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十年巻き戻って、十歳からやり直した感想
- 107 名前:名も無き被検体774号+ []
投稿日:2012/10/20(土) 18:04:05.46 ID:JuWNwpCZ0
街路樹や店先にイルミネーションが灯り、
いたるところでクリスマスソングが流れ、
駅前には巨大なモミの木が設置され、
いよいよクリスマスが近づいてきていた。
妹は四回目の家出から無念の帰宅をして、
僕は駅にあるカフェでコーヒーを飲んでいた。
そこからだと、広場の様子がよく分かるんだ。
そして駅前の広場は、僕の元恋人が、
待ち合わせによく使っていた場所なんだよ。
僕はそこで、彼らが落ち合うのを見張っていた。
この日は、ちょっと特別な日なんだ。
- 110 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 18:17:52.71 ID:JuWNwpCZ0
言い忘れてたけど、僕の誕生日って言うのは、
十二月二十四日、クリスマスイブなんだよ。
そして僕の恋人は、クリスマスと誕生日が被るのは
嫌だということで、一週間前に祝うようにしていたんだ。
ドッペルゲンガーも僕と誕生日が同じらしくて、
lクリスマスツリーの下で恋人と落ち合った彼は、
綺麗に包装されたプレゼントを受け取っていた。
こんな立場じゃなきゃ、微笑ましい場面だったんだど、
僕はそれを見て思わず頭を抱えたね。
- 111 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 18:26:39.97 ID:JuWNwpCZ0
それでね、ふと横に目をやると、おかしいんだよ、
僕とまったく同じように頭を抱えている人がいたんだ。
そいつをよく見ると、知らない顔じゃなかった。
というのも、その子は小中高と同じ学校に通っていて、
さらには大学の学部まで一緒の子だったから、
人の顔を覚えられない僕でも、さすがに覚えてたんだ。
でも、あんまり口をきいたことはなかったな。
だって、向こうも僕には言われたくないだろうけど、
ひどく話しかけづらい子だったんだよ。
彼女の視線は、僕と同じで、駅の広場に向いていた。
そりゃあ、ここにいたら、他に見るものはないんだけどさ、
彼女を見ているうちに、僕の中で何かが引っかかったんだ。
- 112 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 18:29:17.39 ID:ogMOPFN+O
ほうほう
- 113 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 18:39:16.67 ID:JuWNwpCZ0
人ってさ、一緒にいる時間が長いと、
口癖とか仕草とかが伝染るじゃないか。
だから、一周目において、僕と恋人の間には、
いろんな共通する「癖」があったんだ。
そのとき隣の女の子がやっていた、
左手で後頭部の髪をやたら触る仕草は、
偶然にも、僕から恋人に伝染った癖の一つだった。
なんだか、すごく懐かしい感じがしたね。
- 114 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 18:44:22.82 ID:z9P33ux30
そうきたか
- 115 名前:名も無き被検体774号+ [sage] 投稿日:2012/10/20(土) 18:58:18.78 ID:9NcAP9/U0
まさかの展開
- 116 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 18:59:52.07 ID:JuWNwpCZ0
彼女が顔を上げたとき、僕らの目が合った。
その一瞬で、どうしてか、僕は彼女に関して、
色んなことが分かっちゃったんだ。
その一。彼女は僕の代役に恋している。
限りなく似たような感情を抱いていると、
目を見ただけで、分かるものなんだよ。
その二。彼女は僕の元恋人に嫉妬している。
たしかに、思いを寄せている人間と
あれだけ親密にされたら、そうもなるよね。
その三。彼女には”一周目”の記憶がある。
- 117 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 19:07:09.75 ID:Sy59MbBv0
鳥肌っ
- 118 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 19:10:35.94 ID:JuWNwpCZ0
何ていうかさ、「やり直しにおける失敗」の
スペシャリストである僕から言わせるとね、
二周目で失敗した人間に特有の感情があるんだ。
隣にいる女の子から、僕はそれを感じ取ったんだよ。
そんでさ――これについては最初から
説明しておくべきだったんだろうけどさ、
実を言うと、僕が持つ一周目の記憶には、
いくらか致命的な欠陥があったんだ。
- 119 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 19:18:14.75 ID:JuWNwpCZ0
それは、「思い出し方に制限がかかっている」ってこと。
自分はこういう特徴の人間とこういう関係がある、
みたいなことはしっかり覚えてたんだけど、
実際の名前、顔、声みたいな具体的情報は、
いくら思い出そうとしてもはっきりしなかったんだ。
「表情が豊か」とか「日焼けしている」とか、
「大人しそうな名前」とか「目つきが悪い」とか、
そういう風には思い出せるのに、だよ。
でも、二周目の僕は、そのことを軽視していたんだ。
一周目の再現をするだけの二周目においては、
記憶に制限があっても、さほど支障はないように見えたからね。
それに、記憶ってのは、多かれ少なかれ、
はじめからそういう不確かな性質があるものだから。
- 120 名前:名も無き被検体774号+ [sage] 投稿日:2012/10/20(土) 19:25:42.25 ID:qSxvCUMD0
ほうほう
- 121 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 19:25:47.34 ID:JuWNwpCZ0
さて、僕の言わんとすることはもう分かると思うけど、
以上の情報をまとめると、導き出される結論は一つ。
隣にいる女の子は、僕のかつての恋人が、
