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女作家「また、来たの。」
525 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 18:42:51.57 ID:XYJFTVZiO

――その夜


男「――先生、寝ちゃいましたか?」

女「…なに?」

男「…キスも、駄目ですか?」

女「……この間は抱き締めてくれなかったくせに。」

男「…ごめんなさい。」

女「……何もしないという約束で私と一緒に寝ている、ということを忘れたの?」

男「…そうでした。」

女「…諦めなさい。」

男「……はい。もう寝ます。」

女「…うん、おやすみ。」

男「…おやすみなさい。」


526 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 18:45:55.26 ID:XYJFTVZiO

女「…。」

男「…。」


ちゅ…


男「えっ!?」

女「……おやすみなさい。」

男「…え?」

女「…五月蝿い。」

男「女さん、今…」

女「…何よ。」


527 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 18:47:01.55 ID:XYJFTVZiO

男「――アンコールは?」

女「…無し。」

男「…せめて手を繋いで寝ませんか?」

女「……仕方無いわね。」


―。

――。


528 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 18:50:23.58 ID:jutadJi3O
素晴らしい


529 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 19:04:39.43 ID:bmE8r/Qn0
ニヤニヤしながら泣いてる俺なんなの?


545 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:23:13.82 ID:XYJFTVZiO

――全く、世話が焼けるんだから。

…ごめん。

――今まで黙って見てたけど、学生の頃からちっとも成長してないじゃない!

…人間なんて、そんなもんだろ。

――またそうやってウジウジ言い訳ばっかりして!

…お前も、相変わらずだな。

――まぁ、ね。


547 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:26:04.64 ID:XYJFTVZiO

――でも、まぁ。今日で漸く安心したわ。

…そうか。

――それじゃあ。今度こそさようなら、だね。

…行くのか。

――うん。

…っ…うっ…


549 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:28:28.29 ID:XYJFTVZiO

――ほらほら、泣かないの! もう大切な人が出来たんでしょ?

…あぁ。

――もう私はお役目御免、だから。

…うん。

――じゃあね!日本帰ったら二人に宜しく!

…なんて宜しく伝えればいいんだよ。

――うっ、…確かに。

…。

――じゃあ、行くね。

…ああ。……ありがとう。

――さようなら。


550 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:32:19.11 ID:LdMnJs8D0
・゚・(つД`)・゚・C


552 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:33:31.25 ID:XYJFTVZiO

女「…ねぇ、大丈夫?」

男「……っ」

女「ねぇってば。…男君?」

男「…ん。ああ、先生。」

女「……大丈夫?泣きながら眠っていたわよ?」

男「……そうですか。」

女「…うん。」


555 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:38:50.02 ID:XYJFTVZiO

男「…すいません、大丈夫です。」

女「…そう。よかった。」

男「…はい。」

女「…おはよう。」

男「……はい、おはようございます。」

女「…。」

男「――ごめんなさい、少し抱き締めていいですか。」

女「……いちいち確認する類いの行為ではないでしょう。」

男「…それもそうですが。」
ぎゅっ

女「…馬鹿。」


556 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:41:00.28 ID:XYJFTVZiO

男「さて、朝ごはん食べに行きましょうか。」

女「…待って。」

男「…はい?」

女「……自分が満足したら、それで終わり?」

男「…失礼しました。」

女「…うん。」



―。

――。


558 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:46:13.69 ID:XYJFTVZiO
保守ありがとうございました。
残念ながら書き貯めは無いので、ゆっくりとやりまする。


560 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:47:49.56 ID:XYJFTVZiO

男「…この甘いウインナーコーヒーを飲むのも、とりあえず今日で最後です。」

女「…え?」

男「どうしても外せない会議がありまして。」

女「…そんなの、聞いてない。」


561 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:51:50.33 ID:XYJFTVZiO

男「…少し、手違いがありまして。」

女「…。」

男「編集長に無理を言って、会議に間に合うことを条件に今回は目を瞑って貰いました。」

女「…そう。」

男「はい。…申し訳ないです。」

女「…今日は、」

男「はい?」

女「――今日は、晴れたわね。」

男「…ええ。」

女「…。」

男「――いい、天気です。」


563 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:53:47.81 ID:ul0mkKwy0
―。
――。
の意味がようわからんのだけど
誰かそのニュアンスを説明してくれんかね


