寝ちゃった、のか。)

女「…すぅ」

男(…起こしてしまうにはあまりに惜しい寝顔、だな。)

女「んぅ…むにゃ…」

男「先生、ロックグラスお借りします。」 ぽそっ

女「すぅ…」

からん とぷとぷとぷ…


64 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:56:21.52 ID:mRPOyB5j0

男「…。」こくり

女「…すぅ…んぅ」

からん…

男「うん、旨い。ストラスアイラ…凄い、21年ものか。これはいいウィスキーですね。」

女「…すぅ」

男「…先生。これで貴女が今日飲んだ酒は、独り酒ではなくなりました。分かりますね?」

女「すぅ…」


65 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:58:17.53 ID:mRPOyB5j0

男「…。」

女「すぅ…すぅ…」

男「…目の下の隈なんて、私はとっくに気付いているんですよ?」

女「くふぅ…すぅ…」

男「…そんなに自分を追い詰めてまで、執筆をしないで下さい。」

女「…すぅ」

男「…私は、書くのが楽しくて仕方なかった頃の貴女に…。」

女「…すぅ…むにゃ」

男「貴方を…。」

女「…んぅ…すぅ…」

男「…。」

女「…すぅ。」


66 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/03(金) 20:58:32.29 ID:51Xod29dO
ゆるくて静かで少し渋いな
支援


67 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 20:59:04.60 ID:mRPOyB5j0

男「――では、失礼します。」

女「…すぅ」

がちゃ

男「…お休みなさい。」にこ

――ぱたん


68 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/03(金) 21:00:00.18 ID:Ezl+llmfO
モノクロ思い出した


70 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 21:03:57.06 ID:mRPOyB5j0

女「また、来たの。」

男「ええ、なんだか会社は居心地が悪くて。」

女「…分からなくないわ。」

男「おお、理解者が。」

女「違うわ。会社で同僚に挨拶すらされない貴方が想像できる、ということよ。」

男「…そうですか。」

女「…とりあえず上がって。」

男「お邪魔します。」


71 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 21:06:15.36 ID:mRPOyB5j0

女「ホットワイン飲む?温まるわよ、蜂蜜とクローブ入り。」

男「…またお酒ですか。私は仕事が残っていますので。」

女「今日は少ししか飲んでないわよ。――お酒といえば。」

男「はい?」

女「この間、なんだけど。」

男「ええ。」

女「ごめんなさい、私寝てしまったみたいで。」

男「いえ、貴重なものが見れたので良かったです。」

女「…貴重なもの?」

男「…いえ、何でも無いです。」

女「…?」


75 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 21:11:39.05 ID:+OcdFddyO
いい雰囲気


76 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 21:11:50.88 ID:mRPOyB5j0

男「ところで、お話とは?」

女「…うん、私ね、」

男「…。」

女「…今書いているお話の舞台なんだけど、行ったことが無いの。」

男「…ふむ。」

女「だから、一度現地に行ってみたいのだけれど…。」

男「大丈夫だと思いますよ、まだ時間の猶予はありますし。」

女「…うん、ありがとう。」

男「それで、何処に行くんですか?――北海道?沖縄?」

女「……オーストリア。」

男「……っ!?」

女「……駄目、よね。――ごめんなさい、忘れて。」


77 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 21:13:17.89 ID:mRPOyB5j0

男「…。」

女「…どうしたの?」

男「…い、いえ。」

女「…?」

男「先にも申しましたが、時間はあります。なので問題は先生の語学力のみかと。」

女「それなら大丈夫。」

男「…?」


79 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 21:16:43.84 ID:mRPOyB5j0

女「確か、貴方英語喋れたわよね?」にまっ

男「――えっ?」

女「宜しくお願い致します。」ぺこり

男「…。」

女「……駄目?」

男「一度、会社に持ち帰ります。」

女「…ええ。」

男「では、社に戻ります。」

女「…うん。」


80 :VIPがお送りします [] :2009/07/03(金) 21:21:46.88 ID:mRPOyB5j0

男「では。」

女「…あのっ、」

男「はい?」

女「…無理ばかり言って、ごめんなさい。」ぺこっ

男「出来れば、『ごめんなさい』よりも『ありがとう』の方が嬉しいです。」にこ

女「……ありがとう。」にこっ

男「任せて下さい。なんとか、編集長説得してきますよ。」

女「…うんっ。」ぱあっ

男「では、失礼します。後程ご連絡します。」

がちゃっ ――ぱたんっ

男(……オーストリア、ね。)



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