人生のやり直しに”失敗”した姿なんだよ。
そう。席を奪われたのは、僕だけじゃなかったんだ。
僕が中学の頃に告白したのは見当違いの相手で、
殺人を犯してまで取り戻そうとした恋人は人違いで、
僕がいつも影から見ていた二人は、両方とも代役だったんだ。
そして僕の本物の恋人は、いつだって傍にいたんだよ。
- 122 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 19:48:20.67 ID:VFFNZUx3O
2ちゃんねるで>>1が糞スレを立てたのを見ている俺がいる。
- 123 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 19:52:17.97 ID:Mhwpymi00
>>1
パネェワ(D並感)
- 124 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 20:02:18.96 ID:8fxptPBA0
もっかい人生やりなおしてー・・・
なんて思う必要ないってことだな
- 125 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 20:36:53.77 ID:YEpkHUy70
予想の斜め上をいかれた
これは期待
- 127 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 21:19:07.42 ID:59nn09Wt0
これはすごいてんかいだ
- 130 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/20(土) 23:16:43.93 ID:B8sJse6B0
面白い
小説家めざせば?副業だと思ってさ
- 131 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 00:08:19.58 ID:N2VltCWT0
すげぇ展開
鳥肌もんだよ
- 133 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 02:53:29.07 ID:dN7TRB4z0
こりゃあれだな。げんふうけいのひとだな。
- 134 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 04:11:00.14 ID:eGgdSn1D0
まさかの急展開。
1は作家になれるよ。
その辺の小説やドラマなんかより数倍面白い。
- 140 名前:名も無き被検体774号+ [sage] 投稿日:2012/10/21(日) 16:10:35.39 ID:Zt1b2ZZQ0
出版社からオファーくるで
- 141 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 17:13:09.95 ID:FJdAnRjj0
やっぱりげんふうけいさん?
- 142 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 19:42:22.43 ID:BJuSVhJUO
おもしろしっ
続き楽しみ
書き貯めずに少しずつ書いてるのかなあ
- 143 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 20:04:20.98 ID:0NqI+JUK0
>>142
そうなんですよー
見切り発車なんですよー
- 144 名前:名も無き被検体774号+ [sage] 投稿日:2012/10/21(日) 20:05:29.89 ID:z96bEzcG0
不思議と引き込まれる
- 145 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 20:22:20.49 ID:0NqI+JUK0
かつての恋人が自分と同じような状況にあって、
同じ苦悩を抱えていると知ったとき、
けれどもね、僕は喜びはしなかったんだ。
いや、むしろ絶望を深めたと言ってもいい。
どうしてかと言うとね、たとえ隣にいるその子が、
僕の本当の恋人だったとしてもね、今僕が好きなのは、
より一周目の彼女に近い、”偽物”の方なんだよ。
僕が気にするのは「オリジナルかどうか」じゃなくて、
「一周目と同じ気持ちにさせてくれるかどうか」だったんだ。
変わっちまった本物には、もはや興味がないんだな。
- 147 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 20:34:36.70 ID:0NqI+JUK0
それに、勘違いも十年も続けば、それはもう
本人にとっては修正しようがない事実なんだよ。
そして、僕の求める”偽物”の子が、そもそも僕とは
赤の他人だったということが分かって、僕はがっかりした。
こうなると、彼女と僕が結ばれる根拠は、いよいよ無いじゃないか。
僕が信じてきた赤い糸は、広場にいる彼女じゃなくて、
隣で頭を抱えている女の子と繋がっていたわけだからね。
しかし、見れば見るほど、本物の元恋人は、
僕と似たような変化を遂げていて、驚いたね。
二周目の自分を客観的に見てる気分だったよ。
あんまり良い気分じゃなかったな。
- 148 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 20:44:49.87 ID:0NqI+JUK0
そういうわけで、運命の再会とはいかなかった。
寂しそうな目で広場を見つめる本物の元恋人は、
隣に誰か、温かい存在を必要としているように見えた。
うん、今度ばかりは、勘違いじゃなかったと思うよ。
けれども僕は、彼女に話しかけず、店を出た。
僕が必要としているのが彼女でないように、
彼女が必要としているのも、僕の代役の方だろうからね。
- 149 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 20:58:45.16 ID:0NqI+JUK0
僕は街を当てもなく歩いた。そうしたい気分だったんだ。
どこもかしこもクリスマスムードでむなしくなったけど、
とことんそういう気分に浸りたい気分でもあったな。
考えてみると、色んなことが馬鹿馬鹿しかったね。
そもそも僕は、あの代役を殺す気でいたわけだけど、
本当にそんなことができる気でいたんだろうか?