564 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 21:54:52.29 ID:0sIxECiH0
>>563
間じゃね


565 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:55:14.36 ID:gtwuqiBgO
間の様なモノかと


566 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 21:57:21.99 ID:c8Skz+660
間に「。」は無いので別の何かかと思ってたが
俺にもわからん


567 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 21:57:57.60 ID:XYJFTVZiO

男「それで、先生はどうされます?」

女「あと二、三日で形になると思うから、そうしたら帰ろうと思う。」

男「一人で帰って来られますか?」

女「……相変わらず失礼な人ね。」

男「冗談ですよ。」

女「――今日もデートに行くの?」

男「…いえ、もうあそこにあいつは居ないので。」

女「…?」

男「では、少し買い物をして部屋に戻りますね。」

女「…うん。また後で。」

男「…はい。」


569 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 21:59:20.62 ID:0sIxECiH0
―――。
は黙って何かを考えている様子だと思ってた


570 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:03:18.43 ID:XYJFTVZiO

男「Please give me a bouquet for my precious.」

店員「okay!―― do you present it every day?」

男「Yes. Everyday …of the future.」

店員「…?」

男(…いや。毎日は煙たがられる、かな。)

店員「――sure, its my masterpiece!」

男「thanks.」


571 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 22:03:31.13 ID:p4Pm/Jdx0
次の
―。
――。
に超注目して意味を汲み取ってみようと思う


572 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:05:05.86 ID:XYJFTVZiO

女(…。)

女(……。)

女(――よしっ、)かたんっ

女(……終わったぁ。)

女(……今回は、疲れた。)

女(…あとは軽く校正して完成、か。)

女(…どうしよう、一緒に帰れちゃうな。)

女(……とりあえず、)

女(…今日は最後の夜だし、飲みに行こうね。)


573 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:07:17.59 ID:ZfCuSJIkO
場所の移動とか時間の経過じゃないの?


574 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:07:39.03 ID:XYJFTVZiO
お風呂で脳内書き貯めしてきます。

30〜60分で戻ってきますね。


576 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:09:51.13 ID:rdbA+Ah70
全部の「―。」が同じ意味とは思わないけど俺は声を出す前の僅かな思考というかそういうのを表してんだと思って読んでる
マンガの人物の顔アップ吹き出し無のコマみたいな感じかな


577 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:12:17.22 ID:rdbA+Ah70
と思ったけどなんか違う気がしてきた


578 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:13:19.39 ID:2VMAEyT20
―。
――。

は場面や時間の経過を表してる

単なる――は一瞬の間。
躊躇や思考をしていると考えていいはず


579 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:14:18.28 ID:x9xpaCx1O
俺は文章化されてない細かな会話とか、雑踏の音だと思ってる。


580 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 22:14:51.64 ID:0sIxECiH0
みんな色んな読み取り方してるんだなあ
とてもいいことだ


581 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/05(日) 22:25:52.93 ID:ZSNo3WbO0
要はその―の間に抱きしめただけなのかそうではないのか


582 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:38:57.57 ID:Ds4qzTIe0
最初とは打って変わっての野暮な流れですね


583 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:46:00.68 ID:XYJFTVZiO

――その夜


こんこん

男「先生ー。」

女「ごめんなさい、もう少し待って。」

男「予約の時間までもう少しありますから、大丈夫ですよ。」

女(えーと、何を着よう…)

男「…。」

女(どうしよう…。きちんとした洋服なんて、昨日のしか持って来て無いよ…。)

男「……。」


584 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 22:51:36.93 ID:XYJFTVZiO

がちゃっ

女「――お待たせ。」

男「……女性の準備を待つのは古来からの男の運命ですね。」

女「…仕方ないでしょう。」

男「…これ。」がさっ

女「――え?私に?」

男「ええ。」

女「…綺麗。」

男「自信作だ、と言っていましたから。」

女「…ありがとう。」にこ

男「…行きましょう。」

女「…うん。」


586 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 23:02:17.31 ID:XYJFTVZiO

女「…すごいレストランね。」

男「開業550年以上で、建物自体が市の記念建造物だそうです。」

女「…相変わらずやけに詳しいのね。」

男「…いえ。」

女「…あ、ストーブが凄い。」

男「…本当だ、ルネサンス様式のものみたいですね。」

女「…ねえ。」

男「…はい?」

女「…そこでずっと待っていてくれているウエイターさんに申し訳ないから、食前酒だけでも決めてしまわない?」

男「…飲む気ですか?」

女「もちろん。」にこ

男「……私はシェリーで。」

女「同じものを。」

男(大丈夫かな…。)


587 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 23:02:57.31 ID:rdbA+Ah70
どうにもいつものvipのペースになってしまっていたようです
反省支援


590 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 23:09:00.95 ID:XYJFTVZiO

たったったっ…


男(結局、俺が背負って帰る羽目ですか…。)

男(…軽いな。)

男(ちゃんと食べてるのかな…。)

男(…しかし、)

男(もう少し、自分に合った飲み方を覚えて欲しい…。)

男(…でも、)

男(――悪くない、かな。)


たったったっ…


―。

――。


591 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 23:15:48.82 ID:XYJFTVZiO

――翌朝


女(…朝、か。)

女(――ふわふわしてる…)

女(…温かい。)

女(…幸せ、か。)


女(…)

女(…けれど、)

女(本当に…これでいいの?)

女(こんなに甘えて…)

女(――いいの?)

女(駄目に、ならない…?)

女(……。)


592 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 23:17:08.11 ID:XYJFTVZiO

女(でも、だめだ……)

女(抗えない…。)

女(…。)

女(…駄目だ、)

女(――起きよう。)


男「…すぴぃ…すぅ…」

女「…おはよう。」ぽそり

男「…すぅ」

女「……少し、外を歩いて来るね。」

男「……すぅ…。」

女「……待っていて。」にこ


かちゃ


――ぱたん


594 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 23:23:55.48 ID:XYJFTVZiO

かちゃっ


女「…あら、起きていたの。」

男「…ええ、つい先ほど。」


――ぱたん


女「…そう。」

男「…こんな朝から、何処に行っていたんですか?」

女「…ちょっと、ね。」

男「…?」

女「――今日は何時に出るの?」

男「…昼の便に乗ります。」

女「…また、腰が痛くなるわね。」

男「…はい、憂鬱です。」

女「…そうね。」


597 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 23:32:23.78 ID:XYJFTVZiO

女「…私も二、三日したら帰るから。」

男「はい。」

女「…着いたら連絡するわ。」

男「はい、待っています。」

女「――じゃあ、気を付けてね。」

男「…ええ。」

女「……あと、これ。」

男「…鍵?」

女「…。」


598 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 23:34:30.59 ID:XYJFTVZiO

女「…家の合鍵よ。男君少し前に、私が留守で玄関の前で待っていたでしょう?」

男「…そんなこともありましたね。」

女「…またそうなったら可哀想だから。一応。」

男「……ありがとうございます。」

女「――じゃあ、そろそろ行く?」

男「…はい。」

女「じゃあ、――また。」

男「…はい。」


かちゃ

女「……っ。」

――ぱたん


599 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 23:41:23.41 ID:XYJFTVZiO

――数日後


とぅるるる とぅるるる…

男「――はい。」

男「…ああ、日本に戻られたんですか。」

男「――はい、…はい。」

男「…それで、いつ伺えば?」

男「…はい。――来週、ですか?」

男「…はい。分かりました。ゆっくり手直しして下さい。」

男「はい、では来週の水曜日に。……はい。」

男「――はい。分かりました。」

男「はい、それでは。――失礼します。」


――かちゃり


602 :VIPがお送りします [] :2009/07/05(日) 23:46:58.26 ID:XYJFTVZiO

――同刻


女(――ごめん、ね。)