そして奇跡的にそれに成功したところで、
その相手の子は、今の僕を好きになると、
本気で考えていたんだろうか?
だとしたら、頭がおかしかったんだろうな。
- 150 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 21:02:38.45 ID:0NqI+JUK0
そういうわけで、僕はドッペルゲンガーの
殺害計画を諦めたわけなんだけどさ、
願いってのは、腹立たしいことに、
願うのをやめた頃に叶うものなんだ。
- 151 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 21:07:59.95 ID:cfy7UGur0
な・・・んだと?
- 152 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 21:12:02.59 ID:32fOe/5d0
これまた急展開!!
- 153 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 21:23:09.35 ID:4kLxOm8p0
書くペースも絶妙だな
- 154 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 21:50:20.71 ID:0NqI+JUK0
僕は頭をからっぽにしたかったんだ。
今まで以上に、色んなことを忘れたかった。
尾行する必要もなくなって、時間も余っていた。
それで、目についた短期アルバイトに、
片っ端から応募することにしたんだ。
毎日夜遅くにくたくたになって帰宅する僕を見て、
五回目の家出をしてきていた妹は、
「おにいちゃん、恋人でも出来た?」と聞いてきた。
今一番聞きたくない言葉だったね、まったく。
そんでね、どうせ予定もないのだからと、
年末までアルバイトを詰め込んだ僕だったけど、
ろくに内容の説明も読まなかったせいで、
クリスマス当日に、恋人の集まるデパートで、
抽選会の係をすることになっちまったんだよ。
- 156 名前:名も無き被検体774号+ [sage] 投稿日:2012/10/21(日) 21:51:30.18 ID:gFXRBV+A0
高校生?才能あるよ
うちで本書かない(ダークスマイル)?
- 157 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 22:06:06.26 ID:0NqI+JUK0
浮かない気持ちで現地に集合すると、なんとね、
思いもよらない人間がバイトに来ていたんだ。
そう、本物の方の、僕の元恋人さ。
うん、実に気まずい感じだったよ。
やることも考えることも一緒なんだね、僕たちは。
向こうは僕の顔を見ると、軽く頭を下げた。
僕も同じように返したけど、この分だと、相変わらず、
彼女は僕の正体に気付いていないみたいだった。
僕たちは知り合いと言うことでペアにされて、
暑苦しいサンタのコスチュームを着せられて、
浮かれた夫婦やカップルなんかを相手にした。
かつては僕たちも向こうの人間だったんだけどな。
思えば、高校時代も、友達のいない僕たちは、
他に組む相手がいないときなんかに、
こうやって二人気まずく作業していたんだよ。
それを思うとおかしかったね。
- 158 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 22:25:14.99 ID:0NqI+JUK0
休憩時間になると、僕は元恋人を放って、
一人で外に煙草を吸いに行ったんだ。
彼女といると、過ぎたことばかり考えてしまうからね。
何気なく駐車場の様子を眺めていると、
見覚えのある青い軽自動車が入ってくるのが見えた。
それは僕がストーカー時代によく目にした車なんだ。
つまり、代役二人が乗っている車というわけさ。
結構めずらしい車種だったから、すぐに分かった。
そういえば、二十歳のクリスマスの夜、
僕たちはにここを訪れたんだっけ。
- 160 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 22:32:30.54 ID:ix+gzYEHO
相変わらず引き込まれる。
- 161 名前:名も無き被検体774号+ [sage] 投稿日:2012/10/21(日) 22:37:34.71 ID:dgtxDGhR0
展開読めた
- 162 名前:名も無き被検体774号+ [] 投稿日:2012/10/21(日) 22:41:02.54 ID:0NqI+JUK0
休憩が終わってさ、再び抽選会場に戻って、
まあこのあと起こることは予想できると思うけど、
四人は、そこで初めて一堂に会することになるんだ。
いつも以上に幸せそうなその二人は、まさかその幸せが、
目の前にいる二人の冴えないサンタクロースによる
クリスマスプレゼントだったとは、思いもしなかっただろうな。
本物の元恋人の方を見ると、やっぱり、
僕の代役の方を見て、辛そうな目をしてたな。
多分僕も、そういう目をしていたんだと思うよ。
- 163 名前:名も無き被検体774号+ [sage] 投稿日:2012/10/21(日) 22:43:06.62 ID:EOR5Xkzb0
人って簡単に変わっちゃうもんなんだな・・・
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