女(でも、今は…。)

女(…。)

女(…さて、と。)

女(先ずはこの汚い部屋を片付けなきゃ、ね。)

女(…。)

女(……ごきぶり、出たらどうしよう。)

女(――アースジェット、買ってこようかな…。)



―。

――。


604 :VIPがお送りします [] :2009/07/06(月) 00:00:07.17 ID:/7Vxx0LpO
15〜30分ほど、時間を下さい。
支援、ありがとうございます。


608 :VIPがお送りします [sage] :2009/07/06(月) 00:23:12.55 ID:elNqJ1N10
・・・。


613 :VIPがお送りします [] :2009/07/06(月) 00:38:31.89 ID:/7Vxx0LpO

――水曜日

しとしとしと…

男(もう、梅雨も終わる筈なのに…)

男(また少し、雨脚が弱まるまで居させて貰おう。)

男(――会うのは久し振り、だな。)

男(何かお土産でも、買って行こうかな…。)

男(和菓子…水羊羹なんてどうだろう。)

男(よし。駅前の和菓子屋さんに、寄って行こう。)

男(――今日は、水出しの緑茶の気分。)


614 :VIPがお送りします [] :2009/07/06(月) 00:41:05.01 ID:/7Vxx0LpO


ぴんぽーん ぴんぽーん…

男(…?)

男「先生―?お留守ですかー?」

男(…また買い物、か?)

男(…ふむ。)

男(――あ、)

男(合鍵、貰っていたんだっけ。)

男(――上がっちゃって、いいんだよな?)



かちゃり


――きぃ


男「――え?」


616 :VIPがお送りします [] :2009/07/06(月) 00:42:26.86 ID:/7Vxx0LpO

男(…部屋、間違えたのか?)

男(…いや、そんな訳無いだろ。)

男(……なんで、家具が一つも無いんだよ。)

男(何か床に…。)

男(――あれは…。)

男(――原稿と……手紙?)


617 :VIPがお送りします [] :2009/07/06(月) 00:44:14.97 ID:/7Vxx0LpO

まず、私は貴方に謝らなくてはいけません。ごめんなさい。
これが、私なりに色々と考えた結果です。

貴方と居る時間はとても暖かくて、小さく光を放つような、そんなものでした。
そして私はいつからか、それを心から愛しいと、感じるようになっていました。

その中でふわふわと毎日を過ごすことは、掛替えの無いことで、きっと私はそれに満足するのだろうと、思います。


619 :VIPがお送りします [] :2009/07/06(月) 00:45:09.41 ID:/7Vxx0LpO

ウィーンで貴方と過ごすにつれ、私は「物を書く」という事に対する欲のようなものが少しずつ、小さくなっていくのを感じました。小さな、しかし大切なものを見つけてしまったからでしょう。

しかし、私は物書きです。何かを書くことは私にとって空気のように必要なもので、それを失っては私は生きてゆけないのです。

全ては私の甘さの所為です。我儘ばかりで、本当にごめんなさい。


620 :VIPがお送りします [] :2009/07/06(月) 00:46:02.37 ID:/7Vxx0LpO

新しい何処かで、自分を見つめ直したいと思います。何処に行くのかは決めていません。
きっと今頃実家の両親は、突然送られてきた大荷物に目を丸くしていることでしょう。

原稿を置いて行きます。校正はしましたが、何かあればそちらで直して貰って構いません。

初めて恋愛ものを書いてみましたが、どうにも上手く書けたという自信がありません。

いつか、私が自分というものを持てたその時に、もしも何処かで会えたなら、今度こそ笑って、貴方に言いたいと思います。


「また、来たの。」と。


628 :VIPがお送りします [] :2009/07/06(月) 00:50:31.51 ID:/7Vxx0LpO

女作家「また、来たの。」


written by the female writer

edit by the man



the end.



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